(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】コイル部品及びこれを備えるワイヤレス通信デバイス、並びに、コイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20240415BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20240415BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20240415BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20240415BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240415BHJP
H01Q 7/06 20060101ALI20240415BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240415BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240415BHJP
【FI】
H01F38/14
H01F5/00 M
H01F41/04 C
H01P11/00
H01Q1/38
H01Q7/06
H02J50/10
H02J50/40
(21)【出願番号】P 2020042170
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】千代 憲隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松島 正樹
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-220850(JP,A)
【文献】特開2013-138404(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068473(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/147133(WO,A1)
【文献】特開2002-324221(JP,A)
【文献】特開2016-225675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0287258(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0138580(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0102617(KR,A)
【文献】国際公開第2019/088708(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00、38/14、41/04
G06K 19/077
H01P 11/00
H01Q 1/38、7/06-7/08
H02J 50/10-50/12、5/40
H04B 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持面を有する支持体と、
前記支持体の前記支持面に固定された第1の磁性体と、
環状のフレキシブル基板の表面に形成され、互いに径方向位置の異なる第1及び第2の区間を有する平面スパイラル状の第1のコイルであって、前記フレキシブル基板の貫通孔の内部に前記第1の磁性体の一部が配置され、前記第1の区間が軸方向における一方側から前記第1の磁性体で覆われ、前記第2の区間が前記第1の磁性体を介することなく前記支持体の前記支持面に固定された第1のコイルと、
前記第1の磁性体とは別部材であり、前記軸方向から見て前記第1の磁性体と重ならないよう、前記第1のコイルの前記第2の区間を前記軸方向における他方側から覆う第2の磁性体と、を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記フレキシブル基板の前記支持体と向かい合うの表面のうち、前記第2の区間が形成された部分は、前記支持体と向かい合う前記第1の磁性体の表面と同一平面を構成することを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1及び第2の区間はいずれも第1の方向に延在し、
前記第1のコイルは、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第3の区間をさらに有し、
前記第2の磁性体は、前記第1のコイルの前記第3の区間を前記軸方向における前記他方側からさらに覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1及び第2の区間はいずれも第1の方向に延在し、
前記第1のコイルは、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第3の区間をさらに有し、
前記第1の磁性体は、前記第1のコイルの前記第3の区間を前記軸方向における前記一方側からさらに覆うことを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1の磁性体と重なる第2のコイルをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1のコイルに囲まれた内径領域と前記第2のコイルに囲まれた内径領域が重なりを有していることを特徴とする請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
環状のフレキシブル基板の表面に形成され、互いに径方向位置の異なる第4及び第5の区間を有する平面スパイラル状の第3のコイルであって、前記フレキシブル基板の貫通孔の内部に前記第1の磁性体の前記一部とは異なる別の一部が配置され、前記第4の区間が軸方向における前記一方側から前記第1の磁性体で覆われ、前記第5の区間が前記第1の磁性体を介することなく前記支持体の前記支持面に固定された第3のコイルと、
前記第1の磁性体とは別部材であり、前記軸方向から見て前記第1の磁性体と重ならないよう、前記第3のコイルの前記第5の区間を前記軸方向における前記他方側から覆う第3の磁性体と、をさらに備え、
前記第3のコイルに囲まれた内径領域と前記第2のコイルに囲まれた内径領域が重なりを有していることを特徴とする請求項6に記載のコイル部品。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか一項に記載のコイル部品と、
前記第1のコイルに接続されたワイヤレス通信回路と、
前記第2のコイルに接続されたワイヤレス電力伝送回路と、を備えることを特徴とするワイヤレス通信デバイス。
【請求項9】
支持体の支持面に第1の磁性体を固定する工程と、
環状のフレキシブル基板の表面に形成され、互いに径方向位置の異なる第1及び第2の区間を有する平面スパイラル状の第1のコイルを用意する工程と、
前記フレキシブル基板の貫通孔の内部に前記第1の磁性体の一部が配置され、前記第1の区間が軸方向における一方側から前記第1の磁性体で覆われるよう、前記第1のコイルの前記第2の区間を前記第1の磁性体を介することなく前記支持体の前記支持面に固定する工程と、
前記軸方向から見て前記第1の磁性体と重ならないよう、前記第1のコイルの前記第2の区間を前記軸方向における他方側から第2の磁性体で覆う工程と、を備えることを特徴とするコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びこれを備えるワイヤレス通信デバイスに関し、特に、近距離無線通信(NFC)用のアンテナコイルとして利用可能なコイル部品及びこれを備えるワイヤレス通信デバイスに関する。また、本発明は、このようなコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NFC用のアンテナコイルとして利用可能なコイル部品としては、特許文献1に記載されたコイル部品が知られている。特許文献1に記載されたコイル部品は、環状のフレキシブル基板に形成された平面スパイラル状の導体パターンを有し、フレキシブル基板の貫通孔に磁性体を斜めに挿入することによってビームの指向性を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品は、アセンブリ工程においてフレキシブル基板の貫通孔に磁性体を斜めに挿入する必要があることから、作業効率が低いという問題があった。また、フレキシブル基板に挿入される磁性体は一体的であることから、ビームの指向性を調整しにくいという問題もあった。
【0005】
したがって、本発明は、アセンブリ工程における作業効率が良く、且つ、ビームの指向性を調整しやすいコイル部品及びこれを備えるワイヤレス通信デバイスを提供することを目的とする。また、本発明は、このようなコイル部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコイル部品は、支持面を有する支持体と、支持体の支持面に固定された第1の磁性体と、環状のフレキシブル基板の表面に形成され、互いに径方向位置の異なる第1及び第2の区間を有する平面スパイラル状の第1のコイルであって、フレキシブル基板の貫通孔の内部に第1の磁性体の一部が配置され、第1の区間が軸方向における一方側から第1の磁性体で覆われ、第2の区間が第1の磁性体を介することなく支持体の支持面に固定された第1のコイルと、第1の磁性体とは別部材であり、軸方向から見て第1の磁性体と重ならないよう、第1のコイルの第2の区間を軸方向における他方側から覆う第2の磁性体と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1の磁性体と第2の磁性体が別部材であることから、フレキシブル基板の貫通孔に磁性体を斜めに挿入する必要がなく、第1のコイルを第1の磁性体に対してオフセットして重なるだけでアセンブリを完了することが可能となる。このため、アセンブリ工程における作業効率を高めることが可能となる。しかも、第1及び第2の磁性体のサイズ、形状、厚み、材料などを個別に選択することができるとともに、両者の位置関係を自由に設計できることから、NFC用のアンテナコイルとして使用した場合に、ビームの指向性を容易に調整することが可能となる。
【0008】
本発明において、フレキシブル基板の支持体と向かい合うの表面のうち、第2の区間が形成された部分は、支持体と向かい合う第1の磁性体の表面と同一平面を構成しても構わない。これによれば、第1のコイルの第2の区間を低背化することが可能となる。
【0009】
本発明において、第1及び第2の区間はいずれも第1の方向に延在し、第1のコイルは、第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第3の区間をさらに有し、第2の磁性体は、第1のコイルの第3の区間を軸方向における他方側からさらに覆っても構わない。或いは、第1及び第2の区間はいずれも第1の方向に延在し、第1のコイルは、第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第3の区間をさらに有し、第1の磁性体は、第1のコイルの第3の区間を軸方向における一方側からさらに覆っても構わない。これらによれば、ビームの指向性を変化させることが可能となる。
【0010】
本発明によるコイル部品は、第1の磁性体と重なる第2のコイルをさらに備えていても構わない。これによれば、第1の磁性体が第1及び第2のコイルに対する共通の磁路として機能する。この場合、第1のコイルに囲まれた内径領域と第2のコイルに囲まれた内径領域が重なりを有していても構わない。これによれば、全体のサイズを小型化することが可能となる。さらにこの場合、環状のフレキシブル基板の表面に形成され、互いに径方向位置の異なる第4及び第5の区間を有する平面スパイラル状の第3のコイルであって、フレキシブル基板の貫通孔の内部に第1の磁性体の一部とは異なる別の一部が配置され、第4の区間が軸方向における一方側から第1の磁性体で覆われ、第5の区間が第1の磁性体を介することなく支持体の支持面に固定された第3のコイルと、第1の磁性体とは別部材であり、軸方向から見て第1の磁性体と重ならないよう、第3のコイルの第5の区間を軸方向における他方側から覆う第3の磁性体と、をさらに備え、第3のコイルに囲まれた内径領域と第2のコイルに囲まれた内径領域が重なりを有していても構わない。これによれば、第1の磁性体が第1~第3のコイルに対する共通の磁路として機能する。
【0011】
本発明によるワイヤレス通信デバイスは、上記のコイル部品と、第1のコイルに接続されたワイヤレス通信回路と、第2のコイルに接続されたワイヤレス電力伝送回路とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、同一の支持体上に、ワイヤレス通信回路用のコイルとワイヤレス電力伝送回路用のコイルを重ねて配置することが可能となる。
【0013】
本発明によるコイル部品の製造方法は、支持体の支持面に第1の磁性体を固定する工程と、環状のフレキシブル基板の表面に形成され、互いに径方向位置の異なる第1及び第2の区間を有する平面スパイラル状の第1のコイルを用意する工程と、フレキシブル基板の貫通孔の内部に第1の磁性体の一部が配置され、第1の区間が軸方向における一方側から第1の磁性体で覆われるよう、第1のコイルの第2の区間を第1の磁性体を介することなく支持体の支持面に固定する工程と、軸方向から見て第1の磁性体と重ならないよう、第1のコイルの第2の区間を軸方向における他方側から第2の磁性体で覆う工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、第1の磁性体と第2の磁性体が別部材であることから、フレキシブル基板の貫通孔に磁性体を斜めに挿入する必要がなく、第1のコイルを第1の磁性体に対してオフセットして重なるだけでアセンブリを完了することが可能となる。このため、アセンブリ工程における作業効率を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、アセンブリ工程における作業効率が良く、且つ、ビームの指向性を調整しやすいコイル部品及びこれを備えるワイヤレス通信デバイス、並びに、コイル部品の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品1の構造を示す模式的な平面図及びxz断面図である。
【
図2】
図2は、コイル部品1の製造方法を説明するための模式的な分解斜視図である。
【
図3】
図3は、コイル部品1の効果を説明するための模式的な部分断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品2の構造を示す模式的な平面図及びyz断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施形態によるコイル部品3の構造を示す模式的な平面図及びyz断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第4の実施形態によるコイル部品4の構造を示す模式的な平面図及びxz断面図である。
【
図7】
図7は、コイル部品4を備えるワイヤレス通信デバイスの構成を説明するためのブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の第5の実施形態によるコイル部品5の構造を示す模式的な平面図及びxz断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品1の構造を示す模式的な平面図及びxz断面図である。
【0019】
図1に示すように、第1の実施形態によるコイル部品1は、支持体10の支持面11に固定された磁性体M1及びコイルC1と、コイルC1に固定された磁性体M2を備えている。特に限定されるものではないが、コイル部品C1はNFC用のアンテナコイルである。支持体10は、ワイヤレス通信デバイスに実装される前の状態においてはPET樹脂などのフレキシブルなベースフィルムからなり、ワイヤレス通信デバイスに実装された状態においては回路基板、バッテリーパック、筐体などが該当する。支持体10の支持面11はxy面を構成し、その全面が同一平面を構成していても構わないし、一部に凹凸が存在していても構わないし、一部又は全体が湾曲していても構わない。
【0020】
磁性体M1は、フェライトなどの高透磁率材料からなるシートであり、その下面31が支持面11と向かい合うよう、接着剤などを用いて支持体10に固定されている。
【0021】
コイルC1は、貫通孔23を有する環状のフレキシブル基板20の表面に形成された平面スパイラル状の導体パターンからなる。特に限定されるものではないが、
図1に示す例ではコイルC1の平面形状が矩形であり、互いに径方向位置の異なる区間S1~S4を有している。このうち、区間S1,S2は導体パターンがy方向に延在する区間であり、区間S3,S4は導体パターンがx方向に延在する区間である。コイルC1の平面形状については矩形に限らず、円形や楕円形であっても構わない。また、コイルC1を構成する導体パターンのターン数についても特に限定されない。
【0022】
コイルC1を構成する平面スパイラル状の導体パターンは、フレキシブル基板20の上面21に形成されており、その外周端は端子電極E1に接続され、内周端はフレキシブル基板20の下面22を介して端子電極E2に接続されている。これとは逆に、コイルC1を構成する平面スパイラル状の導体パターンをフレキシブル基板20の下面22に形成しても構わない。
【0023】
コイルC1は、フレキシブル基板20の貫通孔23の内部に磁性体M1の一部が配置されるよう、支持体10の支持面11及び磁性体M1の上面32に固定される。つまり、コイルC1の区間S1については、磁性体M1と重なり、且つ、接着剤などを用いて磁性体M1の上面32に固定され、コイルC1の区間S2~S4については、磁性体M1と重ならないよう、接着剤などを用いて支持体10の支持面11に固定される。これにより、コイルC1の区間S1は、軸方向における一方側(-z方向側)から磁性体M1で覆われることになる。但し、区間S2~S4の全体が支持体10の支持面11に固定されている必要はなく、少なくとも区間S2が支持体10の支持面11に固定されていれば足りる。
【0024】
これにより、支持体10の支持面11が平坦面であれば、フレキシブル基板20の下面22のうち、コイルC1の区間S2が形成された部分は、磁性体M1の下面31と同一平面を構成する。
【0025】
磁性体M2は、コイルC1の区間S2に接着されている。磁性体M2は、フェライトなどの高透磁率材料からなるシートである。磁性体M2は、磁性体M1とは別部材であり、z方向から見た平面視で両者は重なりを有していない。磁性体M2を構成するシートの材料や厚みは、磁性体M1と同じであっても構わないし、異なっていても構わない。磁性体M2は、コイルC1の区間S2を上方から覆うように固定されている。これにより、コイルC1の区間S2は、軸方向における他方側(+z方向側)から磁性体M2で覆われることになる。
【0026】
このように、本実施形態によるコイル部品1は、コイルC1の区間S1とS2のz方向における高さ位置が異なっている。つまり、磁性体M1と重なる区間S1についてはz方向における高さ位置が高く、磁性体M1と重ならない区間S2についてはz方向における高さ位置が低くなっている。このため、区間S2には磁性体M1とは別の磁性体M2が固定されているものの、磁性体M2がz方向に大きく突出することがなく、低背化が実現される。このような構成を可能としているのは、コイルC1を環状のフレキシブル基板20の表面に形成し、フレキシブル基板20をたわませることによって、高さ位置の異なる磁性体M1及び支持体10に固定しているためである。
【0027】
図2は、本実施形態によるコイル部品1の製造方法を説明するための模式的な分解斜視図である。
【0028】
本実施形態によるコイル部品1を作製するためには、まず、支持体10の支持面11に磁性体M1を固定する。この時、支持体10の支持面11の全面を磁性体M1で覆うのではなく、磁性体M1で覆われない余白領域を支持面11に残しておく必要がある。次に、コイルC1が形成されたフレキシブル基板20を用意し、これを磁性体M1及び支持体10に貼り付ける。この時、
図2に示すように、フレキシブル基板20の貫通孔23の内部に磁性体M1の一部が配置され、区間S1が磁性体M1と重なり、且つ、区間S2~S4が磁性体M1と重ならないようにする。そして、磁性体M1と重ならないよう、区間S2に磁性体M2を貼り付ければ、本実施形態によるコイル部品1が完成する。
【0029】
このように、本実施形態によるコイル部品1は、支持体10に磁性体M1、コイルC1、磁性体M2を順次重なるだけで完成することから、アセンブリ工程が容易となる。ここで、磁性体M2をフレキシブル基板20に貼り付ける工程は、フレキシブル基板20を支持体に貼り付けた後に行っても構わないし、フレキシブル基板20を支持体10に貼り付ける前に行っても構わない。
【0030】
図3は、本実施形態によるコイル部品1の効果を説明するための模式的な部分断面図である。
【0031】
図3に示すように、本実施形態によるコイル部品1は、コイルC1の区間S1及び内径領域に磁性体M1が配置され、コイルC1の区間S2に磁性体M2が配置される。そして、磁性体M1はコイルC1の区間S1を下方から覆い、磁性体M2はコイルC1の区間S2を上方から覆っているため、磁性体M1に流れる磁束φ1の多くは磁性体M2に流れ、コイルC1と鎖交する。ここで、磁性体M2に流れる磁束φ2はx方向成分を持つため、コイルC1の指向性は、軸方向に対して所定の傾きを有する方向Aに曲げられる。しかしながら、磁性体M1と磁性体M2は別部材であり、両者間にはギャップGが存在することから、磁束φ1の全てが磁性体M2に流れるのではなく、一部は磁性体M2に流れることなくコイルC1と鎖交する。磁性体M2に流れることなくコイルC1と鎖交する磁束φ3は、z方向とほぼ同じ方向Bに放射される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によるコイル部品1は、アセンブリ工程においてフレキシブル基板20の貫通孔23に磁性体を斜めに挿入する必要がなく、単に各部材を積層するだけで作製できることから、アセンブリ工程における作業効率が非常に良い。しかも、磁性体M1と磁性体M2が別部材であることから、磁性体M1,M2のサイズ、形状、厚み、材料などを個別に選択することができるとともに、両者の位置関係を自由に設計することができる。このため、本実施形態によるコイル部品1をNFC用のアンテナコイルとして使用した場合に、ビームの指向性を容易に調整することが可能となる。
【0033】
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品2の構造を示す模式的な平面図及びyz断面図である。
【0034】
図4に示すように、第2の実施形態によるコイル部品2は、磁性体M2が区間S2のみならず、区間S3,S4にも形成されている点において、第1の実施形態によるコイル部品1と相違する。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるコイル部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0035】
本実施形態によるコイル部品2においては、区間S2~S4が上方から磁性体M2で覆われる。これにより、x方向のみならずy方向の指向性が拡大する。ここで、磁性体M2は一体的であっても構わないし、区間S2~S4を覆う部分がそれぞれ別部材であっても構わない。区間S2~S4を覆う部分がそれぞれ別部材である場合、各部材間にギャップが設けられていても構わない。
【0036】
<第3の実施形態>
図5は、本発明の第3の実施形態によるコイル部品3の構造を示す模式的な平面図及びyz断面図である。
【0037】
図5に示すように、第3の実施形態によるコイル部品3は、磁性体M2が区間S2のみならず区間S4にも形成されているとともに、磁性体M1が区間S1のみならず区間S3と重なる点において、第1の実施形態によるコイル部品1と相違する。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるコイル部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0038】
本実施形態によるコイル部品3においては、区間S1,S3が下方から磁性体M1で覆われ、区間S2,S4が上方から磁性体M2で覆われる。これにより、第1及び第2の実施形態によるコイル部品1,2とは異なる指向性を得ることが可能となる。
【0039】
<第4の実施形態>
図6は、本発明の第4の実施形態によるコイル部品4の構造を示す模式的な平面図及びxz断面図である。
【0040】
図6に示すように、第4の実施形態によるコイル部品4は、磁性体M1と重なるコイルC2が追加されている点において、第1の実施形態によるコイル部品1と相違する。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるコイル部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
コイルC2は、例えばワイヤレス電力伝送用の受電コイル又は送電コイルであり、
図6に示す例では、フレキシブル基板40の表面に形成された平面スパイラル状の導体パターンからなる。コイルC2は、z方向から見た平面視で、導体パターン及び内径部の全てが磁性体M1と重なっている。
【0042】
図7は、本実施形態によるコイル部品4を備えるワイヤレス通信デバイスの構成を説明するためのブロック図である。
【0043】
図7に示すワイヤレス通信デバイスは、例えばスマートフォンなどの携帯型情報端末であり、NFCアンテナとして機能するコイルC1と、ワイヤレス受電コイルとして機能するコイルC2を備えている。コイルC1はNFC回路51に接続され、コイルC2はバッテリー制御回路52に接続されている。NFC回路51は、コイルC1を介してデータの送受信を行うためのワイヤレス通信回路である。また、バッテリー制御回路52は、コイルC2を介して受けた電力をバッテリー53に充電するためのワイヤレス電力伝送回路である。バッテリー53に充電された電力は、ワイヤレス通信デバイスに含まれるCPU54、メモリ55、I/Oデバイス56などに供給される。
【0044】
このように、本実施形態によるコイル部品4は、磁性体M1がコイルC1,C2に対する共通の磁路として機能することから、部品点数を削減することが可能となる。しかも、コイルC1に囲まれた内径領域とコイルC2に囲まれた内径領域が重なりを有していることから、全体のサイズを縮小することも可能となる。
【0045】
<第5の実施形態>
図8は、本発明の第5の実施形態によるコイル部品5の構造を示す模式的な平面図及びxz断面図である。
【0046】
図8に示すように、第5の実施形態によるコイル部品4は、磁性体M1と重なるコイルC3と、磁性体M1とは別部材である磁性体M3が追加されている点において、第4の実施形態によるコイル部品4と相違する。その他の基本的な構成は第4の実施形態によるコイル部品4と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
コイルC3の基本的な構成はコイルC1と同じであり、フレキシブル基板60の表面に形成された平面スパイラル状の導体パターンからなる。コイルC3についても、NFC用のアンテナコイルとして用いることができる。コイルC3の一端は端子電極E3に接続され、コイルC3の他端は端子電極E4に接続される。
【0048】
そして、コイルC3は、フレキシブル基板60の貫通孔60Aの内部に磁性体M1の一部が配置されるよう、支持体10の支持面11に固定される。コイルC3は、導体パターンがy方向に延在する区間S5,S6と、導体パターンがx方向に延在する区間S7,S8を含み、区間S5が下方から磁性体M1で覆われ、区間S6~S8が磁性体M1と重ならないよう、支持体10及び磁性体M1に固定される。そして、磁性体M3は区間S6に固定され、これにより、区間S6は上方から磁性体M3で覆われる。コイルC1とコイルC3は重なりを有していない。つまり、コイルC3と重なる磁性体M1の平面位置は、コイルC3と重なる磁性体M1の平面位置と相違している。
【0049】
このように、本実施形態によるコイル部品4は、NFC用のアンテナコイルとして機能する2つのコイルC1,C3を備えていることから、NFCの通信範囲を拡大することが可能となる。しかも、磁性体M1がコイルC1~C3に対する共通の磁路として機能することから、部品点数を削減することが可能となる。しかも、コイルC2に囲まれた内径領域とコイルC1,C3に囲まれた内径領域が重なりを有していることから、全体のサイズを縮小することも可能となる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1~5 コイル部品
10 支持体
11 支持面
20,40,60 フレキシブル基板
21 フレキシブル基板の上面
22 フレキシブル基板の下面
23,60A 貫通孔
31 磁性体の下面
32 磁性体の上面
51 NFC回路
52 バッテリー制御回路
53 バッテリー
54 CPU
55 メモリ
56 I/Oデバイス
C1~C3 コイル
E1~E4 端子電極
G ギャップ
M1~M2 磁性体
S1~S8 区間
φ1~φ3 磁束