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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】制御盤
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20240415BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240415BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240415BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240415BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H02J9/06 110
H02J1/00 304E
H02J1/00 304H
H02J7/00 303C
H02J7/00 Y
H02J7/00 302C
H01M10/44 P
H01M10/48 P
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020166862
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059248
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉住 政己
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秋夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英二
(72)【発明者】
【氏名】田村 清信
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-045166(JP,A)
【文献】特開昭61-001231(JP,A)
【文献】特開2014-055902(JP,A)
【文献】特開昭63-209437(JP,A)
【文献】特開2001-245442(JP,A)
【文献】特開平05-300672(JP,A)
【文献】特開2011-114976(JP,A)
【文献】特開2014-180214(JP,A)
【文献】特開平05-288816(JP,A)
【文献】登録実用新案第3035916(JP,U)
【文献】特開2006-187069(JP,A)
【文献】特開2013-090525(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130649(WO,A1)
【文献】特開2010-051071(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0072087(US,A1)
【文献】国際公開第2014/091955(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00 - 1/16
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02J 9/00 - 11/00
H01M 10/42 - 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントのプロセス量を測定する測定器から出力される測定信号を受信して表示する計器と、
前記測定器及び前記計器の少なくとも一方に電力を供給する第1配線と、
外部直流電源から前記電力の供給を受ける第2配線と、
内部蓄電池から前記電力の供給を受ける第3配線と、
前記第2配線に前記電力が供給されている場合は前記第2配線から前記第1配線に給電し、前記第2配線への前記電力の供給が停止した場合は前記第3配線に切り替えて前記第1配線に給電する第1切替器と、
前記計器、前記第1切替器及び前記内部蓄電池が組み込まれ、作業員の作業スペースが内部空間に確保されている筐体と、を備える制御盤。
【請求項2】
請求項1に記載の制御盤において、
前記筐体に組み込まれるとともに前記プラントに配置された駆動機器に操作信号を送信する操作器を備え、
前記第1配線は、前記駆動機器及び操作器の少なくとも一方に電力を供給する制御盤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の制御盤において、
前記外部直流電源は、
交流電力を整流する整流器と、外部蓄電池と、
前記交流電力が供給されている場合は前記整流器から前記第2配線に給電し、前記交流電力の供給が停止した場合は前記外部蓄電池に切り替えて前記第2配線に給電する第2切替器と、を備える制御盤。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の制御盤において、
前記測定器及び前記計器の少なくとも一方に供給される前記電力をON/OFFするスイッチを備える制御盤。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制御盤において、
前記内部蓄電池の電圧がその放電終止電圧に基づき設定された基準値に到達した場合に、警告を通知させる警告器を備える制御盤。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の制御盤において、
前記内部蓄電池をバックアップする予備電池が第3切替器を介して接続され、前記予備電池及び前記第3切替器は前記筐体に組み込まれている制御盤。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の制御盤において、
冗長化されて複数配置されている前記測定器については、ローテーションで選択されたもののみに前記電力の供給が行われる制御盤。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の制御盤において、
前記計器に表示される前記測定信号の数値データ又は画像データを保存する制御盤。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の制御盤において、
前記内部蓄電池は、前記筐体に対し着脱自在で交換可能である制御盤。
【請求項10】
請求項9に記載の制御盤において、
前記内部蓄電池は、前記第3配線との接続から離脱した場合に点灯する照明が設けられている制御盤。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の制御盤において、
前記内部蓄電池の充電状態を表示する表示器を備える制御盤。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の制御盤において、
前記内部蓄電池は、直列に接続される電池モジュールの数を変更することで、出力電圧を可変する制御盤。
【請求項13】
請求項12に記載の制御盤において、
前記電池モジュールの各々の性能診断を行い異常診断がなされた場合は警告を発する診断機を備える制御盤。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の制御盤において、
前記内部蓄電池は、自走ロボットにより充電される制御盤。
【請求項15】
請求項1、請求項2及び請求項4から請求項14のいずれか1項に記載の制御盤において、
前記第2配線は、前記外部直流電源に替わる外部交流電源から前記電力の供給を受けるものであって、
前記第3配線は、前記内部蓄電池の直流出力をインバータで交流出力に変換した前記電力の供給を受ける制御盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラントのプロセス量の監視又は操作を行う制御盤に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、原子炉、タービン、発電機の運転プロセスの他に、発生した事故を収束するための安全機能プロセスが管理される。そして、各々のプロセスにおいて、現場に設置された測定器等で測定されたプロセス量の信号は、制御盤に伝送され計器に表示されて監視される。もしくは、制御盤に設けられたスイッチ等を操作することにより、現場に設置した駆動機器を動作させプロセス量を制御する。
【0003】
現場に設置された測定器及び制御盤に設置された計器に必要な直流電力は、交流電力を整流して供給される。そして、この交流電源が喪失したときは、非常用の蓄電池から供給される。この非常用の蓄電池からの給電時間は、2011年3月11日の東日本大震災における原発事故を教訓に、8時間から24時間に設計仕様が変更されている。
【0004】
ところで、原子力発電所のプロセス量を監視する制御盤は、交流電源が停電した場合であっても、期間に制限を設けずにプロセス量の監視を継続する必要がある。このため、交流電源喪失してから24時間を超える給電は、非常用の発電機で発電した電力を、充電器を通して制御盤に給電するとともに、蓄電池に充電することで実現する。また、何らかの事情で非常用の発電機が動作しない場合、車載バッテリ等の直流電源を、バックアップ電源として制御盤に適用できる設計がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6692478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この非常用の蓄電池は、鉛蓄電池を使用するのが一般的である。このために、DC125Vで24時間運転を確保するための蓄電池は、数千Ah程度の容量が必要となり、相当な設置スペースが必要となる。また蓄電池は、触媒に硫酸が用いられ放電時に水素が生成するため、制御盤とは部屋を分けて設置される必要がある。
【0007】
このため、原子力発電所における非常用の蓄電池は、相当なスペースを占めて屋内もしくは建屋内に設置されることになる。にもかかわらず、非常用の発電機が動作しない場合は、24時間後には無用の長物と化してしまう。放電終止電圧近くになった非常用の鉛蓄電池を別の充電済み鉛蓄電池に交換することも考えられるが、その大きさや重量を考えれば、交換する作業時間は長くかかり、コストも非常に高くついてしまう。さらに、鉛蓄電池の交換は、配線の切り離し作業が入るため、事故時の照明が消えている過酷な環境の下で、作業を間違いなく遂行することは難度が極めて高い。
【0008】
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、停電時においても必要な直流電力の供給を継続的に受けることができる制御盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態に係る制御盤において、プラントのプロセス量を測定する測定器から出力される測定信号を受信して表示する計器と、前記測定器及び計器の少なくとも一方に電力を供給する第1配線と、外部直流電源から前記電力の供給を受ける第2配線と、内部蓄電池から前記電力の供給を受ける第3配線と、前記第2配線に前記電力が供給されている場合は前記第2配線から前記第1配線に給電し、前記第2配線への前記電力の供給が停止した場合は前記第3配線に切り替えて前記第1配線に給電する第1切替器と、前記計器、前記第1切替器及び前記内部蓄電池が組み込まれ作業員の作業スペースが内部空間に確保されている筐体と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施形態において、停電時においても必要な直流電力の供給を継続的に受けることができる制御盤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る制御盤の電気的接続を示す回路図。
図2】(A)(B)(C)第1切替器及び第2切替器の切替動作の説明図。
図3】追加機能を実装した制御盤の電気的接続を示す回路図。
図4】(A)実施形態に係る制御盤の機械構成を示す側面断面図、(B)平面断面図。
図5】(A)実施形態に係る制御盤に設置される内部蓄電池の斜視図、(B)内部蓄電池に一体化して設けられた第1切替器の実装基板の回路図。
図6】(A)(B)(C)内部蓄電池を構成する複数の電池モジュールの接続例を示す図。
図7】(A)(B)内部蓄電池を構成する複数の電池モジュールの診断方法の説明図。
図8】(A)(B)(C)内部蓄電池を構成する複数の電池モジュールの交換方法の説明図。
図9】内部蓄電池を充電する自走ロボットの動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態に係る制御盤10a(10)の電気的接続を示す回路図である。なお、図1は、制御盤10aの内部機能及びその周辺機器の機能を概念として直観的に理解することを主眼にしており、必ずしも具体的な機械的構成を表しているわけではない。
【0013】
このように制御盤10は、プラントのプロセス量を測定する測定器15(15a,15b…)から出力される測定信号14(14a,14b…)を受信して表示する計器16(16a,16b…)と、測定器15及び計器16の少なくとも一方に電力を供給する第1配線11と、外部直流電源30から電力の供給を受ける第2配線12と、内部蓄電池60から電力の供給を受ける第3配線13と、第2配線12に電力が供給されている場合は第2配線12から第1配線11に給電し第2配線12への電力の供給が停止した場合は第3配線13に切り替えて第1配線11に給電する第1切替器21と、を備えている。
【0014】
原子力発電プラントは、原子炉、タービン、発電機等といった構成設備が互いに連携して運転される。これら構成設備の各々は、種々のプロセス量を測定するための多数の測定器15(15a,15b…)が配置され、測定信号14(14a,14b…)を出力している。そして制御盤10において、これらプロセス量の測定信号14を受信し計器16(16a,16b…)に表示して、プラントの運転状態がオペレータに監視される。
【0015】
測定器15としては、流量計、圧力計、液面計、温度計や、その他、密度、比重、粘度、湿度等を計る分析計等が挙げられる。これら測定器15は、制御盤10の第1配線11から電力供給を受ける場合もあるが、その他から電力供給を受ける場合もある。計器16(16a,16b…)は、図4(B)に示すように、制御盤10の筐体65に組み込まれて、オペレータが制御盤10の外側から測定信号14(14a,14b)の表示値を監視できるようになっている。これら計器16は、制御盤10の第1配線11から電力供給を受ける場合もあるが、測定器15から電力供給を受ける場合もある。
【0016】
さらに制御盤10(図1)は、プラントに配置された駆動機器17に操作信号19を送信する操作器18を備えており、第1配線11は、駆動機器17及び操作器18の少なくとも一方に電力を供給する。これら駆動機器17としては、弁、ポンプ、油圧機器等が挙げられる。原子力発電プラントに事故等が発生した場合、オペレータは、計器16で測定信号14の表示値を監視しつつ、事故を収束させるため操作器18を適切に操作する。
【0017】
これら駆動機器17は、制御盤10の第1配線11から電力供給を受ける場合もあるが、その他から電力供給を受ける場合もある。またこれら操作器18は、制御盤10の第1配線11から電力供給を受ける場合もあるが、駆動機器17から電力供給を受ける場合もある。
【0018】
外部直流電源30は、制御盤10の電源基板27に接続され、直流電力を供給している。そして外部直流電源30は、交流電力36を整流する整流器31と、外部蓄電池32と、第2切替器22と、を備えている。この第2切替器22は、交流電力36が供給されている場合は整流器31から第2配線12に給電し、交流電力36の供給が停止した場合は外部蓄電池32に切り替えて第2配線12に給電するものである。
【0019】
このように外部直流電源30が構成されることで、平時において、制御盤10は商用の交流電力36による電力供給を受ける。外部蓄電池32は、鉛電池で構成され、制御盤10とは別の部屋に設置され、平時に交流電力36により充電される。そして、この交流電力36が停電した場合は、外部蓄電池32が、制御盤10への電力供給を担うことになる。この外部蓄電池32は、24時間、電力供給できるように設計されている。そして、この外部蓄電池32が放電終止電圧近くになった時には、内部蓄電池60が電力供給を担うことになる。
【0020】
図2(A)(B)(C)は、第1切替器21及び第2切替器22の切替動作の説明図である。図2(A)に示すように、平時においては商用の交流電力36を整流器31により直流電力に変換する。このとき、第2切替器22は、励起スイッチ35がON状態となるため、整流器31から電源基板27に給電される。このように第2配線12に電力が供給された場合、第1切替器21は、励起スイッチ25がON状態となり、第2配線12から第1配線11に給電される。
【0021】
次に、図2(B)に示すように、商用の交流電力36が停電した場合、第2切替器22は、励起スイッチ35がOFF状態となるため、外部蓄電池32から電源基板27に給電される。このように電源が交流電力36から外部蓄電池32に切り替わっても、第2配線12への電力供給は途絶えないので、第1切替器21に変化は無く、第2配線12から第1配線11に給電され続ける。
【0022】
次に、図2(C)に示すように、外部蓄電池32が放電終止電圧近くになった時は、外部蓄電池32から電源基板27への給電は停止する。このように第2配線12への電力の供給が停止した場合、第1切替器21は、励起スイッチ25がOFF状態となり、第3配線12を介して内部蓄電池60から第1配線11に給電される。なお、第1切替器21及び第2切替器22は、共に5極リレーを用いた場合を例に取り動作説明を行ったが、その具体的構成は限定されることはなく、さまざまな形態をとることができる。
【0023】
図3は、追加機能を実装した制御盤10b(10)の電気的接続を示す回路図である。なお、図3において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0024】
制御盤10bは、測定器15及び計器16の少なくとも一方に供給される電力をON/OFFするスイッチ55(55a,55b)を備えている。このように構成することで、交流電力36が停電した後に、監視の必要性の低い計器16及び測定器15への電力供給をOFFにすることができる。さらに、計器16を監視するタイミング時のみに電力供給をONにして、監視しないときは電力供給をOFFにすることができる。これにより、外部蓄電池32及び内部蓄電池60の電力消費を抑制し、給電可能時間を延長することができる。
【0025】
さらに制御盤10bは、内部蓄電池60をバックアップする予備電池29が、第3切替器23を介して接続されている。内部蓄電池60が放電終止電圧近くになった時には、第3切替器23の設定を替えることで、第3配線13への給電を内部蓄電池60から予備電池29に切り替える。そして、これまで接続されていた内部蓄電池60を外して充電すれば、予備電池29が放電終止電圧近くになった時には、再び内部蓄電池60を接続しなおして第3切替器23の設定を替える。このように、内部蓄電池60と予備電池29とを交互に切り替えて、充電と給電を交互に繰り返すことで、測定器15及び計器16等に対し半永久的に電力を供給することができる。
【0026】
さらに制御盤10bは、内部蓄電池60の電圧がその放電終止電圧に基づき設定された基準値に到達した場合に、警告を通知させる警告器56を備えている。これにより、内部蓄電池60から予備電池29に切り替えるタイミングを認識できる。
【0027】
さらに制御盤10bにおいて、第1切替器21の出力端には、コンデンサ57が並列接続されている。これにより、第1切替器21、第2切替器22及び第3切替器23の切替時の電圧変動により、コンデンサ57の並列回路において、電流応答の遅延作用が働く。これにより、計器16等に供給される電力の瞬停を回避することができる。
【0028】
図4(A)は実施形態に係る制御盤10の機械構成を示す側面断面図であり、図4(B)は平面断面図である。このように制御盤10は、筐体65の内部空間に作業員66の作業スペース69を確保しつつ、筐体65の内側面に用品取付板68が設けられている。この用品取付板68には、測定器15が測定したプロセス量の測定信号14を制御盤10に設置された計器16に伝えるケーブルや、制御盤10から測定器15に電力供給する第1配線11等を取合う端子台67が配置されている。
【0029】
さらに端子台67には、測定器15の測定信号14を伝送する配線や駆動機器17に操作信号19を伝送する配線が接続されている。そして、筐体65内に設置された回路基板28と盤面に設置された計器16(16a,16b…)とは、盤内配線で接続されている。そして図4(B)に示すように、制御盤10の外側から、計器16における測定信号14(14a,14b…)の表示値をオペレータが監視できるようになっている。端子台67を斜めに配置し、複数台設置する場合は図4(B)の様に段違いにすることで、交流電力36が停電した時の作業を容易にする。
【0030】
内部蓄電池60は、それぞれの制御盤10に内部収納するためにエネルギ密度の高い電池(例えば、リチウムイオン電池)を採用することが望ましい。内部蓄電池60は、複数の単電池(図示略)を直列接続した電池モジュール61の複数(図4(A)の例では3つ)を並列接続し、フレーム62に収容して構成したものである。このフレーム62は、作業員66が内部蓄電池60の上面に乗っても変形しない程度に充分な剛性を持って形成されている。また、フレーム62の下側には、キャスタ63等が設けられ、制御盤10の筐体65の内部から内部蓄電池60を搬入及び搬出しての交換作業が容易となっている。
【0031】
原子力発電プラントに設置されている測定器15(図1)の多くは多重化されている。このため、原子炉事故等の非常時は、多重化されているもののうち一つの測定器15に着目し、対応する制御盤10のみに電力を供給すれば監視の目的は達成される。さらには、冗長化されて別々の制御盤10の各々に配置されている複数の測定器15については、ローテーションで選択された制御盤10のみ順繰りに電力の供給が行われる。これにより、それぞれの制御盤10に配置された内部蓄電池60の電力消費を抑制し放電時間を延長することができる。そのような複数の制御盤10における電力供給のローテーションは、これら制御盤10をネットワークで連結し、いずれか一つのみが所定の周期で順番に給電状態になるようにプログラムすればよい。
【0032】
制御盤10において、計器16(16a,16b)に表示される測定信号14(14a,14b…)をデータ保存することができる。図示を省略するが、測定器15から受信した測定信号14は、計器16が接続される回路基板28の搭載メモリに一定時間毎に取り込まれる。これにより、測定信号14を時系列に追跡していくことができる。
【0033】
図4(B)に示すように、制御盤10の外側の計器16(16a,16b)の正面にはカメラ51が設置されている。これにより制御盤10において、計器16(16a,16b)が表示した測定信号14(14a,14b…)の画像をデータ保存することができる。なお測定信号14(14a,14b…)の数値データやその画像データを間欠的にメモリに保存することで、電力供給も間欠的にすることができ、内部蓄電池60の電力消費を抑制し放電時間を延長することができる。
【0034】
図5(A)は制御盤10に設置される内部蓄電池60の斜視図である。このように、内部蓄電池60は、制御盤10の筐体65に対し、着脱自在で交換可能である。これにより、内部蓄電池60を交換する場合、作業員66が手袋、防護服等といった作業性の悪い着装をしていても交換作業を容易に実施できる。
【0035】
図5(B)は内部蓄電池60に一体化して設けられた第1切替器21x(21)の実装基板50の回路図である。このように第1切替器21xは、第2配線12の末端に接続されるダイオード52と第3配線13の末端に接続されるダイオード53とを突き合わせて第1配線11に合流させる構成をとる。これにより第1切替器21は、外部直流電源30(第2配線12)が使用されており外部蓄電池32の放電電圧が十分に大きい場合は第2配線12から第1配線11に給電する。そして、外部直流電源30の外部蓄電池32が放電終止電圧近くになり、内部蓄電池60(第3配線13)の放電電圧のほうが大きくなった場合は、第2配線12からの電力供給は停止し、第3配線13に切り替わって第1配線11に給電する。
【0036】
第3配線13には、内部蓄電池60の電圧を反映する電圧計Vが接続されている。比較器58は、内部蓄電池60の放電終止電圧に基づき規定した基準値54と電圧計Vの計測値とを比較して大小関係を判定する、警報発信部59は、電圧計Vの計測値が基準値54よりも下がったという判定が比較器58からなされた場合に、警告器56(図3)を動作させるものである。また、電圧計Vの計測値や放電量に基づいて内部蓄電池60の充電状態を示す値を導いて表示器(図示略)に表示させることもできる。
【0037】
さらに内部蓄電池60は、第3配線13との接続から離脱した場合に点灯する照明(図示略)を設けることもできる。原子炉事故の発生を想定した場合、部屋の照明は消灯状態にあると考えられる。このため内部蓄電池60の交換作業をする時は、必要な照度を自ら確保できるようにする必要がある。なお、制御盤10の筐体65の扉(図示略)を開いた時に点灯すようにしてもよい。
【0038】
これまでの説明において内部蓄電池60は、制御盤10一つ一つに対し、筐体65の内部に収容され、作業員66(図4(A)参照)の足場を形成していた。しかし、内部蓄電池60は、このような形態に限定されることはなく、複数の制御盤10で一つの内部蓄電池60を共有したり、筐体65の外部に配置されたりする場合もある。
【0039】
図6(A)(B)(C)は電池モジュール61を複数個接続した内部蓄電池60もしくは筐体65の外部に配置した内部蓄電池60の接続例を示す図である。図6(A)に示すように一つの電池モジュール61の両端には、相互に接続するスイッチ37,38が設けられている。さらに図6(B)(C)に示すように、いずれかの電池モジュール61には、その両端を電気的にバイパスするバイパス片39が設けられている。
【0040】
図6(A)に示すように、スイッチ37,38の各々は、第1端子41及び第2端子42を有し、切り替え動作により、電池モジュール61の正極又は負極への接続をON/OFFする。また、隣接する電池モジュール61のスイッチ37,38の各々は、他極同士で相互に着脱可能に接続し合う。そして、直列に接続される電池モジュール61の数を変更することで、内部蓄電池60の出力電圧を可変できる。
【0041】
バイパス片39は、両極のスイッチ37,38の第1端子41を短絡している。この場合、図6(B)に示すように、バイパス片39を持つ電池モジュール61のスイッチ37,38を第2端子42に設定し、その両側の電池モジュール61のスイッチ37,38を第1端子41に設定することで、バイパス片39を持つ電池モジュール61がショートカットされその両側の電池モジュール61が直列接続される。
【0042】
また図6(C)に示すように、図6(B)に示す状態から、バイパス片39を持つ電池モジュール61の両側の電池モジュール61のスイッチ37,38を第2端子42に切り替え設定することで、バイパス片39を持つ電池モジュール61も含めて直列接続される。このように、バイパス片39を持つ電池モジュール61の両側の電池モジュール61のスイッチ37,38を第1端子41に設定すればこのバイパス片39を持つ電池モジュール61をショートカットし、第2端子42に設定すれば、このバイパス片39を持つ電池モジュール61を含めて直列接続される。これにより、内部蓄電池60の出力電圧を調整して、計器16等が接続される第1配線11への供給電圧を変化させることができる。
【0043】
図7(A)(B)は、内部蓄電池60を構成する複数の電池モジュール61の診断方法の説明図である。このように、電池モジュール61の各々の性能診断を行い異常診断がなされた場合は警告信号を発する診断機45が設けられている。
【0044】
図7(A)に示すように、直列接続される三つのうちいずれか一つの電池モジュール61を診断する場合について説明する。まず開状態の端子(図示は第1端子41)に予備の電池モジュール(予備電池64)を接続する。そして図7(B)に示すように、予備電池64の両側の電池モジュール61のスイッチ37,38の設定を切り替える(図示は第1端子41から第2端子42へ)。
【0045】
これにより、内部蓄電池60の出力電圧は維持しつつ、診断対象の電池モジュール61のみを分離することができる。そして、分離した電池モジュール61に対し診断機45を接続する。この作業を、内部蓄電池60を構成する全ての電池モジュール61に対し実施する。これにより内部蓄電池60からの電力供給を停止させることなく、それぞれの電池モジュール61の異常検出や寿命予測等といった診断を実施できる。診断した結果は警報機や表示機により通知される。
【0046】
図8(A)(B)(C)は、内部蓄電池60を構成する複数の電池モジュール61の交換方法の説明図である。図8(A)(B)で示される、交換対象の電池モジュール61を内部蓄電池60から分離するまでの作業は、図7(A)(B)において既述した内容と同じなので記載を省略する。そして図8(C)に示すように、新電池モジュール61に交換したのち、スイッチ37,38の設定を元に戻すように切り替えることで、内部蓄電池60からの電力供給を停止させることなく電池モジュール61の交換を実施することができる。
【0047】
図9は制御盤10の内部蓄電池60を充電する自走ロボット40の動作説明図である。このように制御盤10において、内部蓄電池60は、自走ロボット40により充電される。充電器46及び制御盤10の側面に形成されるコネクタ43は、自走ロボット40のコネクタ44と係合して電気エネルギの供給を受けるものである。
【0048】
この自走ロボット40は、再生可能エネルギ(例えば、太陽光、風力、水素など)から変換された電気エネルギを蓄積する充電器46により充電される。そして、バッテリ残量が僅かになった内部蓄電池60の元へ、規定された移動ルート47に沿って移動し、これを充電する。これにより、内部蓄電池60は、測定器15及び計器16等に対し半永久的に電力を供給することができる。
【0049】
制御盤10が現場に設置されたものである場合、原子炉事故時には放射能などの影響で人間が近づけないことも想定される。このような場合、蓄電池を搭載した自走式のロボット40を用いて内部蓄電池60を充電したり、計器16等に直接給電したりすることができる。
【0050】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の制御盤10によれば、外部直流電源30から電力が供給されている場合はこれを計器16等に給電し、外部直流電源30の電力供給が停止した場合は内部蓄電池60に切り替えて計器16等への給電を行う。これにより制御盤10は、停電時においても必要な直流電力の供給を継続的に受けることが可能となる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0052】
また、実施形態において制御盤は、直流電力を入出力するものとして説明したが、交流電力を入出力するものである場合もある。この場合、図示される制御盤10において、第2配線12が接続する電源基板27は、外部直流電源30に替えて外部交流電源(図示略)から交流電力36の供給を受ける。そして、第3配線13は、内部蓄電池60の直流出力をインバータ(図示略)で交流出力に変換した交流電力を、計器16等に供給することになる。
【符号の説明】
【0053】
10(10a,10b)…制御盤、11…第1配線、12…第2配線、13…第3配線、14…測定信号、15…測定器、16…計器、17…駆動機器、18…操作器、19…操作信号、21(21x)…第1切替器、22…第2切替器、23…第3切替器、25…励起スイッチ、27…電源基板、28…回路基板、29…予備電池、30…外部直流電源、31…整流器、32…外部蓄電池、35…励起スイッチ、36…交流電力、37…スイッチ、39…バイパス片、40…自走ロボット、41…第1端子、42…第2端子、43,44…コネクタ、45…診断機、46…充電器、47…移動ルート、50…実装基板、51…カメラ、52,53…ダイオード、54…基準値、55…スイッチ、56…警告器、57…コンデンサ、58…比較器、59…警報発信部、60…内部蓄電池、61…電池モジュール、62…フレーム、63…キャスタ、64…予備電池、65…筐体、66…作業員、67…端子台、68…用品取付板、69…作業スペース。
図1
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