(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20240415BHJP
B41J 29/13 20060101ALI20240415BHJP
B65H 1/04 20060101ALI20240415BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240415BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H04N1/00 567C
B41J29/13
B65H1/04 326A
G03G21/00 386
G03G21/16 114
(21)【出願番号】P 2020095457
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐一
(72)【発明者】
【氏名】福島 貴之
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-230670(JP,A)
【文献】特開平06-164823(JP,A)
【文献】特開2003-323084(JP,A)
【文献】特開平07-072685(JP,A)
【文献】特開2015-024879(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0290825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B41J 29/00 -29/70
B65H 1/00 - 3/68
B65H 31/00 -31/40
G03B 27/58 -27/64
G03G 13/00
G03G 13/04
G03G 13/045
G03G 13/056
G03G 13/34 -15/00
G03G 15/04 -15/043
G03G 15/047
G03G 15/056
G03G 15/36
G03G 21/00 -21/02
G03G 21/14 -21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿が積載される積載面を有する第1積載手段と、
前記第1積載手段に設けられ、前記第1積載手段に積載された原稿の幅方向における一端が突き当たる突き当て手段と、
前記第1積載手段に積載された原稿を給送方向に給送する給送手段と、
前記給送手段により給送された原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される原稿の画像を読み取る読取手段と、
前記読取手段により読み取られた原稿が積載される第2積載手段と、
前記第2積載手段上の原稿の有無を検知する検知手段と、
前記第1積載手段を前記搬送手段に対して回転自在に支持し、前記給送方向に延在する回動軸と、
前記回動軸を中心として前記第1積載手段を回転させる駆動手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、
前記積載面は、前記給送方向の下流端において、前記幅方向において前記突き当て手段に近い第1端部と、前記幅方向において前記第1端部よりも前記突き当て手段に遠い第2端部と、を有し、
前記制御手段は、前記検知手段が前記第2積載手段上の原稿が無くなったことを検知したことに基づいて、前記駆動手段に対して、前記第1端部が前記第2端部に対して低くなる方向に前記回動軸を中心に前記第1積載手段を回転させる制御を、実行することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1積載手段上に原稿が存在するとき、前記検知手段が前記第2積載手段上の原稿が無くなったことを検知しても、前記駆動手段に対して、前記制御を実行しないことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記第1積載手段は、前記給送手段による給送を行うことが可能である第1状態から、前記突き当て手段の位置が前記第1状態より低く、前記給送手段による給送を行うことができない第2状態に、前記駆動手段により前記回動軸を中心として回転することで、状態を変更することが可能であり、
前記制御手段が前記駆動手段に対して前記制御を実行することで、前記第1積載手段が前記第1状態から前記第2状態に状態を変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記第2積載手段上の原稿が無くなることに応じて、前記制御手段に出力する信号を、原稿有を示す信号から原稿無を示す信号に変えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記制御手段は、原稿読取動作が終了してから所定時間経過すると、前記駆動手段に対して、前記制御を実行することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記第1端部は、前記幅方向において前記積載面の手前側に位置し、
前記第2端部は、前記幅方向において前記積載面の奥側に位置していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記突き当て手段は、前記第1積載手段に固定されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記第2積載手段は、前記第1積載手段の下方に配置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画像読取装置と、記録材に画像を形成する画像形成手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像を読み取る画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、スキャナ等の画像読取装置や、複写機等に設けられた画像読取装置には、原稿トレイ上に積載された原稿を連続的に給紙して画像読取位置まで搬送し、原稿の画像読み取りを行ったあとに排紙トレイ上に排紙する原稿送り装置が備えられている。一般的に、この原稿送り装置ではユーザーが水平の原稿トレイ上に原稿を置き、原稿トレイに設けられるサイド規制板を操作することで、原稿の幅方向を整列させている。
【0003】
一方で、原稿送り装置に用いられる原稿トレイにおいては、ユーザーが原稿をセットする際に原稿トレイを手前側に傾斜させることで、原稿の自重を使って原稿を整列させる技術が知られている。特開2003-323084号公報では、原稿トレイを手前側に傾斜させる構成を持つ原稿送り装置として、視点の低いユーザーが操作パネル部の傾斜角度を見やすい角度に変更したときに、原稿トレイの傾斜角度を自動的に変更し、低い視点位置からでも原稿トレイの原稿積載面が見えるようにする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成の場合、原稿トレイを手前側に傾斜させるためにユーザーは操作パネル部を傾斜させる操作を行う必要がある。さらに、ユーザーが読取を行う原稿を手に持っている場合、ユーザーは原稿を手に持ったまま原稿トレイを手前に傾斜させるために操作パネル部を傾斜させる操作を行うことになる。そのため、操作が煩雑になって操作性が悪かった。
【0006】
そこで、本発明は、原稿トレイが手前側に傾斜した状態で原稿をセットすることを可能とする画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置において操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像読取装置は、原稿が積載される積載面を有する第1積載手段と、前記第1積載手段に設けられ、前記第1積載手段に積載された原稿の幅方向における一端が突き当たる突き当て手段と、前記第1積載手段に積載された原稿を給送方向に給送する給送手段と、前記給送手段により給送された原稿を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される原稿の画像を読み取る読取手段と、前記読取手段により読み取られた原稿が積載される第2積載手段と、前記第2積載手段上の原稿の有無を検知する検知手段と、前記第1積載手段を前記搬送手段に対して回転自在に支持し、前記給送方向に延在する回動軸と、前記回動軸を中心として前記第1積載手段を回転させる駆動手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を備え、前記積載面は、前記給送方向の下流端において、前記幅方向において前記突き当て手段に近い第1端部と、前記幅方向において前記第1端部よりも前記突き当て手段に遠い第2端部と、を有し、前記制御手段は、前記検知手段が前記第2積載手段上の原稿が無くなったことを検知したことに基づいて、前記駆動手段に対して、前記第1端部が前記第2端部に対して低くなる方向に前記回動軸を中心に前記第1積載手段を回転させる制御を、実行することを特徴とする画像読取装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、排出された原稿が無くなったことを検知手段が検知したことに応じて原稿トレイが回転するので、操作性の高い画像読取装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】本実施形態に係る画像読取装置の原稿をセットするときの状態を示す右側面図。
【
図5】本実施形態に係る画像読取装置の原稿を給送するときの状態を示す右側面図。
【
図6】本実施形態に係る画像形成装置の制御構成を示すブロック図。
【
図7】本実施形態に係る原稿読取動作の流れを説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、発明の好適な実施形態を説明する。
【0011】
<画像形成装置101の構成>
まず、本実施形態の画像形成装置101の概略構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る画像形成装置101の断面図である。なお、以下では、ユーザーが画像形成装置101に対して各種入力/設定を行う不図示の操作部に臨む位置を画像形成装置101の「手前側」といい、背面側を「奥側」という。つまり、
図1は手前側から見た画像形成装置101の内部構成を示したものである。
【0012】
画像形成装置101は、
図1に示すように、装置本体101Aと、画像読取装置103と、を備えている。装置本体101Aの上方に配置された画像読取装置103は、詳しくは後述するように、リーダ20とADF1とを備え、原稿Dを光学的に走査して画像情報を読み取る。「ADF」は自動原稿給送装置(Auto Document Feeder)を表す。原稿Dとは、用紙及び封筒等の紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等のプラスチックフィルム、布などのシートである。画像読取装置103によって電気信号に変換された画像情報は、装置本体101Aに設けられた
図6に示す制御部132へと転送される。
【0013】
装置本体101Aは、記録材であるシートPに画像を形成するための画像形成手段である画像形成部133と、画像形成部133にシートPを給送するシート給送部34と、を有している。シート給送部34は、互いに異なるサイズのシートを収納可能なシート収納部137a、137b、137c、137dを備えている。各シート収納部に収納されたシートは、ピックアップローラ32によって繰り出され、フィードローラ33a及びリタードローラ33bによって1枚ずつ分離されて、対応する搬送ローラ対131へと受け渡される。そして、シートPは、シート搬送路に沿って配置された複数の搬送ローラ対131に順に受け渡されることで、レジストレーションローラ対136へと搬送される。
【0014】
なお、ユーザーによって手差しトレイ137eに積載されたシートPは、給送ローラ138によって装置本体101Aの内部に給送され、レジストレーションローラ対136へと搬送される。レジストレーションローラ対136は、シートPの先端を停止させて斜行を補正すると共に、画像形成部133によるトナー像の形成プロセスである作像動作の進行に合わせてシートPの搬送を再開する。
【0015】
シートPに画像を形成する画像形成部133は、感光体である感光ドラム121を備えた電子写真方式の画像形成ユニットである。感光ドラム121は、シートPの搬送方向に沿って回転可能であり、感光ドラム121の周囲には帯電器118、露光装置123、現像器124、転写帯電器125、分離帯電器126、及びクリーナ127が配置されている。帯電器118は感光ドラム121の表面を一様に帯電させ、露光装置123は画像読取装置103等から入力される画像情報に基づいて感光ドラム121を露光し、ドラム上に静電潜像を形成する。
【0016】
現像器124は、トナーを含む現像剤を収容しており、感光ドラム121に帯電したトナーを供給することで静電潜像をトナー像に現像する。感光ドラム121に担持されたトナー像は、転写帯電器125が形成するバイアス電界により、レジストレーションローラ対136から搬送されるシートPに転写される。トナー像を転写されたシートPは、分離帯電器126が形成するバイアス電界によって感光ドラム121から離間し、定着前搬送部128によって定着部129へ向けて搬送される。なお、シートPに転写されずに感光ドラム121に残留した転写残トナー等の付着物はクリーナ127によって除去され、感光ドラム121は次の作像動作に備える。
【0017】
定着部129に搬送されたシートPは、ローラ対に挟持されて搬送されながら、トナー像の加圧及び加熱を含む定着処理を受ける。これによってトナーが溶融し、その後固着することにより、シートPに画像が定着する。画像出力が完了している場合、定着画像が得られたシートPは、排出ローラ対40を介して、装置本体101Aの外方に突出した排出トレイ130に排出される。両面印刷においてシートPの裏面に画像を形成する場合、定着部129を通過したシートPは、反転部139によって表面と裏面とを入れ替えられ、両面搬送部140によってレジストレーションローラ対136へと搬送される。そして、画像形成部133によって再び画像を形成されたシートPは、排出トレイ130に排出される。
【0018】
上記の画像形成部133は画像形成手段の一例であり、例えばインクジェット方式の画像形成ユニットやオフセット印刷方式の印刷機構を画像形成手段として用いてもよい。
【0019】
<画像読取装置103の構成>
次に、
図2を用いて画像読取装置103の概略構成について説明する。
図2は画像読取装置103の断面図である。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
図2に示すように、ADF1は第1積載手段である原稿トレイ2と、搬送手段である搬送部12と、第2積載手段である排紙トレイ3により構成される。排紙トレイ3は原稿トレイ2の下方に設けられている。ADF1は、リーダ20の上面で開閉可能に取り付けられている。ADF1は、原稿Dをリーダ20の上面にある流し読みガラス上の読取位置に搬送する。原稿DはADF1にある原稿トレイ2にセットされる。原稿トレイ2は、搬送手段である搬送部12に対して回転可能であるように、給送方向Fに沿って延在する回動軸11で支持されている。また、回動軸11は、原稿トレイ2の幅方向において中央付近に存在している。ここで、本実施形態における給送方向Fとは、後述する給送ローラ4によって原稿Dが給送される方向であり、給紙時の原稿積載面2aに沿った方向である。また、給送方向Fは給紙時の原稿トレイ2の幅方向に直交している。ここで、幅方向とは、画像読取装置103が原稿Dの画像を読み取る際の主走査方向である。
【0021】
回動軸11は、原稿トレイ2を搬送手段である搬送部12に対して回転自在に支持している。そのため、回動軸11が回転すると、原稿トレイ2も同時に回動軸11を回転中心として回転することができる。原稿トレイ2は駆動手段であるモータ13によって回転する。本実施形態において、モータ13は搬送部12の内部に配置されているが、モータ13の配置はこれに限らない。例えば、原稿トレイ2の内部に配置しても良いし、後述する各搬送ローラに回転駆動力を与えるための駆動部側に配置しても良い。
【0022】
図2に示すように、ADF1には、原稿検知センサ16、排紙原稿検知センサ17、排紙センサ18が設けられている。原稿検知センサ16、排紙原稿検知センサ17、排紙センサ18は、CPUの入力ポートに接続されており、原稿の挙動をモニターするために用いられる。原稿検知センサ16は原稿トレイ2に設けられており、原稿トレイ2上の原稿Dの有無を検知する。また、検知手段である排紙原稿検知センサ17は排紙トレイ3に設けられており、排紙トレイ上の原稿Dの有無を検知する。排紙センサ18は原稿搬送路内の排紙ローラ10の上流に設けられており、原稿Dの後端を検知する。この排紙センサ18は原稿Dが排紙されたことを検知するために用いられる。また、給送動作中において、原稿検知センサ16が原稿トレイ2上の原稿Dが無くなったことを検知した場合、その直前に給紙された原稿Dが最終原稿であると判断される。
【0023】
図2に示すようにADF1には、給送ローラ4、給紙ローラ5、分離ローラ6、搬送ローラ7、搬送ローラ8、搬送ローラ9、排紙ローラ10が設けられている。また、搬送ローラ8の搬送方向下流側には画像読取部Eがある。画像読取部Eには、リーダ20に設けられた表面読取ユニット14及びADF1に設けられた裏面読取ユニット15が存在している。原稿トレイ2上の原稿Dは、給送手段である給送ローラ4の回転駆動力によって給紙ローラ5まで繰り出される。原稿Dは給紙ローラ5とその下方からバネ付勢されている分離ローラ6との間の摩擦力によって1枚ずつに分離される。分離された原稿Dは、搬送ローラ7、8の回転駆動力によって画像読取部Eに向けて送り込まれる。画像読取部Eに送り込まれた原稿Dは、読取手段である表面読取ユニット14と裏面読取ユニット15によって両面の画像を読み取られる。そして、原稿Dは搬送ローラ9によって排紙ローラ10に搬送され、排紙ローラ10によって排紙トレイ3上に排紙される。本実施形態において、ユーザーによって原稿トレイ2にセットされた原稿Dが給送ローラ4によって給送されてから、排紙ローラ10によって排紙トレイ3上に排紙されるまでの一連の動作を「原稿読取動作」と呼ぶ。
【0024】
<原稿トレイ2の構成>
次に
図3、
図4、
図5を用いて、原稿トレイ2の構成について説明する。ここで、
図3は原稿トレイ2の上面図である。
図4は原稿Dをセットするときの原稿トレイ2の状態を示す図である。また、
図5はセットされた原稿Dを給紙するときの原稿トレイ2の状態を示す図である。
【0025】
図3に示すように、原稿トレイ2は原稿積載面2aと突き当て手段である原稿突き当て部2bとで構成されている。原稿突き当て部2bは原稿トレイ2の手前側に固定されている。また、原稿積載面2aは、給送方向Fの下流端200において、原稿突き当て部2bに近い第1端部200aと、幅方向において第1端部200aとは反対側に位置する第2端部200bを有している。
【0026】
ユーザーは原稿トレイ2が手前側に傾斜した状態で原稿Dをセットする。このとき、原稿トレイ2は
図4に示すような手前側に傾いた状態(第2状態)となっている。給送方向Fに沿った方向から見た場合、原稿積載面2aが水平方向に対して角度θだけ手前側に傾いているので、ユーザーがセットした原稿Dは自重により手前側に移動する。また、原稿突き当て部2bが原稿トレイ2の手前側に設けられている。そのため、自重により移動した原稿Dの幅方向における一端が原稿突き当て部2bに突き当てられ、原稿Dは整列される。これによって、従来、ユーザーが意識的に行っていた原稿Dを揃える動作を省略し、原稿Dのセットを簡略化することができる。また、原稿積載面2aが水平方向に対して角度θだけ傾いた状態では、原稿積載面2aと搬送部12の搬送路が滑らかに接続されていない。つまり、原稿積載面2aの給送方向Fにおける下流端と、搬送部12の搬送路を構成するガイドの上流端とがずれている。そのため、原稿トレイ2が手前側に傾斜した状態(第2状態)において、ADF1は給送動作を行うことができない。
【0027】
本実施形態における角度θは30度としているがこの値に限定するものではなく、0度<θ<40度となっていればよい。ここでの角度θの上限値である40度は、セットされた原稿Dが原稿突き当て部2bに突き当てられた際に座屈しないための最大傾斜角度である。また、本実施形態において、原稿突き当て部2bの給送方向Fにおける長さは、原稿Dのセット時の視認性を考慮して、150mmとしているが、この値に限定するものではない。
【0028】
上述したように、ユーザーは原稿トレイ2が手前側に傾斜した状態で原稿Dをセットする。しかし、原稿トレイ2が手前側に傾斜した状態では、ADF1は給送動作を行うことができない。そのため、原稿Dがセットされた後、原稿トレイ2は原稿Dをセットした状態のまま、
図4に示す状態よりも原稿突き当て部2bの位置が高くなるように回転する。すなわち、原稿トレイ2は幅方向における原稿突き当て部2b側の第1端部200aが、その反対側の第2端部200bに対して高くなる方向(
図4における矢印Bの向き)に回転する。このように原稿トレイ2が矢印Bの向きに回転した結果、原稿トレイ2は手前側と奥側がほとんど同じ高さである第1状態(
図5に示す状態)となる。その後、原稿Dの給送動作を開始する。つまり、ADF1は原稿トレイ2が第1状態であるときに給送動作を行うことができる。この際、原稿トレイ2は、図示しない操作部によって原稿読取動作の開始がユーザーによって指示されることに応じて回転する。
【0029】
本実施形態では、給送方向Fに沿った方向からみた場合、原稿トレイ2が第1状態であるときの原稿積載面2aの水平方向に対する角度θは0度としている。しかし、給送動作を開始するとき、原稿積載面2aと搬送部12の搬送路が滑らかに接続されていればよい。そのため、給送動作を開始するとき、給送動作が可能な範囲で、原稿積載面2aが水平方向に対して少し傾斜していてもよい。
【0030】
最終原稿が画像を読み取られて排紙された後、ユーザーが読取の終了した原稿Dを排紙トレイ3から取り出すことに基づいて、原稿トレイ2は原稿突き当て部2bの位置が低くなるように回転する。すなわち、原稿トレイ2は幅方向における原稿突き当て部2b側の第1端部200aが、その反対側の第2端部200bに対して低くなる方向(
図5における矢印Cの向き)に回転する。このように原稿トレイ2が矢印Cの向きに回転した結果、原稿トレイ2は再び給送動作を行うことができない第2状態となる。また、最終原稿が排紙される前に、ユーザーによって排紙トレイ3上の原稿Dが取出された場合、原稿トレイ2は回転せずに第1状態のままとなる。つまり、原稿トレイ2上に原稿Dが存在するときは、排紙トレイ3上の原稿が取出されても、原稿トレイ2は第1状態から第2状態にならない。
【0031】
<画像読取装置103の制御構成>
次に
図6を用いて、画像読取装置103の制御構成について説明する。
図6は、本実施形態の画像読取装置103及びこれを含んだ画像形成装置101の制御構成を示すブロック図である。
【0032】
画像読取装置103において、プログラムを実行するCPU21は、リーダ20及びADF1の各ユニットを統括的に制御する中央演算処理装置である。ROM24はCPU21が実行すべき制御内容をプログラム及びプログラムの実行に用いるデータとして格納した記憶装置である。RAM25はCPU21が制御を行うのに必要な作業領域として使用される記憶装置である。
【0033】
CPU21は、原稿搬送機能を実現するため、ADF1に設けられた搬送用の各ローラを駆動する駆動源である搬送モータ19が接続されている。また、CPU21は原稿トレイ2を回転させるための駆動源であるモータ13が接続されている。そして、CPU21は搬送モータ19及びモータ13の駆動を制御することが可能である。さらに、CPU21には原稿検知センサ16、排紙原稿検知センサ17、排紙センサ18が接続されている。CPU21は各センサからの信号を受信して、受信した信号に基づいて各ユニットを制御することが可能である。
【0034】
CPU21には表面読取ユニット14を副走査方向に移動させるために、光学系モータ22及び光学系HPセンサ23が接続されている。光学系HPセンサ23は、光学系モータ22による表面読取ユニット14の移動方向における、表面読取ユニット14の位置を検知する。表面読取ユニット14及び裏面読取ユニット15は、原稿Dの画像を走査し、1ライン毎に読取を行うイメージセンサユニットである。
【0035】
制御部132はリーダ20、ADF1を含む画像読取システムとしての画像形成装置101の全体を制御する情報処理装置である。CPU21は、制御部132と通信ライン51を介して、画像読取制御に関する制御コマンドのやり取り及び制御用データの授受を行う。例えば、制御部132は図示しない操作部からユーザーの画像読取動作の開始指示を受け取り、CPU21に画像読取開始要求を送信する。
【0036】
また、CPU21は原稿読取動作終了からの経過時間tを計測することが可能である。さらに、CPU21は原稿読取動作終了からの経過時間tが所定時間T(本実施形態においてTは60秒)以上かどうかの判定を行う。原稿読取動作終了からの経過時間tが所定時間T以上となったとき、CPU21はモータ13を駆動させ、原稿トレイ2を手前側に傾斜させる。これにより、ユーザーが排紙された原稿Dを取出し忘れた場合、原稿読取動作の終了から所定時間経過すると、原稿トレイ2は手前側に傾斜した状態になる。
【0037】
<原稿読取処理の流れ>
図7を用いて、原稿Dの画像を読み取る流れを説明する。
図7は原稿トレイ2に積載された原稿Dの画像を読み取る流れを説明するフローチャートである。このフローチャートの処理はCPU21によって実行される。
【0038】
S1001において、制御手段としてのCPU21が原稿検知センサ16から、ユーザーが原稿トレイ2に原稿Dをセットしたときの信号を受信すると、処理はS1002に進む。このとき原稿トレイ2は手前側に傾斜した第2状態となっている。
【0039】
S1002において、制御部132がユーザーによる原稿読取動作の開始指示を受け取ると、S1003においてCPU21はモータ13を駆動させる。モータ13の駆動力により、原稿トレイ2は
図4における矢印Bの方向に回転する。これにより、原稿トレイ2は給送動作を行うことができない状態(第2状態)から、給送動作可能な状態(第1状態)になる。
【0040】
S1003において、原稿トレイ2が給送動作可能な状態になったら、S1004においてCPU21は原稿読取動作を開始する。CPU21により原稿読取動作が開始されると、画像読取装置103は上記の各ローラによって原稿トレイ2に積載された原稿Dを搬送し、原稿Dの画像の読取を行う。
【0041】
S1005において、CPU21が原稿検知センサ16から、最終原稿を給紙することによって原稿Dが無くなったことを示す信号を受信した場合は、処理はS1006に進む。一方、S1005において原稿トレイ2にまだ読み取られていない原稿Dが存在している場合は、CPU21が原稿検知センサ16から原稿Dが無くなったことを示す信号を受信するまで、CPU21は原稿Dの給送動作を行う。
【0042】
S1006において、CPU21が排紙センサ18から最終原稿を排紙した信号を受信した場合、S1007においてCPU21は原稿読取動作を終了する。そして、S1008においてCPU21は原稿読取動作終了からの経過時間tの計測を開始する。
【0043】
S1009において、CPU21が排紙原稿検知センサ17から、排紙された原稿Dがユーザーによって排紙トレイ3から取り出されたことを示す信号を受信すると、処理はS1011に進む。ここで、原稿Dがユーザーによって排紙トレイ3から取り出されたことを示す信号とは、排紙原稿検知センサ17がCPU21に出力する信号が原稿有を示す信号から原稿無を示す信号に変わることである。S1011において、CPU21はモータ13を駆動させる。モータ13の駆動力により、原稿トレイ2は手前側に傾斜した状態になるように矢印Cの方向に回転する。これにより、原稿トレイ2は給送動作可能な状態(第1状態)から、給送動作を行うことができない状態(第2状態)になる。その後、CPU21はこのフローチャートの処理を終了する。
【0044】
一方、S1009において、ユーザーの取り忘れなどによって、排紙された原稿Dが取出されない場合は、処理はS1010に進む。S1010において、CPU21は原稿読取動作終了からの経過時間tが所定時間T(本実施形態においてTは60秒)以上であるかどうかの判定を行う。S1010において、CPU21が原稿読取動作終了からの経過時間tが所定時間T以上であると判定した場合は、処理はS1011に進む。S1010において、CPU21が原稿読取動作終了からの経過時間tが所定時間Tより小さい判定した場合は、処理はS1009に戻る。本実施形態において、所定時間Tは60秒としているが、この値に限定するものではない。
【0045】
以上のように本実施形態では、画像の読取が終了した原稿Dが排紙トレイ3から取り出されたことに基づいて、原稿トレイ2は給送動作が可能である第1状態から手前側に傾斜した第2状態になるように回転する。これにより、次に原稿をセットする際に原稿トレイ2を傾斜させる操作を省略することが可能となる。また、ユーザーが読取を行う原稿Dを手に持っている場合でも、先に原稿Dを原稿トレイ2にセットしてから画像読取装置103を操作することが可能である。
【0046】
さらに、本実施形態では、排紙トレイ3から原稿を取り出すことを容易にできる。原稿Dが排紙トレイ3から取り除かれるまで、原稿トレイ2が
図5の状態を維持するからである。つまり、原稿トレイ2は排紙トレイ3の上方に配置されているので、仮に原稿Dが取り除かれる前に原稿トレイ2が
図4に示した手前側に傾斜した状態になってしまうと、ユーザーは原稿トレイ2が邪魔になり原稿Dを取出しにくい。一方、本実施形態ではユーザーが原稿Dを排紙トレイ3から取り出すまで、原稿トレイ2は原稿突き当て部2bが高い位置にある状態となっているため、ユーザーは原稿Dを取出すことが容易となる。
【0047】
本実施形態では、排紙トレイ3上(第2積載手段上)の原稿が無くなったことに基づいて、原稿トレイ2は給送可能な第1状態から手前側に傾斜した第2状態になる形態を例示した。しかしながら、ユーザーが原稿Dを取出すとき、原稿トレイ2は奥側に傾斜していてもよい。この場合、排紙トレイ3上の原稿が無くなったことに基づいて、原稿トレイ2は奥側に傾斜した状態から手前側に傾斜した状態となる。
【符号の説明】
【0048】
1 ADF
2 原稿トレイ
2a 原稿積載面
2b 原稿突き当て部
3 排紙トレイ
4 給送ローラ
5 給紙ローラ
6 分離ローラ
7、8、9 搬送ローラ
10 排紙ローラ
11 回動軸
12 搬送部
13 モータ
14 表面読取ユニット
15 裏面読取ユニット
16 原稿検知センサ
17 排紙原稿検知センサ
18 排紙センサ
20 リーダ
101 画像形成装置
103 画像読取装置