(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】人物関係抽出システム
(51)【国際特許分類】
G10L 25/78 20130101AFI20240415BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240415BHJP
G10L 25/51 20130101ALI20240415BHJP
【FI】
G10L25/78
G06T7/00 660B
G10L25/51
(21)【出願番号】P 2020087783
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】内藤 拡也
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕治
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-191878(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155629(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/139101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 25/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間で会話が発生したか否かを認識し、会話を行った人を特定することで、人と人との関係性を抽出する人物関係抽出システムにおいて、
前記空間内で発生した音の発生位置の座標を特定する音源定位部と、
前記空間内に存在する人物と、その座標を特定する人物・位置特定部と、
前記音源定位部で特定された座標と、前記人物・位置特定部で特定された座標とに基づいて、音を発した人物を特定する発話人物特定部と、
前記発話人物特定部で特定された人物から、設定距離内の人物を抽出する人物抽出部と、
前記人物抽出部で抽出された人物との間に遮蔽物が存在せず、コミュニケーションが可能である人物を抽出するコミュニケーション可能人物抽出部と、
前記人物・位置特定部で特定された人物と、前記
コミュニケーション可能人物抽出部で抽出された人物との間で会話がなされたものとして会話記録を作成する会話記録作成部と、を有することを特徴とする人物関係抽出システム。
【請求項2】
前記コミュニケーション可能人物抽出部が、オフィスレイアウトデータベースを参照することで、前記人物抽出部で抽出された人物との間における遮蔽物の存否を判断することを特徴とする請求項1に記載の人物関係抽出システム。
【請求項3】
前記オフィスレイアウトデータベースには、オフィス空間内のオフィス什器の配置が記録されることを特徴とする請求項2に記載の人物関係抽出システム。
【請求項4】
前記空間内で発信されるビーコン信号を受信する無線通信部を有しており、
前記人物・位置特定部が、前記無線通信部で受信されるビーコン信号に基づいて、人物の座標を特定することを特徴とする請求項3に記載の人物関係抽出システム。
【請求項5】
前記空間内に対してビーコン信号を発信する無線通信部を有しており、
前記人物・位置特定部が、前記無線通信部で発信されるビーコン信号に基づいて、人物の座標を特定することを特徴とする請求項3に記載の人物関係抽出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、オフィス内において会話が発生したか否かを認識し、会話を行った人を特定し記録していくことで、人と人との関係性を抽出する人物関係抽出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物空間内で発生する会話は人々のコミュニケーション量や知的生産性を測る指標として重要である。ある空間内に人が居るかコミュニケーションが活発に行われているかを判定する手段として、音声を検知することは有効な方法である。このような音声検知方法が確立されていれば、例えば、オフィス内のコミュニケーション活性度の計測を行ったり、或いは、公共施設などの交流ペースの活用度を計測したり、といったことが可能となる。
【0003】
特許文献1(特開2019-191878号公報)では、複数の区画に分割された空間のそれぞれで会話が発生したか否かを認識し、会話を行った人を特定することで、人と人との関係性を抽出する人物関係抽出システムが開示されている。
【文献】特開2019-191878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の従来技術においては、区画を跨って交わされる会話が抽出できないといった課題や、区画内の会話に参加していない人物も抽出されてしまうといった課題があった。
【0005】
例えば、前記従来技術では、間仕切りのないオープンフロア・オフィスにおいては、区画の境界が曖昧であるため、人と人との会話を正しく検知できなかった。
【0006】
また、前記従来技術によれば、電話やテレビ会議で話している人がいる場合もその人と周りの人が会話していると検知されてしまうようなことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するものであって、本発明に係る人物関係抽出システムは、所定の空間で会話が発生したか否かを認識し、会話を行った人を特定することで、人と人との関係性を抽出する人物関係抽出システムにおいて、前記空間内で発生した音の発生位置の座標を特定する音源定位部と、前記空間内に存在する人物と、その座標を特定する人物・位置特定部と、前記音源定位部で特定された座標と、前記人物・位置特定部で特定された座標とに基づいて、音を発した人物を特定する発話人物特定部と、前記発話人物特定部で特定された人物から、設定距離内の人物を抽出する人物抽出部と、前記人物抽出部で抽出された人物との間に遮蔽物が存在せず、コミュニケーションが可能である人物を抽出するコミュニケーション可能人物抽出部と、前記人物・位置特定部で特定された人物と、前記コミュニケーション可能人物抽出部で抽出された人物との間で会話がなされたものとして会話記録を作成する会話記録作成部と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る人物関係抽出システムは、前記コミュニケーション可能人物抽出部が、オフィスレイアウトデータベースを参照することで、前記人物抽出部で抽出された人物との間における遮蔽物の存否を判断することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る人物関係抽出システムは、前記オフィスレイアウトデータベースには、オフィス空間内のオフィス什器の配置が記録されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る人物関係抽出システムは、前記空間内で発信されるビーコン信号を受信する無線通信部を有しており、前記人物・位置特定部が、前記無線通信部で受信されるビーコン信号に基づいて、人物の座標を特定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る人物関係抽出システムは、前記空間内に対してビーコン信号を発信する無線通信部を有しており、前記人物・位置特定部が、前記無線通信部で発信されるビーコン信号に基づいて、人物の座標を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る人物関係抽出システムは、発話人物特定部で特定された音声を発した人物から、設定距離内の人物を抽出し、これらの人物の間で会話がなされたものとして会話記録を作成するので、本発明に係る人物関係抽出システムによれば、特定の区画に拘束されることなく、会話記録を作成することができ、区画を跨って交わされる会話の抽出が可能となるし、また、区画内の会話に参加していない人物が抽出されてしまう確率を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1が適用されるオフィス空間の一例を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1のブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1による処理のフローチャートを示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1に基づく処理例を説明する図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1における音声判定サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1における第1人物・位置特定サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1における会話記録作成サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る人物関係抽出システム1が適用されるオフィス空間の一例を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る人物関係抽出システム1のブロック図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る人物関係抽出システム1による処理のフローチャートを示す図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る人物関係抽出システム1における音声音源定位サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る人物関係抽出システム1における第2人物・位置特定サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1が適用されるオフィス空間の一例を示す図である。また、
図2は本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1のブロック図である。なお、以下の例では、
図1はオフィスにおける空間を模式的に示すものとするが、本発明の適用対象はオフィスに限らず、任意の空間とすることができる。
【0015】
本発明に係る人物関係抽出システム1は、人と人との関係性を抽出するために、
図1に示すようなオフィス内において会話が発生したか否かを認識し、会話を行った人を特定し記録していく。そこで、本発明に係る人物関係抽出システム1では、人物と人物との間で会話がなされたことを検知・特定する仕組みを有しており、さらに人物と人物との間で会話がなされたことを会話記録として作成する仕組みを有するものである。
【0016】
オフィス空間においては、例えば(x,y)座標が設定されており、この(x,y)座標により人物の位置を表すようにする。また、オフィス空間においては、仮想的に区画分けがされている。
図1の例では、第1区画、第2区画、・・・第N区画が設定されている。本実施形態では、それぞれの区画は面積がほぼ等しくなるように設定されている。また、本実施形態では、区画は矩形とされているが、区画の形状をこのように設定することは必須ではない。
【0017】
それぞれの区画で発生した音は、それぞれの区画専用の区画用マイクロフォン110で集音することができるようになっている。本実施形態では、第1区画、第2区画、・・・第N区画それぞれで発生した音を集音する区画用マイクロフォン1101、1102、・・・110Nが設けられている。
【0018】
区画用マイクロフォン110
1、110
2、・・・110
Nで集音された音は、不図示の変換部によりデジタル信号に変換されて、制御部100に送信される。制御部100は、例えば、CPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用のマイクロコンピューターなどの情報処理装置を用いることができる。このような制御部100は、
図2で接続される各構成とデータ通信を行い、各構成から所定のデータを受信して演算を行ったり、所定のデータを指令などとして出力したりすることができるようになっている。
【0019】
制御部100は、区画用マイクロフォン1101、1102、・・・110Nから送信されるデジタルデータに人の声(音声)が含まれているかが判定される。
【0020】
オフィス空間を撮像し、画像データを取得する撮像部は本実施形態では、撮像部1201及撮像部1202の2つであるが、設ける撮像部の数は任意である。これら、撮像部1201及撮像部1202で取得された画像データは、制御部100に送信される。制御部100では、送信された画像データを画像解析することで、画像データに写っている人物の特定、及びその座標を求める処理が行われる。
【0021】
第1人物データベース210においては、オフィス空間に勤務する人物それぞれのデータが記憶されている。このような第1人物データベース210には、それぞれの人物を特定する氏名データや、IDデータなどの他に、画像データで個人を特定するための顔や体格などの特徴量データも含まれている。このような第1人物データベース210に記憶されているデータは、制御部100によって参照される。
【0022】
本発明に係る人物関係抽出システム1では、制御部100によって、人物と人物との間で会話がなされたことを検知・特定されると、人物関係データ記憶部280に、人物と人物との間で会話がなされたことを会話記録が作成される。このような人物関係データ記憶部280に蓄積された会話記録に基づいて、人と人との関係性を図表化することなどで、人物関係を顕在化させることができる。
【0023】
次に、以上のように構成される本発明に係る人物関係抽出システム1の主要な処理について説明する。
図3は本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1による処理のフローチャートを示す図である。また、
図4は本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1に基づく処理例を説明する図であり、
図4の具体例を参照しつつ前記フローチャートの説明を行う。
【0024】
図3において、ステップS100で、処理を開始すると、続いて、ステップS101に進み、音声判定サブルーチンを実行する。この音声判定サブルーチンは、区画用マイクロフォン110
n(nは1~N)で集音された音に、人の声(音声)が含まれているか否かを判定する。以下、オクターブバンド等価音圧レベルを用いて、音声の有無を判定する方法を例に説明するが、音に人の声(音声)が含まれているか否かを判定することができれば、その他の方法を用いても良い。
【0025】
図5に示すフローチャートにおいて、ステップS200で処理が開始されると、続いてステップS201に進み、第N区画として、第1区画がセットされる。ここで、nは1ずつインクリメントされる変数である。
【0026】
続いて、ステップS202に進み、区画用マイクロフォン110n(nは1~N)によって取得された音データのうち、第n区画における、予め設定されている所定時間間隔幅の音データを取得する。
【0027】
ステップS203では、取得された集音データに対して設定された時間間隔幅の中心周波数500Hzのオクターブバンド等価音圧レベル(L500eq)を算出する。
【0028】
ここで、本明細書においては、予め設定された時間間隔幅(タイムスロット)における中心周波数500Hzのオクターブバンド等価音圧レベルをL500eqといい、A特性等価音圧レベルをLAeqという。
【0029】
次のステップS204では、音データに対して、A特性重み付け補正を実行する。このようなA特性重み付け補正については、周知の方法によって実行され得るものである。
【0030】
ステップS205では、ステップS203でA特性重み付け補正された集音データに対して設定時間間隔幅のA特性等価音圧レベル(LAeq)を算出する。
【0031】
続いて、情報処理装置20がA特性等価音圧レベル(LAeq)と中心周波数500Hzのオクターブバンド等価音圧レベル(L500eq)を受信すると、ステップS206では、
Ldiff=L500eq-LAeq (1)
の演算が実行され、ステップS206では、
Ldiff≧ LT (2)
の真否が判定される。
【0032】
ステップS207の判定結果がYESであるときには、ステップS208に進み、当該時間間隔幅における検知結果は「音声検知」とし、ステップS210で第n区画では「音声検知」の結果を履歴として記録する。
【0033】
一方、ステップS207の判定結果がNOであるときには、ステップS209に進み、当該時間間隔幅における検知結果は「音声非検知」とし、ステップS210で第n区画では「音声非検知」の結果を履歴として記録する。
【0034】
ステップS211では、全区画が終了したか否か(本例では、n=Nであるか否か)が判定される。ステップS211の判定結果がNOであれば、ステップS212に進み、nを「1」インクリメントして、次の区画に進み、ステップS202に進む。一方、ステップS211の判定結果がYESであれば、ステップS213に進み、元のメインルーチンにリターンする。
【0035】
さて、
図3の元のフローチャートに戻り、続いて、ステップS102では、第1人物・位置特定サブルーチンが実行される。
図6は本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1における第1人物・位置特定サブルーチンのフローチャートを示す図である。なお、本実施形態では、第1人物・位置特定サブルーチンにより、人物を特定しその位置を算出するが、このサブルーチンでは撮像部120で取得される画像データが用いられることが特徴となる。
【0036】
図6において、ステップS300で第1人物・位置特定サブルーチンが開始されると、続いて、ステップS301に進み、撮像部120
1及撮像部120
2から画像データを取得する。
【0037】
ステップS302では、前の時刻の画像データとの間の差分を算出し、ステップS303では、当該差分領域を抽出する。このステップS303で抽出される差分領域が、静止している背景の中で移動する人物であるものと推定される。
【0038】
ステップS304では、当該差分領域における特徴量(顔、体格の動き)を画像処理技術により抽出し、ステップS305では、当該特徴量と第1人物データベース210とから、当該差分領域における人物を推定する。
【0039】
また、ステップS306では、推定した人物の位置座標(x,y)を算出して、ステップS307でリターンし、元のフローチャートに戻る。
【0040】
以上のような第1人物・位置特定サブルーチンにより、例えば、人物(0)が誰であるかの特定と、その人物(0)の位置座標(xo,yo)の算出を行うことが可能となる。
【0041】
図3に戻り、まずステップS103では、変数nにn=1がセットされる。続いて、ステップS104では、第n区画で音声が検知されたか否かが判定される。ステップS104における判定がNOであると、ステップS111に進み、必要に応じて次の区画の処理を行う。
【0042】
一方、ステップS104における判定がYESであると、ステップS105に進み、第1人物・位置特定サブルーチンで取得された情報に基づいて、第n区画の人物Xを取得する。このようなステップで行われる処理を、発話人物を特定する発話人物特定処理と称する。この処理で特定された人物Xを、
図4の例では、(0)が付された人物であると仮定する。
【0043】
続くステップS106では、人物Xから設定距離内に存在する人物Yを抽出する。
図4の例では、当該設定距離がRであり、ステップS106では、人物Yとして(1)、(2)が付された人物が抽出され、(4)、(5)付された人物は除外されたものと仮定する。なお、当該設定距離Rについては、(A)に示す「対人距離閾値設定情報」を入力することで、ユーザー設定処理が適宜可能とされている。これにより、オフィス事情に応じた人物関係の抽出を行うことが可能となる。
【0044】
ステップS107では、人物Yが1人以上であるか否かが判定される。ステップS107の判定がNOであると、ステップS108に進み、人物Xと人物Yとの間の会話記録を作成すべく会話記録作成サブルーチンが実行される。
【0045】
この会話記録作成サブルーチンについて説明する。
図7は本発明の第1実施形態に係る人物関係抽出システム1における会話記録作成サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0046】
ステップS400で会話記録作成サブルーチンが開始されると、続いて、ステップS401に進み、人物Xと人物Yの関係にあると判定された時間帯(不図示の計時手段による)を取得する。次に、ステップS402で、人物Xと人物Yと当該時間帯に係る情報を、人物関係データ記憶部280に会話記録ログとして記憶する。ステップS403では、元のルーチンにリターンする。
【0047】
さて、ステップS107の判定がYESであると、ステップS109に進み、全ての人物Yが抽出されるまで、ステップS112→ステップS108をループする。一方、ステップS109で全ての人物Yについての抽出が終了されたものと判定されると、続いて、ステップS110に進む。
【0048】
ステップS110では、全てのXについて抽出されたかが判定される。ステップS110の判定がNOであると、ステップS113→ステップS106→・・の順でループし、ステップS110の判定がYESであると、ステップS111に進む。
【0049】
ステップS111では、全ての区画について取得されたかが判定される。ステップS111の判定がNOであると、ステップS114→ステップS104→・・の順でループし、ステップS111の判定がYESであると、ステップS115に進み、処理が終了となる。
【0050】
以上のように、本発明に係る人物関係抽出システム1は、発話人物特定部で特定された音声を発した人物Xから、設定距離R内の人物を抽出し、これらの人物の間で会話がなされたものとして人物関係データ記憶部280に会話記録を作成するので、本発明に係る人物関係抽出システム1によれば、特定の区画に拘束されることなく、会話記録を作成することができ、区画を跨って交わされる会話の抽出が可能となるし、また、区画内の会話に参加していない人物が抽出されてしまう確率を低減できる。
【0051】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図8は本発明の第2実施形態に係る人物関係抽出システム1が適用されるオフィス空間の一例を示す図である。また、
図9は本発明の第2実施形態に係る人物関係抽出システム1のブロック図である。なお、第1実施形態と同様の参照符号が付された構成については同様のものであるので説明を省略する。
【0052】
第1実施形態に係る人物関係抽出システム1では、人物の特定と、その位置の把握は撮像部で取得される画像データに基づいて行われていたが、オフィス空間において、それぞれの人が携行することが想定されるビーコン発信源150によって実現される。ビーコン発信源150は、例えば所定のアプリケーションをインストールしたスマートフォンに実現することができる。また、それぞれの人が携行するビーコン発信源150は、それぞれ唯一無二のID情報を含むビーコン信号が発信される。
【0053】
無線通信部130は、オフィス空間に対して複数設けられて、ビーコン発信源150から送信されるビーコン信号を受信すると共に、受信したビーコン信号の到来角を検出する。複数の無線通信部130それぞれは、ビーコン信号と到来角を、制御部100に転送する。制御部100では、ビーコン信号の到来角から、ビーコン発信源150の位置を求めることができるように構成されている。
【0054】
なお、本実施形態では、移動体である人がビーコン発信源を携帯し、空間側に設置した無線通信部でビーコン信号を受信し、ビーコン信号の到来角から位置を求めるAngle of Arrival方式が採用されているが、本発明では他の方式を用いるようにすることもできる。
【0055】
例えば、空間側に、発信角度情報を含めたビーコン信号を送信する無線通信部を複数設置しておき、当該無線通信部からのビーコン信号を受信可能な端末を移動体である人に携行させ、当該端末側で受信した複数のビーコン信号に基づいて、当該端末の位置情報を算出するAngle of Departure方式を採用することもできる。
【0056】
第2人物データベース220においては、オフィス空間に勤務する人物それぞれのデータが記憶されている。このような第2人物データベース220には、それぞれの人物を特定する氏名データや、IDデータなどの他に、それぞれの人物が携行するビーコン発信源150に含まれる固有のID情報も含まれている。このような第2人物データベース220に記憶されているデータは、制御部100によって参照される。
【0057】
マイクロフォンアレイ115は、複数の単位マイクロフォンの集合であり、個々の単位マイクロフォンがオフィス空間で発生する音を集音する。このようなマイクロフォンアレイ115は、オフィス空間の周囲に複数設けておくことができる。マイクロフォンアレイ115を構成する複数の単位マイクロフォンで集音された音はデジタルデータに変換され全て制御部100に送信される。制御部100では、マイクロフォンアレイ115で得られた音のデジタルデータから音源定位技術を用いて、音の発生位置座標を算出する。
【0058】
第2実施形態に係る人物関係抽出システム1は、オフィスレイアウトデータベース250を有しており、オフィス空間内におけるオフィス什器の配置などが記録されている。このようなオフィスレイアウトデータベース250に記憶されているデータは、制御部100によって参照される。オフィスレイアウトデータベース250を制御部100が参照することで、人物(1)と人物(2)との間にオフィス什器がなく、会話が可能であることが分かり、人物(1)と人物(3)との間にオフィス什器1があり、会話が不可能であることが分かる。
【0059】
次に、以上のように構成される第2実施形態に係る人物関係抽出システム1の主要な処理について説明する。
図10は本発明の第2実施形態に係る人物関係抽出システム1による処理のフローチャートを示す図である。
【0060】
図10において、ステップS500で処理が開始されると、続いて、ステップS501に進み、音声音源定位サブルーチンが実行される。
図11は本発明の第2実施形態に係る人物関係抽出システム1における音声音源定位サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0061】
図11のステップS600で、音声音源定位サブルーチンが開示されると、ステップS601に進み、音声判定サブルーチンが実行される。このような音声判定サブルーチンとしては、第1実施形態と同様のものを用い得るが、人の声が音に含まれているかを判定することができれば他のアルゴリズムを用いることもできる。
【0062】
ステップS602では、マイクロフォンアレイ115の単位マイクロフォンで得られるデータから到来時間差により音源の座標を算出する。このような座標の算出には、公知となっている音源定位技術を適宜用いることができる。ステップS603で、元のルーチンにリターンする。
【0063】
図10に戻り、ステップS502では、第2人物・位置特定サブルーチンが実行される。
図12は本発明の第2実施形態に係る人物関係抽出システム1における第2人物・位置特定サブルーチンのフローチャートを示す図である。
【0064】
図12のステップS700で、第2人物・位置特定サブルーチンが開始されると、続いて、ステップS701に進み、無線通信部130からデータを取得する。
【0065】
続く、ステップS702では、ビーコン信号に含まれるID情報と、第2人物データベース220とから、ビーコン発信源150を携行する人物を特定する。次に、ステップS703では、ビーコン信号の受信方向から座標を算出する。(Angle of Arrival方式)
ステップS704では、全てのID情報について終了したか否かが判定され、当該判定がNOであれば、ステップS705に進み、次のIDについて、ステップS702を実行する。一方、該判定がYESであれば、ステップS706に進み、元のルーチンにリターンする。
【0066】
さて
図10に戻り、ステップS503では、着目する人物Xのビーコン信号に基づく座標と、音源定位に基づく座標との距離は閾値内であるか否かが判定される。この判定がYESである場合、人物Xが会話を行い、音声を発しているものと判定する。
【0067】
このことを、
図8を参照して説明する。例えば、人物(1)のビーコン信号に基づく座標を(x
1,y
1)として、音源定位技術に基づく座標を(x’
1,y’
1)とすると、これらの座標間の距離が先の閾値(例えば、Dとする)以下であるとすると、人物(1)が音声を発したものと、ステップS503では判定するようにしている。
【0068】
なお、当該設定距離Dについては、(B)に示す「音源距離閾値設定情報」を入力することで、ユーザー設定処理が適宜可能とされている。これにより、音声を発した人物の判定精度を調整することが可能となる。
【0069】
続くステップS504では、人物Xから設定距離内に存在する人物Yを抽出する。
図4の例では、当該設定距離がRであり、ステップS504では、人物Xとして(1)が付された人物が抽出され、人物Yとして(2)、(3)が付された人物が抽出されたものと仮定する。なお、当該設定距離Rについては、(A)に示す「対人距離閾値設定情報」を入力することで、ユーザー設定処理が適宜可能とされている。これにより、オフィス事情に応じた人物関係の抽出を行うことが可能となる。
【0070】
ステップS505では、人物Yが1人以上であるか否かが判定される。ステップS505の判定がNOであると、ステップS506に進み、オフィスレイアウトデータベース250が参照され、続いてステップS507では、人物Xと人物Yとの間に遮蔽物が存在しないかが判定される。
【0071】
ステップS507の判定がNOである場合には、人物Xと人物Yとの間にオフィス什器などの遮蔽物が存在し、コミュニケーションを行うことが不可能であるものと判断し、ステップS508の会話記録作成サブルーチンはスキップして、ステップS509に進む。
図8の例では、人物Xが(1)で、人物Yが(3)であるようなケースである。
【0072】
一方、ステップS507の判定がYESである場合には、人物Xと人物Yとの間にオフィス什器などの遮蔽物が存在せず、コミュニケーションが可能であるものと判断し、ステップS508の会話記録作成サブルーチンを実行する。
図8の例では、人物Xが(1)で、人物Yが(2)であるようなケースである。ここで、ステップS508の会話記録作成サブルーチンについては、第1実施形態と同様のものを用いることができる。
【0073】
さて、ステップS505の判定がYESであると、ステップS509に進み、全ての人物Yが抽出されるまで、ステップS511→ステップS506をループする。一方、ステップS509で全ての人物Yについての抽出が終了されたものと判定されると、続いて、ステップS510に進む。
【0074】
ステップS510では、全てのXについて抽出されたかが判定される。ステップS510の判定がNOであると、ステップS512→ステップS503→・・の順でループし、ステップS510の判定がYESであると、ステップS513に進み、処理を終了する。
【0075】
以上のような第2実施形態に係る人物関係抽出システム1は、音源定位部で特定された座標(ステップS501)と人物・位置特定部で特定された座標(ステップS503)とに基づいて、音を発した人物を特定し(ステップS503)、特定された音を発した人物から、設定距離内の人物を抽出し(ステップS504)、これらの人物の間で会話がなされたものとして会話記録を作成する(ステップS508)ので、第2実施形態に係る人物関係抽出システム1によれば、特定の区画に拘束されることなく、会話記録を作成することができ、区画を跨って交わされる会話の抽出が可能となるし、また、区画内の会話に参加していない人物が抽出されてしまう確率を低減できる。
【符号の説明】
【0076】
1・・・人物関係抽出システム
100・・・制御部
110、110n(nは自然数)・・・区画用マイクロフォン
115、115m(mは自然数)・・・マイクロフォンアレイ
120、120p(pは自然数)・・・撮像部
130、130q(qは自然数)・・・無線通信部
150、150r(rは自然数)・・・ビーコン発信源(スマートフォン)
210・・・第1人物データベース
220・・・第2人物データベース
250・・・オフィスレイアウトデータベース
280・・・人物関係データ記憶部