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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】射出成形機、射出成形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20240415BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20240415BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/76
B22D17/32 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020559318
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048732
(87)【国際公開番号】W WO2020122186
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2018232268
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】有田 未来生
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175847(WO,A1)
【文献】特開2018-111298(JP,A)
【文献】特開昭56-123014(JP,A)
【文献】特開2013-252658(JP,A)
【文献】特開2017-132229(JP,A)
【文献】特開平02-134225(JP,A)
【文献】特開2015-116757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-17/32
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機に関する制御を行うコントローラを備え、
前記コントローラ、前記コントローラに内蔵されるプロセッサ、及び前記プロセッサに内蔵されるコアのうちの少なくとも一つは、複数あり、
二つの前記コントローラ、二つの前記プロセッサ、及び二つの前記コアのうちの少なくとも一対の間の通信について、通信が終了すると、通信の状態に関する通知を外部に向けて行う、
射出成形機。
【請求項2】
二つの前記コントローラ、二つの前記プロセッサ、及び二つの前記コアのうちの少なくとも一対の間で行われる周期的なデータの通信におけるデータの読み込み、データの書き込み、データの送信、及びデータの受信の少なくとも一つに要する時間を監視し、
通信の状態に関する前記通知は、その監視結果に応じて行われる、前記データの同期性に関する通知を含む、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
通信の状態に関する前記通知は、前記プロセッサの負荷状態に関する通知を含む、
請求項1又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
通信の状態に関する前記通知は、射出成形機の内部で行われる通信の通信周期の設定状態に関する通知、射出成形機の内部で行われる通信に関する通信障害に関する通知、及び射出成形機の内部で行われる通信における通信遅延に関する通知の少なくとも一つを含む、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記プロセッサの負荷状態に関する情報をユーザが確認することが可能な出力部と、
前記プロセッサの負荷状態に影響する、射出成形機に関する入力をユーザが行うことが可能な入力部と、を備える、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の射出成形機。
【請求項6】
射出成形機と、
前記射出成形機と通信可能に接続され、前記射出成形機に関する制御を行う外部制御装置と、を含み、
前記射出成形機の内部での通信、前記外部制御装置の内部での通信、及び前記射出成形機と前記外部制御装置との間での通信の少なくとも1つの通信について、通信が終了すると、通信の状態に関する通知を外部に向けて行い、
前記射出成形機の内部、前記外部制御装置の内部、及び前記射出成形機と前記外部制御装置との間の少なくとも1つで行われる周期的なデータの通信におけるデータの読み込み、データの書き込み、データの送信、及びデータの受信の少なくとも一つに要する時間を監視し、
通信の状態に関する前記通知は、その監視結果に応じて行われる、前記データの同期性に関する通知を含む
出成形システム。
【請求項7】
射出成形システムに関する制御を行うコントローラに内蔵されるプロセッサの負荷状態に関する情報をユーザに向けて出力することが可能な出力部と、
前記プロセッサの負荷状態に影響する、射出成形システムに関する入力をユーザから受け付ける入力部と、を備える、
請求項6に記載の射出成形システム。
【請求項8】
前記外部制御装置は、前記射出成形機とは異なる他の射出成形機を含む、
請求項6又は7に記載の射出成形システム。
【請求項9】
ユーザ端末を含み、
前記ユーザ端末を通じて、通信の状態に関する前記通知を行う、
請求項6乃至の何れか一項に記載の射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、射出成形機等の所定の機能を実現する各種の機械が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-132229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、各種の機械には、例えば、当該機械を制御するコントローラ等の各種機器が搭載され、当該機械の内部では、各種機器の間で様々な通信が行われる等、各種機器で連携して様々な処理が行われる。また、各種の機械は、例えば、相互に通信可能な外部装置を含むシステムの構成要素として組み込まれる場合がある。この場合、システムの中では、機械の内部の各種機器の間の通信、外部装置の内部の各種機器の間の通信、機械と外部装置との間の通信が行われる等、機械と外部装置とで連携して様々な処理が行われる。そのため、機械や機械を含むシステムの外部において、機械やシステムの内部での通信等の処理に関する状態を把握できることが望ましい。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、機械や機械を含むシステムの外部において、機械の内部やシステムの中で行われる通信等の処理に関する状態を把握することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
射出成形機に関する制御を行うコントローラを備え、
前記コントローラ、前記コントローラに内蔵されるプロセッサ、及び前記プロセッサに内蔵されるコアのうちの少なくとも一つは、複数あり、
二つの前記コントローラ、二つの前記プロセッサ、及び二つの前記コアのうちの少なくとも一対の間の通信について、通信が終了すると、通信の状態に関する通知を行う、
射出成形機が提供される。
【0007】
また、本開示の他の実施形態では、
射出成形機と、
前記射出成形機と通信可能に接続され、前記射出成形機に関する制御を行う外部装置と、を含み、
前記射出成形機の内部での通信、前記外部制御装置の内部での通信、及び前記射出成形機と前記外部制御装置との間での通信の少なくとも1つの通信について、通信が終了すると、通信の状態に関する通知を外部に向けて行い、
前記射出成形機の内部、前記外部制御装置の内部、及び前記射出成形機と前記外部制御装置との間の少なくとも1つで行われる周期的なデータの通信におけるデータの読み込み、データの書き込み、データの送信、及びデータの受信の少なくとも一つに要する時間を監視し、
通信の状態に関する前記通知は、その監視結果に応じて行われる、前記データの同期性に関する通知を含む
射出成形システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
上述の実施形態によれば、機械や機械を含むシステムの外部において、機械の内部やシステムの中で行われる通信等の処理に関する状態を把握することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】射出成形機を含む射出成形システムの構成の一例を示す図である。
図2】射出成形機を含む射出成形システムの構成の一例を示す図である。
図3】射出成形機の制御装置の構成の第1例を示す図である。
図4】第1例に係るコントローラの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
図5】射出成形機の制御装置の構成の第2例を示す図である。
図6A】第2例に係るコントローラの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
図6B】第2例に係るコントローラの動作の他の例を説明するタイミングチャートである。
図6C】第2例に係るコントローラの動作の更に他の例を説明するタイミングチャートである。
図6D】第2例に係るコントローラの動作の更に他の例を説明するタイミングチャートである。
図7】射出成形機の制御装置の構成の第3例を示す図である。
図8】第3例に係るコントローラの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
図9】射出成形機の制御装置の構成の第4例を示す図である。
図10A】比較例に係るコントローラの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
図10B】第4例に係るコントローラの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
図11】射出成形機の制御系の構成の第5例を示す図である。
図12A】比較例に係るコントローラの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
図12B】第5例に係るコントローラの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0012】
尚、各図面において、同一の或いは対応する構成については同一の或いは対応する符号を付して説明を省略する。
【0013】
[射出成形システムの概要]
まず、図1図2を参照して、射出成形機2を含む射出成形システム1の概要について説明をする。
【0014】
図1図2は、本実施形態に係る射出成形機2を含む射出成形システム1の構成の一例を示す図である。具体的には、図1では、射出成形機2の型開完了時の状態が示され、図2では、射出成形機2の型締時の状態が示されている。
【0015】
射出成形システム1は、複数の射出成形機2と、外部装置4と、通信ネットワーク6とを含む。
【0016】
尚、複数の射出成形機2は、何れも同様の構成を有する。そのため、図1図2では、複数の射出成形機2のうちの一の射出成形機2の詳細構成だけが示されている。
【0017】
複数の射出成形機2(所定の機械の一例)は、それぞれ、成形品を得るための一連の動作を行う。
【0018】
また、複数の射出成形機2は、通信ネットワーク6を通じて、相互に、双方向で通信可能に接続される。これにより、一の射出成形機2は、他の射出成形機2から、例えば、各種設定に関する情報や、更新用のプログラム等のメンテナンスに関する情報等の各種情報を取得することができる。また、一の射出成形機2は、例えば、他の射出成形機2から、当該一の射出成形機2に対する操作入力、即ち、遠隔操作を受け付けることができる。以下、入力装置95から制御装置90に入力される操作入力、及び、通信ネットワーク6経由で制御装置90に入力される操作入力を、それぞれ、便宜的に、「直接操作入力」及び「遠隔操作入力」と称する場合がある。また、直接操作入力及び遠隔操作入力を、総括的に、「外部からの操作入力」と称する場合がある。
【0019】
尚、複数の射出成形機2は、通信ネットワーク6を経由することなく、例えば、デイジーチェーン方式等により、相互に、双方向で通信可能に接続されてもよい。
【0020】
例えば、一の射出成形機2は、マスタ機として、通信ネットワーク6を通じて、スレーブ機としての他の射出成形機2の動作を監視したり、制御したりしてもよい。具体的には、射出成形機2(スレーブ機)は、通信ネットワーク6を通じて、稼働状態データを射出成形機2(マスタ機)に送信してよい。これにより、射出成形機2(マスタ機)は、他の射出成形機2(スレーブ機)の動作を監視することができる。また、射出成形機2(マスタ機)は、稼働状態データに基づき、他の射出成形機2(スレーブ機)の動作状態を把握しながら、動作に関する制御指令を、通信ネットワーク6を通じて、他の射出成形機2(スレーブ機)に送信してもよい。これにより、射出成形機2(マスタ機)は、他の射出成形機2(スレーブ機)の動作を制御することができる。
【0021】
また、複数の射出成形機2は、それぞれ、通信ネットワーク6を通じて、外部装置4と通信可能に接続される。これにより、それぞれの射出成形機2は、外部装置4から、例えば、各種設定に関する情報や、更新用のプログラム等のメンテナンスに関する情報等の各種情報を取得することができる。また、それぞれの射出成形機2は、例えば、外部装置4から、当該射出成形機2に対する操作入力、即ち、遠隔操作入力を受け付けることができる。
【0022】
外部装置4は、通信ネットワーク6を通じて、複数の射出成形機2と通信可能に接続され、それぞれの射出成形機2を管理する。外部装置4は、例えば、工場内の複数の射出成形機2の稼働状態等を管理する管理端末や管理サーバ(例えば、エッジサーバ)である。また、外部装置4は、例えば、射出成形機2が配置される工場の外部に設けられ、一の工場に配置される、或いは、複数の工場に分散して配置される複数の射出成形機2を管理する管理サーバ(いわゆるクラウドサーバ)であってもよい。このとき、当該管理サーバは、射出成形機2を所有する事業者が運用する自社サーバであってもよいし、当該事業者が利用するレンタルサーバであってもよい。また、外部装置4は、例えば、射出成形機2のユーザや管理者が携帯可能な携帯端末であってもよい。携帯端末は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のコンピュータ端末等であってもよい。
【0023】
外部装置4は、例えば、射出成形機2から送信(アップロード)されるデータに基づき、射出成形機2の稼働状態を把握し、射出成形機2の稼働状態を管理(監視)することができる。また、外部装置4は、把握される射出成形機2の稼働状態に基づき、射出成形機2の異常診断等の各種診断を行うことができる。
【0024】
また、外部装置4は、例えば、通信ネットワーク6を通じて、射出成形機2に対する制御情報(例えば、各種の設定条件に関する情報)を送信してもよい。これにより、外部装置4は、射出成形機2の動作を制御することができる。
【0025】
通信ネットワーク6は、例えば、射出成形機2が設けられる工場等の内部のローカルネットワーク(LAN:Local Area Network)を含む。また、通信ネットワーク6は、例えば、携帯電話網やインターネット網等を経由する広域ネットワーク(WAN:Wide Area Network)を含んでもよい。また、通信ネットワーク6は、例えば、基地局を末端とする移動体通信網を含んでもよい。また、通信ネットワーク6は、例えば、WiFiやブルートゥース(登録商標)等の通信形式に基づく近距離通信網を含んでもよい。
【0026】
[射出成形機のハードウェア構成]
次に、引き続き、図1図2を参照し、射出成形機2の具体的なハードウェア構成について説明する。
【0027】
射出成形機2は、フレームFrと、型締装置10と、射出装置40と、エジェクタ装置50と、制御装置90と、入力装置95と、出力装置96とを含む。
【0028】
まず、型締装置10及びエジェクタ装置50について説明する。以下、型締装置10等の説明では、型閉時の可動プラテン13の移動方向(具体的には、図1及び図2における右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン13の移動方向(図1及び図2における左方向)を後方とする。
【0029】
型締装置10は、金型装置30の型閉、型締、及び、型開を行う。型締装置10は、固定プラテン12と、可動プラテン13と、サポートプラテン15と、タイバー16と、トグル機構20と、型締モータ21と、運動変換機構25とを含む。
【0030】
固定プラテン12は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン12における可動プラテン13との対向面に固定金型32が取り付けられる。
【0031】
可動プラテン13は、フレームFr上に敷設されるガイド機構(例えば、ガイドレール)17に沿って移動自在とされ、具体的には、固定プラテン12に対し進退自在とされる。また、可動プラテン13における固定プラテン12との対向面に可動金型33が取り付けられる。
【0032】
固定プラテン12に対し可動プラテン13を進退させることにより、型閉、型締、及び、型開が行われる。固定金型32と可動金型33とで金型装置30が構成される。
【0033】
サポートプラテン15は、固定プラテン12と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。また、サポートプラテン15は、フレームFr上に敷設される所定のガイド機構に沿って移動自在とされてもよい。このとき、サポートプラテン15の当該ガイド機構は、上述した可動プラテン13のガイド機構17と共通でもよい。
【0034】
尚、本実施形態では、固定プラテン12がフレームFrに対し固定され、サポートプラテン15がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、サポートプラテン15がフレームFrに対し固定され、固定プラテン12がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0035】
タイバー16は、固定プラテン12とサポートプラテン15とを間隔をおいて連結する。タイバー16は、複数本あってよい。各タイバー16は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも一本のタイバー16には、型締力検出器18が設けられる。型締力検出器18は、例えば、タイバー16の歪みを検出することによって型締力を検出する歪ゲージ式であり、検出結果を示す信号は、制御装置90に取り込まれる。
【0036】
尚、型締力検出器18は、歪みゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取り付け位置もタイバー16に限定されない。
【0037】
トグル機構20は、固定プラテン12に対し可動プラテン13を移動させる。トグル機構20は、可動プラテン13とサポートプラテン15との間に配設される。トグル機構20は、クロスヘッド20a、一対のリンク群等で構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される複数のリンク20b、20cを有する。一方のリンク20bは可動プラテン13に揺動自在に取付けられ、他方のリンク20cはサポートプラテン15に揺動自在に取付けられる。クロスヘッド20aを進退させると、複数のリンク20b、20cが屈伸し、サポートプラテン15に対し可動プラテン13が進退する。
【0038】
型締モータ21は、サポートプラテン15に取付けられており、トグル機構20を作動させる。型締モータ21は、クロスヘッド20aを進退させることにより、リンク20b、20cを屈伸させ、可動プラテン13を進退させる。
【0039】
運動変換機構25は、型締モータ21の回転運動を直線運動に変換してクロスヘッド20aに伝達する。運動変換機構25は、例えば、ボールねじ機構などで構成される。
【0040】
型締装置10の動作は、制御装置90によって制御される。制御装置90は、例えば、型閉工程、型締工程、及び、型開工程等における型締装置10の動作を制御する。
【0041】
型閉工程では、制御装置90は、型締モータ21を駆動して、クロスヘッド20aを設定速度で前進させることにより、可動プラテン13を前進させ、可動金型33を固定金型32に接触させる。クロスヘッド20aの位置や速度は、例えば、型締モータ21のエンコーダ21a等により検出される。その検出結果を示す信号が、制御装置90に取り込まれる。
【0042】
型締工程では、制御装置90は、型締モータ21を更に駆動して、クロスヘッド20aを設定位置まで更に前進させることで、型締力を生じさせる。型締時に可動金型33と固定金型32との間にキャビティ空間34が形成され、キャビティ空間34に液状の成形材料が充填される。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる(生成される)。キャビティ空間34の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる(生成される)。
【0043】
型開工程では、制御装置90は、型締モータ21を駆動してクロスヘッド20aを設定速度で後退させることにより、可動プラテン13を後退させ、可動金型33を固定金型32から離間させる。
【0044】
尚、本実施形態では、型締装置10は、駆動源として、型締モータ21を有するが、型締モータ21の代わりに、或いは、加えて、他の動力源、例えば、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置10は、例えば、型開閉用の駆動力源として、リニアモータを有し、型締用の駆動力源として、電磁石を有してもよい。
【0045】
また、本実施形態では、型締装置10は、型開閉方向が水平方向の横型であるが、型開閉方向が鉛直方向の竪型でもよい。
【0046】
エジェクタ装置50は、金型装置30から成形品を突き出す。エジェクタ装置50は、エジェクタモータ51と、運動変換機構52と、エジェクタロッド53を有する。
【0047】
エジェクタモータ51は、可動プラテン13に取り付けられる。エジェクタモータ51は、運動変換機構52に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構52に連結されてもよい。
【0048】
運動変換機構52は、エジェクタモータ51の回転運動をエジェクタロッド53の直線運動に変換する。運動変換機構52は、例えば、ボールねじ機構等で構成される。
【0049】
エジェクタロッド53は、可動プラテン13の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド53の前端部は、可動金型33内に進退自在に配設される可動部材35と接触する。また、エジェクタロッド53は、可動部材35に連結されてもよい。
【0050】
エジェクタ装置50の動作は、制御装置90によって制御される。制御装置90は、突出し工程等におけるエジェクタ装置50の動作を制御する。
【0051】
突出し工程では、制御装置90は、エジェクタモータ51を駆動してエジェクタロッド53を前進させることにより、可動部材35を前進させ、成形品を突き出す。その後、制御装置90は、エジェクタモータ51を駆動してエジェクタロッド53を後退させ、可動部材35を元の位置まで後退させる。エジェクタロッド53の位置や速度は、例えばエジェクタモータ51のエンコーダ51aにより検出される。その検出結果を示す信号が、制御装置90に送られる。
【0052】
続いて、射出装置40について説明する。射出装置40の説明では、型締装置10の説明と異なり、充填時のスクリュ43の移動方向(図1および図2中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ43の移動方向(図1および図2中右方向)を後方として説明する。
【0053】
射出装置40は、フレームFrに対し進退自在なスライドベースSbに設置され、金型装置30に対し進退自在とされる。射出装置40は、金型装置30にタッチされ、金型装置30内に成形材料を充填する。
【0054】
射出装置40は、例えば、シリンダ41と、ノズル42と、スクリュ43と、冷却器44と、計量モータ45と、射出モータ46と、圧力検出器47と、加熱器48と、温度検出器49を有する。
【0055】
シリンダ41は、供給口41aから内部に供給された成形材料を加熱する。供給口41aはシリンダ41の後部に形成される。シリンダ41の後部の外周には、水冷シリンダ等の冷却器44が設けられる。冷却器44よりも前方において、シリンダ41の外周には、バンドヒータ等の加熱器48と温度検出器49とが設けられる。
【0056】
シリンダ41は、その軸方向(つまり、図1及び図2における左右方向)で複数のゾーンに区分される。シリンダ41の各ゾーンに加熱器48と温度検出器49とが設けられる。制御装置90は、ゾーン毎に、温度検出器49の実測温度が設定温度になるように、加熱器48を制御する。
【0057】
ノズル42は、シリンダ41の前端部に設けられ、金型装置30に対し押し付けられる。ノズル42の外周には、加熱器48と温度検出器49とが設けられる。制御装置90は、ノズル42の実測温度が設定温度になるように、加熱器48を制御する。
【0058】
スクリュ43は、シリンダ41内において回転自在に且つ進退自在に配設される。
【0059】
計量モータ45は、スクリュ43を回転させることにより、スクリュ43の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ41からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ43の前方に送られシリンダ41の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ43が後退させられる。
【0060】
射出モータ46は、スクリュ43を進退させる。射出モータ46は、スクリュ43を前進させることにより、スクリュ43の前方に蓄積された液状の成形材料をシリンダ41から射出し金型装置30内に充填させる。その後、射出モータ46は、スクリュ43を前方に押し、金型装置30内の成形材料に圧力をかける。これにより、不足分の成形材料が補充されうる。射出モータ46とスクリュ43との間には、射出モータ46の回転運動をスクリュ43の直線運動に変換する運動変換機構が設けられる。この運動変換機構は、例えば、ボールねじ機構等で構成される。
【0061】
圧力検出器47は、例えば、射出モータ46とスクリュ43との間に配設され、スクリュ43が成形材料から受ける圧力、スクリュ43に対する背圧等を検出する。スクリュ43が成形材料から受ける圧力は、スクリュ43から成形材料に作用する圧力に対応する。圧力検出器47による検出結果を示す信号は、制御装置90に取り込まれる。
【0062】
射出装置40の動作は、制御装置90によって制御される。制御装置90は、充填工程、保圧工程、及び、計量工程等における射出装置40の動作を制御する。
【0063】
充填工程では、制御装置90は、射出モータ46を駆動して、スクリュ43を設定速度で前進させ、スクリュ43の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置30内に充填させる。スクリュ43の位置や速度は、例えば、射出モータ46のエンコーダ46aにより検出される。その検出結果を示す信号が制御装置90に取り込まれる。スクリュ43の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。スクリュ43の設定速度は、スクリュ43の位置や時間等に応じて変更されてよい。
【0064】
尚、充填工程において、スクリュ43の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ43を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ43の停止の代わりに、スクリュ43の微速前進又は微速後退が行われてもよい。
【0065】
保圧工程では、制御装置90は、射出モータ46を駆動してスクリュ43を設定圧力で前方に押し、金型装置30内の成形材料に圧力をかける。これにより、不足分の成形材料が補充されうる。成形材料の圧力は、例えば、圧力検出器47により検出される。その検出結果を示す信号は、制御装置90に取り込まれる。
【0066】
保圧工程では、金型装置30内の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時には、キャビティ空間34の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、これにより、キャビティ空間34からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間34内の成形材料の固化が行われる。成形サイクルの短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0067】
計量工程では、制御装置90は、計量モータ45を駆動してスクリュ43を設定回転数で回転させ、スクリュ43の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ43の前方に送られ、シリンダ41の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ43が後退させられる。スクリュ43の回転数は、例えば、計量モータ45のエンコーダ45aにより検出される。その検出結果を示す信号は、制御装置90に取り込まれる。
【0068】
計量工程では、制御装置90は、スクリュ43の急激な後退を制限すべく、射出モータ46を駆動してスクリュ43に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ43に対する背圧は、例えば、圧力検出器47により検出される。その検出結果を示す信号は、制御装置90に取り込まれる。スクリュ43が設定位置まで後退し、スクリュ43の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が終了する。
【0069】
尚、本実施形態の射出装置40は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式でもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在に又は回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0070】
制御装置90は、当該射出成形機2に関する各種の制御を行う。例えば、制御装置90は、CPU(Central Processing Unit)91と、例えば、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置やROM(Read Only Memory)や不揮発性の補助記憶装置等の記憶媒体92と、入力インタフェース93と、出力インタフェース94を有するコンピュータを中心に構成される。制御装置90は、例えば、記憶媒体92に記憶された各種プログラムをCPU91に実行させることにより各種機能を実現させる。また、制御装置90は、入力インタフェース93で外部からの制御信号や情報信号等の各種信号を受信し、出力インタフェース94で外部に制御信号や情報信号等の各種信号を送信する。
【0071】
入力装置95は、ユーザによる当該射出成形機2に対する各種操作入力が行われ、ユーザの操作入力に応じた操作信号を制御装置90に送信する。入力装置95は、例えば、ボタン、レバー、トグル等のスイッチやキーボード等のハードウェアによる操作手段であってもよいし、後述する出力装置96に表示される操作画面上のボタンアイコン等のソフトウェアによる操作手段であってもよい。また、入力装置95は、ソフトウェアによる操作手段を実現するため、例えば、タッチパネルが用いられてもよい。この場合、後述の出力装置96は、例えば、タッチパネル式のディスプレイを含み、入力装置95(の一部)を兼ねる態様であってもよい。入力装置95は、当該射出成形機2を起動させるための起動スイッチ95aを含む。
【0072】
出力装置96(表示装置の一例)は、制御装置90による制御の下で、各種情報を表示する。具体的には、出力装置96は、入力装置95を通じて制御装置90に入力される、外部からの操作入力に応じて、各種情報画像を表示してよい。また、出力装置96は、通信ネットワーク6を通じて制御装置90に入力される、外部からの操作入力、つまり、遠隔操作に応じて、各種情報画像を表示してもよい。
【0073】
例えば、出力装置96は、当該射出成形機の稼働状況に関する情報を表示する。
【0074】
また、例えば、出力装置96は、当該射出成形機における各種設定の現状に関する情報(つまり、設定状態に関する情報)を表示する。
【0075】
また、例えば、出力装置96は、ユーザが当該射出成形機2に関する各種操作を行うための操作画面を表示する。このとき、出力装置96に表示される操作画面は、操作対象や操作内容等に応じて、複数用意されてよく、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりしてよい。
【0076】
記憶装置97は、所定の記憶媒体を含む。記憶装置97は、制御装置90と通信可能に接続され、例えば、制御装置90からの制御信号に応じて、或いは、自発的に、記憶媒体に記憶される所定の情報を制御装置90に送信する。例えば、記憶装置97には、制御装置90により実現される当該射出成形機2の各種機能に関する更新用のプログラム等のメンテナンスに関する情報が保存されており、適宜、制御装置90に読み出されてよい。
【0077】
記憶装置97は、例えば、USBメモリや記憶媒体としてのDVDメディアが挿入されたDVDドライブ等、当該射出成形機2(制御装置90)に対して着脱可能な態様であってよい。記憶装置97は、例えば、DVDドライブ等のように、内部の記憶媒体が着脱可能な態様であってもよい。
【0078】
電源リレー98は、上述した型締装置10、射出装置40、及び、エジェクタ装置50等、成形品を生成するために駆動する駆動部(以下、単に「射出成形機2の駆動部」と称する)と、所定の商用電源との間の電力経路に設けられる。電源リレー98は、当該射出成形機2の停止状態において、OFFされている。そして、電源リレー98は、通常、当該射出成形機2が起動するとONされ、射出成形機2の駆動部が起動する。つまり、電源リレー98は、射出成形機2の駆動部を起動する機能(以下、便宜的に「駆動機能」と称する)を実現する。
【0079】
例えば、ユーザは、出力装置96に表示される操作画面を見ながら、入力装置95を操作することにより、各種の設定を行う。ユーザによる設定(具体的には、新規の設定、或いは、従来から変更された設定)は、記憶媒体92に記憶され、必要に応じて読み出される。
【0080】
[射出成形機の制御装置の動作]
次に、図3図12を参照して、射出成形機2の制御装置90の具体的な動作について説明する。
【0081】
<制御装置の第1例>
まず、図3図4を参照して、本例に係る制御装置90の構成を説明する。
【0082】
図3は、本実施形態に係る射出成形機2の制御装置90の構成の第1例を示す図である。図4は、本例に係るコントローラ90Aの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【0083】
図3に示すように、本例では、制御装置90は、コントローラ90Aを含む。
【0084】
コントローラ90Aは、二つのCPU91A(プロセッサの一例)と、メモリ装置92A(メモリの一例)と、FPGA(Field Programmable Gate Array)99Aとを含む。以下、二つのCPU91Aを、CPU91AaとCPU91Abとに区別して説明する。
【0085】
CPU91Aa,91Abは、上述の如く、コントローラ90Aの記憶媒体92(具体的には、補助記憶装置)にインストールされる各種プログラムを起動し実行することにより、各種処理を実現する。本例では、CPU91Aa,91Abは、射出成形機2の制御に関するデータの通信を行う。具体的には、CPU91Aaは、データをメモリ装置92Aに書き込むと共に、CPU91Abは、メモリ装置92Aに書き込まれたデータを読み込むことにより、CPU91AaからCPU91Abへのデータの通信が実現される。
【0086】
尚、本例では、CPU91AaからCPU91Abへのデータの通信を説明するが、CPU91AbからCPU91Aaへのデータの通信が行われてもよく、この場合についても、後述するコントローラ90Aの動作が適用されてよい。
【0087】
FPGA99Aは、図4に示すように、起動トリガ出力部991Aと、カウンタ992Aと、カウンタラッチ部993Aとを含む。
【0088】
起動トリガ出力部991Aは、CPU91AaからCPU91Abへのデータの通信に関する処理(プログラム)の起動トリガ、つまり、割り込み要求をCPU91Aa,91Abに出力する。具体的には、起動トリガ出力部991Aは、メモリ装置92Aへのデータの書き込み処理の起動トリガをCPU91Aaに出力し、メモリ装置92Aからのデータの読み込み処理の起動トリガをCPU91Abに出力する。
【0089】
カウンタ992A(計時手段の一例)は、ハードウェアによる計数(計時)処理を行う。
【0090】
カウンタラッチ部993Aは、起動トリガ出力部991Aによる起動トリガの出力時のカウンタ992Aの計数値(以下、「カウンタ値」)をラッチ(保持)する。
【0091】
続いて、図4を参照して、本例に係るコントローラ90Aの具体的な動作について説明する。
【0092】
図4に示すように、本例では、所定のデータ更新周期Tごとに、CPU91AaからCPU91Abへのデータの通信が行われる。
【0093】
データ更新周期Tの中には、CPU91Aaによるメモリ装置92Aに対するデータの書き込み処理への利用が許容される書き込み許容時間T1と、CPU91Abによるメモリ装置92Aからのデータの読み込み処理への利用が許容される読み込み許容時間T2が含まれる。書き込み許容時間T1は、起動トリガ出力部991Aにより書き込み処理の起動トリガが出力されてから読み込み処理の起動トリガが出力されるまでの期間に相当する。読み込み許容時間T2は、起動トリガ出力部991Aにより読み込み処理の起動トリガが出力されてから書き込み処理の起動トリガが出力されるまでの期間に相当する。
【0094】
CPU91Aaは、FPGA99A(起動トリガ出力部991A)から入力される起動トリガに応じて、メモリ装置92Aに対するデータの書き込み処理に関する機能(プログラム)を起動し、データの書き込み処理を実行する。
【0095】
CPU91Aaは、書き込み処理が終了すると、CPU91Aa,91Abの間の通信の異常の有無を判定する処理(以下、「異常判定処理」)を行う。
【0096】
具体的には、カウンタラッチ部993Aにラッチされている書き込み処理に関する起動トリガの出力時のカウンタ値、及び書き込み処理終了時のカウンタ992Aのカウンタ値をFPGA99Aから取得する。CPU91Aaは、起動トリガ出力時のカウンタ値と、書き込み終了時のカウンタ値との差分により、書き込み処理の起動トリガが出力されてからデータの書き込み処理が終了するまでに要した時間(以下、「書き込み所要時間」)(第1の所要時間の一例)を計測する。そして、CPU91Aaは、計測した書き込み所要時間と、書き込み許容時間T1とを比較し、書き込み所要時間が書き込み許容時間T1を超えている場合、CPU91Aa,91Abの間の通信状態を"異常"と判定する。書き込み所要時間が書き込み許容時間T1を超えてしまうと、CPU91Aaによるメモリ装置92Aへのデータの書き込み処理の期間が、CPU91Abによるメモリ装置92Aからのデータの読み込み処理の期間に被ってしまい、例えば、CPU91Abが書き込み処理前のデータを読み込んでしまう等によって、データの同期性が損なわれる可能性があるからである。
【0097】
また、CPU91Abは、FPGA99A(起動トリガ出力部991A)から入力される起動トリガに応じて、メモリ装置92Aからのデータの読み込み処理に関する機能(プログラム)を起動し、データの読み込み処理を実行する。
【0098】
CPU91Abは、読み込み処理が終了すると、異常判定処理を行う。
【0099】
具体的には、カウンタラッチ部993Aにラッチされている読み込み処理に関する起動トリガの出力時のカウンタ値、及び読み込み処理終了時のカウンタ992Aのカウンタ値をFPGA99Aから取得する。CPU91Abは、起動トリガ出力時のカウンタ値と、読み込み終了時のカウンタ値との差分により、読み込み処理の起動トリガが出力されてからデータの読み込み処理が完了するまでに要した時間(以下、「読み込み所要時間」)(第2の所要時間の一例)を計測する。そして、CPU91Abは、計測した読み込み所要時間と、読み込み許容時間T2とを比較し、読み込み所要時間が読み込み許容時間T2を超えている場合、CPU91Aa,91Abの間の通信状態を"異常"と判定する。読み込み所要時間が読み込み許容時間T2を超えてしまうと、CPU91Abによるメモリ装置92Aからのデータの読み込み処理の期間が、CPU91Aaによるメモリ装置92Aへのデータの書き込み処理の期間に被ってしまい、例えば、CPU91Abがデータ取得を完了する前に、CPU91Aaがメモリ装置92Aのデータを新しいデータに書き換えてしまう等によって、データの同期性が損なわれる可能性があるからである。
【0100】
尚、CPU91Abがメモリ装置92Aにデータを書き込むと共に、CPU91Aaが書き込まれたデータを読み取る態様で、CPU91AbからCPU91Aaへの周期的なデータ通信が行われてもよい。この場合、コントローラ90Aは、CPU91AbからCPU91Aaへのデータの通信についても、上述と同様の異常判定処理を行ってよい。また、コントローラ90Aは、例えば、二つのCPU91Aの少なくとも一方に複数のコアが内蔵される場合、二つのコアの間で行われる周期的なデータ通信に関する同様の異常判定処理を行ってもよい。また、CPU91Aa,91Abは、コントローラ90Aの機能が担保される限り、複数のコアを有する一つのCPU91Aに置換されてもよく、この場合についても、コントローラ90Aは、二つのコアの間の周期的なデータ通信に関する同様の異常判定処理を行ってもよい。また、コントローラ90Aは、複数設けられてもよく、この場合、二つのコントローラ90Aの少なくとも一方、或いは、二つのコントローラ90Aとは異なる監視用のコントローラは、二つのコントローラ90Aの間で行われる周期的なデータ通信に関する同様の異常判定処理を行ってもよい。
【0101】
コントローラ90Aは、CPU91Aa,91Abにより相互間の通信状態に異常があると判定された場合、射出成形機2の外部に向けて、射出成形機2の内部で行われる通信(以下、「内部通信」)に異常がある旨の通知を行う。
【0102】
尚、コントローラ90Aは、射出成形機2の内部通信の異常が発生した場合だけでなく、内部通信が正常である場合についても、射出成形機2の内部通信に関する通知を行ってよい。
【0103】
例えば、コントローラ90Aは、出力装置96(通知手段の一例)を用いることにより、視覚的な方法で、射出成形機2の周辺のユーザに向けて、射出成形機2の内部通信に関する通知を行ってよい。また、コントローラ90Aは、射出成形機2に搭載される、スピーカやブザー等の音声出力装置(通知手段の一例)を用いることにより、聴覚的な方法で、同様の通知を行ってもよい。これにより、射出成形機2は、例えば、自機のユーザに、自機の内部の通信状態の異常を知らせることができる。そのため、射出成形機2のユーザは、射出成形機2の内部の通信状態を把握することができ、例えば、射出成形機2の内部の通信状態の異常に際して、内部の通信に関する設定(例えば、データ量等)の見直しを行う等の対処を図ることができる。
【0104】
また、コントローラ90Aは、通信ネットワーク6を通じて、他の射出成形機2(外部装置の一例)や外部装置4に、射出成形機2の内部通信に関する通知に対応する情報を送信してもよい。これにより、射出成形機2は、例えば、自機の内部の通信の異常を、他の射出成形機2のユーザや、外部装置4の作業者或いは管理者等に知らせることができる。
【0105】
また、コントローラ90Aは、出力インタフェース94に含まれうる、ブルートゥースやWiFi(共に、登録商標)等の近距離通信規格に準拠する近距離通信モジュールを通じて、射出成形機2のユーザが所持する携帯端末(例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末等)(外部装置の一例)に、射出成形機2の内部通信に関する通知に対応する情報を送信してもよい。これにより、コントローラ90Aは、例えば、ユーザが射出成形機2から少し離れているような状況であっても、射出成形機2の内部の通信状態の異常等を知らせることができる。
【0106】
尚、射出成形機2は、データの同期性に関する状態以外の内部の通信に関する通知を行ってもよい。射出成形機2は、例えば、内部通信の通信周期の設定状態に関する情報、内部通信に関する通信障害の有無やその発生箇所に関する情報、内部通信における通信遅延の有無やその程度に関する情報等を通知してよい。
【0107】
また、射出成形機2は、内部の通信状態に関する情報に代えて、或いは、加えて、内部の通信以外の処理の状態に関する情報を外部に通知してもよい。
【0108】
例えば、射出成形機2は、自機の内部の全体の処理または一部の特定の処理の負荷状態を外部に通知する。具体的には、制御装置90は、CPU91の全体の処理或いは一部の特定の処理による負荷状態に関する情報を外部に通知してよい。
【0109】
射出成形機2(制御装置90)は、例えば、出力装置96を通じて、CPU91の全体の処理或いは一部の特定の処理による負荷状態を表す数値やグラフ等の情報をユーザに通知する。負荷状態を表す数値やグラフは、例えば、CPU91が処理可能な許容最大負荷に対する比率に基づき構成されてよい。これにより、ユーザは、どの程度の処理の余裕があるかどうか等を把握することができる。そのため、例えば、ユーザは、射出成形機2への新たな機能の追加、現行機能の拡張が可能であるか否かを検討することができる。また、例えば、ユーザは、制御装置90の処理負荷に影響する稼働条件の設定変更(例えば、サンプリング周期の短縮等)が可能であるか否かを検討することができる。
【0110】
また、射出成形機2(制御装置90)は、例えば、入力装置95を通じて、ユーザからの新たな機能の追加や現行機能の拡張に関する操作入力を受け付けてよい。この際、制御装置90は、現在の全体の処理の負荷状態に基づき、新たな機能の追加や現行機能の拡張が可能か否かを判断してよい。また、制御装置90は、特定の機能の拡張を受け付ける場合に、特定の機能に関する処理の負荷状態に基づき、特定の機能の拡張が可能か否かを判断してもよい。具体的には、制御装置90は、CPU91の全体の処理の負荷状態と、新たな機能の追加や現行の機能の拡張に必要な機器(例えば、追加のセンサやカメラ等)の追加等に伴い増加する処理の負荷(予測値)と、CPU91の許容最大負荷とに基づき、新たな機能の追加や現行機能の拡張が可能であるか否かを判断してよい。また、制御装置90は、CPU91の特定の機能に関する処理の負荷状態と、特定の機能の拡張に必要な機器の追加等に伴い増加する処理の負荷(予測値)と、特定の機能に割り当てられるCPU91の許容最大負荷とに基づき、特定の機能の拡張が可能であるか否かを判断してもよい。そして、制御装置90は、その判断結果を、出力装置96を通じてユーザに通知してよい。また、制御装置90は、例えば、その判断結果に関する情報を、射出成形機2のユーザが所持する携帯端末等のユーザ端末に送信し、ユーザ端末を通じて通知してもよい。これにより、射出成形機2(制御装置90)は、内部(CPU91)の処理の負荷状態が新たな機能の追加や現行機能の拡張を可能な程度であるか否かをユーザに知らせることができる。判断結果に関する情報には、例えば、新たな機能の追加や現行の機能の拡張の可否に関する情報が含まれる。また、判断結果に関する情報には、CPU91の全体の処理或いは特定の処理の負荷状態の測定値、CPU91の許容可能な処理負荷の絶対量或いは増加量に関する情報、及び機能の追加や拡張に伴い増加する処理の負荷の予測値等の少なくとも一つが含まれてよい。
【0111】
また、射出成形機2(制御装置90)は、例えば、入力装置95を通じて、ユーザから処理負荷に影響する稼働条件(例えば、サンプリング周期)の設定に関する操作入力を受け付けてよい。この際、制御装置90は、CPU91による現在の全体の処理或いは設定対象の特定の処理の負荷状態に基づき、ユーザが要求する新たな設定内容が成立するか否か、即ち、CPU91の許容最大負荷と整合するか否かを判断してよい。そして、制御装置90は、その判断結果を、出力装置96を通じてユーザに通知してよい。また、制御装置90は、その判断結果に関する情報を、射出成形機2のユーザが所持する携帯端末等のユーザ端末に送信し、ユーザ端末を通じて通知してもよい。これにより、射出成形機2(制御装置90)は、内部(CPU91)の処理の負荷状態がユーザの要求する新たな設定内容と整合するレベルにあるか否かをユーザに知らせることができる。判断結果に関する情報には、例えば、ユーザの要求する設定内容の成否に関する情報が含まれる。また、判断結果に関する情報には、CPU91の全体の処理或いは特定の処理の負荷状態の測定値、CPU91の許容可能な処理負荷の絶対量或いは増加量に関する情報、及び新たな設定内容による処理の負荷の絶対量或いは増加量の予測値等の少なくとも一つが含まれてよい。
【0112】
このように、本例では、射出成形機2は、外部に向けて、射出成形機2の内部で行われる処理の状態に関する通知を行う。具体的には、射出成形機2は、射出成形機2の内部で行われる通信の状態、及び射出成形機2の内部で行われる全体の処理或いは一部の特定の処理による負荷状態の少なくとも一方に関する通知を行ってよい。
【0113】
これにより、射出成形機2は、ユーザ等に対して、自機の内部通信の状態(例えば、異常の有無等)や内部の処理の負荷状態等、自機の内部の処理の状態を知らせることができる。
【0114】
また、本例では、射出成形機2において、コントローラ90A、コントローラ90Aに内蔵されるCPU91A、及びCPU91Aに内蔵されるコアのうちの少なくとも一つは、複数あってよい。そして、射出成形機2は、二つのコントローラ90A、二つのCPU91A、及び二つのコアのうちの少なくとも一対の間の通信に関する通知を行ってよい。
【0115】
これにより、射出成形機2は、具体的に、二つのコントローラ90Aの間、二つのCPU91の間、二つのコアの間の内部通信の状態をユーザ等に知らせることができる。
【0116】
尚、射出成形機2は、CPU91AとFPGA99Aとの間の内部通信の状態をユーザ等に通知してもよい。
【0117】
また、本例では、射出成形機2は、二つのコントローラ90A、二つのCPU91A、及び二つのコアのうちの少なくとも一対の間で行われる周期的なデータの通信における送信及び受信に要する時間を監視し、監視結果に応じて、データの同期性に関する通知を行う。
【0118】
これにより、射出成形機2は、自機の内部の周期的なデータの通信におけるデータの同期性に関する状態をユーザ等に知らせることができる。
【0119】
また、本例では、射出成形機2は、二つのコントローラ90A、二つのCPU91A、及び、二つのコアのうちの少なくとも一対の何れか一方がメモリ装置92Aに何れか他方への送信データを書き込むときの書き込み所要時間、及び何れか一方が何れか他方からの受信データをメモリ装置92Aから読み込むときの読み込み所要時間の少なくとも一方が、所定の許容時間(書き込み許容時間T1、読み込み許容時間T2)を超えた場合に、通知を行う。
【0120】
これにより、射出成形機2は、具体的に、内部通信における書き込み所要時間、或いは、読み込み所要時間が許容時間を超えた場合に、内部通信の異常をユーザ等に知らせることができる。
【0121】
また、本例では、コントローラ90Aは、二つのコントローラ90A、二つのCPU91A、及び二つのコアのうちの少なくとも一対の間で行われる周期的なデータの通信における送信及び受信に要する時間を監視する。
【0122】
これにより、コントローラ90Aは、例えば、周期的なデータの通信における送信或いは受信に要する時間が相対的に長くなったような場合に、データの同期性が損なわれる可能性があると判定することができる。
【0123】
また、本例では、コントローラ90Aは、二つのコントローラ90A、二つのCPU91A、及び、二つのコアのうちの少なくとも一対の何れか一方が、起動トリガを受け付けてからメモリ装置92Aに何れか他方への送信データを書き込み完了するまでの書き込み所要時間、及び、何れか一方が、起動トリガを受け付けてから何れか他方からの受信データをメモリ装置92Aから読み込み完了するまでの読み込み所要時間の少なくとも一方が、所定の許容時間(書き込み許容時間T1、読み込み許容時間T2)を超えるか否かを監視してよい。
【0124】
これにより、コントローラ90Aは、具体的に、周期的なデータの通信における書き込み所要時間、或いは、読み込み所要時間が許容時間を超えるか否かによって、内部通信の異常の有無を監視することができる。
【0125】
また、本例では、コントローラ90Aは、ハードウェアのカウンタ992Aを用いて、書き込み所要時間及び読み込み所要時間を計測する。
【0126】
これにより、例えば、ソフトウェアによるカウンタを用いると、CPU91Aで動作する他のソフトウェアの影響を受けて、計測精度にバラツキが生じうるところ、コントローラ90Aは、他のソフトウェアの影響を受けず、正確に書き込み所要時間や読み込み所要時間を計測することができる。
【0127】
また、本例では、コントローラ90Aは、起動トリガ出力時のカウンタ992Aの第1のカウント値をラッチすると共に、メモリ装置92Aへの送信データの書き込み完了時、又は、メモリ装置92Aからの受信データの読み込み完了時の第2のカウント値を取得し、第1のカウント値と第2のカウント値との差分を取ることにより、書き込み所要時間及び読み込み所要時間を計測してよい。
【0128】
これにより、コントローラ90Aは、具体的に、書き込み所要時間及び読み込み所要時間を計測することができる。
【0129】
また、本例では、コントローラ90Aは、書き込み所要時間及び読み込み所要時間の少なくとも一方が許容時間(書き込み許容時間T1、読み込み許容時間T2)を超えた場合に、異常を表す信号(具体的には、外部に向けて、異常を通知するための信号)を外部に出力する。
【0130】
これにより、コントローラ90Aは、射出成形機2の内部通信に関する異常があることを外部に知らせることができる。
【0131】
<制御装置の第2例>
まず、図5図6図6A図6D)を参照して、本例に係る制御装置90の構成を説明する。
【0132】
図5は、射出成形機2の制御装置90の構成の第2例を示す図である。図6Aは、本例に係るコントローラ90Bの動作の一例を示すタイミングチャートである。図6Bは、本例に係るコントローラ90Bの動作の他の例を示すタイミングチャートである。図6Cは、本例に係るコントローラ90Bの動作の更に他の例を示すタイミングチャートである。図6Dは、本例に係るコントローラ90Bの動作の更に他の例を示すタイミングチャートである。
【0133】
図5に示すように、本例では、制御装置90は、コントローラ90Bを含む。また、射出成形機2は、制御装置90に関連する構成として、入力デバイス100を含む。
【0134】
コントローラ90Bは、CPU91Bと、FPGA99Bとを含む。
【0135】
CPU91B(プロセッサの一例)は、上述の如く、コントローラ90Bの記憶媒体92(具体的には、補助記憶装置)にインストールされる各種プログラムを起動し実行することにより、各種処理を実現する。本例では、CPU91Bは、FPGA99Bに内蔵されるメモリにアクセスし、入力デバイス100から取得(受信)されたデータ(以下、「入力デバイスデータ」)を取得する(読み出す)。また、CPU91Bは、FPGA99Bから取得した入力デバイスデータを用いて、射出成形機2に関する各種制御処理を行う。
【0136】
FPGA99Bは、図6A等に示すように、起動トリガ出力部991Bと、カウンタ992Bと、送受信部994Bとを含む。
【0137】
起動トリガ出力部991Bは、FPGA99Bのメモリにアクセスし入力デバイスデータを取得し、入力デバイスデータに基づき、射出成形機2に関する制御を行う処理(プログラム)の起動トリガ、つまり、割り込み要求をCPU91Bに出力する。
【0138】
カウンタ992B(計時手段)は、カウンタ992Aと同様、ハードウェアによる計数(計時)処理を行う。
【0139】
送受信部994Bは、入力デバイス100からデータを取り込むため処理、具体的には、入力デバイスデータを取得するためのリクエストの送信処理や入力デバイスデータの受信処理等を行う。
【0140】
入力デバイス100は、射出成形機2に関する各種データを取得する。入力デバイス100とコントローラ90BのFPGA99Bとの間では、シリアル通信で信号のやり取りが行われる。入力デバイス100には、図6A図6B等に示すように、例えば、エンコーダ101やAD(Analog-Digital)コンバータ102が含まれる。
【0141】
エンコーダ101は、例えば、射出成形機2の駆動部に利用される電動モータの回転位置(回転角度)等のデジタルデータ(以下、「エンコーダデータ」)を取得する。
【0142】
ADコンバータ102は、例えば、射出成形機2の駆動部の所定の電圧値のアナログ信号をデジタル信号に変換した値のデータ(以下、「AD値データ」)を出力する。
【0143】
続いて、図6A図6Dを参照して、本例に係るコントローラ90Bの具体的な動作について説明する。
【0144】
図6Aに示すように、射出成形機2は、CPU91Bがエンコーダ101で取得されるエンコーダデータを用いて、実際に、射出成形機2に関する制御処理を行う前に、エンコーダデータを要求するリクエストの送信タイミングに関するパラメータ(後述する設定時間Tset1)を設定する処理(以下、「リクエストタイミング設定処理」)を行う。リクエストタイミング設定処理は、初期状態のパラメータ(設定時間Tset1)を新たに設定する処理であってもよいし、既に設定済みのパラメータ(設定時間Tset1)を設定し直す、即ち、更新する処理であってもよい。以下、後述の図6B図6Cのリクエストタイミング処理や、図6Dの割り込みタイミング設定処理についても同様であってよい。例えば、リクエストタイミング設定処理は、射出成形機2の起動処理時、或いは、終了処理時に実行されてよい。終了処理時にリクエストタイミング設定処理が実行される場合、射出成形機2は、次回の起動後に、前回の終了処理時に設定されたパラメータに基づく動作を行う。このとき、射出成形機2の起動処理及び終了処理には、起動スイッチ95aに対する操作入力によって、射出成形機2の全部の機能が起動するときの起動処理及びこれに対応する終了処理だけでなく、射出成形機2の一部の機能だけが起動するときの起動処理及びこれに対応する終了処理が含まれてよい。例えば、通信ネットワーク6を通じて、射出成形機2の制御に関する更新プログラムが自動でダウンロードされ、自動でインストールされる場合に、射出成形機2(制御装置90)は、更新プログラムのインストールに必要な機能だけが起動してよい。また、リクエストタイミング設定処理は、射出成形機2の起動ごと、或いは、終了ごとに、実行されてもよいし、リクエストタイミング処理を行うための特定の起動モードで起動された場合(例えば、工場において、起動処理時、或いは、終了処理時に実行されてもよい。特定の起動モードは、例えば、射出成形機2の生産ライン出荷前の検査工程等で射出成形機2の初期化を行うための起動モードや、サービスマン等の管理者による射出成形機2のメンテナンス時に、射出成形機2の自己診断や初期化等を行うための起動モードであってよい。以下、後述する図6Bのリクエストタイミング設定処理、図6Dの割り込みタイミング設定処理、及び図8の遅延時間設定処理についても同様であってよい。
【0145】
具体的には、コントローラ90Bは、CPU91Bがエンコーダデータを用いて制御処理を行うために必要な前段工程、つまり、FPGA99Bがエンコーダデータのリクエストをエンコーダ101に送信し、エンコーダデータを受信するまでの処理工程を前もって行い、その前段工程の所要時間を計測する。このとき、前段工程の所要時間の計測は、複数回行われてもよい。以下、図6Bのリクエストタイミング設定処理や図6Dの割り込みタイミング設定処理における前段工程の所要時間の計測についても同様であってよい。そして、コントローラ90Bは、計測した所要時間に基づき、エンコーダデータのリクエストをエンコーダ101に送信するタイミングを設定する。
【0146】
より具体的には、送受信部994Bは、エンコーダデータのリクエストのエンコーダ101への送信処理(以下、「リクエスト送信処理」)を開始すると共に、エンコーダ101の送信処理(以下、「データ送信処理」)により送信されるエンコーダデータの受信処理(以下、「データ受信処理」)を行う。このとき、CPU91Bは、リクエスト送信処理の開始時と、データ受信処理の終了時のカウンタ992Bのカウンタ値を取得し、そのカウンタ値の差分に基づき、前段工程の所要時間を計測する。そして、CPU91Bは、エンコーダデータを用いる制御処理に対応する起動トリガを基準とする、FPGA99Aのエンコーダ101へのリクエスト送信処理の開始タイミング、つまり、起動トリガから遡ってリクエスト送信処理の開始タイミングまでの設定時間Tset1を設定する。例えば、CPU91Bは、計測した所要時間に所定の余裕時間を加算することにより、設定時間Tset1を設定する。これにより、設計段階やメンテナンス段階で、エンコーダ101の仕様や通信フォーマット等に基づき、設計者やサービスマン等が手動でリクエストの送信タイミング(設定時間Tset1)を設定する必要がなく、設計工程やメンテナンス工程の効率化を図ることができる。
【0147】
リクエストタイミング設定処理により設定時間Tset1が設定された後、実際に、射出成形機2に関する制御処理が開始されると、送受信部994Bは、起動トリガの出力タイミングよりも設定時間Tset1だけ事前のタイミングで、リクエスト送信処理を開始する。これにより、送受信部994Bは、起動トリガの直前で、エンコーダデータの取得を完了するため、CPU91Bは、起動トリガ出力部991Bからの起動トリガに応じて、最新のエンコーダデータを取得し、射出成形機2に関する制御処理に反映させることができる。
【0148】
また、図6Bに示すように、射出成形機2は、CPU91BがADコンバータ102で取得されるAD値データを用いて、実際に、射出成形機2に関する制御処理を行う前に、AD値データを要求するリクエストの送信タイミングに関するパラメータ(後述する設定時間Tset2)を設定するリクエストタイミング設定処理を行う。
【0149】
具体的には、コントローラ90Bは、CPU91BがAD値データを用いて制御処理を行うために必要な前段工程、つまり、FPGA99BがAD値データのリクエストをADコンバータ102に送信し、AD値データを受信するまでの処理工程を前もって行い、その前段工程の所要時間を計測する。そして、コントローラ90Bは、計測した所要時間に基づき、AD値データのリクエストをADコンバータ102に送信するタイミングを設定する。
【0150】
より具体的には、送受信部994Bは、ADコンバータ102へのAD値データのリクエスト送信処理を開始すると共に、ADコンバータ102のAD変換処理により生成されるAD値データの取得処理(以下、「AD値取得処理」)を行う。このとき、CPU91Bは、図6Aの場合と同様、リクエスト送信処理の開始時と、AD値取得処理の終了時のカウンタ992Bのカウンタ値を取得し、そのカウンタ値の差分に基づき、前段工程の所要時間を計測する。そして、CPU91Bは、AD値データを用いる制御処理に対応する起動トリガを基準とする、FPGA99AのADコンバータ102へのリクエスト送信処理の開始タイミング、つまり、起動トリガから遡ってリクエスト送信処理の開始タイミングまでの設定時間Tset2を設定する。例えば、CPU91Bは、計測した所要時間に所定の余裕時間を加算することにより、設定時間Tset2を設定する。これにより、図6Aの場合と同様の作用・効果を奏する。
【0151】
リクエストタイミング設定処理により設定時間Tset2が設定された後、実際に、射出成形機2に関する制御処理が開始されると、送受信部994Bは、起動トリガの出力タイミングよりも設定時間Tset2だけ事前のタイミングで、リクエスト送信処理を開始する。これにより、送受信部994Bは、起動トリガの直前で、AD値データの取得を完了するため、CPU91Bは、起動トリガ出力部991Bからの起動トリガに応じて、最新のAD値データを取得し、射出成形機2に関する制御処理に反映させることができる。
【0152】
また、図6Cに示すように、CPU91Bにより、異なる入力デバイス100(本例では、エンコーダ101及びADコンバータ102)のデータを用いて、射出成形機2に関する制御処理(演算処理)が行われる場合がある。この場合、図6A図6Bで説明したように、入力デバイス100ごとに、入力デバイスデータを要求するリクエストのタイミング(設定時間Tset1,Tset2)が設定される。これにより、送受信部994Bは、起動トリガの直前で、全ての入力デバイスデータ(エンコーダデータ及びAD値データ)の取得を完了するため、CPU91Bは、起動トリガ出力部991Bからの起動トリガに応じて、最新の入力デバイスデータ(エンコーダデータ及びAD値データ)を取得し、射出成形機2に関する制御処理に反映させることができる。つまり、コントローラ90Bは、入力デバイス100によって、前段工程に要する時間に差異があるような場合であっても、全ての入力デバイス100について、最新の入力デバイスデータを取得し、最新の入力デバイスデータに基づく制御処理を実行することができる。
【0153】
尚、図6Cでは、FPGA99B(送受信部994B)によるリクエスト送信処理、エンコーダ101によるデータ送信処理、及びFPGA99B(送受信部994B)によるデータ受信処理が、便宜的に、エンコーダデータ取得処理としてまとめて、エンコーダ101のタイミングチャートに記載されている。また、図6Cでは、FPGA99B(送受信部994B)によるリクエスト送信処理、ADコンバータ102によるAD変換処理、及びFPGA99B(送受信部994B)によるAD値取得処理が、便宜的に、AD値データ取得処理としてまとめて、ADコンバータ102のタイミングチャートに記載されている。
【0154】
また、図6Dに示すように、射出成形機2は、実際に、CPU91Bが射出成形機2に関する制御処理を行う前に、当該制御処理に対応するプログラム(割り込みハンドラ)の起動トリガ(割り込み要求)の出力タイミングに関するパラメータ(後述する設定時間Tset3)を設定する処理(以下、「割り込みタイミング設定処理」)を行う。
【0155】
具体的には、コントローラ90Bは、CPU91Bが射出成形機2に関する制御処理を行うために必要な前段工程、つまり、FPGA99Bが起動トリガを出力し、割り込みハンドラが起動するまでの処理工程を前もって行い、その前段工程の所要時間を計測する。そして、コントローラ90Bは、計測した所要時間に基づき、起動トリガを出力するタイミングを設定する。
【0156】
より具体的には、起動トリガ出力部991Bは、起動トリガをCPU91Bに出力する。このとき、CPU91Bは、起動トリガの出力時と、割り込みハンドラの起動(完了)時のカウンタ992Bのカウンタ値を取得し、そのカウンタ値の差分に基づき、前段工程の所要時間を計測する。そして、CPU91Bは、割り込みハンドラが起動すべきタイミング(例えば、最新の入力デバイスデータの取得が完了するタイミング)を基準とする、FPGA99B(起動トリガ出力部991B)による起動トリガの出力タイミング、つまり、割り込みハンドラの起動すべきタイミングから遡って起動トリガの出力タイミングまでの設定時間Tset3を設定する。例えば、CPU91Bは、計測した所要時間に所定の余裕時間を加算することにより、設定時間Tset3を設定する。これにより、図6A等の場合と同様の作用・効果を奏する。
【0157】
割り込みタイミング設定処理により設定時間Tset3が設定された後、実際に、射出成形機2に関する制御処理が開始されると、起動トリガ出力部991Bは、送受信部994Bがエンコーダデータを取得完了するタイミングよりも設定時間Tset3だけ事前のタイミングで、起動トリガを出力する。これにより、CPU91Bにおいて、割り込みハンドラは、FPGA99Bがエンコーダデータを取得完了したタイミングに合わせて起動が完了するため、CPU91Bは、最新のエンコーダデータを取得し、射出成形機2に関する制御処理に反映させることができる。
【0158】
コントローラ90Bは、図6A図6Bのリクエストタイミング設定処理や図6Dの割り込みタイミング設定処理を含む射出成形機2の所定の処理に関するパラメータの設定或いは更新が行われている場合、射出成形機2がパラメータの設定或いは更新に関連する動作状態であることを、例えば、出力装置96(表示装置の一例)等を通じて、射出成形機2のユーザに通知(表示)してよい。これにより、射出成形機2のユーザは、射出成形機2がパラメータの設定に関連する動作状態にあることを認識することができる。
【0159】
また、コントローラ90Bは、射出成形機2のパラメータの設定或いは更新に関連する動作状態を示す表示について、パラメータの設定或いは更新に関連する動作状態を簡易な内容で表示する簡易表示モード(第2の表示モードの一例)と、パラメータの設定或いは更新に関連する動作状態を詳細に表示する詳細表示モード(第1の表示モードの一例)とを有してよい。例えば、簡易表示モードでは、パラメータの設定や更新が実行されていることだけが表示され、パラメータの設定の具体的な内容は表示されず、一方、詳細表示モードでは、パラメータの設定や更新で実行される具体的な処理項目や、現在実行中の処理項目等が表示されてよい。
【0160】
例えば、詳細表示モードは、射出成形機2の管理者に該当するユーザ(例えば、射出成形機2の工場出荷前に、パラメータの設定に関する作業を担当する作業者や、射出成形機2のメンテナンスを行うサービスマン等)により射出成形機2が利用されている場合に、選択されてよい。コントローラ90Bは、例えば、射出成形機2の起動時に、出力装置96に表示される所定のログイン画面で、入力装置95を通じて入力されるユーザIDに基づき、利用中のユーザが管理者であるか、管理者以外であるかを判定することができる。また、コントローラ90Bは、ログイン画面を通じて、所定の管理者モードでログインされた場合に、利用者が管理者であると判定してもよい。これにより、射出成形機2の管理者は、射出成形機2の動作状態を詳細に把握する必要があるところ、詳細表示モードを通じて、射出成形機2のパラメータの設定で実行される処理項目の詳細な内容やその進行状況等を把握することができる。
【0161】
また、入力装置95には、当該パラメータの設定を開始させるフラグを生成する操作入力部が含まれてもよい。当該操作入力部は、例えば、出力装置96に表示される所定のGUI(Graphical User Interface)上の仮想的なボタンアイコンであってもよいし、ハードウェアによるボタンスイッチ等であってもよい。これにより、例えば、入力デバイス100を交換したような場合に、ユーザは、手動で、射出成形機2にパラメータの設定を実行させ、上述の入力デバイス100へのリクエスト送信のタイミングを再設定させることができる。
【0162】
射出成形機2(制御装置90)は、射出成形機2の起動処理時や終了処理時等において、所定の処理に関するパラメータの設定に代えて、或いは、加えて、所定の処理に関するプログラムの設定(インストール)或いは更新を自動で行ってもよい。新規のインストール用或いは更新用のプログラムは、例えば、上述の如く、記憶装置97に記憶(登録)されていてよい。また、新規のインストール用或いは更新用のプログラムは、例えば、外部装置4等からダウンロードされてもよい。
【0163】
また、射出成形機2(制御装置90)は、パラメータの設定の場合と同様、射出成形機2の所定の処理に関するプログラムの設定或いは更新が行われている場合、射出成形機2がプログラムの設定或いは更新に関連する動作状態であることを、例えば、出力装置96等を通じて、射出成形機2のユーザに通知(表示)してよい。これにより、射出成形機2のユーザは、射出成形機2がプログラムの設定に関連する動作状態にあることを認識することができる。
【0164】
また、射出成形機2(制御装置90)は、パラメータの設定の場合と同様、射出成形機2のプログラムの設定或いは更新に関連する動作状態を示す表示について、プログラムの設定或いは更新に関連する動作状態を簡易な内容で表示する簡易表示モードと、プログラムの設定或いは更新に関連する動作状態を詳細に表示する詳細表示モードとを有してよい。
【0165】
また、射出成形機2(制御装置90)は、所定の処理に関するパラメータやプログラム等の射出成形機2(例えば、制御装置90や後述のドライバ90E等)の設定或いは更新が行われたことを表すログ情報を記憶媒体92や記憶装置97等に記録してもよい。これにより、射出成形機2は、自機の設定や更新の実施状況に関する情報をユーザが事後的に確認可能な態様で保持することができる。ログ情報には、例えば、パラメータの設定処理が行われたことを表すログ情報が含まれる。また、ログ情報には、例えば、パラメータの更新処理が行われたことを表すログ情報が含まれる。また、ログ情報には、例えば、プログラムの設定処理が行われたことを表すログ情報が含まれる。また、ログ情報には、例えば、プログラムの更新処理が行われたことを表すログ情報が含まれる。また、ログ情報には、例えば、射出成形機2の設定や更新を伴う起動処理が行われたことを表すログ情報が含まれる。また、ログ情報には、例えば、射出成形機2の設定や更新を伴う再起動処理が行われたことを表すログ情報が含まれる。また、ログ情報には、射出成形機2の設定や更新を伴う終了処理が行われたことを表すログ情報が含まれる。これらのログ情報には、例えば、それぞれの対応する処理が行われた時刻(年月日等を含む)を表す情報が含まれる。これにより、射出成形機2は、自機の設定や更新の実施状況をユーザが時系列的に確認可能な態様でログ情報を保持することができる。
【0166】
また、射出成形機2(制御装置90)は、例えば、入力装置95で受け付けられるユーザからの所定の入力に応じて、記録されたログ情報を出力装置96(表示装置)に表示させてもよい。これにより、射出成形機2は、自機の設定や更新の実施状況をユーザに認識させることができる。具体的には、制御装置90は、記録されたパラメータの設定処理、パラメータの更新処理、プログラムの設定処理、プログラムの更新処理、設定や更新を伴う起動処理、設定や更新を伴う終了処理等に関するログ情報を時系列的に出力装置96(表示装置)に表示させてよい。例えば、出力装置96は、制御装置90の制御下で、これらのログ情報を時系列的に表形式で並べて表示してよい。これにより、射出成形機2は、自機の時系列での更新や設定の実施状況をユーザに認識させることができる。
【0167】
このように、本例では、射出成形機2は、出力装置96を通じて、射出成形機2(自機)の設定及び更新の実施状況に関する情報をユーザに提供する。具体的には、出力装置96は、制御装置90の制御下で、所定の処理に関するパラメータ或いはプログラムの自動設定或いは自動更新を含む射出成形機2の起動処理或いは終了処理が行われている場合に、パラメータ或いはプログラムの設定或いは更新に関連する動作状態であることを表示する。
【0168】
これにより、射出成形機2は、ユーザに対して、自機のパラメータやプログラムの設定・更新に関連する動作状態にあることを認識させることができる。
【0169】
また、本例では、射出成形機2は、起動処理或いは終了処理が行われている場合に、パラメータ或いはプログラムの設定或いは更新に関する相対的により詳細な内容が出力装置96に表示される詳細表示モードと、パラメータ或いはプログラムの設定或いは更新に関する相対的により簡略な内容が出力装置96に表示される簡易表示モードとを有する。
【0170】
これにより、射出成形機2は、例えば、ユーザにパラメータやプログラムの設定・更新が実行されていることだけを伝えればいいような状況と、ユーザに実行されているパラメータやプログラムの設定・更新の内容や進行状況等の詳細まで伝える必要があるような状況とで、表示内容を切り替えることができる。
【0171】
また、本例では、射出成形機2が管理者に該当するユーザにより利用されている場合に、詳細表示モードが選択され、射出成形機2の管理者以外のユーザにより利用されている場合に、簡易表示モードが選択される。
【0172】
これにより、射出成形機2は、ユーザの権限(管理者であるのか、管理者以外であるのか)に合わせて、パラメータやプログラムの設定・更新に関する表示内容を切り替えることができる。
【0173】
また、本例では、コントローラ90Bは、所定の処理を行うために必要な前段工程に要する時間を計測し、計測した時間に基づき、その後に使用する所定の処理に関するパラメータを自動設定する。
【0174】
これにより、コントローラ90Bは、事前に、所定の処理に関するパラメータを自動設定できるため、設計工程やメンテナンス工程の効率化を図ることができる。
【0175】
また、本例では、コントローラ90Bは、射出成形機2の起動処理時又は終了処理時に、前段工程に要する時間を計測し、計測した時間に基づき、所定の処理に関するパラメータを自動設定してよい。
【0176】
これにより、コントローラ90Bは、射出成形機2の起動処理や終了処理のタイミングを利用して、所定の処理の前段工程に要する時間を計測し、パラメータの自動設定を行うことができる。
【0177】
また、本例では、コントローラ90Bは、ハードウェアのカウンタ992Bを用いて、前段工程に要する時間を計測してよい。
【0178】
これにより、例えば、ソフトウェアによるカウンタを用いると、CPU91Bで動作する他のソフトウェアの影響を受けて、計測精度にバラツキが生じうるところ、コントローラ90Bは、他のソフトウェアの影響を受けず、前段工程に要する時間を計測することができる。
【0179】
また、本例では、コントローラ90Bは、入力デバイス100で取得される入力デバイスデータをCPU91Bが取得する取得処理の前段工程として、当該コントローラ90Bが入力デバイス100に入力デバイスデータのリクエストを送信してから、入力デバイス100から入力デバイスデータを受信完了するまでに要する時間を計測し、計測した時間に基づき、パラメータとして、上述の取得処理を基準としたときのリクエストの送信タイミングを自動設定してよい。
【0180】
これにより、コントローラ90Bは、CPU91Bで取得処理が開始される前提として必要な前段工程に要する時間を把握することができるため、例えば、取得処理の直前に、入力デバイスデータを受信完了できるように、パラメータの自動設定を行うことができる。よって、コントローラ90Bは、最新の入力デバイスデータを取得し、最新の入力デバイスデータに基づく制御処理を実行することができる。
【0181】
また、本例では、コントローラ90Bは、複数の入力デバイス100ごとに、前段工程に要する時間を計測し、計測した時間に基づき、取得処理を基準としたときのリクエストの送信タイミングを自動設定してよい。
【0182】
これにより、入力デバイス100ごとに前段工程に要する時間が異なりうるところ、コントローラ90Bは、入力デバイス100ごとに、前段工程に要する時間を考慮して、入力デバイス100へのリクエストの送信タイミングを自動設定することができる。よって、コントローラ90Bは、例えば、複数の入力デバイス100の入力デバイスデータを用いて、制御処理を行う場合であっても、全ての入力デバイス100について、最新の入力デバイスデータを取得し、最新の入力デバイスデータに基づく制御処理を実行することができる。
【0183】
また、本例では、コントローラ90Bは、CPU91Bが周期的に実行する周期処理の前段工程として、CPU91Bに割り込みハンドラに対応する割り込み要求をし、当該割り込み要求に応じて、割り込みハンドラが起動するまでに要する時間を計測し、計測した時間に基づき、パラメータとして、予め規定される周期処理のタイミングを基準としたときの割り込み要求のタイミングを自動設定してよい。
【0184】
これにより、コントローラ90Bは、CPU91Bで周期処理が開始される前提として必要な前段工程に要する時間を把握することができるため、例えば、周期処理が実行されるべきタイミングに、割り込みハンドラが起動完了し、周期処理を実行できるように、パラメータの自動設定を行うことができる。
【0185】
尚、本例では、コントローラ90Bの具体的な動作として、図6A図6Dを例示し説明したが、全ての動作が採用される必要はなく、これらのうちの少なくとも一つが実行される態様であってよい。
【0186】
<制御装置の第3例>
まず、図7図8を参照して、本例に係る制御装置90の構成を説明する。
【0187】
図7は、本実施形態に係る射出成形機2の制御装置90の構成の第3例を示す図である。図8は、本例に係るコントローラ90Cの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【0188】
図7に示すように、本例では、制御装置90は、コントローラ90Cと、コントローラ90Dと、ドライバ90Eとを含む。また、射出成形機2は、制御装置90に関連する構成として、二つのエンコーダ101を含む。以下、二つのエンコーダ101を、エンコーダ101Aと、エンコーダ101Bとに区別して説明する。
【0189】
コントローラ90C,90Dは、それぞれ、射出成形機2に関する制御処理を行う。コントローラ90C,90Dは、階層的に接続され、コントローラ90Cが階層的に上位に位置付けられ、コントローラ90Dが階層的に下位に位置付けられる。コントローラ90D(他の機器の一例)は、エンコーダ101Aと接続され、エンコーダ101Aから送信されるエンコーダデータを受信すると共に、受信したエンコーダデータを上位のコントローラ90Cに送信する。
【0190】
ドライバ90E(他の機器の一例)は、コントローラ90Dの制御下で、所定の駆動対象(例えば、電動モータ等)を駆動させる。また、ドライバ90Eは、当該駆動対象の回転位置を測定対象とするエンコーダ101Bと接続され、エンコーダ101Bからエンコーダデータを受信すると共に、受信したエンコーダデータを上位のコントローラ90Dに送信する。
【0191】
エンコーダ101A,101Bは、例えば、射出成形機2の駆動部に利用される電動モータの回転位置(回転角度)等のデジタルデータ(エンコーダデータ)を取得する。
【0192】
エンコーダ101Aは、コントローラ90Dと接続され、例えば、シリアル通信を用いて、コントローラ90Dにエンコーダデータを送信する。
【0193】
エンコーダ101Bは、測定対象の電動モータを駆動するドライバ90Eに接続され、例えば、シリアル通信を用いて、ドライバ90Eにエンコーダデータを送信する。
【0194】
続いて、図8を参照して、本例に係るコントローラ90Cの具体的な動作について説明する。
【0195】
図8に示すように、エンコーダ101Aによりエンコーダデータが取得されてから、コントローラ90Cにより当該エンコーダデータが取得されるまでには、エンコーダ101A及びコントローラ90Dでの処理や、通信遅延等に応じて、ある程度の時間を要する。また、エンコーダ101Bによりエンコーダデータが取得されてから、コントローラ90Cにより当該エンコーダデータが取得されるまでには、エンコーダ101B、ドライバ90E、及びコントローラ90Dでの処理や、通信遅延等に応じて、ある程度の時間を要する。そのため、コントローラ90Cは、エンコーダデータがどのタイミングで取得されたのかを把握する必要があり、エンコーダデータを取得すると、エンコーダデータの取得時刻を、自身が取得した時刻から、エンコーダ101A,101Bで実際に取得されたと推定される時刻に補正する。よって、コントローラ90Cは、エンコーダ101A,101Bのエンコーダデータを用いて、実際に、射出成形機2に関する制御処理を行う前に、エンコーダデータの取得時刻を補正するためのパラメータ(後述する遅延時間Tc1,Tc2)を設定する処理(以下、「遅延時間設定処理」)を行う。例えば、遅延時間設定処理は、上述の如く、射出成形機2の起動処理時、或いは、終了処理時に実行されてよい。
【0196】
具体的には、コントローラ90Cは、自身がエンコーダデータを取得するために必要な前段工程、つまり、エンコーダ101Aでエンコーダデータが取得されてから、コントローラ90Cで受信されるまでの処理工程を前もって行い、その前段工程の所要時間を計測する。このとき、前段工程の所要時間の計測は、複数回行われてもよい。また、前段工程の所要時間の計測は、上述の第2例と同様、ハードウェアの計時手段(例えば、コントローラ90C,90D等に内蔵されるハードウェアのカウンタ等)により行われてよい。そして、コントローラ90Cは、計測した所要時間に基づき、遅延時間Tc1を設定する。遅延時間Tc1は、コントローラ90Cでエンコーダデータが受信されるタイミングから遡って、エンコーダデータがエンコーダ101Aで取得されたタイミングを特定するためのパラメータである。これにより、コントローラ90Cは、エンコーダ101Bのエンコーダデータを取得(受信)した場合に、エンコーダデータの取得時刻を、コントローラ90Cでの受信時刻から遅延時間Tc1だけ遡った時刻に補正することができる。
【0197】
また、同様に、コントローラ90Cは、自身がエンコーダデータを取得するために必要な前段工程、つまり、エンコーダ101Bでエンコーダデータが取得されてから、コントローラ90Cで受信されるまでの処理工程を前もって行い、その前段工程の所要時間を計測する。このとき、前段工程の所要時間の計測は、複数回行われてもよい。そして、コントローラ90Cは、計測した所要時間に基づき、遅延時間Tc2を設定する。遅延時間Tc2は、コントローラ90Cでエンコーダデータが受信されるタイミングから遡って、エンコーダデータがエンコーダ101Bで取得されたタイミングを特定するためのパラメータである。これにより、コントローラ90Cは、エンコーダ101Bのエンコーダデータを取得(受信)した場合に、エンコーダデータの取得時刻を、コントローラ90Cでの受信時刻から遅延時間Tc2だけ遡った時刻に補正することができる。
【0198】
また、コントローラ90Cは、入力デバイス(エンコーダ101A,101B)ごとに、エンコーダデータの取得からコントローラ90Cでの受信までの所要時間を計測し、パラメータを設定する。よって、コントローラ90Cまでのデータ伝達経路が入力デバイス(エンコーダ101A,101B)ごとに異なるような場合であっても、コントローラ90Cは、その伝達経路に合わせて、適切に、取得時刻の補正を行うことができる。
【0199】
コントローラ90Cは、遅延時間設定処理を含む射出成形機2の起動処理或いは終了処理が行われている場合、上述の第2例の場合と同様、射出成形機2がパラメータ(遅延時間)の設定に関連する動作状態であることを、例えば、出力装置96(表示装置の一例)等を通じて、射出成形機2のユーザに通知(表示)してよい。
【0200】
また、コントローラ90Cは、射出成形機2のパラメータの設定に関連する動作状態を示す表示について、上述の第2例の場合と同様、パラメータの設定に関連する動作状態を簡易な内容で表示する簡易表示モードと、パラメータの設定に関連する動作状態を詳細に表示する詳細表示モードを有してよい。このとき、詳細表示モードは、上述の第2例の場合と同様、射出成形機2の管理者に該当するユーザにより射出成形機2が利用されている場合に、選択されてよい。
【0201】
また、入力装置95には、上述の第2例の場合と同様、当該遅延時間設定処理を含むパラメータの設定を開始させるフラグを生成する操作入力部が含まれてもよい。これにより、例えば、エンコーダ101を交換し、データ伝達経路が変更されたような場合に、ユーザは、射出成形機2に遅延時間設定処理を含むパラメータの設定を実行させ、エンコーダデータの受信タイミングから遡って、エンコーダデータがエンコーダ101で取得されたタイミングを特定するためのパラメータ(遅延時間)を再設定させることができる。
【0202】
射出成形機2(制御装置90)は、上述の第2例の場合と同様、射出成形機2の起動処理時や終了処理時等において、所定の処理に関するパラメータの設定に代えて、或いは、加えて、所定の処理に関するプログラムの設定(インストール)或いは更新を自動で行ってもよい。
【0203】
また、上述の第2例の場合と同様、射出成形機2(制御装置90)は、射出成形機2の所定の処理に関するプログラムの設定或いは更新が行われている場合、射出成形機2がプログラムの設定或いは更新に関連する動作状態であることを、例えば、出力装置96等を通じて、射出成形機2のユーザに通知(表示)してよい。
【0204】
また、上述の第2例の場合と同様、射出成形機2(制御装置90)は、射出成形機2のプログラムの設定或いは更新に関連する動作状態を示す表示について、プログラムの設定或いは更新に関連する動作状態を簡易な内容で表示する簡易表示モードと、プログラムの設定或いは更新に関連する動作状態を詳細に表示する詳細表示モードを有してよい。
【0205】
また、上述の第2例の場合と同様、射出成形機2(制御装置90)は、所定の処理に関するパラメータやプログラム等の射出成形機2の設定或いは更新が行われたことを表すログ情報を記憶媒体92や記憶装置97等に記録してもよい。
【0206】
また、上述の第2例の場合と同様、射出成形機2(制御装置90)は、例えば、入力装置95で受け付けられるユーザからの所定の入力に応じて、記録されたログ情報を出力装置96(表示装置)に表示させてもよい。具体的には、制御装置90は、記録されたパラメータの設定処理、パラメータの更新処理、プログラムの設定処理、プログラムの更新処理、設定や更新を伴う起動処理、設定や更新を伴う終了処理等に関するログ情報を時系列的に出力装置96(表示装置)に表示させてよい。
【0207】
このように、本例では、射出成形機2は、出力装置96を通じて、射出成形機2(自機)の設定及び更新の実施状況に関する情報をユーザに提供する。具体的には、出力装置96は、制御装置90の制御下で、所定の処理に関するパラメータ或いはプログラムの自動設定或いは自動更新を含む射出成形機2の起動処理或いは終了処理が行われている場合に、パラメータ或いはプログラムの設定或いは更新に関連する動作状態であることを表示する。
【0208】
これにより、射出成形機2は、ユーザに対して、自機のパラメータやプログラムの設定・更新に関連する動作状態にあることを認識させることができる。
【0209】
また、本例では、射出成形機2は、起動処理或いは終了処理が行われている場合に、パラメータ或いはプログラムの設定或いは更新に関する相対的により詳細な内容が出力装置96に表示される詳細表示モードと、パラメータ或いはプログラムの設定或いは更新に関する相対的により簡略な内容が出力装置96に表示される簡易表示モードとを有する。
【0210】
これにより、射出成形機2は、例えば、ユーザにパラメータやプログラムの設定・更新が実行されていることだけを伝えればいいような状況と、ユーザに実行されているパラメータやプログラムの設定・更新の内容や進行状況等の詳細まで伝える必要があるような状況とで、表示内容を切り替えることができる。
【0211】
また、本例では、射出成形機2が管理者に該当するユーザにより利用されている場合に、詳細表示モードが選択され、射出成形機2の管理者以外のユーザにより利用されている場合に、簡易表示モードが選択される。
【0212】
これにより、射出成形機2は、ユーザの権限(管理者であるのか、管理者以外であるのか)に合わせて、パラメータやプログラムの設定・更新に関する表示内容を切り替えることができる。
【0213】
また、本例では、コントローラ90Cは、所定の処理を行うために必要な前段工程に要する時間を計測し、計測した時間に基づき、その後に使用する所定の処理に関するパラメータを自動設定する。
【0214】
これにより、コントローラ90Cは、事前に、所定の処理に関するパラメータを自動設定できるため、設計工程やメンテナンス工程の効率化を図ることができる。
【0215】
また、本例では、コントローラ90Cは、射出成形機2の起動処理時又は終了処理時に、前段工程に要する時間を計測し、計測した時間に基づき、所定の処理に関するパラメータを自動設定してよい。
【0216】
これにより、コントローラ90Cは、射出成形機2の起動処理や終了処理のタイミングを利用して、所定の処理の前段工程に要する時間を計測し、パラメータの自動設定を行うことができる。
【0217】
また、本例では、コントローラ90Cは、ハードウェアの計時手段を用いて、前段工程に要する時間を計測してよい。
【0218】
これにより、例えば、ソフトウェアによる計時手段を用いると、コントローラ90Cで動作する他のソフトウェアの影響を受けて、計測精度にバラツキが生じうるところ、コントローラ90Cは、他のソフトウェアの影響を受けず、前段工程に要する時間を計測することができる。
【0219】
また、本例では、コントローラ90Cは、当該コントローラ90Cと異なる一又は複数の他の機器を介して当該コントローラ90Cに接続される入力デバイス(エンコーダ101)から入力される入力デバイスデータを受信する受信処理の前段工程として、入力デバイスにより入力デバイスデータが取得されてから所定のデータが他の機器を介して当該コントローラ90Cに受信されるまでの前段工程に要する時間を計測する。そして、コントローラ90Cは、計測した時間に基づき、入力デバイスデータの受信タイミングから遡って、入力デバイスデータが入力デバイスで取得されたタイミングを特定するためのパラメータ(遅延時間)を自動設定する。
【0220】
これにより、コントローラ90Cは、入力デバイスデータの受信までの前段工程に要する時間を把握することができるため、適切に、入力デバイスデータが入力デバイスで取得されたタイミングを特定するためのパラメータを自動設定することができる。
【0221】
<制御装置の第4例>
まず、図9図10図10A図10B)を参照して、本例に係る制御装置90の構成を説明する。
【0222】
図9は、本実施形態に係る射出成形機2の制御装置90の構成の第4例を示す図である。図10Aは、比較例に係るコントローラ90Fc,90Gcの動作の一例を説明するタイミングチャートである。図10Bは、本例に係るコントローラ90F,90Gの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【0223】
図9に示すように、本例に係る制御装置90は、コントローラ90F,90Gを含む。
【0224】
コントローラ90F,90Gは、それぞれ、射出成形機2に関する制御処理を行う。コントローラ90F,90Gは、階層的に接続され、コントローラ90Fが階層的に上位に位置付けられ、コントローラ90Gが階層的に下位に位置付けられる。
【0225】
図10Bに示すように、コントローラ90Fは、所定の通信周期ごとに、同期信号(所定の信号の一例)を送信する。
【0226】
コントローラ90Gは、同期信号の通信周期より短い所定の処理周期ごとに、所定の処理を行う。また、コントローラ90Gは、所定の通信周期ごとに、コントローラ90Fから受信される同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとを同期(本例では、一致)させるように、処理周期の割り込みタイミングを補正する。仮に、同期信号の通信周期がコントローラ90Gの処理周期の整倍数になっている場合であっても、コントローラ90Fとコントローラ90Gとのクロック源が異なり、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとの間にオフセットが生じてしまうからである。以下、後述する図11図12Bの場合についても同様である。
【0227】
続いて、図10Aを参照して、比較例に係るコントローラ90Fc,90Gcの動作を説明する。
【0228】
図10Aに示すように、コントローラ90Fcは、本例のコントローラ90Fと同様、所定の通信周期ごとに、同期信号をコントローラ90Gcに送信する。
【0229】
コントローラ90Gcは、同期信号の通信周期の1/N(Nは、正の整数。本例では、N=3)の処理周期ごとに、所定の処理を繰り返す。つまり、コントローラ90Fc,90Gcの間の同期が取れている場合、通信周期の間に、N回の処理周期が含まれる。そして、コントローラ90Gcは、本例のコントローラ90Gと同様、所定の通信周期ごとに、コントローラ90Fcから受信される同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとを同期(比較例では、一致)させるように、処理周期の割り込みタイミングを補正する。
【0230】
具体的には、コントローラ90Gcは、同期信号を受信すると、直近の割り込みタイミング(以下、「受信時割り込みタイミング」)とのずれ量(以下、「同期ずれ量」)を計測する。そして、コントローラ90Gcは、計測した同期ずれ量分だけ、受信時割り込みタイミングの次の割り込みタイミング(以下、「同期補正割り込みタイミング」)を補正する。以下、当該補正態様を「同期補正」と称する。そのため、毎回の処理周期のうち、受信時割り込みタイミングから次の割り込みタイミングまでの処理周期だけが補正対象となり、例えば、補正対象の処理周期内の処理が完了できない等、補正対象の処理周期の処理に影響が生じる可能性がある。
【0231】
続いて、図10Bを参照して、本例に係るコントローラ90F、90Gの動作を説明する。
【0232】
図10Bに示すように、コントローラ90Gは、比較例のコントローラ90Gcと同様、同期信号の1/Nの処理周期ごとに、所定の処理を繰り返す。そして、コントローラ90Gは、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとを同期(一致)させるように、毎回の処理周期ごとに、処理周期の割り込みタイミングを補正する。
【0233】
具体的には、コントローラ90Gは、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミング(受信時割り込みタイミング)との間の同期ずれ量の予測値(以下、「予測同期ずれ量」)に基づき、同期補正割り込みタイミング以外の割り込みタイミング(以下、「予測補正割り込みタイミング」)を補正する。以下、当該補正態様を「予測補正」と称する。例えば、コントローラ90Gは、予測ずれ量をNで除した値分だけ、予測補正割り込みタイミングを補正する。そして、コントローラ90Gは、同期信号を受信すると、受信タイミングと、受信時割り込みタイミングとの間の同期ずれ量を計測し、計測した同期ずれ量分だけ、同期補正割り込みタイミングを補正する(同期補正)。これにより、同期補正割り込みタイミング以外の割り込みタイミングも段階的に補正され、図10Bに示すように、毎回の割り込みタイミングの補正量も相対的に小さくなるため、各処理周期の処理への影響も比較的小さくなる。よって、図10Aの比較例のように、同期補正の対象の処理周期だけが非常に短くなり、その処理周期内の処理に影響が生じるような事態を抑制することができる。
【0234】
コントローラ90Gは、例えば、射出成形機2に関する制御処理が実際に開始されないタイミングで(例えば、射出成形機2の起動処理時や終了処理時に)、前もって、同期ずれ量を計測することより、予測同期ずれ量を算出してよい。このとき、コントローラ90Gは、同期ずれ量を複数回計測し、統計処理することで、予測同期ずれ量を算出してもよい。具体的には、コントローラ90Gは、複数回計測した同期ずれ量から平均値(以下、「平均同期ずれ量」)を算出し、平均同期ずれ量を予測同期ずれ量として利用してよい。これにより、実際の同期ずれ量の計測値を用いて、予測同期ずれ量を規定することができる。
【0235】
また、同期信号と受信時割り込みタイミングとの同期ずれ量が相対的に大きくなる、具体的には、同期許容限界値(例えば、想定される同期ずれ量の最大値とジッタの最大値との和)を超えると、コントローラ90F,90Gの同期性が損なわれる事態が生じうる。例えば、コントローラ90Fにおいて、何等かの異常が発生し、自己診断機能等により再起動が図られ、再起動したような場合である。この場合、コントローラ90Gは、同期信号を受信すると、同期補正割り込みタイミングの補正量を、例えば、同期許容限界値(許容幅の一例)に制限する。その後、コントローラ90Gは、同様に、予測補正割り込みタイミングについても、同期許容限界値だけ補正しながら、段階的に、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとの同期を確保していく。これにより、コントローラ90F,90Gの同期性が失われてしまったような場合であっても、段階的な割り込みタイミングの補正によって、同期性を回復させることができる。つまり、本例では、射出成形機2は、制御装置90に関する異常が発生し、上位のコントローラ90Fが一時停止してしまったような場合であっても、コントローラ90Gの動作に応じて、実行中の動作を継続することができる。このとき、射出成形機2は、少なくとも実行中の成形品を製造する一連の動作を完了させる態様であってよい。成形品を製造する一連の動作には、上述の如く、型締装置10の型閉工程、型締工程、及び型開工程に関する動作、射出装置40の充填工程、保圧工程、冷却工程、及び計量工程に関する動作、並びにエジェクタ装置50の突き出し工程に関する動作が含まれる。
【0236】
コントローラ90Gは、上述の予測同期ずれ量の場合と同様、例えば、射出成形機2に関する制御処理が実際に開始されないタイミングで(例えば、射出成形機2の起動処理時や終了処理時に)、前もって、同期ずれ量を計測することより、同期許容限界値を設定してよい。具体的には、コントローラ90Gは、複数回計測した同期ずれ量から同期ずれ量の最大値(以下、「最大同期ずれ量」)を抽出すると共に、最大同期ずれ量と平均同期ずれ量の差分をジッタの最大値(以下、「最大ジッタ」)として算出する。そして、コントローラ90Gは、抽出した最大同期ずれ量と、算出した最大ジッタとの和を同期許容限界値として設定してよい。以下、後述の第5例(図11図12B)の同期許容限界値の設定方法についても同様である。
【0237】
制御装置90に関する異常には、制御装置90の内的な異常が含まれる。制御装置90の内的な異常には、制御装置90を構成するハードウェア(CPU91、記憶媒体92、入力インタフェース93、出力インタフェース94等)に関する異常が含まれる。制御装置90を構成するハードウェアに関する異常には、例えば、制御装置90(内部の基板)の電圧や電流が所定基準を超える状態(過負荷異常)が含まれる。また、制御装置90を構成するハードウェアに関する異常には、例えば、制御装置90(内部の基板)の温度が所定基準を超える状態(温度異常)が含まれる。また、制御装置90の内的な異常には、制御装置90で実行されるソフトウェア(プログラム)に関する異常が含まれる。また、制御装置90に関する異常には、制御装置90の動作に影響する外的な異常が含まれてもよい。制御装置90の動作に影響する外的な異常には、例えば、外部との間の通信障害(通信異常)等が含まれる。また、制御装置90の動作に影響する外的な異常には、停電や地震等による電源の異常が含まれる。以下、後述の第5例の場合も同様であってよい。
【0238】
射出成形機2は、制御装置90に関する異常が発生した場合、異常の種類ごとに、実行中の動作を継続させるか停止させるかを異ならせてもよい。
【0239】
例えば、上述の如く、上位のコントローラ90Fに異常が生じても、射出成形機2は、下位のコントローラ90Gの制御下で、実行中の動作(具体的には、成形品を製造する一連の動作)を継続させてよい。上位のコントローラ90Fに異常があっても、各種アクチュエータの動作を制御する下位のコントローラ90Gが正常であれば、射出成形機2は、適切な動作をある程度継続させることが可能であり、直ぐに停止させる必要がないからである。また、例えば、制御装置90に過負荷異常や温度異常が生じても、射出成形機2は、実行中の動作を継続させてもよい。過負荷異常や温度異常が生じても、射出成形機2は、ある程度の期間であれば、正常な動作を継続可能だからである。以下、射出成形機2の実行中の動作を継続させる対象の異常を「継続対象異常」と称する。
【0240】
一方、例えば、射出成形機2の各種アクチュエータを制御する下位のコントローラ90Gに異常が生じた場合、射出成形機2は、実行中の動作を停止させてよい。下位のコントローラ90Gに異常が生じると、アクチュエータの動作に直接影響が生じ、射出成形機2が正常な動作を継続できない可能性があるからである。また、例えば、射出成形機2は、入力デバイスとの間の通信障害や通信線の断線等による外部と通信異常が制御装置90に生じると、実行中の動作を停止させてよい。制御装置90は、入力デバイス(例えば、エンコーダ等)からのデータが入力されない場合、制御対象(例えば、電動モータ等)の状態を適切に把握することができず、その結果、射出成形機2に正常な動作を継続させることができない可能性があるからである。以下、射出成形機2の実行中の動作を停止させる対象の異常を「停止対象異常」と称する。
【0241】
また、射出成形機2は、制御装置90に関する異常(停止対象異常)が生じた場合、その動作を停止し、ユーザへの停止対象異常の発生(即ち、異常発生に伴う射出成形機2の動作停止)に関する通知、及び停止対象異常が発生したときの各種情報(以下、「異常発生ログ情報」)の記録の少なくとも一方を行ってもよい。ユーザへの通知は、例えば、出力装置96を通じて、視覚的な方法や聴覚的な方法等で行われてよい。異常発生ログ情報は、例えば、異常の発生時刻に関する情報、発生した異常(停止対象異常)の識別情報、異常発生時の射出成形機2の動作の内容に関する情報、異常の発生時の制御装置90の電流、電圧、温度等に関する情報等を含んでよい。これにより、ユーザは、通知によって、停止対象異常の発生や異常発生に伴う射出成形機2の動作停止を認識することができる。また、ユーザは、射出成形機2の内部の記憶装置(例えば、記憶媒体92)に記録される、異常発生ログ情報から事後的にそのときの制御装置90の状況等を確認することができる。
【0242】
また、射出成形機2は、制御装置90に関する異常(停止対象異常)が生じた場合、実行中の動作を一時停止して制御装置90の自己診断を行ってもよい。そして、射出成形機2は、診断結果に問題がない場合、その動作を再開する一方、診断結果に問題がある場合、その動作を停止状態に維持してよい。これにより、停止対象異常が生じた場合でも、自己診断の結果に問題がなければ、射出成形機2は、その動作を再開させることができる。
【0243】
また、射出成形機2は、制御装置90に関する異常が生じた場合、実行中の動作を継続させながら制御装置90の自己診断を行ってもよい。そして、射出成形機2は、診断結果に問題がない場合、その動作をそのまま継続させる一方、診断結果に問題がある場合、その動作を停止してもよい。これにより、射出成形機2は、その動作を継続させながら、実際に動作を停止させる必要があるか否かを判断し、必要な場合だけ停止させることができる。
【0244】
また、射出成形機2は、制御装置90に関する異常(継続対象異常)が生じた場合、実行中の動作を継続させて、成形品を製造する一連の動作(成形サイクル)を所定回数だけ繰り返した後に、その動作を停止させてもよい。所定回数は、異常の種類ごとに異なっていてもよい。これにより、射出成形機2の作業効率と成形品の品質や射出成形機2の安全性等とのバランスを図ることができる。この場合、射出成形機2は、併せて、ユーザへの異常の発生(異常発生に伴う射出成形機2の動作停止)に関する通知、及び異常が発生したときの異常発生ログ情報の記録の少なくとも一方を行ってもよい。これにより、ユーザは、制御装置90の異常に伴う射出成形機2の動作停止を認識したり、射出成形機2の動作停止に伴う異常発生ログ情報から事後的に制御装置90のそのときの状況を確認したりすることができる。
【0245】
また、射出成形機2は、制御装置90に関する異常(継続対象異常)が生じた場合、実行中の動作をそのまま継続しながら、ユーザへの異常の発生に関する通知、及び異常が発生したときの異常発生ログ情報の記録の少なくとも一方を行ってもよい。これにより、ユーザは、射出成形機2が動作を継続しているものの、制御装置90に何等かの異常が生じていることを認識したり、異常発生ログ情報から制御装置90のそのときの状況を確認したりすることができる。
【0246】
例えば、制御装置90に関する異常の種類ごとに、その異常の発生時に実行される処理の内容が規定されるテーブル情報(即ち、一覧表)が準備され、制御装置90の記憶媒体92(具体的には、不揮発性の補助記憶装置等)に登録されてよい。異常の発生時に実行する処理の内容には、例えば、上述の如く、射出成形機2の動作停止或いは動作継続の別、ユーザへの通知の有無、異常発生ログ情報の記録の有無、動作継続させる場合の継続期間に関する情報(例えば、成形サイクルを繰り返す所定回数の値等)が含まれる。これにより、制御装置90は、テーブル情報に基づき、発生した異常に合わせた処理を射出成形機2に行わせることができる。
【0247】
また、射出成形機2(制御装置90)は、入力装置95からの所定の入力に応じて、制御装置90に関する異常の種類ごとに、その発生時に実行される処理の内容を設定してもよい。これにより、ユーザは、入力装置95を通じて、制御装置90の異常の種類ごとに、異常発生時の射出成形機2の動作停止或いは動作継続の別、ユーザへの通知の有無、異常発生ログ情報の記録の有無等を手動で設定することができる。例えば、出力装置96(表示装置)に当該設定を行うための設定画面が表示されてよく、ユーザは、入力装置95を用いて、当該設定画面を操作することにより、制御装置90に関する異常の種類ごとに設定がなされてよい。この場合、上述のテーブル情報の内容が書き換えられることにより、ユーザから受け付けられる入力内容が設定内容として反映されてよい。また、当該設定は、外部装置4に対する所定の入力に応じて、通信ネットワーク6経由で行われてもよい。
【0248】
このように、本例では、射出成形機2は、制御装置90に異常が発生しても、実行中の動作を継続する。
【0249】
例えば、射出成形機2において、アクチュエータ(例えば、電動モータ)やアクチュエータで駆動される被駆動部の異常が発生する場合、そのまま、射出成形機2の動作に影響してしまう可能性が高い。そのため、射出成形機2の動作を継続させると、成形品の品質の観点や射出成形機2の安全性の観点から問題が生じる可能性がある。
【0250】
これに対して、制御装置90の異常の中には、ある程度、射出成形機2の動作を適切に制御し続けることが可能な異常が含まれる。例えば、上位のコントローラ90Fに何等かの異常が発生しても、下位のコントローラ90Gは、既に取得済みのコントローラ90Fからの制御信号に基づき、アクチュエータの動作を適切に制御し続けることが可能である。そして、上位のコントローラ90Fは、リセットにより再起動されることで、正常な状態、かつ、下位のコントローラ90Gと同期する状態に復帰することができる。また、例えば、制御装置90の温度異常や過負荷異常等の場合、直ぐ停止させずに負荷を軽減させる制御モード等を採用しながらその状態を監視し続けることで、異常から正常な状態に回復できるような場合もある。そのため、本実施形態では、制御装置90に異常が発生しても、突然、射出成形機2が停止してしまうような事態を抑制することができる。よって、射出成形機2は、作業効率の低下を抑制することができる。
【0251】
また、本例では、射出成形機2は、制御装置90に異常が発生しても、少なくとも実行中の成形品を製造する一連の動作を完了させてよい。
【0252】
これにより、作りかけの状態で、射出成形機2が停止してしまうことがないため、射出成形機2は、作りかけの成形品の不要な破棄を回避し、コスト低減を図ることができる。
【0253】
また、本例では、制御装置90は、階層的に接続される複数のコントローラ90F,90Gを含む。そして、射出成形機2は、複数のコントローラ90F,90Gのうちの一のコントローラ90Fに異常が発生しても、コントローラ90Fよりも階層的に下位のコントローラ90Gは、実行中の動作を継続させる。
【0254】
これにより、下位のコントローラ90Gは、射出成形機2の具体的な動作に関する制御処理を担当する場合が多いため、コントローラ90Gの動作を継続させることで、具体的に、射出成形機2は、実行中の動作を継続させることができる。
【0255】
また、本例では、隣接する階層の二つのコントローラ90F,90Gのうちの上位のコントローラ90Fは、所定の通信周期ごとに、下位のコントローラ90Gに同期信号を送信する。そして、下位のコントローラ90Gは、所定の処理周期で、所定の処理を繰り返すと共に、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとを同期させるように、段階的に、処理周期の割り込みタイミングを補正してよい。
【0256】
これにより、コントローラ90Gは、一回の割り込みタイミングにおける補正量を相対的に小さく制限できる。そのため、コントローラ90Gは、例えば、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとのずれ量を、一回の割り込みタイミングの補正だけで補正し、当該補正対象の処理周期での処理への影響が大きなってしまうような事態を抑制することができる。
【0257】
また、本例では、コントローラ90Gは、同期信号の受信タイミングと、割り込みタイミングとの同期ずれ量が相対的に大きい場合に、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとを同期させるように、段階的に、割り込みタイミングを補正してよい。
【0258】
これにより、コントローラ90Gは、例えば、コントローラ90Fが一時的に停止した後に、再起動し、コントローラ90Fとの同期性が失われたような場合であっても、段階的に、割り込みタイミングを補正し、同期性を回復させることができる。
【0259】
また、本例では、同期信号は、コントローラ90Gの処理周期よりも長い所定の通信周期ごとに受信され、コントローラ90Gは、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとを同期させるように、毎回の処理周期ごとの割り込みタイミングを補正してよい。
【0260】
これにより、コントローラ90Gは、同期信号の通信周期の間に、複数回の処理周期が含まれる場合に、同期補正割り込みタイミングだけでなく、それ以外の割り込みタイミング(予測補正割り込みタイミング)も補正を行う。よって、コントローラ90Gは、各回の補正量を相対的に小さく制限できるため、各回の処理周期での処理への影響を抑制しつつ、コントローラ90Fとの間の同期性を維持させることができる。
【0261】
また、本例では、コントローラ90Gは、前もって、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとの同期ずれ量を計測すると共に、計測した同期ずれ量に基づき、処理周期ごとの補正量を自動設定してよい。そして、コントローラ90Gは、設定した補正量に基づき、毎回の処理周期ごとの割り込みタイミングを補正してよい。
【0262】
これにより、設計段階やメンテナンス段階で、補正量の仕様を決定する必要がないため、設計工数やメンテナンス工数を削減することができる。
【0263】
また、本例では、コントローラ90Gは、毎回の処理周期ごとに割り込みタイミングを補正するときの補正量を所定の許容幅(例えば、同期許容限界値)以下に制限してよい。
【0264】
これにより、コントローラ90Gは、コントローラ90Fとの間の同期性が損なわれてしまったような場合であっても、処理周期ごとの割り込みタイミングの補正量を制限し、処理周期ごとの処理への影響を抑制することができる。
【0265】
<制御装置の第5例>
まず、図11図12図12A図12B)を参照して、本例に係る制御装置90の構成を説明する。
【0266】
図11は、本実施形態に係る射出成形機2の制御装置90の構成の第5例を示す図である。図12Aは、比較例に係るコントローラ90Hc~90Jcの動作の一例を説明するタイミングチャートである。図12Bは、本例に係るコントローラ90H~90Jの動作の一例を説明するタイミングチャートである。
【0267】
図11に示すように、本例に係る制御装置90は、コントローラ90H~90Jを含む。
【0268】
コントローラ90H~90Jは、それぞれ、射出成形機2に関する制御処理を行う。コントローラ90H~90Jは、階層的に接続され、コントローラ90Fが階層的に最上位に位置付けられ、コントローラ90Iが階層的に中位に位置付けられ、コントローラ90Gが階層的に最下位に位置付けられる。
【0269】
図12Bに示すように、最上位のコントローラ90Hは、所定の通信周期(以下、「最上位通信周期」)ごとに、下位側に隣接する中位のコントローラ90Iに同期信号を送信する。
【0270】
中位のコントローラ90Iは、所定の処理周期(以下、「中位処理周期」)で、コントローラ90Jにデータを送信する通信処理を行う。また、図示は省略されるが、コントローラ90Iは、中位処理周期の割り込みタイミングに合わせて、下位側に隣接する最下位のコントローラ90Jに同期信号を送信する。また、コントローラ90Iは、コントローラ90Hからの同期信号の受信タイミングと、中位処理周期の割り込みタイミングとを同期(本例では、一致)させるように、中位処理周期の割り込みタイミングを補正する。
【0271】
最下位のコントローラ90Jは、所定の処理周期(以下、「最下位処理周期」)で、コントローラ90Iからのデータを受信する通信処理を行う。このとき、コントローラ90Jは、中位のコントローラ90Iによるデータの送信タイミングと、データの受信タイミングとが重複しないように、中位のコントローラ90Iにおける割り込みタイミング、つまり、コントローラ90Iからの同期信号の受信タイミングを基準として、割り込み遅延を設定している。また、コントローラ90Jは、コントローラ90Iからの同期信号の受信タイミングと、最下位処理周期の割り込みタイミングとを同期させるように、最下位処理周期のタイミングを補正する。具体的には、コントローラ90Jは、コントローラ90Iからの同期信号の受信タイミングに割り込み遅延分を加算したタイミングと、最下位処理周期の割り込みタイミングとを一致させるように、最下位処理周期のタイミングを補正する。
【0272】
尚、本例では、最上位通信周期、中位処理周期、及び最下位処理周期は、同じである。
【0273】
続いて、図12Aを参照して、比較例に係るコントローラ90Hc~90Jcの動作を説明する。
【0274】
図12Aに示すように、コントローラ90Hcは、本例のコントローラ90Hと同様、所定の通信周期(最上位通信周期)ごとに、下位側に隣接する中位のコントローラ90Icに同期信号を送信する。
【0275】
中位のコントローラ90Icは、本例のコントローラ90Iと同様、所定の処理周期(中位処理周期)で、コントローラ90Jcにデータを送信する通信処理を行う。また、図示は省略されるが、コントローラ90Icは、中位処理周期の割り込みタイミングに合わせて、下位側に隣接する最下位のコントローラ90Jcに同期信号を送信する。また、コントローラ90Iは、コントローラ90Hcからの同期信号の受信タイミングと、中位処理周期の割り込みタイミングとを同期(本比較例では、一致)させるように、中位処理周期の割り込みタイミングを補正する。
【0276】
最下位のコントローラ90Jcは、本例のコントローラ90Jと同様、所定の処理周期(最下位処理周期)で、コントローラ90Icからのデータを受信する通信処理を行う。このとき、コントローラ90Jcは、中位のコントローラ90Icによるデータの送信タイミングと、データの受信タイミングとが重複しないように、中位のコントローラ90Icにおける割り込みタイミング、つまり、コントローラ90Icからの同期信号の受信タイミングを基準として、割り込み遅延を設定している。また、コントローラ90Jcは、コントローラ90Icからの同期信号の受信タイミングと、最下位処理の割り込みタイミングとを同期させるように、最下位処理周期のタイミングを補正する。具体的には、コントローラ90Jcは、コントローラ90Icからの同期信号の受信タイミングに割り込み遅延分を加算したタイミングと、最下位処理周期の割り込みタイミングとを一致させるように、最下位処理周期のタイミングを補正する。
【0277】
ここで、例えば、コントローラ90Hcが何等かの異常で停止した後に復帰し、同期信号の出力を再開する等によって、コントローラ90Hcからの同期信号と、コントローラ90Icの割り込みタイミングとの間に大きなずれが発生してしまう場合がありうる。この場合、コントローラ90Icは、コントローラ90Jcから同期信号を受信すると、同期信号の受信タイミングと、直近の割り込みタイミング(受信時割り込みタイミング)との同期ずれ量を計測する。そして、コントローラ90Icは、受信時割り込みタイミングの次の割り込みタイミング(同期補正割り込みタイミング)を、計測した同期ずれ量分だけ補正する。そのため、本比較例では、補正量がコントローラ90Jcで設定されている割り込み遅延に相当する程度に大きくなり、コントローラ90Icによるデータの送信に対応する通信処理と、コントローラ90Jcによるデータの受信に対応する通信処理とが重複してしまう(図中の太線による囲み部分参照)。よって、本比較例では、コントローラ90Ic,90Jcの間でのデータの同期性が保持できなくなってしまう可能性がある。
【0278】
続いて、図12Bを参照して、本例に係るコントローラ90H~90Jの動作を説明する。
【0279】
本例では、中位のコントローラ90Iは、最上位のコントローラ90Hから同期信号を受信すると、同期信号の受信タイミングと、受信時割り込みタイミングとの同期ずれ量を計測する。そして、コントローラ90Iは、同期ずれ量が相対的に大きい、具体的には、同期許容限界値(例えば、上述の第4例の場合と同様、想定される同期ずれ量の最大値とジッタの最大値との和)を超える場合、毎回の補正量を制限しながら、段階的に、中位処理周期の割り込みタイミングを補正する。また、コントローラ90Iは、補正される中位処理周期の割りタイミングに合わせて、同期信号をコントローラ90Jに送信する。そして、コントローラ90Jは、コントローラ90Jからの同期信号の受信タイミングと、最下位処理周期の割り込みタイミングとを同期させるように、最下位処理周期の割り込みタイミングを補正する。これにより、図12Aの比較例の場合のように、中位処理周期の割り込みタイミングが大きく補正されることがない。そのため、コントローラ90Iによるデータの送信に対応する通信処理と、コントローラ90Jによるデータの受信に対応する通信処理とが重複してしまうような事態を抑制することができる。また、中位処理周期の割り込みタイミングの補正に合わせて、最下位処理周期の割り込みタイミングも同様に補正されるため、コントローラ90I,90Jの同期性を維持したまま、コントローラ90H,90Iの同期性を回復させることができる。つまり、本例では、射出成形機2は、制御装置90に関する異常が発生し、上位のコントローラ90Hが一時停止してしまったような場合であっても、コントローラ90I,90Jの動作に応じて、実行中の動作を継続することができる。このとき、射出成形機2は、上述の第4例の場合と同様、少なくとも実行中の成形品を製造する一連の動作を完了させる態様であってよい。
【0280】
上述の第4例の場合と同様、射出成形機2は、制御装置90に関する異常が発生した場合、異常の種類ごとに、実行中の動作を継続させるか停止させるかを異ならせてもよい。即ち、射出成形機2は、制御装置90に関する異常の種類ごとに、継続対象異常か停止対象異常かを区別してよい。
【0281】
また、上述の第4例の場合と同様、射出成形機2は、制御装置90に関する異常(停止対象異常)が生じた場合、その動作を停止し、ユーザへの停止対象異常の発生(即ち、異常発生に伴う射出成形機2の動作停止)に関する通知、及び停止対象異常が発生したときの異常発生ログ情報の記録の少なくとも一方を行ってもよい。
【0282】
また、上述の第4例の場合と同様、射出成形機2は、制御装置90に関する異常(停止対象異常)が生じた場合、実行中の動作を一時停止して制御装置90の自己診断を行ってもよい。そして、射出成形機2は、診断結果に問題がない場合、その動作を再開する一方、診断結果に問題がある場合、その動作を停止状態に維持してよい。これにより、停止対象異常が生じた場合でも、自己診断の結果に問題がなければ、射出成形機2は、その動作を再開させることができる。
【0283】
また、上述の第4例の場合と同様、射出成形機2は、制御装置90に関する異常が生じた場合、実行中の動作を継続させながら制御装置90の自己診断を行ってもよい。そして、射出成形機2は、診断結果に問題がない場合、その動作をそのまま継続させる一方、診断結果に問題がある場合、その動作を停止してもよい。
【0284】
また、上述の第4例の場合と同様、射出成形機2は、制御装置90に関する異常(継続対象異常)が生じた場合、実行中の動作を継続させて、成形品を製造する一連の動作(成形サイクル)を所定回数だけ繰り返した後に、その動作を停止させてもよい。所定回数は、異常の種類ごとに異なっていてもよい。この場合、射出成形機2は、併せて、ユーザへの異常の発生(異常発生に伴う射出成形機2の動作停止)に関する通知、及び異常が発生したときの異常発生ログ情報の記録の少なくとも一方を行ってもよい。
【0285】
また、上述の第4例の場合と同様、射出成形機2は、制御装置90に関する異常(継続対象異常)が生じた場合、実行中の動作をそのまま継続しながら、ユーザへの異常の発生に関する通知、及び異常が発生したときの異常発生ログ情報の記録の少なくとも一方を行ってもよい。
【0286】
例えば、上述の第4例の場合と同様、制御装置90に関する異常の種類ごとに、その異常の発生時に実行される処理の内容が規定されるテーブル情報(即ち、一覧表)が準備され、制御装置90の記憶媒体92(具体的には、不揮発性の補助記憶装置等)に登録されてよい。
【0287】
また、上述の第4例の場合と同様、射出成形機2(制御装置90)は、入力装置95からの所定の入力に応じて、制御装置90に関する異常の種類ごとに、その発生時に実行される処理の内容を設定してもよい。また、当該設定は、外部装置4に対する所定の入力に応じて、通信ネットワーク6経由で行われてもよい。
【0288】
このように、本例では、射出成形機2は、上述の第4例の場合と同様、制御装置90に異常が発生しても、実行中の動作を継続する。
【0289】
これにより、本例では、制御装置90に異常が発生しても、突然、射出成形機2が停止してしまうような事態を抑制することができる。そのため、射出成形機2は、作業効率の低下を抑制することができる。
【0290】
また、本例では、射出成形機2は、制御装置90に異常が発生しても、少なくとも実行中の成形品を製造する一連の動作を完了させてよい。
【0291】
これにより、作りかけの状態で、射出成形機2が停止してしまうことがないため、射出成形機2は、作りかけの成形品の不要な破棄を回避し、コスト低減を図ることができる。
【0292】
また、本例では、制御装置90は、階層的に接続される複数のコントローラ90H~90Jを含む。そして、射出成形機2は、複数のコントローラ90H~90Jのうちの一のコントローラ90Hに異常が発生しても、コントローラ90Hよりも階層的に下位のコントローラ90I,90Jは、実行中の動作を継続させる。
【0293】
これにより、相対的に下位のコントローラ90I,90Jは、射出成形機2の具体的な動作に関する制御処理を担当する場合が多いため、コントローラ90I,90Jの動作を継続させることで、具体的に、射出成形機2は、実行中の動作を継続させることができる。
【0294】
また、本例では、隣接する階層の二つのコントローラ90H,90Iのうちの上位のコントローラ90Hは、所定の通信周期ごとに、下位のコントローラ90Iに同期信号を送信する。そして、下位のコントローラ90Iは、所定の処理周期で、所定の処理を繰り返すと共に、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとを同期させるように、段階的に、処理周期の割り込みタイミングを補正してよい。
【0295】
これにより、コントローラ90Iは、一回の割り込みタイミングにおける補正量を相対的に小さく制限できる。そのため、コントローラ90Iは、例えば、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとのずれ量を、一回の割り込みタイミングの補正だけで補正し、当該補正対象の処理周期での処理への影響が大きなってしまうような事態を抑制することができる。
【0296】
また、本例では、コントローラ90Iは、同期信号の受信タイミングと、割り込みタイミングとの同期ずれ量が相対的に大きい場合に、同期信号の受信タイミングと、処理周期の割り込みタイミングとを同期させるように、段階的に、割り込みタイミングを補正してよい。
【0297】
これにより、コントローラ90Iは、例えば、コントローラ90Hが一時的に停止した後に、再起動し、コントローラ90Hとの同期性が失われたような場合であっても、段階的に、割り込みタイミングを補正し、同期性を回復させることができる。
【0298】
また、本例では、コントローラ90Iは、毎回の処理周期ごとに割り込みタイミングを補正するときの補正量を所定の許容幅(例えば、同期許容限界値)以下に制限してよい。
【0299】
これにより、コントローラ90Iは、コントローラ90Hとの間の同期性が損なわれてしまったような場合であっても、処理周期ごとの割り込みタイミングの補正量を制限し、処理周期ごとの処理への影響を抑制することができる。
【0300】
[射出成形システムの動作]
次に、射出成形システム1の具体的な動作について説明する。
【0301】
射出成形システム1は、上述の如く、複数の射出成形機2と、外部装置4とを含む。
【0302】
外部装置4(外部制御装置の一例)は、上述の如く、通信ネットワーク6を通じて、複数の射出成形機2のそれぞれに制御情報を送信し、外部から射出成形機2に関する制御を行ってよい。
【0303】
また、外部装置4に代えて、或いは、加えて、複数の射出成形機2のうちの一の射出成形機2(マスタ機)(外部制御装置の一例)は、上述の如く、通信ネットワーク6を通じて他の射出成形機2に制御情報を送信し、外部から他の射出成形機2に関する制御を行ってもよい。
【0304】
<射出成形システムの動作の第1例>
本例では、射出成形システム1は、上述の射出成形機2(制御装置90の動作の第1例)の場合と同様、外部に向けて、射出成形システム1の中で行われる処理の状態に関する通知を行う。当該通知は、例えば、外部装置4に設けられる出力装置(例えば、表示装置や音出力装置等)を通じて行われてよい。これにより、射出成形システム1は、外部装置4の管理者や作業者等に対して、射出成形システム1の中で行われる処理の状態を知らせることができる。また、当該通知は、例えば、射出成形機2の出力装置96(例えば、表示装置や音出力装置等)を通じて行われてもよい。これにより、射出成形システム1は、射出成形機2のユーザに対して、射出成形システム1の中で行われる処理の状態を知らせることができる。また、当該通知は、射出成形システム1のユーザ(例えば、射出成形機2のユーザや外部装置4の管理者及び作業者等)が所持する携帯端末等を通じて行われてもよい。この場合、当該通知に関する情報は、携帯端末に送信され、携帯端末に設けられる出力装置(例えば、ディスプレイやスピーカ等)を通じてユーザに通知されてよい。
【0305】
射出成形システム1が当該通知を行うための制御処理は、例えば、外部装置4やマスタ機としての射出成形機2(制御装置90)によって行われてよい。また、当該通知の前提として、射出成形システム1の処理の状態を判断(把握)するための処理は、外部装置4や射出成形機2、即ち、制御する側で行われてもよいし、射出成形機2(スレーブ機)、即ち、制御される側で行われてもよい。具体的には、射出成形機2の内部の処理の状態を判断するための処理は、射出成形機2(制御装置90)で行われてよい。また、外部装置4の内部の処理の状態を判断するための処理は、外部装置4で行われてよい。
【0306】
例えば、射出成形システム1は、上述の射出成形機2(制御装置90の動作の第1例)の場合と同様、外部に向けて、射出成形システム1の中で行われる通信の状態に関する通知を行ってよい。通知対象の射出成形システム1の中で行われる通信の状態には、射出成形機2の内部で行われる通信の状態、外部装置4の内部で行われる通信の状態、一の射出成形機2(マスタ機)と他の射出成形機2(スレーブ機)との間の通信の状態、及び射出成形機2と外部装置4との間の通信の状態の少なくとも一つが含まれてよい。具体的には、射出成形システム1は、射出成形システム1の中で行われる通信の異常の有無に関する通知を行ってよい。通信の異常には、上述の射出成形機2の場合と同様、射出成形機2の内部、外部装置4の内部、一の射出成形機2(マスタ機)と他の射出成形機2(スレーブ機)との間、射出成形機2及び外部装置4の間等で行われる周期的なデータの通信でデータの同期性が失われる異常が含まれる。また、射出成形システム1は、上述の射出成形機2の場合と同様、例えば、通信周期に関する設定状態に関する情報、通信障害の有無やその発生箇所に関する情報、通信遅延の有無やその程度に関する情報等を通知してもよい。
【0307】
また、例えば、射出成形システム1は、上述の射出成形機2の場合と同様、射出成形システム1の中で行われる全体の処理或いは一部の特定の処理の負荷状態を外部に通知してもよい。
【0308】
具体的には、射出成形システム1は、射出成形システム1の中での全体の処理或いは一部の特定の処理による負荷状態を表す数値やグラフ等の情報をユーザに通知してよい。また、射出成形システム1は、例えば、外部装置4に設けられる入力装置や射出成形機2の入力装置95を通じて、ユーザからの新たな機能の追加や現行機能の拡張に関する操作入力を受け付けてよい。この際、射出成形システム1は、現在の全体の処理の負荷状態に基づき、新たな機能の追加や現行機能の拡張が可能か否かを判断してよい。また、射出成形システム1は、特定の機能の拡張を受け付ける場合に、特定の機能に関する処理の負荷状態に基づき、特定の機能の拡張が可能か否かを判断してもよい。そして、射出成形システム1は、その判断結果をユーザに通知してよい。また、射出成形システム1は、例えば、外部装置4に設けられる入力装置や射出成形機2の入力装置95を通じて、ユーザから処理負荷に影響する動作条件(例えば、サンプリング周期)の設定に関する操作入力を受け付けてよい。この際、射出成形システム1は、現在の全体の処理或いは設定対象の特定の処理の負荷状態に基づき、ユーザが要求する新たな設定内容が成立するか否か、即ち、許容最大負荷と整合するか否かを判断してよい。そして、射出成形システム1は、その判断結果をユーザに通知してよい。
【0309】
例えば、射出成形システム1では、制御対象の射出成形機2の内部で行われる処理、射出成形機2の外部で行われる処理、及び相互間での通信の処理等の連携が図られながら動作する必要がある。そのため、射出成形システム1は、その中での処理の負荷状態や通信の状態等の処理の状態の変化によって、その動作が不安定な方向に変動してしまう可能性がある。そのため、射出成形システム1は、新たな機能の追加、現行機能の拡張、動作条件に関する設定変更等の事後的な変更・更新によって、不安定な方向に変動し、その動作が成立しなくなってしまう可能性がある。
【0310】
これに対して、本例では、射出成形システム1は、外部に向けて、射出成形システム1の中での処理の状態に関する通知を行う。これにより、ユーザは、通知内容を確認しながら、新たな機能の追加、現行機能の拡張、動作条件に関する設定変更等の事後的な射出成形システム1の変更・更新を検討することができる。そのため、射出成形システム1は、ユーザによる安定的な射出成形システム1の変更・更新を支援することができる。
【0311】
<射出成形システムの動作の第2例>
本例では、射出成形システム1は、上述の射出成形機2(制御装置90の動作の第2例、第例)の場合と同様、外部装置4を通じて、射出成形機2の設定及び更新の実施状況に関する情報をユーザに提供してよい。外部装置4には、上述の如く、携帯端末等のユーザ端末が含まれてよい。これにより、外部装置4のユーザは、射出成形機2における設定・更新の実施状況を把握することができる。
【0312】
また、射出成形システム1は、外部装置4に代えて、或いは、加えて、一の射出成形機2(マスタ機)の出力装置96を通じて、他の射出成形機2(スレーブ機)における設定及び更新の実施状況に関する情報をユーザに提供してもよい。これにより、複数の射出成形機2のユーザ(例えば、管理者)は、マスタ機から他のスレーブ機における設定及び更新の実施状況に関する情報を確認することができる。以下、外部装置4を通じて情報提供が行われる場合も一の射出成形機2(マスタ機)を通じて情報提供が行われる場合も同様の態様であるため、外部装置4で情報提供が行われる場合を中心に説明する。
【0313】
外部装置4は、例えば、射出成形機2で所定の処理に関するパラメータ或いはプログラムの設定或いは更新が行われている場合、射出成形機2がパラメータ或いはプログラムの設定或いは更新に関連する動作状態であることを、自身に設けられる表示部に表示させてよい。表示部は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。具体的には、射出成形機2は、所定の処理に関するパラメータ或いはプログラムの設定或いは更新が行われる場合、その旨を表す信号を外部装置4に送信し、外部装置4は、当該信号を受信することで、射出成形機2の動作状態を把握する。これにより、射出成形システム1は、外部装置4のユーザに、射出成形機2がパラメータやプログラムの設定・更新に関連する動作状態にあることを認識させることができる。
【0314】
また、外部装置4は、例えば、ユーザからの所定の入力に応じて、記録された、射出成形機2の設定或いは更新が行われたことを表すログ情報を表示部に表示させてもよい。ログ情報は、射出成形機2から外部装置4に適宜送信(アップロード)されてよい。また、ログ情報は、外部装置4によって記録されてもよい。この場合、射出成形機2は、自機の設定或いは更新に関する処理が行われている場合に、その処理の内容を含む信号を外部装置4に送信し、外部装置4は、当該信号を受信することで、ログ情報を記録してよい。これにより、射出成形システム1は、射出成形機2の更新や設定の実施状況を外部装置4のユーザに認識させることができる。具体的には、外部装置4は、記録されたパラメータの設定処理、パラメータの更新処理、プログラムの設定処理、プログラムの更新処理、設定や更新を伴う起動処理、設定や更新を伴う終了処理等に関するログ情報を時系列的に表示部に表示させてよい。例えば、外部装置4は、これらのログ情報を時系列的に表形式で並べて表示部に表示させてよい。これにより、射出成形機2は、自機の時系列での更新や設定の実施状況をユーザに認識させることができる。また、外部装置4は、複数の射出成形機2における設定及び更新の実施状況に関する情報を同時に視認可能な態様で表示してもよい。具体的には、外部装置4は、複数の射出成形機2について、記録されたパラメータの設定処理、パラメータの更新処理、プログラムの設定処理、プログラムの更新処理、設定や更新を伴う起動処理、設定や更新を伴う終了処理等に関するログ情報を時系列的に表示部に表示させてよい。これにより、外部装置4のユーザ(例えば、複数の射出成形機2の管理者等)は、複数の射出成形機2のそれぞれにおける設定や更新の実施状況を容易に把握することができる。
【0315】
このように、本例では、射出成形システム1は、外部装置4や一の射出成形機2(マスタ機)を通じて、射出成形機2(スレーブ機)における設定及び更新の実施状況をユーザに通知することができる。
【0316】
[変形・変更]
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0317】
例えば、上述した実施形態において、射出成形機2の制御装置90の動作の第1例~第5例は、適宜、組み合わせられてよい。つまり、射出成形機2の制御装置90は、上述の第1例~第5例のうちの少なくとも一つの動作を行う態様であってよい。
【0318】
また、上述した実施形態及び変形例では、射出成形機2に関する制御を行う制御装置90(コントローラ90A~90D,コントローラ90F~90J)の動作について説明したが、同様の動作は、他の所定の機械(例えば、産業機械や産業ロボット等)に関する制御を行う制御装置(コントローラ)で採用されてもよい。
【0319】
また、上述した実施形態及び変形例では、例示的に、射出成形システム1の具体的な動作(第1例及び第2例等)を説明したが、同様の動作は、制御対象の機器(以下、「制御対象機器」)と、制御対象機器と通信可能に接続され、外部から制御対象機器に関する制御を行う外部の制御装置(例えば、クラウドサーバやエッジサーバ等)(以下、「外部制御装置」)とを含む任意のシステムに適用されてもよい。例えば、工場に設置される複数の産業機械や産業ロボット等と、これらを外部から制御する管理装置とを含むシステムに適用されてもよい。また、例えば、複数の車両(自動車)と、これらを外部から制御(監視)する管理装置とを含むシステムに適用されてもよい。また、例えば、発電所と、電力供給を受ける需要家のスマートメータと、発電所に関する制御を行う管理装置とを含む電力供給システムに適用されてもよい。この場合、外部制御装置は、制御対象機器の各種状態に関する情報を取得する装置(例えば、センサ等)(以下、「情報取得装置」)で取得される情報に基づき、制御対象機器に関する制御を行う。情報取得装置は、例えば、制御対象機器に搭載されるセンサ等であってもよいし、制御対象機器を外部から監視するセンサ等であってもよい。外部制御装置は、前者の場合、制御対象機器から情報取得装置で取得される情報を取得(受信)してよく、後者の場合、情報取得装置と通信可能に接続され、情報取得装置から情報を取得(受信)してよい。
【0320】
最後に、本願は、2018年12月12日に出願した日本国特許出願2018-232268号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0321】
1 射出成形システム
2 射出成形機(所定の機械)
4 外部装置
10 型締装置
12 固定プラテン
13 可動プラテン
15 サポートプラテン
20 トグル機構
21 型締モータ
40 射出装置
41 シリンダ
42 ノズル
43 スクリュ
45 計量モータ
46 射出モータ
47 圧力検出器
50 エジェクタ装置
51 エジェクタモータ
52 運動変換機構
53 エジェクタロッド
90 制御装置
90A~90D,90F~90J コントローラ
90E ドライバ
91,91A,91Aa,91Ab,91B CPU(プロセッサ)
92 記憶媒体
92A メモリ装置(メモリ)
93 入力インタフェース
94 出力インタフェース
95 入力装置
96 出力装置(表示装置)
97 記憶装置
98 電源リレー
99A,99B FPGA
991A,991B 起動トリガ出力部
992A,992B カウンタ(計時手段)
993A カウンタラッチ部
994B 送受信部
100 入力デバイス
101,101A,101B エンコーダ
102 ADコンバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B