(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】農業機械
(51)【国際特許分類】
B60P 3/11 20060101AFI20240415BHJP
A01B 59/042 20060101ALI20240415BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20240415BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20240415BHJP
B64F 3/02 20060101ALI20240415BHJP
B64F 1/12 20060101ALI20240415BHJP
B62D 49/00 20060101ALI20240415BHJP
B64U 70/99 20230101ALI20240415BHJP
B64U 101/40 20230101ALN20240415BHJP
【FI】
B60P3/11
A01B59/042
B64C39/02
B64C27/08
B64F3/02
B64F1/12
B62D49/00 D
B64U70/99
B64U101:40
(21)【出願番号】P 2020219870
(22)【出願日】2020-12-29
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木下 知洋
(72)【発明者】
【氏名】森本 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】梅本 享
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207815(JP,A)
【文献】特開2017-165363(JP,A)
【文献】特許第6763592(JP,B1)
【文献】特開2020-138639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/11
A01B 59/042
B64C 39/02
B64C 27/08
B64F 3/02
B64F 1/12
B62D 49/00
B64U 70/99
B64U 101:40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、
前記走行車体に作業装置を連結可能な連結装置と、
無人飛行体の離着時にスキッドを規制可能な離着陸ステーションと、
運転席を保護する保護装置と、を備え、
前記離着陸ステーションは、前記保護装置に取り付けられ且つ、前記無人飛行体の離着時に水平方向に延びるアームを有し、
前記アームは前記無人飛行体が視認可能なマーカを有している農業機械。
【請求項2】
走行車体と、
前記走行車体に作業装置を連結可能な連結装置と、
複数の脚部を有する無人飛行体の離着時に、前記複数の脚部の移動を規制する離着陸ステーションと、
を備え、
前記無人飛行体は、電力を供給するケーブルを有し、
前記離着陸ステーションは、前記ケーブルを収容する収容部
と、前記無人飛行体の離着時に、前記複数の脚部と接触することで当該複数の脚部を案内して、当該脚部の移動を規制するアームと、を有し、
前記アームには、前記ケーブルを通す貫通穴が設けられてい
る農業機械。
【請求項3】
前記複数の脚部は、前記無人飛行体の本体部に固定され、且つ前記本体部から下方に向かって離間して延び、
前記アームは、水平方向に伸び、且つ前記無人飛行体の着陸時に、前記複数の脚部の間に位置する請求項2に記載の農業機械。
【請求項4】
運転席を保護する保護装置を備え、
前記アームは、前記保護装置に設けられている請求項2又は3に記載の農業機械。
【請求項5】
前記収容部には、前記ケーブルを巻き取る巻き取り機が設けられ、
前記ケーブルは、前記貫通穴を介して前記巻き取り機に延びている請求項
2~4のいず
れかに記載の農業機械。
【請求項6】
前記ケーブルは、前記複数の脚部の基端部の間から伸長し、
前記アームは、上部中央に、前記無人飛行体の着陸時に前記ケーブルを前記収容部に通す前記貫通穴が設けられている請求項
2~5のいずれかに記載の農業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トラクタ、コンバイン、田植機等の農業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業機械上にドローンを飛行させる技術として、特許文献1が知られている。特許文献1の作業車両の管理システムでは、圃場を走行する作業車両と、カメラを搭載し作業車両に対応して空中を飛行する無人航空機と、作業車両と無人航空機と通信する携帯端末装置とを備え、携帯端末装置は表示部に無人航空機から受信したカメラ映像に作業車両から受信した車両情報を同時に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、農業機械の上空をドローンなどの無人航空機を飛行させることが開示されているものの、農業機械の上空を飛行するためには、農業機械が作業する圃場とは異なる場所から無人航空機を離発着しなければならず、作業効率が低下していた。
本発明は、このような実情に鑑みて、農業機械に無人飛行体を離発着可能にすることによって作業効率を向上させることができる農業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
農業機械は、走行車体と、前記走行車体に作業装置を連結可能な連結装置と、無人飛行体の離着時にスキッドを規制可能な離着陸ステーションと、運転席を保護する保護装置と、を備え、前記離着陸ステーションは、前記保護装置に取り付けられ且つ、前記無人飛行体の離着時に水平方向に延びるアームを有し、前記アームは前記無人飛行体が視認可能なマーカを有している。
【0006】
農業機械は、走行車体と、前記走行車体に作業装置を連結可能な連結装置と、複数の脚部を有する無人飛行体の離着時に、前記複数の脚部の移動を規制する離着陸ステーションと、を備え、前記無人飛行体は、電力を供給するケーブルを有し、前記離着陸ステーションは、前記ケーブルを収容する収容部と、前記無人飛行体の離着時に、前記複数の脚部と接触することで当該複数の脚部を案内して、当該脚部の移動を規制するアームと、を有し、前記アームには、前記ケーブルを通す貫通穴が設けられている。
前記複数の脚部は、前記無人飛行体の本体部に固定され、且つ前記本体部から下方に向かって離間して延び、前記アームは、水平方向に伸び、且つ前記無人飛行体の着陸時に、前記複数の脚部の間に位置する。
農業機械は、運転席を保護する保護装置を備え、前記アームは、前記保護装置に設けられている。
【0007】
前記収容部には、前記ケーブルを巻き取る巻き取り機が設けられ、前記ケーブルは、前記貫通穴を介して前記巻き取り機に延びている。
前記ケーブルは、前記複数の脚部の基端部の間から伸長し、前記アームは、上部中央に、前記無人飛行体の着陸時に前記ケーブルを前記収容部に通す前記貫通穴が設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、農業機械に無人飛行体を離発着可能にすることによって作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】トラクタ及び無人飛行体の全体平面図である。
【
図5A】無人飛行体のスキッドと、着陸ステーションとを示す図である。
【
図5B】
図5Aとは異なるスキッドと、着陸ステーションとを示す図である。
【
図8A】第2無人飛行体を作業装置の上空に飛行させた状態を示す図である。
【
図8B】第2無人飛行体を作業装置の後方に飛行させた状態を示す図である。
【
図9A】第1ケーブル及び第2ケーブルが電源ケーブルである場合の制御ブロック図である。
【
図9B】第1ケーブル及び第2ケーブルが通信ケーブルである場合の制御ブロック図である。
【
図10】第1無人飛行体、第2無人飛行体の動作フローである。
【
図11A】第1無人飛行体及び第2無人飛行体の飛行を示す図である。
【
図11B】
図13Aとは異なる第1無人飛行体及び第2無人飛行体の飛行を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1、
図2は、農業機械の全体を示している。農業機械は、トラクタ、コンバイン、田植機等である。トラクタ1を例にとり、農業機械について説明する。
図1、
図2に示すように、トラクタ1は、車体(走行車体)3と、原動機4と、変速装置5とを備えている。車体3には、走行装置7が設けられている。走行装置7は、車体3を走行可能に支持しており、前輪7F及び後輪7Rを有している。前輪7F及び後輪7Rは、本実施形態の場合はタイヤ型であるが、クローラ型であってもよい。原動機4は、エンジン(ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン)、電動モータ等である。変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切り換え可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切り換えが可能である。車体3には運転席10が設けられている。運転席10は、保護装置9により保護されている。保護装置9は、運転席10を保護するキャビン、又は、少なくとも運転席10の上方を覆うことにより運転席10を保護するロプス等である。
【0011】
図1、2に示すように、保護装置9は、車体3に固定された複数の支柱9aと、複数の支柱9aによって支持され且つ運転席10の上方に配置されたルーフ9bとを含んでいる。保護装置9がキャビンである場合、複数の支柱9aの間にガラス、ドア等が設けられ、ガラス及びドア等によって運転席10を覆っている。保護装置9の下方には、フェンダ13が取り付けられており、フェンダ13は後輪7Rの上部を覆っている。
【0012】
図1に示すように、車体3は、車体フレーム20を有している。車体フレーム20は、左側に設けられた車体フレーム20Lと、右側に設けられた車体フレーム20Rとを含む。車体フレーム20L及び車体フレーム20Rは、それぞれは変速装置5側から前方に延設されていて、原動機4の下部を支持している。車体フレーム20Lと車体フレーム20Rとは車体幅方向に離間している。車体フレーム20Lの前端部と車体フレーム20Rの前端部とは、前連結板20Fにより連結されている。車体フレーム20Lの中途部と車体フレーム20Rの中途部とは、中途連結板20Mにより連結されている。車体フレーム20L及び車体フレーム20Rは、前車軸ケース29を支持している。前車軸ケース29内には、前輪7Fを回転自在に支持する前車軸が収容されている。つまり、本実施形態の場合、車体フレーム20は、前車軸を支持する前車軸フレームである。なお、車体フレーム20は、前車軸ケース29以外の構造体を支持するフレーム(前車軸フレーム以外のフレーム)であってもよい。
【0013】
図1、
図2に示すように、車体フレーム20の上方にはボンネット25が設けられている。ボンネット25は、車体フレーム20に沿って前後方向に延設されている。ボンネット25は、保護装置9の幅方向の中央部の前方に配置されている。ボンネット25は、左側に設けられた左側壁25Lと、右側に設けられた右側壁25Rと、左側壁25Lと右側壁25Rとの上部を連結する上壁部25Uとを有している。左側壁25L、右側壁25R及び上壁部25Uによってエンジンルームが形成され、エンジンルームに原動機4、冷却ファン、ラジエータ、バッテリ等が収容されている。左側壁25Lの左側方と右側壁25Rの右側方には、それぞれ前輪7Fが配置されている。
【0014】
ボンネット25の前側、即ち、車体フレーム20L、20Rの前側には、ウエイト26が設けられている。ウエイト26は、車体3の前部に設けられたウエイトブラケット(ウエイト取付部)27に取り付けられている。ウエイトブラケット27は、車体フレーム20Lの前連結板20Fにボルト等の締結具により取り付けられている。
車体3の後部には、連結装置8が設けられている。連結装置8は、車体3に作業装置(インプルメント等)2を着脱可能に連結する装置である。連結装置8は、作業装置2と車体3とを連結し且つ昇降を行わないスイングドローバ、3点リンク機構等で構成されて昇降を行う昇降装置等である。なお、作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0015】
図3は、昇降装置で構成した連結装置8を示している。
図3に示すように、連結装置(昇降装置)8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド8d、リフトシリンダ8eを有している。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、制御弁36を介して油圧ポンプと接続されている。制御弁36は、電磁弁等であって、リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0016】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトロッド8dは、リフトアーム8aとロアリンク8bとを連結している。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。
【0017】
図1、
図2に示すように、トラクタ1は、位置検出装置30を備えている。位置検出装置30は、保護装置9のルーフ9bの前方に装着体31を介して装着されている。但し、位置検出装置30の装着位置は、図示の位置には限定されず、保護装置9のルーフ9b上に装着してもよいし、車体3の別の場所に装着してもよい。また、位置検出装置30は、上述した耕耘装置等の作業装置2に装着されていてもよい。
【0018】
位置検出装置30は、衛星測位システムによって自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出する装置である。即ち、位置検出装置30は、測位衛星から送信された信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、受信した信号に基づいて位置(緯度、経度)を検出する。位置検出装置30は、測位衛星からの信号を受信可能な基地局(基準局)からの補正等の信号に基づいて補正した位置を、自己の位置(緯度、経度)として検出してもよい。また、位置検出装置30がジャイロセンサや加速度センサ等の慣性計測装置を有し、慣性計測装置によって補正した位置を、自己の位置として検出してもよい。位置検出装置30によって、トラクタ1の車体3の位置(走行位置)を検出することができる。
【0019】
図1に示すように、トラクタ1は、複数の障害物検出装置45を備えている。複数の障害物検出装置45のそれぞれは、トラクタ1の周囲に存在する物体、即ち、障害物を検出可能である。複数の障害物検出装置45のうち、少なくとも1つは、保護装置9の前方で且つボンネット25の外方に設けられている。即ち、少なくとも1つの障害物検出装置45は、トラクタ1の保護装置9の前方の領域において、ボンネット25の左側壁25Lよりも左側の領域、或いは、ボンネット25の右側壁25Rよりも右側の領域に配置されている。本実施形態の場合、複数の障害物検出装置45は、車体3の左側(ボンネット25の左側)に設けられた障害物検出装置45Lと、車体3の右側(ボンネット25の右側)に設けられた障害物検出装置45Rとを含む。
【0020】
障害物検出装置45は、レーザスキャナ45A、ソナー45B等である。レーザスキャナ45Aは、検出波としてレーザを照射することによって物体(障害物)を検出する。レーザスキャナ45Aは、レーザの照射から受光までの時間に基づいて障害物までの距離を検出する。ソナー45Bは、検出波として音波を照射することによって物体(障害物)を検出する。なお、上述した実施形態の複数の障害物検出装置45は、ボンネット25の外方に設けられていなくてもよく、複数の障害物検出装置45の配置等は、限定されない。
【0021】
図4に示すように、トラクタ1は、操舵装置11を備えている。操舵装置11は、ハンドル(ステアリングホイール)11aと、ハンドル11aの回転に伴って回転する回転軸(操舵軸)11bと、ハンドル11aの操舵を補助する補助機構(パワーステアリング機構)11cと、を有している。補助機構11cは、油圧ポンプ21と、油圧ポンプ21から吐出した作動油が供給される制御弁22と、制御弁22により作動するステアリングシリンダ23とを含む。制御弁22は、制御信号に基づいて作動する電磁弁である。制御弁22は、例えば、スプール等の移動によって切り換え可能な3位置切換弁である。また、制御弁22は、操舵軸11bの操舵によっても切り換え可能である。ステアリングシリンダ23は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)に接続されている。
【0022】
したがって、ハンドル11aを操作すれば、ハンドル11aに応じて制御弁22の切換位置及び開度が切り換わり、制御弁22の切換位置及び開度に応じてステアリングシリンダ23が左又は右に伸縮することによって、前輪7Fの操舵方向を変更することができる。なお、上述した操舵装置11は一例であり、操舵装置11の構成は上述した構成に限定されない。
【0023】
図4に示すように、トラクタ1は、制御装置40と表示装置50と、通信装置51とを備えている。制御装置40は、CPU、電気回路、電子回路等で構成されていて、トラクタ1の様々な制御を行う。表示装置50は、液晶パネル、有機ELパネル等を有していて様々な情報を表示する。通信装置51は、外部との通信を行う装置である。通信装置51は、外部機器に対して直接通信及び間接通信のいずれかを行う通信装置(通信モジュール)であって、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、LPWA(Low Power, Wide Area)、LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)等により無線通信を行うことができる。また、通信装置51は、携帯電話通信網又はデータ通信網などにより無線通信を行う通信装置(通信モジュール)であってもよい。
【0024】
制御装置40には、トラクタ1の駆動状態等を検出する状態検出装置41が接続されている。
状態検出装置41は、例えば、走行系の状態を検出する装置等であって、例えば、クランクセンサ、カムセンサ、エンジン回転センサ、アクセルセンサ、車速センサ、操舵角センサ、位置検出装置30)等の状態を検出する。状態検出装置41は、走行系の状態以外を検出する装置、例えば、昇降操作部材の操作方向、操作量等を検出する昇降操作検出センサ、PTO回転検出センサ等も含んでいる。
【0025】
制御装置40は、トラクタ1における走行系、作業系の制御を行う。制御装置40は、走行制御部40Aと、昇降制御部40Bとを備えている。走行制御部40A及び昇降制御部40Bは、制御装置40に設けられた電気電子回路、制御装置40に格納されたプログラム等から構成されている。
走行制御部40Aは、自動走行制御を行う。走行制御部40Aは、自動走行制御において、少なくとも車体3の走行位置(位置検出装置30で検出された位置)と、予め設定された走行予定ライン(走行経路)が一致するように、制御弁22の切換位置及び開度を設定する。言い換えれば、制御装置40は、トラクタ1の走行位置と走行予定ラインとが一致するように、ステアリングシリンダ23の移動方向及び移動量(前輪7Fの操舵方向及び操舵角)を設定する。
【0026】
詳しくは、走行制御部40Aは、車体3の走行位置と、走行予定ラインとを比較し、走行位置と走行予定ラインとが一致している場合は、操舵装置11におけるハンドル11aの操舵角及び操舵方向(前輪7Fの操舵角及び操舵方向)を変更せずに保持する(制御弁22の開度及び切換位置を変更せずに維持する)。走行制御部40Aは、走行位置と走行予定ラインとが一致していない場合、当該走行位置と走行予定ラインとの偏差(ズレ量)が零となるように、操舵装置11におけるハンドル11aの操舵角及び/又は操舵方向を変更する(制御弁22の開度及び/又は切換位置を変更する)。
【0027】
なお、上述した実施形態では、走行制御部40Aは、自動走行制御において、走行位置と走行予定ラインとの偏差に基づいて操舵装置11の操舵角を変更するものであるが、走行予定ラインの方位とトラクタ1(車体3)の進行方向(走行方向)の方位(車体方位)とが異なる場合、走行制御部40Aは、車体方位が走行予定ラインの方位に一致するように操舵角を設定してもよい。また、走行制御部40Aは、自動走行制御において、偏差(位置偏差)に基づいて求めた操舵角と、方位偏差に基づいて求めた操舵角とに基づいて、自動走行制御における最終の操舵角を設定してもよい。また、上記した自動走行制御における操舵角の設定方法とは異なる方法で操舵角を設定してもよい。
【0028】
また、走行制御部40Aは、自動走行制御において、トラクタ1(車体3)の実際の車速が、予め設定された走行予定ラインに対応する車速に一致するように、走行装置7、即ち、前輪7F及び/又は後輪7Rの回転数を制御してもよい。
また、走行制御部40Aは、障害物検出装置45による障害物の検出結果に基づいて自動走行を制御する。例えば、障害物検出装置45が障害物を検出していない場合は自動走行を継続して行い、障害物検出装置45が障害物を検出した場合に自動走行を停止する。より具体的には、障害物検出装置45が障害物を検出した場合に、走行制御部40Aは、障害物とトラクタ1との距離が予め定められた閾値(停止閾値)以下である場合に、トラクタ1の走行を停止することで自動走行を停止する。
【0029】
また、走行制御部40Aは、自動走行時において着座検出装置43が着座していると検出している場合は自動走行を継続し且つ、着座検出装置43が着座していないと検出した場合は自動走行を停止する。
上述した実施形態では、走行制御部40Aは、障害物とトラクタ1との距離が予め定められた閾値(停止閾値)以下である場合に、自動走行において、トラクタ1の走行を停止していたが、障害物を回避してもよいし、速度を低下させて徐行を行ってもよい。
【0030】
昇降制御部40Bは、昇降制御を行う。昇降制御部40Bは、手動昇降機能が有効である場合、昇降操作部材が上昇させる方向(上昇側)に操作された場合、制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。昇降制御では、手動昇降機能が有効である場合、昇降操作部材が下降させる方向(下降側)に操作された場合、制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを収縮させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を下降させる。連結装置(昇降装置)8によって作業装置2を上昇させている場合に、当該作業装置2の位置、即ち、リフトアーム8aの角度が高さ設定ダイヤルで設定された上限(高さ上限値)に達すると、連結装置(昇降装置)8における上昇動作を停止する。
【0031】
昇降制御では、バックアップ機能が有効である場合、車体3が後進した場合に自動的に制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。昇降制御では、オートアップ機能が有効である場合、操舵装置11の操舵角が所定以上になると、自動的に制御弁34を制御することでリフトシリンダ8eを伸長させ、リフトアーム8aの後端部(作業装置2側の端部)を上昇させる。
【0032】
さて、
図1、2に示すように、トラクタ1は、離着陸ステーション60を備えている。離着陸ステーション60は、無人飛行体70が離着陸を行うことが可能である。無人飛行体70は、例えば、マルチコプターである。
以下、マルチコプターを例にとり、無人飛行体70について説明する。
図1、2に示すように、無人飛行体(マルチコプター)70は、本体70aと、本体70aに設けられたアーム70bと、アーム70bに設けられた複数の回転翼70cと、本体70aに設けられたスキッド70dとを有している。複数の回転翼70cは、飛行するための揚力を発生させる装置である。無人飛行体70には、少なくとも2以上、好ましくは、4以上の回転翼70cが設けられている。複数の回転翼70cのそれぞれは、回転力を付与するロータとロータの駆動によって回転するブレード(プロペラ)とを含んでいる。
【0033】
図5A~
図5Cは、スキッド70dの一例を示している。この実施形態では、無人飛行体70は、
図5A~
図5Cに示したいずれかのスキッド70dを有しているが、スキッド70dの構造は、
図5A~
図5Cに限定されない。
図5Aに示すように、スキッド70dは、複数の脚部80a、80bを含んでいる。複数の脚部80a、80bの基端部は、本体70aに固定されていて、脚部80a、80bの先端部は、自由端となっている。複数の脚部80a、80bは、金属等で構成されていて、変形不能である。複数の脚部80a、80bのそれぞれは、本体70aから離れるにしたがって徐々に外側に移行していて、脚部80a、80bによって逆V字状になっている。
【0034】
図5Bは、
図5Aとは異なるスキッド70dを示している。
図5Bに示すように、スキッド70dは、複数の脚部80a、80bと、アクチュエータ81a、81bと、を含んでいる。
複数の脚部80a、80bの基端部は、本体70aに揺動自在に取り付けられていて、脚部80a、80bの先端部は、自由端となっている。
【0035】
アクチュエータ81a、81bは、複数の脚部80a、80bを揺動させる装置であって、例えば、電動等によって伸縮自在なシリンダ等で構成されている。アクチュエータ81aの基端部は、本体70aに固定されていて、アクチュエータ81aの先端部は、脚部80aに連結している。また、アクチュエータ81bの基端部は、本体70aに固定されていて、アクチュエータ81bの先端部は、脚部80bに連結している。
【0036】
したがって、アクチュエータ81aを伸縮すると、脚部80aが基端部を揺動支点として当該アクチュエータ81aの伸縮によって揺動する。また、アクチュエータ81bを伸縮すると、脚部80bが基端部を揺動支点として当該アクチュエータ81bの伸縮によって揺動する。
図5Cは、
図5A及び
図5Bとは異なるスキッド70dを示している。複数の脚部80a、80bを含んでいる。複数の脚部80a、80bの基端部は、本体70aに固定されていて、脚部80a、80bの先端部は、自由端となっている。複数の脚部80a、80bは、金属、又は、樹脂等で構成されていて、変形自在となっている。複数の脚部80a、80bのそれぞれは、
図5A及び
図5Bとは異なっていて、本体70aから離れるにしたがって徐々に外側に移行した後、中途部から先端部に行くにしたがって内側に移行していて、脚部80a、80bによって円弧状になっている。
【0037】
図4に示すように、無人飛行体70は、蓄電装置71と、センシング装置72と、位置検出装置73と、記憶装置74と、通信装置75と、制御装置76とを有している。蓄電装置71は、バッテリ、コンデンサ等であって電力を蓄電する装置である。蓄電装置71は、例えば、本体70aの内部、又は、本体70aに取り付けられている。
センシング装置72は、CCDカメラ、赤外線カメラ等で構成され、本体70aの下部に着脱自在、或いは、本体70aにブラケット(図示省略)を介して設けられている。センシング装置72は、ブラケットに対して垂直方向又は水平方向に揺動自在であって、センシングする方向を変更することができる。なお、センシング装置72の水平方向、垂直方向の揺動の制御は、制御装置76によって行うことができる。例えば、遠隔操縦装置によって無人飛行体70を操縦する場合、制御装置76は、遠隔操縦装置から送信された制御信号を、信装置75を介して取得すると、取得した制御信号に応じてセンシング装置72を水平方向又は垂直方向に揺動させる。
【0038】
例えば、無人飛行体70を圃場上に飛行させると、センシング装置72によって圃場をセンシングすることができる。センシング装置72がCCDカメラである場合、例えば、圃場の上空約100mの高さから、当該圃場を空撮することによって、圃場の断片画像を数十枚~数百枚撮像する。空撮した複数枚の画像、即ち、センシング装置72で撮像した複数枚の画像(空撮画像)は、無人飛行体70に設けられた記憶装置74に記憶される。無人飛行体70の記憶装置74に記憶された複数枚の空撮画像は通信装置75によって外部に出力することができる。
【0039】
また、位置検出装置73は、位置検出装置30と同様に、衛星測位システムによって自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出する装置であり位置検出装置30と同様の構成である。位置検出装置73で検出した自己の位置のことを「飛行位置」ということがある。また、位置検出装置73によって、高さ情報、即ち、高度を検出することができる。
【0040】
通信装置75は、外部機器に対して直接通信及び間接通信のいずれかを行う通信装置(通信モジュール)であって、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)、LPWA(Low Power, Wide Area)、LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)等により無線通信を行うことができる。また、通信装置75は、携帯電話通信網又はデータ通信網などにより無線通信を行う通信装置(通信モジュール)であってもよい。
【0041】
通信装置75によれば、他の無人飛行体70と通信を行ったり、トラクタ1の通信装置51と通信を行ったり、遠隔操縦装置と通信を行うことができ、様々なデータを送受信することができる。
制御装置76は、複数の回転翼70cを制御する装置であり、CPU等から構成されている。制御装置76は、無人飛行体70が、少なくとも2つの回転翼70cを有している場合、ロータに制御信号を出力することにより、一方側のブレードの回転数を、他方のブレードの回転数よりも小さくすることによって、一方側のブレード側に無人飛行体を進行させたり、他方側のブレードの回転数を、一方のブレードの回転数よりも小さくすることによって、他方側のブレード側に無人飛行体を進行させる。即ち、制御装置76は、複数のブレードのうち、進行方向側のブレードの回転数を、進行方向とは反対側のブレードの回転数よりも小さくすることによって、無人飛行体70の進行方向を制御する。また、制御装置76は、複数のブレードの回転数を一定にすることによって、無人飛行体70をホバリングさせる。
【0042】
なお、無人飛行体70は、遠隔操縦装置によって操縦される飛行体であっても、自立して飛行する飛行体であってもよく、限定されない。
離着陸ステーション60は、保護装置9のルーフ9bに設けられ、無人飛行体70が離着したときにスキッド70dを規制可能である。離着陸ステーション60は、
図5A~
図5Cに示すように、無人飛行体70が着陸したときには、当該離着陸ステーション60の一部が、スキッド70dの脚部80a、80bに接触することによって、スキッド70dの水平方向の移動を規制することが可能である。
【0043】
図1、
図2、
図6に示すように、具体的には、離着陸ステーション60は、支持部材61と、アーム62とを有している。支持部材61は、アーム62を保護装置9のルーフ9bに支持する部材であって、ルーフ9bの前側及び後側にそれぞれ設けられている。アーム62は、支持部材61を介してルーフ9b上に支持されていて、水平方向に延びている。詳しくは、アーム62の一端は、ルーフ9bの前端に位置し、アーム62の他端は、ルーフ9bの後端に位置している。
【0044】
アーム62は、例えば、円弧状又は四角状の筒体で構成されていて、中空状であって、空間部63が形成されている。
図5A~
図5Cに示すように、無人飛行体70において、着陸時における一方の脚部80aから他方の脚部80bまでの距離L1を基準にした場合、アーム62の幅L2は、距離L1以下に設定されている。
図1に示すように、アーム62は、無人飛行体70が視認可能なマーカ64を有している。マーカ64は、アーム62の外面に形成されていて、当該アーム62を平面視したときに、上方から無人飛行体70のセンシング装置72によって認識することが可能である。
図5A~
図5Cに示すように、無人飛行体70が着陸を行うにあたって、まず、圃場の上空からセンシング装置72によってトラクタ1の有無、即ち、アーム62に設けたマーカ64の位置を認識する。無人飛行体70の制御装置76は、マーカ64を認識すると、当該マーカ64の位置に向けて無人飛行体70を飛行させ、マーカ64の上空に達したところで、無人飛行体70の高度を徐々に下げながら、アーム62(マーカ64)に向けて着陸を行う。
スキッド70dが
図5Aの場合、無人飛行体70は、スキッド70dの脚部80a、80bをアーム62に接触したところで着陸を終了する。また、スキッド70dが
図5Bの場合、無人飛行体70は、スキッド70dがアーム62に達した時点で、アクチュエータ81a、81bの伸縮によって、脚部80a、80bをアーム62に向けて揺動させ、脚部80a、80bがアーム62に接触したところで着陸を終了する。なお、アクチュエータ81a、81bの伸縮は、制御装置76がアクチュエータ81a、81bに制御信号を出力することによって行う。
スキッド70dが
図5Cの場合、無人飛行体70は、スキッド70dがアーム62に達して脚部80a、80bが接触すると、当該脚部80a、80bがアーム62への接触によって変形する。無人飛行体70は、脚部80a、80bによってアーム62を挟み込んだところで着陸を終了する。
以上のように、トラクタ1に離着陸ステーション60を設けることによって、無人飛行体70を当該トラクタ1に着陸させることができる。
さて、無人飛行体70がケーブル77を有してもよい。次に、無人飛行体70がケーブル77を有している場合について説明する。
ケーブル77は、無人飛行体70に電力を供給するケーブルである。
図4に示すように、ケーブル77の一端は、本体70aの内部に設けられていて、制御装置76等に電力を供給する電源ラインPW1にコネクタ等を介して接続されている。或いは、ケーブル77の一端は、蓄電装置71に接続されていてもよい。また、ケーブル77の他端は、制御装置40等に電力を供給する電源ラインPW2にコネクタ等を介して接続されている。ケーブル77の他端は、トラクタ1に設けられたバッテリ等に接続されていてもよい。
したがって、ケーブル77を介して、トラクタ1の電力を無人飛行体70に供給することができ、長時間にわたって、無人飛行体70を飛行させることができる。
図5A~
図5C及び
図6に示すように、離着陸ステーション60のアーム62には、ケーブル77を通す、貫通穴65が設けられ、アーム62の空間部63がケーブル77を収容可能な収容部とされている。収容部には、ケーブル77を巻き取る巻き取り機66が設けられている。
図7に示すように、巻き取り機66は、回転自在に支持され且つ回転によってケーブル77を巻き取る筒状のボビン(巻取部)66aと、ボビン66aを回転させるモータ66bと、を備えている。ケーブル77は、ボビン66aの回転軸66cを通過して、トラクタ1の内部に至っている。
したがって、巻き取り機66のボビン66aをモータ66bによって回転させることにより、ケーブル77を巻き取ることができる。ボビン66aにケーブル77を巻き取った状態において、無人飛行体70の移動によってケーブル77が引っ張られると、引っ張り力によってボビン66aが任意に回転してケーブル77を繰り出すことができる。巻き取り機66において、モータ66bの回転軸とボビン66aの回転軸66cとの接続を遮断することができるクラッチ66dを設けてもよい。
以上のように、巻き取り機66を設けた場合、トラクタ1の制御装置40は、モータ66bに制御信号を出力して、モータ66bの回転軸を、ケーブル77を巻き取る方向(巻き取り方向)に回転させる。モータ66bの回転軸を巻き取り方向に回転させている状況において、モータ66bの回転軸へ作用する力(第1負荷)又はボビン66aの回転軸66cへ作用する力(第2負荷)を参照する。例えば、無人飛行体70の移動によってケーブル77が引っ張られ、第1負荷又は第2負荷が所定以上になると、制御装置40は、モータ66bの駆動を停止、即ち、モータ66bを巻き取る方向に回転させることを停止する。或いは、第1負荷又は第2負荷が所定以上になると、制御装置40は、モータ66bの回転の方向を巻き取り方向と反対側に回転させて、ケーブル77を繰り出す。
つまり、制御装置40は、巻き取り機66を駆動させることによって、ケーブル77に作用するテンションが略一定になるようにする。
【0045】
図8A、
図8Bは、2台の無人飛行体70と、トラクタ1とを連結した場合の側面図を示している。
図9A、
図9Bは、2台の無人飛行体70と、トラクタ1とを接続した場合の制御のブロック図を示している。
以下、説明の便宜上、2台の無人飛行体70のうち、トラクタ1にケーブル77を介して連結した無人飛行体70のことを第1無人飛行体70A、第1無人飛行体70Aにケーブル78を介して連結した無人飛行体70のことを第2無人飛行体70Bという。また、ケーブル77のことを第1ケーブル77、ケーブル78のことを第2ケーブルという。なお、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bの構成は、上述した無人飛行体70の構成と略同じである。
【0046】
以下、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bにおいて、上述した構成と異なる構成について説明する。
図8Aに示すように、第1無人飛行体70Aの本体70aには、第2ケーブル78の一端を接続(連結)するための接続部90が設けられている。また、第2無人飛行体70Bの本体70aにも、第2ケーブル78の他端を接続(連結)するための接続部91が設けられている。接続部90、91は、例えば、コネクタである。第2ケーブル78の一端は、第1無人飛行体70Aの接続部90に着脱自在に接続可能であり、第2ケーブル78の他端は、第2無人飛行体70Bの接続部91に着脱自在に接続可能である。つまり、第2ケーブル78は、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bに着脱可能である。
【0047】
さて、第1ケーブル77及び第2ケーブル78は、電力を供給するケーブル(電源ケーブル)、又は、信号を送受信するケーブル(通信ケーブル)である。第1ケーブル77及び第2ケーブル78が電源ケーブルである場合、
図9Aに示すように、第1ケーブル77の一端は、第1無人飛行体70Aに設けた電源ラインPW1又は蓄電装置71に接続され、他端は、トラクタ1に設けた電源ラインPW2又はバッテリ等に接続されている。また、第2ケーブル78の一端は、接続部90を介して、第1無人飛行体70Aに設けた電源ラインPW1又は蓄電装置71に接続されている。第2ケーブル78の他端は、接続部91を介して、第2無人飛行体70Bに設けた電源ラインPW3又は蓄電装置71に接続されている。
【0048】
つまり、第1ケーブル77及び第2ケーブル78が電源ケーブルである場合、トラクタ1の電力等を、第1無人飛行体70A、又は、第2無人飛行体70Bに供給することができる。例えば、トラクタ1の原動機4は、発電を行うオルタネータ等の発電機が設けられていて、発電機で発電した電力は、電源ラインPW2に供給される。したがって、トラクタ1で発電した電力を第1無人飛行体70Aだけでなく、第2無人飛行体70Bに供給することができる。
【0049】
第1ケーブル77及び第2ケーブル78が通信ケーブルである場合、
図9Bに示すように、第1ケーブル77の一端は、第1無人飛行体70Aに設けた制御ラインCL1に接続され、他端は、トラクタ1に設けた制御ラインCL2に接続されている。また、第2ケーブル78の一端は、接続部90を介して、制御ラインCL1に接続され、他端は、接続部91を介して、第2無人飛行体70Bに設けた制御ラインCL3に接続されている。
【0050】
つまり、第1ケーブル77及び第2ケーブル78が通信ケーブルである場合、トラクタ1から第1無人飛行体70A又は第2無人飛行体70Bに向けて、様々な情報を送信したり、第1無人飛行体70A又は第2無人飛行体70Bからトラクタ1に向けて、様々な情報を送信することができる。
例えば、トラクタ1の稼働情報、無人飛行体70(第1無人飛行体70A、第2無人飛行体70B)を制御する制御信号などをトラクタ1から無人飛行体70に送信したり、無人飛行体70の稼働情報、トラクタ1を制御する制御信号などを無人飛行体70からトラクタ1に送信することができる。或いは、第1無人飛行体70Aと第2無人飛行体70Bとの間で、通信ケーブルを用いて、互いの稼働情報を送受信したり、制御信号を送受信することができる。なお、第1ケーブル77及び第2ケーブル78は、電源ケーブル及び通信ケーブルの両方を有していてもよい。
【0051】
図8A、
図8Bに示すように、第2無人飛行体70Bは作業装置2を監視するために飛行し、第1無人飛行体70Aは、第2無人飛行体70Bを中継する飛行体であって、第2無人飛行体70Bに連動して飛行する。
図10は、第1無人飛行体70A、第2無人飛行体70Bの動作フローである。なお、
図10の説明において、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bは、最初の状態は、離着陸ステーション60に着陸している状態であるとして説明する。また、
図10の説明では、第1ケーブル77及び第2ケーブル78は、電源ケーブルであるとして説明する。
【0052】
図10に示すように、トラクタ1が圃場内を走行しながら、作業装置2を用いて作業を開始する(S1)と、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bは、離着陸ステーション60から離陸する(S2)。
図8A、
図8Bに示すように、第2無人飛行体70Bは、離陸後、トラクタ1の後方側、即ち、作業装置2側に移動して、センシング装置72によって当該作業装置2を監視する(S3)。例えば、
図8Aに示すように、第2無人飛行体70Bは、離陸後、作業装置2の上空を飛行し、センシング装置72によって作業装置2を上空から撮像することにより、作業装置2を監視する。或いは、
図8Bに示すように、第2無人飛行体70Bは、離陸後、作業装置2の後方に移動して、センシング装置72によって作業装置2を後方から撮像することにより、作業装置2を監視する。第2無人飛行体70Bが撮像した撮像画像は、通信装置75によってトラクタ1に送信され、表示装置50に表示することができる。
【0053】
第2無人飛行体70Bのセンシング装置72によって作業装置2を撮像した撮像画像は、通信装置75を介して、トラクタ1に送信される(S4)。トラクタ1に送信された撮像画像は表示装置50に表示される(S5)。したがって、作業装置2の作業状態をトラクタ1の運転者等が把握することができる。
一方、第1無人飛行体70Aの制御装置76は、第2無人飛行体70Bの飛行位置及び高度等を、通信装置75を介して受信し、受信した飛行位置及び高度に基づいて、第2無人飛行体70Bと連動して飛行を行う(S6:連動飛行)。
【0054】
例えば、
図11Aに示すように、第1無人飛行体70Aと第2無人飛行体70Bとの距離が近く、第2ケーブル78がトラクタ1に接触してしまう可能性がある場合は、第1無人飛行体70Aは、第2無人飛行体70Bから遠ざかる方向に飛行し、第2ケーブル78がトラクタ1に接触しないように連動飛行を行う。或いは、
図11Bに示すように、第2無人飛行体70Bの高度が低すぎることで、第2ケーブル78が作業装置2に接触してしまう可能性がある場合も、第2無人飛行体70Bから遠ざかる方向に飛行し、第2ケーブル78がトラクタ1に接触しないようにする連動飛行をする。
【0055】
即ち、第1無人飛行体70Aの制御装置76は、当該第1無人飛行体70Aの飛行位置及び高度と、当該第2無人飛行体70Bの飛行位置及び高度とから、第2ケーブル78の状態を推定し、第2ケーブル78がトラクタ1又は作業装置2に接触しないように、第1無人飛行体70Aの飛行位置及び高度を調整する。なお、第1無人飛行体70のセンシング装置72によって、第2ケーブル78の状態をセンシングし、第2ケーブル78と、トラクタ1又は作業装置2との距離が所定以下になった場合に、第2ケーブル78がトラクタ1又は作業装置2から離れるように、制御装置76の制御によって第1無人飛行体70を飛行させてもよい。
【0056】
トラクタ1及び作業装置2における作業が終了する(S7、Yes)と、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bは、離着陸ステーション60に着陸し(S8)、飛行を終了する。
以上によれば、トラクタ1及び作業装置2における作業中は、第2無人飛行体70Bによって、作業装置2の作業状態などを監視することができる一方で、第1無人飛行体70Aによって、第2ケーブル78等がトラクタ1、作業装置2に接触することを防止することができる。
【0057】
なお、上述した実施形態では、第1無人飛行体70Aは、第2ケーブル78等がトラクタ1、作業装置2に接触しないように飛行していたが、これに加え、第1無人飛行体70Aは、トラクタ1の上空から当該トラクタ1の周囲のセンシングをセンシング装置72によって行う一方、第2無人飛行体70Bによって作業装置2又は作業装置2の周囲のセンシングを行うようにしてもよい。即ち、第1無人飛行体70Aは、トラクタ1の周囲のセンシング、第2無人飛行体70Bは、作業装置2の周囲のセンシングを行うようにしてもよい。例えば、第1無人飛行体70Aのセンシング装置72は、作業装置2で作業後の作業状態(作業跡)を撮像したり、作業装置2又はトラクタ1の周囲の障害物の検出を行う。この場合、例えば、第1無人飛行体70Aによってセンシングしたデータと、第2無人飛行体70Bによってセンシングしたデータは、通信装置75等を介してトラクタ1に送信する。トラクタ1では、受信したセンシングデータを表示装置50等に表示する。
【0058】
また、
図10の動作フローでは、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bの両方を飛行させていたが、第2無人飛行体70Bを離着陸ステーション60に留めた状態で、
図12Aに示すように、第1無人飛行体70Aのみ、作業装置2の上空を飛行させて、当該作業装置2を、第1無人飛行体70Aのセンシング装置72によって監視してもよい。この場合、第1無人飛行体70Aと第2無人飛行体70Bとを連結する第2ケーブル78は、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bから取り外しておく。このようにすることで、第1無人飛行体70Aと第2無人飛行体70Bとを第2ケーブル78によって連結することができる構成でありながら、第1無人飛行体70Aの単独で飛行する場合に、第2ケーブル78が飛行の邪魔になることを防止することができる。
【0059】
或いは、
図12Bに示すように、第1無人飛行体70Aを離着陸ステーション60に留めた状態で、第2無人飛行体70Bのみ、作業装置2の上空を飛行させて、当該作業装置2を、第2無人飛行体70Bのセンシング装置72によって監視してもよい。この場合、第1無人飛行体70Aと第2無人飛行体70Bとを連結する第2ケーブル78は接続したままにしておく。このようにすることで、第2ケーブル78から電力を供給して、第2無人飛行体70Bの単独でも飛行させることができる。
【0060】
また、
図7の巻き取り機66と同様に、第1無人飛行体70Aに第2ケーブル78を巻き取る巻き取り機を設けて、第2ケーブル78を第1無人飛行体70Aに設けた巻き取り機によって巻き取ることにより、第2ケーブル78の長さを調整してもよい。
農業機械(トラクタ1)は、走行車体3と、走行車体3に作業装置2を連結可能な連結装置8と、無人飛行体70の離着時にスキッド70dを規制可能な離着陸ステーション60と、を備えている。これによれば、農業機械(トラクタ1)に無人飛行体70を簡単に着陸させたり、離陸させることができる。特に、離着陸ステーション60が無人飛行体70の着陸時にスキッド70dを規制する構成であるため、スキッド70dを規制しない離着陸ステーションに比べて、着陸スペースをコンパクトにすることができる。また、離着陸ステーション60から直ぐに無人飛行体70を農業機械の上空に飛行させることができ、素早く農業機械(トラクタ1)の作業の支援を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0061】
農業機械(トラクタ1)は、運転席を保護する保護装置9を備え、離着陸ステーション60は、保護装置9に設けられている。これによれば、保護装置9上に簡単に無人飛行体70を離着陸させることができる。
離着陸ステーション60は、保護装置9に取り付けられ且つ、無人飛行体70の着陸時に水平方向に延びるアーム62を有している。これによれば、水平方向に延びるアーム62によって、保護装置9に無人飛行体70を簡単に着陸させることができる。
【0062】
アーム62は、保護装置9に固定された第1部材62Aと、第1部材62Aに移動自在に設けられた第2部材62Bとを有している。これによれば、第2部材62Bによって、離着陸ステーション60の離着陸の範囲を自在に変更することができ、離着陸ステーション60への離着陸を簡単にすることができる。
アーム62は、無人飛行体70が視認可能なマーカ64を有している。これによれば、無人飛行体70がマーカ64を視認しながら着陸をさせることができるため、無人飛行体70の着陸をより簡単にすることができる。
【0063】
無人飛行体70は、電力を供給するケーブル77を有し、離着陸ステーション60は、ケーブル77を収容する収容部(空間部63)を備えている。これによれば、ケーブル77によって、農業機械(トラクタ1)から無人飛行体70へ電力を供給することができ、無人飛行体70の飛行時間を長くすることができる。また、収容部によって、ケーブル77を収容することができるため、無人飛行体70が離着陸を行うときにケーブル77が邪魔になることを防止することができる。
【0064】
離着陸ステーション60は、ケーブル77を巻き取る巻き取り機66を備えている。これによれば、ケーブル77を巻き取ることができ、ケーブル77を農業機械(トラクタ1)にコンパクトに収めることができる。
農業機械(トラクタ1)は、走行車体3と、走行車体3に取り付けられ且つ第1無人飛行体70Aに連結された第1ケーブル77と、第1無人飛行体70Aと、当該第1無人飛行体70Aとは異なる第2無人飛行体70Bとを連結する第2ケーブル78と、を備えている。これによれば、農業機械(トラクタ1)、第1無人飛行体70A、第2無人飛行体70Bのそれぞれを第1ケーブル77と、第2ケーブル78とで連結することができ、第1ケーブル77及び第2ケーブル78を介して、農業機械(トラクタ1)から電気的な信号等を第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bに供給することができ、その結果、少なくとも第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bによって、素早く農業機械(トラクタ1)の作業の支援を行うことができ、作業効率を向上させることができる。加えて、第1無人飛行体70A等の飛行によって、第2ケーブル78が、農業機械等に接触することを抑制することができる。
【0065】
農業機械(トラクタ1)は、運転席を保護する保護装置9を備え、離着陸ステーション60は、保護装置9に設けられている。これによれば、保護装置9上に簡単に無人飛行体70を離着陸させることができる。
第1ケーブル77及び第2ケーブル78は、電力を供給するケーブルである。これによれば、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bに、農業機械(トラクタ1)から電力を供給することができ、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bの飛行時間を長くすることができる。
【0066】
第1ケーブル77及び第2ケーブル78は、第1無人飛行体70Aと第2無人飛行体70Bとの間で信号を送受信するケーブルである。これによれば、農業機械(トラクタ1)に関する情報を、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bに有線にて送信したり、第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bに関する情報を、農業機械(トラクタ1)にすることができ、農業機械(トラクタ1)、第1無人飛行体70A、第2無人飛行体70Bにおいて、必要な情報を共有することができる。
【0067】
農業機械(トラクタ1)は、運転席を保護する保護装置9を備え、第1ケーブル77は、保護装置9に設けられている。これによれば、農業機械(トラクタ1)と第1無人飛行体70Aとを簡単に第1ケーブル77にて繋ぐことができ、第1ケーブル77を保護装置9に設けることで、第1無人飛行体70Aが飛行中した場合において、第1ケーブル77が農業機械(トラクタ1)の保護装置9とは異なる部分に接触することを抑制することができる。
【0068】
第2無人飛行体70Bは、走行車体3に連結された作業装置2をセンシングするセンシング装置72を有し、作業装置2をセンシングする際に当該作業装置2に向けて飛行し、第1無人飛行体70Aは、第2無人飛行体70Bの飛行に連動して飛行する。これによれば、第2無人飛行体70Bによって、作業中などの作業装置2をセンシングすることができ、第1無人飛行体70Aによって、第2ケーブル78がトラクタ1、作業装置2に接触することを抑制することができる。
【0069】
センシング装置72は、作業装置2を撮像する撮像装置を含んでいる。これによれば、作業装置2の作業中の状態の撮像画像を得ることができ、作業装置2がどのような状態かを簡単に把握することができる。
第1無人飛行体70Aは、走行車体3に連結された作業装置2をセンシングするセンシング装置72を有している。これによれば、第1無人飛行体70Aの単体によっても作業装置2をセンシングすることができる。
【0070】
少なくとも第1無人飛行体70A及び第2無人飛行体70Bのいずれかが離着陸する離着陸ステーション60を有し、第1無人飛行体70Aが離着陸ステーション60に着陸した状態で、第2無人飛行体70Bは飛行可能である。これによれば、第2無人飛行体70Bのみ、作業装置2等の上空を飛行させて、当該作業装置2などを、第2無人飛行体70Bによって監視することができる。
【0071】
走行車体3は、第1ケーブル77を巻き取り可能な巻き取り機66を有している。これによれば、第1ケーブル77を巻き取ることができ、第1ケーブル77を農業機械(トラクタ1)にコンパクトに収めることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 :農業機械(トラクタ)
2 :作業装置
3 :走行車体
8 :連結装置
9 :保護装置
10 :運転席
60 :離着陸ステーション
62 :アーム
62A :第1部材
62B :第2部材
64 :マーカ
66 :巻き取り機
70 :無人飛行体
70A :第1無人飛行体
70B :第2無人飛行体
70b :アーム
70d :スキッド
77 :ケーブル
78 :ケーブル