IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-干渉判定装置及び方法 図1
  • 特許-干渉判定装置及び方法 図2
  • 特許-干渉判定装置及び方法 図3
  • 特許-干渉判定装置及び方法 図4
  • 特許-干渉判定装置及び方法 図5
  • 特許-干渉判定装置及び方法 図6
  • 特許-干渉判定装置及び方法 図7
  • 特許-干渉判定装置及び方法 図8
  • 特許-干渉判定装置及び方法 図9
  • 特許-干渉判定装置及び方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】干渉判定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/10 20060101AFI20240415BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20240415BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20240415BHJP
   A61N 5/06 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
A61B6/10 550
A61N5/10 S
A61B6/03 577
A61N5/06 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020161285
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054219
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】市橋 正英
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-099438(JP,A)
【文献】特開2018-114201(JP,A)
【文献】特開2014-151085(JP,A)
【文献】特開平09-220219(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0347979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
A61N 5/00-5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療又は医用画像診断に用いられる機器の複数の位置にそれぞれ対応する複数のデータセットを取得する取得部であって、前記複数のデータセット各々は、前記複数の位置各々に配置された前記機器の外観に関するデータである、取得部と、
前記複数のデータセットに基づいて、前記複数の位置に前記機器を移動させるための前記機器の動作軸及び動作範囲を決定する決定部と、
前記動作軸及び前記動作範囲を前記機器の外観モデルに割り当てて、前記機器の干渉判定に用いる干渉判定モデルを生成する生成部と、
を具備する干渉判定装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記複数のデータセットを位置合わせして画像処理空間に配置し、前記複数のデータセットの重複部分及び非重複部分を特定し、前記重複部分及び前記非重複部分に基づいて前記動作軸及び前記動作範囲を決定する、請求項1記載の干渉判定装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記複数のデータセット各々に含まれる前記機器の色情報を利用して前記重複部分及び前記非重複部分を特定する、請求項記載の干渉判定装置。
【請求項4】
前記決定部は、動作様式毎に前記動作軸及び前記動作範囲を決定する、請求項1記載の干渉判定装置。
【請求項5】
前記複数のデータセット各々は、光学スキャンにおける複数のサンプル点の位置情報を含むスキャンデータ又は前記スキャンデータに基づいて生成された外観モデルである、請求項1記載の干渉判定装置。
【請求項6】
前記動作軸は、前記機器の回転動作に関する回転軸と前記機器のスライド動作に関するスライド軸との少なくとも一方である、請求項1記載の干渉判定装置。
【請求項7】
前記干渉判定モデルを用いて干渉判定を行う干渉判定部を更に備える、請求項1記載の干渉判定装置。
【請求項8】
前記機器は、放射線治療装置の寝台、放射線治療装置の架台、治療計画画像撮影装置の寝台及び治療計画画像撮影装置の架台の少なくとも1つである、請求項1記載の干渉判定装置。
【請求項9】
放射線治療又は医用画像診断に用いられる機器の複数の位置にそれぞれ対応する複数のデータセットを取得する取得工程であって、前記複数のデータセット各々は、前記複数の位置各々に配置された前記機器の外観に関するデータである、取得工程と、
前記複数のデータセットに基づいて、前記複数の位置に前記機器を移動させるための前記機器の動作軸及び動作範囲を決定する決定工程と、
前記動作軸及び前記動作範囲を前記機器の外観モデルに割り当てて、前記機器の干渉判定に用いる干渉判定モデルを生成する生成工程と、
を具備する干渉判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、干渉判定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医用機器等の稼働機構が複雑な機器を対象として、機器同士又は機器と患者との干渉を判定する干渉判定装置がある。干渉判定装置は、コンピュータで事前に再現した機器及び患者の3次元モデルを、実物と同様に動かしたり配置したりして干渉を判定している。機器の3次元モデルを生成するにあたっては、CAD(Computer-Aided Design)等により当該機器の形状及び駆動系を設計している。機器の駆動系の情報がない場合、3次元モデルを生成することができず、従って、干渉判定を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-114201号公報
【文献】特開2018-161264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、簡易に干渉判定用のモデルを生成することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る干渉判定装置は、取得部、決定部及び生成部を有する。取得部は、放射線治療又は医用画像診断に用いられる機器の複数の位置にそれぞれ対応する複数のデータセットを取得する取得部であって、前記複数のデータセット各々は、前記複数の位置各々に配置された前記機器の外観に関するデータである。決定部は、前記複数のデータセットに基づいて、前記複数の位置に前記機器を移動させるための前記機器の動作軸及び動作範囲を決定する。生成部は、前記動作軸及び前記動作範囲を前記機器の外観モデルに割り当てて、前記機器の干渉判定に用いる干渉判定モデルを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係る放射線治療システムの構成例を示す図である。
図2図2は、図1の干渉判定装置の構成例を示す図である。
図3図3は、図2の干渉判定装置による干渉判定に係る一連の処理の典型的な流れを示す図である。
図4図4は、回転動作の基準位置(0度)に関する治療寝台の外観モデルの一例を示す図である。
図5図5は、回転動作の正方向位置(90度)に関する治療寝台の外観モデルの一例を示す図である。
図6図6は、回転動作の負方向位置(270度)に関する治療寝台の外観モデルの一例を示す図である。
図7図7は、回転動作における回転軸及び回転範囲の決定処理例を模式的に示す図である。
図8図8は、スライド動作におけるスライド軸及びスライド範囲の決定処理例を模式的に示す図である。
図9図9は、干渉判定モデルの生成処理例を模式的に示す図である。
図10図10は、表示機器に表示される干渉判定画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、干渉判定装置及び方法の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
本実施形態に係る干渉判定装置は、放射線治療又は医用画像診断のために干渉判定を行うコンピュータである。本実施形態に係る干渉判定装置は放射線治療システムに包含されるものとする。
【0009】
図1は、本実施形態に係る放射線治療システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、放射線治療システム1は、形状測定器2、干渉判定装置3、治療計画画像撮影装置5、治療計画装置6及び放射線治療装置7を有する。形状測定器2、干渉判定装置3、治療計画画像撮影装置5、治療計画装置6及び放射線治療装置7は、ネットワーク等を介して互いに通信可能に接続されている。
【0010】
形状測定器2は、測定対象の形状を光学的に3次元的に測定する可搬型の測定機器(3次元スキャナ)である。形状測定器2は、放射線治療又は医用画像診断に用いられる機器(以下、対象機器と呼ぶ)に光線等を送受信し、非接触で対象の凹凸を数値化して測定する。形状測定器2による出力データ(以下、スキャンデータと呼ぶ)は干渉判定装置3に供給される。対象機器は、干渉判定装置3による干渉判定に使用する3次元グラフィックモデルの生成対象である。具体的には、対象機器は、治療計画画像撮影装置5の寝台(以下、撮影寝台と呼ぶ)、治療計画画像撮影装置5の架台(以下、撮影架台と呼ぶ)、放射線治療装置7の寝台(以下、治療寝台と呼ぶ)及び放射線治療装置7の架台(以下、治療架台と呼ぶ)等の医用画像診断や放射線治療において使用される機器である。
【0011】
干渉判定装置3は、治療計画画像撮影装置5又は放射線治療装置7の機器同士又は機器と患者との干渉を判定するコンピュータである。干渉判定装置3は、形状測定器2によりスキャンされた測定対象に関する3次元グラフィックモデルを利用して、シミュレーションにより干渉を判定する。
【0012】
治療計画画像撮影装置5は、放射線治療計画に利用する医用画像(以下、治療計画画像と呼ぶ)を生成する医用画像診断装置である。治療計画画像撮影装置5は、撮影架台と撮影寝台とコンソールとを有する。撮影架台は、医用撮像機構を備え、撮影寝台に載置された患者等の被検体に医用撮像を施し、被検体に関する生データを収集する。コンソールは、収集された生データに基づいて被検体に関する治療計画画像を生成する。治療計画画像撮影装置5としては、例えば、X線コンピュータ断層撮影装置やコーンビームCT装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置等が用いられる。
【0013】
治療計画装置6は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、表示機器、入力インタフェース、通信インタフェースを含むコンピュータである。治療計画装置6は、治療計画画像撮影装置5から直接的に又はPACSシステム等を介して治療計画画像を受信する。治療計画装置6は、治療計画画像を利用して、患者に関する治療計画を作成する。治療計画は、治療計画画像と放射線治療条件とを含む。放射線治療条件は、腫瘍位置や放射線照射方向数、放射線照射角度、放射線強度、コリメータ開度、ウェッジフィルタ等の各種条件を含む。治療計画は、放射線治療装置7に送信される。
【0014】
放射線治療装置7は、治療架台(ガントリ)と治療寝台とコンソールとを有する。治療架台は、照射ヘッドを回転軸回りに回転可能に支持する。照射ヘッドには、電子銃等により発生された電子等を加速する加速管と、加速管により加速された電子が衝突する金属ターゲットとが搭載される。金属ターゲットに電子が衝突することにより、放射線であるX線が発生する。照射ヘッドは、治療計画装置6により同定された治療計画に含まれる放射線治療条件に従い放射線を照射する。照射ヘッドからの放射線のビーム軸と回転軸とが交わる点は、空間的に不動であり、アイソセンタと呼ばれている。治療寝台は、患者が載置される治療天板と、治療天板を移動自在に支持する基台とを有する。治療天板は、撮影天板と同様に平面形状を有している。患者の治療部位がアイソセンタに一致するように治療架台、治療寝台及び患者が位置合わせされる。
【0015】
図2は、図1の干渉判定装置3の構成例を示す図である。図2に示すように、干渉判定装置3は、処理回路31、記憶装置32、表示機器33、入力インタフェース34及び通信インタフェース35を有する。処理回路31、記憶装置32、表示機器33、入力インタフェース34及び通信インタフェース35は、互いにバスを介して通信可能に接続されている。
【0016】
処理回路31は、ハードウェア資源として、CPUやGPU等のプロセッサを有する。処理回路31は、干渉判定に関するプログラム(以下、干渉判定プログラムと呼ぶ)を実行し、スキャンデータ取得機能311、外観モデル生成機能312、軸/範囲決定機能313、干渉判定モデル生成機能314、干渉判定機能315及び表示制御機能316のうちの少なくとも一の機能を実現する。
【0017】
スキャンデータ取得機能311において処理回路31は、放射線治療又は医用画像診断に用いられる対象機器の複数の位置にそれぞれ対応する複数のスキャンデータセットを取得する。複数のスキャンデータセットは、複数の位置各々に配置された対象機器の外観に関するスキャンデータである。なお、処理回路31は、対象機器の複数の位置にそれぞれ対応する複数の外観モデルを取得してもよい。外観モデルについては後述する。スキャンデータセットと外観モデルはデータセットの一例である。
【0018】
外観モデル生成機能312において処理回路31は、干渉判定のシミュレーションに使用する3次元グラフィックモデルを生成する。例えば、処理回路31は、スキャンデータ取得機能311により取得された複数のスキャンデータセット各々に基づいて、当該スキャンデータセットに対応する位置に配置された対象機器の3次元的な外観を表す3次元グラフィックモデル(以下、外観モデルと呼ぶ)生成する。
【0019】
軸/範囲決定機能313において処理回路31は、外観モデル生成機能312により生成された複数の外観モデルに基づいて、複数の位置に対象機器を移動させるための当該対象機器の動作軸及び動作範囲を決定する。動作軸及び動作範囲は、例えば、回転移動における回転軸及び回転範囲であり、平行移動におけるスライド軸及びスライド範囲である。なお、処理回路31は、スキャンデータ取得機能311により取得された複数のスキャンデータセットに基づいて、複数の位置に対象機器を移動させるための当該対象機器の動作軸及び動作範囲を決定してもよい。スキャンデータセットと外観モデルはデータセットの一例である。
【0020】
干渉判定モデル生成機能314において処理回路31は、軸/範囲決定機能313により決定された動作軸及び動作範囲を対象機器の外観モデルに割り当てて、対象機器の干渉判定に用いる3次元グラフィックモデル(以下、干渉判定モデルと呼ぶ)を生成する。
【0021】
干渉判定機能315において処理回路31は、干渉判定モデル生成機能314により生成された干渉判定モデルを使用して、放射線治療又は医用画像診断における対象機器の干渉を判定する。例えば、処理回路31は、干渉判定モデルと治療計画に含まれる放射線治療条件とに基づいて干渉を判定する。
【0022】
表示制御機能316において処理回路31は、種々の情報を表示機器33を介して表示する。例えば、処理回路31は、外観モデル、動作軸、動作範囲、干渉判定モデル及び干渉判定結果等を表示する。
【0023】
記憶装置32は、種々の情報を記憶するRAMやROM、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。例えば、記憶回路装置は、スキャンデータセットや干渉判定プログラム等を記憶する。ハードウェアとして記憶装置32は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記録媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
【0024】
表示機器33は、種々の情報を表示する。表示機器33は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。また、表示機器33は、プロジェクタであってもよい。
【0025】
入力インタフェース34は、入力機器を介して受け付けた操作者からの各種指令を入力する。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェース34は、入力機器からの出力信号を、バスを介して処理回路31に供給する。
【0026】
通信インタフェース35は、図示しない有線又は無線を介して、形状測定器2や治療計画画像撮影装置5、治療計画装置6、放射線治療装置7等との間でデータ通信を行う。例えば、通信インタフェース35は、形状測定器2からスキャンデータを受信する。また、通信インタフェース35は、治療計画画像撮影装置5から治療計画画像を受信する。
【0027】
以下、干渉判定装置3による干渉判定に係る一連の処理について詳細に説明する。
【0028】
図3は、干渉判定装置3による干渉判定に係る一連の処理の典型的な流れを示す図である。図3の処理は、記憶装置32に記憶された干渉判定プログラムを読み出して実行することにより開始される。
【0029】
図3に示すように、まず、処理回路31は、スキャンデータ取得機能311の実現により、形状測定器2から、対象機器の位置毎のスキャンデータセットを取得する(ステップS1)。ステップ1においては、干渉判定モデルの生成対象である対象機器の位置毎のスキャンデータセットが取得される。各位置に配置された対象機器を操作者が形状測定器2を用いて光学的にスキャンすることにより、位置毎のスキャンデータが形状測定器2により生成される。位置毎のスキャンデータセットは、動作様式毎に形状測定器2により生成される。対象機器が配置される位置、すなわち、スキャンデータセットの生成対象である位置は、各動作様式について、少なくとも移動範囲の正方向位置、基準位置及び負方向位置を含む。正方向位置は、移動軸に関して基準位置から一方方向側の位置であり、負方向位置は、他方向側の位置である。具体的には、対象機器の位置毎のスキャンデータセットは以下の手順により生成される。なお、以下の説明において対象機器は治療寝台であり、動作様式は回転動作であるとする。
【0030】
まず、治療寝台は、基準位置に配置される。基準位置は、当該動作様式における治療寝台の機械的原点である。回転動作における基準位置は、例えば、0度である。0度は、例えば、天板の長軸が、治療架台の回転軸に一致又は平行する角度である。操作者は、基準位置に配置された治療寝台を、形状測定器2を用いて光学的にスキャンする。形状測定器2によるスキャン方法としては、例えば、以下の3種類がある。第1の種類は、レーザ光を測定対象等に照射し、その反射時間を計測して距離を演算する。第2の種類は、赤外線や白色光のパターン模様を測定対象等に照射し、そのパターン模様の変化を光学カメラにより撮影し、撮影画像に画像処理を施して測定対象等の凹凸を演算する。第3の種類は、2つの光学カメラから同時に測定対象等を撮影し、その2つの光学カメラの視差を利用して撮影画像から測定対象等の凹凸を演算する。
【0031】
光学スキャンにより形状測定器2は、基準位置に配置された治療寝台に関するスキャンデータのセットであるスキャンデータセットを生成する。スキャンデータは、治療寝台の表面のサンプル点の位置情報の関するデータであり、スキャンデータセットは、各位置に配置された治療寝台の全サンプル点のスキャンデータの集合である。サンプル点は、形状測定器2から照射された光線の反射点に規定される。位置情報は、実空間の3次元座標におけるサンプル点の位置により規定されてもよいし、実空間の3次元座標における形状測定器2の位置と形状測定器2からサンプル点までの距離との組合せにより規定されてもよい。
【0032】
基準位置のスキャンデータセットが生成されると、操作者は、治療寝台を駆動して、正方向位置に配置する。回転動作における正方向位置は、例えば、基準位置から正方向の任意の位置に規定される。正方向は、例えば、0度から90度を経由して180度に向かう方向に規定され、正方向位置は、0度から180度のうちの任意の位置、例えば、90度に設定される。正方向位置に配置された治療寝台についても形状測定器2によりスキャンデータセットが生成される。次に、操作者は、治療寝台を駆動して、負方向位置に配置する。回転動作における負方向位置は、例えば、基準位置から負方向の任意の位置に規定される。負方向は、例えば、0度から270度を経由して180度に向かう方向に規定され、負方向位置は、0度から180度のうちの任意の位置、例えば、270度に設定される。負方向位置に配置された治療寝台についても形状測定器2によりスキャンデータセットが生成される。
【0033】
このようにして治療寝台の駆動と形状測定器2によるスキャンとを繰り返して、複数の位置にそれぞれ対応する複数のスキャンデータセットが生成される。なお、位置は、上記の3箇所に限定されず、2箇所でも、4箇所以上でもよい。4箇所の場合、例えば、0度、90度、180度及び270度のスキャンデータセットが生成されればよい。また、動作様式が回転動作に限らず、例えば、スライド動作でもよい。スライド動作の場合、例えば、基準位置である±0cm、正方向位置である+50cm及び負方向位置である-50cm各々について形状測定器2により光学スキャンを行い、スキャンデータセットが生成されればよい。複数のスキャンデータセットは動作様式毎に取得され管理される。
【0034】
なお、各スキャンデータセットは、単一の形状測定器2により生成されてもよいし、異なる複数の形状測定器2により生成されてもよい。
【0035】
ステップS1が行われると処理回路31は、外観モデル生成機能312の実現により、ステップS1において取得された位置毎のスキャンデータセットに基づいて、位置毎の外観モデルを生成する(ステップS2)。ステップS2において処理回路31は、スキャンデータセットを構成する複数のサンプル点のサンプルデータを位置情報に従い三次元画像処理空間に配置し、隣接するサンプル点をポリゴンで連結することにより、当該位置に対応する治療寝台の外観モデルを生成する。
【0036】
図4は、回転動作の基準位置(0度)に関する治療寝台の外観モデルの一例を示す図であり、図5は、回転動作の正方向位置(90度)に関する治療寝台の外観モデルの一例を示す図であり、図6は、回転動作の負方向位置(270度)に関する治療寝台の外観モデルの一例を示す図である。図4図5及び図6各々は平面図と正面図とを示している。図4図5及び図6に示すように、外観モデルは、天板部71、基台部72及び台座部73を有する。天板部71は、治療寝台の天板に対応する外観モデルであり、基台部72は、治療寝台の基台に対応する外観モデルであり、台座部73は、治療寝台の天板に対応する外観モデルである。基台は、床面に設けられた台座に設置され、天板を回転軸回りに回転可能且つ長軸に沿って平行移動可能に支持する。ここで、基準位置における天板部71の長軸方向をZ方向、高さ方向をY方向、短軸方向をX方向に規定する。
【0037】
ステップS2が行われると処理回路31は、軸/範囲決定機能313の実現により、ステップS2において生成された位置毎の外観モデルに基づいて、対象機器の動作軸及び動作範囲を決定する(ステップS3)。ステップS3において処理回路31は、複数の外観モデルを位置合わせして画像処理空間に配置し、複数の外観モデルの重複部分及び非重複部分を特定し、重複部分及び非重複部分に基づいて動作軸及び動作範囲を決定する。動作軸及び動作範囲は動作様式毎に決定される。以下、ステップS3の処理を、動作様式が回転動作の場合とスライド動作との場合について具体的に説明する。
【0038】
図7は、回転動作における回転軸及び回転範囲の決定処理例を模式的に示す図である。図7は、0度、90度及び270度の外観モデルを利用した決定処理例を例示している。なお、図7は、治療寝台の外観モデルのうちの天板部71のみを例示している。
【0039】
図7に示すように、まず、処理回路31は、0度、90度及び270度にそれぞれ対応する複数の天板部71(0度)、71(90度)及び71(270度)を、位置合わせして画像処理空間に配置する。例えば、処理回路31は、回転動作に関わらず外観が変動しない基台部72及び/又は台座部73が一致するように複数の天板部71(0度)、71(90度)及び71(270度)を位置合わせするとよい。位置合わせを正確に行うため、基台部72及び/又は台座部73に形状及び/又は色等の目印を物理的に設け、目印に基づいて位置合わせしてもよい。
【0040】
次に、処理回路31は、複数の天板部71(0度)、71(90度)及び71(270度)の重複部分711と非重複部分712とを特定する。例えば、処理回路31は、複数の天板部71(0度)、71(90度)及び71(270度)の第1の差分データを生成し、第1の差分データを非重複部分712に設定し、複数の天板部71(0度)、71(90度)及び71(270度)から非重複部分712を減じて第2の差分データを生成し、第2の差分データを重複部分711に設定する。非重複部分712は治療寝台の移動部分、すなわち、天板の先端部に対応し、重複部分711は治療寝台の固定部分、すなわち、天板の基台部に対応する。
【0041】
次に処理回路31は、重複部分711に基づいて回転軸ARを推定する。例えば、重複部分711の形状から回転軸ARの位置座標を推定し、推定された位置座標を回転軸ARとして決定する。また、処理回路31は、非重複部分712に基づいて回転範囲を決定する。回転範囲は、回転軸AR周りの下限角度から上限角度までの角度範囲に規定される。例えば、処理回路31は、非重複部分712のうちの天板部71(0度)、71(90度)及び71(270度)の同一の外観的な特徴点を特定する。特徴点は、例えば、天板部71の角部等に設定されればよい。次に処理回路31は、天板部71(0度)、71(90度)及び71(270度)各々の特徴点の位置変化に基づいて、90度から0度を経由して270度までに規定される回転範囲を決定する。
【0042】
なお、回転軸と回転範囲との決定方法は上記方法に限定されず、処理回路31は、重複部分711と非重複部分712との双方に基づいて回転軸と回転範囲とを決定してもよい。例えば、重複部分711の位置と、天板部71(0度)、71(90度)及び71(270度)各々の特徴点の位置とに基づいて回転軸と回転範囲とを決定してもよい。また、処理回路31は、ステップS1において取得された各スキャンデータセットに回転角度情報が関連付けられている場合、当該回転角度情報に基づいて回転範囲を決定してもよい。例えば、複数のスキャンデータセットにそれぞれ関連付けられた複数の回転角度情報から下限角度と上限角度とを特定し、特定された下限角度から上限角度までに規定される回転範囲を決定してもよい。また、処理回路31は、動作様式が回転動作である旨の情報を利用して回転軸と回転範囲とを決定してもよい。
【0043】
図8は、スライド動作におけるスライド軸及びスライド範囲の決定処理例を模式的に示す図である。図8は、±0cm、-50cm及び+50cmの外観モデルを利用した決定処理例を例示している。なお、図8は、治療寝台の外観モデルのうちの天板部71のみを例示している。
【0044】
図8に示すように、まず、処理回路31は、±0cm、-50cm及び+50cmにそれぞれ対応する複数の天板部71(±0cm)、71(-50cm)及び71(+50cm)を、位置合わせして画像処理空間に配置する。例えば、処理回路31は、回転動作に関わらず外観が変動しない基台部72及び/又は台座部73が一致するように複数の天板部71(±0cm)、71(-50cm)及び71(+50cm)を位置合わせするとよい。位置合わせを正確に行うため、基台部72及び/又は台座部73に形状及び/又は色等の目印を物理的に設け、目印に基づいて位置合わせしてもよい。なお、図8では、分かり易さのため、±0cm、-50cm及び+50cmにそれぞれ対応する複数の天板部71(±0cm)、71(-50cm)及び71(+50cm)のZ方向の位置をずらして図示しているが、実際にはZ方向が一致するように配置される。
【0045】
次に、処理回路31は、複数の天板部71(±0cm)、71(-50cm)及び71(+50cm)の重複部分713と非重複部分714とを特定する。例えば、処理回路31は、複数の天板部71(±0cm)、71(-50cm)及び71(+50cm)の第3の差分データを生成し、第3の差分データを非重複部分714に設定し、複数の天板部71(±0cm)、71(-50cm)及び71(+50cm)から非重複部分714を減じて第4の差分データを生成し、第4の差分データを重複部分713に設定する。非重複部分714は治療寝台の移動部分に対応し、重複部分713は治療寝台の固定部分に対応する。
【0046】
次に処理回路31は、重複部分713に基づいてスライド軸を推定する。例えば、重複部分713の長軸を推定し、推定された長軸が示す方向をスライド軸として決定する。例えば、図8の場合、スライド軸は±Z方向に決定される。また、処理回路31は、非重複部分714に基づいてスライド範囲を決定する。スライド範囲は、スライド軸に関する下限位置から上限位置までのスライド範囲に規定される。例えば、処理回路31は、非重複部分712のうちの天板部71(-50cm)の-Z方向の末端部と71(+50cm)の+Z方向の末端部との間の距離を算出し、算出された距離から天板のZ軸に沿う長さ(天板長)を減じることによりスライド範囲を決定する。
【0047】
なお、スライド軸とスライド範囲との決定方法は上記方法に限定されず、処理回路31は、重複部分713と非重複部分714との双方に基づいてスライド軸とスライド範囲とを決定してもよい。また、処理回路31は、ステップS1において取得された各スキャンデータセットにスライド距離情報が関連付けられている場合、当該スライド距離情報に基づいてスライド範囲を決定してもよい。例えば、複数のスキャンデータセットにそれぞれ関連付けられた複数のスライド距離情報から下限位置と上限位置とを特定し、特定された下限位置から上限位置までの範囲をスライド範囲として決定してもよい。また、処理回路31は、動作様式がスライド動作である旨の情報を利用してスライド軸とスライド範囲とを決定してもよい。
【0048】
なお、上記の説明において、複数の位置にそれぞれ対応する複数の外観モデルの非重複部分を特定するものとしたが、複数の外観モデルのうちの、隣接する2つの位置にそれぞれ対応する2つの外観モデルの非重複部分を、当該2つの位置の組合せを変えながら順次特定し、特定された複数の非重複部分に基づいて回転範囲やスライド範囲等の移動範囲を特定してもよい。また、処理回路31により決定された動作軸及び動作範囲は、操作者により入力インタフェース34を介して修正されてもよい。また、処理回路31は、操作者により入力インタフェース34を介して指定された軸及び範囲に従い動作軸及び動作範囲を決定してもよい。また、処理回路31は、スキャンデータセットが各サンプル点の位置情報の他に色情報を含む場合、色情報を利用して重複部分と非重複部分とを特定してもよい。色情報は、形状測定器2により取得可能である。
【0049】
ステップS3が行われると処理回路31は、干渉判定モデル生成機能314の実現により、ステップS3において決定された対象機器の動作軸及び動作範囲を外観モデルに割り当てて干渉判定モデルを生成する(ステップS4)。
【0050】
図9は、干渉判定モデル80の生成処理例を模式的に示す図である。図9に示すように、ステップS3において回転軸及び回転範囲とスライド軸及びスライド範囲とが決定されている場合、処理回路31は、回転軸及び回転範囲とスライド軸及びスライド範囲とを、治療寝台の外観モデル70に割り当てて、治療寝台の干渉判定モデル80を生成する。具体的には、外観モデル70を可動部と固定部とに分割し、可動部に対して回転軸及び回転範囲とスライド軸及びスライド範囲とを割り当てる。例えば、治療寝台の場合、可動部は天板部71に対応し、固定部は基台部72及び台座部73に対応する。分割は、操作者による入力インタフェース34等を介した指示に従い手動的に行われてもよいし、画像認識処理により自動的に行われてもよい。分割は、ステップS4において行われてもよいし、ステップS2やステップS3において行われてもよい。干渉判定モデル80は、記憶装置32に記憶される。割り当てられる外観モデル70は、ステップS2において生成された複数の位置にそれぞれ対応する複数の外観モデルのうちの何れが用いられてもよい。
【0051】
本実施形態に係る干渉判定モデルの生成対象は、上記の通り、治療寝台に限定されず、治療架台や患者等にも適用可能である。この場合、治療寝台と同様、ステップS1-S4を実行することにより、治療架台の干渉判定モデルや患者の干渉判定モデルを生成することが可能である。例えば、治療架台の場合、回転軸周りに架台を回転させ複数の回転角度に順番に配置させて形状測定器2により光学的にスキャンすることにより、複数の回転角度にそれぞれ対応する複数のスキャンデータセットが生成される。そして、処理回路31は、治療架台に関する複数のスキャンデータセットにそれぞれ対応する複数の外観モデルを生成し(ステップS2)、複数の外観モデルに基づいて、治療架台の回転軸及び回転範囲を決定し(ステップS3)、回転軸及び回転範囲を治療架台の外観モデルに割り当てて治療架台の干渉判定モデルを生成する(ステップS4)。
【0052】
患者の場合、治療寝台に配置された任意の単位の患者を形状測定器2により光学的にスキャンすることにより、単一のスキャンデータセットが生成されればよい。この場合、処理回路31は、患者に関するスキャンデータセットに対応する外観モデルを、干渉判定モデルとして生成すればよい(ステップS4)。なお、医用画像診断装置により患者を3次元医用撮像することにより、患者の3次元医用画像データを生成し、処理回路31は、生成された3次元医用画像データから画像処理により3次元体表データを抽出し、抽出された3次元体表データが患者の外観モデルに設定してもよい。
【0053】
ステップS4が行われると処理回路31は、干渉判定機能315の実現により、ステップS4において生成された干渉判定モデルを用いて干渉判定を実行する(ステップS5)。
【0054】
図10は、表示機器33に表示される干渉判定画面I1例を示す図である。処理回路31は、まず、干渉判定のための座標系により規定された三次元画像処理空間に、治療寝台の干渉判定モデル(以下、治療寝台モデルと呼ぶ)80、治療架台の干渉判定モデル(以下、治療架台モデルと呼ぶ)90、患者の干渉判定モデル(以下、患者モデルと呼ぶ)50を配置する。治療架台モデル90は、支持台部91、照射ヘッド部93、X線管部95及びX線検出器部96を有する。治療寝台モデル80は、基台部82及び台座部83を有する。
【0055】
治療寝台モデル80、治療架台モデル90及び患者モデル50は、実際の治療室における治療寝台、治療架台及び患者の配置、換言すれば、治療計画を再現するように配置される。干渉判定のための三次元画像処理空間は、処理回路31によりレンダリング処理され、任意の視点に関する干渉判定画面I1に変換される。表示制御機能316の実現により処理回路31は、表示機器33に、干渉判定画面IS1を表示する。
【0056】
本実施形態に係る治療寝台モデル80や治療架台モデル90には、上記の通り、形状測定器2によるスキャンデータセットに基づいて決定された動作軸及び動作範囲が割り当てられているので、当該動作軸及び動作範囲の制限内で、操作者による入力インタフェース34等を介した指示に従い任意に移動させることが可能である。処理回路31は、治療寝台モデル80や治療架台モデル90を動作軸及び動作範囲の制限内で動かすことにより、治療寝台、治療架台及び患者間の干渉を判定することが可能である。
【0057】
以上により、干渉判定装置3による干渉判定に係る一連の処理が終了する。
【0058】
なお、上記の実施形態は種々の変形が可能である。
【0059】
上記の説明においては、ステップS1からステップS5までの全ての処理が実行される必要はなく、ステップS4において干渉判定モデルが生成された後、ステップS5における干渉判定は実行されなくてもよい。例えば、干渉判定装置3に干渉判定機能315が含まれておらず、他のコンピュータが干渉判定機能315を実施する場合、干渉判定装置3は、ステップS4において生成された干渉判定モデルを当該他のコンピュータに送信し、当該他のコンピュータは、受信した干渉判定モデルに基づいて干渉判定を行うことが可能である。また、複数の位置にそれぞれ対応する複数の外観モデルが干渉判定装置3とは異なる他のコンピュータにより生成されていてもよい。この場合、処理回路31は、複数の位置にそれぞれ対応する複数の外観モデルを取得し、ステップS3において、取得された複数の外観モデルに基づいて、上記の説明と同様、動作軸及び動作範囲を決定してもよい。
【0060】
上記の説明において処理回路31は、ステップS3において決定された動作軸及び動作範囲を、ステップS2において生成された外観モデルに割り当てるものとした。しかしながら、処理回路31は、ステップS3において決定された動作軸及び動作範囲を、CAD等により予め生成された、動作軸及び動作範囲が割り当てられていないモデルに割り当ててもよい。また、処理回路31は、ステップS3において決定された動作軸及び動作範囲を、既に動作軸及び動作範囲が割り当てられているモデルに割り当て直してもよい。
【0061】
上記の説明においては、外観モデルに基づいて動作軸及び動作範囲を決定するとしたが、サンプル点列の位置情報であるスキャンデータセットに基づいて動作軸及び動作範囲を決定してもよい。また、外観モデルは、形状測定器2により生成されたスキャンデータセットに基づいて生成されるものとしたが、光学カメラ等の光学撮影装置により複数の撮影位置から生成された複数の2次元画像に画像処理を施すことにより外観モデルが生成されてもよいし、光学撮影装置により生成された2次元画像と、レーザ型や赤外線型等の距離測定器により得られた距離情報とに基づいて外観モデルが生成されてもよい。
【0062】
上記の説明においては、複数のスキャンデータセットにそれぞれ対応する複数の位置の空間的な間隔は比較的広いものとした。しかしながら、本実施形態は、これに限定されず、例えば、回転動作の場合、1度間隔等の密な間隔で複数のスキャンデータセットが生成されてもよい。この場合、処理回路31は、上記の説明の通り、複数のスキャンデータセット又は当該複数のスキャンデータセットにそれぞれ対応する複数の外観モデルに基づいて動作軸及び動作範囲を決定することにより、動作軸及び動作範囲の精度を高めることが可能である。
【0063】
密な間隔で複数のスキャンデータセットが生成された場合の他の例として、処理回路31は、動作軸及び動作範囲を決定しなくてもよい。この場合、処理回路31は、複数のスキャンデータセットにそれぞれ対応する複数の外観モデルを生成し、複数の外観モデルと当該複数の外観モデルにそれぞれ対応する複数の位置とを関連付けて記憶装置32に格納する。干渉判定において処理回路31は、移動先の位置に対応する外観モデルを記憶装置32から読み出し、読み出した外観モデルを位置合わせして干渉判定のための三次元画像処理空間に配置することにより、干渉判定を行うことが可能である。
【0064】
上記の説明の通り、本実施形態に係る干渉判定装置3は、処理回路31を有する。処理回路31は、放射線治療又は医用画像診断に用いられる機器の複数の位置にそれぞれ対応する複数のデータセットを取得する。複数のデータセット各々は、複数の位置各々に配置された機器の外観に関するデータである。処理回路31は、複数のデータセットに基づいて、複数の位置に機器を移動させるための機器の動作軸及び動作範囲を決定する。処理回路31は、動作軸及び動作範囲を機器の外観モデルに割り当てて、機器の干渉判定に用いる干渉判定モデルを生成する。
【0065】
上記の構成によれば、例えば、機器のスキャンデータセットや外観モデル等のデータセットから当該機器の動作軸及び動作範囲を決定する。これにより、事前に機器の駆動系の情報がない場合であっても、当該機器の動作軸及び動作範囲を半自動的に決定することができる。また、動作軸及び動作範囲を、CAD等を使用してコンピュータにより精巧に設計する手間なく半自動的に決定することができる。
【0066】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、簡易に干渉判定用のモデルを生成することができる。
【0067】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現しても良い。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1及び図2における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1 放射線治療システム
2 形状測定器
3 干渉判定装置
5 治療計画画像撮影装置
6 治療計画装置
7 放射線治療装置
31 処理回路
32 記憶装置
33 表示機器
34 入力インタフェース
35 通信インタフェース
311 スキャンデータ取得機能
312 外観モデル生成機能
313 軸/範囲決定機能
314 干渉判定モデル生成機能
315 干渉判定機能
316 表示制御機能

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10