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特許7472015形状記憶および薬物送達のためのポリ(エステル尿素)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】形状記憶および薬物送達のためのポリ(エステル尿素)
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/08 20060101AFI20240415BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240415BHJP
   A61L 29/06 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/545 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 38/12 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20240415BHJP
   C08G 71/02 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C08G69/08
A61K47/34
A61L29/06
A61P31/04
A61P35/00
A61P25/18
A61P25/24
A61P25/20
A61P25/16
A61P25/22
A61P29/02
A61P29/00
A61K45/00
A61K31/47
A61K31/545
A61K31/43
A61K31/427
A61K31/407
A61K31/7028
A61K38/12
A61K31/7036
A61K31/65
A61K31/165
C08G71/02
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020506162
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 US2018045546
(87)【国際公開番号】W WO2019032541
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】62/541,819
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517168772
【氏名又は名称】アクロン大学
(74)【代理人】
【識別番号】100063842
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118119
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 大典
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン グレゴリー アイザック
(72)【発明者】
【氏名】エイベル アレクサンドラ
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0130390(US,A1)
【文献】特表2009-516757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210852(US,A1)
【文献】"α-Amino Acid-Based Poly(Ester urea)s as Multishape Memory Polymers for Biomedical Applications",ACS Macro Letters,2016年,Vol.5,p.1176-1179
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/
C08G 71/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造であって、
薬学的活性成分またはその許容される塩と、
形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーと、を含み、
前記薬学的活性成分は、リスペリドン、エンテカビル、リドカイン及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、患者の体温で第1の形状を有し、前記患者の前記体温を下回る温度で第2の形状を有し、そして、以下の式を有し、
【化1】
式中、aが、2~20の整数であり、mが、10~500の整数であり、
前記薬学的活性成分が、前記アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの全体にわたって実質的に均等に分散され、
前記薬学的活性成分の、前記アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの全体にわたって実質的に均等な分散は、前記アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの前記形状記憶特性を実質的に変更せず、
前記アミノ酸系ポリマー構造は、少なくとも、0.1~70重量%のリスペリドン、0.1~70重量%のエンテカビル及び0.1~10重量%のリドカインのうちの1つを含む、
薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項2】
前記薬学的活性成分が、リスペリドンとエンテカビルのうちの1つであり、前記アミノ酸系ポリマー構造の0.1%~70重量%含まれる、請求項1に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項3】
前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが、尿素結合により連結されたアミノ酸系ジエステル残基を含む、請求項1に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項4】
前記アミノ酸系ジエステル残基が、C~C20炭素鎖の分だけエステル結合により離れた2つのアミノ酸の残基を含む、請求項3に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項5】
前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが、以下の式を有し、
【化2】
式中、mが、10~500の整数である、請求項1に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項6】
前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが、10kDa~500kDaの数平均分子量(M)を有する、請求項1に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項7】
前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが、23℃以上のTを有する、請求項1に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項8】
前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが、60~100の歪み固定率(R)を有する、請求項1に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項9】
前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが、60~100の歪み回復率(R)を有する、請求項1に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項10】
前記薬物送達のためのポリマー構造が、フィラメント、管、フィルム、カプセル、プレート、カテーテル、または袋である、請求項1に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項11】
前記薬物送達のためのポリマー構造が、3次元(3D)プリント構造である、請求項1に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造。
【請求項12】
請求項1に記載の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法であって、
A)形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーであって、ガラス転移温度(T)を有し、そして、以下の式を有し、
【化3】
式中、aが、2~20の整数であり、mが、10~500の整数であるアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーを合成することと、
B)ステップAの前記アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーを450μm以下の粒径を有する粉末に磨砕することと、
C)リスペリドン、エンテカビル、リドカイン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的活性成分をステップBの前記アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマー粉末に添加し、前記薬学的活性成分が、前記アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの全体にわたって実質的に均等に分散されるまで混合することと、
D)ステップCの前記混合物をポリマー構造に形成することと、を含む、方法。
【請求項13】
前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが、2℃~80℃のTを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが、5kDa~500kDaの数平均分子量(M)を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが、尿素結合により連結された複数のアミノ酸系ポリエステル残基を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記合成するステップ(ステップA)が、
1)C~C20ジオール、バリン、およびp-トルエンスホン酸モン水和物(p-toluenesufonic acid monhydrate)を反応させて、2~20個の炭素原子の分だけ離れた2つのアミノ酸残基を有するポリエステルのp-トルエン硫酸塩を含むポリエステルモノマーを生成することと、
2)前記モノマー、炭酸カルシウム無水物、および水を好適な反応容器内で組み合わせ、攪拌して、前記モノマーを溶解することと、
3)温度を20℃から-20℃に低減し、水中に溶解された第2の量の炭酸カルシウム無水物を添加することと、
4)トリホスゲンを乾燥クロロホルム中に溶解し、第1の量の前記トリホスゲンの溶液をステップ3の前記組み合わせに添加することと、
5)別の前記トリホスゲンの溶液をステップ4の前記組み合わせにゆっくりと添加し、温度を周囲温度に増加させることと、
6)ステップ5の前記組み合わせを攪拌して、前記モノマーおよびトリホスゲンの実質的にすべてを反応させて、ステップAの前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーを形成させることと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが、以下の式を有し、
【化4】
式中、mが、10~500の整数である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記形成するステップ(ステップD)が、押し出し成形、毛管レオメータ押し出し成形、圧縮成型、インジェクション成型、3Dプリンティング、噴霧乾燥、またはそれらの組み合わせにより行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
ステップCの前記混合物をポリマー構造に形成する前記ステップ(ステップD)が、患者の体温および前記アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの前記Tの両方の温度以上で実施され、前記ポリマー構造が、第1の形状を有し、
前記方法が、
E)前記ポリマー構造を、前記第1の形状とは異なる第2の形状になるように物理的に操作することと、
F)第2の形状に前記ポリマー構造を保ちながら、前記温度を、前記アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの前記Tおよび前記患者の前記体温の両方を下回る温度に低減することにより、前記ポリマー構造を前記第2の形状に固定することと、をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
形状記憶特性を有するバリン系ポリエステル尿素ポリマーの全体にわたって分散されている、リスペリドン、エンテカビル、リドカイン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的活性化合物を含む、形状記憶を有する薬物送達系であって、前記形状記憶特性を有するバリン系ポリエステル尿素ポリマーが、薬物送達のためのポリマー構造に形成され、前記バリン系ポリマー構造は、少なくとも、0.1~70重量%のリスペリドン、0.1~70重量%のエンテカビル及び0.1~10重量%のリドカインのうちの1つを含み、前記バリン系ポリエステル尿素ポリマーが分解されると、前記薬学的活性化合物が放出される、薬物送達系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月7日に出願された「Poly(Ester Urea)s for Shape Memory and Drug Delivery」という題目の米国仮特許出願第62,541,819号の利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
共同研究契約のある当事者
本出願は、University of Akron(Akron,Ohio)とFortem LLC(Akron,OH)との間の共同研究契約に従って行われた研究に基づく。
【0003】
本発明の1つ以上の実施形態は、薬物送達のためのポリマーに関する。ある特定の実施形態において、本発明は、形状記憶特性を有する新規の薬物が担持されたポリ(エステル尿素)ポリマー、ならびにそれらの合成および使用のための関連方法に関連した。
【背景技術】
【0004】
形状記憶ポリマー(SMP)は、刺激が適用されると一時的形状から恒久的形状に変化し得、生物医学的用途における使用についてかなりの見込みを示している材料である。例えば、Hardy,J.G.;Palma,M.;Wind,S.J.;Biggs,M.J.“Responsive Biomaterials:Advances in Materials Based on Shape-Memory Polymers.”Adv.Mater.2016,28,5717-5724を参照されたく、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0005】
最も単純なSMPは、まず、一時的形状をプログラムし、続いて、恒久的形状の回復を引き起こすために適切な刺激(加熱が最も一般的である)を適用することを必要とする二重形状記憶材料である。(例えば、Pilate,F.;Toncheva,A.;Dubois,P.;Raquez,J.-M.“Shape-Memory Polymers for Multiple Applications in the Materials World.”Eur.Polym.J.2016,80,268-294、Zhao,Q.;Qi,H.J.;Xie,T.“Recent Progress in Shape Memory Polymer:New Behavior,Enabling Materials,and Mechanistic Understanding.”Prog.Polym.Sci.2015,49-50,79-120、Berg,G.J.;McBride,M.K.;Wang,C.;Bowman,C.N.“New Directions in the Chemistry of Shape Memory.”Polymer 2014,55,5849-5872、Huang,W.M.;Zhao,Y.;Wang,C.C.;Ding,Z.;Purnawali,H.;Tang,C.;Zhang,J.L.“Thermo/chemo-Responsive Shape Memory Effect in Polymers:A Sketch of Working Mechanisms,Fundamentals and Optimization.”J.Polym.Res.2012,19,9952、およびXie,T.“Recent Advances in Polymer Shape Memory.”Polymer 2011,52,4985-5000を参照されたく、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。)光、化学的衝動、または間接加熱(例えば、光熱伝達、電熱伝達、および熱磁気伝達)の様々な方法などの他の刺激も使用され得る。熱SMPのための2つの基本的な要件は、1)鎖運動性を活性化および抑制するための可逆的熱転移(すなわち、ガラス転移または溶融転移)、ならびに2)鎖滑りを防ぎ、恒久的形状を固化するための架橋構造の保有である。(Xie,T.“Recent Advances in Polymer Shape Memory.”Polymer 2011,52,4985-5000を参照されたい。加えて、生物医学的用途のSMPに関する重要な設計における考慮すべき事柄には、生分解性、生物的適合性、互換性機械的特性、および除菌可能性が含まれる。Chan,B.Q.Y.;Low,Z.W.K.;Heng,S.J.W.;Chan,S.Y.;Owh,C.;Loh,X.J.“Recent Advances in Shape Memory Soft Materials for Biomedical Applications.”ACS Appl.Mater.Interfaces 2016,8,10070-10087を参照されたく、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。)
【0006】
ポリエステル、ポリウレタン、およびポリアクリレートを含む広い範囲の熱SMPは、生物医学的用途のための実行可能な候補として特定されているが、これらは吸収性および/または固定性が欠けていることが分かっている。(例えば、Hardy,J.G.;Palma,M.;Wind,S.J.;Biggs,M.J.“Responsive Biomaterials:Advances in Materials Based on Shape-Memory Polymers.”Adv.Mater.2016,28,5717-5724、Hager,M.D.;Bode,S.;Weber,C.;Schubert,“U.S.Shape Memory Polymers:Past,Present and Future Developments.”Prog.Polym.Sci.2015,49-50,3-33、およびEbara,M.“Shape-Memory Surfaces for Cell Mechanobiology.”Sci.Technol.Adv.Mater.2015,16,014804を参照されたい。Balk,M.;Behl,M.;Wischke,C.;Zotzmann,J.;Lendlein,A.“Recent Advances in Degradable Lactide-Based Shape-Memory Polymers.”Adv.Drug Delivery Rev.2016,107,136-152およびKarger-Kocsis,J.;Keki,S.“Biodegradable Polyester-Based Shape Memory Polymers:Concepts of(Supra)Molecular Architecturing”.eXPRESS Polym.Lett.2014,8,397-412も参照されたく、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。)
【0007】
α-アミノ酸系ポリ(エステル尿素)(PEU)は、生物医学的用途のための調整可能材料の重要な分類として最近浮上してきた。これらの材料は、生分解可能、除菌可能、および非毒性であり、非毒性分解生成物を有し、かつインビボでの分解中、炎症性応答をもたらさない。(Sloan-Stakleff,K.;Lin,F.;Smith-Callahan,L.;Wade,M.;Esterle,A.;Miller,J.;Graham,M.;Becker,M.Acta Biomater.2013,9,5132-5142を参照されたく、この開示は、参照によりその全体が組み込まれる。)それらの機械的特性は、骨および血管などの硬組織および軟組織の両方での使用のために調整され得る。(例えば、Childers,E.P.;Peterson,G.I.;Ellenberger,A.B.;Domino,K.;Seifert,G.V.;Becker,M.L.“Adhesion of Blood Plasma Proteins and Platelet-rich Plasma on l-Valine-Based Poly(ester urea).”Biomacromolecules 2016,17,3396-3403、Gao,Y.;Childers,E.P.;Becker,M.L.L-Leucine-Based Poly(ester urea) for Vascular Tissue Engineering.ACS Biomater.Sci.Eng.2015,1,795-804、およびYu,J.;Lin,F.;Lin,P.;Gao,Y.;Becker,M.L.“Phenylalanine-Based Poly(ester urea):Synthesis,Characterization,and in vitro Degradation.”Macromolecules 2014,47,121-129を参照されたく、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。)体内で直面する幅広い範囲の組織型および対応する機械的特性を考慮すると、材料の特性を特定の用途の要求に合致するように調整する能力が極めて重要である。
【0008】
加えて、骨成長のためのペプチド、放射線不透過性のためのヨウ素、付着のためのカテコール、視覚化のための蛍光プローブ、および薬物送達のための療法薬などの特定の用途のための様々な機能性を有する材料が調製され得る。(例えば、Policastro,G.M.;Lin,F.;Callahan,L.A.;Esterle,A.;Graham,M.;Stakleff,K.S.;Becker,M.L.“OGP Functionalized Phenylalanine-Based Poly(ester urea) for Enhancing Osteoinductive Potential of Human Mesenchymal Stem Cells.”Biomacromolecules 2015,16,1358-1371、Li,S.;Yu,J.;Wade,M.B.;Policastro,G.M.;Becker,M.L.“Radiopaque,Iodine Functionalized,Phenylalanine-Based Poly(ester urea).”Biomacromolecules 2015,16,615-624、Zhou,J.;Defante,A.P.;Lin,F.;Xu,Y.;Yu,J.;Gao,Y.;Childers,E.;Dhinojwala,A.;“Becker,M.L.Adhesion Properties of Catechol-Based Biodegradable Amino Acid-Based Poly(ester urea) Copolymers Inspired from Mussel Proteins”Biomacromolecules 2015,16,266-274、Lin,F.;Yu,J.;Tang,W.;Zheng,J.;Xie,S.;Becker,M.L.“Postelectrospinning“Click”Modification of Degradable Amino Acid-Based Poly(ester urea) Nanofibers.”Macromolecules 2013,46,9515-9525、およびDiaz,A.;del Valle,L.J.;Tugushi,D.;Katsarava,R.Puiggali,“New Poly(ester urea) Derived from L-Leucine:Electrospun Scaffolds Loaded with Antibacterial Drugs and Enzymes.”J.Mater.Sci.Eng.,C 2015,46,450-462を参照されたく、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。)
【0009】
多くの他の生分解可能ポリマーを上回るPEUの主な利点には、単純な拡張可能合成、調整可能分解および機械的特性、ならびに結晶化度よりむしろ水素結合に由来する機械的特性が含まれる。この多能、およびインビボでの生物的適合性の前述した例により、広い範囲の生物医学的用途に関してPEUは実行可能な候補となる。
【0010】
加えて、様々なアミノ酸系PEUは、幅広いガラス転移温度(T)を利用する熱形状記憶挙動を提示し、これを超えると、著しい鎖運動性が活性化され得、かつ形状プログラミングおよび回復が達成されることが最近見出された。(Peterson,G.I.;Dobrynin,A.V.;Becker,M.L.“α-Amino Acid-Based Poly(Ester urea)s as Multishape Memory Polymers for Biomedical Applications.”ACS Macro Lett.2016,5,1176-1179およびPeterson,G.I.;Childers,E.P.;Li,H;Dobrynin,A.V.;Becker,M.L.“Tunable Shape Memory Polymers from α-Amino Acid-Based Poly(Ester urea)s”Macromolecules 2017,50,4300-4308を参照されたく、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。)これらの材料は、化学的架橋を有さないが、形状インプリントに必要とされる物理的架橋を形成する強力な水素結合ネットワークを保有する。優れた二重形状記憶および三重形状記憶性能が観察され、ポリマー主鎖に組み込まれる異なるジオール鎖長さを有するVAL系PEUをブレンドすることにより四重形状記憶挙動が達成された。
【0011】
当技術分野において必要とされるのは、形状記憶特性を有し、当技術分野で既知の薬物送達のためのポリマーの欠点を有しない薬物送達において使用するための新規の薬物が担持されたポリ(エステル尿素)ポリマー、ならびにそれらの合成および使用のための関連方法である。
【発明の概要】
【0012】
1つ以上の実施形態において、本発明は、形状記憶特性を有し、当技術分野で既知の薬物送達のためのポリマーの欠点を有しない薬物送達において使用するための新規の薬物が担持されたポリ(エステル尿素)ポリマー、ならびにそれらの合成および使用のための関連方法を提供する。
【0013】
第1の態様において、本発明は、薬学的活性成分と、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーとを含む薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造を対象とする。これらの実施形態のうちの1つ以上において、薬学的活性成分は、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの全体にわたって実質的に均等に分散されている。
【0014】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、薬学的活性成分は、抗生物質、制癌剤、抗精神病薬、抗うつ剤、睡眠補助剤、精神安定剤、抗パーキンソン病薬、気分安定剤、鎮痛剤、抗炎症剤、抗菌剤、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、薬学的活性成分は、リポペプチド、フルオロキノロン、糖脂質ペプチド、セファロスポリン、ペニシリン、モノバクタム、カルバペネム、マクロライド系抗生物質、リンコサミド、ストレプトグラミン、アミノグリコシド抗生物質、キノロン抗生物質、スルホンアミド、テトラサイクリン抗生物質、クロラフェニコール(chloraphenicol)、メトロニダゾール、チニダゾール、ニトロフラントイン、グリコペプチド、オキサゾリジノン、リファマイシン、ポリペプチド、ツベラクチノマイシン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗生物質である。
【0015】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、薬学的活性成分は、アミノ酸系ポリマー構造の約0.1%~約70重量%含まれる。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、尿素結合により連結されたアミノ酸系ポリエステル残基を含む。
【0016】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、アミノ酸系ポリエステル残基は、C~C20炭素鎖の分だけエステル結合により離れた2つのアミノ酸の残基を含む。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、2つのアミノ酸のうちの各々が、アラニン(ala-A)、アルギニン(arg-R)、アスパラギン(asn-N)、アスパラギン酸(asp-D)、システイン(cys-C)、グルタミン(gln-Q)、グルタミン酸(glu-E)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、リジン(lys-K)、メチオニン(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、セリン(ser-S)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、バリン(val-V)、4-ヨード-L-フェニルアラニン、L-2-アミノ酪酸(ABA)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、以下の式を有し、
【化1】
式中、aが、2~20の整数であり、mが、10~500の整数であり、各Rが、-CH、-(CHNHC(NH)C=NH、-CHCONH、-CHCOOH、-CHSH、-(CHCOOH、-(CHCONH、-H、-CH(CH)CHCH、-CHCH(CH、-(CHNH、-(CHSCH、-CHPh、-CHOH、-CH(OH)CH、-CH-C=CH-NH-Ph、-CH-Ph-OH、-CH(CH、CHPh OCHC≡CH、CHPhOCH、CHPhOCHCH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhOCHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhOCHPh、CHPhOCOCHCHCOCH、CHPhI、またはそれらの組み合わせであり得る。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、以下の式を有し、
【化2】
式中、aが、2~20の整数であり、mが、10~500の整数である。
【0018】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、約2℃~約80℃のTを有する。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、患者の体温で第1の形状を有し、患者の体温を下回る温度で第2の形状に一時的に固定され得る。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、10kDa~約500kDaの数平均分子量(M)を有する。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、23℃以上のTを有する。
【0019】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、約60~約100の歪み固定率(R)を有する。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、約60~約100の歪み回復率(R)を有する。
【0020】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、薬物送達のためのポリマー構造は、フィラメント、管、フィルム、カプセル、プレート、カテーテル、または袋である。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、上で参照された本発明の第1の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、薬物送達のためのポリマー構造は、3次元(3D)プリント構造である。
【0021】
第2の態様において、本発明は、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーを合成することと、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーを粉末に磨砕することと、薬学的活性成分をアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマー粉末に添加し、薬学的活性化合物が、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの全体にわたって実質的に均等に分散されるまで混合することと、混合物をポリマー構造に形成することと、を含む、上述の本発明の第1の態様の薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法を対象とする。1つ以上の実施形態において、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、約2℃~約80℃のTを有する。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、5kDa~約500kDaの数平均分子量(M)を有する。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、尿素結合により連結された複数のアミノ酸系ポリエステル残基を含む。
【0022】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明19の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、合成するステップは、C~C20ジオール、1つ以上のアミノ酸、およびp-トルエンスホン酸モン水和物(p-toluenesufonic acid monhydrate)を反応させて、2~20個の炭素原子の分だけ離れた2つのアミノ酸残基を有するポリエステルのp-トルエン硫酸塩を含むポリエステルモノマーを生成することと、モノマー、炭酸カルシウム無水物、および水を好適な反応容器内で組み合わせ、攪拌して、モノマーを溶解することと、温度を約20℃から約-20℃に低減し、水中に溶解された第2の量の炭酸カルシウム無水物を添加することと、トリホスゲンを乾燥クロロホルム中に溶解し、第1の量のトリホスゲンの溶液をこの組み合わせに添加することと、別のトリホスゲンの溶液をこの組み合わせにゆっくりと添加し、温度を周囲温度に増加させることと、この組み合わせを攪拌して、モノマーおよびトリホスゲンの実質的にすべてを反応させて、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーを形成させることと、を含む。
【0023】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、以下の式を有し、
【化3】
式中、aが、2~20の整数であり、mが、10~500の整数であり、各Rが、-CH、-(CHNHC(NH)C=NH、-CHCONH、-CHCOOH、-CHSH、-(CHCOOH、-(CHCONH、-H、-CH(CH)CHCH、-CHCH(CH、-(CHNH、-(CHSCH、-CHPh、-CHOH、-CH(OH)CH、-CH-C=CH-NH-Ph、-CH-Ph-OH、-CH(CH、CHPh OCHC≡CH、CHPhOCH、CHPhOCHCH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhOCHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhOCHPh、CHPhOCOCHCHCOCH、CHPhI、またはそれらの組み合わせであり得る。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、以下の式を有し、
【化4】
式中、aが、2~20の整数であり、mが、10~500の整数である。
【0024】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、磨砕するステップは、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーを、約1μm~約5000μmの粒径を有する粉末に磨砕することを含む。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、磨砕するステップは、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーを、450μm以下の粒径を有する粉末に磨砕することを含む。
【0025】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、薬学的活性成分は、抗生物質、制癌剤、抗精神病薬、抗うつ剤、睡眠補助剤、精神安定剤、抗パーキンソン病薬、気分安定剤、鎮痛剤、抗炎症剤、抗菌剤、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、薬学的活性成分は、リポペプチド、フルオロキノロン、糖脂質ペプチド、セファロスポリン、ペニシリン、モノバクタム、カルバペネム、マクロライド系抗生物質、リンコサミド、ストレプトグラミン、アミノグリコシド抗生物質、キノロン抗生物質、スルホンアミド、テトラサイクリン抗生物質、クロラフェニコール(chloraphenicol)、メトロニダゾール、チニダゾール、ニトロフラントイン、グリコペプチド、オキサゾリジノン、リファマイシン、ポリペプチド、ツベラクチノマイシン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される抗生物質である。
【0026】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、薬学的活性成分は、混合物の約0.1%~約70重量%含まれる。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、形成するステップは、押し出し成形、毛管レオメータ押し出し成形、圧縮成型、インジェクション成型、3Dプリンティング、噴霧乾燥、またはそれらの組み合わせにより行われる。
【0027】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を調製する方法は、上で参照された本発明の第2の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、混合物をポリマー構造に形成するステップは、患者の体温およびアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーのTの両方の温度以上で実施され、ポリマー構造が、第1の形状を有し、本方法は、ポリマー構造を、第1の形状とは異なる第2の形状になるように物理的に操作することと、第2の形状にポリマー構造を保ちながら、温度を、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーのTおよび患者の体温の両方を下回る温度に低減することにより、ポリマー構造を第2の形状に固定することと、をさらに含む。
【0028】
第3の態様において、本発明は、アミノ酸系ポリマー構造を形成することと、アミノ酸系ポリマー構造を、患者の体液と接触するように患者の体内に挿入することと、を含み、アミノ酸系ポリマー構造のアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーを分解させて、薬学的活性成分を患者の体内に放出する、上述の本発明の第1の態様のアミノ酸系ポリマー構造を使用して、薬学的活性化合物を患者に送達するための方法を対象とする。これらの実施形態のうちの1つ以上において、本方法は、アミノ酸系ポリマー構造を形成するステップが、患者の体温、およびアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーのTを下回る温度の両方の温度以上で実施され、ポリマー構造が、第1の形状を有することと、ポリマー構造を、第1の形状とは異なる第2の形状になるように物理的に操作することと、第2の形状にポリマー構造を保ちながら、温度を、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーのTおよび患者の体温の両方を下回る温度に低減することにより、ポリマー構造を第2の形状に固定することと、をさらに含む。1つ以上の実施形態において、本発明の薬学的活性化合物を送達するための方法は、上で参照された本発明の第3の態様の実施形態のうちのいずれか1つ以上を含み、アミノ酸系ポリマー構造は、特許の体内に挿入されるとき、第2の形状に固定されており、その後、ポリマー構造の温度が、患者の体温以上の温度に達すると、第1の形状に変態する。
【0029】
第4の態様において、本発明は、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの全体にわたって分散された薬学的活性化合物を含む、形状記憶を有する薬物送達系を対象とし、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、薬物送達のためのポリマー構造に形成され、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが分解されると、薬学的活性化合物が放出される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の特徴および利点のより完全な理解のために、発明を実施するための形態およびそこに伴われる図面が参照される。
【0031】
図1】SMPの二重ネットワーク構造およびそれらの形状記憶挙動の段階を示す概略図である。恒久的な架橋は、読み取りビーズにより示され、一時的な物理的架橋は、2色の楕円形により示される。段階(A)は、初期の形状を示し、段階(B)は、二重ネットワーク変形による形状プログラミングを示し、段階(C)は、外部条件の変化に反応して歪んだネットワークにおける一時的な物理的架橋の再編成を示し、段階(D)は、一時的な物理的架橋ネットワーク構造により、かつ外部条件の変化を逆行させることによりプログラムされた形状の固定化を示し、段階(E)は、外部条件の変化を再適用することによる一時的な物理的ネットワークの弛緩を示す。
図2】(R10-40-上部)を有するリスペリドンおよびエンテカビル(E10-40-下部)が担持されたp(1-VAL-10)ポリマーの形状プログラミングおよび回復の画像を示す。以下の表IおよびIIを参照されたい。ローマ数字の表記I、II、およびIIIはそれぞれ、恒久的形状、一時的形状、および形状回復後の恒久的形状に対応する。フィラメントの直径は、2~3mmの範囲であった。
図3】10重量%のリドカイン(L10)が担持されたp(1-VAL-10)ポリマーの形状プログラミング、乏しい形状固定、および回復の画像を示す。ローマ数字の表記I、II、II’、およびIIIはそれぞれ、恒久的形状、一時的形状、室温でおよそ60秒置いた後の一時的形状、および形状回復後の恒久的形状に対応する。フィラメントの直径は、およそ2mmであった。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1つ以上の実施形態において、本発明は、形状記憶特性を有し、当技術分野で既知の薬物送達のためのポリマーの欠点を有しない薬物送達において使用するための新規の薬物が担持されたアミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマー、ならびにそれらの合成および使用のための関連方法を提供する。上述されるように、アミノ酸系ポリ(エステル尿素)(PEU)は、生分解可能、除菌可能、非毒性であり、非毒性分解生成物を有し、インビボでの分解中、炎症性応答をほとんどもたらさないか、またはもたらさず、かつ骨および血管などの硬組織および軟組織の両方において使用するために調整され得る機械的特性を有する。本明細書で使用される場合、「分解可能」および「生分解可能」という用語は、巨大分子または他のポリマー物質を指すために互換可能に使用され、これは、物質を形成する巨大分子の分子質量を低下させることによる生物学的活性による分解の影響を受け易い。また、上述されるように、形状記憶ポリマー(SMP)は、温度および水和などの外部刺激が適用されると一時的形状から恒久的形状に変化し得る材料である。本明細書に上述されるように、材料、および特に、ポリ(エステル尿素)ポリマーは、「形状記憶」を有するか、または「形状記憶特性」を有すると記載され得、この材料は、温度または水和などの外部刺激が適用されると一時的形状から恒久的形状に変化する能力を有する。
【0033】
第1の態様において、本発明は、薬学的活性成分と、形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーとを含む薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造を対象とする。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、広い範囲の薬学的活性成分とともに使用され得る。本明細書で使用される場合、薬学的活性成分という用語は、抗生物質、制癌剤、抗精神病薬、抗うつ剤、睡眠補助剤、精神安定剤、抗パーキンソン病薬、気分安定剤、鎮痛剤、抗炎症剤、抗菌剤、またはそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない任意の薬学的活性化合物またはそれらの塩を指す。いくつかの実施形態において、薬学的活性成分は、抗生物質である。好適な抗生物質は、リポペプチド、フルオロキノロン、糖脂質ペプチド、セファロスポリン、ペニシリン、モノバクタム、カルバペネム、マクロライド系抗生物質、リンコサミド、ストレプトグラミン、アミノグリコシド抗生物質、キノロン抗生物質、スルホンアミド、テトラサイクリン抗生物質、クロラフェニコール(chloraphenicol)、メトロニダゾール、チニダゾール、ニトロフラントイン、グリコペプチド、オキサゾリジノン、リファマイシン、ポリペプチド、ツベラクチノマイシン、およびそれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0034】
必須ではないが、薬学的活性成分は、好ましくは、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの全体にわたって実質的に均等に分配され、様々な実施形態において、該アミノ酸系ポリマー構造の約0.1%~約70重量%含まれるであろう。いくつかの実施形態において、薬学的活性成分は、本発明のアミノ酸系ポリマー構造の0.3重量%以上、他の実施形態において6重量%以上、他の実施形態において10重量%以上、他の実施形態において15重量%以上、他の実施形態において20重量%以上、他の実施形態において25重量%以上、および他の実施形態において30重量%以上含まれ得る。いくつかの実施形態において、薬学的活性成分は、本発明のアミノ酸系ポリマー構造の65重量%以下、他の実施形態において60重量%以下、他の実施形態において55重量%以下、他の実施形態において50重量%以下、他の実施形態において45重量%以下、他の実施形態において40重量%以下、および他の実施形態において35重量%以下含まれ得る。
【0035】
1つ以上の実施形態において、薬学的活性成分は、以下から選択される構造であり得る。
【化5】
【0036】
上述されるように、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、形状記憶特性を有し、尿素結合により連結されたアミノ酸系ポリエステルモノマー残基からなる。様々な実施形態において、これらのアミノ酸系ポリエステルモノマー残基は、C~C20炭素鎖の分だけエステル結合により離れた2つのアミノ酸の残基を含む。様々な実施形態において、これらのアミノ酸系ポリエステルモノマー残基は、アラニン(ala-A)、アルギニン(arg-R)、アスパラギン(asn-N)、アスパラギン酸(asp-D)、システイン(cys-C)、グルタミン(gln-Q)、グルタミン酸(glu-E)、グリシン(gly-G)、イソロイシン(ile-I)、ロイシン(leu-L)、リジン(lys-K)、メチオニン(met-M)、フェニルアラニン(phe-F)、セリン(ser-S)、スレオニン(thr-T)、トリプトファン(trp-W)、チロシン(tyr-Y)、バリン(val-V)、ベンジルで保護されたチロシン、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)で保護されたチロシン、4-ヨード-L-フェニルアラニン、およびプロパギルで保護されたチロシンが含まれるが、これらに限定されない2つのアミノ酸を含む。いくつかの他の実施形態において、これらのアミノ酸系ポリエステルモノマー残基は、L-2-アミノ酪酸(ABA)などの、1つ以上の非正準のアミノ酸の残基を含む。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、これらのアミノ酸系ポリエステルモノマー残基は、同じアミノ酸のうちの2つを含有し得るが、これは必須ではなく、アミノ酸系ポリエステルモノマー残基においてアミノ酸が異なる他の実施形態も、本発明の範囲内である。
【0037】
いくつかの実施形態において、これらのアミノ酸系ポリエステルモノマー残基においてアミノ酸残基を離すC~C20炭素鎖は、C~C20ポリオールの残基である。好適なC~C20ポリオールは、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,17-ヘプタデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,19-ノナデカンジオール、1,20-イコサンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、7-オクテン-1,2-ジオール、3-ヘキセン-1,6-ジオール、1,4-ブチンジオール、トリメチロールプロパンアリルエーテル、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、ペンタエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)ジペンタエリスリトール、およびそれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、以下の式を有し得、
【化6】
式中、aが、2~20の整数であり、mが、10~500の整数であり、各Rが、-CH、-(CHNHC(NH)C=NH、-CHCONH、-CHCOOH、-CHSH、-(CHCOOH、-(CHCONH、-H、-CH(CH)CHCH、-CHCH(CH、-(CHNH、-(CHSCH、-CHPh、-CHOH、-CH(OH)CH、-CH-C=CH-NH-Ph、-CH-Ph-OH、-CH(CH、-CHPh-OCHC≡CH、-CHPhOCH、-CHPhOCHCH、-CHPhO(CH、-CHPhO(CH、-CHPhO(CH、-CHPhO(CH、-CHPhO(CH、-CHPhO(CH、-CHPhOCHCH=CH、-CHPhO(CHCH=CH、-CHPhO(CHCH=CH、-CHPhO(CHCH=CH、-CHPhO(CHCH=CH、-CHPhO(CHCH=CH、-CHPhO(CHCH=CH、-CHPhO(CHCH=CH、-CHPhOCHPh、-CHPhOCOCHCHCOCH、-CHPhI、またはそれらの組み合わせであり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、aは、2~18、他の実施形態において2~16、他の実施形態において2~14、他の実施形態において2~12、他の実施形態において2~10、他の実施形態において2~8、他の実施形態において4~20、他の実施形態において6~20、他の実施形態において8~20、他の実施形態において10~20、および他の実施形態において12~20の整数であり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、mは、10~450、他の実施形態において10~400、他の実施形態において10~350、他の実施形態において10~300、他の実施形態において10~250、他の実施形態において10~250、他の実施形態において50~500、他の実施形態において100~500、他の実施形態において150~500、他の実施形態において200~500、および他の実施形態において250~500の整数であり得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、以下の式を有し得、
【化7】
式中、aが、2~20の整数であり、mが、10~500の整数である。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、aは、2~18、他の実施形態において2~16、他の実施形態において2~14、他の実施形態において2~12、他の実施形態において2~10、他の実施形態において2~8、他の実施形態において4~20、他の実施形態において6~20、他の実施形態において8~20、他の実施形態において10~20、および他の実施形態において12~20の整数であり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、mは、10~450、他の実施形態において10~400、他の実施形態において10~350、他の実施形態において10~300、他の実施形態において10~250、他の実施形態において10~250、他の実施形態において50~500、他の実施形態において100~500、他の実施形態において150~500、他の実施形態において200~500、および他の実施形態において250~500の整数であり得る。
【0040】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、以下の式を有し得る。
【化8】
【0041】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定される場合、10kDa~約500kDaの数平均分子量(M)を有する。いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、50kDa以上、他の実施形態において100kDa以上、他の実施形態において150kDa以上、他の実施形態において200kDa以上、他の実施形態において250kDa以上、他の実施形態において300kDa以上の数平均分子量(M)を有し得る。いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、450kDa以下、他の実施形態において400kDa以下、他の実施形態において350kDa以下、他の実施形態において300kDa以下、他の実施形態において250kDa以下、他の実施形態において200kDa以下、他の実施形態において150kDa以下、他の実施形態において100kDa以下の数平均分子量(M)を有し得る。
【0042】
様々な実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、示差走査熱量測定(DSC)により測定される場合、約2℃~約80℃のガラス転移温度(T)を有する。いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、5℃以上、他の実施形態において10℃以上、他の実施形態において15℃以上、他の実施形態において20℃以上、他の実施形態において30℃以上、他の実施形態において40℃以上、および他の実施形態において50℃以上のガラス転移温度(T)を有し得る。いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、23℃以上のTを有し得る。いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、70℃以下、他の実施形態において60℃以下、他の実施形態において50℃以下、他の実施形態において45℃以下、他の実施形態において40℃以下、他の実施形態において35℃以下、他の実施形態において30℃以下、他の実施形態において25℃以下のTを有し得る。
【0043】
上述されるように、酸系ポリエステル尿素ポリマー、したがって、それから形成される本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、著しい記憶形状特性を有し、この場合の温度において、刺激が適用されると一時的形状から恒久的形状に変化し得る。上で考察されるように、熱SMPは、一般に、(i)鎖運動性を活性化および抑制するための可逆的熱転移(すなわち、ガラス転移または溶融転移)、ならびに(ii)鎖滑りを防ぎ、恒久的形状を固化するための架橋構造を保有する。本発明の様々な実施形態において使用される酸系ポリエステル尿素ポリマーは、幅広いガラス転移温度(T)を利用する熱形状記憶挙動を提示し、これを超えると、著しい鎖運動性が活性化され得、かつ形状プログラミングおよび回復が達成された。1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、患者の体温で第1の形状を有し、患者の体温を下回る温度で第2の形状に一時的に固定され得る。これらの実施形態において、
形状記憶プログラミングおよび回復の有効性を説明するために頻繁に使用される2つの主なパラメータ。歪み固定率(R)および歪み回復率(R)パラメータは、以下の等式により定義され、
【数1】
【数2】
式中、εtempは、プログラミング後の一時的形状の最後の歪みと等しく、εloadは、プログラミング中に適用された最大の歪みであり、εrecは、回復された(形状回復後の)恒久的形状の歪みであり、εintは、恒久的形状の初期の歪みと等しい。これらのパラメータは、環式熱機械的試験を介して、一般に引張伸長を介して得られる。Rは、SMPがそのプログラムされた一時的形状をどの程度良好に維持し得るかのインジケータ―を提供し、Rは、一時的形状が恒久的形状にどの程度良好に回復し得るかのインジケータ―を提供する(100%が完璧な形状固定または回復である)。
【0044】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、動的機械分析(DMA)により測定される場合、約60~約100の歪み固定率(R)を有する。いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、65以上、他の実施形態において70以上、他の実施形態において75以上、他の実施形態において80以上、他の実施形態において85以上、他の実施形態において90以上の歪み固定率(R)を有し得る。いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、95以下、他の実施形態において90以下、他の実施形態において85以下、他の実施形態において80以下、他の実施形態において75以下、他の実施形態において70以下、および他の実施形態において65以下の歪み固定率(R)を有し得る。
【0045】
1つ以上の実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、DMAにより測定される場合、約60~約100の歪み回復率(R)を有する。いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、65以上、他の実施形態において70以上、他の実施形態において75以上、他の実施形態において80以上、他の実施形態において85以上、他の実施形態において90以上の歪み回復率(R)を有し得る。いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成する酸系ポリエステル尿素ポリマーは、95以下、他の実施形態において90以下、他の実施形態において85以下、他の実施形態において80以下、他の実施形態において75以下、他の実施形態において70以下、および他の実施形態において65以下の歪み回復率(R)を有し得る。
【0046】
薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造は、フィラメント、管、フィルム、カプセル、プレート、カテーテル、または袋が含まれるが、これらに限定されない任意の有用な形状に形成され得る。いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリマー構造は、3次元(3D)プリント構造を有し得る。
【0047】
第2の態様において、本発明は、上述されるような薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマーを調製する方法を対象とする。1つ以上の実施形態において、本方法は、上述されるようなアミノ酸系ポリエステル尿素モノマーを合成することから開始する。これらの実施形態のうちの1つ以上において、アミノ酸系ポリエステル尿素モノマーは、上述のアミノ酸、約2~約60個の炭素原子を有する線状または分岐状ポリオール、および好適な溶媒中の酸のうちの1つ以上を溶解することにより形成され得る。当業者はまた、過度な実験をすることなく、選択されたアミノ酸(複数可)および選択されたポリオールに好適な溶媒を選択し得る。好適な溶媒には、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、ジオキサン、およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
次いで、得られた溶液は、約110℃~約114℃の温度で24時間~72時間還流されて、約2~約20個の炭素原子の分だけ離れた2つ以上のアミノ酸残基を有するポリエステルモノマーの酸塩を形成する。いくつかの実施形態において、溶液は、約110℃~約112℃の温度に加熱される。いくつかの実施形態において、溶液は、約110℃の温度に加熱される。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、溶液は、約20時間~約40時間還流され得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、溶液は、約20時間~約30時間還流され得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、溶液は、約20時間~約24時間還流され得る。
【0049】
様々な実施形態において、アミノ酸系ポリエステルモノマーは、C~C20ジオール、上述のアミノ酸のうちの1つ以上、およびp-トルエンスホン酸モン水和物を反応させて、2~20個の炭素原子の分だけ離れた2つのアミノ酸残基を有するポリエステルモノマーのp-トルエン硫酸塩を含むポリエステルモノマーを生成することにより形成され得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、ポリオールは、2~20個の炭素原子を有するジオールであり得る。いくつかの実施形態において、ポリオールは、2~17個の炭素原子を有するジオールである。いくつかの実施形態において、ポリオールは、2~13個の炭素原子を有するジオールである。いくつかの実施形態において、ポリオールは、2~10個の炭素原子を有するジオールである。いくつかの実施形態において、ポリオールは、10~20個の炭素原子を有するジオールである。いくつかの実施形態において、ポリオールは、10個の炭素原子を有するジオールである。いくつかの実施形態において、ポリオールは、ジオール、トリオール、またはテトラオールであり得る。
【0051】
好適なポリオールには、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,17-ヘプタデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,19-ノナデカンジオール、1,20-イコサンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、7-オクテン-1,2-ジオール、3-ヘキセン-1,6-ジオール、1,4-ブチンジオール、トリメチロールプロパンアリルエーテル、3-アリルオキシ-1,2-プロパンジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、ペンタエリスリトール、ジ(トリメチロールプロパン)ジペンタエリスリトール、およびそれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。実施形態において、ポリオールは、1,8-オクタンジオールであり得、Sigma Aldrich Company LLC(St.Louis,Missouri)またはAlfa Aesar(Ward Hill,Massachusetts)から市販されている。
【0052】
1つ以上の実施形態において、アミノ酸系ポリエステルモノマーは、米国特許第9,988,492号および同第9745414号、ならびに米国公開出願第2017/0081476号および第2017/0210852号に示されているように形成され得、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
次に、上で考察される対イオンで保護されたアミノ酸系ポリエステルモノマーは、界面重合方法を使用して、ホスゲン、ジホスゲン、またはトリホスゲンなどの材料を形成するPEUと重合されて、本発明の1つ以上の実施形態に従って、薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造を作り出すために使用されるアミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマーを形成する。本明細書で使用される場合、「界面重合」という用語は、2つの非混和性流体の境界面でまたはその付近で実施される重合を指す。いくつかの実施形態において、界面重合反応は、重縮合反応である。
【0054】
これらの実施形態において、上で考察される対イオンで保護されたアミノ酸系ポリエステルモノマーは、所望のモル比で、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、または重炭酸カリウムなどの好適な有機水溶性塩基の第1の画分と組み合わされ、水中に溶解される。当業者は、過度な実験をすることなく、対イオンで保護されたアミノ酸系ポリエステルモノマーおよび有機水溶性塩基を水中に溶解できるであろう。いくつかの実施形態において、対イオンで保護されたアミノ酸系ポリエステルモノマーおよび有機水溶性塩基は、機械的攪拌および温水浴(およそ35℃)を使用して、水中に溶解され得る。
【0055】
尿素結合をアミノ酸官能化モノマー(複数可)に導入するために、材料を形成するPEUが用いられる。本明細書で使用される場合、「化合物を形成するPEU」および「材料を形成するPEU」という用語は、カルボキシル基を2つのアミン基の間に配置し、それにより、尿素結合を形成できる材料を指すために互換可能に使用される。材料を形成する好適なPEUには、トリホスゲン、ジホスゲン、またはホスゲンが含まれ得るが、これらに限定されない。ジホスゲン(液体)およびトリホスゲン(固体結晶)は、毒ガスであるホスゲンのより安全な代替品として一般に知られているため、ホスゲンより好適であることが理解されることに留意されたい。アミノ酸系PEUを作り出すための対イオンで保護されたアミノ酸系ポリエステルモノマー(複数可)とトリホスゲン、ジホスゲン、またはホスゲンとの反応は、下に記載されるように、または当業者に一般に既知の任意の数の方法で達成され得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明のアミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマーは、下のスキーム1に示されるように合成され得、
【化9】
式中、各Rが、-CH、-(CHNHC(NH)C=NH、-CHCONH、-CHCOOH、-CHSH、-(CHCOOH、-(CHCONH、-H、-CH(CH)CHCH、-CHCH(CH、-(CHNH、-(CHSCH、-CHPh、-CHOH、-CH(OH)CH、-CH-C=CH-NH-Ph、-CH-Ph-OH、-CH(CH、CHPh OCHC≡CH、CHPhOCH、CHPhOCHCH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhO(CH、CHPhOCHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhO(CHCH=CH、CHPhOCHPh、CHPhOCOCHCHCOCH、CHPhI、またはそれらの組み合わせであり得、aが、約1~約20の整数であり、nが、約10~約500の整数である。
【0057】
これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、aは、2~18、他の実施形態において2~16、他の実施形態において2~14、他の実施形態において2~12、他の実施形態において2~10、他の実施形態において2~8、他の実施形態において4~20、他の実施形態において6~20、他の実施形態において8~20、他の実施形態において10~20、および他の実施形態において12~20の整数であり得る。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、mは、10~450、他の実施形態において10~400、他の実施形態において10~350、他の実施形態において10~300、他の実施形態において10~250、他の実施形態において10~250、他の実施形態において50~500、他の実施形態において100~500、他の実施形態において150~500、他の実施形態において200~500、および他の実施形態において250~500の整数であり得る。
【0058】
これらの実施形態において、対イオンで保護されたアミノ酸系ポリエステルモノマーVIIは、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、または重炭酸カリウムなどの好適な塩基の第1の画分と組み合わされ、機械的攪拌および温水浴(およそ35℃)を使用して、水中に溶解され得る。また、当業者は、過度な実験をすることなく、対イオンで保護されたアミノ酸系ポリエステルモノマーおよび有機水溶性塩基を水中に溶解できるであろう。次いで、反応は、約-10℃~約2℃の温度に冷却され、塩基の追加の画分は、水中に溶解され、反応混合物に添加される。
【0059】
次に、化合物VIIIを形成するPEUの第1の画分は、好適な溶媒中に溶解され、反応混合物に添加される。当業者は、過度な実験をすることなく、化合物VIIIを形成するPEUに好適な溶媒を選択し得るであろう。化合物VIIIを形成するPEUに好適な溶媒の選択は、当然ながら、選択される特定の化合物に応じ、それらには、蒸留されたクロロホルム、ジクロロメタン、またはジオキサンが含まれ得るが、これらに限定されない。上のスキーム1に示される実施形態において、化合物VIIIを形成するPEUはトリホスゲンの形態で提供され、溶媒はクロロホルムである。約2~約60分の期間の後、材料(トリホスゲンまたはホスゲンなど)を形成するPEUの第2の画分は、蒸留されたクロロホルムまたはジクロロメタンなどの好適な溶媒中に溶解され、約0.5~約12時間の期間にわたって反応混合物に滴定添加されて、未処理のポリマーを生成する。未処理の生成物は、この目的のための当技術分野で既知の任意の手段を使用して精製され得る。いくつかの実施形態において、未処理のポリマー生成物を別々の漏斗に移し、沸騰水に沈殿させることにより精製できる。
【0060】
いくつかの実施形態において、本発明の1つ以上の実施形態に従って、薬物送達において使用するための形状記憶を有するアミノ酸系ポリマー構造を作り出すために使用されるアミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマーは、C~C20ジオール、1つ以上のアミノ酸、およびp-トルエンスホン酸一水和物(p-toluenesufonic acid monohydrate)を反応させて、2~20個の炭素原子の分だけ離れた2つのアミノ酸残基を有するポリエステルのp-トルエン硫酸塩を含むポリエステルモノマーを生成すること、モノマー、炭酸カルシウム無水物、および水を好適な反応容器内で組み合わせ、攪拌して、モノマーを溶解すること、温度を約20℃から約-20℃に低減し、水中に溶解された第2の量の炭酸カルシウム無水物を添加すること、トリホスゲンを乾燥クロロホルム中に溶解し、第1の量のトリホスゲンの溶液を添加すること、別のトリホスゲンの溶液をステップ4の組み合わせにゆっくりと添加し、温度を周囲温度に増加させること、ならびに次いで、ステップ5の組み合わせを攪拌して、モノマーおよびトリホスゲンの実質的にすべてを反応させて、上述の形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーを形成させることにより形成され得る。
【0061】
次に、アミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマーは、粉末に磨砕され、上述されるように1つ以上の薬学的活性成分と組み合わされる。いくつかの実施形態において、上述のアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、約1μm~約5000μmの粒径を有する粉末に磨砕される。いくつかの実施形態において、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、100μm以上、他の実施形態において150μm以上、他の実施形態において300μm以上、他の実施形態において600μm以上、他の実施形態において1000μm以上、および他の実施形態において2000μm以上の粒径を有する粉末に磨砕され得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、4500μm以下、他の実施形態において4000μm以下、他の実施形態において3500μm以下、他の実施形態において3000μm以下、他の実施形態において2500μm以下、他の実施形態において2000μm以下、他の実施形態において1500μm以下、および他の実施形態において1000μm以下の粒径を有する粉末に磨砕され得る。いくつかの実施形態において、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、450μm以下の粒径を有する粉末に磨砕される。
【0062】
薬学的活性成分/アミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマー粉末は組み合わされ、好ましくは、薬学的活性成分がアミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマー粉末の全体にわたって実質的に均等に分散されるまで混合される。薬学的活性成分は、上で特定および/または記載されるもののいずれかであり得る。
【0063】
様々な実施形態において、薬学的活性成分は、薬学的活性成分/アミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマー粉末混合物およびそれにより形成されるポリマー構造の約0.1%~約70重量%含まれるであろう。いくつかの実施形態において、薬学的活性成分は、薬学的活性成分/アミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマー粉末混合物およびそれにより形成されるポリマー構造の0.3重量%以上、他の実施形態において6重量%以上、他の実施形態において10重量%以上、他の実施形態において15重量%以上、他の実施形態において20重量%以上、他の実施形態において25重量%以上、および他の実施形態において30重量%以上含まれ得る。いくつかの実施形態において、薬学的活性成分は、薬学的活性成分/アミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマー粉末混合物およびそれにより形成されるポリマー構造の65重量%以下、他の実施形態において60重量%以下、他の実施形態において55重量%以下、他の実施形態において50重量%以下、他の実施形態において45重量%以下、他の実施形態において40重量%以下、および他の実施形態において35重量%以下含まれ得る。
【0064】
最終的に、薬学的活性成分/アミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマー粉末混合物は、本発明のアミノ酸系ポリマー構造に形成される。本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成するために使用される方法は特に限定されないが、ただし、使用される方法が、送達される薬学的活性成分を損傷するかまたは変性させる温度および/または圧力を伴わないことを条件とする。明らかになるように、本発明のアミノ酸系ポリマー構造を形成するために使用される方法はまた、使用されている特定のポリマーの分子量、T、および可溶性に関しても適切であるべきである。好適な方法には、押し出し成形、毛管レオメータ押し出し成形、圧縮成型、インジェクション成型、3Dプリンティング、噴霧乾燥、フィルム流延成形、ドクターブレーディング法、溶液処理、またはそれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0065】
上述されるように、上述のアミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマーのような形状記憶ポリマーの1つの著しい利点は、恒久的形状にそれらを戻す刺激、大抵の場合は熱により作用されるまで、一時的形状に固定されるそれらの能力である。予想外には、本発明のアミノ酸系ポリマー構造中の薬学的活性成分の存在は、これらのポリマーのこの形状記憶能力に著しく影響を及ぼさないことが見出された。
【0066】
さらに、いくつかの用途において、本発明のポリマー構造が患者の体内にあるときにとるであろう第1の(恒久的)形状、および本発明のポリマー構造を特許に挿入するのを容易にする第2の(一時的)形状を有することも利点であるか、またはいくつかの他の理由のために、本発明のポリマー構造が患者の体内の特定の配置につくまでそれらの恒久的形状を有さないことが最適である。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、本発明のポリマー構造は、患者の体温およびアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーのT以上である温度で形成されるか、または形づくられる。次いで、本発明のポリマー構造は、所望の一時的形状になるように物理的に操作され、次いで、第2の(一時的)形状にポリマー構造を保ちながら、温度を、該アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーのTおよび患者の体温を下回る温度に低減することによりその形状に固定する。明らかになるように、これらの実施形態において選択されるアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、特許の体温の、またはほぼ体温のTを有するであろう。
【0067】
第3の態様において、本発明は、上述のアミノ酸系ポリマー構造を使用して、薬学的活性化合物を患者に送達するための方法を対象とする。これらの実施形態のうちのいくつかにおいて、本発明のポリマー構造は、上述されるように形成および固定され、ポリマー構造は、患者の体温で、またはほぼ体温で恒久的形状およびより低い温度で第2の一時的形状を有するであろう。次いで、本発明のポリマー構造は、患者の体液と接触するように体内に挿入される。患者の体内に挿入されると、ポリマー構造の温度は、患者の体温に達するまで増加し、それにより、その恒久的形状を取り戻す。
【0068】
上述されるように、本発明のポリマー構造を形成するために使用されるアミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマーは、生分解可能、除菌可能、および非毒性であり、非毒性分解生成物を有し、かつインビボでの分解中、炎症性応答をもたらさない。アミノ酸系ポリマー構造を形成するアミノ酸系ポリ(エステル尿素)ポリマーが分解を開始すると、それは、薬学的活性成分を患者の体内に放出する。
【0069】
第4の態様において、本発明は、上述されるような形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーの全体にわたって分散されている薬学的活性化合物を含む、形状記憶を有する薬物送達系を対象とし、該形状記憶特性を有するアミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーは、薬物送達のためのポリマー構造に形成され、患者の体内に挿入される。次いで、薬学的活性化合物は、アミノ酸系ポリエステル尿素ポリマーが分解されると放出される。
【0070】
実験
本発明を評価し、さらに実施化するために、以下の実験を実行した。これらの実験において、ジ-p-トルエンスルホン酸塩およびトリホスゲンの界面重合により、異なるPEUを合成した。ボールミル磨砕装置を使用して、得られたポリマーを磨砕して、粒径<450μmの粉末を生成した。薬物充填≧10重量%である回転混合を介して、粉末ポリマーおよび特定の活性薬学的成分(API)(図2)を組み合わせたフィラメントを生成し、毛管レオメータ押し出し成形を介して最適化した。HPLC分析およびμ-CT 3D撮像により、フィラメントの内容物の均一性を確認した。表1は、各フィラメントの組成を示す。フィラメントは、押し出し成形を基にした3Dプリンティングを用いて臨床的に関連する構築物に変換され得る。粉末薬物/ポリマー配合物はまた、圧縮成型物、インジェクション成型物などにも修正されて、構築物が調製され得る。
【表1】
【0071】
フィラメントが一時的な「U」形状から恒久的線形状に回復する能力を監視することにより、各配合物の熱形状記憶挙動を試験した。ヒートガンの下で材料を穏やかに加熱し、フィラメントを半分に曲げ、材料を冷却しながらフィラメントの両端を保持することにより、一時的形状をプログラムした。フィラメントの一端のみを所定の配置で保持しながら、ヒートガンを用いて一時的形状を穏やかに加熱することにより、形状回復を引き起こした。すべてのリスペリドンおよびエンテカビル配合物に関して形状記憶挙動が観察された(R10、R20、R30、R40、E10、E20、E30、およびE40、図2を参照されたい)。リドカイン配合物に関して、L10のみが形状記憶挙動を示した(図3)。しかし、材料がプログラムされた一時的形状を保持する能力には、非常に限界があった。より高いリドカイン充填を有する配合物は、過度に柔らかく、室温で形状の固定化を提示しなかった。すべての形状記憶試験の結果および観察を表2に要約した。
【表2】
【0072】
APIエンテカビルおよびリスペリドンの熱不安定性および乏しい吸収はそれぞれ、薬物送達の手段の開発において著しい課題をもたらした。慢性B型肝炎を治療するために一般的に使用されるエンテカビルは、保管および生存性のために凍結温度未満を必要とする。B型肝炎は、太平洋およびアフリカ地域で最も蔓延しており、成人人口のおよそ6%が感染している。世界保健機関のB型肝炎報告書を参照されたい。http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs204/en/(5/25/17にアクセス済み)かかる地域における近代化には限界があるため、冷却保管は不可能であることが多く、よって、新しい保管方法が必要とされる。統合失調症および自閉症の興奮性を治療するために使用される抗精神病薬であるリスペリドンは、経口投薬モデルによる吸収が乏しく、しばしば舌下に溶解タブレットを配置して投与される。多くの患者からは、この薬剤の苦さについての不満が出ており、治療の継続が拒否されることが多くある。かかる患者の治療を継続するために、埋め込み式デバイスには、リスペリドンの摂取および患者の服薬遵守の改善の余地がある。PEU中に存在する強力な水素結合ネットワークは、薬物とポリマーとの間の水素結合を可能にし、それにより、改善された薬物安定性をもたらし得ると考えられている。組織を麻痺させ、心室性不整脈を治療するために局所麻酔、リドカイン、およびブピバカインが世界中で使用される。それらは、IVを介して投与されるか、影響を受けているエリアに注射されるか、または局所的に適用される。乳房切除およびヘルニアなどのいくつかの病弊は、適切に治癒するためにメッシュを必要とするが、影響を受けているエリアへの除痛剤の直接投与は困難であると実証されている。麻酔をメッシュマトリックスに組み込むことにより、より標的化された除痛が受傷の期間にわたって有効になるであろう。形状記憶挙動を有するCRFは、体内への侵入に関して低侵襲性処置を可能にし得るため重要である。加えて、薬物放出は、構築物の形状に応じる可能性があり(例えば、異なる放出速度を有する)、それにより、投薬の制御の新しい機会がもたらされる。
【実施例
【0073】
以下の実施例は、本発明をより完全に例示するために提供されるが、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。さらに、実施例のいくつかは、本発明が機能し得る方式についての結果を含み得る一方で、発明者は、これらの結果により束縛されることを意図しないが、可能性がある説明としてのみそれらを記載する。さらに、過去形を使用して記載されていない限り、実施例の表示は、実験または処置が実行されたかもしくはされなかったか、または結果が実際に得られたかもしくは得られなかったのかを意味しない。使用される数(例えば、量、温度)に関して確実に正確になるように尽力したが、いくつかの実験エラーおよび偏向が存在し得る。別途示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は雰囲気圧またはほぼ雰囲気圧である。
【0074】
材料
クロロホルムを不活性ピュアソルブ溶媒精製システムからか、または水素化カルシウムの上で一晩乾燥させ、次いで、蒸留して得た。市販の供給源から得られるものとして、すべての他の試薬および溶媒を使用した。
【0075】
特徴付け
NMRスペクトルをVarian NMR分光装置(300および500MHz)を用いて収集した。すべての化学シフトは、ppm(δ)で報告し、残基溶媒共鳴の化学シフトを参照した(H NMR、ジメチルスルホキシド(DMSO)-d6:2.50ppm;13C NMR DMSO-d6:39.50ppm)。以下の略語を使用して、多重度を説明した:s=一重、d=二重、t=三重、q=四重、およびm=多重。数平均分子質量(M)および沈殿後分子質量分布(D)をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定し、分子質量をポリスチレン標準に対して決定した。溶離液(1mL/分の流量および50℃の温度)としてジメチルホルムアミド(DMF)(0.01M LiBrを含有する)を用いるTOSOH HLC-8320ゲル浸透クロマトグラフ機器および示差屈折計を使用してSEC分析を行った。ポリマーのTを、示差走査熱量測定(DSC、TA Q2000、20℃/分のスキャン速度)または動的機械分析(DMA、TA Q800、3℃/分、および1Hzの周波数)により決定した。Rigaku Ultima IV X線回折計上で、X線回折(XRD)データを収集した。クロロホルム中に溶解して、KBr塩プレート(32スキャン、8cm-1分解能)に適用後に、Nicolet i550 FT-IR(Thermo Scientific)上でモノマーおよびポリマーのIRスペクトルを収集した。
【0076】
実施例1
VAL系PEUおよびPHE系PEUの合成。
VAL系PEUおよびPHE系PEUを調製し、Childers,E.P.;Peterson,G.I.;Ellenberger,A.B.;Domino,K.;Seifert,G.V.;Becker,M.L.Adhesion of Blood Plasma Proteins and Platelet-rich Plasma on l-Valine-Based Poly(ester urea).Biomacromolecules 2016,17,3396-3403、およびYu,J.;Lin,F.;Lin,P.;Gao,Y.;Becker,M.L.Phenylalanine-Based Poly(ester urea):Synthesis,Characterization,and,in vitro Degradation.Macromolecules 2014,47,121-129に前述されているように特徴付け、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
実施例2
PEUモノマーの合成ための一般的な手順
1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、または1,12-ドデカンジオール(1.0mol当量)のいずれか、L-アミノ酸(2.3mol当量)、p-トルエンスルホン酸一水和物(TsOH)(2.4mol当量)、およびトルエン(1mL/1グラムのTsOH)を、Dean-Starkトラップおよび凝縮装置を備えた丸首フラスコに添加した。溶液を磁気攪拌棒で攪拌しながら、加熱して、還流させた(およそ110℃)。およそ20時間後、反応混合物を周囲温度に冷却した。得られた沈殿物を真空濾過により収集した。固体生成物を最小限の湯で溶解し、少量の活性化カーボンブラックを使用して2~3分間脱色した。この溶液をろ過して、カーボンブラックを除去し、室温に冷却した。次いで、湯を使用して沈殿物を3回再結晶化させて、精製モノマーを得た。
【0078】
実施例3
m(1-ALA-6)の合成
再結晶化手順を除いて、上述の一般的な手順に従ってモノマーを調製した。エタノールとイソプロパノールとの1:1(体積による)の混合物からモノマーを4回再結晶化させた。モノマーを145mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、79%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):8.27(s,6H;NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=7.8Hz,4H;Ar-H)、4.16(m,4H;CH)、4.10(q,J=7.2Hz,2H;CH)、2.29(s,6H;CH)、1.61(m,4H;CH)、1.39(d,J=7.2Hz,6H;CH)、1.35(m,4H;CH)。13C NMR(126MHz,DMSO-d6,δ):169.92、145.21、137.89、128.10、125.46、65.49、47.93、27.76、24.71、20.75、15.70。IR(cm-1):1743(-C-(CO)-O-)。
【0079】
実施例4
m(1-ALA-8)の合成
再結晶化手順を除いて、上述の一般的な手順に従ってモノマーを調製した。エタノールとイソプロパノールとの1:1(体積による)の混合物からモノマーを4回再結晶化させた。モノマーを147mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、79%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):8.27(s,6H;NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=7.8Hz,4H;Ar-H)、4.13(m,6H;CHおよびCH)、2.29(s,6H;CH)、1.59(m,4H;CH)、1.39(d,J=7.2Hz,6H;CH)、1.32(m,8H;CH)。13C NMR(126MHz,DMSO-d6,δ):169.92、145.27、137.83、128.10、125.45、65.56、47.92、28.43、27.87、25.05、20.71、15.69。IR(cm-1):1749(-C-(CO)-O-)。
【0080】
実施例5
m(1-ALA-10)の合成。
再結晶化手順を除いて、上述の一般的な手順に従ってモノマーを調製した。エタノールとイソプロパノールとの1:1(体積による)の混合物からモノマーを4回再結晶化させた。モノマーを132mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、80%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):8.26(s,6H;NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、4.14(m,6H;CHおよびCH)、2.29(s,6H;CH)、1.60(m,4H;CH)、1.39(d,J=7.2Hz,6H;CH)、1.29(m,12H;CH2)。13C NMR(126MHz,DMSO-d6,δ):169.92、145.32、137.78、128.05、125.45、65.58、47.90、28.81、28.55、27.89、25.12、20.73、15.68。IR(cm-1):1736(-C-(CO)-O-)。
【0081】
実施例6
m(1-ALA-12)の合成。
再結晶化手順を除いて、上述の一般的な手順に従ってモノマーを調製した。エタノールとイソプロパノールとの1:1(体積による)の混合物からモノマーを4回再結晶化させた。モノマーを145mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、80%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):8.27(s,6H;NH)、7.49(d,J=7.5Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=7.5Hz,4H;Ar-H)、4.13(m,6H;CHおよびCH)、2.29(s,6H;CH)、1.59(m,4H;CH)、1.39(d,J=7.0Hz,6H;CH)、1.27(m,16H;CH)。13C NMR(126MHz,DMSO-d6,δ):169.90、145.21、137.85、128.07、125.45、65.57、47.92、28.93、28.89、28.58、27.90、25.13、20.74、15.67。IR(cm-1):1736(-C-(CO)-O-)。
【0082】
実施例7
m(1-ABA-6)の合成。
再結晶化手順を除いて、上述の一般的な手順に従ってモノマーを調製した。3:4(体積による)のエタノールおよび酢酸エチルからモノマーを3回再結晶化させた。モノマーを46mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、73%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):8.33(s,6H,NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.13(d,J=7.8Hz,2H;Ar-H)、4.15(m,4H;CH)、4.01(m,2H;CH)、2.29(s,6H;CH)、1.81(m,4H;CH)、1.60(m,4H;CH)、1.34(m,4H;CH)、0.91(t,J=7.4Hz,6H;CH)。13C NMR(75MHz,DMSO-d6,δ):169.46、145.08、138.07、128.21、125.53、65.51、53.11、27.84、24.80、23.46、20.83、9.06。IR(cm-1):1745(-C-(CO)-O-)。
【0083】
実施例8
m(1-ABA-8)の合成。
再結晶化手順を除いて、上述の一般的な手順に従ってモノマーを調製した。3:4(体積による)のエタノールおよび酢酸エチルからモノマーを3回再結晶化させた。モノマーを46mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、81%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):8.31(s,6H,NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=7.9Hz,2H;Ar-H)、4.16(m,4H;CH)、4.00(m,2H;CH)、2.29(s,6H;CH)、1.81(m,4H;CH)、1.59(m,4H;CH)、1.29(m,8H;CH)、0.92(t,J=7.5Hz,6H;CH)。13C NMR(75MHz,DMSO-d6,δ):169.47、144.92、138.23、128.27、125.58、65.61、53.18、28.54、27.99、25.21、23.49、20.87、9.09。IR(cm-1):1745(-C-(CO)-O-)。
【0084】
実施例9
m(1-ABA-10)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにモノマーを合成した。モノマーを46mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、67%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):8.30(s,6H,NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=7.9Hz,2H;Ar-H)、4.16(m,4H;CH)、4.00(t,J=6.0Hz,2H;CH)、2.29(s,6H;CH)、1.81(m,4H;CH)、1.60(m,4H;CH)、1.27(m,12H;CH)、0.92(t,J=7.5Hz,6H;CH)。13C NMR(75MHz,DMSO-d6,δ):169.46、145.05、138.08、128.20、125.54、65.60、53.12、28.90、28.62、27.99、25.25、23.46、20.83、9.05。IR(cm-1):1745(-C-(CO)-O-)。
【0085】
実施例10
m(1-ABA-12)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにモノマーを合成した。モノマーを46mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、83%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):8.30(s,6H,NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=7.7Hz,2H;Ar-H)、4.16(m,4H;CH)、4.02(m,2H;CH)、2.29(s,6H;CH)、1.81(m,4H;CH)、1.60(m,4H;CH)、1.25(m,16H;CH)、0.92(t,J=7.5Hz,6H;CH)。13C NMR(75MHz,DMSO-d6,δ):169.44、144.95、138.15、128.23、125.57、65.59、53.16、29.05、29.02、28.69、28.02、25.29、23.47、20.85、9.07。IR(cm-1):1742(-C-(CO)-O-)。
【0086】
実施例11
m(1-ILE-6)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにモノマーを合成した。モノマーを80mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、85%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):8.30(s,6H;NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=8.1Hz,4H;Ar-H)、4.16(m,4H;CH)、3.96(s,2H;CH)、2.29(s,6H;CH)、1.87(m,2H;CH)、1.60(m,4H;CH)、1.36(m,8H;CH)、0.89(m,12H;CH)。13C NMR(126MHz,DMSO-d6,δ):168.69、145.44、137.69、128.01、125.43、65.40、56.06、35.91、27.75、25.23、24.74、20.71、14.18、11.41。IR(cm-1):1736(-C-(CO)-O-)。
【0087】
実施例12
m(1-ILE-8)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにモノマーを合成した。モノマーを70mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、92%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):8.29(s,6H,NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=8.2Hz,4H;Ar-H)、4.15(m,4H;CH)、3.96(d,J=3.9Hz,2H;CH)、2.29(s,6H;CH)、1.88(m,2H;CH)、1.59(m,4H;CH)、1.44(m,2H;CH) 1.28(m,10H;CH)、0.88(m,12H;CH)。13C NMR(126MHz,DMSO-d6,δ):168.71、145.42、137.70、128.01、125.43、65.49、56.07、35.92、28.35、27.85、25.23、25.14、20.72、14.17、11.41。IR(cm-1):1747(-C-(CO)-O-)。
【0088】
実施例13
m(1-ILE-10)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにモノマーを合成した。モノマーを60mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、86%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):8.30(s,6H;NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=7.9Hz,4H;Ar-H)、4.15(m,4H;CH)、3.96(d,J=3.6Hz,2H;CH)、2.29(s,6H;CH)、1.87(m,2H;CH)、1.58(m,4H;CH)、1.44(m,2H;CH) 1.28(m,10H;CH)、0.90(m,12H;CH)。13C NMR(126MHz,DMSOd6,δ):168.71、145.39、137.74、128.04、125.45、65.54、56.09、35.93、28.78、28.47、27.89、25.25、25.24、20.73、14.18、11.43。IR(cm-1):1745(-C-(CO)-O-)。
【0089】
実施例14
m(1-ILE-12)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにモノマーを合成した。モノマーを40mmolスケール(ジオールに基づいて)上で調製し、82%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):8.29(s,6H,NH)、7.49(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、7.12(d,J=8.0Hz,4H;Ar-H)、4.15(m,4H;CH)、3.96(d,J=3.9Hz,2H;CH)、2.29(s,6H;CH)、1.88(m,2H;CH)、1.59(m,4H;CH)、1.45(m,2H;CH) 1.27(m,10H;CH)、0.88(m,12H;CH)。13C NMR(126MHz,DMSOd6,δ):168.70、145.41、137.69、128.01、125.44、65.52、56.08、35.92、28.86、28.47、27.88、25.23、25.22、20.72、14.16、11.41。IR(cm-1):1745(-C-(CO)-O-)。
【0090】
実施例15
PEUの合成のための一般的な手順。
3Lの三首丸底フラスコにモノマー((1.0mol当量)、炭酸ナトリウム水和物(2.1mol当量)、および脱イオン水(10mL/1mmolのモノマー)を添加した。35℃の水浴中で、0.5時間溶液を機械的に攪拌して(400~450rpm)、モノマーを溶解した。次いで、氷浴を使用して、溶液を0℃に冷却し、脱イオン水(4mL/1mmolのモノマー)中の別の分割量の炭酸ナトリウム(1.05mol当量)を添加した。次に、乾燥クロロホルム(2.5mL/1mmolのモノマー)中に溶解したトリホスゲン(0.35mol当量)の溶液を、追加の漏斗を用いて一度にすべて丸底フラスコに添加した。0.5時間後、クロロホルム(1mL/1mmolのモノマー)中の追加の分割量のトリホスゲン(0.08mol当量)を、追加の漏斗を介して滴定添加した。重合溶液を2~21時間攪拌し、氷浴を終わらせた。反応時間後、溶液を別々の漏斗に移し、脱イオン温水(>70℃)に滴定添加した。ポリマーを収集し、残基モノマーがNMRにより検出された場合、再沈殿させた。低圧力下でポリマーを乾燥させた。
【0091】
実施例16
p(1-ALA-6)の合成。
トリホスゲンの添加ステップの回数を除いて、上述の一般的な手順に従ってポリマーを調製した。ポリマーの分子質量をさらに増加させるために、第2の添加のトリホスゲンの量を0.16mol当量に増加し、第2の添加の2時間後、トリホスゲンの第3の添加(クロロホルム中0.16mol当量、1mL/1mmolのモノマー)を添加した。ポリマーを33mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第3のトリホスゲンの添加後17時間攪拌し、70%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):6.35(d,J=7.7Hz,NH)、4.03(m,CH,およびCH)、1.53(m,CH)、1.32(m,CH)、1.21(d,J=6.3Hz,CH)。IR(cm-1):1550、1638(-NH-(CO)-NH-)、1728(-C-(CO)-O-)、3356(-NH-(CO)-NH-)。
【0092】
実施例17
p(1-ALA-8)の合成。
トリホスゲンの添加ステップの回数を除いて、上述の一般的な手順に従ってポリマーを調製した。ポリマーの分子質量をさらに増加させるために、第2の添加のトリホスゲンの量を0.16mol当量に増加し、第2の添加の2時間後、トリホスゲンの第3の添加(クロロホルム中0.16mol当量、1mL/1mmolのモノマー)を添加した。ポリマーを30mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第3のトリホスゲンの添加後17時間攪拌し、71%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):6.35(s,NH)、4.00(m,CH,およびCH)、1.53(m,CH)、1.25(m,CH)、1.21(d,J=7.2Hz,CH)。IR(cm-1):1564、1634(-NH-(CO)-NH-)、1738(-C-(CO)-O-)、3323(-NH-(CO)-NH-)。
【0093】
実施例18
p(1-ALA-10)の合成。
トリホスゲンの添加ステップの回数を除いて、上述の一般的な手順に従ってポリマーを調製した。ポリマーの分子質量をさらに増加させるために、第2の添加のトリホスゲンの量を0.16mol当量に増加し、第2の添加の2時間後、トリホスゲンの第3の添加(クロロホルム中0.16mol当量、1mL/1mmolのモノマー)を添加した。ポリマーを30mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第3のトリホスゲンの添加後17時間攪拌し、89%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):6.35(d,J=7.7Hz,NH)、4.02(m,CH,およびCH)、1.52(m,CH)、1.23(m,CH,およびCH)。IR(cm-1):1562、1634(-NH-(CO)-NH-)、1736(-C-(CO)-O-)、3350(-NH-(CO)-NH-)。
【0094】
実施例19
p(1-ALA-12)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにポリマーを合成した。ポリマーを29mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第2のトリホスゲンの添加後12時間攪拌し、84%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):6.35(d,J=7.7Hz,NH)、4.00(m,CH,およびCH)、1.52(m,CH)、1.23(m,CH,およびCH)。IR(cm-1):1562、1634(-NH-(CO)-NH-)、1736(-C-(CO)-O-)、3339(-NH-(CO)-NH-)。
【0095】
実施例20
p(1-ABA-6)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにポリマーを合成した。ポリマーを16mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第2のトリホスゲンの添加後21時間攪拌し、95%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):6.37(d,J=7.5Hz,NH)、4.07(m,CH,およびCH)、1.61(m,CH)、1.31(m,CH)、0.85(t,J=6.9Hz,CH)。IR(cm-1):1563、1636(-NH-(CO)-NH-)、1734(-C-(CO)-O-)、3347(-NH-(CO)-NH-)。
【0096】
実施例21
p(1-ABA-8)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにポリマーを合成した。ポリマーを15mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第2のトリホスゲンの添加後21時間攪拌し、97%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):6.39(d,J=8.1Hz,NH)、4.01(m,CH,およびCH)、1.62(m,CH)、1.26(m,CH)、0.84(t,J=7.3Hz,CH)。IR(cm-1):1559、1640(-NH-(CO)-NH-)、1736(-C-(CO)-O-)、3356(-NH-(CO)-NH-)。
【0097】
実施例22
p(1-ABA-10)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにポリマーを合成した。ポリマーを15mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第2のトリホスゲンの添加後4時間攪拌し、89%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):6.40(d,J=7.5Hz,NH)、4.06(m,CH,およびCH)、1.60(m,CH)、1.25(m,CH)、0.85(m,CH)。IR(cm-1):1561、1638(-NH-(CO)-NH-)、1738(-C-(CO)-O-)、3355(-NH-(CO)-NH-)。
【0098】
実施例24
p(1-ABA-12)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにポリマーを合成した。ポリマーを15mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第2のトリホスゲンの添加後5時間攪拌し、90%の収率で得た。H NMR(300MHz,DMSO-d6,δ):6.37(d,J=8.0Hz,NH)、4.04(m,CH,およびCH)、1.60(m,CH)、1.24(m,CH)、0.84(m,CH)。IR(cm-1):1562、1638(-NH-(CO)-NH-)、1738(-C-(CO)-O-)、3352(-NH-(CO)-NH-)。
【0099】
実施例25
p(1-ILE-6)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにポリマーを合成した。ポリマーを70mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第2のトリホスゲンの添加後2時間攪拌し、85%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):6.37(d,J=8.9Hz,NH)、4.04(m,CH,およびCH)、1.71(m,CH)、1.55(s,CH)、1.34(m,CH)、1.12(m,CH)、0.84(m,CH)。IR(cm-1):1547、1631(-NH-(CO)-NH-)、1732(-C-(CO)-O-)、3356(-NH-(CO)-NH-)。
【0100】
実施例26
p(1-ILE-8)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにポリマーを合成した。ポリマーを50mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第2のトリホスゲンの添加後2時間攪拌し、92%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):6.38(d,J=6.9Hz,NH)、4.03(m,CH,およびCH)、1.71(m,CH)、1.53(s,CH)、1.33(m,CH)、1.12(m,CH)、0.86(m,CH)。IR(cm-1):1547、1629(-NH-(CO)-NH-)、1736(-C-(CO)-O-)、3360(-NH-(CO)-NH-)。
【0101】
実施例27
p(1-ILE-10)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにポリマーを合成した。ポリマーを40mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第2のトリホスゲンの添加後20時間攪拌し、91%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):6.38(d,J=8.6Hz,NH)、4.05(m,CH,およびCH)、1.70(m,CH)、1.49(s,CH)、1.41(m,CH)、1.13(m,CH)、0.83(m,CH)。IR(cm-1):1552、1631(-NH-(CO)-NH-)、1738(-C-(CO)-O-)、3356(-NH-(CO)-NH-)。
【0102】
実施例28
p(1-ILE-12)の合成。
上述の一般的な手順に記載されるようにポリマーを合成した。ポリマーを30mmolスケール(モノマーに基づいて)上で調製し、第2のトリホスゲンの添加後20時間攪拌し、89%の収率で得た。H NMR(500MHz,DMSO-d6,δ):6.43(d,J=7.6Hz,NH)、4.06(m,CH,およびCH)、1.71(m,CH)、1.53(s,CH)、1.29(m,CH)、0.86(m,CH)。IR(cm-1):1554、1631(-NH-(CO)-NH-)、1738(-C-(CO)-O-)、3356(-NH-(CO)-NH-)。
【0103】
前述の記載を考慮すると、本発明は、いくつの点で構造的および機能的に改善された、形状記憶特性を有し、当技術分野で既知の薬物送達のためのポリマーの欠点を有しない薬物送達において使用するための新規の薬物が担持されたポリ(エステル尿素)ポリマー(ならびにそれらの合成および使用のための関連方法)を提供することにより当技術分野を著しく前進させることを認識されたい。本発明の特定の実施形態が本明細書に詳細に開示されているが、本明細書における本発明の変形形態が当業者により容易に認識されるように、本発明がそれらにまたはそれらにより限定されないことを認識されたい。本発明の範囲は、以下に続く特許請求の範囲から認識されるであろう。
図1
図2
図3