(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/77 20110101AFI20240415BHJP
【FI】
H01R12/77
(21)【出願番号】P 2020207489
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】小幡 雄介
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-143785(JP,A)
【文献】特表2001-507857(JP,A)
【文献】特開2019-102220(JP,A)
【文献】独国実用新案第202012005124(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0324178(US,A1)
【文献】実開平05-045967(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットケーブルの端末に取り付けられて相手方コネクタと接続されるコネクタであって、
板状部と、前記板状部に続く端子収容部とを有し、前記端子収容部に後端が前記板状部側に開口する複数の収容穴が貫通形成されているハウジングと、
前記複数の収容穴にそれぞれ収容保持された複数のソケット端子とを備え、
前記ソケット端子は前記相手方コネクタのピン端子が挿入されるボックス部と、前記ボックス部から延長形成されて前記板状部上に突出する片持ち梁状のばね片とを有し、
前記フラットケーブルの端末は前記板状部と前記複数のソケット端子の前記ばね片とに挟み込まれて前記フラットケーブルの端末に形成されているランドに前記ばね片がそれぞれ接触し、
前記ばね片が延長形成されている前記ボックス部の後端と前記ばね片の自由端との間に位置して前記ばね片の前記ランドとの接触時に前記ばね片の固定端として機能し、前記ばね片が前記フラットケーブルから受ける反力を受け止める突起が前記端子収容部の前記収容穴の内面に突出形成されている、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記ハウジングにおける前記板状部の上方は開放されており、
前記ランド及び前記ばね片を覆うカバーが前記ハウジングに取り付けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタにおいて、
前記板状部には挿入穴が形成されており、
前記フラットケーブルに形成されている穴を通って前記挿入穴に挿入される突部が前記カバーに形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載のコネクタにおいて、
前記ばね片が延長形成されている前記ボックス部の後端と、前記ランドに接触する前記ばね片の接触部との間にブリッジ切断部が位置し、
前記接触部の全体にめっきが施されていることを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフラットケーブルの端末に取り付けられて相手方コネクタと接続されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図10及び11はこの種のコネクタの従来例として特許文献1に記載されているプラグコネクタ10を示したものであり、
図10はプラグコネクタ10がFPC(フレキシブルフラットケーブル)20に取り付けられる様子を示し、
図11はFPC20に取り付けられたプラグコネクタ10を、プラグコネクタ10と嵌合するレセプタクルコネクタ30と共に示している。
【0003】
プラグコネクタ10は直方体状のプラグハウジング11と、プラグハウジング11の内部に収納された複数のプラグ端子12とを備えている。複数のプラグ端子12はプラグハウジング11において横方向(水平方向)に一列に配列されている。
【0004】
FPC20はプラグコネクタ10との連結領域21に導体層22が露出されてなるFPC端子23を備えており、プラグコネクタ10の複数のプラグ端子12とFPC20の複数のFPC端子23はプラグハウジング11から露出されているプラグ端子12の結合部12aがFPC端子23上にそれぞれ位置して互いにはんだ付けされることにより接続されるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、FPC20に取り付けられる従来のプラグコネクタ10においては、プラグコネクタ10の複数のプラグ端子12とFPC20の複数のFPC端子23とはそれぞれはんだ付けにより接続されるものとなっており、すべてのプラグ端子12の結合部12aとFPC端子23とを良好に半田付けするためには各プラグ端子12の結合部12aのコプラナリティが大きな要因となり、その点でこのようなはんだ付けによる接続は作業性が良いとは言えないものとなっていた。
【0007】
この発明の目的はこの問題に鑑み、フラットケーブルの端末に取り付けられるコネクタにおいて、フラットケーブルとの接続を簡易に行えるようにしたコネクタを提供することにある。なお、ここでフラットケーブルとはFPC(フレキシブルプリント基板)のケーブルやFFC(フレキシブルフラットケーブル)等の変形可能なシート状のケーブルを指し、これらを総称して言うものとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によれば、フラットケーブルの端末に取り付けられて相手方コネクタと接続されるコネクタは、板状部と、板状部に続く端子収容部とを有し、端子収容部に後端が板状部側に開口する複数の収容穴が貫通形成されているハウジングと、複数の収容穴にそれぞれ収容保持された複数のソケット端子とを備え、ソケット端子は相手方コネクタのピン端子が挿入されるボックス部と、ボックス部から延長形成されて板状部上に突出する片持ち梁状のばね片とを有し、フラットケーブルの端末は板状部と複数のソケット端子のばね片とに挟み込まれてフラットケーブルの端末に形成されているランドにばね片がそれぞれ接触し、ばね片がフラットケーブルから受ける反力は端子収容部が受け止める構造とされる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によるコネクタによれば、フラットケーブルをコネクタに差し込むことにより、フラットケーブルへのコネクタの取付け及びコネクタのソケット端子とフラットケーブルのランドとの電気的接続を行えるものとなっており、よって極めて簡易にフラットケーブルとの接続作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】Aはこの発明によるコネクタの一実施例を示す前方から見た斜視図、BはAに示したコネクタを後方から見た斜視図。
【
図2】Aは
図1Aに示したコネクタの正面図、Bはその側面図、CはAのD-D線断面図。
【
図3】Aは
図2AのE-E線拡大断面図、BはAからカバーを取り除いた拡大断面図。
【
図5】Aは
図1Aに示したコネクタの組立てを説明するための図(その1)、Bは
図1Aに示したコネクタの組立てを説明するための図(その2)。
【
図6】Aは
図1Aに示したコネクタの組立てを説明するための図(その3)、Bは組立て完了状態を示す図。
【
図7】Aはハウジングにソケット端子が収容保持された状態を示す正面図、BはAのC-C線断面図。
【
図8】
図1Aに示したコネクタが相手方コネクタに接続される様子を示す斜視図。
【
図9】
図1Aに示したコネクタと相手方コネクタの接続状態を示す斜視図。
【
図10】従来のコネクタ(プラグコネクタ)がFPCに取り付けられる様子を示す斜視図。
【
図11】従来のコネクタ(プラグコネクタ)がレセプタクルコネクタに嵌合される様子を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0012】
図1,2及び
図3AはFPC(FPCのケーブル)の端末に取り付けられたこの発明によるコネクタの一実施例を示したものである。コネクタ100はハウジング40と複数のソケット端子50とカバー60とよりなる。FPC200はこの例ではコネクタ100に接続される端末に補強板210が取り付けられた構成となっている。
【0013】
図4はソケット端子50の詳細を示したものであり、
図5A,B及び
図6A,Bはコネクタ100の組立てと共に、FPC200の端末にコネクタ100が取り付けられる様子を順に示したものである。
【0014】
ソケット端子50は
図4に示したように相手方コネクタのピン端子が挿入される角筒状の外形をなすボックス部51を有し、ボックス部51の後端51aからは片持ち梁状をなすばね片52が後方に延長形成されている。
【0015】
ボックス部51の内部には
図3Aに示したように一対の内部ばね片53,54がボックス部51の前後方向に配列され、かつ自由端が互いに重なるように設けられており、これら内部ばね片53,54はボックス部51の一方の側壁51bの下端側から折り曲げ延長されて形成されている。
【0016】
ボックス部51の上板部51dには
図3Aに示したように内面側に突出する突部55が2つ形成されており、これら突部55と、内部ばね片54によってばね力が補強された内部ばね片53は、ボックス部51に挿入されてくる相手方コネクタのピン端子を挟み込んでピン端子と接触する接触部をなす。
【0017】
ボックス部51の一対の側壁51b,51cには内部ばね片53の位置(高さ位置)検査用の窓56が形成されており、側壁51b,51cと上板部51dがなす各角部には2つの突部55の高さ検査用の窓57がそれぞれ2つ形成されている。また、一対の側壁51b,51cには互いに外向きに切り起こされて突起58がそれぞれ形成されている。
【0018】
ばね片52はボックス部51の上板部51dから延長形成されており、上板部51dから下方に傾斜して延長された傾斜部52aと、傾斜部52aに続く水平部52bと、水平部52bに続く接触部52cとよりなる。接触部52cは先端(自由端)が上方に向く方向にくの字状に折り曲げられた形状を有する。
【0019】
上記のような形状を有するソケット端子50は金属板をプレス加工することによって形成される。
図4中、59a~59cはブリッジ切断部を示す。ばね片52の先端側の接触部52cにはこの例では金めっきが施されている。
【0020】
図4に示したようにブリッジ切断部59aはボックス部51の前端に位置し、ブリッジ切断部59b,59cはばね片52の水平部52bの幅方向両側に位置している。このようにブリッジをボックス部51に加え、ばね片52にも設けた理由はプレス工程及びめっき工程での形状、品質の安定化を図るためである。なお、ばね片52においては水平部52bにブリッジ切断部59b,59cを設けたことで、接触部52c全体に良好にめっきを施すことができる。
【0021】
ハウジング40は
図5Aに示したように板状部41と、板状部41に続く端子収容部42とよりなる。端子収容部42は扁平な直方体形状をなす。端子収容部42には複数の収容穴43が一列に配列されて後端が板状部41側に開口するように貫通形成されており、この例では13個の収容穴43が形成されている。
【0022】
これら収容穴43にはそれぞれソケット端子50が挿入される。ソケット端子50は
図5Aに示したように端子収容部42の前側(板状部41が位置する側とは反対側)から収容穴43に、ばね片52を先頭にして挿入される。
【0023】
図7はハウジング40の端子収容部42の収容穴43にソケット端子50が収容された状態を示したものであり、収容穴43の内面に突出形成されている突出部44に、ソケット端子50のボックス部51に設けられている一対の突起58が引っ掛かることによってソケット端子50は抜け止めされ、収容穴43に収容保持される。なお、ソケット端子50のばね片52はハウジング40の板状部41上に突出して位置される。
【0024】
このようにしてハウジング40にソケット端子50が取り付けられた状態でFPC200が取り付けられる。FPC200は
図5Bに示したように板状部41の後方から板状部41の上面41aに沿って挿入され、板状部41とソケット端子50のばね片52との間に差し込まれる。
【0025】
図3Bはハウジング40の板状部41と、板状部41上に位置するソケット端子50のばね片52との間にFPC200の端末が差し込まれてFPC200が取り付けられた状態を示しており、FPC200の端末は板状部41と13個のソケット端子50のばね片52とに挟み込まれて機械的に接続されると共に、FPC200の端末に配列形成されているランド201にそれぞればね片52が接触することによって13個のソケット端子50とFPC200のランド201とがそれぞれ電気的に接続される。ばね片52がFPC200から受ける反力はハウジング40の端子収容部42が受け止めている。
【0026】
このようにしてFPC200を取り付けた後、カバー60が取り付けられる。カバー60は
図6Aに示したようにハウジング40の上方からハウジング40に取り付けられる。この際、この例ではカバー60に設けられている2つの突部61がFPC200の端末に補強板210を通して形成されている2つの穴220を通ってハウジング40の板状部41に形成されている2つの挿入穴45にそれぞれ挿入され、これによりFPC200は抜け止めされる。
【0027】
ハウジング40に対するカバー60の固定はハウジング40の板状部41の幅方向両端にそれぞれ突出形成されている突出片46の先端に形成されている突起46a及び端子収容部42の幅方向両側面に形成されている突起47がカバー60の内側でカバー60に引っ掛かることによって行われる。
図6Bは
図1Bと同様、FPC200が取り付けられてコネクタ100の組立てが完了した状態を示している。
【0028】
上述したコネクタ100によれば、ソケット端子50はハウジング40の板状部41上に位置するばね片52を具備しており、このばね片52と板状部41との間にFPC200の端末を差し込むだけでFPC200とコネクタ100とを接続することができ、よって極めて簡易にコネクタ100をFPC200に取り付けることができる。
【0029】
なお、プレス加工によって形成されるソケット端子50は形状、品質の安定化のために、ばね片52にもブリッジが設けられ、前述したようにブリッジが設けられる部分、即ちブリッジ切断部59b,59cが位置する水平部52bをばね片52は有している。このような水平部52bが存在する分、ばね片52は長くなり、ばね力が弱くなることになるが、この例ではばね力を強める構造を備えている。以下、この点について説明する。
【0030】
図3に示したように、この例ではばね片52が延長形成されているボックス部51の後端51aとばね片52の先端(自由端)との間に位置してばね片52のランド201との接触時にばね片52の固定端として機能し、ばね片52がFPC200から受ける反力を受け止める突起48がハウジング40の端子収容部42の収容穴43の内面に突出形成されている。このような突起48を有することにより、ばね片52の実効長さは短くなるため、ばね力をその分、強くすることができる。なお、突起48はばね片52の水平部52bと接触して水平部52bの動きを規制し、水平部52bを実質的な固定端とする。
【0031】
以上、この発明の実施例について説明したが、FPC200はカバー60の突部61によって抜け止めされるため、例えばFPC200に引っ張り等の外力が加わってもばね片52とランド201との接触部はその影響を受けず、良好な接触状態が維持される。
【0032】
また、ばね片52とランド201との接続状態をより強固にするために、ばね片52とランド201との接触部には、ばね接続に加えてはんだ付けによる接続を使用条件に応じて行ってもよい。ばね片52の接触部52cには全体にめっきが施されているので、良好にはんだ付けすることができる。また、
図3Bに示したように、板状部41とばね片52との間にFPC200の端末が差し込まれた状態では、ばね片52の上方は開放されているので、はんだ付け作業およびはんだ付け状態の検査も容易に行うことができる。
【0033】
なお、ばね片52とランド201はカバー60によって覆われるため、ばね片52とランド201との接触部にゴミ等が入り込み、接触部が汚損されるといったことを回避することができる。
【0034】
図8は上述したコネクタ100が相手方コネクタ300と接続される様子を示したものであり、
図9はコネクタ100と相手方コネクタ300との接続が完了した状態を示したものである。カバー60には相手方コネクタ300に引っ掛かって接続を維持するロックアーム62が設けられている。
【符号の説明】
【0035】
10 プラグコネクタ 11 プラグハウジング
12 プラグ端子 12a 結合部
20 FPC 21 連結領域
22 導体層 23 FPC端子
30 レセプタクルコネクタ 40 ハウジング
41 板状部 41a 上面
42 端子収容部 43 収容穴
44 突出部 45 挿入穴
46 突出片 46a 突起
47 突起 48 突起
50 ソケット端子 51 ボックス部
51a 後端 51b,51c 側壁
51d 上板部 52 ばね片
52a 傾斜部 52b 水平部
52c 接触部 53,54 内部ばね片
55 突部 56,57 窓
58 突起 59a,59b,59c ブリッジ切断部
60 カバー 61 突部
62 ロックアーム 100 コネクタ
200 FPC 201 ランド
210 補強板 220 穴
300 相手方コネクタ