(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/265 20180101AFI20240415BHJP
F21W 102/135 20180101ALN20240415BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240415BHJP
【FI】
F21S41/265
F21W102:135
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020053271
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西村 将太
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-071976(JP,A)
【文献】特開2012-174653(JP,A)
【文献】特開2008-171773(JP,A)
【文献】特開2017-174734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/265
F21W 102/135
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光を前方に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記投影レンズの前方に向けて投影される光が、上端にカットオフラインを含む配光パターンを形成する車両用灯具であって、
前記投影レンズの出射面には、前
記配光パターンのうち、前記カットオフラインを形成する光の一部を前記出射面から出射される光の進行方向に対して、水平方向の一方側に向けて屈折させると共に、上方側に向けて光を屈折させる屈折面が設けられて
おり、
前記屈折面は、前記出射面から出射される光の進行方向に対して、鉛直方向に光を拡散させる拡散部を有し、
右側通行で走行する車両の場合において、前記屈折面は、前記出射面から出射される光の進行方向に対して、右側に向けて光を屈折させる、又は、左側通行で走行する車両の場合において、前記屈折面は、前記出射面から出射される光の進行方向に対して、左側に向けて光を屈折させることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記投影レンズの出射面は、凸状のレンズ面を構成しており、
前記屈折面は、前記出射面の下部側の領域に設けられていることを特徴とする請求項
1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
車両の前端側の左右両側に搭載される一対の車両用灯具が備える前記投影レンズの間で、前記屈折面が互いに同じ方向に向けて光を屈折させることを特徴とする請求項1
又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記投影レンズは、車両の前端側のコーナー部に付与されたスラント形状に合わせて、前記出射面から出射される光の進行方向に対して、水平方向の一端側よりも他端側が後退する方向に向かって前記出射面が傾斜した形状を有しており、
車両の前端側の左右両側に搭載される一対の車両用灯具が備える前記投影レンズの間で、前記屈折面が非対称な形状を有することを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記右側通行で走行する車両の場合において、前記屈折面により屈折して右上側にずらしたカットオフラインの一部の光は、光度分布のV-V線の0°を超え、且つ、H-H線の0°未満の中心付近からずれている
、又は、前記左側通行で走行する車両の場合において、前記屈折面により屈折して左上側にずらしたカットオフラインの一部の光は、光度分布のV-V線の0°を超え、且つ、H-H線の0°を超えた中心付近からずれていることを特徴とする請求項
1~4の何れか一項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記投影レンズは、第1のレンズと第2のレンズとを有し、
前記第1のレンズは、前記光源から出射された光を入射する入射部と、前記入射部から入射した光の一部を反射する反射面と、前記反射面の前方に形成されカットオフラインを規定する前端部と、前記入射部から入射した光を外部に出射する第1の出射面とを備え、
前記第2のレンズは、前記第1の出射面から外部に出射された光が入射する入射面と、前記入射面から入射した光を外部に出射する第2の出射面とを備え、
前記第1のレンズは、上端にカットオフラインを含む
前記配光パターンを前記第1の出射面から出射し、
前記第2の出射面には、前記入射面から入射した前
記配光パターンのうち、前記カットオフラインを形成する光の一部を前記第2の出射面から出射される光の進行方向に対して、水平方向の一方側に向けて光を屈折させると共に、上方側に向けて光を屈折させる前記屈折面が設けられていることを特徴とする請求項1~
5の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用前照灯(ヘッドランプ)などの車両用灯具は、光源と、光源から出射された光を車両進行方向に向けて反射するリフレクタと、リフレクタにより反射された光の一部を遮光(カット)するシェードと、シェードにより一部がカットされた光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備えている。
【0003】
このような車両用灯具では、すれ違い用ビーム(ロービーム)として、シェードの前端によって規定される光源像を投影レンズにより反転投影することで、上端にカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成している。
【0004】
ところで、上述した車両用灯具では、シェードにより一部がカットされた光を車両進行方向に向けて投影するため、シェードの前端により規定されるカットオフラインがシャープになり過ぎてしまうといった問題があった。すなわち、ロービーム用配光パターンでは、G値と呼ばれるカットオフラインを跨ぐ特定位置での光度断面(光度分布)の傾斜度合いが、法規上の基準値を超えて高くなることを防ぐため、カットオフラインの明暗境界を適度にぼかす必要がある。
【0005】
このような問題を解決するために、下記特許文献1に記載の発明では、第1の光を出射する第1の光源と、前記第1の光を車両進行方向の下方側に向けて反射する第1の反射部材と、前記第1の反射部材により反射された前記第1の光の一部を車両進行方向の上方側に向けて反射する第2の反射部材と、前記第2の反射部材の下方に配置されて、車両進行方向に向けて第2の光を出射する第2の光源と、前記第1の光及び前記第2の光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備え、前記第2の光源は、車両高さ方向と車両幅方向とに対応した2方向のうち、少なくとも車両幅方向に対応した方向に並んで配置された複数の発光素子を有し、前記投影レンズは、前記第1の反射部材により車両進行方向の下方側に向けて反射された第1の光が通過する下部領域と、前記第2の反射部材により車両進行方向の上方側に向けて反射された第1の光が通過する上部領域と、前記下部領域と前記上部領域との間に位置して、前記第2の光源から出射された第2の光が通過する中間領域とのうち、前記下部領域に対応して配置されて、前記第1の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第1の拡散面と、前記上部領域に対応して配置されて、前記第1の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第2の拡散面と、前記中間領域に対応して配置されて、前記第2の光を車両高さ方向と車両幅方向とに拡散させる第3の拡散面とを有する車両用灯具が提案されている。
【0006】
下記特許文献1に記載の発明では、上述した第1の拡散面及び第2の拡散面に入射した第1の光を車両の高さ方向(上下方向)に拡散させることによって、カットオフラインの明暗境界を適度にぼかしながら、G値が法規上の基準値を超えて高くなることを防ぎつつ、良好なロービーム用配光パターンを得ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、上述した特許文献1に記載の発明では、カットオフラインの明暗境界を上下方向にぼかすことによって、この上下方向にぼかしたカットオフラインの間に、法規上の基準点が入り、この基準点での光度が基準値を超えて高くなってしまう可能性がある。
【0009】
なお、具体的な法規については、米国法規や米国道路安全保険協会(IIHS:Insurance Institute for Highway Safety)などが挙げられる。また、法規については、日本の法規や外国の法規、各国の将来的に変更される法規も含まれるものとする。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、良好な配光パターンが得られる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 光源と、
前記光源から出射された光を前方に向けて投影する投影レンズとを備え、
前記投影レンズの前方に向けて投影される光が、上端にカットオフラインを含む配光パターンを形成する車両用灯具であって、
前記投影レンズの出射面には、前記配光パターンのうち、前記カットオフラインを形成する光の一部を前記出射面から出射される光の進行方向に対して、水平方向の一方側に向けて屈折させると共に、上方側に向けて光を屈折させる屈折面が設けられており、
前記屈折面は、前記出射面から出射される光の進行方向に対して、鉛直方向に光を拡散させる拡散部を有し、
右側通行で走行する車両の場合において、前記屈折面は、前記出射面から出射される光の進行方向に対して、右側に向けて光を屈折させる、又は、左側通行で走行する車両の場合において、前記屈折面は、前記出射面から出射される光の進行方向に対して、左側に向けて光を屈折させることを特徴とする車両用灯具。
〔2〕 前記投影レンズの出射面は、凸状のレンズ面を構成しており、
前記屈折面は、前記出射面の下部側の領域に設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の車両用灯具。
〔3〕 車両の前端側の左右両側に搭載される一対の車両用灯具が備える前記投影レンズの間で、前記屈折面が互いに同じ方向に向けて光を屈折させることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の車両用灯具。
〔4〕 前記投影レンズは、車両の前端側のコーナー部に付与されたスラント形状に合わせて、前記出射面から出射される光の進行方向に対して、水平方向の一端側よりも他端側が後退する方向に向かって前記出射面が傾斜した形状を有しており、
車両の前端側の左右両側に搭載される一対の車両用灯具が備える前記投影レンズの間で、前記屈折面が非対称な形状を有することを特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
〔5〕 前記右側通行で走行する車両の場合において、前記屈折面により屈折して右上側にずらしたカットオフラインの一部の光は、光度分布のV-V線の0°を超え、且つ、H-H線の0°未満の中心付近からずれている、又は、前記左側通行で走行する車両の場合において、前記屈折面により屈折して左上側にずらしたカットオフラインの一部の光は、光度分布のV-V線の0°を超え、且つ、H-H線の0°を超えた中心付近からずれていることを特徴とする前記〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
〔6〕 前記投影レンズは、第1のレンズと第2のレンズとを有し、
前記第1のレンズは、前記光源から出射された光を入射する入射部と、前記入射部から入射した光の一部を反射する反射面と、前記反射面の前方に形成されカットオフラインを規定する前端部と、前記入射部から入射した光を外部に出射する第1の出射面とを備え、
前記第2のレンズは、前記第1の出射面から外部に出射された光が入射する入射面と、前記入射面から入射した光を外部に出射する第2の出射面とを備え、
前記第1のレンズは、上端にカットオフラインを含む前記配光パターンを前記第1の出射面から出射し、
前記第2の出射面には、前記入射面から入射した前記配光パターンのうち、前記カットオフラインを形成する光の一部を前記第2の出射面から出射される光の進行方向に対して、水平方向の一方側に向けて光を屈折させると共に、上方側に向けて光を屈折させる前記屈折面が設けられていることを特徴とする前記〔1〕~〔5〕の何れか一項に記載の車両用灯具。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、良好な配光パターンが得られる車両用灯具を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用灯具を備えた車両を示し、(A)はその正面図、(B)はその上面図である。
【
図2】
図1に示す一方の車両用灯具の構成を示し、(A)はその平面図、(B)はその断面図である。
【
図3】
図1に示す一方の車両用灯具が備える投影レンズの構成を示す斜視図である。
【
図4】
図2に示す投影レンズの出射面を示す斜視図である。
【
図5】
図3に示す屈折面を拡大して示す斜視図である。
【
図6】(A)は
図4中に示す線分A-Aによる水平断面において、投影レンズの前方に向けて投影される光の光路を示す模式図、(B)は
図4中に示す線分B-Bによる水平断面において、投影レンズの前方に向けて投影される光の光路を示す模式図である。
【
図7】(A)は右側通行での屈折面を設けた場合の投影レンズの前方に向けて投影される光によるロービーム用配光パターンを示す模式図、(B)は屈折面を設けなかった場合の投影レンズの前方に向けて投影される光によるロービーム用配光パターンを示す模式図、(C)は左側通行での屈折面を設けた場合の投影レンズの前方に向けて投影される光によるロービーム用配光パターンを示す模式図である。
【
図8】
図1に示す他方の車両用灯具が備える投影レンズの構成を示し、(A)は線分A-Aによる水平断面において、投影レンズの前方に向けて投影される光の光路を示す模式図、(B)は線分B-Bによる水平断面において、投影レンズの前方に向けて投影される光の光路を示す模式図である。
【
図9】リフレクタ型の車両用灯具の構成を示す断面図である。
【
図10】直射型の車両用灯具の構成を示す断面図である。
【
図11】
図9及び
図10に示す車両用灯具が備える右側の投影レンズの構成を示し、(A)はその正面図、(B)は(A)中に示す線分D-Dによる水平断面において、投影レンズの前方に向けて投影される光の光路を示す模式図、(C)は(A)中に示す線分E-Eによる水平断面において、投影レンズの前方に向けて投影される光の光路を示す模式図である。
【
図12】
図9及び
図10に示す車両用灯具が備える左側の投影レンズの構成を示し、(A)はその正面図、(B)は(A)中に示す線分D-Dによる水平断面において、投影レンズの前方に向けて投影される光の光路を示す模式図、(C)は(A)中に示す線分E-Eによる水平断面において、投影レンズの前方に向けて投影される光の光路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を車両用灯具の前後方向(長さ方向)、Y軸方向を車両用灯具の左右方向(幅方向)、Z軸方向を車両用灯具の上下方向(高さ方向)として、それぞれ示すものとする。
【0016】
本発明の一実施形態として、例えば
図1に示す車両用灯具1A,1Bについて説明する。
なお、
図1は、車両用灯具1A,1Bを備えた車両Bを示し、(A)はその正面図、(B)はその上面図である。
【0017】
本実施形態の車両用灯具1A,1Bは、例えば
図1(A),(B)に示すように、車両Bの前端側の左右両側に搭載される一対の車両用前照灯(ヘッドランプ)に本発明を適用したものである。このうち、一方の車両用灯具1Aは、車両右側の車両用前照灯を構成し、他方の車両用灯具1Bは、車両左側の車両用前照灯を構成している。
【0018】
一方の車両用灯具1A及び他方の車両用灯具1Bは、車両Bの前端側のコーナー部に付与されたスラント形状に合わせて、車両Bの進行方向に対して車幅方向の内側よりも外側が後退する方向に向かって傾斜して設けられている。
【0019】
本実施形態では、先ず、
図2~
図8に示す一方の車両用灯具1Aの構成を例に挙げて説明する。
なお、
図2は、一方の車両用灯具1Aの構成を示し、(A)はその平面図、(B)はその(A)中に示す線分X-Xによる断面図である。
図3は、一方の車両用灯具1Aが備える投影レンズ3Aの構成を示す斜視図である。
図4は、投影レンズ3Aの出射面9を示す斜視図である。
図5は、屈折面11を拡大して示す斜視図である。
図6(A)は、
図3中に示す線分A-Aによる水平断面において、投影レンズ3Aの前方に向けて投影される光Lの光路を示す模式図である。
図6(B)は、
図3中に示す線分B-Bによる水平断面において、投影レンズ3Aの前方に向けて投影される光L,L’の光路を示す模式図である。
図7(A)は、右側通行での屈折面11を設けた場合の投影レンズ3Aの前方に向けて投影される光L,L’によるロービーム用配光パターンPを示す模式図である。
図7(B)は、屈折面11を設けなかった場合の投影レンズ3Aの前方に向けて投影される光Lによるロービーム用配光パターンPを示す模式図である。
図7(C)は、左側通行での屈折面11を設けた場合の投影レンズ3Aの前方に向けて投影される光によるロービーム用配光パターンを示す模式図である。
図8(A)は、他方の車両用灯具1Bが備える投影レンズ3Bの線分A-Aによる水平断面において、投影レンズ3Bの前方に向けて投影される光Lの光路を示す模式図である。
図8(B)は、他方の車両用灯具1Bが備える投影レンズ3Bの線分B-Bによる水平断面において、投影レンズ3Bの前方に向けて投影される光L,L’の光路を示す模式図である。
【0020】
本実施形態の車両用灯具1Aは、
図2に示すように、光源2と、光源から出射された光を前方に向けて投影する投影レンズ3Aとを備えている。
【0021】
光源2については、例えば、白色光を発する発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の発光素子を用いることができる。なお、光源の種類については、特に限定されるものではなく、上述した発光素子以外の光源を用いてもよい。また、光源2の数については、1つ限らず、複数であってもよい。
【0022】
投影レンズ3Aについては、例えばポリカーボネイトやアクリル等の透明樹脂やガラスなど、空気よりも屈折率の高い材質のものを用いることができる。
【0023】
投影レンズ3Aは、水平方向に延びる基準軸に沿って、入射部4と、反射面5と、出射面6とがこの順で配置された第1のレンズ7と、入射面8と、出射面9とがこの順で配置された第2のレンズ10とを備えている。
【0024】
投影レンズ3Aでは、光源2から出射された光Lが、入射部4から第1のレンズ7の内部に入射して、反射面5によって一部が反射された後、出射面6から第1のレンズ7の外部に出射される。また、第1のレンズ7の出射面6から外部に出射された光Lが、入射面8から第2のレンズ10の内部に入射した後、出射面9から第2のレンズ10の外部へと出射される。これにより、投影レンズ3Aの前方に照射される光Lが、上端に反射面5の前端部によって規定されるカットオフラインを含むロービーム用配光パターンを形成するように構成されている。
【0025】
また、投影レンズ3Aの出射面9には、
図3及び
図4に示すように、この投影レンズ3Aの前方に向けて投影される光Lの一部を特定の方向に向けて屈折させる屈折面11が設けられている。
【0026】
屈折面11は、出射面9から出射される光の進行方向に対して、左右方向(水平方向)の一方側(右側)に向けて光を屈折させると共に、上方側に向けて光を屈折させるカット面により構成されている。屈折面11は、出射面9の下端部に沿った位置から左右方向(水平方向)の一方側(右側)にオフセットした状態で設けられている。さらに、屈折面11は、
図5に拡大して示すようなカット面形状を有している。
【0027】
具体的に、この屈折面11は、出射面9の下部側の領域に設けられ、この出射面9の下部側に入射した光Lを上方側に向けて屈折させるために、後方に向かって湾曲したカット面形状を有している。また、屈折面11は、凸状に湾曲したレンズ面からなる出射面9の下部側の領域と形状が近い。このため、出射面9の下部側の領域に屈折面11を設けた方が、この屈折面11が前方に突き出すのを低く抑えながら、上方側に向けて光L’を屈折させ易くすることが可能である。さらに、出射面9の下端部に沿った位置に屈折面11を設けることで、上方側に向けて光L’をより屈折させ易くすることが可能である。
【0028】
一方の車両用灯具1Aでは、
図6(A)に示すように、右側通行で走行する車両Bの場合において、投影レンズ3Aの出射面9から前方に向けて投影される光Lの進行方向に対して、
図6(B)に示すように、屈折面11により屈折された光L’が、車両Bの幅方向における自車線側(右側)に向けて投影される。
【0029】
以上のような構成を有する本実施形態の車両用灯具1Aは、投影レンズ3Aの前方に向けて投影される光L,L’によって、
図7(A)に示すような上端にカットオフラインCLを含むロービーム用配光パターンPを形成する。
【0030】
一方、比較例として、出射面9に屈折面11を設けなかった場合に、投影レンズ3Aの前方に向けて投影される光Lによって形成されるロービーム用配光パターンPを
図6(B)に示す。
【0031】
図7(A)に示すように、上述した屈折面11を出射面9に設けた場合には、この屈折面11により屈折された光L’によって、カットオフラインCLの明暗境界を上方側にずらしながら、この上方側のカットオフラインCLを車両Bの幅方向における自車線側(右側)にずらしている。
【0032】
この場合、右上方側にずらしたカットオフラインCLとの間に、法規上の基準点Sが入っても、ぼかしたカットオフラインCLが無いため、基準点Sの光度を測っても基準値を超えることを防ぐことが可能である。その結果として、良好なロービーム用配光パターンPを得ることが可能である。
【0033】
また、基準Sは、光度分布のV-V線の0°を超え、且つ、H-H線の0°未満の中心付近に位置している。一方、基準点Sは、そのような位置に限定されるものではなく、V-V線の0°を超え、且つ、H-H線の0°を超えた中心付近に位置していてもよい。
【0034】
その場合、カットオフラインCLの明暗境界を上方側にずらしながら、この上方側のカットオフラインCLを車両Bの幅方向における自車線側(右側)に更にずらすことで、法規上の基準点Sが入っても、ぼかしたカットオフラインCLが無いため、基準点Sの光度を測っても基準値を超えることを防ぐことが可能である。
【0035】
以上のことから、H-H線とV-V線の中心付近に法規上の基準点Sがある場合において、本発明を適用することが可能である。
【0036】
一方、
図7(B)に示すように、出射面9に屈折面11を設けなかった場合には、上方側にずらしたカットオフラインCLとの間に、法規上の基準点Sが入り、この基準点Sでの光度が基準値を超えて高くなってしまい、法規に対して不適合となる。したがって、良好なロービーム用配光パターンPを得ることは困難である。
【0037】
一方の車両用灯具1Aでは、左側通行で走行する車両Bの場合において、投影レンズ3Aの出射面9から前方に向けて投影される光Lの進行方向に対して、屈折面11により屈折された光L’が、車両Bの幅方向における自車線側(左側)に向けて投影される。すなわち、左側通行で走行する車両Bの場合は、右側通行で走行する車両Bの場合とは屈折面11により屈折される光L’の方向が逆向きとなっている。
【0038】
この場合、投影レンズ3Aの前方に向けて投影される光Lによって形成されるロービーム用配光パターンPを
図7(C)に示す。
図7(C)に示すように、左上方側にずらしたカットオフラインCLとの間に、法規上の基準点S’が入っても、ぼかしたカットオフラインCLが無いため、基準点S’の光度を測っても基準値を超えることを防ぐことが可能である。その結果として、良好なロービーム用配光パターンPを得ることが可能である。
【0039】
また、基準点S’は、V-V線の0°を超え、且つ、H-H線の0°を超えた中心付近に位置している。一方、基準点S’は、そのような位置に限定されるものではなく、V-V線の0°未満、且つ、H-H線の0°を超えた中心付近に位置していてもよい。
【0040】
その場合、カットオフラインCLの明暗境界を上方側にずらしながら、この上方側のカットオフラインCLを車両Bの幅方向における自車線側(左側)に更にずらすことで、法規上の基準点S’が入っても、ぼかしたカットオフラインCLは向かわないため、基準点S’の光度を測っても基準値を超えることを防ぐことが可能である。
【0041】
次に、
図8(A),(B)に示す他方の車両用灯具1Bの構成について説明する。
なお、他方の車両用灯具1Bにおいて、
図8(A)は、上記
図4中に示す線分A-Aによる水平断面に対応し、
図8(B)は、上記
図4中に示す線分B-Bによる水平断面に対応している。
【0042】
他方の車両用灯具1Bは、上記投影レンズ3Aが備える投影レンズ3Aとは左右対称な形状を有する投影レンズ3Bを備えている。このため、屈折面11は、出射面9の下端部に沿った位置から左右方向(水平方向)の他方側(左側)にオフセットした状態で設けられている。
【0043】
一方、投影レンズ3Bの屈折面11は、出射面9から出射される光Lの進行方向に対して、左右方向(水平方向)の一方側(右側)に向けて光L’を屈折させると共に、上方側に向けて光L’を屈折させるカット面により構成されている。
【0044】
したがって、他方の車両用灯具1Bでは、
図7(A)に示すように、投影レンズ3Bの出射面9から前方に向けて投影される光Lの進行方向に対して、
図5(B)に示すように、屈折面11により屈折された光L’が、車両Bの幅方向における自車線側(右側)に向けて投影される。
【0045】
以上のような構成を有する他方の車両用灯具1Bは、上記一方の車両用灯具1Aと同様に、投影レンズ3Bの前方に向けて投影される光L,L’によって、上端にカットオフラインCLを含むロービーム用配光パターンPを形成する。
【0046】
他方の車両用灯具1Bは、上記一方の車両用灯具1Aと同様に、上述した屈折面11により屈折された光L’によって、カットオフラインCLの明暗境界を上方側にずらしながら、車両Bの幅方向における自車線側(右側)にずらしている。
【0047】
ここで、一方の車両用灯具1Aが備える投影レンズ3Aと、他方の車両用灯具1Aが備える投影レンズ3Aとは、
図1(B)に示すように、車両Bの前端側のコーナー部に付与されたスラント形状に合わせて、車両Bの進行方向(出射面11から出射される光Lの進行方向)に対して、車両Bの幅方向(水平方向)の内側(一端側)よりも外側(他端側)が後退する方向に向かって、互いの出射面11が逆向きに傾斜した形状を有している。
【0048】
この場合、投影レンズ2Aの屈折面9と、投影レンズ2Bの屈折面9とは、水平断面において互いに非対称な形状を有している。すなわち、それぞれの屈折面9の少なくとも1辺(正面視の場合は1面)を逆方向に傾けている。
【0049】
これにより、右上方側にずらしたカットオフラインCLとの間に、法規上の基準点Sが入っても、ぼかしたカットオフラインCLが無いため、基準点Sの光度を測っても基準値を超えることを防ぐことが可能である。その結果として、良好なロービーム用配光パターンPを得ることが可能である。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記屈折面11については、上述した出射面9から出射される光Lの進行方向に対して、上方側に向けて光L’を屈折させる構成に限らず、上下方向(鉛直方向)に拡散させる拡散部を設けた構成としてもよい。
【0051】
また、本発明が適用される車両用灯具は、上述した構成に限らず、例えば、光源と、光源から出射された光を車両進行方向に向けて反射するリフレクタと、リフレクタにより反射された光の一部を遮光(カット)するシェードと、シェードにより一部がカットされた光を車両進行方向に向けて投影する投影レンズとを備えた構成であってもよい。
【0052】
具体的には、
図9に示すプロジェクタ型の車両用灯具1Cや、
図10に示す直射型の車両用灯具1Dに本発明を適用することが可能である。
【0053】
プロジェクタ型の車両用灯具1Cは、
図9に示すように、光源21と、リフレクタ22と、シェード23と、投影レンズ24とを有し、光源21から出射された光Lがリフレクタ22で反射された後、投影レンズ24の焦点付近で集光し、シェード23により一部の光Lが遮光されることによって、ロービーム用配光パターンを形成している。
【0054】
直射型の車両用灯具1Dは、
図10に示すように、光源21と、シェード23と、投影レンズ24とを有し、光源21から出射された光Lが投影レンズ24の焦点付近で集光し、シェード23により一部の光Lが遮光されることによって、ロービーム用配光パターンを形成している。
【0055】
図9に示すプロジェクタ型の車両用灯具1Cと、
図10に示す直射型の車両用灯具1Dとは、それぞれ投影レンズ24の出射面24aに、上記屈折面11が設けられている。
【0056】
具体的に、この屈折面11は、出射面24aの下部側の領域に設けられ、この出射面24aの下部側に入射した光L’を上方側に向けて屈折させるために、後方に向かって湾曲したカット面形状を有している。また、屈折面11は、凸状に湾曲したレンズ面からなる出射面24aの下部側の領域と形状が近い。このため、出射面24aの下部側の領域に屈折面11を設けた方が、この屈折面11が前方に突き出すのを低く抑えながら、上方側に向けて光L’を屈折させ易くすることが可能である。さらに、出射面24aの下端部に沿った位置に屈折面11を設けることで、上方側に向けて光L’をより屈折させ易くすることが可能である。
【0057】
以上のような構成を有する本実施形態の車両用灯具1C,1Dは、投影レンズ24の前方に向けて投影される光L,L’によって、上記
図7(A)に示す場合と同様に、上端にカットオフラインCLを含むロービーム用配光パターンPを形成する。
【0058】
また、本実施形態の車両用灯具1C,1Dでは、
図11(A)及び
図12(A)に示すように、右側通行で走行する車両Bの場合において、
図11(B)及び
図12(B)に示すように、投影レンズ24の出射面24aから前方に向けて投影される光Lの進行方向に対して、
図11(C)及び
図12(C)に示すように、屈折面11により屈折された光L’が、車両Bの幅方向における自車線側(右側)に向けて投影される。
【0059】
なお、
図11は、
図9及び
図10に示す車両用灯具1C,1Dが備える右側の投影レンズ24の構成を示し、(A)はその正面図、(B)は(A)中に示す線分D-Dによる水平断面において、投影レンズ24の前方に向けて投影される光Lの光路を示す模式図、(C)は(A)中に示す線分E-Eによる水平断面において、投影レンズ24の前方に向けて投影される光L’の光路を示す模式図である。また、
図12は、
図9及び
図10に示す車両用灯具1C,1Dが備える左側の投影レンズ24の構成を示し、(A)はその正面図、(B)は(A)中に示す線分D-Dによる水平断面において、投影レンズ24の前方に向けて投影される光Lの光路を示す模式図、(C)は(A)中に示す線分E-Eによる水平断面において、投影レンズ24の前方に向けて投影される光L’の光路を示す模式図である。
【0060】
図7(A)に示すように、右側通行で走行する車両Bにおいて、上述した屈折面11を出射面24aに設けた場合には、この屈折面11により屈折された光L’によって、カットオフラインCLの明暗境界を上方側にずらしながら、この上方側のカットオフラインCLを車両Bの幅方向における自車線側(右側)にずらしている。
【0061】
この場合、右上方側にずらしたカットオフラインCLとの間に、法規上の基準点Sが入っても、ぼかしたカットオフラインCLが無いため、基準点Sの光度を測っても基準値を超えることを防ぐことが可能である。その結果として、良好なロービーム用配光パターンPを得ることが可能である。
【0062】
また、基準Sは、光度分布のV-V線の0°を超え、且つ、H-H線の0°未満の中心付近に位置している。一方、基準点Sは、そのような位置に限定されるものではなく、V-V線の0°を超え、且つ、H-H線の0°を超えた中心付近に位置していてもよい。
【0063】
その場合、カットオフラインCLの明暗境界を上方側にずらしながら、この上方側のカットオフラインCLを車両Bの幅方向における自車線側(右側)に更にずらすことで、法規上の基準点Sが入っても、ぼかしたカットオフラインCLが無いため、基準点Sの光度を測っても基準値を超えることを防ぐことが可能である。
【0064】
以上のことから、H-H線とV-V線の中心付近に法規上の基準点Sがある場合において、本発明を適用することが可能である。
【0065】
一方、本実施形態の車両用灯具1C,1Dでは、左側通行で走行する車両Bの場合において、投影レンズ24の出射面24aから前方に向けて投影される光Lの進行方向に対して、屈折面11により屈折された光L’が、車両Bの幅方向における自車線側(左側)に向けて投影される。すなわち、左側通行で走行する車両Bの場合は、右側通行で走行する車両Bの場合とは屈折面11により屈折される光L’の方向が逆向きとなっている。
【0066】
この場合、投影レンズ24の前方に向けて投影される光Lによって形成されるロービーム用配光パターンPは、上記
図7(C)に示す場合と同様となる。すなわち、
図7(C)に示すように、左上方側にずらしたカットオフラインCLとの間に、法規上の基準点S’が入っても、ぼかしたカットオフラインCLが無いため、基準点S’の光度を測っても基準値を超えることを防ぐことが可能である。その結果として、良好なロービーム用配光パターンPを得ることが可能である。
【0067】
また、基準点S’は、V-V線の0°を超え、且つ、H-H線の0°を超えた中心付近に位置している。一方、基準点S’は、そのような位置に限定されるものではなく、V-V線の0°未満、且つ、H-H線の0°を超えた中心付近に位置していてもよい。
【0068】
その場合、カットオフラインCLの明暗境界を上方側にずらしながら、この上方側のカットオフラインCLを車両Bの幅方向における自車線側(左側)に更にずらすことで、法規上の基準点S’が入っても、ぼかしたカットオフラインCLは向かわないため、基準点S’の光度を測っても基準値を超えることを防ぐことが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1A…一方の車両用灯具 1B…他方の車両用灯具 2…光源 3A,3B…投影レンズ 7…第1のレンズ 9…出射面 10…第2のレンズ 11…屈折面 L…光 P…ロービーム用配光パターン 21…光源 22…リフレクタ 23…シェード 24…投影レンズ 24a…反射面