(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】エリプソメータ及び半導体装置の検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/21 20060101AFI20240415BHJP
G01J 4/04 20060101ALI20240415BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
G01J4/04 Z
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2020115522
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】日高 康弘
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-153770(JP,A)
【文献】特開2017-072526(JP,A)
【文献】特開2018-124202(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0041099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
G01J 3/00 - G01J 4/04
G01J 7/00 - G01J 9/04
H01L 21/64 - H01L 21/66
G01B 11/00 - G01B 11/30
G02B 19/00 - G02B 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光からなる照明光が試料の測定面で反射した反射光を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光に分離する偏光光学素子と、
各前記偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光の成分を干渉させた干渉縞を形成する干渉部材と、
前記干渉縞を検出する画像検出器と、
検出した前記干渉縞から
、直接、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する解析装置と、
を備えたエリプソメータ。
【請求項2】
前記測定面に入射する前記照明光の光軸、及び、前記測定面で反射した前記反射光の光軸は、前記測定面の法線に対して傾斜した、
請求項1に記載のエリプソメータ。
【請求項3】
前記照明光を生成する光源と、
前記光源から生成された前記照明光が入射され、一方向の直線偏光からなる前記照明光を透過させる偏光子と、
前記直線偏光からなる前記照明光で前記測定面を照明する照明レンズと、
前記反射光を透過させ、前記偏光光学素子に入射させる受光レンズと、
をさらに備えた、
請求項2に記載のエリプソメータ。
【請求項4】
前記照明光は、前記測定面において、線状の線状照明領域を照明し、
前記画像検出器は、入射面に直交する側方から見て、前記受光レンズの瞳位置と共役な瞳共役位置に配置され、反射面に直交する上方から見て、前記測定面の像位置に配置された、
請求項3に記載のエリプソメータ。
【請求項5】
一方向の直線偏光からなる前記照明光を生成するレーザ光源と、
前記直線偏光からなる前記照明光で前記測定面を照明する照明レンズと、
前記反射光を透過させ、前記偏光光学素子に入射させる受光レンズと、
をさらに備えた、
請求項2に記載のエリプソメータ。
【請求項6】
前記照明光は、前記測定面において、線状に延びた線状照明領域を照明し、
前記画像検出器は、入射面に直交する側方から見て、前記受光レンズの瞳位置と共役な瞳共役位置に配置され、反射面に直交する上方から見て、前記測定面の像位置に配置された、
請求項5に記載のエリプソメータ。
【請求項7】
前記照明光を平行光に変換する変換レンズと、
前記平行光に変換された前記照明光を透過させるコヒーレンス低減素子と、
を備え、
前記コヒーレンス低減素子は、反射面に直交する上方から見て、前記線状照明領域が延びた方向に沿って、前記照明光を複数のビームに分割し、分割された各ビームの光路長を異ならせた、
請求項6に記載のエリプソメータ。
【請求項8】
前記コヒーレンス低減素子は、反射面に直交する上方から見て、前記線状照明領域が延びた方向に沿って、前記光軸の方向の長さが階段状に異なる階段プリズムであり、
前記光軸の方向の長さが異なる各階段部分を前記各ビームが透過することにより、前記各ビームの光路長を異ならせた、
請求項7に記載のエリプソメータ。
【請求項9】
前記コヒーレンス低減素子は、ハーフミラー膜及び反射膜を含み、
前記ハーフミラー膜を透過した第1ビームと、
前記ハーフミラー膜で反射し、前記反射膜で反射し、前記ハーフミラー膜を透過した第2ビームと、
前記ハーフミラー膜及び前記反射膜で複数のN回反射し、前記ハーフミラー膜を透過した第Nビームと、を含む前記各ビームの光路長を異ならせた、
請求項7に記載のエリプソメータ。
【請求項10】
前記照明レンズは、シリンドリカルレンズを含む、
請求項3~9のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項11】
前記干渉部材は、各前記偏光方向と45[deg]傾いた方向における前記2つの直線偏光の成分を透過させる偏光板を含み、
前記画像検出器は、前記偏光板を透過した各前記成分の前記干渉縞を検出する、
請求項1~10のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項12】
前記干渉部材は、各前記偏光方向と所定角度だけ傾いた第1方向における前記2つの直線偏光の第1成分と、前記所定角度と90[deg]傾いた第2方向における前記2つの直線偏光の第2成分と、に分離する偏光ビームスプリッタを含み、
前記画像検出器は、前記2つの直線偏光の前記第1成分の第1干渉縞、及び、前記2つの直線偏光の前記第2成分の第2干渉縞を検出する、
請求項1~10のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項13】
前記所定角度は、0[deg]よりも大きく、45[deg]未満であるか、または、45[deg]よりも大きく、90[deg]未満である、
請求項12に記載のエリプソメータ。
【請求項14】
前記偏光光学素子は、ノマルスキープリズムを含む、
請求項1~13のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項15】
前記試料は、入射面及び反射面に直交するスキャン方向に移動するステージ上に配置され、
前記画像検出器は、前記スキャン方向にスキャンされた前記干渉縞を検出する、
請求項1~14のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項16】
前記2つの直線偏光は、P偏光及びS偏光である、
請求項1~15のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項17】
前記照明光は、白色光を含み、
前記解析装置は、前記干渉縞をフーリエ変換し、フーリエ変換された前記干渉縞から前記エリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する、
請求項1~16のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項18】
前記照明光は、前記測定面において、所定の広がりを有する面状の面状照明領域を照明する、
請求項3に記載のエリプソメータ。
【請求項19】
前記偏光光学素子は、ウォラストンプリズムを含む、
請求項18に記載のエリプソメータ。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の前記エリプソメータを備えた半導体装置の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリプソメータ及び半導体装置の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エリプソメトリ(ellipsometry)は、1975年にAspnesらによって、自動計測が可能となって以来、測定時間の大幅な短縮と共に精度も大幅に向上し、多波長により計測する分光エリプソメトリも実用化された。これ以降、薄膜や微細構造の非破壊計測において、膜厚などの寸法や屈折率等の光学定数の計測を高精度に行えるという特性を生かして、半導体製造工程でも広く使われるようになった。現在でも、ウェハ上の回路パターンの線幅が10nm以下となる微細構造の寸法(Dimension)を計測するOCD(Optical Critical Dimension)測定装置として、測長SEM(Scanning Electron-beam Microscope)やAFM(Atomic Force Microscope)を相補する形で使用されている。
【0003】
ここ10年ほどで、ロジック半導体では、FinFET、メモリでは、3D-NANDなど、半導体回路構造は3次元化が進み、より複雑な構造となってきている。多くのOCDは、分光エリプソメトリを計測原理としており、計測対象である半導体回路構造のDimensionや構成物質の光学定数を求めるためには、モデルを作成して計測対象のDimensionや光学定数を、Floating parameterとして、計測結果にモデルをフィッティングさせて解を得るという手法をとる。そのため、求める対象の構造が複雑になると、Floating parameterの数が増える。例えば、現在のFinFETのOCDによる計測では、20-30個程のFloating parameterを用いる必要がある。エリプソメトリは、一般的に、Ψ、Δの2つの値を計測結果であるエリプソメトリ係数として得るが、ΨとΔは共に波長依存性がある。このため、分光エリプソメトリの場合、エリプソメトリ係数は、Ψ(λ)、Δ(λ)と表記することができる。
【0004】
Dimensionの解を求めるためには、Floating parameterの数より多い個数のエリプソメトリ係数Ψ及びΔを計測で得ることが、モデルにフィッティングするために最低限必要であるが、Floating parameterの数が多い場合に発生する問題として、実際のDimensionとは異なったFloating parameterの組み合わせでフィッティングが収束する場合がある。これはカップリングと呼ばれる問題で、これを避けるためには、Floating parameterに対して異なる依存性を持つようなエリプソメトリ係数Ψ及びΔを計測してフィッティングを行うことが有効である。そのため、波長に加え、入射角と入射方位も異なる条件でエリプソメトリ計測を行い、前記のFloating parameterに対して、より異なる依存性を持つエリプソメトリ係数Ψ及びΔが、モデルのフィッティングに使われる。
【0005】
エリプソメトリ計測を行う際に、P偏光の反射率が0となるブリュースター角を入射角に用いると、エリプソメトリ計測の感度を最も高くすることができる。ブリュースター角は、半導体回路構造では、おおよそ、65[deg]から75[deg]に相当する。このような斜入射の光学系では、視野の広さによりシャインプルーフ(Scheimpflug)の原理を満たす必要がある。よって、レンズ設計やカメラへの入射角などの光学システム構成に一定の制約を求められる。また、異方性物質の構造評価に用いられるミュラー行列エリプソメトリという計測手法もOCD測定に一部利用されている。ミュラー行列エリプソメトリは、照明光に対する反射光の偏光状態の応答関数を4行4列の行列で表現したものである。ミュラー行列エリプソメトリを求めるためには、数種類の異なる偏光状態の照明光を半導体回路構造に入射させた場合の反射光の偏光状態を計測する。ミュラー行列は、半導体回路構造のDimensionを計測する際にカップリングを避ける方法の一つとして有効であると認識されている。しかしながら、計測時間が通常のエリプソメトリの数倍程度必要となる。
【0006】
このような計測精度上の要望があるにもかかわらず、半導体製造工程でのOCD測定装置に使われるミュラー行列エリプソメトリや分光エリプソメトリを含むエリプソメトリ測定には、非常に短時間での計測が求められる。例えば、全ウェハを計測するためには、1枚当たりに許容される測定時間は多くても数十秒程度である。このような短時間では、ウェハ上のごく限られた領域しか計測ができない。そのため、半導体製造工程でのOCD測定装置は、測定精度とともに短時間により多い測定条件で、エリプソメトリ係数Ψ及びΔやミュラー行列を計測できることが強く期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5596411号明細書
【文献】米国特許第7667841号明細書
【文献】米国特許第6856384号明細書
【文献】米国特許第8908180号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体製造工程でのOCD測定装置で使用されるエリプソメータは、典型的には、1点の計測に1秒~数秒の計測時間が必要である。この理由として、一般的に、エリプソメータに用いられる回転補償子(Rotating compensator)や位相変調素子による変調周期内で、多数の計測点を必要とすることに起因する。さらに、分光計測を行う場合には、回折格子等の分散素子で各波長に分かれた光の光量を、高いS/N比で計測する必要がある。ミュラー行列エリプソメトリの場合には、照明光において数種類の偏光状態を切り替える必要がある。このため、製造工程のウェハを全数検査するためには、ウェハ内で数点から数十点程度しか計測できず、ウェハ内の部分的な膜厚変化や線幅変化による歩留まり悪化を見逃している場合もある。
【0009】
ウェハ内の測定点を増やすことを目的として、分光エリプソメトリの測定を短時間化するためには、回転補償子などの可動部を高速化する必要があるが、安定性や発熱等がネックとなり、OCD測定等のためのエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定のスループット(Throughput)は向上することは困難である。
【0010】
また、別のアプローチとして、シャインプルーフの原理を満たす光学システムを使用することが考えられる。そのような光学システムは、照明光学系や集光光学系の開口数(Numerical aperture、NA)を小さくして、低い位置分解能を許容する。その代わりに、その光学システムは、広い視野内を画像検出器により同時に多数点を計測することで、スループットを向上させる。このような光学システムの場合には、画像検出器のフレームレート、または、受光する光量が制約となり、多数の波長や複数の偏光状態の照明光の条件ごとに画像を計測する必要がある。このため、スループット向上の効果は限られている。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを測定するスループットを向上させることができるエリプソメータ及び半導体装置の検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これまでのエリプソメトリ計測の基本的な手法としては、一旦ストークスパラメータを求める必要がある。このため、「偏光子や補償子の角度を変えた複数条件で光強度を計測する」必要がある。本実施形態では、「2つの偏光状態の光の強度比及び位相差を、干渉縞を測定することで求める」という異なったアプローチに基づいている。
【0013】
この測定のために、本実施形態では、例えば、完全偏光の照明光で試料を照明し、試料からの反射光を2つの直交する直線偏光に分割する。そして、反射光の分割前の同一光線が画像検出器上で再び重なるような光学系配置とする。これを実現する偏光素子としては、ノマルスキープリズム(nomarski prism)が理想的である。しかしながら、試料上の照明領域や光源の空間的コヒーレンスの違いにより、ウォラストンプリズム(wollaston prism)やローションプリズム(rochon prism)を用いることも可能となる。
【0014】
より具体的な構成としては、例えば、白色光源を光源として用い、さらに、照明光学系において偏光子や波長板を透過させる。これにより、照明光を完全偏光の直線偏光または楕円偏光とする。試料上の照明光は点状に集光される。しかしながら、この際の照明領域の大きさにより、受光光学系の瞳位置での空間的コヒーレンスが変わる。ここで受光光学系の瞳位置とは、試料上で互いに平行な光線が受光光学系内で収束する点を含む光軸に垂直な面として定義し、瞳空間とは、瞳位置を含んでレンズまたは曲面ミラーにより挟まれた空間として定義する。
【0015】
試料の測定面の法線方向に対して、照明光学系の光軸が傾斜した傾斜光学系で計測する場合を考える。照明光は、測定面上で光軸に対して、垂直方向に伸びた線状の領域を照明し、測定面で反射された照明光は、照明光学系と反対側に同じ角度だけ光軸が傾斜した受光光学系に入射する。受光光学系では、シリンドリカルレンズやトロイダルミラー等を含む受光光学系により、入射面内では、瞳空間で平行光となり受光検出器上が瞳位置となる配置であり、受光光学系の光軸を含み入射面と垂直な面内では、受光検出器上が試料の像位置となる。
【0016】
入射面内の瞳空間で平行光となった光は、ノマルスキープリズム等の偏光光学素子によって、P偏光とS偏光が入射面内でそれぞれ異なる角度に進行するように分割され、画像検出器上で再び同一点で重なる。画像検出器とノマルスキープリズムとの間には、分割されたP偏光及びS偏光の偏光方向の中間の角度に透過軸を持つ偏光板が設置される。P偏光及びS偏光は、この偏光板の透過後に互いに可干渉となり、画像検出器上で入射面に沿って干渉縞を形成する。この偏光板は、これまでのエリプソメータの検光子と同じように検出器の前に配置されているが、役割としては、2つの偏光方向が直交するP偏光及びS偏光を可干渉にするためであり、目的は全く異なる。上記の配置により、P偏光及びS偏光は、画像検出器上で互いの干渉による干渉縞を形成する。入射面と垂直な面内では画像検出器上で試料と共役関係(物体と像の関係)にあり、試料の像を形成する。よってこの方向は試料の線状の照明領域に沿った位置情報を含んでいる。
【0017】
一実施形態のエリプソメータは、直線偏光からなる照明光が試料の測定面で反射した反射光を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光に分離する偏光光学素子と、各前記偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光の成分を干渉させた干渉縞を形成する干渉部材と、前記干渉縞を検出する画像検出器と、検出した前記干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する解析装置と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを測定するスループットを向上させることができるエリプソメータ及び半導体装置の検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1に係るエリプソメータを例示した側面図である。
【
図2】実施形態1に係るエリプソメータを例示した上面図である。
【
図3】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、干渉部材を透過する直線偏光を例示した図である。
【
図4】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、入射面に直交する側方から見て、画像検出器に入射する反射光に含まれた各直線偏光の波面を例示した図である。
【
図5】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。
【
図6】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上の干渉縞の強度を例示した図であり、横軸は、画像検出器の受光面上の位置を示し、縦軸は、反射光の干渉縞の強度を示す。
【
図7】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、試料の測定面における線状照明領域及び線状照明領域からの反射光による干渉縞を例示した図である。
【
図8】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、試料の測定面における線状照明領域及び線状照明領域からの反射光による干渉縞を例示した図である。
【
図9】実施形態2に係るエリプソメータを例示した側面図である。
【
図10】実施形態2に係るエリプソメータにおいて、受光光学系を例示した図である。
【
図11】実施形態2に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。
【
図12】実施形態2に係るエリプソメータにおいて、偏光光学素子及び偏光ビームスプリッタを例示した図である。
【
図13】実施形態2に係るエリプソメータにおいて、偏光ビームスプリッタで分離される直線偏光を例示した図である。
【
図14】実施形態3に係るエリプソメータを例示した側面図である。
【
図15】実施形態3に係るエリプソメータを例示した上面図である。
【
図16】実施形態3に係るエリプソメータにおいて、波面分割によるコヒーレンス低減素子を例示した上面図である。
【
図17】実施形態3に係るエリプソメータにおいて、振幅分割によるコヒーレンス低減素子を例示した上面図である。
【
図18】実施形態4に係るエリプソメータを例示した側面図である。
【
図19】実施形態4に係るエリプソメータにおいて、試料の測定面における面状照明領域及び面状照明領域からの反射光による干渉縞を例示した図である。
【
図20】実施形態4に係るエリプソメータにおいて、試料の測定面における面状照明領域及び面状照明領域からの反射光による干渉縞を例示した図である。
【
図21】実施形態4に係るエリプソメータにおいて、試料の測定面における面状照明領域及び面状照明領域からの反射光による干渉縞を例示した図である。
【
図22】実施形態4に係るエリプソメータにおいて、試料の測定面における面状照明領域及び面状照明領域からの反射光による干渉縞を例示した図である。
【
図23】実施形態4に係るエリプソメータにおいて、スキャン方向にステージをスキャンさせた場合の所定の点での干渉縞における強度を例示したグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は、反射光の強度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0021】
(実施形態1)
実施形態1に係るエリプソメータを説明する。
図1は、実施形態1に係るエリプソメータを例示した側面図である。
図2は、実施形態1に係るエリプソメータを例示した上面図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、エリプソメータ1は、照明光学系10、受光光学系20、解析装置60を備えている。照明光学系10は、光源11、ファイバー12、照明レンズ13、偏光子14を含んでいる。受光光学系20は、受光レンズ21、偏光光学素子30、干渉部材40、画像検出器50を含んでいる。
【0023】
エリプソメータ1は、照明光L10を試料70の測定面71に対して斜入射させ、照明光L10が測定面71で反射した反射光R10を受光して、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを測定する。試料70は、例えば、各種の膜または配線構造等を含むウェハであるが、これに限らず、結晶等の固体材料でもよい。試料70は、入射面及び反射面に直交するスキャン方向に移動するステージ72上に配置されている。
【0024】
エリプソメータ1の構成の一例をおおまかに言えば、以下のとおりである。すなわち、エリプソメータ1は、試料70の測定面71の法線方向に対して、照明光学10系の光軸Cが傾斜した傾斜光学系で計測する。照明光L10は、測定面71において、光軸Cに対して垂直方向に伸びた線状の照明領域LLAを照明する。
【0025】
測定面71で反射された反射光R10は、照明光学系10と反対側に同じ角度だけ光軸Cが傾斜した受光光学系20に入射する。反射光R10は、受光光学系20において、シリンドリカルレンズやトロイダルミラー等を含む受光レンズ21により、入射面内では、瞳空間で平行光となる。反射光R10は、画像検出器50上で瞳位置21hとなる配置である。反射光R10の光軸を含み、入射面と垂直な反射面内では、画像検出器50上は、測定面71の像位置21zとなる。
【0026】
入射面内の瞳空間で平行光となった反射光R10は、ノマルスキープリズム等の偏光光学素子30で、P偏光及びS偏光が入射面内でそれぞれ異なる角度に進行するように分割される。そして、反射光R10のP偏光及びS偏光は、画像検出器50上で、再び同一点で重なる。画像検出器50と偏光光学素子30との間には、分割されたP偏光及びS偏光の偏光方向の中間の角度に透過軸を持つ偏光板等の干渉部材40が設置される。
【0027】
P偏光及びS偏光は、干渉部材40の透過後に互いに可干渉となる。P偏光及びS偏光は、画像検出器50の受光面で入射面に沿って干渉縞を形成する。干渉部材40は、一般のエリプソメータの検光子と同じように画像検出器50の前に配置されている。しかしながら、役割としては、2つの偏光方向が直交するP偏光とS偏光とを可干渉にするためであり、目的は全く異なる。
【0028】
上記の配置により、P偏光とS偏光とは、画像検出器50の受光面で互いの干渉による干渉縞を形成する。入射面と垂直な反射面内では、画像検出器50の受光面は、試料70の測定面71と共役関係(物体と像の関係)にある。画像検出器50の受光面で、測定面71の像が形成される。よって、測定面71の像は、測定面71の線状の照明領域LLAに沿った位置情報を含んでいる。以下で、詳細を説明する。
【0029】
照明光学系10は、直線偏光からなる照明光L10で試料70の測定面71を照明する。測定面71に入射する照明光L10の光軸Cは、測定面71の法線に対して傾斜している。ここで、「直線偏光からなる照明光L10」は、直線偏光だけでなく、著しく測定精度を毀損しない程度の他の光成分を含んでもよいことを意味する。また、「第1偏光からなる」、「第2偏光からなる」、「P偏光からなる」、「S偏光からなる」も同様に、著しく測定精度を毀損しない程度の他の光成分を含んでもよいことを意味する。
【0030】
光源11は、照明光L10を生成する。光源11は、例えば、広域波長の照明光L10を生成する。光源11が生成する照明光L10は、例えば、白色光を含む。なお、光源11が生成する照明光L10は、広域波長を含めば、白色光に限らない。光源11から生成された照明光L10は、ファイバー12に入射する。
【0031】
ファイバー12は、一端及び他端を有するケーブル状の導光部材である。ファイバー12の一端に入射した照明光L10は、ファイバー12の他端から出射する。ファイバー12の他端から出射した照明光L10は、照明レンズ13に入射する。
【0032】
照明レンズ13は、例えば、シリンドリカルレンズまたはトロイダルミラー等を含む。照明レンズ13は、複数のレンズを組み合わせたものでもよい。照明レンズ13は、入射した照明光L10の角度分布を変化させる。照明レンズ13は、直線偏光からなる照明光L10で測定面71を照明する。照明レンズ13は、例えば、ファイバー12の他端から出射した照明光L10を、線状に集光させて測定面71を照明する。照明レンズ13は、入射面に直交する側方から見て、点状に照明光L10を集光し、反射面に直交する上方から見て、照明光L10を平行光に変換する。照明光L10は、測定面71において、線状の照明領域を照明する。
【0033】
測定面71において線状に照明された領域を線状照明領域LLAと呼ぶ。線状照明領域LLAは、照明光L10の光軸Cに直交する方向に延びた線状である。また、線状照明領域LLAは、入射面に直交する方向に延びている。さらに、線状照明領域LLAは、スキャン方向に直交している。
【0034】
照明レンズ13と試料70との間には偏光子14が配置されている。よって、照明レンズ13は、照明光L10を偏光子14に照射させ、偏光子14を介して、測定面71に対して線状に集光させる。
【0035】
偏光子14は、光源11から生成された照明光L10が照明レンズ13を介して入射される。偏光子14は、例えば、偏光板である。偏光子14は、一方向の直線偏光からなる照明光L10を透過させる。偏光子14は、完全偏光とした照明光L10を透過させる。例えば、偏光子14は、偏光方向が紙面に対して45°傾いた直線偏光の照明光L10を試料70に対して出射する。本実施形態のエリプソメータ1では、試料70の測定面71に入射する照明光L10の光軸C、及び、測定面71で反射した反射光R10の光軸Cは、測定面71の法線に対して傾斜している。
【0036】
受光レンズ21は、直線偏光からなる照明光L10が試料70の測定面71で反射した反射光R10を透過させる。受光レンズ21は、例えば、シリンドリカルレンズまたはトロイダルミラー等を含む。受光レンズ21は、複数のレンズを組み合わせたものでもよい。受光レンズ21は、入射面に直交する側方から見て、反射光R10を平行光にして透過させる。受光レンズ21は、反射面に直交する上方から見て、画像検出器50上に線上照明領域LLAを結像させる。受光レンズ21は、反射光R10を透過させ、偏光光学素子30に入射させる。
【0037】
試料70の測定面71を照明する照明光L10は、一方向の直線偏光からなっている。そのような一方向の直線偏光からなる照明光L10は、線状に集光されながら、試料70の測定面71に入射する。よって、照明光L10が完全偏光かつ直線偏光であって、光軸Cが測定面71に対して傾斜した場合には、測定面71に入射する方位によって、照明光L10は、P偏光の部分もあれば、S偏光の部分もある。照明光L10におけるS偏光の部分は、S偏光として反射する。照明光L10におけるP偏光の部分は、P偏光として反射する。したがって、試料70の測定面71で反射した反射光R10は、測定面71においてP偏光及びS偏光の光を含む。
【0038】
受光レンズ21は、直線偏光からなる照明光L10が試料70の測定面71で反射した反射光R10であって、測定面71において第1方向の第1偏光及び第1方向と異なる第2方向の第2偏光とからなる反射光R10を透過させる。例えば、第1偏光は、測定面71においてS偏光であり、第2偏光は、測定面71においてP偏光である。
【0039】
受光レンズ21を透過した反射光R10は、偏光光学素子30に入射する。偏光光学素子30は、例えば、ノマルスキープリズムを含む。なお、偏光光学素子30は、ノマルスキープリズムに限らず、ウォラストンプリズム、または、ローションプリズムを含んでもよい。
【0040】
偏光光学素子30は、直線偏光からなる照明光L10が試料70の測定面71で反射した反射光R10を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光に分離する。例えば、偏光光学素子30は、2つの直線偏光を入射面内で分離する。偏光光学素子30が分離する互いに直交した偏光方向を、X方向及びY方向とする。この場合、X方向とY方向が作る面と反射光R10の光軸Cは直交する。そうすると、偏光光学素子30は、X方向の直線偏光とY方向の直線偏光とに分離する。例えば、偏光光学素子30は、測定面71においてP偏光であった光及びS偏光であった光を含む反射光R10を、P偏光とS偏光とに分離する。
【0041】
偏光光学素子30は、分離させたX方向の直線偏光とY方向の直線偏光とを、画像検出器50上で再び同一点となるように偏向して出射させる。偏光光学素子30を出射した反射光R10は、干渉部材40を介して画像検出器50に入射する。
【0042】
図3は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、干渉部材40を透過する直線偏光を例示した図である。
図3に示すように、偏光板等の干渉部材40は、偏光光学素子30が分離させたX方向の偏光方向及びY方向の偏光方向と、所定の角度だけ傾いた方向の直線偏光の成分を透過させる。所定の角度だけ傾いた方向の軸を透過軸TXaと呼ぶ。透過軸TXaは、例えば、45[deg]方向である。この場合には、干渉部材40は、偏光光学素子30が分離させたX方向の偏光方向及びY方向の偏光方向と、45[deg]傾いた方向における直線偏光の成分を透過させる。
【0043】
したがって、干渉部材40は、X方向の偏光方向を有する直線偏光のうち、X方向と45[deg]傾いた偏光成分を透過させる。また、干渉部材40は、Y方向の偏光方向を有する直線偏光のうち、Y方向と45[deg]傾いた偏光成分を透過させる。よって、互いに直交した2つの直線偏光は、干渉部材40を透過することによって、透過軸TXaに偏光した偏光成分として出射する。よって、互いに直交した2つの直線偏光は、可干渉となる。
【0044】
このように、干渉部材40は、各偏光方向と異なる方向における2つの直線偏光の成分を透過させる偏光板を含む。これにより、干渉部材40は、各偏光方向と異なる方向における2つの直線偏光の成分を干渉させた干渉縞を形成する。干渉部材40から出射した当該偏光成分からなる反射光R10は、画像検出器50に入射する。
【0045】
画像検出器50は、入射した反射光R10を受光する。画像検出器50の受光面は、入射面に直交する側面から見て、受光レンズ21の瞳位置と共役な瞳共役位置21hに配置されている。また、画像検出器50の受光面は、反射面に直交する上方から見て、試料70の測定面71の像位置21zに配置されている。反射光R10は、互いに直交した2つの直線偏光における同じ方向の偏光成分を含んでいる。よって、反射光R10は、画像検出器50上で干渉する。
【0046】
図4は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、入射面に直交する側方から見て、画像検出器50に入射する反射光R10に含まれた各直線偏光の波面を例示した図である。
図5は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器50上で干渉した反射光R10の干渉縞を例示した図である。
【0047】
図4に示すように、偏光光学素子30によって分離された2つの直線偏光RX(例えばP偏光)及びRY(例えばS偏光)からなる反射光R10は、干渉部材40を透過し、画像検出器50上で干渉縞51を形成する。2つの直線偏光RX及びRYは、例えば、P偏光及びS偏光である。
図5に示すように、画像検出器50は、干渉部材40を透過した反射光R10の各偏光成分の干渉縞51を検出する。干渉縞51は、測定面71上でP偏光及びS偏光の反射光R10により形成される。
図5の干渉縞51の縦方向は、入射面に直交した側方から見た場合の偏光情報を示している。
図5の干渉縞51の横方向は、反射面に直交した上方から見た場合の測定面71面上の線上照明領域LLAの位置を示している。
【0048】
このように、エリプソメータ1において、測定面71上で反射した照明光R10は、受光光学系20における受光レンズ21を透過し、ノマルスキープリズム等の偏光光学素子30に入射する。そして、入射面内でP偏光とS偏光に角度分割される。分割された反射光R10は、透過軸TXaが45[deg]の検光子等の干渉部材40を透過することで可干渉となる。このようにして、エリプソメータ1は、干渉縞51を画像検出器50上に形成する。
【0049】
解析装置60は、例えば、PC(Personal Computer)、サーバ(Server)等の情報処理装置である。干渉縞51の画像情報は、解析装置60に転送される。解析装置60は、画像検出器50が検出した干渉縞51から、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する。
【0050】
図6は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器50上の干渉縞の強度を例示した図であり、横軸は、画像検出器50の受光面上の位置を示し、縦軸は、反射光R10の干渉縞51の強度を示す。
【0051】
図6に示すように、解析装置60は、線状照明領域LLAでの干渉縞51の強度分布から、下記の(1)式に示す周期関数のフィッティングまたはフーリエ変換により、それぞれ振幅情報と位相情報を抽出する。上記(1)式において、E
P及びE
Sは、それぞれP偏光及びS偏光の電場振幅である。
【0052】
【0053】
干渉縞51のAC成分は、2|EP||ES|exp(iΔ)と表すことができ、干渉縞51の位相成分は、そのままエリプソメトリ係数のΔである。一方で、エリプソメトリ係数Ψは、干渉縞51のAC成分をDC成分で割ったコントラスト情報から求めることができる。
【0054】
一般に、エリプソメトリ係数Ψ及びΔは、偏光ごとの複素反射率であるrP及びrSを用いて、rP及びrS=tan(Ψ)exp(iΔ)として定義される。よって、エリプソメータ1を計測装置として用いる場合には、光学定数と構造が既知の物質を測定して、上記の手順で、Ψref及びΔrefを先に求めておく。そして、既知の光学定数と構造から、反射率がP偏光及びS偏光ともに1で、かつ、反射時のP偏光とS偏光との位相差が0の場合のエリプソメトリ係数Ψdef及びΔdefを求めておく。その後、興味がある計測試料を測定し、同様に、エリプソメトリ係数Ψsample及びΔsampleを得る。最後に、Ψactual=Ψsample/ΨdefとΔactual=Δsample―Δdefで定義される、ΨactualとΔactualが求める試料70におけるエリプソメトリ係数Ψ及びΔである。
【0055】
また、本実施形態のエリプソメータ1は、試料70の測定面71上の線状照明領域R1に沿った複数点を同時に計測できる。
図7及び
図8は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、試料70の測定面71における線状照明領域LLA及び線状照明領域LLAからの反射光R10による干渉縞51を例示した図である。
図7は、時刻t1における干渉縞51を示し、
図8は、時刻t2における干渉縞51を示す。時刻t1から時刻t2までの間に、試料70は、スキャン方向DSにスキャンされている。よって、画像検出器50は、スキャン方向DSにスキャンされた干渉縞51を検出する。
【0056】
図7に示すように、時刻t1では、測定面71上の点A1を含む線状照明領域LLAの各点が作る干渉縞51が画像検出器50上で計測される。時刻t2では、点A2及び点A3を含む線状照明領域LLAからの反射光R10による干渉縞51を検出する。ステージ72でスキャン方向DSにスキャンさせることにより、2次元状の領域の計測も可能である。
【0057】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態のエリプソメータ1は、エリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定において、偏光光学素子30を利用する。偏光光学素子30は、試料70の測定面71で反射した反射光R10を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光RX及びRYに分離し、分離した2つの直線偏光から干渉縞51を画像検出器50上に形成する。その干渉縞51のコントラスト及び位相の測定結果から、2つの独立パラメータであるエリプソメトリ係数ΨとΔを直接測定する。これにより、これまでのエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定に必要であった回転する偏光子や補償子を用いた時系列の少なくとも4個の偏光成分の光量測定を不要とする。
【0058】
また、これまでのエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定は、複数の異なる偏光状態の光の光量からストークス(stokes)パラメータを求め、求めたストークスパラメータからエリプソメトリ係数Ψ及びΔを求めている。本実施形態では、直接にエリプソメトリ係数Ψ及びΔを求めることができる。よって、短時間で測定することができるので、OCD測定のスループットを向上させることができる。
【0059】
また、これまでのエリプソメータと比較して、可動部がないため、より安定したエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定をすることができる。
【0060】
さらに、照明光L10は、線状の線状照明領域LLAを照明し、試料70を搭載したステージ72のスキャンと組み合わせることで、測定面71内の2次元領域のエリプソメトリ係数Ψ及びΔを高速に得ることが可能となる。
【0061】
また、OCD測定装置に用いられる多くのエリプソメータにおいては、試料70の測定面71に入射させる照明光L10の入射角は、ブリュースター(brewster)角で固定であった。しかしながら、本実施形態では、受光レンズ21の瞳位置に共役な瞳共役位置21hに画像検出器50を配置させることで、任意の入射角、入射方位でのエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定を可能とする。このような構成は、検光子等を回転させるこれまでのエリプソメータの構成では容易には実現することができない。
【0062】
その結果、例えば、ウェハ上の微細構造モデルへのフィッティングにおいて、より多くの条件での計測結果を用いることができ、OCD測定装置で問題となることの多い、異なるDimensionのカップリングの低減にもつながるため、特に3次元化が進展した現在の半導体構造の計測において精度を向上させることが期待される。
【0063】
また、照明光L10による試料70の線状照明領域LLAを、小さくすることができ、チップ内のDimensionの分布の評価もより高い位置分解能で行うことが可能となる。これらの測定結果をリソグラフィーや成膜、エッチング工程に反映させ、半導体製造のプロセスコントロールを適切に行うことができる。これにより、半導体製造における歩留まり及び生産性を向上させることができる。
【0064】
さらに、ロジックにおいて、半導体チップ内に配置されているエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定用のテストパターンを、これまでの数十[μm]角であったものを、数[μm]角以下まで小さくすることができる。このため、半導体チップ内の回路に使える領域が増え、半導体デバイスのコスト低減にも貢献することができる。
【0065】
これらのスループット向上と安定性向上効果により、本発明技術の適用が期待される半導体製造工程において、これまで1ウェハ内で数点であったOCD測定が、ウェハ上のSShot内、Chip内、Memory-cell内の回路線幅や膜厚分布までも行え、不良検出や許容内での変動による不良予測にも利用できることで、歩留まりと生産性向上に貢献し、半導体デバイスのコスト低減にも繋がる。
【0066】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るエリプソメータを説明する。本実施形態のエリプソメータ2では、干渉部材40として、偏光板の代わりに、偏光ビームスプリッタを用いる。
図9は、実施形態2に係るエリプソメータを例示した側面図である。
図10は、実施形態2に係るエリプソメータにおいて、受光光学系20を例示した図である。
図11は、実施形態2に係るエリプソメータにおいて、画像検出器50上で干渉した反射光R10の干渉縞を例示した図である。
【0067】
図9~
図11に示すように、エリプソメータ2は、実施形態1と同様に、照明光学系10、受光光学系20、解析装置60を備えている。照明光学系10及び解析装置60は、実施形態1と同様である。
【0068】
受光光学系20は、受光レンズ21、偏光光学素子30、干渉部材41、画像検出器50を含んでいる。干渉部材41は、例えば、偏光ビームスプリッタ42である。本実施形態のエリプソメータ2は、ノマルスキープリズム等の偏光光学素子31で角度分割された2つの異なる偏光を、偏光ビームスプリッタ42でさらに2分割する。
【0069】
図11に示すように、エリプソメータ2は、偏光ビームスプリッタ42によって2分割した2つの異なる偏光、すなわち、P偏光及びS偏光から、画像検出器50上で2つの干渉縞51a及び51bを形成する。
【0070】
例えば、P偏光とS偏光を偏光光学素子30により、入射面内で角度分割する場合に、偏光ビームスプリッタ42の透過軸TX1及びTX2がP偏光とS偏光の間の角度となるようにする。例えば、
図10に示すように、光軸Cを回転軸として偏光ビームスプリッタ42を回転した配置とする。この場合、偏光ビームスプリッタ42は、2つの直交する透過軸TX1及びTX2を有している。それぞれの透過軸TX1及びTX2を透過した反射光R10は、P偏光とS偏光の両方からなっている。このため、偏光ビームスプリッタ42を透過した反射光R10は、画像検出器50上で2つの干渉縞51a及び51bを形成する。
【0071】
図12は、実施形態2に係るエリプソメータにおいて、偏光光学素子30及び偏光ビームスプリッタ42を例示した図である。
図13は、実施形態2に係るエリプソメータにおいて、偏光ビームスプリッタ42で分離される直線偏光を例示した図である。
図12及び
図13に示すように、干渉部材41は、各偏光方向と角度θ傾いた透過軸TX1方向における2つの直線偏光の成分と、角度θと90[deg]傾いた透過軸TX2方向における2つの直線偏光の成分と、に分離する偏光ビームスプリッタ42を含む。画像検出器50は、透過軸TX1方向における2つの直線偏光の成分の干渉縞51a、及び、透過軸TX2方向における2つの直線偏光の成分の干渉縞51bを検出する。
【0072】
以下で、具体的に説明する。例えば、S偏光の第1方向に平行にPupil-X軸、P偏光の第2方向に平行にPupil-Y軸となるように、XY直交座標系を定義する。偏光ビームスプリッタ42は、光軸Cを中心軸にして、角度θだけ回転している場合を考える。
【0073】
試料70の測定面71上から反射した反射光R10のP偏光成分を|Erp|、S偏光成分を|Ers|とすると、偏光ビームスプリッタの透過軸TX1を透過する成分|Ep1|及び|Es1|は、それぞれ、(2)式及び(3)式となる。ここで、角度θは既知とする。
【0074】
【0075】
ここで、P偏光成分|Erp|及びS偏光成分|Ers|を仮想的に完全コヒーレントとして干渉させた場合を考える。その場合には、その干渉光のAC成分及びDC成分は、以下の(4)式及び(5)式のように記載できる。
【0076】
【0077】
また、透過軸TX1のAC成分AC1及び透過軸TX1のDC成分DC1は、以下の(6)式及び(7)式のように記載できる。
【0078】
【0079】
同様に、透過軸TX2のAC成分AC2及び透過軸TX2のDC成分DC2は、以下の(8)式及び(9)式のように記載できる。
【0080】
【0081】
ここで、AC成分AC及びDC成分DCと、透過軸TX1のAC成分AC1及びDC成分DC1、並びに、透過軸TX2のAC成分AC2及びDC成分DC2との関係は、以下の(10)式及び(11)式のように表せる。
【0082】
【0083】
ここで、以下の(12)式が成り立つので、(13)式が得られる。
【0084】
【0085】
ただし、解は2つ得られる。2つの解は、|Erp|/|Ers|と、|Ers|/|Erp|に相当する。この2つの値の判別の不定を許容すれば、AC1及びDC1のみから、Ψを得ることができる。例えば、|Erp|と|Ers|とで、どちらが大きいかが既知の場合である。
【0086】
|Erp|と|Ers|とで、どちらが大きいかが既知でない場合には、偏光ビームスプリッタ42が2つの透過軸TX1及びTX2を持つことより、下記の(14)式及び(15)式のように、|Erp|及び|Ers|をそれぞれ求めることも可能となる。
【0087】
【0088】
ただし、(14)式及び(15)式からわかるように、θが45[deg]の場合には、分母が0となり、解を得ることができない。同様に、θが0[deg]または90[deg]の場合には、透過軸TX1のAC成分AC1及び透過軸TX2のAC成分AC2が0となるため、Δの解を得ることができない。よって、偏光ビームスプリッタ42における偏光の透過軸TX1及びTX2は、0°、45°、90°になる配置を避ける必要がある。すなわち、θは、0[deg]よりも大きく、45[deg]未満であるか、または、45[deg]よりも大きく、90[deg]未満である。
【0089】
本実施形態のエリプソメータ2によれば、干渉部材40として、検光子の代わりに偏光ビームスプリッタ42を用いることで、追加の干渉縞51bを画像検出器50b上に作成し、追加の情報を得ることができる。利点としては、検光子の場合に捨てていた成分を検出に利用することができる。よって、S/Nを向上することができる。しかも、位相を180[deg]反転した干渉縞51a及び51bを形成することができる。これにより、画像検出器50のみで検出された干渉縞51では、谷の位置に相当する強度が小さい点を、画像検出器50a及び50bを用いて検出することにより、山の位置に相当する強度の大きい点とすることができる。よって、相補的に利用することが可能となる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0090】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るエリプソメータを説明する。本実施形態は、光源11として、レーザを出射するコヒーレント光源を用いて線状照明領域LLAを照明する。
図14は、実施形態3に係るエリプソメータを例示した側面図である。
図15は、実施形態3に係るエリプソメータを例示した上面図である。
【0091】
図14及び
図15に示すように、エリプソメータ3は、実施形態1と同様に、照明光学系10、受光光学系20、解析装置60を備えている。受光光学系20及び解析装置60は、実施形態1と同様である。
【0092】
照明光学系10は、光源15、ファイバー12、変換レンズ13a、照明レンズ13b、コヒーレンス低減素子16を含んでいる。
【0093】
光源15は、例えば、レーザ光源である。光源15は、照明光L10として、レーザ光を生成する。よって、光源15は、一方向の直線偏光からなる照明光L10を生成する。光源15から生成された照明光L10は、ファイバー12を介して変換レンズ13aに入射する。
【0094】
変換レンズ13aは、例えば、シリンドリカルレンズまたはトロイダルミラー等を含む。変換レンズ13aは、複数のレンズを組み合わせたものでもよい。変換レンズ13aは、ファイバー12から出射した照明光L10を平行光に変換する。平行光に変換された照明光L10は、コヒーレンス低減素子16に入射する。
【0095】
コヒーレンス低減素子16は、平行光に変換された照明光L10を透過させる。その際に、コヒーレンス低減素子16は、照明光L10のコヒーレントを低減させる。照明光L10がレーザ光の場合には、線状照明領域LAAに沿った方向では、照明光L10が平行光となるため空間的コヒーレンスが高くなり過ぎる。よって、不要な干渉縞やスペックル等が発生する可能性がある。そこで、コヒーレンス低減素子16は、線状照明領域LAAに沿って、照明光L10の光路長が異なるようにする。
【0096】
図16は、実施形態3に係るエリプソメータにおいて、波面分割によるコヒーレンス低減素子16aを例示した上面図である。
図16に示すように、コヒーレンス低減素子16aは、例えば、階段状プリズムを含む。コヒーレンス低減素子16aは、階段状プリズムを用いた波面分割により、空間的にコヒーレンスを低減させる。具体的には、コヒーレンス低減素子16aは、反射面に直交する上方から見て、線状照明領域LAAが延びた方向に沿って、照明光L10を複数のビームLBに分割する。そして、コヒーレンス低減素子16aは、分割された各ビームLBの光路長を異ならせる。これにより、コヒーレンス低減素子16aは、照明光L10の空間的コヒーレンスを適切に調整する。
【0097】
図17は、実施形態3に係るエリプソメータにおいて、振幅分割によるコヒーレンス低減素子16bを例示した上面図である。
図17に示すように、コヒーレンス低減素子16bは、ハーフミラー膜17及び反射膜18を含む。コヒーレンス低減素子16bは、ハーフミラー膜17及び反射膜18を用いた振幅分割により、空間的にコヒーレンスを低減させる。具体的には、コヒーレンス低減素子16bは、ハーフミラー膜17における透過及び反射、並びに、反射膜18における反射を複数回繰り返させることにより、複数のビームを形成する。こうして、コヒーレンス低減素子16bは、各ビームの光路長を異ならせることができる。
【0098】
例えば、コヒーレンス低減素子16bは、ハーフミラー膜17を透過したビームLB1と、ハーフミラー膜17で反射し、反射膜18で反射し、ハーフミラー膜17を透過したビームLB2と、ハーフミラー膜17及び反射膜18で2回反射し、ハーフミラー膜17を透過したビームLB3と、ハーフミラー膜17及び反射膜18で3回反射し、ハーフミラー膜17を透過したビームLB4と、ハーフミラー膜17及び反射膜18で4回反射し、ハーフミラー膜17を透過したビームLB5と、を含む各ビームの光路長を異ならせる。これにより、コヒーレンス低減素子16bは、照明光L10の空間的コヒーレンスを適切に調整する。
【0099】
コヒーレンス低減素子16a及び16bを透過した照明光L10は、照明レンズ13bに入射する。照明レンズ13bは、直線偏光からなる照明光L10で測定面71を照明する。照明レンズ13bは、空間的コヒーレンスを適切に調整された照明光L10で、線状照明領域LLAを照明する。
【0100】
本実施形態のエリプソメータ3によれば、光源15として、レーザ光源を用いることができる。その際に、コヒーレンス低減素子16は、照明光L10の空間的コヒーレンスを適切に調整することができる。よって、不要な干渉縞やスペックル等を抑制することができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1及び2の記載に含まれている。
【0101】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係るエリプソメータを説明する。本実施形態のエリプソメータは、試料70の測定面71の共役面にウォラストンプリズムを配置し、時系列で干渉縞情報を得る構成である。
図18は、実施形態4に係るエリプソメータを例示した側面図である。
図19は、実施形態4に係るエリプソメータにおいて、試料70の測定面71における面状照明領域及び面状照明領域からの反射光R10による干渉縞51を例示した図である。
【0102】
図18及び
図19に示すように、エリプソメータ4は、照明光学系10、受光光学系20、解析装置60を備えている。照明光学系10は、光源11、ファイバー12、照明レンズ13、偏光子14を含んでおり、実施形態1と同様の構成である。しかしながら、本実施形態の照明光L10は、試料70の測定面71において、所定の広がりを有する面状の面状照明領域MLAを照明する。具体的には、照明レンズ13は、照明光L10を、面状に集光させて測定面71を照明する。画像検出器50により検出される検出領域SAは、面状照明領域MLAに含まれている。
【0103】
照明レンズ13と試料70との間には偏光子14が配置されている。よって、照明レンズ13は、照明光L10を偏光子14に照射させ、偏光子14を介して、測定面71に対して面状に集光させる。
【0104】
受光光学系20は、受光レンズ21a、偏光光学素子31、リレーレンズ21b、干渉部材40、画像検出器50を含んでいる。受光レンズ21aは、直線偏光からなる照明光L10が試料70の測定面71で反射した反射光R10を透過させる。受光レンズ21aは、例えば、シリンドリカルレンズまたはトロイダルミラー等を含む。受光レンズ21aは、複数のレンズを組み合わせたものでもよい。受光レンズ21aは、反射光R10を透過させ、偏光光学素子31に入射させる。
【0105】
偏光光学素子31は、例えば、ウォラストンプリズムを含む。偏光光学素子31は、受光光学系20における測定面71の共役面に、ウォラストンプリズムの接合面が一致するように配置されている。そして、画像検出器50上でP偏光及びS偏光の像が同一点に形成されるようにする。
【0106】
偏光光学素子31は、P偏光とS偏光とを入射面内で分離して画像検出器50上で干渉縞51を形成する。画像検出器50上では、反射面に直交する上方から見て、干渉縞には、測定面71における位置情報が含まれている。入射面に直交する側方から見て、干渉縞には、偏光情報と測定面71における位置情報の両方が含まれている。
【0107】
図20~
図22は、実施形態4に係るエリプソメータにおいて、試料70の測定面71における面状照明領域及び面状照明領域からの反射光R10による干渉縞51を例示した図である。
図23は、実施形態4に係るエリプソメータにおいて、スキャン方向DSにステージ72をスキャンさせた場合の所定の点での干渉縞51における強度を例示したグラフであり、横軸は時間を示し、縦軸は、反射光R10の強度を示す。
図20は、時刻t1における干渉縞を示し、
図21は、時刻t2における干渉縞を示し、
図22は、時刻t3における干渉縞を示す。
【0108】
画像検出器50上の左右方向は、偏光情報及び測定面71における位置情報が混在している。しかしながら、測定面71をスキャン方向DSに沿ってスキャンしながら計測し、測定面71上の同一点(例えば点A1)の光量を計測することで、
図23に示すように、偏光情報のみを含む干渉縞情報を抽出することが可能となる。
【0109】
本実施形態のエリプソメータ4によれば、照明光L10は、面状の面状照明領域MLAを照明するので、測定面71内の2次元領域のエリプソメトリ係数Ψ及びΔを高速に得ることが可能となる。また、偏光光学素子31として、ウォラストンプリズムを用いることができ、光学的設計の自由度を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1~3の記載に含まれている。
【0110】
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1~4の各構成は相互に組み合わせることができる。また、実施形態1~4のエリプソメータを備えた半導体装置の検査装置も、本実施形態の技術的思想に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1、2、3、4 エリプソメータ
10 照明光学系
11 光源
12 ファイバー
13、13b 照明レンズ
13a 変換レンズ
14 偏光子
15 光源
16、16a、16b コヒーレンス低減素子
20 受光光学系
21、21a 受光レンズ
21h 位置
21z 位置
30 偏光光学素子
40、41 干渉部材
42 偏光ビームスプリッタ
50 画像検出器
51、51a、51b 干渉縞
60 解析装置
70 試料
71 測定面
72 ステージ
A1、A2、A3 点
C 光軸
DS スキャン方向
L10 照明光
LB、LB1、LB2、LB3、LB4、LB5 ビーム
LLA 線状照明領域
MLA 面状照明領域
R10 反射光
SA 検出領域
TXa、TX1、TX2 透過軸