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特許7471927障害物検出装置、車両、障害物検出システム、及び障害物検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】障害物検出装置、車両、障害物検出システム、及び障害物検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/931 20200101AFI20240415BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240415BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G01S17/931
G08G1/16 C
G01C3/06 140
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020100977
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021196200
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】増子 薫
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0025923(US,A1)
【文献】特開平07-084045(JP,A)
【文献】特開2020-067382(JP,A)
【文献】特開平08-261753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
G01C 3/06- 3/08
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方にある複数の測定ポイントまでの距離に基づいて障害物を検出する障害物検出装置であって、
前記複数の測定ポイントまでの距離を測定する距離測定部と、
前記複数の測定ポイントの数を削減して、処理するデータ量を減らす測定ポイント決定部と、
を有し、
前記測定ポイント決定部は、前記処理するデータ量を減らすときに、前記複数の測定ポイントのうち、前記車両の進行方向に対応する測定ポイントの数を維持したまま、前記進行方向と交差する方向に対応する測定ポイントの数を削減する、障害物検出装置。
【請求項2】
前記測定ポイント決定部は、前記車両の走行速度に応じて前記複数の測定ポイントの数を削減する、請求項に記載の障害物検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の障害物検出装置を搭載した車両。
【請求項4】
車両の前方にある複数の測定ポイントまでの距離に基づいて障害物を検出する障害物検出システムであって、
前記複数の測定ポイントまでの距離を測定する距離測定部と、
前記複数の測定ポイントの数を削減して、処理するデータ量を減らす測定ポイント決定部と、
を有し、
前記測定ポイント決定部は、前記処理するデータ量を減らすときに、前記複数の測定ポイントのうち、前記車両の進行方向に対応する測定ポイントの数を維持したまま、前記進行方向と交差する方向に対応する測定ポイントの数を削減する、障害物検出システム。
【請求項5】
車両の前方にある複数の測定ポイントまでの距離に基づいて障害物を検出する障害物検出方法であって、
距離測定部が、前記複数の測定ポイントまでの距離を測定する処理と、
測定ポイント決定部が、前記複数の測定ポイントの数を削減して、処理するデータ量を減らす処理と、
を含み、
前記測定ポイント決定部は、前記処理するデータ量を減らすときに、前記複数の測定ポイントのうち、前記車両の進行方向に対応する測定ポイントの数を維持したまま、前記進行方向と交差する方向に対応する測定ポイントの数を削減する、障害物検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物検出装置、車両、障害物検出システム、及び障害物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の周辺の三次元距離を測定し、その測定データに基づいて、車両の周辺にある物体や、路面上の溝、穴等の障害物を検出する障害物検出装置がある。
【0003】
例えば、車両の前方を撮影する赤外線カメラで撮影した画像と、車両の前方を撮影するステレオカメラで撮影した画像とに基づいて、走路上の障害物を特定する車両用障害物検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-020543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような障害物検出装置を自動運転等に適用する場合、走行中に応答性よく障害物を検出するために、障害物を検出する処理速度(例えばフレームレート等)を高速化したいという要求がある。
【0006】
障害物を検出する処理速度を高速化するためには、例えば、測定対象となる複数の測定ポイントの数を削減して、処理するデータ量を減らす方法が考えられる。しかし、この場合、障害物の検出精度、特に、路面上の障害物(例えば、溝や穴等)の検出精度が劣化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明の一実施形態は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、車両の前方にある障害物を検出する障害物検出装置において、路面上の障害物の検出精度の劣化を抑制しつつ、障害物を検出する処理速度を高速化する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る障害物検出装置は、車両の前方にある複数の測定ポイントまでの距離に基づいて障害物を検出する障害物検出装置であって、前記複数の測定ポイントまでの距離を測定する距離測定部と、前記複数の測定ポイントの数を削減して、処理するデータ量を減らす測定ポイント決定部とを有し、前記測定ポイント決定部は、前記処理するデータ量を減らすときに、前記複数の測定ポイントのうち、前記進行方向に対応する測定ポイントの数を維持したまま、前記車両の進行方向と交差する方向に対応する測定ポイントの数を削減する。

【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、車両の前方にある障害物を検出する障害物検出装置において、路面上の障害物の検出精度の劣化を抑制しつつ、障害物を検出する処理速度を高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る障害物検出システムのシステム構成の例を示す図である。
図2】一実施形態に係る車両の進行方向の分解能について説明するための図である。
図3】一実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る障害物検出装置の機能構成の例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る複数の測定ポイントのイメージを示す図である。
図6】第2の実施形態に係る複数の測定ポイントのイメージを示す図である。
図7】第3の実施形態に係る障害物検出装置の機能構成の例を示す図である。
図8】第3の実施形態に係る障害物検出装置の処理の例を示すフローチャート(1)である。
図9】第3の実施形態に係る複数の測定ポイントのイメージを示す図である。
図10】第3の実施形態に係る障害物検出装置の処理の例を示すフローチャート(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0012】
<システム構成>
図1は、一実施形態に係る障害物検出システムのシステム構成の例を示す図である。障害物検出システム1は、例えば、自動車等の車両10の前方にある障害物を検出するシステムであり、車両10に搭載された障害物検出装置100、及び距離センサ110等を含む。
【0013】
距離センサ110は、車両10の前方にある複数の測定ポイントまでの距離を測定するために用いられる、例えば、LIDAR(Light Detection and Ranging、又はLaser Imaging Detection and Ranging)、ステレオカメラ、ミリ波レーダー等のセンサである。距離センサ110は、例えば、図1に示すように、車両10の進行方向に向けて設けられ、前方の路面11を含む所定の範囲112内の物体までの距離を測定できるように測定軸(測定方向)111が設定されている。
【0014】
なお、本実施形態では、距離センサ110は、車両10の前方の所定の範囲112内の複数の測定ポイントまでの距離を測定可能なセンサであれば、任意の方式のセンサであって良い。
【0015】
障害物検出装置100は、車両10に搭載され、コンピュータの構成を有するECU(Electric Control Unit)、又は情報処理装置であり、距離センサ110を制御して、車両10の前方にある複数の測定ポイントまでの距離(3次元距離)を測定する。また、障害物検出装置100は、複数の測定ポイントまでの距離の測定結果に基づいて、前方にある障害物(例えば、他の車両、路面11上の溝、穴、落下物等)を検出する。
【0016】
なお、障害物検出装置100による障害物の検出方法は、車両10の前方にある複数の測定ポイントまでの距離の測定結果に基づいて、障害物を検出するものであれば任意の検出方法であって良い。
【0017】
このような障害物検出システム1を自動運転等に適用する場合、走行中に迅速に障害物を検出するために、障害物を検出する処理速度(例えば、フレームレート等)を高速化したいという要求がある。
【0018】
障害物を検出する処理速度を高速化するための方法として、測定対象となる複数の測定ポイントの数を削減(例えば間引き)して、処理するデータ量を減らす方法が考えられる。しかし、この場合、障害物の検出精度、特に、路面11上の障害物(例えば、溝、穴、落下物等)の検出精度が劣化してしまうという問題がある。
【0019】
図2は、一実施形態に係る車両の進行方向の分解能について説明するための図である。
路面11上の車両10の進行方向に対応する複数の測定ポイント201の分解能は、例えば、図2(A)に示すように、隣接する測定ポイント201間の距離d1で表され、車両10からの距離が離れるほど、距離d1が長くなる(高さh×tanθ)。
【0020】
従って、例えば、図2(B)に示すように、路面11上の車両10の進行方向に対応する複数の測定ポイント201を間引きして、測定ポイントの数を削減してしまうと、測定ポイント201間の距離d2が長くなり過ぎるという問題がある。例えば図2(B)の例では、測定ポイント201間にある陥没や穴等の障害物202を検出することができなくなってしまう。
【0021】
なお、単純な間引きではなく、分解能を維持するダウンサンプリング手法(例えば、VoxelGridFilter)も知られているが、このような方法では、間引きよりも処理負荷が高いため、障害物を検出する処理速度を高速化する効果は期待できない。
【0022】
そこで、本実施形態に係る障害物検出装置100は、車両10の前方にある複数の測定ポイントのうち、路面11上の車両10の進行方向に対応する測定ポイントの数を維持したまま、他の測定ポイントの数を削減する機能を有している。
【0023】
一例として、障害物検出装置100は、車両10の前方にある複数の測定ポイントのうち、車両10の進行方向に対応する測定ポイントの数を維持したまま、車両10の進行方向と交差する方向に対応する測定ポイントの数を削減する。
【0024】
このような機能により、本実施形態に係る障害物検出装置100は、路面11上の障害物の検出精度の劣化を抑制しつつ、障害物を検出する処理速度を高速化することができる。
【0025】
<ハードウェア構成>
障害物検出装置100は、例えば、図3に示すようなコンピュータ300のハードウェア構成を有している。なお、障害物検出装置100は、図3に示すコンピュータ300の構成に加えて、例えば、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等をさらに有していても良い。
【0026】
図3は、一実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成の例を示す図である。コンピュータ300は、例えば、CPU(Central Processing Unit)301、メモリ302、ストレージデバイス303、通信I/F(Interface)304、外部接続I/F305、入力装置306、出力装置307、及びバス308等を有している。
【0027】
CPU301は、例えば、ストレージデバイス303、メモリ302等に記憶したプログラムを実行することにより、コンピュータ300の各機能を実行する演算装置(プロセッサ)である。メモリ302には、例えば、CPU301のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリであるRAM(Random Access Memory)や、コンピュータ300の起動用のプログラム等を記憶する不揮発性のメモリであるROM(Read Only Memory)等が含まれる。ストレージデバイス303は、例えば、OS(Operating System)、アプリケーションプログラム、及び各種のデータ等を記憶する大容量の記憶装置であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等によって実現される。
【0028】
通信I/F304は、外部装置と通信するためのインタフェースである。通信I/F304は、例えば、車載ネットワーク等に接続され、車両10に搭載される他のECU、センサ、情報処理装置等と通信を行う。外部接続I/F305は、コンピュータ300に、例えば、距離センサ110等の外部装置を接続するためのインタフェースである。なお、コンピュータ300は、通信I/F304を介して距離センサ110と通信を行うものであっても良い。
【0029】
入力装置306は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、タッチパネル、センサ、操作ボタン等)である。出力装置307は、外部への出力を行う出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカ、表示ランプ等)である。なお、入力装置306、及び出力装置307は、一体化された表示入力装置(例えば、タッチパネルディスプレイ等)であっても良い。バス308は、上記の各構成要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号、及び各種の制御信号等を伝送する。
【0030】
[第1の実施形態]
続いて、第1の実施形態に係る障害物検出装置100の機能構成について説明する。
【0031】
<機能構成>
図4は、第1の実施形態に係る障害物検出装置の機能構成の例を示す図である。障害物検出装置100は、例えば、図3のCPU301で所定のプログラムを実行することにより、距離測定部401、測定ポイント決定部402、及び障害物検出部403等を実現している。
【0032】
距離測定部401は、距離センサ110を用いて、車両10の前方にある複数の測定ポイントまでの距離を測定する。例えば、距離センサ110がLIDARである場合、距離測定部401は、距離センサ110を用いて、複数の測定ポイント(複数の方向)に、順次にレーザー光を照射し、反射光が返ってくるまでの時間に基づいて複数の測定ポイントまでの距離を測定する。また、距離センサ110がカメラ(ステレオカメラ、又は単眼カメラ)である場合、距離測定部401は、カメラ画像に基づいて作成したDepth画像(距離画像)から、複数の測定ポイントまでの距離情報を取得する。
【0033】
測定ポイント決定部402は、距離測定部401が距離を測定する複数の測定ポイントを決定する。なお、測定ポイント決定部402は、複数のポイントを決定する際に、障害物を検出する処理速度を高速化するために、測定対象となる複数の測定ポイントの数を削減して、処理するデータ量を減らす機能を有している。例えば、測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイントのうち、車両10の進行方向に対応する測定ポイントの分解能より、車両10の進行方向と交差する(例えば、直交する)方向の測定ポイントの分解能が低くなるように、複数の測定ポイントを決定する。
【0034】
図5は、第1の実施形態に係る複数の測定ポイントのイメージを示す図である。図5(A)は、図2(A)と同じ図を再掲している。前述したように、路面11上の車両10の進行方向に対応する測定ポイント201の分解能は、隣接する測定ポイント201間の距離d1で表され、車両10からの距離が離れるほど、距離d1が長くなる。従って、路面11上の車両10の進行方向に対応する測定ポイント201の数を削減してしまうと、例えば、図2(B)で説明したように、路面11上の障害物の検出精度が劣化するという問題がある。
【0035】
そこで、測定ポイント決定部402は、例えば、複数の測定ポイントのうち、路面11上の車両10の進行方向に対応する複数の測定ポイント201の数を維持したまま、車両10の進行方向と交差する方向に対応する測定ポイントを削減する。
【0036】
図5(B)は、図5(A)に示した距離センサ110、及び距離センサ110の測定範囲503を上方から見たときのイメージを示している。図5(B)に示すように、車両10の進行方向と交差(例えば直交)する方向に対応する測定ポイント504の分解能は、隣接する測定ポイント504間の距離d3で表される。測定ポイント決定部402は、例えば、車両10の進行方向501に対応する複数の測定ポイント201の数を維持したまま、進行方向501と直交する方向502の複数の測定ポイント504の数を削減する(例えば、間引きする)。これにより、測定ポイント決定部402は、路面11上の障害物の検出精度の劣化を抑制しつつ、距離測定部401が測定する複数の測定ポイントの数を削減することができる。
【0037】
図5(C)は、距離測定部401が、カメラ画像に基づいて作成したDepth画像510を用いて、複数の測定ポイントまでの距離を取得する場合における複数の測定ポイント511の一例のイメージを示している。図5(C)において、Depth画像510の縦方向は車両10の進行方向に対応しており、横方向は車両10の進行方向と交差する方向に対応している。図5(C)の例では、車両10の進行方向に対応する縦方向の測定ポイント511の間の距離Δyより、横方向の測定ポイント511の間の距離Δxの方が長く設定されている。
【0038】
このように、第1の実施形態に係る測定ポイント決定部402は、車両10の進行方向に対応する測定ポイント511の分解能より、進行方向と交差する方向に対応する測定ポイント511の分解能の方が低くなるように、複数の測定ポイント511を決定する。
【0039】
なお、図5(A)~(C)に示した複数の測定ポイント511の数は、説明用の一例であり、実際には、より多くの測定ポイント511(例えば、縦方向に数十~数百ポイント、横方向に数十~数百ポイント)が用いられる。
【0040】
ここで、図4に戻り、障害物検出装置100の機能構成の説明を続ける。
【0041】
障害物検出部403は、距離測定部401が測定した複数の測定ポイント511までの距離に基づいて、車両10の前方にある障害物(例えば、他の車両、路面11上の溝、穴、落下物等)を検出する。なお、本実施形態では、障害物の検出方法は特に限定しないが、例えば、障害物検出部403は、複数の測定ポイント511の三次元座標を算出し、三次元座標に基づいて、路面11上の物体や凹凸等の形状を推定することにより、障害物を検出しても良い。
【0042】
以上、第1の実施形態に係る測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイントのうち、進行方向に対応する測定ポイント201の分解能より、進行方向と交差する方向に対応する測定ポイント504の分解能が低くなるように複数の測定ポイントを決定する。
【0043】
好ましくは、測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイントの数を削減するときに、車両10の進行方向に対応する測定ポイント201の数を維持したまま、進行方向と直交する方向に対応する測定ポイント504の数を削減する。
【0044】
従って、第1の実施形態によれば、車両10の前方にある障害物を検出する障害物検出装置100において、路面11上の障害物の検出精度の劣化を抑制しつつ、障害物を検出する処理速度を高速化することができる。
【0045】
[第2の実施形態]
図5で説明した、第1の実施形態に係る複数の測定ポイント511の決定方法は、距離測定部401が距離を測定する複数の測定ポイントの決定方法の一例である。第2の実施形態では、距離測定部401が距離を測定する複数の測定ポイントの決定方法の別の一例について説明する。
【0046】
なお、第2の実施形態に係る障害物検出装置100の機能構成は、図4に示した第1の実施形態に係る障害物検出装置100の機能構成と同様で良い。ただし、第2の実施形態に係る測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイントのうち、路面11上の測定ポイントの分解能より、路面11上の測定ポイントとは異なる他の測定ポイントの分解能が低くなるように、複数の測定ポイントを決定する。
【0047】
図6は、第2の実施形態に係る複数の測定ポイントのイメージを示す図である。図6(A)において、前述したように、路面11上の車両10の進行方向に対応する測定ポイント201の分解能は、隣接する測定ポイント201間の距離d1で表され、車両10からの距離が離れるほど、距離d1が長くなる。従って、路面11上の車両10の進行方向に対応する測定ポイント201の数を削減してしまうと、例えば、図2(B)で説明したように、路面11上の障害物の検出精度が劣化するという問題がある。
【0048】
そこで、第2の実施形態に係る測定ポイント決定部402は、例えば、複数の測定ポイントのうち、路面11上の測定ポイント201の数を維持したまま、路面11上の測定ポイント201とは異なる他の測定ポイント601の数を削減する。
【0049】
図6(B)は、距離測定部401が、カメラ画像に基づいて作成したDepth画像610等から、複数の測定ポイントまでの距離を取得する場合の複数の測定ポイント611、612の一例のイメージを示している。図6(B)において、Depth画像610の縦方向が車両10の進行方向に対応しており、横方向が車両10の進行方向と交差する方向に対応しているものとする。また、Depth画像610において、一点鎖線613より下の領域614内の複数の測定ポイント612が、図6(A)の路面11上の測定ポイント201に対応しているものとする。さらに、Depth画像610において、一点鎖線613より上の領域615内の複数の測定ポイント612が、図6(A)の路面11上の測定ポイント201とは異なる他の測定ポイント601に対応しているものとする。
【0050】
なお、一点鎖線613の位置は、例えば、車両10を製造したとき、距離センサ110を取り付けたとき、又はキャリブレーション操作が行われたとき等に予め設定されているものとする。
【0051】
第2の実施形態に係る測定ポイント決定部402は、例えば、図6(B)に示すように、一点鎖線613より下の領域614において、複数の測定ポイント611を、横方向にΔx1、縦方向にΔy1の間隔で配置する。一方、測定ポイント決定部402は、一点鎖線613より上の領域615において、例えば、横方向の複数の測定ポイント612が一行おきとなるように間引きして、横方向にΔx1、縦方向にΔy2(Δy2>Δy1)の間隔で複数の測定ポイント612を配置する。
【0052】
これにより、第2の実施形態に係る測定ポイント決定部402は、路面11上の測定ポイント611の数を維持したまま、他の測定ポイント612の数を削減することができる。
【0053】
なお、図6(B)に示した複数の測定ポイントの配置方法は一例である。測定ポイント決定部402は、一点鎖線613より上の領域615において、縦方向の複数の測定ポイント612が一列おきとなるように間引きしても良い。これにより、例えば、図6(C)に示すように、横方向にΔx2(Δx2>Δx1)、縦方向にΔy2(Δy2>Δy1)の間隔となるように、複数の測定ポイント612を決定しても良い。
【0054】
以上、第2の実施形態に係る測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイントのうち、路面11上の測定ポイント611の分解能より、路面11上の測定ポイントとは異なる他の測定ポイント612の分解能が低くなるように、複数の測定ポイントを決定する。
【0055】
好ましくは、測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイントの数を削減するときに、複数の測定ポイントのうち、路面11上の測定ポイント611の数を維持したまま、他の測定ポイント612の数を削減する。
【0056】
従って、第2の実施形態においても、車両10の前方にある障害物を検出する障害物検出装置100において、路面11上の障害物の検出精度の劣化を抑制しつつ、障害物を検出する処理速度を高速化することができる。
【0057】
[第3の実施形態]
障害物検出装置100を車両10の自動運転に適用する場合、車両10の走行速度が速くなるほど、障害物を検出する処理速度(例えば、フレームレート等)の高速化が求められる。そこで、第3の実施形態では、測定ポイント決定部402が、車両10の走行速度に応じて複数の測定ポイントを決定する場合の処理の例について説明する。
【0058】
<機能構成>
図7は、第3の実施形態に係る障害物検出装置100の機能構成の例を示す図である。図7に示すように、第3の実施形態に係る障害物検出装置100は、図4に示した第1の実施形態に係る障害物検出装置100の機能構成に加えて、走行速度取得部701を有している。なお、第3の実施形態に係る障害物検出システム1のシステム構成、及び障害物検出装置100のハードウェア構成は、第1、2の実施形態と同様で良い。
【0059】
走行速度取得部701は、例えば、図3のCPU301で実行されるプログラムによって実現され、外部接続I/F305を介して、車両10が備える他のECU(例えば、車両10の走行を制御するECU等)から、車両10の走行速度を取得する。
【0060】
また、第3の実施形態に係る測定ポイント決定部402は、走行速度取得部701が取得した車両10の走行速度に応じて、距離測定部401が距離を測定する複数の測定ポイントを決定する。
【0061】
なお、第3の実施形態に係る障害物検出装置100の他の機能構成(距離測定部401、障害物検出部403)の機能は、第1、2の実施形態と同様で良い。
【0062】
<処理の流れ>
続いて、第3の実施形態に係る障害物検出方法の処理の流れについて説明する。
【0063】
(障害物検出装置の処理1)
図8は、第3の実施形態に係る障害物検出装置の処理の例を示すフローチャート(1)である。この処理は、障害物検出装置100が実行する障害物検出処理の一例を示している。障害物検出装置100は、例えば、図8に示す処理を繰り返し実行することにより、車両10の前方にある障害物を検出する。
【0064】
ステップS801において、障害物検出装置100の走行速度取得部701は、車両10の走行を制御するECU等から、車両10の走行速度を取得する。
【0065】
ステップS802において、障害物検出装置100の測定ポイント決定部402は、車両10の走行速度が、所定の速度以上であるか(又は所定の速度を超えているか)を判断する。なお、所定の速度は、例えば、障害物検出処理の処理速度を高速化する速度(例えば、30km/h~80km/h程度)が予め設定されているものとする。
【0066】
車両10の走行速度が所定の速度以上である場合、測定ポイント決定部402は、処理をステップS803に移行させる。一方、走行速度が所定の速度未満である場合、測定ポイント決定部402は、処理をステップS804に移行させる。
【0067】
ステップS803に移行すると、測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイントの数を削減する。例えば、デフォルト状態において、距離測定部401が距離を測定する複数の測定ポイント901は、図9(A)に示すように、Depth画像900の横方向に間隔D、縦方向に距離Dで等間隔に配置されているものとする。
【0068】
この状態から、複数の測定ポイント901の数を削減する場合、測定ポイント決定部402は、例えば、第1の実施形態を適用して、図9(B)に示すように、複数の測定ポイント901の数を削減しても良い。図9(B)の例では、測定ポイント決定部402は、図9(A)の状態から、測定ポイント901の列を一列おきに間引きして、横方向の測定ポイント間の距離Dを2倍の2Dにしている。このように、測定ポイント決定部402は、車両10の進行方向(縦方向)に対応する測定ポイント901の数を維持したまま、車両10の進行方向と直交する方向(横方向)の測定ポイント901の数を削減しても良い。
【0069】
或いは、測定ポイント決定部402は、例えば、第2の実施形態を適用して、例えば、図9(C)に示すように、複数の測定ポイント901の数を削減しても良い。図9(C)の例では、測定ポイント決定部402は、図9(A)の状態から、路面11上に対応する領域902とは異なる他の領域903の測定ポイント901bを、一行おきに間引きして、縦方向の測定ポイント901b間の距離を2倍の2Dに変更している。このように、測定ポイント決定部402は、路面11上に対応する領域902の測定ポイント901aの数を維持したまま、他の測定ポイント901bの数を削減しても良い。
【0070】
なお、図8のステップS803に移行したときに、例えば、図9(B)、(C)に示すように、測定ポイント901の数を既に削減済みである場合、測定ポイント決定部402は、現在の状態(削減済みの状態)を維持する。
【0071】
図8のステップS802からステップS804に移行すると、測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイント901の数の削減を中止する。例えば、ステップS804に移行したときに、図9(B)、(C)に示すように、測定ポイント901の数を既に削減済みである場合、測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイント901を、図9(A)に示すようなデフォルトの状態に戻す。一方、ステップS804に移行したときに、図9(A)に示すように、複数の測定ポイント901の数がデフォルトの状態である場合、測定ポイント決定部402は、現在の状態(デフォルトの状態)を維持する。
【0072】
ステップS805において、障害物検出装置100の距離測定部401は、ステップS801~S804で決定された複数の測定ポイント901までの距離を測定する。
【0073】
ステップS806において、障害物検出装置100の障害物検出部403は、距離測定部401が測定した複数の測定ポイント901までの距離に基づいて、車両10の前方にある障害物を検出する。障害物検出部403が検出した障害物の情報は、例えば、車両10が備えるECU(例えば、自動運転制御用のECU等)や、情報処理装置等に出力される。
【0074】
上記の処理により、障害物検出装置100は、車両10の走行速度が所定の速度以上になったときに、路面11上の障害物の検出精度の劣化を抑制しつつ、障害物を検出する処理速度を高速化することができる。
【0075】
なお、図8に示した障害物検出装置の処理は一例である。例えば、障害物検出装置100は、3つ以上の速度範囲に応じて、複数の測定ポイント901の数の削減方法を切り替えても良い。また、障害物検出装置100は、複数の測定ポイント901の数を削減する際に、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせて適用しても良い。
【0076】
(障害物検出装置の処理2)
図10は、第3の実施形態に係る障害物検出装置の処理の例を示すフローチャート(2)である。この処理は、障害物検出装置100が実行する障害物検出処理の別の一例を示している。障害物検出装置100は、例えば、図10に示す処理を繰り返し実行することにより、車両10の前方にある障害物を検出する。なお、ここでは、図8で説明した処理と同様の処理内容に対する詳細な説明は省略する。
【0077】
ステップS1001において、障害物検出装置100の走行速度取得部701は、車両10の走行を制御するECU等から、車両10の走行速度を取得する。
【0078】
ステップS1002において、障害物検出装置100の測定ポイント決定部402は、車両10の走行速度が、予め設定された第1の速度(例えば、20~40km/h程度)以上であるかを判断する。
【0079】
車両10の走行速度が第1の速度未満である場合、測定ポイント決定部402は、処理をステップS1003に移行させる。一方、走行速度が第1の速度以上である場合、測定ポイント決定部402は、処理をステップS1004に移行させる。
【0080】
ステップS1003に移行すると、測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイント901の数の削減を中止する。例えば、ステップS1003に移行したときに、測定ポイント901の数を既に削減済みである場合、測定ポイント決定部402は、複数の測定ポイント901を、図9(A)に示すようなデフォルトの状態に戻す。一方、ステップS1003に移行したときに、図9(A)に示すように、複数の測定ポイント901の数がデフォルトの状態である場合、測定ポイント決定部402は、現在の状態(デフォルトの状態)を維持する。
【0081】
一方、ステップS1002からステップS1004に移行すると、測定ポイント決定部402は、車両10の走行速度が、予め設定された第2の速度(例えば、60~80km/h程度)以上であるかを判断する。
【0082】
車両10の走行速度が第2の速度未満である場合、測定ポイント決定部402は、処理をステップS1005に移行させる。一方、車両10の走行速度が第2の速度以上である場合、処理をステップS1006に移行させる。
【0083】
ステップS1005に移行すると、測定ポイント決定部402は、例えば、図9(C)で説明したように、路面11上の測定ポイント901aとは異なる他の測定ポイント901bの数を削減する。なお、ステップS1005に移行したときに、例えば、図9(C)に示すように、測定ポイント901の数を既に削減済みである場合、測定ポイント決定部402は、現在の状態を維持する。
【0084】
一方、ステップS1004からステップS1006に移行すると、測定ポイント決定部402は、例えば、図9(D)に示すように、複数の測定ポイント901の数を削減する。
【0085】
図9(D)の例では、測定ポイント決定部402は、図9(A)の状態から、路面11上の測定ポイント901aとは異なる他の測定ポイント901bの行を、一行おきに間引きして、縦方向の測定ポイント901b間の距離を2倍の2Dに変更している。さらに、測定ポイント決定部402は、測定ポイント901a、及び測定ポイント901bの列を一列おきに間引きして、横方向の測定ポイント間の距離Dを2倍の2Dに変更している。
【0086】
このように、測定ポイント決定部402は、第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせて、複数の測定ポイント901の数を削減しても良い。なお、図9(D)に示すDepth画像900においても、路面11上の車両10の進行方向に対応する測定ポイント901の分解能より、他の測定ポイント901の分解能が低くなるように、複数の測定ポイント901を決定する。
【0087】
ステップS1007において、障害物検出装置100の距離測定部401は、ステップS1001~S1006で決定された複数の測定ポイント901までの距離を測定する。
【0088】
ステップS1006において、障害物検出装置100の障害物検出部403は、距離測定部401が測定した複数の測定ポイント901までの距離に基づいて、車両10の前方にある障害物を検出する。障害物検出部403が検出した障害物の情報は、例えば、車両10が備えるECU(例えば、自動運転制御用のECU等)や、情報処理装置等に出力される。
【0089】
上記の処理により、障害物検出装置100は、路面11上の障害物の検出精度の劣化を抑制しつつ、複数の速度範囲に応じて、複数の測定ポイント901の数の削減方法を切り替えることができる。
【0090】
以上、本発明の各実施形態によれば、車両10の前方にある障害物を検出する障害物検出装置100において、路面11上の障害物の検出精度の劣化を抑制しつつ、障害物を検出する処理速度を高速化することができる。
【0091】
なお、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、様々な変形や変更が可能である。
【0092】
例えば、図4に示す障害物検出装置100の機能構成は一例であり、距離測定部401、及び測定ポイント決定部402を含む距離測定装置と、障害物検出部403を含む障害物検出装置とに分かれていても良い。また、この場合、障害物検出部403は、自動運転を制御するECU等に含まれていても良い。このように、図4、7に示す障害物検出装置100の各機能構成は、障害物検出システム1に含まれる1つ以上の装置のいずれかに含まれていれば良い。
【符号の説明】
【0093】
1 障害物検出システム
10 車両
11 路面
100 障害物検出装置
110 距離センサ
401 距離測定部
402 測定ポイント決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10