(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 15/16 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
G01R15/16
(21)【出願番号】P 2020172285
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】笠井 真
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 主吏
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-113437(JP,A)
【文献】特開2017-009576(JP,A)
【文献】特開2019-105519(JP,A)
【文献】特開2014-185999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/16
G01R 1/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、
前記電極を挿入可能に筒状に形成された電極保持部と、
前記電極保持部を挿入可能に導電性を有する材料で筒状に形成されると共に先端部側部位における周壁の一部が切り欠かれた切欠きに検出対象電線を挿入可能に構成された電線挿入部とを備え、
前記電極保持部および前記電線挿入部の筒長方向に沿って当該電極保持部に対して当該電線挿入部を相対的に移動可能に構成されると共に、当該電線挿入部に挿入された前記検出対象電線に対して当該電極保持部によって保持された前記電極を相対的に接近させることで前記電極を介して当該検出対象電線についての被検出量を当該検出対象電線における絶縁被覆内の導線に対して非接触の状態で検出可能に構成されたセンサであって、
前記電線挿入部は、先端部から前記切欠きにおける当該先端部側の口縁部までの前記筒長方向に沿った第1の範囲内において当該切欠きに対する前記検出対象電線の挿通方向に沿った最大の幅が当該筒長方向および当該挿通方向の双方と直交する方向に沿った最大の高さよりも小さくなり、かつ前記切欠きにおける前記先端部側の口縁部から当該切欠きにおける当該電線挿入部の後端部側の口縁部までの前記筒長方向に沿った第2の範囲内に前記挿通方向に沿った幅が徐々に大きくなる部位が設けられると共に、前記切欠きにおける前記後端部側の口縁部よりも当該後端部側の第3の範囲内において前記挿通方向に沿った最小の幅と、前記筒長方向および当該挿通方向の双方と直交する方向に沿った最小の高さとの双方が前記第1の範囲における前記最大の幅よりも大きくなるように前記先端部側部位が形成されているセンサ。
【請求項2】
前記電線挿入部は、前記第1の範囲において前記挿通方向に沿った幅が前記最大の幅の部位から前記先端部に向かうほど小さくなるように前記先端部側部位が形成されている請求項1記載のセンサ。
【請求項3】
前記電線挿入部は、前記先端部から前記第1の範囲における前記最大の幅の部位までの前記筒長方向に沿った長さが当該第1の範囲における当該最大の幅の1/2よりも大きくなるように前記先端部側部位が形成されている請求項2記載のセンサ。
【請求項4】
前記電線挿入部は、前記第1の範囲において前記筒長方向および前記挿通方向の双方と直交する方向に沿った高さが前記最大の高さの部位から前記先端部に向かうほど小さくなるように前記先端部側部位が形成されている請求項1から3のいずれかに記載のセンサ。
【請求項5】
前記電線挿入部は、前記第1の範囲における前記最大の幅が前記電極において前記検出対象電線に接近させられる電極面における前記挿通方向に沿った幅以上となるように前記先端部側部位が形成されている請求項1から4のいずれかに記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象電線についての被検出量を検出対象電線の導線に対して非接触の状態で検出可能なセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサとして、出願人は、測定対象電線(検出対象電線)について、芯線に対して非接触の状態で電圧を検出可能な電圧検出プローブ(以下、単に「検出プローブ」ともいう)を下記の特許文献に開示している。
【0003】
この検出プローブは、使用者によって把持されるグリップ部、およびシールドケーブルを介して本体ユニットに接続される検出電極ユニットを備えて構成されている。また、検出電極ユニットは、測定対象電線を挿入可能な挿入凹部(切欠き)が形成された第1シールド筒体と、表面が絶縁被覆で覆われると共に第1シールド筒体に対してスライド可能に挿入された検出電極と、グリップ部の内側に固定されると共に第1シールド筒体が挿通されて固定された第2シールド筒体と、検出電極に連結されると共に第1シールド筒体、第2シールド筒体およびグリップ部に対して検出電極をスライドさせるための操作レバーと、検出電極を先端部側に向けて付勢する付勢部材とを備えている。
【0004】
この検出プローブを使用して測定対象電線における芯線の電圧を検出する際には、測定対象電線に検出プローブを装着する。具体的には、まず、グリップ部を把持した状態で操作レバーを手前側に引き寄せ、第1シールド筒体内で検出電極を手前側にスライドさせる。これにより、挿入凹部内への測定対象電線の挿入が可能な状態となる。次いで、操作レバーを押さえながら挿入凹部内に測定対象電線を挿入した後に、操作レバーから手を離す。この際には、付勢部材の付勢力によって検出電極が第1シールド筒体の先端側に向かってスライドさせられる結果、検出電極の先端面と第1シールド筒体の先端側切欠き面(内側端面)との間で測定対象電線が挟持された状態となる。これにより、測定対象電線に対する検出プローブの装着作業が完了して、測定対象電線の芯線と検出プローブの検出電極とが容量結合した状態となって測定対象電線(芯線)の電圧を検出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-009576号公報(第7-20頁、第1-19図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の特許文献に出願人が開示している検出プローブには、以下のような改善すべき課題が存在する。具体的には、出願人が開示している検出プローブでは、第1シールド筒体(電線挿入部)の挿入凹部(切欠き)に挿入した状態の測定対象電線に検出電極の先端面を押し付けた状態とすることで測定対象電線の芯線と検出電極とを容量結合させて測定対象電線(芯線)の電圧を検出する構成が採用されている。
【0007】
一方、この種の検出プローブ(センサ)は、互いに近接配置された複数の電線のうちの1つを測定対象電線として電圧等の被検出量を検出したり、基板やケーシングなどの近傍に配設された電線を測定対象電線として被検出量を検出したりするときにも使用される。この場合、出願人が開示している検出プローブでは、細径の円筒形に形成した第1シールド筒体内に細径の円柱状に形成した検出電極を挿入する構成とすることにより、検出プローブの先端部側部位(挿入凹部が形成されている部位)が細径の棒状となっている。これにより、他の電線、基板およびケーシングなどの近接配置物が存在する電線を測定対象電線として被検出量を検出する際にも、近接配置物と測定対象電線との間の隙間に検出プローブ(第1シールド筒体)の先端部側部位を差し込んで挿入凹部内に測定対象電線を挿入することが可能となっている。
【0008】
しかしながら、電子機器の小型化や電線使用数の増加が進む今日では、出願人が開示の検出プローブにおける先端部側部位の径よりも近接配置物と測定対象電線との間の隙間が狭くなっていることがある。このような場合には、例えば、測定対象電線および近接配置物のいずれか、または双方を一方の手で押し避けることで測定対象電線と近接配置物との間の隙間を拡大し、その状態で、他方の手に持った検出プローブ(第1シールド筒体)の先端部を隙間に差し込むことで挿入凹部内に測定対象電線を挿入する必要がある。このため、近接配置物と測定対象電線との間の隙間が狭いときには、測定対象電線に対する検出プローブの装着作業が煩雑となっている現状がある。
【0009】
この場合、出願人が開示の検出プローブの構成を改変して第1シールド筒体をさらに細径とすることにより、近接配置物と測定対象電線との間の隙間が狭いときにも検出プローブ(第1シールド筒体)の先端部を容易に差し込むことが可能となる。しかしながら、第1シールド筒体を細径化するには、第1シールド筒体に挿入される検出電極も細径化する必要がある。このため、検出電極において測定対象導線の芯線と対向させられる電極面が狭小となり、被測定量の検出感度が低下してしまう。
【0010】
また、検出電極を小径化せずに第1シールド筒体の外径を小径化した場合には、第1シールド筒体が薄厚となり、十分な物理的強度を確保するのが困難となったり、外乱の影響(第1シールド筒体内の検出電極へのノイズの混入)を受け易くなったりする。さらに、第1シールド筒体における挿入凹部よりも先端部側だけを細径化することにより、検出電極の細径化や、第1シールド筒体の薄厚化をせずに近接配置物と測定対象電線との間の隙間に検出プローブ(第1シールド筒体)の先端部を差し込み易くすることが可能となる。しかしながら、第1シールド筒体において検出電極の電極面をシールドしている部位(第1シールド筒体における電極面との対向部)が小さくなることで、外乱の影響(検出電極へのノイズの混入)を受け易くなってしまう。
【0011】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、物理的強度、検出感度およびシールド性能の低下を招くことなく、近接配置物との間の隙間が小さい状態の検出対象電線を切欠き内に容易に挿入し得るセンサを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく請求項1記載のセンサは、電極と、前記電極を挿入可能に筒状に形成された電極保持部と、前記電極保持部を挿入可能に導電性を有する材料で筒状に形成されると共に先端部側部位における周壁の一部が切り欠かれた切欠きに検出対象電線を挿入可能に構成された電線挿入部とを備え、前記電極保持部および前記電線挿入部の筒長方向に沿って当該電極保持部に対して当該電線挿入部を相対的に移動可能に構成されると共に、当該電線挿入部に挿入された前記検出対象電線に対して当該電極保持部によって保持された前記電極を相対的に接近させることで前記電極を介して当該検出対象電線についての被検出量を当該検出対象電線における絶縁被覆内の導線に対して非接触の状態で検出可能に構成されたセンサであって、前記電線挿入部は、先端部から前記切欠きにおける当該先端部側の口縁部までの前記筒長方向に沿った第1の範囲内において当該切欠きに対する前記検出対象電線の挿通方向に沿った最大の幅が当該筒長方向および当該挿通方向の双方と直交する方向に沿った最大の高さよりも小さくなり、かつ前記切欠きにおける前記先端部側の口縁部から当該切欠きにおける当該電線挿入部の後端部側の口縁部までの前記筒長方向に沿った第2の範囲内に前記挿通方向に沿った幅が徐々に大きくなる部位が設けられると共に、前記切欠きにおける前記後端部側の口縁部よりも当該後端部側の第3の範囲内において前記挿通方向に沿った最小の幅と、前記筒長方向および当該挿通方向の双方と直交する方向に沿った最小の高さとの双方が前記第1の範囲における前記最大の幅よりも大きくなるように前記先端部側部位が形成されている。
【0013】
請求項2記載のセンサは、請求項1記載のセンサにおいて、前記電線挿入部は、前記第1の範囲において前記挿通方向に沿った幅が前記最大の幅の部位から前記先端部に向かうほど小さくなるように前記先端部側部位が形成されている。
【0014】
請求項3記載のセンサは、請求項2記載のセンサにおいて、前記電線挿入部は、前記先端部から前記第1の範囲における前記最大の幅の部位までの前記筒長方向に沿った長さが当該第1の範囲における当該最大の幅の1/2よりも大きくなるように前記先端部側部位が形成されている。
【0015】
請求項4記載のセンサは、請求項1から3のいずれかに記載のセンサにおいて、前記電線挿入部は、前記第1の範囲において前記筒長方向および前記挿通方向の双方と直交する方向に沿った高さが前記最大の高さの部位から前記先端部に向かうほど小さくなるように前記先端部側部位が形成されている。
【0016】
請求項5記載のセンサは、請求項1から4のいずれかに記載のセンサにおいて、前記電線挿入部は、前記第1の範囲における前記最大の幅が前記電極において前記検出対象電線に接近させられる電極面における前記挿通方向に沿った幅以上となるように前記先端部側部位が形成されている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載のセンサでは、先端部から切欠きにおける先端部側の口縁部までの筒長方向に沿った第1の範囲内において切欠きに対する検出対象電線の挿通方向に沿った最大の幅が筒長方向および挿通方向の双方と直交する方向に沿った最大の高さよりも小さくなり、かつ切欠きにおける先端部側の口縁部から切欠きにおける電線挿入部の後端部側の口縁部までの筒長方向に沿った第2の範囲内に挿通方向に沿った幅が徐々に大きくなる部位が設けられると共に、切欠きにおける後端部側の口縁部よりも後端部側の第3の範囲内において挿通方向に沿った最小の幅と、筒長方向および挿通方向の双方と直交する方向に沿った最小の高さとの双方が第1の範囲における最大の幅よりも大きくなるように電線挿入部の先端部側部位が形成されている。
【0018】
したがって、請求項1記載のセンサによれば、近接配置物との間の隙間が極く小さい状態の検出対象電線にセンサを装着するときであっても、近接配置物と検出対象電線との離間方向を先端部側部位における幅方向に合わせるようにして電線挿入部を隙間に挿入することで、検出対象電線に大きなストレスを加えることなく、スムースに(つまり容易に)挿入することができる。また、検出対象電線が切欠きの側方に位置するまで検出対象電線と近接配置物との間に電線挿入部を挿入するときにも、第2の範囲内に挿通方向に沿った幅が徐々に大きくなる部位が設けられているため、検出対象電線を近接配置物から徐々に離間させるように先端部側部位を差し込むことができる結果、検出対象電線に大きなストレスを加えることなく、スムース(つまり容易に)に挿入することができる。さらに、第3の範囲における電線挿入部の幅および高さが十分に大きいため、電線挿入部の物理的強度が十分に高く、電線挿入部内の電極に対するノイズの混入を好適に阻止することができ(つまりシールド性能の低下を招くことなく)、しかも、十分な太さの電極を電極保持部と共に電線挿入部内に配設することで被検出量の検出感度を十分に高くすることができる。
【0019】
請求項2記載のセンサによれば、第1の範囲において挿通方向に沿った幅が最大の幅の部位から先端部に向かうほど小さくなるように電線挿入部の先端部側部位を形成したことにより、近接配置物と検出対象電線との間の隙間が上記の第1の範囲における最大の幅よりも小さいときであっても、近接配置物と検出対象電線との間の隙間に先端部を容易に差し込むことができる。
【0020】
請求項3記載のセンサによれば、先端部から第1の範囲における最大の幅の部位までの筒長方向に沿った長さが第1の範囲における最大の幅の1/2よりも大きくなるように電線挿入部の先端部側部位を形成したことにより、近接配置物と検出対象電線との間の隙間に先端部を一層容易に差し込むことができる。
【0021】
請求項4記載のセンサによれば、第1の範囲において筒長方向および挿通方向の双方と直交する方向に沿った高さが最大の高さの部位から先端部に向かうほど小さくなるように電線挿入部の先端部側部位を形成したことにより、近接配置物と検出対象電線との間の隙間に先端部を一層容易に差し込むことができる。
【0022】
請求項5記載のセンサによれば、第1の範囲における最大の幅が電極において検出対象電線に接近させられる電極面における挿通方向に沿った幅以上となるように電線挿入部の先端部側部位を形成したことにより、電極の延在方向(電極面と直交する方向)からのノイズの混入を電線挿入部における先端部側部位によって好適に阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図3】電圧センサ1における先端部の拡大斜視図である。
【
図4】電圧センサ1における先端部の他の拡大斜視図である。
【
図5】電線挿入部4における挿入部本体21の形状および各部のサイズについて説明するための説明図である。
【
図6】電線挿入部4における挿入部本体21の形状および各部のサイズについて説明するための他の説明図である。
【
図7】非使用状態の電圧センサ1における先端部の拡大側面図である。
【
図8】被覆電線Xbに近接配置された被覆電線Xaを電圧センサ1によって保持する(被覆電線Xaに電圧センサ1を装着する)作業について説明するための説明図である。
【
図9】被覆電線Xaを電圧センサ1によって保持する(被覆電線Xaに電圧センサ1を装着する)作業について説明するための他の説明図である。
【
図10】被覆電線Xaを電圧センサ1によって保持した(被覆電線Xaに電圧センサ1を装着した)状態について説明するための説明図である。
【
図11】電圧センサ1の電線挿入部4における挿入部本体21単体の正面図である。
【
図18】挿入部本体21単体の他の外観斜視図である。
【
図19】挿入部本体21単体のさらに他の外観斜視図である。
【
図20】
図13,14におけるA-A線において切断した挿入部本体21単体のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、センサの実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1,2に示す電圧センサ1は、「センサ」の一例であって、導線(芯線)が絶縁被覆で覆われて絶縁された被覆電線Xa(「検出対象電線」の一例:
図8~
図10参照)の導線に対して供給されている電圧(「検出対象電線についての被検出量」の一例)を導線に対して非接触の状態で検出可能に構成されている。この電圧センサ1は、電極2、電極保持部3、電線挿入部4および信号ケーブル5を備え、検出対象の被覆電線Xaに対して装着可能に(被覆電線Xaを挿入可能に)構成されると共に、信号ケーブル5によって測定装置(図示せず)に接続可能に構成されている。
【0026】
電極2は、「電極」の一例であって、
図3に示すように、導電性を有する金属材料で柱状(本例では円柱状)に形成され、後述するように電線挿入部4に挿入された被覆電線Xaに先端部2a(先端面)が押し付けられた状態(「検出対象電線における絶縁被覆内の導線に対して近接させられた状態)で、被覆電線Xaの絶縁被覆を介して被覆電線Xaの導線と容量結合させられる。この電極2は、電極保持部3における後述の保持部本体11から先端部2a(先端面)が露出するように保持部本体11に挿通させられて保持部本体11と一体化される(「電極保持部に挿入された状態で電極保持部によって保持される」との構成の一例)と共に、保持部本体11内において後端部に信号ケーブル5が接続されている。この場合、電極2が接続される信号ケーブル5は、導線(芯線)がシールド線(網線)によってシールドされており、導線に対するノイズの混入が阻止されている。
【0027】
電極保持部3は、「電極保持部」の一例であって、全体として筒状(本例では、円筒状)に形成されている。この電極保持部3は、保持部本体11および絶縁体12を備え、保持部本体11の先端部から電極2の先端部2a(先端面)が露出するように電極2を保持可能に構成されると共に、
図1,2に示すように、保持部本体11の後端部側に把持部11a(電圧センサ1の使用時に使用者が電圧センサ1を把持するためのグリップ部)が配設されている。
【0028】
この場合、保持部本体11は、一例として、導電性を有する金属材料で形成されている。また、把持部11aは、信号ケーブル5を挿通可能に絶縁性材料(一例として、絶縁性樹脂)で筒状(円筒状)に形成されている。さらに、絶縁体12は、電極2と保持部本体11とを相互に絶縁しつつ保持部本体11に対して電極2を保持可能に筒状(円筒状)に形成されている。
【0029】
電線挿入部4は、「電線挿入部」の一例であって、
図1,2に示すように、先端部4a側に配設された挿入部本体21、および後端部4b側に配設された操作用ノブ22を備えている。この場合、本例の電圧センサ1では、一例として、電極保持部3および電線挿入部4の筒長方向に沿って電極保持部3(把持部11a)に対して電線挿入部4(操作用ノブ22)をスライドさせることができるように構成されている(「筒長方向に沿って電極保持部に対して電線挿入部を相対的に移動可能」との構成の一例)。
【0030】
挿入部本体21は、
図3~20に示すように、一例として、ステンレス鋼(「導電性を有する材料」の一例)によって電極2を保持した状態の電極保持部3を挿通可能な筒状(本例では円筒状)に形成されている。この挿入部本体21は、先端部4aの側の部位(「先端部側部位」の一例)における「周壁」を構成する部材であって、その一部が切り欠かれて切欠き21a(「切欠き」の一例)が設けられ、この切欠き21aに被覆電線Xa等を挿入することができるように構成されている。
【0031】
また、
図5,6に示すように、挿入部本体21は、電線挿入部4の先端部4a(両図における破線B1の位置)から、切欠き21aにおける先端部4a側の口縁部(両図における破線B2の位置)までの「筒長方向(両図における左右方向)」に沿った「第1の範囲(矢印Caの範囲)」内において、切欠き21aに対する被覆電線Xaの「挿通方向(
図6における上下方向)」に沿った「最大の幅(本例では、
図6における幅Wa)」が「筒長方向」および「挿通方向」の双方と直交する方向(
図5における上下方向:以下、この方向を「第1の方向」ともいう)に沿った「最大の高さ(本例では、
図5における高さHa)」よりも小さくなるように先端部4a側の部位が形成されている。
【0032】
さらに、挿入部本体21は、切欠き21aにおける上記の先端部4a側の口縁部(破線B2の位置)から、切欠き21aにおける電線挿入部4の後端部4b側の口縁部(両図における破線B3の位置)までの「筒長方向」に沿った「第2の範囲(矢印Cbの範囲)」内に、上記の「挿通方向」に沿った挿入部本体21の幅が後端部4b側ほど大きくなる部位が設けられている。
【0033】
この場合、本例の挿入部本体21では、「第2の範囲(矢印Cbの範囲)」内における切欠き21aの先端部4a側における口縁部(破線B2の位置)よりもやや後端部4b寄りの位置(両図における破線B2aの位置)から「挿通方向」に沿った挿入部本体21の幅が後端部4b側ほど徐々に大きくなるように形成されている。また、挿入部本体21における切欠き21aよりも後端部4b側の部位が円筒状に形成され、かつ
図3~5に示すように、側面視において切欠き21aにおける後端部4b側の縁部が切欠き21aの開放端(
図5における上端)側ほど後端部4b寄りに位置するように傾斜させられている本例の挿入部本体21では、
図6に示すように、「第2の範囲(矢印Cbの範囲)」内における切欠き21aの後端部4b側の口縁部(破線B3の位置)よりも先端部4a寄りの位置(両図における破線B3aの位置)において、「挿通方向」に沿った挿入部本体21の幅が切欠き21aの後端部4b側の口縁部(破線B3の位置)における挿入部本体21の幅Wbと等しくなっている。つまり、本例の電線挿入部4(挿入部本体21)では、上記の破線B2aの位置から破線B3aの位置までの「筒長方向」に沿った範囲が「挿通方向に沿った幅が徐々に大きくなる部位」に相当する。
【0034】
また、挿入部本体21は、切欠き21aにおける上記の後端部4b側の口縁部(矢印B3の位置)よりも後端部4b側の「第3の範囲(矢印Ccの範囲)」内において、「挿通方向」に沿った「最小の幅(本例では、
図6に示す幅Wb)」、および「第1の方向」に沿った「最小の高さ(本例では、
図5に示す高さHb)」の双方が「第1の範囲」における前述の「最大の幅(
図6に示す幅Wa)」よりも大きくなるように先端部4a側の部位が形成されている。さらに、挿入部本体21は、「第1の範囲」における上記の「最大の幅(
図6に示す幅Wa)」が、電極2において被覆電線Xa等に接近させられる「電極面(先端部2a側の端面)」における「挿通方向」に沿った幅(電極2が円柱状の本例では、
図6に示す直径R2)以上となるように先端部4a側の部位が形成されている。この場合、本例の電圧センサ1では、電線挿入部4における先端部4a側の部位の「挿通方向」における中心と、電極保持部3によって保持された状態で電線挿入部4に挿入された電極2の「挿通方向」における中心とが電極保持部3や電線挿入部4の筒長方向において一致するように構成されている。
【0035】
また、挿入部本体21は、上記の「第1の範囲」において「挿通方向」に沿った幅が最大の幅Waの部位から先端部4aに向かうほど小さくなり、かつ平面視(または底面視)において先端部4aが幅方向の中心に位置するように先端部4a側の部位が形成されている。また、挿入部本体21は、先端部4a側の部位の平面視(または、底面視)における両側面が「筒長方向」と交差するテーパ面で構成されている。この場合、本例の挿入部本体21では、先端部4aから「第1の範囲」における上記の「最大の幅(
図6に示す幅Wa)」の部位までの「筒長方向」に沿った長さ(
図6に示す長さL1)が、「第1の範囲」における「最大の幅」の1/2(
図6に示す長さL2)よりも大きくなっている。
【0036】
また、先端部4a側の部位の両側面が平面視(または底面視)において直線状のテーパ面で構成され、かつ平面視(または底面視)において先端部4aが幅方向の中心に位置するように形成されている本例の挿入部本体21では、平面視(または底面視)において先端部4aが鋭角に尖った状態となっている。また、本例の挿入部本体21では、被覆電線Xaや近接配置物、および作業者の手などを傷付ける事態を回避すべく、
図3,6に示すように、先端部4aが丸みを帯びた形状となるように形成されている。
【0037】
さらに、
図5に示すように、挿入部本体21は、「第1の範囲」において上記の「第1の方向」に沿った高さが、最大の高さHaの部位から先端部4aに向かうほど小さくなるように先端部4a側の部位が形成されている。この場合、本例の挿入部本体21では、側面視において先端部4a側の部位における先端側が半円形状となるように形成されている。
【0038】
また、操作用ノブ22は、電極保持部3(把持部11a)に対して電線挿入部4を移動(スライド)させる際に使用者によって操作される部位であって、一例として、絶縁性樹脂材料によって電極保持部を挿通可能な筒状(本例では円筒状)に形成されて挿入部本体21と一体化されている。
【0039】
また、この電圧センサ1では、一例として、電線挿入部4内に電極保持部3と共にコイルスプリング(図示せず)が収容されており、
図7に示すように、コイルスプリングの弾性復元力(伸長方向への付勢力)によって、電極保持部3(電極2)に対して電線挿入部4が矢印D1の向き(電圧センサ1の先端部から後端部に向かう向き)に付勢されている。これにより、本例の電圧センサ1では、非使用状態において電線挿入部4(挿入部本体21)における切欠き21aの先端部4a側に電極2の先端部2aが位置させられて、電極2を保持している電極保持部3が切欠き21aから視認される状態となっている。
【0040】
また、この電圧センサ1は、被覆電線Xaに対する装着時や、被覆電線Xaからの取り外し時に、電極保持部3および電線挿入部4の筒長方向に沿って電極保持部3に対して電線挿入部4を矢印D2の向きに移動(スライド)させることで、電線挿入部4の切欠き21aに対する被覆電線Xa等の挿入や、切欠き21aに挿入された被覆電線Xa等の切欠き21aからの離脱が可能となるように構成されている。
【0041】
次に、電圧センサ1を使用した電圧の検出方法について添付図面を参照して説明する。
【0042】
前述したように、この種の「センサ」は、互いに近接配置された複数の電線のうちの1つを検出対象としたり、基板やケーシングなどの近傍に配設された電線を検出対象としたりして使用されることがある。一例として、
図8に実線で示す被覆電線Xaのように、隣接する実線の被覆電線Xb(近接配置物)との間の隙間が非常に狭い状態の「検出対象電線」についての「被検出量」を検出する例について説明する。
【0043】
この場合、
図7に示すように、本例の電圧センサ1では、電線挿入部4内に配設された図示しないコイルスプリングによって電極保持部3に対して電線挿入部4が矢印D1の向きに付勢されており、電極2を保持している電極保持部3が切欠き21aから視認される状態、すなわち、切欠き21aに対する被覆電線Xa等の挿入ができない状態となっている。したがって、被覆電線Xaに対する電圧センサ1の装着(電圧センサ1による被覆電線Xaの保持)に際しては、最初に、コイルスプリングの付勢力に抗して電極保持部3(把持部11a)に対して電線挿入部4(操作用ノブ22)を矢印D2の向きにスライドさせ、
図8に示すように、電極保持部3によって保持されている電極2の先端部2aを切欠き21aにおける後端部4b側(同図における右側)に位置させる。これにより、切欠き21aに対する被覆電線Xa等の挿入が可能な状態となる。
【0044】
次いで、上記のように電極保持部3に対して電線挿入部4をスライドさせた状態を維持しながら、電線挿入部4(挿入部本体21)の先端部4aを被覆電線Xa,Xbの間の隙間に挿入する。具体的には、電線挿入部4における先端部4a側の部位の幅Waの方向を両被覆電線Xa,Xbの離間方向に合わせるようにして(高さHaの方向を両被覆電線Xa,Xbの延在方向に合わせるようにして)両被覆電線Xa,Xbの間の隙間に先端部4aを差し込む。
【0045】
この場合、本例の電圧センサ1では、前述したように、電線挿入部4(挿入部本体21)における先端部4a側の部位(「第1の範囲」内)の高さが、最大の高さHaの部位から先端部4aに向かうほど小さくなるように先端部4a側の部位が形成されている。つまり、本例の電圧センサ1では、電線挿入部4の先端部4a側の部位における高さ方向の一部(最先端部)が突出した状態となっている。このため、例えば、「電線挿入部」における「第1の範囲」内の高さを一定とした構成、すなわち、側面視において「電線挿入部」の先端部が「電線挿入部」の径方向に沿って直線状となるような構成を採用した場合とは異なり、両被覆電線Xa,Xbの延在方向に対して電線挿入部4の高さHaの方向が僅かに傾いた状態で挿入しようとした場合であっても、電線挿入部4の先端部4a側の部位における高さHa方向の両端(上端および下端)が両被覆電線Xa,Xbに当接するのに先立って先端部4a(高さが最小となっている部位)が両被覆電線Xa,Xb間に挿入される。これにより、両被覆電線Xa,Xbの間に電線挿入部4をスムースに挿入することが可能となっている。
【0046】
また、本例の電圧センサ1では、前述したように、電線挿入部4(挿入部本体21)における先端部4a側の部位(「第1の範囲」内)の幅が最大の幅Waの部位から先端部4aに向かうほど小さくなるように電線挿入部4が形成されている。また、本例の電圧センサ1では、先端部4aから「第1の範囲」における最大の幅Waの部位までの「筒長方向」に沿った長さが、「第1の範囲」における最大の幅Waの1/2よりも大きくなるように先端部4a側の部位が形成されており、先端部4a側の部位が鋭角に尖った状態となっている。したがって、
図8に実線で示すように両被覆電線Xa,Xbが極く近距離に近接配置されている場合であっても、両被覆電線Xa,Xbを作業者が手で押し避けて隙間を拡大する作業を行うことなく、非常に小さな隙間に先端部4aを容易に差し込むことが可能となっている。また、本例の電圧センサ1では、先端部4aが丸みを帯びた形状となっているため、先端部4aが両被覆電線Xa,Xbのいずれかに接したとしても、両被覆電線Xa,Xbに傷付きが生じる事態を好適に回避することが可能となっている。
【0047】
さらに、上記のように先端部4a側の部位の幅が幅Waの部位から先端部4aに向かうほど小さくなるように形成されている電線挿入部4では、先端部4a側の部位の幅が後端部4bに向かうほど大きくなっている。したがって、実線で示す両被覆電線Xa,Xbの間に先端部4aを差し込んだ状態から両被覆電線Xa,Xbに対して電圧センサ1を矢印D2の向きに移動させたときに、両被覆電線Xa,Xbが電線挿入部4における先端部4a側の部位によって互いに離間させられるように離間方向に案内され、同図に一点鎖線で示すように、両被覆電線Xa,Xbが先端部4a側の部位における最大の幅Waの位置に達するまで電圧センサ1(電線挿入部4)をスムーズに差し込むことが可能となっている。
【0048】
なお、実際には、両被覆電線Xa,Xbに対して電圧センサ1を移動させているが、同図および後に参照する
図9,10では、電圧センサ1(電線挿入部4)と両被覆電線Xa,Xbとの位置関係に関する理解を容易とするために、固定的に図示した電圧センサ1に対して、装着作業時の各時点における両被覆電線Xa,Xbの相対的な位置をそれぞれ図示している。
【0049】
また、本例の電圧センサ1では、前述のように電線挿入部4(挿入部本体21)における先端部4a側の部位(「第1の範囲」内)における最大の幅Waが最大の高さHaよりも小さくなっており、先端部4a側の部位の幅が十分に小さくなっている。したがって、先端部4a側の部位の高さHaの方向を被覆電線Xa,Xbの離間方向に合わせるようにして(幅Waの方向を被覆電線Xa,Xbの延在方向に合わせるようにして)両被覆電線Xa,Xbの間の隙間に先端部4aを差し込んだときよりも、本例のように先端部4a側の部位の幅Waの方向を両被覆電線Xa,Xbの離間方向に合わせるようにして(高さHaの方向を両被覆電線Xa,Xbの延在方向に合わせるようにして)差し込んだときの方が、先端部4a側の部位を差し込んだ状態における両被覆電線Xa,Xbの離間距離が小さくなる。これにより、電線挿入部4の差込み時に両両被覆電線Xa,Xbに大きなストレスが加わる事態が好適に回避される。
【0050】
この場合、
図8に実線で示す両被覆電線Xa,Xb間に電圧センサ1(電線挿入部4)を差し込む本例とは相違するが、検出対象の被覆電線Xa、および近接配置された被覆電線Xbが同図に示す破線の位置に存在していたとき(一例として、電圧センサ1を差し込んだことで互いに離間させられた一点鎖線で示す両被覆電線Xa,Xbと同じ離間距離に存在していたとき)に、先端部4a側の部位における最大の幅Waが十分に小さい本例の電圧センサ1であれば、両被覆電線Xa,Xbを大きく変形させずに電線挿入部4を差し込むことができる。しかしながら、例えば、「電線挿入部における先端側部位の最大の幅」が「電線挿入部における先端側部位の最大の高さ(電圧センサ1における高さHa)」と同程度の「センサ」(図示せず)を使用したときには、実線で示す両被覆電線Xa,Xbの間に「先端側部位」を差し込むために両被覆電線Xa,Xbを大きく変形させる必要がある。このため、本例の電圧センサ1のように先端部4a側の部位(「第1の範囲」内)の幅が最大の幅Waの部位から先端部4aに向かうほど小さくなっていなくても、その「最大の幅」を「最大の高さ」よりも十分に小さくすることで、近接配置されている両被覆電線Xa,Xbの間に「先端部側部位」を容易に差し込むことができるのが判る。
【0051】
一方、電線挿入部4における先端部4a側の部位の差し込みよって、電圧センサ1に対する相対的な位置が
図8に一点鎖線で示す位置となるように両被覆電線Xa,Xbが案内された状態から被覆電線Xaを切欠き21a内に挿入するには、両被覆電線Xa,Xbに対して電圧センサ1を矢印D2の向きにさらに移動させる。この際には、電線挿入部4における「第1の範囲」内に上記の最大の幅Waを超える大きな幅の部位が存在しないため、電圧センサ1に対する相対的な位置が同図に一点鎖線で示す位置から、同図および
図9に二点鎖線で示す位置(両被覆電線Xa,Xbが切欠き21aにおける先端部4a側の口縁部に達した位置)となるまで両被覆電線Xa,Xbに対して電圧センサ1(電線挿入部4)をスムースに移動させることができる。
【0052】
次いで、切欠き21aの開放端(
図9における上端)を被覆電線Xaに接近させるように、電極保持部3および電線挿入部4の筒径方向における中心を回動中心として電圧センサ1(電線挿入部4)を把持部11a側から見て右周りに回動させる。この際には、
図9に二点鎖線で示すように切欠き21aにおける先端部4a側の口縁部に位置していた被覆電線Xaが、一点鎖線で示すように切欠き21a内に進入した後に、二点鎖線で示す被覆電線Xbに接近するようにして破線で示す位置まで自らの復元力によって移動する。
【0053】
続いて、操作用ノブ22に加えている力(電極保持部3に対して電線挿入部4を矢印D2の向きに移動させようとする操作力)を弱める。この際には、図示しないコイルスプリングの付勢力(復元力)によって電極保持部3に対して電線挿入部4が
図9に示す矢印D1の向きにスライドさせられる。また、電極保持部3に対する電線挿入部4のスライドに伴い、電極保持部3によって保持されている電極2が電線挿入部4に対して矢印D2の向きに相対的に移動させられる。この結果、同図および
図10に破線で示す位置に位置していた被覆電線Xaが、電極2に接した後に電極2と共に電線挿入部4に対して矢印D2の向きに切欠き21a内を移動させられて、同図に実線で示すように、電線挿入部4と電極2とで挟持される。これにより、電極2の先端部2aが被覆電線Xaに対して押し付けられた状態となり、被覆電線Xaの導線に対して電極2が容量結合した状態となる。以上により、被覆電線Xaに対する電圧センサ1の装着が完了する。
【0054】
なお、上記の装着作業の例では、両被覆電線Xa,Xbの間への電線挿入部4の差し込みによって両被覆電線Xa,Xbが切欠き21aにおける先端部4a側の口縁部に達した時点で両被覆電線Xa,Xbに対して電圧センサ1(電線挿入部4)を回動させて切欠き21a内に被覆電線Xaを挿入している。このような作業方法に代えて、両被覆電線Xa,Xbが切欠き21aにおける先端部4a側の口縁部よりも後端部4b寄りの位置に達するまで電線挿入部4における先端部4a側の部位を両被覆電線Xa,Xb間に差し込んでから電圧センサ1(電線挿入部4)を回動させて切欠き21a内に被覆電線Xaを挿入することもできる。
【0055】
具体的には、電線挿入部4の差し込みによって
図8に示す三点鎖線の位置に位置した状態(「第2の範囲」内に両被覆電線Xa,Xbが位置した状態)となるまで先端部4a側の部位を両被覆電線Xa,Xb間に差し込む。次いで、切欠き21aの開放端(
図9における上端)を被覆電線Xaに接近させるように、電極保持部3および電線挿入部4の筒径方向における中心を回動中心として電圧センサ1(電線挿入部4)を把持部11a側から見て右周りに回動させる。この際には、
図8に三点鎖線で示すように切欠き21aの側方(「第2の範囲」内)に位置していた被覆電線Xaが、切欠き21aにおける先端部4a側の口縁部に接することなく切欠き21a内にスムースに進入させられる。
【0056】
この場合、本例の電圧センサ1では、前述したように、「第2の範囲(
図5,6に示す矢印Cbの範囲)」内において、電線挿入部4(挿入部本体21)の「挿通方向(
図6における上下方向)」に沿った幅が後端部4b側ほど徐々に大きくなる部位が先端部4a側の部位に設けられている。このため、電線挿入部4を差し込むことで両被覆電線Xa,Xbの電圧センサ1(電線挿入部4)に対する相対的な位置を
図8に二点鎖線で示す位置から後端部4b寄りに変化させるときには、両被覆電線Xa,Xbをさらに離間させる必要があるものの、両被覆電線Xa,Xbに対して電圧センサ1を矢印D2の向きに移動させたとき(両被覆電線Xa,Xbを電圧センサ1に対して矢印D1の向きに相対的に移動させたとき)には、電線挿入部4の案内に従って両被覆電線Xa,Xbが徐々に離間させられて三点鎖線で示す位置に到達することとなる。したがって、電線挿入部4の差し込み以前に極く近距離に近接配置されていた両被覆電線Xa,Xbが電線挿入部4における上記の「第2の範囲」の側方に位置する状態まで両被覆電線Xa,Xbに対して電線挿入部4をスムースに移動させることが可能となっている。
【0057】
この後、前述した装着作業の例のときと同様にして、電極2と電線挿入部4とで被覆電線Xaを挟持させる(電極2の先端部2aを被覆電線Xaに押付けさせる)ことにより、被覆電線Xaの導線に対して電極2が容量結合した状態となり、被覆電線Xaに対する電圧センサ1の装着が完了する。
【0058】
一方、いずれかの装着作業の例のように被覆電線Xaに対する電圧センサ1の装着が完了したときには、信号ケーブル5を介して接続されている測定装置の図示しない操作部を操作することによって測定処理を開始させる。なお、この種のセンサを使用した電圧の測定方法については公知のため、詳細な説明を省略する。これにより、検出対象としての被覆電線Xaについての電圧の検出が完了する。また、電圧の検出が完了したときには、上記の装着作業時の作業手順とは逆の手順で被覆電線Xaから電圧センサ1を取り外す。さらに、被覆電線Xa以外の「検出対象電線」についての電圧を新たに検出する際には、被覆電線Xaを検出対象とする上記の一連の作業と同様の手順で装着作業等を実行する。これにより、被覆電線Xa以外の各種の「検出対象電線」についても被覆電線Xaと同様に電圧を検出することができる。
【0059】
この場合、本例の電圧センサ1では、前述したように、「第3の範囲(
図5,6に示す矢印Ccの範囲)」内において「挿通方向」に沿った最小の幅Wb、および「第1の方向」に沿った最小の高さHbの双方が「第1の範囲」における前述の最大の幅Waよりも大きくなるように先端部4a側の部位が形成されている。したがって、電線挿入部4における先端部4a側の部位(切欠き21aが形成されている部位:「第1の範囲」や「第2の範囲」内)と同様に「第3の範囲」を幅狭に形成した構成と比較して、電線挿入部4の物理的強度が十分に高く、かつ電線挿入部4による電極2のシールド効果も十分に高くなっている。また、電線挿入部4において幅および高さが十分に大きな部位(「第3の範囲」内)に電極保持部3(電極2)を挿入する構成としたことで、電極2の直径R2が十分に大きくなっており、電圧の検出感度が十分に高くなっている。
【0060】
また、本例の電圧センサ1では、電線挿入部4の「第1の範囲」における最大の幅Waが、電極2において被覆電線Xa等に接近させられる「電極面(先端部2a側の端面)」における「挿通方向」に沿った幅(本例では、
図6に示す直径R2)以上となるように先端部4a側の部位が形成されると共に、電線挿入部4における先端部4a側の部位の「挿通方向」における中心と、電極保持部3によって保持された状態で電線挿入部4に挿入された電極2の「挿通方向」における中心とが電極保持部3や電線挿入部4の筒長方向において一致するように構成されている。したがって、電線挿入部4における先端部4aの近傍によるシールド効果が十分に高くなっているため、
図8~10における左方(電圧センサ1の電線挿入部4における先端部4aの前方)にノイズ源が存在したとしても、ノイズが電極2によって検出される事態が好適に回避される。
【0061】
このように、この電圧センサ1では、先端部4aから切欠き21aにおける先端部4a側の口縁部までの「筒長方向」に沿った「第1の範囲(本例では、
図5,6における矢印Caの範囲)」内において切欠き21aに対する被覆電線Xaの「挿通方向」に沿った最大の幅(本例では、
図6に示す幅Wa)が「筒長方向」および「挿通方向」の双方と直交する「第1の方向」に沿った最大の高さ(本例では、
図5に示す高さHa)よりも小さくなり、かつ切欠き21aにおける先端部4a側の口縁部から切欠き21aにおける後端部4b側の口縁部までの「筒長方向」に沿った「第2の範囲(本例では、
図5,6における矢印Cbに範囲)」内に「挿通方向」に沿った幅が徐々に大きくなる部位が設けられると共に、切欠き21aにおける後端部4b側の口縁部よりも後端部4b側の「第3の範囲(本例では、
図5,6における矢印Ccの範囲)」内において「挿通方向」に沿った最小の幅(本例では、
図6に示す幅Wb)、および「第1の方向」に沿った「最小の高さ(本例では、
図5に示す高さHb)」の双方が「第1の範囲」における「最大の幅(幅Wa)」よりも大きくなるように電線挿入部4の先端部4a側の部位が形成されている。
【0062】
したがって、この電圧センサ1によれば、近接配置物(例えば、被覆電線Xb)との間の隙間が極く小さい状態の被覆電線Xaに電圧センサ1を装着するときであっても、近接配置物と被覆電線Xaとの離間方向を先端部4a側の部位における幅方向に合わせるようにして電線挿入部4を隙間に挿入することで、被覆電線Xa等に大きなストレスを加えることなく、スムースに(つまり容易に)挿入することができる。また、被覆電線Xa等が切欠き21aの側方に位置するまで被覆電線Xaと近接配置物との間に電線挿入部4を挿入するときにも、「第2の範囲」内に「挿通方向」に沿った幅が徐々に大きくなる部位が設けられているため、被覆電線Xaを近接配置物から徐々に離間させるように先端部4a側の部位を差し込むことができる結果、被覆電線Xa等に大きなストレスを加えることなく、スムース(つまり容易に)に挿入することができる。さらに、「第3の範囲」における電線挿入部4の幅および高さが十分に大きいため、電線挿入部4の物理的強度が十分に高く、電線挿入部4内の電極2に対するノイズの混入を好適に阻止することができ(つまりシールド性能の低下を招くことなく)、しかも、十分な太さの電極2を電極保持部3と共に電線挿入部4内に配設することで「被検出量(本例では電圧)」の検出感度を十分に高くすることができる。
【0063】
また、この電圧センサ1によれば、「第1の範囲」において「挿通方向」に沿った幅が最大の幅Waの部位から先端部4aに向かうほど小さくなるように電線挿入部4における先端部4a側の部位を形成したことにより、近接配置物と被覆電線Xaとの間の隙間が上記の「第1の範囲」における最大の幅Waよりも小さいときであっても、近接配置物と被覆電線Xaとの間の隙間に先端部4aを容易に差し込むことができる。
【0064】
さらに、この電圧センサ1によれば、先端部4aから「第1の範囲」における「最大の幅(幅Wa)」の部位までの「筒長方向」に沿った長さ(本例では、
図6に示す長さL1)が「第1の範囲」における「最大の幅(幅Wa)」の1/2(
図6に示す長さL2)よりも大きくなるように電線挿入部4の先端部4a側の部位を形成したことにより、近接配置物と被覆電線Xaとの間の隙間に先端部4aを一層容易に差し込むことができる。
【0065】
また、この電圧センサ1によれば、「第1の範囲」において「第1の方向」に沿った高さが最大の高さHaの部位から先端部4aに向かうほど小さくなるように電線挿入部4の先端部4a側の部位を形成したことにより、近接配置物と被覆電線Xaとの間の隙間に先端部4aを一層容易に差し込むことができる。
【0066】
また、この電圧センサ1によれば、「第1の範囲」における最大の幅(幅Wa)が電極2において被覆電線Xa等に接近させられる電極面(先端部2a側の端面)における「挿通方向」に沿った幅以上となるように電線挿入部4の先端部4a側の部位を形成したことにより、電極2の延在方向(電極面と直交する方向)からのノイズの混入を電線挿入部4における先端部4a側の部位によって好適に阻止することができる。
【0067】
なお、「センサ」の構成は、上記の電圧センサ1の構成の例に限定されない。例えば、電極保持部3(把持部11a)に対して電線挿入部4(操作用ノブ22)をスライドさせることで切欠き21aに対する被覆電線Xaの挿入および切欠き21aからの被覆電線Xaの離脱を許容する構成を例に挙げて説明したが、「電線挿入部」に対して「電極保持部」をスライドさせたり、「電極保持部」および「電線挿入部」の双方をスライドさせたりして被覆電線Xaの挿入や離脱を許容する構成を採用することもできる。また、円柱状の電極2を円筒状の電極保持部3によって保持させると共に、円筒状の電極保持部3を円筒状の電線挿入部4に挿入した構成の電圧センサ1を例に挙げて説明したが、「電極」を角柱状に形成したり、「電極保持部」や「電線挿入部」を角筒状に形成したりすることもできる。
【0068】
加えて、被覆電線Xaの電圧を「被検出量」として検出する際に使用可能な電圧センサ1の構成を例に挙げて説明したが、電圧以外の任意の電気的パラメータを「被検出量」として検出可能な「センサ」において電圧センサ1等と同様の構成を採用することもできる(図示せず)。また、被覆電線Xaの導線と容量結合した状態の電極2を介して「被検出量」を検出する構成の電圧センサ1を例に挙げて説明したが、導線と電磁誘導結合した状態の「電極」を介して「被検出量」を検出する構成や、導線と電界結合した状態の「電極」を介して「被検出量」を検出する構成のセンサにおいて本願発明の構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 電圧センサ
2 電極
2a 先端部
3 電極保持部
4 電線挿入部
4a 先端部
4b 後端部
5 信号ケーブル
11 保持部本体
11a 把持部a
12 絶縁体
21 挿入部本体
21a 切欠き
22 操作用ノブ
Ha,Hb 高さ
L1,L2 長さ
R2 直径
Wa,Wb 幅
Xa,Xb 被覆電線