(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240415BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20240415BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240415BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20240415BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20240415BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240415BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240415BHJP
H01L 21/337 20060101ALI20240415BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20240415BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20240415BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L21/265 Z
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/44 S
H01L29/44 Y
H01L29/50 M
H01L29/78 301W
H01L29/78 301X
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 653C
H01L29/78 657G
H01L29/78 658F
H01L29/80 C
H01L29/80 F
(21)【出願番号】P 2021150190
(22)【出願日】2021-09-15
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100149629
【氏名又は名称】柘 周作
(74)【代理人】
【識別番号】100200148
【氏名又は名称】今野 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100139538
【氏名又は名称】高橋 航介
(74)【代理人】
【識別番号】100200115
【氏名又は名称】杉山 元勇
(74)【代理人】
【識別番号】100200137
【氏名又は名称】浅野 良介
(72)【発明者】
【氏名】根本 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 勇介
(72)【発明者】
【氏名】井口 智明
(72)【発明者】
【氏名】雁木 比呂
(72)【発明者】
【氏名】清水 達雄
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-165380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0263952(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0214336(US,A1)
【文献】特開2015-118966(JP,A)
【文献】特開2013-214661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/265
H01L 29/06
H01L 29/41
H01L 29/417
H01L 21/336
H01L 29/12
H01L 21/337
H01L 21/338
H01L 29/808
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極から前記第2電極へ向かう第1方向において前記第1電極と第2電極との間に位置し、第1部分と複数の第2部分とを有する、第1導電形の第1半導体領域であって、
前記第1部分は、前記第1電極に電気的に接続され、前記第1方向に交わる第2方向に延び、
前記第2部分は、前記第1方向において前記第1部分から前記第2電極に向かって延びる、第1半導体領域と、
前記第1方向において前記第2部分と前記第2電極と間に位置する第2導電型の第2半導体領域と、
前記第1方向において前記第2半導体領域と前記第2電極との間に位置し、前記第2電極と電気的に接続された、第1導電型の第3半導体領域と、
前記第1方向において前記第2部分と前記第2電極との間に位置する第2導電型の第4半導体領域と、
前記第1方向において前記第1部分と前記第2電極との間に位置し、前記第2方向において少なくとも一部が、前記第
2部分と並んで位置し、前記第2電極及び前記第4半導体領域に電気的に接続された第3電極と、
前記第3電極と、前記第1部分及び前記第2部分との間に位置する第1絶縁領域と、
前記第1方向において前記第4半導体領域と前記第2電極の間に位置し、第2方向において前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域と前記第3電極との間に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極と、前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、第3半導体領域、前記第4半導体領域及び前記第2電極と、の間を電気的に分離する第2絶縁領域と、を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記ゲート電極を複数有し、
前記第2方向に隣り合った2つの前記ゲート電極の間に、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域が位置する請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第4半導体領域と前記第1絶縁領域とは、前記第2方向において隣接する、請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第4半導体領域と前記第3電極とは、
前記第2方向において接する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第4半導体領域に含まれる第2導電型不純物の濃度は、前記第2半導体領域に含まれる第2導電型不純物濃度よりも高い、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2電極は、前記第1方向において前記
第1電極側に延びるコンタクト部分を含み、
前記第1方向において、前記第2半導体領域と前記第2電極との間に位置し、前記コンタクト部分と前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域との間に位置し、第2導電型の不純物濃度が前記第2半導体領域に含まれる第2導電型不純物濃度よりも高い第5半導体領域を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第5半導体領域は、前記第2方向において、前記第3半導体領域と前記コンタクト部分との間に位置する、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第5半導体領域は、前記第1方向及び前記第2方向に交わる第3方向において、前記第3半導体領域と前記コンタクト部分との間に位置する、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2半導体領域の前記第2方向における幅は、10nm以上200nm以下である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1方向において前記第2部分と前記第2電極との間に位置する第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極と前記第1半導体領域、前記第2半導体領域、第3半導体領域及び前記第2電極とを電気的に分離する第3絶縁領域と、をさらに有し、
前記第2ゲート電極と前記ゲート電極とは、前記
第2方向に離間し、互いに電気的に分離され、
前記第2半導体領域と前記第3半導体領域は、前記第2方向において前記第2ゲート電極と前記ゲート電極との間に位置する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
半導体基板に第1導電型の第1半導体領域を形成する工程と、
前記第1導電型の前記第1半導体領域に複数のトレンチを形成し、前記トレンチ内部に第1絶縁領域を形成し、前記トレンチ内部に導電材料を充填する工程と、
前記トレンチ側壁及び前記トレンチ外部の前記導電材料及び前記第1絶縁領域を除去する工程と、
前記複数のトレンチの間に位置する第1半導体領域に第2導電型の不純物を注入し、第2導電型の第2半導体領域と第4半導体領域を形成する工程と、
前記導電材料と前記第4半導体領域とが接触するように、トレンチ内部にさらに導電材料を充填する工程と、
前記第2半導体領域に別のトレンチを形成し、前記別のトレンチ内部に第2絶縁領域を形成し、前記別のトレンチ内部に導電材料を充填し、ゲート電極を形成する工程と、
前記第2半導体領域に第1導電型の不純物を注入し、前記第1導電型の第
3半導体領域を形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置及び半導体装置の製造方法にかかわる。
【背景技術】
【0002】
MOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)をはじめとする半導体装置の故障原因の1つに、二次降伏(熱暴走)がある。二次降伏は、電流集中によるデバイス温度の増加上昇によって、閾値電圧やチャネル抵抗が下がり、電流がチャネル部に集中し熱が発生、さらに電流増加するという正帰還が生じて破壊に至る現象である。例えばチャネル長とゲート電極を大きくすることで、二次降伏耐量が向上するが、性能指標の1つであるオン抵抗とゲート入力容量の積Ron・Qgが悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、二次降伏の発生を抑制する半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体装置は、第1電極と、第2電極と、第1導電形の第1半導体領域と、第2導電型の第2半導体領域と、第1導電型の第3半導体領域と、第2導電型の第4半導体領域と、前記第2電極及び前記第4半導体領域に接続された第3電極と、第1絶縁領域と、ゲート電極と、第2絶縁領域と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る半導体装置の製造工程1~7を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る半導体装置の製造工程8~13を示す図である。
【
図4】
図4は、第1変形例に係る半導体装置の断面図である。
【
図6】
図6は、第1変形例に係る別の半導体装置の断面図である。
【
図7】
図7は、第3変形例に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。同じ符号が付されているものは同様のものを示す。なお、図面は模式的又は概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。本明細書中、n+型、n型、n-型との表記がある場合、n+型、n型、n-型の順でn型の不純物濃度が低くなっていることを意味する。また、p+型、p型、p-型の表記がある場合、p+型、p型、p-型の順で、p型の不純物濃度が低くなっていることを意味する。
【0008】
(第1実施形態)
図1をもとに、実施形態の半導体装置100の構成を説明する。
【0009】
【0010】
半導体装置100は、例えば、MOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)である。
【0011】
以下、第1導電型がn型、第2導電型がp型である場合を例に説明する。半導体装置100は、第1電極(ドレイン電極1)、第2電極2(ソース電極)、第3電極3(フィールドプレート電極)、ゲート電極4、及び半導体層10、第1絶縁領域30(フィールドプレート絶縁膜)、及び第2絶縁領域40(ゲート絶縁膜)を有する。半導体層10は、第1導電型(n)の第1半導体領域11と、第2導電型(p)の第2半導体領域12と、第1導電型(n+)の第3半導体領域13と、第2導電型(p+)の第4半導体領域14と、を有する。
【0012】
ここで、第1電極1から第2電極2に向かう方向をZ方向(第1方向)、Z方向に交わる方向をX方向(第2方向)、X方向及びZ方向に交わる方向をY方向(第3方向)とする。方向が交わるとは、方向が平行でないことであり、例えば、それぞれの方向が直交することである。
【0013】
第1電極1は、例えばドレイン電極である。第2電極2は、例えばソース電極である。第1電極1及び第2電極2は、X方向及びY方向に延びる。第1電極1の材料及び第2電極2の材料は、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、金(Au)等の群から選ばれる少なくとも1つを含む金属である。
【0014】
半導体層10は、Z方向において、第1電極1と第2電極2との間に位置する。半導体層10は、X方向及びY方向に延びる。半導体層10の主成分は、例えば、ケイ素(Si)、シリコン炭化物(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等である。
【0015】
半導体層10は、第1導電形(n)及び、第2導電形(p)の半導体領域を含む。半導体層10に含まれるn形の導電形の不純物元素としては、例えば、リン(P)、ヒ素(As)等が適用される。半導体層10に含まれるp形の導電形の不純物元素としては、例えば、ホウ素(B)等が適用される。
【0016】
第1半導体領域11は、半導体装置100のドレインとして機能する。第1半導体領域11は、Z方向において第1電極1と第2電極2との間に位置する。第1半導体領域11は、n型不純物を含む。
【0017】
第1半導体領域11は、第1部分111と、複数の第2部分112と、基板領域である第3領域113を有する。第1部分111は、X方向及びY方向に延びる。第1部分111は第2部分112と第3部分113との間に位置する。第1部分111は、Z方向において第3部分113を介して、ドレイン電極1に電気的に接続される。複数の第2部分112は、X方向において互いに離間する。第2部分112は、Y方向において延びる。第2部分112は、Z方向において第1部分111から第2電極2に向かって延びる。第3部分113は、Z方向において第1電極1と第1部分111との間に位置する。第3部分113は、第1電極1に電気的に接続される。第3部分113は、例えば、X方向及びY方向に延びる、n型不純物を含むシリコン基板である。第3部分113に含まれるn型不純物濃度は、第1部分領域111及び第2部分112に含まれるn型不純物濃度よりも高い。第1半導体領域11は、第1部分111が第1電極1と接することで、第3部分113を含まない構成としてもよい。
【0018】
p型の第2半導体領域12は、半導体装置100のチャネルとして機能する。第2半導体領域12は、p型不純物を含む。第2領域半導体領域12は、Z方向において第2部分112の一部の上にある。言い換えると、第2半導体領域12はZ方向において第2部分112と第2電極2との間にある。第2半導体領域12は、Y方向に延びる。第2半導体領域12は、X方向において隣り合った2つのゲート電極4の間に位置する。
【0019】
n+型の第3半導体領域13は、半導体装置100のソースとして機能する。第3半導体領域13は、Z方向において第2半導体領域12の上にある。言い換えると、第3半導体領域13は、Z方向において第2半導体領域12の一部と第2電極2との間にある。第3半導体領域13は、Y方向に延びる。第3半導体領域13は、X方向において隣り合った2つのゲート電極4の間に位置する。第3半導体領域13は、n型不純物を含む。第3半導体領域13に含まれるn型不純物濃度は、半導体領域11の第1部分111及び第2部分112に含まれるn型不純物濃度よりも高い。第3半導体領域13は、第2電極2と電気的に接続される。
【0020】
p+型の第4半導体領域14は、Z方向において第2部分112の別の一部の上に位置する。第4半導体領域14は、Z方向において第2電極2と第2部分112との間に位置する。第4半導体領域14は、Z方向においてゲート電極4と第2部分112との間に位置する。X方向において隣り合った2つの第4半導体領域14の間には、第2部分112の一部が位置する。第4半導体領域14は、X方向において第3電極3と第2部分112の一部との間に位置する。第4半導体領域14に含まれるp型不純物の濃度は、第2半導体12に含まれるp型不純物の濃度よりも高い。第4半導体領域14は、Z方向第1電極1側の下部において第2部分112の別の一部と接する。第4半導体領域14は、Z方向に沿って第2電極2側の上部において第2絶縁領域45と接する。第4半導体領域14は、X方向に沿って第2部分112の一部側の側面において第2部分112の一部と接する。第4半導体領域14は、X方向に沿って第3電極3側の側面において、Z方向に沿って第1電極1側が第1絶縁領域35と接し、Z方向に沿って第2電極2側が第3電極3と接する。
【0021】
第3電極3はフィールドプレート電極として機能する導電性物質である。第3電極3は、Z方向において第1部分111と第2電極2との間に位置する。第3電極3は、第2電極2と電気的に接続され、Z方向において第2電極2から第1電極1側に延びる。第3電極3は、第2電極2と同じ材料によって一体に形成されてもよく、第2電極2と異なる材料によって形成されてもよい。第3電極3は、Y方向に延びる。第3電極はX方向に隣り合った第2部分112の間に位置する。第3電極3は、第3電極第1部分31と、第3電極第2部分32と、第3電極第3部分の3つの部分を含む。
【0022】
第3極第1部分31は、第2電極2と接続される。第3電極第1部分31は、X方向において隣り合ったゲート電極4同士の間の領域及び隣り合った第4半導体領域14同士の間の領域にまたがって位置する。第3電極第1部分31は、X方向において、第2絶縁領域45と接し、また、第4半導体領域14と電気的に接する。第3電極第1部分31は、X方向において、第1幅W1の長さを有する。
第3電極第2部分32は、Z方向において、第3電極第1部分31と第1部分111との間に位置する。第3電極第3部分33は、X方向において隣り合った第2部分112の間の領域及びX方向において隣り合った第4半導体領域14の間の領域にまたがって位置する。第3電極第2部分32は、X方向において、第1絶縁領域35を介して第2部分112及び第4半導体領域14と向かい合う。第3電極第2部分32は、X方向において、第1幅W1よりも短い第2幅W2の長さを有する(W1>W2。)
【0023】
第3電極第3部分33は、Z方向において、第3電極第2部分32と第1部分111との間に位置する。第3電極第3部分33は、X方向において隣り合った第2部分112の間に位置する。第3電極第3部分33は、X方向において、第1絶縁領域35を介して第2部分112と向かい合う。第3電極第3部分33は、Z方向において、第1絶縁領域35を介して第1部分111と向かい合う。第3電極第3部分33は、X方向において、前記第2幅W2よりも短い第3幅W3の長さを有する(W2>W3)。
【0024】
第1絶縁領域35は、フィールドプレート絶縁膜として機能する絶縁物質である。第1絶縁領域35は、第3電極3と、第1半導体領域11及び第4半導体領域14との間に位置する。第1絶縁領域35は、絶縁性を有し、第3電極3と第2部分112とを電気的に分離する。第1絶縁領域35は、X方向において、第4半導体領域14のZ方向第1電極1側に位置する部分及び第2部分112と隣接する。第1絶縁領域35は、Y方向において延びる。第1絶縁領域35は、材料として例えば酸化シリコンを含むことができる。また第4半導体領域14は、Z方向において第1電極1側に位置する部分で第3電極第2部分32と直接接する。
【0025】
ゲート電極4は、Z方向において、第2部分112の一部及び第4半導体領域14と第2電極2との間に位置する。ゲート電極4は、X方向において第2半導体領域12及び第3半導体13と第3電極第1部分31との間に位置する。X方向において隣り合った2つのゲート電極4の間には、第2半導体領域12及び第3半導体13が位置する。ゲート電極4は、X方向において、第2絶縁領域45を介して、第2半導体領域12及び第3半導体領域13と向かい合う。ゲート電極4はトレンチ49の内部に形成されており、第3電極3はトレンチ39の内部に形成されている。トレンチ49とトレンチ39は互いに異なるトレンチである。ゲート電極4と第3電極は、X方向において互いに離間する。
【0026】
第2絶縁領域45は、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体である。第1絶縁膜35は、ゲート電極4と第1半導体領域11、第2半導体領域12、第3半導体領域13、第2電極2及び第3電極3との間に位置する。第1絶縁膜35は、絶縁性を有し、ゲート電極4と第1半導体領域11、第2半導体領域12、第3半導体領域13、第2電極2及び第3電極3と、を電気的に分離する。第2絶縁領域45は、材料として例えば酸化シリコンを含むことができる。
【0027】
このように半導体装置100は、フィールドプレート電極(第3電極)及びトレンチゲート電極(ゲート電極4)を有する縦型MOSFET構造を備える。半導体装置100は、Z方向において、ゲート電極4よりもドレイン電極(第1電極1)側で第4半導体領域14と第3電極3とが電気的に接続される。
【0028】
半導体装置100が100V耐圧の縦型MOSFETである場合を例に、半導体装置100の製造方法を説明する。
図2、3は、実施形態の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図2、3は
図1の1点鎖線部を抜き出したものである。
【0029】
(工程1)n+半導体基板(第3部分113)を用意する。n+半導体基板上に、n型不純物濃度1.0e16~1.0e18cm
-3で、Z方向に厚さ8~10umの第1半導体領域11(第1部分111及び第2部分112となる)エピタキシャル成長をする。(
図2A)
【0030】
(工程2)エピタキシャル成長によって形成された半導体領域上に酸化膜を0.1~2nm堆積し、フォトリソグラフィで開口、ドライエッチングで深さ2~10umのトレンチ39を形成する。(
図2B)
【0031】
(工程3)熱酸化により、半導体領域の表面に20~200nmの酸化膜(第1絶縁領域35)を形成し、ポリシリコン(第3電極第3部分33)を堆積させる。(
図2C)
【0032】
(工程4)等方性エッチングによって、トレンチ39側壁及びトレンチ39外部に付着したポリシリコン及び酸化膜を除去する。(
図2D)
【0033】
(工程5)熱処理によって半導体領域に50nm程度の酸化膜を形成する。(
図2E)
【0034】
(工程6)ポリシリコン(第3電極第2部分32)をトレンチ39内部に堆積した後、等方性エッチングにより工程5で形成した50nm程度の酸化膜の一部を除去する。この時トレンチ39側壁の上部では半導体領域の一部が酸化膜(第1絶縁領域35)から露出している。(
図2F)
【0035】
(工程7)リソグラフィやp型不純物のイオン注入を半導体領域に行いp型の半導体領域(第2半導体領域12及び第4半導体領域14)を濃度1.0e17~1.0e20cm
-3で同時に形成する。第2半導体領域12及び第4半導体領域14は、それぞれ別のタイミングや濃度で形成してもよい。(
図2G)
【0036】
(工程8)ポリシリコンをトレンチ39上部まで堆積し、第3電極3を形成する。(
図3H)
【0037】
(工程9)ドライエッチングによって工程8で形成したp型の半導体領域の一部を除去し、深さ0.1~4umのトレンチ49を形成する。(
図3I)
【0038】
(工程10)熱酸化により酸化膜を形成し、トレンチ内部を残して酸化膜を除去することでトレンチ49内部に10~100nmの第2絶縁領域35を形成する。(
図3J)
【0039】
(工程11)トレンチ49内にドープドポリシリコンを堆積することで、ゲート電極4を形成する。(
図3K)
【0040】
(工程12)熱酸化等によって、ゲート電極4上部に第2絶縁領域45を形成する。(
図3L)
【0041】
(工程13)n型不純物をイオン注入することで第3半導体領域13を濃度1.0e17~1.0e21で形成する。(
図3M)
【0042】
(工程14)第1電極1及び第2電極2を形成する。第2絶縁領域45を貫通する図示しないゲートコンタクト及び、ゲートコンタクトを介してゲート電極4に電気的に接続された図示しないゲートパッドを形成する。
【0043】
上記の製造方法により、
図1に示す半導体装置100を提供することができる。
【0044】
半導体装置100の動作を説明する。
【0045】
半導体装置100の動作について説明する。半導体装置1は、
図1に示さない電源装置及び駆動装置から、第1電極1、第2電極2及びゲート電極4に電位が印加されることで動作する。以降、第2電極2に印加される電位を基準(0V)とする。第2電極2には0Vの電位が印加され、第1電極1には正電位が印加される。
【0046】
半導体装置100がオンの時、ゲート電極4に閾値電位(Vth)よりも高い電位が印加される。これにより第2半導体領域12にチャネルが形成され、第1電極1から第1半導体領域11、第2半導体領域12、第3半導体領域13を通って第2電極2に電流が流れる。
【0047】
半導体装置100がオフの時、ゲート電極4には、閾値電位(Vth)より低い電位が印加される。第2半導体領域にはチャネルが形成されず、第2電極2と第1電極1との間に電流が流れない。
【0048】
MOSFETが二次降伏するに至る仕組みを説明する。
【0049】
(1-1)まず、MOSFETに電流を導通させると、オン抵抗やスイッチング損失を原因としてMOSFETが発熱する。
【0050】
(1-2)次に、発熱によりMOSFETの温度が上昇すると、MOSFETの閾値電圧が低下する。ゲート電圧が一定であれば、閾値電圧が低下したMOSFETのチャネル抵抗は減少する。
【0051】
(1-3)チャネル抵抗が減少したMOSFETには大きな電流が流れる。大きな電流が流れたMOSFETはさらに発熱し、(1-1)に戻る。
【0052】
MOSFETは(1-1)~(1-3)を繰り返す正帰還の仕組みが働くことで電流量が増大し(二次降伏し)、半導体層・絶縁層の許容量を超えるとMOSFETは破壊される。
【0053】
一方、本実施形態の半導体装置100が、接合型電界効果トランジスタ(JFET)構造を内蔵することを説明する。
【0054】
半導体装置100は、第4半導体領域14をゲート、第2部分112の一部をソース、第1半導体領域11をドレインとした接合型電界効果トランジスタ(JFET)を内蔵している。このJFETは、第4半導体領域14に印加されるJFETのゲート電位が一定(0V)の条件において、動作温度が高いほど抵抗値が大きくなり、JFETのドレイン―ソース間を導通する電流量が小さくなる。また、JFETは、動作温度が低いほど抵抗値が小さくなり、JFETのドレイン―ソース間導通する電流量が大きくなる。第1電極1と第2電極2との間に流れるMOSFETのドレイン電流は、JFET動作による制御を受ける。
【0055】
さらに半導体装置100が、温度変化による電流特性の変化が小さいこと及び二次降伏の発生を抑制できることを説明する。
【0056】
(2-1)まず、半導体装置100の第1電極1と第2電極2との間に電流を導通させると、半導体装置100のオン抵抗やスイッチング損失を原因として発熱する。
【0057】
(2-2)次に、発熱により半導体装置100の温度が上昇すると、MOSFETの閾値電圧が低下し、MOSFETのチャネル抵抗が減少する。一方、温度の上昇によりJFETの抵抗が増加する。第1電極1と第2電極2間においてMOSFETのチャネル抵抗とJFETの抵抗は直列に接続されている。このため、MOSFETのチャネル抵抗の減少をJFETの抵抗の増加によって打ち消すことができる。
【0058】
(2-3)半導体装置100は、動作温度が上昇しても第1電極1と第2電極と間の抵抗が減少しにくく、導通する電流量が増大しにくくなる。
【0059】
半導体装置100は(2-3)の後でMOSFETのドレイン電流が増加しにくい。半導体装置100は電流増大を原因としたさらなる温度上昇を抑制することができるため、二次降伏の発生を抑制することができる。また、半導体装置100は、温度特性が反対のMOSFETのチャネル抵抗とJFETの抵抗を有するため、温度変化による電流特性の変化が小さい。なお、MOSFETのチャネル抵抗とJFETの抵抗の温度特性を調整することで、半導体装置100を温度が上がるほどドレイン電流量が減少する構成とすることもできる。
【0060】
また、半導体装置100が電界の分散によって高い耐圧を実現できることを説明する。
【0061】
半導体装置100がオフの時、隣り合う第3電極3の間に位置する半導体領域、特に第2部分112は、第1電極1―第2電極2間の電圧に起因する電界が発生する。電界の集中は、半導体層10が破壊される一因である。第2電極2側から第1電極1に向かって延びる第3電極は、半導体層10にかかる電界を分散させること、及び第2部分122に空乏層を形成することによって半導体装置100の耐圧を向上させる。
【0062】
このように、実施形態の半導体装置100は、チャネル長を長くかつゲート電極4を大きく設計することなく二次降伏耐量を向上させることができる。このため、半導体装置100は、低いRon・Qgを維持しながら、高い二次降伏耐量を実現できる。
【0063】
実施形態の変形について説明する。
【0064】
(第1変形例)
図4は、第1変形例に係る半導体装置の断面図である。
図3に付した符号で
図1に付した符号と同じ符号は同じ対象を示す。第1変形例の半導体装置101は、トレンチコンタクト構造を有する点で実施形態の半導体装置100と異なる。第1変形例において、半導体装置101は第2電極2にコンタクト部分21を有する。第1変形例において、半導体装置101は、p+型の第5半導体領域15を有する。
【0065】
コンタクト部分21は、Z方向において第2電極2から第1電極側に向かって延びる。コンタクト部分21は、Y方向に延びる。コンタクト部分21は、Z方向において、第3半導体領域13を貫通し第2半導体領域12内部に至るまで延びる。
【0066】
p+型の第5半導体領域15が、X方向において、コンタクト部分21と、第3半導体領域13及び第2半導体領域12との間に位置する。p+型の第5半導体領域15は、コンタクト部分21と第3半導体領域13と、第2半導体領域12とに接する。p+型の第5半導体領域15の一部は、Z方向において、コンタクト部分21と第2半導体領域12との間に位置する。
【0067】
図5は、第1変形例に係る半導体装置の断面図である。
図5は、
図4のA-A‘断面に相当する図である。コンタクト部分21は、Y方向に延びる。
【0068】
なお、コンタクト部分21は、必ずしもY方向に延びなくてもよい。
図6は、第1変形例に係る別の半導体装置の断面図である。
図6は、
図4のA-A‘断面に相当する図である。例えば、
図6に示すように第5半導体領域15は、Y方向において第3半導体領域12とコンタクト部分21の間に位置してもよい。
【0069】
第1変形例の半導体装置101によれば、コンタクト部分21を介して第2電極2と電気的に接続された第2半導体領域12及び第3半導体領域13の電位が安定し、閾値信頼性が向上する。
【0070】
(第2変形例)
第2変形例は、第1実施形態の半導体装置に比べて、第2半導体領域12の幅すなわちチャネル幅が狭い。例えば、
図1にW12で示す第2半導体領域12のX方向の幅は10nm以上200nm以下である。
【0071】
第1実施形態の半導体装置100及び第2変形例の半導体装置は、ゲート電極4が設けられるトレンチ49と第3電極3が設けられるトレンチ39とを互いに独立して異なる深さで形成される。
【0072】
一般にトレンチを半導体層10にエッチングで形成する場合、トレンチに隣接する半導体層(第2部分112)が削られる。このため、深いトレンチほどを製造可能なトレンチの間隔は長くなる。実施形態及び第2変形例において、チャネル幅すなわち第2半導体領域12のX方向の幅W12は、浅いトレンチ49(ゲート電極4が設けられる電極)のトレンチ間隔によって規定される。すなわち、実施形態の半導体装置100は、より深いトレンチ39の設計に制限されることなくこの第2変形例のようにチャネルの幅W12を狭く製造することができる。
【0073】
一般に、チャネル長を狭めるとZ軸方向からの電界影響が強まり、X軸方向のゲート制御電界領域が狭まり、実際のチャネル長が想定よりも短くなる。この時、設計のVthより実際のVthが小さくなる、またVthのバラつきが大きくなる短チャネル効果が生じる。一方、チャネル幅を狭めると、ゲート電界の制御性が高まるため、短チャネル効果の抑制に効き、またnmオーダーまで狭めると、SiO2/Si界面のポテンシャルが増加する量子効果が表れ、Z軸方向の電界影響を弱めることが出来る。
【0074】
第2変形例では、チャネル幅が狭いので短チャネル効果が抑制される。このため、第2変形例ではチャネル長を短くすることができ、でゲート容量を低減できる。
【0075】
(第3変形例)
図7は、第3変形例に係る半導体装置の断面図である。第3変形例の半導体装置103は、第2ゲート電極5及び第3絶縁領域55を有する点で、半導体装置100と異なる。第3変形例のある断面(
図7)において、Z方向において、1つの第1半導体領域11第2部分112と第2電極2との間には、少なくとも2つの第2半導体領域12と少なくとも2つの第3半導体領域13がある。
【0076】
第2ゲート電極5は、Z方向において第2部分112と第2電極2との間に位置する。第2ゲート電極5とゲート電極4とは、電気的に分離されており、それぞれ接続された電極パッド58及び電極パッド48を介して図示しない駆動装置や電源装置と接続される。第2ゲート電極5とゲート電極4とは、各々電極パッド58、電極パッド48を介して、互いに独立した電位制御を受ける。第2ゲート電極5とゲート電極4とは、X方向において離間する。第2ゲート電極5は、X方向において隣り合った第2半導体領域12同士の間の領域及び隣り合った第3半導体領域13同士の間の領域にまたがって位置する。第2半導体領域12と第3半導体領域13は、X方向において、ゲート電極4と第2ゲート電極5との間に位置する。
【0077】
第3絶縁領域55は、第2ゲート電極5の絶縁膜として機能する絶縁体である。第3絶縁領域55は、第2ゲート電極5と、第1半導体領域11、第2半導体領域12、第3半導体領域13、及び第2電極2との間に位置し、これらを電気的に分離する。
【0078】
第3変形例において、第2ゲート電極5に加える電圧に応じて、MOSFETの閾値電圧の値を制御することができる。例えば、第2ゲート電極に負の固定電位を印加することで、第3変形例の半導体装置103は、所望のオン電圧を実現できるほか、各ゲート間の電界が強まり、短チャネル効果を抑制する働きをもたらす。
【0079】
上記実施形態とその変形例は、適宜組み合わせて実現できる。以上、説明した実施形態及びその変形例によれば、内蔵するJFET構造によって、二次降伏の発生を抑制できる半導体装置を提供できる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、説明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0081】
第1電極(ドレイン電極):1
第2電極(ソース電極):2
第3電極(MOSFETのフィールドプレート電極、JFETのゲート電極):3
ゲート電極:4
第2ゲート電極:5
半導体層:10
第1半導体領域:11
第1部分:111
第2部分:112
第3部分:113
第2半導体領域:12
第3半導体領域:13
第4半導体領域:14
第5半導体領域:15
第2絶縁領域:35
トレンチ:39
第1絶縁領域:45
電極パッド:48
トレンチ:49
第3絶縁領域:55
電極パッド:58