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特許7471877磁気共鳴イメージング装置、磁気共鳴イメージング方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、磁気共鳴イメージング方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
A61B5/055 376
A61B5/055 311
A61B5/055 355
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020045998
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2020151475
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】16/362,397
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】アヌージ シャルマ
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0309142(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0181710(US,A1)
【文献】特表2019-504659(JP,A)
【文献】Markus Barth, et al.,Simultaneous Multislice (SMS) Imaging Techniques,Magnetic Resonance in Medicine,2016年,75,63-81
【文献】Kerstin Hammernik, et al.,Learning a Variational Network for Reconstruction of Accelerated MRI Data,Magnetic Resonance in Medicine,79,2018年,3055-3071
【文献】David J. Larkman, et al.,Use of Multicoil Arrays for Separation of Signal from Multiple Slices Simultaneously Excited,JOURNAL OF MAGNETIC RESONANCE IMAGING,2001年,13,313-317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信コイルで受信されたRF(RADIO FREQUENCY)信号を表す同時マルチスライス(SIMULTANEOUS MULTI SLICE:SMS)-磁気共鳴イメージング(MAGNETIC RESONANCE IMAGING:MRI)データを取得する第1の取得部と、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得する第2の取得部と、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSITIVITY ENCODING)処理を実行することで、前記受信コイル感度の誤差によって生じるアーチファクトが軽減されたSMS画像を生成する生成部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得する第1の取得部と、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得する第2の取得部と、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する生成部と
を備え、
前記ニューラルネットワークは、複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を入力し、当該受信コイル感度における誤差を補正した補正コイル感度を出力するものであり、
前記生成部は、前記第2の取得部によって取得された受信コイル感度を前記ニューラルネットワークに入力することによって当該ニューラルネットワークから出力される補正コイル感度を用いて前記SENSE処理を実行することで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記アーチファクトは、前記SMS-MRIデータに含まれる1つのスライスの一部の画素値が他のスライスに現れるスライス間漏れアーチファクトである、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記SENSE処理により損失関数の勾配を算出することによって修正された誤差逆伝播法を用いて前記ニューラルネットワークをトレーニングするトレーニング部をさらに備える、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得する第1の取得部と、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得する第2の取得部と、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する生成部と
を備え、
前記ニューラルネットワークは、複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を入力し、当該受信コイル感度における誤差を補正した補正コイル感度を出力する第1のニューラルネットワークと、当該第1のニューラルネットワークから出力される補正コイル感度を用いて前記SENSE処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を出力する第2のニューラルネットワークとを含み、
前記生成部は、前記第2の取得部によって取得された受信コイル感度を前記第1のニューラルネットワークに入力することによって前記第2のニューラルネットワークから出力されるSMS画像を取得することで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
誤差逆伝播法を用いて前記ニューラルネットワークをトレーニングするトレーニング部をさらに備える、
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
トレーニングデータと、前記トレーニングデータのペア間の不一致を誤差値として表す損失関数とを用いて前記ニューラルネットワークをトレーニングするトレーニング部をさらに備え、
前記トレーニングデータの各ペアは、入力データと目標データとを含み、
前記目標データは、アーチファクトが軽減された画像であり、
前記入力データは、前記アーチファクトが軽減されていないエイリアスのないSMS画像、又は、前記ニューラルネットワークを用いずに前記SENSE処理に与えられた場合に前記アーチファクトが軽減されていないエイリアスのないSMS画像を作成するエイリアスのあるSMS画像であり、
前記ニューラルネットワークは、前記ニューラルネットワークを前記入力データに適用することで、ネットワーク処理されたデータを生成する処理と、前記損失関数を用いて、前記ネットワーク処理されたデータと前記目標データとの間の誤差値を算出する処理と、前記算出された誤差値に基づいて、前記ニューラルネットワークの加重係数を更新する処理とを前記ペア毎に所定の停止基準が満たされるまで繰り返すことによってトレーニングされる、
請求項1又は5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得する第1の取得部と、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得する第2の取得部と、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する生成部と
を備え、
前記ニューラルネットワークは、エイリアスのないSMS画像を入力し、当該SMS画像中のアーチファクトを含むアーチファクト画像を出力するものであり、
前記生成部は、前記SENSE処理を実行することによって得られたエイリアスのないSMS画像を前記ニューラルネットワークに入力することによって当該ニューラルネットワークから出力されるアーチファクト画像を、当該エイリアスのないSMS画像から差し引くことで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスの無いSMS画像を生成する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
トレーニングデータと、前記トレーニングデータのペア間の不一致を誤差値として表す損失関数とを用いて前記ニューラルネットワークをトレーニングするトレーニング部をさらに備え、
前記トレーニングデータの各ペアは、入力データと目標データとを含み、
前記目標データは、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像であり、
前記入力データは、前記アーチファクトが発生したエイリアスのないSMS画像であり、
前記ニューラルネットワークは、前記ニューラルネットワークを前記入力データに適用することで、ネットワーク処理されたデータを生成する処理と、前記損失関数を用いて、前記ネットワーク処理されたデータと前記目標データとの間の誤差値を算出する処理と、前記算出された誤差値に基づいて、前記ニューラルネットワークの加重係数を更新する処理とを前記ペア毎に所定の停止基準が満たされるまで繰り返すことによってトレーニングされる、
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記目標データは、前記入力データよりもノイズが除去されており、
前記エイリアスのないSMS画像を前記ニューラルネットワークに入力することで、当該SMS画像よりもノイズが除去されたエイリアスのないSMS画像が生成される、
請求項9に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記複数の受信コイルと、
均一な磁場を生成するように構成された静磁場磁石と、
傾斜磁場を生成するように構成された傾斜磁場コイルと、
SMS-MRIパルスシーケンスを送信するように構成されたRF送信器と
をさらに備える、請求項1~10のいずれか1つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得するステップと、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得するステップと、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、前記受信コイル感度の誤差によって生じるアーチファクトが軽減されたSMS画像を生成するステップと
を含む、磁気共鳴イメージング方法。
【請求項13】
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得するステップと、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得するステップと、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成するステップと
を含み、
前記ニューラルネットワークは、複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を入力し、当該受信コイル感度における誤差を補正した補正コイル感度を出力するものであり、
前記エイリアスのないSMS画像を生成するステップは、前記受信コイル感度を取得するステップによって取得された受信コイル感度を前記ニューラルネットワークに入力することによって当該ニューラルネットワークから出力される補正コイル感度を用いて前記SENSE処理を実行することで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成することを含む、
磁気共鳴イメージング方法。
【請求項14】
前記アーチファクトは、前記SMS-MRIデータに含まれる1つのスライスの一部の画素値が他のスライスに現れるスライス間漏れアーチファクトである、
請求項13に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項15】
前記SENSE処理により損失関数の勾配を算出することによって修正された誤差逆伝播法を用いて前記ニューラルネットワークをトレーニングするステップをさらに含む、
請求項13に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項16】
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得するステップと、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得するステップと、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成するステップと
を含み、
前記ニューラルネットワークは、複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を入力し、当該受信コイル感度における誤差を補正した補正コイル感度を出力する第1のニューラルネットワークと、当該第1のニューラルネットワークから出力される補正コイル感度を用いて前記SENSE処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を出力する第2のニューラルネットワークとを含み、
前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成するステップは、前記受信コイル感度を取得するステップによって取得された受信コイル感度を前記第1のニューラルネットワークに入力することによって前記第2のニューラルネットワークから出力されるSMS画像を取得することで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成することを含む、
磁気共鳴イメージング方法。
【請求項17】
誤差逆伝播法を用いて前記ニューラルネットワークをトレーニングするステップをさらに含む、
請求項16に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項18】
トレーニングデータと、前記トレーニングデータのペア間の不一致を誤差値として表す損失関数とを用いて前記ニューラルネットワークをトレーニングするステップをさらに含み、
前記トレーニングデータの各ペアは、入力データと目標データとを含み、
前記目標データは、アーチファクトが軽減された画像であり、
前記入力データは、前記アーチファクトが軽減されていないエイリアスのないSMS画像、又は、前記ニューラルネットワークを用いずに前記SENSE処理に与えられた場合に前記アーチファクトが軽減されていないエイリアスのないSMS画像を作成するエイリアスのあるSMS画像であり、
前記ニューラルネットワークは、前記ニューラルネットワークを前記入力データに適用することで、ネットワーク処理されたデータを生成する処理と、前記損失関数を用いて、前記ネットワーク処理されたデータと前記目標データとの間の誤差値を算出する処理と、前記算出された誤差値に基づいて、前記ニューラルネットワークの加重係数を更新する処理とを前記ペア毎に所定の停止基準が満たされるまで繰り返すことによってトレーニングされる、
請求項12又は16に記載の磁気共鳴イメージング方法。
【請求項19】
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得するステップと、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得するステップと、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成するステップと
を含み、
前記ニューラルネットワークは、エイリアスのないSMS画像を入力し、当該SMS画像中のアーチファクトを含むアーチファクト画像を出力するものであり、
前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成するステップは、前記SENSE処理を実行することによって得られたエイリアスのないSMS画像を前記ニューラルネットワークに入力することによって当該ニューラルネットワークから出力されるアーチファクト画像を、当該エイリアスのないSMS画像から差し引くことで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスの無いSMS画像を生成することを含む、
磁気共鳴イメージング方法。
【請求項20】
コンピュータに、
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得する手順と、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得する手順と、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、前記受信コイル感度の誤差によって生じるスライス間漏れアーチファクトが軽減されたSMS画像を生成する手順と
を実行させるためのプログラム。
【請求項21】
コンピュータに、
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得する手順と、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得する手順と、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する手順と
を実行させ、
前記ニューラルネットワークは、複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を入力し、当該受信コイル感度における誤差を補正した補正コイル感度を出力するものであり、
前記エイリアスのないSMS画像を生成する手順は、前記受信コイル感度を取得する手順によって取得された受信コイル感度を前記ニューラルネットワークに入力することによって当該ニューラルネットワークから出力される補正コイル感度を用いて前記SENSE処理を実行することで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する、
プログラム。
【請求項22】
コンピュータに、
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得する手順と、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得する手順と、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する手順と
を実行させ、
前記ニューラルネットワークは、複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を入力し、当該受信コイル感度における誤差を補正した補正コイル感度を出力する第1のニューラルネットワークと、当該第1のニューラルネットワークから出力される補正コイル感度を用いて前記SENSE処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を出力する第2のニューラルネットワークとを含み、
前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する手順は、前記受信コイル感度を取得する手順によって取得された受信コイル感度を前記第1のニューラルネットワークに入力することによって前記第2のニューラルネットワークから出力されるSMS画像を取得することで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する、
プログラム。
【請求項23】
コンピュータに、
複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得する手順と、
前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得する手順と、
ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する手順と
を実行させ、
前記ニューラルネットワークは、エイリアスのないSMS画像を入力し、当該SMS画像中のアーチファクトを含むアーチファクト画像を出力するものであり、
前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する手順は、前記SENSE処理を実行することによって得られたエイリアスのないSMS画像を前記ニューラルネットワークに入力することによって当該ニューラルネットワークから出力されるアーチファクト画像を、当該エイリアスのないSMS画像から差し引くことで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスの無いSMS画像を生成することを含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置、磁気共鳴イメージング方法及びプログラムに関する。
【0002】
具体的には、本明細書及び図面に開示の実施形態は、同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)においてDL(Deep Learning)ネットワークを用いる技術に関し、特に、DLを用いることによって、SMSデータからスライス画像を再構成するSENSE(SENSitivity Encoding)において、推定されたコイル感度と実際のコイル感度との相違によって生じるアーチファクトを低減させる技術に関する。
【背景技術】
【0003】
ここで説明する背景技術は、本願の背景の概要を説明するためのものである。本願の発明者の研究は、明細書に記載されている先行技術にはなり得ない態様だけでなく、この背景技術で説明される範囲でも、本願に対して、明示的又は暗示的に先行技術として認定されるものではない。
【0004】
1回のショットでk空間全体の信号を収集するシングルショット2D(2次元)エコープラナーイメージング(Echo Planar Imaging:EPI)は、拡散強調イメージング(Diffusion-Weighted Imaging:DWI)や機能的磁気共鳴イメージング(functional Magnetic Resonance Imaging:fMRI)等のMR応用で広く用いられている。EPIは高速なイメージング法であるが、DWI及びfMRIはスキャン時間が長いという欠点がある。これは、DWIでは種々の拡散エンコード方向に沿って複数の画像を収集する必要があり、fMRIでは高い時間分解能が必要であるためである。複数回の反復によって信号を収集するイメージング法では、数種の加速技術を用いて、高分解能のフルカバーイメージンングに伴う長いパルス繰り返し時間(Repetition Time:TR)を短縮することができる。例えば、SENSE等の加速化2Dパラレルイメージング技術を用いて、画像収集時の位相エンコードのステップ数を減らすことができる。しかし、EPIでは、全ての位相エンコードのラインが1回のショットで収集されるため、SENSEによってスキャン時間を顕著に短縮することはできない。SENSEは、EPIにおいて、主に位相エンコード帯域を拡大するために用いられ、それにより画像歪みやT2ぼけ等のアーチファクトを低減させることができる。
【0005】
一方、SMSの技術は、EPIにおいて、一定数のスライスを撮像するのに要する時間を著しく短縮させることができる。この短縮は、共有読出し時間の間に複数のスライスを撮像することによって実現される。k空間の全てのラインがサンプリングされると、同時に収集されたスライスは、パラレルイメージングの加速技術で一般に観察されるSNR(Signal-to-Noise Ratio)の√R減少を示さなくなる。SMSは、広帯域イメージング、同時エコーリフォーカス(Simultaneous Echo Refocusing:SER)、及び、パラレル画像再構成と一緒に用いることができる。SERを組み込んだパラレルイメージング法をfMRI応用や拡散応用に導入することもできる。SMSは、同時に収集されたスライス間の距離が大きい場合に良好に機能する、有望なパラレルイメージング診断法である。
【0006】
しかしながら、対象範囲がスライス方向に沿って小さいイメージングでは、スライス間隔が狭くなると、同時に収集されたスライスの分離が難しくなる。CAIPI(Controlled Aliasing:CAIPI)の技術を導入して複数のスライスにわたってシフトを行うことで、加速されたデータからより容易にエイリアスを除くことができる。この方法は、k空間の各ラインの励起を行うために位相がシフトされたRF(Radio Frequency)パルスを用いるものであり、EPIには適用できない。広帯域法に基づく他の方法は、EPIに適用することができ、励起されたスライスの間でCAIPIと同様の効果を生じさせることができるが、望ましくない大きなボクセル傾斜アーチファクトの影響を受けやすい。ブリップCAIPI(blipped-CAIPI)法は、同時励起されたスライス間で位相エンコード方向の空間シフトを行うこともできる。したがって、ブリップCAIPI法は、ボクセル傾斜アーチファクトを回避しつつ、g因子ペナルティが低く、加速係数が高いSMS収集を可能にし、それによりDWI及びfMRIの時間的な効率面で顕著な利益を得ることができる。
【0007】
この他の方法として、CAIPI収集の再構成にk空間ベースの方法を用いる方法がある。この方法として、SENSE/GRAPPA(GeneRalized Auto-calibrating Partial Parallel Acquisition)、スライスGRAPPA(Slice-GRAPPA)、及び自動較正CAIPIがある。
【0008】
パラレルMRIを臨床応用に用いることで、スキャン時間を短縮する、又は、スキャン時間を延長せずに空間分解能及び時間分解能を高めることができる。サブナイキストサンプリングレートでk空間を用いる場合は不完全なデータが生じるため、特殊な再構成を行わないと残留エイリアシングアーチファクトが生じる。エイリアシングのない画像を得るために、複数の受信サーフェスコイルのアレイを用いた空間的感度エンコーディングを利用して紛失信号を再構成することがある。パラレルMRI再構成は、SENSEベースの方法とGRAPPAベースの方法とに大別される。SENSEベースの方法では、コイル感度が明確に推定され、推定されたコイル感度を用いて画像ドメインに直接画像が展開される。しかし、コイル感度の正確な推定は難しく、わずかな誤差であっても、スライス間漏れアーチファクト(inter-slice leakage artifact)や残留エイリアシングアーチファクト(residual aliasing artifact)等の好ましくない画像アーチファクトが生じる。
【0009】
したがって、SENSEを用いたSMSによって実現される高速化及び高SNRを兼備しつつ、スライス間漏れアーチファクトや残留エイリアシングアーチファクトを防ぐ又は軽減する、改良された方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2007/0007960号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0181710号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0299207号明細書
【文献】韓国登録特許第10-1923184号公報
【文献】国際公開第2016/018073号
【非特許文献】
【0011】
【文献】Chen Quin,et al.,”Convolutional Recurrent Neural Networks for Dynamic MR Image Reconstruction”,IEEE
【文献】David J.Larkman,et al.,”Use of multicoil arrays for separation of signal from multiple slices simultaneously excited”,J. of Mag.Res.Imaging,Vol 13,2001年,pp.313-317
【文献】Kawin Setsompop,et al.,”Blipped-Controlled Aliasing in Parallel Imaging for Simultaneous Multislice Echo Planar Imaging With Reduced g-Factor Penalty”,Magnetic Resonance in Medicine 67:1210-1224(2012)
【文献】Markus Barth,et al.,”Simultaneous Multislice(SMS)Imaging Techniques”,Magnetic Resonance in Medicine 00:00-00(2015)
【文献】Stephen F.Cauley,et al.,”Interslice Leakage Artifact Reduction Technique for Simultaneous Multislice Acquisitions”,Magnetic Resonance in Medicine 72:93-102(2014)
【文献】Suhyoung Park,et al.,”Simultaneous Multislice Aliasing Separation Exploiting Hankel Subspace Learning”,Magnetic Resonance in Medicine 00:00-00(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、SMSデータからスライス画像を再構成するSENSEにおいて、推定されたコイル感度と実際のコイル感度との相違によって生じるアーチファクトを低減させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、第1の取得部と、第2の取得部と、第3の取得部と、生成部とを備える。第1の取得部は、複数の受信コイルで受信されたRF(Radio Frequency)信号を表す同時マルチスライス(Simultaneous Multi Slice:SMS)-磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)データを取得する。第2の取得部は、前記複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得する。第3の取得部は、エイリアスのないSMS画像中のアーチファクトを軽減させるようにトレーニングされたニューラルネットワークを取得する。生成部は、前記ニューラルネットワークを用いて、前記SMS-MRIデータ及び前記受信コイル感度に基づくSENSE(SENSitivity Encoding)処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本願は、添付図面と関連させて検討しつつ以下の詳細な説明を参照することによってより完全に理解される。
図1A図1Aは、一実装による、重なり合った3枚のスライスを含むSMS画像を示す図である。
図1B図1Bは、一実装による、3枚のスライスが位相エンコード方向に互いにオフセットして重畳した、ブリップCAIPI-SMS画像を示す図である。
図2図2は、一実装による、SENSE処理によるSMS画像のスライス分離を示す模式図である。
図3図3の模式図は、SENSE処理を用いてSMS画像のスライスを分離することによって実際にスライス間に漏れアーチファクトや残留エイリアシングアーチファクトが生じることを示す図である。
図4図4は、エイリアスのないSMS画像(SMS-3X)をスライス間漏れアーチファクトや残留エイリアシングアーチファクトを表示しないEPI画像と対比することによって、SMS画像におけるスライス間のスライス間漏れアーチファクトや残留エイリアシングアーチファクトの一例を示す図である。
図5A図5Aは、一実装による、SENSE処理で用いられる受信コイル(Rx)感度(マップ)を補正することによりスライス間漏れアーチファクトや残留エイリアシングアーチファクトを軽減するためにDL-ANN(Artificial Neural Network)をトレーニングして用いる処理の流れの一例を示す図である。
図5B図5Bは、一実装による、図5Aの流れ図の実装におけるデータフローの一例を示す図である。
図6A図6Aは、一実装による、スライス間漏れアーチファクトや残留エイリアシングアーチファクトを軽減するためにDL-ANNをトレーニングして用いる処理であって、Rxマップの補正及びSENSE処理の両方がDL-ANNによって実行される処理の流れの一例を示す図である。
図6B図6Bは、一実装による、図6Aの流れ図の実装におけるデータフローの一例を示す図である。
図7A図7Aは、一実装による、SENSE処理により出力されるエイリアスのない画像中のアーチファクトを検出して、検出されたアーチファクトをエイリアスのない画像から差し引くことによりスライス間漏れアーチファクトや残留エイリアシングアーチファクトを軽減するためにDL-ANNをトレーニングして用いる処理の流れの一例を示す図である。
図7B図7Bは、一実装による、図7Aの流れ図の実装におけるデータフローの一例を示す図である。
図8図8は、一実装による、DL-ANNネットワークの係数を繰り返し調整して損失-誤差関数を最適化することによるDL-ANNネットワークのトレーニングの流れの一例を示す図である。
図9A図9Aは、一実装による、フィードフォワードANNの一例を示す図である。
図9B図9Bは、一実装による、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)と呼ばれる種類のANNの一例を示す図である。
図10図10は、一実装による、MRIシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照し、いくつかの例示的な実施形態について説明する。なお、以下で説明する実施形態及び図は例示的なものであり、限定的なものではない。すなわち、本願が開示する技術及び特許請求の範囲は、図面及び以下で示される例に限定されるものではない。
【0016】
本実施形態では、特定の実施例において実現される特定のプロセス及びシステムについて主に説明するが、当該プロセス及びシステムは、他の実施例でも有効に動作するものである。ここで、「一実施形態」、「1つの実施形態」及び「他の実施形態」等の文言は、同じ又は異なる実施形態を意味している。また、本実施形態では、所定のコンポーネントを有する方法及び構成について説明するが、当該方法及び構成は、以下で示すものより多い又は少ないコンポーネントを含んでもよく、当該コンポーネントの配置及び種類は、本願の内容の範囲内で変更することが可能である。
【0017】
また、本実施形態では、所定のステップを有する方法について説明するが、当該方法及び構成は、矛盾しないようにステップを追加したり、ステップの順序を変えたりしても有効に動作するものである。このように、本願の内容は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される範囲内で、かつ、以下で説明する原理及び特徴と矛盾しない範囲内で最大限に広く解釈され得るものである。
【0018】
また、値の範囲が示される場合には、当該範囲の上限値及び下限値の間にある各値、及び、当該範囲内に定められた他のいかなる値も、本願の内容に含まれる。また、当該範囲が上限値及び下限値を含む場合には、それらのいずれかの値を除いた範囲も含まれる。また、明示的に示されない限り、本願で用いられる用語は、当業者によって理解される率直で通常の意味を持つものとする。また、いかなる定義も、本願の内容を読者に理解させることを意図したものであり、特に示さない限り、このような用語の意味を変更又は限定するものではない。
【0019】
前述したように、SENSEベースの方法では、MRIシステムにおける受信コイルのコイル感度が推定され、推定されたコイル感度を用いて画像ドメインに直接画像が展開される。しかし、コイル感度の正確な推定は難しく、わずかな誤差であっても、スライス間漏れアーチファクトや残留エイリアシングアーチファクト等の好ましくない画像アーチファクトが生じる。したがって、本明細書で述べる方法は、DLを用いて、推定されたコイル感度の不正確さやその不正確さによって生じるアーチファクトに対処する。本明細書で述べる方法は、これらの課題に1つ以上の方式で対処する。すなわち、(1)推定コイル感度を補正するようにトレーニングされたDL-ANNを用いる方式、(2)SENSE処理をより良好に行うようにトレーニングされたDL-ANNを用いる方式、(3)SENSE処理の後、推定コイル感度の誤差から生じるアーチファクトを補正するようにトレーニングされたDL-ANNを用いる方式、等である。これにより、本明細書で述べる方法は、スライス間漏れアーチファクトや残留エイリアシングアーチファクトを生じることなく、SENSEを用いたSMSの高速化と高SNRとを提供する。
【0020】
SMSは、MRスキャンを高速化するために用いられる技術である。MRイメージングでは、収集プロセスを高速にするために多くの技術が実施されている。MR画像の収集をより高速にすることによって、撮像対象(例えば、患者)の快適さが高まるとともに、撮像対象の動きに起因するアーチファクトが低減して、より正確な画像が得られる。
【0021】
SMSでは、関心領域(Region Of Interest:ROI)での複数のスライスの同時励起、マルチバンドRFパルスの使用、及び2D位相エンコード読出しによるデータ収集によって、スキャン時間が短縮される。面内パラレルイメージングでは、SNRが加速係数Rの平方根に比例して減少する(すなわち、SNRは√Rに反比例する)のに対し、SMSでは、√Rに応じたSNRの減少がマルチバンドファクタMBの平方根に応じたSNRの増加によって相殺されるため、SNRは非加速レベルに維持される。すなわち、SNR ∝ √MB/√Rが成り立ち、MBがRに等しいとき、SNRは維持される。これは、SMSの大きな利点である。
【0022】
以下、図を参照しながら説明する。なお、各図において、同等又は相当する部分には同様の参照数字を付している。図1A及び1Bは、それぞれ、標準的なSMS画像及びブリップCAIPI-SMS画像の非限定的な一例を示す。図1Aに示す加速SMS画像では、空間的な深さ又は位置が異なる3枚のスライスが互いに重なり合っている。図1Bでは、SNRを改善するために、ブリップCAIPI技術を用いて、これらのスライスを位相エンコード方向に相互にシフトさせている。この位相エンコード方向のシフトによってエイリアスの重なりが最小になり、面内コイル感度変化を利用することでg因子ペナルティが減少する。SMSでは、標準的な技法及びブリップCAIPI技法の両方を含むことで、パラレルイメージング技術(例えば、SENSE)を用いた再構成において、スライスが分離される。SENSEでは、受信コイル(Rx)感度空間プロファイル(Rxマップと呼ばれる)を用いて、個々のスライス画像が解像される。これについては、米国特許出願第15/853,034号、及び、Larkman et al.,”Use of multicoil arrays for separation of signal from multiple slices simultaneously excited”,J. of Mag.Res.Imaging,Vol 13,2001年,pp.313-317に記載されているとおりであり、いずれも全体が参照することにより援用される。
【0023】
本願が開示する実施形態によれば、限定はしないが、SMSイメージング、及び、一般性を失わずに、SENSEと呼ばれる面内加速イメージング、又は、それらの組合せ等のマルチスライスイメージング技術によって生成されたMR画像におけるスライス間漏れアーチファクトの判定や補正が提供される。SMS-MRI画像の収集では、1枚のスライスからの信号の寄与を、複数のスライスの出力画像に多重分離することができる。不都合なことに、算出したコイル感度(Rxマップ)の不正確さによって、各シングルスライス画像(エイリアスのない画像)にアーチファクトが生じることがある。
【0024】
SMS及び面内パラレルイメージングでは、共に、残留エイリアシングアーチファクトに加えて、加速係数が高い場合にコイル形状の制約に起因してSNRの損失が生じることが弱点である。このコイル形状に起因するSNRの低下は、形状因子ペナルティ、より一般的には、g因子ペナルティと呼ばれる。g因子は、ノイズ増幅因子と考えられる。同じ受信コイル設定では、高いg因子マップ値を有する再構成画像の領域においてノイズが高くなることが予想される。
【0025】
ブリップCAIPI技術がどのようにしてg因子を向上させるかを理解するためには、異なるスライスが重なり合うことがあると考えると役立つ。同時に収集されたスライス間で受信コイル感度に十分な差異がない場合、異なるスライスからの信号を分離することが難しくなる。したがって、再構成されたスライス画像のSNRは、g因子ペナルティの増加のために小さくなる。SNRは、ブリップCAIPI技術等の方法を用いた収集時に、スライスを位相エンコード方向に相互にシフトすることによって改善される。ブリップCAIPI技術は、面内加速用に設計された従来の受信コイルの感度の面内変化を利用したものである。位相エンコード方向のシフトは、あるスライスのボクセルにエイリアスを生じさせる。これは、十分に直交した受信感度値を有する1つ以上の他のスライスのボクセルによって生じるものである。これにより、非エイリアシング同時収集密接スライスに伴う比較的高いg因子ペナルティが小さくなる。
【0026】
同時に収集されたスライスは、限定はしないが、SENSE等のパラレルイメージング技術を用いた再構成において分離される。SENSEは、個々のコイルからのデータが画像空間にフーリエ変換された後に、画像ドメインで実行される技術である。SMSでは、収集されたスライス位置からの所定の受信コイル感度データを用いて、SENSEの非エイリアシング行列が設定される。行列代数演算を用いて、非エイリアシング行列と、各受信コイルからの収集されたエイリアスのある画像のボクセル強度値のベクトルとを乗算することによって、エイリアスのないシングルスライス画像のボクセル強度値が取得される。位相エンコード方向のシフトは、受信コイル感度マップをシフトすることによって、前述した再構成に含めることができる。基本的に、従来のSENSEの概念をスライス方向に拡張することでSMS画像が再構成される。
【0027】
例えば、エイリアスのない出力画像は、収集されたエイリアスのある画像をSENSEのコイル感度行列の逆数と乗算することによって得られる。SMS画像の収集及びエンコーディングのプロセスは、解析的に、以下の式(1)のように表される。
【0028】
【数1】
【0029】
ここで、Iは全受信コイルからの収集された加速画像の強度値のベクトル、CはSENSEのエイリアシング行列、mはIを形成するための、エイリアスが生じた全ての空間位置からのエイリアスのない画像の強度値のベクトルである。上記の式(1)は、以下の式(2)のように全行列-ベクトル形式で記述することができる。
【0030】
【数2】
【0031】
ここで、Ncはiで示されるコイル数を表し、Nsはjで示されるスライス数を表し、Iはコイルiにより収集された画像を表し、Cijはスライスjに対するコイルiの受信感度を表し、mはスライスjのエイリアスのない画像の強度を表し、x及びyは空間位置の指標であり、yはスライスのシフトを表す(スライスのシフトがない場合は、全てのjに対してy=0となる)。
【0032】
エイリアスのない画像の強度値のベクトルは、上記の式を解析的に解いて以下の式(3)を得ることによって再構成することができる。
【0033】
【数3】
【0034】
ここで、λは(任意選択される)チホノフ正則化の重み、Γは恒等行列、†はエルミート転置演算子である。
【0035】
実装によっては、例えば、非線形k空間軌道を用いて加速MRデータが収集されるような場合に、解析的な解法を採れないことがある。したがって、反復ソルバを用いて、前述したSENSEの式が解かれることがある。例えば、反復ソルバは、エイリアスのない画像の強度値の初期推定から始めて、エイリアスのないクリーンな画像に収束するまでSENSEの式を繰り返し解くことができる。
【0036】
概念的には、SENSE再構成は、マルチバンドMR画像に対する帯域分離器として働く。帯域分離器は、マルチバンド画像を取り込んで複数のシングルバンド画像に分離する。すなわち、SENSEは、受信コイルで受信された、複数の励起されたスライスからのMR信号に基づいて生成された1つのマルチバンド画像を入力として取り込み、コイル感度マップを用いて、MR信号が受信された励起スライスの各々についてコイルに結合した画像を決定したり、生成したりする。
【0037】
SENSEを用いて、SMSや面内パラレルイメージング等のパラレルイメージング技術により生成されたマルチバンド画像からシングルスライス画像を再構成することができる。図2は、SENSE再構成モジュール202の一例による処理を模式的に示しており、この処理によって理想的な出力が得られる。SENSE再構成モジュール202は、ROIを含むボリュームに対するマルチスライス-マルチコイル受信感度マップ204へのアクセスを備えている。ROIで3枚のスライスを同時励起することによって収集されたSMS画像が、入力画像206としてSENSE再構成モジュール202に入力される。入力画像206は、SMS-3X(すなわち、SMSマルチバンドファクタが3で収集された)マルチバンド画像である。この入力画像は、フェイズドアレイコイルの全受信チャネルから得られたマルチバンド画像から構成される。図2では、図示を明確にするために入力画像を1つだけ示している。SENSE再構成モジュール202は、入力画像206の3枚のスライスそれぞれに対応するコイル結合画像(すなわち、出力画像208a、208b、208c)を出力する。図示のように、入力画像がスライス1-3の画像の複合であったのに対し、出力画像は、スライス毎に分離されたスライス画像を含む。理想的な処理では、図2に示すように、各スライス画像は、当該スライスが発したMR信号のみから再構成された画像を含む。すなわち、図2に示す理想的な処理のシナリオでは、入力画像206はROIで各スライスにより与えられた四角形、三角形、円形の複合であるが、出力画像208a、208b、208cの各々は、四角形、三角形、円形のいずれか1つのみから成る。
【0038】
図2は、SENSE再構成モジュール202の理想的な出力のシナリオを模式的に示したものであるが、図3は、入力画像206のような入力画像でSENSE再構成モジュール202を用いた場合にしばしば実際に生じるものを模式的に示す。出力画像308a、308b、308cの各々は、特定のスライスから受信したMR信号に対応する画像を表す各形状(四角形、三角形、円形)に加えて、別のスライスからのMR信号の漏れによって生じるアーチファクト(例えば、アーチファクト310a、310b、310c、310d)を含む。図示のように、四角形の画像(308a)のアーチファクト310aは、三角形の画像(308b)からの信号漏れに起因し、三角形の画像(308b)のアーチファクト310bは、円形の画像(308c)からの信号漏れに起因し、円形の画像(308c)のアーチファクト310c及び310dは、三角形の画像(308b)及び四角形の画像(308a)からの信号漏れに起因する。
【0039】
理想的でないSENSE再構成は、少なくとも一部が、SENSE再構成モジュール202に与えられるコイル感度マップの不正確さに起因している。この不正確さによって、1つのスライスの一部の画素値が他のスライスに現れるスライス間漏れアーチファクトが生じる。
【0040】
スライス間漏れアーチファクトは、一貫性のない、著しく局在した非対称のシャープエッジとして現れる。図4は、マルチスライスEPI(画像402)と対比して、MBファクタ3(3x)のSMS処理を用いて収集された画像404のスライス間漏れアーチファクトの例を示す。スライス間漏れアーチファクトは、他の多くの種類のアーチファクトと比べて、MR画像内で検出することが難しい。この検出の難しさのレベルの違いの理由の少なくとも一部は、他のアーチファクトが、相対的に分散した外観及び規則的なパターンで現れるのに対し、スライス間アーチファクトは、著しく局在化した外観で現れることに起因している。図4に示すように、スライス間漏れアーチファクトは、病理学から切り離して識別することが難しい。図4に明示した破線の円内の領域に示すように、スライス間漏れアーチファクトは、MR画像内で大きなアーチファクトになり得る。SMSにおける漏れ信号は、放射線科医(或いは、MR画像を用いる他のユーザー又はオペレーター)によって病変、溢血、又は他の病理的特徴と誤読されることもある。
【0041】
SMSと面内加速イメージングとの組合せが用いられる場合、SMS-MRIデータ収集シーケンスによって得られたエイリアスのないMR画像に対して、SENSEの非エイリアシング行列が設定される。SENSEの非エイリアシング行列は、R=MB*Pが成り立つようなSMS加速係数MB及び面内縮小視野(Field Of View:FOV)の加速係数Pを含む全加速係数Rに設定される。SENSE再構成モジュール202は、マルチスライス-マルチコイル受信感度マップ204と、入力画像206とを入力として取り込む。コイル受信感度マップは、任意の既知の技術を用いて生成することができる。例えば、ある実装では、ROIにおけるあらゆるスライス、及び、あらゆる受信コイルについて、コイル受信感度マップが生成される。または、他の実装では、ROIにおける全てではなく一部の受信コイル及び/又はスライスについて、コイル感度マップが生成される。ある実装では、1つ以上の方法を用いてコイル感度が生成される。これらの方法は、Pruessmann K.P.,et al.,”SENSE:Sensitivity encoding for fast MRI”,Magnetic Resonance in Medicine,42:952-962,(1999)に記載されており、その全体が参照することにより本明細書に援用される。
【0042】
コイル感度マップが生成された後に、SENSEの非エイリアシング行列が複数のスライス位置について生成される。
【0043】
前述したように、SENSEは、SMS-MRI処理に対して有効であるが、受信コイル感度Cijを決定し得る精度によって限界がある。受信コイル感度Cijの誤差によって、スライス間漏れアーチファクトが生じる。本明細書に記載のDL法は、従来のスライス間漏れアーチファクト軽減法に対して、いくつかの利点をもたらす。従来法の例として、(1)スプリットスライス-GRAPPA、(2)ハンケル部分空間学習(Hankel Subspace Learning:HSL)を用いたSMS、(3)漏れマップ推定法、等がある。
【0044】
スライス-GRAPPAは、k空間ベースの方法であって、全コイルに及ぶ隣接k空間信号間の線形依存性を活用することによってSMS画像を再構成する方法である。GRAPPAカーネルは、シングルスライス較正画像上でトレーニングされる。その後、GRAPPAカーネルがSMSのk空間に適用されることで、分離されたスライス画像用のk空間データが生成される。これにより、スライス-GRAPPAカーネルは、当該スライスからの信号を通過させる唯一のものとなり、フィルターとして作用する。スプリットスライス-GRAPPAは、フィルターの阻止帯域を計算することによって当該スライス外の全てのスライスからの信号が抑制されるように、フィルターの概念を拡張する。これは、スプリットスライス-GRAPPAカーネルをトレーニングして他のスライスからの信号の寄与を最小にすることによって実現される。
【0045】
SMS-HSLは、3項(1項はデータ忠実度項)の非凸最適化問題としてSMS再構成を計算することによって、スプリットスライス-GRAPPAの概念を拡張する。データ忠実度項は、基準データと(低分解能の基準データが収集された位置での)再構成シングルスライスイメージングデータとの間の直接マグニチュード優先から成る。スライス漏れは、ハンケル空間において、収集されたSMSデータと、当該スライス以外のスライスからの全ての較正k空間データの合計との間のL2ノルムを最小にすることによって低減される。さらに、この最適化問題は、ハンケル空間において再構成されたシングルスライスデータに付加される低ランク拘束条件を含む。
【0046】
漏れマップ推定法では、スライス漏れマップが直接計測される。そして、計測された漏れマップを用いることで、スライス漏れを低減させるSENSE再構成で直接使用可能な微小漏れ行列が作成される。
【0047】
前述した従来法と比べて、本明細書に記載された方法は、いくつかの利点を有している。第1に、本明細書に記載された方法は、受信コイル感度(すなわち、Rxマップ)と主画像との不整合の元についての推定を要さない、又は、その推定に依存しない。推定したRxマップと実際のRxマップとの不整合は、歪みの相違、Rxマップの後処理の不足、その他の原因によって生じ得る。第2に、本明細書に記載された方法を用いることで、例えば、計測されたオフレゾナンスマップを用いて歪みマップを明確に推定する必要がなくなる。正確に言えば、ある実装では、DL-ANNが、入力されたRxマップを歪みが整合されたRxマップに変換する歪み変形を学習する。第3に、一部の従来法と異なり、漏れマップの明確な計測という難しい課題に取り組む必要がない。第4に、反復法と比べて、DL-ANNの初期のオフライントレーニングの後に、DL-ANNベースの解をより迅速に算出することができる。すなわち、いったんネットワークがトレーニングされれば、DL-ANNの1フォワードパスを用いて、画像を迅速に再構成することができる。この計算は、収束するまでに多くの反復を必要とする反復法よりもはるかに高速に行うことができる。第5に、DL-ANNは、アーチファクトの低減に加えて、画像のノイズ除去を同時に行うようにトレーニングすることができる。
【0048】
本明細書記載の方法は、SMSにおいてスライス間漏れアーチファクトを軽減する機械学習を用いることによって、前述した利点の少なくとも一部を実現する。十分なトレーニングデータがあれば、スライス間漏れアーチファクトの原因となる基礎的な確率分布に基づいて、Rxマップの関連する特徴に一致し、かつ当該特徴を補償するように、ニューラルネットワークをトレーニングすることができる。例えば、このことは、Rxマップを受信コイルに歪み整合させた後にSENSE再構成を行うことによって実現される。例えば、誤差逆伝播法を用いてネットワークをトレーニングすることで、目標画像(すなわち、アーチファクトを伴わずに生成された最も基準となる画像)に極力類似したSENSE画像を生成することができる。
【0049】
または、本明細書記載の方法は、残差ネットワーク(Residual Network:ResNet)を用いて、漏れを、エイリアスのない画像から直接除去可能な付加的残留として扱うことによって、スライス間漏れアーチファクトを軽減することができる。
【0050】
図5A及び5Bは、DL-ANNのネットワーク(以下、DLネットワーク)561をトレーニングして用いることによってSMS-MRI画像再構成を支援する方法500の非限定的な一例を示す(第1の例)。図5Aに示す方法500では、どのように元のコイル感度505(S)内の誤差を補正して補正コイル感度(S^)を生成するかを学習するためにDLネットワーク561が用いられる。方法500は、(1)オフライントレーニングのプロセス550及び(2)MRIイメージングのプロセス502の2つのプロセスを含む。プロセス550は、DLネットワーク561をトレーニングし、プロセス502は、トレーニングされたDLネットワーク561を用いてコイル感度505を補正し、最終的に、アーチファクトが軽減された高品質のMRI画像535を生成する。
【0051】
図5Bは、プロセス502におけるステップ510及び520の非限定的な一例を示す。後述する根とワークトレーニングのプロセス560でも同様のステップが実行されて、DLネットワーク561がトレーニングされる。後述するように、DLネットワーク561のトレーニングは、トレーニングデータセットからの入力データをDLネットワーク561に与え(ステップ510での(実装によってはステップ520でも)DLネットワーク561の用い方と同様)、その結果を、DLネットワーク561の加重係数を調整する反復プロセスで所望の出力(すなわち、トレーニングデータセットからの目標データ)と比較するという反復プロセスによって行うことができる。
【0052】
図5Bでは、DLネットワーク561は、畳み込み(conv)、バッチ正規化(Batch Normalization:BN)及び正規化線形ユニット(Rectified Linear Unit:ReLu)の一連のネットワークレイヤーを実行するCNNとして示されている。まず、ステップ510において、コイル感度505SiiがDLネットワーク561に与えられて補正コイル感度S^iiが生成され、ステップ520において、当該補正コイル感度S^を用いてSMSデータ507(x)にSENSE処理が施される。コイル感度505S^は、N個の受信コイルのそれぞれ毎に、対応するRxマップ(図5Bでは、Rxマップ1、Rxマップ2、・・・、RxマップNと示す)を含んでいる。SMSデータ507は、例えば、エイリアスのあるSMS画像である。
【0053】
DLネットワーク561は、プロセス560を用いてトレーニングされる。プロセス550では、損失関数を用いて、DLネットワーク561のパラメーターに対する調整や最適化が繰り返し行われる(例えば、DLネットワーク561のパラメーターとして、ネットワークレイヤーを接続する加重係数、レイヤー内のノードの活性化関数や活性化ポテンシャルがある)。ネットワークパラメーターの最適化が停止基準(例えば、損失関数の値が規定の閾値に収束したかどうかという停止基準)が満たされるまで継続されることで、トレーニングされたDLネットワーク561が生成される。
【0054】
損失関数は、目標データ553を、入力データ557、コイル感度505、及び最新版のDLネットワーク561を用いて取得された出力と比較する。例えば、この出力は、最新版のDLネットワーク561をコイル感度505に適用して補正コイル感度S^を生成し、次に、この補正コイル感度S^を用いてSENSE処理を実行することによって取得される。SENSE処理は、目標データ553と比較される出力を生成する。目標データ553は、SMSを用いずに収集された、コイルに結合したシングルスライス画像(y)でもよい。この画像は、SMSスライス画像y^で発生するスライス間漏れアーチファクトを発現しない。出力データと目標データとの差が最小になって、プロセス560の1つ以上の所定の停止基準が満たされるようになると、DLネットワーク561がトレーニングされる。トレーニングされたDLネットワーク561は保存されて、後にMRIイメージングのプロセス502で用いられる。
【0055】
ある実装において、損失関数は、以下の式(4)で与えられる。
【0056】
【数4】
【0057】
ここで、wはDLネットワーク561によって学習される重みのセットである。y^はSENSE処理を表し、y^=f(S^,x)が成り立つ。f(S^,x)、以下の式(5)で与えられる。
【0058】
【数5】
【0059】
また、補正コイル感度S^は、以下の式(6)で表される。
【0060】
【数6】
【0061】
ここで、g()はDL演算を表す。この実装によれば、ネットワークは、元のRxマップを実際のコイル感度に一致するように歪ませる重みを学習する。次に、これらの補正Rxマップを入力データとして、エイリアスのある入力SMS画像xとともに、SENSEの式に投入し、それによりスライス間漏れアーチファクトのないシングルスライス画像yに類似したSMS画像y^を作成する。
【0062】
ある実装では、修正された誤差逆伝播法を用いて、ネットワーク361がトレーニングされる。ここでは、SENSE処理により損失関数の勾配を算出することによって修正された誤差逆伝播法が実行される。
【0063】
目標データは、SMSスライス画像y^で通常見られるような、補正コイル感度S^が誤差を含むアーチファクトを含んでいない。そのため、目標画像yに一致する画像を作成するようなDLネットワーク561をトレーニングすることで、当該DLネットワーク561を用いて生成される補正コイル感度S^の誤差が減少する。このDLネットワーク561の効果は、エイリアスのあるSMS画像xにSENSEで補正コイル感度S^を適用した際に、スライス間漏れアーチファクトを生じることなく分離されたSMSスライス画像y^が生成されるように、Rxマップを歪み整合させることである。
【0064】
最良の結果を出すためには、大量のトレーニングデータのペアのデータセットを用いて、DLネットワーク561がトレーニングされる。トレーニングの各ペアは、入力画像(例えば、N個のコイルからのエイリアスのあるSMS画像x等)のセット、対応する目標画像(例えば、SMSを用いずに収集された、コイルに結合したシングルスライス画像y等)のセット、及び、コイル感度マップSを含む。トレーニングデータは、全体として、M個のトレーニングペアを含む。好適には、Mは大きい数である。
【0065】
次に、プロセス502のステップ530において、分離されたSMSスライス画像y^にアーチファクト補正が施される。ステップ530は、任意に選択されるステップであり、図7A及び7Bを参照して後述する。
【0066】
図6A及び6Bは、DLネットワーク562を用いてSMS-MRI画像再構成を実行する方法の非限定的な一例を示す(第2の例)。図6Bに示すように、DLネットワーク562は、第1のニューラルDLネットワーク562aと、第2のニューラルDLネットワーク562bとを含む。第1のニューラルDLネットワーク562aは、コイル感度505Sを補正する点で、DLネットワーク561に類似している。第2のニューラルDLネットワーク562bは、SENSE処理又はそれと等価な処理を実行する。例えば、SENSE処理は、完全接続フィードフォワードニューラルネットワークを用いて学習される。SENSEの代わりにニューラルネットワークを用いることで、勾配を直接算出することができる。また、従来の誤差逆伝播法をプロセス560で用いてDLネットワーク562をトレーニングすることができる。この実装の1つの課題は、ネットワークが、最適化すべき多数の重みを有するために、トレーニングのプロセス560の処理が遅くなることである。一方、この方法の利点は、第1のニューラルDLネットワーク562aと第2のニューラルDLネットワーク562bとが2つの入力(すなわち、コイル感度505SとSMSデータ507x)を有する1つのネットワークに結合されて、それによりステップ510と520とが1つのステップに効果的に結合されることである。すなわち、図6A、6Bに示す実装では、プロセス560は低速になるが、プロセス502は高速になる。プロセス560は一旦実行されると保存されるものであるのに対し、プロセス502は複数回(例えば、SMS-MRIスキャン毎に1回)繰り返されるものであるため、プロセス560の低速化は、プロセス502の高速化によって大きく相殺される。
【0067】
図7A及び7Bは、DLネットワーク563を用いてSMS-MRI画像再構成におけるアーチファクトを補正する方法500の実装の非限定的な一例を示す(第3の例)。ステップ520でSENSE処理が行われた後に、アーチファクトが発生したSMSスライス画像rがDLネットワーク563に与えられる。アーチファクトが発生したSMSスライス画像rをDLネットワーク563に与えた結果として、DLネットワーク563からの出力を用いて作成されるSMSスライス画像y^における(残留)アーチファクトが低減又は軽減される。図7Bでは、DLネットワーク563は、CNNとして示されている。また、図示のDLネットワーク563は、残留アーチファクトを含むアーチファクト画像を出力する。このアーチファクト画像は、アーチファクトが発生した画像rから差し引かれ、それによりアーチファクトが低減したSMSスライス画像535y^が作成される。
【0068】
図7Aに示すプロセス560では、ネットワークのトレーニングは、プロセス502でのDLネットワーク563の用い方と一致するように行われる。このことは、図5A及び6Aに示すプロセス560及び502の特定の実装においても同様に成り立つ。すなわち、各実装において、ネットワークをトレーニングするプロセス560は、当該特定の実装におけるプロセス502でのネットワークの用い方に特有のものである。図7Bにおいて、スライス間漏れアーチファクトは、DLネットワーク563を用いて推定される付加的なスプリアス信号として処理され、次に、そのスプリアス信号をSMSスライス画像rから差し引く(又は除去する)ことによって、取り除かれる。DLネットワーク561及び562のトレーニングとは対照的に、DLネットワーク563をトレーニングするために用いられるトレーニングデータの各ペアにおいて、入力データ557は、SMSスライス画像rのセットである。すなわち、前述したDLネットワーク561及び562とは異なり、各トレーニングペアiは、SENSEを用いて再構成されたエイリアスのないSMS画像rを入力データ557として含む。目標データ553は、先述のDLネットワーク561及び562において用いられたデータ(すなわち、SMSを用いずに収集されたシングルスライス画像y)と同じでもよい。
【0069】
図7A及び7Bに示すように、DLネットワーク563は、ResNetであり、このネットワークでは、スライス間漏れアーチファクトは画像の頂部に付加された残留アーチファクトとして扱われる。DLネットワーク563は、この残留アーチファクトを除去してスライス間漏れアーチファクトのない画像を作成するようにトレーニングされる。
【0070】
ある実装において、DLネットワーク563は、アーチファクトの低減に加えてノイズ除去も行う。例えば、ノイズ除去は、収集数(Number of AcQuisitions:NAQ)が多いシングルスライスの目標画像を目標データ553として用いることで行うことができる。多数の収集を平均化することによって、当該目標画像中のノイズが平均化され、アーチファクトと同様に差し引かれるスプリアス信号として付加ノイズを検出するようにDLネットワーク563をトレーニングすることができる。或いは、(又は、これに加えて)、入力データ中のノイズに対して目標データ553中のノイズを減少させるためのノイズ除去法を用いて、目標データ553のノイズ除去が行われてもよい。
【0071】
ノイズ除去方法の例として、線形平滑化フィルター、異方性拡散、非局所的手段(non-local means)、非線形フィルター等がある。線形平滑化フィルターは、原画像をローパスフィルター又は平滑化処理となるマスクで畳み込むことによってノイズを除去する。例えば、ガウスマスクはガウス関数によって決定される要素を含む。この畳み込みにより、各画素の値が近隣の画素の値とほぼ一致したものになる。異方性拡散は、熱伝導方程式に近似した平滑化部分微分方程式に基づいて画像を展開することによってシャープエッジを保ちながらノイズを除去する。メジアンフィルターは非線形フィルターの一例であり、適正に設計されると、非線形フィルターもまたエッジを保ちつつ、ぼけを防ぐことができる。メジアンフィルターはランク条件付きランク選択(Rank-Conditioned Rank-Selection:RCRS)フィルターの一例であり、これを用いて顕著なぼけアーチファクトが入ることなく画像からごま塩ノイズを取り除くことができる。さらに、画像形成された領域が次の仮定を支持する場合に、全変動(Total-Variation:TV)最小化正則化項を用いたフィルターを用いることもできる。すなわち、該領域が複数の広い範囲にわたって均一であり、その均一な範囲同士のシャープな境界によってそれら範囲が画定されるとの仮定である。TVフィルターは非線形フィルターの別の例である。また、非局所的手段フィルタリングは、画像内の類似のパッチに加重平均を用いることで、ノイズ除去された画素を判定する方法の例である。
【0072】
DLネットワーク563は、DLネットワーク561及び562に対して、いくつかの利点を有する。DLネットワーク563では、SENSE再構成を通じた損失関数の勾配の計算が必要でない。この理由は、SENSE処理が学習プロセスの一部ではないためである(例えば、エイリアスのないSMS画像rのネットワークへの付与は、ステップ520でSENSE処理が行われた後に行われる)。学習プロセスの単純化という観点でも、この学習プロセスは高速でかつ計算が煩瑣でない。さらに、DLネットワーク563は、内蔵する情報が前述したネットワークよりも少ない(例えば、DLネットワーク563は、コイルマップに関する情報を取り入れず、入力される、SENSEによって再構成されたSMS画像はコイルに結合している)。
【0073】
以下、DL-ANNネットワークのトレーニング(例えば、プロセス560)についてより詳細に説明する。この説明は、図7Aに示す非限定的な一例を用いて行う。図7Aにおいて、目標データ553は、SMSを用いずに収集されたシングルスライス画像yであり、入力データ557は、エイリアスのないSMS画像rである。一般的には、これに限られず、任意の目標データ553と入力データ557とを用いることができる。
【0074】
図8は、ネットワークトレーニングのプロセス560の一実装の流れ図を示す。プロセス560において、入力データ557と目標データ553とをトレーニングデータとして用いてDLネットワーク563がトレーニングされ、それにより、プロセス560のステップ640において、DLネットワーク563が出力される。一般に、入力データ557は、任意の欠陥発現画像又は画像であり、当該欠陥が、画像処理で影響を及ぼすようなあらゆる望ましくない特徴(例えば、ノイズ又はアーチファクト)となり得る画像でなる。同じように、目標データ553は、欠陥が減少したデータ、欠陥が最少のデータ、又は、最適化されたデータであり、入力データ557よりも欠陥が少ない画像(目標画像)である。オフラインのDLトレーニングのプロセス560は、対応する目標データ553と組み合わせられた多数の入力データ557を用いてDLネットワーク563をトレーニングすることで、入力データ557から目標データ553に類似した画像を作成するようにDLネットワーク563をトレーニングする。
【0075】
プロセス560では、トレーニングデータセットが取得され、DLネットワーク563が繰り返し更新されて誤差(例えば、損失関数によって得られる値)が低減される。DL-ANNネットワークが、トレーニングデータによって示されたマッピングを推定し、費用関数が、目標データ553と、DLネットワーク563の現在のインカーネーションを入力データ557に付与することによって生じた結果との不一致に関連する誤差値を算出する。例えば、ある実装において、費用関数は平均2乗誤差を用いて平均2乗誤差を最小にすることができる。多層パーセプトロン(MultiLayer Perceptrons:MLP)ニューラルネットワークの場合、誤差逆伝播法アルゴリズムを用いて、(確率的)勾配降下法を用いて平均2乗誤差ベースの費用関数を最小にすることによってネットワークをトレーニングすることができる。
【0076】
まず、プロセス560のステップ610において、DLネットワーク563の係数の最初の推定が行われる。例えば、この最初の推定は、撮像される領域についての先験的な知識又は1つ以上の例示的ノイズ除去法や、エッジ検出法、ブロブ検出法に基づいて行われる。さらに、最初の推定は、LeCun初期化、Xavier初期化、及びKaiming初期化のいずれかに基づくものでもよい。
【0077】
なお、プロセス560のステップ610~640は、DLネットワーク563のトレーニングの最適化方法の非限定的な一例を示している。
【0078】
誤差を算出(例えば、損失関数又は費用関数を用いて)することによって、最新版のDLネットワーク563を用いた後の、目標データ553(すなわち、グラウンドトルース)と入力データ557との差異の測定値(例えば、距離測度)が表される。誤差は、前述した費用関数等の、任意の既知の費用関数又は距離測度を用いて算出することができる。さらに、ある実装において、誤差関数や損失関数は、1つ以上のヒンジ損失と交差エントロピ損失を用いて算出することができる。
【0079】
さらに、損失関数を正則化法と組み合わせることで、ネットワークがトレーニングデータに示された特定のインスタンスに過剰適合することを避けることができる。正則化は、機械学習問題における過剰適合を防ぐのに役立つ。過剰に長くトレーニングされて、かつモデルが十分な表現力を有しているとすると、ネットワークは当該データセットに特有の、過剰適合と呼ばれる、アーチファクトを学習する。過剰適合した場合、DL-ANNは汎化の度合が下がり、データセット間でアーチファクトが変動するために、バリアンスが大きくなる。バイアスとバリアンスとの合計が最小になるときに、全誤差が最小になる。したがって、トレーニングデータ中のアーチファクトに特有の解ではなく、トレーニングされたネットワークが一般解を表す尤度を最大にする、可能な最も単純な方法でデータを説明する、極小に到達することが望ましい。この目標は、例えば、早期終了、重み正則化、lasso正則化、又はエラスティックネット型正則化により達成することができる。
【0080】
ある実装において、DLネットワーク563は、誤差逆伝播法を用いてトレーニングされる。誤差逆伝播法は、ニューラルネットワークのトレーニングに用いることが可能であり、傾斜降下最適化法と併せて用いられる。フォワードパスの間に、アルゴリズムにより現在のパラメーターθに基づくネットワークの予測値が算出される。これらの予測値は損失関数に入力され、これにより該予測値は対応するグラウンドトルースラベル(すなわち、目標データ553)と比較される。バックワードパスの間に、このモデルでは、現在のパラメーターに対する損失関数の勾配が算出され、その後、損失を最小化する方向に規定のサイズのステップが採られることによってパラメーターが更新される(例えば、ネステロフのモーメンタム法(Nesterov momentum)や種々の適応的方法等の加速法では、ステップサイズはより迅速に収束して損失関数を最適化するように選択される)。
【0081】
誤差逆伝播法を実行する最適化法として、傾斜降下、バッチ傾斜降下、確率的傾斜降下、及びミニバッチ確率的傾斜降下のうちの1つ以上が用いられる。さらに、この最適化法は、深層ネットワークにおいて確率的傾斜降下のより高速の収束率をもたらす、最適化法における1つ以上のモーメンタム更新技術を用いて加速することができる。前述したモーメンタム更新技術として、例えば、ネステロフのモーメンタム技術、Adagrad劣勾配法、Adagrad法のAdadelta又はRMSPropパラメーターの更新バリエーション等の適応法、及びAdam適応最適化技術がある。ヤコビ行列を更新ステップに組み込むことにより、この最適化法として2次の方法を用いることもできる。
【0082】
フォワードパスとバックワードパスとは、ネットワークの各レイヤーを通じて累進的に実行される。フォワードパスでは、入力データを第1レイヤーを通じて送ることによって実行が開始され、それにより次の層の出力活性(output activation)が作成される。このプロセスは、最終レイヤーの損失関数に到達するまで繰り返される。バックワードパスの間に、最終レイヤーはそれ自身の学習可能なパラメーターがある場合はそのパラメーターに対する勾配を算出し、同様に、前のレイヤーの上流デリバティブとなる、それ自身の入力に対する勾配を算出する。このプロセスは、インプットレイヤーに到達するまで繰り返される。
【0083】
図8に戻って、続いて、プロセス560のステップ620において、誤差の変化(例えば、誤差勾配)をネットワーク係数の変化の関数として算出され、この誤差の変化を用いて、次のDLネットワーク563の重みや係数の変化の方向及びステップサイズが選択される。このような誤差の勾配の算出は、傾斜降下最適化法の実装と一致する。別の実装では、当業者には理解されるように、このステップは省略されたり、他の最適化アルゴリズム(例えば、シミュレーテッドアニーリングアルゴリズム又は遺伝的アルゴリズムのような非傾斜降下最適化アルゴリズム)に基づく他のステップに置き換えられたりする。
【0084】
また、プロセス560のステップ620において、新たな係数のセットがDLネットワーク563に対して決定される。例えば、傾斜降下最適化法や過緩和加速法と同様に、ステップ620で算出された変化を用いて重みや係数を更新することができる。
【0085】
続いて、プロセス560のステップ630において、新しい誤差値がDLネットワーク563の更新された重み又は係数を用いて算出される。
【0086】
続いて、プロセス560のステップ640において、規定の停止基準を用いて、ネットワークのトレーニングが完了したかどうかが判定される。例えば、規定の停止基準によって、新しい誤差や実行された反復の総数が規定の値を超えているかどうかを評価することができる。例えば、この停止基準は、いずれかの新しい誤差が規定の閾値を下回った場合、又は、反復の最大数に達した場合に満たされる。停止基準が満たされないと、プロセス560で行われるトレーニングプロセスは、新しい重みと係数とを用いてステップ620に戻りかつステップ620を繰り返すことにより反復ループの開始点まで戻り続ける(反復ループはステップ620、630、640を含む)。停止基準が満たされると、プロセス560で行われるトレーニングプロセスは完了する。
【0087】
図9A及び9Bは、DLネットワーク563におけるレイヤー間の相互接続の種々の例を示す。DLネットワーク563は、完全接続層(fully connected layer)と、畳み込み層(convolution layer)と、プーリング層(pooling layer)とを含む(いずれも後述する)。DLネットワーク563のある好適な実装では、畳み込み層は、入力層に近接して配置され、一方、高度の推論を行う完全接続層は、損失関数の方向にアーキテクチャのさらに下方に配置される。プーリング層は、畳み込み層の後に挿入され、フィルターの空間広がりを狭めて学習可能なパラメーターの量を下げる縮小率を与える。活性化関数もまた各層に組み込まれて、それにより非線形性が導入されるとともに、ネットワークが複雑な予測関係を学習することが可能になる。活性化関数は、飽和活性化関数(例えば、S字状又は双曲正接活性化関数)、又は、正規化活性化関数(例えば、前述した第1の例及び第2の例で用いられたReLu)である。前述した第1の例及び第2の例で示したように、DLネットワーク563がBNを組み込むこともできる。
【0088】
図9Aに、N個の入力層と、K個の隠れ層と、3個の出力層とを備えた、一般的なANNの一例を示す。例えば、図9AのANNは完全接続ネットワークである。各層はノード(ニューロンとも呼ばれる)で構成され、各ノードは、入力の加重和を実行し、その加重和の結果を閾値と比べることで出力を生成する。ANNは関数のクラスを作成する。クラスのメンバーは、閾値、接続加重、又は、ノードの数及び/又はノードの接続性等のアーキテクチャの細部を変えることによって得られる。ANNのノードはニューロン(又はニューロンノード)と呼ばれる。ニューロンは、ANNシステムの異なる層間の相互接続部を有する。最も単純なANNは3つの層を有し、オートエンコーダーと呼ばれる。DLネットワーク563は3層より多いニューロンを有し、インプットニューロンと同数のアウトプットニューロンx を有することもできる。Nは再構成された画像の画素数である。シナプス(すなわち、ニューロン同士の接続部)は、計算時にデータを処理する、「重み」(互換的に「係数」又は「加重係数」とも呼ばれる)と呼ばれる値を保存する。ANNのアウトプットは3種のパラメーターに依存する。すなわち、(1)異なるニューロン層間の相互接続パターン、(2)相互接続の重みを更新する学習プロセス、(3)ニューロンの重み付きインプットをその出力活性に変換する活性化関数、である。
【0089】
数学的に、ニューロンのネットワーク関数m(x)は、他の関数n(x)の合成として定義され、該他の関数はさらに他の関数の合成として定義される。このことは、図9Aに示すように、矢印が変数間の依存性を示す、ネットワーク構造として好便に表すことができる。例えば、ANNは、非線形加重和を用いることもできる。ここで、m(x)=K(Σ(x))が成り立つ。また、K(通常、活性化関数と呼ばれる)は、双曲正接関数等の規定の関数である。
【0090】
図9Aでは、ニューロン(すなわち、ノード)は閾値関数を囲う円で示されている。図9Aに示す非限定的な一例において、入力は線形関数を囲う円で示されており、矢印はニューロン間の方向付き接続を表す。ある実装において、DLネットワーク563は、フィードフォワードネットワークである。
【0091】
図9Bは、DLネットワーク563がCNNである非限定的な一例を示す。CNNは、イメージプロセッシングに好適な性質を有する、ANNの種類であり、そのため画像のノイズ除去のアプリケーションに特別な関連がある。CNNは、ニューロン間の接続性パターンがイメージプロセッシングの畳み込みを表す、フィードフォワードANNを用いる。例えば、CNNは、受容野と呼ばれる入力画像の部分を処理する多層の微小ニューロン集合を用いることによって、イメージプロセッシングの最適化に用いられる。これら集合のアウトプットはオーバラップするように配置されて原画像のより良好な表示が得られるようにされる。この処理パターンは、畳み込み層とプーリング層とを交互に有する複数層にわたって繰り返される。
【0092】
畳み込み層の後に続いて、CNNは、畳み込み層内のニューロンクラスターの出力同士を結合する、局所的なプーリング層や広域のプーリング層を有する。さらに、ある実装において、CNNは、各層の終端又はその後に付与される点別の非線形性を備えた、畳み込み層と完全接続層との種々の結合を含む。
【0093】
CNNはイメージプロセッシングにおいていくつかの利点を有する。自由パラメーターの数を減らして汎化を向上するために、入力画像中の小領域に対して畳み込み演算を導入する。CNNの実装の顕著な利点として、複数の畳み込み層での共通加重の利用がある。つまり、同一のフィルター(加重勾配)を層内の各画素の係数として用いる。この2つにより、メモリのフットプリントが減少し、性能が向上する。他の画像処理方法と比べて、CNNは、相対的に小さい前処理を好便に利用する。つまり、このネットワークは、従来のアルゴリズムではマニュアル設計であったフィルターの学習に寄与するものである。特徴設計における従来知識と人的努力への依存度が小さいことがCNNの主な利点である。
【0094】
図10は、MRIシステム(MRI装置)100の非限定的な一例を示す。図10に示すMRIシステム100は、ガントリー101(模式的断面で示す)と、ガントリーに接続された種々の関連のシステム要素103とを含む。一般的には、少なくともガントリー101は、シールドルームに設置される。図10に示すMRIシステムの配置は、静磁場B磁石111と、Gx、Gy、Gz傾斜磁場コイルセット113と、全身RFコイル(Whole-Body RF Coil:WBC)115との実質的に同軸の筒状構成を含む。この筒状の要素アレイの水平軸に沿って、イメージングボリューム117が患者テーブル120に支持された患者119の頭部を実質的に取り巻いて示されている。
【0095】
イメージングボリューム117内には、1つ以上の小型アレイRFコイル121を患者の頭部(本明細書では、例えば「スキャン対象」又は「対象」と呼ぶ)により近接して接続することもできる。当業者には明らかなように、表面コイル等の、WBCと比べて相対的に小型のコイルやアレイが特定の身体部分(例えば、腕、肩、肘、手首、膝、脚、胸、背骨他)に応じてしばしば設けられる。これらの小型RFコイルを、本明細書ではアレイコイル(Array Coil:AC)又は位相配列コイル(Phased-Array Coil:PAC)と呼ぶ。これらのコイルは、RF信号をイメージングボリューム内に送信するように構成された少なくとも1つのコイルと、イメージングボリューム内の、患者の頭部等の検査対象からのRF信号を受信するように構成された複数の受信コイルを含み得る。
【0096】
MRIシステム100は、ディスプレイ124と、キーボード126と、プリンター128とに接続された、入力ポートや出力ポートを備えた、MRIシステムコントローラ130を含む。言うまでもなく、ディスプレイ124は、制御入力部ともなるタッチスクリーン型のものでもよい。マウスその他の入出力装置が備えられていてもよい。
【0097】
MRIシステムコントローラ130は、MRIシーケンスコントローラ140に接続されており、これによりGx、Gy、Gz傾斜磁場コイルドライバ132と、RF送信器134と、送受信スイッチ136(同じRFコイルが送信と受信とに用いられた場合)とをさらに制御する。MRIシーケンスコントローラ140は、パラレルイメージング等のMRIイメージング(核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)イメージングとして周知の)技術の実装に適したプログラムコード構造138を含む。MRIシーケンスコントローラ140は、パラレルイメージングを伴うもしくは伴わないMRIイメージングに対応して構成される。さらに、MRIシーケンスコントローラ140は、1つ以上の予備スキャン(プリスキャン)シーケンスと、主スキャン磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)画像(診断画像と呼ばれる)を収集するスキャンシーケンスとを容易に行わせることができる。例えば、プリスキャンからのMRデータを用いて、WBCコイル115や小型アレイRFコイル121についての感度マップ(コイル感度マップ又は空間的感度マップと呼ばれることもある)を決定するとともに、パラレルイメージングのための展開マップを決定する。
【0098】
システム要素103は、RF受信器141を含む。RF受信器141は、MRIデータプロセッサ142に入力データを供給して、処理画像データが生成されるようにする。処理画像データは、ディスプレイ124に送られる。また、MRIデータプロセッサ142は、これまでに生成したMRデータや、画像、例えば、コイル感度マップや、パラレル画像展開マップ、歪みマップ等のマップ、システム構成パラメーター146、MRI画像再構成用のプログラムコード構造144、及び、DL-ANNトレーニング及びDL-ANNを用いたSMS-MRI処理用のプログラムコード構造150にアクセスするように構成されている。
【0099】
ある実装では、MRIデータプロセッサ142は、処理回路を含む。処理回路は、特定用途向け集積回路(Application-Specific Integrated Circuit:ASIC)、構成可能な論理デバイス(例えば、シンプルプログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、結合プログラム可能論理回路(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等のデバイス)、及び、上述した機能を有するように構成された他の回路要素を含む。
【0100】
MRIデータプロセッサ142は、プログラムコード構造144及び150に含まれた1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行する。あるいは、この命令は、ハードディスク又はリムーバブルメディアドライブ等の他のコンピュータ読取可能な媒体から読み取られる。多重処理構成における1つ以上のプロセッサを用いて、プログラムコード構造144及び150に含まれた命令のシーケンスを実行することもできる。別の実施形態では、配線接続の回路がソフトウェア命令の代わりに又はそれと組み合わせて用いられる。したがって、本開示の実施形態は、ハードウェア回路とソフトウェアとのいかなる特定の組合せにも限定されない。
【0101】
さらに、本明細書で用いる用語「コンピュータ読取可能媒体」は、MRIデータプロセッサ142に命令を供給して実行させることに関与する全ての非一時的な媒体を指す。コンピュータ読取可能媒体は、限定はしないが、不揮発媒体や揮発媒体等の、多くの形をとり得る。不揮発媒体の例として、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、及びリムーバブルメディアドライブ等がある。揮発媒体の例としてダイナミックメモリ等がある。
【0102】
図10では、MRIシステム100におけるプログラムコード構造150が格納されたプログラム格納部(メモリ)を一般化して図示している。プログラム格納部では、プログラムコード構造150が、MRIシステム100の種々のデータ処理要素からアクセス可能な、非一時的なコンピュータ読取可能媒体に保存される。当業者には明らかなように、(共通のプログラム格納部がMRIシステムコントローラ130に直接接続されるのではなく、)プログラム格納部を分割して、それらの少なくとも一部が、システム要素103に含まれる複数のコンピュータのうち通常動作において最も直近にプログラムコード構造を必要とするコンピュータに接続されるようにしてもよい。
【0103】
そして、図10に示すMRIシステム100を用いて、上述した実施形態を実施することができる。システム要素は、異なる「ボックス」の論理的集合に分割可能であって、一般に多数のデジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor:DSP)、マイクロプロセッサ、及び特殊用途処理回路(例えば、高速アナログ-デジタル(Analog-to-Digital:A/D)変換、高速フーリエ変換、アレイ処理他用の回路)を含む。これらの各プロセッサは、一般にクロック式の「状態機械」であって、物理データの処理回路が、各クロックサイクル(又は所定数のクロックサイクル)の発生に応じてある物理状態から別の状態に進むようになっている。
【0104】
さらに、処理回路(例えば、CPU(Central Processing Unit)、レジスター、バッファ、演算装置他)の物理状態が、動作の過程であるクロックサイクルから別のクロックサイクルに徐々に変化するだけでなく、関連のデータ記憶媒体(例えば、磁気記憶媒体におけるビット格納サイト)の物理状態が、当該システムの動作時にある状態から別の状態に変化する。例えば、画像再構成プロセスや画像再構成マップ(例えば、コイル感度マップ、展開マップ、ゴーストマップ、歪みマップ他)生成プロセスの終わりに、物理的記憶媒体におけるコンピュータ読取可能でアクセス可能なデータ値格納サイトのアレイが以前の状態から新しい状態に変形される。新しい状態では、前述したアレイの物理的サイトにおける物理状態が最小値と最大値との間で変化して、それにより実際の物理事象と状態とが表される。当業者には明らかなように、前述した記憶データ値のアレイは物理的構造を表しかつ構成する。これは、コンピュータ制御プログラムコードのある特定の構造であって、命令レジスターに順次ロードされてMRIシステム100の1つ以上のCPUに実行されると、ある特定の動作状態のシーケンスを生じさせてMRIシステム100内を通って遷移させる構造と同様である。
【0105】
例えば、MRIシーケンスコントローラ140の処理回路が、第1の取得部として、複数の受信コイルで受信されたRF信号を表すSMS-MRIデータを取得する。また、MRIシーケンスコントローラ140の処理回路が、第2の取得部として、複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を取得する。また、MRIデータプロセッサ142の処理回路が、第3の取得部として、エイリアスのないSMS画像中のアーチファクトを軽減させるようにトレーニングされたニューラルネットワークを取得する。また、MRIデータプロセッサ142の処理回路が、生成部として、ニューラルネットワークを用いて、SMS-MRIデータ及び受信コイル感度に基づくSENSE処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する。
【0106】
例えば、ニューラルネットワークは、複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を入力し、当該受信コイル感度における誤差を補正した補正コイル感度を出力するものであり、MRIデータプロセッサ142の処理回路は、生成部として、第2の取得部によって取得された受信コイル感度を前記ニューラルネットワークに入力することによって当該ニューラルネットワークから出力される補正コイル感度を用いて前記SENSE処理を実行することで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する。
【0107】
また、例えば、ニューラルネットワークは、複数の受信コイルに対応する受信コイル感度を入力し、当該受信コイル感度における誤差を補正した補正コイル感度を出力する第1のニューラルネットワークと、当該第1のニューラルネットワークから出力される補正コイル感度を用いて前記SENSE処理を実行することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を出力する第2のニューラルネットワークとを含み、MRIデータプロセッサ142の処理回路は、生成部として、取得された受信コイル感度を第1のニューラルネットワークに入力することによって第2のニューラルネットワークから出力されるSMS画像を取得することで、アーチファクトが軽減されたエイリアスのないSMS画像を生成する。
【0108】
また、例えば、ニューラルネットワークは、エイリアスのないSMS画像を入力し、当該SMS画像中のアーチファクトを含むアーチファクト画像を出力するものであり、MRIデータプロセッサ142の処理回路は、生成部として、SENSE処理を実行することによって得られたエイリアスのないSMS画像をニューラルネットワークに入力することによって当該ニューラルネットワークから出力されるアーチファクト画像を、当該エイリアスのないSMS画像から差し引くことで、前記アーチファクトが軽減されたエイリアスの無いSMS画像を生成する。
【0109】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、SMSデータからスライス画像を再構成するSENSEにおいて、推定されたコイル感度と実際のコイル感度との相違によって生じるアーチファクトを低減させることができる。
【0110】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0111】
100 MRIシステム
140 MRIシーケンスコントローラ
142 MRIデータプロセッサ
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10