(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】地下水のリチャージ方法及び地下水リチャージ装置
(51)【国際特許分類】
E02D 19/10 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
E02D19/10
(21)【出願番号】P 2020165193
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】石川 明
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-183410(JP,A)
【文献】特開2013-158725(JP,A)
【文献】特開2004-082056(JP,A)
【文献】特開2019-070297(JP,A)
【文献】特表2019-535943(JP,A)
【文献】特開昭56-107147(JP,A)
【文献】特開2001-323447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚水井戸から地下水を揚水する揚水工程と、
前記地下水を地盤内に注水するための注水井戸内を予め加圧又は減圧する圧力調整工程と、
前記注水井戸に前記地下水を注水する注水工程と、
を備え、
前記圧力調整工程において、前記注水井戸内を満水にして、前記地盤の自然水位と前記注水井戸内の圧力に対応する水位との水位差を所定値に維持する、
地下水のリチャージ方法。
【請求項2】
前記注水工程において、
前記地下水を前記揚水井戸から揚水する系統とは別系統で前記注水井戸内に供給する、
請求項1に記載の地下水のリチャージ方法。
【請求項3】
前記圧力調整工程において、
前記注水井戸内の圧力を検知し、検知した前記圧力の情報に基づいて前記注水井戸内を加圧又は減圧する、
請求項1又は2に記載の地下水のリチャージ方法。
【請求項4】
前記揚水井戸から揚水された前記地下水を前記注水井戸に注水する前にろ過装置に通し、前記地下水に含まれる少なくとも鉄を除去することによって前記注水井戸内の目詰まりを防止するろ過工程を備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の地下水のリチャージ方法。
【請求項5】
地下水を揚水するための揚水井戸と、
前記地下水を地盤内に注水するための注水井戸と、
前記揚水井戸内から揚水した前記地下水を前記注水井戸に注水する通水管と、
前記注水井戸内を加圧又は減圧する圧力調整機構と、
を備え、
前記圧力調整機構は、前記揚水井戸内から揚水した前記地下水を注水するときに、前記注水井戸内を満水にして、前記注水井戸内の圧力を、前記地盤の自然水位と前記注水井戸内の圧力に対応する水位との水位差が所定値となる所定圧力に維持するように調整可能に構成されている、
地下水リチャージ装置。
【請求項6】
前記圧力調整機構は、前記注水井戸から溢れた前記地下水の一部を導入して前記注水井戸と接続され、且つ前記注水井戸内の圧力が前記所定圧力を維持するように加圧又は減圧する気液変換装置を備える、
請求項5に記載の地下水リチャージ装置。
【請求項7】
前記通水管は、
一方の端部が前記揚水井戸の内部において前記地下水を揚水可能に配置され且つ他方の端部が前記揚水井戸及び前記注水井戸の外部に配置された第1管と、
一方の端部が前記注水井戸の内部に配置され且つ他方の端部が前記揚水井戸及び前記注水井戸の外部において前記第1管とは非連結状態で配置された第2管と、
を有する、
請求項5又は6に記載の地下水リチャージ装置。
【請求項8】
前記圧力調整機構は、
前記注水井戸内の圧力を検知する圧力検知装置と、
前記圧力検知装置で検知した検知圧力と前記所定圧力との差圧を前記注水井戸内に加える圧力付加装置と、
を備える、
請求項5又は6に記載の地下水リチャージ装置。
【請求項9】
前記第2管に設けられ、前記揚水井戸から揚水した前記地下水に含まれる少なくとも鉄を除去可能なろ過装置を備える、
請求項7に記載の地下水リチャージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水のリチャージ方法及び地下水リチャージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リチャージ工法では、揚水井戸から揚水した地下水を揚水井戸から離れた場所に設けられた注水井戸から地盤中に注水する。リチャージ工法では、地盤の自然水位と注水井戸内の水位との水位差を利用して地下水を地盤中に注水する。地盤中に注水可能な水量は、自然水位と揚水井戸内の水位との水位差による圧力に比例する。
【0003】
例えば、特許文献1には、注水井戸内の水位が上昇し、空気溜まりの圧力が所定値より高くなった際に空気を注水井戸外に排出する装置が開示されている。注水井戸内の水位は、注水井戸内に設けられたポンプを稼働させて逆洗するか、余水として地下水を注水井戸外に排水する手段によっても、調整可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチャージ工法では前述のように水圧差を利用するため、特許文献1に開示されている装置のように地面近くから注水井戸内に注水する場合は、自然水位が地面付近にあると、自然水位と注水井戸の上限水位との水位差が小さくなり、注水可能な水量が減ってしまう。水位差を大きくし、地盤中に注水可能な水量を増やすために、リチャージウェルを地面より上方に延ばす手段が提案されている。しかしながら、このような手段では、仮設足場等を設ける必要があり、労力と時間がかかるうえに、都心等の狭隘な現場では実現困難になる。
【0006】
また、上述の特許文献1に開示されている装置では、注水井戸内の圧力が所定値より高くなったことを検知してからリチャージウェル内の空気を排出するため、空気の排出前には水位差が小さくなり、地盤中に注水可能な水量が所定量より少なくなる。したがって、地盤中に注水可能な水量の変動が大きい。さらに、特許文献1では、装置が施工されると上限水位及び自然水位と上限水位との水位差が確定し、注水状況に合わせて水位差を調整することは難しい。
【0007】
本発明は、上述の状況を鑑み、任意の水位差で地盤中に注水可能な地下水のリチャージ方法及び地下水リチャージ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る地下水のリチャージ方法は、揚水井戸から地下水を揚水する揚水工程と、前記地下水を地盤内に注水するための注水井戸内を予め加圧又は減圧する圧力調整工程と、前記注水井戸に前記地下水を注水する注水工程と、を備え、前記圧力調整工程において、前記注水井戸内を満水にして、前記地盤の自然水位と前記注水井戸内の圧力に対応する水位との水位差を所定値に維持する。
【0009】
上述の地下水のリチャージ方法によれば、圧力調整工程において注水井戸内の空気溜まりをなくし、注水井戸内をアクティブに加圧(又は減圧)し、注水井戸内の水圧差を所定値に高精度且つ安定的に調整可能になる。即ち、地盤への注水量を高精度且つ安定的に調整できる。また、地盤によって自然水位は略固定されるが、注水井戸内を加圧又は減圧することによって、注水井戸内の圧力に対応する水位、即ち上限水位を注水井戸の上端や地面よりも物理的に高く設定でき、所定値及び水位差を従来のリチャージ方法よりも大きく且つ自在に設定できる。したがって、上述の地下水のリチャージ方法によれば、揚水井戸から揚水した地下水を任意の水位差で安定的に地盤中に注水できる。
【0010】
本発明に係る地下水のリチャージ方法では、前記注水工程において、前記地下水を前記揚水井戸から揚水する系統とは別系統で前記注水井戸内に供給してもよい。
【0011】
上述の地下水のリチャージ方法によれば、地下水を揚水する系統と注水する系統とを互いに別系統にしているため、圧力調整工程において注水井戸に加圧した際に、系統間で圧力を開放し、揚水井戸に近い方の系統に加圧の影響が及ぶことを防ぎ、揚水井戸から地下水を円滑に揚水できる。
【0012】
本発明に係る地下水のリチャージ方法では、前記圧力調整工程において、前記注水井戸内の圧力を検知し、検知した前記圧力の情報に基づいて前記注水井戸内を加圧又は減圧してもよい。
【0013】
上述の地下水のリチャージ方法によれば、検知した注水井戸内の圧力をフィードバックさせつつ、注水井戸内の水位差を制御できるため、所定値及び水位差を高精度に維持できる。
【0014】
本発明に係る地下水のリチャージ方法では、前記揚水井戸から揚水された前記地下水を前記注水井戸に注水する前にろ過装置に通し、前記地下水に含まれる少なくとも鉄を除去することによって前記注水井戸内の目詰まりを防止するろ過工程を備えてもよい。
【0015】
上述の地下水のリチャージ方法によれば、ろ過工程において地下水から少なくとも鉄が除去されるため、注水工程において注水井戸の目詰まりの発生を抑え、地下水のリチャージの処理効率を高めることができる。
【0016】
本発明に係る地下水リチャージ装置は、地下水を揚水するための揚水井戸と、前記地下水を地盤内に注水するための注水井戸と、前記揚水井戸内から揚水した前記地下水を前記注水井戸に注水する通水管と、前記注水井戸内を加圧又は減圧する圧力調整機構と、を備え、前記圧力調整機構は、前記揚水井戸内から揚水した前記地下水を注水するときに、前記注水井戸内を満水にして、前記注水井戸内の圧力を、前記地盤の自然水位と前記注水井戸内の圧力に対応する水位との水位差が所定値となる所定圧力に維持するように調整可能に構成されている。
【0017】
上述の地下水リチャージ装置によれば、圧力調整機構によって注水井戸内が満水状態でアクティブに加圧(又は減圧)され、地下水が地盤中に注水される際に、注水井戸内の水圧差が所定値になるように圧力が予め高精度且つ安定的に調整され、注水中に維持される。また、注水井戸内を満水状態で加圧することによって、注水井戸内の圧力に対応する水位を注水井戸の上端や地面よりも物理的に高く設定でき、所定値及び水位差を従来の地下水リチャージ装置よりも大きく且つ自在に設定でき、安定させることができる。したがって、上述の地下水リチャージ装置によれば、揚水井戸から揚水した地下水を任意の水位差で地盤中に安定して注水できる。
【0018】
本発明に係る地下水リチャージ装置において、圧力調整機構は、前記注水井戸から溢れた前記地下水の一部を導入して前記注水井戸と接続され、且つ前記注水井戸内の圧力が前記所定圧力を維持するように加圧又は減圧する気液変換装置を備えてもよい。
【0019】
上述の地下水リチャージ装置によれば、空気を挟まずに地下水に加圧又は減圧を作用させ、加圧時の圧縮空気を地下水に溶解させず、注水井戸内の水圧差が所定の水圧差になるように圧力を高精度に調整し、注水中でも水圧差を安定させて維持できる。
【0020】
本発明に係る地下水リチャージ装置では、前記通水管は、一方の端部が前記揚水井戸の内部において前記地下水を揚水可能に配置され且つ他方の端部が前記揚水井戸及び前記注水井戸の外部に配置された第1管と、一方の端部が前記注水井戸の内部に配置され且つ他方の端部が前記揚水井戸及び前記注水井戸の外部において前記第1管とは非連結状態で配置された第2管と、を有してもよい。
【0021】
上述の地下水リチャージ装置によれば、第1管と第2管とを互いに別系統であるため、圧力調整機構で注水井戸内が加圧された際に、互いに非連結状態の系統間で圧力が開放され、第1管を備える系統に対して第2管を備える系統側の加圧の影響が及ぶことを防ぎ、揚水井戸から地下水を円滑に揚水可能である。
【0022】
本発明に係る地下水リチャージ装置では、前記圧力調整機構は、前記注水井戸内の圧力を検知する圧力検知装置と、前記圧力検知装置で検知した検知圧力と前記所定圧力との差圧を前記注水井戸内に加える圧力付加装置と、を備えてもよい。
【0023】
上述の地下水リチャージ装置によれば、圧力検知装置で検知された注水井戸内の圧力に基づいて注水井戸内の圧力及び水位差が制御されるため、所定値及び水位差を高精度に維持でき、注水井戸内の圧力変化に対しても柔軟に対応可能である。
【0024】
本発明に係る地下水リチャージ装置では、前記第2管に設けられ、前記揚水井戸から揚水した前記地下水に含まれる少なくとも鉄を除去可能なろ過装置を備えてもよい。
【0025】
上述の地下水リチャージ装置によれば、揚水井戸で揚水された後に例えば第1管と第2管との間で空気に触れた地下水からろ過装置で鉄をはじめとする粒子成分や不純物が除去されるため、注水井戸の目詰まりの発生が抑えられ、地下水のリチャージの処理効率が高まる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の地下水のリチャージ方法及び地下水リチャージ装置によれば、任意の水位差で地盤中に注水できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る一実施形態の地下水リチャージ装置の一部を切断した部分断面図である。
【
図2】従来の地下水リチャージ装置の一部を切断した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る地下水リチャージ装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1に示すように、本発明に係る一実施形態の地下水リチャージ装置11は、掘削工事等を行う現場に設置され、ディープウェル(揚水井戸)101によって、帯水層(地盤)201-1内から揚水した地下水W1をリチャージウェル(注水井戸)102へ導き、リチャージウェル102から帯水層(地盤)201-2内に注水する装置である。
【0030】
地盤200は、1層以上の帯水層201と、1層以上の粘土層202とを有し、例えば地面300から深さ方向D1に沿って複数の帯水層201-1、201-2、…と、複数の粘土層202-1、202-2、…が交互に繰り返される積層構造を備える。以下、複数の帯水層201-1、201-2、…に共通する内容を説明する際は、これらの帯水層をまとめて帯水層201と記載する。同様に、複数の粘土層202-1、202-2、…に共通する内容を説明する際は、これらの粘土層をまとめて粘土層202と記載する。なお、地下水リチャージ装置11を適用可能であれば、地盤200の構造は特に限定されない。
【0031】
図1に示すように、地下水リチャージ装置11は、ディープウェル(揚水井戸)101と、リチャージウェル(注水井戸)102と、通水管130と、貯水槽150と、ろ過装置195と、圧力調整機構160と、排水管190と、備える。
【0032】
ディープウェル101は、帯水層201-1内の地下水W1を揚水するための排水設備であり、所謂、深井戸である。ディープウェル101は、地盤200に埋設されている。ディープウェル101は、鋼管等からなるケーシング104と、通水部106と、を備える。深さ方向D1において、ケーシング104の上端104aは、地面300と略同じ位置(即ち、同じ高さ)にある。深さ方向D1において、ケーシング104の下端104bは、帯水層201-1内に位置している。ケーシング104は、深さ方向D1に交差する径方向R101で帯水層201-1及び粘土層202との間で地下水を通さない。通水部106は、ケーシング104の下方に配置されている。深さ方向D1において、通水部106の上端106aは、ケーシング104の下端104bに接続され、帯水層201-1内に位置している。深さ方向D1において、通水部106の下端106bは、帯水層201-1内に位置している。通水部106は、径方向R101においてディープウェル101の内部空間に露出するスクリーン(図示略)と、スクリーンに接して径方向R101の外方に設けられたフィルター(図示略)と、を備える。前述のスクリーンには、所定の大きさの貫通孔が多数形成されている。前述のフィルターは、前述のスクリーンの貫通孔よりも大きい粒径を有する複数の粒子で構成されている。通水部106は、径方向R101で帯水層201-1との間で地下水W1を通す。帯水層201-1に含まれる地下水W1は、通水部106を径方向R101外側から径方向R101内側に通り、ディープウェル101内に流入し、溜まる。前述のスクリーンの貫通孔及び複数の粒子同士の隙間よりも大きい砂石等の不純物は、通水部106を径方向R101外側から径方向R101内側に通れない。
【0033】
ディープウェル101のケーシング104の上端104aは、深さ方向D1において後方からごみ等が入らないように閉じられているが、必ずしも密閉されていなくてもよい。
【0034】
リチャージウェル102は、地下水W1を帯水層201-2に注水するための注水設備であり、深井戸である。リチャージウェル102は、ディープウェル101と同様の構成を備え、ディープウェル101とは離れた位置で地盤200に埋設されている。リチャージウェル102は、鋼管等からなるケーシング108と、通水部110と、を備える。深さ方向D1において、ケーシング108の上端108aは、地面300と略同じ位置にある。深さ方向D1において、ケーシング108の下端108bは、帯水層201-2内に位置している。ケーシング108は、深さ方向D1に交差する径方向R102において、帯水層201-1、201-2及び粘土層202との間で地下水を通さない。通水部110は、ケーシング108の下方に配置されている。深さ方向D1において、通水部110の上端110aは、ケーシング108の下端108bに接続され、帯水層201-2内に位置している。深さ方向D1において、通水部110の下端110bは、帯水層201-2内に位置している。通水部110は、通水部106と同様に構成され、径方向R102においてリチャージウェル102の内部空間に露出するスクリーン(図示略)と、スクリーンに接して径方向R102の外方に設けられたフィルター(図示略)と、を備える。通水部110は、径方向R102で帯水層201-2に地下水W2を通す。リチャージウェル102内に供給される地下水W2は、通水部110を径方向R102内側から径方向R102外側に通り、帯水層201-2に注水される。
【0035】
リチャージウェル102のケーシング108は、深さ方向D1において、地面300よりも僅かに後方(即ち、上方)に突出し、鋼板等からなる蓋112で後方から覆われている。
【0036】
通水管130は、第1通水管(第1管)131と、第2通水管(第2管)132と、を備える。第1通水管131と、第2通水管132は、通水管130において上流側(即ち、ディープウェル101側)から下流側(即ち、リチャージウェル102側)に向かって前述の順に配置されている。第1通水管131は、ディープウェル101の内部から上端を抜けて地上に沿って延び、適宜屈曲している。深さ方向D1において、第1通水管131の上流側の端部131cは、ディープウェル101の通水部106と重なる領域に配置されている。第1通水管131の端部131cには、ポンプ141が設けられている。第1通水管131において地上に出ている部分に、揚水量を調整するためのバルブ142が設けられている。
【0037】
第1通水管131の下流側の端部131dは、貯水槽150の内部に開放されている。貯水槽150は、上方に開放された箱体、又は開閉可能な蓋を有するタンクであり、例えば原水タンクやノッチタンクであってもよい。貯水槽150から地下水W1が溢れないようにするため、貯水槽150には、下水放流を行うための不図示のバイパス流路が設けられている。ポンプ141が作動することによって、ディープウェル101内に溜まっている地下水W1が第1通水管131を介して貯水槽150に導かれ、貯水槽150に溜まる。
【0038】
第2通水管132は、貯水槽150の内部から貯水槽150外に抜けて地上に沿って延び、適宜屈曲し、蓋112の天板114を貫通し、リチャージウェル102の内部に延びている。第2通水管132の上流側の端部132cには、ポンプ144が設けられている。貯水槽150では、溜まった地下水W1のうち少なくとも鉄、その他に僅かな砂やリチャージウェル102の通水部110の目詰まりの要因になり得る粒子成分や不純物が沈殿し、鉄や不純物が取り除かれた地下水W2が生成される。第2通水管132の端部132c及びポンプ144は、地下水W2を汲み上げ可能な位置に設けられ、貯水槽150内に開放されている。
【0039】
第1通水管131の端部131dと第2通水管の端部132cとは、連結していない。即ち、第1通水管131と第2通水管とは、非連結状態で配置され、互いに別系統である。貯水槽150は完全に密閉されておらず、内部の圧力が高まらずに貯水槽150の上端部等で開放されるため、貯水槽150内に供給された地下水W1は少なくとも空気に触れている。
【0040】
第2通水管132において地上に出ている部分(外部)に、ろ過装置195が設けられている。ろ過装置195は、貯水槽150において地下水W1から分離されずに地下水W2中に残存し且つリチャージウェル102の通水部110の目詰まりの要因になる物質(以下、要因物質と称する)を除去するための設備である。要因物質は、例えば地下水W2に残存する鉄及びマンガンをはじめとする酸化金属(特に、三価鉄等)や粒子成分、不純物等である。前述の酸化金属は、貯水槽150内で触れる空気や第2通水管132内に僅かに混入した空気によって地下水W2から析出する。
【0041】
ろ過装置195には、例えばバネ式ろ過器198が好適であるが、地下水W2から要因物質を除去可能な装置であれば、特に限定されない。バネ式ろ過器198としては、例えば、特開平8-196821号公報に開示されている液体ろ過フィルターエレメントや特許1822317号公報等に開示されているバネ式フィルターろ過装置等に例示される装置が挙げられる。バネ式ろ過器198は、例えば非常にさびにくいステンレス(SUS)からなるバネ線材を備える。バネ線材をコイル状に巻いたバネ式フィルターには、プリコート材が付着している。ポンプ191の作動によってリチャージウェル102から地下水W2が排水管190を介してバネ式ろ過器198に導かれ、バネ式フィルターを通ると、プリコート材に付着した地下水W2中の残留物(即ち、要因物質)は、プリコート材と共に分離される。残留物が分離された地下水W2は、下流側の排水管190から前述の排水設備又は排水路に排出される。このようなバネ式ろ過器は、特に優れた自浄効果、逆洗再生機能を有し、メンテナンスを略不要とする等、地下水リチャージ装置11に好適な特徴や条件を備える。
【0042】
第2通水管132において地上に出ていて且つろ過装置195の下流側の部分に、注水量を調整するためのバルブ143が設けられている。
【0043】
第2通水管132の下流側の端部132dは、リチャージウェル102の内部で開放され、深さ方向D1において帯水層201-1内に位置している。ポンプ144が作動することによって、貯水槽150内で生成された地下水W2が第2通水管132を介してリチャージウェル102内に導かれる。地下水W2は、ディープウェル101から地下水W1を揚水する系統とは別系統でリチャージウェル102内に供給される。
【0044】
圧力調整機構160は、リチャージウェル102内を満水にし、空気溜まりがない状態でリチャージウェル102内を地下水W2で加圧又は減圧し、リチャージウェル102内の圧力Pをアクティブに調整する。圧力調整機構160は、圧力検知装置164と、圧力付加装置170と、を備える。圧力検知装置164は、常時又は所定のタイミングで水圧計166又はゲージメータにより、リチャージウェル102内の圧力を検知する。なお、圧力検知装置164の種類及び構成は、常時又は所定のタイミングでリチャージウェル102内の圧力を検知可能であれば、特に限定されない。深さ方向D1において、水圧計166は、地盤200の自然水位WL1よりも前方(即ち、下方)に位置し、例えば蓋112の天板114から垂下するように支持されていてもよく、リチャージウェル102のケーシング108の内壁に支持されていてもよい。水圧計166で検知されたリチャージウェル102内の圧力は、不図示の電線又は無線で加圧ユニット174の制御部186に伝達される。
【0045】
圧力付加装置170は、圧力検知装置164で検知した検知圧力HP-2と所定圧力HP-1との差圧ΔPをリチャージウェル102内に加える。圧力付加装置170は、接続管172と、加圧ユニット174と、を備える。接続管172の一方の端部172cは、蓋112の天板114を貫通し、リチャージウェル102の内部に連通している。接続管172は、蓋112からリチャージウェル102外の地上に延び、加圧ユニット174に接続されている。接続管172には、バルブ176が設けられている。バルブ176は、少なくともリチャージウェル102内の圧力調整時に開き、非常時等に閉じている。
【0046】
加圧ユニット174は、気液変換装置182と、エアコンプレッサー184と、制御部186と、を備える。気液変換装置182は、内部に適量の地下水W2を溜めることが可能な密閉性の高い容器を備えていれば、特に限定されない。加圧ユニット174が気液変換装置182を備え、気液変換装置182の容器内で加圧/減圧されることによって、気液変換装置182からリチャージウェル102の間で空気を介さず、気液変換装置182から液体(即ち、地下水W2)に圧力が作用すると共に、リチャージウェル102内に空気溜まりがある場合の加圧時のように圧縮空気の地下水Wへの溶解を防ぐことができる。このことによって、気液変換装置182からの加圧/減圧が高精度に安定してリチャージウェル102内に作用する。気液変換装置182の容器の下部には、接続管172の他方の端部172dが連通している。気液変換装置182の容器の上部は、エアコンプレッサー184に連通している。エアコンプレッサー184は、制御部186に接続され、制御部186からの信号を受けて所要量の圧縮空気を作り、気液変換装置182に供給する。制御部186は、例えばコンピュータや計算機であり、
図1に例示するようにエアコンプレッサー184の付近に配置されていてもよく、エアコンプレッサー184を遠隔に操作可能な状態でエアコンプレッサー184から離れた場所に配置されていてもよい。
【0047】
排水管190は、リチャージウェル102の内部から上端まで延び、蓋112の天板114を貫通し、適宜屈曲し、地上に沿ってさらに延びている。深さ方向D1において、排水管190の上流側の端部190cは、リチャージウェル102の通水部110と重なる領域に配置されている。排水管190の端部190cには、ポンプ191が設けられている。排水管190において地上に出ている部分に、排水量を調整するためのバルブ192が設けられている。バルブ192は、リチャージウェル102の逆洗時のみ開き、ポンプ144からの注水時には閉じている。図示していないが、排水管190の下流側の端部は、排水設備又は排水路に接続されている。地下水W2は、下水等で規定されている基準(例えば、660ppm以下である等の基準)を満たしていることが確認されたうえで排水管190から排水される。
【0048】
圧力調整機構160の制御部186は、次に説明する地下水のリチャージ方法に応じて、エアコンプレッサー184に加えて、ポンプ144、191の作動、停止、及びバルブ143、176、192の開閉等についても制御可能であることが好ましい。
【0049】
地下水リチャージ装置11では、ディープウェル101内から揚水した後に貯水槽150で要因物質を取り除いた地下水W2を注水するときに予め、圧力調整機構160によってリチャージウェル102内の圧力Pを調整可能に構成されている。リチャージウェル102内の圧力Pが満水状態で調整されることによって、
図1に示すように圧力Pに対応する物理的な水位(注水井戸内の圧力に対応する水位)WL2が高精度且つ安定的に調整される。地盤200によって自然水位WL1は定まっているため、自然水位WL1と水位WL2との水位差ΔWLは、圧力調整機構160による水位WL2の調整によって、調整可能である。リチャージウェル102から地盤200への地下水W2の注水量Qは、水位差ΔWLに依存する。
【0050】
制御部186では、リチャージウェル102内を満水にする信号を発信し、不図示のセンサ等でリチャージウェル102内が満水になったことを確認する。その後、地下水リチャージ装置11で得たい注水量Qから所定の水位差ΔWX(所定値)が求められ、水位差ΔWXと自然水位WL1から設定水位WX2の範囲が算出される。制御部186では、算出した設定水位WX2に対応する、設定すべきリチャージウェル102内の所定圧力HP-1が算出される。なお、ディープウェル101の周囲の地盤200が掘削され、土留め等が設けられている場合、所定圧力HP-1は、リチャージウェル102内が加圧されているときに、ディープウェル101の周囲の掘削された領域で底面に露出している帯水層201又は粘土層202(即ち、地盤200)が盤ぶくれやボイリング等によって破壊されないように設定されている。
【0051】
例えば、貯水槽150内からの供給によって、地下水W2は、リチャージウェル102内に充満し且つ接続管172を介して加圧ユニット174の気液変換装置182の容器の内部に達している。制御部186では、前述のようにリチャージウェル102内の満水状態の確認後、水圧計166で検知されたリチャージウェル102内の検知圧力HP-2と所定圧力HP-1との差圧ΔPが求められ、差圧ΔPに応じた圧力調整信号が加圧ユニット174のエアコンプレッサー184に出力される。エアコンプレッサー184からは、圧力調整信号に応じた所定量の圧縮空気が気液変換装置182に供給される。圧縮空気量(即ち、差圧ΔP)に応じて、リチャージウェル102内は加圧又は減圧され、リチャージウェル102内の圧力Pが所定圧力HP-1に維持される。
【0052】
前述のようにリチャージウェル102内は満水状態で加圧されるため、水圧計166及びポンプ191の各々には、部分的に耐圧用のシール等が施されている。同様の理由で、第2通水管132及び排水管190の少なくともリチャージウェル102の内部に挿入されている部分には、例えばキャプタイヤケーブル等の耐圧ケーブルが用いられている。蓋112は、耐圧素材で形成され、リチャージウェル102内の圧力Pが所定圧力HP-1で維持されているときにリチャージウェル102を閉じた状態を保持する。また、ポンプ144は、リチャージウェル102内の所定圧力HP-1に対応する揚程(全揚程)以上の全揚程を有する。
【0053】
次いで、本実施形態の地下水のリチャージ方法(以下、単にリチャージ方法と記載する場合がある)について説明する。本実施形態のリチャージ方法は、本実施形態の地下水リチャージ装置11を用いる方法である。本実施形態のリチャージ方法は、揚水工程と、圧力調整工程と、注水工程と、ろ過工程と、を備える。
【0054】
揚水工程を行う際には、バルブ142、143、176を開け、バルブ192を閉じる。揚水工程では、ディープウェル101から地下水W1を揚水する。詳しく説明すると、ポンプ141を作動させ、地盤200の帯水層201-1からディープウェル101の通水部106を通して地下水W1をディープウェル101内に溜める。ディープウェル101内に溜まった地下水W1を第1通水管131から汲み上げ、貯水槽150に溜める。地下水W1をオープンな貯水槽150に所定時間以上貯留させ、屋外の空気に触れる状態で、地下水W1に含まれる少なくとも鉄をはじめとする要因物質を貯水槽150の底部に沈殿分離させる。
【0055】
圧力調整工程では、水圧計166でリチャージウェル102内の圧力Pを測定し、リチャージウェル102内の水位WL2がリチャージウェル102の管天(即ち、ケーシング108の上端108a)まで上昇したことを検知した段階で、リチャージウェル102内を地下水W2で加圧する。水圧計166では、検知圧力HP-2を加圧ユニット174の制御部186で受信する。制御部186によって検知圧力HP-2と所定圧力HP-1との差圧ΔPを求め、差圧ΔPに応じた圧力調整信号をエアコンプレッサー184に出力する。エアコンプレッサー184によって、圧力調整信号に応じた所定量の圧縮空気を気液変換装置182に供給する。気液変換装置182に加えられた差圧ΔPは、接続管172内の地下水W2を通してリチャージウェル102に伝わる。圧力調整工程によって、リチャージウェル102内の水位WL2を物理的に設定水位WX2にし、自然水位WL1との水位差ΔWLを所定の水位差ΔWXの範囲内にする。即ち、圧力調整工程によって、リチャージウェル102内の圧力Pをアクティブに調整し、リチャージウェル102内に水位差ΔWLに相当し且つ注水量Qを達成し得る水圧を生み出す。
【0056】
注水工程は、圧力調整工程と略同時或いは圧力調整工程後に行う。注水工程では、リチャージウェル102内の圧力Pをアクティブに調整している状態で、リチャージウェル102に地下水W2を注水する。具体的には、ポンプ144を作動させ、貯水槽150から第2通水管132を介して地下水W2をリチャージウェル102内に供給する。リチャージウェル102内は所定圧力HP-1で維持されているため、リチャージウェル102内に供給された地下水W2は、所定圧力HP-1を受けて通水部110から帯水層201-2に注水される。
【0057】
ろ過工程は、貯水槽150から供給される地下水W2中に僅かに含まれる要因物質等が通水部110に付着し、検知圧力HP-2が上限圧力HP-3に達した場合、或いは検知圧力HP-2を一定値として、第2通水管132に設けられた電磁流量計(図示略)により測定された注水量が設定した所定の下限値に達した場合に行う。上限圧力HP-3は、例えば掘削された底面の地盤200の盤ぶくれ等の地盤破壊が生じない圧力の範囲内で適宜設定される。
【0058】
ろ過工程では、ディープウェル101から揚水された地下水W1、W2をリチャージウェル102に注水する前にろ過装置195に通し、地下水W2に含まれる少なくとも鉄を除去することによってリチャージウェル102内を逆洗浄し、リチャージウェル102内の目詰まりを防止する。即ち、ろ過工程は、リチャージウェル102内の目詰まりの発生防止のために行われる。貯水槽150内の地下水W2を汲み上げてろ過装置195に通し、地下水W2に含まれる鉄(特に、三価鉄)をはじめとする要因物質を除去する。具体的には、ポンプ144を作動させ、貯水槽150内の地下水W1を汲み上げ、地下水W2として上流側の第2通水管132を介してバネ式ろ過器198に通す。バネ式ろ過器198を用いて地下水W2に含まれる要因物質をプリコート材と共に分離除去し、分離した物質と処理後の地下水W2とを各々、バネ式ろ過器198から排出し、リチャージウェル102に注水する。
【0059】
なお、ろ過工程中であっても基本的にディープウェル101からの揚水は停止しないので、地下水W1が貯水槽150から溢れないようにするため、前述のバイパス流路を用いて貯水槽150から下水放流を行う。
【0060】
ろ過工程後に、水圧計166で検知される検知圧力HP-2が所定圧力HP-1に戻った場合は、圧力調整工程を行えばよい。検知圧力HP-2が所定圧力HP-1よりも高い状態が続く場合は、ろ過工程を再度行うか、蓋112をリチャージウェル102から外して通水部110の洗浄等のメンテナンスを行う。
【0061】
以上説明したように、本実施形態の地下水のリチャージ方法は、ディープウェル101から地下水W1を揚水する揚水工程と、地下水W2を帯水層201-2内に注水するためのリチャージウェル102内を予め加圧又は減圧する圧力調整工程と、リチャージウェル102内に地下水W2を注水する注水工程と、を備える。圧力調整工程において、リチャージウェル102内を満水にして、地下水W2で加圧し、帯水層201(地盤200)の自然水位WL1とリチャージウェル102内の圧力Pに対応する水位WL2との水位差ΔWLを所定の水位差ΔWXに維持する。本実施形態の地下水のリチャージ方法によれば、圧力調整工程においてリチャージウェル102内を満水状態でアクティブに加圧又は減圧するため、水圧差ΔWLを所定の水圧差ΔXに予め調整し、安定させると共に維持できる。従来のようにリチャージウェル102内が満水ではなく、リチャージウェル102内の上部に空気が存在している場合、仮にリチャージウェル102内を加圧しても、加わった圧力がリチャージウェル102内の空気に伝わる場合があり、空気に伝わった圧力分に応じて、水圧差ΔWLが所定の水圧差ΔXから変動し、不安定になる虞がある。また、加圧時の圧縮空気が地下水W2に溶解する虞がある。また、大容量の空気をリチャージウェル102内で圧縮すると、例えばケーシング108等に亀裂や傷が生じる等によってリチャージウェル102内の空気が漏れた際に暴発する虞がある。
【0062】
本実施形態の地下水のリチャージ方法では、リチャージウェル102内の水位差ΔWLが水圧差ΔWXに安定的に維持されることによって、リチャージウェル102から帯水層201-2への注水量Qを安定して正確に確保できる。また、帯水層201-2によって自然水位WL1は略固定されるが、リチャージウェル102内を加圧又は減圧することによって、設定水位WX2、即ち上限水位をリチャージウェル102の上端や地面300よりも物理的に高く設定でき、所定の水位差ΔWXを従来のリチャージ方法よりも大きく且つ自在に設定できる。したがって、本実施形態の地下水のリチャージ方法によれば、地下水W2を任意の水位差ΔWXで地盤200中に安定的且つ安全に注水できる。
【0063】
本実施形態の地下水のリチャージ方法では、注水工程において、地下水W1をディープウェル101から揚水する系統とは別系統で、地下水W2をリチャージウェル102内に供給する。本実施形態の地下水のリチャージ方法によれば、圧力調整工程において圧力調整機構160からリチャージウェル102内を加圧した際に、第2通水管132を備える系統に伝わる圧力を、第1通水管131を備える系統との間で開放でき、第1通水管131を備える系統(即ち、ディープウェル101に近い方の系統)に加圧の影響が及ぶことを防ぐことができる。このことによって、ディープウェル101から地下水W1を逆流させずに円滑に揚水でき、ディープウェル101及びディープウェル101に近い方の系統の破損を防ぐことができる。
【0064】
本実施形態の地下水のリチャージ方法では、圧力調整工程において、リチャージウェル102内の圧力Pをリアルタイムで検知し、検知した圧力Pの情報に基づいて差圧ΔPを算出し、リチャージウェル102内を加圧又は減圧する。本実施形態の地下水のリチャージ方法によれば、水圧計166で検知したリチャージウェル102内の圧力Pを制御部186にフィードバックさせつつ、リチャージウェル102内の水位差ΔWLを制御できるため、水位差ΔWL及び帯水層201-2への注水量Qを高精度に維持及び調整できる。
【0065】
本実施形態の地下水のリチャージ方法は、ディープウェル101から揚水された地下水W2をリチャージウェル102に注水する前にろ過装置195に通し、地下水W2に含まれる少なくとも鉄を除去することによってリチャージウェル102内の目詰まりを防止するろ過工程をさらに備える。本実施形態の地下水のリチャージ方法によれば、除去工程において地下水W2から少なくとも鉄が除去されるため、ろ過工程においてリチャージウェル102の通水部110の目詰まりの発生を抑え、地下水のリチャージの処理効率を高めることができる。
【0066】
本実施形態の地下水リチャージ装置11は、ディープウェル101と、リチャージウェル102と、ディープウェル101内から揚水した地下水W1をリチャージウェル102に注水供給する通水管130と、リチャージウェル102内を加圧又は減圧する圧力調整機構160と、を備える。圧力調整機構160は、地下水(揚水井戸から揚水した地下水)W2をリチャージウェル102に供給するときに、リチャージウェル102内を満水にして、リチャージウェル102内の圧力Pを、帯水層201-2の自然水位WL1と圧力Pに対応する水位WL2との水位差ΔWLが所定の水位差ΔWXとなる所定圧力HP-1に維持するように調整可能に構成されている。本実施形態の地下水リチャージ装置11によれば、圧力調整機構160によってリチャージウェル102内を満水状態でアクティブに加圧又は減圧できる。また、地下水W2が帯水層201-2中に注水される際に、リチャージウェル102内の水圧差ΔWLが所定の水圧差ΔWXになるように圧力Pを予め調整し、注水中に水圧差ΔWLを安定させて維持できる。
【0067】
さらに、満水状態のリチャージウェル102内を加圧することによって、圧力Pに対応する水位WL2をリチャージウェル102の上端や地面300よりも物理的に高く設定でき、所定の水位差ΔWXを従来の地下水リチャージ装置よりも大きく且つ自在に設定できる。
図2は、地下水リチャージ装置11において、圧力調整機構160を取り外し、従来の装置と同様にリチャージウェル102内の圧力Pをアクティブに調整する機構を持たない構成とした装置500を示す図である。なお、装置500は、ろ過装置195を備えなくてもよい。
図2に示すように、装置500は、第1電極501、第2電極502と、を備える。第1電極501は、リチャージウェル102内に設けられ、深さ方向D1において自然水位WL1よりも前側(即ち、下側)、且つ帯水層201-1の前部(即ち、下部)及びケーシング108の前部に配置されている。第2電極502は、リチャージウェル102内に設けられ、深さ方向D1において第1電極501よりも後部(上部)、且つ帯水層201-1と粘土層202-1との境界近傍及びケーシング108の後部(即ち、上部)に配置されている。装置500では、リチャージウェル102内の地下水W2が第2電極502に触れると、ポンプ191を作動させ、地下水W2が第1電極501のみに触れるようになるまで地下水W2を汲み上げ、排水管190を介してリチャージウェル102外に排出する。装置500では、リチャージウェル102の上端を地面300よりも上方に延長させない限り、第2電極502が深さ方向D1において地面300に近い位置に設けられる。そのため、本実施形態の地下水リチャージ装置11と同じ自然水位WL1であっても、装置500における自然水位WL1と上限水位WL4との水位差ΔWYは、地下水リチャージ装置11における水位差ΔWXよりも小さい。
【0068】
図2に示す装置500は、第1電極501及び第2電極502に替えて、リチャージウェル102のケーシング108の上端108aから排水管190の地上に出ている部分に接続されたオーバーフロー管510を備えてもよい。リチャージウェル102内の地下水W2を余水としてオーバーフロー管510を介して定期的に手動で地上の排水管190にオーバーフローさせる場合、装置500の上限水位WL5は、深さ方向D1においてオーバーフロー管510と地上の排水管190との接続位置になる。このような場合でも、装置500における自然水位WL1と上限水位WL5との水位差ΔWZは、地下水リチャージ装置11における水位差ΔWXよりも小さい。
【0069】
したがって、本実施形態の地下水リチャージ装置11によれば、地下水W2を任意の水位差ΔWXで地盤200に注水し、装置500或いは他の従来のリチャージ装置に比べて地盤200への注水量Qを増やすことができると共に柔軟に調整できる。
【0070】
本実施形態の地下水リチャージ装置11では、圧力調整機構160が気液変換装置182を備える。気液変換装置182は、リチャージウェル102から溢れた地下水W2の少なくとも一部を導入した状態で、リチャージウェル102内の満水状態を維持し、第2通水管132とは別系統でリチャージウェル102に接続されている。気液変換装置182は、リチャージウェル102内の圧力が所定圧力を維持するように、導入した地下水W2を介してリチャージウェル102内を加圧又は減圧する。本実施形態の地下水リチャージ装置11によれば、リチャージウェル102内に空気溜まりがなく、空気を挟まずに地下水W2に加圧又は減圧を作用させることができる。このことによって、リチャージウェル102内の水圧差ΔWLが所定の水圧差ΔWXになるように圧力Pを高精度に調整し、注水中でも水圧差ΔWLを安定させて維持できる。
【0071】
本実施形態の地下水リチャージ装置11では、通水管130は、第1通水管131と、第1通水管131とは別系統の第2通水管132と、を備える。第1通水管131の上流側の端部131cはディープウェル101の内部において地下水W1を揚水可能に配置され、第1通水管131の下流側の端部131dは貯水槽150内に開放されている。第2通水管132の上流側の端部132cは貯水槽150内に開放され且つ第1通水管131の端部131c、131dの各々とは非連結状態で配置され、第2通水管132の下流側の端部132dはリチャージウェル102内に配置されている。本実施形態の地下水リチャージ装置11によれば、第1通水管131と第2通水管132とが互いに別系統であるため、圧力調整機構160でリチャージウェル102内が加圧された際に、互いに非連結状態の第1通水管131と第2通水管132との間で圧力が開放され、第1通水管131を備える上流側の系統(即ち、ディープウェル101側の系統)に対して第2通水管132を備える系統側(即ち、リチャージウェル102側のの系統)の加圧の影響が及ぶことを防ぐことができる。このことによって、ディープウェル101から地下水W1を円滑に揚水できる。また、メンテナンス等の回数、頻度を減らして地下水リチャージ装置11を長期使用できる。
【0072】
本実施形態の地下水リチャージ装置11では、圧力調整機構160は、リチャージウェル102内の圧力Pを検知する圧力検知装置164と、圧力検知装置164で検知した検知圧力HP-2と所定圧力HP-1との差圧ΔPをリチャージウェル102内に加える圧力付加装置170と、を備える。本実施形態の地下水リチャージ装置11によれば、検知圧力HP-2に基づいて圧力P及び水位差ΔWLを制御できるため、水位差ΔWLを高精度に維持でき、リチャージウェル102内の圧力変化に対しても柔軟に対応できる。例えば、差圧ΔPを、設定水位WX2が地面300から10m上方の位置になる0.1MPaとし、自然水位WL1が地面300から10m下方の位置にあれば、地下水リチャージ装置11によれば、設定水位が地面300と略同じ高さになる従来の装置に比べて約2倍の注水能力(即ち、注水量Q)を得ることができる。
【0073】
本実施形態の地下水リチャージ装置11は、第2通水管132に設けられ、ディープウェル101から揚水した地下水W2に含まれる少なくとも鉄を除去可能なろ過装置195を備える。本実施形態の地下水リチャージ装置11によれば、ディープウェル101で揚水された地下水W1に例えば第1通水管131と第2通水管132との間の貯水槽150で空気に触れた際に鉄をはじめとする粒子成分や不純物が析出しても、第2通水管132に汲み上げた地下水W2から鉄や粒子成分、不純物等をろ過装置195で除去できる。このことによって、リチャージウェル102の目詰まりの発生を抑え、地下水W2のリチャージの処理効率を高くすることができる。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、圧力調整機構160の構成は、気液変換装置182及びエアコンプレッサー184との組み合わせに限定されない。圧力調整機構160は、エアコンプレッサー184のみを備えてもよく、例えば水圧レギュレーターを備えてもよい。
【0076】
また、上述の各実施形態のろ過装置195は、要因物質を沈殿分離させることができる貯水装置であってもよい。また、本実施形態の地下水リチャージ装置11に目詰まりLessを採用し、第1通水管131と第2通水管132とを互いに別系統に配置してもよい。このような構成では、リチャージウェル102内を加圧した際に地下水W2に加えられた圧力が第1通水管131と第2通水管132との間で良好に開放される。また、排水管190及びろ過装置195を設置しなくても済む。
【0077】
また、上述の地下水リチャージ装置11の変形例として、例えばディープウェル101内に配置されているポンプ141がリチャージウェル102で設定されている上限圧力HP-3に耐える程度の揚程を有する場合は、各ウェル及び通水管、排水管が密閉されていてもよい。その場合、ディープウェル101のケーシング104の上端104aには蓋が設けられ、第1通水管131がその蓋を貫通する。また、第1通水管131、第2通水管132、接続管172及び排水管190は、耐圧性を有すると共に、高い密閉性を有する管材で形成されている。詳細には、第1通水管131の端部131dは、基本的に閉じており、ディープウェル101から揚水した地下水W1を排出するときのみ開けられるか、密閉状態の別の装置に連結されている。同様に、第2通水管132の端部132cは基本的に閉じており、第1通水管131からの地下水W1を導入するときのみ開けられるか、密閉状態の別の装置に連結されている。第1通水管131の端部131dから排出された地下水W1は密閉状態で地下水W2として第2通水管132の端部(他方の端部)132dに供給可能に構成されている。例えば、前述の変形例の地下水リチャージ装置は、クローズシステムやRW-MMTの装置の配置等をふまえ、構成されてもよい。
【0078】
上述のような変形例の地下水のリチャージ方法では、実施形態の地下水のリチャージ方法と同様に、圧力調整工程において、水圧計166で検知したリチャージウェル102内の圧力Pを制御部186にフィードバックさせつつ、リチャージウェル102内の水位差ΔWLを制御できる。そのため、上述の変形例の地下水のリチャージ方法によれば、水位差ΔWL及び帯水層201-2への注水量Qを高精度に維持及び調整できる。また、地下水W2からの鉄、粒子成分や不純物の析出をできる限り抑え、ろ過工程の実行回数を抑えることができる。
【符号の説明】
【0079】
11 地下水リチャージ装置
101 ディープウェル(揚水井戸)
102 リチャージウェル(注水井戸)
131 第1通水管(第1管)
132 第2通水管(第2管)
182 気液変換装置
195 ろ過装置
W1、W2 地下水