(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】スラグ溶融バーナ装置、ガス化炉及びガス化複合発電設備並びにスラグ溶融バーナ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
F23J 1/00 20060101AFI20240415BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20240415BHJP
F23D 14/78 20060101ALI20240415BHJP
F27D 3/15 20060101ALI20240415BHJP
C10J 3/46 20060101ALI20240415BHJP
C10J 3/52 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
F23J1/00 B
F23N5/24 Z ZAB
F23D14/78 A
F27D3/15 S
C10J3/46 K
C10J3/52
(21)【出願番号】P 2020167033
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】松尾 啓介
(72)【発明者】
【氏名】松尾 皐平
(72)【発明者】
【氏名】小山 智規
(72)【発明者】
【氏名】深田 恒
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-091193(JP,A)
【文献】特開2002-013881(JP,A)
【文献】特開2011-137144(JP,A)
【文献】特開平11-241887(JP,A)
【文献】特開2008-241166(JP,A)
【文献】米国特許第04666397(US,A)
【文献】特開2012-062376(JP,A)
【文献】特開2005-003230(JP,A)
【文献】特開2015-094478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/00
F23N 5/24
F23D 14/78
F27D 3/15
C10J 3/46
C10J 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有固体燃料を部分燃焼させてガス化させるガス化炉に用いられるスラグ溶融バーナ装置であって、
前記ガス化炉内で固化したスラグに向けて先端部から火炎を噴射するスラグ溶融バーナと、
前記先端部の受熱量を算出する受熱量算出部と、
前記受熱量算出部からの情報に基づいて火炎の燃焼量を決定する燃焼量決定部と、
を備えているスラグ溶融バーナ装置。
【請求項2】
前記先端部の温度を計測する温度計測器を備え、
前記受熱量算出部は、前記温度計測器からの情報に基づいて前記先端部の受熱量を算出する請求項1に記載のスラグ溶融バーナ装置。
【請求項3】
前記スラグ溶融バーナの内部を流通し前記スラグ溶融バーナを冷却する冷却水の温度を計測する温度計測器を備え、
前記受熱量算出部は、前記温度計測器からの情報に基づいて前記先端部の受熱量を算出する請求項1に記載のスラグ溶融バーナ装置。
【請求項4】
前記燃焼量決定部は、前記受熱量算出部で算出された前記先端部の受熱量が所定の受熱量以上となった場合に火炎の燃焼量を低減させる請求項1から3のいずれかに記載のスラグ溶融バーナ装置。
【請求項5】
前記燃焼量決定部は、前記温度計測器で計測された前記先端部の温度が所定の温度以上となった場合に火炎の燃焼量を低減させる請求項1又は2に記載のスラグ溶融バーナ装置。
【請求項6】
前記燃焼量決定部は、冷却水の温度上昇値が所定の上昇値以上となった場合に火炎の燃焼量を低減させる請求項3に記載のスラグ溶融バーナ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のスラグ溶融バーナ装置を備えているガス化炉。
【請求項8】
請求項7に記載のガス化炉を備えているガス化複合発電設備。
【請求項9】
ガス化炉内で固化したスラグに向けて先端部から火炎を噴射するスラグ溶融バーナを備えているスラグ溶融バーナ装置の制御方法であって、
前記先端部の受熱量に基づいて火炎の燃焼量を決定するスラグ溶融バーナ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラグ溶融バーナ装置、ガス化炉及びガス化複合発電設備並びにスラグ溶融バーナ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス化炉として、石炭等の炭素含有固体燃料をガス化炉内に供給し、炭素含有固体燃料を部分燃焼させてガス化することで、可燃性ガスを生成する炭素含有燃料ガス化設備(石炭ガス化設備)が知られている。
【0003】
炭素含有固体燃料として石炭(微粉炭)を使用するガス化炉では、微粉炭が高温燃焼されることによって、可燃性ガスである生成ガスが生成されると共に、高温の火炎によって微粉炭中の灰分が溶融したスラグが生成され、スラグホールからスラグホッパへ流下・排出される。スラグホール近傍において、炉壁を構成するとともに内部に冷却水が流通する伝熱管によって炉壁を伝うスラグが冷却され温度が低下すると、石炭の性状やガス化炉内の雰囲気によっては、溶融していたスラグが固化してスラグホールを閉塞する可能性がある。この場合、ガス化炉の運転の継続が困難になるおそれがある。
【0004】
このため、スラグホール近傍で固化したスラグを加熱して溶融するために、スラグホール側に向けて火炎を噴射するスラグ溶融バーナがガス化炉に設けられることがある。
このスラグ溶融バーナは、例えば特許文献1に開示されているように、水平方向に進退可能に構成されており、固化したスラグを加熱する際に、スラグ溶融バーナの先端部を炉壁側からスラグホールの中心軸側(噴射位置)に向けて移動させることができる。
【0005】
しかしながら、高温の火炎によって溶融したスラグが炉壁を流下してスラグホールから垂れ下がるようにして氷柱状に固化したスラグ塊が形成された場合、噴射位置にあるスラグ溶融バーナの先端部に対向する位置(具体的には火炎の噴射方向においてバーナ先端部の目前)にスラグ塊が位置することがある。この状態で火炎を噴射した場合、スラグ溶融バーナから噴射される火炎がスラグ塊ではね返され、自己の火炎によってスラグ溶融バーナの先端部が過度に昇温して損傷してしまう場合がある。
【0006】
このため、特許文献1のスラグ溶融バーナでは、スラグ溶融バーナの先端部とスラグ塊との距離を把握、調節してからスラグ溶融バーナを点火することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の構成を採用した場合、火炎の噴射方向及びスラグ溶融バーナの位置によっては、火炎がスラグ塊のみならずスラグホールを構成する炉壁(伝熱管)に到達して、火炎によって伝熱管が損傷してしまう可能性がある。
【0009】
本開示は、このような事情に鑑みてなされてものであって、スラグ溶融バーナの位置をスラグ塊との位置に基づいて調節することなく、自己の火炎によって先端部が損傷してしまう可能性を低減できるスラグ溶融バーナ装置、ガス化炉及びガス化複合発電設備並びにスラグ溶融バーナ装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示のスラグ溶融バーナ装置、ガス化炉及びガス化複合発電設備並びにスラグ溶融バーナ装置の制御方法は、以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一態様に係るスラグ溶融バーナ装置は、炭素含有固体燃料を部分燃焼させてガス化させるガス化炉に用いられるスラグ溶融バーナ装置であって、ガス化炉内で固化したスラグに向けて先端部から火炎を噴射するスラグ溶融バーナと、前記先端部の受熱量を算出する受熱量算出部と、前記受熱量算出部からの情報に基づいて火炎の燃焼量を決定する燃焼量決定部と、を備えている。
【0011】
また、本開示の一態様に係るガス化炉は、上記のスラグ溶融バーナ装置を備えている。
【0012】
また、本開示の一態様に係るガス化複合発電設備は、上記のガス化炉を備えている。
【0013】
また、本開示の一態様に係るスラグ溶融バーナ装置の制御方法は、ガス化炉内で固化したスラグに向けて先端部から火炎を噴射するスラグ溶融バーナを備えているスラグ溶融バーナ装置の制御方法であって、前記先端部の受熱量に基づいて火炎の燃焼量を決定する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、スラグ溶融バーナの位置をスラグ塊との位置に基づいて調節することなく、自己の火炎によって先端部が損傷してしまう可能性を低減できるスラグ溶融バーナ装置、ガス化炉及びガス化複合発電設備並びにスラグ溶融バーナ装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【
図3】スラグ塊が形成されていない状態のスラグ溶融バーナの近傍の部分拡大図である。
【
図4】スラグ塊が形成された状態のスラグ溶融バーナの近傍の部分拡大図である(非点火時)。
【
図5】スラグ塊が形成された状態のスラグ溶融バーナの近傍の部分拡大図である(点火時)。
【
図6】スラグ溶融バーナのバーナチップ近傍の縦断面図である。
【
図7】スラグ溶融バーナ装置の制御フローを示す図である。
【
図8】スラグ塊が形成された状態のスラグ溶融バーナの近傍の部分拡大図である(非点火時)。
【
図9】スラグ塊が形成された状態のスラグ溶融バーナの近傍の部分拡大図である(点火時)。
【
図10】スラグ溶融バーナの運用負荷とバーナチップの温度の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[石炭ガス化複合発電設備について]
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るガス化炉101を適用した石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)10の概略構成図である。
図2は、
図1に示すガス化炉101の縦断面図である。
以降の説明では、上方とは鉛直上側の方向を、上部や上面などの“上”とは鉛直上側の部分を示している。また同様に“下”とは鉛直下側の部分を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
【0017】
本実施形態に係るガス化炉101が適用される石炭ガス化複合発電設備(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)10は、空気を主とする酸化剤として用いており、ガス化炉101において、燃料から可燃性ガス(生成ガス)を生成する空気燃焼方式を採用している。そして、石炭ガス化複合発電設備10は、ガス化炉101で生成した生成ガスを、ガス精製設備16で精製して燃料ガスとした後、ガスタービン17に供給して発電を行っている。すなわち、実施形態1の石炭ガス化複合発電設備10は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備となっている。なお、本実施形態では空気燃焼方式として説明するが、酸素燃焼方式(酸素吹き)としても良い。ガス化炉101に供給する燃料としては、例えば、石炭等の炭素含有固体燃料が用いられる。
【0018】
石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)10は、
図1に示すように、給炭設備11と、ガス化炉101、チャー回収設備15と、ガス精製設備16と、ガスタービン17と、蒸気タービン18と、発電機19と、排熱回収ボイラ(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)20とを備えている。
【0019】
給炭設備11は、原炭として炭素含有固体燃料である石炭が供給され、石炭を石炭ミル(図示略)などで粉砕することで、細かい粒子状に粉砕した微粉炭を製造する。給炭設備11で製造された微粉炭は、給炭ライン11a出口で、後述する空気分離設備42から供給される搬送用イナートガスとしての窒素ガスによって加圧されて、ガス化炉101へ向けて供給される。イナートガスとは、酸素含有率が約5体積%以下の不活性ガスであり、窒素ガスや二酸化炭素ガスやアルゴンガスなどが代表例であるが、必ずしも約5体積%以下に制限されるものではない。
【0020】
ガス化炉101は、給炭設備11で製造された微粉炭が供給されると共に、チャー回収設備15で回収されたチャー(石炭の未反応分と灰分)をエネルギーとして再利用する目的として供給されている。
【0021】
また、ガス化炉101には、ガスタービン17(圧縮機61)からの圧縮空気供給ライン41が接続されており、ガスタービン17で圧縮された圧縮空気の一部が昇圧機68で所定圧力に昇圧されてガス化炉101に供給可能となっている。空気分離設備42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43によって空気分離設備42と給炭設備11からの給炭ライン11aとが接続された後、燃料供給ライン12としてガス化炉101と接続されている。また、第1窒素供給ライン43から分岐する第2窒素供給ライン45もチャー回収設備15からのチャー戻しライン46が接続された後、チャー供給ライン13としてガス化炉101に接続されている。更に、空気分離設備42は、酸素供給ライン47によって、圧縮空気供給ライン41と接続されている。そして、空気分離設備42によって分離された窒素は、第1窒素供給ライン43及び第2窒素供給ライン45を流通することで、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用される。また、空気分離設備42によって分離された酸素は、酸素供給ライン47及び圧縮空気供給ライン41を流通することで、ガス化炉101において酸化剤(空気、酸素)として利用される。
【0022】
ガス化炉101は、例えば、2段噴流床形式で構成されており、内部に供給された石炭(微粉炭)およびチャーを酸化剤(空気、酸素)により部分燃焼させることでガス化させ生成ガスとする。なお、ガス化炉101は、石炭や灰分(石炭灰)などを外部に排出する異物除去設備48が設けられている。そして、このガス化炉101には、チャー回収設備15に向けて生成ガスを供給する第1生成ガスライン49が接続されており、チャーを含む生成ガスが排出可能となっている。この場合、
図2に示すように、第1生成ガスライン49にシンガスクーラ102(ガス冷却器)を設けることで、生成ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収設備15に供給してもよい。
【0023】
チャー回収設備15は、集塵装置51と供給ホッパ52とを備えている。この場合、集塵装置51は、1つまたは複数のサイクロンやポーラスフィルタにより構成され、ガス化炉101で生成された生成ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された生成ガスは、第2生成ガスライン53を通してガス精製設備16に送られる。供給ホッパ52は、集塵装置51で生成ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵装置51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46が第2窒素供給ライン45に接続されている。
【0024】
ガス精製設備16は、チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製設備16は、生成ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン17に供給する。なお、チャーが分離された生成ガス中には硫黄化合物(H2Sなど)が含まれているため、ガス精製設備16では、アミン吸収液などによって硫黄化合物を除去回収して、石膏等として有効利用する。
【0025】
ガスタービン17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を備えており、圧縮機61とタービン63とは、回転軸64により連結されている。燃焼器62には、圧縮機61からの圧縮空気供給ライン65が接続されると共に、ガス精製設備16からの燃料ガス供給ライン66が接続され、また、タービン63に向かって延びる燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン17は、圧縮機61からガス化炉101に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。従って、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気の一部とガス精製設備16から供給された燃料ガスの少なくとも一部とを混合して燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、発生させた燃焼ガスをタービン63へ向けて供給する。そして、タービン63は、供給された燃焼ガスにより回転軸64を回転させることで発電機19を回転駆動させる。
【0026】
蒸気タービン18は、ガスタービン17の回転軸64に連結されるタービン69を備えており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。なお、蒸気タービン18とガスタービン17は同一軸として1つの発電機19を回転駆動しなくてもよく、別の軸として複数の発電機を回転駆動させても良い。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17(タービン63)からの排ガスライン70が接続されており、排熱回収ボイラ20への給水とタービン63の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。
【0027】
そして、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられると共に給水ライン72が設けられ、給水ライン72に復水器73が設けられている。また、排熱回収ボイラ20で生成する蒸気には、ガス化炉101のシンガスクーラ102で生成ガスと熱交換して生成された蒸気を含んでもよい。従って、蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69が回転駆動し、回転軸64を回転させることで発電機19を回転駆動させる。そして、排熱回収ボイラ20の出口から煙突75までには、排気ガス浄化設備74を備えている。
【0028】
ここで、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10の動作について説明する。
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10において、給炭設備11に原炭(石炭)が供給されると、石炭は、給炭設備11において細かい粒子状に粉砕されることで微粉炭となる。給炭設備11で製造された微粉炭は、空気分離設備42から第1窒素供給ライン43を流通して供給される窒素により燃料供給ライン12を流通してガス化炉101に供給される。
【0029】
また、後述するチャー回収設備15で回収されたチャーが、空気分離設備42から第2窒素供給ライン45を流通して供給される窒素によりチャー供給ライン13を流通してガス化炉101に供給される。更に、後述するガスタービン17から抽気された圧縮空気が昇圧機68で昇圧された後、空気分離設備42から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン41を通してガス化炉101に供給される。
【0030】
ガス化炉101では、供給された微粉炭及びチャーが圧縮空気(酸素)により燃焼し、微粉炭及びチャーがガス化することで、生成ガスを生成する。そして、この生成ガスは、ガス化炉101から第1生成ガスライン49を通って排出され、チャー回収設備15に送られる。
【0031】
このチャー回収設備15にて、生成ガスは、まず、集塵装置51に供給されることで、生成ガスに含有する微粒のチャーが分離される。そして、チャーが分離された生成ガスは、第2生成ガスライン53を通してガス精製設備16に送られる。一方、生成ガスから分離した微粒のチャーは、供給ホッパ52に堆積され、チャー戻しライン46を通ってガス化炉101に戻されてリサイクルされる。
【0032】
チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスは、ガス精製設備16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給する。この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気と、ガス精製設備16から供給される燃料ガスを燃焼することで燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスによりタービン63を回転駆動することで、回転軸64を介して圧縮機61及び発電機19を回転駆動する。このようにして、ガスタービン17は発電を行うことができる。
【0033】
そして、排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17におけるタービン63から排出された排ガスと排熱回収ボイラ20への給水とで熱交換を行うことにより蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン18に供給する。蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69を回転駆動することで、回転軸64を介して発電機19を回転駆動し、発電を行うことができる。なお、ガスタービン17と蒸気タービン18は同一軸として1つの発電機19を回転駆動しなくてもよく、別の軸として複数の発電機を回転駆動しても良い。
【0034】
その後、排気ガス浄化設備74では、排熱回収ボイラ20から排出された排気ガスの有害物質が除去され、浄化された排気ガスが煙突75から大気へ放出される。
【0035】
[ガス化炉について]
次に、
図1に示すガス化炉101について
図2を参照して説明する。
ガス化炉101は、鉛直方向に延びて形成されており、鉛直方向の下方側に微粉炭及び酸素が供給され、部分燃焼させてガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通している。ガス化炉101は、圧力容器110と、圧力容器110の内部に設けられるガス化炉壁(炉壁)111とを有している。
【0036】
そして、ガス化炉101は、圧力容器110とガス化炉壁111との間の空間にアニュラス部115を形成している。また、ガス化炉101は、ガス化炉壁111の内部空間154において、鉛直方向の下方側(つまり、生成ガスの流通方向の上流側)から順に、コンバスタ部116、ディフューザ部117、リダクタ部118を形成している。
【0037】
圧力容器110は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、上端部にガス排出口121が形成される一方、下端部(底部)にスラグホッパ122が形成されている。ガス化炉壁111は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、その外壁面が圧力容器110の内壁面と対向して設けられている。
【0038】
ガス化炉壁111は、圧力容器110の内部を内部空間154と外部空間(アニュラス部115)に分離する。ガス化炉壁111は、横断面形状がコンバスタ部116とリダクタ部118との間のディフューザ部117で変化する形状とされている。ガス化炉壁111は、鉛直上方側となるその上端部が、圧力容器110のガス排出口121に接続され、鉛直下方側となるその下端部が圧力容器110の底部と隙間を空けて設けられている。そして、圧力容器110の底部に形成されるスラグホッパ122には、貯留水が溜められており、ガス化炉壁111の下端部が貯留水に浸水することで、ガス化炉壁111の内外を封止している。ガス化炉壁111には、各種バーナが挿入され、内部空間154にシンガスクーラ102が配置されている。
【0039】
アニュラス部115は、圧力容器110の内側とガス化炉壁111の外側に形成された空間であり、例えば空気分離設備42で分離された不活性ガスである窒素が、図示しない窒素供給ラインを通って供給される。このため、アニュラス部115は、窒素が充満する空間となる。なお、このアニュラス部115の鉛直方向の上部付近には、ガス化炉101内を均圧にするための図示しない炉内均圧管が設けられている。炉内均圧管は、ガス化炉壁111の内外を連通して設けられ、圧力容器110の内部空間154(コンバスタ部116、ディフューザ部117及びリダクタ部118)と外部空間(アニュラス部115)との圧力差を所定圧力以内となるよう略均圧にしている。
【0040】
コンバスタ部116は、本実施形態では、コンバスタ部116におけるガス化炉壁111には、炉内上方側から順に設けられた、例えば、複数のチャーバーナ125、複数のコンバスタ系微粉炭バーナ(バーナ)126が設けられ、コンバスタより下方にある起動用燃焼室119には複数のスラグ溶融バーナ210、点火トーチ129及び軽油バーナ130からなる燃焼装置が配置されている。スラグ溶融バーナ210は、生成された固化スラグ(スラグS)を溶融するためのものである(
図4参照)。スラグ溶融バーナ210の先端は、固化したスラグSを溶融除去するために使用される。スラグ溶融バーナ210及びそれを備えているスラグ溶融バーナ装置の構成や制御方法については後述する。複数の点火トーチ129及び軽油バーナ130は、ガス化炉101の起動に使用されるものである。コンバスタ部116で微粉炭及びチャーの一部を燃焼した高温の燃焼ガスは、ディフューザ部117を通過してリダクタ部118に流入する。コンバスタ部116で微粉炭及びチャーの一部を燃焼した高温の燃焼ガスは、ディフューザ部117を通過してリダクタ部118に流入する。
【0041】
リダクタ部118は、ガス化反応に必要な高温状態に維持されコンバスタ部116からの燃焼ガスに微粉炭を供給し部分酸化燃焼させて、微粉炭をガス化し分解することによって揮発分(一酸化炭素、水素、低級炭化水素等)である生成ガスを生成する空間となっており、リダクタ部118におけるガス化炉壁111には、複数のリダクタ系微粉炭バーナ(バーナ)127からなる燃焼装置が配置されている。
【0042】
シンガスクーラ102は、ガス化炉壁111の内部に設けられると共に、リダクタ部118のバーナ127の鉛直方向の上方側に設けられている。シンガスクーラ102は熱交換器であり、ガス化炉壁111の鉛直方向の下方側(生成ガスの流通方向の上流側)から順に、蒸発器(エバポレータ)131、過熱器(スーパーヒータ)132、節炭器(エコノマイザ)134が配置されている。これらのシンガスクーラ102は、リダクタ部118において生成された生成ガスと熱交換を行うことで、生成ガスを冷却する。また、蒸発器(エバポレータ)131、過熱器(スーパーヒータ)132、節炭器(エコノマイザ)134は、図に記載されたその数量を限定するものではない。
【0043】
次に、上述のガス化炉101の動作について説明する。
ガス化炉101は、複数の点火トーチ129及び軽油バーナ130より、酸化剤と燃料が供給され点火される。すると、起動用燃焼室部(図示なし)において、高温燃焼ガスが発生し、コンバスタ部116は、微粉炭やチャーが燃焼可能な所定の温度に加温される。
【0044】
ガス化炉101において、リダクタ部118のバーナ127により窒素と微粉炭が投入されて点火されると共に、コンバスタ部116のチャーバーナ125及びバーナ126により微粉炭及びチャーと圧縮空気(酸素)が投入されて点火される。すると、コンバスタ部116では、微粉炭とチャーの燃焼により高温燃焼ガスが発生する。また、コンバスタ部116では、微粉炭とチャーの燃焼により灰分が高温ガス中で溶融してスラグが生成され、ガス化炉壁111をつたって流下し、コンバスタ部116の下部に設けられたスラグホールHを通って、最終的にスラグホッパ122内の貯水へ排出される。そして、コンバスタ部116で発生した高温燃焼ガスは、ディフューザ部117を通ってリダクタ部118に上昇する。このリダクタ部118では、ガス化反応に必要な高温状態に維持されて、微粉炭が高温燃焼ガスと混合し、高温の還元雰囲気において微粉炭を部分燃焼させてガス化反応が行われ、生成ガスが生成される。ガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通する。また、微粉炭及びチャーが点火し、ガス化反応が開始し、微粉炭及びチャーによる自己着火による安定運転が確保された後、点火トーチ129及び軽油バーナ130は消火される。
【0045】
[スラグ溶融バーナ装置の概要について]
次に、
図2に示すスラグ溶融バーナ210を備えているスラグ溶融バーナ装置の概要について説明する。
図3に示すように、スラグ溶融バーナ装置は、スラグ溶融バーナ210と、制御部250と、を有している。
【0046】
図3から
図5に示すように、スラグ溶融バーナ210は、バーナチップ(先端部)214を起動用燃焼室119の内部に位置させた状態で、バーナチップ214からスラグホールHに向けて火炎を噴射することができる。
【0047】
図3に示すように、スラグ溶融バーナ210は、ガス化炉101に対して進退可能に構成されており、スラグホールH近傍に固化したスラグSが形成されてない場合、すなわち、スラグ溶融バーナ210を使用しない場合、スラグ溶融バーナ210は炉壁111側に引き抜かれる。これにより、スラグ溶融バーナ210の不使用時にスラグ溶融バーナ210が高温雰囲気に晒されることを回避している。この説明において、炉壁111側に引き抜かれたときのスラグ溶融バーナ210の位置を「退避位置」と呼ぶ。
【0048】
図4に示すように、スラグホールH近傍(詳細には、スラグホールHを形成する炉壁111Aの下端近傍)には、氷柱状にぶら下がった状態で固化したスラグS(スラグ塊)が形成されることがある。スラグSの形成が確認された場合、スラグ溶融バーナ210は、水平方向に沿ってスラグホールHの中心軸側(起動用燃焼室119の中心軸側)に移動される。この説明において、スラグホールHの中心軸側に移動されたときのスラグ溶融バーナ210の位置を「噴射位置」と呼ぶ。
【0049】
スラグSの形成状況を確認する方法としては、例えば、ガス化炉101に設けられた覗き窓を介した目視による確認、カメラによる確認、センサによる検知等がある。ただし、これらの方法に限定されることはなく、スラグSの形成状況を確認できる任意の方法を採用することができる。
【0050】
図5に示すように、噴射位置に移動されたスラグ溶融バーナ210は、バーナチップ214の前面214AからスラグSに向けて火炎を噴射する。これによって、固化したスラグSを加熱・溶融させてスラグSの全体を除去することができる。
【0051】
図5等に示すように、制御部250は、受熱量算出部252と、燃焼量決定部254と、を含んでいる。
【0052】
制御部250等は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。
そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。
なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0053】
受熱量算出部252は、スラグ溶融バーナ210のバーナチップ214の受熱量を算出する。燃焼量決定部254は、受熱量算出部252と通信可能に構成されており、受熱量算出部252が出力した情報に基づいて火炎の燃焼量を決定する。
【0054】
[スラグ溶融バーナ装置の詳細について]
次に、スラグ溶融バーナ装置の詳細について説明する。
図6に示すように、本実施形態に係るスラグ溶融バーナ210は、バーナ本体部212と、バーナチップ214と、供給管230と、を有している。
【0055】
バーナ本体部212は、外筒212Aと内筒212Bとを有し、所定の方向に延びた多重筒構造とされている。バーナ本体部212の延在方向の先端(同図において左端)には、バーナチップ214が取り付けられている。
【0056】
バーナ本体部212が有する内筒212Bの内側には、バーナ本体部212と同じ方向に延在する供給管230が設けられている。供給管230には、火炎を形成するための燃料(例えば天然ガス)及び酸化剤(例えば酸素)が供給される。供給管230の先端は、バーナチップ214の背面214Bに接続されている。
【0057】
バーナチップ214には、供給管230に接続され燃料および酸化剤(酸素)を噴出するための流通流路FPが内部に形成されている。流通流路FPは、バーナチップ214の前面214Aと背面214Bとを連通する流路であり、また、供給管230と連通する流路でもある。供給管230に供給された燃料及び酸化剤は、流通流路FPを介してバーナチップ214の前面214Aから噴射される。また、噴射された燃料と酸化剤からなる可燃混合気に点火することで、バーナチップ214から噴射される火炎が形成されることになる。
【0058】
火炎の燃焼量(火炎の強さ)は、供給される燃料及び/又は酸化剤の流量や割合を調整することによって調節される。燃料及び/又は酸化剤の流量は、例えば供給管230に設けられた流量調整弁(図示せず)の開度によって調節される。流量調整弁は燃焼量決定部254と通信可能、制御可能に構成されており、流量調整弁の開度は燃焼量決定部254によって決定された所定の開度に設定される。
【0059】
バーナチップ214の前面214Aは、スラグホールHに向かって傾斜するように形成されている(
図4参照)。流通流路FPは、前面214Aの一部が前面214Aと略直交するように傾斜している。これによって、バーナチップ214から噴射される火炎の噴射方向をスラグホールHに向けることができる。
【0060】
バーナチップ214の背面214Bには前面214A側に向かって窪んだ凹所214Cが形成されており、バーナ本体部212の外筒212A及び内筒212Bとともに
図6に示す断面図で略U字状の冷却流路CPを画定している。冷却流路CPには、冷却水Wを流通させることができる。これによって、スラグ溶融バーナ210(特にバーナチップ214)を冷却することができる。
【0061】
バーナチップ214の背面214Bには温度計測器240が設けられており、バーナチップ214の温度を計測できるように構成されている。温度計測器240は受熱量算出部252と通信可能に構成されており、受熱量算出部252は温度計測器240から出力された情報に基づいてバーナチップ214の温度を算出する。
【0062】
温度計測器240は、例えば、バーナチップ214の背面214Bに形成された凹所214Cに設けられる。この場合、特に、火炎に近い上部の凹所214Cに温度計測器240を設けることが好ましい。ただし、温度計測器240の設置箇所や個数はこれに限定されることはなく、バーナチップ214の仕様、形状に合わせた最適な設置箇所や個数を選択することができる。
温度計測器240は、例えば、熱電対とされる。ただし、これに限定されることはなく、レーザ光や赤外線を用いた非接触式の計測器や画像処理を用いた温度計測等、温度を計測できる任意の機器や方法を採用することができる。
【0063】
バーナチップ214は、例えば、耐熱性および耐腐食性に優れたニッケル基合金により形成されている。バーナチップ214は、金属3Dプリンタによって作製されてもよい。これによって、流通流路FPや凹所214C等の寸法精度が要求される部分を容易に形成することができ、温度計測器240によるバーナチップ214先端部の温度計測の精度を向上させたり、冷却水Wによる冷却効果を向上させることで受熱量の算出精度を向上させたりすることができる。
【0064】
[火炎の燃焼量の制御について]
このように構成されたスラグ溶融バーナ装置において、スラグSの形成が確認された場合、スラグ溶融バーナ210が適正な噴射位置に移動された後に点火され火炎が噴射される。
【0065】
このとき、
図8に示すように、氷柱状のスラグSが、噴射位置に移動したスラグ溶融バーナ210のバーナチップ214に対向する位置(具体的には火炎の噴射方向においてバーナチップ214の目前(前面214Aの前方かつ近傍))に位置している状態で火炎を噴射した場合、
図9に示すように、スラグSではね返された自己の火炎によってバーナチップ214が過度に昇温する。
【0066】
本実施形態では、火炎を噴射した後のバーナチップ214の異常昇温を検知・抑制するために、次のような制御が実行される。
すなわち、
図7に示すように、バーナチップ214の受熱量を制御部250及び受熱量算出部252によって監視する(ステップS1)。
【0067】
制御部250は、バーナチップ214の受熱量(受熱量算出部252による算出値)が予め設定された所定の受熱量(設計時に想定した受熱量。以下「所定値」という。)以上か否かを判断することによって、バーナチップ214の目前にスラグSが形成されているか否か判断する(ステップS2)。
【0068】
具体的には、制御部250は、バーナチップ214の受熱量が所定値以上となった場合に、自己の火炎がはね返されるようなスラグSが形成されていると判断する。反対に、バーナチップ214の受熱量が所定値以上ではない場合は、自己の火炎がはね返されるようなスラグSが形成されていないと判断する。
【0069】
受熱量算出部252によって算出された受熱量が所定値未満でありバーナチップ214の目前にスラグSが形成されていないと制御部250が判断した場合(
図7のステップS2において「NO」で表記)、火炎の燃焼量は変更されない。
【0070】
受熱量算出部252によって算出された受熱量が所定値以上となりバーナチップ214の目前にスラグSが形成されていると制御部250が判断した場合(
図7のステップS2において「YES」で表記)、その情報は燃焼量決定部254に送信される。
【0071】
バーナチップ214の目前にスラグSが形成されていると判断された場合、燃焼量決定部254は、火炎の燃焼量が低減されるような燃焼量を決定する。
前述の通り、供給管230には流量調整弁(図示せず)が設けられており、流量調整弁の開度によって火炎の燃焼量が調節される。燃焼量決定部254は、決定された火炎の燃焼量に調節されるように流量調整弁の開度を設定する。
なお、受熱量を算出することなく、温度計測器240によって計測された数値から直接的に火炎の燃焼量を決定してもよい。
【0072】
スラグ溶融バーナ210は、火炎の燃焼量が低減された状態でバーナチップ214の目前のスラグSを溶融する(ステップS3)。これによって、バーナチップ214にはね返る火炎の量を低減させることができる。これにより、異常昇温したバーナチップ214の温度を下げることができる。
例えば、
図10に示すグラフのように、スラグ溶融バーナ210の運用負荷(火炎の燃焼量)を100%から50%に低減した場合、バーナチップ214の温度が約12%低下する。
【0073】
この状態で火炎を噴射し続けることで、異常昇温を抑制しつつ、少なくともバーナチップ214の目前にあるスラグを溶融することができる。その後、制御部250は、受熱量算出部252によって算出された受熱量が所定値未満か否かを確認する(ステップS4)。
【0074】
受熱量算出部252によって算出された受熱量が所定値未満の場合(
図7のステップS4において「YES」で表記)、制御部250は、少なくともバーナチップ214の目前からスラグSが除去されたと判断する。
【0075】
バーナチップ214の目前からスラグSが除去されたと制御部250が判断した場合、燃焼量決定部254は、火炎の燃焼量を調整して(例えば、元の燃焼量に戻して)スラグSの溶融を継続する(ステップS5)。
バーナチップ214の目前からスラグSが除去された場合、スラグSとバーナチップ214との間の距離が確保されるので、火炎の燃焼量を元に戻したとしても(すなわち、増大させたとしても)バーナチップ214の過度な昇温は抑制される。
【0076】
受熱量算出部252によって算出された受熱量が所定値未満ではない場合(
図7のステップS4において「NO」で表記)、ステップS3に戻り火炎の噴射を継続する。
【0077】
なお、バーナチップ214の目前からスラグSが除去されたと判断した場合であってスラグホールHにスラグSの滞留が確認されないときは、スラグ溶融バーナ210の運転を停止してもよい。
【0078】
スラグホールHにスラグSが滞留しているか否かを確認する方法としては、例えば、ガス化炉101に設けられた覗き窓を介した目視による確認、カメラによる確認、センサによる検知等がある。ただし、これらの方法に限定されることはなく、スラグSの形成状況を確認できる任意の方法を採用することができる。
また、バーナチップ214の目前からスラグSが除去されたか否かを上記の方法で確認してもよい。
【0079】
ステップS5で火炎の燃焼量を戻した後は、ステップS1に戻り、同様の制御を繰り返す。
【0080】
ステップS1からステップS5のいずれかの中で、スラグSの全体が除去されてスラグホールHにスラグSの滞留が確認されなければ、燃料及び酸化剤の噴射・供給を止めてスラグ溶融バーナ210を退避位置まで引き抜く。
【0081】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
スラグ溶融バーナ装置は、ガス化炉101内で固化したスラグSに向けてバーナチップ214から火炎を噴射するスラグ溶融バーナ210と、バーナチップ214の受熱量を算出する受熱量算出部252と、受熱量算出部252からの情報に基づいて火炎の燃焼量を決定する燃焼量決定部254と、を備えているので、火炎を噴射するスラグ溶融バーナ210のバーナチップ214の受熱量に基づいて火炎の燃焼量を調節することができる。このため、例えばスラグ溶融バーナ210のバーナチップ214に対向する位置(具体的には火炎の噴射方向においてバーナチップ214の目前)にスラグSがあったとしても、スラグSではね返された自己の火炎によってバーナチップ214が過度に昇温する前に火炎の燃焼量を低減することができる。これによって、自己の火炎によってスラグ溶融バーナ210のバーナチップ214が損傷してしまう可能性を低減できる。また、バーナチップ214に対向する位置からスラグが除去されてバーナ先端部の受熱量が許容範囲に収まれば、火炎の燃焼量を増大させる(元の燃焼量に戻す)こともできる。
【0082】
[変形例]
温度計測器240はバーナチップ214の背面214Bに設けられていたが、例えば、次の設置方法を採用することもできる。
すなわち、温度計測器240を、バーナチップ214よりも上流側の冷却流路CP(バーナチップ214側へ供給される冷却水Wが流通する冷却流路CP)及びバーナチップ214よりも下流側の冷却流路CP(ガス化炉の外側に戻る冷却水Wが流通する冷却流路CP)の2箇所に設けてもよい。これによって、バーナチップ214を冷却する前の冷却水Wの温度と冷却した後の冷却水Wの温度を計測することができる。
【0083】
受熱量算出部252によって、冷却前後の冷却水Wの温度差から冷却水Wの温度上昇値を算出することで、バーナチップ214の受熱量を算出することが可能となる。この場合、冷却水Wの温度上昇値(計測値)が予め設定された所定の上昇値以上になったとき、バーナチップ214の受熱量が所定値以上になったと判断して、燃焼量決定部254は、火炎の燃焼量を低減させる制御を実行する。
【0084】
変形例に係るスラグ溶融バーナ装置によれば、温度計測器240は、バーナチップ214の温度を直接的に計測する場合に比べて、低温とされた雰囲気下での温度の計測が可能となる。
【0085】
なお、温度計測器240をバーナチップ214の背面214B及び冷却流路CPの両箇所に設けてもよい。これにより、温度計測器240からより精度の高い情報に基づいた受熱量算出部252での算出が可能となる。
【0086】
以上の通り説明した実施形態は、例えば以下のように把握される。
すなわち、本開示の一態様に係るスラグ溶融バーナ装置は、炭素含有固体燃料を部分燃焼させてガス化させるガス化炉(101)に用いられるスラグ溶融バーナ装置であって、前記ガス化炉(101)内で固化したスラグ(S)に向けて先端部(214)から火炎を噴射するスラグ溶融バーナ(210)と、前記先端部(214)の受熱量を算出する受熱量算出部(252)と、前記受熱量算出部(252)からの情報に基づいて噴射する火炎の燃焼量を決定する燃焼量決定部(254)と、を備えている。
【0087】
本態様に係るスラグ溶融バーナ装置は、ガス化炉(101)内で固化したスラグ(S)に向けて先端部(214)から火炎を噴射するスラグ溶融バーナ(210)と、先端部(214)の受熱量を算出する受熱量算出部(252)と、受熱量算出部(252)からの情報に基づいて火炎の燃焼量を決定する燃焼量決定部(254)と、を備えているので、火炎を噴射するスラグ溶融バーナ(210)の先端部(214)の受熱量に基づいて火炎の燃焼量を決定することができる。このため、例えばスラグ溶融バーナ(210)の先端部(214)に対向する位置(具体的には火炎の噴射方向において先端部(214)の目前)にスラグ(S)があったとしても、スラグ(S)ではね返された自己の火炎によって先端部(214)が過度に昇温する前に火炎の燃焼量を低減することができる。これによって、自己の火炎によってスラグ溶融バーナ(210)の先端部(214)が損傷してしまう可能性を低減できる。また、先端部(214)に対向する位置からスラグ(S)が除去されて先端部(214)の温度が許容範囲に収まれば、火炎の燃焼量を増大させる(元の燃焼量に戻す)こともできる。
【0088】
また、本開示の一態様に係るスラグ溶融バーナ装置において、前記先端部(214)の温度を計測する温度計測器(240)を備え、受熱量算出部(252)は、前記温度計測器(240)からの情報に基づいて前記先端部(214)の受熱量を算出する。
【0089】
本態様に係るスラグ溶融バーナ装置は、先端部(214)の温度を計測する温度計測器(240)を備え、受熱量算出部(252)は、温度計測器(240)からの情報に基づいて先端部(214)の受熱量を算出するので、応答性よく先端部(214)の受熱量変化を算出できる。温度計測器(240)は、例えば、熱電対とされる。
【0090】
また、本開示の一態様に係るスラグ溶融バーナ装置において、前記スラグ溶融バーナ(210)の内部を流通し前記スラグ溶融バーナ(210)を冷却する冷却水の温度を計測する温度計測器(240)を備え、前記受熱量算出部(252)は、前記温度計測器(240)からの情報に基づいて前記先端部(214)の受熱量を算出する。
【0091】
本態様に係るスラグ溶融バーナ装置は、スラグ溶融バーナ(210)の内部を流通しスラグ溶融バーナ(210)を冷却する冷却水の温度を計測する温度計測器(240)を備え、受熱量算出部(252)は、温度計測器(240)からの情報に基づいて先端部(214)の受熱量を算出するので、先端部(214)の温度を直接的に計測する場合に比べて、低温とされた雰囲気下での温度の計測が可能となる。
【0092】
また、本開示の一態様に係るスラグ溶融バーナ装置において、前記燃焼量決定部(254)は、前記受熱量算出部(252)で算出された前記先端部(214)の受熱量が所定の受熱量以上となった場合に火炎の燃焼量を低減させる。
【0093】
本態様に係るスラグ溶融バーナ装置において、燃焼量決定部(254)は、先端部(214)の受熱量が所定の受熱量以上となった場合に火炎の燃焼量を低減させるので、先端部(214)が過度に昇温する前に火炎の燃焼量を低減することができる。これによって、自己の火炎によって先端部(214)が溶損してしまう可能性を低減できる。
【0094】
また、本開示の一態様に係るスラグ溶融バーナ装置において、前記燃焼量決定部(254)は、前記温度検出器(240)で検出された前記先端部(214)の温度が所定の温度以上となった場合に火炎の燃焼量を低減させる。
【0095】
本態様に係るスラグ溶融バーナ装置において、燃焼量決定部(254)は、先端部(214)の温度が所定の温度以上となった場合に火炎の燃焼量を低減させるので、先端部(214)が過度に昇温する前に火炎の燃焼量を低減することができる。これによって、自己の火炎によって先端部(214)が溶損してしまう可能性を低減できる。
【0096】
また、本開示の一態様に係るスラグ溶融バーナ装置において、前記燃焼量決定部(254)は、冷却水の温度上昇値が所定の上昇値以上となった場合に火炎の燃焼量を低減させる。
【0097】
本態様に係るスラグ溶融バーナ装置において、燃焼量決定部(254)は、冷却水の温度上昇値が所定の上昇値以上となった場合に火炎の燃焼量を低減させるので、先端部(214)が過度に昇温する前に火炎の燃焼量を低減することができる。これによって、自己の火炎によって先端部(214)が溶損してしまう可能性を低減できる。
【0098】
また、本開示の一態様に係るガス化炉(101)は、上記のスラグ溶融バーナ装置を備えている。
【0099】
また、本開示の一態様に係るガス化複合発電設備(10)は、上記のガス化炉(101)を備えている。
【0100】
また、本開示の一態様に係るスラグ溶融バーナ装置の制御方法は、ガス化炉(101)内で固化したスラグ(S)に向けて先端部(214)から火炎を噴射するスラグ溶融バーナ(210)を備えているスラグ溶融バーナ装置の制御方法であって、前記先端部(214)の受熱量に基づいて火炎の燃焼量を決定する。
【符号の説明】
【0101】
10 石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)
11 給炭設備
11a 給炭ライン
12 燃料供給ライン
13 チャー供給ライン
15 チャー回収設備
16 ガス精製設備
17 ガスタービン
18 蒸気タービン
19 発電機
20 排熱回収ボイラ
41 圧縮空気供給ライン
42 空気分離設備
43 第1窒素供給ライン
45 第2窒素供給ライン
46 チャー戻しライン
47 酸素供給ライン
49 第1生成ガスライン
51 集塵装置
52 供給ホッパ
53 第2生成ガスライン
61 圧縮機
62 燃焼器
63 タービン
64 回転軸
65 圧縮空気供給ライン
66 燃料ガス供給ライン
67 燃焼ガス供給ライン
68 昇圧機
69 タービン
70 排ガスライン
71 蒸気供給ライン
72 給水ライン
74 排気ガス浄化設備
75 煙突
101 ガス化炉
102 シンガスクーラ
110 圧力容器
111 ガス化炉壁(炉壁)
115 アニュラス部(外部空間)
116 コンバスタ部
117 ディフューザ部
118 リダクタ部
119 起動用燃焼室
121 ガス排出口
122 スラグホッパ
125 チャーバーナ
126 バーナ(コンバスタ系微粉炭バーナ)
127 バーナ(リダクタ系微粉炭バーナ)
129 点火トーチ
130 軽油バーナ
131 蒸発器(エバポレータ)
132 過熱器(スーパーヒータ)
134 節炭器(エコノマイザ)
154 内部空間
210 スラグ溶融バーナ
212 バーナ本体部
212A 外筒
212B 内筒
214 バーナチップ(先端部)
214A 前面
214B 背面
214C 凹所
230 供給管
240 温度計測器
250 制御部
252 受熱量算出部
254 燃焼量決定部
CP 冷却流路
FP 流通流路
S スラグ
W 冷却水