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特許7472025フィッシャー-トロプシュ法、担持フィッシャー-トロプシュ法合成触媒およびその使用
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  • 特許-フィッシャー-トロプシュ法、担持フィッシャー-トロプシュ法合成触媒およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】フィッシャー-トロプシュ法、担持フィッシャー-トロプシュ法合成触媒およびその使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/889 20060101AFI20240415BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240415BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20240415BHJP
   C07C 9/00 20060101ALI20240415BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20240415BHJP
   C07C 31/02 20060101ALI20240415BHJP
   C07C 29/156 20060101ALI20240415BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
B01J23/889 M
B01J37/02 101C
C10G2/00
C07C9/00
C07C1/04
C07C31/02
C07C29/156
C07B61/00 300
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020541920
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2019052951
(87)【国際公開番号】W WO2019154885
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】18156166.3
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18197002.1
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397035070
【氏名又は名称】ビーピー ピー・エル・シー・
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】パタースン,アレキサンダー,ジェームス
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/009427(WO,A1)
【文献】特表2018-505251(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104959148(CN,A)
【文献】特表2002-500095(JP,A)
【文献】TiO2 supported cobalt-manganese nano catalysts for light olefins production from syngas,Journal of Energy Chemistry,2013年,22,pp. 645-652,https://doi.org/10.1016/52095-4956(13)60085-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C10G 2/00
C07C 9/00
C07C 1/04
C07C 31/02
C07C 29/156
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素および一酸化炭素ガスの混合物を、フィッシャー-トロプシュ合成反応によって、アルコールおよび液化炭化水素を含む組成物に変換する方法であって、前記方法は、水素および一酸化炭素ガスの混合物を、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒と接触させることを含み、前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒の担持材料が、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニア、およびセリアから選択される材料を含み、前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒が、前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、少なくとも2.5重量%のマンガンを含み、コバルトに対するマンガンの重量比が、元素基準で、0.2またはそれ以上であり、一酸化炭素に対する水素のモル比が少なくとも1であり、前記フィッシャー-トロプシュ合成反応が、1.0~10.0MPaの範囲の絶対圧力で行われる方法。
【請求項2】
前記担持材料がチタニアを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記担持材料がチタニアである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒中に存在するコバルトに対するマンガンの重量比が、元素基準で、0.2~3.0の範囲である請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒が、前記担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、5重量%から35重量%までのコバルトを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒が、前記担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、2.5重量%から15重量%までのマンガンを含む請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒中のコバルトとマンガンの合計量が、前記担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、30重量%未満である請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒が、100オングストローム未満の粒径を有するCo微結晶を含む請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記フィッシャー-トロプシュ合成反応が、300℃又はそれ未満の温度で行われる請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記フィッシャー-トロプシュ合成反応が、7.5MPa未満の絶対圧力で行われる請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルコールが、C5+アルコールである請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が少なくとも15%のアルコールに対する選択性を有する請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記担持材料が、前記コバルト含有化合物および前記マンガン含有化合物の両方を含む溶液または懸濁液で含浸される請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
100オングストローム未満、好ましくは60オングストローム未満の粒径を有するCo微結晶を含み、担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、少なくとも2.5重量%のマンガンを含む担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒であって、コバルトに対するマンガンの重量比が、元素基準で、0.2又はそれより大きく、前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒の担持材料が、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニア、およびセリアから選択される材料を含む合成触媒。
【請求項15】
請求項13に定義される担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒を調製するための方法であって、前記方法は、
(a)含浸された担持材料を形成するための単一の含浸工程において、担持材料にコバルト含有化合物とマンガン含有化合物とを含浸させる段階と、
(b)担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒を形成するために含浸された担持材料を乾燥および焼成する段階とを含む方法。
【請求項16】
水素含有ガス流と接触させることによって還元された担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒を形成するために、前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒を還元する段階をさらに含む請求項13または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
還元が、200℃~400℃の温度で行われる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
水素と一酸化炭素ガスの混合物をフィッシャー-トロプシュ合成反応によりアルコールと液化炭化水素を含む組成物に変換する方法であって、水素と一酸化炭素ガスの混合物を請求項14に定義される担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒に接触させることを含む方法。
【請求項19】
水素と一酸化炭素ガスの混合物が、合成ガス混合物の形態である請求項1~13又は請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項14に定義される担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒を調製する方法であって、前記方法は、
(a)含浸された担持材料を形成するための単一の含浸工程において、担持材料にコバルト含有化合物とマンガン含有化合物とを含浸させる段階と、
(b)担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒を形成するために含浸された担持材料を乾燥および焼成する段階とを含む方法。
【請求項21】
水素と一酸化炭素ガスの混合物をフィッシャー-トロプシュ合成反応によりアルコールと液化炭化水素を含む組成物に変換する方法であって、水素と一酸化炭素ガスの混合物を請求項14に定義される担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒に接触させることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コバルトおよびマンガンの両方を含有する担持フィッシャー-トロプシュ合成触媒を用いるフィッシャー-トロプシュ法、ならびに合成触媒自体およびその製造方法に関する。また、アルコールおよび/または液体炭化水素の製造のためのフィッシャー-トロプシュ法の選択性を増加させるための、および/またはフィッシャー-トロプシュ法における変換を増加させるための、担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒の使用も提供される。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー-トロプシュ法による合成ガスの炭化水素への変換は、長年知られている。代替エネルギー源の重要性が高まっていることから、フィッシャー-トロプシュ法は、高品質輸送燃料や潤滑油への、より魅力的な直接的で環境的に受け入れ可能な経路の一つとして、新たな関心が高まっている。
【0003】
多くの金属、例えば、コバルト、ニッケル、鉄、モリブデン、タングステン、トリウム、ルテニウム、レニウムおよび白金は、合成ガスの炭化水素およびそれらの酸素化誘導体への変換において、単独または組み合わせのいずれかで、触媒活性であることが知られている。上記の金属のうち、コバルト、ニッケルおよび鉄が最も広範囲に研究されている。一般に、金属は、担体材料と組み合わせて使用され、そのうち最も一般的なものは、アルミナ、シリカおよび炭素である。
【0004】
担持コバルト含有フィッシャー-トロプシュ合成触媒の製造において、固体の担体材料は、典型的には、コバルト含有化合物、例えば、有機金属化合物または無機化合物、(例えば、Co(NO・6HO)であってもよい、を化合物の溶液と接触させることによって含浸させられる。一般に、コバルト含有化合物の個々のフォームは、次の焼成/酸化工程に続き、コバルト酸化物(例えば、CoO、CoまたはCo)を形成する能力のために選択される。担持コバルト酸化物の生成に続いて、活性触媒種として純粋なコバルト金属を形成するために、還元工程が必要である。したがって、還元工程は、一般に活性化工程とも呼ばれる。
【0005】
焼成中、コバルト酸化物は担体材料上に微結晶を形成し、例えば、分散、粒径および還元度合など、そうした微結晶の特性は、フィッシャー-トロプシュ法における触媒の活性および選択性に影響を及ぼすことが知られている。例えば、非特許文献1は、C5+炭化水素に関する最適な活性および選択性のために、約6~8nmの大きさを有する活性触媒中のコバルト金属粒子が特に有益であることを示した。
【0006】
典型的には、フィッシャー-トロプシュ合成触媒の適合における主な焦点は、C5+炭化水素(パラフィン)に関する活性および選択性を改善することである。それにもかかわらず、アルコールおよび液体炭化水素は、フィッシャー-トロプシュ法およびプロセス条件および合成触媒設計の望ましい製品でもあり、それらの材料の製造を好むように調整され得る。
【0007】
フィッシャー-トロプシュ法から得られる炭化水素燃料は、硫黄および芳香族化合物を本質的に含まず、低窒素含有量を有するので、従来の精油所燃料と比較して、フィッシャー-トロプシュ法から得られる炭化水素燃料は、ますます厳しい環境規制をより満たすことができる。これにより、CO、CO,SO、およびNOなどの汚染因子の排出がはるかに少なくなるだけでなく、微粒子の排出物もほとんど、または全く無くなるかもしれない。一方、フィッシャー-トロプシュ法から得られるアルコールは、炭化水素よりも高いオクタン価を有し、したがって、より完全に燃焼することができ、それによって、そのような燃料の環境への影響を低減する。フィッシャー-トロプシュ反応から得られるアルコールはまた、重合、界面活性剤、および化粧品などの他のプロセスにおける試薬として有利に使用されることがあり、特に有益な点は、フィッシャー-トロプシュ法によって得ることができるアルコールの純度である。長鎖アルコールはまた、潤滑剤成分、またはその前駆体として特に有用である。直鎖状アルファオレフィン(LAO)および直鎖状アルコールは、精製した化学品、潤滑剤およびプラスチック/ポリマーの基礎として有意な価値を有する。
【0008】
上記で議論したde Jongらは、アルコールまたは液化炭化水素を生成するための活性および選択性に対するコバルト粒子径の影響に焦点を当てていない。de Jongらの図9は、コバルト粒子径が5nm未満である場合にメタン選択性が高く、メタン選択性は、フィッシャー-トロプシュ法の条件で試験されると、5nmを超えるコバルト粒子径の増加について比較的一定のままであることを指摘する。
【0009】
アルコールおよび液体炭化水素、特にアルコールおよびオレフィン、および特にアルコールの製造のためのフィッシャー-トロプシュ法の活性および選択性を改善するための手段を提供することが望ましい。本発明は、アルコールおよび液体炭化水素の調製のためのフィッシャー-トロプシュ反応の活性および選択性を増加させる際に、特定の重量比でコバルトおよびマンガンの組み合わせを含むフィッシャー-トロプシュ合成触媒を利用するという特定の利点の発見に基づく。
【0010】
特許文献1には、フィッシャー-トロプシュ法のC5+炭化水素選択性の改良に使用するために、触媒中のマンガンに対するコバルトの原子比が少なくとも12:1であるコバルトおよびマンガンを含む担持触媒の使用が記載されている。同様に、特許文献2は、フィッシャー-トロプシュ法のC5+炭化水素選択性を改善するために、コバルト/マンガンのモル比率が13:1~9:1であるコバルトとマンガンを含む触媒の使用を記載している。しかしながら、これらの文献はいずれも、アルコールおよび液状炭化水素(およそC24未満)の製造のためのフィッシャー-トロプシュ法の活性および選択性を改善するために触媒組成物をどのように改変するかについて記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5,981,608号明細書
【文献】米国特許第5,958,985号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】デ・ジョンら著(J.Am.Chem. Soc.,128,2006,3956-3964)
【文献】Brunauer,S,Emmett,PH,&Teller,E,J.Amer Chem.Soc.60,309,(1938)
【文献】Barrett,EP,Joyner,LG&Halenda P,J.Am Chem.Soc.,1951 73 373-380
【発明の概要】
【0013】
驚くべきことに、元素基準で、0.2またはそれ以上の、コバルトに対するマンガンの重量比で存在するマンガンとコバルトを含み、元素基準で、少なくとも2.5重量%のマンガンを含む担持触媒が、アルコールそしてまたオレフィンの製造のためのフィッシャー-トロプシュ法の活性および選択性を改善するのに特に有用であることが見出された。
【0014】
第1の態様において、本発明は、水素および一酸化炭素ガスの混合物を、フィッシャー-トロプシュ合成反応によって、アルコールおよび液化炭化水素を含む組成物に変換する方法を提供し、前記方法は、水素および一酸化炭素ガスの混合物を、好ましくは合成ガス混合物の形態で、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒と接触させることを含み、前記担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒の前記担持材料は、チタニア、ジルコニア、およびセリアから選択される材料を含み、前記担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、少なくとも2.5重量%のマンガンを含み、元素基準で、コバルトに対するマンガンの重量比は、0.2またはそれ以上であり、一酸化炭素に対する水素のモル比は、少なくとも1であり、前記フィッシャー-トロプシュ合成反応は、1.0~10.0MPaの範囲の絶対圧力で行われる。
【0015】
別の態様では、本発明は、担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、少なくとも2.5重量%のマンガンを含む担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒を提供し、元素基準で、存在するコバルトに対するマンガンの重量比が0.2またはそれ以上、好ましくは0.3またはそれ以上であり、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒の担持材料は、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニア、およびセリアから選択される材料を含み、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成は、含浸によって調製される。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、100オングストローム未満の粒径を有し、担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で少なくとも2.5重量%のマンガンを含み、元素基準でコバルトに対するマンガンの重量比が0.2またはそれ以上であり、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒の担持材料が、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニア、およびセリアから選択される材料を含む、Co微結晶を含む担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒を提供する。
【0017】
なおさらなる態様において、本発明は、合成触媒が、以下の工程を含む方法から得られるか、または得られ得る、本明細書に定義される担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒を調製するための方法を提供する。
(a)担体材料に、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物を含浸させて、一回の含浸工程において含浸担体材料を形成する工程、および
(b)含浸担体材料を乾燥および焼成して、担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒を形成する。
【0018】
また、i)アルコールの製造のためのフィッシャー-トロプシュ法の選択性を増加させること;および/またはii)フィッシャー-トロプシュ法における変換を増加させることのための、本明細書で定義される担持Co-Mn Fischer-Tropsch合成触媒の使用も提供される。
【0019】
本発明は、水素および一酸化炭素ガスの混合物を、フィッシャー-トロプシュ合成反応によってアルコールおよび液化炭化水素を含む組成物に変換する方法を提供し、前記方法は、水素および一酸化炭素ガスの混合物を、好ましくは合成ガス混合物の形態で、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒と接触させることを含む。フィッシャー-トロプシュ合成反応によって生成される生成物組成物は、ワックスならびに他の酸素化物などの他の成分も含むであろうが、しかしながら、本発明の方法は、コバルト系触媒を使用する従来のフィッシャー-トロプシュ合成反応と比較して、アルコールおよび液化炭化水素に対する選択性の増加を示す。
【0020】
フィッシャー-トロプシュ反応の生成物に関して本明細書中で使用される用語「液体炭化水素」は、C4~C24炭化水素を指す。いくつかのまたはすべての実施形態において、液体炭化水素は、少なくとも1重量%のオレフィン、例えば、少なくとも2重量%のオレフィンまたは少なくとも3重量%のオレフィン、例えば、少なくとも5重量%のオレフィン、少なくとも10重量%のオレフィン、または少なくとも20重量%のオレフィンを含み、好ましくは、オレフィンは、線状アルファオレフィンを含み、より好ましくは、オレフィンは、少なくとも70重量%の線状アルファオレフィンを含むなどの、少なくとも50重量%の線状アルファオレフィンを含む。
【0021】
フィッシャー-トロプシュ反応の生成物に関して本明細書中で使用される用語「アルコール」は、任意の数の炭素原子を有するアルコールを指す。アルコールは、典型的には非環状であり、直鎖または分岐鎖、好ましくは直鎖であってよい。いくつかのまたはすべての実施形態において、アルコールは、少なくとも70重量%の線状アルファアルコール、または80重量%の線状アルファアルコールを含むなどの、少なくとも50重量%の線状アルファアルコールを含むであろう。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明の方法によって調製されるアルコールは、短鎖長C~Cアルコールの主要な割合(50重量%超)を含む。他の実施形態において、本発明の方法によって調製されるアルコールは、中鎖長C~Cアルコールの主要な割合(50重量%超)を含む。他の実施形態において、本発明の方法によって調製されるアルコールは、長鎖長C10~C25アルコールの主要な割合(50重量%超)を含む。フィッシャー-トロプシュ反応によって生成されるアルコールの量、および短鎖、中鎖および長鎖の相対的割合は、オンラインGC質量分析または他の適切な技術によって決定され得る。
【0023】
いくつかのまたはすべての実施形態において、C~C24の範囲の炭素鎖長を有する生成物の少なくとも15重量%は、アルコールである。いくつかのまたはすべての実施形態において、C~C24の範囲の炭素鎖長を有する生成物の少なくとも20重量%は、アルコールである。
【0024】
いくつかのまたはすべての実施形態において、本発明の方法は、少なくとも15%、例えば、少なくとも20%、またはさらには少なくとも40%のアルコールおよびオレフィンに対する組み合わせた選択性を有する。いくつかのまたはすべての実施形態において、本発明の方法は、C8~C24炭素鎖長範囲において、アルコールおよびオレフィンについての組み合わせた選択性が、少なくとも15%、例えば、少なくとも20%、またはさらに少なくとも40%である生成物組成物を提供する。
【0025】
いくつかのまたはすべての実施形態において、本発明の方法は、少なくとも15%、例えば、少なくとも20%、またはさらには少なくとも40%のアルコールに対する選択性を有する。いくつかのまたはすべての実施形態において、本発明の方法は、C8~C24炭素鎖長範囲において、アルコールに対する選択性が少なくとも15%、例えば、少なくとも20%、またはさらには少なくとも40%である生成物組成物を提供する。
【0026】
いくつかのまたは全ての実施形態において、本発明の方法は、少なくとも50g/L.h(1時間当たりの触媒1リットル当たりのグラム数)、例えば、少なくとも70g/L.h、またはさらには少なくとも90g/L.hのアルコールとオレフィンとを組み合わせた生産性を有する。いくつかのまたはすべての実施形態において、本発明の方法は、C8~C24炭素鎖長範囲において、少なくとも50g/L.h、例えば少なくとも70g/L.h、またはさらには少なくとも90g/L.hのアルコールおよびオレフィンを組み合わせた生産性を有する、生成物組成物を提供する。
【0027】
いくつかのまたはすべての実施形態において、本発明の方法は、少なくとも50g/L.h、例えば少なくとも70g/L.h、またはさらには少なくとも90g/L.hのアルコール生産性を有する。いくつかのまたはすべての実施形態において、本発明の方法は、C8~C24炭素鎖長範囲において、少なくとも50g/L.h、例えば少なくとも70g/L.hまたはさらには少なくとも90g/L.hのアルコール生産性を有する、生成物組成物を提供する。
【0028】
マンガンの総量とコバルトに対するマンガンの重量比との組み合わせは、本発明の方法のために重要であることが見出されている。特に、記載されているようなフィッシャー-トロプシュ合成におけるマンガンの総量とコバルトに対するマンガンの重量比のこの組み合わせを有する触媒の使用は、有意な割合のアルコールを有し、有利には、8~24個の炭素原子を有する各炭素鎖長に対して、各炭素鎖長の少なくとも15%、例えば少なくとも20%がアルコールである生成物組成物を提供することが見出された。いくつかのまたはすべての実施形態において、C~C24炭素鎖長分子の少なくとも15重量%はアルコールであり、例えば、C~C24炭素鎖長分子の少なくとも20重量%またはさらには少なくとも30重量%はアルコールである。
【0029】
理論に束縛されることを望まないが、含浸によって、少なくとも2.5重量%のマンガンと、元素基準で、少なくとも0.2のコバルトに対するマンガンの重量比とを含む触媒を調製すると考えられ、フィッシャー-トロプシュ反応において触媒が利用される場合に、結果として生じる担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒における酸化コバルト微結晶(Co)径が、利点をもたらすか、または寄与することができる粒径である。特に、本発明で使用されるマンガンの総量とコバルト重量比に対するマンガン重量比との組合せから生じる酸化コバルト微結晶(Co)粒径は、100オングストローム(10nm)未満、例えば80オングストローム(8nm)未満、好ましくは60オングストローム(6nm)未満、例えば40オングストローム(4nm)未満または35オングストローム(3.5nm)未満であることが見出された。この微結晶の大きさは、同じオーダーであり、本明細書において先に議論した非特許文献1、すなわち6~8nmにおけるC5+炭化水素の最適な活性および選択性のために特に好ましいと示されるコバルト粒径よりも著しく小さい。それにもかかわらず、いったんCo-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒が活性化され、フィッシャー-トロプシュ反応で利用されると、アルコールに対する生産性および選択性は、マンガンを含まない、または本発明の基準を考慮して不十分な量のマンガンを含有するコバルト含有合成触媒よりも著しく高められる。さらに、理論に束縛されるものではないが、本発明の基準を考慮すると、オレフィンに対する生産性および選択性は、マンガンを含まない、または不十分な量のマンガンを含有するコバルト含有合成触媒よりも著しく増強されると考えられる。
【0030】
特定の理論に束縛されるものではないが、マンガンの存在は、酸化コバルト微結晶の表面での発達および分散性に影響を及ぼす固体担持体上の表面効果に寄与すると考えられる。これは、マンガン含有前駆体化合物の存在下で、触媒調製の間、例えば含浸溶液中に懸濁または溶解された、担持材料に適用されるコバルト含有前駆体化合物の移動性に由来するかもいれない。したがって、本発明の触媒は、好ましくは、コバルト含有前駆体化合物およびマンガン含有前駆体化合物が、その調製中に担体の表面で移動性混合物を形成するように担持材料に適用されることを含む。
【0031】
いくつかのまたはすべての実施形態において、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒中に存在するコバルトに対するマンガンの重量比は、元素基準で、0.2~3.0である。コバルトに対するマンガンの重量比の具体例としては、0.2~2.0、0.2~1.5、0.2~1.0、0.2~0.8、0.3~2.0、0.3~1.5、0.3~1.0、および0.3~0.8が挙げられる。通常、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒におけるコバルトに対するマンガンの重量比は、元素基準で、少なくとも0.3、より典型的には少なくとも0.3、そして最高でも1.5であり、より典型的には最高でも1.0である。
【0032】
本発明によるマンガンの充填と元素状態のコバルトに対する元素状態のマンガンの重量比との利点は、担持合成触媒中のコバルトおよびマンガンの濃度の広範囲にわたって観察され得る。しかしながら、いくつかのまたはすべての実施形態において、担持合成触媒は、元素基準で、担持合成触媒の総重量に基づいて少なくとも3.0重量%の量のマンガンを含む。
【0033】
好適な実施態様において、担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒は、担持合成触媒の総重量に基づき、元素基準で、5重量%から35重量%のコバルト、より望ましくは7.5重量%から25重量%のコバルト、さらにより望ましくは10から20重量%のコバルトを含んでいる。
【0034】
その他の実施の形態において、担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒は、担持合成触媒の総重量に基づき、元素基準で2.5重量%から15重量%までのマンガン、好ましくは3.0重量%から12.5重量%まで、例えば3.0から10重量%のマンガン、あるいは4.0から8.0重量%までのマンガンを含んでいる。
【0035】
前述のようなコバルトに対するマンガンの重量比を有する担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒は、特に、フィッシャー-トロプシュ反応の温度が150~350℃、より好ましくは180~300℃、最も好ましくは200~260℃の範囲内にある場合、アルコールの製造のための選択性を提供するためのフィッシャー-トロプシュ反応において特に有用であることが分かっている。
【0036】
本発明において、フィッシャー-トロプシュ合成反応は、10~100バール(1.0~10.0MPa)絶対圧の範囲の圧力で行われる。好ましい態様において、フィッシャー-トロプシュ反応の圧力は、10~80バール(1~8MPa)、より好ましくは10~60バール(1~6MPa)、例えば15~50バール(1.5~5MPa)または20~45バール(2~4.5MPa)の範囲である。
【0037】
本発明に従い使用される担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒は、必要なコバルトに対するマンガンの重量比と必要な担持マンガンの濃度とを提供できる任意の適切な方法によって調整されてもよい。好ましくは、本発明に従い使用される担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒は、コバルトおよびマンガンを担持材料に含浸するプロセスによって調製される。
【0038】
適切な含浸方法は、例えば、担持材料に、酸化物形態に熱分解可能なコバルト含有化合物、およびマンガン含有化合物を含浸させることを含む。コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物による担体材料の含浸は、当業者が認識する任意の適切な方法によって、例えば、真空含浸、初期湿潤または過剰な液体への浸漬によって達成され得る。
【0039】
初期湿潤技術と呼ばれるのは、過剰な液体を伴わずに、担持体の全表面をちょうど湿潤させるのに必要な最小体積の溶液を提供するように、含浸溶液の体積を予め決定することを必要とするからである。名前が示すように過剰な溶液技術は、過剰の含浸溶液を必要とし、溶媒はその後通常蒸発によって除去される。
【0040】
担持材料は、粉末、顆粒、予め形成された球またはミクロスフェアなどの成形粒子、または押出物の形態であってもよい。本明細書における担持材料の粉末または顆粒への言及は、特定の形状(例えば、球状)および径範囲であるために、顆粒化および/またはふるい分けを受けた担持材料または担持材料の粒子の自由流動性粒子を指すと理解される。本明細書における「押出物」への言及は、押出工程を経て、したがって成形され得る担持材料を意味することが意図される。本発明の文脈において、粉末または顆粒は、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の溶液での含浸、および後続の押出または他の成形粒子への成形に適した形態である。
【0041】
本発明と共に使用される担持材料は、チタニア、酸化亜鉛、アルミナ、ジルコニア、およびセリアから選択される材料を含む。好ましくは、担持材料は、セリア、酸化亜鉛、アルミナ、ジルコニア、チタニア、およびそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、担体材料は、チタニアおよび酸化亜鉛から選択される。最も好ましくは、担持材料は、チタニアまたはチタニアを含有する混合物から選択される。好ましいチタニア担持材料粒子の例は、チタニア粉末、例えばP25 Degussaである。
【0042】
担体材料は、それがフィッシャー-トロプシュ合成触媒の担体としての使用に適している場合、および好ましくは、担体材料が、活性触媒の性能に有害な効果を有し得、本発明の利益を妨害し得るコバルトおよび/またはマンガン以外の金属源で予め含浸されていない場合、任意の形態であり得ることが理解される。したがって、コバルトおよび/またはマンガン金属、またはその前駆体を予め装填した担持材料を本発明に従って使用することができるが、他の金属の供給源を提供する他の前処理は、好ましくは回避されるべきである。
【0043】
好ましい担持材料は、そのシステムの触媒活性に悪影響を及ぼし得る外来成分を実質的に含まない。したがって、好ましい担持材料は、少なくとも95%w/w純度、より好ましくは少なくとも98%w/w純度、および最も好ましくは少なくとも99%w/w純度である。不純物は、好ましくは1%w/w未満、より好ましくは0.50%w/w未満、最も好ましくは0.25%w/w未満である。担持体の細孔容積は、好ましくは0.150ml/g超、好ましくは0.30ml/g超である。担持材料の(浸透前)平均細孔半径は10~500Å、好ましくは15~100Å、より好ましくは20~80Å、そして最も好ましくは25~60Åの範囲である。BET表面積は、2~1000m/gが適切であり、好ましくは10~600m/gであり、より好ましくは15~100m/gであり、最も好ましくは30~60m/gである。
【0044】
BET表面積、細孔容積、細孔径分布および平均細孔半径は、Micromeritics TRISTAR 3000静的容積吸着分析器を使用して77Kで決定される窒素吸着等温線から決定され得る。使用することができる手順は、英国標準法BS4359:Part1:1984「ガス吸着に関する勧告(BET)法」およびBS7591:Part2:1992、「材料の気孔率および細孔径分布」-ガス吸着による評価方法の適用である。得られたデータは、BET方法(圧力範囲0.05~0.20P/Poにわたって)およびBarrett, Joyner & Halenda(BJH)方法(細孔径20~1000Åに対して)を用いて減少させ、それぞれ表面積および細孔径分布を生じさせることができる。
【0045】
上記のデータ低減方法のための適切な参考文献は非特許文献2および非特許文献3である。
【0046】
粉末の形態である場合、メジアン粒子径(d50)は、好ましくは50μm未満、より好ましくは25μm未満である。担持材料が顆粒の形成である場合、メジアン粒子径(d50)は、好ましくは300~600μmである。粒子径(d50)は、適切には、粒子径分析器(例えば、Microtrac S3500粒子径分析器)によって決定され得る。
【0047】
特に固定触媒床反応器システムの場合には、押出物のような成形粒子を用いてフィッシャー-トロプシュ触媒作用を行うことが有益であることが知られている。例えば、所定の形状の触媒粒子について、固定床における触媒粒子の径の減少は、床を通る圧力低下の対応する増加を生じることが知られている。したがって、比較的大きな形状の粒子は、対応する粉末状または顆粒状の担持触媒と比較して、反応器内の触媒床を通る圧力低下の原因を減らす。押出物のような成形粒子もまた、一般に、より大きな強度を有し、摩損が少なく、これは、バルク破砕強度が非常に高くなければならない固定床配置において特に価値がある。
【0048】
本明細書における「含浸」または「含浸させる」への言及は、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の沈殿を達成するために乾燥前に、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の溶液または複数の溶液と担持材料との接触を指すことが意図される。コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の完全に溶解した溶液、または複数の溶液での含浸は、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の担体材料上への良好な分散を確実にし、したがって好ましい。これは、例えば、部分的に溶解したコバルト含有化合物および/または部分的に溶解したマンガン含有化合物の「固溶体」または懸濁液中での使用とは対照的であり、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の表面を横切る分散のレベル、および細孔中で、担体材料は担持材料上の沈殿の性質に応じて変動し得る。さらに、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の完全に溶解した溶液、または複数の溶液の使用はまた、固溶体と比較して、その後に形成される押出物の得られる形態およびバルク破砕強度に対する影響が少ない。にもかかわらず、本発明の利点は、部分的に未溶解のコバルト含有化合物および/またはマンガン含有化合物の固溶体または溶液が使用される場合にも実現され得る。
【0049】
担体材料の粉末または顆粒をコバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の溶液または複数の溶液と接触させる場合、使用される溶液の量は、好ましくは、さらなる加工、例えば押出しによる成形に適した一貫性を有する混合物を達成するのに適した液体の量に相当する。その場合、含浸溶液の溶媒の完全な除去は、押出物などの成形粒子の形成後に行うことができる。
【0050】
好適なコバルト含有化合物は、焼成後にコバルトの酸化物に熱分解可能であり、好ましくは含浸溶液に完全に可溶性であるものである。好ましいコバルト含有化合物は、コバルトの硝酸塩、酢酸塩、アセチルアセトナートであり、最も好ましくはコバルトの硝酸塩、例えば硝酸コバルト六水和物である。ハロゲン化物の使用は、これらが有害であることが見出されているので、回避することが好ましい。
【0051】
好適なマンガン含有化合物は、焼成後に熱分解可能であり、好ましくは含浸溶液に完全に可溶性であるものである。好ましいマンガン含有化合物は、マンガンの硝酸塩、酢酸塩またはアセチルアセトナートであり、最も好ましくはマンガンの酢酸塩である。
【0052】
含浸溶液の溶媒は、水性溶媒または非水性、有機溶媒のいずれであってもよい。適切な非水性有機溶媒としては、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノールおよび/またはプロパノール)、ケトン(例えば、アセトン)、液体パラフィン系炭化水素およびエーテルが挙げられる。あるいは、水性有機溶媒、例えば水性アルコール性溶媒を使用することができる。含浸溶液の溶媒は、水性溶媒であることが好ましい。
【0053】
好ましい実施形態において、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物による担持材料の含浸は、異なる成分の装填を分離するために、いかなる中間的な乾燥または焼成工程も伴わずに、単一の工程において起こる。当業者が理解するように、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物は、別個の含浸溶液または懸濁液中で連続的にまたは同時に担持材料に適用されてもよく、または好ましくは、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の両方を含む含浸溶液または懸濁液が使用される。
【0054】
含浸溶液中のコバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、上記のように、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物は、完全に溶解される。担持材料の粉末または顆粒が含浸され、直ちに押出工程が続く場合、含浸溶液の量は、好ましくは、押出可能なペーストを形成するのに適している。
【0055】
好ましい実施形態では、含浸溶液の濃度は、担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、5重量%~35重量%のコバルト、より好ましくは7.5重量%~25重量%のコバルト、さらにより好ましくは10~20重量%のコバルトを含有する担持触媒を与えるのに十分である。
【0056】
別の好ましい実施形態では、含浸溶液の濃度は、乾燥および焼成に続いて、担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、2.5重量%~15重量%のマンガン、好ましくは3.0重量%~12.5重量%のマンガン、例えば3.0~10重量%のマンガン、またはさらには4.0~8.0重量%のマンガンを含有する担持触媒を与えるのに十分である。
【0057】
コバルト含有化合物および/またはマンガン含有化合物の適切な濃度は、例えば、0.1~15モル/リットルである。
【0058】
担持材料が粉末または顆粒形態である場合、一旦コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物で含浸されると、含浸された担持材料は、乾燥および焼成の前または後の任意の適切な段階で押出しまたは成形粒子に形成され得ることが理解される。
【0059】
担体材料の含浸は、通常、担体材料へのコバルト含有化合物およびマンガン含有化合物の沈殿をもたらし、好ましくは含浸溶液(例えば、水)の結合した溶媒を除去するために、含浸溶液の乾燥に続く。したがって、例えば、コバルト含有化合物の完全な分解をもたらさず、そうでなければ、コバルト含有化合物の酸化状態の変化をもたらさない。理解されるように、押出が行われる実施形態では、含浸溶液の完全な乾燥および溶媒(例えば、結合した溶媒)の除去は、例えば、押出によって、成形粒子の形成後に起こり得る。乾燥は、50℃~150℃、好ましくは75℃~125℃の温度で適切に行われる。適切な乾燥時間は、例えば、5分~72時間である。乾燥は、乾燥オーブン中で、または箱型炉中で、例えば、高温の不活性ガスの流れの下で、適切に行うことができる。
【0060】
押出物のような成形粒子が含浸される場合、担持体は、例えば、真空含浸、初期湿潤または過剰液体への浸漬を含む任意の適切な手段によって含浸溶液と接触させることができることが理解されるであろう。担体材料の粉末または顆粒が含浸される場合、粉末または顆粒は、含浸溶液の容器に粉末または顆粒を添加し、撹拌するなど、当業者が知っている任意の適切な手段によって、含浸溶液と混合されてもよい。
【0061】
例えば押出工程などの、成形粒子を形成する工程が、粉末または顆粒の含浸に直ちに続く場合、粉末または顆粒および含浸溶液の混合物は、成形粒子を形成するのに適した形態ではない場合には、例えば押出によってさらに処理されてもよい。例えば、容易には押し出されないか、またはそうでなければ成形粒子に形成されないかもしれない、またはその存在が、結果として得られる形状の粒子の物理的特性を損なう可能性がある場合は、混合物を混練して、例えば押出によって、より大きな粒子の存在を減少させることができる。混練は、典型的には、押出しなどによる成形に適したペーストを形成することを含む。当業者が知っている任意の適切な混練または混捏装置を、本発明の文脈において、混練のために使用することができる。例えば、ある用途では乳棒および乳鉢を好適に使用することができ、あるいはSimpson 混練装置を好適に使用することができる。混練は、典型的には、3~90分の期間、好ましくは5分~30分の期間行われる。混練は、周囲温度を含む一連の温度にわたって適切に行うことができる。混練のための好ましい温度範囲は、15℃~50℃である。混練は、適切には、周囲圧力で実施され得る。先に述べたように、含浸溶液から結合した溶媒を完全に除去して、押出などによって成形粒子を形成した後に完全な析出を行うことができることは理解されよう。
【0062】
焼成工程が含浸粉末または顆粒上で実施され、それによって含浸溶液の溶媒を完全に除去する実施形態では、焼成粉末または顆粒はまた、例えば押出によって成形粒子に形成するのに適した混合物を形成するために、さらに処理されてもよい。例えば、押出成形可能なペーストは、焼成粉末または顆粒を適切な溶媒、例えば含浸に使用される溶媒、好ましくは水性溶媒と組み合わせ、上記のように混練することによって形成することができる。
【0063】
担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒の調製は、焼成工程を含む。理解されるように、担体材料上に含浸されたコバルト含有化合物をコバルトの酸化物に変換するために、焼成が必要である。したがって、焼成は、例えば乾燥の場合のように、含浸溶液の結合した溶媒の単なる除去ではなく、コバルト含有化合物の熱分解をもたらす。
【0064】
焼成は、当業者に公知の任意の方法によって、例えば、少なくとも250℃、好ましくは275℃~500℃の温度で流動床またはロータリーキルン中で行うことができる。いくつかの実施形態において、焼成は、合成触媒の焼成および還元活性化を行い、還元されたフィッシャー-トロプシュ合成触媒を生成する統合プロセスの一部として、同じ反応器内で実施されてもよい。
【0065】
特に好ましい実施形態において、本発明のプロセスで使用される担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒は、以下の工程からなるプロセスから得られる、または得られ得る。
(a) 1回の含浸工程において、担体材料に、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物を含浸させて、含浸された担体材料を形成する工程、および
(b) 含浸担体材料を乾燥および焼成して、担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒を形成する。
【0066】
この実施形態の特定の利点は、一回の含浸工程とそれに続く乾燥および焼成工程のみを使用して、担体材料を改質し、担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒に変換することができる便宜性である。したがって、好ましい実施形態では、本発明に関連して使用される担持材料は、プロセスの工程(a)における含浸前に、例えば、促進剤、分散助剤、強度助剤および/もしくは結合剤、またはそれらの前駆体の添加によって、事前の改変を受けていない。
【0067】
本発明の方法で使用される担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒は、1つまたはそれ以上の促進剤、分散助剤または結合剤をさらに含んでもよい。コバルトの酸化物のコバルト金属への還元を促進するために、好ましくはより低い温度で、促進剤を添加することができる。好ましくは、1つまたはそれ以上の促進剤は、ルテニウム、パラジウム、白金、ロジウム、レニウム、クロム、ニッケル、鉄、モリブデン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、トリウム、ランタン、セリウムおよびそれらの混合物からなるリストから選択される。促進剤は、典型的には、250:1まで、より好ましくは125:1まで、さらにより好ましくは25:1まで、最も好ましくは10:1のコバルト対促進剤原子比で使用される。好ましい実施形態において、1つまたはそれ以上の促進剤は、担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、0.1重量%~3重量%の量で得られるコバルト含有フィッシャー-トロプシュ合成触媒中に存在する。
【0068】
促進剤、分散助剤、強度助剤、または結合剤の添加は、触媒調製プロセスのいくつかの段階で一体化され得る。好ましくは、促進剤、分散助剤もしくは結合剤、またはそれらの前駆体は、コバルト含有化合物およびマンガン含有化合物が導入される含浸工程中に導入される。
【0069】
担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒は、還元活性化によって還元担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒に、酸化コバルトを活性コバルト金属に変換することができることを当業者が知っている任意の公知の手段によって都合よく変換することができる。したがって、一実施形態では、本発明の方法は、水素含有ガス流と接触させることによって、Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒を還元して、還元されたCo-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒を形成する前工程をさらに含む。還元合成触媒を形成する工程は、固定床、流動床またはスラリー相反応器、またはフィッシャー-トロプシュ合成反応に引き続いて使用されるのと同じ反応器中でバッチ式または連続的に行うことができる。還元は、150℃~500℃、好ましくは200℃~400℃、より好ましくは250℃~350℃の温度で適切に行われる。
【0070】
理解されるように、フィッシャー-トロプシュ反応に供給される気体反応剤混合物はまた、担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒を還元して、いかなる先行または明確な還元活性化工程も必要とせずに、その場で還元担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒を形成するのに好適であり得る。
【0071】
本発明のフィッシャー-トロプシュ反応において、気体反応物混合物中の一酸化炭素に対する水素(H:CO)の体積比は、少なくとも1:1、好ましくは少なくとも1.1:1、より好ましくは少なくとも1.2:1、より好ましくは少なくとも1.3:1、より好ましくは少なくとも1.4:1、より好ましくは少なくとも1.5:1、または少なくとも1.6:1である。本発明のいくつかのまたは全ての実施形態において、気体反応混合物中の一酸化炭素に対する水素(H:CO)の体積比は、最大で5:1、好ましくは最大で2.2:1である。ガス状反応物質混合物中の一酸化炭素に対する水素(H:CO)の体積比は、1:1~5:1、1.1:1~3:1、1.2:1~3:1、1.3:1~2.2:1、1.4:1~5:1、1.4:1~3:1、1.4:1~2.2:1、1.5:1~3:1、1.5:1~2.2:1、および1.6:1~2.2:1である。気体反応物流はまた、他の気体成分、例えば窒素、二酸化炭素、水、メタンおよび他の飽和および/または不飽和軽炭化水素を含んでもよく、それぞれ好ましくは30体積%未満の濃度で存在する。
【0072】
先に述べたように、本発明のフィッシャー-トロプシュ合成法は、驚くべきことに、アルコールに対して高い選択性を示すフィッシャー-トロプシュ触媒を与えることが見出された;本発明のフィッシャー-トロプシュ合成法は、オレフィンに対して高い選択性を示すフィッシャー-トロプシュ触媒を与えることも驚くべきことに見出された。さらに、少なくともいくつかの実施形態では、触媒活性も優れていることが見出されている。
【0073】
本発明に従ってアルコールおよび液体炭化水素を製造するために、従来のフィッシャー-トロプシュ温度を使用することができる。例えば、反応の温度は、100~400℃、例えば150~350℃、または150~250℃の範囲が適切であり得る。反応の圧力は、好適には、10~100バール(1~10MPa)、例えば15~75バール(1.5~7.5MPa)、または20~50バール(2.0~5.0MPa)の範囲であり得る。
【0074】
好ましい態様において、フィッシャー-トロプシュ反応の温度は、150~350℃、より好ましくは180~300℃、最も好ましくは200~260℃の範囲である。好ましい態様において、フィッシャー-トロプシュ反応の圧力は、10~100バール(1~10MPa)、より好ましくは10~60バール(1~6MPa)、最も好ましくは20~45バール(2~4.5MPa)の範囲である。
【0075】
フィッシャー-トロプシュ合成反応は、任意の適切なタイプの反応器中で行うことができ、例えば、固定床反応器、スラリー床反応器、またはCAN反応器中で行うことができる。
【0076】
本発明の別の態様では、担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、少なくとも2.5重量%のマンガンを含む担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒が提供され、存在するコバルトに対するマンガンの重量比は、元素基準で、0.2以上である場合、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒の担持材料は、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニア、およびセリアから選択される材料を含み、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成は、含浸によって調製される。
【0077】
本発明のなおさらなる態様では、100オングストローム(10nm)未満、好ましくは60オングストローム(6nm)未満の粒径を有し、担持合成触媒の総重量に基づいて元素基準で少なくとも2.5重量%のマンガンを含み、元素基準で、コバルトに対するマンガンの重量比が0.2以上であり、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒の担持材料がチタニア、酸化亜鉛、ジルコニア、およびセリアから選択される物質を含む、Co微結晶を含む担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒が提供される。
【0078】
本発明のさらにさらなる態様では、担持合成触媒の総重量に基づいて、元素基準で、少なくとも2.5重量%のマンガンを含む担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒が提供され、存在するコバルトに対するマンガンの重量比は、元素基準で、0.2以上である場合、担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒の担持材料は、チタニア、酸化亜鉛、ジルコニア、およびセリアから選択される物質を含み、触媒は、100オングストローム(10nm)未満、好ましくは60オングストローム(6nm)未満の粒径を有するCo微結晶を含む。
【0079】
Co微結晶粒径は、化学吸着、顕微鏡またはX線回折を含む任意の好適な手段によって測定することができる。好ましくは、Coの粒度はX線回折により決定される。
【0080】
これから理解されるように、本発明の上記の更なる側面の担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒を調製するための担持材料および方法は、ここでに定義されているかもしれない。例えば、合成触媒は、好ましくは、以下の工程を含む方法から得られるか、または得ることができる。
(a)含浸された担持材料を形成するための単一の含浸工程において、担持材料にコバルト含有化合物とマンガン含有化合物とを含浸させる段階と、
(b)担持Co-Mnフィッシャー-トロプシュ合成触媒を形成するために含浸された担持材料を乾燥および焼成する段階
【0081】
本発明の上記のさらなる態様の担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒はまた、i)アルコールの製造のためのフィッシャー-トロプシュ法の選択性の増加、および/またはii)フィッシャー-トロプシュ法における変換の増加のために使用され得る。
【0082】
本発明のなおさらなる態様において、アルコールの製造のためのフィッシャー-トロプシュ法の選択性を増加させるための、および/またはフィッシャー-トロプシュ法における変換を増加させるための方法であって、上記で定義された担持Co-Mn フィッシャー-トロプシュ合成触媒をフィッシャー-トロプシュ法に供給する工程を含む方法が提供される。
【0083】
本発明のさらにさらなる態様では、担持コバルト含有フィッシャー-トロプシュ合成触媒の調製におけるコバルト酸化物微結晶径を制御するための方法であって、酢酸、または酢酸の金属塩を、担体材料へのコバルト含有化合物の含浸中に供給する工程を含み、金属がルテニウム、パラジウム、白金、ロジウム、レニウム、マンガン、クロム、ニッケル、鉄、モリブデン、タングステン、ジルコニウム、ガリウム、トリウム、ランタン、セリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは金属がマンガン、ルテニウム、レニウムおよび白金から選択され、より好ましくは金属がマンガンである方法が提供される。
【0084】
次に、本発明を、例示のみである以下の実施例を参照することによってさらに説明する。実施例において、CO転化率は、使用されるCOのモル/供給されるCOのモル×100として、また、炭素選択率は、特定の生成物に起因するCOのモル/転化されるCOモル×100として定義される。別段の記載がない限り、実施例で言及される温度は、適用温度であり、触媒/床温度ではない。別段の記載がない限り、実施例で言及される圧力は絶対圧力である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
図1】例示的な実施形態によるワックス生成物の2次元GC分析を示している。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0086】
実施例1-触媒調製
Co(NO・6HOとMn(OAc)・4HOを、少量の水を可変量で含む溶液に混合した(下表1参照)。次いで、この混合物を100gのP25TiO粉末にゆっくりと添加し、混合して均一な混合物を得た。Co(NO・6HOは、10重量%の元素CoをTiOに与えるような量で用いられた。結果として得られるペースト/生地は押し出され押出ペレットを形成し、次いで300℃で乾燥して焼成した。それぞれの触媒のTiO担体上のCo微結晶の平均径でX線回折を用いて決定し、還元触媒上での水素の化学吸着によって検証し、その結果も以下の表1に示される。
【0087】
【表1】
【0088】
Co微結晶径を決定するために使用されるX線回折技術は、約30オングストロームの検出限界を有し、30オングストローム未満の微結晶径測定は、測定された微結晶径における潜在的に有意な誤差のために30オングストローム未満として報告される。
【0089】
表1の結果は、Mn/Co比率が増大するにつれて、実施例1で作成した担持触媒中に形成されたCo微結晶の大きさが減少する傾向を示している。
【0090】
実施例2-フィッシャー-トロプシュ反応のための一般的な手順
10gの触媒押出しペレットを反応器に装填し、H気流(15時間、300℃、100%H、常圧)で還元した。ガス供給を、18%の窒素を含む水素と一酸化炭素の混合物(H/CO=1.8)に切り換え、圧力は4.3MPaに維持された。変換を達成するために温度を上昇させ、フィッシャー-トロプシュ反応の間中、維持した。
【0091】
実施例3-フィッシャー-トロプシュ反応における選択性に及ぼすCo/Mn比率の影響
実施例1で調製した触媒を、実施例2の一般手順に従ってフィッシャー-トロプシュ合成反応で使用した。COのコンバージョン(転化率)、アルコールおよび液体炭化水素の生産性、ならびにCH選択性のデータを集め、上記の実施例についての結果を以下の表2に示す。出口ガスをオンラインガスクロマトグラフィーによりサンプリングし、それらのGCピークからアルコール、オレフィン、イソおよび通常のパラフィンについて分析した。触媒の生産性は、反応時間1時間当たりに充填される触媒体積1リットル当たりの触媒上で形成される生成物のグラム単位の重量として定義される。COのコンバージョン、CH選択性、および生産性に対する値は定常状態で得られる平均値である。
【0092】
【表2】
【0093】
以下の表3は、より長い炭素鎖長(すなわち、アルコールとして存在する各炭素長のパーセンテージ)について達成される炭素数によるアルコール選択性を示す。
【0094】
【表3】
【0095】
表2および3に提供された結果はオンラインデータであり、結果として、ワックス製品コレクションに含まれるアルコールを含まず、収集されたワックス製品のオフライン分析は、より高いレベルのアルコール選択性を示した。表2および3の結果は、Mn/Co比率が0.20から0.30に増加されるにつれてアルコール生産性が劇的に増加することを実証する。本発明(34Å)に従って使用される0.3のMn/Co比率を有する触媒について観察される小さなCo微結晶サイズは、なにか特定のFT(フィッシャー-トロプシュ法)の生成物の生産性にとって有利であるように、文献に報告される8nmの最適値を過度に下回ることが予想されるので、これらの結果は予想外である。
【0096】
Mn/Co比率がC-C15およびそれ以上の長い炭素鎖を含む広範囲の炭素数に適用される本発明に従っている場合、上記フィッシャー-トロプシュ反応で生成されるアルコールのさらなる解析はアルコール生成の増大をも実証する。
【0097】
実施例4-触媒の調製
少量の水を含む溶液で、Co(NO・6HOの量とMn(OAc)・4HOの量を混合した。次いで、この混合物を100gのP25TiO粉末にゆっくりと添加し、混合して均一な混合物を得た。Co(NO・6HOは、TiO上に約10重量%の元素Coを与えるための量で使用された。得られたペースト/生地を押出して押出ペレットを形成し、次いで乾燥し、300℃で焼成した。得られた触媒について、X線回折、H化学吸着、元素分析、昇温還元およびBET表面積技術を用いて特徴付けを完了した。
いくつかの触媒が、55~62gのコバルト水和物六水和物、および0~55gの酢酸マンガン四水和物を用いて、表4に詳述されるように、異なるマンガン充填量および異なるMn:Co比を得るために作製された。
【0098】
【表4】
【0099】
実施例5-フィッシャー-トロプシュ反応の一般的手順
粉末の形態における触媒の1mlの試料を高処理量並列反応器に装填し、H流(300℃で15時間、100%H2、大気圧)下で還元した。ガス供給を、18%の窒素を含む水素と一酸化炭素の混合物(H/CO=1.8)に切り換え、圧力は4.3MPaに維持した。温度は55~65%の転化を達成するまで上昇させ、フィッシャー-トロプシュ反応の間中、維持された。オンライン分析は、GCによって完了された。粉末の代わりに、押出物の形態における触媒の1mlの試料が使用され、H/COの比率は1.5であったことを除き、第2の一連の触媒試験は同様に行われた。結果を表5および6に示す。
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
ワックス生成物の2次元GC分析を行い、図1に示す。長鎖ワックス生成物中に生成する酸素化物質に関連する高い強度応答が明らかに示された。C17OH応答の大きさは、C20アルカン応答と同様か、またはそれよりも大きい。
【0103】
0、1、3および5重量%のMn充填のために粉末形態の触媒を使用して製造されたワックスの組成分析を表7に示す。
【0104】
【表7】
【0105】
実施例7-より高い担持触媒
それぞれ4重量%および6重量%のマンガンと共に、19重量%および25重量%のコバルトというより高いコバルト充填を有する2つの触媒が実施例5に記載のものと同様の方法で調製された。Coの結晶径は、25%Co,6%Mn/TiO触媒について87Å(8.7nm),19%Co/4%Mn/TiO触媒について88Å(8.8nm)としてXRDを用いて測定された。
【0106】
これらの触媒を、実施例6に記載の方法を用いて試験し、その結果を表8および9に示す。
【0107】
【表8】
【0108】
【表9】
図1