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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】立軸ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20240415BHJP
   F04D 13/00 20060101ALI20240415BHJP
   F04D 29/44 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
F04D29/66 F
F04D13/00 A
F04D29/44 C
F04D29/44 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021000482
(22)【出願日】2021-01-05
(65)【公開番号】P2022105880
(43)【公開日】2022-07-15
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】兼森 祐治
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-094497(JP,A)
【文献】特開2020-023890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水槽に対して上下方向に延びるように配置され、下端に吸込口を有する筒状のポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングの軸線に沿って配置された回転軸と、
前記回転軸の下端側に取り付けられた羽根車と、
前記吸込口と前記羽根車の間に位置するように前記ポンプケーシング内に設けられ、前記ポンプケーシングの軸線に対する傾斜角度を変更可能な複数の可動翼と、
前記複数の可動翼の前記傾斜角度を変更するための翼角度変更機構と
を備え、
前記複数の可動翼は、第1可動翼と、前記第1可動翼に対して前記ポンプケーシングの周方向に間隔をあけて設けられた第2可動翼とを含み、
前記吸水槽内への水の流入方向において、前記第1可動翼は前記第2可動翼よりも下流側に配置されており、
前記翼角度変更機構は、前記第1可動翼の第1傾斜角度前記第2可動翼の第2傾斜角度よりも大きくなるように、前記複数の可動翼の姿勢を変更可能である、立軸ポンプ。
【請求項2】
前記ポンプケーシング内の前記羽根車上に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する軸受ケーシングと、
前記ポンプケーシングの内周面に固着された外端と、前記軸受ケーシングの外周面に固着された内端とを有し、前記ポンプケーシングの周方向に間隔をあけて設けられた複数のガイドベーンと
を備え、
前記羽根車の羽根の枚数、前記ガイドベーンの枚数、及び前記可動翼の枚数は、以下を満たす、請求項1に記載の立軸ポンプ。
Ng>Nv>Ni
Nv:可動翼の枚数
Ni:羽根車の羽根の枚数
Ng:ガイドベーンの枚数
【請求項3】
吸水槽に対して上下方向に延びるように配置され、下端に吸込口を有する筒状のポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングの軸線に沿って配置された回転軸と、
前記回転軸の下端側に取り付けられた羽根車と、
前記吸込口と前記羽根車の間に位置するように前記ポンプケーシング内に設けられ、前記ポンプケーシングの軸線に対する傾斜角度を変更可能な複数の可動翼と、
前記複数の可動翼の前記傾斜角度を変更するための翼角度変更機構と、
前記ポンプケーシング内の前記羽根車上に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する軸受ケーシングと、
前記ポンプケーシングの内周面に固着された外端と、前記軸受ケーシングの外周面に固着された内端とを有し、前記ポンプケーシングの周方向に間隔をあけて設けられた複数のガイドベーンと
を備え、
前記複数の可動翼は、第1可動翼と、前記第1可動翼に対して前記ポンプケーシングの周方向に間隔をあけて設けられた第2可動翼とを含み、
前記翼角度変更機構は、前記第1可動翼の第1傾斜角度と前記第2可動翼の第2傾斜角度とが異なるように、前記複数の可動翼の姿勢を変更可能であり、
前記羽根車の羽根の枚数、前記ガイドベーンの枚数、及び前記可動翼の枚数は、以下を満たす、立軸ポンプ。
Ng>Nv>Ni
Nv:可動翼の枚数
Ni:羽根車の羽根の枚数
Ng:ガイドベーンの枚数
【請求項4】
前記ポンプケーシングの一部を構成する可動翼ケースを備え、
前記可動翼ケースは、水を排出する揚水路の一部を画定する内筒部と、前記内筒部を取り囲む外筒部とを有し、
前記複数の可動翼はそれぞれ、前記内筒部内に配置され、前記内筒部を径方向の内側から外側へ貫通し、前記外筒部に回転可能に支持された軸部を有し、
前記翼角度変更機構は、前記内筒部と外筒部の間に配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の立軸ポンプ。
【請求項5】
吸水槽に対して上下方向に延びるように配置され、下端に吸込口を有する筒状のポンプケーシングと、
前記ポンプケーシングの軸線に沿って配置された回転軸と、
前記回転軸の下端側に取り付けられた羽根車と、
前記吸込口と前記羽根車の間に位置するように前記ポンプケーシング内に設けられ、前記ポンプケーシングの軸線に対する傾斜角度を変更可能な複数の可動翼と、
前記複数の可動翼の前記傾斜角度を変更するための翼角度変更機構と
を備え、
前記複数の可動翼は、第1可動翼と、前記第1可動翼に対して前記ポンプケーシングの周方向に間隔をあけて設けられた第2可動翼とを含み、
前記翼角度変更機構は、前記第1可動翼の第1傾斜角度と前記第2可動翼の第2傾斜角度とが異なるように、前記複数の可動翼の姿勢を変更可能であり、
前記ポンプケーシングの一部を構成する可動翼ケースを更に備え、
前記可動翼ケースは、水を排出する揚水路の一部を画定する内筒部と、前記内筒部を取り囲む外筒部とを有し、
前記複数の可動翼はそれぞれ、前記内筒部内に配置され、前記内筒部を径方向の内側から外側へ貫通し、前記外筒部に回転可能に支持された軸部を有し、
前記翼角度変更機構は、前記内筒部と外筒部の間に配置されている、立軸ポンプ。
【請求項6】
前記翼角度変更機構は、
前記ポンプケーシングの軸線を中心とする環状の可動リングと、
前記軸部に固着された第1端部と、前記可動リングに回転可能に取り付けられた第2端部とを有する連結部材と、
前記可動リングに対して周方向に間隔をあけて複数取り付けられ、それぞれ前記可動リングの取付部位を前記ポンプケーシングの軸線に沿って個別に移動させる駆動部と
を備える、請求項4又は5に記載の立軸ポンプ。
【請求項7】
前記翼角度変更機構は、
前記ポンプケーシングの軸線を中心とする環状体であり、周方向の所定位置に前記ポンプケーシングの軸線に沿って貫通した第1軸孔を有する可動リングと、
前記軸部に固着された第1端部と、前記可動リングに回転可能に取り付けられた第2端部とを有する第1連結部材と、
前記ポンプケーシングの軸線を中心とし、前記可動リングの上方に間隔をあけて配置された環状体であり、前記第1軸孔と同じ角度位置に設けられた第2軸孔と、前記第2軸孔に対して径方向の対向位置に設けられ、前記可動翼ケースに揺動可能に取り付けられた揺動軸とを有する揺動リングと、
前記可動リングに回転可能に取り付けられた第1端部と、前記揺動リングに回転可能に取り付けられた第2端部とを有する第2連結部材と、
前記可動リングの前記第1軸孔及び前記揺動リングの前記第2軸孔に螺合され、前記揺動リングと可動リングをそれぞれ前記ポンプケーシングの軸線に沿って移動させる駆動軸と
を備える、請求項4又は5に記載の立軸ポンプ。
【請求項8】
前記翼角度変更機構は、
前記軸部にそれぞれ固着された複数の歯車と、
前記複数の歯車それぞれに噛み合う歯を有する環状の可動リングと、
前記ポンプケーシングの軸線を中心として前記可動リングを回転させる駆動部と
を備え、
前記第1可動翼に固着した前記歯車の歯のピッチと前記第2可動翼に固着した前記歯車の歯のピッチとは異なっている、請求項4又は5に記載の立軸ポンプ。
【請求項9】
前記駆動部は、
前記可動リングに接する接線に沿って延びるネジ軸と、
前記ネジ軸に螺合され、前記ポンプケーシングの軸線に沿って延びる軸部を有するナット部材と、
前記可動リングに固着された一端側と、前記ナット部材の前記軸部に回転可能かつスライド可能に取り付けられた他端側とを有する連結部材と
を備える、請求項に記載の立軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立軸ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
立軸ポンプは、ポンプケーシング内に水を吸い上げるための羽根車を備える。特許文献1には、羽根車の排水方向上流側に前置翼が配置されたポンプが開示され、特許文献2には、羽根車の排水方向下流側に後置翼が配置されたポンプが開示されている。特許文献1の前置翼と特許文献2の後置翼はいずれも、ポンプケーシングの軸線に対する傾斜角度を変更可能な可動翼であり、揚水に旋回する流れを付与することでポンプ性能の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-21399号公報
【文献】特開昭57-8400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、立軸ポンプを配置する吸水槽内では、排水によって吸水槽内の水位が低下すると、水と一緒に水面上の空気を吸い込むという空気吸込渦が発生する場合がある。空気吸込渦が発生すると、ポンプケーシングが振動し、運転機能障害の原因になる場合がある。特許文献1,2のポンプでは、前置翼又は後置翼によってポンプ性能は向上できるが、ポンプケーシングの振動や運転機能障害の原因となる空気吸込渦の対策については、何も考慮されていない。
【0005】
本発明は、可動翼によって、ポンプ性能の向上だけでなく、空気吸込渦の発生も抑制できる立軸ポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の立軸ポンプは、吸水槽に対して上下方向に延びるように配置され、下端に吸込口を有する筒状のポンプケーシングと、前記ポンプケーシングの軸線に沿って配置された回転軸と、前記回転軸の下端側に取り付けられた羽根車と、前記吸込口と前記羽根車の間に位置するように前記ポンプケーシング内に設けられ、前記ポンプケーシングの軸線に対する傾斜角度を変更可能な複数の可動翼と、前記複数の可動翼の前記傾斜角度を変更するための翼角度変更機構とを備え、前記複数の可動翼は、第1可動翼と、前記第1可動翼に対して前記ポンプケーシングの周方向に間隔をあけて設けられた第2可動翼とを含み、前記翼角度変更機構は、前記第1可動翼の第1傾斜角度と前記第2可動翼の第2傾斜角度とが異なるように、前記複数の可動翼の姿勢を変更可能である。
本発明の第1態様は、前記吸水槽内への水の流入方向において、前記第1可動翼は前記第2可動翼よりも下流側に配置されており、前記翼角度変更機構は、前記第1可動翼の第1傾斜角度が前記第2可動翼の第2傾斜角度よりも大きくなるように、前記複数の可動翼の姿勢を変更可能である、立軸ポンプを提供する。
本発明の第2態様は、前記ポンプケーシング内の前記羽根車上に配置され、前記回転軸を回転可能に支持する軸受ケーシングと、前記ポンプケーシングの内周面に固着された外端と、前記軸受ケーシングの外周面に固着された内端とを有し、前記ポンプケーシングの周方向に間隔をあけて設けられた複数のガイドベーンとを備え、前記羽根車の羽根の枚数Ni、前記ガイドベーンの枚数Ng、及び前記可動翼の枚数Nvは、Ng>Nv>Niを満たす。
本発明の第3態様は、前記ポンプケーシングの一部を構成する可動翼ケースを備え、前記可動翼ケースは、水を排出する揚水路の一部を画定する内筒部と、前記内筒部を取り囲む外筒部とを有し、前記複数の可動翼はそれぞれ、前記内筒部内に配置され、前記内筒部を径方向の内側から外側へ貫通し、前記外筒部に回転可能に支持された軸部を有し、前記翼角度変更機構は、前記内筒部と外筒部の間に配置されている
【0007】
本態様では、ポンプケーシング内に複数の可動翼が設けられている。これにより、揚水に旋回する流れを適切に付与できるため、揚水の排出性を促進し、ポンプ性能を向上できる。水平に近づくように可動翼の傾斜角度を大きくすると、揚水の旋回は促進できる一方、揚水路を遮る面積が広くなるため、ポンプケーシングの軸方向から見て、可動翼と対応する領域での吸込量は少なくなる。本態様では、複数の可動翼のうち、第1可動翼の第1傾斜角度と第2可動翼の第2傾斜角度は、翼角度変更機構によってそれぞれ異なるように変更可能である。これにより、ポンプケーシングのうち、第1可動翼が配置された領域と第2可動翼が配置された領域とで、水の吸込量を変更できる。よって、第1可動翼及び第2可動翼のうち、空気吸込渦が発生する可能性が高い領域に位置する方の傾斜角度を大きくすることで、その領域での吸込速度を遅くでき、吸水槽内での空気吸込渦の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の立軸ポンプでは、可動翼によって、ポンプ性能の向上だけでなく、空気吸込渦の発生も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る立軸ポンプの断面図。
図2図1の一部を示す断面図。
図3図2のIII-III線で切断した一部を示す断面図。
図4図2の可動翼と翼角度変更機構の概要を示す断面図。
図5A図2の可動翼と翼角度変更機構の概略図。
図5B図5Aとは異なる可動翼と翼角度変更機構の概略図。
図6A図5Aの状態から姿勢を変更した可動翼の概略図。
図6B図5Bの状態から姿勢を変更した可動翼の概略図。
図7A図6Aとは異なる傾斜角度に姿勢を変更した可動翼の概略図。
図7B図6Bとは異なる傾斜角度に姿勢を変更した可動翼の概略図。
図8】第2実施形態に係る立軸ポンプにおける図2と同様の断面図。
図9図8の可動翼と翼角度変更機構の概要を示す断面図。
図10A図8の可動翼と翼角度変更機構の概略図。
図10B図10Aとは異なる可動翼と翼角度変更機構の概略図。
図11A図10Aの状態から姿勢を変更した可動翼の概略図。
図11B図10Bの状態から姿勢を変更した可動翼の概略図。
図12A図11Aとは異なる傾斜角度に姿勢を変更した可動翼の概略図。
図12B図11Bとは異なる傾斜角度に姿勢を変更した可動翼の概略図。
図13】第3実施形態に係る立軸ポンプにおける図2と同様の断面図。
図14図13のXIV-XIV線で切断した一部を示す断面図。
図15図13のXV-XV線で切断した一部を示す断面図。
図16図8の可動翼と翼角度変更機構の概要を示す断面図。
図17A図13の可動翼と翼角度変更機構の概略図。
図17B図17Aとは異なる可動翼と翼角度変更機構の概略図。
図18A図17Aの状態から姿勢を変更した可動翼の概略図。
図18B図17Bの状態から姿勢を変更した可動翼の概略図。
図19A図18Aとは異なる傾斜角度に姿勢を変更した可動翼の概略図。
図19B図18Bとは異なる傾斜角度に姿勢を変更した可動翼の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る立軸ポンプ10を示す。この立軸ポンプ10は、排水機場のポンプ床1に取り付けられ、ポンプ床1の下側に位置する吸水槽2内の水を下流側へ排出する。
【0012】
図1に矢印Fで示すように、この吸水槽2内には、図1において左側から右側へ水が流入する。吸水槽2は、ポンプ床1、底壁3、流入方向Fに対して両側に位置する一対の側壁4、及びこれらの端を塞ぐ端壁5によって画定されている。ポンプ床1には、立軸ポンプ10を取り付けるための貫通孔1aが設けられている。
【0013】
引き続いて図1を参照すると、立軸ポンプ10は、ポンプケーシング12、回転軸27、及び羽根車30を備える。本実施形態では、羽根車30の下方、つまり揚水の排水方向Dにおける羽根車30の上流側に、ポンプ性能の向上を図るための可動翼40を設けられている。
【0014】
ポンプケーシング12は、ポンプ床1の貫通孔1aに上方から差し込まれ、ポンプ床1に固定されている。ポンプケーシング12は、吸水槽2内に上下方向に延びるように配置された揚水管13と、ポンプ床1上に配置された吐出管22とを備える。
【0015】
揚水管13は、揚水管本体14、ベーンケース15、及びベルマウス16を備える筒体である。前置翼が無い立軸ポンプの場合、揚水管本体14、ベーンケース15、及びベルマウス16が、この順で上側から下側へ接続されている。本実施形態では、ベーンケース15とベルマウス16の間に、前置翼としての可動翼40を取り付けた可動翼ケース35が介設されている。
【0016】
揚水管本体14の内部には、揚水管本体14と同軸で筒状の軸受ホルダ17が、ガイドベーン18を介して配設されている。軸受ホルダ17は、内周部に配設された水中軸受28を介して回転軸27を回転可能に支持する。ガイドベーン18は、揚水管13(ポンプケーシング12)の軸線ALを中心として周方向に間隔をあけて複数設けられている。ガイドベーン18は、揚水管本体14の内周面に固着された外端18aと、軸受ホルダ17の外周面に固着された内端18bとを備える。
【0017】
ベーンケース15の内部には、ベーンケース15と同軸で筒状の軸受ケーシング19が、ガイドベーン20を介して配設されている。軸受ケーシング19は、上端と下端に配設された水中軸受28を介して回転軸27を回転可能に支持する。
ガイドベーン20は、揚水管13の軸線ALを中心として周方向に間隔をあけて複数設けられている。ガイドベーン20は、ベーンケース15の内周面に固着された外端20aと、軸受ケーシング19の外周面に固着された内端20bとを備える。
【0018】
ベルマウス16は、上端から下端に向けて次第に拡径した概ね円錐筒状を呈する。ベルマウス16の下端は、吸水槽2内の水を吸い込む吸込口21であり、吸水槽2の底壁3に対して定められた間隔をあけて配置されている。
【0019】
吐出管22は、軸線が90度湾曲した吐出エルボ(曲がり管)23を備え、揚水管13の上端に接続されている。吐出エルボ23の下部には、ポンプ床1に固定するための円環状のベースプレート24が設けられている。但し、ベースプレート24は、揚水管本体14の上部に設けられてもよい。
【0020】
回転軸27は、吐出管22を貫通して揚水管13の軸線ALに沿って配置され、水中軸受28によって回転可能に支持されている。回転軸27は、ポンプケーシング12の内部に配置された内側部27aと、ポンプケーシング12の外部に配置された外側部27bとを備える。内側部27aの下端は、軸受ケーシング19を貫通し、軸受ケーシング19と吸込口21との間に配置されている。外側部27bは、吐出エルボ23から外部へ突出し、図示しない駆動モータに機械的に接続されている。回転軸27のうち吐出エルボ23を貫通した部分は、軸封装置によって水密にシールされている。
【0021】
羽根車30は、軸受ケーシング19の下側に配置され、回転軸27の内側部27aの下端に取り付けられている。羽根車30は、回転軸27に固着されたハブ30aと、ハブ30aから突出した複数の羽根30bとを備える。ハブ30aは、上端から下端に向けて次第に縮径した円錐筒状を呈している。羽根30bは、ハブ30aの外周面から放射状をなすように突出している。
【0022】
駆動モータによって回転軸27が回転されると、回転軸27と一体に羽根車30が図1において矢印Rで示す向きに回転し、揚水路25を通して吸水槽2内の水が下流側へ排出される。揚水路25は、軸受ホルダ17内及び軸受ケーシング19内を除く、ポンプケーシング12と回転軸27の間の空間からなり、水を排出するための流路である。
【0023】
ここで、吸水槽2内への水の流入方向Fにおいて、ポンプケーシング12の下流側では、ポンプケーシング12によって水流が妨げられるため、上流側よりも水位が低くなり、それに伴って水面での流速が早くなる。よって、吸込口21のうち周方向の全領域から均等に水を吸い込んだ場合、吸水槽2のうちのポンプケーシング12と端壁5の間である下流領域2aで、ポンプケーシング12の振動や運転機能障害の原因になる空気吸込渦SVが発生することがある。本実施形態では、この空気吸込渦SVの発生を、ポンプ性能を向上するための可動翼40によって抑制する。
【0024】
以下、図2から図4を参照して、可動翼40及び第1実施形態の翼角度変更機構45について具体的に説明する。
【0025】
図2に示すように、ポンプケーシング12には、ベーンケース15とベルマウス16の間に、ポンプケーシング12の一部を構成する可動翼ケース35が設けられている。可動翼ケース35には、複数の可動翼40と、複数の可動翼40の傾斜角度を一斉に変更するための翼角度変更機構45とが配設されている。
【0026】
図2及び図3を参照すると、可動翼ケース35は、揚水路25の一部を画定する内筒部36と、内筒部36を取り囲む外筒部37とを備える。内筒部36の上端と外筒部37の上端との間は、上壁部38によって塞がれている。内筒部36、外筒部37及び上壁部38は、鋳造によって一体に成形されている。内筒部36の下端と外筒部37の下端との間は、ベルマウス16のフランジ部16aによって液密に塞がれている。但し、内筒部36の下端と外筒部37の下端との間は、別体のカバーによって液密に塞がれてもよい。可動翼ケース35内には、生分解性に優れる長寿命型油圧作動油が充填されている。
【0027】
内筒部36には、可動翼40の軸部42を貫通させる貫通孔36aが設けられている。外筒部37には、可動翼40の軸部42を回転可能に支持する筒状の軸受部37aが設けられている。上壁部38には、後述するアクチュエータ48を配置するための貫通孔38aが設けられている。貫通孔38aは、カバー39によって液密に塞がれている。
【0028】
可動翼40は、内筒部36内に周方向へ間隔をあけて取り付けられることで、吸込口21と羽根車30の間に配置されている。図4を参照すると、本実施形態では4枚の可動翼40が90度間隔をあけて取り付けられている。4枚の可動翼40のうち2枚は、流入方向Fの下流側、かつ、流入方向Fに対して両側に対称に配置されている。残りの2枚は、流入方向Fの上流側、かつ、流入方向Fに対して両側に対称に配置されている。
【0029】
図2及び図3を参照すると、個々の可動翼40は、翼本体41と軸部42を備える。
【0030】
図2及び図4を参照すると、翼本体41は、羽根車30の回転方向Rの後側に位置する基端41aと、羽根車30の回転方向Rの前側に位置する先端41bとを備え、所定の厚みを有する翼型である。翼本体41は、軸部42を中心として回転可能であり、ポンプケーシング12の軸線ALに対する傾斜角度を変更可能である。
【0031】
翼本体41の傾斜角度、つまり可動翼40の傾斜角度は、翼角度変更機構45によって変更される。翼本体41の傾斜角度とは、ポンプケーシング12の軸線ALに対する翼本体41の翼厚中心線CL(図5A参照)の角度として定義される。翼本体41の翼厚中心線CLは、正圧面(吸込口21側の面)から負圧面(羽根車30側の面)までの厚みの中心を基端41aから先端41bまで算出することで得られる。本実施形態の翼厚中心線CLは、直線状を呈しているが、曲線状であってもよい。
【0032】
図2及び図3を参照すると、軸部42は、貫通孔36aを通して内筒部36を径方向の内側から外側へ貫通し、外筒部37の軸受部37aに回転可能に支持されている。軸部42と貫通孔36aの間は、Oリング等のシール部材(図示せず)によってシールされている。
【0033】
可動翼40は、排水処理中には基本的に傾斜角度が変更されない静翼である。一方、羽根車30の羽根30bは動翼であり、排水方向Dにおいて羽根車30の下流側に配置されたガイドベーン20は静翼である。羽根車30の羽根30bの枚数Ni、ガイドベーン20の枚数Ng、及び可動翼40の枚数Nvは、以下の数式を満たすように設定されている。
【0034】
[数1]
Ng>Nv>Ni
Nv:可動翼の枚数
Ni:羽根車の羽根の枚数
Ng:ガイドベーンの枚数
【0035】
上記数式のように、可動翼40の枚数Nvは、羽根車30の羽根30bの枚数Niよりも多く、ガイドベーン20の枚数Ngよりも少ない。これらの枚数Nv,Ni,Ngが同じ場合、揚水通過時に音(翼干渉音)が発生したり、ポンプケーシング12に振動が発生したりすることがある。このような不都合を防止するために、可動翼40の枚数Nv、羽根車30の羽根30bの枚数Ni、及びガイドベーン20の枚数Ngは、上記数式を満たすように設定することが好ましい。本実施形態では、羽根車30の羽根30bの枚数Niが3枚、可動翼40の枚数Nvが4枚、ガイドベーン20の枚数Ngが5枚に設定されている。
【0036】
図2及び図4を参照すると、翼角度変更機構45は、内筒部36と外筒部37の間に配置されている。翼角度変更機構45は、1個の可動リング46、複数の連結部材47、及び複数のアクチュエータ(駆動部)48を備え、複数の可動翼40の姿勢をそれぞれ異なる傾斜角度に変更する。
【0037】
可動リング46は、ポンプケーシング12の軸線ALを中心とする円環状体である。可動リング46は、複数の連結部材47及び複数のアクチュエータ48によって支持され、可動翼40の軸部42の上方にフローティング状態で配置されている。但し、可動リング46は、可動翼40の軸部42の下方に配置されてもよい。
【0038】
連結部材47は、可動翼40毎に設けられており、複数の可動翼40を可動リング46にそれぞれ係着する。連結部材47は、可動翼40の軸部42に固着された第1端部47aと、可動リング46に回転可能に取り付けられた第2端部47bとを備える。可動リング46の周方向において、連結部材47は、軸部42から同じ向きへ突出している。連結部材47の全長、及び可動翼40の軸部42に対する取付角度等を調整によって、可動翼40が回転可能な角度は、30度以上120度以下の範囲に設定されている。
【0039】
アクチュエータ48は、可動リング46に対して周方向に間隔をあけて複数取り付けられており、それぞれ可動リング46の取付部位をポンプケーシング12の軸線ALに沿って個別に移動させる。アクチュエータ48には、油圧シリンダが用いられている。但し、アクチュエータ48は、油圧シリンダに限られず、可動リング46の取付部位を上下動させることが可能な構成であれば、必要に応じて変更が可能である。
【0040】
図5A及び図5Bを参照すると、油圧シリンダからなるアクチュエータ48は、シリンダ本体49と、シリンダ本体49に対して進退可能なロッド50とを備える。シリンダ本体49は、可動翼ケース35の貫通孔38aを通してカバー39内に固着されている。ロッド50の先端には継手部材51が回転可能に取り付けられ、この継手部材51が可動リング46に回転可能に取り付けられている。全てのアクチュエータ48のロッド50の許容ストロークは同じである。
【0041】
図4に最も明瞭に示すように、アクチュエータ48は、本実施形態では120度間隔をあけて3個配置されている。3個のアクチュエータ48のうち1個は、可動リング46のうち流入方向Fの上流側頂部に配置されている。残りの2個は、流入方向Fの下流側の対称位置に配置されている。
【0042】
このように構成した翼角度変更機構45では、複数のアクチュエータ48が可動リング46の取付部位を個別に移動可能である。ロッド50の進退位置、つまり可動リング46の移動量をそれぞれ変更することで、ポンプケーシング12の軸線ALに対して可動リング46を所定角度に傾斜させることができる。これにより、連結部材47を介して可動リング46に連結した複数の可動翼40の傾斜角度を、それぞれ異ならせることができる。
【0043】
次に、第1実施形態の翼角度変更機構55による複数の可動翼40の傾斜角度の変更について説明する。
【0044】
以下の説明では、3個のアクチュエータ48のうち、上流側の1個をアクチュエータ48Aといい、下流側の2個のうち一方(図4において上側)をアクチュエータ48Bといい、下流側の2個のうち他方(図4において下側)をアクチュエータ48Cということがある。また、4枚の可動翼40のうち、流入方向Fの下流側における一方(図4において上側)を可動翼40Aといい、流入方向Fの下流側における他方(図4において下側)を可動翼40Bといい、流入方向Fの上流側における一方(図4において上側)を可動翼40Cといい、流入方向Fの上流側における他方(図4において下側)を可動翼40Cということがある。可動翼40A,40Bは、本発明における第1可動翼であり、可動翼40C,40Dは、本発明における第2可動翼である。
【0045】
図5A及び図5Bは、翼角度変更機構45を中立位置とした状態を示している。図5Aは、流入方向Fの右側から可動翼40A,40Cを見た状態を示し、図5Bは、図5Aと同じ流入方向Fの右側から可動翼40B,40Dを見た状態を示している。以下で説明する図6A図6B、及び図7A及び図7Bも同様である。
【0046】
図5A及び図5Bに示す中立位置では、全てのアクチュエータ48A~48Cのロッド50は、移動可能な許容ストロークの半分の位置まで進出させた中間位置に配置されている。この状態で可動リング46は、水平方向かつポンプケーシング12の軸線ALに対して直交する方向に延び、水平方向に延びる基準線BLと一致している。可動翼40A~40Dはいずれも、翼本体41の翼厚中心線CLがポンプケーシング12の軸線ALに沿って延びる姿勢を呈している。つまり、中立位置では、ポンプケーシング12の軸線ALに対する可動翼40A~40Dの傾斜角度は、いずれも0度である。
【0047】
図5A及び図5Bに示す中立状態から、アクチュエータ48A~48Cのロッド50を全て均等に後退させると、可動リング46は、水平姿勢を維持したまま基準線BLから上側へ移動する。これにより、可動翼40A,40Cの連結部材47は、軸部42を中心とし、図5Aにおいて時計回りr1に同じ回転角度で回転し、可動翼40B,40Dの連結部材47は、軸部42を中心とし、図5Bにおいて反時計回りr2に同じ回転角度で回転する。その結果、可動翼40A~40Dは、対応する連結部材47と同じ角度、かつ、可動リング46の周方向において同じ方向へ回転する。
【0048】
図5A及び図5Bに示す中立状態から、アクチュエータ48A~48Cのロッド50を全て均等に進出させると、可動リング46は、水平姿勢を維持したまま基準線BLから下側へ移動する。これにより、可動翼40A,40Cの連結部材47は、軸部42を中心とし、図5Aにおいて反時計回りr2に同じ回転角度で回転し、可動翼40B,40Dの連結部材47は、軸部42を中心とし、図5Bにおいて時計回りr1に同じ回転角度で回転する。その結果、可動翼40A~40Dは、対応する連結部材47と同じ角度、かつ、可動リング46の周方向において可動リング46を上側へ移動した場合とは逆方向へ回転する。
【0049】
可動翼40A~40Dの傾斜角度は、基準線BLに可動リング46を近づけるに従って小さくなり、基準線BLから可動リング46を離すに従って大きくなる。可動リング46を上側へ移動させた場合、可動翼40A~40Dは回転方向Rに対して逆らう方向に傾斜するため、排出する揚水に対して羽根車30の逆方向(マイナス側)の旋回を付与でき、ポンプ揚程を増加させることができる。可動リング46を下側へ移動させた場合、可動翼40A~40Dは回転方向Rに沿う方向に傾斜するため、排出する揚水に対して同方向(プラス側)の旋回を付与でき、ポンプ揚程を減少させることができる。
【0050】
図6A及び図6Bは、図5A及び図5Bに示す中立位置からアクチュエータ48B,48Cのロッド50を均等に後退させた状態を示している。アクチュエータ48Aについてはロッド50が中間位置に保持されている。この場合、流入方向Fにおいて、可動リング46は上流側から下流側に向けて上側へ傾斜し、可動リング46の上流側は基準線BL上に位置し、可動リング46の下流側は基準線BLよりも上側に位置する。これにより、図6Aに示すように可動翼40A,40Cは時計回りに回転し、図6Bに示すように可動翼40B,40Dは反時計回りに回転する。但し、可動翼40A,40Bの連結部材47の回転角度と可動翼40C,40Dの連結部材47の回転角度とは異なる。その結果、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度も異なり、第1傾斜角度が第2傾斜角度よりも大きくなる。つまり、流入方向Fにおいて、下流側に位置する可動翼40A,40Bの第1傾斜角度が、上流側に位置する可動翼40C,40Dの第2傾斜角度よりも大きくなる。
【0051】
図7A及び図7Bは、図5A及び図5Bに示す中立位置からアクチュエータ48B,48Cのロッド50を均等に進出させた状態を示している。アクチュエータ48Aについてはロッド50が中間位置に保持されている。この場合、流入方向Fにおいて、可動リング46は上流側から下流側に向けて下側へ傾斜し、可動リング46の上流側は基準線BL上に位置し、可動リング46の下流側は基準線BLよりも下側に位置する。これにより、図7Aに示すように可動翼40A,40Cは反時計回りに回転し、図7Bに示すように可動翼40B,40Dは時計回りに回転する。但し、可動翼40A,40Bの連結部材47の回転角度と可動翼40C,40Dの連結部材47の回転角度とは異なる。その結果、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度も異なり、第1傾斜角度が第2傾斜角度よりも大きくなる。つまり、流入方向Fにおいて、下流側に位置する可動翼40A,40Bの第1傾斜角度が、上流側に位置する可動翼40C,40Dの第2傾斜角度よりも大きくなる。
【0052】
以上のように、アクチュエータ48A~48Cのロッド50の進退位置を変更し、基準線BLに対する可動リング46の傾斜方向を変更することで、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度とを異ならせることができる。また、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度との差は、可動リング46の傾斜角度を大きくするに従って大きくでき、可動リング46の傾斜角度を小さくするに従って小さくできる。
【0053】
また、具体的には図示していないが、アクチュエータ48B,48Cのロッド50を異なる進退位置とすることで、可動翼40Aと40B及び可動翼40Cと40Dも、異なる傾斜角度に変更できる。つまり、本実施形態の翼角度変更機構45では、4枚の可動翼40A~40Dの傾斜角度が異なるように、必要に応じて変更が可能である。
【0054】
図6A及び図6B、又は図7A及び図7Bに示すように、ポンプケーシング12の軸線ALに対して可動翼40を傾斜させると、排出する揚水に対して旋回する流れを適切に付与できる。そのため、揚水の排出性を促進し、ポンプ性能を向上できる。
【0055】
水平に近づくように可動翼40の傾斜角度を大きくすると、揚水の旋回は促進できる一方、揚水路25を遮る面積が広くなるため、排水方向Dへの揚水の流れの抵抗になり、吸込量は少なくなる。
【0056】
図6A及び図6B、又は図7A及び図7Bに示すように、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度とを異ならせた場合、揚水路25のうち可動翼40の吸込口21側では、傾斜角度が大きい可動翼40A,40Bと対応する領域の吸込量が、傾斜角度が小さい可動翼40C,40Dと対応する領域の吸込量よりも少なくなる。その結果、吸込口21において、可動翼40A,40Bが位置する下流領域2a側からの水の吸込速度は、可動翼40C,40Dが位置する上流領域2b側からの水の吸込速度よりも遅くなる。よって、水と一緒に水面上の空気を吸い込むという空気吸込渦SVの発生を抑制できる。
【0057】
アクチュエータ48A~48Cは、ポンプ床1上に配置された制御装置(図示せず)にそれぞれ電気的に接続されている。制御装置は、アクチュエータ48A~48Cを駆動し、ロッド50を個別に進退できる。また、可動リング46には、傾斜角度を検出する角度センサと、高さ位置を検出するポジションセンサとを配置することが好ましい。このようにすれば、これらセンサの検出結果に基づいて、複数の可動翼40A~40Dの傾斜角度を同定できるため、操作性を向上できる。
【0058】
オペレータは、可動翼40A~40Dのうち、経験から推測し得る空気吸込渦SVの発生確率が高い領域、又は実際に空気吸込渦SVが発生した領域に最も近い可動翼40の傾斜角度が、ポンプケーシング12の軸線ALに対して大きくなるように、アクチュエータ48A~48Cを操作する。これにより、空気吸込渦SVの発生を効果的に抑制できる。
【0059】
このように構成した第1実施形態の立軸ポンプ10は、以下の特徴を有する。
【0060】
ポンプケーシング12内に複数の可動翼40が設けられている。よって、揚水に旋回する流れを適切に付与できるため、揚水の排出性を促進し、ポンプ性能を向上できる。可動翼40によりポンプ性能曲線を小流量域に変化させることができるため、ポンプのミニフロー量を低減させることも可能である。
【0061】
複数の可動翼40A~40Dの傾斜角度は、翼角度変更機構45によってそれぞれ異なるように変更可能である。よって、空気吸込渦SVが発生する可能性が高い領域に最も近い可動翼40の傾斜角度を大きく設定し、吸込口21からの吸込量を低減して吸込速度を遅くすることで、空気吸込渦SVの発生を抑制できる。
【0062】
本実施形態の立軸ポンプ10では、それぞれ異なる傾斜角度に変更可能な複数の可動翼40によって、ポンプ性能の向上だけでなく、空気吸込渦SVの発生も抑制できる。
【0063】
一般的に、吸水槽2内では、流入方向Fにおけるポンプケーシング12の下流側で空気吸込渦SVが発生し易い。本実施形態では、下流側に位置する第1可動翼40A,40Bの第1傾斜角度が上流側に位置する第2可動翼40C,40Dの第2傾斜角度よりも大きくなるように、翼角度変更機構45によって可動翼40の姿勢を変更可能である。よって、吸水槽2内での空気吸込渦SVの発生を効果的に抑制できる。
【0064】
可動翼40の枚数Nvは、羽根車30の羽根hの枚数Niよりも多く、ガイドベーン20の枚数Ngよりも少ない。よって、可動翼40の枚数Nv、羽根車30の羽根30bの枚数Ni、及びガイドベーン20の枚数Ngが同じ場合に生じ得るポンプケーシング12の振動及び翼干渉音を低減できる。
【0065】
ポンプケーシング12の一部を構成する可動翼ケース35を備え、この可動翼ケース35に複数の可動翼40と翼角度変更機構45が配設されている。よって、既存のポンプケーシングであっても、ベーンケースの下側に可動翼ケース35を後付けすることで、複数の可動翼40及び翼角度変更機構45を簡単に搭載できる。
【0066】
翼角度変更機構45は、環状の可動リング46と、可動翼40と可動リング46を係着する連結部材47と、可動リングの取付部位を個別に移動させる複数のアクチュエータ48とを備える。そのため、複数のアクチュエータ48による可動リング46の移動量をそれぞれ変更することで、ポンプケーシング12の軸線ALに対して可動リング46を所定角度に傾斜させることができる。よって、連結部材47を介して可動リング46に連結した複数の可動翼40それぞれの傾斜角度を、確実に異ならせることができる。また、アクチュエータ(油圧シリンダ)48を用いているため、可動翼40の傾斜角度を変更するための動力を伝達する複雑な伝達機構は必要ない。
【0067】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る立軸ポンプ10の下側部分を示す。第2実施形態の立軸ポンプ10は、翼角度変更機構の構成を変更した点で、第1実施形態の立軸ポンプ10と相違する。立軸ポンプ10のうち図示していない上側部分は、図1に示す第1実施形態の立軸ポンプ10と同様である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0068】
図8を参照すると、第2実施形態の翼角度変更機構55は、可動翼ケース35の内筒部36と外筒部37の間に配置されており、1個の可動リング56、複数の第1連結部材57、1個の揺動リング58、一対の第2連結部材62、及び1個の駆動軸63を備える。操作ロッド64の操作によって、翼角度変更機構55は、第1実施形態と同様に、複数の可動翼40の姿勢をそれぞれ異なる傾斜角度に変更可能である。
【0069】
可動翼ケース35は、第1実施形態と同様に内筒部36、外筒部37及び上壁部38を備え、内筒部36の下端と外筒部37の下端との間は、ベルマウス16のフランジ部16aによって液密に塞がれている。内筒部36には、第1実施形態に示す貫通孔36a(図2参照)の代わりに、可動翼40の軸部42を回転可能に支持する筒状の軸受部36bが設けられている。これに伴い、外筒部37には第1実施形態に示す軸受部37a(図2参照)は設けられていない。上壁部38には、駆動軸63と対応する位置に貫通孔38aが設けられ、この貫通孔38aがカバー39によって塞がれている。貫通孔38aの直下に位置するように、フランジ部16a上には、駆動軸63を回転可能に支持する軸受プレート53が配設されている。
【0070】
可動リング56は、ポンプケーシング12の軸線ALを中心とする円環状体である。可動リング56は、第1連結部材57、第2連結部材62、及び駆動軸63によって支持され、可動翼40の軸部42の上方にフローティング状態で配置されている。但し、可動リング56は、可動翼40の軸部42の下方に配置されてもよい。
【0071】
可動リング56の周方向の所定位置には、ポンプケーシング12の軸線ALに沿って貫通した第1軸孔56aが形成されている。第1軸孔56aの孔壁には、第1のネジピッチP1でネジ溝が形成されている。図9を参照すると、本実施形態では、第1軸孔56aは、吸水槽2における下流側頂部に配置されている。
【0072】
図8及び図10Aを参照すると、第1連結部材57は、第1実施形態の連結部材47(図5A参照)と同様に、可動翼40毎に設けられており、複数の可動翼40を可動リング56にそれぞれ係着する。第1連結部材57は、可動翼40の軸部42に固着された第1端部57aと、可動リング56に回転可能に取り付けられた第2端部57bとを備える。可動リング56の周方向において、第1連結部材57は、軸部42から同じ向きへ突出している。
【0073】
揺動リング58は、ポンプケーシング12の軸線ALを中心とする円環状体であり、可動リング56の上方に間隔をあけて配置されている。揺動リング58の直径は可動リング56の直径と同一である。但し、以下で説明する機能を実現できる範囲であれば、揺動リング58の直径は可動リング56の直径と異なっていてもよい。
【0074】
揺動リング58には、可動リング56の第1軸孔56aと同じ角度位置、つまり第1軸孔56aの直上に位置するように第2軸孔59aが設けられている。第2軸孔59aの孔壁には、第1軸孔56aとは異なる第2のネジピッチP2でネジ溝が形成されている。
【0075】
より具体的には、図10Aに示すように、第2軸孔59aは、外周部に所定曲率の球面凸部59bを備えるナット59に形成されている。ナット59の外周には、球面凸部59bを相補する曲率の球面凹部60aを備えるブッシュ60が配置されている。ブッシュ60には、環状体を二分割した2つ割ブッシュが用いられている。揺動リング58には、ブッシュ60を固着可能な取付孔58aが形成されている。ブッシュ60を介してナット59を取付孔58aに配置することで、揺動リング58に第2軸孔59aが設けられている。ブッシュ60に対してナット59が回動することで、第2軸孔59aは揺動リング58に対して回動可能である。
【0076】
図8及び図9を参照すると、揺動リング58には、第2軸孔59aに対する径方向の対向位置に、可動翼ケース35(上壁部38)に揺動リング58を揺動可能に取り付けるための揺動軸61が設けられている。揺動軸61は、揺動リング58に接する接線(図示せず)に沿って延びている。上壁部38には、揺動軸61を回転可能に保持する軸受部38bが設けられている。
【0077】
図8及び図10Aを参照すると、第2連結部材62は、流入方向Fの両側の対称位置に一対配設され、可動リング56と揺動リング58を係着する。第2連結部材62は、可動リング56に回転可能に取り付けられた第1端部62aと、揺動リング58に回転可能に取り付けられた第2端部62bとを備える。図9に示すように、駆動軸63(第2軸孔59a)から揺動軸61までの距離をLa、揺動軸61から第2連結部材62までの距離をLbとすると、第2連結部材62は、揺動軸61側の四半分(La/4)の位置に設けられている。
【0078】
駆動軸63は、可動リング56と揺動リング58にそれぞれ螺合され、揺動リング58と可動リング56をそれぞれポンプケーシング12の軸線ALに沿って移動させる。より具体的には、駆動軸63は、第1軸孔56aに螺合される第1軸部63aと、第2軸孔59aに螺合される第2軸部63bとを備える。第1軸部63aにはネジピッチP1でネジ山が設けられ、第2軸部63bには第1軸部63aとは異なるネジピッチP2でネジ山が設けられている。第1軸部63aのネジピッチP1と第2軸部63bのネジピッチP2との関係は、以下の数式を満たすように設定されている。
【0079】
[数2]
P1=P2×(Lb/La)
P1:第1軸部のネジピッチ
P2:第2軸部のネジピッチ
La:駆動軸から揺動軸までの距離
Lb:揺動軸から第2連結部材までの距離
【0080】
上記数式に示すように、駆動軸63には、ネジピッチP1,P2が異なる第1軸部63aと第2軸部63bが設けられている。よって、水平方向に延びる基準線BLに対する可動リング56と揺動リング58の移動量を異ならせることができる。第2軸部63bのネジピッチP2よりも第1軸部63aのネジピッチP1を大きくすれば、揺動リング58の移動量に対する可動リング56の移動量は大きくなる。第2軸部63bのネジピッチP2よりも第1軸部63aのネジピッチP1を小さくすれば、揺動リング58の移動量に対する可動リング56の移動量は小さくなる。第2軸部63bのネジピッチP2と第1軸部63aのネジピッチP1を同じにすれば、揺動リング58の移動量と可動リング56の移動量は同じになる。
【0081】
可動リング56及び揺動リング58に対する駆動軸63の組み付けは、例えば次のように行われる。まず、第1軸部63aの全長の中央に可動リング56が位置するように、可動リング56の第1軸孔56aに駆動軸63の第1軸部63aを螺合する。続いて、組み付け状態で基準線BLに対して可動リング56と揺動リング58が平行に位置するように、駆動軸63の第2軸部63bにナット59を螺合する。その後、ナット59の外周にブッシュ60を配置し、この状態でブッシュ60を揺動リング58の取付孔58aに固着する。これにより、図10A及び図10Bに示す中立位置に、可動リング56、揺動リング58及び駆動軸63を組み付けることができる。
【0082】
図8を参照すると、駆動軸63の上端は、可動翼ケース35のカバー39から上方に突出している。駆動軸63の上端には、操作ロッド64に接続する接続部63cが設けられている。これらの接続部分は、カルダンジョイント等の自在継手によって構成され、ベローズ状のシール部材65によってシールされている。
【0083】
操作ロッド64の上端(図示せず)は、ポンプ床1の上側に配置されている。これにより、ポンプ床1上でオペレータが駆動軸63を操作できる。なお、第2実施形態の可動リング56にも傾斜角度を検出する角度センサを配置し、センサの検出結果に基づいて複数の可動翼40A~40Dの傾斜角度を同定可能としている。
【0084】
このように構成した翼角度変更機構55では、操作ロッド64の操作によって、ポンプケーシング12の軸線ALに対して可動リング56を所定角度に傾斜させることができる。これにより、第1連結部材57を介して可動リング56に連結した複数の可動翼40の傾斜角度を、それぞれ異ならせることができる。
【0085】
次に、第2実施形態の翼角度変更機構55による複数の可動翼40の傾斜角度の変更について説明する。
【0086】
図10A及び図10Bは、翼角度変更機構55を中立位置とした状態を示している。この中立位置では、可動リング56は、水平方向かつポンプケーシング12の軸線ALに対して直交する方向に延び、基準線BLと一致している。揺動リング58は、水平方向かつポンプケーシング12の軸線ALに対して直交する方向に延び、基準線BLの上方で平行に位置している。可動翼40A~40Dはいずれも、翼本体41の翼厚中心線CLがポンプケーシング12の軸線ALに沿って延びる姿勢を呈している。つまり、中立位置では、ポンプケーシング12の軸線ALに対する可動翼40A~40Dの傾斜角度は、いずれも0度である。
【0087】
図11A及び図11Bに示すように、図10A及び図10Bに示す中立位置から操作ロッド64を介して駆動軸63を正転させると、揺動軸61を中心として揺動リング58が反時計回り(上向き)に揺動する。また、第2連結部材62の第1端部62aのピンを中心として可動リング56が反時計回りに(上向き)に回動する。その結果、流入方向Fにおいて、可動リング56は上流側から下流側に向けて上側へ傾斜し、可動リング56の上流側は概ね基準線BL上に位置し、可動リング56の下流側は基準線BLよりも上側に位置する。これにより、図11Aに示すように可動翼40A,40Cは時計回りに回転し、図11Bに示すように可動翼40B,40Dは反時計回りに回転する。但し、可動翼40A,40Bの第2連結部材57の回転角度と可動翼40C,40Dの第2連結部材57の回転角度とは異なる。その結果、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度も異なり、第1傾斜角度が第2傾斜角度よりも大きくなる。つまり、流入方向Fにおいて、下流側に位置する可動翼40A,40Bの第1傾斜角度が、上流側に位置する可動翼40C,40Dの第2傾斜角度よりも大きくなる。
【0088】
図12A及び図12Bに示すように、図10A及び図10Bに示す中立位置から操作ロッド64を介して駆動軸63を逆転させると、揺動軸61を中心として揺動リング58が時計回り(下向き)に揺動する。また、第2連結部材62の第1端部62aのピンを中心として可動リング56が時計回りに(下向き)に回動する。その結果、流入方向Fにおいて、可動リング56は上流側から下流側に向けて下側へ傾斜し、可動リング56の上流側は概ね基準線BL上に位置し、可動リング56の下流側は基準線BLよりも下側に位置する。これにより、図12Aに示すように可動翼40A,40Cは反時計回りに回転し、図12Bに示すように可動翼40B,40Dは時計回りに回転する。但し、可動翼40A,40Bの第2連結部材57の回転角度と可動翼40C,40Dの第2連結部材57の回転角度とは異なる。その結果、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度も異なり、第1傾斜角度が第2傾斜角度よりも大きくなる。つまり、流入方向Fにおいて、下流側に位置する可動翼40A,40Bの第1傾斜角度が、上流側に位置する可動翼40C,40Dの第2傾斜角度よりも大きくなる。
【0089】
以上のように、操作ロッド64によって駆動軸63を操作し、基準線BLに対する可動リング56の傾斜方向を変更することで、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度とを異ならせることができる。また、図11A及び図11B、又は図12A及び図12Bに示すように、ポンプケーシング12の軸線ALに対して可動翼40を傾斜させると、排出する揚水に対して旋回する流れを適切に付与できる。そのため、揚水の排出性を促進し、ポンプ性能を向上できる。
【0090】
図11A及び図11B、又は図12A及び図12Bに示すように、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度とを異ならせることができる。そのため、揚水路25のうち可動翼40の吸込口21側では、傾斜角度が大きい可動翼40A,40Bと対応する領域の吸込量が、傾斜角度が小さい可動翼40C,40Dと対応する領域の吸込量よりも少なくなる。その結果、吸込口21において、可動翼40A,40Bが位置する下流領域2a側からの水の吸込速度は、可動翼40C,40Dが位置する上流領域2b側からの水の吸込速度よりも遅くなる。よって、水と一緒に水面上の空気を吸い込むという空気吸込渦SVの発生を抑制できる。
【0091】
このように構成した第2実施形態の立軸ポンプ10は、以下の特徴を有する。
【0092】
翼角度変更機構55は、可動リング56、個々の可動翼40と可動リング56を係着する第1連結部材57、揺動リング58、及び可動リング56と揺動リング58を係着する第2連結部材62、及び揺動リング58と可動リング56を移動させる駆動軸63を備える。これにより、駆動軸63を回転させることで、第2連結部材62を介して連結された可動リング56と揺動リング58が、ポンプケーシング12の軸線ALに対して傾斜する。その結果、第1連結部材57を介して可動リング56に連結した第1可動翼40A,40B及び第2可動翼40C,40Dそれぞれの傾斜角度を、異ならせることができる。よって、第1実施形態と同様に、複数の可動翼40によって、ポンプ性能の向上だけでなく、空気吸込渦SVの発生も抑制できる。
【0093】
(第3実施形態)
図13は、第3実施形態に係る立軸ポンプ10の下側部分を示す。第3実施形態の立軸ポンプ10は、翼角度変更機構の構成を変更した点で、第1実施形態の立軸ポンプ10と相違する。立軸ポンプ10のうち図示していない上側部分は、図1に示す第1実施形態の立軸ポンプ10と同様である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0094】
図13及び図14を参照すると、第3実施形態の翼角度変更機構70は、可動翼ケース35の内筒部36と外筒部37の間に配置されており、複数の歯車71、1個の可動リング72、及び駆動部73を備える。操作ロッド79の操作によって、翼角度変更機構70は、第1実施形態と同様に、複数の可動翼40の姿勢をそれぞれ異なる傾斜角度に変更可能である。
【0095】
可動翼ケース35は、第1実施形態と同様に内筒部36、外筒部37及び上壁部38を備え、内筒部36の下端と外筒部37の下端との間は、ベルマウス16のフランジ部16aによって液密に塞がれている。内筒部36には貫通孔36aが設けられ、外筒部37には軸受部37aが設けられている。上壁部38には貫通孔38aが設けられ、この貫通孔38aがカバー39によって塞がれている。
【0096】
ベルマウス16のフランジ部16aのうち、貫通孔38aの直下に位置する部分には貫通孔16bが設けられている。ベルマウス16には、貫通孔16bを取り囲むようにカバー部16cが設けられている。カバー部16cには、駆動部73の駆動軸74を軸支する軸受部16dが設けられている。
【0097】
図16及び図17Aを参照すると、歯車71は、可動翼40毎に設けられており、複数の可動翼40を可動リング72にそれぞれ係着する。歯車71は、円の一部のみからなる扇形歯車であり、可動翼40の軸部42に固着され、外周部に複数の歯71aを備えている。但し、歯車71には、円形状をなす平歯車を用いてもよい。
【0098】
複数の歯車71のうち、第1可動翼40A,40Bに固着された第1歯車71A,71Bの歯71aは、第1のピッチp1で形成されている。複数の歯車71のうち、第2可動翼40C,40Dに固着された第2歯車71C,71Dの歯71aは、第1歯車71A,71Bとは異なる第2のピッチp2で形成されている。第1のピッチp1は第2のピッチp2よりも大きく、可動リング72の回転による第1歯車71A,71Bの回転角度は、可動リング72の回転による第2可動翼40C,71Dの回転角度よりも大きい。
【0099】
可動リング72は、ポンプケーシング12の軸線ALを中心とする円環状体である。可動リング72は、可動翼ケース35の内筒部36に設けられたガイド部材36cに回転可能に支持されている。ガイド部材36cは、ポンプケーシング12の軸線ALに沿った方向の可動リング72の移動、及びポンプケーシング12の径方向に沿った方向の可動リング72の移動を規制する。
【0100】
可動リング72の上面には、複数の歯車71の歯71aに噛み合う歯72aが形成されている。これらの歯71a,72aの噛み合いによって、可動リング72が回転すると歯車71を介して可動翼40が回転する。
【0101】
図17A及び図17Bを参照すると、駆動部73は、駆動軸74、ネジ軸75、ナット部材77、及び連結部材78を備え、ポンプケーシング12の軸線ALを中心として可動リング72を回転させる。
【0102】
図13を参照すると、駆動軸74は、可動翼ケース35の貫通孔36aを貫通し、ベルマウス16の軸受部16dに回転可能に支持されている。可動リング72よりも下方に位置するように、駆動軸74には傘歯車74aが固着されている。
【0103】
図15及び図17Aを参照すると、ネジ軸75は、可動リング72に接する接線(図示せず)に沿って延びている。ネジ軸75は、可動翼ケース35に設けられた軸受部76に回転可能に支持されている。ネジ軸75の駆動軸74側の端には、傘歯車74aに噛み合う傘歯車75aが固着されている。
【0104】
ナット部材77は、ネジ軸75に螺合されており、ネジ軸75の回転によってネジ軸75に沿って進退可能である。図15及び図17Aを参照すると、ナット部材77には上向きに突出する軸部77aが設けられている。
【0105】
連結部材78は、可動リング72とナット部材77を係着するための旋回クランプである。連結部材78の内側端部(一端側)78aは、可動リング72の下面に固着されている。連結部材78の外側端部(他端側)78bには、下面か上向きに窪み、可動リング72の径方向に延びる挿通溝78cが設けられている。
【0106】
挿通溝78cには、軸部77aが移動可能に挿通される。軸部77aが挿通溝78cの溝壁を押圧することで、ポンプケーシング12の軸線ALを中心として可動リング72が回転する。可動リング72の回転によって、挿通溝78c内を軸部77aが移動(スライド)する。つまり、連結部材78は、ナット部材77に対して回転可能かつスライド可能に取り付けられている。
【0107】
図13を参照すると、駆動軸74の上端には操作ロッド79が固着されている。操作ロッド79の上端(図示せず)は、ポンプ床1の上側に配置されている。これにより、ポンプ床1上でオペレータが駆動部73を操作できる。第3実施形態では、操作ロッド79の回転角度位置によって、複数の可動翼40A~40Dの傾斜角度を同定できる。
【0108】
このように構成した翼角度変更機構70では、操作ロッド79の操作によって、駆動部73を介してポンプケーシング12の軸線ALを中心として可動リング72を回転させることができる。これにより、歯車71を介して可動リング72に係着した複数の可動翼40の傾斜角度を、それぞれ異ならせることができる。
【0109】
次に、第3実施形態の翼角度変更機構55による複数の可動翼40の傾斜角度の変更について説明する。
【0110】
図17A及び図17Bは、翼角度変更機構70を中立位置とした状態を示している。この中立位置では、ナット部材77は、ネジ軸75に対して移動可能な許容ストロークの中間位置に配置されている。歯車71については、許容回転範囲の中間に位置する歯71aが可動リング72の歯72aに噛み合っている。可動翼40A~40Dはいずれも、翼本体41の翼厚中心線CLがポンプケーシング12の軸線ALに沿って延びる姿勢を呈している。つまり、中立位置では、ポンプケーシング12の軸線ALに対する可動翼40A~40Dの傾斜角度は、いずれも0度である。
【0111】
図18A及び図18Bに示すように、図17A及び図17Bに示す中立位置から操作ロッド79を介して駆動軸74を正転させると、傘歯車74a,75aを介してネジ軸75が回転する。これにより、ナット部材77が駆動軸74側へ移動し、ポンプケーシング12の軸方向から見て、可動リング72が反時計回りに回転する。また、図18Aに示すように歯車71A,71Cは時計回りに回転し、図18Bに示すように歯車71B,71Dは反時計回りに回転する。よって、可動翼40A,40Cも時計回りに回転し、可動翼40B,40Dも反時計回りに回転する。但し、歯車71A,71Bと歯車71C,71Dは、それぞれ歯71aのピッチp1,p2が異なるため、それぞれ回転角度が異なる。その結果、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度も異なり、第1傾斜角度が第2傾斜角度よりも大きくなる。つまり、流入方向Fにおいて、下流側に位置する可動翼40A,40Bの第1傾斜角度が、上流側に位置する可動翼40C,40Dの第2傾斜角度よりも大きくなる。
【0112】
図19A及び図19Bに示すように、図17A及び図17Bに示す中立位置から操作ロッド79を介して駆動軸74を逆転させると、傘歯車74a,75aを介してネジ軸75が回転する。これにより、ナット部材77が駆動軸74から離れる側へ移動し、ポンプケーシング12の軸方向から見て、可動リング72が時計回りに回転する。また、図19Aに示すように歯車71A,71Cは反時計回りに回転し、図19Bに示すように歯車71B,71Dは時計回りに回転する。よって、可動翼40A,40Cも反時計回りに回転し、可動翼40B,40Dも時計回りに回転する。但し、歯車71A,71Bと歯車71C,71Dは、それぞれ歯71aのピッチp1,p2が異なるため、それぞれ回転角度が異なる。その結果、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度も異なり、第1傾斜角度が第2傾斜角度よりも大きくなる。つまり、流入方向Fにおいて、下流側に位置する可動翼40A,40Bの第1傾斜角度が、上流側に位置する可動翼40C,40Dの第2傾斜角度よりも大きくなる。
【0113】
以上のように、操作ロッド79によって駆動部73を操作し、可動リング72を回転させることで、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度とを異ならせることができる。また、図18A及び図18B、又は図19A及び図19Bに示すように、ポンプケーシング12の軸線ALに対して可動翼40を傾斜させると、排出する揚水に対して旋回する流れを適切に付与できる。そのため、揚水の排出性を促進し、ポンプ性能を向上できる。
【0114】
図18A及び図18B、又は図19A及び図19Bに示すように、可動翼40A,40Bの第1傾斜角度と可動翼40C,40Dの第2傾斜角度とを異ならせることができる。そのため、揚水路25のうち可動翼40の吸込口21側では、傾斜角度が大きい可動翼40A,40Bと対応する領域の吸込量が、傾斜角度が小さい可動翼40C,40Dと対応する領域の吸込量よりも少なくなる。その結果、吸込口21において、可動翼40A,40Bが位置する下流領域2a側からの水の吸込速度は、可動翼40C,40Dが位置する上流領域2b側からの水の吸込速度よりも遅くなる。よって、水と一緒に水面上の空気を吸い込むという空気吸込渦SVの発生を抑制できる。
【0115】
このように構成した第3実施形態の立軸ポンプ10は、以下の特徴を有する。
【0116】
翼角度変更機構70は、可動翼40に連結された複数の歯車71と、複数の歯車71を回転させる可動リング72と、可動リング72を回転させる駆動部73とを備える。第1可動翼40A,40Bに固着した歯車71A,71Bの歯71aのピッチP1と、第2可動翼40C,40Dに固着した歯車71C,71Dの歯71aのピッチp2とが異なるため、第1可動翼40A,40B及び第2可動翼40C,40Dそれぞれの傾斜角度を異ならせることができる。よって、第1実施形態と同様に、複数の可動翼40によって、ポンプ性能の向上だけでなく、空気吸込渦SVの発生も抑制できる。
【0117】
駆動部73は、ネジ軸75と、ネジ軸75に螺合されたナット部材77と、ナット部材77に回転可能かつスライド可能に取り付けられた連結部材78とを備える。よって、ネジ軸75を回転させることでナット部材77を移動させ、歯車71を介して可動翼40を確実に回転できる。
【0118】
なお、本発明の立軸ポンプ10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0119】
例えば、可動翼40の姿勢を異なる傾斜角度に変更するための翼角度変更機構は、第1実施形態から第3実施形態に示すように、種々の変更が可能である。
【0120】
可動翼40の枚数は、必要に応じて変更が可能である。可動翼40の傾斜角度も、翼角度変更機構の調整によって、必要に応じて変更が可能である。
【符号の説明】
【0121】
1…ポンプ床
1a…貫通孔
2…吸水槽
2a…下流領域
2b…上流領域
3…底壁
4…側壁
5…端壁
10…立軸ポンプ
12…ポンプケーシング
13…揚水管
14…揚水管本体
15…ベーンケース
16…ベルマウス
16a…フランジ部
16b…貫通孔
16c…カバー部
16d…軸受部
17…軸受ホルダ
18…ガイドベーン
18a…外端
18b…内端
19…軸受ケーシング
20…ガイドベーン
20a…外端
20b…内端
21…吸込口
22…吐出管
23…吐出エルボ
24…ベースプレート
25…揚水路
27…回転軸
27a…内側部
27b…外側部
28…水中軸受
30…羽根車
30a…ハブ
30b…羽根
35…可動翼ケース
36…内筒部
36a…貫通孔
36b…軸受部
36c…ガイド部材
37…外筒部
37a…軸受部
38…上壁部
38a…貫通孔
38b…軸受部
39…カバー
40…可動翼
40A,40B…可動翼(第1可動翼)
40C,40D…可動翼(第2可動翼)
41…翼本体
41a…基端
41b…先端
42…軸部
45…翼角度変更機構
46…可動リング
47…連結部材
47a…第1端部
47b…第2端部
48…アクチュエータ
49…シリンダ本体
50…ロッド
51…継手部材
53…軸受プレート
55…翼角度変更機構
56…可動リング
56a…第1軸孔
57…第1連結部材
57a…第1端部
57b…第2端部
58…揺動リング
58a…取付孔
59…ナット
59a…第2軸孔
59b…球面凸部
60…ブッシュ
60a…球面凹部
61…揺動軸
62…第2連結部材
62a…第1端部
62b…第2端部
63…駆動軸
63a…第1軸部
63b…第2軸孔
63c…接続部
64…操作ロッド
65…シール部材
70…翼角度変更機構
71…歯車
71a…歯
72…可動リング
72a…歯
73…駆動部
74…駆動軸
74a…傘歯車
75…ネジ軸
75a…傘歯車
76…軸受部
77…ナット部材
77a…軸部
78…連結部材
78a…内側端部(一端側)
78b…外側端部(他端側)
78c…挿通溝
79…操作ロッド
F…水の流入方向
D…排水方向
SV…空気吸込渦
AL…ポンプケーシングの軸線
BL…基準線
CL…翼厚中心線
R…羽根車の回転方向
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B