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特許7471942鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/02 20060101AFI20240415BHJP
   F16K 31/44 20060101ALI20240415BHJP
   F16K 31/46 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
F16H19/02 D
F16K31/44 C
F16K31/46 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020119227
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022015995
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今岡 憲彦
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-50994(JP,U)
【文献】特開昭62-211047(JP,A)
【文献】米国特許第4865577(US,A)
【文献】特開2017-219130(JP,A)
【文献】特開2001-90130(JP,A)
【文献】特開2010-99459(JP,A)
【文献】特表2019-521869(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103867670(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/02
F16K 31/44
F16K 31/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状部材を介して接続された操作プーリから伝達先プーリへ回転力を伝達するための回転力伝達機構を含む、鉄道車両の床下配管に組み込まれたボールコックの操作ユニットであって、
前記ボールコックのステムに装着され該ステムを回転駆動するステム装着部と、該ステム装着部を介して前記ステムを回転操作する操作部とを含み、
前記操作プーリ及び前記伝達先プーリは、平面視で、中心からの距離が最大となる最大径部分と中心からの距離が最小となる最小径部分とを、45°の位相間隔で交互に4つずつ備えた同一の回転対称形状を有し、
前記線状部材は、前記操作プーリの回転位置と前記伝達先プーリの回転位置とを、前記同一の回転対称形状について45°の位相差で同期させるように接続され
前記ステム装着部は、前記ステムと一体に回転可能に設置された前記伝達先プーリを含み、
前記操作部は、前記ステム装着部とは離間した位置において、回転可能に配置される操作ハンドルと、該操作ハンドルと一体に回転可能に設置された前記操作プーリとを含み、
前記線状部材は、鉄道車両の床下設置物と干渉することなく、一端が前記操作プーリに連結されると共に、他端が前記伝達先プーリに連結されたワイヤロープであり、
前記ボールコックは、約90°の回転操作で全開状態と全閉状態とが切り替えられ、
前記操作プーリは、前記ボールコックが全開状態或いは全閉状態にあるときに、前記最大径部分に相当する外周位置近傍から前記ワイヤロープが巻き取られるように、初期の回転位置が設定されており、
前記伝達先プーリは、前記ボールコックが全開状態或いは全閉状態にあるときに、前記最小径部分に相当する外周位置近傍から前記ワイヤロープが繰り出されるような初期の回転位置にあることを特徴とする鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット
【請求項2】
前記同一の回転対称形状は、前記最大径部分から隣接する前記最小径部分を経て次の前記最大径部分に至るまでの形状線が、外側へ僅かに膨らんだ円弧状をなしていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット
【請求項3】
前記ワイヤロープを2本備え、前記操作プーリの回転対称位置に、前記2本のワイヤロープの各一端が係合され、前記伝達先プーリの回転対称位置に、前記2本のワイヤロープの各他端が係合されていることを特徴とする請求項又は記載の鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット。
【請求項4】
前記ワイヤロープを、鉄道車両の床下設置物を避けるように湾曲させて保持するブラケットを含み、
前記ステム装着部が、前記伝達先プーリを内部に収容するステム側ハウジングを備えると共に、前記操作部が、前記操作プーリを内部に収容する操作部側ハウジングを備えることを特徴とする請求項からのいずれか1項記載の鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転力伝達機構と、この回転力伝達機構を備えた鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニットとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
離れた位置から機器を遠隔操作するためや、機器を操作する操作力の低減を図るためなどに、それらの機器が必要とする操作内容に応じた伝達機構が使用される。例えば、特許文献1には、鉄道車両の床下の、直接的な操作が困難な位置に設置されたボールコックを、作業者が操作し易い位置から遠隔で操作する操作ユニットが開示されている。このような操作ユニットでは、ボールコックの開閉操作に必要な回転力を、作業者の操作により回転する一方のプーリから、ボールコックに接続された他方のプーリへ伝達するための機構が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6689137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述した従来の操作ユニットにより操作するボールコックは、全開状態と全閉状態とを切り替えるための操作中に、必要とする回転力の大きさが一定ではなく変化する。すなわち、全開状態や全閉状態にある回り始めの部分や、全開状態や全閉状態に近づく回り終わりの部分では、回り途中の部分よりも大きな回転力が必要となり、それに伴って、遠隔操作側でプーリを回転させるための回転操作力も重くなってしまう。これを回避するために、遠隔操作側のプーリ径とボールコック側のプーリ径とを異ならせれば、軽い回転操作力で操作が可能となるが、この場合は2つのプーリ間で回転角度が同期しないため、ボールコックの開閉に必要な回転角度を遠隔操作側で見誤ってしまい、ボールコックを開閉しきれなくなる虞がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、一方のプーリから他方のプーリへ回転力を伝達する機構において、2つのプーリ間で回転角度を同期させつつ、伝達する回転力の大きさを変化させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)線状部材を介して接続された操作プーリから伝達先プーリへ回転力を伝達するための回転力伝達機構であって、前記操作プーリ及び前記伝達先プーリは、平面視で、中心からの距離が最大となる最大径部分と中心からの距離が最小となる最小径部分とを、45°の位相間隔で交互に4つずつ備えた同一の回転対称形状を有し、前記線状部材は、前記操作プーリの回転位置と前記伝達先プーリの回転位置とを、前記同一の回転対称形状について45°の位相差で同期させるように接続されている回転力伝達機構。
【0008】
本項に記載の回転力伝達機構は、線状部材を介して接続された操作プーリから伝達先プーリへ回転力を伝達するものであり、それら2つのプーリが、平面視で、円形と異なる同一の回転対称形状を有している。すなわち、その同一の回転対称形状は、各プーリの中心からの距離が最大となる最大径部分と、各プーリの中心からの距離が最小となる最小径部分とを、45°の位相間隔で交互に4つずつ備えたものである。このため、操作プーリ及び伝達先プーリは、平面視で、例えば、最大径部分に相当する外周位置が12時方向に位置する回転状態と、最小径部分に相当する外周位置が12時方向に位置する回転状態との、実質的に2つの回転状態が、45°回転する毎に交互に出現するものとなる。
【0009】
そして、線状部材は、操作プーリの回転位置と伝達先プーリの回転位置とを、それらが有する同一の回転対称形状について45°の位相差で同期させるように接続されている。すなわち、操作プーリが上述した2つの回転状態のうち一方の回転状態にあるときには、伝達先プーリが2つの回転状態のうちもう一方の回転状態にあることになる。これにより、線状部材が操作プーリから離れる操作プーリの外周位置が、最大径部分に相当する外周位置近傍である場合は、線状部材が伝達先プーリから離れる伝達先プーリの外周位置が、最小径部分に相当する外周位置近傍となる。このため、実質的に、操作プーリのプーリ径が伝達先プーリのプーリ径よりも大きい状態となり、この状態では操作プーリから伝達先プーリへ比較的大きな回転力が伝達される。
【0010】
これに対し、線状部材が操作プーリから離れる操作プーリの外周位置が、最小径部分に相当する外周位置近傍である場合は、線状部材が伝達先プーリから離れる伝達先プーリの外周位置が、最大径部分に相当する外周位置近傍となる。このため、実質的に、操作プーリのプーリ径が伝達先プーリのプーリ径よりも小さい状態となり、この状態では操作プーリから伝達先プーリへ比較的小さな回転力が伝達される。このようにして、45°という小さな位相周期で、操作プーリと伝達先プーリとのプーリ径の大小関係が変化するため、操作プーリから伝達先プーリへ伝達される回転力の大きさが、細かい周期で変化するものとなる。しかも、操作プーリ及び伝達先プーリは、上述したような同一の回転対称形状を有しているため、少なくとも45°毎に回転角度(回転量)が同期するものとなる。
【0011】
)上記(1)項の回転力伝達機構を含む、鉄道車両の床下配管に組み込まれたボールコックの操作ユニットであって、前記ボールコックのステムに装着され該ステムを回転駆動するステム装着部と、該ステム装着部を介して前記ステムを回転操作する操作部とを含み、前記ステム装着部は、前記ステムと一体に回転可能に設置された前記伝達先プーリを含み、前記操作部は、前記ステム装着部とは離間した位置において、回転可能に配置される操作ハンドルと、該操作ハンドルと一体に回転可能に設置された前記操作プーリとを含み、前記線状部材は、鉄道車両の床下設置物と干渉することなく、一端が前記操作プーリに連結されると共に、他端が前記伝達先プーリに連結されたワイヤロープである鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット。
【0012】
本項に記載の鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニットは、鉄道車両の床下配管に組み込まれたボールコックを操作するものであり、上記(1)項の回転力伝達機構を備え、更にステム装着部及び操作部を含んでいる。ステム装着部は、ボールコックのステムに装着されて、そのステムを回転駆動するものであり、このステム装着部では、回転力伝達機構の伝達先プーリが、ステムと一体に回転可能に設置されている。又、操作部は、ステム装着部を介してステムを回転操作するものであり、操作ハンドルと、回転力伝達機構の操作プーリとを具備している。操作ハンドルは、ステム装着部とは離間した位置において回転可能に配置され、この操作ハンドルと一体に回転可能に操作プーリが設置されている。そして、回転力伝達機構の線状部材は、鉄道車両の床下設置物と干渉しないように引き回されたワイヤロープによって構成されている。すなわち、ワイヤロープの一端が操作プーリに連結されると共に、ワイヤロープの他端が伝達先プーリに連結されている。
【0013】
これにより、操作プーリの回転動作が、何らかの動力源に頼ることなく、ワイヤロープを介して機械的に伝達先プーリに伝達されるため、操作ハンドルの回転動作が、ボールコックを開閉させる回転動作として、ボールコックのステムに伝達される。しかも、上記(1)項に記載したような回転力伝達機構の構成により、45°の位相周期で、回転角度を同期させながら、操作プーリから伝達先プーリへ伝達される回転力の大きさ、換言すれば、操作ハンドルからボールコックのステムに伝達される回転力の大きさが変化するものである。更に、操作性を考慮して操作部の位置を決定することで、鉄道車両用配管のボールコックの位置の如何に関わらず、ボールコックの開閉操作が、作業者の操作性に優れた位置において行われるものとなる。
【0014】
)上記()項において、前記ボールコックは、約90°の回転操作で全開状態と全閉状態とが切り替えられ、前記操作プーリは、前記ボールコックが全開状態或いは全閉状態にあるときに、前記最大径部分に相当する外周位置近傍から前記ワイヤロープが巻き取られるように、初期の回転位置が設定されており、前記伝達先プーリは、前記ボールコックが全開状態或いは全閉状態にあるときに、前記最小径部分に相当する外周位置近傍から前記ワイヤロープが繰り出されるような初期の回転位置にある鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット(請求項)。
本項に記載の鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニットは、約90°の回転操作で全開状態と全閉状態とが切り替えられるボールコックを操作対象とするものである。そして、操作部に具備される操作プーリは、ボールコックが全開状態或いは全閉状態にあるときに、最大径部分に相当する外周位置近傍からワイヤロープが巻き取られるように、初期の回転位置が設定されている。このとき、ボールコックのステムと一体に回転可能に設置された伝達先プーリは、操作プーリと同一の回転対称形状について45°の位相差で回転位置が同期することから、ボールコックが同じ全開状態或いは全閉状態のときに、最小径部分に相当する外周位置近傍からワイヤロープが繰り出されるような初期の回転位置にある。
【0015】
従って、操作プーリ及び伝達先プーリがこのような初期の回転位置にある状態で、ボールコックをそのときとは反対の全開状態或いは全閉状態にするために、操作ハンドルが90°回転操作されると、操作プーリと伝達先プーリとのプーリ径の大小関係が以下のように変化する。すなわち、回り始めでは操作プーリが伝達先プーリよりもプーリ径が大きくなり、回り途中でプーリ径の大小関係が逆転し、回り終わりの方で再び操作プーリのプーリ径が伝達先プーリよりも大きくなる。このため、ボールコックが全開状態や全閉状態にある回り始めの部分や、ボールコックが全開状態や全閉状態に近づく回り終わりの部分では、プーリ径の大小関係に伴った大きな回転力が、操作ハンドルからボールコックのステムへ伝達されるものとなる。又、大きな回転力が必要ではない回り途中の部分では、プーリ径の大小関係に伴った比較的小さな回転力が、操作ハンドルからボールコックのステムへ伝達される。
【0016】
これにより、比較的大きな回転力が必要となる、ボールコックのステムの回り始めや回り終わりの部分でも、比較的軽い回転操作力で操作ハンドルの操作が行われるものとなり、ボールコックの開閉に必要な最大の回転操作力も抑制されるものである。更に、操作ハンドルと一体に回転する操作プーリと、ボールコックのステムと一体に回転する伝達先プーリとは、ボールコックが全開状態から全閉状態になるときや、全閉状態から全開状態になるときに、回転角度(回転量)が同期する。このため、操作ハンドルを操作する作業者が、ボールコックの開閉に必要な回転角度を見誤ることが抑制され、回転角度の過不足が発生し難くなり、ボールコックがより確実に開閉されるものとなる。
【0017】
)上記()項において、前記同一の回転対称形状は、前記最大径部分から隣接する前記最小径部分を経て次の前記最大径部分に至るまでの形状線が、外側へ僅かに膨らんだ円弧状をなしている鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット(請求項2)。
本項に記載の鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニットは、操作プーリと伝達先プーリとが有する同一の回転対称形状の、最大径部分からそれに隣接する最小径部分を経て次の最大径部分に至るまでの形状線が、外側へ僅かに膨らんだ円弧状をなしているものである。これにより、最大径部分と最小径部分との間でプーリ径が緩やかに変化するため、操作プーリから伝達先プーリへ伝達される回転力の大きさも緩やかに変化するものとなり、回転力の急激な変化が抑制されるものである。更に、円弧状の形状線の端部同士が突き合わされる位置に相当する最大径部分も、必然的に丸みを帯びた形状になるため、同一の回転対称形状の全体が丸みを帯びた形状になる。従って、操作プーリや伝達先プーリによる線状部材の巻き取りや繰り出しが、円滑に行われるものとなる。
【0018】
(5)上記(3)又は(4)項において、前記ワイヤロープを2本備え、前記操作プーリの回転対称位置に、前記2本のワイヤロープの各一端が係合され、前記伝達先プーリの回転対称位置に、前記2本のワイヤロープの各他端が係合されている鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット(請求項)。
本項に記載の鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニットは、線状部材としてのワイヤロープを2本備えており、これら2本のワイヤロープの各一端が操作プーリの回転対称位置に係合され、2本のワイヤロープの各他端が伝達先プーリの回転対称位置に係合されている。これにより、操作ハンドルを介して操作プーリが、ボールコックを開閉する何れの回転方向に回転された場合でも、2本ワイヤロープのうち、そのときに操作プーリに巻き取られるように接続されているワイヤロープを介して、伝達先プーリへより確実に回転力が伝達されるものとなる。更に、2本のワイヤロープをその案内経路の途中で交差させて、操作プーリに対する各一端の位置を入れ替え、又は、伝達先プーリに対する各他端の位置を入れ替えるように係合させることにより、操作ハンドルとボールコックのステムとが、同方向又は逆方向に選択的に回転するように構成されるものである。
【0019】
(6)上記(3)から(5)項において、前記ワイヤロープを、鉄道車両の床下設置物を避けるように湾曲させて保持するブラケットを含み、前記ステム装着部が、前記伝達先プーリを内部に収容するステム側ハウジングを備えると共に、前記操作部が、前記操作プーリを内部に収容する操作部側ハウジングを備える鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット(請求項)。
本項に記載の鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニットは、ワイヤロープを保持するブラケットにより、鉄道車両の床下設置物を避けるように湾曲させることで、ワイヤロープの引き回し経路が、鉄道車両の床下機器のレイアウトに応じて適切に設定されるものである。又、ステム装着部及び操作部の各々がハウジングを有していることで、ステム装着部及び操作部の各々の構成要素がハウジングによって一体にまとめられ、各ハウジング内にワイヤロープの一端側又は他端側が案内される。これにより、ボールコックに対するステム装着部の装着が容易になると共に、作業者の操作性に優れた任意の位置への、操作部の設置も容易になるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記のような構成であるため、2つのプーリ間で回転角度を同期させつつ、伝達する回転力の大きさを変化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニットに含まれる回転力伝達機構の構成を概略的に示す平面イメージ図である。
図2図1の回転力伝達機構により回転力が伝達される様子を示しており、(a)は初期の回転位置、(b)は(a)の後の回転位置である。
図3図2に引き続き、図1の回転力伝達機構により回転力が伝達される様子を示しており、(a)は図2の後の回転位置、(b)は(a)の後の回転位置、(c)は(b)の後の回転位置である。
図4】本発明の実施の形態に係る鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニットの概略構成を示しており、(a)は斜視図、(b)は(a)のA-A線における縦断面図である。
図5図4(a)のB-B線における横断面図である。
図6図4のボールコックの操作ユニットが、鉄道車両の床下配管に設置された様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略することとし、又、図面の全体を通して、同一部分若しくは相当する部分は、同一の符号で示している。
図1には、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット30(図4及び図5参照)に含まれる回転力伝達機構10の構造を概略的に示している。この回転力伝達機構10は、操作プーリ12から伝達先プーリ14へと回転力を伝達するものであり、操作プーリ12と伝達先プーリ14とが、図1の例ではガイド部材22、24に掛け回された線状部材20を介して接続されている。操作プーリ12及び伝達先プーリ14は、図1のような平面視で、同一の回転対称形状16を有している。
【0023】
同一の回転対称形状16は、最大径部分Lと最小径部分Sとを4つずつ備えており、最大径部分Lの各々は、操作プーリ12及び伝達先プーリ14の中心Cからの距離が最大となる最大径Lrを有し、最小径部分Sの各々は、操作プーリ12及び伝達先プーリ14の中心Cからの距離が最小となる最小径Srを有している。更に、回転対称形状16は、それら4つの最大径部分Lと4つの最小径部分Sとを、45°の位相間隔で交互に有している。又、本実施形態の回転対称形状16は、最小径部分Sの両隣に位置する2つの最大径部分L間を結ぶ形状線が、外側へ僅かに膨らんだ円弧状をなしている。このため、回転対称形状16は、矩形の4つの角及び4つの辺の夫々が丸みを帯びたような形状になっており、その4つの角に相当する位置が最大径部分L、4つの辺の中央に相当する位置が最小径部分Sにより構成されている。
【0024】
又、回転力伝達機構10は、操作プーリ12の回転位置と伝達先プーリ14の回転位置とが、同一の回転対称形状16について45°の位相差で同期されるように、線状部材20によって接続されている。すなわち、図1の状態において、操作プーリ12は、4つの最小径部分Sが、時計の文字盤における0時、3時、6時、及び9時の回転位置にある。これに対し、図1の状態の伝達先プーリ14は、4つの最大径部分Lが、時計の文字盤における0時、3時、6時、及び9時の回転位置にあり、操作プーリ12との比較において、回転位置が45°異なっていることが分かる。このような位相関係は、線状部材20によって接続されていることで、操作プーリ12や伝達先プーリ14が回転しても維持される。なお、上記の説明を含み、本明細書において、「X時の回転位置」や「X時方向」といった時刻を使用した回転位置や方向の説明は、特に断り書きのない限り、0時(12)時を上方とした時計の文字盤の時刻位置に基づいたものとする。
【0025】
次に、図2及び図3を参照して、操作プーリ12を反時計回りに90°回転させた場合を例にして、回転力伝達機構10により、操作プーリ12から伝達先プーリ14へ回転力が伝達される様子を説明する。なお、図2及び図3では、説明の便宜上、操作プーリ12及び伝達先プーリ14の回転状態が分かるように、操作プーリ12及び伝達先プーリ14の各々の、各図で共通の最大径部分Lの1つに黒丸を付している。まず、図2(a)の操作プーリ12及び伝達先プーリ14は、図1に示した回転状態と同様であり、操作プーリ12の黒丸付き最大径部分Lが9時と0時との間の回転位置にあり、伝達先プーリ14の黒丸付き最大径部分Lが9時の回転位置にある。
【0026】
図2(a)の状態で、線状部材20の一端側は、操作プーリ12の最大径部分Lに相当する外周位置近傍において、操作プーリ12から離れている。このため、操作プーリ12は、実質的に最大径Lrと略等しいプーリ径Prを有する状態になっている。又、線状部材20の他端側は、伝達先プーリ14の最小径部分Sに相当する外周位置を僅かに外れた位置において、伝達先プーリ14から離れている。このため、伝達先プーリ14は、実質的に最小径Srより僅かに大きいプーリ径Prを有する状態になっている。従って、図2(a)の状態では、伝達先プーリ14よりも操作プーリ12の方が、実質的なプーリ径Prが大きくなっている。この図2(a)のような初期の回転位置から、操作プーリ12が反時計回り方向に回転され始めるものとする。
【0027】
図2(b)の操作プーリ12は、図2(a)と比較して、反時計回りに約22.5°回転された状態であり、これに伴って、線状部材20の一端側が操作プーリ12の外周に僅かに巻き取られている。これにより、線状部材20の他端側が伝達先プーリ14の外周から繰り出されるようにして、伝達先プーリ14も反時計回りに回転されている。その結果、線状部材20の一端側は、操作プーリ12の最大径部分Lに相当する外周位置を僅かに外れた位置において、操作プーリ12から離れている。このため、操作プーリ12は、実質的に最大径Lrより僅かに小さいプーリ径Prを有する状態になっている。又、線状部材20の他端側は、伝達先プーリ14の最大径部分Lに相当する外周位置を僅かに外れた位置において、伝達先プーリ14から離れている。このため、伝達先プーリ14は、実質的に最大径Lrより僅かに小さいプーリ径Prを有する状態になっている。従って、図2(b)の操作プーリ12及び伝達先プーリ14は、実質的なプーリ径Prが略等しくなっている。
【0028】
図3(a)の操作プーリ12は、図2(b)と比較して、反時計回りに約22.5°回転され、操作プーリ12の黒丸付き最大径部分Lが9時の回転位置にあり、これに伴って、線状部材20の一端側が操作プーリ12の外周に僅かに巻き取られている。これにより、線状部材20の他端側が伝達先プーリ14の外周から繰り出されるようにして、伝達先プーリ14も反時計回りに回転され、伝達先プーリ14の黒丸付き最大径部分Lが6時と9時との間の回転位置にある。その結果、線状部材20の一端側は、操作プーリ12の最小径部分Sに相当する外周位置を僅かに外れた位置において、操作プーリ12から離れている。このため、操作プーリ12は、実質的に最小径Srより僅かに大きいプーリ径Prを有する状態になっている。又、線状部材20の他端側は、伝達先プーリ14の最大径部分Lに相当する外周位置近傍において、伝達先プーリ14から離れている。このため、伝達先プーリ14は、実質的に最大径Lrと略等しいプーリ径Prを有する状態になっている。従って、図3(a)の状態では、操作プーリ12よりも伝達先プーリ14の方が、実質的なプーリ径Prが大きくなっている。
【0029】
引き続き、図3(b)の操作プーリ12は、図3(a)と比較して、反時計回りに約22.5°回転された状態であり、これに伴って、線状部材20の一端側が操作プーリ12の外周に僅かに巻き取られている。これにより、線状部材20の他端側が伝達先プーリ14の外周から繰り出されるようにして、伝達先プーリ14も反時計回りに回転されている。その結果、線状部材20の一端側は、操作プーリ12の最大径部分Lに相当する外周位置を僅かに外れた位置において、操作プーリ12から離れている。このため、操作プーリ12は、実質的に最大径Lrより僅かに小さいプーリ径Prを有する状態になっている。又、線状部材20の他端側は、伝達先プーリ14の最大径部分Lに相当する外周位置を僅かに外れた位置において、伝達先プーリ14から離れている。このため、伝達先プーリ14は、実質的に最大径Lrより僅かに小さいプーリ径Prを有する状態になっている。従って、図3(b)の操作プーリ12及び伝達先プーリ14は、実質的なプーリ径Prが略等しくなっている。
【0030】
更に、図3(c)の操作プーリ12は、図3(b)と比較して、反時計回りに約22.5°回転され、操作プーリ12の黒丸付き最大径部分Lが6時と9時との間の回転位置にあり、これに伴って、線状部材20の一端側が操作プーリ12の外周に僅かに巻き取られている。これにより、線状部材20の他端側が伝達先プーリ14の外周から繰り出されるようにして、伝達先プーリ14も反時計回りに回転され、伝達先プーリ14の黒丸付き最大径部分Lが6時の回転位置にある。その結果、線状部材20の一端側は、操作プーリ12の最大径部分Lに相当する外周位置近傍において、操作プーリ12から離れている。このため、操作プーリ12は、実質的に最大径Lrと略等しいプーリ径Prを有する状態になっている。又、線状部材20の他端側は、伝達先プーリ14の最小径部分Sに相当する外周位置を僅かに外れた位置において、伝達先プーリ14から離れている。このため、伝達先プーリ14は、実質的に最小径Srより僅かに大きいプーリ径Prを有する状態になっている。従って、図3(c)の状態では、伝達先プーリ14よりも操作プーリ12の方が、実質的なプーリ径Prが大きくなっている。
【0031】
図2(a)~図3(c)の説明において、操作プーリ12が反時計回りに90°回転されることで、その回転力が線状部材20の引張方向の力として伝達先プーリ14へ伝わり、伝達先プーリ14も反時計回りに90°回転されている。その間、操作プーリ12と伝達先プーリ14との、実質的なプーリ径Prの大小関係が変化していることが分かる。以降は、操作プーリ12の反時計回りでの回転を続けて、伝達先プーリ14へ引き続き回転力を伝達してもよい。或いは、操作プーリ12と伝達先プーリ14との役割を入れ替えて、伝達先プーリ14を時計回りに回転させることで、操作プーリ12へ同じく時計回りで回転するような回転力を伝達してもよい。
【0032】
更に、回転力伝達機構10は、操作プーリ12から伝達先プーリ14へ、反時計回り及び時計回りの双方の回転方向の回転力を伝達するように、互いに反対方向から操作プーリ12及び伝達先プーリ14の外周に掛け回される、2本の線状部材20で接続されていてもよい。或いは、操作プーリ12及び伝達先プーリ14の外周と係合するような、無端状の線状部材20が操作プーリ12及び伝達先プーリ14の外周に掛け回されてもよい。又、回転力伝達機構10は、最大径部分Lと最小径部分Sとを45°の位相間隔で交互に4つずつ備えていれば、操作プーリ12及び伝達先プーリ14が有する同一の回転対称形状16が、図1図3と異なっていてもよい。
【0033】
続いて、図4図6を参照して、上述した回転力伝達機構10を備えた、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット30について説明する。
まず、図4及び図5に示すように、鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット30は、図1に示したような回転力伝達機構10に加えて、ボールコック80のステム82に装着され、ステム82を回転駆動するステム装着部32と、ステム装着部32を介してステム82を回転操作する操作部46とを含むものである。なお、本実施形態でのボールコック80は、ボールコック80を介して接続された2本の直管84の間を開閉するように設置されており、約90°の回転操作で全開状態と全閉状態とが切り替えられるものである。
【0034】
ステム装着部32は、ステム82と一体に回転可能に設置された、回転力伝達機構10の伝達先プーリ14と、伝達先プーリ14を内部に収容するステム側ハウジング36とを備えている。ステム82と伝達先プーリ14の中心軸は一致しており、伝達先プーリ14の回転対称位置には、回転力伝達機構10の線状部材20としての、2本のワイヤロープ20A、20Bの他端部のタイコ34が係合されている。より詳しくは、ワイヤロープ20A、20Bの他端部のタイコ34は、伝達先プーリ14が有する回転対称形状16の、回転対称位置にある2つの最小径部分S近傍に係合されている。そして、ワイヤロープ20A、20Bは各々、伝達先プーリ14の外周と、伝達先プーリ14に隣接して配置された一対の、図示の例ではブロック状のガイド部材24とに掛け回されて、ステム側ハウジング36の外部へと案内されている。
【0035】
又、ステム装着部32のステム側ハウジング36は、カバー38を備えており、伝達先プーリ14及びガイド部材24等の収容部品が、カバー38によって覆い隠されている。ステム側ハウジング36は、適切なステー(図示省略)によってボールコック80のボディ等に固定されている。更に、図示の例のステム装着部32には、ステム82と一体に回転可能に取り付けられ、ステム側ハウジング36の外部に露出する、ステム側ハンドル40が設けられている。なお、伝達先プーリ14やステム側ハンドル40の取り付けに、ステム82の長さが不足している場合には、適切な構造によりステム82の長さを延長させればよい。
【0036】
操作部46は、ステム装着部32とは離間した位置において、回転可能に配置される操作ハンドル50と、この操作ハンドル50と一体に回転可能に設置された、回転力伝達機構10の操作プーリ12と、操作プーリ12を内部に収容する操作部側ハウジング52とを備えている。操作ハンドル50の回転軸と操作プーリ12の中心軸とは一致しており、操作プーリ12の回転対称位置には、2本のワイヤロープ20A、20Bの一端部のタイコ48が係合されている。より詳しくは、ワイヤロープ20A、20Bの一端部のタイコ48は、操作プーリ12が有する回転対称形状16の、回転対称位置にある2つの最大径部分L近傍に係合されている。そして、ワイヤロープ20A、20Bは各々、操作プーリ12の外周と、操作プーリ12に隣接して配置された一対の、図示の例ではブロック状のガイド部材22とに掛け回されて、操作部側ハウジング52の外部へと案内されている。なお、操作部側ハウジング部52についてもカバー54を備えており、操作プーリ12及びガイド部材22等の収容部品は、カバー54によって覆い隠されている。又、操作部側ハウジング52は、図6に示されるように、ステー68、70によって、例えば鋼材からなる専用の支持部材72ないし適切な床下設置物に固定されている。
【0037】
ワイヤロープ20A、20Bは、鉄道車両の床下設置物を避けるようにして湾曲して配置されている。そして、ワイヤロープ20A、20Bは、一端が操作部側ハウジング52の内部に案内されて操作プーリ12に連結されることで、操作プーリ12を介して操作ハンドル50に接続されている。又、ワイヤロープ20A、20Bの他端は、ステム側ハウジング36の内部に案内されて伝達先プーリ14に連結されることで、伝達先プーリ14を介してステム82に接続されている。これらのワイヤロープ20A、20Bは、合成樹脂材料や金属メッシュ等で構成された保護チューブ60に被覆されており、保護チューブ60の両端部には、ステム側ハウジング36及び操作部側ハウジング52の、ワイヤロープ20A、20Bの相通穴に対して、着脱可能に装着されるアタッチメント62が設けられている。
【0038】
図4の状態のボールコック80は全閉状態であり、このとき、操作プーリ12は、図5で確認できるように、最大径部分Lに相当する外周位置近傍からワイヤロープ20Bが巻き取られるような回転位置にある。そして、操作プーリ12は、この状態から操作ハンドル50を介して時計回りに90°回転されることで、主にワイヤロープ20Bの引張方向の力によって、伝達先プーリ14を時計回りに90°回転させ、ボールコック80を全開状態にするものである。すなわち、図5の操作プーリ12は、反時計回りに90°回転された後の、図3(c)の操作プーリ12に相当する状態である。又、ボールコック80を全開状態から全閉状態にする際には、図2(a)のような状態にある操作プーリ12を、操作ハンドル50を介して反時計回りに90°回転させることで、主にワイヤロープ20A(図2及び図3の線状部材20に相当)の引張方向の力によって、伝達先プーリ14を反時計回りに90°回転させればよい。
【0039】
又、ボールコックの操作ユニット30は、図6に示されるように、ワイヤロープ20を、鉄道車両の床下設置物を避けるように湾曲させて保持するブラケット64を含んでいる。このブラケット64は、ワイヤロープ20の引き回し経路に沿って延び、かつ、ワイヤロープ20に対して鉄道車両の妻面寄り(図6を参酌すると、紙面手前寄り)に配置されている。図示の例では、適切に湾曲した板材からなる2つのブラケット64A、64Bが用いられており、これらのブラケット64A、64Bは、鉄道車両の床下構造部86(図6にその一部が表れている)に適切に固定されている。そして、ブラケット64A、64Bに装着された複数の適切な取付金具(図示省略)によって、ワイヤロープ20の中間部の適切な位置が、ブラケット64A、64Bに固定されている。ブラケット64A、64Bには、取付金具を装着するための、複数の開孔66が形成されており、適宜、取付金具の位置を調整可能である。又、ブラケット64Bは支持部材72に固定されており、ブラケット64Bに対してステー70が固定されている。
【0040】
なお、図示された、ステム側ハウジング36、操作部側ハウジング52、ブラケット64、支持部材72その他の、各構成部品の形状については、あくまでも一例であり、ボールコックの操作ユニット30が設置される車両毎に、その形状が適切に決定されるものである。又、ワイヤロープ20A、20Bと、操作プーリ12及び伝達先プーリ14との掛け回しの態様として、図5に示される例では、操作ハンドル50とステム側ハンドル40とが同方向に回転するように構成されている。しかしながら、操作性等を考慮して、操作ハンドル50とステム側ハンドル40とが逆方向に回転するように構成することも可能である。この場合には、ワイヤロープ20A、20Bをその案内経路の途中で交差させて、操作プーリ12に対するタイコ48の位置を入れ替え、又は、伝達先プーリ14に対する他端部のタイコ34の位置を入れ替えるように係合させればよい。
【0041】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット30に含まれる回転力伝達機構10は、図1に示すように、線状部材20を介して接続された操作プーリ12から伝達先プーリ14へ回転力を伝達するものであり、それら2つのプーリ12、14が、平面視で、円形と異なる同一の回転対称形状16を有している。すなわち、その同一の回転対称形状16は、各プーリ12、14の中心Cからの距離が最大となる最大径部分Lと、各プーリ12、14の中心Cからの距離が最小となる最小径部分Sとを、45°の位相間隔で交互に4つずつ備えたものである。このため、操作プーリ12及び伝達先プーリ14は、平面視で、例えば、最大径部分Lに相当する外周位置が12時方向に位置する回転状態と、最小径部分Sに相当する外周位置が12時方向に位置する回転状態との、実質的に2つの回転状態が、45°回転する毎に交互に出現するものとなる。
【0042】
そして、線状部材20は、操作プーリ12の回転位置と伝達先プーリ14の回転位置とを、それらが有する同一の回転対称形状16について45°の位相差で同期させるように接続されている。すなわち、例えば図1に示すように、操作プーリ12の最小径部分Sに相当する外周位置が12時方向に位置する回転状態にあるときには、伝達先プーリ14の最大径部分Lに相当する外周位置が12時方向に位置する回転状態にある。これにより、図2(a)や図3(c)のように、線状部材20が操作プーリ12から離れる操作プーリ12の外周位置が、最大径部分Lに相当する外周位置近傍である場合は、線状部材20が伝達先プーリ14から離れる伝達先プーリ14の外周位置が、最小径部分Sに相当する外周位置近傍となる。このため、実質的に、操作プーリ12のプーリ径Prが伝達先プーリ14のプーリ径Prよりも大きい状態となり、この状態では操作プーリ12から伝達先プーリ14へ比較的大きな回転力が伝達される。
【0043】
これに対し、図3(a)に示すように、線状部材20が操作プーリ12から離れる操作プーリ12の外周位置が、最小径部分Sに相当する外周位置近傍である場合は、線状部材20が伝達先プーリ14から離れる伝達先プーリ14の外周位置が、最大径部分Lに相当する外周位置近傍となる。このため、実質的に、操作プーリ12のプーリ径Prが伝達先プーリ14のプーリ径Prよりも小さい状態となり、この状態では操作プーリ12から伝達先プーリ14へ比較的小さな回転力が伝達される。このようにして、45°という小さな位相周期で、操作プーリ12と伝達先プーリ14とのプーリ径Prの大小関係を変化させることができるため、操作プーリ12から伝達先プーリ14へ伝達される回転力の大きさも、細かい周期で変化させることが可能となる。しかも、操作プーリ12及び伝達先プーリ14は、上述したような同一の回転対称形状16を有しているため、少なくとも45°毎に回転角度(回転量)を同期させることができる。
【0044】
、回転力伝達機構10は、図1図3に示すように、操作プーリ12と伝達先プーリ14とが有する同一の回転対称形状16の、最大径部分Lからそれに隣接する最小径部分Sを経て次の最大径部分Lに至るまでの形状線が、外側へ僅かに膨らんだ円弧状をなしているものである。これにより、最大径部分Lと最小径部分Sとの間でプーリ径Prが緩やかに変化するため、操作プーリ12から伝達先プーリ14へ伝達される回転力の大きさも緩やかに変化するものとなり、回転力の急激な変化を抑制することができる。更に、円弧状の形状線の端部同士が突き合わされる位置に相当する最大径部分Lも、必然的に丸みを帯びた形状になるため、同一の回転対称形状16の全体が丸みを帯びた形状になる。従って、操作プーリ12や伝達先プーリ14による線状部材20の巻き取りや繰り出しを、円滑に行うことが可能となる。
【0045】
一方、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット30は、図4及び図5に示すように、鉄道車両の床下配管に組み込まれたボールコック80を操作するものであり、上述したような回転力伝達機構10を備え、更にステム装着部32及び操作部46を含んでいる。ステム装着部32は、ボールコック80のステム82に装着されて、そのステム82を回転駆動するものであり、このステム装着部32では、回転力伝達機構10の伝達先プーリ14が、ステム82と一体に回転可能に設置されている。又、操作部46は、ステム装着部32を介してステム82を回転操作するものであり、操作ハンドル50と、回転力伝達機構10の操作プーリ12とを具備している。操作ハンドル50は、ステム装着部32とは離間した位置において回転可能に配置され、この操作ハンドル50と一体に回転可能に操作プーリ12が設置されている。そして、回転力伝達機構10の線状部材20は、鉄道車両の床下設置物と干渉しないように引き回されたワイヤロープ20によって構成されている。すなわち、ワイヤロープ20の一端が操作プーリ12に連結されると共に、ワイヤロープ20の他端が伝達先プーリ14に連結されている。
【0046】
これにより、操作プーリ12の回転動作が、何らかの動力源に頼ることなく、ワイヤロープ20を介して機械的に伝達先プーリ14に伝達されるため、操作ハンドル50の回転動作を、ボールコック80を開閉させる回転動作として、ボールコック80のステム82に伝達することができる。しかも、図1図3に示したような回転力伝達機構10の構成により、45°の位相周期で、回転角度を同期させながら、操作プーリ12から伝達先プーリ14へ伝達する回転力の大きさ、換言すれば、操作ハンドル50からボールコック80のステム82に伝達する回転力の大きさを変化させることができる。更に、操作性を考慮して操作部46の位置を決定することで、鉄道車両用配管のボールコック80の位置の如何に関わらず、ボールコック80の開閉操作を、作業者の操作性に優れた位置において行うことが可能となる。
【0047】
更に、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット30は、約90°の回転操作で全開状態と全閉状態とが切り替えられる一般的なボールコック80を操作対象とするものである。そして、例えば図2(a)や図5に示すように、操作部46に具備される操作プーリ12は、ボールコック80が全開状態或いは全閉状態にあるときに、最大径部分Lに相当する外周位置近傍からワイヤロープ20(20B)が巻き取られるように、初期の回転位置が設定されている。このとき、ボールコック80のステム82と一体に回転可能に設置された伝達先プーリ14は、操作プーリ12と同一の回転対称形状16について45°の位相差で回転位置が同期することから、ボールコック80が同じ全開状態或いは全閉状態のときに、最小径部分Sに相当する外周位置近傍からワイヤロープ20(20B)が繰り出されるような初期の回転位置にある。
【0048】
従って、操作プーリ12及び伝達先プーリ14がこのような初期の回転位置にある状態で、ボールコック80をそのときとは反対の全開状態或いは全閉状態にするために、操作ハンドル50が90°回転操作されると、操作プーリ12と伝達先プーリ14とのプーリ径Prの大小関係が以下のように変化する。すなわち、図2(a)のような回り始めでは操作プーリ12が伝達先プーリ14よりもプーリ径Prが大きくなり、図3(a)のような回り途中でプーリ径Prの大小関係が逆転し、図3(c)のような回り終わりの方で再び操作プーリ12のプーリ径Prが伝達先プーリ14よりも大きくなる。このため、ボールコック80が全開状態や全閉状態にある回り始めの部分や、ボールコック80が全開状態や全閉状態に近づく回り終わりの部分では、プーリ径Prの大小関係に伴った大きな回転力を、操作ハンドル50からボールコック80のステム82へ伝達することができる。又、大きな回転力が必要ではない回り途中の部分では、プーリ径Prの大小関係に伴った比較的小さな回転力が、操作ハンドル50からボールコック80のステム82へ伝達される。
【0049】
これにより、比較的大きな回転力が必要となる、ボールコック80のステム82の回り始めや回り終わりの部分でも、比較的軽い回転操作力で操作ハンドル50の操作を行うことができ、同時に、ボールコック80の開閉に必要な最大の回転操作力も抑制することができる。更に、操作ハンドル50と一体に回転する操作プーリ12と、ボールコック80のステム82と一体に回転する伝達先プーリ14とは、ボールコック80が全開状態から全閉状態になるときや、全閉状態から全開状態になるときに、回転角度(回転量)が同期する。このため、操作ハンドル50を操作する作業者が、ボールコック80の開閉に必要な回転角度を見誤ることを抑制することができ、回転角度の過不足が発生し難くなる結果、ボールコック80をより確実に開閉することが可能となる。
【0050】
又、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット30は、図5に示すように、線状部材20として2本のワイヤロープ20A、20Bを備えており、これら2本のワイヤロープ20A、20Bの各一端が操作プーリ12の回転対称位置に係合され、2本のワイヤロープ20A、20Bの各他端が伝達先プーリ14の回転対称位置に係合されている。これにより、操作ハンドル50を介して操作プーリ12が、ボールコック80を開閉する何れの回転方向に回転された場合でも、2本ワイヤロープ20A、20Bのうち、そのときに操作プーリ12に巻き取られるように接続されているワイヤロープ20A又は20Bを介して、伝達先プーリ14へより確実に回転力を伝達することができる。更に、2本のワイヤロープ20A、20Bをその案内経路の途中で交差させて、操作プーリ12に対する各一端の位置を入れ替え、又は、伝達先プーリ14に対する各他端の位置を入れ替えるように係合させることにより、操作ハンドル50とボールコック80のステム82とを、同方向又は逆方向に選択的に回転させるように構成することが可能となる。
【0051】
しかも、本発明の実施の形態に係る鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット30は、図6に示すように、ワイヤロープ20を保持するブラケット64により、鉄道車両の床下設置物を避けるように湾曲させることで、ワイヤロープ20の引き回し経路を、鉄道車両の床下機器のレイアウトに応じて適切に設定することができる。又、ステム装着部32及び操作部46の各々がハウジング36、52を有していることで、ステム装着部32及び操作部46の各々の構成要素をハウジング36、52によって一体にまとめることができ、各ハウジング36、52内にワイヤロープ20の一端側又は他端側が案内される。これにより、ボールコック80に対してステム装着部32を容易に装着することができると共に、作業者の操作性に優れた任意の位置へ、操作部46を容易に設置することもできる。
【符号の説明】
【0052】
10:回転力伝達機構、12:操作プーリ、14:伝達先プーリ、16:同一の回転対称形状、20:線状部材、20A、20B:ワイヤロープ、30:鉄道車両用配管のボールコックの操作ユニット、32:ステム装着部、36:ステム側ハウジング、46:操作部、50:操作ハンドル、52:操作部側ハウジング、64(64A、64B):ブラケット、80:ボールコック、82:ステム、C:プーリの中心、L:最大径部分、S:最小径部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6