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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】無人フォークリフトの初期設定方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
B66F9/24 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021110897
(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公開番号】P2023007817
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川内 直人
(72)【発明者】
【氏名】二橋 謙介
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 徳之
(72)【発明者】
【氏名】門地 正史
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩一
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-034497(JP,A)
【文献】特開平02-163298(JP,A)
【文献】実開昭62-140096(JP,U)
【文献】特開平01-146000(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02527288(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人フォークリフトがラックに対して荷降ろしを実行する際に停止する停止位置の床面傾きの計測値を取得するステップと、
取得した前記計測値から、所定の傾きパターンを検出した停止位置を精密調整位置として設定するステップと、
前記精密調整位置において、前記無人フォークリフトを動作プログラムに従って荷降ろしを実行させて、前記無人フォークリフトにより荷降ろしされたパレットのずれ量を計測するステップと、
計測した前記ずれ量に基づいて、前記停止位置における前記無人フォークリフトの指令値を補正するステップと、
を有し、
前記精密調整位置を記憶するステップにおいて、複数の前記ラックが連結されてなる連続ラックの左右方向の両端及び中央に対応する停止位置を前記精密調整位置として更に設定する、
無人フォークリフトの初期設定方法。
【請求項2】
無人フォークリフトがラックに対して荷降ろしを実行する際に停止する停止位置の床面傾きの計測値を取得するステップと、
取得した前記計測値から、所定の傾きパターンを検出した停止位置を精密調整位置として設定するステップと、
前記精密調整位置において、前記無人フォークリフトを動作プログラムに従って荷降ろしを実行させて、前記無人フォークリフトにより荷降ろしされたパレットのずれ量を計測するステップと、
計測した前記ずれ量に基づいて、前記停止位置における前記無人フォークリフトの指令値を補正するステップと、
を有し、
前記精密調整位置を設定するステップにおいて、左右方向に連続する第1の停止位置及び第2の停止位置の床面がそれぞれ前記左右方向の逆方向に傾く傾きパターンを検出した場合に、前記第1の停止位置及び前記第2の停止位置を前記精密調整位置として設定する、
無人フォークリフトの初期設定方法。
【請求項3】
無人フォークリフトがラックに対して荷降ろしを実行する際に停止する停止位置の床面傾きの計測値を取得するステップと、
取得した前記計測値から、所定の傾きパターンを検出した停止位置を精密調整位置として設定するステップと、
前記精密調整位置において、前記無人フォークリフトを動作プログラムに従って荷降ろしを実行させて、前記無人フォークリフトにより荷降ろしされたパレットのずれ量を計測するステップと、
計測した前記ずれ量に基づいて、前記停止位置における前記無人フォークリフトの指令値を補正するステップと、
を有し、
前記精密調整位置を設定するステップにおいて、前記停止位置の床面が前記無人フォークリフトの後側よりも前側の方が低くなる傾きパターンを検出した場合に、当該停止位置を前記精密調整位置として設定する、
無人フォークリフトの初期設定方法。
【請求項4】
前記精密調整位置を設定するステップにおいて、左右方向に連続する第1の停止位置及び第2の停止位置の床面がそれぞれ前記左右方向の逆方向に傾く傾きパターンを検出した場合に、前記第1の停止位置及び前記第2の停止位置を前記精密調整位置として設定する、
請求項1に記載の無人フォークリフトの初期設定方法。
【請求項5】
前記精密調整位置を設定するステップにおいて、前記停止位置の床面が前記無人フォークリフトの後側よりも前側の方が低くなる傾きパターンを検出した場合に、当該停止位置を前記精密調整位置として設定する、
請求項1又は2に記載の無人フォークリフトの初期設定方法。
【請求項6】
前記計測値を取得するステップにおいて、前記無人フォークリフトの左右方向及び前後方向の車輪位置を模擬し、前記左右方向の傾斜を計測する第1傾斜計及び前記前後方向の傾斜を計測する第2傾斜計を搭載した治具を前記停止位置に配置して、当該停止位置の床面の傾きの計測値を取得する、
請求項1からの何れか一項に記載の無人フォークリフトの初期設定方法。
【請求項7】
前記指令値を補正するステップにおいて、前記精密調整位置に設定されなかった停止位置については、左右に位置する前記精密調整位置として設定された停止位置において計測された前記ずれ量から計算した推定ずれ量に基づいて、前記指令値を補正する、
請求項1からの何れか一項に記載の無人フォークリフトの初期設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無人フォークリフトの初期設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無人フォークリフトは、例えばレーザセンサで周辺物体との距離を計測して、自機の位置及び対象の荷物(パレット)の位置を特定し、ラックへの荷降ろし、及びラックからの荷取り作業を自動実行する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
無人フォークリフトが正しく荷降ろし及び荷取り作業を実施するためには、無人フォークリフトの位置特定の精度を高くすることが求められる。このため、倉庫等の作業領域に導入する際には、無人フォークリフトを事前に作成した動作プログラムで実際に動作させて、実環境とのずれ量を補正するコミッショニング(初期設定)作業が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-210586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無人フォークリフトの作業エリアでは、複数のラックが左右方向に連結されている。ラックの左右方向におけるパレット一つ分の領域を「連」、上下方向におけるパレット一つ分の領域を「段」という。また、ラックは前後方向に複数台並べたとき、前後方向におけるパレット一つ分の領域を「列」という。従来の初期設定作業は、無人フォークリフトが荷降ろし及び荷取りを実行する全ての箇所(停止位置)、すなわち、ラックの各列について、各連及び各段で実際に荷降ろしを実行させてずれ量を計測していた。しかしながら、このような作業は煩雑であり、多大な作業時間が必要となる。
【0006】
また、作業の効率化のため、初期設定のずれ量計測箇所の間引きを行うことが考えられる。例えば、各列のラックについて、左右方向の両端及び中央の3箇所の連のみでずれ量を計測する方法が考えられる。しかしながら、このような方法では、ラックの両端及び中央以外の場所で床面が左右方向に傾斜が不連続となる箇所(例えば、ハの字状、Vの字状となる床面)、又は、前後方向に傾斜した箇所(例えば、無人フォークリフトが前のめりとなってしまうような床面)がある場合に、このような箇所のずれ量を計測できない。そうすると、このような床面が傾斜した箇所において無人フォークリフトが荷降ろしをした際に、パレット同士、又はパレットとラックとが接触するリスクが生じる。
【0007】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、無人フォークリフトの動作精度の低下を抑制しつつ、初期作業を効率化することができる無人フォークリフトの初期設定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様によれば、無人フォークリフトの初期設定方法は、無人フォークリフトがラックに対して荷降ろしを実行する際に停止する停止位置の床面傾きの計測値を取得するステップと、取得した前記計測値から、所定の傾きパターンを検出した停止位置を精密調整位置として設定するステップと、前記精密調整位置において、前記無人フォークリフトを動作プログラムに従って荷降ろしを実行させて、前記無人フォークリフトにより荷降ろしされたパレットのずれ量を計測するステップと、計測した前記ずれ量に基づいて、前記停止位置における前記無人フォークリフトの指令値を補正するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る無人フォークリフトの初期設定方法によれば、無人フォークリフトの動作精度の低下を抑制しつつ、初期作業を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態に係る無人フォークリフトの作業エリアを示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る初期設定作業用の治具及び無人フォークリフトの構成を示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係る初期設定方法の一例を示す第1のフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態に係る初期設定方法の一例を示す第2のフローチャートである。
図5】本開示の一実施形態に係る傾きパターンの一例を示す第1の図である。
図6】本開示の一実施形態に係る傾きパターンの一例を示す第2の図である。
図7】本開示の一実施形態に係る傾きパターンの一例を示す第3の図である。
図8】本開示の一実施形態に係る精密調整位置の設定例を示す第1の図である。
図9】本開示の一実施形態に係る初期設定方法の一例を示す第3のフローチャートである。
図10】本開示の一実施形態に係る傾きパターンの一例を示す第4の図である。
図11】本開示の一実施形態に係る精密調整位置の設定例を示す第2の図である。
図12】本開示の一実施形態に係るずれ量の計測例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態に係る無人フォークリフトの初期設定方法について、図1図12を参照しながら説明する。
【0012】
(無人フォークリフトの作業エリアについて)
図1は、本開示の一実施形態に係る無人フォークリフトの作業エリアを示す図である。
図1に示すように、無人フォークリフト90の作業エリアには、複数のラックRが設けられている。図1の例では、複数のラックR(R1、R2、・・・)が左右方向(Y方向。間口方向とも記載する。)に連結される。また、各ラックR(R1、R10)は、前後方向(X方向。奥行方向とも記載する。)に背中合わせにして配置される。
【0013】
例えば、ラックR1は、間口方向(Y方向)にパレットPを載置する領域を示す連(連A1、A2)を2つ有している。また、ラックR1は、上下方向(Z方向)にパレットPを載置する領域を示す段(段B1、B2、B3)を3つ有している。更に、ラックR1は、奥行方向(X方向)にパレットPを載置する領域を示す列(列C1)を1つ有している。すなわち、ラックR1は、全体で6か所、パレットPの載置場所を有している。他のラックRも同様の構成を有している。なお、ラックRが有する連、段、及び列の数は一例であり、他の実施形態では、ラックRの連、段、及び列の数を増加又は減少させてもよい。
【0014】
無人フォークリフト90は、本体部900と、リフト装置901と、フォーク902とを備えている。無人フォークリフト90は、荷降ろしを実行する際に、無人フォークリフト90の左右方向(Fy方向)の位置を、荷降ろしの対象となる連の左右方向(Y方向)の所定位置に合わせるとともに、フォーク902が設けられている側(-Fx側)をラックRに向けて停止する。つまり、ラックRの各連の正面が無人フォークリフト90の停止位置となる。なお、以降の説明において、連と停止位置とを同じ符号で記載する場合がある。例えば、ラックR1の連A1に対応する停止位置を、停止位置A1とも記載する。
【0015】
また、無人フォークリフト90は、リフト装置901によりフォーク902を上下方向(Fz方向)及び前後方向(Fx方向)に移動させて、各連の各段の所定位置にパレットPを載置する荷降ろしを実行する。
【0016】
上記したように、従来技術の無人フォークリフト90の初期設定方法では、ラックRの全ての連の全ての段について、無人フォークリフト90で実際にパレットPの荷降ろしを実行することにより、パレットPの目標載置位置と、実際の載置位置とのずれ量を計測していた。しかしながら、作業エリアには多数のラックRが設置されるので、従来の技術では初期設定に非常に時間がかかっていた。このため、本実施形態に係る初期設定方法では、初期設定用の治具により無人フォークリフト90の各停止位置の床面の傾きを計測して、無人フォークリフト90によるずれ量の実測を行う箇所を間引きして、効率化を図っている。以下、本実施形態に係る初期設定方法の詳細について説明する。
【0017】
(初期設定用の治具について)
図2は、本開示の一実施形態に係る初期設定作業用の治具及び無人フォークリフトの構成を示す図である。
まず、本実施形態に係る初期設定用の治具10について説明する。治具10は、作業エリア内で実際に運用される無人フォークリフト90を模擬したものである。治具10は、無人フォークリフト90の各停止位置について、作業者が床面の傾斜を計測するために用いられる。
【0018】
図2に示すように、治具10は、本体部101と、後輪模擬部102と、前輪模擬部103と、第1傾斜計104と、第2傾斜計105と、位置決めツール106と、持ち手107とを備えている。
【0019】
本体部101は、第1部分101a及び第2部分101bからなり、上方から見てT字状に形成されている。第1部分101aは、T字の頭部であり、治具10の左右方向(Y方向)に延びるフレームである。第2部分101bは、T字の脚部であり、第1部分101aから治具10の前後方向(X方向)に延びるフレームである。
【0020】
後輪模擬部102は、本体部101の第1部分101aの下方に取り付けられた一対のタイヤ(キャスター)である。後輪模擬部102は、タイヤ間の左右方向の距離(トレッドTR1)が、無人フォークリフト90の後輪RWのトレッドTR9と一致するように配置される。
【0021】
前輪模擬部103は、本体部101の第2部分101bの下方に取り付けられる。前輪模擬部103は、たとえばゴムなどで形成された脚部である。前輪模擬部103は、後輪模擬部102との間の距離(ホイールベースWB1)が、無人フォークリフトの前輪FWと後輪RWとのホイールベースWB9と一致するように配置される。
【0022】
第1傾斜計104は、本体部101の第1部分101a上に設置され、治具10の左右方向(Y方向)の傾斜を計測する。
【0023】
第2傾斜計105は、本体部101の第2部分101b上に設置され、治具10の前後方向(X方向)の傾斜を計測する。
【0024】
位置決めツール106は、ラックRの各連に対する治具10の位置を決めるための目印である。図2に示すように、位置決めツール106は、中央及び左右の3箇所に設けられる。左右の位置決めツール106は、後輪模擬部102の位置にあわせて配置される。
【0025】
持ち手107は、作業者が手に持って引っ張ることにより、治具10を移動させる。持ち手107は、図2に示すように紐状の構成であってもよいし、本体部101の第2部分101bから上方に延びるフレームなどであってもよい。
【0026】
(初期設定方法について)
図3は、本開示の一実施形態に係る初期設定方法の一例を示す第1のフローチャートである。
以下、図3を参照しながら、無人フォークリフト90の初期設定手順の詳細について説明する。
【0027】
まず、初期設定作業を行う作業者は、無人フォークリフト90の停止位置に治具10を設置して、各停止位置の床面の傾斜を計測する(ステップS10)。
【0028】
例えば、ラックR1(図1)の一つ目の連A1(停止位置A1)の計測を行うとする。作業者は、治具10を停止位置A1に設置する。このとき、作業者は、治具10の位置決めツール106を目印として、治具10の後輪模擬部102及び前輪模擬部103の位置が、無人フォークリフト90が連A1に荷降ろしを行う際の前輪FW及び後輪RWの位置と一致するように、治具10の位置を調整する。
【0029】
作業者は、治具10を停止位置A1に設置すると、第1傾斜計104により停止位置A1の左右方向(図1のY方向)における床面の傾斜の計測値(θX)を取得する。また、作業者は、第2傾斜計105により停止位置A1の前後方向(図1のX方向)における床面の傾斜の計測値(θY)を取得する。
【0030】
作業者は、他の停止位置についても同様に、治具10を使用して左右方向及び前後方向の床面の傾斜を計測する。
【0031】
本実施形態に係る治具10は、後輪模擬部102及び前輪模擬部103を、無人フォークリフト90のトレッドTR9及びホイールベースWB9と一致するように配置している。このようにすることで、治具10は、無人フォークリフト90を各停止位置に停止させたときに、無人フォークリフト90がどの程度傾くかを模擬することができる。
【0032】
次に、作業者は、各停止位置のうち、実際に無人フォークリフト90を動作させて、ずれ量を計測する必要がある精密調整位置を設定する(ステップS20)。精密調整位置の設定手順の詳細については、図4図11を参照しながら説明する。
【0033】
図4は、本開示の一実施形態に係る初期設定方法の一例を示す第2のフローチャートである。
図4のフローチャートは、床面の左右方向(図1のY方向)の傾斜に着目した精密調整位置の設定手順を示している。図3のステップS10において、全ての停止位置の傾斜の計測値を取得すると、作業者は、図4の手順に従って、精密調整位置の設定を行う。
【0034】
作業者は、左右方向(図1のY方向)に連結された複数のラックRの各停止位置について、傾きパターンが不連続となる点の有無を確認する(ステップS201)。作業者は、第1傾斜計104の計測値(θX)が上限値以上(例えばθX≧+0.1度)のプラス値であれば床面が右下がりに傾き、下限値以下(例えばθX≦-0.1度)のマイナス値であれば左下がりに傾いていると判断する。また、作業者は、第1傾斜計104の計測値(θX)が下限値~上限値(例えば-0.1度<θX<+0.1度)の範囲内であれば床面が水平であると判断する。
【0035】
図5は、本開示の一実施形態に係る傾きパターンの一例を示す第1の図である。
図5の例のように、ラックR1の停止位置A1は右下がりに傾斜しており、停止位置A2は左下がりに傾斜しているとする。そうすると、停止位置A1のZ軸は右側(+Y側)に傾く。また、停止位置A2のZ軸は、停止位置A1とは逆方向の左側(-Y側)に傾く。つまり、停止位置A1、A2では、それぞれZ軸がラックR1の中央に向かって傾く凸状(ハの字)の傾きパターンとなっている。
【0036】
このような傾きパターンのあるラックR1において無人フォークリフト90を運用すると、無人フォークリフト90のFz軸が停止位置A1では右側(+Fy側)に傾き、停止位置A2では左側(-Fy側)に傾く。そうすると、無人フォークリフト90は、荷降ろしをするときに、目標載置位置よりもラックR1の中央側にパレットPを載置してしまう傾向が生じる。この傾向は特に上段側ほど大きくなるため、最も上の段B3では、ラックR1中央付近でパレットP同士が接触するリスクが生じる。接触リスクのある停止位置A1、A2については、無人フォークリフト90のずれ量を精密に計測して、ずれ量に応じて無人フォークリフト90の動作を補正することにより、接触リスクを低減させる必要がある。
【0037】
したがって、作業者は、このように、左右に連続する停止位置A1、A2において、傾きパターンが不連続(逆方向)となる「ハの字」になっていることを検出すると(ステップS201:YES)、これら停止位置A1、A2を精密調整位置として設定する(ステップS202)。
【0038】
図6は、本開示の一実施形態に係る傾きパターンの一例を示す第2の図である。
図6の例のように、ラックR2の停止位置A3は左下がりに傾斜しており、停止位置A4は右下がりに傾斜しているとする。そうすると、停止位置A3のZ軸は左側(-Y側)に傾く。また、停止位置A4のZ軸は、停止位置A3とは逆方向の右側(+Y側)に傾く。つまり、停止位置A3、A4では、それぞれZ軸がラックR2の外側に向かって傾く凹状(Vの字)の傾きパターンとなっている。
【0039】
このような傾きパターンのあるラックR2において無人フォークリフト90を運用すると、無人フォークリフト90のFz軸が停止位置A3では左側(-Fy側)に傾き、停止位置A4では右側(+Fy側)に傾く。そうすると、無人フォークリフト90は、荷降ろしをするときに、目標載置位置よりもラックR2の外側にパレットPを載置してしまう傾向が生じる。この傾向は特に上段側ほど大きくなるため、最も上の段B3では、ラックR2の両端付近でパレットPがラックR2に接触するリスクが生じる。接触リスクのある停止位置A3、A4については、無人フォークリフト90のずれ量を精密に計測して、ずれ量に応じて無人フォークリフト90の動作を補正することにより、接触リスクを低減させる必要がある。
【0040】
したがって、作業者は、このように、左右に連続する停止位置A3、A4において、傾きパターンが不連続(逆方向)となる「Vの字」になっていることを検出すると(ステップS201:YES)、これら停止位置A3、A4を精密調整位置として設定する(ステップS202)。
【0041】
図7は、本開示の一実施形態に係る傾きパターンの一例を示す第3の図である。
図7の例のように、ラックR4の停止位置A7、A8については、同一方向(いずれも左下がり)に床面が傾斜しているとする。作業者は、このように左右に連続する停止位置A5、A6において、同じ傾きが連続する(一定傾向の)傾きパターンを検出すると(ステップS201:NO)、これら停止位置A5、A6については精密調整位置として設定しない。複数の停止位置が連続して水平である場合も同様である。
【0042】
また、作業者は、複数のラックRが連結されてなる連続ラックについて、左右方向(図1のX方向)の両端及び中央の停止位置を、精密調整位置として更に設定する(ステップS203)。
【0043】
図8は、本開示の一実施形態に係る精密調整位置の設定例を示す第1の図である。
図8に示すように、作業エリアに二つの連続ラックA、Bが設置されているとする。連続ラックAは、左右方向(図1のY方向)に連結されたラックR1~R5からなる。連続ラックBは、左右方向(図1のY方向)に連結されたラックR6~R10からなる。なお、連続ラックA及び連続ラックBは連結されていない。
【0044】
例えば、作業者は、連続ラックAの両端の停止位置A1、A10、及び中央の停止位置A6を精密調整位置として設定する。同様に、作業者は、連続ラックBの両端の停止位置A11、A20、及び中央の停止位置A16を、精密調整位置として設定する(図4のステップS203)。なお、図8の例のように、停止位置A1~A10が偶数個である場合、中央のラックR3の停止位置A5、A6の一方を選択して精密調整位置として設定する。どちらを選択するかは作業者が任意に決めてもよい。
【0045】
また、図8には、連続ラックA、Bの各停止位置のZ軸の傾きの例が示されている。連続ラックAについて、ラックR1の停止位置A1、A2は、傾きパターンが不連続となるハの字(図5)となっている(図4のステップS201:YES)。ラックR2の停止位置A3、A4は、傾きパターンが不連続となるVの字(図6)となっている(図4のステップS201:YES)。したがって、作業者は、これら停止位置A1~A4を精密調整位置に設定する(図4のステップS202)。
【0046】
連続ラックBについて、ラックR6の停止位置A12と、ラックR7の停止位置A13とは、傾きパターンが不連続(ハの字)となっている。このように、ラックを跨いで連続する停止位置A12、A13についても、傾きパターンが不連続となる場合には(図4のステップS201:YES)、これら停止位置A12、A13を精密調整位置に設定してもよい(図4のステップS202)。
【0047】
連続ラックAについて、ラックR3~R5の停止位置A5~A10は、一定傾向の傾きパターンが連続している(図4のステップS201:NO)。したがって、これら停止位置A5~A10のうち、連続ラックAの端部及び中央の連に該当しない停止位置A5、A7、A8、A9は精密調整位置として設定されずに間引かれる。同様に、連続ラックBについて、ラックR7~R10の停止位置A14~A20は一定傾向の傾きパターンが連続している(図4のステップS201:NO)。これら停止位置A14~A20のうち、連続ラックBの端部及び中央の連に該当しない停止位置A14、A15、A17、A18、A19は精密調整位置として設定されずに間引かれる。このようにすることで、傾きパターンに変化がない停止位置については、ずれ量の計測を省略することができる。
【0048】
図9は、本開示の一実施形態に係る初期設定方法の一例を示す第3のフローチャートである。
図9のフローチャートは、床面の前後方向(図1のX方向)の傾斜に着目した精密調整位置の設定手順を示している。作業者は、図4の手順に続いて、図9の手順に従って精密調整位置の設定を更に行う。なお、他の実施形態では、作業者は、図4の手順の前に図9の手順を行ってもよい。
【0049】
作業者は、複数のラックRの各停止位置について、無人フォークリフト90のフォーク902側(荷降ろしの対象となるラックRを向く側)(図1の-Fx側)の方が、本体部900側(図1の+Fx側)よりも低くなる(すなわち、停止位置のラックR側(-X側)を前側としたとき、無人フォークリフト90が停止位置の前側に傾く前のめり状態になる)傾きパターンの有無を確認する(ステップS211)。作業者は、第2傾斜計105の計測値(θY)が上限値以上(例えばθY≧+0.15度)のプラス値である場合は、無人フォークリフト90のフォーク902側が本体部900側より高くなる(無人フォークリフト90が停止位置の後ろ側(+X側)に傾く後傾姿勢となる)ように床面が傾斜しており、計測値が下限値以下(例えばθY≦-0.15度)のマイナス値である場合は、無人フォークリフト90の本体部900側がフォーク902側より高くなる(無人フォークリフト90が停止位置の前側(-X側)に傾く前傾姿勢となる)ように床面が傾斜していると判断する。また、作業者は、第2傾斜計105の計測値が下限値~上限値(例えば-0.15度<θY<+0.15度)の範囲内であれば床面が水平であると判断する。
【0050】
図10は、本開示の一実施形態に係る傾きパターンの一例を示す第4の図である。
図10の例のように、無人フォークリフト90は、ラックR2に対し荷降ろしを行うものとする。ラックR2の停止位置A3、A4は、ラックR2側(-X側)が前側であり、ラックR2から離れる側(+X側)が後ろ側となる。また、図10の例では、ラックR2の停止位置A3、A4の床面は前側(-X側)が、後側(+X側)より低くなるように傾斜しているとする。
【0051】
このような傾きパターンのあるラックR2において無人フォークリフト90を運用すると、無人フォークリフト90のFz軸が停止位置A3、A4では前側(-Fx側)に傾く前のめり状態となる。そうすると、無人フォークリフト90は、荷降ろしをするときに、目標載置位置よりもラックR2の奥側(図10の-X側)にパレットPを載置してしまう傾向が生じる。この傾向は特に上段側ほど大きくなるため、最も上の段B3にパレットPを荷降ろしするときに、ラックR2の背後に設置されたラックR(例えばラックR6)に載置されたパレットPと接触するリスクが生じる。接触リスクのある停止位置A3、A4については、無人フォークリフト90のずれ量を精密に計測して、ずれ量に応じて無人フォークリフト90の動作を補正することにより、接触リスクを低減させる必要がある。
【0052】
したがって、作業者は、このように、無人フォークリフト90が前のめり状態となる傾斜パターンになっていることを検出すると(ステップS211:YES)、この停止位置A3、A4を精密調整位置として設定する(ステップS212)。
【0053】
また、作業者は、連続ラックA、Bの両端及び中央の停止位置を精密調整位置として更に設定する(ステップS213)。この処理は、図4のステップS203と同様である。なお、図4の手順を先に実行し、既に連続ラックA、Bそれぞれの両端及び中央を精密調整位置として設定済みである場合は、ステップS213を省略してもよい。
【0054】
図11は、本開示の一実施形態に係る精密調整位置の設定例を示す第2の図である。
図11には、連続ラックA(ラックR1~R5)及び連続ラックB(ラックR6~R10)のZ軸の傾き、及び精密調整位置の設定例が示されている。図11の連続ラックA、Bは、図8の連続ラックA、Bと同じものである。
【0055】
例えば、作業者は、連続ラックAの両端の停止位置A1、A10、及び中央の停止位置A6を精密調整位置として設定する。同様に、作業者は、連続ラックBの両端の停止位置A11、A20、及び中央の停止位置A16を精密調整位置として設定する(図4のステップS213)。
【0056】
連続ラックAについて、ラックR2の停止位置A3、A4は、傾きパターンが前傾(図10)となっている(図9のステップS211:YES)。したがって、作業者は、これら停止位置A3、A4を精密調整位置に設定する(図9のステップS212)。
【0057】
また、連続ラックAの他の停止位置A1~A2、A5~A10と、連続ラックBの停止位置A11~A20の傾きパターンは前傾ではない(図9のステップS211:NO)。したがって、これらの停止位置A1~A2、A5~A10、A11~A20のうち、端部及び中央に該当しない停止位置は、精密調整位置として設定されずに間引かれる。このようにすることで、前傾ではない停止位置については、ずれ量の計測を省略することができる。
【0058】
なお、図4及び図9に示す精密調整位置を設定する手順において、作業者は、各停止位置の傾斜の計測値をコンピュータ(不図示)に入力して、コンピュータに傾きパターンの計算、及び精密調整位置の設定を自動的に実行させるようにしてもよい。
【0059】
精密調整位置の設定が完了すると、作業者は、図3の手順に戻り、各精密調整位置におけるずれ量の計測を行う(ステップS30)。具体的には、作業者は、精密調整位置となる連の各段B1~B3に対し、無人フォークリフト90に所定の動作プログラムに従って実際にパレットPを荷降ろしさせて、目標載置位置と、パレットPの実際の載置位置とのずれ量を計測する。
【0060】
図12は、本開示の一実施形態に係るずれ量の計測例を示す図である。
図12に示すように、作業者は、精密調整位置として設定された連の各段に、パレットPの目標載置位置の中央基準位置を示すガイドG1a、左基準位置を示すガイドG1b、及び右基準位置を示すガイドG1cを付す。また、作業者は、パレットPに、中央基準位置を示すガイドG2a、左基準位置を示すガイドG2b、及び右基準位置を示すガイドG2cを付す。パレットPのガイドG2a~G2cは、パレットPが目標載置位置に正しく載置されたときに、ガイドG1a~G1cと左右方向及び前後方向の位置が一致するように(ガイドG1a~G1cの矢印の先端部と、ガイドG2a~G2cの下端部とが一致するように)配置されている。
なお、この左右は、無人フォークリフト90が+Fxに走行する方向から見ての左側(+Fy側)及び右側(-Fy側)を表している。
【0061】
ここでは、一例として、作業者がラックR1の連A1、段B3におけるずれ量を計測する場合について説明する。まず、作業者は、無人フォークリフト90に、ラックR1の連A1、段B3に対し、ガイドG2a~G2cを付したパレットPの荷降ろしを実行させる。
【0062】
パレットPが載置されると、作業者は、まず中央のずれ量(D1)を計測する。作業者は、目標載置位置のガイドG1a及びパレットPのガイドG2aの左右方向(Fy方向)のずれ量ΔFyを計測する。図12の例では、連A1の段B3における左右方向のずれ量ΔFyは「-3mm」である。
【0063】
次に、作業者は、無人フォークリフト90の左側のずれ量(D2)と、右側のずれ量(D3)とを計測する。作業者は、目標載置位置のガイドG1b及びパレットPのガイドG2bの前後方向(Fx方向)のずれ量ΔFxを計測する。同様に、作業者は、目標載置位置のガイドG1c及びパレットPのガイドG2cの前後方向(Fx方向)のずれ量ΔFxを計測する。図12の例では、連A1の段B3における左側の前後方向のずれ量ΔFxは「30mm」であり、右側の前後方向のずれ量ΔFxは「36mm」である。また、作業者は、左側の前後方向のずれ量ΔFx(D2)と、右側の前後方向のずれ量ΔFx(D3)と、パレットPのガイドG2b及びガイドG2c間の距離とから、無人フォークリフトのZ軸回りの回転角θFzを計算する。
【0064】
次に、作業者は、計測したずれ量(左右方向のずれ量ΔFy、前後方向のずれ量ΔFx、及びFz軸のずれ量ΔθFz)に基づいて、無人フォークリフト90の指令値を補正する(ステップS40)。以下、図5~7及び図10を例として、補正内容の一例について説明する。
【0065】
図5に示すように、ラックR1の停止位置A1、A2はハの字の傾きがあるとする。この場合、作業者は、計測したずれ量に基づいて、無人フォークリフト90の走行中心(ラックRの左右方向における移動量)の指令値を補正する。例えば、作業者は、ラックR1の停止位置A1において、無人フォークリフト90の走行中心を5mm、無人フォークリフト90の右側(-Fy側)にずらすように、指令値を補正する。また、作業者は、ラックR1の停止位置A2において、無人フォークリフト90の走行中心を5mm、無人フォークリフト90の左側(+Fy側)にずらすように、指令値を補正する。
【0066】
図6に示すように、ラックR2の停止位置A3、A4はVの字の傾きがあるとする。この場合、作業者は、計測したずれ量に基づいて、無人フォークリフト90の走行中心(ラックRの左右方向における移動量)の指令値を補正する。例えば、作業者は、ラックR2の停止位置A3において、無人フォークリフト90の走行中心を5mm、無人フォークリフト90の左側(+Fy側)にずらすように、指令値を補正する。また、作業者は、ラックR2の停止位置A4において、無人フォークリフト90の走行中心を5mm、無人フォークリフト90の右側(-Fy側)にずらすように、指令値を補正する。
【0067】
また、図7に示すように、ラックR4の停止位置A7、A8は傾きが一定であり、精密調整位置として設定なかった(ずれ量が計測されなかった)とする。作業者は、このように、ずれ量が計測されていない停止位置については、これらに隣接して精密調整位置として設定された停止位置のずれ量に基づいて、ずれ量を推定する。図8の例では、連続ラックAの停止位置A7~A9についてはずれ量が計測されない。この場合、作業者は、停止位置A6及び停止位置A10のずれ量から、その中間に位置する停止位置A7~A9のずれ量(推定ずれ量)を計算する。そして、作業者は、計算した推定ずれ量から、無人フォークリフト90の指令値を補正する。例えば、図7に示すように、作業者は、ラックR4の停止位置A7において、無人フォークリフト90の走行中心を10mm、無人フォークリフト90の左側(+Fy側)にずらすように、指令値を補正する。また、作業者は、ラックR2の停止位置A8において、無人フォークリフト90の走行中心を5mm、無人フォークリフト90の左側(+Fy側)にずらすように、指令値を補正する。
【0068】
図10に示すように、ラックR2の停止位置A3、A4は無人フォークリフト90が前のめり状態となる傾きがあるとする。この場合、作業者は、例えば計測したずれ量に基づいて、無人フォークリフト90とラックR2との間の距離(ラックRの奥行方向における移動量)の指令値を補正する。
【0069】
なお、作業者は、ずれ量の計測値をコンピュータ(不図示)に入力して、コンピュータに精密調整位置に設定されなかった停止位置における推定ずれ量の計算、指令値の補正量の計算などを自動的に実行させるようにしてもよい。
【0070】
(作用効果)
以上のように、本実施形態に係る無人フォークリフト90の初期設定方法は、停止位置の床面傾きの計測値を取得するステップ(S10)と、取得した計測値から、所定の傾きパターンを検出した停止位置を精密調整位置として設定するステップ(S20)と、精密調整位置において、無人フォークリフト90を動作プログラムに従って荷降ろしを実行させて、無人フォークリフト90により荷降ろしされたパレットPのずれ量を計測するステップ(S30)と、計測したずれ量に基づいて、停止位置における無人フォークリフト90の指令値を補正するステップ(S40)と、を有する。
【0071】
このようにすることで、所定の傾きパターンが検出された停止位置については精密にずれ量を計測して指令値を補正することにより、無人フォークリフト90の動作精度の低下を抑制することができる一方で、他の停止位置におけるずれ量の計測を省略して、無人フォークリフト90の初期設定を効率化することができる。
【0072】
また、精密調整位置を設定するステップ(S20)において、連続ラックの左右方向の両端及び中央に対応する停止位置を精密調整位置として更に設定する。
【0073】
このようにすることで、連続ラックの最低限の停止位置を精密調整位置として設定することができる。これにより、連続ラックの両端及び中央の停止位置におけるずれ量から、他の停止位置におけるずれ量を推定して補完することが可能となる。
【0074】
また、精密調整位置を設定するステップ(S20)において、左右方向に連続する停止位置の床面がそれぞれ左右方向の逆方向に傾く(ハの字、又はVの字となる)傾きパターンを検出した場合に、これら停止位置を精密調整位置として設定する。
【0075】
このようにすることで、傾き傾向が変化する停止位置については、精密にずれ量を計測して、無人フォークリフト90の動作に関する指令値を適切に補正することができる。これにより、無人フォークリフト90の動作精度の低下を抑制することができる。
【0076】
また、精密調整位置を設定するステップ(S20)において、停止位置の床面が無人フォークリフト90の後側よりも前側の方が低くなる傾きパターン(前のめり)を検出した場合に、当該停止位置を精密調整位置として設定する。
【0077】
このようにすることで、無人フォークリフト90が前のめりになるような場所では、精密にずれ量を計測して、無人フォークリフト90の動作に関する指令値を適切に補正することができる。これにより、無人フォークリフト90の動作精度の低下を抑制することができる。
【0078】
また、計測値を取得するステップ(S10)において、無人フォークリフト90の左右方向及び前後方向の車輪位置を模擬し、左右方向の傾斜を計測する第1傾斜計104及び前後方向の傾斜を計測する第2傾斜計105を搭載した治具10を停止位置に配置して、当該停止位置の床面の傾きの計測値を取得する。
【0079】
このようにすることで、実際に無人フォークリフト90を動作させることなく、各停止位置において無人フォークリフト90がどの程度傾くかを簡易に模擬することができる。
【0080】
また、指令値を補正するステップ(S40)において、精密調整位置に設定されなかった停止位置については、左右に位置する精密調整位置として設定された停止位置において計測されたずれ量から推定した推定ずれ量に基づいて、指令値を補正する。
【0081】
このようにすることで、ずれ量の計測を省略した停止位置についても、他の停止位置のずれ量から、どの程度のずれが生じるかを推定することができる。これにより、ずれ量の計測を省略したとしても、無人フォークリフト90の動作精度の低下を抑制することができる。
【0082】
以上のとおり、本開示に係る実施形態を説明したが、上記した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。上記した実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0083】
<付記>
上述の実施形態に記載の無人フォークリフトの初期設定方法は、例えば以下のように把握される。
【0084】
(1)本開示の第1の態様によれば、無人フォークリフト(90)の初期設定方法は、無人フォークリフト(90)がラックに対して荷降ろしを実行する際に停止する停止位置の床面傾きの計測値を取得するステップ(S10)と、取得した計測値から、所定の傾きパターンを検出した停止位置を精密調整位置として設定するステップ(S20)と、精密調整位置において、無人フォークリフト(90)を動作プログラムに従って荷降ろしを実行させて、無人フォークリフト(90)により荷降ろしされたパレットのずれ量を計測するステップ(S30)と、計測したずれ量に基づいて、停止位置における前記無人フォークリフトの指令値を補正するステップと、を有する。
【0085】
このようにすることで、所定の傾きパターンが検出された停止位置については精密にずれ量を計測して指令値を補正することにより、無人フォークリフトの動作精度の低下を抑制することができる一方で、他の停止位置におけるずれ量の計測を省略して、無人フォークリフトの初期設定を効率化することができる。
【0086】
(2)本開示の第2の態様によれば、精密調整位置を記憶するステップ(S20)において、複数のラックが連結されてなる連続ラックの左右方向の両端及び中央に対応する停止位置を精密調整位置として更に設定する。
【0087】
このようにすることで、連続ラックの最低限の停止位置を精密調整位置として設定することができる。これにより、連続ラックの両端及び中央の停止位置におけるずれ量から、他の停止位置におけるずれ量を推定して補完することが可能となる。
【0088】
(3)本開示の第3の態様によれば、精密調整位置を設定するステップ(S20)において、左右方向に連続する第1の停止位置及び第2の停止位置の床面がそれぞれ左右方向の逆方向に傾く傾きパターンを検出した場合に、第1の停止位置及び第2の停止位置を精密調整位置として設定する。
【0089】
このようにすることで、傾き傾向が変化する停止位置については、精密にずれ量を計測して、無人フォークリフトの動作に関する指令値を適切に補正することができる。これにより、無人フォークリフトの動作精度の低下を抑制することができる。
【0090】
(4)本開示の第4の態様によれば、精密調整位置を設定するステップ(S20)において、停止位置の床面が無人フォークリフト(90)の後側よりも前側の方が低くなる傾きパターンを検出した場合に、当該停止位置を精密調整位置として設定する。
【0091】
このようにすることで、無人フォークリフトが前のめりになるような場所では、精密にずれ量を計測して、無人フォークリフトの動作に関する指令値を適切に補正することができる。これにより、無人フォークリフトの動作精度の低下を抑制することができる。
【0092】
(5)本開示の第5の態様によれば、計測値を取得するステップ(S10)において、無人フォークリフト(90)の左右方向及び前後方向の車輪位置を模擬し、左右方向の傾斜を計測する第1傾斜計(104)及び前後方向の傾斜を計測する第2傾斜計(105)を搭載した治具(10)を停止位置に配置して、当該停止位置の床面の傾きの計測値を取得する。
【0093】
このようにすることで、実際に無人フォークリフトを動作させることなく、各停止位置において無人フォークリフトがどの程度傾くかを簡易に模擬することができる。
【0094】
(6)本開示の第6の態様によれば、指令値を補正するステップ(S40)において、精密調整位置に設定されなかった停止位置については、左右に位置する精密調整位置として設定された停止位置において計測されたずれ量から計算した推定ずれ量に基づいて、指令値を補正する。
【0095】
このようにすることで、ずれ量の計測を省略した停止位置についても、他の停止位置のずれ量から、どの程度のずれが生じるかを推定することができる。これにより、ずれ量の計測を省略したとしても、無人フォークリフトの動作精度の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0096】
10 治具
101 本体部
101a 第1部分
101b 第2部分
102 後輪模擬部
103 前輪模擬部
104 第1傾斜計
105 第2傾斜計
106 位置決めツール
107 持ち手
90 無人フォークリフト
900 本体部
901 リフト装置
902 フォーク
P パレット
R ラック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12