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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/06 20060101AFI20240415BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B66F9/06 P
B66F9/24 L
B66F9/24 H
B66F9/24 S
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020099584
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193048
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小川 達也
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-124297(JP,A)
【文献】実開平06-061898(JP,U)
【文献】特開2016-055983(JP,A)
【文献】特開2002-220048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/06
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、該走行車体に昇降可能に設けられた作業台と、を備えた自走式の高所作業車であって、
前記走行車体には、
左右個別に駆動される一対の駆動輪と、
走行方向の段差を検知する第1センサと、
走行方向の前方の障害物を検知する第2センサと、
前記走行車体の角度を検出し、所定角度を超えたときを検知する傾斜センサと、を備え、
前記第1センサ、前記第2センサ、及び前記傾斜センサうち少なくとも1つが検知されたときに、前記走行車体の走行及び前記作業台の上昇動作を停止するように制御され
前記第1センサが検知した場合、前記段差が検知された方向と反対方向への走行と、前記作業台の下降動作のみを可能とし、
前記第2センサが検知した場合、前記障害物が検知された方向と反対方向への走行と、前記作業台の下降動作のみを可能とすることを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
前記作業台には上方の障害物を検知する第3センサが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記駆動輪は、走行方向の中央で左右に設けられ、
前記走行車体の四隅には従動輪が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場で広く使用されている高所作業車として、例えば特許文献1に示すように、走行車体と、該走行車体に昇降可能に設けられた作業台と、を備えた自走式の高所作業車が知られている。
このような高所作業車では、作業台の大きさ、昇降高さ、積載荷重や走行方式等により選定されている。走行方式は、クローラー式とホイール式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-226528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の高所作業車では、以下のような問題があった。
すなわち、高所作業車のいずれの走行方式においても方向転換や切り返し等といった機動性があまり良くないため移動時間にロスが生じ、作業効率が低下することになっていた。
また、作業台を上昇させた状態で走行することは、一般的には禁止している場合が多く、作業台を下限位置まで下降させてから走行するように制御している。この場合には、移動する度に作業台の昇降動作を行うこととなることから、作業効率が低下するという問題があり、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、方向転換を簡単に行うことができるうえ、移動時間の短縮を図ることで作業効率を向上させることでができる高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る高所作業車は、走行車体と、該走行車体に昇降可能に設けられた作業台と、を備えた自走式の高所作業車であって、前記走行車体には、左右個別に駆動される一対の駆動輪と、走行方向の段差を検知する第1センサと、走行方向の前方の障害物を検知する第2センサと、前記走行車体の角度を検出し、所定角度を超えたときを検知する傾斜センサと、を備え、前記第1センサ、前記第2センサ、及び前記傾斜センサうち少なくとも1つが検知されたときに、前記走行車体の走行及び前記作業台の上昇動作を停止するように制御され、前記第1センサが検知した場合、前記段差が検知された方向と反対方向への走行と、前記作業台の下降動作のみを可能とし、前記第2センサが検知した場合、前記障害物が検知された方向と反対方向への走行と、前記作業台の下降動作のみを可能とすることを特徴としている。
【0007】
本発明では、第1センサ、第2センサ、及び傾斜センサによって走行車体の走行方向の前方の段差や障害物、走行車体の傾斜を検知することができ、これらのセンサのうち少なくとも1つが検知されたときに、走行車体の走行及び作業台の上昇動作を停止することができる。そして、高所作業車の移動の際に、従来では作業台を下降させた状態で走行させていたが、複数のセンサによって走行状態を確認でき、走行前の事前予測を行うことが可能となる。そのため、作業台を上昇させた状態のまま走行することができ、高所作業車の移動に生じる昇降時間を短縮でき、作業効率を高めることができる。
また、本発明では、個別に駆動される一対の駆動輪が設けられているので、機動性が高く、方向転換を簡単に行うことができる。すなわち、第1センサ、第2センサ、及び傾斜センサの少なくとも1つが検知した場合には、例えば一旦停止させ、方向転換して段差、障害物、傾斜部を避けるようにして移動することが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る高所作業車は、前記作業台には上方の障害物を検知する第3センサが設けられていることを特徴としてもよい。
【0009】
この場合には、第3センサによって作業台の上方の天井や梁などの障害物までの距離を検知することで、障害物に対して作業員や作業台が干渉することを防止することができる。そのため、作業台を上昇させた状態のままで高所作業車を移動する際の安全性を高めることができる。
【0010】
また、本発明に係る高所作業車は、前記駆動輪は、走行方向の中央で左右に設けられ、 前記走行車体の四隅には従動輪が設けられていることを特徴としてもよい。
【0011】
この場合には、作業台を上昇させたままでの走行時に作用する走行車体の傾きを抑えて転倒を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高所作業車によれば、方向転換を簡単に行うことができるうえ、移動時間の短縮を図ることで作業効率を向上させることでができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による高所作業車の構成を示す斜視図であって、作業台を下降させた状態の図である。
図2図1に示す高所作業車において、作業台を上昇させた状態を示す斜視図である。
図3図2に示す高所作業車の側面図である。
図4】走行車体を下面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態による高所作業車について、図面に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態による高所作業車1は、図1乃至図4に示すように、床面や路面などの走行面F上を走行可能に設けられた走行車体2と、走行車体2に昇降可能に設けられた作業台3と、を備え、自走式で高所で作業する際に使用されている。
【0016】
走行車体2は、上方から見た平面視で略矩形状の箱形状に形成され、作業台3を昇降可能に支持している。すなわち、走行方向Xにおいて一方側に位置する前面2A、他方側に位置する後面2B、及び側面2C、2Cを有している。前面2Aと後面2Bは上方から見てわずかに中央外側に凸となる凸曲面となっている。
【0017】
走行車体2には、左右個別に駆動される一対の駆動輪21と、走行車体2の下面2aの四隅に設けられる従動輪22と、走行方向Xの前進の段差を検知する段差検知センサ23(第1センサ)と、走行方向Xの前方X1の障害物を検知する障害物検知センサ24(第2センサ)と、走行車体2の傾きを検知する傾斜センサ25と、を備えている。
【0018】
一対の駆動輪21、21は、ホイール式の車輪であり、走行車体2の下面2aに設けられて走行方向Xの中央で左右に配置されている。走行車体2は、駆動輪21のそれぞれの回転方向と回転速度を可変させることが可能であり、前進、後進はもちろん、カーブ走行、その場でのピポットターンが可能になっている。つまり、走行車体2は、一対の片方を逆駆動とすることで、車体の中心を回転軸として旋回可能となっている。
【0019】
なお、駆動輪21は、例えば作業台3に設けられる操作盤31の走行レバー(図示省略)を倒した方向に走行し、かつ走行レバーを倒した量に応じて速度調整を行う構成とすることで、直感的な走行操作が可能である。
【0020】
また、走行車体2は、駆動輪21を駆動するための駆動モーター(図示省略)が搭載され、駆動モータはインバータ制御により走り始めや停止の際の速度を緩やかになるように設定され、急発進したり、急停止しないように制御されている。
【0021】
走行車体2には、図4に示す走行制御部4が搭載されている。走行制御部4は、段差検知センサ23、障害物検知センサ24、及び傾斜センサ25に接続され、これらセンサ23、24、25からの検知情報に基づいて駆動輪21や作業台3の昇降のオンオフを制御する。
【0022】
段差検知センサ23は、レーザーセンサが使用され、走行車体2の前面2Aと後面2Bのそれぞれに設けられ、走行方向Xの前方の走行面Fに向けてレーザーが出射される。ここで、図4に示す符号R1は段差検知センサ23による検知領域を示している。高所作業車1の走行時において、段差検知センサ23で走行面Fに所定高さを超える段差を検知した場合には、走行制御部4によって走行を停止し、又は昇降動作を停止する。この場合には、走行方向Xで段差が検出された方向と反対方向への走行と、作業台3の下降動作のみを可能とする。
なお、本実施形態では、側面2C、2Cにも段差検知センサ23が設けられている。側面2Cの段差検知センサ23で段差を検出した場合には、高所作業車1の旋回動作もできないように制御される。
【0023】
障害物検知センサ24は、レーザーセンサが使用され、走行車体2の前面2Aと後面2Bのそれぞれに設けられ、走行方向Xの前方に向けてレーザーが出射される。ここで、図4に示す符号R2は障害物検知センサ24による検知領域を示している。高所作業車1の走行時において、障害物検知センサ24で進行方向に障害物を検知した場合には、走行制御部4によって走行を停止し、又は昇降動作を停止する。この場合には、走行方向Xで障害物が検出された方向と反対方向への走行と、作業台3の下降動作のみを可能とする。なお、障害物検知センサ24の検知範囲については、使用条件等に応じて適宜設定することができる。
【0024】
傾斜センサ25は、走行車体2に設けられ、走行車体2の傾斜角度を検出するものである。走行車体2は、所定の傾斜角度を超えた検出値となって高所作業車1が傾いた際に、走行車体2の走行及び作業台3の上昇動作を停止し、作業台3の下降動作のみ駆動するように走行制御部4によって制御される。
【0025】
作業台3は、走行車体2に設けられている昇降機構26の伸縮動作によって上下方向に昇降可能となっている。図1は作業台3が最下位置に下降した状態、図2は作業台3が適宜な高さに上昇した状態を示している。昇降機構26は、トラス状に形成された伸縮支持部26Aと、伸縮ジャッキ部26Bと、を有している。
作業台3は、昇降機構26の上部に固定され人や資材を載荷可能な台本体32と、台本体32の周囲を全周にわたって囲うように設けられた手摺33と、を有している。
【0026】
手摺33の上段手摺33Aには、上方の天井や梁等の障害物を検知する上向き障害物検知センサ34(第3センサ)が複数設けられている。上向き障害物検知センサ34は、レーザー距離計が使用され、鉛直方向の上向きにレーザーが出射される。上向き障害物検知センサ34は、図4に示す走行制御部4に接続されている。高所作業車1の走行時あるいは作業台3の上昇時において、上向き障害物検知センサ34で検知した障害物との間の距離の検出値が設定値(例えば1.0m等)よりも小さくなった場合には、走行制御部4によって走行を停止し、又は上昇動作を停止する。この場合には、作業台3の下降動作のみを可能とする。
【0027】
次に、上述した高所作業車1の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、図1乃至図4に示すように、段差検知センサ23、障害物検知センサ24、及び傾斜センサ25によって走行車体2の走行方向Xの前方の段差や障害物、走行車体2の傾斜を検知することができ、これらのセンサ23、24、25のうち少なくとも1つが検知されたときに、走行車体2の走行及び作業台3の上昇動作を停止することができる。
【0028】
そして、高所作業車1の移動の際に、従来では作業台を下降させた状態で走行させていたが、複数のセンサ23、24、25によって走行状態を確認でき、走行前の事前予測を行うことが可能となる。そのため、作業台3を上昇させた状態のまま走行することができ、高所作業車1の移動に生じる昇降時間を短縮でき、作業効率を高めることができる。
【0029】
また、本実施形態では、個別に駆動される一対の駆動輪21、21が設けられているので、機動性が高く、方向転換を簡単に行うことができる。すなわち、段差検知センサ23、障害物検知センサ24、及び傾斜センサ25のうち少なくとも1つが検知した場合には、例えば一旦停止させ、方向転換して段差、障害物、傾斜部を避けるようにして移動することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態では、上向き障害物検知センサ34によって作業台3の上方の天井や梁などの障害物までの距離を検知することで、障害物に対して作業員や作業台3が干渉することを防止することができる。そのため、作業台3を上昇させた状態のままで高所作業車1を移動する際の安全性を高めることができる。
【0031】
さらに、本実施形態では、駆動輪21が走行方向Xの中央で左右に設けられ、走行車体2の四隅には従動輪22が設けられていることから、作業台3を上昇させたままでの走行時に作用する走行車体2の傾きを抑えて転倒を防止することができる。
【0032】
上述のように本実施形態による高所作業車1では、方向転換を簡単に行うことができるうえ、移動時間の短縮を図ることで作業効率を向上させることでができる。
【0033】
以上、本発明による高所作業車の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0034】
例えば、本実施形態で対象としている高所作業車1は、作業台3に上方の障害物を検知する上向き障害物検知センサ34(第3センサ)を設けた構成となっているが、この第3センサは省略することも可能である。
【0035】
また、各センサ(段差検知センサ23、障害物検知センサ24、傾斜センサ25、上向き障害物検知センサ34)の取り付け位置、数量などの構成については適宜設定することができる。
例えば、本実施形態では、段差検知センサ23が走行車体2の側面2Cにも配置されているが、側面2Cの段差検知センサ23を省略してもよい。
【0036】
また、本実施形態では、走行車体2の下面2aの四隅に従動輪22を設けた構成としているが、従動輪22を省略して駆動輪21のみとしてもよい。
【0037】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 高所作業車
2 走行車体
2a 下面
2A 前面
2B 後面
3 作業台
4 走行制御部
21 駆動輪
22 従動輪
23 段差検知センサ(第1センサ)
24 障害物検知センサ(第2センサ)
25 傾斜センサ
26 昇降機構
33 手摺
34 上向き障害物検知センサ(第3センサ)
X 走行方向
図1
図2
図3
図4