IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-端子付き電線 図1
  • 特許-端子付き電線 図2
  • 特許-端子付き電線 図3
  • 特許-端子付き電線 図4
  • 特許-端子付き電線 図5
  • 特許-端子付き電線 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】端子付き電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020121426
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018363
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智彦
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-219735(JP,A)
【文献】特開2014-191951(JP,A)
【文献】特開2015-153458(JP,A)
【文献】特開2015-138585(JP,A)
【文献】特開2011-014420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R4/00-4/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線と、端子金具と、を有し、
前記被覆電線の端部は、被覆が除去されて芯線が露出しており、
前記端子金具は、前記芯線の露出部分と接続される芯線接続部と、前記被覆電線の前記被覆で覆われた部分を加締める被覆圧着部と、を有し、
前記被覆圧着部は、前記被覆に沿う底部と、該底部の両端部から前記被覆電線と交差する方向に延びた一対の加締め片と、を有し、
前記一対の加締め片は、展開状態で、前記芯線接続部と反対側の縁部が前記被覆電線と直交する方向に延びており、前記芯線接続部側の縁部が前記底部から離れるにしたがって前記芯線接続部に近付き、かつ、当該芯線接続部側の縁部における前記底部から離れた端部が前記芯線接続部と反対側の縁部と平行になっており、
前記端子金具が前記被覆電線に接続された状態で、前記被覆の端部でありかつ前記底部から離れた頂点の部分が前記一対の加締め片で覆われており、前記被覆の端部の一部が前記加締め片で覆われずに露出している
ことを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
前記芯線と前記端子金具とが異種金属であり、
少なくとも前記被覆の端部及び前記芯線の露出部分が防食用樹脂で覆われている
ことを特徴とする請求項に記載の端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線の端末に端子金具が接続された端子付き電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に配策されるワイヤハーネスは、複数の電線、各電線の端末に接続された端子金具、端子金具を収容したコネクタハウジング、等を有している。また、前述したように電線の端末に端子金具が接続されたものを本明細書では「端子付き電線」と呼称する。
【0003】
上記ワイヤハーネスを構成する端子付き電線の一例を図4~6に示す。この端子付き電線501は、被覆電線502と、端子金具503と、を有している。端子金具503は、金属板にプレス加工等が施されて得られるものであり、端子接続部(相手端子と嵌合する部分)530と、芯線圧着部531と、被覆圧着部532と、を有している。
【0004】
被覆電線502の端部は、被覆522が除去されて芯線521が露出しており、この芯線521の露出部分が芯線圧着部531により加締められており、被覆522で覆われている部分が被覆圧着部532により加締められている。
【0005】
また、端子付き電線501は、端子金具503と芯線521とが異種金属で構成されており、芯線521と芯線圧着部531との接触部分に水分が浸入すると電食が助長されてしまう。このことから、水分の浸入を阻止するために被覆522の端部522a及び芯線521の露出部分が防食用樹脂504で覆われている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-175791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の端子付き電線501においては、被覆圧着部532により加締められることで図5に示すように被覆522の端部522aが浮き上がってしまうことがあった。このように被覆522の端部522aが被覆圧着部532よりも上に浮き上がると、端子金具503をコネクタハウジングに挿入する際、端部522aがコネクタハウジングに引っ掛かることがあり、改善の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、被覆電線の被覆で覆われた部分が端子金具の被覆圧着部で加締められた端子付き電線において、被覆の端部が浮き上がることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の端子付き電線は、被覆電線と、端子金具と、を有し、前記被覆電線の端部は、被覆が除去されて芯線が露出しており、前記端子金具は、前記芯線の露出部分と接続される芯線接続部と、前記被覆電線の前記被覆で覆われた部分を加締める被覆圧着部と、を有し、前記被覆圧着部は、前記被覆に沿う底部と、該底部の両端部から前記被覆電線と交差する方向に延びた一対の加締め片と、を有し、前記一対の加締め片は、展開状態で、前記芯線接続部と反対側の縁部が前記被覆電線と直交する方向に延びており、前記芯線接続部側の縁部が前記底部から離れるにしたがって前記芯線接続部に近付き、かつ、当該芯線接続部側の縁部における前記底部から離れた端部が前記芯線接続部と反対側の縁部と平行になっており、前記端子金具が前記被覆電線に接続された状態で、前記被覆の端部でありかつ前記底部から離れた頂点の部分が前記一対の加締め片で覆われており、前記被覆の端部の一部が前記加締め片で覆われずに露出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端子金具が被覆電線に接続された状態で、被覆の端部でありかつ底部から離れた頂点の部分が加締め片で覆われているので、被覆の端部が浮き上がることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる端子付き電線の平面図である。
図2図1中のA-A線に沿った断面図である。
図3図1の端子金具の展開図である。
図4】従来の端子付き電線の平面図である。
図5図4中のB-B線に沿った断面図である。
図6図5の端子付き電線の芯線露出部分が防食用樹脂で覆われた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態にかかる「端子付き電線」について、図1~3を参照して説明する。
【0013】
図1,2に示す端子付き電線1は、自動車に配策されるワイヤハーネスを構成するものである。この端子付き電線1は、被覆電線2と、端子金具3と、を有している。
【0014】
被覆電線2は、導電性の芯線21が絶縁性樹脂からなる被覆22で覆われた断面丸形の電線である。本発明において芯線21は如何なる材質の導体であってもよいが、本例では芯線21の材質としてアルミニウム合金が採用されている。被覆電線2の端部は、被覆22が除去されて芯線21が露出している。
【0015】
端子金具3は、金属板にプレス加工等が施されて得られるものである。本発明において端子金具3は如何なる材質の金属板で構成されていてもよいが、本例では端子金具3の材質として銅合金が採用されている。
【0016】
端子金具3は、端子接続部30、芯線圧着部31(芯線接続部に相当)、被覆圧着部32、端子接続部30と芯線圧着部31の底部31c(図3参照)とを連結した連結部33、芯線圧着部31の底部31cと被覆圧着部32の底部32c(図3参照)とを連結した連結部34、を一体で有している。即ち、端子金具3は、端子接続部30、連結部33、芯線圧着部31、連結部34、被覆圧着部32、が順に並んでいる。
【0017】
また、端子金具3においては、端子接続部30、連結部33、芯線圧着部31、連結部34、被覆圧着部32の並び方向の端子接続部30側を前側と定義し、被覆圧着部32側を後ろ側と定義する。
【0018】
端子接続部30は、不図示の相手端子と嵌合する部分であり、本例では四角筒状に形成され、内側にばね接触部を有している。
【0019】
芯線圧着部31は、芯線21の露出部分を加締める部分である。芯線圧着部31は、図3に示す展開状態(折り曲げ前)では被覆電線2と交差する方向に延びた帯板状となっており、圧着前状態では断面U字状に形成されている。図3中の一点鎖線Wは、加締められる被覆電線2が配置される位置及び向きを表している。
【0020】
芯線圧着部31は、連結部33に連続した底部31cと、底部31cの両端部から被覆電線2と交差する方向(一点鎖線Wと交差する方向)に延びた一対の加締め片31a,31bと、を有している。芯線圧着部31は、底部31cに載置された芯線21を一対の加締め片31a,31bにて抱え込むように加締める。
【0021】
被覆圧着部32は、被覆電線2の被覆22で覆われた部分を加締める部分である。被覆圧着部32は、図3に示す展開状態(折り曲げ前)では被覆電線2と交差する方向に延びた帯板状となっており、圧着前状態では断面U字状に形成されている。なお、図3中の帯状の部分39は、端子金具3を搬送する際に使用する部分であり、被覆電線2に接続される前に端子金具3から切り離される。
【0022】
図3に示すように、被覆圧着部32は、連結部34に連続した底部32cと、底部32cの両端部から被覆電線2と交差する方向(一点鎖線Wと交差する方向)に延びた一対の加締め片32a,32bと、を有している。
【0023】
一対の加締め片32a,32bは、芯線圧着部31側の縁部321が、底部32cから離れるにしたがって芯線圧着部31に近付いている。これに対し、芯線圧着部31と反対側の縁部322は、その全域にわたって芯線圧着部31からの距離が等しい。即ち、縁部322は、被覆電線2と直交する方向(一点鎖線Wと直交する方向)に延びている。縁部321のうち底部32cから離れた端部321aは、縁部322と略平行になっている(加締め片32a,32bに鋭角の角部ができないようにするため)。このような一対の加締め片32a,32bは、底部32cから離れるにしたがって前後方向の幅が大きくなっている(端部321aから縁部322までの部分を除く)。
【0024】
上記縁部321の端部321aは、図3の展開状態においても、図1,2の圧着状態においても、加締め片32a,32bの前端に該当する。以下、端部321aを、加締め片32a,32bの「前端321a」と呼称する。縁部322は、加締め片32a,32bの後端に該当する。
【0025】
被覆圧着部32は、底部32cに載置された被覆電線2の被覆22で覆われた部分を一対の加締め片32a,32bにて抱え込むように加締める。本例では、図1に示すように、加締め片32a,32bの先端323同士を突き合わせるように加締めているが、加締め片32a,32bの一方の外面に他方の内面が重なるように加締めてもよい。
【0026】
図1,2に示すように、端子金具3が被覆電線2に接続された状態では、被覆22の端部でありかつ底部32cから離れた頂点の部分222が加締め片32a,32bで覆われており、被覆22の端部の一部223,224が加締め片32a,32bで覆われずに露出している。
【0027】
図1に示すように端子付き電線1を上から見ると、被覆22の端部でありかつ底部32cから離れた頂点の部分222は見えておらず、被覆22の端部の一部223,224は加締め片32a,32bの縁部321からはみ出して見えている。このように被覆22の端部の一部223,224が加締め片32a,32bの縁部321からはみ出して見えていることにより、被覆22の前端221の位置を確認することができる。被覆22の前端221の位置を確認することで、被覆圧着部32が被覆電線2に対して適正な位置に圧着されたか否かを判別できる。この適正な位置とは、図1に示すように、被覆22の前端221が加締め片32a,32bの前端321aよりもわずかに後ろ側にある位置である。また、芯線圧着部31の被覆電線2に対する適正な位置は、図1に示すように、芯線21の前端が加締め片31a,31bの前端よりも前側、即ち連結部33上にある位置である。
【0028】
なお、被覆圧着部32及び芯線圧着部31が被覆電線2に対して適正な位置に圧着されたか否かの判別は、作業員による目視確認又はカメラを用いた画像処理により行われる。
【0029】
また、本例の端子付き電線1は、上述したように芯線圧着部31及び被覆圧着部32に加締められた後、被覆22の端部及び芯線21の露出部分が防食用樹脂4で覆われる。より詳細には、加締め片32a,32bの前端部から連結部33にかけて防食用樹脂4で覆われることで芯線21の露出部分全てが防食用樹脂4で覆われる。防食用樹脂4は、芯線21と芯線圧着部31との接触部分に水分が浸入することを阻止するためのものである。本例では、端子圧着後の被覆電線2の端部に液状の防食用樹脂4を塗布し、この防食用樹脂4を乾燥させることで硬化させるが、これ以外に、防食用樹脂として、紫外線硬化樹脂等を用いてもよい。
【0030】
上記構成の端子付き電線1は、被覆22の端部でありかつ底部32cから離れた頂点の部分222が加締め片32a,32bで覆われているので、被覆22の端部が浮き上がることがない。これにより、端子金具3を不図示のコネクタハウジングに挿入する際、被覆22の端部がコネクタハウジングに引っ掛かることがない。また、被覆22の端部の一部223,224が加締め片32a,32bで覆われずに露出しているので、被覆22の前端221の位置を確認することができ、被覆圧着部32が被覆電線2に対して適正な位置に圧着されたか否かを判別することができる。
【0031】
また、上記従来の端子付き電線501においては、被覆圧着部532により加締められることで図5に示すように被覆522の端部522aが浮き上がってしまうことがあり、その場合、図6に示すように防食用樹脂504の膜に孔が開いてしまったり、端部522a近傍の防食用樹脂504の膜厚が薄くなってしまったりして、防食性能を損なうおそれがあった。この点について、本例の端子付き電線1は、被覆22の端部が浮き上がることがないので、防食用樹脂4の膜厚を適正な厚みにすることができる。
【0032】
上述した実施形態では、端子金具3と被覆電線2の芯線21とが異種金属で構成されていたが、本発明は、端子金具と被覆電線の芯線とが同種金属である端子付き電線にも適用することができる。さらに、端子金具と被覆電線の芯線とが同種金属である場合など、防食が不要である場合は、芯線の露出部分を覆う上記防食用樹脂を省いてよい。
【0033】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0034】
1 端子付き電線
2 被覆電線
3 端子金具
4 防食用樹脂
21 芯線
22 被覆
31 芯線圧着部(芯線接続部)
32 被覆圧着部
32a,32b 加締め片
32c 底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6