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特許7472028強度が改善された硬質カプセル、及びその製造方法
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  • 特許-強度が改善された硬質カプセル、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】強度が改善された硬質カプセル、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/32 20060101AFI20240415BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240415BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K47/02
A61K9/48
A61K47/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020550472
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2019038836
(87)【国際公開番号】W WO2020071393
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2018187608
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228110
【氏名又は名称】クオリカプス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 達也
(72)【発明者】
【氏名】本田 護
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/008660(WO,A1)
【文献】特開平06-179618(JP,A)
【文献】特表2015-517554(JP,A)
【文献】LWT - Food Science and Technology,2014年,Vol.57, No.2,pp.562-568
【文献】Progress in Organic Coatings,2012年,Vol.74,pp.8-13
【文献】材料システム,2006年,Vol.24,pp.73-79
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の基剤と、グルタミン酸と結合した層状粘土鉱物とを含有する皮膜からなる硬質カプセルであって、水分を除く前記硬質カプセルの皮膜成分の合計を100質量%とした場合に、該皮膜成分に含まれる前記層状粘土鉱物の含有量が、2質量%~5質量%である、前記硬質カプセル
【請求項2】
前記層状粘土鉱物が、フィロケイ酸塩である、請求項1に記載の硬質カプセル。
【請求項3】
前記フィロケイ酸塩が、ベントナイトである、請求項に記載の硬質カプセル。
【請求項4】
さらに、平均粒子径が0.01μm以上10μm以下のシリカ粒子を含む皮膜からなる、請求項1~のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコールが、けん化度78%~95%の範囲を有する部分けん化ポリビニルアルコールであり、及び前記ポリビニルアルコール共重合体が、けん化度78%~95%の範囲を有する部分けん化ポリビニルアルコール共重合体である、請求項1~のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
【請求項6】
ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の基剤と、グルタミン酸と結合した層状粘土鉱物及び溶媒とを含有する硬質カプセル調製液であって、前記硬質カプセル調製液の前記溶媒を除く固形分合計を100質量%とした場合に、前記層状粘土鉱物の含有量が、2質量%~5質量%である、前記硬質カプセル調製液
【請求項7】
前記層状粘土鉱物が、フィロケイ酸塩である、請求項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項8】
前記フィロケイ酸塩が、ベントナイトである、請求項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項9】
さらに、平均粒子径が0.01μm以上10μm以下のシリカ粒子を含む、請求項のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項10】
前記ポリビニルアルコールが、けん化度78%~95%の範囲を有する部分けん化ポリビニルアルコールであり、及び前記ポリビニルアルコール共重合体が、けん化度78%~95%の範囲を有する部分けん化ポリビニルアルコール共重合体である、請求項のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
【請求項11】
下記工程を含む硬質カプセルの調製方法:
前記請求項10のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液を使用して、硬質カプセルを調製する工程。
【請求項12】
前記硬質カプセルの調製方法が、硬質カプセルの強度を改善するためのものである、請求項11に記載の硬質カプセルの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度が改善された硬質カプセル、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質カプセルは、経口用製剤の手法として古くから用いられ、広範な内容物をできるだけ簡便な処方で充填し、ユーザーに届ける利便性に優れている。
【0003】
硬質カプセルに内容物を充填したり、充填済硬質カプセルを外部包材に詰めたりする際の操作性の良さをランナビリティー(Runnability)と呼ぶ。高速充填機でハンドリングする場合、局所的な吸着や押し込み動作が働き、局所的な応力による硬質カプセルの変形を生じる場合があり、その変形量は、弾性変形の範囲内では、カプセル皮膜の弾性率(elastic modulus)に依存しており、また、皮膜の靱性(toughness)が高ければ変形しても割れにくく、より高速での安定的なハンドリングが可能となる。すなわち、ランナビリティーが良い。また、硬質カプセルに瞬間的に過大かつ局所的な応力がかかると、過大な局所変形を生じ、割れに至る場合がある。割れ性は低いほど、やはり、ランナビリティーが良いということができる。弾性率が高く割れにくいという特性を備えた強度のある硬質カプセルは、輸送時及びユーザーが手で触った時に壊れて内容物が漏れ出したり、飛散したりする恐れも少ない。逆に、そのようなハンドリングの容易さ、利便性が硬質カプセルの利点でもある。
【0004】
医薬品、若しくはカプセル化された食品組成物に使用可能な高分子材料には安全性の面から制約があり、架橋度や架橋を誘発する反応性を高めて、弾性率や割れにくさなどの強度を改善する手法はとれない。但し、割れにくさは、主成分となる高分子材料の構造を変えなくても、安全性への影響の少ない分子量のみの制御、一般には、高分子量化して主鎖の絡み合いを強化することで、弾性率とは独立して比較的容易に改善することができる。他方、これら高分子材料の弾性率はカプセル皮膜の高分子材料の基本骨格及びその置換基の割合が決まってしまえば、分子量にはほとんど依存しないため、分子量の制御による弾性率改善は困難である。
【0005】
また、異種の高分子材料を混合する場合、相溶性に問題があったり、カプセルとしての成型性に問題があったりして硬質カプセル材料としては適さないことが多い。
【0006】
他方、なんらかの添加剤、好ましくは、医薬用、食品添加用として許容された安全性の高い比較的低分子量の添加剤を混合することが考えられるが、カプセル皮膜の強度を大幅に改善できる材料は知られていない。
【0007】
硬質カプセルに適した100μm程度の厚みで平坦で連続的なフィルムが形成できない材料を主成分としていては、硬質カプセル皮膜材料としてそもそも向かない。また、一般的に広く用いられる無機フィラーを大量に添加する場合、100μm程度の平坦で均一な膜厚のフィルムを得ることは困難である。もちろん、安全性にも懸念が残る。
【0008】
そのような硬質カプセル皮膜に適した高分子材料と添加剤の組み合わせという大前提の上で、カプセル皮膜の主成分を選択し、その強度の改善を行う必要があるので、通常の高分子材料における強度改善手法をそのまま適用するだけは全く不十分なことは明らかである。
【0009】
ポリビニルアルコールを主成分とする硬質カプセルは、25℃での相対湿度が概ね50%より高い環境下では軟化し、一方で相対湿度が概ね20%以下では脆化するため、このような環境下でもある程度の強度が維持できるよう、カプセル皮膜の強度を改善する必要がある。特許文献1には、ポリビニルアルコールを主成分とする硬質カプセルの硬度を、でんぷん分解物、KUNIPIA-F、カオリン、又はタルクをカプセル皮膜に添加することにより、硬質カプセルの硬度を改善する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2018/008660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
硬質カプセルを吸引製剤カプセルとして使用する場合には、硬質カプセルに一回分の投与量の薬剤を封止しておき、小さなピンでせん孔することで、内部の薬剤を適切な流量で吸引する。この場合、カプセル皮膜に易溶解性は求められないが、ピンの押し込みで過度に変形したり、穴周辺部からひびや割れが拡大することは望ましくない。カプセル皮膜破片が内部の吸引製剤に紛れ込んだり、安定量が吐出されなかったりするからである。したがって、小さくて輪郭のきれいな穴を形成するためにも、ピンによる穴形成時に適切な硬度だけでなく、適切な強度が求められる。
【0012】
本発明は、より良いランナビリティーや、上記目的に応じた強度を得るため、硬質カプセルのカプセル皮膜の強度を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意研究を重ねたところ、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール共重合体を主成分とする硬質カプセル皮膜に両極性分子と結合した層状粘土鉱物を添加することによって、硬質カプセルのカプセル皮膜の強度を改善することができることを見出した。
【0014】
本発明は、当該知見に基づいて完成されたものであり、以下の態様を含む。
項1.ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の基剤と、両極性分子と結合した層状粘土鉱物とを含有する皮膜からなる硬質カプセル。
項2.水分を除く前記硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合に、該皮膜成分に含まれる前記層状粘土鉱物の含有量が、1質量%以上10質量%以下である、項1に記載の硬質カプセル。
項3.前記両極性分子がアミノ酸である、項1又は2に記載の硬質カプセル。
項4.前記アミノ酸が炭素数2~11のアミノ酸である、項3に記載の硬質カプセル。項5.前記炭素数2~11のアミノ酸がグルタミン酸である、項4に記載の硬質カプセル。
項6.前記層状粘土鉱物が、フィロケイ酸塩である、項1~5のいずれか一項に記載の硬質カプセル。項7.前記フィロケイ酸塩が、ベントナイトである、項6に記載の硬質カプセル。
項8.さらに、平均粒子径が0.01μm以上10μm以下のシリカ粒子を含む皮膜からなる、項1~7のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
項9.前記ポリビニルアルコールが、けん化度78%~95%の範囲を有する部分けん化ポリビニルアルコールであり、及び前記ポリビニルアルコール共重合体が、けん化度78%~95%の範囲を有する部分けん化ポリビニルアルコール共重合体である、項1~8のいずれか一項に記載の硬質カプセル。
項10.ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の基剤と、両極性分子と結合した層状粘土鉱物及び溶媒とを含有する硬質カプセル調製液。
項11.前記硬質カプセル調製液の前記溶媒を除く固形分合計を100質量%とした場合に、前記層状粘土鉱物の含有量が、1質量%以上10質量%以下である、項10に記載の硬質カプセル調製液。
項12.前記両極性分子がアミノ酸である、項10又は11に記載の硬質カプセル調製液。
項13.前記アミノ酸が炭素数2~11のアミノ酸である、項12に記載の硬質カプセル調製液。
項14.前記炭素数2~11のアミノ酸がグルタミン酸である、項13に記載の硬質カプセル調製液。
項15.前記層状粘土鉱物が、フィロケイ酸塩である、項10~14のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
項16.前記フィロケイ酸塩が、ベントナイトである、項15に記載の硬質カプセル調製液。
項17.さらに、平均粒子径が0.01μm以上10μm以下のシリカ粒子を含む、項10~16のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
項18.前記ポリビニルアルコールが、けん化度78%~95%の範囲を有する部分けん化ポリビニルアルコールであり、及び前記ポリビニルアルコール共重合体が、けん化度78%~95%の範囲を有する部分けん化ポリビニルアルコール共重合体である、項10~17のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液。
項19.下記工程を含む硬質カプセルの調製方法:前記項10~18のいずれか一項に記載の硬質カプセル調製液を使用して、硬質カプセルを調製する工程。
項20.前記硬質カプセルの調製方法が、硬質カプセルの強度を改善するためのものである、項19に記載の硬質カプセルの調製方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、強度が改善されたポリビニルアルコール硬質カプセル、及びその調製方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、引張試験における典型的な引張応力―伸び率(ひずみ、%)曲線の例と、弾性率(ヤング率)、破断伸びの解析例である。弾性率は、弾性領域での傾き、破断伸びは、試験片の破断が生じた時の伸び率(ひずみ、%)、である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.用語の説明
(1)硬質カプセル材料
はじめに、本明細書、及び特許請求の範囲等で使用される用語について説明する。本発明で使用される用語は、特に記載がない限り、本項の説明にしたがう。
【0018】
本発明において、「硬質カプセル」とは、カプセル皮膜を先に製造し、製造されたカプセル皮膜に内容物を充填するタイプのカプセルである。通常、キャップ部とボディ部とからなり、ハードカプセル、又はツーピースカプセルとも呼ばれる。本発明の「硬質カプセル」には、2枚のフィルムの間に内容物を充填し、フィルム同士を接着して製造するソフトカプセル、内容物を皮膜溶液と共に凝固液に滴下して製造するシームレスカプセル、及び基剤の析出やエマルジョン化によって内部に有効成分を取り込ませて調製するマイクロカプセルは含まれない。
【0019】
本発明において、「基剤」とは、硬質カプセルの皮膜を形成するための主成分である。基剤としては、乾燥後に適度な強度を有する皮膜化(フィルム形成)が可能であり、親水性であって消化器官で容易に溶解し、また、化学的に安定な高分子材料が好ましい。また、医薬品、食品組成物に適した安全性、安定性が求められることから、反応性、架橋性の高い材料は好ましくない。本発明において使用される親水性高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、及びポリビニルアルコール共重合体(PVA共重合体)からなる群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0020】
PVAは、ポリ酢酸ビニルをけん化して得られる重合物であり、通常、けん化度が97mol%以上で下式(1)で表される完全けん化物と、けん化度が78~96mol%で下記式(2)で表される部分けん化物とがある。本発明では、上記完全けん化物及び部分けん化物のいずれも使用することができる。特に制限されるものではないが、けん化度78~90mol%、特に87~90mol%程度の部分けん化物が好ましく用いられる。
【0021】
【化1】
【0022】
PVAの数平均重合度(n)は、フィルム形成能を発揮し得る範囲であればよく、特に制限されるものではないが、通常は400~3300、特に400~2000程度であることが好ましい。なお、上記数平均重合度とけん化度から、かかるPVAの数平均分子量を算出すると約18000~約175000になるが、特にこれに制限されるものではない。
【0023】
PVA共重合体としては、前述するPVA又はその誘導体に重合性ビニル単量体を共重合させて得られるPVA共重合体を挙げることができる。ここでPVAの誘導体としては、アミン変性PVA,エチレン変性PVA、末端にチオール基を有するPVA(末端チオール変性PVA)などの公知のPVA誘導体を挙げることができる。
【0024】
重合性ビニル単量体としては、(1)アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸;(2)上記(1)記載の化合物のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩又はアルキルアミン塩;(3)メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリルレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリルレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールとメタクリル酸とのエステル、ポリエチレングリコールとアクリル酸とのエステル、ポリプロピレングリコールとメタクリル酸とのエステル、ポリプロピレングリコールとアクリル酸とのエステル、N-ビニルピロリドン、又はアクリロイルモルホリン;(4)下式で示される化合物:
【0025】
【化2】
を挙げることができる。重合性ビニル単量体として好ましくは、(1)および(2)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と(3)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物とを組み合わせて使用される。特に好ましくは、アクリル酸又はメタクリル酸とメチルメタクリレートとの併用である。
【0026】
PVA共重合体として好ましくは、前述する部分けん化PVAを骨格として、アクリル酸とメチルメタクリレートを共重合化した高分子共重合体である。より好ましくは、平均重合度が約300~500の部分けん化PVAと上記重合性ビニル単量体(特にアクリル酸及びメチルメタクリレート)とを質量比で約6:4~9:1の割合で共重合させて得られる、PVA共重合体である。なお、ここで重合性ビニル単量体は、部分けん化PVAと共重合させる際にアクリル酸とメチルメタクリレートを質量比で約3:7~0.5:9.5の割合で使用されることがより好ましい。特に好ましいPVA共重合体は、平均重合度300~500の部分けん化PVA、メチルメタクリレート及びアクリル酸を60~90:7~38:0.5~12(質量比)で共重合させて得られるPVA共重合体である。
【0027】
商業的に入手可能なPVA共重合体として、POVACOAT(登録商標)シリーズ(日新化成株式会社)を例示することができる。
【0028】
また、PVA又はPVA共重合体を硬質カプセルに適用した例としては、国際公開パンフレットWO02/17848、WO1999/046329、WO2009/125483、米国特許公報6967026号に記載のものが挙げられる。
【0029】
本発明において、PVA及びPVA共重合体を併用してもよい。皮膜中のPVAとPVA共重合体の配合割合は特に制限されず、PVA:PVA共重合体=100:0~0:100(質量比)、好ましくは99.9:0.1~0.1:99.9となるいずれの割合でも用いることができる。
【0030】
本発明において、「強度改善剤」とは、調製後のカプセル皮膜の強度を改善することができる成分をいう。「強度」とは、後述する方法で評価可能な、カプセル皮膜の弾性率、及び/又は破断伸び等で表される皮膜の硬さとは異なるパラメーターを意図する。強度改善剤として使用される成分は、一種であっても2種以上であってもよい。2種以上の成分が強度改善剤に含まれる場合、これら2種以上の成分は、あらかじめ混合してから、カプセル調製液の溶媒に溶解してもよく、個別に溶媒に溶解してもよく、個別に溶媒に溶解したものを混合してもよい。本発明に用いられる強度改善剤は、医薬品や食品組成物に使用するために必要な、安全性、化学的安定性(内容物との反応回避)、保存安定性(経時変化)、遮光性、低酸素透過性、低水蒸気透過性、低含有水分、及び定帯電性といった一般的な特性を損なわないことが好ましい。
【0031】
強度改善剤として、両極性分子と結合した層状粘土鉱物を挙げることができる。
【0032】
「両極性分子」は、例えば、層状粘土鉱物に親和性を有する官能基と、PVA及びPVA共重合体に親和性を有する官能基とを備える分子である。好ましくは、層状粘土鉱物に親和性を有する官能基は等電点以下で陽イオン化(カチオン化)する。
【0033】
層状粘土鉱物に親和性を有する官能基として、例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、又はファンデルワールス結合等により結合可能な官能基である。層状粘土鉱物に親和性を有する官能基としては,例えば、酸無水物基、カルボン酸基、水酸基、チオール基、エポキシ基、ハロゲン基、エステル基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、エーテル基、チオエーテル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスホリルコリン基、ニトロ基、アミノ基、オキサゾリン基、イミド基、シアノ基、イソシアネート基、ボロン酸基等の官能基が挙げられる。また、別の例として、ベンゼン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾリウム環、フラン環、チオフェン環等の芳香環が挙げられる。さらに別の例として、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等が挙げられる。
【0034】
PVA及びPVA共重合体に親和性を有する官能基として、例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、又はファンデルワールス結合等により結合可能な官能基である。PVAに親和性を有する官能基としては、例えば、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、アルコキシ基、チオール基、ハロゲン基、エステル基、アミド基、アミノ基、カルボニル基、アルデヒド基、アルカノイル基、スルホニル基、ボロン酸基、ボリン酸基等が挙げられる。また、別の例として、ピリジン環、ピロール環、イミダゾリウム環、フラン環、チオフェン等の芳香環が挙げられる。
【0035】
両極性分子の例としては、アミノ酸が好ましく、炭素数2~11のアミノ酸がより好ましい。さらに好ましいアミノ酸の炭素数としては2~6、より好ましくは4~6である。アミノ酸として、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、シスチン、ヒドロキシプロリン等を挙げることができる。アミノ酸として好ましくはグルタミン酸である。
【0036】
両極性分子の別の例としては、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。
【0037】
「層状粘土鉱物」は、例えば、四面体シートと八面体シートが積層した層状構造を持つフィロケイ酸塩等を挙げることができる。フィロケイ酸塩として、例えば、リザーダイト、バーチェリン、アメサイト、クロンステダイト、ネポーアイド、ケリアイト、フレイポナイト、ブリンドリアイト、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、オーディナイト、タルク、ウィレムサイト、ケロライト、ピメライト、パイロフィライト、フェリパイロフィライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイト、スインホルダイト、ベントナイト(モンモリロナイトを主成分とする)、バイデライト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、バーミキュライト、黒雲母、金雲母、鉄雲母、イーストナイト、シデロフィライト、テトラフェリ鉄雲母、鱗雲母、ポリリシオナイト、白雲母、セラドン石、鉄セラドン石、鉄アルミノセラドン石、アルミノセラドン石、砥部雲母、ソーダ雲母、イライト、海緑石、ブラマーライト、ウォンネサイト、クリントナイト、木下石、ビティ雲母、アナンダ石、真珠雲母、クリノクロア、シャモサイト、ペナンタイト、ニマイト、ベイリクロア、ドンバサイト、クッケアイト、スドーアイト、コレンサイト、ハイドロバイオタイト、アリエッタイト、クルケアイト、レクトライト、トスダイト、ドジライト、ルニジャンライト、サライオタイト等が挙げられる。好ましくは、ベントナイト、タルク、カオリン等である。これらの層状粘土鉱物は、天然鉱物であっても、合成鉱物であってもよい。
【0038】
層状粘土鉱物の表面は同形置換や結晶端面のプロトン化や脱プロトン化によって帯電しており、その帯電状態はそれぞれの層状粘土鉱物により異なる。これらの層状粘土鉱物には、無機・有機イオンや極性分子、有機酸などの物質が吸着することができる。
【0039】
本開示において、例えば、ベントナイトは、天然の特殊コロイド性粘土であり、コロイド性含水ケイ酸アルミニウムである。主成分は、モンモリロナイトであり約90%以上を占め、残りは、長石、硫酸カルシウム、バイデライト、炭酸カルシウム、石英、雲母及び炭酸マンガンなどからなるといわれる。
【0040】
商業的に入手可能なベントナイトとしては、Veegum F、Veegum HV、及びVeegum R(R.T.Vanderbilt C. Inc., USA)、クニピアG、及びクニピア-F(クニミネ工業株式会社)、BENTOLITE(ウイルバー・エリス)、ベントナイト利根印(関ベン鉱業株式会社)、ベンゲルFW、及びベンゲル(日本有機粘土株式会社)、並びにポーラゲルNF(株式会社ボルクレイ・ジャパン)等を挙げることができる。
【0041】
本開示において、タルクは、天然の含水ケイ酸マグネシウムであり、滑石ともよばれる。純粋なタルクは、MgSi10(OH)(分子量379.27)である。タルクは、主成分をMgSi10(OH)とし、クロライト(含水ケイ酸アルミニウムマグネシウム)、マグネサイト(炭酸マグネシウム)、カルサイト(炭酸カルシウム)、及びドロマイト(炭酸カルシウムマグネシウム)が混在することも許容される。タルクには、アスベストは含まれない。
【0042】
タルクの粒子径は、レーザー回折・散乱法(JIS Z 8825:2013)で測定した場合、0.5~30μm程度、好ましくは3.0~15.0μm程度である。見掛け密度(JIS Z 2504:2012)は0.12~0.40g/cm3、好ましくは0.15~0.35g/cm3である。また、比表面積は、BET法(JIS Z 8830:2013)で、2.5~40m2/g程度、好ましくは5~20m2/g程度である。
【0043】
商業的に入手可能なタルクとしては、ローズタルク、ミクロエースP-4、ミクロエースP-3、ミクロエースP-2、SG-95、及びMS-KY等(日本タルク株式会社);タルク粉CT-250、タルク粉CT-35、及びタルク粉EX-15等(株式会社ヤマグチマイカ);TALC JA-13R、TALC JA-24R、TALC JA-46R、TALC JA-68R、TALC JA-80R、TALC MMR、TALC SW-A、及びTALC SW-特等(浅田製粉株式会社);IMP 1886L Talc BC(株式会社伊那貿易商会);並びにLuzenac Pharma(株式会社GSIクレオス)等を挙げることができる。
【0044】
本態様においてカオリンは、天然の含水ケイ酸アルミニウムAl・2SiO/2HOに相当する。
【0045】
商業的に入手可能なカオリンとしては、2747 Kaolin USP BC(株式会社伊那貿易商会)、RF Amazonian White Clay (DKSHジャパン)、並びにホワイトクレイ、及びレッドクレイ(株式会社マツモト交商)等を挙げることができる。
【0046】
層状粘土鉱物への両極性分子の結合は、例えば、両極性分子を等電点よりも低い酸性条件下でカチオン化し、この溶液を層状粘土鉱物に接触させることにより行うことができる。より具体的には、10mM~500mMの両極性分子の水溶液に、両極性分子の0.3~0.7モル等量程度の塩酸を加えることで、両極性分子をカチオン化することができる。両極性分子のカチオン化溶液を0.1~10(質量/容量)%程度に調製した層状粘土鉱物分散液に攪拌しながら滴下し、30分~16時間程度両極性分子と層状粘土鉱物を接触させる。両極性分子結合層状粘土鉱物の分散液を遠心分離又は濾過等を行うことにより回収することができる。必要に応じて回収した両極性分子結合層状粘土鉱物を水等で洗浄してもよい。回収した両極性分子結合層状粘土鉱物を乾燥させることにより強度改善剤として使用することができる。乾燥条件は、両極性分子結合層状粘土鉱物が乾燥できる限り制限されない。好ましくは加温下、より好ましくは減圧下、100~150℃で1~8時間乾燥させることができる。
【0047】
後述する実施例に示すように、両極性分子を層状粘土鉱物に結合させることなく、カプセル皮膜中に両極性分子と層状粘土鉱物を共存させても、強度改善効果は得られにくい。
【0048】
本発明の硬質カプセルのカプセル皮膜には、基剤及び強度改善剤の他、ゲル化剤、ゲル化補助剤、可塑剤、滑沢剤、金属封鎖剤、着色剤、遮光剤、残留水分(単に水分ともいう)等を含んでいてもよい。
【0049】
ゲル化剤としては、カラギーナン、タマリンド種子多糖、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カードラン、ゼラチン、ファーセレラン、寒天、及びジェランガムなどを例示することができる。これらは一種単独で使用しても、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0050】
上記ゲル化剤のなかでもカラギーナンは、ゲル強度が高く、しかも特定イオンとの共存下で少量の使用で優れたゲル化性を示すことから最適なゲル化剤である。なお、カラギーナンには、一般にカッパ-カラギーナン、イオタ-カラギーナン及びラムダ-カラギーナンの3種が知られている。本発明では、比較的強度の高いゲル化能を有するカッパ及びイオタ-カラギーナンを好適に使用することができる。またペクチンはエステル化度の違いでLMペクチンとHMペクチンとに分類でき、ジェランガムもアシル化の有無によってアシル化ジェランガム(ネイティブジェランガム)と脱アシル化ジェランガムに分類することができるが、本発明ではいずれも区別することなく使用することができる。
【0051】
使用するゲル化剤の種類に応じてゲル化補助剤を使用することもできる。ゲル化剤としてカラギーナンを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、カッパ-カラギーナンについては水中でカリウムイオン、アンモニウムイオン及びカルシウムイオンの一種又は2種以上を与えることのできる化合物、例えば塩化カリウム、リン酸カリウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化カルシウムを挙げることができる。またイオタ-カラギーナンについては水中でカルシウムイオンを与えることのできる、例えば塩化カルシウムを挙げることができる。またゲル化剤としてジェランガムを使用する場合に組み合わせて用いることができるゲル化補助剤としては、水中でナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの一種又は2種以上を与えることのできる化合物、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムを挙げることができる。加えて有機酸やその水溶性塩としてクエン酸又はクエン酸ナトリウムを使用することもできる。
【0052】
ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を用いる場合、併用するゲル化剤としてはジェランガムが好ましい。またジェランガムにゲル化剤を添加する場合には、ゲル化補助剤としては塩化カリウム及び/又は乳酸カルシウムを好適に用いることができる。
【0053】
可塑剤としては、医薬品又は食品組成物に使用できるものであれば特に制限されないが、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ポリエステル、エポキシ化ダイズ油、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエステル、カオリン、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ゴマ油、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物、D-ソルビトール、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トウモロコシデンプン由来糖アルコール液、トリアセチン、濃グリセリン、ヒマシ油、フィトステロール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリソルベート80、マクロゴール1500、マクロゴール400、マクロゴール4000、マクロゴール600、マクロゴール6000、ミリスチン酸イソプロピル、綿実油・ダイズ油混合物、モノステアリン酸グリセリン、リノール酸イソプロピルなどを挙げることができる。なお、可塑剤を用いる場合、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合、通常15質量%以下の範囲を挙げることができる。好ましくは13質量%以下、より好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下の範囲で添加することができる。
【0054】
金属封鎖剤としては、エチレンジアミン四酢酸、酢酸、ホウ酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸、リン酸、酒石酸、又はこれらの塩、メタホスフェート、ジヒドロキシエチルグリシン、レシチン、β-シクロデキストリン、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0055】
滑沢剤としては、医薬品又は食品組成物に使用できるものであれば特に制限されない。例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、カルナバロウ、でんぷん、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、マクロゴール、タルク、水素添加植物油等を挙げることができる。
【0056】
着色剤、遮光剤としては、医薬品又は食品組成物に使用できるものであれば特に制限されない。着色剤としては、例えばアセンヤクタンニン末、ウコン抽出液、塩化メチルロザニリン、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、オパスプレーK-1-24904、オレンジエッセンス、褐色酸化鉄、カーボンブラック、カラメル、カルミン、カロチン液、β-カロテン、感光素201号、カンゾウエキス、金箔、クマザサエキス、黒酸化鉄、軽質無水ケイ酸、ケッケツ、酸化亜鉛、酸化チタン、三二酸化鉄、ジスアゾイエロー、食用青色1号及びそのアルミニウムレーキ、食用青色2号及びそのアルミニウムレーキ、食用黄色4号及びそのアルミニウムレーキ、食用黄色5号及びそのアルミニウムレーキ、食用緑色3号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色2号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色3号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色102号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色104号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色105号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色106号及びそのアルミニウムレーキ、水酸化ナトリウム、タルク、銅クロロフィンナトリウム、銅クロロフィル、ハダカムギ緑茶エキス末、ハダカムギ緑茶抽出エキス、フェノールレッド、フルオレセインナトリウム、d-ボルネオール、マラカイトグリーン、ミリスチン酸オクチルドデシル、メチレンブルー、薬用炭、酪酸リボフラビン、リボフラビン、緑茶末、リン酸マンガンアンモニウム、リン酸リボフラビンナトリウム、ローズ油、ウコン色素、クロロフィル、カルミン酸色素、食用赤色40号及びそのアルミニウムレーキ、水溶性アナトー、鉄クロロフィリンナトリウム、デュナリエラカロテン、トウガラシ色素、ニンジンカロテン、ノルビキシンカリウム、ノルビキシンナトリウム、パーム油カロテン、ビートレッド、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、ベニコウジ色素、ベニバナ赤色素、ベニバナ黄色素、マリーゴールド色素、リボフラビンリン酸エステルナトリウム、アカネ色素、アルカネット色素、アルミニウム、イモカロテン、エビ色素、オキアミ色素、オレンジ色素、カカオ色素、カカオ炭末色素、カキ色素、カニ色素、カロブ色素、魚鱗箔、銀、クサギ色素、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、クチナシ黄色素、クーロー色素、クロロフィン、コウリャン色素、骨炭色素、ササ色素、シアナット色素、シコン色素、シタン色素、植物炭末色素、スオウ色素、スピルリナ色素、タマネギ色素、タマリンド色素、トウモロコシ色素、トマト色素、ピーナッツ色素、ファフィア色素、ペカンナッツ色素、ベニコウジ黄色素、ベニノキ末色素、ヘマトコッカス藻色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ムラサキヤマイモ色素、油煙色素、ラック色素、ルチン、エンジュ抽出物、ソバ全草抽出物、ログウッド色素、アカキャベツ色素、アカゴメ色素、アカダイコン色素、アズキ色素、アマチャ抽出物、イカスミ色素、ウグイスカグラ色素、エルダーベリー色素、オリーブ茶、カウベリー色素、グースベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、ストロベリー色素、ダークスィートチェリー色素、チェリー色素、チンブルベリー色素、デュベリー色素、パイナップル果汁、ハクルベリー色素、ブドウ果汁色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、プラム色素、ブルーベリー色素、ベリー果汁、ボイセンベリー色素、ホワートルベリー色素、マルベリー色素、モレロチェリー色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、レモン果汁、ローガンベリー色素、クロレラ末、ココア、サフラン色素、シソ色素、チコリ色素、ノリ色素、ハイビスカス色素、麦芽抽出物、パプリカ粉末、アカビートジュース、ニンジンジュースなどを挙げることができる。
【0057】
遮光剤としては、例えば酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用緑色3号アルミニウムレーキ、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色102号アルミニウムレーキ、食用赤色104号アルミニウムレーキ、食用赤色105号アルミニウムレーキ、食用赤色106号アルミニウムレーキ、食用赤色40号アルミニウムレーキを挙げることができる。
【0058】
医薬用硬質カプセルにおいては、内容物の紫外線等による劣化を防止するため、遮光剤として酸化チタンを添加する場合がある。
【0059】
調製後のカプセル皮膜には、通常、数%の残留水分が含まれるのが好ましい。通常、30℃から100℃の範囲で成型後のカプセルを乾燥処理すると、カプセルの固形分量及びそれらの組成に対応した所定の飽和残留水分値に落ち着く。当然、飽和水分値に落ち着くまでの時間は、高温で乾燥処理した場合の方が短い。残留水分は、カプセル保存時の環境湿度にも依存するが、ほぼ可逆的に変化する。すなわち、30~100℃で、十分乾燥処理したあとの飽和水分値は、さらに、一定温度、相対湿度下で数日間保管した場合、一定の値に収束する。本発明においては、室温で相対湿度22%、43%あるいは60%に数日間保管した後の飽和水分値を用いる。
【0060】
少量の残留水分が含まれることは、割れにくさを維持するためにむしろ好ましい。残留水分の室温、43%相対湿度における飽和水分値として、カプセル皮膜全質量に対して、少なくとも1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましく、3%以上であることがさらに好ましい。他方、残留水分が多すぎると、長期間保存した場合に、内部に充填した薬物と反応を起こす場合があるので、8%以下であることが好ましく、6%以下とするのがより好ましい。
残留飽和水分量は乾燥減量での含水率で表すことができ、その測定は、以下のようにして行うことができる。
【0061】
<乾燥減量法によるカプセル皮膜中の含水率の測定方法>
デシケータに、炭酸カリウム飽和水溶液を入れて恒湿状態とした雰囲気中に試料(硬質カプセル、又はフィルム)を入れ密閉し、25℃で1週間調湿する。なお、炭酸カリウム飽和水溶液の存在下では、相対湿度約43%の雰囲気を作成することができる。調湿後の試料の質量(湿質量)を測定した後、次いで当該試料を105℃で2時間加熱乾燥し、再度試料の質量(乾燥質量)を測定する。乾燥前の質量(湿質量)と乾燥後の質量(乾燥質量)の差から、下式に従って、105℃で2時間加熱乾燥することによって減少する水分量の割合(含水率)を算出する。
【0062】
【数1】
【0063】
また、本発明の硬質カプセルのカプセル皮膜には、シリカ粒子が含まれていてもよい。シリカ粒子は、例えば、その平均粒子径が0.01μm以上であることが好ましい。また、シリカ粒子は、例えば、その平均粒子径が10μm以下であることが好ましい。シリカ粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡、コールターカウンター、レーザー回折散乱法等で各粒子径を求め、その平均値を算出することで求めることができる。
【0064】
商業的に入手可能なシリカ粒子としては
、AEROSILシリーズ(日本アエロジル株式会社製)、シリカ粒子(株式会社トクヤマ サンシール)、サイロスフェアC-シリーズ(富士シリシア化学株式会社)等を挙げることができる。
【0065】
2.硬質カプセル
本態様の硬質カプセルの皮膜は、基剤と、強度改善剤とを含む皮膜からなる。基剤の含有量は、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合に、100質量%から基剤以外のカプセル皮膜含有成分の含有量の合計質量%を減じた量である。
【0066】
強度改善剤の含有量の下限値は、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合に、前記皮膜成分の1質量%より大きく、好ましくは2質量%であり、より好ましくは3質量%である。強度改善剤の含有量の上限値は、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合に、10質量%であり、好ましくは8質量%であり、より好ましくは5質量%である。
【0067】
より具体的な強度改善剤を含む硬質カプセルの皮膜組成の例は、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合に、強度改善剤の含有量は上述の通りであり、基剤は、水分を除く硬質カプセルの皮膜成分合計を100質量%とした場合に、水分を除く成分の含有量合計の残部とすることができる。具体的には、基剤は前記皮膜成分の45~99.9質量%、好ましくは55~99質量%、より好ましくは60~95質量%、さらに好ましくは65~90質量%である。基剤と強度改善剤以外の成分を含む場合、ゲル化剤を前記皮膜成分の0.025~2.5質量%、好ましくは0.05~2.3質量%、より好ましくは0.075~2質量%、さらに好ましくは0.1~1.8質量%を挙げることができる。さらに塩化カリウムなどのゲル化補助剤を含む場合、その含有量として前記皮膜成分の2.5質量%以下の範囲、好ましくは0.1~2.3質量%、より好ましくは0.15%~2質量%、さらに好ましくは0.2~1.8質量%を挙げることができる。また本態様の硬質カプセルのカプセル皮膜が可塑剤を含む場合、その含有量としては通常前記皮膜成分の15質量%以下の範囲を挙げることができる。好ましくは13質量%以下、より好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下の範囲である。また同様に滑沢剤、着色剤、遮光剤、金属封鎖剤、香料等を含む場合、その含有量は、それぞれ前記皮膜成分の15質量%以下の範囲で適宜設定することができる。好ましくは13質量%以下、より好ましくは11質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下の範囲である。
強度改善剤は、2種、又は3種を組み合わせて使用してもよい。前記強度改善剤を2種、又は3種を組み合わせて使用する場合、硬質カプセルに含有される強度改善剤の含有量の合計量の下限値は、組み合わせる強度改善剤の上述の含有量の下限値の中で最も低い値を採用することができる。また、前記強度改善剤を2種、又は3種を組み合わせて使用する場合、硬質カプセルに含有される強度改善剤の含有量の合計量の上限値は、組み合わせる強度改善剤の上述の含有量の上限値の中で最も高い値を採用することができる。
【0068】
なお、層状粘土鉱物は四面体シートと八面体シートが積層した層状構造を持つフィロケイ酸塩であるが、このような構造を有しない一般的な無機フィラー(金属酸化物等)を添加しても、本発明のような強度改善効果は得られにくい。
【0069】
3.硬質カプセル調製液
本態様の硬質カプセルを調製するためのカプセル調製液は、溶媒と上記2.で述べた成分を含む。溶媒は、水性溶媒である限り特に制限されない。溶媒として好ましくは水、エタノール、及びこれらの混合物、より好ましくは水である。
【0070】
硬質カプセル調製液に含まれる上記成分の濃度は、調製後の硬質カプセルにおける各成分の含有量が、上記硬質カプセルにおける含有量となる限り制限されない。すなわち、調製液においては、調製液の溶媒を除く成分合計を100質量%とした時に、調製後の硬質カプセルにおける各成分の含有量が、上記硬質カプセルにおける含有量となる限り制限されない。例えば、カプセル調製液中の終濃度として下記の濃度を上げることができる。なお、終濃度とは最終的にできあがった溶液中の濃度、つまり実際にカプセルを調製する際に使用する溶液中の濃度を意味する。
【0071】
カプセル調製液の組成は、基剤は9~20質量%、好ましくは11~19.5質量%、より好ましくは12~19質量%、さらに好ましくは13~18質量%である;強度改善剤は0.02~10質量%、好ましくは0.2~6質量%である。基剤と強度改善剤以外の成分を含む場合、ゲル化剤については、0.005~0.5質量%、好ましくは0.01~0.45質量%、より好ましくは0.015~0.4質量%を挙げることができる。また、ゲル化補助剤を用いる場合は、その濃度として0.5質量%以下、0.02~0.5質量%、好ましくは0.03~0.40質量%、より好ましくは0.04~0.35質量%を挙げることができる。滑沢剤、着色剤、遮光剤、金属封鎖剤、香料等を含む場合、その含有量は、それぞれ0.5質量%以下の範囲で適宜設定することができる。
強度改善剤を2種、又は3種を組み合わせて使用する場合、硬質カプセルに含有される強度改善剤の含有量の合計量の下限値は、上記いずれかの強度改善剤の含有量の下限値を最下限値とすることができる。また、硬質カプセルに含有される強度改善剤の含有量の合計量上限値は、上記いずれかの強度改善剤の含有量の上限値を最上限値とすることができる。
【0072】
4.硬質カプセルの調製方法
カプセル調製液(浸漬液)の調製方法は、特に制限されない。例えば約70~100℃程度に加熱した精製水に、必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤を溶解した後、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を溶解させて均一なカプセル調製液(浸漬液)を調製する方法がある。
【0073】
カプセル調製液の粘度は、特に制限されない。好ましくは、カプセル調製液の粘度は、カプセル成型用ピンの浸漬時に採用される温度(浸漬液の温度)条件下(30~80℃、好ましくは40~60℃)で、カプセル調製液の粘度が100~20000mPa・s、好ましくは300~10000mPa・sとなるように調製することができる。通常、カプセル調製液の溶媒含有量として60~90質量%、好ましくは70~85質量%を挙げることができる。カプセル調製液の溶媒以外の硬質カプセルの皮膜成分含有量の合計として10~40質量%、好ましくは15~30質量%を挙げることができる。
【0074】
本発明で規定する粘度は、B型回転粘度計で、粘度500mPa・s未満の場合はローター番号2、粘度500mPa・s以上2000mPa・s未満の場合はローター番号3、粘度2000mPa・s以上の場合はローター番号4を用いて、所定温度で、回転数60rpm、測定時間1分の条件で測定した場合の粘度を意味する。
カプセル調製液に含まれる各成分の濃度は、後述する。
【0075】
硬質カプセルの調製(成型)方法は、本発明に係るカプセル調製液を使用してカプセルを調製する工程を含む限り、特に制限されない。硬質カプセルは、一般には、カプセル皮膜物質を溶解した水溶液中に、カプセルの鋳型となるモールドピンを浸漬させ、引き上げた時に付着してくる皮膜を硬化、乾燥させることで所望のカプセル形状と厚みを得る(ディッピング法)。具体的には、硬質カプセルの調製方法は、上記の方法によりカプセル調製液を調製するか、カプセル調製液を購入する等によって準備する工程と、かかるカプセル調製液にカプセル成型用ピンを浸漬した後、これを引き上げ、カプセル成型用ピンに付着した溶液をゲル化させ、その後、ゲル化した皮膜を20~80℃で乾燥する調製工程によって製造される。場合によっては、ゲル化過程を経ずに、冷却による粘度増加と乾燥により成型することも可能である。
【0076】
より具体的には、本発明で用いる硬質カプセルは下記の成型工程を経て製造することができる。
(1)ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体(また必要に応じてゲル化剤やゲル化補助剤)を含有するカプセル調製液(浸漬液)に、カプセル成型用ピンを浸漬する工程(浸漬工程)、
(2)カプセル調製液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液をゲル化する工程(ゲル化工程)、
(3)カプセル成型用ピンの外表面に被覆形成されたゲル化カプセルフィルム(ゲル化皮膜)を乾燥する工程(乾燥工程)、
(4)乾燥したカプセルフィルム(皮膜)をカプセル成型用ピンから脱離する工程(脱離工程)。
なお、必要に応じて上記(4)の工程後に下記の加熱工程を行ってもよい。
(5)上記のゲル化工程(2)後の、乾燥工程(3)の前後若しくは同時に、又は脱離工程(4)後に、ゲル化カプセルフィルム(ゲル化皮膜)を30~150℃で加熱処理する工程(加熱工程)。
【0077】
カプセル調製液(浸漬液)としてカラギーナンなどのゲル化剤を配合した溶液を用いる場合は、当該溶液が50℃以下の温度でゲル化することを利用して、カプセル製造機周辺の温度を通常35℃以下、好ましくは30℃以下、好ましくは室温下に設定して、上記ゲル化工程(2)をカプセル成型用ピンの外表面に付着したカプセル調製液を放冷することによって行うことができる(冷ゲル法)。具体的には、浸漬工程(1)において、35~60℃、好ましくは40~60℃の一定温度に調整したカプセル調製液(浸漬液)に、その液温に応じて10~30℃、好ましくは13~28℃、より好ましくは15~25℃に調整したカプセル成型用ピンを浸漬し、次いでゲル化工程(2)において、カプセル調製液(浸漬液)からカプセル成型用ピンを引き上げて、当該ピンの外表面に付着したカプセル調製液をゲル化する。
【0078】
乾燥工程(3)は室温で行うことができる。通常、80~150℃で行われる。脱離工程(4)は、カプセル成型用ピン表面に形成された乾燥カプセルフィルムをカプセル成型用ピンから抜き出すことによって行われる。
【0079】
任意工程である加熱工程(5)は、ゲル化工程(2)後、すなわちカプセル調製液がゲル化(固化)した後に行うことができる。加熱処理の時期は、ゲル化工程(2)後であればどの段階でもよく、乾燥工程(3)の前若しくは後、又は加熱と乾燥を同時に行ってもよい。さらに脱離工程(4)後であってもよい。好ましくはゲル化工程(2)後、ゲル化カプセルフィルムを室温下での乾燥工程に供し、乾燥後又は半乾きの段階で、加熱処理を行う。加熱温度は30~150℃の範囲であれば特に制限されないが、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~80℃の範囲である。加熱処理は、通常30~150℃の空気を送風することによって行うことができる。
【0080】
斯くして調製されるカプセルフィルムは、所定の長さに切断調整された後、ボディ部とキャップ部を一対に嵌合した状態又は嵌合しない状態で、硬質カプセルとして提供することができる。
【0081】
硬質カプセルの皮膜厚みは、通常、50~200μmの範囲とされる。特に、カプセルの側壁部分の厚みは、現在市販されているカプセルでは、70~150μm、より好ましくは、80~120μmとするのが通常である。硬質カプセルのサイズとしては、00号、0号、1号、2号、3号、4号、5号等があるが、本発明ではいずれのサイズの硬質カプセルも使用することができる。
【0082】
なお、特にゲル化現象を伴わずカプセル調製液からの水分蒸発・乾燥だけに頼った固化方法でもカプセル皮膜を得ることができる。
【0083】
5.硬質カプセルへの内容物の充填、及び用途
硬質カプセルに内容物を充填する方法は、特に制限されない。
内容物の硬質カプセル内への充填は、特開2007-144014号公報、特開2000-226097号公報等に記載の公知のカプセル充填機、例えば全自動カプセル充填機(型式名:LIQFILsuper80/150、クオリカプス社製)、カプセル充填・シール機(型式名:LIQFILsuperFS、クオリカプス社製)等を用いて実施することができる。
【0084】
上記充填方法において、硬質カプセルの仮結合、本結合は、米国特許第3508678号明細書、米国特許第3823843号明細書、米国特許第4040536号明細書、米国特許第4822618号明細書、米国特許第5769267号明細書等に示すようなロック機構で担保される。上記のようなロック機構を安定的に維持するためにも、硬質カプセルの強度は重要である。
【0085】
上記のキャップとボディのすりあわせによるロック機構に加えて、さらに確実な厳封を行って、悪意による開封と異物混入を防止するために、及び液体充填物の漏えいを確実に防ぐために、特開2005-187412号公報、若しくは特開2009-504630号公報に記載のバンドシールによって嵌合部を封緘してもよい。
本発明の硬質カプセルの用途は、特に制限されない。好ましくは、経口製剤、及び吸引製剤等を挙げることができる。
【0086】
経口製剤は、胃若しくは腸において速やかに溶解することが望ましい。腸でカプセル皮膜が溶解され薬剤を腸で放出するために、カプセル皮膜表面に、腸溶性基剤のコーティングを付加した腸溶性カプセルとすることもできる。カプセル皮膜そのものに、腸溶性基剤を全部又は一部用いて腸溶性カプセルとすることもできる。腸溶性カプセルとは胃で溶解されず腸で溶解される性質を有するものである限り特に制限されないが、例えばpH1.2での希塩酸溶液中(日本薬局方1液)中で2時間以上ほとんど溶解せず、pH6.8の緩衝溶液(日本薬局方2液)中で溶解するものをいう。
【0087】
また硬質カプセルから薬剤を徐放させることもできる。徐々に薬剤が溶出させる場合は、カプセル皮膜表面に徐放性の皮膜をコーティングしてもよい。
【0088】
吸引製剤は、硬質カプセルに一回分の投与量の薬剤を封止しておき、米国特許4069819、米国特許4210140、米国特許7669596、米国特許2010-0300440号公報等に開示されたようなデバイスに装着する。小さなピンでせん孔する若しくは、カプセルを破断することで、内部の薬剤を適切な流量で吸引することができる。
【0089】
硬質カプセル剤の内容物は、特に制限されず、ヒト又は動物の医薬品、医薬部外品、化粧料、及び食品を、制限なく挙げることができる。
【0090】
内容物の形状も特に問わない。例えば、液状物、ゲル状物、粉末状、顆粒状、錠剤状、ペレット状、またこれらの混合形状(ハイブリッド状)であってもよい。
【0091】
硬質カプセル剤の内容物としては、一般食品、保健機能食品(機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品)、医薬部外品、医薬品等の充填物が充填され得る。充填物として例えば、植物(単細胞緑藻類を含む)に由来する成分(生の植物、一部乾燥された微生物、又は完全乾燥された植物、植物加工品、植物抽出物等)、微生物(細菌、酵母、ミドリムシ等)又は前記微生物に由来する成分(生の微生物、一部乾燥された微生物、又は完全乾燥された微生物、微生物加工品、微生物抽出物等)、滋養強壮保健剤、解熱鎮痛消炎剤、向精神剤、抗不安剤、抗うつ剤、催眠鎮静剤、鎮痙剤、中枢神経作用剤、脳代謝改善剤、脳循環改善剤、抗てんかん剤、交感神経興奮剤、胃腸剤、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、抗アレルギー剤、歯科口腔用剤、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、冠血管拡張剤、末梢血管拡張剤、高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、抗リウマチ剤、骨格筋弛緩剤、鎮けい剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療剤、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤等の有効成分、又は前記有効成分を含む組成物を挙げることができる。なお、これらの充填物は、特に制限されず公知のものを広く挙げることができる。これらの成分は単独又は他の成分との合剤として使用することができる。充填物は、固形、粉末、顆粒、粉砕物、液体、ジェル等のいずれの形態であってもよい。また、これらの成分は、投与対象者の状態、年齢等に応じて適宜、定められた公知の適量が充填される。
【0092】
滋養強壮保健剤には、例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE(酢酸d-α-トコフェロールなど)、ビタミンB1( ジベンゾイルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩など)、ビタミンB2(酪酸リボフラビンなど)、ビタミンB6(塩酸ピリドキシンなど)、ビタミンC(アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウムなど)、ビタミンB12(酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミンなど)のビタミン、カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル、タンパク、アミノ酸、オリゴ糖、生薬などが含まれる。
【0093】
解熱鎮痛消炎剤としては、例えばアスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、塩酸ジフェンヒドラミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジヒドロコデイン、ノスカピン、塩酸メチルエフェドリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、カフェイン、無水カフェイン、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、トルフェナム酸、メフェナム酸、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、サリチルアミド、アミノピリン、ケトプロフェン、インドメタシン、ブコローム、ペンタゾシンなどが挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0094】
本開示に係る硬質カプセルには、一般食品、保健機能食品(機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品)として、フコイダン、ヘム鉄、ポリフェノール類、ペプチド類やアミノ酸類(例えば、ローヤルゼリー、オルニチン、シトルリン、アミノレブリン酸、黒酢、又は、疎水性のアミノ酸であるメチオニン、バリン、ロイシン、イソロイシンなど)、タンパク質類(ラクトフェリンなどの乳タンパク、コラーゲン、プラセンタ、など)、糖タンパク質類、酵素発酵食品類(ナットウキナーゼなど)、補酵素類(コエンザイムQ10など)、ビタミン類(βカロテンなど)、ミネラル類、生微生物類(ミドリムシ、クロレラ、酵母、乳酸菌、ビフィズス菌など)、植物抽出物(生薬、ハーブ類、例えば、ウコンエキス、人参エキス、梅エキス、イチョウ葉エキス、ブルーベリーエキス、甜茶エキスなど)、プロポリス等の天然有機物、又はこれらの任意の組み合わせを充填することができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0095】
6.強度の評価
硬質カプセルの皮膜の強度(ヤング率、及び/又は破断伸び)を評価する場合、被験皮膜の厚みをそろえて比較することが重要である。このため、硬質カプセルの各成分組成に依存する皮膜の強度は、硬質カプセル調製液の各成分組成と同一成分組成である調製液を用いて、キャスト法によりフィルムを作製し、当該キャストフィルムを用いて評価することができる。
【0096】
キャストフィルムは、室温に保持したガラス面上又はPETフィルム上に金属性のアプリケータを設置し、50℃~60℃の調製液を流しこみ一定速度で移動させ、乾燥後の膜厚が100μmとなるような均一なウェットフィルムを作製する。その後、例えば80℃で2時間程度の乾燥を行う。また、100μmの均一な膜厚のフィルムを得るため、ギャップが0.4mm~1.5mmのアプリケータを適宜使い分けてもよい。
【0097】
作製したフィルムについて、例えば、5mm×75mmのダンベル形状(JIS K-7161-2-1BAで規定)にカットした後、例えば、小型卓上試験機(島津製作所EZ-LX)を用いて引張試験を行うことができる。具体的には、フィルムの両端をホルダーにセット(ギャップ長60mm)し、引張速度、10mm/minで引張、フィルムの伸びとフィルム内に生じる応力(引張応力)-伸び率(ひずみ)曲線を取得する。図1に、代表的な引張応力-伸び率試験結果を示す。図中における低応力時の弾性変形領域の傾きから、硬さの指標である弾性率が求められ、破断点における伸び率から、割れにくさの指標として破断伸び(%)を求めることができる(Aqueous Polymeric Coating For Pharmaceutical Dosage Forms, 4th edition, CRC Press、2017、Chapter 4)。
【0098】
前記強度が、通常の使用条件(温度5~30℃程度、相対湿度20~60%程度)の環境下で維持されることが望ましい。そこで、本発明においては、作製したフィルムを、25℃、相対湿度22%(酢酸カリウム飽和塩水溶液を使用)の条件(低湿度条件)又は相対湿度60%(硝酸アンモニウム飽和塩水溶液を使用)の条件(高湿度条件)で1週間以上調湿した後、調湿条件と同じ温湿度環境下で引張試験を実施し機械的強度を評価している。
【0099】
硬さの指標である弾性率(ヤング率)は、1~5GPaであることが好ましい。引張試験で評価される割れにくさの指標である破断伸びは、5~30%程度であることが好ましい。通常、本開示に係る硬質カプセル皮膜の硬さと割れにくさは、この範囲でトレードオフの関係にあることが多い。コーティング皮膜や軟カプセル皮膜では、より柔らかく、破断伸びが大きい場合が多い。例えば、破断伸びが30%を超えるような皮膜は、通常は柔らかすぎて、自立した硬質カプセル皮膜としては適さないことが多い。他方、破断伸びが2%を下回ると、通常のハンドリングにおいても顕著に割れやすくなる。
【0100】
前述のように、カプセル皮膜中に数%程度存在する水分は、通常可塑剤として強度、特に割れ性、に影響しうる。相対湿度が低い使用・保存条件下では、含有水分量が減少し、例えば2~3%程度になると割れやすくなる、すなわち破断伸びが低下する傾向がある。他方、高湿度側では、含有水分量が増加し、弾性率が低下する傾向がある。結局、低湿度側で破断伸びが問題となり、高湿度側で弾性率が問題となるが、本開示では、特に、比較的低湿度の22%相対湿度、温度25℃の環境下で調湿及び引張試験を行い、破断伸びが5~30%である皮膜を得ることができる。また、比較的高湿度の60%相対湿度、温度25℃の環境下で調湿及び引張試験を行い、その弾性率が1~5GPaである皮膜を得ることができる。結果、本開示に係る硬質カプセルの強度は、室内条件における、ほとんどの相対湿度、温度範囲で、1~5Gpa範囲の弾性率、及び、5~30%の破断伸びが得られる。
【実施例
【0101】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は、実施例に限定して解釈されるものではない。
【0102】
1.カプセル皮膜フィルムの調製方法と皮膜の強度特性の評価方法
<実施例1>
(1)モンモリロナイトの表面修飾
1000mLのセパラブル三口フラスコにイオン交換水を800mL入れ、層状粘土鉱物としてベントナイト(クニミネ工業製Kunipia-F;モンモリロナイトを主成分とする)を8.01g加えてメカニカルスターラーにより撹拌した。滴下漏斗にL-グルタミン酸(東京化成工業製)を2.83g加えて70℃のイオン交換水148gで希釈した。ここに2mol/Lの希塩酸を10mL加えてpHを調整し、L-グルタミン酸をアンモニウムカチオンの状態とした.この酸溶液をモンモリロナイトの水分散液に約1時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌を続けて表面修飾を行った。得られた表面修飾モンモリロナイトの分散液を遠心分離(18000rpm、5分、日立製himac CR22G)により沈殿させた。沈殿物をイオン交換水に再分散させ、再度遠心分離により回収し精製した。沈殿物を減圧下、120℃で5時間乾燥させることで、両極性分子であるL-グルタミン酸分子と結合した表面修飾モンモリロナイトを得た。
【0103】
(2)カプセル組成液の調製
500mLのトールビーカーにイオン交換水258gを添加し、ジェランガム(ケルコゲル、CPケルコ製)0.6gを加えて湯浴にて85℃まで溶液を加熱・撹拌し、ジェランガムを溶解させた。ここに、表面修飾モンモリロナイトを1.7g添加した後,ホモジナイザー(IKA製、使用ジェネレータ:S25N-25F)を用いて均一化処理(10000rpm、30分)を施した。この溶液を50℃程度まで冷却した後,メカニカルスターラーでの攪拌下、基剤としてポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、EG-48P)を39.5g添加した。湯浴にて溶液を85℃まで加熱した後、さらに1時間攪拌してポリビニルアルコールを溶解させた。得られた溶液を55℃のオーブンにて一晩静置させることで脱泡し、カプセル組成液として用いた。水分を除く皮膜成分中、表面修飾された層状粘土鉱物の含有量は4質量%である。
【0104】
(3)評価用フィルムの調製
上記のように調製したカプセル組成液を、ボックス型アプリケータを用いてPETフィルム上に乾燥膜厚が約100μmになるように製膜した後、80℃の熱風オーブンに2時間静置して乾燥させた。乾燥後のフィルムは打ち抜き機を用いてダンベル型(JIS K-7161-2)に打ち抜いてサンプルとして用いた。
【0105】
(4)評価用フィルムの調湿方法
上記にて調製したサンプルフィルムは,飽和塩水溶液を備えたガラス製デシケータ内に静置し、デシケータを25℃の恒温槽にて1週間以上保管することで調湿を行った.低湿度条件(25℃、22%RH)として酢酸カリウムの飽和塩水溶液を、高湿度条件(25℃、60%RH)として硝酸アンモニウムの飽和塩水溶液を用いた。
【0106】
(5)フィルム機械特性の評価
上記の通りデシケータ中で調湿したダンベル状試験片(JIS K7161-2)を用いて、引張速度10mm/min、チャック間距離59mmの条件にて引張試験を行った。装置は島津製作所製万能試験機EZ-LXを用いた。引張試験により、試験片の伸びと、その際にかかる試験力を評価した。試験力を初期断面積で除した公称応力σと、試験片の伸びを初期長さで除した公称ひずみをそれぞれ求めた。得られた応力-ひずみ曲線の初期の傾きによりヤング率(MPa)を求め、試験片が破断した時のひずみより破断伸び(%)を求めた。ヤング率の評価には25℃、60%RHにて調湿したサンプルを、破断伸びの評価には25℃、22%RHにて調湿したサンプルをそれぞれ使用した。
【0107】
ヤング率及び破断伸びの測定値は、同一条件で作製した5個のサンプルついて測定した測定値の平均値を示した。
【0108】
<比較例1>
層状粘度鉱物を含有しない以外は実施例1と同様にしてフィルムを調製し評価を行った。
【0109】
<比較例2、3>
層状粘度鉱物として未修飾のモンモリロナイトを用いた以外は、実施例1と同様にしてフィルムを調製し評価を行った。
【0110】
<比較例4>
500mLのトールビーカーにイオン交換水301gを添加し、層状粘土鉱物として未修飾モンモリロナイトを1.96g添加した後,ホモジナイザー(IKA製、使用ジェネレータ:S25N-25F)を用いて均一化処理(10,000rpm、30分)を施した。メカニカルスターラーでの攪拌下、L-グルタミン酸0.38g及び基剤としてポリビニルアルコールを45.7g添加した。湯浴にて溶液を85℃まで加熱した後、さらに1時間攪拌してポリビニルアルコールを溶解させた。得られた溶液を55℃のオーブンにて一晩静置させることで脱泡し、カプセル組成液として用いた。その他は実施例1と同様にしてフィルムを調製し評価を行った。
【0111】
カプセル皮膜の強度特性
実施例1、比較例1~4についても実施例1と同様に表1に示す。
【表1】
層状粘土鉱物を皮膜に含まない比較例1に対し、層状粘土鉱物として未修飾のモンモリロナイトを添加した比較例2、3では、ヤング率を大きく改善でき弾性を改善できるものの、破断伸びの値は大きく低下し、靱性(応力と破断伸びの積分)を低下させることは明らかであった。これに対し、グルタミン酸分子により表面修飾したモンモリロナイトを添加した実施例1では、比較例2、3と同等のヤング率を有しかつ破断伸びの値が2倍になっており、弾性を維持しつつ靱性を改善できていることが明らかとなった。これらの値は、モンモリロナイトとグルタミン酸を単に混合した比較例4に比べても明らかに優れており、両極性分子と層状粘土鉱物が結合した状態であることが重要であることが明らかとなった。
【0112】
以上の結果から、両極性分子と結合した層状粘土鉱物を添加することにより、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール共重合体を基剤とする硬質カプセルの皮膜強度を改善できることが示された。
図1