(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】LAT体積マップ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/343 20210101AFI20240415BHJP
【FI】
A61B5/343
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020089400
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-27
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ザール
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】ナタン・シャロン・カッツ
(72)【発明者】
【氏名】アハロン・ツルゲマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン・カドシ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-142788(JP,A)
【文献】特開平10-323335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0053728(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05- 5/0538
5/24- 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニターと、
プロセッサであって、
心臓の室の組織のモデルにおいて、第1のボクセルに、前記組織の個々の位置におけるパラメータの個々の第1の値を割り当てることであって、
前記第1のボクセルが、それぞれ、前記位置を表し、
前記位置の一部が、前記組織の心内膜表面に存在し、前記位置のうちの他のものが、前記組織の心外膜表面に存在する、割り当てることと、
前記第1の値を補間することによって、前記モデルにおける第2のボクセルに個々の第2の値を割り当てることであって、前記第2のボクセルのサブセットが、前記心内膜表面と前記心外膜表面との間の前記組織の部分を表す、割り当てることと、
前記モニターに前記モデルを表示することと、
を行うように構成されているプロセッサと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記パラメータが前記組織の特性を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記特性が局所活性化時間(LAT)を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、
前記第1の値及び前記第2の値に基づいて、電気伝播が減速する少なくとも1つの領域を特定するように、及び
前記領域を示す出力値を生成するように
更に構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記パラメータが、前記組織に送達されるエネルギーの量を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記第2のボクセルの各ボクセルに、前記ボクセルの最近隣の平均値を反復して割り当てることにより、前記第1の値を補間するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記第1の値に関連する信頼性の個々のレベルから導き出された個々の重みによって、前記最近隣が加重された加重平均値を割り当てることにより、前記平均値を割り当てるように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記第2のボクセルの各ボクセルに前記平均値を反復して割り当てる前に、任意のタイプの最近隣補間法を使用して、前記第2のボクセルの各ボクセルに個々の初期値を割り当てることによって、前記第1の値を補間するように構成されている、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記プロセッサが、前記サブセットに割り当てられた前記第2の値のものを示すよう、前記モデルを表示するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
プロセッサを備えるシステムの作動方法であって、
前記プロセッサが心臓の室の組織のモデルにおいて、第1のボクセルに、前記組織の個々の位置におけるパラメータの個々の第1の値を割り当てることであって、
前記第1のボクセルが、それぞれ、前記位置を表し、
前記位置の一部が、前記組織の心内膜表面に存在し、前記位置のうちの他のものは、前記組織の心外膜表面に存在する、割り当てることと、
前記プロセッサが前記第1の値を補間することによって、前記モデルにおける第2のボクセルに個々の第2の値を割り当てることであって、前記第2のボクセルのサブセットが、前記心内膜表面と前記心外膜表面との間の前記組織の部分を表す、割り当てることと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記パラメータが前記組織の特性を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記特性が局所活性化時間(LAT)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プロセッサが前記第1の値及び前記第2の値に基づいて、電気伝播が減速する少なくとも1つの領域を特定することと、
前記プロセッサが前記領域を示す出力値を生成することと、
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記パラメータが、前記組織に送達されるエネルギー量を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の値を補間することが、
前記プロセッサが前記第2のボクセルの各ボクセルに、前記ボクセルの最近隣の平均値を反復して割り当てることにより、前記第1の値を補間することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記平均値を割り当てることは、
前記プロセッサが前記第1の値に関連する信頼性の個々のレベルから導き出された個々の重みによって、前記最近隣が加重された加重平均値を割り当てることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の値を補間することが、
前記プロセッサが前記第2のボクセルの各ボクセルに前記平均値を反復して割り当てる前に、任意のタイプの最近隣補間法を使用して、前記第2のボクセルの各ボクセルに個々の初期値を割り当てることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記プロセッサが前記サブセットに割り当てられた前記第2の値のものを示すよう、前記モデルを
ディスプレイに表示することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
プログラム命令が格納されている、有形の非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、前記命令が、プロセッサにより読み取られると、前記プロセッサに、
心臓の室の組織のモデルにおいて、第1のボクセルに、前記組織の個々の位置におけるパラメータの個々の第1の値を割り当てることであって、
前記第1のボクセルが、それぞれ、前記位置を表し、
前記位置の一部が、前記組織の心内膜表面に存在し、前記位置のうちの他のものが、前記組織の心外膜表面に存在する、割り当てることと、
前記第1の値を補間することによって、前記モデルにおける第2のボクセルに個々の第2の値を割り当てることであって、前記第2のボクセルのサブセットが、前記心内膜表面と前記心外膜表面との間の前記組織の部分を表す、割り当てることと、
を行わせる、コンピュータソフトウェア製品。
【請求項20】
前記パラメータが、前記組織の局所活性化時間(LAT)を含む、請求項19に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年5月23日に出願された「Volumetric LAT map」と題する米国特許仮出願第62/852,266号の利益を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、特に心臓の解剖学的及び電気生理学的モデルに関する。
【背景技術】
【0003】
心臓の組織上の特定の位置における「局所活性化時間」(LAT)とは、電気伝播の波面がその位置を通過する時間のことである。局所活性化時間は、通常、身体-表面の心電図(ECG)の記録のQRS複合波における特定の時間点などの特定の基準時間から測定される。
【0004】
米国特許出願公開第2006/0084970号は、心臓室内の生理的データの取得及びマッピングの方法を記載している。この方法は、心臓室に電極を有するカテーテルを挿入することを含む。心臓室における生理的データは、電極を用いて取得される。電極の位置が決定されて、電極の位置を使用して、必要な生理的データの位置が決定される。取得された生理的データは、取得された生理的データの位置と統合される。心臓室の少なくともの一部の三次元幾何形状に関連する情報が受信され、生理的データの連続三次元着色コード化マップが作成され、三次元幾何形状情報の幾何学的表示に重ね合わせられる。次に、このマップを利用して、アブレーション治療法を送達させる。
【0005】
米国特許出願公開第2016/0100770号は、不整脈を診断して身体内の空間電気生理学的(EP)パターンを測定、分類、解析及びマッピングすることが可能なカテーテル治療を行うシステムを記載している。このシステムは、不整脈治療法を更に案内して、処置が送達されると、マップの更新を行うことができる。このシステムは、EPデータ及び位置決めデータを収集するため、既知の空間構成による高密度のセンサを有する医療装置を使用することができる。更に、このシステムは、ディスプレイ装置に示される幾何学的解剖モデルと関係付けるためのさまざまなメトリック、派生メトリック、高解像度(HD)マップ、HD合成マップ及び一般的な視覚補助を計算してユーザに提供するための電子制御システム(ECU)を使用することも可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一部の実施形態によれば、モニター及びプロセッサを含むシステムが提供される。プロセッサは、心臓の室の組織のモデルにおいて、第1のボクセルに、この組織の個々の位置におけるパラメータの個々の第1の値を割り当てるように構成されており、この第1のボクセルがそれぞれ、位置を表す。位置の一部は、組織の心内膜表面に存在し、これらの位置の他は、組織の心外膜表面に存在する。プロセッサは、第1の値を補間することによって、このモデルにおける第2のボクセルに個々の第2の値を割り当てるように更に構成されており、第2のボクセルのサブセットは、心内膜表面と心外膜表面との間の組織の部分を表す。プロセッサは、モニターにこのモデルを表示するように更に構成されている。
【0007】
一部の実施形態では、パラメータは、組織の特性を含む。
【0008】
一部の実施形態では、この特性は局所活性化時間(LAT)を含む。
【0009】
一部の実施形態では、本プロセッサは、
第1の値及び第2の値に基づいて、電気伝播が減速する少なくとも1つの領域を特定するように、及び
この領域を示す出力値を生成するように
更に構成されている。
【0010】
一部の実施形態では、パラメータは、組織に送達されるエネルギー量を含む。
【0011】
一部の実施形態では、本プロセッサは、第2のボクセルの各ボクセルに、このボクセルの最近隣の平均値を反復して割り当てることにより、第1の値を補間するように構成されている。
【0012】
一部の実施形態では、本プロセッサは、第1の値に関連する信頼性の個々のレベルから導き出された個々の重みによって、最近隣が加重された加重平均値を割り当てることにより、平均値を割り当てるように構成されている。
【0013】
一部の実施形態では、本プロセッサは、第2のボクセルの各ボクセルに平均値を反復して割り当てる前に、任意のタイプの最近隣補間法を使用して、第2のボクセルの各ボクセルに個々の初期値を割り当てることによって、第1の値を補間するように構成されている。
【0014】
一部の実施形態では、本プロセッサは、サブセットに割り当てられた第2の値のものを示すよう、モデルを表示するように構成されている。
【0015】
本発明の一部の実施形態によれば、心臓の室の組織のモデルにおいて、第1のボクセルに、この組織の個々の位置におけるパラメータの個々の第1の値を割り当てることであって、この第1のボクセルがそれぞれ、位置を表す、割り当てることを含む方法が更に提供される。位置の一部は、組織の心内膜表面に存在し、これらの位置の他は、組織の心外膜表面に存在する。本方法は、第1の値を補間することによって、モデルにおける第2のボクセルに個々の第2の値を割り当てることであって、第2のボクセルのサブセットが、心内膜表面と心外膜表面との間の組織の部分を表す、割り当てることを更に含む。
【0016】
本発明の一部の実施形態によれば、プログラム命令が格納されている有形の非一時的コンピュータ可読媒体を含む、コンピュータソフトウェア製品が更に提供される。その命令は、プロセッサによって読み取られると、そのプロセッサに、心臓の室の組織のモデルにおける第1のボクセルに、この組織の個々の位置におけるパラメータの個々の第1の値を割り当てて、この第1のボクセルを、それぞれ、位置を表させる。位置の一部は、組織の心内膜表面に存在し、これらの位置の他は、組織の心外膜表面に存在する。この命令は更に、プロセッサに、第1の値を補間することによって、このモデルにおける第2のボクセルに個々の第2の値を割り当てさせて、第2のボクセルのサブセットが、心内膜表面と心外膜表面との間の組織の部分を表す。
【0017】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一部の実施形態による、心臓組織の拡大モデルを生成するためのシステムの概略図である。
【
図2】本発明の一部の実施形態による、心臓組織のモデルを拡大するための技法に関するフロー図である。
【
図3】本発明の一部の実施形態による、心臓組織のモデルを拡大するための技法の態様を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
概要
一部の用途では、対象の心臓の部分の電気生理学的マップが構築される。電気生理学的マップは、重ね合わせた電気生理学的データと共に、心臓部分の身体構造の計算後の表示を含む。このようなマップの例は、LATマップであり、このマップは、例えば、可変色スケールを使用して、さまざまな解剖学的位置における、個々のLATの値を表示するものである。
【0020】
LATマップを構築するため、カテーテルの遠位端部における1つ以上の電極は、心臓の組織のさまざまな位置に対する、LAT値の「ポイントクラウド」をまず必要とする。次に、このポイントクラウドは、組織のボクセル処理済みの解剖学的モデルにマッピングされ、こうして、必要とされるLAT値が、それぞれ、このモデルにおけるボクセルのサブセットに割り当てられる。続いて、好適な補間技法を使用して、残りのボクセルが、補間済みLAT値に割り当てられる。
【0021】
従来の技法によれば、完全に独立した2つのLATマップは、それぞれ、心臓の関連部分の心内膜表面及び心外膜表面に関して構築される。しかし、本発明者は、心臓の心内膜表面の電気生理学的特徴は、「内部」又は「壁内」心臓組織を流れる電流の伝播のために、心外膜表面の電気生理学的特徴と相互関連することを認識した。したがって、各表面が隔離されていることを考慮すると、上述の従来の技法は、不正確な補間済みLAT値をもたらすおそれがある。
【0022】
したがって、本発明の実施形態は、壁内組織と共に、心内膜表面と心外膜表面の両方を考慮する、体積による、すなわち三次元のLATマップを提供する。第1に、心内膜表面、心外膜表面及び壁内組織を含めた、心臓組織の三次元解剖学的モデルが構築される。次に、各LATポイントクラウドが、心内膜表面及び心外膜表面に必要とされて、LATポイントクラウドがモデルにマッピングされる。続いて、LAT値は、好適な補間技法を使用して、残りの表面及び壁内ボクセルに関して推定が行われる。例えば、反復補間技法が使用されてもよく、これにより、各反復の間に、各ボクセルは、その最近隣の値の平均値に割り当てられる。
【0023】
有利には、本明細書に記載されているとおりに構築された体積マップは、心内膜表面及び心外膜表面の両方に関して、一般に、正確である。更に、この体積マップにより、医師は、壁内組織の電気生理学的特徴を可視化することが可能になり得る。更に、体積マップは、電気伝播が減速する領域の一層正確な特定を容易にすることができる。
【0024】
本明細書に記載されている技法は、局所活性化時間に加え、組織に関連する他のパラメータに関する体積マップを構築するために使用され得る。このようなパラメータは、電圧、サイクル長さ、温度及び組織に送達されるエネルギーの量を含む。
【0025】
システムの説明
本発明の一部の実施形態による、心臓組織の拡大モデルを生成するためのシステム20の概略図である、
図1を最初に参照する。
【0026】
図1では、医師30は、対象の22の心臓24の室の組織に沿って、カテーテル26の遠位端部28を移動させていることが示されている。特に、医師30は、組織の心内膜表面及び心外膜表面の両方に沿って、遠位端部28を移動させる。一部の実施形態では、遠位端部28は、組織の1つ以上の領域を処置する(例えば、アブレーションする)ために使用され得る、1つ以上の処置用電極を含む。
【0027】
カテーテルの遠位端部が組織に沿って移動される間に、システム20に属するプロセッサ32は、遠位端部を追跡する、すなわち、遠位端部28が配置されている組織の複数の位置を確定する。(便宜上、これらの位置の各々は、これ以降、単にカテーテルの位置と称される。)上記のとおり、これらの位置の一部は、組織の心内膜表面に存在する一方、他のものは、組織の心外膜表面に存在する。
【0028】
更に、カテーテルの遠位端部が組織に沿って、移動されている間、遠位端部28に配置された電極及び/又は他のセンサ(例えば、温度センサ又は力センサ)は、少なくとも1つのパラメータに関連するデータを取得する。これらのデータは、ポート又はソケットなどの電気インターフェース34を介して、プロセッサ32によって受信される。プロセッサ32は、これらのデータに基づいて、複数の位置におけるパラメータの個々の値を確定する。
【0029】
通常、遠位端部28によって取得されたデータは、組織のさまざまな位置であって、その上に遠位端部28が通される、組織のさまざまな位置における個々の電圧信号を含む。代替的に又は追加的に、これらのデータは、位置における個々の温度を含んでもよい。代替的に又は追加的に、これらのデータは、組織に対してカテーテルが押し込む力を含んでもよい。
【0030】
一部の実施形態では、確定されたカテーテルの位置に基づいて、プロセッサ32は、組織の解剖学的モデルを構築する。次に、この解剖学的モデルは、
図2~3を参照して、以下に更に記載されているとおり、上述のパラメータの値を用いて拡大される。他の実施形態では、プロセッサ32は、パラメータ値を用いて、既に存在する解剖学的モデルを拡大する。
【0031】
カテーテルの遠位端部の追跡を容易にするため、カテーテルの遠位端部は、発生した磁場の存在下で、センサの個々の位置を表示するシグナルを出力する、1つ以上の電磁気センサを備えてもよい。これらのシグナルは、電気的インターフェース34を介して、プロセッサ32によって受信され得る。シグナルに基づいて、プロセッサ32は、カテーテルの位置を確定することができる。
【0032】
代替的に、カテーテルの遠位端部は、カテーテル電極を備えてもよく、複数の電極パッチが、対象22の身体に繋げられてもよい。電圧が、カテーテル電極と電極パッチとの間に印加されると、カテーテル電極と電極パッチとの間の電流の個々の大きさが測定され得る。これらの電流の大きさに基づいて、プロセッサは、カテーテルの位置を確定することができる。
【0033】
更にもう1つの選択として、上記の追跡技法のどちらも、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第8,456,182号に記載されているとおり、互いに組み合わせて使用され得る。代替的に又は追加的に、例えば、米国特許第8,456,182号に記載されているとおり、他の好適な任意の追跡技法が使用されてもよい。
【0034】
通常、システム20は、モニター36を更に備える。医師は、カテーテル26を操作するので、プロセッサ32は、モニター36に、対象の心臓の画像の上にカテーテルの遠位端部を表すアイコンを重ね合わせることができ、こうして、医師は、カテーテルを目視で追跡することができる。代替的に又は追加的に、プロセッサは、モニター36に、
図2~3を参照して、本明細書の以下に詳述されているとおりに構築され得る、組織の拡大モデルを表示することができる。
【0035】
一般に、プロセッサ32は、単一のプロセッサとして具現化されてもよいが、連携してネットワーク化された、又はクラスタ化された複数のプロセッサの集合として具現化されてもよい。一部の実施形態では、本明細書で説明されるプロセッサ32の機能は、例えば1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用して、ハードウェア内にのみ実装される。他の実施形態では、プロセッサ32の機能は、少なくとも部分的にソフトウェア内に実装される。例えば、一部の実施形態では、プロセッサ32は、中央演算処理装置(CPU)及び/若しくはグラフィック演算処理装置(GPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードドライブ若しくはCD-ROMドライブなどの不揮発性二次記憶装置、ネットワークインターフェース、並びに/又は周辺装置を備える、プログラムされたデジタルコンピューティング装置である。ソフトウェアプログラムを含めたプログラムコード、及び/又はデータは、当該技術分野において公知のとおり、CPU及び/又はGPUによる実行及び処理のためにRAMにロードされ、表示、出力、送信又は格納のために結果が生成される。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを通じて電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、又は代替的に若しくは追加的に、磁気、光学又は電子メモリなどの非一過性有形媒体上に提供及び/若しくは格納されてもよい。このようなプログラムコーティング及び/又はデータは、プロセッサに提供されると、本明細書に記載されているタスクを行うように構成された、機械若しくは専用コンピュータを生じる。
【0036】
モデルの拡大
本発明の一部の実施形態による、心臓組織のモデルを拡大するための技法48に関するフロー図の概略図である、
図2をこれより参照する。技法48の態様を例示する、
図3を更に参照する。(例示目的のため、
図3に示されている量は、純粋に仮定であることに留意されたい。)
【0037】
図1を参照した上記のとおり、確定工程50において、プロセッサ32は、心臓24の室の心内膜表面及び心外膜表面の複数の位置における、特定のパラメータの個々の値を確定する。例えば、プロセッサは、組織の電圧、LAT、サイクル長さ又は温度などの、組織の特性の個々の値を確定することができる。(LAT及びサイクル長さの値は、組織から得られた電圧信号から導くことができる)代替的に又は追加的に、プロセッサは、処置用電極により組織に送達された高周波(RF)エネルギーなどの、エネルギー量の個々の値を確定することができる。エネルギーの量は、処置用電極に送達されたエネルギーの量、組織の温度、カテーテルが組織に押し込んだ圧力などの、要因に基づいて計算され得る。
【0038】
続いて、プロセッサは、組織の三次元モデル38により確定された値を関係付ける。モデル38は、複数のボクセルであって、そのボクセルがそれぞれ、組織の異なる個々の部分を表す、複数のボクセルを含む。特に、「心外膜ボクセル」と本明細書において称される、モデルの第1の表面40を規定するボクセルは、組織の心外膜表面を表し、「心内膜ボクセル」と本明細書において称される、第2の表面42を規定するボクセルは、組織の心内膜表面を表し、「壁内ボクセル」と本明細書において称される、第1の表面40と第2の表面42との間にあるボクセルは、壁内組織を表す。確定されたパラメータ値が示された組織の個々の部分を表すボクセルは、第1のボクセル44と本明細書において称される。
【0039】
より詳細には、第1の割り当て工程52では、確定工程50において確定されたパラメータの値は、
図3の項目Aにおいて示されているとおり、第1のボクセル44にそれぞれ割り当てられる。言い換えると、第1のボクセル44はそれぞれ、ボクセルによって表される組織の部分において示された値に割り当てられる。次に、
図3の項目B~Dに示されているとおり、プロセッサ値は、すなわち、第1のボクセル44に割り当てた値を補間することによって、第2のボクセル46と本明細書において称される残りのボクセルに個々の値を割り当てる。(明確にするため、
図3は、第2のボクセル46に割り当てられた値をイタリック体にしている。)
【0040】
通常、第2のボクセルに値を付与するため、プロセッサは、初期化工程54において、第2のボクセルをまず初期化する。すなわち、プロセッサは、第2のボクセル46の各々にそれぞれの初期値を割り当てる。この初期化を行うため、プロセッサは、任意の好適なタイプの最近隣補間法を使用することができる。例えば、
図3の項目Bに示されているとおり、プロセッサは、第2のボクセルの各々が、そのボクセルに最も近い第1のボクセルの値に割り当てられ得る、標準的な最近隣補間法技法を使用することができる。代替的に、例えば、加重した最近隣補間法技法をこの初期化に使用することができる。
【0041】
通常、初期化の後に、プロセッサは、第2のボクセルの最近隣の個々の値の平均値を、第2のボクセルの各々に繰り返し割り当てる。(上記の初期化が行われない実施形態の場合、平均値は、値が既に割り当てられた最近隣の上にしか行われない。)この反復平均計算は、「ラプラス補間」と呼ばれることがある。
【0042】
一部の実施形態では、反復数は、あらかじめ規定されている。他の実施形態では、プロセッサは、1つ以上のあらかじめ規定された停止基準が満たされるまで、反復平均計算を行う。例えば、反復平均計算は、ボクセルの任意の隣接する一対の間の極大差異が、あらかじめ規定されている閾値未満となるまで行われ得る。
【0043】
したがって、例えば、
図2に示されているとおり、反復平均計算は、第2の割り当て工程56及び確認工程58を含むことができる。第2の割り当て工程56において、プロセッサは、その最近隣の平均値を第2のボクセルの各々に割り当てる。確認工程58では、プロセッサは、あらかじめ規定した反復数が行われたかどうか、又は停止基準を満たしたかどうかを確認する。はいの場合、反復平均計算は終了する。そうでない場合、プロセッサは、第2の割り当て工程56に戻る。
【0044】
一部の実施形態では、2つのボクセルが少なくとも1つの頂点を共有する場合、一方のボクセルが他方のボクセルの最近隣(又は「これに隣接している」)と見なされる。したがって、1つのボクセルは、最大で26個の最近隣を構成し得る。(ボクセルの二次元表示のため、
図3は、26個の最近隣ではなく、最大で8個を示す。)他の実施形態では、2つのボクセルは、これらの2つのボクセルが少なくとも1つの面を共有する場合のみ、互いに最近隣にあると見なされる。すなわち、ボクセルは、最大で6個の最近隣しか有し得ない。代替として、ボクセルの最近隣を判定するために、他の基準が使用されてもよい。
【0045】
例示として、
図3の項目C及びDは、上記の平均計算の2回の反復を示し、このことは、少なくとも1つの共通の頂点を共有する一対のボクセルは、互いに最近隣にあると見なされると仮定する。(
図3は、図に完全に示されていないボクセルを考慮しないことに留意されたい。したがって、例えば、コーナーボクセルは、3つの最近隣のみを平均化することによって評価される。)
【0046】
一部の実施形態では、第2のボクセルの各々に値を付与する際に、第2のボクセルの最近隣は、
図3に仮定されているとおり、等しく加重される。他の実施形態では、平均値は、第1のボクセル44に割り当てられた値に関連する信頼性の個々のレベルから導き出される個々の重みによって加重される。信頼性のこれらのレベルは、一般に、関連データがカテーテルの遠位端部から受信される品質の関数である。
【0047】
例えば、信頼性のレベルは、心内膜表面に対してよりも心外膜表面(第1の表面40により表される)に対する方が大きいということを仮定すると、プロセッサは、第1の心外膜ボクセルの値に初期化された各「子供の」第2のボクセルと共に、心外膜の第1のボクセルの各々に対してより大きな重みを与えることになる。したがって、例えば、各心外膜の第1のボクセル及びその子供に対して1.2の重み、並びに各心内膜の第1のボクセル及びその子供に対してわずか1だけの重みを置くと仮定すると、項目Cに示されている特定の第2のボクセル46aは、103.8というよりも、103.3(=(1.2*500+330)/(1.2*5+3))という値が割り当てられる。
【0048】
ラプラス補間の代替として又は追加として、第2のボクセル46に値を付与するために、他の補間技法が使用されてもよい。このような技法としては、例えば、クリギング法、逆距離加重法、スプライン補間、自然近傍補間、及び既に上記の、最近隣補間法が挙げられる。一般に、補間技法は、補間されるパラメータの特性に対応して選択される。例えば、組織に線形で変化する局所活性化時間の場合、ラプラス補間などの線形補間技法が使用され得る。一方、送達されたエネルギーの場合、非線形熱力学に基づく補間技法が使用され得る。例えば、プロセッサは、送達されたエネルギーの量が、処置用電極が組織に接触している部位から指数関数的に減衰すると仮定することができる。
【0049】
一部の実施形態では、第2のボクセル46は、例えば、グラフィック演算処理装置(GPU)上で実行する、複数の並列な実行スレッドを使用して値が付与される。したがって、例えば、ラプラス補間の各反復の間に、第2のボクセルはすべて、並行して処理され得る。
【0050】
一部の場合、瘢痕組織に対応するボクセルは、値が付与されず、他のボクセルに値を付与することに寄与しない。瘢痕組織は、組織から取得された電圧信号に基づいて、医師によって手作業で、又はプロセッサ32により自動的に特定され得る。
【0051】
通常、第2のボクセルへの値の付与に続いて、プロセッサは、パラメータの値を示すよう、表示工程60において、モニター36上にモデル38を表示する(
図1)。例えば、プロセッサは、パラメータによって得られた値の範囲に対応する色スケールに応じて、モデルのボクセルを着色することができる。概要において明記したとおり、モデルの表示時には、プロセッサは、通常、壁内ボクセルに割り当てられた値を表示する。したがって、有利には、医師は、心内膜表面及び心外膜表面しか示されない場合と比べると、医師は、組織の電気的特性のよりよい理解を得ることができる。
【0052】
一部の実施形態では、モデル38に割り当てられたLAT値に基づいて、プロセッサは、電気伝播が減速する任意の領域を特定する。有利には、モデル38の三次元特質により、一層大きな正確性を伴って、これらの領域を特定することが容易となる。
【0053】
例えば、座標(x0,y0,z0)を有する各ボクセルでは、プロセッサは、V(x0,y0,z0)=((L(x0+1,y0,z0)-L(x0-1,y0,z0))-1、(L(x0,y0+1,z0)-L(x0,y0-1,z0))-1,(L(x0,y0,z0+1)-L(x0,y0,z0-1))-1)として電気伝播の正規化後速度を算出することができ、式中、L(x,y,z)は、座標(x,y,z)を有するボクセルにおけるLATを示し、(x0±1,y0,z0)は、x軸に沿ったボクセルの最近隣のことであり、(x0,y0±1,z0)は、y軸に沿ったボクセルの最近隣のことであり、(x0,y0,z0±1)は、z軸に沿ったボクセルの最近隣のことである。次に、プロセッサは、dV=(V(x0+1,y0,z0)-V(x0-1,y0,z0)),V(x0,y0+1,z0)-V(x0,y0-1,z0),V(x0,y0,z0+1)-V(x0,y0,z0-1))として速度の導関数を算出することができる。続いて、プロセッサは、ドット積V・dVを算出することができる。このドット積が、負の場合、このボクセルは、電気伝播が減速する領域の部分を表すと仮定する。
【0054】
電気伝播が減速する少なくとも1つの領域の特定に応答して、プロセッサは、この領域を示す出力値を生成することができる。例えば、このモデルを表示する際には、プロセッサは、この領域を表すボクセルを着色するか、又はそうでない場合、ボクセルに注釈を付けることができる。
【0055】
本発明が、本明細書上に具体的に示されて記載されたものに限定されない点が、当業者により理解されよう。むしろ、本発明の実施形態の範囲は、本明細書上に記載されているさまざまな特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに、上記の説明を一読すると当業者には想起されると思われる、従来技術には存在しない特徴の変更例及び改変例を含む。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0056】
〔実施の態様〕
(1) モニターと、
プロセッサであって、
心臓の室の組織のモデルにおいて、第1のボクセルに、前記組織の個々の位置におけるパラメータの個々の第1の値を割り当てることであって、
前記第1のボクセルが、それぞれ、前記位置を表し、
前記位置の一部が、前記組織の心内膜表面に存在し、前記位置のうちの他のものが、前記組織の心外膜表面に存在する、割り当てることと、
前記第1の値を補間することによって、前記モデルにおける第2のボクセルに個々の第2の値を割り当てることであって、前記第2のボクセルのサブセットが、前記心内膜表面と前記心外膜表面との間の前記組織の部分を表す、割り当てることと、
前記モニターに前記モデルを表示することと、
を行うように構成されているプロセッサと、
を備える、システム。
(2) 前記パラメータが前記組織の特性を含む、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記特性が局所活性化時間(LAT)を含む、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサが、
前記第1の値及び前記第2の値に基づいて、電気伝播が減速する少なくとも1つの領域を特定するように、及び
前記領域を示す出力値を生成するように
更に構成されている、実施態様3に記載のシステム。
(5) 前記パラメータが、前記組織に送達されるエネルギーの量を含む、実施態様1に記載のシステム。
【0057】
(6) 前記プロセッサが、前記第2のボクセルの各ボクセルに、前記ボクセルの最近隣(immediate neighbors)の平均値を反復して割り当てることにより、前記第1の値を補間するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサは、前記第1の値に関連する信頼性の個々のレベルから導き出された個々の重みによって、前記最近隣が加重された加重平均値を割り当てることにより、前記平均値を割り当てるように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記プロセッサが、前記第2のボクセルの各ボクセルに前記平均値を反復して割り当てる前に、任意のタイプの最近隣補間法を使用して、前記第2のボクセルの各ボクセルに個々の初期値を割り当てることによって、前記第1の値を補間するように構成されている、実施態様6に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサが、前記サブセットに割り当てられた前記第2の値のものを示すよう、前記モデルを表示するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(10) 方法であって、
心臓の室の組織のモデルにおいて、第1のボクセルに、前記組織の個々の位置におけるパラメータの個々の第1の値を割り当てることであって、
前記第1のボクセルが、それぞれ、前記位置を表し、
前記位置の一部が、前記組織の心内膜表面に存在し、前記位置のうちの他のものは、前記組織の心外膜表面に存在する、割り当てることと、
前記第1の値を補間することによって、前記モデルにおける第2のボクセルに個々の第2の値を割り当てることであって、前記第2のボクセルのサブセットが、前記心内膜表面と前記心外膜表面との間の前記組織の部分を表す、割り当てることと、
を含む、方法。
【0058】
(11) 前記パラメータが前記組織の特性を含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記特性が局所活性化時間(LAT)を含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記第1の値及び前記第2の値に基づいて、電気伝播が減速する少なくとも1つの領域を特定することと、
前記領域を示す出力値を生成することと、
を更に含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記パラメータが、前記組織に送達されるエネルギー量を含む、実施態様10に記載の方法。
(15) 前記第1の値を補間することが、前記第2のボクセルの各ボクセルに、前記ボクセルの最近隣の平均値を反復して割り当てることにより、前記第1の値を補間することを含む、実施態様10に記載の方法。
【0059】
(16) 前記平均値を割り当てることは、前記第1の値に関連する信頼性の個々のレベルから導き出された個々の重みによって、前記最近隣が加重された加重平均値を割り当てることを含む、実施態様15に記載の方法。
(17) 前記第1の値を補間することが、前記第2のボクセルの各ボクセルに前記平均値を反復して割り当てる前に、任意のタイプの最近隣補間法を使用して、前記第2のボクセルの各ボクセルに個々の初期値を割り当てることを更に含む、実施態様15に記載の方法。
(18) 前記サブセットに割り当てられた前記第2の値のものを示すよう、前記モデルを表示することを更に含む、実施態様10に記載の方法。
(19) プログラム命令が格納されている、有形の非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータソフトウェア製品であって、前記命令が、プロセッサにより読み取られると、前記プロセッサに、
心臓の室の組織のモデルにおいて、第1のボクセルに、前記組織の個々の位置におけるパラメータの個々の第1の値を割り当てることであって、
前記第1のボクセルが、それぞれ、前記位置を表し、
前記位置の一部が、前記組織の心内膜表面に存在し、前記位置のうちの他のものが、前記組織の心外膜表面に存在する、割り当てることと、
前記第1の値を補間することによって、前記モデルにおける第2のボクセルに個々の第2の値を割り当てることであって、前記第2のボクセルのサブセットが、前記心内膜表面と前記心外膜表面との間の前記組織の部分を表す、割り当てることと、
を行わせる、コンピュータソフトウェア製品。
(20) 前記パラメータが、前記組織の局所活性化時間(LAT)を含む、実施態様19に記載のコンピュータソフトウェア製品。