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  • 特許-画像形成方法 図1
  • 特許-画像形成方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240415BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240415BHJP
   G03G 5/05 20060101ALI20240415BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G03G9/097 374
G03G9/08
G03G9/097 375
G03G5/05 104B
G03G5/147 504
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020101374
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021196438
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】椎野 萌
(72)【発明者】
【氏名】亀山 直人
(72)【発明者】
【氏名】時光 亮一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】皆川 浩範
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-141958(JP,A)
【文献】特開2020-034901(JP,A)
【文献】特開2012-014166(JP,A)
【文献】特開2006-178416(JP,A)
【文献】特開平07-036199(JP,A)
【文献】特開平01-255862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/097
G03G 9/08
G03G 5/05
G03G 5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電された該感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、
該トナー像を転写材に転写する転写工程と、
該転写工程の後に該感光体の表面に残留する残留トナーを、クリーニングブレードを用いて除去するクリーニング工程と、
該転写材に転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程と、
を有する画像形成方法であって、
該感光体は、支持体および該支持体上の感光層を有しており、
該感光体の最表面を構成する層には、ポリテトラフルオロエチレン粒子が含有されており、
該ポリテトラフルオロエチレン粒子は、
(i)一次粒子の個数平均粒子径が200nm以上500nm以下であり、
(ii)数平均分子量が20000以上28000以下であり、
(iii)結晶化度が78.0%以上83.0%未満であり、
該トナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子および外添剤を有し、
該トナーの粉体流動性分析において、プロペラ型ブレードの最外縁部の周速を100mm/secで回転させながら、測定容器内のトナー粉体層中に垂直に侵入させ、該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで侵入させたときに得られる、回転トルクと垂直荷重の総和Etが100mJ以上2000mJ以下である、
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子の結晶化度が、80.0%以上83.0%未満である請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記総和Etが200mJ以上1000mJ以下である請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子のSEM像における真円度の平均値が、0.80以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記トナー粒子の平均円形度が0.960以上0.980以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記外添剤として、チタン酸ストロンチウム粒子A及びシリカ粒子Bを含有するトナーであって、
該チタン酸ストロンチウム粒子Aが、直方体状の粒子形状を有し、
該チタン酸ストロンチウム粒子Aの含有量が、トナー粒子100質量部に対して0.3質量部以上3.0質量部以下であり、
該シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒子径が、80nm以上200nm以下であり、
該トナー粒子に対する該チタン酸ストロンチウム粒子Aの固着率が、25%以上70%以下であり、
該トナーを分散させたスクロース溶液に対して遠心分離操作を行った際の、トナー1gあたりの該チタン酸ストロンチウム粒子Aの分離量をYA(mg)とし、トナー1gあたりの該シリカ粒子Bの分離量をYB(mg)としたとき、
YAが、3.00以上18.0以下であり、
YA及びYBが、下記式(1)の関係を満たす請求項1~5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
YA/YB>0.75 (1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法において、静電潜像が形成された電子写真感光体上にトナー像を形成する画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において回転駆動される電子写真感光体としては、一般的に、円筒状のものが用いられる。電子写真感光体の表面(周面)には、帯電やクリーニングなどの電気的外力や機械的外力が加えられるため、これらの外力に対する耐久性(耐摩耗性など)が要求される。この要求に対して、従来から、電子写真感光体の表面層に耐摩耗性の高い樹脂(硬化性樹脂など)を用いるなどの改良技術が用いられてきた。しかし、電子写真感光体の周面の耐摩耗性を高めることによって、クリーニング性能の低下が課題として挙げられるようになった。
特に、耐久後の流動性の低いトナーは電子写真感光体の長手方向に対して横走りしにくいため、長手方向に対して阻止層のムラが生じ、クリーニング部ですりぬける外添剤の量に差が生まれ、ゴースト濃度ムラが発生するという課題がある。この課題に対して、初期のトナー流動性を向上させると、クリーニング部の阻止層へのトナーの突入速度が速くなりすぎてしまい、クリーニング部でのトナーすり抜けが発生してしまう。
そこで上記課題を解決するために、電子写真感光体の表面層の耐摩耗性と潤滑性を向上させる技術として、表面層にフッ素含有微粒子を含有する技術が開示されている。特許文献1では、電子写真感光体の表面層である感光層に電荷輸送性ポリマーとフッ素含有微粒子を含有させる技術が記載されている。また特許文献2では、フッ素含有微粒子を含有した最表面層に現像剤による磁気ブラシを接触させることで効果的に溶け広がらせる技術が記載されている。
しかしながら、上記先行技術の電子写真感光体は、優れた耐摩耗性と潤滑性を示す一方で、感光体表面層に分散したフッ素含有微粒子が部分的に凝集しており、耐久後の流動性の低いトナーのゴースト濃度ムラを抑制するには、さらに耐摩耗性と潤滑性を改善する余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-305773号公報
【文献】特開2012-88398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
初期トナーすり抜けが発生することなく、耐久後にもゴースト濃度ムラが発生せず、安定して高品位な画像を提供するための画像形成方法には、依然として検討の余地がある。
本発明は、上記課題を解決した画像形成方法を提供するものである。具体的には、特定の分子量と結晶化度を有したフッ素含有微粒子を含有した電子写真感光体と、流動性を特定の範囲としたトナーとを用いた画像形成方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電された該感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、
該トナー像を転写材に転写する転写工程と、
該転写工程の後に該感光体の表面に残留する残留トナーを、クリーニングブレードを用いて除去するクリーニング工程と、
該転写材に転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程と、
を有する画像形成方法であって、
該感光体は、支持体および該支持体上の感光層を有しており、
該感光体の最表面を構成する層には、ポリテトラフルオロエチレン粒子が含有されており、
該ポリテトラフルオロエチレン粒子は、
(i)一次粒子の個数平均粒子径が200nm以上500nm以下であり、
(ii)数平均分子量が20000以上28000以下であり、
(iii)結晶化度が78.0%以上83.0%未満であり、
該トナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子および外添剤を有し、
該トナーの粉体流動性分析において、プロペラ型ブレードの最外縁部の周速を100mm/secで回転させながら、測定容器内のトナー粉体層中に垂直に侵入させ、該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで侵入させたときに得られる、回転トルクと垂直荷重の総和Etが100mJ以上2000mJ以下である、
ことを特徴とする画像形成方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、初期トナーすり抜けが発生することなく、耐久後にもゴースト濃度ムラが発生せず、安定して高品位な画像を提供することができる画像形成方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の電子写真感光体を搭載したプロセスカートリッジ、および前記プロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】Etの測定に用いるプロペラ型ブレードの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0009】
本発明の画像形成方法は、
感光体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電された該感光体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
該静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、
該トナー像を転写材に転写する転写工程と、
該転写工程の後に該感光体の表面に残留する残留トナーを、クリーニングブレードを用いて除去するクリーニング工程と、
該転写材に転写された該トナー像を該転写材に定着する定着工程と、
を有する画像形成方法であって、
該感光体は、支持体および該支持体上の感光層を有しており、
該感光体の最表面を構成する層には、ポリテトラフルオロエチレン粒子が含有されており、
該ポリテトラフルオロエチレン粒子は、
(i)一次粒子の個数平均粒子径が200nm以上500nm以下であり、
(ii)数平均分子量が20000以上28000以下であり、
(iii)結晶化度が78.0%以上83.0%未満であり、
該トナーは、結着樹脂を含有するトナー粒子および外添剤を有し、
該トナーの粉体流動性分析において、プロペラ型ブレードの最外縁部の周速を100mm/secで回転させながら、測定容器内のトナー粉体層中に垂直に侵入させ、該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで侵入させたときに得られる、回転トルクと垂直荷重の総和Etが100mJ以上2000mJ以下である、
ことを特徴とする。
【0010】
該範囲に制御することにより、初期トナーすり抜けが発生することなく、耐久後にもゴースト濃度ムラが発生せず、安定して高品位な画像を提供することができる。
【0011】
初期トナーすり抜けが発生することなく、耐久後にもゴースト濃度ムラが発生せず、安定して高品位な画像を提供することができる手法を以下のように考えている。本発明者らは、感光体の最表面を構成する層に含有するポリテトラフルオロエチレン粒子の個数平均粒子径と数平均分子量と結晶化度と、トナーの粉体流動性を制御することに着目した。ポリテトラフルオロエチレン粒子の個数平均粒子径と数平均分子量と結晶化度を該範囲に制御することで感光体の最表面においてのポリテトラフルオロエチレン粒子の分散性が高まり、耐摩耗性と潤滑性がさらに向上し、流動性を該範囲に制御したトナーと組み合わせることで長手方向に対して初期および耐久後であってもクリーニング時の長手方向に対して横走りしやすく、阻止層が均一となり、ゴースト濃度ムラが発生せず、安定して高品位な画像を提供することが可能であると考えられる。
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0013】
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体と導電性支持体の外側に電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に有する。また、導電性支持体と電荷発生層の間に、導電層または下引き層、またはこの両方を設けてもよい。さらに電荷輸送層の外側に表面層を設けてもよい。
【0014】
本発明の電子写真感光体を製造する方法としては、後述する各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、リング塗布などが挙げられる。これらの中でも、効率性及び生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
【0015】
以下、導電性支持体、導電層、下引き層、感光層、表面層(保護層)といった各構成要素について説明する。そして感光層の説明において、(1)積層型感光層と(2)単層型感光層についても説明する。
【0016】
<導電性支持体>
本発明において、電子写真感光体は、導電性支持体を有する。また、導電性支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状であることが好ましい。また、導電性支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
【0017】
導電性支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
【0018】
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
【0019】
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合又は被覆するなどの処理によって、導電性を付与したものが好ましい。
【0020】
<導電層>
本発明において、導電性支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、導電性支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、導電性支持体表面における光の反射を制御することができる。
【0021】
導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0022】
導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0023】
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
【0024】
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0025】
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
【0026】
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
【0027】
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0028】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
【0029】
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などを更に含有してもよい。
【0030】
導電層の平均膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
【0031】
導電層は、上述の各材料及び溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0032】
<下引き層>
本発明において、導電性支持体又は導電層の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
【0033】
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0034】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
【0035】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
【0036】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などを更に含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
【0037】
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0038】
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
【0039】
また、下引き層は、添加剤を更に含有してもよい。
【0040】
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0041】
下引き層は、上述の各材料及び溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0042】
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層を有する。
【0043】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
【0044】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0045】
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
【0046】
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
【0048】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を更に含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【0049】
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【0050】
電荷発生層は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0051】
(1-2)電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有する。
【0052】
電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。これらは、単独で使用しても良く、2種以上混合して使用しても良い。
【0053】
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
【0055】
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
【0056】
電荷輸送層が電子写真感光体の最表面である場合(すなわち、後述する表面層を設けない場合)には、電荷輸送層は、平均一次粒子径が200nm以上500nm以下であるポリテトラフルオロエチレン粒子を含有する。
【0057】
ポリテトラフルオロエチレン粒子の数平均分子量は20000以上28000以下であり、かつ、結晶化度は78%以上83%未満である。ポリテトラフルオロエチレン粒子の数平均分子量は20000以上26000以下がより好ましい。結晶化度は80%以上83%未満であることがより好ましい。また、走査型電子顕微鏡による二次電子像から測定したポリテトラフルオロエチレン粒子の真円度の平均値は、0.80以上であることが好ましい。
【0058】
ポリテトラフルオロエチレン粒子は、単独で使用しても良く、2種以上混合して使用しても良い。
【0059】
本発明のポリテトラフルオロエチレン粒子の平均一次粒子径、数平均分子量、結晶化度、および真円度の測定は、下記の方法で測定し、算出することができる。
【0060】
(平均一次粒子径、平均真円度の測定方法)
真円度は、走査型電子顕微鏡による二次電子像から測定する。以下に具体的に説明する。
【0061】
PTFE粒子の平均粒子径と平均真円度の測定は電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて行った。PTFE粒子を市販のカーボン導電テープにつけ、圧縮エアで導電テープについていないPTFE粒子を取り除き、白金蒸着を行った。蒸着したPTFE粒子を日立ハイテクノロジー社製FE-SEM(S-4700)を使用して観察した。なお、FE-SEMの測定条件は以下のとおりである。
加速電圧:2kV
WD:5mm
倍率:2万倍
画素数:縦1280画素、横960画素(1画素あたりの大きさ:5nm)
【0062】
得られた画像からImageJ(アメリカ国立衛生研究所(NIH)製のオープンソースソフトウェア)を使用して100個分の粒子のフェレ径を求め、平均値を算出し平均粒子径とした。
【0063】
また同様に面積と周長を求め、式(2)より真円度を求め平均値を算出し平均真円度とした。
真円度=4×π×(面積)÷(周長の2乗) 式(2)
【0064】
(数平均分子量の測定方法)
数平均分子量は、示差走査熱量測定(以下DSCと省略する)による測定結果から算出する。以下に具体的に説明する。
【0065】
DSCとしてMETTLER TOLEDO社製のDSC822eを使用し、窒素雰囲気下で測定を行った。40μlのアルミニウムサンプルパンにポリテトラフルオロエチレン粒子を入れ、25℃から16℃/分の昇温速度で350℃まで昇温した。次に、350℃で10分保持したのち、16℃/分の降温速度で280℃まで降温した。この降温時のピークから結晶化熱ΔHcを求めた。
【0066】
式(3)より結晶化熱ΔHcから数平均分子量Mnを求めた。
Mn=2.1×1010×ΔHc-5.16 式(3)
【0067】
(結晶化度の測定方法)
結晶化度は、広角X線回折法により下記の条件で測定する。
X線回折装置:Bruker AXS製 D8 ADVANCE
X線源:Cu-Kα線(波長 0.15418nm)
出力:40kV、40mA
スリット系:スリットDS、SS=1°、RS=0.2mm
測定範囲:2θ=5°~60°
ステップ間隔:0.02°
スキャン速度:1°/min
【0068】
上記測定条件により得られた広角X線回折プロファイルを結晶ピークと非晶散乱に分離し、それらの面積から結晶化度を、式(4)より算出した。
結晶化度(%)=Ic/(Ic+Ia)×100 式(4)
Ic:5≦2θ≦60の範囲にて検出された結晶ピークの総面積
Ia:5≦2θ≦60の範囲にて検出された非晶散乱の総面積
【0069】
さらに、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0070】
電荷輸送層の平均膜厚は、電解輸送層が電子写真感光体の最表面である場合(すなわち、表面層を設けない場合)は5μm以上50μm以下であることが好ましく、30μm以上45μm以下であることがより好ましい。また、電荷輸送層の上に表面層を設ける場合には、電荷輸送層の平均膜厚は5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0071】
電荷輸送層は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0072】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂及び溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
【0073】
<表面層(保護層)>
本発明において、感光層の上に、表面層を設けてもよい。表面層を設けることで、感光層を覆うので感光層を削れから保護することができ、電子写真感光体の耐久性を向上することができる。
【0074】
表面層は、耐摩耗性向上剤と電荷輸送物質と、樹脂とを含有する。
【0075】
耐摩耗性向上剤としては平均一次粒子径が200nm以上500nm以下であるポリテトラフルオロエチレン粒子があげられる。
【0076】
ポリテトラフルオロエチレン粒子の数平均分子量は20000以上28000以下であり、かつ、結晶化度は78.0%以上83.0%未満である。ポリテトラフルオロエチレン粒子の数平均分子量は20000以上26000以下がより好ましい。結晶化度は80.0%以上83.0%未満であることがより好ましい。また、走査型電子顕微鏡による二次電子像から測定したポリテトラフルオロエチレン粒子の真円度の平均値は、0.80以上であることが好ましい。
【0077】
ポリテトラフルオロエチレン粒子は、単独で使用しても良く、2種以上混合して使用しても良い。
【0078】
本発明のポリテトラフルオロエチレン粒子の平均一次粒子径、数平均分子量、結晶化度、および真円度の測定は、前述の方法で測定し、算出することができる。
【0079】
電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
【0080】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0081】
また、表面層は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、(メタ)アクリル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。電荷輸送能は、電荷輸送性基を有することで得られる能力である。
【0082】
さらに、表面層は、導電性粒子を含有してもよい。導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。
【0083】
表面層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0084】
表面層の平均膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0085】
表面層は、上述の各材料及び溶剤を含有する表面層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0086】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明のプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在である。
【0087】
また、本発明の電子写真装置は、これまで述べてきた電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有する。
【0088】
図1に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0089】
1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、帯電手段3により、正又は負の所定電位に帯電される。尚、図においては、ローラ型帯電部材によるローラ帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。トナー像が転写された転写材7は、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置の外へプリントアウトされる。電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段を別途設けず、上記付着物を現像手段などで除去する、所謂、クリーナーレスシステムを用いてもよい。電子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明のプロセスカートリッジを電子写真装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。
【0090】
本発明の電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機、ファクシミリ、及び、これらの複合機などに用いることができる。
【0091】
[トナー]
本発明のトナーは結着樹脂を含有するトナー粒子および外添剤を有し、
該トナーの粉体流動性分析において、プロペラ型ブレードの最外縁部の周速を100mm/secで回転させながら、測定容器内のトナー粉体層中に垂直に侵入させ、該粉体層の底面から100mmの位置から測定を開始し、底面から10mmの位置まで侵入させたときに得られる、回転トルクと垂直荷重の総和Etが100mJ以上2000mJ以下(好ましくは200mJ以上1000mJ以下)であることが特徴である。
【0092】
上記トナーを本発明で用いられる電子写真感光体を用いた場合、初期状態でもクリーニング部に形成する阻止層への突入速度が抑えられ、耐久後でも阻止層中での十分な横走りが発生することでゴースト濃度ムラが発生せず、安定して高品位な画像を提供することができる画像形成方法を提供することが可能となった。
【0093】
該トナーの流動性は、粉砕機の選択、粉砕条件、分級機の選択、分級条件、球球形化処理装置の選択、球形化処理条件、中心粒径、粒度分布、外添剤選択、外添条件、外添処方により適宜調整可能である。
【0094】
[外添剤(無機微粒子)]
本発明の無機微粒子としては、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸カルシウム粒子、チタン酸マグネシウム粒子などのチタン酸アルカリ土類金属粒子;チタン酸カリウム粒子などのチタン酸アルカリ金属粒子が挙げられる。
【0095】
これらのうち、トナー粒子の流動性を制御しやすいという点から、ペロブスカイト結晶構造を有する、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸カルシウム粒子、及びチタン酸マグネシウム粒子が好ましく、より好ましくはチタン酸ストロンチウム粒子である。
【0096】
前記無機微粒子の個数平均粒子径は、20nm以上300nm以下が好ましく、30nm以上100nm以下がより好ましい。また、それらの粒度分布において、個数頻度のピークトップが上記粒径範囲にあることが好ましい。
【0097】
前記無機微粒子は、表面処理剤により粒子表面を疎水化させることが好ましい。表面処理剤としては、脂肪酸又はその金属塩、ジシリルアミン化合物、ハロゲン化シラン化合物、シリコーンオイル、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが、トナー粒子の流動性を制御しやすいという点で好ましい。
【0098】
トナー粒子と前記無機微粒子との混合は、ヘンシェルミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)等の公知の混合機を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0099】
本発明の無機微粒子の一例としてのチタン酸ストロンチウム粒子は、常圧加熱反応法により得ることができる。このとき、酸化チタン源としてチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品を用い、また酸化ストロンチウム源としては水溶性酸性ストロンチウム化合物を用いることが好ましい。それらの混合液に60℃以上でアルカリ水溶液を添加しながら反応させ、次いで酸処理する方法で製造することができる。
【0100】
(常圧加熱反応法)
酸化チタン源としてはチタン化合物の加水分解物の鉱酸解膠品を用いることができる。好ましくは、硫酸法で得られたSO3含有量が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下のメタチタン酸を、塩酸でpHを0.8~1.5に調整して解膠したものを用いることができる。
【0101】
酸化ストロンチウム源としては、金属の硝酸塩、塩酸塩などを使用することができ、例えば、硝酸ストロンチウム、塩化ストロンチウムを使用することができる。
【0102】
アルカリ水溶液としては、苛性アルカリを使用することができるが、中でも水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0103】
チタン酸ストロンチウム粒子の製造方法において、粒子径に影響を及ぼす因子としては、反応時における酸化チタン源と酸化ストロンチウム源の混合割合、反応初期の酸化チタン源濃度、並びにアルカリ水溶液を添加するときの温度及び添加速度などが挙げられる。目的の粒子径及び粒度分布のものを得るためこれらを適宜調整することができる。なお、反応過程における炭酸塩の生成を防ぐために窒素ガス雰囲気下で反応させる等、炭酸ガスの混入を防ぐことが好ましい。
【0104】
得られるチタン酸ストロンチウム粒子の製造方法において、誘電率に影響を及ぼす因子としては、粒子結晶性を崩す条件/操作が挙げられる。特に低誘電率のチタン酸ストロンチウム粒子を得るためには、反応液の濃度を大きくした状態で結晶成長を乱すエネルギーを与える操作を行うのが好ましい。具体的な方法としては例えば結晶成長工程に窒素によるマイクロバブリングを加える事が挙げられる。また、立方体及び直方体形状の粒子の含有量もこの窒素のマイクロバブリングの流量により制御できる。
【0105】
反応時における酸化チタン源と酸化ストロンチウム源の混合割合は、SrO/TiO2のモル比で、0.9~1.4が好ましく、1.05~1.20がより好ましい。上記範囲であると、未反応の酸化チタンが残存しにくい。反応初期の酸化チタン源の濃度としては、TiO2として、好ましくは0.05~1.3mol/L、より好ましくは0.08~1.0mol/Lである。
【0106】
アルカリ水溶液を添加するときの温度は、60℃~100℃が好ましい。また、アルカリ水溶液の添加速度は、添加速度が遅いほど大きな粒子径のチタン酸ストロンチウム粒子が得られ、添加速度が速いほど小さな粒子径のチタン酸ストロンチウム粒子が得られる。アルカリ水溶液の添加速度は、仕込み原料に対し、好ましくは0.001~1.2当量/h、より好ましくは0.002~1.1当量/hであり、得ようとする粒子径に応じて適宜調整することができる。
【0107】
(酸処理)
常圧加熱反応によって得たチタン酸ストロンチウム粒子をさらに酸処理することが好ましい。常圧加熱反応を行って、チタン酸ストロンチウム粒子を合成する際に、酸化チタン源と酸化ストロンチウム源の混合割合がSrO/TiO2のモル比で、1.0を超える場合、反応終了後に残存した未反応のチタン以外の金属源が空気中の炭酸ガスと反応して、金属炭酸塩などの不純物を生成してしまう場合がある。表面に金属炭酸塩などの不純物が残存すると、疎水性を付与するための有機表面処理をする際に、不純物の影響で有機表面処理剤を均一に被覆することができない。したがって、アルカリ水溶液を添加した後、未反応の金属源を取り除くため酸処理を行うことが好ましい。
【0108】
酸処理では、塩酸を用いてpH2.5~7.0、より好ましくはpH4.5~6.0に調整することが好ましい。酸としては、塩酸の他に硝酸、酢酸等を酸処理に用いることができる。
【0109】
[その他外添剤]
トナーには、前述した無機微粒子のほかに、帯電量や流動性を調整するために必要に応じて他の無機微粉末を含有させることもできる。無機微粉末は、トナー粒子に内添してもよいし外添してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムのような無機微粉末が好ましい。無機微粉末は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
【0110】
用いられる外添剤の比表面積としては、比表面積が10m2/g以上50m2/g以下の無機微粒子が、外添剤の埋め込み抑制の観点で好ましい。
【0111】
また、該外添剤は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下使用されることが好ましい。
【0112】
トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができるが、混合できればよく、特に装置は限定されるものではない。
【0113】
本発明のトナーは、結着樹脂を含むトナー粒子と、上記外添剤としてチタン酸ストロンチウム粒子A及びシリカ粒子Bを含有するトナーであって、
該チタン酸ストロンチウム粒子Aが、直方体状の粒子形状を有し、
該チタン酸ストロンチウム粒子Aの含有量が、トナー粒子100質量部に対して0.3質量部以上3.0質量部以下であり、
該シリカ粒子Bの一次粒子の個数平均粒子径が、80nm以上200nm以下であり、
該トナー粒子に対する該チタン酸ストロンチウム粒子Aの固着率が、25%以上70%以下であり、
該トナーを分散させたスクロース溶液に対して遠心分離操作を行った際の、トナー1gあたりの該チタン酸ストロンチウム粒子Aの分離量をYA(mg)とし、トナー1gあたりの該シリカ粒子Bの分離量をYB(mg)としたとき、
YAが、3.00以上18.0以下であり、
YA及びYBが、下記式(1)の関係を満たすことがクリーニング性向上の観点から好ましい。
YA/YB>0.75 (1)
【0114】
チタン酸ストロンチウム粒子A及びシリカ微粒子Bの固着率並びに外添剤の分離量は、下記の手法により測定することが可能である。
【0115】
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、濃スクロース水溶液を調製する。20mLガラス瓶に前記濃スクロース水溶液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
【0116】
サンプルの入ったガラス瓶をヤヨイ振とう機にて200rpm、5minで振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離操作を行い3500rpm、30minの条件で分離する。この操作により、トナー粒子と除去された外添剤が分離する。トナー層と水層とが十分に分離されていることを目視で確認し、トナー層の最上層(水層との界面部)のトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、外添剤が分離されたトナー粒子を得る。
【0117】
チタン酸ストロンチウム粒子Aの固着率の測定は以下の様にする。まず上記分離工程前のトナーに含まれるチタン酸ストロンチウム粒子Aの定量を行う。これは波長分散型蛍光X線分析装置Axios advanced(PANalytical社製)を用いて、トナー粒子中のSr元素強度:MBを測定する。次に同様に上記分離工程後のトナーのSr元素強度:MAを測定する。
【0118】
固着率は(MA/MB)×100(%)で求められる。
【0119】
また、分離量YA及びYBは固着率を測定する際に測定したMA及びMBと、トナー1g中に添加したチタン酸ストロンチウム粒子A及びシリカ粒子Bの量(NA及びNB)を用いて測定する。
【0120】
分離量YAは((MB)-(MA))×NA/(MB)、
分離量YBは((MB)-(MA))×NB/(MB)で求められる。
【0121】
トナー粒子に対するチタン酸ストロンチウム粒子Aの固着率は、25%以上70%以下である。チタン酸ストロンチウム粒子Aの固着率が前記範囲内であることによってクリーニング部での阻止層を形成するトナーの流動性が制御しやすくなり、クリーニング性が向上する。
【0122】
チタン酸ストロンチウム粒子Aの固着率は、好ましくは40%以上60%以下である。チタン酸ストロンチウム粒子Aの固着率は、チタン酸ストロンチウム粒子Aをトナー粒子にミキサーなどで被覆させる際に、回転数及び回転時間を変更するなどの手法により制御できる。
【0123】
また、チタン酸ストロンチウム粒子Aのトナー1gあたりの分離量をYA(mg)とし、シリカ粒子Bのトナー1gあたりの分離量をYB(mg)としたとき、YAが3.00以上18.0以下である。YAが、18.0より多いとトナーのチタン酸ストロンチウム粒子Aの含有量が低下するためトナーの流動性が低下し、耐久後のゴースト濃度ムラが悪化する。YAが3.00より少ないと、阻止層が十分に形成されず、トナーすり抜けが発生する。
【0124】
YAは、好ましくは5.00以上15.0以下である。YAは、チタン酸ストロンチウム粒子Aをトナー粒子にミキサーなどで被覆させる際に、回転数及び回転時間を変更するなどの手法により制御できる。
【0125】
YBは、好ましくは1.00以上7.00以下であり、より好ましくは2.00以上6.00以下である。
【0126】
また、YA及びYBは、下記式(1)の関係を満たす。
YA/YB>0.75 (1)
【0127】
YA/YBが0.75以下であると、チタン酸ストロンチウム粒子Aに対してシリカ粒子B多く脱離するため、シリカ粒子Bがすり抜けやすくなりゴースト濃度ムラが悪化する。
【0128】
YA/YBの上限は特に制限されないが、3.00以下であることが好ましく、2.50以下であることがより好ましい。YA/YBは、シリカ粒子Bをトナー粒子にミキサーなどで被覆させる際に、回転数および回転時間を変更するなどの手法により制御できる。また、YA又はYBをそれぞれ変更する場合は、段階的にチタン酸ストロンチウム粒子Aとシリカ粒子Bを被覆させ、それぞれの外添順序、回転数及び回転時間を変更することにより制御可能である。
【0129】
チタン酸ストロンチウム粒子Aの含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.3質量部以上3.0質量部以下である。好ましくは、0.8質量部以上1.5質量部以下である。0.3質量部より少ないと効果を発現せず、3.0質量部より多いとトナーの流動性が向上しすぎて、トナーすり抜けが発生する。
【0130】
[結着樹脂]
本発明のトナーに使用される結着樹脂としては、特に限定されず、下記の重合体又は樹脂を用いることが可能である。
【0131】
例えば、ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂などが使用できる。
【0132】
これらの中で、クリーニング性向上の観点で、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0133】
本発明で用いられるポリエステル樹脂としては、「ポリエステルユニット」を結着樹脂鎖中に有している樹脂であり、該ポリエステルユニットを構成する成分としては、具体的には、2価以上のアルコールモノマー成分と、2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステル等の酸モノマー成分とが挙げられる。
【0134】
例えば、該2価以上のアルコールモノマー成分として、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0135】
これらの中で好ましく用いられるアルコールモノマー成分としては、芳香族ジオールであり、ポリエステル樹脂を構成するアルコールモノマー成分において、芳香族ジオールは、80モル%以上の割合で含有することが好ましい。
【0136】
一方、該2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステル等の酸モノマー成分としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6以上18以下のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物;が挙げられる。
【0137】
これらの中で好ましく用いられる酸モノマー成分としては、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸である。
【0138】
また、該ポリエステル樹脂の酸価は、20mgKOH/g以下であることが、クリーニング性向上の観点で好ましい。さらに、15mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が20mgKOH/gを超えてしまう場合、トナーの吸湿性にムラが生じるため流動性が悪化し、クリーニング性に影響する。
【0139】
なお、該酸価は、樹脂に用いるモノマーの種類や配合量を調整することにより、上記範囲とすることができる。具体的には、樹脂製造時のアルコールモノマー成分比/酸モノマー成分比、分子量を調整することにより制御できる。また、エステル縮重合後、末端アルコールを多価酸モノマー(例えば、トリメリット酸)で反応させることに制御できる。
【0140】
[結晶性ポリエステル樹脂]
本発明のトナーには、結晶性ポリエステル樹脂を含有させることもできる。
【0141】
結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、クリーニング性を向上させるという観点から、結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以上30.0質量部以下であることが好ましく、10.0質量部以上20.0質量部以下であることがより好ましい。
【0142】
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークが観測される樹脂である。
【0143】
上記結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上の多価カルボン酸とジオールの反応により得ることができる。その中でも、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮重合して得られる樹脂であることが好ましい。また、本発明において結晶性ポリエステル樹脂は、1種類のみを用いても、複数種を併用してもよい。
【0144】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数2以上22以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られる樹脂であることが好ましい。
【0145】
その中でも、上記結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られる結晶性ポリエステル樹脂であることが、クリーニング性向上の観点からより好ましい。
【0146】
上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが、クリーニング性を向上させる観点で最適である。
【0147】
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタジエングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
【0148】
これらの中でも、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールなどのような直鎖脂肪族α,ω-ジオールが好ましく例示される。
【0149】
本発明において、誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジオールをエステル化した誘導体が挙げられる。
【0150】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分において、上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が、全アルコール成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0151】
本発明において、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコールを用いることもできる。
【0152】
該多価アルコールのうち、上記脂肪族ジオール以外のジオールとしては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどの芳香族アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0153】
また、該多価アルコールのうち3価以上の多価アルコールとしては、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンなどの芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパンなどの脂肪族アルコールなどが挙げられる。
【0154】
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のアルコールを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0155】
一方、上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であるとよい。
【0156】
例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸が挙げられる。
【0157】
これらの酸無水物又は低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
【0158】
本発明において、誘導体としては、上記縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジカルボン酸成分の酸無水物、ジカルボン酸成分をメチルエステル化、エチルエステル化、又は酸クロライド化した誘導体が挙げられる。
【0159】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分において、上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物が、全カルボン酸成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0160】
本発明において、上記脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。該多価カルボン酸のうち、上記脂肪族ジカルボン酸以外の2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸;n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸などの脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなども含まれる。
【0161】
また、その他の多価カルボン酸において、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、及びピロメリット酸などの芳香族カルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパンなどの脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなどの誘導体なども含まれる。
【0162】
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を用いてもよい。該1価のカルボン酸としては、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸などが挙げられる。
【0163】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、上記カルボン酸成分とアルコール成分とをエステル化反応、又はエステル交換反応させた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応させることで結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0164】
上記エステル化又はエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、及び酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いて行うことができる。
【0165】
また、上記縮重合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、及び二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
【0166】
エステル化若しくはエステル交換反応、又は重縮合反応において、得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために全モノマーを一括に仕込むことや、低分子量成分を少なくするために2価のモノマーを先ず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させたりするなどの方法を用いてもよい。
【0167】
[ワックス]
本発明のトナーには、必要に応じてワックスを含有させることもできる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸の如き脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如きアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
【0168】
これらのワックスの中でも、流動性を制御し、クリーニング性を向上させるという観点で、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。
【0169】
該ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下で使用されることが好ましい。さらに3.0質量部以上12質量部以下がより好ましい。また、トナーのクリーニング性向上の観点から、示差走査熱量分析装置(DSC)で測定される昇温時の吸熱曲線において、温度30℃以上200℃以下の範囲に存在する最大吸熱ピークのピーク温度が、50℃以上110℃以下であることが好ましい。さらに、70℃以上100℃以下であることがより好ましい。
【0170】
[着色剤]
本発明のトナーに含有できる着色剤(色材)としては、以下のものが挙げられる。
【0171】
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤を用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0172】
マゼンタ着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
【0173】
マゼンタ着色染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
【0174】
シアン着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
【0175】
シアン着色染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
【0176】
イエロー着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
【0177】
イエロー着色染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
【0178】
上記着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上30.0質量部以下が好ましい。
【0179】
[磁性体]
本発明のトナーは磁性トナーであっても非磁性トナーであってもよい。磁性トナーとして用いる場合は、磁性体として磁性酸化鉄を用いることが好ましい。磁性酸化鉄としては、マグネタイト、マグヘマタイト、フェライト等の酸化鉄が用いられる。トナーに含有される磁性酸化鉄の量は、結着樹脂100質量部に対して、25質量部以上95質量部以下であることが好ましく、より好ましくは30質量部以上45質量部以下である。
【0180】
[荷電制御剤]
本発明のトナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
【0181】
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩或いはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩或いはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0182】
[現像剤]
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが好ましい。また、長期にわたり安定した画像が得られるという点でも好ましい。
【0183】
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、又は、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライトなどの磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)など、一般に公知のものを使用できる。
【0184】
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際の磁性キャリアの混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは4質量%以上13質量%以下である。
【0185】
[製造方法]
トナー粒子を製造する方法としては、公知の方法を用いることができる。以下、例として粉砕法でのトナー製造手順について説明する。
【0186】
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、ポリエステル樹脂、脂肪酸金属塩、着色剤、必要に応じて離型剤や荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
【0187】
次に、混合した材料を溶融混練する。溶融混練の温度は、100~200℃程度が好ましい。溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーのようなバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が好ましい。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。さらに、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって急冷する。
【0188】
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルのような粉砕機で粗粉砕した後、さらに、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
【0189】
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)のような分級機や篩分機を用いて分級し、分級品(トナー粒子)を得る。
【0190】
得られたトナー粒子は、そのままトナーとして使用してもよい。必要に応じて、トナー粒子の表面に外添剤を外添処理してトナーとしてもよい。外添剤を外添処理する方法としては、トナー粒子と公知の各種外添剤を所定量配合し、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
【0191】
本発明のトナーは、体積基準のメジアン径が、3.0μm以上20.0μm以下が好ましく、5.0μm以上12.0μm以下であることがより好ましい。
【0192】
本発明において、トナーの平均円形度は0.960以上1.000以下であることが好ましく、より好ましくは0.960以上0.980以下である。トナーの平均円形度が上記の範囲であることにより、トナーのクリーニング性が向上する。
【0193】
<トナーの重量平均粒径(D4)の測定>
トナーの重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
【0194】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0195】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
【0196】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0197】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
【0198】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0199】
<平均円形度の測定>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
【0200】
具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0201】
まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。
【0202】
さらに、測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
【0203】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナーを計測する。
【0204】
そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナーの平均円形度を求める。
【0205】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0206】
なお、実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0207】
<Etの測定方法>
Etの測定には、回転式ブレードを備えた粉体流動性分析装置(パウダーレオメータFT-4、Freeman Technology社製)(以下、「FT-4」ともいう)を用いた。
【0208】
上記装置の原理は、粉体サンプル中で回転式ブレードを移動させ、一定のパターンの流れを起こさせる。粉体サンプル中の粒子はブレードが近接すると流動し、通過すると再び静止する。ブレードが粉体中を移動するのに必要としたエネルギーが測定され、この値から、種々の流動性指数が計算される。ブレードはプロペラ型で、回転すると同時に上又は下方向にも運動するので先端はらせんを描くことになる。回転速度と上下運動を変化させることによりブレードのらせん経路の角度や速度を調節することができる。ブレードが粉体層表面に対して右回りのらせん経路に沿って移動するときには粉体を均一に混ぜる作用がある。逆にブレードが粉体層表面に対して左回りのらせん経路に沿って移動するときにはブレードは粉体から抵抗を受けることになる。
【0209】
具体的には、以下の操作により測定を行った。なお、全ての操作において、プロペラ型ブレードは、図2に示す仕様のFT-4測定専用48mm径ブレード(48mm×10mmのブレード板の中心に法線方向に回転軸が存在し、ブレード板は、両最外縁部分(回転軸から24mm部分)が70°、回転軸から12mmの部分が35°といったように、反時計回りになめらかにねじられたもので、材質はSUS製。型番:C210。以下、「ブレード」と省略する場合がある)を用いる。
【0210】
まず、FT-4測定専用50mm×160mlスプリット容器(型番:C203。容器底面からスプリット部分までの高さ82mm。材質は、ガラス。以下、容器と省略する場合がある)に23℃、60%環境に3日以上放置されたトナーを100g入れることでトナー粉体層とした。
【0211】
(1)コンディショニング操作
(a)ブレードの回転スピード(ブレードの最外縁部の周速)を60(mm/sec)にした。粉体層への垂直方向の進入速度を、移動中のブレードの最外縁部が描く軌跡と粉体層表面とのなす角(以降、「なす角」と省略する場合がある)が5(deg)になるスピードにした。粉体層表面に対して時計回り(ブレードの回転により粉体層がほぐされる方向)の回転方向に、粉体層表面からトナー粉体層の底面から10mmの位置までブレードを進入させた。その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が2(deg)のスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、トナー粉体層の底面から1mmの位置までブレードを進入させる操作を行った。その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層からの抜き取り速度をなす角が5(deg)のスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、トナー粉体層の底面から100mmの位置までブレードを移動させ、抜き取りを行った。抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着したトナーを払い落とした。
(b)一連の上記(1)-(a)の操作を5回行うことで、トナー粉体層中に巻き込まれている空気を取り除き、安定したトナー粉体層を作った。
【0212】
(2)スプリット操作
上述のFT-4測定専用セルのスプリット部分でトナー粉体層をすり切り、粉体層上部のトナーを取り除くことで、同じ体積のトナー粉体層を形成した。
【0213】
(3)測定操作
(a)上記(1)-(a)と同様の操作を一回行った。
(b)次にブレードの回転スピードを100(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が5(deg)のスピードにした。粉体層表面に対して反時計回り(ブレードの回転により粉体層が押し込まれる方向)の回転方向に、トナー粉体層の底面から10mmの位置までブレードを進入させた。その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層への垂直方向の進入速度を、なす角が2(deg)のスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から1mmの位置までブレードを進入させる操作を行った。その後、ブレードの回転スピードを60(mm/sec)、粉体層からの垂直方向の抜き取り速度をなす角が5(deg)のスピードで、粉体層表面に対して時計回りの回転方向に、粉体層の底面から100mmの位置までブレードの抜き取りを行った。抜き取りが完了したら、ブレードを時計回り、反時計回りに交互に小さく回転させることでブレードに付着したトナーを払い落とした。
(c)上記、(b)の一連の操作を7回繰り返した。
【0214】
上記(c)の操作において、7回目のブレードの回転スピードが100(mm/sec)であるときの、トナー粉体層の底面から100mmから10mmの位置までブレードを進入させたときに得られる、回転トルクと垂直荷重の総和Etを、Et(mJ)とする。
【実施例
【0215】
以下、本発明を製造例及び実施例によりさらに具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
【0216】
<電子写真感光体1の製造例>
・支持体
導電性支持体として、円筒状アルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金、直径30mm、長さ357.5mm、肉厚1.0mm)を用いた。
【0217】
・下引き層の形成
酸化亜鉛粒子(平均粒子径:70nm、比表面積値:15m2/g)60部をテトラヒドロフラン500部と撹拌混合し、これにシランカップリング剤(化合物名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、商品名:KBM603、信越化学社製)0.75部を添加し、2時間撹拌した。その後、テトラヒドロフランを減圧留去して、120℃で3時間加熱乾燥し、表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。
【0218】
続いて、ポリオールとしてブチラール(商品名:BM-1,積水化学工業(株)製)25部、およびブロック化イソシアネート(商品名:スミジュールBL-3173、住友バイエルンウレタン社製)22.5部を、メチルエチルケトン142部に溶解させた。この溶液に、前記表面処理された酸化亜鉛粒子を100部、アントラキノン1部を加え、これを直径1mmのガラスビーズを用いてサンドミルにて5時間分散した。
【0219】
分散処理後、ジオクチルスズジラウレート0.008部、シリコーン樹脂粒子(トスパール145、GE東芝シリコーン社製)6.5部を加えて撹拌し、下引き層用塗布液を調製した。
【0220】
得られた下引き層用塗布液を上記支持体上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を190℃で24分間乾燥させることによって、膜厚が15μmの下引き層を形成した。
【0221】
・電荷発生層の形成
次に、CuKα特性X線に対するブラッグ角(2θ±0.2゜)の少なくとも7.4゜、16.6゜、25.5゜及び28.3゜に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶を15部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂(VMCH、日本ユニオンカーバイト社製)10部、n-ブチルアルコール300部を混合し、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルにて4時間分散処理し、電荷発生層用塗布液を調製した。
【0222】
この電荷発生層用塗布液を前記下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を150℃で5分間乾燥させることによって、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0223】
・電荷輸送層の形成
次に、150℃で3時間加熱処理したポリテトラフルオロエチレン粒子(平均一次粒径、数平均分子量、結晶化度、および、真円度は表1に記載)8部、下記構造式(A)で示される構造単位を有する樹脂(重量平均分子量:130,000)0.015部、テトラヒドロフラン4部、トルエン1部を、液温20℃を保って48時間撹拌混合し、調合液Aを得た。
【0224】
【化1】
【0225】
次に、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-[1,1’]ビフェニル-4,4’-ジアミン4部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:40,000)6部、酸化防止剤として2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.1部とを混合し、テトラヒドロフラン24部、トルエン11部を混合溶解して、調合液Bを得た。
【0226】
この調合液Bに調合液Aを加えて撹拌混合した後、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米Microfluidics(株)製)に通し、分散液を得た。
【0227】
その後、フッ素変性シリコーンオイル(商品名:FL-100 信越シリコーン社製)を5ppmとなるように前記分散液に加え、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋(株)製)で濾過を行い、電荷輸送層用塗布液を調製した。
【0228】
この電荷輸送層用塗布液を前記電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を150℃で25分間乾燥させることによって、膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
【0229】
このようにして、電子写真感光体1を作製した。
【0230】
<電子写真感光体2~13の製造例>
電子写真感光体1の製造例において、ポリテトラフルオロエチレン粒子を表1の記載に変更して電子写真感光体2~13を作製した。
【0231】
<電子写真感光体14の製造例>
直径30mm、長さ357.5mm、肉厚1mmのアルミニウムシリンダーを導電性支持体とした。
【0232】
次に、金属酸化物として酸化亜鉛粒子(比表面積:19m2/g、粉体抵抗:4.7×106Ω・cm)100部をトルエン500部と撹拌混合し、これにシランカップリング剤(化合物名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、商品名:KBM602、信越化学工業(株)製)0.8部を添加し、6時間撹拌した。その後、トルエンを減圧留去して、130℃で6時間加熱乾燥し、表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。
【0233】
次に、ポリオール樹脂としてブチラール樹脂(商品名:BM-1、積水化学工業(株)製)15部およびブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルウレタン社製)15部をメチルエチルケトン73.5部と1-ブタノール73.5部の混合溶液に溶解させた。この溶液に前記表面処理された酸化亜鉛粒子80.64部、構造式(B)で示される化合物0.8部(東京化成工業(株)製)を加え、これを直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下で3時間分散した。分散後、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0.01部、架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(商品名:TECHPOLYMER SSX-103、積水化成品工業(株)社製、平均一次粒径3.1μm)を5.6部加えて撹拌し、下引き層用塗布液を調製した。
【0234】
【化2】
【0235】
この下引き層用塗布液を上記支持体上に浸漬塗布して塗膜を形成し、この塗膜を40分間145℃で加熱乾燥させて、膜厚が18μmの下引き層を形成した。
【0236】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の7.4°および28.2°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)11部、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業(株)製)5部、および、シクロヘキサノン130部を混合し、これに直径1mmのガラスビーズ500部を加えて、18℃の冷却水で冷却しつつ、1800rpmの条件で2時間分散処理した。分散処理後、酢酸エチル300部およびシクロヘキサノン160部を加えて希釈することによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を10分間110℃で乾燥させることによって、膜厚が0.16μmの電荷発生層を形成した。なお、調製した電荷発生層用塗布液中のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶の平均粒径(メジアン)を、液相沈降法を原理とした遠心式粒度測定装置(商品名:CAPA700、(株)堀場製作所製)を用いて測定したところ、0.18μmであった。
【0237】
次に、構造式(C)で示される電荷輸送性化合物2部、構造式(D)で示される電荷輸送性化合物7部、構造式(E)で示される電荷輸送性化合物1部、ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱ガス化学(株)製)10部、および構造式(F)で示される構造単位を有するポリカーボネート(粘度平均分子量Mv:20000)0.002部を、モノクロロベンゼン70部およびジメトキシメタン30部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を30分間100℃で乾燥させることによって、膜厚が18μmの電荷輸送層を形成した。
【0238】
次に、構造式(G)で示される化合物70部、1-プロパノール30部を混合後一晩放置し、孔径0.2μmのPTFEメンブランフィルターで濾過したものを調合液Aとした。
【0239】
【化3】
【0240】
次に150℃で3時間加熱処理したポリテトラフルオロエチレン粒子(平均一次粒径、数平均分子量、結晶化度、および、真円度は表1に記載)20部、フッ素アクリルグラフト樹脂(東亜合成(株)製GF400の不揮発成分)1.4部、1-プロパノール30部、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル(商品名:AE-3000、AGC(株)製)30部を液温20℃で撹拌した後、高圧ホモジナイザーで分散処理をすることによって調合液Bを得た。
【0241】
得られた調合液Aと調合液Bを混合撹拌後、表面層用塗布液を得た。
【0242】
この表面層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を50℃で5分間加熱処理した。その後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、吸収線量50kGyの条件で1.6秒間電子線を塗膜に照射した。その後、窒素雰囲気下にて、塗膜が130℃になる条件で25秒間加熱処理した。なお、電子線の照射から25秒間の加熱処理までの酸素濃度は20ppmであった。次に、大気中において、塗膜が115℃になる条件で12分間加熱処理することによって、膜厚が5μmの表面層を形成した。
【0243】
このようにして、支持体、導電層、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する電子写真感光体14を製造した。
【0244】
<電子写真感光体15~17の製造例>
電子写真感光体14の製造例において、ポリテトラフルオロエチレン粒子を表1の記載に変更して電子写真感光体15~17を作成した。
【0245】
【表1】
【0246】
<トナー1の製造例>
・ポリエステル樹脂1: 100部
[組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:テレフタル酸:ドデシルコハク酸:トリメリット酸=80:20:75:10:15〕、Mw=152,000、Mw/Mn=32、分子量100以上5000以下の成分量=25質量%、酸価=12mgKOH/g]
・C.I.ピグメントブルー15:3 7部
・3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物(ボントロンE88 オリエント化学工業社製) 0.3部
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) 5部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度130℃に設定した二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて混練した。得られた混練物25℃まで冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF-300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子1を得た。
【0247】
得られたトナー粒子1(100.0部)に、チタン酸ストロンチウム粒子A(1.0部)およびヘキサメチルジシラザン20.0質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径120nmの疎水性シリカ微粒子B(1.0部)を添加した。得られた添加物をヘンシェルミキサー(FM75J型、三井三池化工機(株)製)で回転数30s-1、回転時間5minで混合し、目開き54μmの超音波振動篩を通過させて、トナー1を得た。
【0248】
トナー1の重量平均粒径(D4)は6.2μmであり、平均円形度は0.970であった。その他トナー1のチタン酸ストロンチウム粒子Aの固着率、チタン酸ストロンチウム粒子Aの分離量YA、YA/YBを表2に示した。
【0249】
<トナー2~14の製造例>
トナー1の製造例において、表2に従いチタン酸ストロンチウム粒子Aの添加量および製造条件を変更した以外はトナー1の製造例と同様の操作を行い、トナー2~14を得た。
【0250】
【表2】
【0251】
<磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe23 62.7部
MnCO3 29.5部
Mg(OH)2 6.8部
SrCO3 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕及び混合した。
【0252】
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe23d
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
【0253】
・工程3(粉砕工程):
得られた仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
【0254】
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
【0255】
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
【0256】
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0257】
<被覆樹脂1の調製>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、メチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを導入して窒素ガスで系内を置換した。その後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。
【0258】
次いで、30部の被覆樹脂1を、トルエン40部、及びメチルエチルケトン30部に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
【0259】
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m2/g、DBP吸油量75mL/100g)
を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散をおこなった。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過をおこない、被覆樹脂溶液1を得た。
【0260】
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに、磁性コア粒子1及び被覆樹脂溶液1を投入した(被覆樹脂溶液1の投入量は、100部の磁性コア粒子1に対して、樹脂成分として2.5部になる量)。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去し、冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0261】
<二成分系現像剤1の製造例>
92.0部の磁性キャリア1に対して、8.0部のトナー1を加え、V型混合機(V-20、セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1を得た。
【0262】
<二成分系現像剤2~14の製造例>
二成分系現像剤1の製造例において、表3のようにトナーを変更した以外は二成分系現像剤1と同様の操作を行い、二成分系現像剤2~14を得た。
【0263】
〔実施例1〕
電子写真感光体1を評価装置であるキヤノン製複写機iR-ADV-C5255の改造機のシアンステーションに装着し、表3の二成分系現像剤1を現像器にセットし以下の試験及び評価を行った。
【0264】
30℃/80%RH環境下に、電子写真感光体の暗部電位(Vd)が-500v、明部電位(Vl)-180vとなるよう帯電装置及び露光装置の条件を設定し、電子写真感光体の初期電位を調整した。次に硬度77°のポリウレタンゴム製のクリーニングブレードを、電子写真感光体の周面に対して当接角28°、当接圧30g/cm(29.4N/m)となるように設定し以下の評価を行った。
【0265】
[評価1:ゴースト評価]
低温低湿環境(温度15℃/相対湿度10%RH;L/L)にて2000枚の画出しを行った。なお、画像としては印字率が1%となるような横線を間欠モードにて画出し試験を行った。10mm×10mmのベタ画像複数個を転写紙の前半分に形成し、後ろ半分には2ドット3スペースのハーフトーン画像を形成した。ハーフトーン画像上に前記ベタ画像の痕跡がどの程度出るかを目視で判断する。耐久使用初期1枚と2000枚耐久使用後におけるベタ黒画像のゴーストの判断基準は以下の通りである。
【0266】
(評価基準)
A:ゴースト未発生
B:ゴーストがごく軽微に発生
C:ゴーストが軽微に発生
D:ゴーストが顕著に発生
【0267】
[評価2:トナーすり抜け(HHスジ)]
電子写真感光体用のヒーター(ドラムヒーター)をONにした状態で、30℃/80%RH(H/H)環境下で、A4横の1%印字画像の評価用チャートを連続で200枚出力した。その後、濃度30%のスクリーン画像をハーフトーン画像として出力し、画像上のH/H初期スジを下記の評価基準に従って評価した。その後、10万枚まで耐久を行い、同様の評価を行った。
【0268】
(評価基準)
A:画像上にスジの発生は認められない。(優れている)
B:画像上にスジが疑われるような画像が得られるが、明確なスジであるかどうか判定ができないレベルにとどまっている。(少し優れている)
C:画像上に極軽微なスジがわずかに発生している。(本発明において許容レベル)
D:画像上に明確なスジが発生している(本発明において許容できないレベル)
【0269】
〔実施例2~21、比較例1~9〕
表3に示す二成分系現像剤2~14と電子写真感光体1~17の組合せで、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0270】
【表3】
【符号の説明】
【0271】
1 電子写真感光体、2 軸、3 帯電手段、4 露光光、5 現像手段、6 転写手段、7 転写材、8 定着手段、9 クリーニング手段、10 前露光光、11 プロセスカートリッジ、12 案内手段
図1
図2