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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】センサーモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20240415BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N27/00 K
G01N27/12 G
G01N27/12 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020131275
(22)【出願日】2020-08-01
(65)【公開番号】P2022027665
(43)【公開日】2022-02-14
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】田邊 圭
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-252906(JP,A)
【文献】特開2019-120698(JP,A)
【文献】国際公開第2004/111627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に搭載されたセンサー素子と、
前記基板に固定され、前記センサー素子を覆うケースと、
前記ケースに貼り付けられたフィルターと、を備え、
前記ケースには複数の貫通孔が設けられ、
前記ケースは、前記フィルターで覆われた貼り付け領域と、前記フィルターで覆われていない非貼り付け領域とを有し、
前記複数の貫通孔は、いずれも前記貼り付け領域に設けられ、
前記非貼り付け領域は、前記貼り付け領域に囲まれた中央領域と、前記貼り付け領域の外側に位置する外側領域と、前記中央領域と前記外側領域を繋ぐ切断領域とを含むことを特徴とするセンサーモジュール。
【請求項2】
前記外側領域と前記切断領域の境界に位置する前記フィルターのエッジ部分が面取りされていることを特徴とする請求項1に記載のセンサーモジュール。
【請求項3】
前記切断領域の幅が前記中央領域から前記外側領域に向かって広くなる形状を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサーモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサーモジュールに関し、特に、測定雰囲気中に含まれる所定のガス成分などを検出するセンサーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
所定のガス成分を検出するガスセンサーとしては、特許文献1に記載されたガスセンサーが知られている。特許文献1に記載されたガスセンサーは、筒状の測定セルに収容されたガスセンサーと、測定セルに設けられた複数の貫通孔を覆うフィルターとを備えている。特許文献1に記載されたフィルターの平面形状は円形である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5868615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フィルターがより複雑な形状を有している場合、特に、リング形状である場合には、フィルターの貼り付け工程が複雑になることがある。例えば、切り込みが設けられたフィルターシートをケースに貼り付け、フィルターの必要部分がケースに残存するよう不要部分を剥離する方法を用いた場合、リング状のフィルターに囲まれた中央領域に位置する不要部分と、リング状のフィルターの外側に位置する不要部分をそれぞれ剥離する必要があり、工程数が増えるという問題があった。このような問題はガスセンサーだけでなく、フィルターが貼り付けられた全てのセンサーモジュール、例えば、空気の振動、圧力又は温度を検出するセンサーモジュール、つまりマイクロフォン、圧力センサー、温度センサーなどにおいても生じる問題である。
【0005】
したがって、本発明は、フィルターが貼り付けられたセンサーモジュールにおいて、フィルターの貼り付け工程を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるセンサーモジュールは、基板と、基板に搭載されたセンサーチップと、基板に固定されセンサー素子を覆うケースと、ケースに貼り付けられたフィルターとを備え、ケースには複数の貫通孔が設けられ、ケースは、フィルターで覆われた貼り付け領域と、フィルターで覆われていない非貼り付け領域とを有し、複数の貫通孔はいずれも貼り付け領域に設けられ、非貼り付け領域は、貼り付け領域に囲まれた中央領域と、貼り付け領域の外側に位置する外側領域と、中央領域と外側領域を繋ぐ切断領域とを含むことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ケースにフィルターシートを貼り付けた後、フィルターシートの不要部分を剥離する工程において、外側領域に貼り付けられた不要部分と中央領域に貼り付けられた不要部分を一工程で除去することが可能となる。
【0008】
本発明において、外側領域と切断領域の境界に位置するフィルターのエッジ部分が面取りされていても構わない。これによれば、不要部分の剥離工程においてフィルターの剥離を防止することが可能となる。
【0009】
本発明において、切断領域の幅が中央領域から外側領域に向かって広くなる形状を有していても構わない。これによれば、切断領域に位置する不要部分が除去しやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明によれば、フィルターが貼り付けられたセンサーモジュールにおいて、フィルターの貼り付け工程を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるセンサーモジュール1の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、センサーモジュール1の略分解斜視図である。
図3図3は、センサーモジュール1を裏面側から見た略平面図である。
図4図4は、天板部41の形状をより詳細に説明するための略平面図であり、フィルター65を除去した状態を示している。
図5図5は、フィルター65の形状を説明するための略平面図である。
図6図6は、センサーモジュール1の搬送方法を説明するための略斜視図である。
図7図7は、センサーモジュール1の製造工程の一部を説明するための略斜視図である。
図8図8は、センサーモジュール1の製造工程の一部を説明するための略斜視図である。
図9図9は、フィルター65のエッジ部分を面取り形状とした例を説明するための模式図である。
図10図10は、切断領域41Dの幅が中央領域41Aから外側領域41Cに向かって広くなる形状とした例を説明するための模式図である。
図11図11は、本発明の第2の実施形態によるセンサーモジュール2の外観を示す略平面図である。
図12図12は、フィルター65のエッジ部分を面取り形状とした例を説明するための模式図である。
図13図13は、切断領域41Dの幅が中央領域41Aから外側領域41Cに向かって広くなる形状とした例を説明するための模式図である。
図14図14は、本発明の第3の実施形態によるセンサーモジュール3の外観を示す略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0013】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるセンサーモジュール1の外観を示す略斜視図である。また、図2は、センサーモジュール1の略分解斜視図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態によるセンサーモジュール1は、基板10と、基板10の表面11に搭載されたセンサーチップ20及びコントロールIC30と、基板10に固定され、センサーチップ20及びコントロールIC30を覆うケース40と、ケース40に貼り付けられたフィルター65とを備えている。図3に示すように、基板10の裏面12には複数の外部端子13が設けられている。基板10の表面11及び裏面12は、xy面を構成する。
【0015】
センサーチップ20は、例えば、測定雰囲気中に含まれる所定のガス成分(COなど)の濃度を測定するセンサー素子を備える。但し、センサーチップ20がガスセンサーである点は必須でなく、測定雰囲気中における空気の振動、圧力、温度、湿度などを検出するセンサー、つまりマイクロフォン、圧力センサー、温度センサー、湿度センサーなどであっても構わない。また、図2に示す例では、2つのセンサーチップ20を基板10に搭載しているが、基板10に搭載するセンサーチップ20の数については特に限定されない。
【0016】
コントロールIC30はセンサーチップ20に接続され、センサーチップ20の出力に基づいて計測値を算出する制御回路が集積されている。特に限定されないが、コントロールIC30としてはベアチップ状態の半導体ICを用いることができる。コントロールIC30は外部端子13に接続される。外部端子13の一部は、センサーチップ20に直接接続されていても構わない。また、センサーチップ20とコントロールIC30が別チップである点についても必須でなく、センサー素子と制御回路を1チップ化したICを用いても構わない。
【0017】
ケース40は、金属や樹脂など十分な強度を有する材料からなり、基板10の表面11と対向する天板部41と、天板部41に接続され平面視で(z方向から見て)センサーチップ20及びコントロールIC30を囲む側板部42を含む。天板部41は基板10の表面11と平行であり、xy面を構成する。側板部42は、基板10の表面11に対して垂直であり、xz面又はyz面を構成する。天板部41には、複数の貫通孔43が設けられている。貫通孔43は、ケース40の外部から内部への空気の流通を確保するために設けられている。例えば、センサーチップ20がガスセンサーである場合、測定対象となるガス成分は、貫通孔43を介してケース40の内部に侵入し、センサーチップ20によってその濃度が測定される。本実施形態においては貫通孔43の平面形状が円形であり、これにより、貫通孔43による天板部41の強度低下が最小限に抑えられている。
【0018】
フィルター65は、センサー素子を劣化させる所定のガス成分や、塵や埃などの侵入を防止するための部材であり、複数の貫通孔43と重なる位置に設けられている。
【0019】
図4は、天板部41の形状をより詳細に説明するための略平面図であり、フィルター65を除去した状態を示している。
【0020】
図4に示すように、天板部41の平面形状は矩形であり、貫通孔43の存在しない中央領域41Aと、中央領域41Aの周囲を囲む貫通孔形成領域41Bと、貫通孔形成領域41Bの外側に位置する外側領域41Cを有している。貫通孔43はいずれも貫通孔形成領域41Bに形成されており、中央領域41A及び外側領域41Cには貫通孔43が設けられていない。貫通孔43の一部は、z方向から見て、センサーチップ20又はコントロールIC30と重なっていても構わない。中央領域41Aの中心位置は、天板部41の中心位置と一致している。貫通孔形成領域41Bはリング状であり、3つの貫通孔43がx方向又はy方向に配列された直線部41Bと、2つの直線部を繋ぐ角部41Bを有している。
【0021】
図5は、フィルター65の形状を説明するための略平面図である。
【0022】
図5に示すように、フィルター65は略リング状である連続的な単一部材である。フィルター65には、リングを切断する切断部65aが設けられている。切断部65aは、貫通孔形成領域41Bの角部41Bに設けられている。ここで、天板部41のうちフィルター65で覆われた領域を「貼り付け領域」とした場合、貼り付け領域の大部分は貫通孔形成領域41Bと重なる。これに対し、天板部41のうちフィルター65で覆われていない領域を「非貼り付け領域」とした場合、非貼り付け領域は、中央領域41Aと、外側領域41Cと、貫通孔形成領域41Bと重なり中央領域41Aと外側領域41Cを繋ぐ切断領域41Dからなる。
【0023】
図6は、本実施形態によるセンサーモジュール1の搬送方法を説明するための略斜視図である。
【0024】
図6に示すように、センサーモジュール1を搬送する際には、チップマウンタの吸着ノズル50によって天板部41の中央領域41Aを吸着する。上述の通り、天板部41の中央領域41Aには貫通孔43が設けられていないため、吸着ノズル50によって確実に吸着することが可能である。また、吸着ノズル50がフィルター65と接触しないことから、実装工程におけるフィルター65の破損などを防止することが可能となる。しかも、天板部41の中央領域41Aは平面位置が偏在していないため、吸着ノズル50によって吸着された状態におけるセンサーモジュール1の姿勢をより安定させることが可能となる。これにより、図示しない回路基板にセンサーモジュール1を表面実装する作業を安定して行うことが可能となる。
【0025】
図7及び図8は、センサーモジュール1の製造工程の一部を説明するための略斜視図である。
【0026】
まず、図7に示すように、多数のセンサーチップ20及びコントロールIC30が実装された集合基板10Aを用意し、個々のセンサーモジュール1となる部分にケース40をそれぞれ固定する。この状態で、大面積のフィルターシート66を複数のケース40に貼り付ける。フィルターシート66には個々のフィルター65に分離可能な切り込みが設けられている。
【0027】
次に、図8に示すように、個々のフィルター65がケース40に残存するよう、フィルターシート66の不要部分を剥離する。フィルターシート66の不要部分を剥離する際には、切断領域41D側からフィルターシート66を持ち上げることによって、フィルター65と不要部分66A,66C,66Dを分離する。つまり、図7及び図8に示すポイント66Pを持ち上げることによって剥離を行う。これにより、外側領域41Cを覆う不要部分66C、切断領域41Dを覆う不要部分66D、中央領域41Aを覆う不要部分66Aがこの順に剥離されるため、1回の剥離工程で不要部分66A,66C,66Dを全て除去することができる。その後、集合基板10Aを切断し、複数のセンサーモジュール1に個片化する。
【0028】
このように、本実施形態によるセンサーモジュール1によれば、フィルターシート66の剥離工程を簡素化することが可能となる。フィルターシート66の剥離工程においてフィルター65の剥離を防止するためには、図9に示すように、外側領域41Cと切断領域41Dの境界に位置するフィルター65のエッジ部分を面取り形状とすることが好ましい。図9(a)に示す例ではフィルター65のエッジ部分が直線的に面取りされており、図9(b)に示す例ではフィルター65のエッジ部分が円弧状に面取りされており、図9(c)に示す例ではフィルター65のエッジ部分が直線的に面取りされるとともに、これにより生じる角部が円弧状に面取りされている。図9に示す破線は、面取りされた部分を示す。
【0029】
また、不要部分66Dを除去しやすくするためには、図10に示すように、切断領域41Dの幅が中央領域41Aから外側領域41Cに向かって広くなる形状とすることが好ましい。図10(a)に示す例では中央領域41Aから外側領域41Cに向かって切断領域41Dの幅が連続的に広くなる形状を有しており、図10(b)に示す例ではフィルター65のエッジ部分が円弧状に大きく面取りされ、これにより、切断領域41Dの幅が外側領域41Cの近傍において局所的に拡大されている。図10に示す破線は、拡幅する前の切断領域41Dの位置を示す。
【0030】
<第2の実施形態>
図11は、本発明の第2の実施形態によるセンサーモジュール2の外観を示す略平面図である。
【0031】
図11に示すセンサーモジュール2は、フィルター65の切断部65aが貫通孔形成領域41Bの直線部41Bに設けられている点において、第1の実施形態によるセンサーモジュール1と相違している。その他の基本的な構成は第1の実施形態によるセンサーモジュール1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態が例示するように、フィルター65の切断部65aを角部41Bに設けることは必須でない。
【0032】
フィルターシート66の剥離工程において、フィルター65の剥離を防止するためには、図12に示すように、外側領域41Cと切断領域41Dの境界に位置するフィルター65のエッジ部分を面取り形状とすることが好ましい。図12(a)に示す例ではフィルター65のエッジ部分が直線的に面取りされており、図12(b)に示す例ではフィルター65のエッジ部分が円弧状に面取りされており、図12(c)に示す例ではフィルター65のエッジ部分が直線的に面取りされるとともに、これにより生じる角部が円弧状に面取りされている。図12に示す破線は、面取りされた部分を示す。
【0033】
また、不要部分66Dを除去しやすくするためには、図13に示すように、切断領域41Dの幅が中央領域41Aから外側領域41Cに向かって広くなる形状とすることが好ましい。図13(a)に示す例では中央領域41Aから外側領域41Cに向かって切断領域41Dの幅が連続的に広くなる形状を有しており、図13(b)に示す例ではフィルター65のエッジ部分が円弧状に大きく面取りされ、これにより、切断領域41Dの幅が外側領域41Cの近傍において局所的に拡大されている。図13に示す破線は、拡幅する前の切断領域41Dの位置を示す。
【0034】
<第3の実施形態>
図14は、本発明の第3の実施形態によるセンサーモジュール3の外観を示す略平面図である。
【0035】
図14に示すセンサーモジュール3は、ケース40の天板部41が円形である点において、第2の実施形態によるセンサーモジュール2と相違している。その他の基本的な構成は第15の実施形態によるセンサーモジュール2と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態が例示するように、本発明においてケース40の天板部41が矩形である必要はなく、円形の天板部41を有するケース40を用いることによって機械的強度をより高めることが可能となる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1~3 センサーモジュール
10 基板
10A 集合基板
11 基板の表面
12 基板の裏面
13 外部端子
20 センサーチップ
30 コントロールIC
40 ケース
41 天板部
41A 中央領域
41B 貫通孔形成領域
41B 直線部
41B 角部
41C 外側領域
41D 切断領域
42 側板部
43 貫通孔
50 吸着ノズル
65 フィルター
65a 切断部
66 フィルターシート
66A,66C,66D 不要部分
66P ポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14