(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】胆管がんのバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240415BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240415BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20240415BHJP
C07K 14/745 20060101ALN20240415BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240415BHJP
C12N 9/12 20060101ALN20240415BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20240415BHJP
C12N 9/90 20060101ALN20240415BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20240415BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20240415BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20240415BHJP
C12N 9/64 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/574 A
C07K14/54
C07K14/745
C07K14/705
C12N9/12
C12N9/16 B
C12N9/90
C12N9/16 Z
C07K14/78
C12N5/09
C07K16/30
C12N9/64
(21)【出願番号】P 2020074425
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】517448489
【氏名又は名称】合同会社H.U.グループ中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 弘明
(72)【発明者】
【氏名】池田 千咲
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 達俊
(72)【発明者】
【氏名】栗本 綾子
(72)【発明者】
【氏名】植田 俊樹
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0195537(US,A1)
【文献】特表2014-519340(JP,A)
【文献】特表2016-538545(JP,A)
【文献】特開2015-007654(JP,A)
【文献】Suman Dutta et al,Proteomics profiling of cholangiocarcinoma exosomes: A potential role of oncogenic protein transferring in cancer progression,Biochimica et Biophysica Acta,2015年,1852,1989-1999
【文献】C. Rupp et al,Pathological features of primary sclerosing cholangitis identified by bile proteomic analysis,BBA - Molecular Basis of Disease,2018年,1864,1380-1389
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記1
)のタンパク質からなる、胆汁における胆管がんのバイオマーカー:
1)クローディン-
3。
【請求項2】
前記バイオマーカーが、胆汁の細胞外小胞における胆管がんのバイオマーカーである、請求項1記載のバイオマーカー。
【請求項3】
請求項1に記載の胆汁における胆管がんのバイオマーカーと、さらに下記2)~165)のタンパク質からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である胆汁における胆管がんのバイオマーカーとを含む、胆汁における胆管がんのバイオマーカーセット:
2)Ras関連タンパク質Rab-20;
3)Ras関連タンパク質Rab-5A;
4)Ras関連タンパク質Rab-3B;
5)ロイシン-tRNAリガーゼ(細胞質性);
6)第X凝固因子;
7)クローディン-7;
8)クローディン-10;
9)WDリピート及びSOCSボックス含有タンパク質2;
10)フォン・ウィルブランド因子Aドメイン含有タンパク質1;
11)バーシカンコアタンパク質;
12)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質VTA1ホモログ;
13)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質4B;
14)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質37D;
15)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質37B;
16)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質28ホモログ;
17)ウリジン 5’-モノホスフェートシンターゼ;
18)アンコンベンショナルミオシン-Id;
19)アンコンベンショナルミオシン-Ic;
20)UMP-CMPキナーゼ;
21)UDP-グルコース 4-エピメラーゼ;
22)チロシン-プロテインホスファターゼ 非レセプター型12;
23)腫瘍感受性遺伝子101タンパク質;
24)尿細管間質性腎炎抗原様;
25)チューブリン重合促進タンパク質ファミリーメンバー3;
26)チューブリンβ-6鎖;
27)チューブリンβ-4B鎖;
28)チューブリンβ-2B鎖;
29)チューブリンβ鎖;
30)チューブリンα-1C鎖;
31)チューブリンα-1A鎖;
32)トランスメンブラン9スーパーファミリーメンバー2;
33)トランスフェリンレセプタータンパク質2;
34)Toll相互作用タンパク質;
35)組織因子経路インヒビター;
36)チオレドキシン様タンパク質1;
37)T-ボックス脳タンパク質1;
38)STE20関連キナーゼアダプタータンパク質β;
39)スタフィロコッカルヌクレアーゼドメイン含有タンパク質1;
40)ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットβ-1;
41)ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットα-1;
42)ナトリウム/グルコース コトランスポーター4;
43)ナトリウム/グルコース コトランスポーター1;
44)SH3ドメイン結合タンパク質4;
45)セリン/アルギニン-リッチ スプライシング因子7;
46)セプチン-9;
47)セプチン-8;
48)RNA転写,翻訳及び輸送因子タンパク質;
49)リボヌクレアーゼ4;
50)Rho GTPアーゼ活性化タンパク質1;
51)レチナルデヒドロゲナーゼ1;
52)レセプター型チロシン-プロテインホスファターゼH;
53)キノンオキシドレダクターゼ;
54)タンパク質S100-A10;
55)タンパク質MAL2;
56)タンパク質AMBP;
57)プロスタミド/プロスタグランジンFシンターゼ;
58)プログラム細胞死6-相互作用タンパク質;
59)推定リン脂質輸送ATPアーゼIH;
60)推定カチオン輸送ATPアーゼ13A4;
61)ポリペプチド N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ3;
62)ポリ(rC)結合タンパク質2;
63)血小板由来増殖因子D;
64)プラスチン-1;
65)色素上皮由来因子;
66)リン脂質輸送ATPアーゼIC;
67)ホスホリパーゼD1;
68)結腸がん過剰発現1タンパク質;
69)ニバン様タンパク質1;
70)N-アセチルラクトサミニドβ-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ3;
71)ミオシン調節軽鎖12B;
72)多剤耐性タンパク質1;
73)マザーズアゲンストデカペンタプレジックホモログ2;
74)ミトコンドリア性輸入レセプターサブユニットTOM70;
75)リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(細胞質性);
76)リソソーム膜タンパク質2;
77)脂肪腫好性パートナー;
78)分岐鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体のリポアミドアセチルトランスフェラーゼ成分(ミトコンドリア性);
79)ケラチン,II型細胞骨格8;
80)IST1ホモログ;
81)インターロイキン-18;
82)インター-α-トリプシンインヒビター重鎖H2;
83)インテグリン結合プロテインキナーゼ;
84)無機ピロホスファターゼ;
85)ヒアルロンナン結合タンパク質2;
86)高アフィニティーcAMP-特異的かつIBMX-非感受性3’,5’-サイクリックホスホジエステラーゼ8A;
87)ヘテロ核リボヌクレオプロテインL;
88)ヘテロ核リボヌクレオプロテインH;
89)ヘテロ核リボヌクレオプロテインD様;
90)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(k)サブユニットα;
91)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(I)/G(S)/G(T) サブユニットβ-2;
92)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(I)/G(S)/G(O) サブユニットγ-12;
93)グアニンデアミナーゼ;
94)増殖因子レセプター結合タンパク質7;
95)グリピカン-6;
96)グルタチオン S-トランスフェラーゼ ω-1;
97)グルタミン-フルクトース-6-ホスフェートアミノトランスフェラーゼ[異性化]1;
98)グルタメート-リッチタンパク質5;
99)γ-可溶性NSF付着タンパク質;
100)ガレクチン-9B;
101)ガレクチン-2;
102)フェルミチンファミリーホモログ1;
103)FAS-関連因子2;
104)エストラジオール 17-β-デヒドロゲナーゼ2;
105)上皮細胞接着分子;
106)上皮成長因子レセプターキナーゼ基質8様タンパク質1;
107)小胞体シャペロンBiP;
108)伸長因子Tu(ミトコンドリア性)
109)ダブルコルチンドメイン含有タンパク質2;
110)ジスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質10;
111)ジヒドロピリミジナーゼ関連タンパク質2;
112)細胞質性ダイニン1重鎖1;
113)シスチン-1;
114)サイクリン-Y;
115)コピン-8;
116)補体C1qサブ成分サブユニットC;
117)コラーゲンα-1(XVIII)鎖;
118)コアトマーサブユニットγ-1;
119)コアトマーサブユニットα;
120)クラステリン;
121)クラスリン重鎖1;
122)荷電多胞体タンパク質5;
123)荷電多胞体タンパク質2a;
124)荷電多胞体タンパク質1a;
125)カルボキシ末端ドメインRNAポリメラーゼII ポリペプチドA スモールホスファターゼ1;
126)胆管側多選択性有機アニオントランスポーター2;
127)cAMP依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニットβ;
128)カルパイン-7;
129)カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII型サブユニットδ;
130)C-1-テトラヒドロ葉酸シンターゼ(細胞質性);
131)BRO1ドメイン含有タンパク質BROX;
132)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ4;
133)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1;
134)基底膜特異的ヘパラン硫酸プロテオグリカンコアタンパク質;
135)バンド4.1様タンパク質1;
136)ATP依存性6-ホスホフルクトキナーゼ(血小板型);
137)アスパルチル/アスパラギニルβ-ヒドロキシラーゼ;
138)アポリポタンパク質E;
139)アポリポタンパク質C-IV;
140)アポリポタンパク質B-100;
141)アノクタミン-1;
142)アネキシンA4;
143)アネキシンA13;
144)α-1,3-マンノシル-糖タンパク質2-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ;
145)アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC3;
146)アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC2;
147)ADP-リボシル化因子様タンパク質3;
148)ADP-リボシル化因子1;
149)ADP/ATPトランスロカーゼ3;
150)アシル-タンパク質チオエステラーゼ1;
151)60Sリボソーマルタンパク質L7a;
152)60Sリボソーマルタンパク質L7;
153)60Sリボソーマルタンパク質L3;
154)60Sリボソーマルタンパク質L27a;
155)60Sリボソーマルタンパク質L24;
156)60Sリボソーマルタンパク質L23;
157)60Sリボソーマルタンパク質L14;
158)60Sリボソーマルタンパク質L11;
159)60Sリボソーマルタンパク質L10;
160)40Sリボソーマルタンパク質SA;
161)40Sリボソーマルタンパク質S8;
162)40Sリボソーマルタンパク質S25;
163)40Sリボソーマルタンパク質S24;
164)40Sリボソーマルタンパク質S23;および
165)1-ホスファチジルイノシトール 4,5-ビホスフェート ホスホジエステラーゼδ-1。
【請求項4】
前記
2)~165)のタンパク質からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質が、2)~23)、25)~40)、42)~104)、106)~133)、135)~139)、および141)~165)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である、請求項
3記載のバイオマーカー
セット。
【請求項5】
前記
2)~165)のタンパク質からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質が、2)、5)、8)~10)、13)~17)、23)、24)、28)、32)、37)、38)、42)、44)、45)、47)、48)、57)、59)、60)、66)、68)、70)、73)、74)、80)、81)、83)、86)、87)、89)、94)、98)、100)、102)、103)、109)、112)~114)、118)、123)~126)、128)、129)、131)、132)、139)、141)、144)、147)、153)、155)、156)、159)、163)、および164)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である、請求項
3記載のバイオマーカーセット。
【請求項6】
前記
2)~165)のタンパク質からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質が、2)、6)、28)、31)、42)、45)、61)、68)、75)、93)、98)、105)、107)、125)、132)、155)、160)、および162)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である、請求項
3記載のバイオマーカー
セット。
【請求項7】
前記
2)~165)のタンパク質からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質が
、2)、5)、6)、8)、11)、16)、23)、25)、27)、42)、46)、49)、52)、54)~56)、58)~60)、63)、64)、67)、69)、73)、79)、82)、94)、97)、98)、103)、104)、107)、113)、115)、118)、122)、124)、127)、130)、134)、140)、142)、154)、158)、および160)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である、請求項
3記載のバイオマーカー
セット。
【請求項8】
前記
2)~165)のタンパク質からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質が、2)、6)、42)、98)、107)、および160)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である、請求項
3記載のバイオマーカー
セット。
【請求項9】
被験体から得られた胆汁含有サンプルにおいて、
下記1)
のタンパク質の量、又は、
下記1)のタンパク質の量と下記2)~165)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質の量
を解析することを含む、胆管がんの検査方法:
1)クローディン-3;
2)Ras関連タンパク質Rab-20;
3)Ras関連タンパク質Rab-5A;
4)Ras関連タンパク質Rab-3B;
5)ロイシン-tRNAリガーゼ(細胞質性);
6)第X凝固因子;
7)クローディン-7;
8)クローディン-10;
9)WDリピート及びSOCSボックス含有タンパク質2;
10)フォン・ウィルブランド因子Aドメイン含有タンパク質1;
11)バーシカンコアタンパク質;
12)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質VTA1ホモログ;
13)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質4B;
14)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質37D;
15)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質37B;
16)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質28ホモログ;
17)ウリジン 5’-モノホスフェートシンターゼ;
18)アンコンベンショナルミオシン-Id;
19)アンコンベンショナルミオシン-Ic;
20)UMP-CMPキナーゼ;
21)UDP-グルコース 4-エピメラーゼ;
22)チロシン-プロテインホスファターゼ 非レセプター型12;
23)腫瘍感受性遺伝子101タンパク質;
24)尿細管間質性腎炎抗原様;
25)チューブリン重合促進タンパク質ファミリーメンバー3;
26)チューブリンβ-6鎖;
27)チューブリンβ-4B鎖;
28)チューブリンβ-2B鎖;
29)チューブリンβ鎖;
30)チューブリンα-1C鎖;
31)チューブリンα-1A鎖;
32)トランスメンブラン9スーパーファミリーメンバー2;
33)トランスフェリンレセプタータンパク質2;
34)Toll相互作用タンパク質;
35)組織因子経路インヒビター;
36)チオレドキシン様タンパク質1;
37)T-ボックス脳タンパク質1;
38)STE20関連キナーゼアダプタータンパク質β;
39)スタフィロコッカルヌクレアーゼドメイン含有タンパク質1;
40)ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットβ-1;
41)ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットα-1;
42)ナトリウム/グルコース コトランスポーター4;
43)ナトリウム/グルコース コトランスポーター1;
44)SH3ドメイン結合タンパク質4;
45)セリン/アルギニン-リッチ スプライシング因子7;
46)セプチン-9;
47)セプチン-8;
48)RNA転写,翻訳及び輸送因子タンパク質;
49)リボヌクレアーゼ4;
50)Rho GTPアーゼ活性化タンパク質1;
51)レチナルデヒドロゲナーゼ1;
52)レセプター型チロシン-プロテインホスファターゼH;
53)キノンオキシドレダクターゼ;
54)タンパク質S100-A10;
55)タンパク質MAL2;
56)タンパク質AMBP;
57)プロスタミド/プロスタグランジンFシンターゼ;
58)プログラム細胞死6-相互作用タンパク質;
59)推定リン脂質輸送ATPアーゼIH;
60)推定カチオン輸送ATPアーゼ13A4;
61)ポリペプチド N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ3;
62)ポリ(rC)結合タンパク質2;
63)血小板由来増殖因子D;
64)プラスチン-1;
65)色素上皮由来因子;
66)リン脂質輸送ATPアーゼIC;
67)ホスホリパーゼD1;
68)結腸がん過剰発現1タンパク質;
69)ニバン様タンパク質1;
70)N-アセチルラクトサミニドβ-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ3;
71)ミオシン調節軽鎖12B;
72)多剤耐性タンパク質1;
73)マザーズアゲンストデカペンタプレジックホモログ2;
74)ミトコンドリア性輸入レセプターサブユニットTOM70;
75)リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(細胞質性);
76)リソソーム膜タンパク質2;
77)脂肪腫好性パートナー;
78)分岐鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体のリポアミドアセチルトランスフェラーゼ成分(ミトコンドリア性);
79)ケラチン,II型細胞骨格8;
80)IST1ホモログ;
81)インターロイキン-18;
82)インター-α-トリプシンインヒビター重鎖H2;
83)インテグリン結合プロテインキナーゼ;
84)無機ピロホスファターゼ;
85)ヒアルロンナン結合タンパク質2;
86)高アフィニティーcAMP-特異的かつIBMX-非感受性3’,5’-サイクリックホスホジエステラーゼ8A;
87)ヘテロ核リボヌクレオプロテインL;
88)ヘテロ核リボヌクレオプロテインH;
89)ヘテロ核リボヌクレオプロテインD様;
90)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(k)サブユニットα;
91)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(I)/G(S)/G(T) サブユニットβ-2;
92)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(I)/G(S)/G(O) サブユニットγ-12;
93)グアニンデアミナーゼ;
94)増殖因子レセプター結合タンパク質7;
95)グリピカン-6;
96)グルタチオン S-トランスフェラーゼ ω-1;
97)グルタミン-フルクトース-6-ホスフェートアミノトランスフェラーゼ[異性化]1;
98)グルタメート-リッチタンパク質5;
99)γ-可溶性NSF付着タンパク質;
100)ガレクチン-9B;
101)ガレクチン-2;
102)フェルミチンファミリーホモログ1;
103)FAS-関連因子2;
104)エストラジオール 17-β-デヒドロゲナーゼ2;
105)上皮細胞接着分子;
106)上皮成長因子レセプターキナーゼ基質8様タンパク質1;
107)小胞体シャペロンBiP;
108)伸長因子Tu(ミトコンドリア性)
109)ダブルコルチンドメイン含有タンパク質2;
110)ジスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質10;
111)ジヒドロピリミジナーゼ関連タンパク質2;
112)細胞質性ダイニン1重鎖1;
113)シスチン-1;
114)サイクリン-Y;
115)コピン-8;
116)補体C1qサブ成分サブユニットC;
117)コラーゲンα-1(XVIII)鎖;
118)コアトマーサブユニットγ-1;
119)コアトマーサブユニットα;
120)クラステリン;
121)クラスリン重鎖1;
122)荷電多胞体タンパク質5;
123)荷電多胞体タンパク質2a;
124)荷電多胞体タンパク質1a;
125)カルボキシ末端ドメインRNAポリメラーゼII ポリペプチドA スモールホスファターゼ1;
126)胆管側多選択性有機アニオントランスポーター2;
127)cAMP依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニットβ;
128)カルパイン-7;
129)カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII型サブユニットδ;
130)C-1-テトラヒドロ葉酸シンターゼ(細胞質性);
131)BRO1ドメイン含有タンパク質BROX;
132)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ4;
133)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1;
134)基底膜特異的ヘパラン硫酸プロテオグリカンコアタンパク質;
135)バンド4.1様タンパク質1;
136)ATP依存性6-ホスホフルクトキナーゼ(血小板型);
137)アスパルチル/アスパラギニルβ-ヒドロキシラーゼ;
138)アポリポタンパク質E;
139)アポリポタンパク質C-IV;
140)アポリポタンパク質B-100;
141)アノクタミン-1;
142)アネキシンA4;
143)アネキシンA13;
144)α-1,3-マンノシル-糖タンパク質2-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ;
145)アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC3;
146)アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC2;
147)ADP-リボシル化因子様タンパク質3;
148)ADP-リボシル化因子1;
149)ADP/ATPトランスロカーゼ3;
150)アシル-タンパク質チオエステラーゼ1;
151)60Sリボソーマルタンパク質L7a;
152)60Sリボソーマルタンパク質L7;
153)60Sリボソーマルタンパク質L3;
154)60Sリボソーマルタンパク質L27a;
155)60Sリボソーマルタンパク質L24;
156)60Sリボソーマルタンパク質L23;
157)60Sリボソーマルタンパク質L14;
158)60Sリボソーマルタンパク質L11;
159)60Sリボソーマルタンパク質L10;
160)40Sリボソーマルタンパク質SA;
161)40Sリボソーマルタンパク質S8;
162)40Sリボソーマルタンパク質S25;
163)40Sリボソーマルタンパク質S24;
164)40Sリボソーマルタンパク質S23;および
165)1-ホスファチジルイノシトール 4,5-ビホスフェート ホスホジエステラーゼδ-1。
【請求項10】
下記(a)および(b)を含む、請求項
9記載の方法:
(a)被験体から得られた胆汁含有サンプルから細胞外小胞を回収すること;および
(b)回収された細胞外小胞において、前
記タンパク質の量を解析すること。
【請求項11】
被験体が胆管がん患者である、請求項
9または
10記載の方法。
【請求項12】
下記1)
のタンパク質の量、又は、
下記1)のタンパク質の量と下記2)~165)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質の量の解析手段を含む、胆管がんの診断試薬:
1)クローディン-3;
2)Ras関連タンパク質Rab-20;
3)Ras関連タンパク質Rab-5A;
4)Ras関連タンパク質Rab-3B;
5)ロイシン-tRNAリガーゼ(細胞質性);
6)第X凝固因子;
7)クローディン-7;
8)クローディン-10;
9)WDリピート及びSOCSボックス含有タンパク質2;
10)フォン・ウィルブランド因子Aドメイン含有タンパク質1;
11)バーシカンコアタンパク質;
12)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質VTA1ホモログ;
13)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質4B;
14)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質37D;
15)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質37B;
16)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質28ホモログ;
17)ウリジン 5’-モノホスフェートシンターゼ;
18)アンコンベンショナルミオシン-Id;
19)アンコンベンショナルミオシン-Ic;
20)UMP-CMPキナーゼ;
21)UDP-グルコース 4-エピメラーゼ;
22)チロシン-プロテインホスファターゼ 非レセプター型12;
23)腫瘍感受性遺伝子101タンパク質;
24)尿細管間質性腎炎抗原様;
25)チューブリン重合促進タンパク質ファミリーメンバー3;
26)チューブリンβ-6鎖;
27)チューブリンβ-4B鎖;
28)チューブリンβ-2B鎖;
29)チューブリンβ鎖;
30)チューブリンα-1C鎖;
31)チューブリンα-1A鎖;
32)トランスメンブラン9スーパーファミリーメンバー2;
33)トランスフェリンレセプタータンパク質2;
34)Toll相互作用タンパク質;
35)組織因子経路インヒビター;
36)チオレドキシン様タンパク質1;
37)T-ボックス脳タンパク質1;
38)STE20関連キナーゼアダプタータンパク質β;
39)スタフィロコッカルヌクレアーゼドメイン含有タンパク質1;
40)ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットβ-1;
41)ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットα-1;
42)ナトリウム/グルコース コトランスポーター4;
43)ナトリウム/グルコース コトランスポーター1;
44)SH3ドメイン結合タンパク質4;
45)セリン/アルギニン-リッチ スプライシング因子7;
46)セプチン-9;
47)セプチン-8;
48)RNA転写,翻訳及び輸送因子タンパク質;
49)リボヌクレアーゼ4;
50)Rho GTPアーゼ活性化タンパク質1;
51)レチナルデヒドロゲナーゼ1;
52)レセプター型チロシン-プロテインホスファターゼH;
53)キノンオキシドレダクターゼ;
54)タンパク質S100-A10;
55)タンパク質MAL2;
56)タンパク質AMBP;
57)プロスタミド/プロスタグランジンFシンターゼ;
58)プログラム細胞死6-相互作用タンパク質;
59)推定リン脂質輸送ATPアーゼIH;
60)推定カチオン輸送ATPアーゼ13A4;
61)ポリペプチド N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ3;
62)ポリ(rC)結合タンパク質2;
63)血小板由来増殖因子D;
64)プラスチン-1;
65)色素上皮由来因子;
66)リン脂質輸送ATPアーゼIC;
67)ホスホリパーゼD1;
68)結腸がん過剰発現1タンパク質;
69)ニバン様タンパク質1;
70)N-アセチルラクトサミニドβ-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ3;
71)ミオシン調節軽鎖12B;
72)多剤耐性タンパク質1;
73)マザーズアゲンストデカペンタプレジックホモログ2;
74)ミトコンドリア性輸入レセプターサブユニットTOM70;
75)リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(細胞質性);
76)リソソーム膜タンパク質2;
77)脂肪腫好性パートナー;
78)分岐鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体のリポアミドアセチルトランスフェラーゼ成分(ミトコンドリア性);
79)ケラチン,II型細胞骨格8;
80)IST1ホモログ;
81)インターロイキン-18;
82)インター-α-トリプシンインヒビター重鎖H2;
83)インテグリン結合プロテインキナーゼ;
84)無機ピロホスファターゼ;
85)ヒアルロンナン結合タンパク質2;
86)高アフィニティーcAMP-特異的かつIBMX-非感受性3’,5’-サイクリックホスホジエステラーゼ8A;
87)ヘテロ核リボヌクレオプロテインL;
88)ヘテロ核リボヌクレオプロテインH;
89)ヘテロ核リボヌクレオプロテインD様;
90)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(k)サブユニットα;
91)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(I)/G(S)/G(T) サブユニットβ-2;
92)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(I)/G(S)/G(O) サブユニットγ-12;
93)グアニンデアミナーゼ;
94)増殖因子レセプター結合タンパク質7;
95)グリピカン-6;
96)グルタチオン S-トランスフェラーゼ ω-1;
97)グルタミン-フルクトース-6-ホスフェートアミノトランスフェラーゼ[異性化]1;
98)グルタメート-リッチタンパク質5;
99)γ-可溶性NSF付着タンパク質;
100)ガレクチン-9B;
101)ガレクチン-2;
102)フェルミチンファミリーホモログ1;
103)FAS-関連因子2;
104)エストラジオール 17-β-デヒドロゲナーゼ2;
105)上皮細胞接着分子;
106)上皮成長因子レセプターキナーゼ基質8様タンパク質1;
107)小胞体シャペロンBiP;
108)伸長因子Tu(ミトコンドリア性)
109)ダブルコルチンドメイン含有タンパク質2;
110)ジスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質10;
111)ジヒドロピリミジナーゼ関連タンパク質2;
112)細胞質性ダイニン1重鎖1;
113)シスチン-1;
114)サイクリン-Y;
115)コピン-8;
116)補体C1qサブ成分サブユニットC;
117)コラーゲンα-1(XVIII)鎖;
118)コアトマーサブユニットγ-1;
119)コアトマーサブユニットα;
120)クラステリン;
121)クラスリン重鎖1;
122)荷電多胞体タンパク質5;
123)荷電多胞体タンパク質2a;
124)荷電多胞体タンパク質1a;
125)カルボキシ末端ドメインRNAポリメラーゼII ポリペプチドA スモールホスファターゼ1;
126)胆管側多選択性有機アニオントランスポーター2;
127)cAMP依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニットβ;
128)カルパイン-7;
129)カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII型サブユニットδ;
130)C-1-テトラヒドロ葉酸シンターゼ(細胞質性);
131)BRO1ドメイン含有タンパク質BROX;
132)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ4;
133)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1;
134)基底膜特異的ヘパラン硫酸プロテオグリカンコアタンパク質;
135)バンド4.1様タンパク質1;
136)ATP依存性6-ホスホフルクトキナーゼ(血小板型);
137)アスパルチル/アスパラギニルβ-ヒドロキシラーゼ;
138)アポリポタンパク質E;
139)アポリポタンパク質C-IV;
140)アポリポタンパク質B-100;
141)アノクタミン-1;
142)アネキシンA4;
143)アネキシンA13;
144)α-1,3-マンノシル-糖タンパク質2-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ;
145)アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC3;
146)アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC2;
147)ADP-リボシル化因子様タンパク質3;
148)ADP-リボシル化因子1;
149)ADP/ATPトランスロカーゼ3;
150)アシル-タンパク質チオエステラーゼ1;
151)60Sリボソーマルタンパク質L7a;
152)60Sリボソーマルタンパク質L7;
153)60Sリボソーマルタンパク質L3;
154)60Sリボソーマルタンパク質L27a;
155)60Sリボソーマルタンパク質L24;
156)60Sリボソーマルタンパク質L23;
157)60Sリボソーマルタンパク質L14;
158)60Sリボソーマルタンパク質L11;
159)60Sリボソーマルタンパク質L10;
160)40Sリボソーマルタンパク質SA;
161)40Sリボソーマルタンパク質S8;
162)40Sリボソーマルタンパク質S25;
163)40Sリボソーマルタンパク質S24;
164)40Sリボソーマルタンパク質S23;および
165)1-ホスファチジルイノシトール 4,5-ビホスフェート ホスホジエステラーゼδ-1。
【請求項13】
前記解析手段が抗体である、請求項
12記載の診断試薬。
【請求項14】
細胞外小胞の回収手段をさらに含む、請求項
12または
13記載の診断試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆管がんのバイオマーカー、胆管がんの検査方法、および胆管がんの診断試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
胆管がんの診断には多くの課題がある。例えば、胆管がんの確定診断のために胆汁細胞診または胆管生検が実施されているが、胆汁細胞診は診断感度が低く、胆管生検は極めて侵襲性が高いという課題がある。また、硬化性胆管炎や慢性膵炎などの炎症(良性疾患)や、胆管がん(悪性疾患)によって胆管壁が肥厚して胆管狭窄を生じるが、胆道狭窄が良性疾患又は悪性疾患に起因するのかを画像的に高精度で鑑別することは現時点では非常に困難である。このような炎症による胆管壁肥厚や胆管狭窄は一時的であり、炎症の消退により狭窄が改善することがあり、結果的に良性胆管狭窄であったと推測できる場合もあるが、これにはある程度の時間を要し、悪性胆管狭窄であった場合、早期診断の機会を逸してしまうことになる。
【0003】
ところで、近年、がん等の疾患の診断のため、様々な技術が開発されている。特に、被験体の負担を減らすため、できる限り低侵襲性で疾患を簡便に診断できる技術の開発が所望されており、このような技術の開発のため、バイオマーカーが探索されている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、炎症性疾患の一種である原発性硬化性胆管炎(Primary Sclerosing Cholangitis:PSC)の患者から採取された胆汁のプロテオミクス解析により、PSCに特異的な複数の胆汁タンパク質が同定されたことが記載されている(表2~5)。例えば、非特許文献1には、このような胆汁タンパク質として、PSCで過剰発現するキノンオキシドレダクターゼ(Quinone oxidoreductase)、およびアネキシンA4(Annexin A4)が記載されている(表4、5)。
【0005】
非特許文献2には、胆管細胞株であるH69および胆管がん(Cholangiocarcinoma:CCA)細胞株であるKKU-M213の培養上清の細胞外小胞(EV)中のタンパク質含量をプロテオミクス解析により比較した結果、含量に差異が認められたことが記載されている。例えば、非特許文献2の表1には、クラスリン重鎖1(Clathrin heavy chain 1)が、KKU-M213に比しH69の培養上清のEV中の含量が多いタンパク質として同定されたこと、プログラム細胞死6-相互作用タンパク質(Programmed cell death 6-interacting protein)が、H69およびKKU-M213の培養上清のEV中のどちらにも検出されたこと、ならびに腫瘍感受性遺伝子101タンパク質(Tumor susceptibility gene 101 protein)が、H69の培養上清のEV中では検出されたのに対して、KKU-M213の培養上清のEV中では検出されなかったタンパク質として同定されたことが報告されている。
【0006】
非特許文献3には、胆汁中に含まれる複数のタンパク質が包括的に記載されている。
【0007】
しかしながら、上記非特許文献1~3には、胆管がん患者の胆汁(特に、胆汁のEV)において高い含量を示す、胆管がんのバイオマーカーとして使用できるタンパク質が記載されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Biochimica et Biophysica Acta-Molecular Basis of Disease 2018;1864;pp.1380-1389
【文献】Biochimica et Biophysica Acta 2015;1852;pp.1989-1999
【文献】Comprehensive Physiology 2014;4(1);pp.91-108
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、胆汁細胞診よりも診断感度に優れる可能性があり、かつ胆管生検よりも侵襲性が低い胆管がんの診断に有用な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、胆管がん患者の胆汁(特に、胆汁のEV)において高い含量を示す、胆管がんのバイオマーカーとして使用できるタンパク質を同定することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、胆汁(特に、胆汁のEV)における、下記1)~165)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質(括弧内のアクセッション番号の記載は、ヒトタンパク質に対応する)に関連する発明を提供する:
1)Ras関連タンパク質Rab-20(Ras-related protein Rab-20)(例、Q9NX57);
2)Ras関連タンパク質Rab-5A(Ras-related protein Rab-5A)(例、P20339);
3)Ras関連タンパク質Rab-3B(Ras-related protein Rab-3B)(例、P20337);
4)ロイシン-tRNAリガーゼ(細胞質性)(Leucine--tRNA ligase, cytoplasmic)(例、Q9P2J5);
5)第X凝固因子(Coagulation factor X)(例、P00742);
6)クローディン-3(Claudin-3)(例、O15551);
7)クローディン-7(Claudin-7)(例、O95471);
8)クローディン-10(Claudin-10)(例、P78369);
9)WDリピート及びSOCSボックス含有タンパク質2(WD repeat and SOCS box-containing protein 2)(例、Q9NYS7);
10)フォン・ウィルブランド因子Aドメイン含有タンパク質1(von Willebrand factor A domain-containing protein 1)(例、Q6PCB0);
11)バーシカンコアタンパク質(Versican core protein)(例、P13611);
12)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質VTA1ホモログ(Vacuolar protein sorting-associated protein VTA1 homolog)(例、Q9NP79);
13)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質4B(Vacuolar protein sorting-associated protein 4B)(例、O75351);
14)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質37D(Vacuolar protein sorting-associated protein 37D)(例、Q86XT2);
15)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質37B(Vacuolar protein sorting-associated protein 37B)(例、Q9H9H4);
16)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質28ホモログ(Vacuolar protein sorting-associated protein 28 homolog)(例、Q9UK41);
17)ウリジン 5’-モノホスフェートシンターゼ(Uridine 5’-monophosphate synthase)(例、P11172);
18)アンコンベンショナルミオシン-Id(Unconventional myosin-Id)(例、O94832);
19)アンコンベンショナルミオシン-Ic(Unconventional myosin-Ic)(例、O00159);
20)UMP-CMPキナーゼ(UMP-CMP kinase)(例、P30085)
21)UDP-グルコース 4-エピメラーゼ(UDP-glucose 4-epimerase)(例、Q14376);
22)チロシン-プロテインホスファターゼ 非レセプター型12(Tyrosine-protein phosphatase non-receptor type 12)(例、Q05209);
23)腫瘍感受性遺伝子101タンパク質(Tumor susceptibility gene 101 protein)(例、Q99816);
24)尿細管間質性腎炎抗原様(Tubulointerstitial nephritis antigen-like)(例、Q9GZM7);
25)チューブリン重合促進タンパク質ファミリーメンバー3(Tubulin polymerization-promoting protein family member 3)(例、Q9BW30);
26)チューブリンβ-6鎖(Tubulin beta-6 chain)(例、Q9BUF5);
27)チューブリンβ-4B鎖(Tubulin beta-4B chain)(例、P68371);
28)チューブリンβ-2B鎖(Tubulin beta-2B chain)(例、Q9BVA1);
29)チューブリンβ鎖(Tubulin beta chain)(例、P07437);
30)チューブリンα-1C鎖(Tubulin alpha-1C chain)(例、Q9BQE3);
31)チューブリンα-1A鎖(Tubulin alpha-1A chain)(例、Q71U36);
32)トランスメンブラン9スーパーファミリーメンバー2(Transmembrane 9 superfamily member 2)(例、Q99805);
33)トランスフェリンレセプタータンパク質2(Transferrin receptor protein 2)(例、Q9UP52);
34)Toll相互作用タンパク質(Toll-interacting protein)(例、Q9H0E2);
35)組織因子経路インヒビター(Tissue factor pathway inhibitor)(例、P10646);
36)チオレドキシン様タンパク質1(Thioredoxin-like protein 1)(例、O43396);
37)T-ボックス脳タンパク質1(T-box brain protein 1)(例、Q16650);
38)STE20関連キナーゼアダプタータンパク質β(STE20-related kinase adapter protein beta)(例、Q9C0K7);
39)スタフィロコッカルヌクレアーゼドメイン含有タンパク質1(Staphylococcal nuclease domain-containing protein 1)(例、Q7KZF4);
40)ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットβ-1(Sodium/potassium-transporting ATPase subunit beta-1)(例、P05026);
41)ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットα-1(Sodium/potassium-transporting ATPase subunit alpha-1)(例、P05023);
42)ナトリウム/グルコース コトランスポーター4(Sodium/glucose cotransporter 4)(例、Q2M3M2);
43)ナトリウム/グルコース コトランスポーター1(Sodium/glucose cotransporter 1)(例、P13866);
44)SH3ドメイン結合タンパク質4(SH3 domain-binding protein 4)(例、Q9P0V3);
45)セリン/アルギニン-リッチ スプライシング因子7(Serine/arginine-rich splicing factor 7)(例、Q16629);
46)セプチン-9(Septin-9)(例、Q9UHD8);
47)セプチン-8(Septin-8)(例、Q92599);
48)RNA転写,翻訳及び輸送因子タンパク質(RNA transcription, translation and transport factor protein)(例、Q9Y224);
49)リボヌクレアーゼ4(Ribonuclease 4)(例、P34096);
50)Rho GTPアーゼ活性化タンパク質1(Rho GTPase-activating protein 1)(例、Q07960);
51)レチナルデヒドロゲナーゼ1(Retinal dehydrogenase 1)(例、P00352);
52)レセプター型チロシン-プロテインホスファターゼH(Receptor-type tyrosine-protein phosphatase H)(例、Q9HD43);
53)キノンオキシドレダクターゼ(Quinone oxidoreductase)(例、Q08257);
54)タンパク質S100-A10(Protein S100-A10)(例、P60903);
55)タンパク質MAL2(Protein MAL2)(例、Q969L2);
56)タンパク質AMBP(Protein AMBP)(例、P02760);
57)プロスタミド/プロスタグランジンFシンターゼ(Prostamide/prostaglandin F synthase)(例、Q8TBF2);
58)プログラム細胞死6-相互作用タンパク質(Programmed cell death 6-interacting protein)(例、Q8WUM4);
59)推定リン脂質輸送ATPアーゼIH(Probable phospholipid-transporting ATPase IH)(例、P98196);
60)推定カチオン輸送ATPアーゼ13A4(Probable cation-transporting ATPase 13A4)(例、Q4VNC1);
61)ポリペプチド N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ3(Polypeptide N-acetylgalactosaminyltransferase 3)(例、Q14435);
62)ポリ(rC)結合タンパク質2(Poly(rC)-binding protein 2)(例、Q15366);
63)血小板由来増殖因子D(Platelet-derived growth factor D)(例、Q9GZP0);
64)プラスチン-1(Plastin-1)(例、Q14651);
65)色素上皮由来因子(Pigment epithelium-derived factor)(例、P36955);
66)リン脂質輸送ATPアーゼIC(Phospholipid-transporting ATPase IC)(例、O43520);
67)ホスホリパーゼD1(Phospholipase D1)(例、Q13393);
68)結腸がん過剰発現1タンパク質(Overexpressed in colon carcinoma 1 protein)(例、Q8TAD7);
69)ニバン様タンパク質1(Niban-like protein 1)(例、Q96TA1);
70)N-アセチルラクトサミニドβ-1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ3(N-acetyllactosaminide beta-1,3-N-acetylglucosaminyltransferase 3)(例、Q9Y2A9);
71)ミオシン調節軽鎖12B(Myosin regulatory light chain 12B)(例、O14950);
72)多剤耐性タンパク質1(Multidrug resistance protein 1)(例、P08183);
73)マザーズアゲンストデカペンタプレジックホモログ2(Mothers against decapentaplegic homolog 2)(例、Q15796);
74)ミトコンドリア性輸入レセプターサブユニットTOM70(Mitochondrial import receptor subunit TOM70)(例、O94826);
75)リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(細胞質性)(Malate dehydrogenase, cytoplasmic)(例、P40925);
76)リソソーム膜タンパク質2(Lysosome membrane protein 2)(例、Q14108);
77)脂肪腫好性パートナー(Lipoma-preferred partner)(例、Q93052);
78)分岐鎖α-ケト酸デヒドロゲナーゼ複合体のリポアミドアセチルトランスフェラーゼ成分(ミトコンドリア性)(Lipoamide acyltransferase component of branched-chain alpha-keto acid dehydrogenase complex, mitochondrial)(例、P11182);
79)ケラチン,II型細胞骨格8(Keratin, type II cytoskeletal 8)(例、P05787);
80)IST1ホモログ(IST1 homolog)(例、P53990);
81)インターロイキン-18(Interleukin-18)(例、Q14116);
82)インター-α-トリプシンインヒビター重鎖H2(Inter-alpha-trypsin inhibitor heavy chain H2)(例、P19823);
83)インテグリン結合プロテインキナーゼ(Integrin-linked protein kinase)(例、Q13418);
84)無機ピロホスファターゼ(Inorganic pyrophosphatase)(例、Q15181);
85)ヒアルロンナン結合タンパク質2(Hyaluronan-binding protein 2)(例、Q14520);
86)高アフィニティーcAMP-特異的かつIBMX-非感受性3’,5’-サイクリックホスホジエステラーゼ8A(High affinity cAMP-specific and IBMX-insensitive 3’,5’-cyclic phosphodiesterase 8A)(例、O60658);
87)ヘテロ核リボヌクレオプロテインL(Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein L)(例、P14866);
88)ヘテロ核リボヌクレオプロテインH(Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein H)(例、P31943);
89)ヘテロ核リボヌクレオプロテインD様(Heterogeneous nuclear ribonucleoprotein D-like)(例、O14979);
90)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(k)サブユニットα(Guanine nucleotide-binding protein G(k) subunit alpha)(例、P08754);
91)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(I)/G(S)/G(T) サブユニットβ-2(Guanine nucleotide-binding protein G(I)/G(S)/G(T) subunit beta-2)(例、P62879);
92)グアニンヌクレオチド結合タンパク質G(I)/G(S)/G(O) サブユニットγ-12(Guanine nucleotide-binding protein G(I)/G(S)/G(O) subunit gamma-12)(例、Q9UBI6);
93)グアニンデアミナーゼ(Guanine deaminase)(例、Q9Y2T3);
94)増殖因子レセプター結合タンパク質7(Growth factor receptor-bound protein 7)(例、Q14451);
95)グリピカン-6(Glypican-6)(例、Q9Y625);
96)グルタチオン S-トランスフェラーゼ ω-1(Glutathione S-transferase omega-1)(例、P78417);
97)グルタミン-フルクトース-6-ホスフェートアミノトランスフェラーゼ[異性化]1(Glutamine--fructose-6-phosphate aminotransferase [isomerizing] 1)(例、Q06210);
98)グルタメート-リッチタンパク質5(Glutamate-rich protein 5)(例、Q6P6B1);
99)γ-可溶性NSF付着タンパク質(Gamma-soluble NSF attachment protein)(例、Q99747);
100)ガレクチン-9B(Galectin-9B)(例、Q3B8N2);
101)ガレクチン-2(Galectin-2)(例、P05162);
102)フェルミチンファミリーホモログ1(Fermitin family homolog 1)(例、Q9BQL6);
103)FAS-関連因子2(FAS-associated factor 2)(例、Q96CS3);
104)エストラジオール 17-β-デヒドロゲナーゼ2(Estradiol 17-beta-dehydrogenase 2)(例、P37059);
105)上皮細胞接着分子(Epithelial cell adhesion molecule)(例、P16422);
106)上皮成長因子レセプターキナーゼ基質8様タンパク質1(Epidermal growth factor receptor kinase substrate 8-like protein 1)(例、Q8TE68);
107)小胞体シャペロンBiP(Endoplasmic reticulum chaperone BiP)(例、P11021);
108)伸長因子Tu(ミトコンドリア性)(Elongation factor Tu, mitochondrial)(例、P49411);
109)ダブルコルチンドメイン含有タンパク質2(Doublecortin domain-containing protein 2)(例、Q9UHG0);
110)ジスインテグリン及びメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質10(Disintegrin and metalloproteinase domain-containing protein 10)(例、O14672);
111)ジヒドロピリミジナーゼ関連タンパク質2(Dihydropyrimidinase-related protein 2)(例、Q16555);
112)細胞質性ダイニン1重鎖1(Cytoplasmic dynein 1 heavy chain 1)(例、Q14204);
113)シスチン-1(Cystin-1)(例、Q717R9);
114)サイクリン-Y(Cyclin-Y)(例、Q8ND76);
115)コピン-8(Copine-8)(例、Q86YQ8);
116)補体C1qサブ成分サブユニットC(Complement C1q subcomponent subunit C)(例、P02747);
117)コラーゲンα-1(XVIII)鎖(Collagen alpha-1(XVIII) chain)(例、P39060);
118)コアトマーサブユニットγ-1(Coatomer subunit gamma-1)(例、Q9Y678);
119)コアトマーサブユニットα(Coatomer subunit alpha)(例、P53621);
120)クラステリン(Clusterin)(例、P10909);
121)クラスリン重鎖1(Clathrin heavy chain 1)(例、Q00610);
122)荷電多胞体タンパク質5(Charged multivesicular body protein 5)(例、Q9NZZ3);
123)荷電多胞体タンパク質2a(Charged multivesicular body protein 2a)(例、O43633);
124)荷電多胞体タンパク質1a(Charged multivesicular body protein 1a)(例、Q9HD42);
125)カルボキシ末端ドメインRNAポリメラーゼII ポリペプチドA スモールホスファターゼ1(Carboxy-terminal domain RNA polymerase II polypeptide A small phosphatase 1)(例、Q9GZU7);
126)胆管側多選択性有機アニオントランスポーター2(Canalicular multispecific organic anion transporter 2)(例、O15438);
127)cAMP依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニットβ(cAMP-dependent protein kinase catalytic subunit beta)(例、P22694);
128)カルパイン-7(Calpain-7)(例、Q9Y6W3);
129)カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII型サブユニットδ(Calcium/calmodulin-dependent protein kinase type II subunit delta)(例、Q13557);
130)C-1-テトラヒドロ葉酸シンターゼ(細胞質性)(C-1-tetrahydrofolate synthase, cytoplasmic)(例、P11586);
131)BRO1ドメイン含有タンパク質BROX(BRO1 domain-containing protein BROX)(例、Q5VW32);
132)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ4(Beta-1,4-galactosyltransferase 4)(例、O60513);
133)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(Beta-1,4-galactosyltransferase 1)(例、P15291);
134)基底膜特異的ヘパラン硫酸プロテオグリカンコアタンパク質(Basement membrane-specific heparan sulfate proteoglycan core protein)(例、P98160);
135)バンド4.1様タンパク質1(Band 4.1-like protein 1)(例、Q9H4G0);
136)ATP依存性6-ホスホフルクトキナーゼ(血小板型)(ATP-dependent 6-phosphofructokinase, platelet type)(例、Q01813);
137)アスパルチル/アスパラギニルβ-ヒドロキシラーゼ(Aspartyl/asparaginyl beta-hydroxylase)(例、Q12797);
138)アポリポタンパク質E(Apolipoprotein E)(例、P02649);
139)アポリポタンパク質C-IV(Apolipoprotein C-IV)(例、P55056);
140)アポリポタンパク質B-100(Apolipoprotein B-100)(例、P04114);
141)アノクタミン-1(Anoctamin-1)(例、Q5XXA6);
142)アネキシンA4(Annexin A4)(例、P09525);
143)アネキシンA13(Annexin A13)(例、P27216);
144)α-1,3-マンノシル-糖タンパク質2-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(Alpha-1,3-mannosyl-glycoprotein 2-beta-N-acetylglucosaminyltransferase)(例、P26572);
145)アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC3(Aldo-keto reductase family 1 member C3)(例、P42330);
146)アルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバーC2(Aldo-keto reductase family 1 member C2)(例、P52895);
147)ADP-リボシル化因子様タンパク質3(ADP-ribosylation factor-like protein 3)(例、P36405);
148)ADP-リボシル化因子1(ADP-ribosylation factor 1)(例、P84077);
149)ADP/ATPトランスロカーゼ3(ADP/ATP translocase 3)(例、P12236);
150)アシル-タンパク質チオエステラーゼ1(Acyl-protein thioesterase 1)(例、O75608);
151)60Sリボソーマルタンパク質L7a(60S ribosomal protein L7a)(例、P62424);
152)60Sリボソーマルタンパク質L7(60S ribosomal protein L7)(例、P18124);
153)60Sリボソーマルタンパク質L3(60S ribosomal protein L3)(例、P39023);
154)60Sリボソーマルタンパク質L27a(60S ribosomal protein L27a)(例、P46776);
155)60Sリボソーマルタンパク質L24(60S ribosomal protein L24)(例、P83731);
156)60Sリボソーマルタンパク質L23(60S ribosomal protein L23)(例、P62829);
157)60Sリボソーマルタンパク質L14(60S ribosomal protein L14)(例、P50914);
158)60Sリボソーマルタンパク質L11(60S ribosomal protein L11)(例、P62913);
159)60Sリボソーマルタンパク質L10(60S ribosomal protein L10)(例、P27635);
160)40Sリボソーマルタンパク質SA(40S ribosomal protein SA)(例、P08865);
161)40Sリボソーマルタンパク質S8(40S ribosomal protein S8)(例、P62241);
162)40Sリボソーマルタンパク質S25(40S ribosomal protein S25)(例、P62851);
163)40Sリボソーマルタンパク質S24(40S ribosomal protein S24)(例、P62847);
164)40Sリボソーマルタンパク質S23(40S ribosomal protein S23)(例、P62266);および
165)1-ホスファチジルイノシトール 4,5-ビホスフェート ホスホジエステラーゼδ-1(1-phosphatidylinositol 4,5-bisphosphate phosphodiesterase delta-1)(例、P51178)。
【0012】
より具体的には、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕上記1種以上のタンパク質からなる、胆汁における胆管がんのバイオマーカー。
〔2〕前記バイオマーカーが、胆汁の細胞外小胞における胆管がんのバイオマーカーである、〔1〕のバイオマーカー。
〔3〕前記タンパク質が、1)~23)、25)~40)、42)~104)、106)~133)、135)~139)、および141)~165)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である、〔1〕または〔2〕のいずれかのバイオマーカー。
〔4〕前記タンパク質が、1)、4)、8)~10)、13)~17)、23)、24)、28)、32)、37)、38)、42)、44)、45)、47)、48)、57)、59)、60)、66)、68)、70)、73)、74)、80)、81)、83)、86)、87)、89)、94)、98)、100)、102)、103)、109)、112)~114)、118)、123)~126)、128)、129)、131)、132)、139)、141)、144)、147)、153)、155)、156)、159)、163)、および164)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である、〔1〕または〔2〕のいずれかのバイオマーカー。
〔5〕前記タンパク質が、1)、5)、28)、31)、42)、45)、61)、68)、75)、93)、98)、105)、107)、125)、132)、155)、160)、および162)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である、〔1〕または〔2〕のいずれかのバイオマーカー。
〔6〕前記タンパク質が、1)、4)~6)、8)、11)、16)、23)、25)、27)、42)、46)、49)、52)、54)~56)、58)~60)、63)、64)、67)、69)、73)、79)、82)、94)、97)、98)、103)、104)、107)、113)、115)、118)、122)、124)、127)、130)、134)、140)、142)、154)、158)、および160)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である、〔1〕または〔2〕のいずれかのバイオマーカー。
〔7〕前記タンパク質が、1)、5)、42)、98)、107)、および160)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である、〔1〕または〔2〕のいずれかのバイオマーカー。
〔8〕被験体から得られた胆汁含有サンプルにおいて、上記1種以上のタンパク質の量を解析することを含む、胆管がんの検査方法(好ましくは、タンパク質は、上記〔3〕~〔7〕に列挙された1種以上のタンパク質であってもよい)。
〔9〕下記(a)および(b)を含む、〔8〕の方法:
(a)被験体から得られた胆汁含有サンプルから細胞外小胞を回収すること;および
(b)回収された細胞外小胞において、前記1種以上のタンパク質の量を解析すること。
〔10〕被験体が胆管がん患者である、〔8〕または〔9〕の方法。
〔11〕上記1種以上のタンパク質の量の解析手段を含む、胆管がんの診断試薬(好ましくは、タンパク質は、上記〔3〕~〔7〕に列挙された1種以上のタンパク質であってもよい)。
〔12〕前記解析手段が抗体である、〔11〕の診断試薬。
〔13〕細胞外小胞の回収手段をさらに含む、〔11〕または〔12〕の診断試薬。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、胆汁細胞診よりも高い診断感度および/または診断特異度で胆管がんを診断でき、しかも、胆管生検よりも低侵襲性で胆管がんを診断できる。例えば、本発明は、胆道狭窄の原因となる悪性疾患(胆管がん)とその他の良性疾患(例、硬化性胆管炎、慢性膵炎、胆石症などの炎症を伴う疾患)との鑑別に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、胆管がん患者および胆石患者由来胆汁中のEVに含まれるRas関連タンパク質Rab-20(Q9NX57)の量の差異を示す箱ひげ図である(Fold Change:21.48;p-value:0.0007)。Stone:胆石患者由来胆汁中のEVに含まれるRab-20の量(n=10);Cancer:胆管がん患者由来胆汁中のEVに含まれるRab-20の量(n=10)。箱ひげ図中の各種線は、以下である。ひげの下端の線:最小値(minimum);箱の下端の線:第一四分位数(lower quartile);箱内の線:中央値(median);箱の上端の線:第三四分位数(upper quartile);ひげの上端の線:最大値(maximum)(
図2~4も同様)。
【
図2】
図2は、胆管がん患者および胆石患者由来胆汁中のEVに含まれるロイシン-tRNAリガーゼ(細胞質性)(Q9P2J5)の量の差異を示す箱ひげ図である(Fold Change:3.29;p-value:0.0002)。Stone:胆石患者由来胆汁中のEVに含まれるロイシン-tRNAリガーゼ(細胞質性)の量(n=10);Cancer:胆管がん患者由来胆汁中のEVに含まれるロイシン-tRNAリガーゼ(細胞質性)の量(n=10)。
【
図3】
図3は、胆管がん患者および胆石患者由来胆汁中のEVに含まれる第X凝固因子(P00742)の量の差異を示す箱ひげ図である(Fold Change:31.39;p-value:0.0056)。Stone:胆石患者由来胆汁中のEVに含まれる第X凝固因子の量(n=10);Cancer:胆管がん患者由来胆汁中のEVに含まれる第X凝固因子の量(n=10)。
【
図4】
図4は、胆管がん患者および胆石患者由来胆汁中のEVに含まれるクローディン-3(O15551)の量の差異を示す箱ひげ図である(Fold Change:2.58;p-value:0.0002)。Stone:胆石患者由来胆汁中のEVに含まれるクローディン-3の量(n=10);Cancer:胆管がん患者由来胆汁中のEVに含まれるクローディン-3の量(n=10)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.本発明で利用されるタンパク質
本発明で利用されるタンパク質の個数は、1種以上である限り特に限定されないが、例えば、2種以上、3種以上、4種以上、5種以上、6種以上、7種以上、8種以上、9種以上、または10種以上であってもよい。タンパク質の個数はまた、165種以下、160種以下、150種以下、140種以下、130種以下、120種以下、110種以下、100種以下、90種以下、80種以下、70種以下、60種以下、50種以下、40種以下、30種以下、20種以下、15種以下、または10種以下であってもよい。さらに、タンパク質の個数は、簡便性の向上等の観点より、少数であってもよく、例えば、1種、2種、3種、4種、5種、または6種であってもよい。
【0016】
一実施形態では、本発明で利用されるタンパク質は、正常胆管細胞での培養上清のEVに含まれず、かつ胆管がん細胞の培養上清のEVに含まれることが既知のタンパク質以外のタンパク質であってもよい。このような既知のタンパク質は、24)尿細管間質性腎炎抗原様、41)ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットα-1、105)上皮細胞接着分子、134)基底膜特異的ヘパラン硫酸プロテオグリカンコアタンパク質、および140)アポリポタンパク質B-100である(非特許文献2の表1を参照)。したがって、本発明で利用されるタンパク質は、上記1)~23)、25)~40)、42)~104)、106)~133)、135)~139)、および141)~165)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質であってもよい。あるいは、本発明で測定されるタンパク質は、正常または癌性の胆管細胞での培養上清のEVに関する先行知見が存在しないタンパク質であってもよい。正常または癌性の胆管細胞での培養上清のEVに関する先行知見が存在するタンパク質は、上記5種の既知のタンパク質に加えて、23)腫瘍感受性遺伝子101タンパク質、58)プログラム細胞死6-相互作用タンパク質、121)クラスリン重鎖1であり得る(非特許文献2の表1、および本願の背景技術を参照)。したがって、本発明で利用されるタンパク質は、上記1)~22)、25)~40)、42)~57)、59)~104)、106)~120)、122)~133)、135)~139)、および141)~165)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質であってもよい。
【0017】
別の実施形態では、本発明で利用されるタンパク質は、胆汁中に含まれることが既知であるタンパク質(非特許文献1、3を参照)以外のタンパク質であってもよい。例えば、胆汁中に含まれることが既知であるタンパク質以外のタンパク質は、上記1)、4)、8)~10)、13)~17)、23)、24)、28)、32)、37)、38)、42)、44)、45)、47)、48)、57)、59)、60)、66)、68)、70)、73)、74)、80)、81)、83)、86)、87)、89)、94)、98)、100)、102)、103)、109)、112)~114)、118)、123)~126)、128)、129)、131)、132)、139)、141)、144)、147)、153)、155)、156)、159)、163)、および164)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質であってもよい。本発明者らが把握する限り、これらのタンパク質は、胆汁中に含まれることが報告されていない。したがって、これらのタンパク質が胆汁のEV中に含まれるという知見のみならず、胆汁中に含まれるという知見もまた新規であり得る。
【0018】
さらに別の実施形態では、本発明で利用されるタンパク質は、胆管がんに罹患していない患者(例えば、胆石症、硬化性胆管炎および慢性膵炎などの胆管において炎症を伴う良性疾患の患者)と比較して胆管がん患者の胆汁(特に、胆汁のEV)中で著しい量の増加が認められるタンパク質であってもよい。このような著しい量の増加は、例えば3倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは7倍以上、さらにより好ましくは9倍以上、特に好ましくは10倍以上の増加である。このようなタンパク質は、後述の実施例より理解される。例えば、このような10倍以上の量の増加が認められるタンパク質は、上記1)、5)、28)、31)、42)、45)、61)、68)、75)、93)、98)、105)、107)、125)、132)、155)、160)、および162)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である。
【0019】
さらに別の実施形態では、本発明で利用されるタンパク質は、胆管がんに罹患していない患者(例えば、上述したような胆管において炎症を伴う良性疾患の患者)と比較して胆管がん患者の胆汁(特に、胆汁のEV)中に含まれるタンパク質の量において高度な統計学的有意差が認められるタンパク質であってもよい。このような高度な統計学的有意差は、例えば0.05未満、好ましくは0.01未満のp値である。このようなタンパク質は、後述の実施例より理解される。例えば、高度な統計学的有意差(0.01未満のp値)が認められるタンパク質は、上記1)、4)~6)、8)、11)、16)、23)、25)、27)、42)、46)、49)、52)、54)~56)、58)~60)、63)、64)、67)、69)、73)、79)、82)、94)、97)、98)、103)、104)、107)、113)、115)、118)、122)、124)、127)、130)、134)、140)、142)、154)、158)、および160)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である。
【0020】
好ましい実施形態では、本発明で利用されるタンパク質は、胆管がんに罹患していない患者(例えば、上述したような胆管において炎症を伴う良性疾患の患者)と比較して胆管がん患者の胆汁中で10倍以上の量の増加が高度な統計学的有意差(0.01未満のp値)で認められるタンパク質であってもよい。このようなタンパク質は、後述の実施例より理解される。例えば、このようなタンパク質は、上記1)、5)、42)、98)、107)、および160)からなる群より選ばれる1種以上のタンパク質である。このようなタンパク質の利用は、胆管がんの検査において特に優れた診断感度および診断特異度を実現し得る。
【0021】
特定の実施形態では、本発明で利用されるタンパク質は、特定のタンパク質カテゴリーに属する1種以上のタンパク質であってもよい。このような特定のタンパク質カテゴリーとしては、例えば、酵素、リガンドタンパク質、膜タンパク質(例、レセプター、トランスポーター、細胞外マトリクスタンパク質)、アダプタータンパク質、シャペロンタンパク質、細胞骨格タンパク質、核酸結合タンパク質(例、転写因子)、およびこれらの共役タンパク質が挙げられる。
【0022】
特定の実施形態では、本発明で利用されるタンパク質は、特定のタンパク質ファミリーに属する1種以上のタンパク質であってもよい。このような特定のタンパク質ファミリーとしては、例えば、以下が挙げられる:
1’)Ras関連タンパク質ファミリー(例、上記1)~3)のタンパク質);
2’)クローディンファミリー(例、上記6)~8)のタンパク質);
3’)液胞タンパク質ソーティング関連タンパク質(例、上記12)~16)のタンパク質);
4’)アンコンベンショナルミオシンファミリー(例、上記18)、19)のタンパク質);
5’)チューブリン関連タンパク質ファミリー(例、上記25)のタンパク質等のチューブリン重合促進タンパク質ファミリーメンバー、上記26)~29)のタンパク質等のチューブリンβファミリー、および上記30)、31)のタンパク質等のチューブリンαファミリー);
6’)ナトリウム/カリウム輸送ATPアーゼサブユニットファミリー(例、上記40)、41)のタンパク質);
7’)ナトリウム/グルコース コトランスポーターファミリー(例、上記42)、43)のタンパク質);
8’)セプチンファミリー(例、上記46)、47)のタンパク質);
9’)ATPアーゼファミリー(例、上記59)、60)、66)のタンパク質);
10’)ヘテロ核リボヌクレオプロテインファミリー(例、上記87)~89)のタンパク質);
11’)グアニンヌクレオチド結合タンパク質ファミリー(例、上記90)~92)のタンパク質);
12’)ガレクチンファミリー(例、上記100)、101)のタンパク質);
13’)コアトマーサブユニットファミリー(例、上記118)、119)のタンパク質);
14’)荷電多胞体タンパク質ファミリー(例、上記122)~124)のタンパク質);
15’)β-1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼファミリー(例、上記132)、133)のタンパク質);
16’)アポリポタンパク質ファミリー(例、上記138)~140)のタンパク質);
17’)アネキシンファミリー(例、上記142)、143)のタンパク質);
18’)アルド-ケトレダクターゼファミリー(例、上記145)、146)のタンパク質等のアルド-ケトレダクターゼファミリー1メンバー);
19’)ADP-リボシル化因子ファミリー(例、上記147)、148)のタンパク質);ならびに
20’)リボソーマルタンパク質ファミリー(例、上記151)~159)のタンパク質等の60Sリボソーマルタンパク質、および上記160)~164)のタンパク質等の40Sリボソーマルタンパク質)。
【0023】
特定の実施形態では、本発明で利用されるタンパク質は、特定のタンパク質と他のタンパク質との組合せであってもよい。例えば、このような組合せは、1)、5)、42)、98)、107)、および160)からなる群より選ばれる1種以上の特定のタンパク質と、他のタンパク質との組合せであってもよい。
【0024】
2.バイオマーカー
本発明のバイオマーカーは、胆汁における胆管がんのバイオマーカーであり、上記1種以上のタンパク質からなるものである。
【0025】
胆管がんは、胆道がんの一種の悪性腫瘍である。胆道がんは、1)肝門部領域胆管がん、および遠位胆管がんを含む胆管がん、2)肝内胆管がん、3)胆のうがん、ならびに4)乳頭部がん(十二指腸乳頭部がん)に分類することができる。本発明の実施例で対象とした胆管がんは、1)の胆管がんであり、2)~4)の胆道がんは除外されている。
【0026】
好ましくは、本発明のバイオマーカーは、胆汁の細胞外小胞における胆管がんのバイオマーカーであってもよい。
【0027】
細胞外小胞(EV)は、種々の種類の細胞から分泌される、膜構造を有する微小な小胞である。EVとしては、例えば、エクソソーム、エクトソーム、およびアポトーシス胞が挙げられる。好ましくは、EVは、エクソソームである。EVはまた、そのサイズにより規定することができる。EVのサイズは、例えば、30~1000nmであり、好ましくは50~300nm、より好ましくは80~200nmである。EVのサイズの測定は、NanoSight(Malvern Instruments社製)により行うことができる。
【0028】
EVはまた、EVマーカーにより規定することができる。このようなEVマーカーとしては、例えば、EVの内部マーカーおよび表面マーカーが挙げられる。EVの内部マーカーとしては、例えば、がん胎児性抗原(CEA)、CA125、CA15-3、アクチンファミリー、TSG101、ALIX、Charged multivesicular body protein(CHMP)ファミリー、Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)、poly(ADP―ribose)polymerase(PARP)ファミリー、AFP、CA19-9、CA125、Flotillin-I、Flotillin-II、Rabタンパク質、programmed cell death(PDCD)6、phospholipid scramblase(PLSCR)ファミリー、シトクロムCオキシダーゼ(COX)ファミリー、ラミンファミリー、増殖細胞核抗原(PCNA)、チューブリンファミリー、TATA結合タンパク質(TBP)、電位依存性アニオンチャネルタンパク質(VDAC)、アミロイドベータ、タウタンパク質が挙げられる。EVの表面マーカーとしては、例えば、テトラスパニン膜タンパク質(EV膜特異的4回貫通膜タンパク質、例、CD9、CD63、CD81)、細胞外マトリクスメタロプロテアーゼ誘導物質(例、CD147)、熱ショックタンパク質(HSP)70、HSP90、主要組織適合性複合体(MHC)I、リソソーム関連膜タンパク質(LAMP)1、細胞間接着分子(ICAM)-1、インテグリン、セラミド、コレステロール、ホスファチジルセリン、Annexins、Caveolin-I、EpCAMが挙げられる。EVマーカーは、好ましくはEV表面マーカーであり、より好ましくはテトラスパニン膜タンパク質であり、さらにより好ましくはCD9および/またはCD63である。
【0029】
EVは、被験体の胆汁中に存在するものである限り、特に限定されない。被験体としては、例えば、哺乳動物(例、ヒト、サル等の霊長類;マウス、ラット、ウサギ等の齧歯類;ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄類、イヌ、ネコ等の食肉類)、鳥類(例、ニワトリ)が挙げられる。好ましくは、被験体は、ヒト等の哺乳動物である。臨床応用の観点からは、被験体は、好ましくはヒトである。この場合、本発明で利用されるタンパク質は、ヒトタンパク質である。ヒトタンパク質は、上述のアクセッション番号により特定されるタンパク質である。勿論、本発明で利用されるタンパク質は、人種間および/または個人間において生じ得る1個以上のアミノ酸残基の変異(例、置換、挿入、欠失)を有していてもよい。このような変異におけるアミノ酸残基の個数としては、例えば1~50個、好ましくは1~30個、より好ましくは1~20個、さらにより好ましくは1~10個、特に好ましくは1個、2個、3個、4個又は5個であってもよい。
【0030】
3.胆管がんの検査方法
本発明の方法は、被験体から得られた胆汁含有サンプルにおいて、上記1種以上のタンパク質の量を解析することを含む、胆管がんの検査方法である。
【0031】
胆汁含有サンプルは、被験体から得ることができる。胆汁含有サンプルの一例は、胆汁サンプルである。被験体からの胆汁サンプルの入手は、任意の方法(例、非特許文献1、3、およびこれらの文献中で引用されている参考文献を参照)により行うことができる。胆汁含有サンプルの別の例は、糞便サンプルである。好ましくは、胆汁含有サンプルは、胆汁サンプルである。
【0032】
タンパク質の量の解析は、任意の方法により行うことができる。例えば、タンパク質の量の解析は、例えば、目的タンパク質に対する抗体(好ましくは、モノクローナル抗体)を用いたイムノアッセイにより行うことができる。目的タンパク質に対する抗体は、目的のタンパク質に結合する抗体であればよく、好ましくは、目的のタンパク質に特異的に結合する抗体である。イムノアッセイとしては、例えば、直接競合法、間接競合法、およびサンドイッチ法が挙げられる。また、このようなイムノアッセイとしては、化学発光イムノアッセイ(CLIA)〔例、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)〕、免疫比濁法(TIA)、酵素免疫測定法(EIA)(例、直接競合ELISA、間接競合ELISA、およびサンドイッチELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、ラテックス凝集反応法、蛍光イムノアッセイ(FIA)、およびイムノクロマトグラフィー法、ウェスタンブロッティング、免疫染色が挙げられる。複数タンパク質の量が解析される場合、プロテオーム分析が行われてもよい。あるいは、タンパク質の量の解析は、質量分析により行われてもよい。また、タンパク質の種類に応じて、タンパク質の量を解析することもできる。例えば、タンパク質が酵素である場合には、酵素反応後の当該酵素の基質もしくは生成物、または酵素反応の共役因子の変化量を指標にして、タンパク質の量を解析することができる。また、タンパク質がリガンド、アダプター等の結合性タンパク質である場合には、結合性タンパク質の結合標的に対する結合量を指標にして、タンパク質の量を解析することができる。好ましくは、タンパク質の量の解析は、簡便性、迅速性等の観点より、イムノアッセイにより行われる。
【0033】
本発明の方法は、下記(a)および(b)を含んでいてもよい:
(a)被験体から得られた胆汁含有サンプルから細胞外小胞(EV)を回収すること;および
(b)回収された細胞外小胞において、前記1種以上のタンパク質の量を解析すること。
【0034】
(a)における回収は、液体サンプルからEVを回収できる任意の方法により行うことができる。このような方法としては、例えば、免疫沈降、超遠心分離(例、グアニジン塩化セシウム超遠心分離法)、AGPC(AcidGuanidinium-Phenol-Chloroform)法が挙げられる。EV回収後にタンパク質の量の解析をすることで、当該解析を阻害し得る物質の潜在的混入を防止でき、また、サンプル間の差異(例、胆汁含有サンプル中に存在する夾雑物)の影響を軽減できるため、高精度の解析が可能になる。好ましくは、回収は、免疫沈降により行うことができる。回収を免疫沈降により行う場合、上記潜在的混入をより防止でき、また、上記差異の影響をより防止できる。
【0035】
また、(a)における回収は、液体サンプルからEVを高効率で回収できる方法を用いてもよい。例えば、このような高効率の回収方法としては、EV含有サンプルをキレート剤で処理し、次いで、キレート剤で処理されたEV含有サンプルからEVを分離することを含む方法を利用することができる(例、国際公開第2018/070479号)。
【0036】
キレート剤は、金属イオンとの配位結合が可能である配位部分を有する化合物またはその塩である。配位部分の数は、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上(例、3個または6個)である。配位部分としての配位原子としては、例えば、酸素原子、リン原子、窒素原子、硫黄原子、および塩素原子が挙げられる。配位原子は、好ましくは酸素原子またはリン原子であり、より好ましくは酸素原子である。配位部分としての配位基としては、例えば、上記配位原子を有する基が挙げられる。配位基は、好ましくはカルボン酸基またはリン酸基であり、より好ましくはカルボン酸基である。
【0037】
キレート剤としては、例えば、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTMP)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(EGTA)、並びにそれらの塩が挙げられる。塩としては、例えば、金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩等の一価の金属塩、およびカルシウム塩、マグネシウム塩等の二価の金属塩)、無機塩(例、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等のハロゲン化物塩、およびアンモニウム塩)、有機塩(例、アルキル基で置換されたアンモニウム塩)、および酸付加塩(例、硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸等の無機酸との塩、および酢酸、シュウ酸、乳酸、クエン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸等の塩)が挙げられる。
【0038】
キレート剤はまた、臨床検査用の採血管中に含まれる成分として汎用されるキレート剤であってもよい。このようなキレート剤としては、例えば、EDTA、EGTA、NTA、HEDTA、EDTMP、HIDA、クエン酸およびそれらの塩が挙げられる。本発明では、このようなキレート剤の使用もまた、臨床応用の観点から望ましい。
【0039】
本発明では、1種のキレート剤を単独で使用してもよいし、複数種(例、2種、3種、4種)のキレート剤を併用してもよい。キレート剤の濃度は、キレート剤と併用される他の成分の種類および濃度等の因子によっても変動するが、例えば、10mM~1000mMである。
【0040】
胆汁含有サンプルからのEVの回収が免疫沈降により行われる場合、免疫沈降は、EVの表面マーカーに対する親和性物質を用いて行うことができる。
【0041】
EVの表面マーカーに対する親和性物質としては、例えば、上述したEV表面マーカーに対する抗体、アプタマー、ホスファチジルセリン結合タンパク質、セラミド結合タンパク質が挙げられる。本発明では、EVの表面マーカーに対する親和性物質として、単一の物質、または複数種(例、2種、3種、4種)の物質を用いることができる。
【0042】
好ましくは、EVの表面マーカーに対する親和性物質は、EVの表面マーカーに対する特異性の確保、および調製の簡便さ等の観点より、EVの表面マーカーに対する抗体であってもよい。抗体としては、例えば、全長抗体(例、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体)およびその抗原結合性断片が挙げられる。抗原結合性断片は、対象とするEV表面マーカーに対する結合性を維持している抗体断片であればよく、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv等が挙げられる。本発明では、単一の抗体、または複数種(例、2種、3種、4種)の抗体を用いることができる。
【0043】
EVの表面マーカーに対する親和性物質(好ましくは、抗体)は、EVの分離を容易にするための固相に固定されていてもよい。固相としては、例えば、ビーズおよび粒子(例、セファロースビーズ、アガロースビーズ、磁性ビーズ(磁性粒子))、支持体(例、プラスチックプレート等のプレート、メンブレン)が挙げられる。固相への物質の固定は、任意の方法により行うことができる。このように固相に固定された、EVの表面マーカーに対する親和性物質を、EVを含む混合液と混合し、EV表面マーカーに結合する物質とEVの複合体を形成させ、この複合体を混合液から分離することで、EVを混合液から分離することができる。例えば、固相としてビーズまたは粒子を用いる場合は、複合体の形成後に遠心分離し、上清を除くことで、EVを混合液から分離することができる。固相として磁性ビーズを用いる場合は、複合体の形成後に集磁し上清を除くことで、EVを混合液から分離してもよい。固相として支持体を用いる場合は、複合体の形成後に混合液を除くことで、EVを混合液から分離することができる。
【0044】
EVの表面マーカーに対する親和性物質は、好ましくは、テトラスパニン膜タンパク質に対する親和性物質であり、さらにより好ましくはCD9および/またはCD63に対する親和性物質である。
【0045】
胆汁含有サンプルをEVの表面マーカーに対する親和性物質と混合する温度は、EVと親和性物質が結合でき、親和性物質を利用してEVを回収可能な温度である限り特に限定されない。このような温度は、例えば4~80℃、好ましくは35~60℃であってもよい。ヒト血液サンプルをEVの表面マーカーに対する親和性物質で処理する時間は、EVと親和性物質が結合できる十分な時間である限り特に限定されない。
【0046】
胆汁含有サンプルからのEVの回収が超遠心分離により行われる場合、超遠心分離は、超遠心分離機を用いて行うことができる。超遠心分離で印加される重力は、例えば、10,000×g~200,000×gであり、好ましくは、70,000×g~150,000×gであってもよい。超遠心分離の時間は、例えば、0.5~24時間であり、好ましくは1~5時間である。超遠心分離での温度は、例えば、4~30℃である。超遠心分離は、1回または複数回(例、2回、3回)行ってもよい。
【0047】
(b)における解析は、上述のタンパク質の量の解析と同様にして行うことができる。
【0048】
本発明の方法では、上述の1種以上のタンパク質の量の解析に基づいて、胆管がんの罹患の可能性が判定される。当該1種以上のタンパク質の解析の結果は、基準値と比較するための指標として利用される。胆管がんに罹患している被験体群は、胆管がんに罹患していない被験体群(例えば、上述したような胆管において炎症を伴う良性疾患の患者)に比し、当該1種以上のタンパク質の量が有意に高い。したがって、本発明の方法によれば、当該1種以上のタンパク質の量が基準値以上のとき、被験体は、胆管がんに罹患している可能性が高いと判定することができる。また、当該1種以上のタンパク質の量が基準値未満のとき、被験体は、胆管がんに罹患している可能性が低いと判定することができる。
【0049】
上記基準値としては、例えば、胆管がんに罹患している群を判別できるように適切に設定されたカットオフ値を利用することができる。カットオフ値は、その値を基準として疾患の判定をした場合に、高い診断感度(有病正診率)および高い診断特異度(無病正診率)の両方を満たす値である。診断感度(または単に感度)は、特定状態を有する被験体のうち、正しく診断される被験体の割合である。特定状態を有する全ての被験体について「陽性」の結果が得られる場合、感度は100%である。診断特異度(または単に特異度)は、特定状態を有しない被験体のうち、正しく診断される被験体の割合である。特定状態を有しない全ての被験体について「陰性」の結果が得られる場合、特異度は100%である。カットオフ値の算出方法は、本分野において周知である。
【0050】
本発明の方法はまた、上述の1種以上のタンパク質の量が基準値以上である患者に対して、胆管がんの治療剤(例、胆管がんに対する抗がん剤)を投与することを含んでいてもよい。このような投与をさらに含む本発明の方法は、胆管がんの治療法として有用である。
【0051】
4.胆管がんの診断試薬
本発明の診断試薬は、上記1種以上のタンパク質の量の解析手段を含む、胆管がんの診断試薬である。
【0052】
上記1種以上のタンパク質の量の解析手段としては、例えば、上記1種以上のタンパク質に対して特異的な1種以上の親和性物質が挙げられる。このような親和性物質としては例えば、抗体(例、IgG、IgM、IgA、またはこれらの結合性断片)、アプタマーが挙げられる。また、タンパク質の種類に応じた、タンパク質の量の解析手段を利用することもできる。例えば、タンパク質が酵素である場合には、酵素の基質もしくは生成物、またはその共役因子を、タンパク質の量の解析手段として利用することができる。また、タンパク質がリガンド、アダプター等の結合性タンパク質である場合には、結合性タンパク質の結合標的を、タンパク質の量の解析手段として利用することができる。簡便性、迅速性、解析精度等の観点より、タンパク質の量の解析手段は、好ましくは、親和性物質であり、より好ましくは抗体であり、さらにより好ましくはモノクローナル抗体である。解析手段は、上述したような固相に固定されていてもよく、標識物質等の物質と結合体化されていてもよい。本発明の診断試薬は、解析手段が固相に固定されていない場合には、さらに固相を含んでいてもよく、また、標識物質で標識されていない場合には、さらに標識物質を含んでいてもよい。本発明の診断試薬は、解析手段として上記1種以上のタンパク質に対する抗体を含む場合、さらに2次抗体を含んでいてもよい。2次抗体は、上記1種以上のタンパク質に対する抗体と異なるエピトープを標的とする上記1種以上のタンパク質に対する抗体(例、サンドイッチアッセイ用抗体)であってもよい。
【0053】
上記1種以上のタンパク質の量の解析手段の数は、上記1種以上のタンパク質の数に応じて適宜決定することができる。例えば、解析手段の数は、本発明で利用されるべきタンパク質の個数と同じに設定することができる。また、上記1種以上のタンパク質の一つに対し、2種以上の解析手段を用いることもできる。このような解析手段としては、例えば、このような一つのタンパク質中の同一または異なるエピトープに対する異なる2種以上の抗体が挙げられるが、一つのタンパク質中の異なるエピトープに対する異なる2種以上の抗体が好ましい。あるいは、本発明で利用されるべき2種以上の特定タンパク質がその総量としても胆管がんに罹患している被験体群で有意に高く、かつ当該2種以上の特定タンパク質がそれらに特異的な共通エピトープを有する場合(例、当該2種以上のタンパク質が特定ファミリーに属する場合)、共通エピトープに対する抗体を用いてこれらのタンパク質の総量を包括的に解析することによっても本発明の目的を達成できるため、解析手段の数は、本発明で利用されるべきタンパク質の個数よりも少ない数に設定することができる。したがって、本発明の診断試薬に含まれる解析手段の数は、本発明で利用されるべきタンパク質の個数以下の数に設定することができる。
【0054】
本発明の診断試薬は、EVの回収手段をさらに含んでいてもよい。EVの回収手段としては、EVの表面マーカーに対する親和性物質が挙げられる。EVの表面マーカーに対する親和性物質は上述のとおりである。EVの表面マーカーに対する親和性物質は、EVの分離を容易にするための固相に固定されていてもよい。あるいは、EVの表面マーカーに対する親和性物質が固相に固定されていない場合、本発明の診断試薬は、上述したような固相をさらに含んでいてもよい。本発明の診断試薬は、例えば、本発明の方法の迅速かつ簡便な実施に有用である。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
胆汁の細胞外小胞(EV)に含有されるタンパク質の量的差異で胆管がんの診断が可能かどうか検証するために、胆管がん患者由来胆汁10例および良性疾患として胆石患者由来胆汁10例のEVを用いてプロテオミクスを行った。
【0057】
(細胞外小胞の回収)
400μLの胆汁検体を、400μLのEDTAおよびEGTA入りPBS(EDTA、EGTAの終濃度は50mM、以下ED/EG)で希釈し、室温で10分放置した後、15,000xg、4℃で15分間遠心した。上清を新しいチューブに移し、600μLのED/EGを加えた。溶液を0.22μmのフィルターに通し、その内1.4mLを新しいチューブに移し、100,000xg、4℃で1時間超遠心した。上清を廃棄し、ペレットに100μLのED/EGを加えた。よく懸濁した後、再度100,000xg、4℃で1時間超遠心した。上清を廃棄し、ペレットを回収してEVを得た。
【0058】
(プロテオミクスのための処理および操作)
ペレットに40μLのLysis Buffer(50mM 重炭酸アンモニウム(シグマアルドリッチ社製)、50mM DTT/50mM 重炭酸アンモニウムおよび2% Rapigest SF試薬(Waters社製)/50mM重炭酸アンモニウムを8:1:1の比率で混合したもの)を加え懸濁した。溶液を新しいチューブに移し、60℃で30分還元を行った。室温に戻した後に4μLの150mM ヨードアセトアミド(和光純薬社製)/50mM 重炭酸アンモニウムを添加し、遮光し30分間室温で反応させた。
【0059】
反応後、1μg/μLのTrypsin/Lys-C Mix, Mass Spec Grade(プロメガ社製)を1μL加え37℃で18時間インキュベートした。溶液に4μLの10% トリフルオロ酢酸(TFA)(サーモサイエンティフィック社製)を加え、37℃で30分間インキュベートした。白濁していることを確認した後、13,000xg、10分間室温遠心した。新しいチューブに上清を回収し、遠心エバポレーター(東京理化器械株式会社製)で凍結乾固させた。
【0060】
凍結乾固したサンプルを70μLの0.5% TFA/5% アセトニトリル(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)で再溶解した後、Pierce C18-Spin Column,PepClean(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)で脱塩処理した。溶出液を遠心エバポレーターで凍結乾固させた。得られたペプチドに10μLの0.1%ギ酸水(サーモサイエンティフィック社製)を加えて溶解したのち、LC-MS(LC:Ultimate U3000、質量分析装置:Q Exactive、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)で測定を行った。タンパク質の同定および定量解析はProteome Discoverer 2.2(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)で行った。
【0061】
得られたタンパク質ごとの定量値を基に、Welchのt検定によるp値およびFold Change(胆管がん/胆石)を算出し、差異が認められるタンパク質を抽出した(p値 0.05未満、FoldChange 2以上)。結果を表1~5に示す。また、差異が認められるタンパク質の例としてRas関連タンパク質Rab-20(Q9NX57)、ロイシン-tRNAリガーゼ(細胞質性)(Q9P2J5)、第X凝固因子(P00742)、クローディン-3(O15551)の結果を、
図1~4に示す。
【0062】
その結果、胆管がん患者および良性疾患である胆石患者由来胆汁中のEVに含有されるタンパク質の量において統計学的有意差(p<0.05)が認められたことから、胆管がんのマーカー候補として165種のタンパク質が同定された(表1~5、
図1~4)。したがって、胆汁中のEVにより、胆管がんの判別が可能であることが示された。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えば、胆管がんの臨床検査に有用である。