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特許7471905受電装置、送電装置、それらの制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】受電装置、送電装置、それらの制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20240415BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240415BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240415BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
H02J7/00 301D
H04M1/00 U
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020082816
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021177687
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森友 和夫
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/074433(WO,A1)
【文献】特開2019-193535(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0334388(US,A1)
【文献】特表2015-535168(JP,A)
【文献】特開2017-070074(JP,A)
【文献】特表2015-526054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/80
H02J 50/12
H02J 7/00
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置であって、
送電装置から受電する受電手段
電された受電電力に関する情報を前記送電装置に送信する送信手段と、
前記送電装置とのネゴシエーションにより電力を決定する決定手段と、
前記ネゴシエーションにより決定された電力に対して得られる前記受電電力に関する前記情報に基づいて前記送電装置により生成される基準値であって前記送電装置により前記受電装置とは異なる物体を検出するために用いられ前記基準値更新する必要があるか、前記決定された電力に基づく受電中に判定する判定手段と、
前記基準値の更新が必要と判定された場合、前記決定された電力のための記基準値の更新を前記送電装置に要求する要求手段と、を有することを特徴とする受電装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記受電装置の状態が所定の条件を満たす場合に、前記基準値の更新が必要と判定することを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記受電装置に関して測定された温度が規定範囲外である場合に、前記受電装置の状態が前記所定の条件を満たすと判定することを特徴とする請求項2に記載の受電装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記受電装置における消費電力が規定範囲外である場合に、前記受電装置の状態が前記所定の条件を満たすと判定することを特徴とする請求項2に記載の受電装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記送電装置から、前記基準値の更新の要を通知することが要求された場合に、前記基準値の更新が必要であると判定することを特徴とする請求項1に記載の受電装置。
【請求項6】
前記判定手段により前記基準値の更新が必要と判定された場合に、前記送電装置に対して送電出力を低下させるように指示を行う指示手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の受電装置。
【請求項7】
前記要求手段は、前記指示手段の指示により前記送電装置からの受電電力が第1の値に低下した後に、前記基準値の更新を前記送電装置に要求することを特徴とする請求項6に記載の受電装置。
【請求項8】
送電装置であって、
受電装置へ無線で送電を行う送電手段と
前記受電装置とのネゴシエーションにより電力を決定する決定手段と、
送電電力値と前記受電装置から受信される受電電力情報であって、前記ネゴシエーションにより決定された電力に関して前記受電装置により取得される前記受電電力情報により特定される受電電力値とに基づいて前記受電装置とは異なる物体の検出に用いられる基準値を取得する取得手段と、
記基準値を記憶する記憶手段と、
前記受電装置から、前記ネゴシエーションにより決定された電力に対する前記基準値の更新要求を受信する受信手段と、
前記更新要求に応じて、前記ネゴシエーションにより決定された電力に関して前記受電装置により取得され、前記受電装置から受信される前記受電電力情報に基づいて前記記憶手段に記憶された前記基準値を更新する更新手段と、を有することを特徴とする送電装置。
【請求項9】
前記記憶手段に記憶された前記基準値の更新の要否を判断する判断手段と、
前記判断手段により前記基準値の更新が必要であると判断された場合に、前記受電装置に前記更新要求の発行を要求する要求手段と、をさらに有することを特徴とする請求項に記載の送電装置。
【請求項10】
前記判断手段は、測定された温度が規定範囲外である場合に、前記基準値の更新が必要であると判断することを特徴とする請求項に記載の送電装置。
【請求項11】
前記判断手段により前記基準値の更新が必要であると判断された場合に、前記受電装置への送電電力を第1の値へ低下させる送電制御手段をさらに有することを特徴とする請求項または1に記載の送電装置。
【請求項12】
前記送電制御手段は、前記送電電力を前記第1の値に低下させた後、前記送電電力を上昇させ、
前記更新手段は、前記送電電力を上昇させた後の送電電力値と前記受電装置から受信した前記受電電力情報に基づいて前記基準値を更新することを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項13】
前記送電制御手段は、前記送電電力を前記第1の値に低下させた後、前記受電電力情報により特定される受電電力値が第2の値になるまで前記送電電力を上昇させることを特徴とする請求項1に記載の送電装置。
【請求項14】
前記更新要求の発行の求は、前記受電装置から前記受電電力情報を受信したことに応答する信号に含ることを特徴とする請求項乃至1のいずれか1項に記載の送電装置。
【請求項15】
送電装置から受電する受電手段を有する受電装置の制御方法であって、
電された受電電力に関する情報を前記送電装置に送信する送信工程と、
前記送電装置とのネゴシエーションにより保証電力を決定するネゴシエーション工程と、
前記ネゴシエーションにより決定された電力に対して得られる前記受電電力に関する前記情報に基づいて前記送電装置により生成される基準値であって前記送電装置により前記受電装置とは異なる物体を検出するために用いられる前記基準値更新する必要があるか、前記決定された電力に基づく受電中に判定する判定工程と、
前記基準値の更新が必要と判定された場合、前記決定された電力のための記基準値の更新を前記送電装置に要求する要求工程と、を有することを特徴とする受電装置の制御方法。
【請求項16】
受電装置へ無線で送電を行う送電手段を有する送電装置の制御方法であって、
前記受電装置とのネゴシエーションにより電力を決定する決定工程と、
送電電力値と前記受電装置から受信される受電電力情報であって、前記ネゴシエーションにより決定された電力に関して前記受電装置により取得される前記受電電力情報により特定される受電電力値とに基づいて前記受電装置とは異なる物体の検出に用いられる基準値を取得する取得工程と、
記基準値を記憶手段に記憶する記憶工程と、
前記受電装置から、前記ネゴシエーションにより決定された電力に対する前記基準値の更新要求を受信する受信工程と、
前記更新要求に応じて、前記ネゴシエーションにより決定された電力に関して前記受電装置により取得され、前記受電装置から受信される前記受電電力情報に基づいて前記記憶手段に記憶された前記基準値を更新する更新工程と、を有することを特徴とする送電装置の制御方法。
【請求項17】
コンピュータを、請求項1乃至のいずれか1項に記載された受電装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項18】
コンピュータを、請求項乃至1のいずれか1項に記載された送電装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線電力伝送のための受電装置、送電装置、それらの制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線電力伝送システムの技術開発が広く行われている。標準化団体Wireless Power Consortium(以下、WPC)は、無線充電のための規格(WPC規格)を策定している。WPC規格に準拠した無線充電では、例えば受電装置を送電装置上に置くことで、受電装置におけるバッテリの充電が可能となる。しかし、送電装置と受電装置の間、あるいは送電装置または受電装置の近傍に、導電性の異物(導電性の金属片など)が存在すると、異物の発熱、送電効率の低下が生じる。そのため、送電装置による送電の開始前、または送電中に、そのような異物の存在を検出する必要がある。
【0003】
特許文献1では、送電装置が、実際の電力損失値と、事前に算出された推定の電力損失値との差を計算し、計算された差が閾値以上となった場合に、異物が存在すると判定する。ここで、実際の電力損失値とは、送電装置が行った送電出力の値と受電装置から受信した受電電力の値との差分である。また、推定の電力損失値は、受電装置から通知される軽負荷状態と負荷接続状態の2点の受電電力における実際の電力損失値に基づいて、当該2点間を線形補間することにより算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-070074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スマートフォンなどでは、ユーザーによる使用に加えて、バックグランドで実施される定期的なシステム更新、アプリケーションの更新等が発生するため、電力の消費状態が変動する。従って受電装置として動作するスマートフォンが負荷接続状態で送電装置に通知する受電電力は、通知するタイミングによって異なる。さらにスマートフォンの稼働状況によっては、機器自体の温度変化が発生する。例えば、消費電力が大きくなると機器自体の温度も上昇する。この温度上昇は、部品の特性に大きな影響を与え、受電装置の受電電力および送電装置の推定する電力損失を変化させる。
【0006】
ある時点の軽負荷状態と負荷接続状態で測定された電力損失から電力損失を推定する場合、受電装置の稼働状況によっては、送電装置は異物検出のための電力損失の推定を正しく行えなくなる。その結果、送電装置による異物の検出精度が下がるという懸念がある。また充電処理を一旦中断した後に電力損失を再度推定する方法も考えられるが、充電処理の中断により機器の温度が下降してしまうと、稼働状況に応じた電力損失の測定を行うことができなくなるため、上記課題を十分に解決することはできない。
【0007】
本発明は、装置の状態の変化に起因して電力損失の推定の精度が低下することを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による受電装置は、
送電装置から受電する受電手段
電された受電電力に関する情報を前記送電装置に送信する送信手段と、
前記送電装置とのネゴシエーションにより電力を決定する決定手段と、
前記ネゴシエーションにより決定された電力に対して得られる前記受電電力に関する前記情報に基づいて前記送電装置により生成される基準値であって前記送電装置により前記受電装置とは異なる物体を検出するために用いられ前記基準値更新する必要があるか、前記決定された電力に基づく受電中に判定する判定手段と、
前記基準値の更新が必要と判定された場合、前記決定された電力のための記基準値の更新を前記送電装置に要求する要求手段と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、装置の状態の変化に起因して電力損失の推定の精度が低下することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態による無線充電システムの構成例を示す図。
図2】実施形態による受電装置の構成例を示すブロック図。
図3】実施形態による送電装置の構成例を示すブロック図。
図4】第1実施形態による無線充電システムの動作シーケンス図。
図5】第1実施形態による受電装置の動作を示すフローチャート。
図6】第1実施形態による送電装置の動作を示すフローチャート。
図7】(a)は、スマートフォンの温度の時間変化の例を示す図、(b)は、スマートフォンの消費電力の時間変化の例を示す図。
図8】第2実施形態による無線充電システムの動作シーケンス図。
図9】第2実施形態による受電装置の動作を示すフローチャート。
図10】第2実施形態による送電装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1に第1実施形態に係る無線充電システム(無線電力伝送システム)の構成例を示す。本システムは、一例において、受電装置101と送電装置102を含んで構成される。以下では、受電装置101をRXと呼び、送電装置102をTXと呼ぶ場合がある。RXは、TXから無線により送電された電力を受電して内蔵バッテリに充電を行う電子機器である。TXは、充電台103に載置されたRXに対して無線で送電する電子機器である。104は、RXがTXから受電が可能な範囲である。なお、RXとTXは無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有しうる。RXの一例はスマートフォンであり、TXの一例はそのスマートフォンを充電するためのアクセサリ機器である。RXおよびTXはこれに限られるものではなく、例えば、RXおよびTXは、ハードディスク装置やメモリ装置などの記憶装置であってもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置であってもよい。また、RXおよびTXは、例えば、撮像装置(カメラやビデオカメラ等)やスキャナ等の画像入力装置であってもよいし、プリンタやコピー機、プロジェクタ等の画像出力装置であってもよい。また、RXとTXは、無線充電以外のアプリケーションを実行する機能を有してもよい。また、RXは、例えば自動車等の車両であってもよいし、TXは自動車のコンソール等に設置される充電器であってもよい。
【0013】
本実施形態の無線電力伝送システムは、WPC(Wireless Power Consortium)が規定するWPC規格に基づいて、無線充電のための電磁誘導方式を用いた無線電力伝送を行う。すなわち、RXとTXは、RXの受電コイルとTXの送電コイルとの間で、WPC規格に基づく無線充電のための無線電力伝送を行う。なお、無線電力伝送方式は、WPC規格で規定された方式に限られず、他の電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界共鳴方式、マイクロ波方式、レーザー等を利用した方式などであってもよい。また、本実施形態では、無線電力伝送が無線充電に用いられるものとするが、無線充電以外の用途で無線電力伝送が行われてもよい。
【0014】
WPC規格では、RXがTXから受電する際に保証される電力の大きさが、Guaranteed Power(以下、「GP」と呼ぶ。)と呼ばれる値によって規定される。GPは、例えばRXとTXの位置関係が変動することにより受電コイルと送電コイルとの間の送電効率が低下したとしても、充電用の回路等のRXの負荷へ出力されることが保証される電力値を示す。例えばGPが5ワットの場合、受電コイルと送電コイルの位置関係が変動して送電効率が低下したとしても、TXは、RX内の負荷へ5ワットを出力することができるように制御して送電を行う。
【0015】
本実施形態に係るRXとTXは、WPC規格に基づく送受電制御のための通信と、機器認証のための通信とを行う。まず、WPC規格に基づく送受電制御のための通信について説明する。WPC規格では、電力伝送が実行されるPower Transferフェーズと実際の電力伝送が行われる前のフェーズとを含んだ、複数のフェーズが規定される。各フェーズにおいて必要な送電制御のための通信が行われる。
【0016】
電力伝送前のフェーズは、Selectionフェーズ、Pingフェーズ、Configurationフェーズ、Negotiationフェーズ、Calibrationフェーズを含む。Selectionフェーズでは、TXが、Analog Pingを間欠送信し、送電可能範囲内に物体が存在すること(例えば充電台103に受電装置101や導体片等が載置されたこと)を検出する。Pingフェーズでは、TXが、Digital Pingを送信し、そのDigital Pingを受信したRXからの応答を受信することにより、検出された物体がRXであることを認識する。Configurationフェーズでは、RXが識別情報と能力情報をTXへ通知する。Negotiationフェーズでは、RXが要求するGPの値やTXの送電能力等に基づいてGPの値を決定する。Calibrationフェーズでは、WPC規格に基づいて、RXが受電電力値をTXへ通知し、TXが送電中に異物検出を行うための調整を行う。電力伝送が実行されるPower Transferフェーズでは、送電の継続、およびエラーや満充電による送電停止等のための制御が行われる。
【0017】
TXとRXは、これらの送受電制御のための通信を、WPC規格に基づいて無線電力伝送と同じアンテナ(コイル)を用いて信号を重畳するインバンド(In-band)通信により行う。なお、TXとRXとの間で、WPC規格に基づくインバンド通信が可能な範囲は、送電可能範囲とほぼ同様である。よって、図1において、範囲104は、TXとRXの送受電コイルにより無線電力伝送とインバンド通信が可能な範囲を表している。なお、以下の説明において、RXが載置されていなくても、RXが範囲104の内側に進入した場合であれば、インバンド通信が可能である。
【0018】
(装置構成)
続いて、本実施形態に係る受電装置101(RX)の構成について説明する。なお、以下で説明する構成は一例に過ぎず、説明される構成の一部(場合によっては全部が)他の同様の機能を果たす他の構成と置き換えられ又は省略されてもよく、さらなる構成が説明される構成に追加されてもよい。さらに、以下の説明で示される1つのブロックが複数のブロックに分割されてもよいし、複数のブロックが1つのブロックに統合されてもよい。
【0019】
図2は、第1実施形態に係るRXの構成例を示す図である。制御部201は、例えばメモリ209に記憶されている制御プログラムを実行することにより、RXの全体を制御する。制御部201は、一例において、RXにおける機器認証と受電に必要な制御を行う。制御部201は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部201は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサーを含んで構成される。なお、制御部201は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の特定の処理に専用のハードウェアや、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部201は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ209に記憶させる。また、制御部201は後述する測定部212の測定結果に基づいて、通信部206、測定部212に対して制御を行う。
【0020】
バッテリ202は、RX全体に対して、制御と受電と通信に必要な電力を供給する。また、バッテリ202は、受電コイル205を介して受電された電力を蓄電する。受電コイル205は、TXの送電コイル305から放射された電磁波により誘導起電力を発生する。受電部203は、受電コイル205において電磁誘導により生じた交流電力を取得する。そして、受電部203は、交流電力を直流または所定周波数の交流電力に変換して、バッテリ202を充電するための処理を行う充電部211に電力を出力する。すなわち、受電部203は、RXにおける負荷に対して電力を供給する。上述のGPは、受電部203から出力されることが保証される電力量である。
【0021】
検出部204は、WPC規格に基づいて、RXがTXから受電可能な範囲104に載置されているか否かの検出を行う。検出部204は、例えば、受電部203が受電コイル205を介してWPC規格のDigital Pingを受電した時の受電コイル205の電圧値または電流値を検出する。検出部204は、例えば、電圧が所定の電圧閾値を下回る場合又は電流値が所定の電流閾値を超える場合に、RXが範囲104に載置されていると判定することができる。
【0022】
通信部206は、TXとの間で、インバンド通信によって、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。通信部206は、受電コイル205から入力された電磁波を復調してTXから送信された情報を取得する。さらにその電磁波を負荷変調することでTXへ送信すべき情報を電磁波に重畳することにより、TXとの間で通信を行う。すなわち、通信部206で行う通信は、TXの送電コイル305(図3)からの送電に重畳されて行われる。
【0023】
表示部207は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザーに対して情報を提示する。表示部207は、例えば、RXの状態や、図1のようなTXおよびRXを含む無線電力伝送システムの状態を、ユーザーに通知する。表示部207は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。操作部208は、ユーザーからのRXに対する操作を受け付ける受付機能を有する。操作部208は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、表示部207と操作部208とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。
【0024】
メモリ209は、上述のように、各種情報を記憶する。なお、メモリ209は、制御部201と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。タイマ210は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。測定部212は定期的にRX全体の装置温度、消費電力を測定し、測定された値が予め規定された装置温度範囲、または消費電力範囲内にあるかを計測する。計測の結果、装置温度、または消費電力が範囲外にあると判定した場合、その旨を制御部201へ通知する。
【0025】
図3は本実施形態に係るTXの構成例を示す図である。制御部301は、例えばメモリ309に記憶されている制御プログラムを実行することにより、TXの全体を制御する。制御部301は、一例において、TXにおける機器認証と送電に必要な制御とを行う。制御部301は、無線電力伝送以外のアプリケーションを実行するための制御を行ってもよい。制御部301は、例えばCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の1つ以上のプロセッサーを含んで構成される。なお、制御部301は、特定用途向け集積回路(ASIC)等の特定の処理に専用のハードウェアや、所定の処理を実行するようにコンパイルされたFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等のアレイ回路を含んで構成されてもよい。制御部301は、各種処理を実行中に記憶しておくべき情報をメモリ309に記憶させる。また制御部301は、タイマ310を用いて時間を計測しうる。
【0026】
電源部302は、TX全体に対して、制御と送電と通信に必要な電力を供給する。電源部302は、例えば、商用電源またはバッテリである。送電部303は、電源部302から入力される直流又は交流電力を、無線電力伝送に用いる周波数帯の交流周波数電力に変換する。さらにその交流周波数電力を送電コイル305へ入力することによって、RXに受電させるための電磁波を発生させる。なお、送電部303によって生成される交流電力の周波数は数百kHz(例えば、110kHz~205kHz)程度である。送電部303は、制御部301の指示に基づいて、RXに送電を行うための電磁波を送電コイル305から出力させるように、交流周波数電力を送電コイル305へ入力する。また、送電部303は、送電コイル305に入力する電圧(送電電圧)または電流(送電電流)を調節することにより、出力させる電磁波の強度を制御する。送電電圧または送電電流を大きくすると電磁波の強度が強くなり、送電電圧または送電電流を小さくすると電磁波の強度が弱くなる。また、送電部303は、制御部301の指示に基づいて、送電コイル305からの送電が開始または停止されるように、交流周波数電力の出力制御を行う。
【0027】
検出部304は、WPC規格に基づいて、範囲104に物体が存在する載置されているかを検出する。検出部304は、例えば、送電部303が、送電コイル305を介してWPC規格のAnalog Pingを送電した時の送電コイル305の電圧値または電流値を検出する。そして、検出部304は、電圧が所定電圧値を下回る場合又は電流値が所定電流値を超える場合に、範囲104に物体が存在すると判定しうる。なお、この物体がRXであるかその他の異物であるかは、続いて通信部306によってインバンド通信で送信されるDigital Pingに対して所定の応答を受信した場合に、その物体がRXであると判定される。
【0028】
通信部306は、RXとの間で、インバンド通信によって、上述のようなWPC規格に基づく制御通信を行う。通信部306は、送電コイル305から出力される電磁波を変調して、RXへ情報を伝送する。また、通信部306は、送電コイル305から出力されてRXにおいて変調された電磁波を復調してRXが送信した情報を取得する。すなわち、通信部306で行う通信は、送電コイル305からの送電に重畳されて行われる。
【0029】
表示部307は、視覚的、聴覚的、触覚的等の任意の手法で、ユーザーに対して情報を提示する。表示部307は、例えば、TXの状態や、図1のようなTXとRXとを含む無線電力伝送システムの状態を示す情報を、ユーザーに通知する。表示部307は、例えば、液晶ディスプレイやLED、スピーカ、振動発生回路、その他の通知デバイスを含んで構成される。操作部308は、ユーザーからのTXに対する操作を受け付ける受付機能を有する。操作部308は、例えば、ボタンやキーボード、マイク等の音声入力デバイス、加速度センサやジャイロセンサ等の動き検出デバイス、又はその他の入力デバイスを含んで構成される。なお、タッチパネルのように、表示部307と操作部308とが一体化されたデバイスが用いられてもよい。
【0030】
メモリ309は、上述のように、各種情報を記憶する。なお、メモリ309は、制御部301と異なる機能部によって得られた情報を記憶してもよい。タイマ310は、例えば起動された時刻からの経過時間を測定するカウントアップタイマや、設定された時間からカウントダウンするカウントダウンタイマ等によって、計時を行う。測定部311は、TXの装置温度を定期的に測定する。なお、測定部311は、第2実施形態のTXにより用いられる構成であり、第1実施形態では省略されてもよい。
【0031】
次に図4のシーケンス図、図5図6のフローチャートを参照して、第1実施形態におけるRXとして動作する受電装置101(例えば、スマートフォン)、TXとして動作する送電装置102(例えば、充電用のアクセサリ機器)の動作手順について説明する。図4は第1実施形態によるRXとTXの無線電力伝送の手順を示すシーケンス図である。図5は、第1実施形態によるRXの動作例を示すフローチャートである。図6は、第1実施形態によるTXの動作例を示すフローチャートである。
【0032】
TXは送電可能範囲内に存在する物体を検出するため、WPC規格のAnalog Pingの間欠送信を繰り返している(S401、S601)。送電装置102は、WPC規格のSelectionフェーズとPingフェーズとして規定されている処理を実行し、RXが載置されるのを待ち受ける。RXのユーザーは、当該機器を充電すべく受電装置101(スマートフォン)を送電装置102に近づける(S402、S501)。具体的には、TXの充電台103にRXを載置することなどが考えられる。
【0033】
TXは、送電可能範囲内に物体が存在することを検出すると(S403、S404)、WPC規格のDigital Pingを送信する(S405、S601)。RXはDigital Pingを受信することにより、TXがRXを検知したことを把握する(S406)。またTXは、Digital Pingに対する所定の応答を受信した場合に、検出された物体がRXであり、RXが充電台103に載置されたと判定する。
【0034】
TXは、RXの載置を検出すると、WPC規格で規定されたConfigurationフェーズの通信により、当該RXから識別情報と能力情報を取得する(S407、S502、S602)。ここで、RXの識別情報は、Manufacturer CodeとBasic Device IDを含む。また、RXの能力情報は、対応しているWPC規格のバージョンを特定可能な情報要素、RXが負荷に供給できる最大電力を特定する値であるMaximum Power Value、WPC規格のNegotiation機能を有するか否かを示す情報、を含む。なお、TXは、WPC規格のConfigurationフェーズの通信以外の方法でRXの識別情報と能力情報を取得してもよい。また、識別情報は、Wireless Power ID等の、RXの個体を識別可能な任意の他の識別情報であってもよい。さらに、能力情報として、上記以外の情報を含んでいてもよい。
【0035】
続いて、TXは、WPC規格で規定されたNegotiationフェーズの通信により、RXとGPの値を決定する(S408、S503、S603)。なお、S408では、WPC規格のNegotiationフェーズの通信に限らず、GPを決定する他の手順が実行されてもよい。また、TXは、RXがNegotiationフェーズに対応していないことを示す情報を(例えばS407において)取得した場合に、Negotiationフェーズの通信は行わず、GPの値を(例えばWPC規格で予め規定された)小さな値としてもよい。本実施形態では、GP=5ワットとする。
【0036】
TXは、GPの決定後、当該GPに基づいてキャリブレーション処理を行う(S604)。キャリブレーションとは、TXがRXへ送電した電力について、TXが、TXの内部で測定した値である送電出力の値とRXの内部で測定した受電電力の値との相関を較正する処理である。キャリブレーション処理において、TXは、RXから受信した受電電力値と当該受電電力値に対応する送電電力値を用いて較正基準値を設定する。キャリブレーション処理により設定された較正基準値を用いて、送電電力値と受電電力値の差である電力損失が推定される。
【0037】
キャリブレーション処理は以下のように実行される。まず、RXは、軽負荷状態における受電電力値を含む情報(以降、第1の基準受電電力情報と呼ぶ。)を送信する(S409、S504)。第1の基準受電電力情報は、TXにより第1の較正基準値として用いられる。本実施形態での第1の基準受電電力情報は、送信電力=500ミリワットに対する受電電力値を示す情報とする。なお、第1の基準受電電力情報は、WPC規格で規定されるReceived Power(mode1)であるが、他のメッセージが用いられてもよい。TXは、自装置の送電状態に基づいて、RXからの第1の基準受電電力情報を受け入れるか否かを判定する。受け入れる場合は承諾応答=ACKを、受け入れない場合は拒否応答=NAKを、RXへ送信する。
【0038】
RXは、TXからACKを受信すると(S410)、TXが第2の較正基準値を設定するための第2の基準受電電力情報を送信するための処理を行う。第2の基準受電電力情報は、RXの負荷接続状態における受電電力値を含む情報である。本実施形態では、GP=5ワットであることから、第2の基準受電電力情報は、送信電力=5ワットに対する受電電力値を示す情報である。ここで第2の基準受電電力情報は、WPC規格で規定されるReceived Power(mode2)であるが、他のメッセージが用いられてもよい。RXはTXからの送電電力を5ワットまで増加させるために、正の値を含む送電出力変更指示を送信する(S411、S505)。
【0039】
TXは、RXから送電出力変更指示を受信し、送信電力の増加対応が可能な場合、ACKを応答し、送信電力の増加を行う(S412、S413)。本実施形態では、第2較正基準値情報は送信電力=5ワットであることから、これを超える電力増加要求をTXがRXから受信した場合は(S414)、送電出力変更指示に対してNAKを応答することで、規定以上の電力送電を抑止する(S415)。
【0040】
RXは、TXよりNAKを受信することで既定の受電電力に達したと判断すると、TXへ第2の基準受電電力情報を送信する(S417、S506)。第2の基準受電電力は、負荷接続状態における受電電力値を示す。TXは当該情報から、第1および第2の基準受電電力情報に含まれる受電電力値に基づいて第1および第2の基準較正値を設定する。第1および第2の基準較正値が設定されると、当該区間における電力損失の推定値を算出することが可能となる(S416、S604)。TXがRXから第2の基準受電電力情報に対してACKを送信すると(S418)、キャリブレーション処理が終了する。充電処理を開始可能と判断したTXは、RXに対してGP=5ワットでの送電処理を開始する(S419、S605)。RXは、TXから送電される電力を受電し、充電部211によるバッテリ202の充電を開始する(S507)。
【0041】
TXとRXが機器認証処理を行い(S508,S606)、相互の機器がより大きなGPに対応可能と判明した場合、GPをより大きな値に再設定することが可能である(S420、S508でYES、S606でYES)。ここでは、GP=15ワットに再設定されたとする。この場合、TX、RXはGP=15ワットに対して、再度キャリブレーション処理を実施する(S509~S510,S607(なお、S607では、S603~S605と同様の処理が行われる。))。
【0042】
具体的には、RX、TXは、上述のように、TXの送電電力を15ワットまで増加させるために、送電出力変更指示、ACK、NAKを使い送電出力を上げる(S421~S424、S509)。RXは、送電出力を上昇させる送電出力変更指示に対してTXからNAKを受信すると(S424)、第3の基準受電電力情報をTXに送信する(S425、S510)。第3の基準受電電力情報は、GP=15ワットに対する負荷接続状態における受電電力値を含む。TXは、第3の受電電力情報に基づいて第3の較正基準値を設定し、第1、第2及び第3の較正基準値に基づいて当該区間における電力損失の推定値を算出することが可能となる(S426)。TXはRXからの第3の基準受電電力情報に対してACKを送信し(S427)、キャリブレーション処理を完了する。充電処理を開始可能と判断したTXは、RXに対してGP=15ワットにおける送電処理を開始し、RXの充電は継続される(S428)。
【0043】
以上の処理を経てTXとRXは受電電力を確定し、RXの充電処理を実現する。RXは、充電を開始すると、TXが電力損失の推定値を算出するために用いる較正基準値の更新の要否を判定する(S511)。第1実施形態では、RXの状態が所定の条件を満たす場合に、RXは、TXで用いられる較正基準値を更新することが必要であると判定する。図7(a)に示すように、受電装置であるスマートフォンは、使用状況によって温度が変動し、変動する温度に消費電力が依存する。例えばスマートフォン内のアプリケーションソフトウェア(以後、アプリケーション)の実行や、オペレーションシステム(以後、OS)の更新等が実施に応じて消費電力は大きくなる。これに伴いRXでは機器温度が上昇し、これに接触するTXの温度も上昇する。この温度上昇はTX、RXの部品特性に変化を生じさせ、RXの受電電力、TXの電力損失の推定に影響を与える。従ってこのような状況下では、TXは異物検出のための電力損失を正しく推定できない可能性があるという懸念がある。これらからRXは受電電力に変化があった場合、その状況に適した第3較正基準値情報をTXに送付することが望ましい。そこで、本実施形態では、RXの温度が図7(a)に示されるような規定範囲から外れた場合に、TXにおける較正基準値の更新が必要であると判定する。規定範囲の決め方は、GPや装置の温度特性を参照に決定することが考えられる。
【0044】
RXは温度の上昇を検知すると(S429、S511でYES)、受電電力を下げるために、TXに対して送電出力変更指示を送出する(S430、S514)。これは、TXが正しく電力損失を推定できない状況下で、充電台103上の異物等による発熱等の危険を避けるためである。本実施形態では第2の較正基準値に対応する5ワットまで送電出力を下げる(S431~S432、S515)。すなわち、RXは、TXからの受電電力値が第2の基準受電電力情報の受電電力値(本例では5W)になるまで、送電電力を低下させるための送電出力変更指示をTXに対して行う。また、
【0045】
受電電力が5ワットまで下がると、RXは現在の受電電力状況を反映したキャリブレーション処理を再度実施するために、較正基準値の更新要求をTXに送信する(S433、S516)。この更新要求を受信したTXは、負荷接続状態におけるRXからの受電電力により、第3の較正基準値の更新を実施する。更新要求の通知方法はQiで規定されるGeneral Request Packet、Specific Requestなどを使用した方法が考えられるがこれに限られるものではない。新たに定義したパケットを用いて更新要求が通知されてもよい。
【0046】
TXは較正基準値の更新要求を受信すると(S608でYES)、第3の較正基準値を初期化し(S434、S609)、RXにACKを応答する(S435)。RXとTXは、前述したS421~S427を実行することにより、第3の較正基準値を再度設定する。すなわち、RXとTXは、送電出力変更指示、ACK、NAKを用いて、TXの送電電力を15ワットまで増加させる(S517)。RXは、送電出力変更指示に対するTXからのNAK応答により送電電力が15ワットに達したと判断すると、TXに第3の基準受電電力情報を新たに送信する(S518)。
【0047】
TXは、第3の基準受電電力情報を受信すると、RXへACKを送信し(S437)、第3の較正基準値を再設定する。こうして、TXは、第1及び第2の較正基準値と、現状の装置の温度状態下での第3の較正基準値に基づいて、当該区間における電力損失の推定値を算出することが可能となる(S610)。以後、RXは装置温度を定期的に測定し、充電完了まで処理を継続する(S512、S513、S609)。
【0048】
以上に記載したように、スマートフォンなどの受電装置において機器温度が変化した場合に、負荷接続状態における受電電力に基づいて設定される第3の較正基準値が更新されることにより、TXの異物検出の精度を確保することができる。これによりTX、RX間や、あるいはその近傍に導電性の金属片などの導電性の異物が置かれた場合に確実な検出が可能となる。
【0049】
なお、上記では受電装置の温度上昇を較正基準値の更新のトリガとした場合を説明したが、これに限られるものではない。例えばスマートフォンの動作が安定し、消費電力が下がれば、装置温度も低下する。図7(a)で説明すると、規定範囲外にあった温度が規定範囲内の温度に戻った場合である。このような場合にも、上述した手順により第3の較正基準値を更新することで、TXの異物検出の精度を確保することができる。
【0050】
また、上記では、受電装置の温度に基づいて較正基準値の更新要求を発行するか否かを判断したが、これに限られるものではない。例えば、受電装置であるスマートフォンの消費電力に基づいて更新要求の要否を判断するようにしてもよい。この場合、例えば、図7(b)に示すように受電装置(スマートフォン)の消費電力が既定の範囲外にある場合に、第3の較正基準値の更新が必要であると判断する。規定範囲の決め方は、例えば、温度特性を用いた場合と同様にGPを参照して決定することが考えられる。さらに、第2実施形態で説明するようにTXが較正基準値の更新の要否を判断し、TXからRXへ更新要求の発行を要求するようにしてもよい。この場合、RXは、TXからこの発行要求を受信した場合にS511でYESと判断し、更新要求を通知するための処理(S514~S518)を開始する。
【0051】
さらに図4ではRXが送付する「較正基準値の更新要求」に対して、ACKを受領しているが、仮にACKを受領できない場合は、5ワットでの充電を継続するようにしてもよい。これによりGP=15ワットに対するキャリブレーション処理が未実施となるため、GP=15ワットでの送電が行われないことになる。したがって、TXの異物検出の精度が悪い状態で、高い電力による送電/充電処理が実行されてしまうことを避けることができる。これはTX、RX間や、あるいはその近傍に導電性の金属片などの導電性の異物が置かれた場合の事故の発生などを抑制する、という効果も期待できる。
【0052】
<第2実施形態>
第1実施形態では、RXが較正基準値の更新の要否を判定して再キャリブレーションを実施する方法について説明した。第2実施形態では、TXが較正基準値の更新の要否を判定して再キャリブレーションを実施する方法について説明する。第2実施形態におけるシステム構成は、第1実施形態(図1)と同様である。また、第2実施形態による送電装置102(TX)では、第1実施形態で示した構成(図3)において、TXの装置温度を定期的に測定する測定部311が用いられる。
【0053】
第2実施形態に係るRXとTXは、第1実施形態と同様にWPC規格に基づく送受電制御のための通信と、機器認証のための通信とを行う。図8は第2実施形態によるRXとTXの無線電力伝送の手順を示すシーケンス図である。図9は、第2実施形態によるRXの動作例を説明するフローチャートである。図10は、第2実施形態によるRXの動作例を説明するフローチャートである。なお、TXの充電台103へのRXの載置から、TXとRXの通信により第1~第3の較正基準値の設定および送電の開始までの処理は第1実施形態と同様である(図4のS401~S428、図5のS501~S510、図6のS601~S607)。図8では、図4に示したフローのうち、GP=15ワットでの送電処理を開始した後、較正基準値の再設定が開始されるまでの処理(S428~S435に置き換わる処理)が示されている。
【0054】
第1実施形態で説明したように、RXは、TXからの送電により充電を行っている間(S428)、使用状況によって機器温度が上昇する。その結果、RXに接触するTXの温度も上昇する。この温度上昇はTX、RXの部品特性に変化を生じさせ、RXの受電電力、TXの電力損失の推定に影響を与える。従ってこのような状況下では、TXは異物検出のための電力損失を正しく推定できない可能性があるという懸念がある。以下、TX側にて温度上昇を検知することでこの課題の対処する方法に関して説明する。
【0055】
TXでは、測定部311が定期的に測定する装置温度(例えば、充電台103に載置されたRXの温度)の上昇を検知すると(S802、S1001)、RXからの給電要求に対して、提供電力を低減(S803、S1002)。これは、TXが正しく電力損失を推定できない状況下で、充電台103上の異物等による発熱等の危険を避けるためである。第2実施形態では、第2の較正基準値が取得された電力値(5ワット)まで下げる。TXは、図7(a)に示すように、装置温度が既定の範囲内にあるかに基づいて温度の上昇を判断する。規定範囲の決め方は、GPを参照して決定することが考えられる。
【0056】
一方、RXは、TXからの受電電力値を示す受電電力情報を定期的にTXに送付しており(S804、S901)、TXでは、この受電電力情報と較正基準値に基づいて電力損失が検知される。TXは、低減された提供電力に対応する受電電力情報を受信すると(S1003でYES)、較正基準値の再設定が必要であることを示す情報を含む応答をRXに送信する(S805、S1004)。較正基準値の再設定が必要であることを示す情報は、例えば、「再キャリブレーションが必要であること」または「TXの装置温度が上昇していること」などを示す情報であってもよい。なお、RXに較正基準値の更新要求を発行させるための情報であり、以下、発行要求とも称する。発行要求を含む応答を受信したRXは(S902でYES)、キャリブレーション処理を再度実施することにより第3の較正基準値を更新することを要求する更新要求をTXに送信する(S433、S903)。以後の処理は第1実施形態と同様である。更新要求を受信したTXは、第1実施形態と同様の手順で第3の較正基準値を更新する(S608~S610)
【0057】
以上に記載したように、第2実施形態によれば、受電装置(例えば、スマートフォン)の機器温度に変化が発生した場合に、その温度をTX側で検知することができる。これにより、RXの温度変化に対して第1実施形態と同様の処理を行うことができ、TX、RX間や、あるいはその近傍に導電性の金属片などの導電性の異物が置かれた場合に確実な検出が可能となる。
【0058】
なお、S802、S1001では、TXの測定部311が測定した温度に基づいて再キャリブレーションおよび較正基準値の更新を開始するが、これに限られるものではない。例えば、測定部212が測定した温度に基づいてRXが較正基準値の更新が必要と判定した場合に、その旨をTXに通知し、TXはこの通知をトリガとして再キャリブレーションおよび較正基準値の更新を開始するようにしてもよい。或いは、RXから温度に関する情報を定期的に受信し、受信した温度に基づいて再キャリブレーションを開始するか否かを判定するようにしてもよい。
【0059】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0060】
本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0061】
101:スマートフォン、201:制御部、202:バッテリ、203:受電部、204:検出部、205:受電コイル、206:通信部、212:測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10