(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】補正データを作成する方法、成形方法、成形装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240415BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020077589
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 怜介
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-169491(JP,A)
【文献】特開2014-053333(JP,A)
【文献】特開2011-222705(JP,A)
【文献】特開2014-103189(JP,A)
【文献】特開2019-075421(JP,A)
【文献】特開2017-139480(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0112220(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
G03F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いてステージに搭載された基板の上の組成物を成形する成形装置において実行される、前記ステージの駆動に関する補正データを作成する方法であって、
前記ステージに第1基板を搭載し、該第1基板の複数の計測ショット領域のそれぞれについて、組成物の供給が行われる供給位置に計測ショット領域が来るように前記ステージを移動して組成物を供給する第1工程と、
前記型を介さずに前記計測ショット領域の上の前記組成物を観測するオフアクシススコープを用いて、前記ステージに搭載された前記第1基板の前記複数の計測ショット領域のそれぞれについて、前記第1工程において計測ショット領域の上に供給された前記組成物の、目標位置からの位置ずれ量の計測を行う
第2工程と、
前記第2工程による前記計測の結果に基づいて、前記第1基板とは異なる第2基板の複数のショット領域のそれぞれへの組成物の供給時における前記ステージの駆動に関する補正データを作成する第3工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2工程の前に、前記第1工程において前記計測ショット領域の上に供給された前記組成物を硬化させる工程を更に有することを特徴とする請求項1
に記載の方法。
【請求項3】
前記第2工程は、前記第1工程において計測ショット領域の上に供給された前記組成物の液滴ごとに液滴の目標位置からの位置ずれ量の計測を行い、各液滴の前記位置ずれ量から前記計測ショット領域に対する前記組成物の位置ずれ量を求める、ことを特徴とする請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第3工程は、前記補正データを、前記複数の計測ショット領域のそれぞれと位置ずれ量との対応関係が記述された補正テーブルとして記憶部に記憶することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第3工程は、前記補正データを、前記複数の計測ショット領域のそれぞれと位置ずれ量との対応関係を表す近似式として記憶部に記憶することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第3工程は、前記複数の計測ショット領域以外のショット領域の上の組成物の位置ずれ量を、前記複数の計測ショット領域に対する前記計測の結果を用いて補間して得る工程を含むことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第3工程は、ショットレイアウトにおける第1方向の座標が同じ一群のショット領域の上の組成物の前記第1方向と直交する第2方向の位置ずれ量を、当該一群のショット領域に含まれる計測ショット領域に対する前記計測の結果に基づく共通の値に統一する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1基板はメンテナンス用基板であり、前記第2基板はデバイス生産用基板であることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステージに搭載された基板の上に組成物を供給する供給工程と、
前記基板の上の組成物と型とを接触させる接触工程と、
前記組成物と前記型とが接触した状態で前記組成物を硬化させる硬化工程と、
前記硬化した組成物と前記型とを分離する離型工程と、を有し、
前記供給工程において、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の方法によって予め得られた補正データに基づいて、前記組成物の供給が行われる位置へ前記基板を移動させるための前記ステージの駆動指令値が補正される、ことを特徴とする成形方法。
【請求項10】
ステージに基板を搭載し、該基板の複数の計測ショット領域のそれぞれについて、組成物の供給が行われる供給位置に計測ショット領域が来るように前記ステージを移動して組成物を供給する第1工程と、
前記ステージに搭載された前記基板の前記複数の計測ショット領域のそれぞれについて、前記第1工程において計測ショット領域の上に供給された前記組成物の、目標位置からの位置ずれ量の計測を行う
第2工程と、
前記第2工程による前記計測の結果に基づいて、前記基板の複数のショット領域のそれぞれへの組成物の供給時における前記ステージの駆動に関する補正データを作成する第3工程と、
前記基板のショット領域が前記供給位置に来るように前記ステージを移動して組成物を供給する第4工程と、
前記基板の前記ショット領域の上の前記組成物と型とを接触させる第5工程と、
前記組成物と前記型とが接触した状態で前記組成物を硬化させる第6工程と、
前記硬化した組成物と前記型とを分離する第7工程と、を有し、
前記第4工程は、前記第3工程により得られた前記補正データに基づいて、前記ステージの駆動指令値を補正する工程を含
み、
前記基板はデバイス生産用基板であり、
第3工程の終了後、前記第4工程の前に、前記第1工程において前記複数の計測ショット領域のそれぞれの上に供給された前記組成物が揮発するまで待機する工程を更に有する、
ことを特徴とする成形方法。
【請求項11】
基板の上に組成物を供給する供給工程と、前記基板の上の組成物と型とを接触させる接触工程と、前記組成物と前記型とが接触した状態で前記組成物を硬化させる硬化工程と、前記硬化した組成物と前記型とを分離する離型工程とを含む成形処理を行う成形装置であって、
基板を保持して移動するステージと、
前記ステージの駆動を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記供給工程において、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の方法によって予め得られた補正データに基づいて、前記組成物の供給が行われる位置へ前記基板を移動させるための前記ステージの駆動指令値を補正する、ことを特徴とする成形装置。
【請求項12】
請求項
9または10に記載の成形方法に従って基板の上に組成物を成形する工程と、
前記組成物が成形された前記基板を処理する工程と、
を有し、前記処理された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【請求項13】
請求項1
1に記載の成形装置を用いて基板の上の組成物を成形する工程と、
前記組成物が成形された前記基板を処理する工程と、
を有し、前記処理された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正データを作成する方法、成形方法、成形装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置が、半導体デバイスなどの量産用リソグラフィ装置の1つとして注目されている。成形装置の一例としてインプリント装置がある。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材(組成物)とモールド(型)とを接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを分離することにより、基板上にインプリント材のパターンを形成する。基板上へのインプリント材の供給は、インプリント材を吐出する複数の吐出口が配列された吐出部を用いて、吐出部と基板とを相対的に移動させながら複数の吐出口からのインプリント材の吐出を制御することによって行われうる。
【0003】
半導体デバイスは、1チップ内により多くの回路パターンを組み込むため、複数層(64層など)で構成されうる。インプリント装置による基板上へのパターン形成は、最下層の第1レイヤではなく、他の露光装置によって下地パターンが形成された第2レイヤ以降の層に対して実施される。そして、最上位層のパターンを形成する際は、基板の下地パターンに対して最上位層パターンの位置が合うようにアライメントを行い、数nm以下の位置合わせ誤差で最上位層パターンを形成することが求められる。
【0004】
特許文献1には、ショットレイアウトで定義されている各ショットの理想的な位置からの下地ショットのずれを検出し、下地ショットの位置に合うようにインプリント材の供給を行うインプリント装置が開示されている。
【0005】
特許文献2には、インプリント材供給部の位置ずれに起因して生じる基板上へのインプリント材の供給位置ずれを計測し、インプリント材供給時の基板ステージの位置を補正するインプリント装置が開示されている。ここには、例えばウエハ数枚ごとに計測を行うことでインプリント材供給部の位置の経時変化にも対応可能であることが記載されている。
【0006】
特許文献3には、複数の吐出ノズルそれぞれの位置ずれ量を記憶しておき、インプリント工程において、使用する吐出ノズルの位置ずれ量のみからインプリント材供給時の補正位置を決定することが記載されている。
【0007】
特許文献4には、基板上へ供給されたインプリント材の各液滴の着弾位置を計測し、着弾位置にずれが生じていた場合に、ずれが生じていた液滴の供給目標位置(ドロップマップ)を、液滴のずれが相殺されるように修正することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5813603号公報
【文献】特開2011-222705号公報
【文献】特開2019-75421号公報
【文献】特開2014-103189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
インプリント装置などの成形装置においては、基板の下地レイヤとの位置合わせ精度として数nmオーダーの精度が要求される。そのため、基板ステージの移動精度には1nm以下の精度が求められる。このステージ移動精度を実現するため、予め理想的な格子配列のショットにアライメントマークが転写された基準基板を使用し、この基準基板をアライメントして得られたずれ量を、各ショットに対応する基板ステージ移動ずれ量として記憶しておく。そして、デバイス生産用基板の処理時には、このずれ量を相殺するように各ショットのステージ移動位置が補正される。
【0010】
一方、現状において、ディスペンサにはアライメントスコープは具備されていない。そのため、ディスペンサ下での基板ステージの移動位置については、上記のような基準基板による移動ずれ量を用いた位置補正ができないため、基板ステージの移動精度はメカ精度に則る精度になる。したがって、ディスペンサ下の基板ステージの移動位置は目標位置ごと(ショットごと)にそれぞれ理想的な位置からずれた位置になり、そのずれがインプリント材の供給領域のずれとなって表れる。インプリント材供給領域のずれは、インプリント時においてショット外周部におけるインプリント材のはみ出しやインプリント材不足に繋がり、欠陥ショットを生み出す要因となる。
【0011】
前記した特許文献1~4はいずれも、インプリント材供給時における基板ステージの位置ずれは考慮せず、ディスペンサの設置位置のずれまたはノズルの配向のずれに起因するインプリント材の供給位置ずれを解決しようとしている。例えば特許文献2には、ステージ駆動手段3によって移動された基板ステージ4の位置が、定盤1に対して十分な精度で保証されていることが前提であることが明記されている。基板ステージの位置ずれがないと考える場合には、ディスペンサの設置位置のずれによるインプリント材の供給位置ずれは、どのショットにおいても一定であると考えることができる。しかし、実際には基板ステージの位置ずれを無視することはできない。基板ステージの位置ずれを考慮する場合には、ディスペンサの設置位置のずれによるインプリント材の供給位置ずれは、ショットの位置に応じて異なる。
【0012】
本発明は、組成物の供給位置ずれの低減に有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面によれば、型を用いてステージに搭載された基板の上の組成物を成形する成形装置において実行される、前記ステージの駆動に関する補正データを作成する方法であって、前記ステージに第1基板を搭載し、該第1基板の複数の計測ショット領域のそれぞれについて、組成物の供給が行われる供給位置に計測ショット領域が来るように前記ステージを移動して組成物を供給する第1工程と、前記型を介さずに前記計測ショット領域の上の前記組成物を観測するオフアクシススコープを用いて、前記ステージに搭載された前記第1基板の前記複数の計測ショット領域のそれぞれについて、前記第1工程において計測ショット領域の上に供給された前記組成物の、目標位置からの位置ずれ量の計測を行う第2工程と、前記第2工程による前記計測の結果に基づいて、前記第1基板とは異なる第2基板の複数のショット領域のそれぞれへの組成物の供給時における前記ステージの駆動に関する補正データを作成する第3工程と、を有することを特徴とする方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、組成物の供給位置ずれの低減に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】インプリント材供給位置ずれの影響を説明する図。
【
図5】補正データを作成する方法のフローチャート。
【
図7】計測部によって観察されるインプリント材の液滴の例を示す図。
【
図9】未計測のショットに対する供給位置ずれ量を算出する方法を説明する図。
【
図10】グループ内のショット間で同一の供給位置ずれ量を共有する例を説明する図。
【
図11】ディスペンス処理におけるスキャン開始時および終了時のステージ位置の補正を説明する図。
【
図12】デバイス生産用基板に対するインプリントシーケンスのフローチャート。
【
図14】基板上の組成物を平坦化する方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、実施形態におけるインプリント装置100の概略図である。本明細書および図面においては、水平面をXY平面とするXYZ座標系において方向が示される。一般には、基板Wはその表面が水平面(XY平面)と平行になるように基板ステージ20の上に置かれる。よって以下では、基板Wの表面に沿う平面内で互いに直交する方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。また、以下では、XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向といい、X軸周りの回転方向、Y軸周りの回転方向、Z軸周りの回転方向をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向という。
【0018】
[インプリント装置の概要]
まず、実施形態に係るインプリント装置の概要について説明する。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
なお、本実施形態では、型として、凹凸パターンを設けた回路パターン転写用の型について述べるが、凹凸パターンがない平面部を有する型(ブランクテンプレート)であってもよい。ブランクテンプレートは、平面部によって基板上の組成物を平坦化するように成形する平坦化装置に用いられる。
つまり、本実施形態は、型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置に適用することができる。
【0019】
インプリント材(組成物)としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、インプリント材供給装置により、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0020】
[インプリント装置の構成]
図1において、インプリント装置100は、例えば、モールド(型)を保持するインプリントヘッド10と、基板を保持して移動可能な基板ステージ20と、硬化部30と、供給部40(ディスペンサ)と、制御部60とを含みうる。また、インプリント装置100は、第1計測部50と第2計測部70とを含みうる。制御部60は、例えばCPUやメモリなどを有するコンピュータによって構成され、インプリント装置100の各部を制御してインプリント処理(成形処理)を制御する。モールドMは、石英など紫外線を透過させることが可能な材料で作製されており、基板側の面において基板側に突出した一部の領域(パターン領域)には、基板上のインプリント材に転写されるべき凹凸のパターンが形成される。基板Wは、上記のとおりシリコンウエハ等でありうるが、基板Wの上には、インプリント材の付与前に、必要に応じてインプリント材と基板との密着性を向上させるための密着層が形成されてもよい。
【0021】
インプリントヘッド10は、例えば、真空力などによりモールドMを保持するモールドチャック11と、モールドMと基板Wとの間隔を変更するようにモールドM(モールドチャック11)をZ方向に駆動するモールド駆動部12とを含みうる。一実施形態において、インプリントヘッド10によりモールドMをZ方向に駆動することで、モールドMと基板上のインプリント材とを接触させる接触工程、および、硬化したインプリント材からモールドMを分離する離型工程が行われうる。また、インプリントヘッド10には、Z方向にモールドMを駆動する機能に限られず、XY方向およびθz方向にモールドMを駆動する機能や、モールドMの傾き(チルト)を変更する機能が設けられてもよい。例えば、後者の機能によると、接触工程において、モールドMのパターン領域と基板Wとが平行になるようにモールドMの傾きを制御することができる。
【0022】
さらに、インプリントヘッド10は、モールドMと基板Wとの接触状態を確認するための観察カメラ(不図示)を有していてもよい。観察カメラは、モールドMと基板Wが接触している時の干渉縞の形からモールドMと基板Wとの平行度を検出し、インプリントヘッド10の制御に利用されうる。あるいは、観察カメラは、パターンが形成された硬化済みインプリント材を観測してインプリント処理の成否を判断することに利用されうる。
【0023】
基板ステージ20は、例えば、真空力などにより基板Wを保持する基板チャック21と、XY方向に基板Wを駆動する粗動ステージ22と、XY方向およびθz方向に基板Wを駆動する微動ステージ23とを含みうる。一実施形態において、粗動ステージ22は、基板チャック21によって保持された基板WをXY方向に駆動し、微動ステージ23は、粗動ステージ22の上で、基板チャック21によって保持された基板WをXY方向およびθz方向へ駆動する。粗動ステージ22は長ストローク、高速移動を担い、微動ステージ23は高精度の微調整を行う。これにより、基板ステージ20の上に搭載された基板WのXY方向およびθz方向の位置の変更を行い、モールドMに対する基板Wの位置決め、および、供給部40に対する基板Wの位置決めを行うことができる。基板ステージ20には、基板WをXY方向に駆動する機能に加え、基板WをZ方向およびθz方向に駆動する機能、および、基板Wの傾き(チルト)を変更する機能が設けられてもよい。
【0024】
硬化部30(照射部)は、モールドMと基板上のインプリント材とが接触している状態で、基板上のインプリント材にモールドMを介して光(例えば紫外線)を照射することによりインプリント材を硬化させる(硬化工程)。硬化部30は、光源と光源からの光による投影を調整する投影光学系とを含みうる。
【0025】
図2は、供給部40を下方(-Z方向)から見た図である。供給部40は、Y方向に沿って複数の吐出口41が配列された吐出口アレイを有し、基板Wに向けて複数の吐出口41からインプリント材を吐出する。複数の吐出口41のそれぞれは例えばピエゾ素子を含み、圧電効果を利用してインプリント材を押し出すことによりインプリント材を液滴として吐出することができる。ピエゾ素子に印加される電圧の波形(以下、駆動波形)や、その駆動波形に従って電圧を印加するタイミングは、制御部60によって制御されうる。
【0026】
インプリント装置100は、供給部40と基板Wとを相対的に移動させながら、供給部40における複数の吐出口41の各々からインプリント材を液滴として吐出させることにより、基板上にインプリント材を供給することができる。ただし、本発明はこの吐出動作に限定されるものではない。例えば、供給部40がショット領域(以下、単に「ショット」ともいう。)と同様の大きさを持ち、そのため供給部40および基板Wとを移動させることなくインプリント材の液滴を吐出する構成でもよい。
【0027】
基板上へのインプリント材の供給処理は、例えば、基板W(のショット領域)におけるインプリント材の目標供給位置、即ち、インプリント材を液滴として供給すべき基板上の目標位置を示す情報(配置パターンとも呼ばれる)に基づいて制御される。この情報は、例えば、モールドMの凹凸パターンの寸法情報、複数の吐出口41のそれぞれから吐出されるインプリント材の量等に基づいて、モールドMによって形成されたインプリント材のパターンの残膜厚が目標膜厚になるように事前に生成されうる。
【0028】
第1計測部50は、基板上の下地パターン(下地ショット)の位置を計測する計測器である。第1計測部50は、例えば、硬化部30の光源からの光の光路からオフセットされた位置に配置されたオフアクシススコープ(OAS)でありうる。制御部60は、第1計測部50の計測結果から特定される基板上の複数の下地ショットの位置の情報を計算データに用いて、ショット全体のXY方向およびθz方向の位置のずれ(ショットレイアウトで示される理想的な位置からのずれをいう。)を得ることができる。下地ショットには、例えばその四隅に、ショットの位置を知るためのアライメントマークが形成されている。制御部60は、第1計測部50がアライメントマークを撮像した結果を画像処理することによりアライメントマークの位置を特定する。本実施形態では、さらに、基板上に供給されたインプリント材の液滴の位置を特定するためにも第1計測部50が使用される。
【0029】
第2計測部70は、モールドMのパターン形成面の位置と、基板上のインプリント対象ショットとの位置を合わせるために用いられる。第2計測部70は、例えば、硬化部50の投影光学系を介して位置検出を行うTTLオンアクシススコープでありうる。制御部60は、第1計測部50で得られた位置情報を利用して、対象ショットがモールドMのパターン面の下に来るよう基板ステージ20を制御する。その後、制御部60は、インプリントヘッド10を降下させてモールドMと基板Wとを接近させる(例えば両者の間隔が20μmになるまで)。その状態で、制御部60は、第2計測部70を用いて、モールドMに形成されたアライメントマークの位置と、基板に形成されたアライメントマークの位置が合うように、微動ステージ23を駆動して位置合わせを行う。
【0030】
[インプリント材の供給位置ずれ]
基板ステージ20(以下、単に「ステージ」ともいう。)の移動には、目標位置に対する正確な移動が求められる。露光装置やインプリント装置においてはステージ移動誤差に対する要求は1nm以下と厳しく、メカで保証できるスペック以上の移動精度が求められる。そのため、事前にステージ移動誤差を計測して記憶しておき、ステージの移動時には、そのステージ移動誤差を相殺するようにステージの移動目標位置を補正する方法が適用される。
【0031】
ステージ移動誤差(位置ずれ量)の計測には、専用の基準基板が使用される。基準基板には、理想的な配列格子のショットレイアウトがアライメントマークと共に下地として形成されている。基準基板に形成された各ショットの位置を計測して得られる位置ずれ量は、ステージ移動誤差(位置ずれ量)とみなすことができる。この基準基板の計測が第1計測部50を用いて行われる。そこで得られた各ショットの位置ずれ量は、次に第1計測部50でショットを計測する際のステージ移動位置の補正に使用される。さらに、基準基板の計測が第2計測部70を用いて行われる。そこで得られた各ショットの位置ずれ量は、次に第2計測部70でショットを計測する際のステージ移動位置の補正に使用される。
【0032】
一方、供給部40には、供給部専用のアライメントスコープは用意されていない。そのため、供給部40の下に対象ショットを位置させるためのステージの制御においては、アライメントスコープを用いたステージ移動誤差を取得することはできないため、ステージ移動位置の補正も行うことはできない。
【0033】
図3は、ディスペンサ下のステージ移動位置の補正が行われなかった場合のインプリント材供給領域のずれの例を示す図である。ディスペンス時のステージ位置は移動誤差を含んだ位置となるため、下地ショットLに対して移動誤差分ずれた位置にインプリント材Rが供給される。すなわち、期待するインプリント材供給位置からX方向にΔX、Y方向にΔYだけずれた位置にインプリント材Rが供給される。これらΔX、ΔYが補正のされるべき位置ずれである。なお、
図3にはθz方向のずれは表されていないが、実施形態においては、θz方向のずれも補正の対象となりうる。
【0034】
図4は、インプリント材供給位置がずれたことによるインプリント処理への影響を示した図である。モールドMのパターン面と基板Wの対象ショットとの位置合わせが行われた後、接触工程、硬化工程、離型工程が実施される。
図4のように、既に基板Wに転写されている下地レイヤのショット位置に対してインプリント材供給位置がずれてしまうと、接触工程においてインプリント材がショットの外にはみ出る、あるいは、外周部のインプリント材が不足する状態になりうる。はみ出たインプリント材は転写領域から漏れ出た露光光によって半硬化し、隣接ショットに残留する、あるいは、モールドのメサの外周部に付着することで、次ショット以降の欠陥発生の要因になりうる。インプリント材が不足した領域はパターンやマークの形成ができないため当該ショットの欠陥の要因になりうる。
【0035】
本実施形態では、アライメントスコープを有していないディスペンサ下における基板ステージの移動位置ずれを検出すると共に、得られた位置ずれ量を用いてディスペンス時のステージ移動位置を補正することで、本課題を解決する。
【0036】
ステージ移動位置ずれは主にメカ構成に起因しているため、経時変化の影響が僅かであるとすると、ステージのある位置におけるずれ量には再現性がある。よって、装置の定期的な調整時に、メンテナンス用基板を用いて予めステージの位置ずれ量を記憶しておき、デバイス生産用基板の処理時にはその位置ずれ量を使用して補正に用いることで、スループットを低下させることなく課題を解決可能である。
【0037】
[位置ずれの検出]
図5は、インプリント装置100によって実行される、ステージの駆動に関する補正データを作成する方法のフローチャートである。この方法は、計測ショットごとにディスペンサ下(供給位置)へのステージ移動誤差を検出することを含み、検出されたステージ移動誤差に基づいて補正データが作成される。ステージには基板が搭載されている。ここで使用される基板は、下地レイヤが形成されていない基板でもよいし、既に下地レイヤが形成されている基板でもよいが、計測誤差を極力低減するために、下地レイヤが形成されていない基板を使用するのが有利でありうる。
【0038】
制御部60は、S10で、基板(第1基板)をステージに搭載した後、ステージを供給部40の下の供給位置に移動させ、その後、S11で、対象の計測ショットに対してディスペンス処理(インプリント材の供給)を行う(第1工程)。ディスペンス後、供給されたインプリント材が揮発して消失しない間に、S12およびS13が実施される。S12では、制御部60は、硬化部30による光照射領域(型の下)にステージを移動させる。その後、S13で、制御部60は、硬化部30を制御して、対象の計測ショットに光を照射してインプリント材を硬化させる。S14では、制御部60は、全ての計測ショットに対して処理を終えたか否かを判定し、全ての計測ショットの処理が終了していなければS10に戻って次の計測ショットに対する処理が行われ、全ての計測ショットの処理が終了した場合にはS15に進む。なお、全ての計測ショットとは、基板上の全てのショットでありうるが、計測時間を短縮したい場合には、予め定義された複数の計測ショットの全てとしてもよい。例えば、複数の計測ショットは、1ショット飛ばしに位置する複数のショットとしてもよい。その場合、間引かれたショットに対する位置ずれ量は、隣接する計測ショットでの位置ずれ量から補間して得てもよい。
【0039】
S15では、制御部60は、(インプリント材供給済みの)対象の計測ショットをアライメントスコープの下に移動させる。アライメントスコープは、インプリント材を観測可能な計測部であり、光量、フォーカス、倍率等を調整可能な観察光学系である。アライメントスコープは、第1計測部50でもよいし、第2計測部70でもよい。オフアクシススコープである第1計測部50が使用される場合には、モールドMを介さずに計測ショット上のインプリント材を観測する。TTMスコープである第2計測部70が使用される場合には、モールドMを介して計測ショット上のインプリント材を観測することになる。一般には、TTMスコープである第2計測部70に対して、オフアクシススコープである第1計測部50の方が倍率調整等が容易であるため、そのような観点から第1計測部50が使用されてもよい。あるいは、インプリント材位置検出用の専用のスコープが使用される構成としてもよい。また、インプリントヘッド10が観察カメラ(不図示)を有している場合には、観察カメラが使用されてもよい。
【0040】
S16では、制御部60は、アライメントスコープにより得られた画像を処理してインプリント材の位置を求める。S17では、制御部60は、求められたインプリント材の位置の目標位置からのずれ量を計測することにより、S10、S11における各計測ショットについてのステージ移動誤差を求める(第2工程)。ずれ量は、X方向、Y方向、θz方向のずれ量を含みうる。なお、第1計測部50および第2計測部70の使用時のステージ移動位置ずれは前述した基準基板を用いた補正方法によって予め補正済みである。したがって、S17において第1計測部50または第2計測部70が使用される場合におけるステージ移動位置ずれは無い状態である。
【0041】
図7に、アライメントスコープによって観察されるインプリント材の液滴の例を示す。供給部40から吐出され基板上に堆積された液滴は、球体状の形(横から観測すると半球体状)の形をなす。アライメントスコープの1回の検出における視野は、例えば、横幅が500μm、縦幅が300μmである。インプリント材の一滴あたりの大きさは、例えば、直径90μmである。インプリント材の一滴ごとのXY方向における目標位置は、ショット中心を(X,Y)=(0,0)とするXY座標における値で定義されうる。インプリント材の吐出条件は、目標位置の定義データを用いて決定される。目標位置として定義された座標が理想的な供給位置である。インプリント材の位置の計測は、インプリント材一滴ずつ実施されるため、隣の液滴を誤って計測対象としないために、各液滴の間隔が一定間隔離れるような目標位置の定義データが使用される。複数の液滴の位置を同時に検出する画像処理を行う場合は、複数滴ごとに計測を実施してもよい。
【0042】
一滴単位で位置を検出する場合は、制御部60は、アライメントスコープの管面中心に理想的な液滴供給位置が来るように基板ステージを移動させ、実際の液滴の該液滴の目標位置からの位置ずれ量(ΔX,ΔY)を検出する。制御部60は、当該ショットの計測対象液滴の位置ずれが全液滴分取得されたら、それらのデータから当該ショットに供給されたインプリント材のX,Y,θzの位置ずれ量を計算する。位置ずれ量の計算では、まずθzの位置ずれを求める。θzの位置ずれ算出の際には、ショット内の最外側の列に属する液滴の位置ずれデータを用いてθzを求める。そして、θzによるXY位置ずれ分を全液滴から除去した後、ショット内全液滴の平均値から当該ショットの位置ずれ量を求める。これを対象の全ショットに対して繰り返す(S18)。
【0043】
全ての計測ショットの位置ずれ量の計測が完了したら、S19で、制御部60は、計測の結果から補正テーブルを作成して制御部60のメモリ(記憶部)に記憶する(第3工程)。補正テーブルは、インプリント対象の基板(第2基板)の複数のショット領域のそれぞれへのインプリント材の供給時におけるステージ駆動に関する補正データの一形態である。補正テーブルには、複数の計測ショット領域のそれぞれと位置ずれ量との対応関係が記述される。
図8に、補正テーブルの一例を示す。
図8において、補正テーブルは、1ショット1あたり行で構成されている。1ショットのデータは、そのショットのディスペンス時のステージ座標X,Y(targetX, targetY)、位置ずれ量X,Y,θz(offsetX, offsetY, offsetQ)を含みうる。ステージ座標は、ディスペンサ下にショット中心が来るステージ位置の装置座標である。
【0044】
既に補正テーブルが作成済みであり、その補正テーブルを用いてステージ位置の補正が行われディスペンスされている場合には、今回の検出結果の元の補正テーブルからの差分を反映するように補正テーブルを更新してもよい。作成済みの補正テーブルがない場合は、補正テーブルを新規に作成する。
【0045】
前述したように、複数の計測ショットは、例えば、1または複数ショット飛ばしのショットであってもよい。その場合、計測ショット領域以外のショット領域での位置ずれ量は、近隣の計測ショット領域での位置ずれ量を用いて補間して得てもよい。
図9は、計測対象外のショットの位置ずれ量を得る方法を説明する図である。位置ずれ量が得られていない計測対象外のショットに対しては、左右または上下の隣接する計測済みショットでの位置ずれ量を用いて補間して位置ずれ量を算出する。実施形態において、補正データは、複数の計測ショット領域のそれぞれと位置ずれ量との対応関係を示す近似式によって表される。制御部60は、X方向(左右)に隣接する計測済みショットのY方向の位置ずれ量ΔY_RおよびΔY_Lから1次近似式を作成し、その1次近似式から未計測ショットのY方向の位置ずれ量ΔYを算出する。X方向の位置ずれ量についても、同様に、Y方向(上下)に隣接する計測済みショットのデータ補間によって算出される。補間は、例えば、補間対象ショットに最も近い2つのショットを用いて、その2つのショットの位置ずれ量から1次近似式を作成し、その1次近似式を用いて行われる。あるいは、補間は、補間対象ショットに近接する2つずつ以上のショットの位置ずれ量から2次近似式を作成し、2次近似式を用いて行われてもよい。補間対象のショットの片側に計測済みショットが存在しない場合(外周ショットなどの場合)は、計測済みショットが存在する側の計測済みショットから近似式を作成し、その近似式が未計測ショットの補間に使用される。
【0046】
図10は、グループ毎に同じ補正量を共有して用いる利点を説明した図である。本発明では、インプリント材供給位置がずれる原因がとりわけ基板ステージの移動方向のずれにあることが想定されている。そのため、基板のショットレイアウトにおいて、X方向(第1方向)の座標が同じ一群のショットに対するY方向(第2方向)の供給位置ずれは同程度になることが想定される。同じく、Y方向(第2方向)の座標が同じ一群のショットに対するX方向(第1方向)の供給位置ずれは同程度になることが想定される。
図10に示すように、X(またはY)座標が同じであるグループ内のショットから得られたY(またはX)方向の位置ずれ量を平均した値を、同じX(またはY)座標のグループ内のショット間で共有して用いる(共通の値に統一する)。これにより、計測誤差などに起因した位置ずれ量の取得精度のバラつきを低減することができる。グループ内の計測済みショット数が少ない場合は、平均値ではなく中央値を共有して用いることでショット毎の計測精度のバラつきを更に低減することができる。例えば、
図10において、グループ1に含まれるショットは同じX座標でレイアウトされている。したがって、グループ1における計測済みショットのY方向の位置ずれ量の平均値(もしくは中央値)ΔYが、グループ1に含まれる全ショットのY方向の位置ずれ量として使用されうる。グループ2も同様に、グループ2における計測済みショットのX方向の位置ずれ量の平均値(または中央値)ΔXが、グループ2に含まれる全ショットのX方向の位置ずれ量として使用されうる。
【0047】
基板ステージの移動方向のずれは、ステージの移動軌跡が例えば2次曲線状になっていることに起因したずれであると定義できる。そのため、
図8の例のようにショット毎に補正値を記録するのではなく、各ショットの位置ずれ量から算出される2次近似式を記憶しておき、デバイス生産用基板へのインプリント材のディスペンス時のステージ位置補正にこの2次近似式を使用してもよい。この場合、制御部60は、
図5のS19の工程において、2次近似式を作成する。このとき、この2次近似式から各ショットの補正値を予め算出し、補正テーブルとしてショット毎に補正値を持つ方法を適用してもよい。この2次近似式を使った補正方法を採用する場合には、計測対象のショットの数を低減することができるため、トータルの計測時間を大幅に短縮することが可能になる。例えば、基板外周と基板中心のショットのみを計測対象として2次近似式を算出してもよい。ここで、2次近似式は、X位置を補正するための式、Y位置を補正するための式、θz位置を補正するための式をそれぞれ持つが、3つ全てを補正に使うのではなく、いずれか1つあるいは2つのみ補正に使ってもよい。
【0048】
[インプリント処理]
図6のフローチャートを参照して、上記した補正テーブルまたは近似式を使用したインプリントシーケンスを説明する。はじめに、処理対象のデバイス生産用基板に下地レイヤが形成されている場合には、該デバイス生産用基板を基板ステージ20に搭載し、下地のアライメントマークを第1計測部50により計測してショットの位置が特定される。アライメントが完了した後、各ショットに対するインプリントシーケンスに進む。
【0049】
S20では、制御部60は、補正テーブル(または近似式)から、対象ショットに対応する基板ステージの補正量を取得する。S21では、制御部60は、対象ショットが供給部40の下に来るように基板ステージ20を移動させる。このとき制御部60は、S20で取得された補正量に基づいて、位置ずれが相殺される方向にステージ位置(ステージの駆動指令値)を補正し、ディスペンス直前のステージの最終位置を決定する。ステージ位置の補正軸は、補正テーブルから得られるXYθzの3軸全てを使用してもよいし、位置ずれ量の特に大きな1軸のみや、2軸を選択して使用してもよい。このように、制御部60は、予め得られた補正データ(補正テーブルまたは近似式)に基づいて、インプリント材の供給位置へ基板を移動させるためのステージの駆動指令値が補正される。
【0050】
図11は、ステージをスキャン駆動しながら1ショットに対するインプリント材の供給を行う場合に、スキャン開始時のステージ位置およびスキャン終了時のステージ位置を補正テーブルから求めることを説明する図である。
図11(a)に示されるスキャン開始時のステージ位置に関して、補正テーブルから、スキャン開始時のステージ位置を挟んだ前後の位置で検出された位置ずれ量がそれぞれ抜き出される。このとき、当該ショットの位置ずれ量ΔYと、スキャン方向(Y方向)左隣のショットの位置ずれ量ΔY_Lが選ばれ、それら2点から得られる1次近似式からスキャン開始時のステージ位置の補正量ΔY_startが決定される。
図11(b)に示されるスキャン終了時のステージ位置に関しても同様に、補正テーブルから、スキャン終了時のステージ位置を挟んだ前後の位置で検出された位置ずれ量がそれぞれ抜き出される。このとき、当該ショットの位置ずれ量ΔYと、スキャン方向(Y方向)右隣のショットの位置ずれ量ΔY_Rが選ばれ、それら2点から得られる1次近似式からスキャン終了時のステージ位置の補正量ΔY_endが決定される。
【0051】
θzの補正量としては、補正テーブルの当該ショットの登録値がそのまま使用される。そして、ディスペンス処理において(S22)は、制御部60は、微動ステージを回転させて当該ショットのθz位置を補正し、粗動ステージのXY位置をディスペンス開始位置に移動する。このとき、制御部60は、補正後のスキャン開始時のステージ位置からステージスキャン駆動を開始し、補正後のスキャン終了時のステージ位置に向かってスキャン駆動を行い、ディスペンスを完了させる。
【0052】
ここで、補正テーブル作成時のショットレイアウトと異なるショットレイアウトでデバイス生産用基板を処理する場合は、補正テーブルの中に各ショットに対応する(ステージ座標が一致する)補正値が含まれない。このような場合も、前述の方法と同様に、処理対象ショットに最も近い両側の2点から得られる1次近似式を用いて各ショットの補正値が決定される。
【0053】
対象ショットへのディスペンスが完了したら、当該ショットをモールドMのパターン面の下に位置させるようステージの移動が行われ(S23)、その後、インプリント処理が行われる(S24)。この一連の動作が、基板上の全てのショットに対して繰り返される(S25)。
【0054】
<第2実施形態>
[連続ディスペンスにおける補正方法]
デバイス生産用基板1枚あたりの処理時間を短縮するために、複数のショットへ連続してディスペンスした後に、それらのショットを連続してインプリント処理(接触→硬化→離型)を行うシーケンスが有用である。このシーケンスでは、1枚の基板を処理するために必要な基板ステージの移動距離を削減できるため、スループットが向上する。
【0055】
ステージをスキャン駆動しながら順次インプリント材を供給していくディスペンス方法においては、スキャン方向に隣接するショット群を1つのグループとして定義し、グループ毎に連続的にディスペンス処理が行われる。例えば、X方向にスキャン駆動する場合は、X方向に隣接するショット群(ショットレイアウトのY座標が同一のショット群)が1つのグループとして定義される。そして、ディスペンサに最も近いショットからディスペンスが開始され、最も遠いショットまでステージのスキャン速度を維持しながら順次ディスペンスされていく。
【0056】
このような連続ディスペンスのシーケンスにおけるステージ位置の補正を説明する。ディスペンス時のステージ位置を補正するための補正テーブルは、第1実施形態で説明した1ショットディスペンスのシーケンスにおいて作成された補正テーブルを流用することができる。あるいは、連続ショットディスペンスのシーケンスにおいて補正テーブルが作成されてもよいが、1ショットディスペンスの補正テーブルと同じく、ショット毎にXYθzの位置ずれ量が記録される。
【0057】
デバイス生産用基板のディスペンス時には、制御部60は、ディスペンス対象のショットグループに属する各ショットの位置ずれ量を補正テーブルから抜き出し、それらの値から近似式を作成する。制御部60は、例えば、グループに属するショットが2ショットの場合は1次近似式、3ショット以上ある場合は2次近似式を作成する。そして、ディスペンス時のステージのスキャン駆動中は、制御部60は、その近似式で得られる位置ずれ量を補正するようにステージの位置を調整しながらスキャン駆動を行う。ここで、X方向にスキャン駆動する場合は、スキャン駆動中の位置補正にはY位置を補正するための近似式と、θz位置を補正するための近似式が使用される。X位置を補正するための近似式は、スキャン開始時のステージX位置の補正に使用される。
【0058】
<第3実施形態>
[デバイス生産用基板を用いた位置ずれ検出]
図12は、第3実施形態におけるインプリントシーケンスのフローチャートである。本実施形態では、デバイス生産用基板の処理に先立って予め補正テーブルを準備する上述の実施形態とは異なり、デバイス生産用基板の処理の中で補正テーブルが作成される。
【0059】
S30では、制御部60は、デバイス生産用基板を基板ステージに供給する、S31では、制御部60は、基板ステージ上の基板が計測対象基板である否かを判定する。計測対象基板は、例えば、所定枚数(例えば100枚)ごと、所定ロットごと、所定時間ごと(例えば、数時間ごと、数日間ごとなど)、あるいはそれらの組み合わせ、等のルールに従って選択される基板でありうる。基板ステージ上の基板が計測対象基板である場合にはS32に進み、そうでなければS37に進む。
【0060】
S32では、制御部60は、計測用のディスペンス処理を行う(第1工程)。ここでディスペンスされるインプリント材の量は、例えば、後のインプリント処理時にショット上のインプリント材の量が過剰にならないように制限されてもよい。S33では、制御部60は、供給されたインプリント材の位置を計測し当該ショットのXYθzそれぞれに関する目標位置からの位置ずれ量を取得する(第2工程)。前述の実施形態とは異なり、この計測に用いたショットにも通常のインプリント処理が行われるため、S32でディスペンスされたインプリント材の硬化は行わない。本実施形態では、供給されたインプリント材の液滴の位置を1滴ずつ計測する方法では計測時間が長くなるため、計測対象とする液滴を少なくし(供給する液滴の数を少なくし)、インプリント材が揮発して消失する前に計測を完了させる。
【0061】
S34では、制御部60は、全ての計測対象ショットの計測が終わったか否かを判定する。全ての計測対象ショットの計測がまだ終わっていない場合はS32に戻って次の計測対象ショットについての計測を行う。全ての計測対象ショットの計測が終わった場合には、S35に進む。S35では、制御部60は、補正テーブルを作成する(第3工程)。補正テーブルの作成方法は前述の実施形態と同様である。
【0062】
S35の終了後、S36で、制御部60は、インプリント材が過剰に供給された状態でインプリント処理が行われないよう、インプリント材が揮発するまで待機する。もちろん、計測用インプリント材が後のインプリント処理に影響しない場合にはこの待機は不要である。例えば、ショットの中心付近にのみ計測用インプリント材が供給されるケースや、インプリント用のインプリント材の供給の調整によって影響が相殺されるケースでは、計測用インプリント材は後のインプリント処理に影響しない。また、計測対象外のショットから先にインプリント処理を行うシーケンスとすることで計測対象ショットのインプリント時には既にインプリント材が揮発しているケースも、計測用インプリント材は後のインプリント処理に影響しない。
【0063】
S37では、制御部60は、対象ショットに対する本ディスペンスを行う(第4工程)。この工程は、S35で得られた補正データ(補正テーブル)に基づいて、基板を移動させるためのステージの駆動指令値を補正する工程を含む。S38では、制御部60は、接触工程(第5工程)、硬化工程(第6工程)、および離型工程(第7工程)を含むインプリント処理を行う。S39では、制御部60は、全てのショットに対するインプリント処理が終了したか否かを判定する。全てのショットに対するインプリント処理が終了していない場合はS37に戻り次のショットのインプリント処理が実施される。全てのショットに対するインプリント処理が終了した場合はS40に進む。S40では、制御部60は、全ての基板に対するインプリント処理が終了したか否かを判定する。全ての基板に対するインプリント処理が終了していない場合はS30に戻り次の基板に対するインプリント処理が実施される。全ての基板に対するインプリント処理が終了した場合、この処理が終了する。
【0064】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0065】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0066】
次に、物品製造方法について説明する。
図13の工程SAでは、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0067】
図13の工程SBでは、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図13の工程SCでは、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0068】
図13の工程SDでは、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0069】
図13の工程SEでは、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図13の工程SFでは、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0070】
<基板上の組成物を平坦化する方法の実施形態>
本実施形態では凹凸パターンがない平面部を有する型(ブランクテンプレート)を用いて、平面部によって基板上の組成物を平坦化するように成形する平坦化方法について説明する。
【0071】
図14は、基板上の組成物を平坦化する方法を説明する図である。上述の実施形態は型(テンプレート)に予め描画されたパターンを基板に転写する方法であるのに対し、本実施形態では、型(平面テンプレート)には凹凸パターンが描画されていない。基板W上の下地パターンULは、前の工程で形成されたパターン起因の凹凸プロファイルを有しており、特に近年のメモリ素子の多層構造化に伴いプロセスウエハは100nm前後の段差を持つものも出てきている。基板全体の緩やかなうねりに起因する段差は、フォト工程で使われているスキャン露光装置のフォーカス追従機能によって補正可能である。しかし、露光装置の露光スリット面積内に収まってしまうピッチの細かい凹凸は、そのまま露光装置のDOF(Depth Of Focus)を消費してしまう。基板上の下地パターンを平滑化する従来手法としてSOC(Spin On Carbon), CMP(Chemical Mechanical Polishing)のような平坦化層を形成する手段が用いられている。しかし従来例においては、
図14(a)における孤立パターン領域Aと繰り返しDense(ライン&スペースパターンの密集)パターン領域Bの境界部分においては40%~70%の凹凸抑制率で十分な平坦化性能が得られない問題がある。今後、多層化による下地の凹凸差は更に増加する傾向にある。
【0072】
この問題に対する解決策として、米国特許第9415418号では、平坦化層となるレジスト(組成物)のインクジェットディスペンサによる塗布と平面テンプレートによる押圧によって連続膜を形成する手法が提案されている。また、米国特許第8394282号では、基板側のトポグラフィ計測結果をインクジェットディスペンサによって塗布指示するポジション毎の濃淡情報に反映する方法が提案されている。本実施形態は、特に予め塗布された未硬化の組成物に対して平面テンプレートTを押し当てて基板面内の局所平面化を行う平坦加工(平坦化)装置に対して本発明を適用したものである。
【0073】
図14(a)は、平坦化加工を行う前の基板Wを示している。孤立パターンエリアAにおいてはパターン凸部分の面積が少なく、DenseエリアBではパターン凸部分の占める面積は凹部分の占める面積とおよそ1:1である。孤立パターンエリアAとDenseエリアBの平均の高さは、凸分の占める割合で異なった値をとる。
図14(b)は、基板Wに対して平坦化層を形成するための組成物が塗布された状態を示している。
図14(b)においては米国特許第9415418号に基づいて、インクジェットディスペンサによって組成物を塗布した状態を示している。
図14(c)において、平面テンプレートTは紫外線を透過するガラスまたは石英で構成されたものであり、露光光源Lからの露光光の照射によって硬化する。一方、平面テンプレートTは基板全体のなだらかな凹凸に対しては基板表面のプロファイルにならう。
図14(d)は、組成物の硬化後に平面テンプレートTが剥離された状態を示している。
【0074】
上述したような平坦化装置にも本発明を適用可能であり、上述の実施形態と同じく組成物の供給位置ずれの低減という観点において同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0075】
10:インプリントヘッド、20:基板ステージ、30:硬化部、40:供給部(ディスペンサ)、50:第1計測部、60:制御部、70:第2計測部、100:インプリント装置