(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】フィルム状接着剤及びダイシングダイボンディングシート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20240415BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240415BHJP
C09J 163/04 20060101ALI20240415BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240415BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J133/00
C09J163/04
H01L21/78 M
H01L21/52 E
(21)【出願番号】P 2020048262
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑耶
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】石井 祐太郎
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145979(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180594(WO,A1)
【文献】特開2011-006687(JP,A)
【文献】特開2002-265906(JP,A)
【文献】特開2016-96305(JP,A)
【文献】国際公開第2008/126718(WO,A1)
【文献】特開2019-90031(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022062(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0068061(US,A1)
【文献】特開2009-67931(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046529(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/021450(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
H01L 21/52
H01L 21/58
H01L 21/78- 21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性のフィルム状接着剤であって、
複数枚の前記フィルム状接着剤の積層物であり、厚さが200μmである第1試験片について、JIS K7128-3に準拠して、前記第1試験片をつかんで固定する一対のつかみ具間の距離を60mmとし、引裂速度を200mm/minとして、直角形引裂法により引裂試験を行い、前記第1試験片の引裂強さが最大値T
maxを示す場合の、前記第1試験片の引裂方向における変位量をD1とし、前記変位量が0.6D1である場合の前記引裂強さをT1としたとき、下記式:
ΔT=(T1/0.6)-T
max
により算出されるΔTの絶対値が10N/mm以下であ
り、
前記フィルム状接着剤は、アクリル樹脂及びo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を含有し、
前記アクリル樹脂のガラス転移温度は、-60~70℃であり、
前記アクリル樹脂の含有量の割合は、フィルム状接着剤の総質量に対して、5~40質量%である、フィルム状接着剤。
【請求項2】
さらに、o-クレゾールノボラック樹脂を含有する、請求項1に記載のフィルム状接着剤。
【請求項3】
充填材を含有しない、請求項1又は2に記載のフィルム状接着剤。
【請求項4】
大きさが2mm×2mmで厚さが20μmである前記フィルム状接着剤の硬化物と、前記硬化物の一方の面の全面に設けられた、厚さが500μmである銅板と、前記硬化物の他方の面の全面に設けられた、厚さが350μmであるシリコンチップと、を備えており、前記硬化物の側面と前記シリコンチップの側面が位置合わせされて構成された第2試験片を作製し、前記銅板を固定した状態で、前記第2試験片中の前記硬化物の側面と前記シリコンチップの側面の位置合わせされた部位に対して、同時に、前記硬化物の一方の面に対して平行な方向に、200μm/secの速度で力を加えたとき、前記硬化物が破壊されるか、前記硬化物が前記銅板から剥離するか、又は、前記硬化物が前記シリコンチップから剥離する、までに加えられた前記力の最大値が、100N/2mm□以上である、請求項1
~3のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項5】
前記引裂試験を行ったとき、前記第1試験片の引裂強さが最大となってから、前記第1試験片が破断するまでの、前記第1試験片の引裂方向における変位量が15mm以下である、請求項1
~4のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤。
【請求項6】
支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられたフィルム状接着剤と、を備え、
前記フィルム状接着剤が、請求項1~
5のいずれか一項に記載のフィルム状接着剤である、ダイシングダイボンディングシート。
【請求項7】
前記支持シートが基材のみからなる、請求項
6に記載のダイシングダイボンディングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム状接着剤及びダイシングダイボンディングシートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップは、通常、その裏面に設けられたフィルム状接着剤(「ダイボンディングフィルム」と称されることもある)によって、基板の回路形成面にダイボンディングされる。その後、必要に応じてこの半導体チップにさらに半導体チップを1個以上積層して、ワイヤボンディングを行った後、得られたもの全体を樹脂により封止することで、半導体パッケージが作製される。そして、この半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置が作製される。
【0003】
裏面にフィルム状接着剤を備えた半導体チップは、例えば、裏面にフィルム状接着剤を備えた半導体ウエハを分割するとともに、フィルム状接着剤も切断することによって作製される。このように半導体ウエハを半導体チップへと分割する方法としては、例えば、ダイシングブレードを用いて、半導体ウエハをフィルム状接着剤ごとダイシングする方法が広く利用されている。この場合、切断前のフィルム状接着剤は、ダイシング時に半導体ウエハを固定するために使用される支持シート(「ダイシングシート」と称されることもある)に積層されて一体化された、ダイシングダイボンディングシートとして使用される。
ダイシング終了後、裏面に切断後のフィルム状接着剤を備えた半導体チップ(フィルム状接着剤付き半導体チップ)は、支持シートから引き離されてピックアップされる。
【0004】
ピックアップ時には、フィルム状接着剤が半導体チップとともに支持シートから良好に引き離せることが必要となる。例えば、フィルム状接着剤の支持シートへの接着力が強すぎると、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップが困難となり、フィルム状接着剤が半導体チップから剥がれて支持シート上に残存してしまう。このようなフィルム状接着剤の残存頻度が高いと、工程トラブルを引き起こすだけでなく、半導体装置の製造コストも上昇してしまう。
【0005】
これに対して、基材層、粘着層、接着層(前記フィルム状接着剤に相当する)が順次積層された構成からなり、電子線、紫外線又は可視光線の照射前後における粘着層の破断伸び率が特定範囲に調節された、ダイシング・ダイボンディング一体型テープ(前記ダイシングダイボンディングシートに相当する)が開示されている(特許文献1参照)。このダイシング・ダイボンディング一体型テープを用いることにより、半導体チップに対して、ピックアップ時に加える力を小さくしても、良好にフィルム状接着剤付き半導体チップをピックアップできる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、引用文献1に記載のダイシングダイボンディングシート(ダイシング・ダイボンディング一体型テープ)は、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップ適性を向上させるために、支持シートとして、フィルム状接着剤と直接接触させるための粘着剤層を備えたものの使用が必須となり、支持シートの選択肢が限定されてしまう。
【0008】
本発明は、支持シートと積層することによって、ダイシングダイボンディングシートを構成可能であり、フィルム状接着剤と直接接触させるための粘着剤層を備えた支持シートを必須とせずとも、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップ時に、支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存を抑制できるフィルム状接着剤と、前記フィルム状接着剤を備えたダイシングダイボンディングシートと、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、硬化性のフィルム状接着剤であって、複数枚の前記フィルム状接着剤の積層物であり、厚さが200μmである第1試験片について、JIS K7128-3に準拠して、前記第1試験片をつかんで固定する一対のつかみ具間の距離を60mmとし、引裂速度を200mm/minとして、直角形引裂法により引裂試験を行い、前記第1試験片の引裂強さが最大値Tmaxを示す場合の、前記第1試験片の引裂方向における変位量をD1とし、前記変位量が0.6D1である場合の前記引裂強さをT1としたとき、下記式:
ΔT=(T1/0.6)-Tmax
により算出されるΔTの絶対値が10N/mm以下である、フィルム状接着剤を提供する。
本発明のフィルム状接着剤においては、大きさが2mm×2mmで厚さが20μmである前記フィルム状接着剤の硬化物と、前記硬化物の一方の面の全面に設けられた、厚さが500μmである銅板と、前記硬化物の他方の面の全面に設けられた、厚さが350μmであるシリコンチップと、を備えており、前記硬化物の側面と前記シリコンチップの側面が位置合わせされて構成された第2試験片を作製し、前記銅板を固定した状態で、前記第2試験片中の前記硬化物の側面と前記シリコンチップの側面の位置合わせされた部位に対して、同時に、前記硬化物の一方の面に対して平行な方向に、200μm/secの速度で力を加えたとき、前記硬化物が破壊されるか、前記硬化物が前記銅板から剥離するか、又は、前記硬化物が前記シリコンチップから剥離する、までに加えられた前記力の最大値が、100N/2mm□以上であることが好ましい。
本発明のフィルム状接着剤においては、前記引裂試験を行ったとき、前記第1試験片の引裂強さが最大となってから、前記第1試験片が破断するまでの、前記第1試験片の引裂方向における変位量が15mm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明は、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられたフィルム状接着剤と、を備え、前記フィルム状接着剤が、上述の本発明のフィルム状接着剤である、ダイシングダイボンディングシートを提供する。
本発明のダイシングダイボンディングシートにおいては、前記支持シートが基材のみからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、支持シートと積層することによって、ダイシングダイボンディングシートを構成可能であり、フィルム状接着剤と直接接触させるための粘着剤層を備えた支持シートを必須とせずとも、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップ時に、支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存を抑制できるフィルム状接着剤と、前記フィルム状接着剤を備えたダイシングダイボンディングシートと、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤を用いて作製した第1試験片を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤の硬化物の接着力の測定方法を模式的に説明するための断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤の一例を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンディングシートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンディングシートの他の例を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンディングシートを用いた場合の、半導体装置の製造方法の一例を、模式的に説明するための断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤を用いた場合の、半導体装置の製造方法の一例を、模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◇フィルム状接着剤
本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤は、硬化性のフィルム状接着剤であって、複数枚の前記フィルム状接着剤の積層物であり、厚さが200μmである第1試験片について、JIS K7128-3に準拠して、前記第1試験片をつかんで固定する一対のつかみ具間の距離を60mmとし、引裂速度を200mm/minとして、直角形引裂法により引裂試験を行い、前記第1試験片の引裂強さが最大値Tmaxを示す場合の、前記第1試験片の引裂方向における変位量をD1とし、前記変位量が0.6D1である場合の前記引裂強さをT1としたとき、下記式:
ΔT=(T1/0.6)-Tmax
により算出されるΔTの絶対値が10N/mm以下である。
【0014】
本実施形態のフィルム状接着剤は、支持シート又はダイシングシートと積層することによって、ダイシングダイボンディングシートを構成できる。
また、本実施形態のフィルム状接着剤は、このような引裂特性を有することにより、フィルム状接着剤と直接接触させるための粘着剤層を備えた支持シート又はダイシングシートを用いなくても、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップ時に、支持シート又はダイシングシートにおけるフィルム状接着剤の残存を抑制できる。そして、これにより、工程トラブルの発生を抑制でき、半導体装置の製造コストも低減できる。
【0015】
本実施形態のフィルム状接着剤は硬化性を有し、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであってもよく、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していてもよい。前記フィルム状接着剤が熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有する場合、その硬化に対して、熱硬化の寄与が、エネルギー線硬化の寄与よりも大きい場合には、前記フィルム状接着剤を熱硬化性のものとして取り扱う。反対に、その硬化に対して、エネルギー線硬化の寄与が、熱硬化の寄与よりも大きい場合には、前記フィルム状接着剤をエネルギー線硬化性のものとして取り扱う。例えば、フィルム状接着剤に対してエネルギー線を照射せずに、フィルム状接着剤を加熱することによって、フィルム状接着剤を硬化させる場合には、このフィルム状接着剤は熱硬化性のものとして取り扱う。
【0016】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。エネルギー線の例としては、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0017】
前記フィルム状接着剤は、熱硬化性を有する場合には、感圧接着性を有することが好ましい。熱硬化性及び感圧接着性をともに有するフィルム状接着剤は、未硬化状態では各種被着体に軽く押圧することで貼付できる。また、フィルム状接着剤は、加熱して軟化させることで各種被着体に貼付できるものであってもよい。フィルム状接着剤は、硬化によって最終的には耐衝撃性が高い硬化物となり、この硬化物は、厳しい高温・高湿度条件下においても十分な接着特性を保持し得る。
【0018】
前記フィルム状接着剤の硬化物の実使用時において、フィルム状接着剤を硬化させて硬化物を形成するときの硬化条件は、前記硬化物の硬化度が十分に高くなる限り、特に限定されず、フィルム状接着剤の種類に応じて、適宜選択すればよい。
熱硬化性フィルム状接着剤の熱硬化時の加熱温度は、100~200℃であることが好ましく、例えば、125~185℃、及び150~170℃のいずれかであってもよい。そして、前記熱硬化時の加熱時間は、0.5~5時間であることが好ましく、例えば、0.5~4時間、及び0.5~3時間のいずれかであってもよい。
エネルギー線硬化性フィルム状接着剤のエネルギー線硬化時における、エネルギー線の照度は、60~320mW/cm2であることが好ましい。そして、前記エネルギー線硬化時における、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cm2であることが好ましい。
【0019】
<<ΔT>>
本実施形態のフィルム状接着剤は、以下に示すΔT(N/mm)が特定範囲であることで、上述の支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存抑制効果が高くなる。
前記ΔTの算出対象である前記第1試験片は、例えば、厚さが200μm未満である本実施形態の複数枚のフィルム状接着剤を用い、これらを積層して、合計の厚さが200μmである積層シートを作製した後、JIS K7128-3に準拠して引裂強さを測定できるように、この積層シートを規定された形状及びサイズに切断することによって、作製できる。
第1試験片の平面図を、そのサイズとともに
図1に示す。
図1中の第1試験片99において、長さを示す数値の単位は、「mm」である。
【0020】
前記ΔTは、以下に示す方法で算出できる。
すなわち、前記第1試験片について、JIS K7128-3に準拠して、前記第1試験片をつかんで固定する一対のつかみ具間の距離を60mmとし、引裂速度を200mm/minとして、直角形引裂法により引裂試験を行い、前記第1試験片の引裂強さが最大値Tmaxを示す場合の、前記第1試験片の引裂方向における変位量をD1とし、前記変位量が0.6D1である場合の前記引裂強さをT1としたとき、下記式:
ΔT=(T1/0.6)-Tmax
により算出される。
【0021】
第1試験片及び前記積層シートを構成する複数枚の前記フィルム状接着剤の厚さは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。ただし、第1試験片及び前記積層シートをより容易に作製できる点では、複数枚の前記フィルム状接着剤の厚さは、すべて同一であることが好ましい。
【0022】
第1試験片及び前記積層シートを構成する前記フィルム状接着剤の枚数は、2枚以上であれば、特に限定されず、それぞれのフィルム状接着剤の厚さに応じて、任意に選択できる。
例えば、複数枚の前記フィルム状接着剤の厚さをすべて同一とする場合には、1枚のフィルム状接着剤の作製がより容易である点も考慮すると、厚さが20μmである10枚のフィルム状接着剤を用いることで、第1試験片及び前記積層シートをより容易に作製できる。ただし、これは一例であり、用いるフィルム状接着剤の枚数と厚さは、これに限定されない。
【0023】
第1試験片に対して行う前記「直角形引裂法」は、JIS K7128-3で規定されている「プラスチック-フィルム及びシートの引裂強さ試験方法、第3部:直角形引裂法」である。
第1試験片をつかみ具によってつかんで固定するときに、一対のつかみ具間の距離を60mmとする、ということは、引裂試験を行ったときに、第1試験片の引裂方向において、第1試験片の伸長し得る部分の長さが、引裂試験を行う前の段階で60mmであることを意味し、この長さは、第1試験片の引裂試験の対象部分の長さである。
【0024】
一方の座標軸(縦軸)として第1試験片の引裂強さTをとり、前記一方の座標軸に直交する他方の座標軸(横軸)として第1試験片の引裂方向における変位量Dをとることにより、T-D平面を考える。
前記式中の「T1/0.6」は、前記T-D平面において、原点(0,0)と座標(0.6D1,T1)の2点を通る直線:
T=(T1/0.6D1)D
において、D=D1であるときのTの値である。
前記T-D平面において、第1試験片のT及びDをプロットすることにより、曲線が得られる。この曲線が、Tが増大する方向に対して凸状の形状を有する場合には、下記式:
T1/0.6>Tmax
すなわち、(T1/0.6)-Tmax>0の関係が成り立ち、これとは反対に、Tが減少する方向に対して凸状の形状を有する場合には、下記式:
T1/0.6<Tmax
すなわち、(T1/0.6)-Tmax<0の関係が成り立つ。
本実施形態のフィルム状接着剤においては、前記曲線の形状がいずれの場合であっても、「T1/0.6」と「Tmax」との差が10N/mm以下、すなわち、ΔTの絶対値(|ΔT|)が10N/mm以下である(-10N/mm≦ΔT≦10N/mmである)。このような条件を満たすことにより、上述の支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存抑制効果が高い。
【0025】
|ΔT|は、上述の効果がさらに高くなる点では、例えば、7N/mm以下、5N/mm以下、及び3N/mm以下のいずれかであってもよい。
【0026】
|ΔT|の下限値は特に限定されない。例えば、|ΔT|が1N/mm以上となる前記フィルム状接着剤は、より容易に製造できる。
【0027】
|ΔT|は、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内の、いずれかであってよい。例えば、一実施形態において、|ΔT|は、1~10N/mm以下であることが好ましく、例えば、1~7N/mm、1~5N/mm、及び1~3N/mmのいずれかであってもよい。ただし、これらは|ΔT|の一例である。
【0028】
|ΔT|は、フィルム状接着剤の含有成分の種類又は量等を調節することで、調節できる。例えば、フィルム状接着剤の、常温で固形の成分、架橋剤等の種類又は量等を調節することで、|ΔT|を幅広い範囲で調節できる。熱硬化性フィルム状接着剤の場合には、後述する重合体成分(a)、常温で固形のエポキシ樹脂(b1)、架橋剤(f)等の種類又は量等を調節することで、|ΔT|を幅広い範囲で調節できる。
【0029】
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0030】
<<フィルム状接着剤の硬化物の接着力>>
本実施形態のフィルム状接着剤を用いて作製されたフィルム状接着剤付き半導体チップは、その中のフィルム状接着剤によって、基板の回路形成面に接着(ダイボンディング)される。さらに、フィルム状接着剤は、最終的にエネルギー線の照射によって硬化される。
したがって、前記フィルム状接着剤の硬化物は、その接着対象物に対して、十分な接着力を有することが求められる。
【0031】
前記フィルム状接着剤の硬化物の接着力の程度は、例えば、大きさが2mm×2mmで厚さが20μmである前記フィルム状接着剤の硬化物と、前記硬化物の一方の面の全面に設けられた、厚さが500μmである銅板と、前記硬化物の他方の面の全面に設けられた、厚さが350μmであるシリコンチップと、を備えており、前記硬化物の側面と前記シリコンチップの側面が位置合わせされて構成された第2試験片を作製し、前記銅板を固定した状態で、前記第2試験片中の前記硬化物の側面と前記シリコンチップの側面の位置合わせされた部位に対して、同時に、前記硬化物の一方の面に対して平行な方向に、200μm/secの速度で力を加えたとき、前記硬化物が破壊されるか、前記硬化物が前記銅板から剥離するか、又は、前記硬化物が前記シリコンチップから剥離する、までに加えられた前記力(すなわち接着力)の最大値、を指標とすることで、判断できる。
前記第2試験片において、前記硬化物と前記シリコンチップは、厚さ以外のサイズが互いに同じであってもよく、さらに、互いのすべての側面が位置合わせされていてもよい。このような第2試験片は、実施例で後述するように、作製が容易である。
【0032】
図2は、前記フィルム状接着剤の硬化物の前記接着力の測定方法を模式的に説明するための断面図である。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
また、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0033】
前記接着力の測定時には、第2試験片9を作製する。
第2試験片9は、フィルム状接着剤の硬化物90と、前記硬化物90の一方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)90bの全面に設けられた銅板91と、前記硬化物90の他方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)90aの全面に設けられたシリコンチップ92と、を備えて構成されている。
【0034】
フィルム状接着剤の硬化物90は、本実施形態のフィルム状接着剤の硬化物である。
前記硬化物90の前記第1面90a及び第2面90bの平面形状は矩形(正方形)である。
前記硬化物90の大きさ(前記第1面90a及び第2面90bの大きさ)は2mm×2mmであり、前記硬化物90の厚さは20μmである。
【0035】
銅板91の厚さは500μmであり、シリコンチップ92の厚さは350μmである。
【0036】
第2試験片9において、フィルム状接着剤の硬化物90の側面90cと、シリコンチップ92の側面92cとは、位置合わせされており、例えば、この断面では、フィルム状接着剤90の第1面90a又は第2面90bに対して平行な方向において、フィルム状接着剤90の側面90cの位置と、シリコンチップ92の側面92cの位置とは、一致している。
【0037】
シリコンチップ92の側面92cにおいては、少なくともフィルム状接着剤の硬化物90の側面90cと位置合わせされている部位が平面であることが好ましい。
シリコンチップ92の、前記硬化物90との接触面の大きさは、前記硬化物90の第1面90aの大きさに対して、同等以上であればよく、同じであってもよい。
シリコンチップ92の、前記硬化物90との接触面の平面形状は、矩形であることが好ましく、例えば正方形であってもよく、前記硬化物90の第1面90aの平面形状と同じであることが好ましい。
実施例で後述するように、フィルム状接着剤(図示略)の切断及び硬化によって前記硬化物90を形成し、シリコンウエハ(図示略)の分割によってシリコンチップ92を形成するときに、これら切断及び分割を連続的に行うプロセスを採用可能であり、その場合には、シリコンチップ92の前記硬化物90との接触面と、前記硬化物90の第1面90aとを、互いに同じ大きさで、かつ同じ形状とすることが可能であり、しかも、前記硬化物90の側面90cと、シリコンチップ92の側面92cと、の位置合わせも容易である。
【0038】
銅板91の、フィルム状接着剤の硬化物90との接触面の大きさは、前記硬化物90の第2面90bの大きさに対して、同等以上であればよく、大きいことが好ましい。
銅板91の、前記硬化物90との接触面の平面形状は、銅板91が前記硬化物90の第2面90bの全面を覆うことが可能であれば、特に限定されず、例えば、矩形であってもよい。
【0039】
前記接着力の測定時には、銅板91を固定した状態で、第2試験片9中のフィルム状接着剤の硬化物90の側面90cと、シリコンチップ92の側面92cと、の位置合わせされた部位に対して、同時に、前記硬化物90の一方の面(前記第1面90a又は第2面90b)に対して平行な方向に、200μm/secの速度で力Pを加える。ここでは、押圧手段8を用いて、上述の位置合わせ部位に対して力Pを加える場合について示している。
前記接着力をより高精度に測定できる点から、押圧手段8の力を加える部位は平面であることが好ましく、押圧手段8はプレート状であることがより好ましい。
押圧手段8の構成材料としては、例えば、金属等が挙げられる。
【0040】
上記のように、フィルム状接着剤の硬化物90及びシリコンチップ92に対して、同時に力Pを加えるときには、押圧手段8を、銅板91に接触させないことが好ましい。
【0041】
本実施形態においては、このように、フィルム状接着剤の硬化物90の側面90cと、シリコンチップ92の側面92cと、の位置合わせされた部位に対して、力Pを加え、前記硬化物90が破壊されるか、前記硬化物90が銅板91から剥離するか、又は、前記硬化物90がシリコンチップ92から剥離する、までに加えられた力Pの最大値を、前記硬化物90の接着力として採用する。
【0042】
フィルム状接着剤の硬化物の前記接着力は、100N/2mm□以上であることが好ましく、110N/2mm□以上であることがより好ましく、例えば、125N/2mm□以上、140N/2mm□以上、及び170N/2mm□以上のいずれかであってもよい。
【0043】
前記接着力の上限値は特に限定されない。例えば、前記接着力が300N/2mm□以下となる前記フィルム状接着剤は、より容易に製造できる。
【0044】
前記接着力は、上述のいずれかの下限値と、上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内の、いずれかであってよい。例えば、一実施形態において、前記接着力は、100~300N/2mm□であることが好ましく、110~300N/2mm□であることがより好ましく、例えば、125~300N/2mm□、140~300N/2mm□、及び170~300N/2mm□のいずれかであってもよい。ただし、これらは前記接着力の一例である。
【0045】
本実施形態において、前記接着力を規定する第2試験片中のフィルム状接着剤の硬化物は、熱硬化性フィルム状接着剤を160℃で1時間加熱処理することにより得られた熱硬化物である。前記硬化物には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性をともに有するフィルム状接着剤の硬化物も含まれる。このような硬化物には、例えば、熱硬化前のフィルム状接着剤に対して、エネルギー線を照射することにより得られた、完全には硬化していない半硬化物を、さらに、160℃で1時間加熱処理することにより得られた熱硬化物も含まれる。
【0046】
本明細書において、単位「N/2mm□」は「N/(2mm×2mm)」と同義である。
【0047】
前記接着力は、フィルム状接着剤の含有成分の種類又は量等を調節することで、調節できる。例えば、フィルム状接着剤が含有する重合体成分、硬化性成分、充填材及びカップリング剤等の種類又は量等を調節することで、前記接着力を幅広い範囲で調節できる。熱硬化性フィルム状接着剤の場合には、後述する重合体成分(a)、熱硬化性成分(b)、充填材(d)及びカップリング剤(e)等の種類又は量等を調節することで、前記接着力を幅広い範囲で調節できる。
【0048】
<<D0>>
本実施形態のフィルム状接着剤においては、複数枚の前記フィルム状接着剤の積層物であり、厚さが200μmである第1試験片について、JIS K7128-3に準拠して、前記第1試験片をつかんで固定する一対のつかみ具間の距離を60mmとし、引裂速度を200mm/minとして、直角形引裂法により引裂試験を行ったとき、前記第1試験片の引裂強さが最大となってから、前記第1試験片が破断するまでの、前記第1試験片の引裂方向における変位量(本明細書においては、「D0」と称することがある)が15mm以下であることが好ましい。本実施形態のフィルム状接着剤は、このような引裂特性を有することにより、上述の支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存抑制効果がより高くなる。
【0049】
D0の測定時に用いる前記第1試験片は、先に説明したΔTの算出時に用いる第1試験片と同じであり、D0の測定時に行う前記引裂試験は、先に説明したΔTの算出時に行う引裂試験と同じである。すなわち、D0の測定と、ΔTの算出と、は同時に行うことができる。
【0050】
前記引裂試験を行ったとき、第1試験片は、その引裂方向において伸長し、その伸長に伴って、第1試験片の引裂強さが増大する。そして、第1試験片の引裂強さが最大となった後、さらに第1試験片は伸長し、いずれかの段階で第1試験片は破断する。
前記引裂試験を行ったときの、第1試験片の引裂方向における変位量とは、引裂試験中のいずれかの時点での前記つかみ具間の距離から、それよりも前のいずれかの時点での前記つかみ具間の距離を減じた数値であり、これら異なるタイミングでの、第1試験片の引裂方向における、第1試験片の長さの差に該当する。そして、D0は、第1試験片の引裂強さが最大となった後に、第1試験片が破断したきの、前記つかみ具間の距離Sbから、第1試験片の引裂強さが最大となったときの、前記つかみ具間の距離Smを、減じた数値(Sb-Sm)である。
【0051】
本実施形態のフィルム状接着剤において、D0は170mm以下であることが好ましく、例えば、15mm以下、14.5mm以下、13mm以下、及び10mm以下のいずれかであってもよい。D0が前記上限値以下であることで、上述の支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存抑制効果が、より高くなる。
【0052】
D0の下限値は特に限定されない。例えば、D0が5mm以上である前記フィルム状接着剤は、より容易に製造できる。
【0053】
D0は、上述の下限値と、いずれかの上限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内の、いずれかであってよい。例えば、一実施形態において、D0は、5~170mmであることが好ましく、例えば、5~15mm、5~14.5mm、5~13mm、及び5~10mmのいずれかであってもよい。ただし、これらはD0の一例である。
【0054】
D0は、フィルム状接着剤の含有成分の種類又は量等を調節することで、調節できる。例えば、フィルム状接着剤の、常温で固形の成分、架橋剤等の種類又は量等を調節することで、D0を幅広い範囲で調節できる。熱硬化性フィルム状接着剤の場合には、後述する重合体成分(a)、常温で固形のエポキシ樹脂(b1)、架橋剤(f)等の種類又は量等を調節することで、D0を幅広い範囲で調節できる。
【0055】
図3は、本実施形態のフィルム状接着剤の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示すフィルム状接着剤13は、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a上に第1剥離フィルム151を備え、前記第1面13aとは反対側の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13b上に第2剥離フィルム152を備えている。
このようなフィルム状接着剤13は、例えば、ロール状として保管するのに好適である。
【0056】
フィルム状接着剤13、又はフィルム状接着剤13と同じ組成のフィルム状接着剤を用いて作製した第1試験片の|ΔT|は、10N/mm以下である。
フィルム状接着剤13、又はフィルム状接着剤13と同じ組成のフィルム状接着剤を用いて作製した第2試験片中の前記硬化物の接着力は、100N/2mm□以上であることが好ましい。
フィルム状接着剤13、又はフィルム状接着剤13と同じ組成のフィルム状接着剤を用いて作製した第1試験片のD0は、15mm以下であることが好ましい。
【0057】
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、いずれも公知のものでよい。
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、互いに同じものであってもよいし、例えば、フィルム状接着剤13から剥離させるときに必要な剥離力が互いに異なるなど、互いに異なるものであってもよい。
【0058】
図1に示すフィルム状接着剤13においては、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152がいずれも取り除かれ、生じた露出面の一方が半導体ウエハへの貼付面となり、他方が基板への貼付面(接着面)となる。例えば、前記第1面13aが半導体ウエハへの貼付面である場合には、前記第2面13bが基板への貼付面となる。
【0059】
図1においては、剥離フィルムがフィルム状接着剤13の両面(第1面13a、第2面13b)に設けられている例を示しているが、剥離フィルムは、フィルム状接着剤13のいずれか一方の面のみ、すなわち、第1面13aのみ、又は第2面13bのみに、設けられていてもよい。
【0060】
本実施形態のフィルム状接着剤は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0061】
なお、本明細書においては、フィルム状接着剤の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0062】
前記フィルム状接着剤の厚さは、特に限定されないが、2~100μmであることが好ましく、2~70μmであることがより好ましく、例えば、2~40μmであってもよい。フィルム状接着剤の厚さが前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の接着力がより高くなる。フィルム状接着剤の厚さが前記上限値以下である場合には、例えば、後述する接着剤組成物を必要とされる厚さで塗工するときの適性がより高いなど、フィルム状接着剤の製造適性がより高い。
ここで、「フィルム状接着剤の厚さ」とは、フィルム状接着剤全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるフィルム状接着剤の厚さとは、フィルム状接着剤を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0063】
前記フィルム状接着剤は、その構成材料を含有する接着剤組成物を用いて形成できる。例えば、フィルム状接着剤の形成対象面に接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位にフィルム状接着剤を形成できる。熱硬化性フィルム状接着剤は、熱硬化性接着剤組成物を用いて形成でき、エネルギー線硬化性フィルム状接着剤は、エネルギー線硬化性接着剤組成物を用いて形成できる。
接着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、フィルム状接着剤の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0064】
接着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0065】
接着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、接着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する接着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
以下、フィルム状接着剤及び接着剤組成物の含有成分について、詳細に説明する。
【0066】
<<熱硬化性接着剤組成物>>
熱硬化性接着剤組成物としては、例えば、重合体成分(a)及び熱硬化性成分(b)を含有するもの(本明細書においては、「組成物(III-1)」と略記することがある)が挙げられる。以下、各成分について説明する。
【0067】
<重合体成分(a)>
重合体成分(a)は、フィルム状接着剤に造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。重合体成分(a)は、熱可塑性を有し、熱硬化性を有しない。なお、本明細書において重合体化合物には、重縮合反応の生成物も含まれる。
【0068】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有する重合体成分(a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0069】
重合体成分(a)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、重合体成分(a)は、アクリル樹脂であることが好ましい。
【0070】
重合体成分(a)における前記アクリル樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましく、例えば、500000~1000000であってもよい。アクリル樹脂の重量平均分子量がこのような範囲内であることで、フィルム状接着剤と被着体との間の接着力を好ましい範囲に調節することが容易となる。
一方、アクリル樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へフィルム状接着剤が追従し易くなり、被着体とフィルム状接着剤との間でボイド等の発生がより抑制される。
【0071】
本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0072】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-45~50℃であることがより好ましく、例えば、-35~30℃であってもよい。アクリル樹脂のTgが前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤と被着体との間の接着力が抑制されて、ピックアップ時において、フィルム状接着剤付き半導体チップの、後述する支持シートからの引き離しがより容易となる。アクリル樹脂のTgが前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤と半導体チップとの間の接着力が向上する。
【0073】
アクリル樹脂が2種以上の構成単位を有する場合には、そのアクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、Foxの式を用いて算出できる。このとき用いる、前記構成単位を誘導するモノマーのTgとしては、高分子データ・ハンドブック又は粘着ハンドブックに記載されている値を使用できる。
【0074】
アクリル樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造を有する基を意味する。
【0075】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
【0076】
アクリル樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合して得られた樹脂であってもよい。
【0077】
アクリル樹脂を構成するモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0078】
アクリル樹脂は、上述の水酸基以外に、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル樹脂の水酸基をはじめとするこれら官能基は、後述する架橋剤(f)を介して他の化合物と結合していてもよいし、架橋剤(f)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、フィルム状接着剤の凝集力が向上し、フィルム状接着剤の物理的安定性が向上する。
【0079】
本発明においては、重合体成分(a)として、アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、ピックアップ時において、フィルム状接着剤付き半導体チップの、後述する支持シートからの引き離しがより容易となったり、被着体の凹凸面へフィルム状接着剤が追従し易くなり、被着体とフィルム状接着剤との間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0080】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0081】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0082】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0083】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0084】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(a)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、重合体成分(a)の含有量の割合)は、重合体成分(a)の種類によらず、5~40質量%であることが好ましく、6~30質量%であることがより好ましく、例えば、7~25質量%等であってもよい。フィルム状接着剤の構造がより安定化する。前記割合が前記上限値以下であることで、重合体成分(a)を用いたことによる効果と、重合体成分(a)以外の成分を用いたことによる効果と、のバランスを幅広く調節できる。
【0085】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤において、重合体成分(a)の総含有量に対する、アクリル樹脂の含有量の割合は、25~100質量%であることが好ましく、例えば、50~100質量%、70~100質量%、及び90~100質量%のいずれかであってもよい。前記含有量の割合が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の保存安定性がより高くなる。
【0086】
重合体成分(a)の重量平均分子量と、フィルム状接着剤における重合体成分(a)の含有量と、を調節することにより、D0及び|ΔT|をより容易に調節できる。例えば、重量平均分子量が大きい重合体成分(a)を用いること、重量平均分子量が大きい重合体成分(a)のフィルム状接着剤における含有量を増大させることにより、D0及び|ΔT|をより容易に小さくできる。
【0087】
<熱硬化性成分(b)>
熱硬化性成分(b)は、熱硬化性を有し、フィルム状接着剤を熱硬化させるための成分である。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有する熱硬化性成分(b)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0088】
熱硬化性成分(b)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、熱硬化性成分(b)は、エポキシ系熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0089】
・エポキシ系熱硬化性樹脂
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)からなる。
接着剤組成物及びフィルム状接着剤が含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0090】
[エポキシ樹脂(b1)]
エポキシ樹脂(b1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0091】
エポキシ樹脂(b1)は、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂であってもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂(b1)を用いることで、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性が向上する。
【0092】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換された構造を有する化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
【0093】
本明細書において「誘導体」とは、特に断りのない限り、元の化合物の1個以上の基がそれ以外の基(置換基)で置換された構造を有するものを意味する。ここで、「基」とは、複数個の原子が結合して構成された原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0094】
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0095】
エポキシ樹脂(b1)の数平均分子量は、特に限定されないが、フィルム状接着剤の硬化性、並びにフィルム状接着剤の硬化物の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(b1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、例えば、150~650g/eq、及び150~300g/eqのいずれかであってもよいし、450~1000g/eq、及び700~1000g/eqのいずれかであってもよい。
【0096】
エポキシ樹脂(b1)として、常温で固形であるものを選択し、そのフィルム状接着剤における含有量を調節することにより、|ΔT|及びD0をより容易に調節できる。例えば、常温で固形のエポキシ樹脂(b1)のフィルム状接着剤における含有量を増大させることにより、|ΔT|及びD0をより容易に小さくできる。
【0097】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有するエポキシ樹脂(b1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0098】
[熱硬化剤(b2)]
熱硬化剤(b2)は、エポキシ樹脂(b1)に対する硬化剤である。
熱硬化剤(b2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0099】
熱硬化剤(b2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(b2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(DICY)等が挙げられる。
【0100】
熱硬化剤(b2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(b2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(b2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様である。
【0101】
熱硬化剤(b2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、フィルム状接着剤の接着力を調節することが容易となる点から、熱硬化剤(b2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0102】
熱硬化剤(b2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(b2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0103】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有する熱硬化剤(b2)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0104】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤において、熱硬化剤(b2)の含有量は、エポキシ樹脂(b1)の含有量100質量部に対して、1~60質量部であることが好ましく、例えば、1~35質量部、及び1~10質量部のいずれかであってもよいし、20~60質量部、及び40~60質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(b2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、フィルム状接着剤の硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(b2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、フィルム状接着剤の吸湿率が低減されて、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0105】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤において、熱硬化性成分(b)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(b1)及び熱硬化剤(b2)の総含有量)は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、20~1000質量部であることが好ましく、20~700質量部であることがより好ましく、例えば、50~600質量部、100~600質量部、及び200~600質量部のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(b)の前記含有量がこのような範囲であることで、フィルム状接着剤と、後述する支持シートと、の間の接着力を調節することがより容易となる。また、熱硬化性成分(b)の前記含有量がこのような範囲であることで、|ΔT|及びD0をより容易に調節できる。
【0106】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤は、フィルム状接着剤の各種物性を改良するために、重合体成分(a)及び熱硬化性成分(b)以外に、さらに必要に応じて、これらに該当しない他の成分を含有していてもよい。
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有する他の成分としては、例えば、硬化促進剤(c)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、エネルギー線硬化性樹脂(g)、光重合開始剤(h)、着色剤(i)、汎用添加剤(j)等が挙げられる。
【0107】
<硬化促進剤(c)>
硬化促進剤(c)は、組成物(III-1)及びフィルム状接着剤の硬化速度を調節するための成分である。
好ましい硬化促進剤(c)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩;前記イミダゾール類をゲスト化合物とする包接化合物等が挙げられる。
【0108】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有する硬化促進剤(c)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0109】
硬化促進剤(c)を用いる場合、組成物(III-1)及びフィルム状接着剤において、硬化促進剤(c)の含有量は、熱硬化性成分(b)の含有量100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.1~3質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(c)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(c)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(c)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(c)が、高温・高湿度条件下でフィルム状接着剤中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0110】
<充填材(d)>
フィルム状接着剤は、充填材(d)を含有することにより、その熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数をフィルム状接着剤の貼付対象物に対して最適化することで、フィルム状接着剤を用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、フィルム状接着剤が充填材(d)を含有することにより、フィルム状接着剤の硬化物の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0111】
充填材(d)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ、アルミナ又はこれらの表面改質品であることが好ましい。
【0112】
充填材(d)の平均粒子径は、特に限定されないが、10nm~5μmであることが好ましく、例えば、10~800nm、10~600nm、20~300nm、及び30~150nmのいずれかであってもよい。充填材(d)の平均粒子径がこのような範囲であることで、充填材(d)を用いたことによる効果を十分に得られるとともに、フィルム状接着剤の保存安定性がより高くなる。
【0113】
本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
【0114】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有する充填材(d)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0115】
充填材(d)を用いる場合、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する充填材(d)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、充填材(d)の含有量の割合)は、5~60質量%であることが好ましく、10~45質量%であることがより好ましく、例えば、10~20質量%であってもよい。充填材(d)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0116】
<カップリング剤(e)>
フィルム状接着剤は、カップリング剤(e)を含有することにより、被着体に対する接着性及び密着性が向上する。また、フィルム状接着剤がカップリング剤(e)を含有することにより、その硬化物は耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。カップリング剤(e)は、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有する。
【0117】
カップリング剤(e)は、重合体成分(a)、熱硬化性成分(b)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン、オリゴマー型又はポリマー型オルガノシロキサン等が挙げられる。
【0118】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有するカップリング剤(e)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0119】
カップリング剤(e)を用いる場合、組成物(III-1)及びフィルム状接着剤において、カップリング剤(e)の含有量は、重合体成分(a)及び熱硬化性成分(b)の総含有量100質量部に対して、0.03~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(e)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(d)の樹脂への分散性の向上や、フィルム状接着剤の被着体との接着性の向上など、カップリング剤(e)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。カップリング剤(e)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0120】
<架橋剤(f)>
重合体成分(a)として、上述のアクリル樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III-1)及びフィルム状接着剤は、前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための架橋剤(f)を含有していてもよい。架橋剤(f)を用いて架橋することにより、フィルム状接着剤の初期接着力及び凝集力を調節できる。
また、架橋剤(f)を用いることにより、|ΔT|及びD0をより容易に調節できる。
【0121】
架橋剤(f)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0122】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
【0123】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0124】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0125】
架橋剤(f)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(a)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(f)がイソシアネート基を有し、重合体成分(a)が水酸基を有する場合、架橋剤(f)と重合体成分(a)との反応によって、フィルム状接着剤に架橋構造を簡便に導入できる。
【0126】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有する架橋剤(f)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0127】
架橋剤(f)を用いる場合、接着剤組成物において、架橋剤(f)の含有量は、重合体成分(a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.3~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(f)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(f)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。架橋剤(f)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(f)の過剰使用が抑制される。また、架橋剤(f)の前記含有量が、このような範囲であることで、|ΔT|及びD0をより容易に調節できる。例えば、架橋剤(f)の前記含有量を増大させることで、|ΔT|及びD0をより容易に小さくできる。
【0128】
架橋剤(f)を用いない場合、すなわち、架橋剤(f)の前記含有量が0質量部である場合には、フィルム状接着剤を形成後に、架橋剤(f)の作用による架橋反応が完了するまでの時間を設ける必要が無く、工程を時間短縮できる点で有利である。
【0129】
<エネルギー線硬化性樹脂(g)>
フィルム状接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0130】
エネルギー線硬化性樹脂(g)は、エネルギー線硬化性化合物から得られる。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0131】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0132】
エネルギー線硬化性樹脂(g)の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0133】
組成物(III-1)が含有するエネルギー線硬化性樹脂(g)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0134】
エネルギー線硬化性樹脂(g)を用いる場合、組成物(III-1)において、組成物(III-1)の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、例えば、1~50質量%、1~25質量%、及び1~10質量%のいずれかであってもよい。
【0135】
<光重合開始剤(h)>
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤は、エネルギー線硬化性樹脂(g)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(g)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(h)を含有していてもよい。
【0136】
前記光重合開始剤(h)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物等が挙げられる。
また、光重合開始剤(h)としては、例えば、アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0137】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有する光重合開始剤(h)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0138】
光重合開始剤(h)を用いる場合、組成物(III-1)において、光重合開始剤(h)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(g)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0139】
<着色剤(i)>
着色剤(i)は、フィルム状接着剤及びその硬化物において、種々の波長の光の透過率を調節可能な成分である。
着色剤(i)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0140】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0141】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0142】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有する着色剤(i)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0143】
着色剤(i)を用いる場合、組成物(III-1)及びフィルム状接着剤の着色剤(i)の含有量は、例えば、着色剤(i)の種類等に応じて適宜調節できる。通常、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する着色剤(i)の含有量の割合(すなわち、フィルム状接着剤における、フィルム状接着剤の総質量に対する、着色剤(i)の含有量の割合)は、着色剤(i)の種類によらず、0.01~10質量%であることが好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(i)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。前記割合が前記上限値以下であることで、着色剤(i)の過剰使用が抑制される。
【0144】
<汎用添加剤(j)>
汎用添加剤(j)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。好ましい汎用添加剤(j)としては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、消泡剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0145】
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤が含有する汎用添加剤(i)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III-1)及びフィルム状接着剤の汎用添加剤(i)の含有量は、特に限定されず、例えば、汎用添加剤(i)の種類に応じて適宜選択できる。
【0146】
<溶媒>
組成物(III-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III-1)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0147】
組成物(III-1)が含有する溶媒は、組成物(III-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0148】
組成物(III-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0149】
<<エネルギー線硬化性接着剤組成物>>
エネルギー線硬化性接着剤組成物としては、例えば、エネルギー線硬化性成分を含有するもの(本明細書においては、「組成物(III-2)」と略記することがある)が挙げられ、例えば、エネルギー線硬化性成分と、エネルギー線硬化性基を有しない重合体と、光重合開始剤と、を含有するものであってもよい。
【0150】
前記エネルギー線硬化性成分としては、例えば、アクリロイル基等のエネルギー線重合性不飽和基(エネルギー線重合性基)と、グリシジル基等の他の化合物と反応可能な基と、を有する樹脂等が挙げられる。
先に説明した組成物(III-1)におけるエポキシ樹脂(b1)中に、前記エネルギー線硬化性成分に該当するものがある。
【0151】
前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体としては、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、エネルギー線硬化性基を有しない重合体は、アクリル樹脂であることが好ましい。
先に説明した(III-1)における重合体成分(a)中に、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体に該当するものがある。
【0152】
前記光重合開始剤としては、例えば、先に説明した組成物(III-1)における光重合開始剤(h)と同じものが挙げられる。
【0153】
組成物(III-2)における前記エネルギー線硬化性成分、エネルギー線硬化性基を有しない重合体、及び光重合開始剤の含有量は、これら成分の種類に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、前記エネルギー線硬化性成分と、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体と、前記光重合開始剤と、のいずれかの成分に、組成物(III-1)におけるいずれかの含有成分に該当するものがある場合には、その成分の組成物(III-2)における含有量は、組成物(III-1)におけるその該当成分の含有量と同様とすることができる。
【0154】
組成物(III-2)は、目的に応じて、前記エネルギー線硬化性成分と、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体と、前記光重合開始剤と、のいずれにも該当しない、他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分としては、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化剤、充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤、汎用添加剤及び溶媒からなる群より選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0155】
組成物(III-2)における前記エポキシ樹脂、熱硬化剤、充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤、汎用添加剤及び溶媒としては、それぞれ、組成物(III-1)におけるエポキシ樹脂(b1)、熱硬化剤(b2)、充填材(d)、カップリング剤(e)、架橋剤(f)、着色剤(i)、汎用添加剤(j)及び溶媒と同じものが挙げられる。
【0156】
組成物(III-2)における前記エポキシ樹脂、熱硬化剤、充填材、カップリング剤、架橋剤、着色剤、汎用添加剤及び溶媒の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0157】
<<接着剤組成物の製造方法>>
接着剤組成物(熱硬化性接着剤組成物、エネルギー線硬化性接着剤組成物)は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
【0158】
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0159】
◇ダイシングダイボンディングシート
本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンディングシートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられたフィルム状接着剤と、を備えており、前記フィルム状接着剤が、上述の本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤である。
本実施形態のダイシングダイボンディングシートは、例えば、ダイシングによって半導体ウエハを半導体チップへと分割することにより、先に説明したフィルム状接着剤付き半導体チップを製造するためのシートとして使用できる。すなわち、前記ダイシングダイボンディングシート中の支持シートは、ダイシングシートとして使用できる。
【0160】
<<支持シート>>
前記支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0161】
前記支持シートとしては、例えば、基材のみからなるもの;基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材と、前記基材の一方の面上に設けられた、粘着剤層以外の機能層と、を備えたもの等が挙げられる。
【0162】
支持シートが前記基材及び粘着剤層を備えている場合、前記ダイシングダイボンディングシートにおいては、粘着剤層が、基材と前記フィルム状接着剤の間に配置される。
【0163】
支持シートが前記基材及び機能層を備えている場合、前記ダイシングダイボンディングシートにおいては、機能層は、基材のフィルム状接着剤側に配置されていてもよいし、基材のフィルム状接着剤側とは反対側に配置されていてもよい。
本実施形態においては、基材のフィルム状接着剤側に配置されている機能層を「中間層」と称し、基材のフィルム状接着剤側とは反対側に配置されている機能層を「背面層」と称する。前記中間層は、基材のフィルム状接着剤側に配置されていることによって、支持シート又はダイシングダイボンディングシートに、粘着性以外の新たな機能を付与する。前記背面層は、基材のフィルム状接着剤側とは反対側に配置されていることによって、支持シート又はダイシングダイボンディングシートに、粘着性以外の新たな機能を付与する。背面層としては、例えば、支持シート又はダイシングダイボンディングシートの帯電を防止するための帯電防止層;支持シート又はダイシングダイボンディングシートを重ねて保存するときに、支持シート同士又はダイシングダイボンディングシート同士の接着、あるいは、支持シート又はダイシングダイボンディングシートの吸着テーブルへの接着を防止するための接着防止層等が挙げられる。
【0164】
基材のみからなる前記支持シートは、ダイシングシートとしてだけでなく、キャリアシートとしても好適である。このような基材のみからなる支持シートを備えたダイシングダイボンディングシートは、フィルム状接着剤の、支持シート(すなわち基材)を備えている側とは反対側の面(すなわち、前記第1面)が、半導体ウエハの一方の面に貼付されて、使用される。
基材のみからなる支持シートを用いた場合には、低コストでダイシングダイボンディングシートを製造できる。
【0165】
基材及び粘着剤層を備えた前記支持シート、並びに、基材及び機能層を備えた前記支持シートは、ダイシングシートとして好適である。このような支持シートを備えたダイシングダイボンディングシートも、フィルム状接着剤の、支持シートを備えている側とは反対側の面(第1面)が、半導体ウエハの一方の面に貼付されて、使用される。
基材及び粘着剤層を備えた支持シートを用いた場合には、ダイシングダイボンディングシートにおいて、支持シートとフィルム状接着剤との間の粘着力又は密着性を容易に調節できる。
基材及び機能層を備えた支持シートを用いた場合には、支持シート又はダイシングダイボンディングシートが、機能層の特性に応じた、粘着性以外の機能を発現する。
【0166】
本実施形態のダイシングダイボンディングシートが前記フィルム状接着剤を備えていることにより、支持シートが、フィルム状接着剤と直接接触している粘着剤層を備えていなくても、前記ダイシングダイボンディングシートを用いてフィルム状接着剤付き半導体チップを作製し、これをピックアップするときには、支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存を抑制できる。
すなわち、基材のみからなる支持シートにフィルム状接着剤が設けられているダイシングダイボンディングシートや、基材と前記機能層を備えたダイシングダイボンディングシートなど、粘着剤層とフィルム状接着剤が直接接触していない構成を有する前記ダイシングダイボンディングシートを用いた場合に、本発明の効果が、最も顕著に発揮される。
【0167】
ただし、本実施形態のダイシングダイボンディングシートは、フィルム状接着剤と直接接触している粘着剤層を備えていてもよく、その場合には、フィルム状接着剤の作用と、粘着剤層の作用によって、フィルム状接着剤付き半導体チップをピックアップするときに、支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存を、より容易に抑制できる。
【0168】
ダイシングダイボンディングシートの使用方法は、後ほど詳しく説明する。
以下、支持シートを構成する各層について、説明する。
【0169】
<基材>
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0170】
基材の構成材料である前記樹脂は、これらの中でも、ポリエチレン、ポリエチレン以外のポリオレフィン、エチレン系共重合体等の、オレフィンから誘導された構成単位を有するオレフィン系樹脂であることが好ましい。基材に対して、前記フィルム状接着剤が直接接触して構成されたダイシングダイボンディングシートの中でも、基材のフィルム状接着剤との接触面が、このような樹脂を含有するダイシングダイボンディングシートは、上述の支持シート(換言すると基材)におけるフィルム状接着剤の残存抑制効果がより高くなる。
また、基材の構成材料である前記樹脂は、カルボキシ基、カルボニル基、水酸基等の極性基を有しないものが好ましい。基材のフィルム状接着剤との接触面が、このような樹脂を含有するダイシングダイボンディングシートも、上述の支持シート(換言すると基材)におけるフィルム状接着剤の残存抑制効果がより高くなる。
【0171】
基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0172】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0173】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~150μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、ダイシングダイボンディングシートの可撓性と、半導体ウエハへの貼付性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0174】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0175】
基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
【0176】
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、フィルム状接着剤等)との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されていてもよい。
また、基材は、その表面がプライマー処理されていてもよい。
また、基材は、その表面に剥離処理層を有していてもよい。前記剥離処理層は、公知の各種剥離剤を用いて、基材の表面を剥離処理することで形成できる。
また、基材は、特定範囲の成分(例えば、樹脂等)を含有することで、少なくともその一方の面において、粘着性を有していてもよい。
【0177】
支持シートが基材のみからなる場合や、支持シートが基材の露出面を有する場合など、支持シートのフィルム状接着剤側の最表層が基材である場合には、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップ時に、支持シート(換言すると基材)におけるフィルム状接着剤の残存を抑制する効果が、より高くなる点では、基材のフィルム状接着剤側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)は、前記酸化処理、前記プライマー処理等の表面処理が施されていないことが好ましい。
【0178】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0179】
<粘着剤層>
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂等の粘着性樹脂が挙げられる。
【0180】
本明細書において、「粘着性樹脂」には、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方が包含される。例えば、前記粘着性樹脂には、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含まれる。
【0181】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0182】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、例えば、1~60μm、及び1~30μmのいずれかであってもよい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0183】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよい。すなわち、粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤層は、その硬化前及び硬化後での物性を容易に調節できる。
【0184】
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0185】
粘着剤組成物は、上述の接着剤組成物の場合と同じ方法で、塗工できる。
【0186】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);前記粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0187】
粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)等が挙げられる。
【0188】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)等の粘着剤組成物は、配合成分が異なる点以外は、上述の接着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0189】
<機能層>
前記機能層は、シート状又はフィルム状であり、樹脂を含有するものが好ましい。
機能層は、樹脂からなるものであってもよいし、樹脂と樹脂以外の成分を含有するものであってもよい。
樹脂を含有する機能層は、例えば、前記樹脂又は前記樹脂を含有する機能層形成用組成物を成形することで形成できる。また、機能層は、機能層の形成対象面に、機能層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることでも形成できる。
【0190】
前記機能層形成用組成物の前記樹脂の含有量は、特に限定されず、例えば、10~90質量%とすることができるが、これは一例である。
【0191】
機能層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら機能層の組み合わせは特に限定されない。
【0192】
機能層の厚さは、特に限定されず、その種類に応じて適宜設定できる。
ここで、「機能層の厚さ」とは、機能層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる機能層の厚さとは、機能層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0193】
次に、本実施形態のダイシングダイボンディングシートの例を、図面を参照しながら説明する。
【0194】
図4は、本実施形態のダイシングダイボンディングシートの一例を模式的に示す断面図である。
ここに示すダイシングダイボンディングシート101は、支持シート10を備え、支持シート10の一方の面(第1面)10a上にフィルム状接着剤13を備えている。支持シート10は、基材11のみからなり、ダイシングダイボンディングシート101は、換言すると、基材11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11a上にフィルム状接着剤13が積層された構成を有する。また、ダイシングダイボンディングシート101は、さらにフィルム状接着剤13上に剥離フィルム15を備えている。
【0195】
ダイシングダイボンディングシート101においては、基材11の第1面11aにフィルム状接着剤13が積層され、フィルム状接着剤13の、基材11を備えている側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に治具用接着剤層16が積層され、フィルム状接着剤13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない面と、治具用接着剤層16のうち、フィルム状接着剤13と接触していない面16a(上面及び側面)に、剥離フィルム15が積層されている。
基材11の第1面11aは、支持シート10の第1面10aと同じである。
【0196】
フィルム状接着剤13は、先に説明したものである。
剥離フィルム15は、
図3に示す第1剥離フィルム151又は第2剥離フィルム152と同様のものである。
【0197】
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造であってもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造であってもよい。
【0198】
ダイシングダイボンディングシート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、フィルム状接着剤13の第1面13aに、半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の面16aのうち上面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0199】
図5は、本実施形態のダイシングダイボンディングシートの他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示すダイシングダイボンディングシート102は、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、
図4に示すダイシングダイボンディングシート101と同じである。すなわち、ダイシングダイボンディングシート102においては、基材11の第1面11a(支持シート10の第1面10a)にフィルム状接着剤13が積層され、フィルム状接着剤13の第1面13aの全面に、剥離フィルム15が積層されている。
換言すると、ダイシングダイボンディングシート102は、基材11、フィルム状接着剤13及び剥離フィルム15がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
【0200】
図5に示すダイシングダイボンディングシート102は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、フィルム状接着剤13の第1面13aのうち、フィルム状接着剤13の幅方向における中央側の一部の領域に、半導体ウエハ(図示略)の裏面が貼付され、さらに、フィルム状接着剤13の周縁部近傍の領域が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0201】
本実施形態のダイシングダイボンディングシートは、
図4~
図5に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図4~
図5に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0202】
例えば、
図4~
図5に示すダイシングダイボンディングシートは、基材と、フィルム状接着剤と、剥離フィルムと、のいずれにも該当しない他の層が、任意の箇所に設けられていてもよい。
前記他の層としては、例えば、先に説明した粘着剤層、機能層(中間層、背面層)等が挙げられる。粘着剤層は基材11とフィルム状接着剤13の間に設けられる。機能層のうち中間層も、基材11とフィルム状接着剤13の間に設けられる。機能層のうち背面層は、基材11の第1面11aとは反対側の面上に設けられ、ダイシングダイボンディングシートにおける最表層であってもよい。
【0203】
図4~
図5に示すダイシングダイボンディングシートにおいては、剥離フィルムと、この剥離フィルムと直接接触している層との間に、一部隙間が生じていてもよい。
図4~
図5に示すダイシングダイボンディングシートにおいては、各層の大きさや形状は、目的に応じて任意に調節できる。
【0204】
◇ダイシングダイボンディングシートの製造方法
前記ダイシングダイボンディングシートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0205】
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の面と貼り合わせる方法でも、基材上に粘着剤層を積層できる。このとき、粘着剤組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。
ここまでは、基材上に粘着剤層を積層する場合を例に挙げたが、上述の方法は、例えば、基材上に、先に説明した機能層等の他の層を積層する場合;基材上に前記フィルム状接着剤を積層する場合にも適用できる。前記フィルム状接着剤を積層する場合には、前記接着剤組成物を用いる。
【0206】
一方、例えば、基材上に積層済みの最上層(以下、「第1層」と略記する)の上に、さらに新たな層(以下、「第2層」と略記する)を積層する場合には、前記第2層を形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ第2層を形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、基材上の前記第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成できる。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。前記第2層が前記フィルム状接着剤である場合には、第2層を形成するための組成物として前記接着剤組成物を用いる。
【0207】
このように、ダイシングダイボンディングシートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、ダイシングダイボンディングシートを製造すればよい。
【0208】
なお、ダイシングダイボンディングシートは、通常、その支持シート側とは反対側の最表層(例えば、フィルム状接着剤)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、前記接着剤組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることで、剥離フィルム付きのダイシングダイボンディングシートが得られる。
【0209】
◇半導体装置の製造方法(ダイシングダイボンディングシートの使用方法)
<<製造方法(1)>>
上述の本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンディングシートは、半導体装置の製造時に使用できる。
この場合の半導体装置の製造方法としては、例えば、
前記ダイシングダイボンディングシートを用いて、半導体ウエハを備え、前記半導体ウエハの裏面に、前記ダイシングダイボンディングシート中の前記フィルム状接着剤によって、前記ダイシングダイボンディングシートが貼付されて構成された積層体(1)を作製する積層(1)工程と、
前記積層体(1)中の前記半導体ウエハを分割することにより、半導体チップを作製し、前記半導体ウエハの分割箇所に沿って前記フィルム状接着剤を切断することにより、前記半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられた、切断後の前記フィルム状接着剤と、を備えた複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップが、前記支持シート上で保持されて構成された、フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(1)を作製する分割/切断工程と、
前記フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(1)中のフィルム状接着剤付き半導体チップを、前記支持シートから引き離して、ピックアップすることにより、フィルム状接着剤付き半導体チップを取得するピックアップ(1)工程と、
取得した前記フィルム状接着剤付き半導体チップ中の半導体チップを、前記フィルム状接着剤付き半導体チップ中のフィルム状接着剤によって、基板の回路形成面にダイボンディングするダイボンディング工程と、を有する製造方法(本明細書においては、「製造方法(1)」と称することがある)が挙げられる。
製造方法(1)では、従来のダイシングダイボンディングシートに代えて、上述の本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンディングシートを用いる点を除けば、従来の方法と同じ方法で、半導体装置を製造できる。
【0210】
<積層(1)工程>
前記積層(1)工程においては、例えば、前記ダイシングダイボンディングシート中の前記フィルム状接着剤のうち、前記支持シート側とは反対側の面(すなわち第1面)を、半導体ウエハの裏面に貼付することにより、積層体(1)を作製する。
本工程は、従来のダイシングダイボンディングシートに代えて、上述の本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンディングシートを用いる点を除けば、ダイシングダイボンディングシートを半導体ウエハの裏面に貼付する従来の方法と同じ方法で、行うことができる。
【0211】
<分割/切断工程>
前記分割/切断工程においては、積層体(1)中の半導体ウエハの分割(半導体チップの作製)と、積層体(1)中のフィルム状接着剤の切断と、を行う順番は、特に限定されず、半導体ウエハの分割及びフィルム状接着剤の切断の順で行ってもよいし、フィルム状接着剤の切断及び半導体ウエハの分割の順で行ってもよいし、半導体ウエハの分割及びフィルム状接着剤の切断を同時に行ってもよい。また、半導体ウエハの分割及びフィルム状接着剤の切断を同時に行わない場合には、半導体ウエハの分割及びフィルム状接着剤の切断を、連続的に行ってもよいし、段階的に行ってもよい。
【0212】
半導体ウエハの分割及びフィルム状接着剤の切断は、いずれも公知の方法で行うことができる。
例えば、ブレードダイシング、レーザー照射によるレーザーダイシング、又は研磨剤を含む水の吹き付けによるウォーターダイシング等の各ダイシングによって、半導体ウエハの分割及びフィルム状接着剤の切断を連続的に行うことができる。ただし、これは、半導体ウエハの分割方法、及びフィルム状接着剤の切断方法の一例である。
【0213】
フィルム状接着剤の切断は、半導体ウエハの分割箇所に沿って行うが、この場合、半導体ウエハの分割後にフィルム状接着剤を切断する場合には、フィルム状接着剤の切断は、半導体ウエハの分割された箇所、すなわち、半導体チップの周縁部に沿って行う。一方、半導体ウエハの分割前にフィルム状接着剤を切断する場合、及び半導体ウエハの分割と同時にフィルム状接着剤を切断する場合には、フィルム状接着剤の切断は、半導体ウエハの分割予定箇所に沿って行う。
【0214】
本工程で作製されるフィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(1)においては、前記ダイシングダイボンディングシートを構成していた1枚の前記支持シート上で、複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップが、整列した状態で保持(固定)されている。
【0215】
<ピックアップ(1)工程>
前記ピックアップ(1)工程においては、公知の方法で、フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(1)中のフィルム状接着剤付き半導体チップを、支持シートから引き離して、ピックアップできる。
本工程においては、上述の本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤(ダイシングダイボンディングシート)を用いていることにより、フィルム状接着剤と直接接触させるための粘着剤層を支持シートが備えていなくても、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップ時に、支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存を抑制できる。
【0216】
<ダイボンディング工程>
前記ダイボンディング工程においては、公知の方法で、ピックアップ後のフィルム状接着剤付き半導体チップを、その中のフィルム状接着剤によって、基板の回路形成面にダイボンディングできる。
【0217】
前記ダイボンディング工程後も、従来の方法と同じ方法で、半導体パッケージ及び半導体装置を製造できる。例えば、必要に応じて、このダイボンディングされた半導体チップに、さらに半導体チップを1個以上積層した後、ワイヤボンディングを行う。次いで、フィルム状接着剤を熱硬化させ、さらに得られたもの全体を樹脂により封止する。これらの工程を経ることにより、半導体パッケージを作製できる。そして、この半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置を製造できる。
【0218】
図6は、製造方法(1)を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図4に示すダイシングダイボンディングシート101を用いた場合の製造方法(1)について示している。
【0219】
図6(a)は、積層(1)工程で得られる積層体(1)119Aを示している。積層体(1)119Aは、半導体ウエハ9と、半導体ウエハ9の裏面9bに設けられたダイシングダイボンディングシート101と、を備えている。
図6(b)は、分割/切断工程で得られるフィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(1)119Bを示している。フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(1)119Bは、半導体チップ9’と、半導体チップ9’の裏面9b’に設けられた、切断後のフィルム状接着剤130と、を備えた複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップ139’が、支持シート10上で保持されて、構成されている。
図6(c)は、ピックアップ(1)工程において、引き離し手段7を用いて、矢印I方向に、フィルム状接着剤付き半導体チップ139’を支持シート10から引き離して、ピックアップしている状態を示している。引き離し手段7としては、真空コレット等が挙げられる。なお、ここでは、引き離し手段7は、断面表示していない。支持シート10の第1面10aにおいては、フィルム状接着剤130の残存が抑制される。
図6(d)は、ダイボンディング工程において、半導体チップ9’をフィルム状接着剤130によって、基板5の回路形成面5aにダイボンディングした状態を示している。
【0220】
図6では、ダイシングダイボンディングシート101を用いた場合の製造方法(1)について示しているが、他のダイシングダイボンディングシートを用いた場合も、同様のものが得られる。
【0221】
<<製造方法(2)>>
上述の本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤は、上述の本発明の一実施形態に係るダイシングダイボンディングシートを構成する前に、半導体ウエハに貼付することによって、半導体装置の製造時に使用することもできる。
この場合の半導体装置の製造方法としては、例えば、
前記フィルム状接着剤を用いて、半導体ウエハと、前記半導体ウエハの裏面に設けられた前記フィルム状接着剤と、を備えた積層体(21)を作製する積層(21)工程と、
前記積層体(21)中の前記フィルム状接着剤の、前記半導体ウエハ側とは反対側の面(すなわち第2面)に、ダイシングシートを貼付することにより、前記ダイシングシート及び積層体(21)がこの順に積層されて構成された(換言すると、前記ダイシングシート、フィルム状接着剤及び半導体ウエハがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された)積層体(22)を作製する積層(22)工程と、
前記積層体(22)中の前記半導体ウエハを分割することにより、半導体チップを作製し、前記半導体ウエハの分割箇所に沿って前記フィルム状接着剤を切断することにより、前記半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられた、切断後の前記フィルム状接着剤と、を備えた複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップが、前記ダイシングシート上で保持されて構成された、フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(2)を作製する分割/切断工程と、
前記フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(2)中のフィルム状接着剤付き半導体チップを、前記ダイシングシートから引き離して、ピックアップすることにより、フィルム状接着剤付き半導体チップを取得するピックアップ(2)工程と、
取得した前記フィルム状接着剤付き半導体チップ中の半導体チップを、前記フィルム状接着剤付き半導体チップ中のフィルム状接着剤によって、基板の回路形成面にダイボンディングするダイボンディング工程と、を有する製造方法(本明細書においては、「製造方法(2)」と称することがある)が挙げられる。
製造方法(2)では、従来のフィルム状接着剤に代えて、上述の本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤を用いる点を除けば、従来の方法と同じ方法で、半導体装置を製造できる。
【0222】
<積層(21)工程>
前記積層(21)工程においては、前記フィルム状接着剤の一方の面(すなわち第1面)を、半導体ウエハの裏面に貼付することにより、積層体(21)を作製する。
本工程は、従来のフィルム状接着剤に代えて、上述の本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤を用いる点を除けば、フィルム状接着剤を半導体ウエハの裏面に貼付する従来の方法と同じ方法で、行うことができる。
【0223】
<積層(22)工程>
前記積層(22)工程においては、前記積層体(21)中のフィルム状接着剤の露出面(すなわち第2面)に、ダイシングシートを貼付することにより、積層体(22)を作製できる。
本工程で用いるダイシングシートは、公知のものでよく、フィルム状接着剤へのダイシングシートの貼付は、公知の方法で行うことができる。
【0224】
前記ダイシングシートは、製造方法(1)で用いるダイシングダイボンディングシート中の支持シートと、実質的に同じである。したがって、本工程で得られる積層体(22)は、製造方法(1)で得られる積層体(1)と、実質的に同じである。
【0225】
<分割/切断工程>
前記分割/切断工程においては、積層体(22)中の半導体ウエハの分割(半導体チップの作製)、及び積層体(22)中のフィルム状接着剤の切断は、製造方法(1)における、積層体(1)中の半導体ウエハの分割、及び積層体(1)中のフィルム状接着剤の切断の場合と同じ内容で行うことができる。
【0226】
本工程で作製されるフィルム状接着剤付き半導体チップは、製造方法(1)の分割/切断工程で作製されるフィルム状接着剤付き半導体チップと同じである。
本工程で作製されるフィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(2)においては、前記ダイシングシート上で、複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップが、整列した状態で保持(固定)されている。そして、フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(2)は、製造方法(1)の分割/切断工程で作製されるフィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(1)と実質的に同じである。
【0227】
<ピックアップ(2)工程>
前記ピックアップ(2)工程においては、公知の方法で、フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(2)中のフィルム状接着剤付き半導体チップを、ダイシングシートから引き離して、ピックアップできる。
ピックアップ(2)工程は、フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(1)に代えて、フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(2)を用いる点を除けば、製造方法(1)におけるピックアップ(1)工程の場合と同じ方法で行うことができる。
【0228】
本工程においては、上述の本発明の一実施形態に係るフィルム状接着剤を用いていることにより、フィルム状接着剤と直接接触させるための粘着剤層をダイシングシートが備えていなくても、フィルム状接着剤付き半導体チップのピックアップ時に、ダイシングシートにおけるフィルム状接着剤の残存を抑制できる。
【0229】
<ダイボンディング工程>
前記ダイボンディング工程は、製造方法(1)におけるダイボンディング工程と同じである。
【0230】
前記ダイボンディング工程後も、製造方法(1)の場合と同じ方法により、半導体パッケージ及び半導体装置を製造できる。
【0231】
図7は、製造方法(2)を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図3に示すフィルム状接着剤13を用いた場合の製造方法(2)について示している。
【0232】
図7(a)は、積層(21)工程で得られる積層体(21)129Aを示している。積層体(21)129Aは、半導体ウエハ9と、半導体ウエハ9の裏面9bに設けられたフィルム状接着剤13と、を備えている。
図7(b)は、積層(22)工程で得られる積層体(22)129Bを示している。積層体(22)129Bは、ダイシングシート20、フィルム状接着剤13及び半導体ウエハ9がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
図7(c)は、分割/切断工程で得られるフィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(2)129Cを示している。フィルム状接着剤付き半導体チップ集合体(2)129Cは、半導体チップ9’と、半導体チップ9’の裏面9b’に設けられた、切断後のフィルム状接着剤130と、を備えた複数個のフィルム状接着剤付き半導体チップ139’が、ダイシングシート20上で保持されて、構成されている。
図7(d)は、ピックアップ(2)工程において、引き離し手段7を用いて、矢印I方向に、フィルム状接着剤付き半導体チップ139’をダイシングシート20から引き離して、ピックアップしている状態を示している。ダイシングシート20の第1面20aにおいては、フィルム状接着剤130の残存が抑制される。
図7(e)は、ダイボンディング工程において、半導体チップ9’をフィルム状接着剤130によって、基板5の回路形成面5aにダイボンディングした状態を示している。
【実施例】
【0233】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0234】
<樹脂の製造原料>
本実施例及び比較例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
BA:アクリル酸n-ブチル
MA:アクリル酸メチル
GMA:メタクリル酸グリシジル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
MMA:メタクリル酸メチル
AA:アクリル酸
【0235】
<<接着剤組成物の製造原料>>
接着剤組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(a)]
(a)-1:BA(55質量部)、MA(10質量部)、GMA(20質量部)及びHEA(15質量部)を共重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量800000、ガラス転移温度-28℃)。
(a)-2:BA(84質量部)、MMA(8質量部)、AA(3質量部)及びHEA(5質量部)を共重合して得られたアクリル樹脂(重量平均分子量800000、ガラス転移温度-42℃)。
(a)-3:重量平均分子量700000のアクリル樹脂。
[エポキシ樹脂(b1)]
(b1)-1:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びアクリルゴム微粒子の混合物(日本触媒社製「BPA328」、エポキシ当量235g/eq)
(b1)-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER1055」、軟化点93℃、エポキシ当量800~900g/eq)
(b1)-3:o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「EOCN-104S」、軟化点90~94℃、エポキシ当量213~223g/eq)
(b1)-4:液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL983U」、エポキシ当量165~175g/eq)
(b1)-5:o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「EOCN-102S」、軟化点55~77℃、エポキシ当量205~217g/eq)
(b1)-6:トリフェニレン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「EPPN-502H」、軟化点54℃、エポキシ当量167g/eq)
(b1)-7:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「jER828」、エポキシ当量184~194g/eq)
(b1)-8:o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「EOCN-103S」、軟化点81~85℃、エポキシ当量209~219g/eq)
(b1)-9:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「XD-1000」、軟化点68~78℃、エポキシ当量245~260g/eq)
(b1)-10:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、軟化点88~98℃、エポキシ当量274~286g/eq)
[熱硬化剤(b2)]
(b2)-1:ジシアンジアミド(ADEKA社製「アデカハードナーEH-3636AS」、固体分散型潜在性硬化剤、軟化点209℃、活性水素量21g/eq)
(b2)-2:o-クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「フェノライトKA-1160」、軟化点80℃、水酸基当量117g/eq)
[硬化促進剤(c)]
(c)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ-PW」)
[充填材(d)]
(d)-1:エポキシ基で修飾された球状シリカ(アドマテックス社製「アドマナノYA050C-MKK」、平均粒子径50nm)
[カップリング剤(e)]
(e)-1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを付加させたシリケート化合物(三菱ケミカル社製「MKCシリケートMSEP-2」)
(e)-2:エポキシ基、メチル基及びメトキシ基を有するオリゴマー型シランカップリング剤(信越シリコーン社製「X-41-1056」、エポキシ当量280g/eq)
[架橋剤(f)]
(f)-1:トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物(東ソー社製「コロネートL」)
[エネルギー線硬化性樹脂(g)]
(g)-1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(6官能紫外線硬化性化合物、分子量578)及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(5官能紫外線硬化性化合物、分子量525)の混合物(日本化薬社製「KAYARAD DPHA」)
(g)-2:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート(日本化薬社製「KAYARAD R-684」、分子量304)
[光重合開始剤(h)]
(h)-1:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「IRGACURE(登録商標)184」)
【0236】
[実施例1]
<<フィルム状接着剤の製造>>
<接着剤組成物の製造>
重合体成分(a)-1(20質量部)、エポキシ樹脂(b1)-1(25質量部)、エポキシ樹脂(b1)-2(35質量部)、エポキシ樹脂(b1)-3(8質量部)、熱硬化剤(b2)-1(1.5質量部)、硬化促進剤(c)-1(1.5質量部)、カップリング剤(e)-1(0.6質量部)、架橋剤(f)-1(0.2質量部)、エネルギー線硬化性樹脂(g)-1(8質量部)、及び光重合開始剤(h)-1(0.2質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が50質量%である熱硬化性の接着剤組成物を製造した。なお、ここに示す前記溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
【0237】
<フィルム状接着剤の製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた接着剤組成物を塗工し、100℃で1分乾燥させることにより、厚さ20μmの熱硬化性のフィルム状接着剤を製造した。
【0238】
<<ダイシングダイボンディングシートの製造>>
ポリプロピレン(PP)からなる層と、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)からなる層と、が積層されて構成された積層基材(アキレス社製「HUSL1302」、厚さ100μm、以下、「PP/EMAA積層基材」と称することがある)を基材として用い、そのポリプロピレンからなる層の表面に、上記で得られたフィルム状接着剤の、剥離フィルムを備えている側とは反対側の露出面を貼り合わせることにより、ダイシングダイボンディングシートを製造した。このダイシングダイボンディングシートは、基材のみからなる支持シートと、フィルム状接着剤と、剥離フィルムと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、剥離フィルム付きのダイシングダイボンディングシートである。
【0239】
<<フィルム状接着剤の評価>>
<D0の測定>
[第1試験片の作製]
上記と同じ方法で、一方の面に剥離フィルムを備えたフィルム状接着剤を2枚製造した。
次いで、紫外線照射装置(リンテック社製「RAD-2000 m/12」)を用いて、照度230mW/cm2、光量120mJ/cm2の条件で、これら2枚のフィルム状接着剤に紫外線を照射した。
次いで、紫外線を照射済みのこれら2枚のフィルム状接着剤の露出面同士を貼り合わせることにより、厚さが40μmであり、両面に剥離フィルムを備えた、2枚のフィルム状接着剤の積層物(1次積層物)を作製した。そして、この1次積層物を2枚作製した。
【0240】
次いで、これら2枚の1次積層物の一方の面から剥離フィルムを取り除き、新たに生じたフィルム状接着剤の露出面同士を貼り合わせることにより、厚さが80μmであり、両面に剥離フィルムを備えた、4枚のフィルム状接着剤の積層物(2次積層物)を作製した。そして、この2次積層物を2枚作製した。
次いで、これら2枚の2次積層物の一方の面から剥離フィルムを取り除き、新たに生じたフィルム状接着剤の露出面同士を貼り合わせることにより、厚さが160μmであり、両面に剥離フィルムを備えた、8枚のフィルム状接着剤の積層物(3次積層物)を作製した。
次いで、この3次積層物と、別途作製した前記1次積層物と、を用い、これらの一方の面から剥離フィルムを取り除き、新たに生じたフィルム状接着剤の露出面同士を貼り合わせることにより、厚さが200μmであり、両面に剥離フィルムを備えた、10枚のフィルム状接着剤の積層物(4次積層物)を作製した。
【0241】
ダンベルカッター(ダンベル社製「SDBK-1000」)を用いて、JIS K7128-3で規定されている試験片と同じ形状及び寸法で、上記で得られた4次積層物を打ち抜くことにより、第1試験片(厚さ200μm)を作製した。
【0242】
[D0の測定]
万能引張試験機(島津製作所社製「AG-IS」)を用いて、JIS K7128-3に準拠して、上記で得られた第1試験片について引裂試験を行い、D0を測定した。このとき、第1試験片でのつかみ具間の距離を60mmとし、引裂速度を200mm/minとし、サンプリング時間を10msとした。結果を表1に示す。
【0243】
<|ΔT|の算出>
上記のD0の測定時に、同時に、Tmax、D1及び0.6D1を測定し、これらの値から|ΔT|を算出した。結果を表1に示す。
【0244】
<ピックアップ時におけるフィルム状接着剤の残存抑制効果の評価>
[フィルム状接着剤付きシリコンチップの製造]
上記で得られたダイシングダイボンディングシート中のフィルム状接着剤から、剥離フィルムを取り除いた。
テープマウンター(リンテック社製「Adwill RAD2500」)を用い、裏面が#2000研磨面となっているシリコンウエハ(直径200mm、厚さ350μm)の前記研磨面に、剥離フィルムを取り除いた後のダイシングダイボンディングシート中のフィルム状接着剤の露出面を貼り合わせた。そして、ダイシングダイボンディングシートをウエハダイシング用リングフレームに固定した。
【0245】
次いで、紫外線照射装置(リンテック社製「RAD-2000 m/12」)を用いて、照度230mW/cm2、光量120mJ/cm2の条件で、フィルム状接着剤に紫外線を照射した。
【0246】
次いで、ダイシング装置(ディスコ社製「DFD6361」)を用いてダイシングすることにより、シリコンウエハの分割と、フィルム状接着剤の切断と、を連続的に行い、大きさが2mm×2mmのシリコンチップを得た。このときのダイシングは、ダイシングブレードの移動速度を40mm/sec、ダイシングブレードの回転数を35000rpmとし、ダイシングダイボンディングシートに対して、その基材のフィルム状接着剤の貼付面から20μmの深さの領域まで(すなわち、フィルム状接着剤の厚さ方向の全領域と、基材のフィルム状接着剤側の面から20μmの深さの領域まで)ダイシングブレードで切り込むことにより行った。ダイシングブレードとしては、ディスコ社製「Z05-SD2000-D1-90 CC」を用いた。
以上により、ダイシングダイボンディングシートを用いて、シリコンチップと、前記シリコンチップの裏面に設けられたフィルム状接着剤と、を備えて構成された、複数個のフィルム状接着剤付きシリコンチップが、前記フィルム状接着剤によって、基材上に整列した状態で固定されている、フィルム状接着剤付きシリコンチップ群を製造した。
【0247】
[ピックアップ時におけるフィルム状接着剤の残存抑制効果の評価]
ピックアップ・ダイボンディング装置(キャノンマシナリー社製「BESTEM D-02」)を用い、上記で得られたフィルム状接着剤付きシリコンチップ群中のフィルム状接着剤付きシリコンチップを、基材から引き離してピックアップした。このピックアップは、100個のフィルム状接着剤付きシリコンチップに対して行い、1個のフィルム状接着剤付きシリコンチップを、そのフィルム状接着剤側から1本のピンによって突き上げる方式で行った。
次いで、デジタル顕微鏡(キーエンス社製「VHX-1000」)を用いて、支持シート(基材)上のピックアップ箇所を観察し、100μm以上の長さのフィルム状接着剤が残存している箇所を数え、下記基準に従って、ピックアップ時におけるフィルム状接着剤の残存抑制効果を評価した。結果を表1に示す。表1中、該当する欄内のカッコ内の数値は、上述のフィルム状接着剤が残存していた箇所の数である。
(評価基準)
A:フィルム状接着剤の残存箇所が20箇所以下である。
B:フィルム状接着剤の残存箇所が21箇所以上である。
【0248】
<フィルム状接着剤の硬化物の接着力の測定>
[フィルム状接着剤付きシリコンチップの製造]
上述の「ピックアップ時におけるフィルム状接着剤の残存抑制効果の評価」の場合と同じ方法で、フィルム状接着剤付きシリコンチップ群を製造した。
【0249】
[第2試験片の作製]
次いで、フィルム状接着剤付きシリコンチップ群中のフィルム状接着剤付きシリコンチップを、基材から引き離してピックアップした。そして、マニュアルダイボンダー(CAMMAX Precima社製「EDB65」)を用いて、このフィルム状接着剤付きシリコンチップ中のフィルム状接着剤の露出面(シリコンチップ側とは反対側の面)全面を、銅板(厚さ500μm)の表面に圧着することにより、フィルム状接着剤付きシリコンチップを前記銅板上にダイボンディングした。このときのダイボンディングは、125℃に加熱したフィルム状接着剤付きシリコンチップに対して、その前記銅板への接触面に対して直交する方向に、2.45N(250gf)の力を3秒加えることで行った。
次いで、ダイボンディング後の銅板を、160℃で1時間加熱することにより、この銅板上のフィルム状接着剤を熱硬化させた。
以上により、銅板と、フィルム状接着剤の硬化物と、シリコンチップと、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された第2試験片を作製した。
【0250】
[フィルム状接着剤の熱硬化物の接着力の測定]
ボンドテスター(Dage社製「Series 4000」)を用いて、上記で得られた第2試験片中の前記銅板を固定した状態で、第2試験片中のフィルム状接着剤の硬化物の側面とシリコンチップの側面の位置合わせされた部位に対して、同時に、前記硬化物の一方の面に対して平行な方向に、200μm/secの速度で力を加えた。このとき、力を加えるための押圧手段としては、ステンレス鋼製のプレート状であるものを用い、押圧手段の銅板側の先端の位置を、銅板の、シリコンチップを搭載している側の表面から7μmの高さとなるように調節することにより、押圧手段を銅板に接触させないようにした。そして、前記硬化物が破壊されるか、前記硬化物が銅板から剥離するか、又は、前記硬化物がシリコンチップから剥離する、までに加えられた力の最大値を測定し、その測定値を前記硬化物の接着力(N/2mm□)として採用した。結果を表1に示す。
【0251】
<<フィルム状接着剤の製造、ダイシングダイボンディングシートの製造、及びフィルム状接着剤の評価>>
[実施例2~3、比較例1]
接着剤組成物の含有成分の種類及び含有量が、表1に示すとおりとなるように、接着剤組成物の製造時における、配合成分の種類及び配合量のいずれか一方又は両方を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、フィルム状接着剤及びダイシングダイボンディングシートを製造し、フィルム状接着剤を評価した。ただし、接着剤組成物がエネルギー線硬化性樹脂(g)を含有していない実施例2~3においては、第1試験片の作製時と、フィルム状接着剤付きシリコンチップの製造時に、フィルム状接着剤への紫外線の照射は行わず、さらに、基材としては、PP/EMAA積層基材に代えて、ポリプロピレン(PP)製基材(グンゼ社製「ファンクレアLLD#80」、厚さ80μm)を用いた。結果を表1に示す。
【0252】
なお、表1中の含有成分の欄の「-」との記載は、接着剤組成物がその成分を含有していないことを意味する。
【0253】
【0254】
上記結果から明らかなように、実施例1~3においては、フィルム状接着剤と直接接触する粘着剤層を支持シートが備えていなくても、フィルム状接着剤付きシリコンチップのピックアップ時に、支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存を抑制できた。実施例1~3においては、|ΔT|が9.8以下であった。
また、実施例1~3においては、フィルム状接着剤の硬化物の接着力が111N/2mm□以上であり、十分な接着力を有していた。なお、これら実施例においては、前記接着力の測定時に、前記硬化物がシリコンチップから剥離することは無かった。
一方、実施例1~3においては、D0が167.2mm以下であった。
【0255】
これに対して、比較例1においては、フィルム状接着剤付きシリコンチップのピックアップ時に、支持シートにおけるフィルム状接着剤の残存を抑制できなかった。比較例1においては、|ΔT|が10.2であり、大きかった。
さらに、比較例1においては、フィルム状接着剤の硬化物の接着力が57N/2mm□であり、接着力が不十分であった。
一方、比較例1においては、D0が27.5mm以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0256】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0257】
10・・・支持シート、10a・・・支持シートの第1面、11・・・基材、13・・・フィルム状接着剤、101,102・・・ダイシングダイボンディングシート、90・・・フィルム状接着剤の硬化物、90a・・・フィルム状接着剤の硬化物の第1面、90b・・・フィルム状接着剤の硬化物の第2面、90c・・・フィルム状接着剤の硬化物の側面、91・・・銅板、92・・・シリコンチップ、92c・・・シリコンチップの側面、99・・・第1試験片