(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】工作機械の回転軸中心位置計測方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240415BHJP
B23Q 17/22 20060101ALI20240415BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
G01B11/00 H
B23Q17/22 B
B23Q17/24 B
(21)【出願番号】P 2021085332
(22)【出願日】2021-05-20
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020110638
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 康二
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-093262(JP,A)
【文献】特開2016-206120(JP,A)
【文献】特開2019-152574(JP,A)
【文献】特開2001-259966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0213490(US,A1)
【文献】乾裕貴, 茨木創一, 洪策符, 下池昌広, 西川静雄,主軸回転による熱変形を考慮した5軸加工機の幾何誤差キャリブレーション法,精密工学会学術講演会講演論文集,日本,公益社団法人精密工学会,2017年03月01日,2017年度精密工学会春季大会,203-204
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01B 5/00
G01B 21/00
B23Q 17/00
B23Q 17/22
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に工具を装着し、前記工具の位置を非接触で検出可能な検出ユニットをテーブルに設置しておき、
計測対象の回転軸について前記工具と前記テーブルとを所定の角度位置に割り出し、各角度位置で前記検出ユニットを用いて前記テーブルに対する前記工具の位置を検出する検出動作を繰り返し、
複数回の前記検出動作で検出された各角度位置での前記工具の位置から前記回転軸の中心位置を計算することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法であって、
前記工具の前記テーブルの径方向の位置を検出可能な前記検出ユニットを用い、
前記工具と前記テーブルとを、前記回転軸を挟んで第1方向に対向する2つの角度位置、および前記回転軸を挟んで前記第1方向と交差する第2方向に対向する2つの角度位置の4つの角度位置に割り出し、各角度位置で前記検出動作を行って前記工具の前記テーブルの径方向の位置を検出し、
前記第1方向に対向する2つの角度位置で検出された前記工具の位置を結ぶ線分の中点を通りかつ前記第1方向に交差する第1直線と、前記第2方向に対向する2つの角度位置で検出された前記工具の位置を結ぶ線分の中点を通りかつ前記第2方向に交差する第2直線とを計算し、前記第1直線と前記第2直線との交点を前記回転軸の中心位置として計測することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法。
【請求項2】
主軸に工具を装着し、前記工具の位置を非接触で検出可能な検出ユニットをテーブルに設置しておき、
計測対象の回転軸について前記工具と前記テーブルとを所定の角度位置に割り出し、各角度位置で前記検出ユニットを用いて前記テーブルに対する前記工具の位置を検出する検出動作を繰り返し、
複数回の前記検出動作で検出された各角度位置での前記工具の位置から前記回転軸の中心位置を計算することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法であって、
前記工具の前記テーブルの表面に沿った位置を検出可能な前記検出ユニットを用い、
前記工具と前記テーブルとを、前記回転軸を挟んで対向する2つの角度位置に割り出し、各角度位置で前記検出動作を行って前記工具の前記テーブルの表面に沿った位置を検出し、
2回の前記検出動作での前記工具の位置を結ぶ線分の中点を計算し、前記中点を前記回転軸の中心位置として計測することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法。
【請求項3】
主軸に工具を装着し、前記工具の位置を非接触で検出可能な検出ユニットをテーブルに設置しておき、
計測対象の回転軸について前記工具と前記テーブルとを所定の角度位置に割り出し、各角度位置で前記検出ユニットを用いて前記テーブルに対する前記工具の位置を検出する検出動作を繰り返し、
複数回の前記検出動作で検出された各角度位置での前記工具の位置から前記回転軸の中心位置を計算することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法であって、
前記工具の前記テーブルの径方向の位置を検出可能な前記検出ユニットを用い、
前記工具と前記テーブルとを、前記回転軸を中心とした所定角度範囲内の複数の角度位置に割り出し、各角度位置で前記検出動作を行って前記工具の前記テーブルの径方向の位置を検出し、
複数回の前記検出動作で得られた前記工具の位置をプロットし、近似計算により前記回転軸の中心位置を計算することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載した工作機械の回転軸中心位置計測方法において、
前記検出ユニットは、前記工具の先端が前記検出ユニットにおける特定位置にあることを非接触で検出可能であり、
前記検出動作では、前記主軸と前記テーブルとを相対移動させて前記工具と前記テーブルとを所定の角度位置に割り出し、前記各角度位置で前記工具が前記検出ユニットの前記特定位置にくるように前記主軸と前記テーブルとの相対位置を調節し、この状態で前記主軸と前記テーブルとの相対位置から前記各角度位置での前記テーブルに対する前記工具の位置を検出することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載した工作機械の回転軸中心位置計測方法において、
前記検出ユニットは、前記テーブルに対する固定手段を有することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載した工作機械の回転軸中心位置計測方法において、
前記検出ユニットは、平行光束を照射する照明部と、前記平行光束を検出する撮像部と、を有し、
前記撮像部で検出された画像から前記平行光束中に配置された前記工具の先端位置を検出することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法。
【請求項7】
請求項
6に記載した工作機械の回転軸中心位置計測方法において、
前記工具を前記撮像部に対して回転した状態で、前記撮像部で前記画像を検出し、
前記画像から前記工具の輪郭を検出し、前記輪郭の対称性から前記工具の中心軸線を検出し、
前記中心軸線と前記輪郭との交点を前記工具の先端位置として検出することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法。
【請求項8】
請求項
7に記載した工作機械の回転軸中心位置計測方法において、
前記中心軸線と前記輪郭との交点を前記工具の先端位置として検出する際に、
前記中心軸線の両側に所定距離をおいて一対の平行線を設定し、一対の前記平行線と前記輪郭との交点を通りかつ前記中心軸線と直交する補助輪郭線を設定し、
前記中心軸線と前記補助輪郭線との交点を前記工具の先端位置として検出することを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法。
【請求項9】
請求項
7または請求項
8に記載した工作機械の回転軸中心位置計測方法において、
前記工具の延伸方向に前記輪郭を横断する複数の横断線を設定し、各々の前記横断線について前記輪郭との2つの交点および2つの前記交点の中点を検出し、各々の前記横断線の前記中点を通る直線を前記工具の中心軸線とすることを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法。
【請求項10】
請求項
7または請求項
8に記載した工作機械の回転軸中心位置計測方法において、
前記工具の延伸方向に対して前記輪郭の片側の形状を基準パターンとして検出し、前記基準パターンを反転した形状に合致する対称パターンを前記輪郭から検出し、前記基準パターンと前記対称パターンとの中間を通る直線を前記工具の中心軸線とすることを特徴とする工作機械の回転軸中心位置計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の回転軸中心位置計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械においては、主軸に装着された工具により、テーブルに載置されたワークを加工する。加工時には、工具とワークとをX軸,Y軸,Z軸の各方向へ三次元移動させることで、ワークに任意の立体形状が加工できる。
工作機械のうち一部は、加工自由度を高めるために、XYZ方向の並進軸に加えて、並進軸回りに工具を回転させる回転軸を備えている。追加される回転軸としては、例えばX軸回りの回転であるA軸、Y軸回りの回転であるB軸、Z軸回りの回転であるC軸などがある。このような多軸制御工作機械としては、例えば、X軸,Y軸,Z軸の3つにA軸,C軸の2つを追加した5軸制御の工作機械が利用されている。
【0003】
前述した多軸制御工作機械においては、加工精度の向上のために、並進軸の位置誤差を最小限とするとともに、回転軸の角度誤差および回転中心の位置精度を最小限とすることが必要である。このうち、回転軸中心位置の誤差による加工精度の低下を抑止するために、回転軸の中心位置を計測しておき、加工時にパラメータとして補正制御を行うことがなされている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、回転軸の中心位置を計測する方法として、ワークに代えて基準マスタとなるターゲット球をテーブル上に固定するとともに、工具に代えてタッチプローブを主軸に装着しておき、計測すべき回転軸を複数の角度に割り出し、各角度位置でタッチプローブをターゲット球に接触させてターゲット球の中心位置を計測し、複数の角度位置での計測値から当該回転軸の中心位置を算出している。
とくに、特許文献1では、並進軸の動作範囲が構造的に制限される工作機械の場合でも回転軸の中心位置が高精度に計測できるように、回転軸の複数の角度位置でのタッチプローブとターゲット球との接触動作を、並進軸の動作可能範囲内だけで行い、移動が制限される範囲では接触動作を行うことなく、計算により回転軸中心位置を計測している。
【0005】
一方、測定対象の工具と測定装置が干渉して旋回軸(第4軸,第5軸)の割出範囲が大きく制限される場合でも、1個の測定装置だけでX,Y,Z方向すべての誤差量を測定することができる刃先位置検出方法が開発されている(特許文献2)。
特許文献2では、旋回テーブルの回転軸上にある工具の最下点と、旋回テーブルの回転軸と直交する面内にある工具外周の2箇所以上とを測定して求まる工具中心点の2方向の誤差量より、X,Y,Z方向の刃先位置決め誤差量を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-152574号公報
【文献】特開2020-28922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献1の計測方法により、並進軸の動作範囲が制限されている工作機械の場合でも、回転軸の中心位置を高精度に計測できるようになった。
しかし、特許文献1の計測方法では、ターゲット球の位置を検出するために、刃物に代えてタッチプローブを主軸に装着する。
このため、計測時の工作機械は、主軸に工具が装着された実際の加工時の状態ではなく、計測した回転軸の中心位置は加工時の中心位置とは異なり、計測精度に限界があるという問題があった。
さらに、主軸にタッチプローブが装着できない工作機械では、そもそも特許文献1の計測方法を利用できないという問題があった。
一方、特許文献2では、工具中心点の2方向の誤差量を求めるために、幾つかの方法が提示されているが、工具種類がボールエンドミルに限定され、工具先端を「真円」として扱うことが前提となっており、異なる先端形状の工具には適用ができず、中心位置の高精度な計測は困難であった。このため、多様な先端形状の工具に対しても、単純な計算で回転軸の中心位置を高精度に計測できるようにすることが求められていた。
【0008】
本発明の目的は、タッチプローブを用いずに単純な計算で回転軸の中心位置を高精度に計測できる工作機械の回転軸中心位置計測方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、多様な先端形状の工具に対しても、単純な計算で回転軸の中心位置を高精度に計測できる工作機械の回転軸中心位置計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法は、主軸に工具を装着し、前記工具の位置を非接触で検出可能な検出ユニットをテーブルに設置しておき、計測対象の回転軸について前記工具と前記テーブルとを所定の角度位置に割り出し、各角度位置で前記検出ユニットを用いて前記テーブルに対する前記工具の位置を検出する検出動作を繰り返し、複数回の前記検出動作で検出された各角度位置での前記工具の位置から前記回転軸の中心位置を計算することを特徴とする。
【0010】
このような本発明では、非接触式の検出ユニットを用いた検出動作を複数回繰り返し、各角度位置での工具の位置から幾何学的な計算を行うことで、回転軸の中心位置を高精度に計測することができる。
計測にあたって、工作機械の主軸には加工用の工具を装着でき、計測の直前に主軸を回転させて昇温させ、加工時と同様な状態で計測することができる。また、主軸にタッチプローブが装着できない工作機械にも、幅広く適用できる。
従って、本発明によれば、タッチプローブを用いずに単純な計算で回転軸の中心位置を高精度に計測できる工作機械の回転軸中心位置計測方法を提供することができる。
【0011】
なお、本発明では、テーブルに対する検出ユニットの位置および向きが高精度に把握できていれば、より少ない回数で回転軸の回転中心を計算できるが、テーブルに対する検出ユニットの位置および向きが高精度に把握できていなくても、複数回の検出動作により各角度位置での工具の位置を検出することで、幾何学的演算により工具の先端位置を絞り込んで高精度に確定することができる。
【0012】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法において、前記検出ユニットは、前記工具の先端が前記検出ユニットにおける特定位置にあることを非接触で検出可能であり、前記検出動作では、前記主軸と前記テーブルとを相対移動させて前記工具と前記テーブルとを所定の角度位置に割り出し、前記各角度位置で前記工具が前記検出ユニットの前記特定位置にくるように前記主軸と前記テーブルとの相対位置を調節し、この状態で前記主軸と前記テーブルとの相対位置から前記各角度位置での前記テーブルに対する前記工具の位置を検出することが好ましい。
【0013】
本発明において、検出動作として検出ユニットを用いてテーブルに対する工具の位置を検出する際には、検出ユニットにおいて工具の位置を検出してもよく、検出ユニットを工具の位置決め治具として用い、工作機械の制御装置から制御用の位置データを取得してもよい。すなわち、工作機械を制御装置の制御下で動作させ、主軸を移動させて工具を検出ユニットの特定位置に配置し、この状態で工作機械の制御装置における主軸の位置データを参照することで、工具の位置を取得することができる。特定位置としては、検出ユニットにおける工具検出領域の中心位置などが利用できる。
【0014】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法において、前記工具の前記テーブルの径方向の位置を検出可能な前記検出ユニットを用い、前記工具と前記テーブルとを、前記回転軸を挟んで第1方向に対向する2つの角度位置、および前記回転軸を挟んで前記第1方向と交差する第2方向に対向する2つの角度位置の4つの角度位置に割り出し、各角度位置で前記検出動作を行って前記工具の前記テーブルの径方向の位置を検出し、前記第1方向に対向する2つの角度位置で検出された前記工具の位置を結ぶ線分の中点を通りかつ前記第1方向に交差する第1直線と、前記第2方向に対向する2つの角度位置で検出された前記工具の位置を結ぶ線分の中点を通りかつ前記第2方向に交差する第2直線とを計算し、前記第1直線と前記第2直線との交点を前記回転軸の中心位置として計測してもよい。
【0015】
本発明において、テーブルの径方向の工具の位置を検出可能な検出ユニットとしては、
工具の側面からの画像を検出して画像上の工具の位置を検出する画像センサを、テーブルの周方向に向けて設置したものが利用できる。
回転軸を挟んで対向する4つの角度位置としては、例えばテーブルの0度位置と180度位置を第1方向に対向する2つの角度位置とし、90度位置および270度位置を第2方向に対向する2つの角度位置とすることができる。
このような本発明によれば、0度と180度の角度位置での検出動作では確定できない中心位置の推定範囲を、90度と270度の角度位置での検出動作による工具の位置により絞り込み、正確な回転軸の中心を確定することができ、計4つの角度位置での検出動作で、回転軸の中心位置を高精度に計測できる。
【0016】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法において、前記工具の前記テーブルの表面に沿った位置を検出可能な前記検出ユニットを用い、前記工具と前記テーブルとを、前記回転軸を挟んで対向する2つの角度位置に割り出し、各角度位置で前記検出動作を行って前記工具の前記テーブルの表面に沿った位置を検出し、2回の前記検出動作での前記工具の位置を結ぶ線分の中点を計算し、前記中点を前記回転軸の中心位置として計測してもよい。
【0017】
本発明において、テーブルの表面に沿った工具の位置を検出可能な検出ユニットとしては、工具のテーブルの径方向の位置および周方向の位置を検出可能な検出ユニットが利用でき、より具体的には、オートフォーカス機能を有する画像センサシステムをテーブルの周方向に向けてテーブルに設置し、工具の側面からの画像上の工具の位置を径方向の位置とし、オートフォーカス機能で検出される画像の奥行き方向の工具の位置を周方向の位置として検出することができる。
回転軸を挟んで対向する2つの角度位置としては、例えばテーブルの0度位置と180度位置などとすることができる。
このような本発明によれば、2つの角度位置での検出動作という簡単な操作で、回転軸の中心位置を高精度に計測できる。
【0018】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法において、前記工具の前記テーブルの径方向の位置を検出可能な前記検出ユニットを用い、前記工具と前記テーブルとを、前記回転軸を中心とした所定角度範囲内の複数の角度位置に割り出し、各角度位置で前記検出動作を行って前記工具の前記テーブルの径方向の位置を検出し、複数回の前記検出動作で得られた前記工具の位置をプロットし、近似計算により前記回転軸の中心位置を計算してもよい。
【0019】
このような本発明では、工作機械の構造的な制約で、回転軸まわりの一部の角度範囲での検出動作ができない場合でも、同角度範囲を除く限定された角度範囲で複数回の検出動作を繰り返すことで、回転軸中心位置の候補位置を例えば円弧状にプロットすることができ、最小二乗法などの近似計算により中心位置を確定することができる。
【0020】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法において、前記検出ユニットは、前記テーブルに対する固定手段を有することが好ましい。
本発明において、テーブルに設置される検出ユニットは、各角度位置での検出動作の間に、テーブルに対する設置位置が変動しないことが必要である。テーブルが上向きの場合、単に載置つまりテーブル表面に対して摩擦力で移動規制されるものであればよい。テーブルが上向き以外になる場合、検出ユニットがテーブルから落下しないように、テーブルに対して他の固定手段を用いることが好ましい。
固定手段としては、着脱が容易なものが好ましく、例えばマグネットによる吸着、粘着シートや接着剤などによる粘着、クランプなどの機械的な固定であってもよい。検出ユニットは非接触式であるため、工具との接触による移動は基本的になく、検出ユニットをテーブルに対して強固に固定する必要はない。
【0021】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法において、前記検出ユニットは、平行光束を照射する照明部と、前記平行光束を検出する撮像部と、を有し、前記撮像部で検出された画像から前記平行光束中に配置された前記工具の先端位置を検出することが好ましい。
【0022】
本発明において、照射部としては、点光源とテレセントリックレンズを用いて平行光束を形成するもの、直線状に配列された光源により平行光束を形成するもの、光ビームを平行に振って擬似的に平行光束を形成するもの、などが適宜利用できる。
本発明において、撮像部としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)式のカメラなど、撮影した画像をデータ出力して画像処理可能な画像検出器を用いることが好ましい。
本発明において、撮像部で検出された画像から平行光束中に配置された工具の先端位置を検出する際には、撮像部で検出された画像に対して既存の画像処理を行うことにより、平行光束中に配置された工具の影を検出し、エッジ検出により工具先端の輪郭からその中心位置を演算することで工具の先端位置を計算するソフトウェアを用いることができる。
このような本発明では、光学式の検出を行うことで、工具の先端位置を非接触で高精度に検出することができる。
また、位置検出にあたっては、照明部と撮像部との間の平行光束の中に工具の先端を配置するだけでよく、検出操作が容易である。
【0023】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法において、前記工具を前記撮像部に対して回転した状態で、前記撮像部で前記画像を検出し、前記画像から前記工具の輪郭を検出し、前記輪郭の対称性から前記工具の中心軸線を検出し、前記中心軸線と前記輪郭との交点を前記工具の先端位置として検出することが好ましい。
このような本発明では、回転する工具の輪郭が線対称になることを利用して、工具の中心軸線を検出できるとともに、検出した中心軸線と工具の輪郭との交点をとることで、工具の先端位置を確定することができる。この際、工具の先端形状について制約はなく、多様な先端形状の工具に対して先端位置を確定できる。さらに、先端位置の確定は、工具の画像上の幾何学的演算処理だけでよく、単純な計算で工具の先端位置ないし回転軸の中心位置を高精度に計測できる。
【0024】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法において、前記中心軸線と前記輪郭との交点を前記工具の先端位置として検出する際に、前記中心軸線の両側に所定距離をおいて一対の平行線を設定し、一対の前記平行線と前記輪郭との交点を通りかつ前記中心軸線と直交する補助輪郭線を設定し、前記中心軸線と前記補助輪郭線との交点を前記工具の先端位置として検出することが好ましい。
このような本発明では、例えば、先端に複数の突起をもつ工具や、偏った先端をもつ工具など、回転した状態では先端部の輪郭の形状が不明瞭になる工具についても、補助輪郭線を設定することで、中心から工具の先端位置を確定できる。これにより、多様な先端形状の工具に対しても、単純な計算で工具の先端位置ないし回転軸の中心位置を高精度に計測できる。
【0025】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法において、前記工具の延伸方向に前記輪郭を横断する複数の横断線を設定し、各々の前記横断線について前記輪郭との2つの交点および2つの前記交点の中点を検出し、各々の前記横断線の前記中点を通る直線を前記工具の中心軸線とすることができる。
このような本発明では、工具の延伸方向(工具の向き、概略的な軸線方向)を利用して、工具の正確な中心軸線(回転対称軸)を検出することができる。この際、複数の横断線を用いる幾何学的な演算処理により、簡単に工具の先端位置ないし回転軸の中心位置を高精度に計測できる。
【0026】
本発明の工作機械の回転軸中心位置計測方法において、前記工具の延伸方向に対して前記輪郭の片側の形状を基準パターンとして検出し、前記基準パターンを反転した形状に合致する対称パターンを前記輪郭から検出し、前記基準パターンと前記対称パターンとの中間を通る直線を前記工具の中心軸線とすることができる。
このような本発明では、工具の延伸方向(工具の向き、概略的な軸線方向)を利用して、工具の正確な中心軸線(回転対称軸)を検出することができる。この際、画像上のパターン認識により、簡単に工具の先端位置ないし回転軸の中心位置を高精度に計測できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、タッチプローブを用いずに単純な計算で回転軸の中心位置を高精度に計測できる工作機械の回転軸中心位置計測方法を提供することができる。また、多様な先端形状の工具に対しても、単純な計算で回転軸の中心位置を高精度に計測できる工作機械の回転軸中心位置計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態の工作機械を示す斜視図。
【
図2】前記第1実施形態の検出ユニットを示す斜視図。
【
図3】前記第1実施形態の検出ユニットを示す模式図。
【
図5】前記第1実施形態の検出動作での工具先端を示す模式図。
【
図7】前記第1実施形態のC軸位置計測動作を示す模式図。
【
図8】前記第1実施形態のC軸位置計測動作を示す模式図。
【
図9】前記第1実施形態のC軸位置計測動作を示す模式図。
【
図10】本発明の第2実施形態のC軸位置計測動作を示す模式図。
【
図11】本発明の第3実施形態のC軸位置計測動作を示す模式図。
【
図12】前記第3実施形態のC軸位置計測動作を示す模式図。
【
図13】前記第1~第3実施形態の変形例を示す模式図。
【
図14】本発明の第4実施形態のA軸位置計測動作を示す模式図。
【
図15】前記第4実施形態のA軸位置計測動作を示す模式図。
【
図16】前記第4実施形態のA軸位置計測動作を示す模式図。
【
図17】本発明の第5実施形態のA軸位置計測動作を示す模式図。
【
図18】前記第5実施形態のA軸位置計測動作を示す模式図。
【
図19】前記第5実施形態のA軸位置計測動作を示す模式図。
【
図20】前記第5実施形態のA軸位置計測動作を示す模式図。
【
図21】本発明の第6実施形態のA軸位置計測動作を示す模式図。
【
図22】前記第6実施形態のA軸位置計測動作の変形例を示す模式図。
【
図23】前記第6実施形態のA軸位置計測動作の変形例を示す模式図。
【
図24】前記第7実施形態の工具先端位置検出処理を示す模式図。
【
図25】前記第7実施形態の異なる向きの工具先端位置検出処理を示す模式図。
【
図26】前記第8実施形態の工具先端位置検出処理を示す模式図。
【
図27】前記第9実施形態の工具先端形状とその画像を示す模式図。
【
図28】前記第9実施形態の工具先端位置検出処理を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1実施形態〕
図1において、工作機械1は、ベッド11の上面に移動テーブル12および回転テーブル13を有する。
移動テーブル12は、ベッド11の上面に沿って移動自在に支持され、ベッド11に形成されたX軸移動機構(図示省略)により移動され、X軸方向の所定位置に位置決め可能である。
回転テーブル13は、移動テーブル12の上面に回転自在に設置され、移動テーブル12に形成されたC軸回転機構(図示省略)により回転され、C軸まわりの所定角度位置に位置決め可能である。
回転テーブル13の上面には、加工対象であるワーク2が固定される。
【0030】
工作機械1は、ベッド11の上面に門型のコラム14を有する。
コラム14は、移動テーブル12のX軸方向の移動経路を跨ぐように門型に形成されている。コラム14には、サドル15およびスライダ16を介して主軸ヘッド17が支持されている。
サドル15は、コラム14の水平バーに沿って移動自在に支持され、コラム14に設置されたY軸移動機構(図示省略)により移動され、Y軸方向の所定位置に位置決め可能である。
スライダ16は、サドル15の垂直な表面に沿って昇降自在に支持され、サドル15に設置されたZ軸移動機構(図示省略)により移動され、Z軸方向の所定位置に位置決め可能である。
【0031】
主軸ヘッド17は、スライダ16の下部表面に回転自在に支持され、スライダ16に形成されたA軸回転機構(図示省略)により回転され、A軸まわりの所定角度位置に位置決め可能である。
主軸ヘッド17には、主軸18が回転自在に支持され、主軸18の先端には工具3が装着される。
主軸18は、主軸ヘッド17に設置されたモータにより回転され、ワーク2の切削加工に必要な所定の回転数およびトルクで工具3を回転させることができる。
【0032】
工作機械1は、前述した移動テーブル12のX軸移動、サドル15のY軸移動、スライダ16のZ軸移動の3つに、回転テーブル13のC軸回転、主軸ヘッド17のA軸回転の2つを追加した5軸制御により、ワーク2に対して多様な切削加工が可能である。これらの動作制御を行うために、工作機械1にはCNC(コンピュータ数値制御)式の制御装置9が接続されている。
このような工作機械1において、回転テーブル13のC軸の回転軸中心位置を以下の手順で計測する。
【0033】
図2において、本実施形態では、工作機械1のC軸中心位置の計測を行うために、回転テーブル13に検出ユニット20を設置する。
図3において、検出ユニット20はケース21を有し、ケース21の両端の脚部22で回転テーブル13の表面に着脱可能である。脚部22は、粘着あるいはマグネットや吸盤などの固定手段を有し、回転テーブル13の表面にずれないように固定される。
【0034】
ケース21は中間部上面側に開く開口部23を有する。ケース21の内部には、開口部23を挟んで一方の側に照明部24が設置され、反対側にテレセントリックレンズ25、撮像部であるCCDカメラ26および演算部27が設置されている。
照明部24は、開口部23を通してテレセントリックレンズ25に向けて平行光束28を照射可能である。
平行光束28は、テレセントリックレンズ25により集束され、CCDカメラ26で撮影される。
【0035】
撮像部であるCCDカメラ26は、入射された集束光から平行光束28の横断画像を検出する。ここで、開口部23に検出対象物29が配置されると、平行光束28の一部が遮断され、影281が形成される。
演算部27は、CCDカメラ26の検出画像を処理し、検出画像に表れる影281における幅および高さを測定することで、検出対象物29の幅および高さを非接触で検出可能である。
【0036】
図4において、前述した検出ユニット20の開口部23に工具3の先端を導入することで、工具3の先端が検出対象物29として平行光束28中に配置され、工具3の先端位置を検出することができる。
検出ユニット20は、平行光束28が回転テーブル13の周方向(回転テーブル13の半径方向と直交する方向)となるように、つまり照明部24とCCDカメラ26とが回転テーブル13の周方向に沿って向き合う姿勢としておく。
検出ユニット20の位置は、回転テーブル13の中心から離れた位置であればよく、正確な位置を計測しておく必要はない。また、検出ユニット20の向きも、平行光束28が回転テーブル13の周方向に正確に沿う方向である必要はない。これは、正確でない成分があっても、後述する対向位置(角度位置A0と角度位置A180、角度位置A90と角度位置A270)での演算時に、正確でない成分が相殺されるからである。
工具3を検出ユニット20に導入する際には、工具3の先端位置がCCDカメラ26の検出画像(
図5の検出画像261)の中央にくるように位置を調整する。
【0037】
図5において、CCDカメラ26の検出画像261には、工具3の先端の影281が表れる。
検出画像261においては、影281の輪郭282から、工具3の先端位置283の座標(Tv,Th)を正確に割り出すことができる。
検出画像261で検出される座標(Tv,Th)のうち、垂直方向の座標Tvは工作機械1のZ軸座標に相当する。一方、水平方向の座標Thは、回転テーブル13の中心に対する工具3の径方向位置Rc(半径方向の距離)であり、回転テーブル13の角度位置に応じて工作機械1のX軸座標およびY軸座標に投影される。例えば、回転テーブル13が
図7(A)の角度位置A0にあるとき、検出画像261は工作機械1のX軸に交差し、座標Thは工作機械1のY軸の座標Tyとなる。回転テーブル13が
図8(A)の角度位置A90にあるとき、検出画像261は工作機械1のY軸に交差し、座標Thは工作機械1のX軸の座標Txとなる。
【0038】
工具3の先端位置283の座標(Tv,Th)の割り出しにあたっては、演算部27において検出画像261の画像処理による工具3の先端位置検出を行ってもよく、検出ユニット20を工具3の位置決め治具として用い、工作機械1の位置データを取得して工具3の先端位置としてもよい。この際の工具3の先端位置の検出処理は、検出ユニット20に設置された演算部27で行うことができるほか、検出ユニット20ではCCDカメラ26による画像検出までを行い、検出画像261の処理ないし工具3の先端位置の検出は工作機械1の制御装置9で行ってもよい。
【0039】
図6において、工作機械1の制御装置9は、前述した各軸移動などを制御するための動作制御部91を有するとともに、検出ユニット20から取得した検出画像261を画像処理して工具3の先端位置を検出する工具位置検出部92を有する。
検出動作においては、動作制御部91の制御のもとで工作機械1を動作させ、主軸18を移動させて工具3を検出ユニット20の開口部23内に導入し、工具3の先端が検出ユニット20の特定位置にくるように主軸18と回転テーブル13との相対位置を調節する。この状態で、工具位置検出部92は動作制御部91から主軸18の位置データ(工作機械1のZ軸座標、X軸座標およびY軸座標)を取得し、検出画像261における座標Tv,Thを計算し、これを工具3の先端位置とすることができる。
【0040】
特定位置としては、検出ユニット20における工具検出領域である開口部23の中心位置などが利用できる。工具3の先端を特定位置に配置するために、CCDカメラ26の検出画像261に特定位置を示すマーカなどを表示することができる。一方、CCDカメラ26の検出画像261の中央位置を特定位置とし、目視確認のみで特定位置と判定してもよい。これは、特定位置が正確でなくても、後述する対向位置(角度位置A0と角度位置A180、角度位置A90と角度位置A270)での演算時に、正確でない成分が相殺されるからである。
【0041】
本実施形態では、上述した検出ユニット20を用いて、工作機械1のC軸中心位置を以下の手順で計測する。
図7(A)において、先ず回転テーブル13を角度位置A0とし、回転テーブル13の中心から離れた位置に検出ユニット20を置く。
回転テーブル13の角度位置A0は、CCDカメラ26の光軸が工作機械1のX軸に沿った状態とする。ただし角度位置A0は任意の角度でよい。
【0042】
検出ユニット20を設置したら、回転テーブル13の上方から主軸18(
図1参照)を下降させ、工具3を検出ユニット20の開口部23に導入する。そして、検出ユニット20により角度位置A0における工具3の位置P0(Tx0,Ty0)を記録しておく。
【0043】
次に、工具3を上昇させて検出ユニット20から抜き出したうえ、検出ユニット20を載せたまま回転テーブル13を角度位置A0から180度回転させ、角度位置A0に対してC軸を挟んで第1方向D1に対向する角度位置A180とする。
図7(B)において、回転テーブル13が角度位置A180にある状態で、再び工具3を検出ユニット20に導入する。そして、検出ユニット20により角度位置A180における工具3の先端位置P180(Tx180,Ty180)を記録しておく。
【0044】
図7(C)において、角度位置A0位置および角度位置A180での工具3の位置P0,P180が得られたら、演算部27により、C軸中心位置を通りかつ第1方向D1と交差する第1直線L1を計算する。具体的には、角度位置A0での工具3の位置P0と角度位置A180での工具3の先端位置P180とを線分L01で結び、その中点を通りかつ第1方向D1と交差する直線を第1直線L1とする。
【0045】
図7(A)~
図7(C)の検出動作により第1直線L1が得られたら、同様の手順で第2直線L2を計算する。
図8(A)において、検出ユニット20および回転テーブル13を角度位置A90(角度位置A0から90度回転した角度位置)とし、工具3を検出ユニット20の開口部23に導入する。そして、検出ユニット20により角度位置A90における工具3の先端位置P90(Tx90,Ty90)を記録しておく。
図8(B)において、同様の操作により、検出ユニット20および回転テーブル13を、角度位置A90に対してC軸を挟んで第2方向D2(第1方向D1と交差する)に対向する角度位置A270とし、検出ユニット20により角度位置A270における工具3の先端位置P270(Tx270,Ty270)を記録しておく。
【0046】
図8(C)において、角度位置A90および角度位置A270での工具3の先端位置P90,P270が得られたら、演算部27により、C軸中心位置を通りかつ第2方向D2と交差する第2直線L2を計算する。具体的には、角度位置A90での工具3の先端位置P90と角度位置A270での工具3の先端位置P270とを線分L02で結び、その中点を通りかつ第2方向D2と交差する直線を第2直線L2とする。
図9において、第1直線L1および第2直線L2が得られたら、演算部27により第1直線L1と第2直線L2との交点Pcを計算する。これにより、C軸中心位置の存在可能範囲が交点Pcの1点に限定され、工作機械1の正確なC軸中心位置を計測することができる。
【0047】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。
本実施形態では、主軸18に工具3を装着し、工具3の位置を非接触で検出可能な検出ユニット20を回転テーブル13に設置しておき、計測対象のC軸について工具3と回転テーブル13とを所定の角度位置(A0,A90,A180,A270)に割り出し、各角度位置で検出ユニット20により回転テーブル13に対する工具3の位置(P0,P90,P180,P270)を検出する検出動作を繰り返し、4回の検出動作で検出された各角度位置での工具3の位置からC軸の中心位置(Pc)を計算した。
【0048】
このような本実施形態では、非接触式の検出ユニット20を用いた検出動作を4回繰り返し、各角度位置での工具3の位置から幾何学的な計算を行うことで、C軸の中心位置(Pc)を高精度に計測することができる。
計測にあたって、工作機械1の主軸18には加工用の工具3を装着でき、計測の直前に主軸18を回転させて昇温させ、加工時と同様な状態で計測することができる。また、主軸18にタッチプローブが装着できない工作機械1にも、幅広く適用できる。
従って、本実施形態によれば、タッチプローブを用いずに単純な計算でC軸の中心位置を高精度に計測できる。
【0049】
本実施形態では、とくに工具3の回転テーブル13の径方向の位置を検出可能な検出ユニット20を用い、工具3と回転テーブル13とを、C軸を挟んで第1方向D1に対向する2つの角度位置A0,A180、およびC軸を挟んで第1方向D1と交差する第2方向D2に対向する2つの角度位置A90,A270の4つの角度位置に割り出し、各角度位置で検出動作を行って工具3の回転テーブル13の径方向の位置(P0,P90,P180,P270)を検出し、第1方向D1に対向する2つの角度位置A0,A180で検出された工具3の位置P0,P180を結ぶ線分L01の中点を通りかつ第1方向D1に交差する第1直線L1と、第2方向D2に対向する2つの角度位置A90,A270で検出された工具3の位置P90,P270を結ぶ線分L02の中点を通りかつ第2方向D2に交差する第2直線L2とを計算し、第1直線L1と第2直線L2との交点PcをC軸の中心位置として計測した。
【0050】
このため、本実施形態の検出ユニット20としては、回転テーブル13の径方向の工具3の位置を検出可能であればよく、工具3の側面からの検出画像261(
図5参照)を検出して画像上の工具3の位置を検出する画像センサ(照明部24ないしCCDカメラ26、
図3参照)を、回転テーブル13の周方向に向けて設置したものが利用できる。
このような本実施形態によれば、0度と180度の角度位置A0、A180での検出動作では確定できないC軸中心位置の推定範囲(直線L1)を、90度と270度の角度位置A90,A270での検出動作による工具3の位置(直線L2)により絞り込み、正確なC軸の中心を確定することができ、計4つの角度位置(A0,A90,A180,A270)での検出動作で、C軸の中心位置を高精度に計測できる。
【0051】
本実施形態では、検出ユニット20は、平行光束28を照射する照明部24と、平行光束28を検出する撮像部(テレセントリックレンズ25およびCCDカメラ26)と、検出画像261から平行光束28中に配置された工具3の先端位置を検出する演算部27と、を有するものとし、検出画像261に対して既存の画像処理を行うことにより、平行光束28中に配置された工具3の影281を検出し、エッジ検出により工具3の先端の輪郭282からその中心位置を演算することで、工具3の先端位置283を計算することができる。
その結果、検出ユニット20により、光学式の検出を行うことで、工具3の先端位置を非接触で高精度に検出することができる。
また、位置検出にあたっては、照明部24と撮像部(テレセントリックレンズ25およびCCDカメラ26)との間の平行光束28の中に工具3の先端を配置するだけでよく、検出操作が容易である。
本実施形態では、検出ユニット20は、回転テーブル13に対する固定手段を有するとしたため、検出ユニット20の回転テーブル13に対する設置位置が、各角度位置での検出動作の間に変動しないようにできる。
【0052】
〔第2実施形態〕
図10には、本発明の第2実施形態が示されている。
前述した第1実施形態では、工作機械1(
図1参照)のC軸中心位置の計測を行うために、回転テーブル13に検出ユニット20を設置し(
図2および
図3参照)、角度位置A0,A180での工具3の径方向位置の検出動作により第1直線L1を検出し、角度位置A90,A270での同検出動作により第2直線L2を検出し、その交点Pcを工作機械1の正確なC軸中心位置として計測していた。
これに対し、本実施形態では、角度位置A0,A180での検出動作において工具3の径方向位置とともに周方向位置、つまり回転テーブル13の表面に沿った平面位置を検出することで、工作機械1の正確なC軸中心位置を計測する。
【0053】
図10(A)において、角度位置A0にある回転テーブル13には検出ユニット20Aが置かれている。
検出ユニット20Aは、基本構成が第1実施形態の検出ユニット20と同様であり、さらに、オートフォーカス機能を利用した画像の奥行き方向の座標検出が可能である。オートフォーカス機能を用いた座標検出としては、例えば
図5の検出画像261において、工具3の影281の輪郭282に対してエッジ検出を行い、コントラスト最大となる焦点位置を検出することで、画像の奥行き方向の座標を正確に検出できる。
従って、回転テーブル13に置かれた検出ユニット20Aに工具3を導入することにより、回転テーブル13に対する工具3の径方向位置Rcおよび周方向位置Ccを検出することができる。このような、角度位置A0における検出動作により、工具3の回転テーブル13に対する平面位置PA0が計測される。
【0054】
図10(B)において、角度位置A0での検出動作が済んだら、回転テーブル13を角度位置A180へ移動させ、角度位置A180で同様の検出動作を行うことで、工具3の回転テーブル13に対する平面位置PA180が計測される。
図10(C)において、平面位置PA0および平面位置PA180が得られたら、演算部27により平面位置PA0と平面位置PA180とを結ぶ線分LAの中点PAcを計算する。この中点PAcにより、工作機械1の正確なC軸中心位置を計測できる。
【0055】
このような本実施形態によれば、前述した第1実施形態と同様な効果が得られるとともに、工具3の先端の検出動作が角度位置A0,A180の2箇所で済み、作業効率を向上することができる。
さらに、本実施形態では、第1実施形態における角度位置A90,A270など、他の角度位置での検出動作が必要ないため、例えば角度位置A90,A270が並進軸(XYZ軸)の構造的な制約により検出動作の範囲外となる工作機械1であっても、角度位置A0,A180での検出動作により正確なC軸中心位置を計測できる。
【0056】
〔第3実施形態〕
図11ないし
図12には、本発明の第3実施形態が示されている。
前述した第1実施形態では角度位置A0,A180および角度位置A90,A270での検出動作を行い、第2実施形態では角度位置A0,A180での検出動作を行っており、それぞれ回転テーブル13の中心を挟んで対向する角度位置A0,A180での検出動作が必要であった。
これに対し、本実施形態では、角度位置A0から180度未満の複数の角度位置Anでそれぞれ第1実施形態と同様に、工具3の先端位置の検出動作を行い、検出結果の演算により工作機械1の正確なC軸中心位置を計測する。
本実施形態において、工作機械1、回転テーブル13および検出ユニット20については前述した第1実施形態と同様であり、これらの構成に関する重複する説明は省略する。
【0057】
図11(A)において、先ず、検出ユニット20が設置された回転テーブル13を角度位置A0に配置し、検出ユニット20の開口部23に工具3の先端を導入し、その位置を検出ユニット20で検出して工具3の位置P0とする。
図11(B)において、次に、回転テーブル13を30度回転させて次の角度位置A30まで回転させ、角度位置A0と同様な操作により工具3の位置P30を検出する。
図11(C)において、さらに回転テーブル13を30度回転させて次の角度位置A60まで回転させ、角度位置A0と同様な操作により工具3の位置P60を検出する。
図12(A)において、回転テーブル13を次の角度位置A120まで回転させ、角度位置A0と同様な操作により工具3の位置P120を検出する。
図12(B)において、回転テーブル13を次の角度位置A150まで回転させ、角度位置A0と同様な操作により工具3の位置P150を検出する。
【0058】
図12(C)において、前述した角度位置A0~A150で検出された工具3の位置P0~P150は画面上にプロットした際に円弧状に並ぶことになる。円弧状に並んだ位置P0~P150の点列に対して、例えば最小二乗法などにより、円弧状の中心点PBcの位置を高精度に計算することができ、ここで得られた中心点PBcを工作機械1の正確なC軸中心位置として計測することができる。
【0059】
このような本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様な効果が得られるとともに、工作機械1における並進軸(XYZ軸)の構造的な制約により検出動作の可能範囲が180度未満であっても、複数位置での検出動作により正確なC軸中心位置を計測できる。
【0060】
〔第1~第3実施形態の変形〕
前述した第1~第3実施形態においては、角度位置Anでの検出動作の際に、検出ユニット20で工具3の先端の画像を撮影したが、工具3の検出画像上の位置は角度位置Anごとにずれていてもよい。
図13において、検出ユニット20の検出画像261において、工具3の影281の輪郭282の検出画像261上の位置は、角度位置A0と他の角度位置Anで常に同じ位置にならないことがある。しかし、検出画像261の画像処理によって、角度位置A0(2点鎖線)の位置からのずれ量dc0が算出できれば、その分の補正により工具3の座標を確定することができ、工具3の検出画像261上の位置は角度位置Anごとにずれていてもよい。
【0061】
〔第4実施形態〕
図14ないし
図16には、本発明の第4実施形態が示されている。
本実施形態は、工作機械1におけるA軸中心位置から工具3の先端までのずれの距離(オフセット量)を計測するものである。
本実施形態における工作機械1、および計測に用いる検出ユニット20については、前述した第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0062】
本実施形態では、回転テーブル13に検出ユニット20を設置する。
検出ユニット20は開口部23が回転テーブル13の中央(C軸回転中心位置)にくるように配置する。そして、平行光束28の向きが工作機械1のX軸方向となるように検出ユニット20の向きを調整しておく。検出ユニット20の向きは、回転テーブル13のC軸回転によって調整してもよい。
検出ユニット20が設置できたら、工作機械1の各軸動作により主軸ヘッド17を検出ユニット20に接近させ、主軸18に装着された工具3の先端を開口部23に導入して検出動作を行う。
【0063】
図15(A)において、先ず、工作機械1のA軸回転により、工具3がY軸「+」方向に向いた状態(A軸まわりの角度位置A0)とし、この状態で工作機械1の各軸移動により工具3の先端を開口部23に導入する。さらに、工作機械1のY軸およびZ軸の移動により、検出ユニット20で得られる検出画像262において工具3の影281の先端位置283が検出画像262の中央にくるように調整し、この時の工作機械1のY軸位置およびZ軸位置(
図16のY1,Z1)を記録しておく。
【0064】
図15(B)において、次に、工作機械1のA軸回転により、工具3がY軸「-」方向に向いた状態(A軸を挟んで角度位置A0と対向する角度位置A180)とし、この状態で工作機械1の各軸移動により工具3の先端を開口部23に導入する。さらに、工作機械1のY軸およびZ軸の移動により、検出ユニット20で得られる検出画像262において工具3の影281の先端位置283が検出画像262の中央にくるように調整し、この時の工作機械1のY軸位置およびZ軸位置(
図16のY2,Z2)を記録しておく。
【0065】
図16において、角度位置A0での工作機械1のY軸位置Y1およびZ軸位置Z1と、角度位置A180での工作機械1のY軸位置Y2およびZ軸位置Z2との差は、それぞれ工具3の先端を同じ位置に配置した結果、A軸(主軸ヘッド17の回転軸171)における回転中心の振れに基づいている。
従って、角度位置A0および角度位置A180での各軸位置の差分の1/2から、工作機械1のA軸中心位置から工具3の先端までのずれの距離(オフセット量)(Y=(Y1-Y2)/2,Z=(Z1-Z2)/2)が計測できる。
このような本実施形態によっても、A軸中心位置から工具3の先端までのずれの距離(オフセット量)の計測にあたって、前述した第1実施形態と同様な効果が得られる。
【0066】
〔第5実施形態〕
図17ないし
図20には、本発明の第5実施形態が示されている。
本実施形態は、いわゆる揺りかご式の工作機械1AにおけるA軸中心位置と工具3の先端が一致する座標を計測するものである。
図17において、回転テーブル13はクレードル131を介して移動テーブル12(
図1参照)に支持され、クレードル131に対してC軸まわりに回転可能である。クレードル131は一対のトラニオン132により移動テーブル12に対してA軸まわりに回転可能である。
なお、工作機械1Aにおいては、主軸ヘッド17はスライダ16(
図1参照)に対して固定され、A軸回転は行わず、常にZ軸下向きに保持されている。
【0067】
本実施形態では、回転テーブル13に検出ユニット20を設置する。検出ユニット20については、前述した第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
検出ユニット20は開口部23が回転テーブル13の中央(C軸回転中心位置)にくるように配置する。そして、平行光束28の向きが工作機械1AのX軸方向となるように検出ユニット20の向きを調整しておく。検出ユニット20の向きは、回転テーブル13のC軸回転によって調整してもよい。
検出ユニット20が設置できたら、工作機械1Aの各軸動作により主軸ヘッド17を検出ユニット20に接近させ、主軸18に装着された工具3の先端を開口部23に導入して検出動作を行う。
【0068】
図18(A)において、先ず、クレードル131のA軸回転により、回転テーブル13がY軸「+」方向に向いた状態(A軸まわりの角度位置A0)とし、この状態で工作機械1Aの各軸移動により工具3の先端を開口部23に導入する。
図19(A)において、クレードル131を角度位置A0とした状態で、工作機械1AのY軸およびZ軸の移動により、検出ユニット20で得られる検出画像263において工具3の影281の先端位置283が検出画像263の中央にくるように調整し、この時の工作機械1AのY軸位置およびZ軸位置(
図20のY1,Z1)を記録しておく。
【0069】
図18(B)において、続いて、クレードル131のA軸回転により、回転テーブル13がY軸「-」方向に向いた状態(A軸を挟んで角度位置A0と対向する角度位置A180)とし、この状態で工作機械1Aの各軸移動により工具3の先端を開口部23に導入する。
図19(B)において、クレードル131を角度位置A180とした状態で、工作機械1AのY軸およびZ軸の移動により、検出ユニット20で得られる検出画像263において工具3の影281の先端位置283が検出画像263の中央にくるように調整し、この時の工作機械1AのY軸位置およびZ軸位置(
図20のY2,Z2)を記録しておく。
【0070】
図20において、角度位置A0での工作機械1AのY軸位置Y1およびZ軸位置Z1と、角度位置A180での工作機械1AのY軸位置Y2およびZ軸位置Z2との差は、それぞれ工具3の先端を同じ位置に配置した結果、クレードル131のA軸回転中心の振れに基づいている。
従って、角度位置A0および角度位置A180での各軸位置から、式(Y=(Y1+Y2)/2,Z=(Z1+Z2)/2)により、工作機械1AのA軸中心位置と工具3の先端が一致する座標が計測できる。
このような本実施形態によっても、A軸中心位置と工具3の先端が一致する座標の計測にあたって、前述した第1実施形態と同様な効果が得られる。
【0071】
〔第6実施形態〕
図21ないし
図23には、本発明の第6実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した第4実施形態と同様の構成を用いて、工作機械1におけるA軸中心位置から工具3の先端までのずれの距離(オフセット量)を計測するものである。
ただし、第4実施形態が角度位置A0と、A軸を挟んで角度位置A0と対向する(つまり180度間隔となる)角度位置A180との、2箇所で工作機械1のY軸位置Y1,Y2およびZ軸位置Z1,Z2を検出したのに対し、本実施形態では、角度位置A0から180度の範囲内の複数の角度位置AnでY軸位置およびZ軸位置の検出動作を行う。
【0072】
図21(A)において、先ず、工作機械1のA軸回転(主軸ヘッド17の回転軸171の回転)により、工具3がY軸「+」方向に向いた状態(A軸まわりの角度位置A0)とし、この状態で工作機械1の各軸移動により工具3の先端を開口部23に導入する。
図21(B)において、工具3が角度位置A0に配置されたのち、工作機械1のY軸およびZ軸の移動により、検出ユニット20で得られる検出画像264において工具3の影281の先端位置283が検出画像264の中央にくるように調整し、この時の工作機械1のY軸位置およびZ軸位置を記録しておく。記録されるY軸位置およびZ軸位置は、各角度位置AnにおけるA軸中心位置Q0となる。
【0073】
続いて、工作機械1のA軸回転により、工具3を角度位置A30(角度位置A0から30度回転した状態)とし、この状態で角度位置A0と同様に、工作機械1の各軸移動により工具3の先端を開口部23に導入し、検出ユニット20で得られる検出画像264において工具3の影281の先端位置283が検出画像264の中央にくるように調整し、その時の工作機械1のY軸位置およびZ軸位置(A軸中心位置Q30)を記録する。
さらに、工作機械1のA軸回転により、工具3を角度位置A60(角度位置A0から60度回転した状態)とし、角度位置A0,A30と同様な手順で工作機械1のY軸位置およびZ軸位置(A軸中心位置Q60)を記録する。
同様にして、角度位置A90,A120,A150,A180における工作機械1のY軸位置およびZ軸位置(A軸中心位置Q90,Q120,Q150,Q180)を記録してゆく。
【0074】
図21(C)において、上述の検出動作を繰り返して得られた角度位置An(A0~A180)におけるA軸中心位置Qn(Q0~Q180)を画面上にプロットすると、これらは円弧状に並んだ点列QCとなる。これらの点列QCに対して、例えば最小二乗法などにより、円弧状の点列QCの中心点QCcの位置(各角度位置Anに共通の工具3の先端位置)を高精度に計算することができる。ここで得られた中心点QCcにより、工作機械1のA軸中心位置Qnから工具3の先端までのずれの距離(オフセット量)を正確に計測することができる。
【0075】
このような本実施形態によっても、前述した第1実施形態および第4実施形態と同様な効果が得られるとともに、工作機械1における並進軸(XYZ軸)の構造的な制約により検出動作の可能範囲が180度未満であっても、複数の角度位置Anでの検出動作によりA軸中心位置Qnから工具3の先端までのずれの距離(オフセット量)を正確に計測できる。
【0076】
〔第6実施形態の変形例〕
図22において、前述した第6実施形態で計測されたA軸中心位置Qnから工具3の先端までのずれの距離(オフセット量)は、工作機械1のNC装置に登録され、工作機械1の動作時の補正値として参照される。
工作機械1のNC装置に登録する際には、工具3の先端位置である中心点QCcから実際のA軸中心位置Qnまでの距離D(オフセット量)が必要になる。A軸中心位置Qnによる円弧状の点列QCの最小二乗法演算により、中心点QCcの位置とともに中心点QCcからA軸中心位置Qnまでの距離D(近似値)を示す近似円弧半径が得られるので、この半径を中心点QCcとA軸中心位置Qnとの実際の距離Dとすることができる。
【0077】
工作機械1のNC装置に登録する場合、距離Dを工具3に平行なZ軸方向の成分Dzと工具3と直交するY軸方向の成分Dyに分離しなければならない。このために、A軸中心位置Qnと工具3の先端(中心点QCc)とを結ぶ線分の角度θが必要となる。しかし、中心点QCcの計算に用いた最小二乗法では、近似円弧半径(距離D)を与える線分の角度θは得られない。
図23(A)において、前述した角度θが得られないことに加えて、前述した複数の角度位置An(A0~A180)で円弧状の点列QCとして検出されるA軸中心位置Qn(サンプリング点)は、点列QCの近似円弧に対してばらつき(径方向の変位)がある。また、A軸中心位置Qnを検出する角度位置Anとされる角度(0度~180度)で中心点QCcから延びる基準線Lnを引くと、各角度でのA軸中心位置Qnはこれらの基準線Lnに対してもばらつき(周方向の変位)をもっている。
このような誤差分布の下で、先の角度θの最適値を決定するために、以下のような操作を採用することができる。
【0078】
図23(B)において、第1の操作として、工具3がZ軸に沿った向き(角度位置A90)でのA軸中心位置Q90を採用してしまうことである。具体的には、中心点QCcからA軸中心位置Q90に伸ばした線分を求め、この線分とZ軸とのなす角度をθとする。
このような操作によれば、全体最適にはならないが、基準としては最もふさわしい。
【0079】
図23(C)において、第2の操作として、工具3がZ軸に対して所定角度(例えば40度)となる向き(角度位置A0から130度の角度位置A130)において、中心点QCcからA軸中心位置Q130に伸ばした線分を求め、この線分とZ軸から40度をなす基準線L130とのなす角度をθとしてもよい。
【0080】
さらに、複数の角度位置AnにあるA軸中心位置Qnにおいて、基準線Lnとの角度θnを求め、その平均値を求めてもよい。
このような操作によれば、操作が煩雑であるが、全体最適となる角度θを得ることができる。
前述した複数の角度位置AnにあるA軸中心位置Qnにおいては、全範囲を均等割りして角度θを求めてもよいが、一部の角度範囲のサンプリング密度を高めたりあるいは低くしたりしてもよい。
以上の操作により、角度θが得られたら、前述したZ軸方向の成分Dzと工具3と直交するY軸方向の成分Dy(
図22参照)は、それぞれDz=Dcosθ、Dy=Dsinθとして計算することができる。
【0081】
〔第1~第6実施形態の変形〕
前述した第1ないし第6の各実施形態においては、それぞれ検出ユニット20,20Aにより工具3の先端位置を検出した。
例えば、第1実施形態では、
図5に示すように、CCDカメラ26の検出画像261の中央に工具3の先端位置を捉え、検出画像261に表れる工具3の先端の影281の輪郭282から、工具3の先端位置283の座標(Tv,Th)を割り出していた。
この際、工具3の先端の凹凸形状が複雑であるなど、工具3の先端形状によっては、座標が正確に検出できないことがある。
これに対し、工具3の先端位置(Tv,Th)を簡単かつ正確に検出するために、以下に示す手順が利用できる。
【0082】
〔第7実施形態〕
図24(A)に示すように、CCDカメラ26(
図3参照)の検出画像261には、工具3の先端の影281が表れる(
図5と同様)。影281の輪郭282の一部には、工具3の先端位置283が表れ、その座標(Tv,Th)の計測が求められる。
本実施形態では、工具3をCCDカメラ26に対して回転させた状態で、CCDカメラ26で検出画像265を検出し(第1~第6実施形態における検出画像261~264と同様)、検出画像265から工具3の輪郭282を検出する。
本実施形態では、工具3が回転していることで、検出画像265に表れる輪郭282は回転中心に対して対称となり、この輪郭282の対称性から工具3の中心軸線284を正確に検出し、中心軸線284と輪郭282との交点を工具3の先端位置283として検出することができる。
【0083】
本実施形態において、輪郭282から工具3の中心軸線284を検出する際には、次のような演算処理を行う。
図24(B)に示すように、検出画像265において、工具3を所定の角度位置(例えば
図21(B)に示す角度位置A90)に配置し、その際の工具3の延伸方向D90とする。次に、延伸方向D90に沿って所定間隔で平行に、延伸方向D90に直交しつつ輪郭282を横断する複数の横断線30を設定してゆく。
図24(C)に示すように、設定した複数の横断線30に対して、それぞれ輪郭282との2つの交点31,32を検出し、さらに2つの交点31,32の中点33を検出する。そして、各横断線30の中点33を通る直線を検出することで、この直線を工具3の中心軸線284とすることができる。
【0084】
このような本実施形態では、工具3の延伸方向Dn(各角度位置An,工具3の向き、概略的な軸線方向)を利用して、回転対称の軸を検出することで、工具3の正確な中心軸線284を検出でき、正確な中心軸線284と輪郭282との交点から、工具3の先端位置283の座標(Th,Tv)を高精度に検出できる。
この際、中心軸線284の検出には複数の横断線30の中点検出を行い、先端位置283の検出には輪郭282との交点検出を行うことで、それぞれは幾何学的な演算処理で実行でき、これにより工具3の先端位置283ないし回転軸(A軸あるいはC軸)の中心位置を高精度に、かつ簡単に計測できる。
【0085】
本実施形態において、工具3の向き(延伸方向Dn)は任意の角度(角度位置An)とすることができる。
図25(A)において、工具3は角度位置A150とされ、延伸方向D150に直交する複数の横断線30が設定される。
図25(B)に示すように、各横断線30においては2つの交点31,32および中点33が検出され、複数の中点33を通る中心軸線284と輪郭282との交点から工具3の先端位置283の座標(Th,Tv)を正確に検出できる。
【0086】
〔第8実施形態〕
前述した第7実施形態では、輪郭282から工具3の中心軸線284を検出する際に、複数の横断線30の中点検出を行った。
これに対し、本実施形態では、回転対称図形である輪郭282の片側ずつのパターン認識により工具3の中心軸線284を検出する。
図26(A)に示すように、検出画像265において、工具3を所定の角度位置(例えば
図21(B)に示す角度位置A90)に配置し、その際の工具3の延伸方向D90とする。次に、延伸方向D90に対して輪郭282の片側(延伸方向D90に沿った直線で輪郭282を2分割した一部)の形状41を基準パターン40として検出する。
図26(B)に示すように、基準パターン40が検出できたら、基準パターン40を反転した形状に合致する対称パターン42を演算し、この対称パターン42に一致する形状43を輪郭282から検出する。対称パターン42が検出できたら、基準パターン40と対称パターン42との中間を通る直線(基準パターン40と対称パターン42との線対称の軸)を工具3の中心軸線284とする。
【0087】
このような本実施形態では、工具3の延伸方向Dn(各角度位置An,工具3の向き、概略的な軸線方向)を利用し、輪郭282の片側ずつのパターン認識により、工具3の正確な中心軸線284を検出でき、正確な中心軸線284と輪郭282との交点から、工具3の先端位置283の座標(Th,Tv)を高精度に検出できる。
この際、輪郭282の片側ずつのパターン認識として、基準パターン40および対称パターン42の検出は、それぞれ幾何学的な演算処理で実行でき、これにより工具3の先端位置283ないし回転軸(A軸あるいはC軸)の中心位置を高精度に、かつ簡単に計測できる。
【0088】
〔第9実施形態〕
前述した第7実施形態では、輪郭282から工具3の中心軸線284を検出したのち、中心軸線284と輪郭282との交点を検出して工具3の先端位置283とした。
これに対し、本実施形態では、工具3の先端部の輪郭282に補助輪郭線を設定することで、先端に複数の突起をもつ工具3や、中心から偏った先端をもつ工具3など、回転した状態では先端部の輪郭282の形状が不明瞭になる工具3についても、工具3の先端位置を確定できるようにする。
【0089】
図27(A)および
図27(B)に示すように、工具3の先端部には回転中心を挟んで対向する一対の刃先3Tが形成されていたとする。
図27(B)において、実線で示された刃先3Tは、工具3が回転することで、2点鎖線で示された位置へ移動する。
前述した各実施形態では、それぞれ工具3の側方(工具3の回転軸線と交差する方向)から、CCDカメラ26で工具3の先端部を撮影する。
例えば、CCDカメラ26が
図27(B)の図中下側から工具3を撮影するとして、一対の刃先3TがCCDカメラ26の光軸と直交方向に対向する状態(
図27(B)で実線の状態)では、一対の刃先3TをともにCCDカメラ26の合焦範囲Rf0に収めることができる。ところが、工具3が回転し、一対の刃先3TがCCDカメラ26の光軸に沿った状態に近づくにつれ(
図27(B)で2点鎖線の状態)、CCDカメラ26から各々の刃先3Tまでの距離の差が拡大し、一方がCCDカメラ26から遠い焦点深度範囲Rf1にあり、他方がCCDカメラ26から近い焦点深度範囲Rf2にある状態となり、CCDカメラ26が一対の刃先3Tの双方に合焦することはできない。
【0090】
このように、工具3を回転させることで、一対の刃先3TのCCDカメラ26からの距離が周期的に変化し、CCDカメラ26で撮影される画像には一部にボケが生じる。
図27(C)に示すように、工具3の影281の輪郭282は、先端を除き明瞭であるが、先端については一対の刃先3TがCCDカメラ26の光軸方向に変位するため、ボケが生じた状態となる。その結果、前述した第7~第8実施形態のように、中心軸線284と輪郭282との交点により工具3の先端位置283の座標を確定することができない。
これに対し、本実施形態では、前述した第7または第8実施形態と同様にして中心軸線284を検出するとともに、工具3の先端部の輪郭282に補助輪郭線を設定し、この輪郭補助線と中心軸線284との交点を工具3の先端位置283として検出する。具体的には、以下の手順を用いる。
【0091】
図28(A)において、工具3の影281に対して中心軸線284を検出したら、中心軸線284の両側に、所定距離Ofsをおいて、中心軸線284と平行な一対の平行線M,Mbを設定する。ここで、所定距離Ofsは、一対の平行線Ma,Mbと輪郭282との交点Ca,Cbが、輪郭282のボケが生じていない部分を通るように設定する。所定距離Ofsは、輪郭282の状態を見て調整してもよいが、工具3の刃先3Tの設計寸法に基づいて設定してもよい。
図28(B)において、一対の平行線Ma,Mbと輪郭282との交点Ca,Cbが得られたら、一対の交点Ca,Cbを通りかつ中心軸線284と直交する補助輪郭285を設定し、中心軸線284と補助輪郭285との交点を工具3の先端位置283として検出する。
【0092】
本実施形態では、補助輪郭285を設定することで、例えば一対の刃先3Tなど、先端に複数の突起をもつ工具3や、偏った先端をもつ工具3など、回転した状態では先端部の輪郭282の形状が不明瞭になる工具3についても、中心軸線284と補助輪郭285との交点により工具3の先端位置283を確定できる。これにより、多様な先端形状の工具3に対しても、単純な計算で工具3の先端位置283ないし回転軸(A軸あるいはC軸)の中心位置を高精度に計測できる。
【0093】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記各実施形態では、5軸制御の工作機械1,1AのC軸あるいはA軸の回転中心位置を計測したが、本発明を適用する工作機械および軸は任意に選択できる。
例えば、工作機械としては回転軸としてA軸およびB軸を有する5軸制御であってもよく、そのB軸の回転中心位置を計測してもよい。また、工作機械は4軸制御あるいは6軸制御などであってもよく、少なくとも回転軸中心位置が問題となる回転軸を有するものであればよい。
【0094】
前記実施形態では、工具3の先端位置を検出するために検出ユニット20,20Aを用いたが、検出ユニット20,20Aとしては平行光束28を形成するものに限らず、レーザ光ビームを平行に振って対象物を走査するもの(擬似的に平行光束となる)を用いてもよい。さらに、工具3に対して非接触であればよく、他の検出方式であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、工作機械の回転軸中心位置計測方法に利用できる。
【符号の説明】
【0096】
1,1A…工作機械、2…ワーク、3…工具、3T…刃先、9…制御装置、91…動作制御部、92…工具位置検出部、11…ベッド、12…移動テーブル、13…回転テーブル、131…クレードル、132…トラニオン、14…コラム、15…サドル、16…スライダ、17…主軸ヘッド、171…回転軸、18…主軸、20,20A…検出ユニット、21…ケース、22…固定手段を含む脚部、23…開口部、24…照明部、25…テレセントリックレンズ、26…撮像部であるCCDカメラ、261~265…検出画像、27…演算部、28…平行光束、281…影、282…輪郭、283…先端位置、284…中心軸線、285…補助輪郭線、29…検出対象物、31,32…交点、33…中点、A0~A270,An…角度位置、Ca,Cb…交点、Cc…周方向位置、D…距離、D1…第1方向、D2…第2方向、dc0…ずれ量、Dy…Y軸方向の成分、Dz…Z軸方向の成分、L01,L02…線分、L1…第1直線、L130…基準線、L2…第2直線、LA…線分、Ln…基準線、Ma,Mb…平行線、Ofs…所定間隔、P0~P270…工具先端位置、PA0,PA180…平面位置、PAc…中点、PBc…中心点、Pc…交点、Q0~Q180,Qn…A軸中心位置、QC…点列、QCc…中心点、Rc…径方向位置、Th,Tv…先端位置の座標、Tx0~Tx270…X軸座標、Ty0~Ty270…Y軸座標、Y1,Y2…Y軸位置、Z1,Z2…Z軸位置、θ,θn…角度。