(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体回路
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20240415BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240415BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240415BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20240415BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240415BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H01L29/78 655A
H01L29/78 655G
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 654Z
H01L29/78 656C
H01L27/06 102A
H01L29/78 301D
H01L29/78 301G
H01L27/088 C
(21)【出願番号】P 2021046674
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】安原 紀夫
(72)【発明者】
【氏名】岩鍜治 陽子
(72)【発明者】
【氏名】川口 雄介
(72)【発明者】
【氏名】吉川 大輝
(72)【発明者】
【氏名】松下 憲一
(72)【発明者】
【氏名】花形 祥子
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】糸数 裕子
(72)【発明者】
【氏名】河村 圭子
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-155582(JP,A)
【文献】特開2019-012813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739
H01L 29/78
H01L 21/8234
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、
第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、
前記第3の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第4の半導体領域と、
前記第1の面の側に設けられた第1のトレンチと、
前記第1の面の側に設けられた第2のトレンチと、
を含む半導体層と、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記第2の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第4の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のトレンチの中に、前記第1のゲート電極と前記第2の面との間に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に分離された第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の半導体領域との間に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記第2の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に、前記第2のゲート電極と前記第2の面との間に設けられた第2の導電層と、
前記第2の導電層と前記第2の半導体領域との間に設けられた第2の絶縁膜と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1のゲート電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2のゲート電極パッドと、
を備
え、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記第4の半導体領域と接する、半導体装置。
【請求項2】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、
第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、
前記第3の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第4の半導体領域と、
前記第1の面の側に設けられた第1のトレンチと、
前記第1の面の側に設けられた第2のトレンチと、
を含む半導体層と、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記第2の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第4の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のトレンチの中に、前記第1のゲート電極と前記第2の面との間に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に分離された第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の半導体領域との間に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記第2の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に、前記第2のゲート電極と前記第2の面との間に設けられた第2の導電層と、
前記第2の導電層と前記第2の半導体領域との間に設けられた第2の絶縁膜と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1のゲート電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2のゲート電極パッドと、
を備え、
前記第2のゲート絶縁膜は、前記第4の半導体領域と離間
し、
前記第2の導電層は、前記第2のゲート電極パッドに接続された、半導体装置。
【請求項3】
前記第1の導電層は、前記第1の電極に電気的に接続された請求項
1又は請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の導電層は、前記第1の電極に電気的に接続された請求項
1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の導電層は、前記第2のゲート電極パッドに電気的に接続された請求項
1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2の導電層と電気的に接続され、第3のゲート電圧が印加される第3のゲート電極パッドを、更に備える請求項
1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体層の前記第1の導電層は、前記第3のゲート電極パッドに電気的に接続された請求項
6記載の半導体装置。
【請求項8】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、
第1導電形の第1の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、
前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、
前記第3の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第4の半導体領域と、
前記第1の面の側に設けられた第1のトレンチと、
前記第1の面の側に設けられた第2のトレンチと、
を含む半導体層と、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記第2の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第4の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、
前記第1のトレンチの中に、前記第1のゲート電極と前記第2の面との間に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に分離された第1の導電層と、
前記第1の導電層と前記第2の半導体領域との間に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記第2の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第4の半導体領域に接する第2のゲート絶縁膜と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域及び前記第1の導電層に電気的に接続された第1の電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1のゲート電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2のゲート電極パッドと、
を備えた半導体装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項
8いずれか一項記載の半導体装置と、
前記半導体装置を駆動し、前記第1のゲート電圧をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、前記第2のゲート電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させ、前記第2の電圧は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である制御回路と、
を備えた半導体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置及び半導体回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用の半導体装置の一例として、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)がある。IGBTは、例えば、コレクタ電極上に、p形のコレクタ領域、n形のドリフト領域、p形のベース領域が設けられる。そして、p形のベース領域を貫通し、n形のドリフト領域に達するトレンチ内に、ゲート絶縁膜を間に挟んでゲート電極が設けられる。さらに、p形のベース領域表面のトレンチに隣接する領域に、エミッタ電極に接続されるn形のエミッタ領域が設けられる。
【0003】
IGBTでは、ゲート電極に閾値電圧以上の正電圧が印加されることにより、p形のベース領域にチャネルが形成される。そして、n形のエミッタ領域からn形のドリフト領域に電子が注入されると同時に、コレクタ領域からn形のドリフト領域にホールが注入される。これにより、コレクタ電極とエミッタ電極間に電子とホールをキャリアとする電流が流れる。
【0004】
IGBTでは、低消費電力化のために、スイッチング損失を低減することが望まれる。スイッチング損失には、IGBTのターンオン時に発生するターンオン損失と、IGBTのターンオフ時に発生するターンオフ損失がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、スイッチング損失の低減を可能とする半導体装置及び半導体回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体装置は、第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、第1導電形の第1の半導体領域と、前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、前記第3の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第4の半導体領域と、前記第1の面の側に設けられた第1のトレンチと、前記第1の面の側に設けられた第2のトレンチと、を含む半導体層と、前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極と前記第2の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第3の半導体領域との間、前記第1のゲート電極と前記第4の半導体領域との間に設けられ、前記第4の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、前記第1のトレンチの中に、前記第1のゲート電極と前記第2の面との間に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に分離された第1の導電層と、前記第1の導電層と前記第2の半導体領域との間に設けられた第1の絶縁膜と、前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、前記第2のゲート電極と前記第2の半導体領域との間、前記第2のゲート電極と前記第3の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、前記第2のトレンチの中に、前記第2のゲート電極と前記第2の面との間に設けられた第2の導電層と、前記第2の導電層と前記第2の半導体領域との間に設けられた第2の絶縁膜と、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1のゲート電極パッドと、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2のゲート電極パッドと、を備え、前記第2のゲート絶縁膜は、前記第4の半導体領域と接する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】第1の実施形態の半導体装置の駆動方法の一例の説明図。
【
図5】第1の実施形態の半導体装置の変形例の模式断面図。
【
図9】第4の実施形態の半導体装置の駆動方法の説明図。
【
図10】第5の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【
図11】第6の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【
図13】第7の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【
図14】第7の実施形態の半導体装置の第1の駆動方法の説明図。
【
図15】第7の実施形態の半導体装置の第2の駆動方法の説明図。
【
図16】第7の実施形態の半導体装置の変形例の模式断面図。
【
図17】第8の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【
図18】第9の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【
図19】第10の実施形態の半導体装置の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する場合がある。
【0010】
本明細書中、n+形、n形、n-形との表記がある場合、n+形、n形、n-形の順でn形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。また、p+形、p形、p-形の表記がある場合、p+形、p形、p-形の順で、p形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。
【0011】
本明細書中、半導体領域の不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)を用いて測定することが可能である。また、2つの半導体領域の不純物濃度の相対的な大小関係は、例えば、走査型静電容量顕微鏡法(Scanning Capacitance Microscopy:SCM)を用いて判定することが可能である。また、不純物濃度の分布及び絶対値は、例えば、拡がり抵抗測定法(Spreading Resistance Analysis:SRA)を用いて測定することが可能である。SCM及びSRAでは、半導体領域のキャリア濃度の相対的な大小関係や絶対値が求まる。不純物の活性化率を仮定することで、SCM及びSRAの測定結果から、2つの半導体領域の不純物濃度の間の相対的な大小関係、不純物濃度の分布、及び、不純物濃度の絶対値を求めることが可能である。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、第1導電形の第1の半導体領域と、第1の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、第2の半導体領域と第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、第3の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第4の半導体領域と、第1の面の側に設けられた第1のトレンチと、第1の面の側に設けられた第2のトレンチと、を含む半導体層と、第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、第1のゲート電極と第2の半導体領域との間、第1のゲート電極と第3の半導体領域との間、第1のゲート電極と第4の半導体領域との間に設けられ、第4の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、第1のトレンチの中に、第1のゲート電極と第2の面との間に設けられ、第1のゲート電極と電気的に分離された第1の導電層と、第1の導電層と第2の半導体領域との間に設けられた第1の絶縁膜と、第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、第2のゲート電極と第2の半導体領域との間、第2のゲート電極と第3の半導体領域との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、第2のトレンチの中に、第2のゲート電極と第2の面との間に設けられた第2の導電層と、第2の導電層と第2の半導体領域との間に設けられた第2の絶縁膜と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第4の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、半導体層の第2の面の側に設けられ、第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1のゲート電極パッドと、半導体層の第1の面の側に設けられ、第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2のゲート電極パッドと、を備える。
【0013】
第1の実施形態の半導体回路は、上記半導体装置と、上記半導体装置を駆動し、第1のゲート電圧をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、第2のゲート電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させ、第2の電圧は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である制御回路と、を備える。なお、ターンオン電圧及びターンオフ電圧の定義については、第1の実施形態の駆動方法について説明する際に記述する。
【0014】
第1の実施形態の半導体回路は、半導体装置と、半導体装置を制御する制御回路で構成される。
【0015】
第1の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT100である。IGBT100は、ダブルゲート駆動が可能なIGBTである。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0016】
第1の実施形態の制御回路は、ゲートドライバ回路150である。
【0017】
図1は、第1の実施形態の半導体回路の模式図である。
図1は、第1のトレンチ、第2のトレンチ、第3のトレンチ、第1のゲート電極、第2のゲート電極、上部導電層、第1のゲート絶縁膜、第2のゲート絶縁膜、トレンチ絶縁膜、第1のゲート電極パッド、第2のゲート電極パッド、及び、制御回路の配置と接続関係を示す。
図2は、第1の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図3は、第1の実施形態の半導体装置の模式上面図である。
図3は、第1の面P1における上面図である。
図2は、
図3のAA’断面である。
【0018】
第1の実施形態のIGBT100は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁膜41、第2のゲート絶縁膜42、第1の絶縁膜43、第2の絶縁膜44、トレンチ絶縁膜45、第1のゲート電極51、第2のゲート電極52、第1の導電層53、第2の導電層54、上部導電層55、下部導電層56、層間絶縁層60、第1のゲート電極パッド101、及び、第2のゲート電極パッド102を備える。
【0019】
半導体層10の中には、第1のゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、第2のゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、ダミートレンチ23、コレクタ領域28(第1の半導体領域)、ドリフト領域30(第2の半導体領域)、ベース領域32(第3の半導体領域)、エミッタ領域34(第4の半導体領域)、コンタクト領域36が設けられる。
【0020】
エミッタ電極12は、第1の電極の一例である。コレクタ電極14は、第2の電極の一例である。第1のゲートトレンチ21は、第1のトレンチの一例である。第2のゲートトレンチ22は、第2のトレンチの一例である。ダミートレンチ23は、第3のトレンチの一例である。コレクタ領域28は、第1の半導体領域の一例である。ドリフト領域30は、第2の半導体領域の一例である。ベース領域32は、第3の半導体領域の一例である。エミッタ領域34は、第4の半導体領域の一例である。
【0021】
半導体層10は、第1の面P1と、第1の面P1に対向する第2の面P2とを有する。半導体層10は、例えば、単結晶シリコンである。半導体層10の膜厚は、例えば、40μm以上700μm以下である。
【0022】
本明細書中、第1の面P1に平行な一方向を第1の方向と称する。また、第1の面P1に平行で第1の方向に直交する方向を第2の方向と称する。また、第1の面P1の法線方向を第3の方向と称する。また、本明細書中、「深さ」とは、第1の面P1を基準とする第3の方向の距離と定義する。
【0023】
エミッタ電極12は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。エミッタ電極12の少なくとも一部は半導体層10の第1の面P1に接する。エミッタ電極12は、例えば、金属である。
【0024】
エミッタ電極12は、エミッタ領域34及びコンタクト領域36に電気的に接続される。エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。
【0025】
コレクタ電極14は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。コレクタ電極14の少なくとも一部は半導体層10の第2の面P2に接する。コレクタ電極14は、例えば、金属である。
【0026】
コレクタ電極14は、p形のコレクタ領域28に電気的に接続される。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、IGBT100のオフ状態では、例えば、200V以上6500V以下である。
【0027】
コレクタ領域28は、p形の半導体領域である。コレクタ領域28は、コレクタ電極14に電気的に接続される。コレクタ領域28は、コレクタ電極14に接する。
【0028】
コレクタ領域28は、IGBT100のオン状態の際にホールの供給源となる。
【0029】
ドリフト領域30は、n-形の半導体領域である。ドリフト領域30は、コレクタ領域28と第1の面P1との間に設けられる。
【0030】
ドリフト領域30は、IGBT100のオン状態の際にオン電流の経路となる。ドリフト領域30は、IGBT100のオフ状態の際に空乏化し、IGBT100の耐圧を維持する機能を有する。
【0031】
ベース領域32は、p形の半導体領域である。ベース領域32は、ドリフト領域30と第1の面P1との間に設けられる。
【0032】
ベース領域32の深さは、例えば、4μm以下である。ベース領域32の第1のゲート電極51と対向する領域には、IGBT100のオン状態の際に反転層が形成される。ベース領域32の第2のゲート電極52と対向する領域には、IGBT100のオン状態の際に反転層が形成される。ベース領域32に形成される反転層は、トランジスタのチャネル領域として機能する。
【0033】
エミッタ領域34は、n+形の半導体領域である。エミッタ領域34は、ベース領域32と第1の面P1との間に設けられる。エミッタ領域34は、第1の面P1において、第1の方向に延びる。エミッタ領域34は、複数設けられる。
【0034】
複数のエミッタ領域34の少なくとも一つは、第1のゲート絶縁膜41に接する。複数のエミッタ領域34の少なくとも一つは、第2のゲート絶縁膜42に接する。エミッタ領域34のn形不純物濃度は、ドリフト領域30のn形不純物濃度より高い。
【0035】
エミッタ領域34は、エミッタ電極12に電気的に接続される。エミッタ領域34は、エミッタ電極12に接する。エミッタ領域34は、第1のゲート電極51を有するトランジスタのオン状態の際に電子の供給源となる。エミッタ領域34は、第2のゲート電極52を有するトランジスタのオン状態の際に電子の供給源となる。
【0036】
コンタクト領域36は、p+形の半導体領域である。コンタクト領域36は、ベース領域32と第1の面P1との間に設けられる。コンタクト領域36は、第1の面P1において、第1の方向に延びる。
【0037】
コンタクト領域36のp形不純物濃度は、ベース領域32のp形不純物濃度よりも高い。コンタクト領域36は、エミッタ電極12に電気的に接続される。
【0038】
第1のゲートトレンチ21は、
図3に示すように、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延びる。第1のゲートトレンチ21は、ストライプ形状を有する。複数の第1のゲートトレンチ21は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
【0039】
第1のゲートトレンチ21は、ベース領域32を貫通し、ドリフト領域30に達する。第1のゲートトレンチ21の深さは、例えば、4μm以上8μm以下である。
【0040】
第1のゲート電極51は、第1のゲートトレンチ21の中に設けられる。第1のゲート電極51は、例えば、半導体又は金属である。第1のゲート電極51は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンである。第1のゲート電極51は、第1のゲート電極パッド101に電気的に接続される。
【0041】
第1のゲート絶縁膜41は、第1のゲート電極51と半導体層10との間に設けられる。第1のゲート絶縁膜41は、第1のゲート電極51とドリフト領域30との間、第1のゲート電極51とベース領域32との間、及び、第1のゲート電極51とエミッタ領域34との間に設けられる。第1のゲート絶縁膜41は、ドリフト領域30、ベース領域32、及び、エミッタ領域34に接する。第1のゲート絶縁膜41は、例えば、酸化シリコンである。
【0042】
第1の導電層53は、第1のゲートトレンチ21の中に設けられる。第1の導電層53は、第1のゲート電極51と第2の面P2との間に設けられる。第1の導電層53は、例えば、半導体又は金属である。第1の導電層53は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンである。
【0043】
第1の導電層53と第1のゲート電極51との間に、第1のゲート絶縁膜41が設けられる。
【0044】
第1の導電層53は、第1のゲート電極51と電気的に分離される。第1の導電層53は、エミッタ電極12に電気的に接続される。
【0045】
第1の絶縁膜43は、第1の導電層53と半導体層10との間に設けられる。第1の絶縁膜43は、第1の導電層53とドリフト領域30との間に設けられる。第1の絶縁膜43は、ドリフト領域30に接する。第1の絶縁膜43は、例えば、酸化シリコンである。
【0046】
第2のゲートトレンチ22は、
図3に示すように、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延びる。第2のゲートトレンチ22は、ストライプ形状を有する。第2のゲートトレンチ22は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。第2のゲートトレンチ22は、第1のゲートトレンチ21と第1のゲートトレンチ21との間に設けられる。
【0047】
第2のゲートトレンチ22は、ベース領域32を貫通し、ドリフト領域30に達する。第2のゲートトレンチ22の深さは、例えば、4μm以上8μm以下である。
【0048】
第2のゲート電極52は、第2のゲートトレンチ22の中に設けられる。第2のゲート電極52は、例えば、半導体又は金属である。第2のゲート電極52は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン、又は、多結晶シリコンである。第2のゲート電極52は、第2のゲート電極パッド102に電気的に接続される。
【0049】
第2のゲート絶縁膜42は、第2のゲート電極52と半導体層10との間に設けられる。第2のゲート絶縁膜42は、第2のゲート電極52とドリフト領域30との間、第2のゲート電極52とベース領域32との間、及び、第2のゲート電極52とエミッタ領域34との間に設けられる。第2のゲート絶縁膜42は、ドリフト領域30、ベース領域32、及び、エミッタ領域34に接する。第2のゲート絶縁膜42は、例えば、酸化シリコンである。
【0050】
第2の導電層54は、第2のゲートトレンチ22の中に設けられる。第2の導電層54は、第2のゲート電極52と第2の面P2との間に設けられる。第2の導電層54は、例えば、半導体又は金属である。第2の導電層54は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンである。
【0051】
第2の導電層54と第2のゲート電極52との間に、第2のゲート絶縁膜42が設けられる。
【0052】
第2の導電層54は、第2のゲート電極52と電気的に分離される。第2の導電層54は、エミッタ電極12に電気的に接続される。
【0053】
第2の絶縁膜44は、第2の導電層54と半導体層10との間に設けられる。第2の絶縁膜44は、第2の導電層54とドリフト領域30との間に設けられる。第2の絶縁膜44は、ドリフト領域30に接する。第2の絶縁膜44は、例えば、酸化シリコンである。
【0054】
ダミートレンチ23は、
図3に示すように、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延びる。ダミートレンチ23は、ストライプ形状を有する。ダミートレンチ23は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。ダミートレンチ23は、第1のゲートトレンチ21と第2のゲートトレンチ22との間に設けられる。
【0055】
ダミートレンチ23は、ベース領域32を貫通し、ドリフト領域30に達する。ダミートレンチ23の深さは、例えば、4μm以上8μm以下である。
【0056】
上部導電層55は、ダミートレンチ23の中に設けられる。上部導電層55は、例えば、半導体又は金属である。上部導電層55は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン、又は、多結晶シリコンである。上部導電層55は、エミッタ電極12に電気的に接続される。
【0057】
下部導電層56は、ダミートレンチ23の中に設けられる。下部導電層56は、上部導電層55と第2の面P2との間に設けられる。下部導電層56は、例えば、半導体又は金属である。下部導電層56は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン、又は、多結晶シリコンである。下部導電層56は、エミッタ電極12に電気的に接続される。
【0058】
トレンチ絶縁膜45は、上部導電層55と半導体層10との間に設けられる。トレンチ絶縁膜45は、下部導電層56と半導体層10との間に設けられる。トレンチ絶縁膜45は、上部導電層55と下部導電層56との間に設けられる。トレンチ絶縁膜45は、例えば、酸化シリコンである。
【0059】
層間絶縁層60は、第1のゲート電極51とエミッタ電極12との間に設けられる。層間絶縁層60は、第1のゲート電極51とエミッタ電極12との間を電気的に分離する。層間絶縁層60は、第2のゲート電極52とエミッタ電極12との間に設けられる。層間絶縁層60は、第2のゲート電極52とエミッタ電極12との間を電気的に分離する。層間絶縁層60は、上部導電層55とエミッタ電極12との間に設けられる。層間絶縁層60は、例えば、酸化シリコンである。
【0060】
第1のゲート電極パッド101は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第1のゲート電極パッド101は、第1のゲート電極51に電気的に接続される。第1のゲート電極パッド101と第1のゲート電極51は、例えば、図示しない金属配線で接続される。
【0061】
第1のゲート電極パッド101には、第1のゲート電圧(Vg1)が印加される。第1のゲート電極51には、第1のゲート電圧(Vg1)が印加される。
【0062】
第2のゲート電極パッド102は、第2のゲート電極52に電気的に接続される。第2のゲート電極パッド102と第2のゲート電極52は、例えば、図示しない金属配線で接続される。
【0063】
第2のゲート電極パッド102には、第2のゲート電圧(Vg2)が印加される。第2のゲート電極52には、第2のゲート電圧(Vg2)が印加される。
【0064】
ゲートドライバ回路150は、例えば、IGBT100と同一のモジュール内、又は、IGBT100と同一の回路基板上に設けられる。ゲートドライバ回路150は、IGBT100を駆動する機能を有する。
【0065】
ゲートドライバ回路150は、第1のゲート電極パッド101に、所望の第1のゲート電圧(Vg1)を、所望のタイミングで印加する機能を有する。ゲートドライバ回路150は、第2のゲート電極パッド102に、所望の第2のゲート電圧(Vg2)を、所望のタイミングで印加する機能を有する。
【0066】
ゲートドライバ回路150は、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧から第2の電圧に変化させる。第2の電圧は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である。
【0067】
次に、IGBT100の駆動方法について説明する。
【0068】
図4は、第1の実施形態の半導体装置の駆動方法の一例の説明図である。
図4は、第1のゲート電極パッド101に印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、第2のゲート電極パッド102に印加される第2のゲート電圧(Vg2)のタイミングチャートである。
【0069】
第1のゲート電極51を有するトランジスタの構造と、第2のゲート電極52を有するトランジスタの構造は、明確に分離された構造ではない。しかし、動作説明の便宜上、以下、第1のゲート電極51を有するトランジスタ、第2のゲート電極52を有するトランジスタ、という表現をする。
【0070】
IGBT100のオフ状態では、例えば、エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0071】
IGBT100のオフ状態では、第1のゲート電極パッド101には、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。したがって、第1のゲート電極51にもターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0072】
IGBT100のオフ状態では、第1のゲート電極パッド101と第2のゲート電極パッド102に同じターンオフ電圧(Voff)が印加されている。ターンオフ電圧(Voff)は、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態とならない閾値電圧未満の電圧であり、例えば、0V又は負電圧である。
【0073】
オフ状態では、第1のゲート電極51と対向し、第1のゲート絶縁膜41に接するベース領域32には、n形反転層は形成されない。
【0074】
IGBT100のオフ状態では、第2のゲート電極パッド102には、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第2のゲート電圧(Vg2)がターンオフ電圧(Voff)となる。したがって、第2のゲート電極52にもターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0075】
ターンオフ電圧(Voff)は、第2のゲート電極52を有するトランジスタがオン状態とならない閾値電圧未満の電圧であり、例えば、0V又は負電圧である。
【0076】
オフ状態では、第2のゲート電極52と対向し、第2のゲート絶縁膜42に接するベース領域32には、n形反転層は形成されない。
【0077】
IGBT100をオン状態にする際(
図4の時刻t1)に、第1のゲート電極パッド101にターンオン電圧(Von)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオン電圧(Von)となる。第1のゲート電極51にもターンオン電圧(Von)が印加される。
【0078】
ターンオン電圧(Von)とは、第1のゲート電極51を有するトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。ターンオン電圧(Von)は、例えば、15Vである。第1のゲート電極51へのターンオン電圧(Von)の印加により、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態になる。
【0079】
IGBT100をオン状態にする際(
図4の時刻t1)に、第2のゲート電極パッド102には、第1の電圧(V1)が印加される。第2のゲート電圧(Vg2)は、第1の電圧(V1)となる。
【0080】
第1の電圧(V1)は、ターンオン電圧(Von)に等しい。第2のゲート電極52にもターンオン電圧(Von)が印加される。第2のゲート電極52へのターンオン電圧(Von)の印加により、第2のゲート電極52を有するトランジスタがオン状態になる。
【0081】
IGBT100をオフ状態にする際(
図4の時刻t3)に、第1のゲート電極パッド101にターンオフ電圧(Voff)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。
【0082】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前、すなわち時刻t3の前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。第2のゲート電極パッド102に印加する電圧を時刻t2に、第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。
【0083】
第2の電圧(V2)は負電圧である。第2の電圧(V2)は、例えば、-15V以上0V未満である。第2のゲート電極パッド102に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート電極52に第2の電圧(V2)が印加される。第2のゲート電極52に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート電極52を有するトランジスタがオフ状態になり、第2のゲート絶縁膜42に接するエミッタ領域34からの電子の注入が遮断される。
【0084】
また、第2のゲート電極52に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域30にp形反転層が形成される。
【0085】
次に、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0086】
IGBTでは、低消費電力化のために、スイッチング損失を低減することが望まれる。スイッチング損失には、IGBTのターンオン時に発生するターンオン損失と、IGBTのターンオフ時に発生するターンオフ損失がある。
【0087】
ターンオン損失を低減するには、IGBTのコレクタ-ゲート間容量Cgcを低減することが有効である。コレクタ-ゲート間容量Cgcを低減することで、ターンオン時のコレクタ-エミッタ間電圧Vceの低下速度が速くなる。したがって、ターンオン損失が低減する。
【0088】
第1の実施形態のIGBT100では、第1のゲート電極51の下に、エミッタ電位に固定された第1の導電層53が設けられる。第1の導電層53が設けられることで、第1のゲート電極51とコレクタとの間の結合がシールドされる。したがって、IGBT100のコレクタ-ゲート間容量Cgcが低減する。よって、IGBT100のターンオン損失が低減する。
【0089】
IGBTのオン抵抗を低減するためには、オン状態のドリフト領域のキャリア濃度を大きくすることが有効である。一方、IGBTのターンオフ時に、ドリフト領域からのキャリアの排出が遅くなると、ターンオフ時間が長くなり、スイッチング損失が増大する。
【0090】
第1の実施形態のIGBT100は、第1のゲートトレンチ21内の第1のゲート電極51と、第2のゲートトレンチ22内の第2のゲート電極52とを備える。第1のゲート電極51に印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、第2のゲート電極52に印加される第2のゲート電圧(Vg2)は独立に制御される。
【0091】
IGBT100は、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前に、第2のゲート電圧(Vg2)を負電圧にする。第2のゲート電圧(Vg2)を負電圧にすることにより、第2のゲート電極52と対向し、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域30にp形反転層が形成される。
【0092】
ドリフト領域30のホールが、p形反転層を通ってエミッタ電極12へ排出される。したがって、ドリフト領域30の第1の面P1側のキャリア蓄積量が少なくなる。
【0093】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる際(
図4の時刻t3)には、既に、ドリフト領域30の第1の面P1側のキャリア蓄積量が少なくなっている。このため、ターンオフ時間が短くなる。よって、IGBT100のターンオフ損失が低減される。
【0094】
なお、第2の電圧(V2)を負電圧ではなく0V(ゼロボルト)とすることも可能である。第2の電圧(V2)を0Vにした場合も、第2のゲート電極52を有するトランジスタがオフ状態になり、第2のゲート絶縁膜42に接するエミッタ領域34からの電子の注入が遮断される。したがって、ドリフト領域30の第1の面P1側のキャリア蓄積量が少なくなっているため、ターンオフ時間が短くなる。よって、IGBT100のターンオフ損失が低減される。
【0095】
図5は、第1の実施形態の半導体装置の変形例の模式断面図である。変形例のIGBT110は、半導体層10の中にダミートレンチ23が設けられない点で、第1の実施形態のIGBT100と異なる。
【0096】
図5には、コンタクト領域36は図示されていない。コンタクト領域36は、例えば、エミッタ領域34の第1の方向に設けられる。
【0097】
以上、第1の実施形態のIGBT及び変形例のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。また、第1の実施形態のIGBTを含んだ半導体回路、及び変形例のIGBTを含んだ半導体回路によれば、スイッチング損失の低減が可能となる。
【0098】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、第2の導電層は、第2のゲート電極パッドに電気的に接続された点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0099】
第2の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT200である。
【0100】
図6は、第2の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0101】
IGBT200の第2の導電層54は、第2のゲート電極パッド102に電気的に接続される。第2の導電層54は、第2のゲート電極52と電気的に接続される。
【0102】
IGBT200をオフ状態にする際(
図4の時刻t3)に、第1のゲート電極パッド101にターンオフ電圧(Voff)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。
【0103】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前、すなわち時刻t3の前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。第2のゲート電極パッド102に印加する電圧を時刻t2に、第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。
【0104】
第2の電圧(V2)は負電圧である。第2の電圧(V2)は、例えば、-15V以上0V未満である。第2のゲート電極パッド102に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート電極52及び第2の導電層54に第2の電圧(V2)が印加される。
【0105】
第2のゲート電極52及び第2の導電層54に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域30、及び、第2の絶縁膜44に接するドリフト領域30にp形反転層が形成される。
【0106】
このため、IGBT200では、IGBT100と比較して、第2のゲート電極52に第2の電圧(V2)が印加された際に、ドリフト領域30に形成されるp形反転層の範囲が広がる。したがって、第1の実施形態のIGBT100と比較して、ターンオフ動作時のホールのエミッタ電極12への排出が促進される。よって、IGBT200によれば、ターンオフ損失を更に低減することが可能となる。
【0107】
以上、第2の実施形態のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。
【0108】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層であって、第1導電形の第1の半導体領域と、第1の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、第2の半導体領域と第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、第3の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第4の半導体領域と、第1の面の側に設けられた第1のトレンチと、第1の面の側に設けられた第2のトレンチと、を含む半導体層と、第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、第1のゲート電極と第2の半導体領域との間、第1のゲート電極と第3の半導体領域との間、第1のゲート電極と第4の半導体領域との間に設けられ、第4の半導体領域に接する第1のゲート絶縁膜と、第1のトレンチの中に、第1のゲート電極と第2の面との間に設けられ、第1のゲート電極と電気的に分離された第1の導電層と、第1の導電層と第2の半導体領域との間に設けられた第1の絶縁膜と、第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、第2のゲート電極と第2の半導体領域との間、第2のゲート電極と第3の半導体領域との間、第2のゲート電極と第4の半導体領域との間に設けられ、第4の半導体領域に接する第2のゲート絶縁膜と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第4の半導体領域及び第1の導電層に電気的に接続された第1の電極と、半導体層の第2の面の側に設けられ、第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1のゲート電極パッドと、半導体層の第1の面の側に設けられ、第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2のゲート電極パッドと、を備える。第3の実施形態の半導体装置及び半導体回路は、第2のトレンチの中に、第2の導電層が設けられない点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0109】
第3の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT300である。
【0110】
図7は、第3の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0111】
IGBT300は、第2のゲートトレンチ22の中に、IGBT100の第2の導電層54に相当する導電層が設けられない。
【0112】
IGBT300のターンオフ動作時に、第2のゲート電極52に第2の電圧(V2)が印加された際に、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域30の面積が第1の実施形態のIGBT100と比較して広がる。したがって、IGBT300では、IGBT100と比較して、第2のゲート電極52に第2の電圧(V2)が印加された際に、ドリフト領域30に形成されるp形反転層の範囲が広がる。
【0113】
したがって、第1の実施形態のIGBT100と比較して、ターンオフ動作時のホールのエミッタ電極12への排出が促進される。よって、IGBT300によれば、スイッチング損失を更に低減することが可能となる。
【0114】
以上、第3の実施形態のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。
【0115】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体装置は、第2のゲート絶縁膜は、第4の半導体領域と離間する点で、第2の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1又は第2の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0116】
第4の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT400である。
【0117】
図8は、第4の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0118】
IGBT400の第2のゲートトレンチ22とダミートレンチ23との間には、エミッタ領域34が設けられない。第2のゲート絶縁膜42はエミッタ領域34と離間する。第2のゲート絶縁膜42はエミッタ領域34と接しない。
【0119】
IGBT400の第2の導電層54は、第2のゲート電極パッド102に電気的に接続される。第2の導電層54は、第2のゲート電極52と電気的に接続される。
【0120】
図9は、第4の実施形態の半導体装置の駆動方法の説明図である。
図9は、第1のゲート電極パッド101に印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、第2のゲート電極パッド102に印加される第2のゲート電圧(Vg2)のタイミングチャートである。
【0121】
IGBT400のオフ状態では、例えば、エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0122】
IGBT400のオフ状態では、第1のゲート電極パッド101には、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。したがって、第1のゲート電極51にもターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0123】
ターンオフ電圧(Voff)は、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態とならない閾値電圧未満の電圧であり、例えば、0V又は負電圧である。
【0124】
オフ状態では、第1のゲート電極51と対向し、第1のゲート絶縁膜41に接するベース領域32には、n形反転層は形成されない。
【0125】
IGBT400のオフ状態では、第2のゲート電極パッド102には、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第2のゲート電極52にも、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0126】
IGBT400をオン状態にする際(
図9の時刻t1)に、第1のゲート電極パッド101にターンオン電圧(Von)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオン電圧(Von)となる。第1のゲート電極51にもターンオン電圧(Von)が印加される。
【0127】
ターンオン電圧(Von)とは、第1のゲート電極51を有するトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。ターンオン電圧(Von)は、例えば、15Vである。第1のゲート電極51へのターンオン電圧(Von)の印加により、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態になる。
【0128】
IGBT400をオン状態にする際(
図9の時刻t1)、第2のゲート電極パッド102に印加されている電圧は、第1の電圧(V1)である。第2のゲート電圧(Vg2)は、第1の電圧(V1)となる。
【0129】
第1の電圧(V1)は、ターンオフ電圧(Voff)である。IGBT400がオン状態の際も、第2のゲート電極パッド102に印加される電圧は、ターンオフ電圧(Voff)のままに保たれる。第2のゲート電極52に印加される電圧も、ターンオフ電圧(Voff)のままに保たれる。第1の電圧(V1)に印加されるターンオフ電圧(Voff)は負電圧でないことが好ましい。
【0130】
IGBT400をオフ状態にする際(
図9の時刻t3)に、第1のゲート電極パッド101にターンオフ電圧(Voff)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。
【0131】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前、すなわち時刻t3の前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。第2のゲート電極パッド102に印加する電圧を時刻t2に、第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。
【0132】
第2の電圧(V2)は負電圧である。第2の電圧(V2)は、例えば、-15V以上0V未満である。第2のゲート電極パッド102に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域30にp形反転層が形成される。
【0133】
ドリフト領域30のホールが、このp形反転層を通ってエミッタ電極12へ排出される。よって、IGBT400のターンオフ損失が低減される。
【0134】
また、IGBT400では、ターンオン動作時に、第2のゲート電極パッド102には、ターン電圧(Von)を印加しない。したがって、第2のゲート電極52は、ターンオフ電圧(Voff)である0Vに保たれる。
【0135】
このため、第2の実施形態のIGBT200と比較して、IGBTのコレクタ-ゲート間容量Cgcが低減される。よって、IGBT400によれば、ターンオン損失が更に低減され、スイッチング損失を更に低減することが可能となる。
【0136】
以上、第4の実施形態のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。
【0137】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の半導体装置は、2つの第3のトレンチの間に複数の第2のトレンチが設けられる点で、第3の実施形態の半導体装置と異なる。また、第5の実施形態の半導体装置は、第2のトレンチと第3のトレンチとの間の距離が第1のトレンチと第3のトレンチとの間の距離よりも小さく、第2のトレンチと第2のトレンチとの間の距離が第1のトレンチと第3のトレンチとの間の距離よりも小さい点で、第3の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1又は第3の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0138】
第5の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT500である。
【0139】
図10は、第5の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0140】
IGBT500は、2つのダミートレンチ23の間に3つの第2のゲートトレンチ22が設けられる。
【0141】
第2のゲートトレンチ22とダミートレンチ23との間の距離d1が第1のゲートトレンチ21とダミートレンチ23との間の距離d2よりも小さい。また、第2のゲートトレンチ22と第2のゲートトレンチ22との間の距離d3が第1のゲートトレンチ21とダミートレンチ23との間の距離d2よりも小さい。
【0142】
距離d1が距離d2よりも小さく、距離d3が距離d2よりも小さいことで、ホールのエミッタ電極12への排出が抑制される。したがって、IGBTがオン状態の時のキャリア濃度が大きくなる。よって、IGBT500のオン抵抗が低減する。
【0143】
以上、第5の実施形態のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。また、第5の実施形態のIGBTによれば、オン抵抗が低減する。
【0144】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の半導体装置は、2つの第3のトレンチの間に複数の第2のトレンチが設けられる点で、第3の実施形態の半導体装置と異なる。また、第6の実施形態の半導体装置は、第2のトレンチの深さが第1のトレンチの深さよりも深く、第2のトレンチの深さが第3のトレンチの深さよりも深い点で、第3の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1又は第3の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0145】
第6の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT600である。
【0146】
図11は、第6の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0147】
第2のゲートトレンチ22の深さは、第1のゲートトレンチ21の深さよりも深い。また、第2のゲートトレンチ22の深さは、ダミートレンチ23の深さよりも深い。
【0148】
第2のゲートトレンチ22の深さが第1のゲートトレンチ21の深さよりも深く、かつ、第2のゲートトレンチ22の深さがダミートレンチ23の深さよりも深いことで、ホールのエミッタ電極12への排出が抑制される。したがって、IGBTがオン状態の時のキャリア濃度が大きくなる。よって、IGBT600のオン抵抗が低減する。
【0149】
以上、第6の実施形態のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。また、第6の実施形態のIGBTによれば、オン抵抗が低減する。
【0150】
(第7の実施形態)
第7の実施形態の半導体装置は、半導体層の第1の面の側に設けられ、第2の導電層と電気的に接続され、第3のゲート電圧が印加される第3のゲート電極パッドを、更に備える点で、第1の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0151】
第7の実施形態の半導体回路は、半導体装置と、半導体装置を制御する制御回路で構成される。
【0152】
第7の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT700である。IGBT700は、ダブルゲート駆動が可能なIGBTである。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0153】
第7の実施形態の制御回路は、ゲートドライバ回路250である。
【0154】
図12は、第7の実施形態の半導体回路の模式図である。
図12は、第1のトレンチ、第2のトレンチ、第3のトレンチ、第1のゲート電極、第2のゲート電極、第2の導電層、上部導電層、第1のゲート絶縁膜、第2のゲート絶縁膜、トレンチ絶縁膜、第1のゲート電極パッド、第2のゲート電極パッド、第3のゲート電極パッド、及び、制御回路の配置と接続関係を示す。
図13は、第7の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0155】
第7の実施形態のIGBT700は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、第1のゲート絶縁膜41、第2のゲート絶縁膜42、第1の絶縁膜43、第2の絶縁膜44、トレンチ絶縁膜45、第1のゲート電極51、第2のゲート電極52、第1の導電層53、第2の導電層54、上部導電層55、下部導電層56、層間絶縁層60、第1のゲート電極パッド101、第2のゲート電極パッド102、及び、第3のゲート電極パッド103を備える。
【0156】
半導体層10の中には、第1のゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、第2のゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、ダミートレンチ23(第3のトレンチ)、コレクタ領域28(第1の半導体領域)、ドリフト領域30(第2の半導体領域)、ベース領域32(第3の半導体領域)、エミッタ領域34(第4の半導体領域)、コンタクト領域36が設けられる。
【0157】
第2の導電層54は、第2のゲート電極52と電気的に分離される。第2の導電層54は、第3のゲート電極パッド103に電気的に接続される。
【0158】
第3のゲート電極パッド103は、第2の導電層54に電気的に接続される。第3のゲート電極パッド103と第2の導電層54は、例えば、図示しない金属配線で接続される。第3のゲート電極パッド103には、第3のゲート電圧(Vg3)が印加される。第2の導電層54に第3のゲート電圧(Vg3)が印加される。
【0159】
ゲートドライバ回路250は、例えば、IGBT700と同一のモジュール内、又は、IGBT700と同一の回路基板上に設けられる。ゲートドライバ回路250は、IGBT700を駆動する機能を有する。
【0160】
ゲートドライバ回路250は、第1のゲート電極パッド101に、所望の第1のゲート電圧(Vg1)を、所望のタイミングで印加する機能を有する。ゲートドライバ回路250は、第2のゲート電極パッド102に、所望の第2のゲート電圧(Vg2)を、所望のタイミングで印加する機能を有する。ゲートドライバ回路250は、第3のゲート電極パッド103に、所望の第3のゲート電圧(Vg3)を、所望のタイミングで印加する機能を有する。
【0161】
ゲートドライバ回路250は、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。第2の電圧(V2)は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である。
【0162】
ゲートドライバ回路250は、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオフ電圧(Voff)からターンオン電圧(Von)に変化させた後に、第3のゲート電圧(Vg3)を第3の電圧(V3)に制御する。第3の電圧(V3)の絶対値は、第1の電圧(V1)の絶対値よりも小さい。第3の電圧(V3)は、例えば、ターンオフ電圧(Voff)である。
【0163】
ゲートドライバ回路250は、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオフ電圧(Voff)からターンオン電圧(Von)に変化させた後、所定の時間経過後に、第3のゲート電圧(Vg3)を第4の電圧(V4)に制御する。
【0164】
第4の電圧(V4)は、例えば、第3の電圧(V3)に等しい。第4の電圧(V4)は、例えば、ターンオフ電圧(Voff)である。
【0165】
第4の電圧(V4)の絶対値は、例えば、第3の電圧(V3)よりも大きい。第4の電圧(V4)は、例えば、ターンオン電圧(Von)に等しい。
【0166】
第4の電圧(V4)は、例えば、第1の電圧(V1)に等しい。第4の電圧(V4)は、第1導電形がp形の場合には0V(ゼロボルト)又は正電圧であり、第1導電形がn形の場合には0V(ゼロボルト)又は負電圧である。
【0167】
ゲートドライバ回路250は、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、第3のゲート電圧(Vg3)を第4の電圧(V4)から第5の電圧(V5)に変化させる。第5の電圧(V5)は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である。第5の電圧(V5)は、例えば、第2の電圧(V2)と等しい。
【0168】
次に、IGBT700の駆動方法について説明する。
【0169】
図14は、第7の実施形態の半導体装置の第1の駆動方法の説明図である。
図14は、第1のゲート電極パッド101に印加される第1のゲート電圧(Vg1)、第2のゲート電極パッド102に印加される第2のゲート電圧(Vg2)、及び、第3のゲート電極パッド103に印加される第3のゲート電圧(Vg3)のタイミングチャートである。
【0170】
第1のゲート電極51を有するトランジスタの構造と、第2のゲート電極52を有するトランジスタの構造は、明確に分離された構造ではない。しかし、動作説明の便宜上、以下、第1のゲート電極51を有するトランジスタ、第2のゲート電極52を有するトランジスタ、という表現をする。
【0171】
IGBT700のオフ状態では、例えば、エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0172】
IGBT700のオフ状態では、第1のゲート電極パッド101には、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。したがって、第1のゲート電極51にもターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0173】
ターンオフ電圧(Voff)は、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態とならない閾値電圧未満の電圧であり、例えば、0V又は負電圧である。
【0174】
オフ状態では、第1のゲート電極51と対向し、第1のゲート絶縁膜41に接するベース領域32には、n形反転層は形成されない。
【0175】
IGBT700のオフ状態では、第2のゲート電極パッド102には、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第2のゲート電圧(Vg2)がターンオフ電圧(Voff)となる。したがって、第2のゲート電極52にもターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0176】
ターンオフ電圧(Voff)は、第2のゲート電極52を有するトランジスタがオン状態とならない閾値電圧未満の電圧であり、例えば、0V又は負電圧である。
【0177】
オフ状態では、第2のゲート電極52と対向し、第2のゲート絶縁膜42に接するベース領域32には、n形反転層は形成されない。
【0178】
IGBT700のオフ状態では、第3のゲート電極パッド103には、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第3のゲート電圧(Vg3)がターンオフ電圧(Voff)となる。したがって、第2の導電層54にもターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0179】
IGBT700をオン状態にする際(
図14の時刻t1)に、第1のゲート電極パッド101にターンオン電圧(Von)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオン電圧(Von)となる。第1のゲート電極51にもターンオン電圧(Von)が印加される。
【0180】
ターンオン電圧(Von)とは、第1のゲート電極51を有するトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。ターンオン電圧(Von)は、例えば、15Vである。第1のゲート電極51へのターンオン電圧(Von)の印加により、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態になる。
【0181】
IGBT700をオン状態にする際(
図14の時刻t1)に、第2のゲート電極パッド102には、第1の電圧(V1)が印加される。第2のゲート電圧(Vg2)は、第1の電圧(V1)となる。
【0182】
第1の電圧(V1)は、ターンオン電圧(Von)に等しい。第2のゲート電極52にもターンオン電圧(Von)が印加される。第2のゲート電極52へのターンオン電圧(Von)の印加により、第2のゲート電極52を有するトランジスタがオン状態になる。
【0183】
IGBT700をオン状態にした後(
図14の時刻t1以降)に、第3のゲート電極パッド103には、第3の電圧(V3)が印加される。第1のゲート電圧(Vg1)をターンオフ電圧(Voff)からターンオン電圧(Von)に変化させた後に、第3のゲート電圧(Vg3)は、第3の電圧(V3)に制御される。第3の電圧(V3)は、ターンオフ電圧(Voff)に等しい。
【0184】
IGBT700をオン状態にした後、所定の時間経過後、第3のゲート電極パッド103には、第4の電圧(V4)が印加される。第4の電圧(V4)は第3の電圧(V3)に等しい。
【0185】
IGBT700をオフ状態にする際(
図14の時刻t3)に、第1のゲート電極パッド101にターンオフ電圧(Voff)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。
【0186】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前、すなわち時刻t3の前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。第2のゲート電極パッド102に印加する電圧を時刻t2に、第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。
【0187】
第2の電圧(V2)は負電圧である。第2の電圧(V2)は、例えば、-15V以上0V未満である。第2のゲート電極パッド102に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート電極52に第2の電圧(V2)が印加される。第2のゲート電極52に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域30にp形反転層が形成される。
【0188】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前、すなわち時刻t3の前に、第3のゲート電圧(Vg3)を第4の電圧(V4)から第5の電圧(V5)に変化させる。第3のゲート電極パッド103に印加する電圧を時刻t2に、第4の電圧(V4)から第5の電圧(V5)に変化させる。
【0189】
第5の電圧(V5)は負電圧である。第5の電圧(V5)は、例えば、-15V以上0V未満である。第3のゲート電極パッド103に第5の電圧(V5)が印加されることにより、第2の導電層54に第5の電圧(V5)が印加される。
【0190】
第5の電圧(V5)は、例えば、第2の電圧(V2)に等しい。第2の導電層54に第5の電圧(V5)が印加されることにより、第2の絶縁膜44に接するドリフト領域30にp形反転層が形成される。
【0191】
図15は、第7の実施形態の半導体装置の第2の駆動方法の説明図である。
図15は、第1のゲート電極パッド101に印加される第1のゲート電圧(Vg1)、第2のゲート電極パッド102に印加される第2のゲート電圧(Vg2)、及び、第3のゲート電極パッド103に印加される第3のゲート電圧(Vg3)のタイミングチャートである。
【0192】
第2の駆動方法では、第1の駆動方法と異なり、第4の電圧(V4)が、ターンオン電圧(Von)と等しい。
【0193】
IGBT700をオン状態にした後、所定の時間経過後(
図15中のtx)、第3のゲート電極パッド103には、第4の電圧(V4)としてターンオン電圧(Von)が印加される。IGBT700をオン状態にした後、所定の時間経過後(
図15中のtx)、第2の導電層54にターンオン電圧(Von)が印加される。第4の電圧(V4)は、第1の電圧(V1)と等しい。
【0194】
次に、第7の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0195】
第7の実施形態のIGBT700では、第1のゲート電極51の下に、エミッタ電位に固定された第1の導電層53が設けられる。よって、第1の実施形態のIGBT100と同様、IGBT700のターンオン損失が低減する。
【0196】
IGBT700は、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前に、第2のゲート電圧(Vg2)及び第3のゲート電圧(Vg3)を負電圧にする。
【0197】
第2のゲート電圧(Vg2)及び第3のゲート電圧(Vg3)を負電圧にすることにより、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域30、及び、第2の絶縁膜44に接するドリフト領域30にp形反転層が形成される。
【0198】
したがって、第2の実施形態のIGBT200と同様、ターンオフ動作時のホールのエミッタ電極12への排出が促進される。よって、スイッチング損失を更に低減することが可能となる。
【0199】
さらに、第7の実施形態のIGBT700では、ターンオン動作時に第2の導電層54に印加される第3のゲート電圧(Vg3)を変化させない。したがって、例えば、第2の実施形態のIGBT200と比較して、ターンオン損失が低減する。
【0200】
また、第2の駆動方法では、IGBT700をオン状態にした後、所定の時間経過後に、第2の導電層54にターンオン電圧(Von)が印加される。第2の導電層54にターンオン電圧(Von)が印加されることで、第2の絶縁膜44に接するドリフト領域30にn形蓄積層が形成される。第2の絶縁膜44に接するドリフト領域30にn形蓄積層が形成されることにより、IGBT700のオン抵抗が低減する。
【0201】
図16は、第7の実施形態の半導体装置の変形例の模式断面図である。変形例のIGBT701は、半導体層10の中にダミートレンチ23が設けられない点で、第7の実施形態のIGBT700と異なる。
【0202】
図16には、コンタクト領域36は図示されていない。コンタクト領域36は、例えば、エミッタ領域34の第1の方向に設けられる。
【0203】
以上、第7の実施形態のIGBT及び変形例のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。また、第7の実施形態のIGBTを含んだ半導体回路、及び変形例のIGBTを含んだ半導体回路によれば、スイッチング損失の低減が可能となる。また、IGBTのオン抵抗が低減する。
【0204】
(第8の実施形態)
第8の実施形態の半導体装置は、半導体層の第1の導電層は、第3のゲート電極パッドに電気的に接続された点で、第7の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第7の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0205】
第8の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT800である。
【0206】
図17は、第8の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0207】
IGBT800の第1の導電層53は、第3のゲート電極パッド103に電気的に接続される。第1の導電層53は、第2の導電層54と電気的に接続される。
【0208】
第3のゲート電極パッド103には、第3のゲート電圧(Vg3)が印加される。第1の導電層53に第3のゲート電圧(Vg3)が印加される。
【0209】
IGBT800は、例えば、第7の実施形態の第2の駆動方法を用いて動作する。
【0210】
第2の駆動方法では、IGBT800をオン状態にした後、所定の時間経過後に、第1の導電層53にターンオン電圧(Von)が印加される。第1の導電層53にターンオン電圧(Von)が印加されることで、第1の絶縁膜43に接するドリフト領域30にn形蓄積層が形成される。第1の絶縁膜43に接するドリフト領域30にn形蓄積層が形成されることにより、オン抵抗が低減する。
【0211】
以上、第8の実施形態のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。また、IGBTのオン抵抗が低減する。
【0212】
(第9の実施形態)
第9の実施形態の半導体装置は、第1のトレンチと第2のトレンチとの間に複数の第3のトレンチが設けられる点で、第7の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第7の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0213】
第9の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT900である。
【0214】
図18は、第9の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0215】
IGBT900は、第1のゲートトレンチ21と第2のゲートトレンチ22との間に、3つのダミートレンチ23が設けられる。
【0216】
ダミートレンチ23とダミートレンチ23との間のメサ領域上部は、第1のゲートトレンチ21とダミートレンチ23との間のメサ領域上部及び第2のゲートトレンチ22とダミートレンチ23との間のメサ領域上部と比較してエミッタ電極12と接する部分が少ない。そのため、ホールのエミッタ電極12への排出が抑制される。したがって、IGBTがオン状態の時のキャリア濃度が大きくなる。よって、IGBT900のオン抵抗が低減する。
【0217】
以上、第9の実施形態のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。また、第9の実施形態のIGBTによれば、オン抵抗が低減する。
【0218】
(第10の実施形態)
第10の実施形態の半導体装置は、第3のトレンチの中の上部導電層55及び下部導電層56が、第3のゲート電極パッドに接続された点で、第9の実施形態の半導体装置と異なる。以下、第9の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する場合がある。
【0219】
第10の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT1000である。
【0220】
図19は、第10の実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【0221】
IGBT1000は、第1のゲートトレンチ21と第2のゲートトレンチ22との間に、3つのダミートレンチ23が設けられる。
【0222】
上部導電層55は、第3のゲート電極パッド103に電気的に接続される。上部導電層55は、第2の導電層54と電気的に接続される。
【0223】
下部導電層56は、第3のゲート電極パッド103に電気的に接続される。下部導電層56は、第2の導電層54と電気的に接続される。
【0224】
トレンチ絶縁膜45は、上部導電層55と半導体層10との間に設けられる。トレンチ絶縁膜45は、下部導電層56と半導体層10との間に設けられる。トレンチ絶縁膜45は、エミッタ領域34と離間している。
【0225】
第3のゲート電極パッド103には、第3のゲート電圧(Vg3)が印加される。上部導電層55及び下部導電層56に第3のゲート電圧(Vg3)が印加される。
【0226】
ダミートレンチ23とダミートレンチ23との間のメサ領域上部は、第1のゲートトレンチ21とダミートレンチ23との間のメサ領域上部及び第2のゲートトレンチ22とダミートレンチ23との間のメサ領域上部と比較してエミッタ電極12と接する部分が少ない。そのため、ホールのエミッタ電極12への排出が抑制される。したがって、IGBTがオン状態の時のキャリア濃度が大きくなる。よって、IGBT1000のオン抵抗が低減する。
【0227】
IGBT1000は、例えば、第7の実施形態の第2の駆動方法を用いて動作する。
【0228】
第2の駆動方法では、IGBT1000をオン状態にした後、所定の時間経過後に、上部導電層55及び下部導電層56にターンオン電圧(Von)が印加される。上部導電層55及び下部導電層56にターンオン電圧(Von)が印加されることで、トレンチ絶縁膜45に接するドリフト領域30にn形蓄積層が形成される。トレンチ絶縁膜45に接するドリフト領域30にn形蓄積層が形成されることにより、オン抵抗が低減する。
【0229】
以上、第10の実施形態のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。また、第10の実施形態のIGBTによれば、オン抵抗が低減する。
【0230】
第1ないし第10の実施形態においては、半導体層が単結晶シリコンである場合を例に説明したが、半導体層は単結晶シリコンに限られることはない。例えば、単結晶炭化珪素など、その他の単結晶半導体であっても構わない。
【0231】
第1ないし第10の実施形態においては、トレンチが平行に配置されているストライプ形状の場合を例に説明したが、トレンチが交差するメッシュ形状のトレンチ、又は、ドット形状のトレンチにも本発明を適用することは可能である。
【0232】
第1ないし第10の実施形態においては、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明したが、第1導電形をn形、第2導電形をp形とすることも可能である。第1導電形をn形、第2導電形をp形とする場合、例えば、第2の電圧(V2)は正電圧となる。
【0233】
第1のゲートトレンチ21、第2のゲートトレンチ22、及び、ダミートレンチ23の配置や比率は、第1ないし第10の実施形態に限定されるものではない。
【0234】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0235】
10 半導体層
12 エミッタ電極(第1の電極)
14 コレクタ電極(第2の電極)
21 第1のゲートトレンチ(第1のトレンチ)
22 第2のゲートトレンチ(第2のトレンチ)
28 コレクタ領域(第1の半導体領域)
30 ドリフト領域(第2の半導体領域)
32 ベース領域(第3の半導体領域)
34 エミッタ領域(第4の半導体領域)
41 第1のゲート絶縁膜
42 第2のゲート絶縁膜
43 第1の絶縁膜
44 第2の絶縁膜
51 第1のゲート電極
52 第2のゲート電極
53 第1の導電層
54 第2の導電層
100 IGBT(半導体装置)
101 第1のゲート電極パッド
102 第2のゲート電極パッド
103 第3のゲート電極パッド
150 ゲートドライバ回路(制御回路)
200 IGBT(半導体装置)
250 ゲートドライバ回路(制御回路)
300 IGBT(半導体装置)
400 IGBT(半導体装置)
500 IGBT(半導体装置)
600 IGBT(半導体装置)
700 IGBT(半導体装置)
800 IGBT(半導体装置)
900 IGBT(半導体装置)
1000 IGBT(半導体装置)
P1 第1の面
P2 第2の面