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特許7472094パネルに装飾層用の通気チャネルを形成する方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】パネルに装飾層用の通気チャネルを形成する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/26 20060101AFI20240415BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20240415BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20240415BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B32B37/26
B29C65/48
B32B3/30
B32B27/00 E
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021206345
(22)【出願日】2021-12-20
(62)【分割の表示】P 2017087260の分割
【原出願日】2017-04-26
(65)【公開番号】P2022058380
(43)【公開日】2022-04-12
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】15/153,324
(32)【優先日】2016-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワン, シアオシー
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0146696(US,A1)
【文献】米国特許第07063119(US,B1)
【文献】特表2016-525964(JP,A)
【文献】特表2016-513029(JP,A)
【文献】特開平07-287522(JP,A)
【文献】特開2008-081013(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02491190(GB,A)
【文献】特開2001-277354(JP,A)
【文献】特開2007-083721(JP,A)
【文献】特表2007-524529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B29C 65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突出部(408)を有するツール(400)の外面(404)をパネルの外側樹脂層に接触させることと、
前記ツールの前記突出部に、第1の通気チャネル(300)を前記パネルの前記外側樹脂層に形成させるように、前記ツールの前記外面(404)を前記パネルの前記外側樹脂層上で第1の方向に移動させることと、
ガス又は蒸気の少なくとも一方が装飾層(306)に到達することを抑止して、前記外側樹脂層から前記装飾層の一部が剥離することを抑止するために、前記パネルの前記外側樹脂層に吸湿材のコーティング(312)を塗布することと、
接着層を介して前記装飾層(306)を前記パネルの前記外側樹脂層に結合させることと
を含み、
前記第1の通気チャネルが、前記接着層の厚さよりも大きい深さを有し、前記第1の通気チャネル(300)が前記接着層で充填されることを阻害し、前記第1の通気チャネルが前記装飾層(306)からガス又は蒸気の少なくとも一方を排出し、ガス又は蒸気の少なくとも一方が前記装飾層に圧力をかけることを抑止し、前記外側樹脂層から前記装飾層の一部が剥離することを抑止する、方法。
【請求項2】
前記ツール(400)の前記外面(404)を前記パネルの前記外側樹脂層上で移動させることは、前記ツールを前記外側樹脂層に沿って前記第1の方向に回転させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ツール(400)を前記第1の方向に回転させることにより、前記突出部(408)が、前記外側樹脂層に沿って前記第1の方向に延在する前記第1の通気チャネル(300)を形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ツールを前記第1の方向に回転させることにより、前記突出部(408)が、前記第1の方向に対しておおよそ垂直である前記外側樹脂層に沿って第2の方向に延在する前記第1の通気チャネル(300)を形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記パネルの前記外側樹脂層上で前記ツールの前記外面を移動させることは、前記第1の方向に延在する前記第1の通気チャネルを形成するために、前記ツールの前記外面を前記パネルの前記外側樹脂層に沿って前記第1の方向に滑動させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記接着層(320)を前記外側樹脂層から除去することによって、前記装飾層(306)を前記パネルから引き離すことと、
前記ツール(400)を介して前記外側樹脂層上の前記第1の通気チャネル(300)のいずれかを修理することと、
前記接着層を前記外側樹脂層に再適用することによって、引き離した前記装飾層を前記パネルに再結合させることとを更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の通気チャネル(300)が形成されたときに、
前記ツール(400)を前記パネルの前記外側樹脂層上に再配置することと、
前記ツールの前記突出部(408)が前記パネルの前記外側樹脂層に第2の通気チャネルを形成するように、前記ツール(400)の前記外面(404)を前記パネルの前記外側樹脂層上で移動させることと
を更に含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の通気チャネルを形成するために前記ツール(400)の前記外面(404)を移動させることは、前記第1の方向に延在する前記第2の通気チャネルを形成することを含み、前記第2の通気チャネルは、前記第1の通気チャネルから間隔を置いて配置される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ツール(400)を再配置することは、前記外側樹脂層に対する前記ツールの方位を変更することを含み、前記第2の通気チャネルを形成するために前記ツールの前記外面を移動させることは、前記第1の方向とは異なる第2の方向に延在する前記第2の通気チャネルを形成することを含み、前記第2の通気チャネルは前記第1の通気チャネル(300)と交差する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
パネルの外側樹脂層に接着層を介して装飾層を形成する装置であって、
パネルの外側樹脂層と係合する手段と、
前記外側樹脂層に通気チャネルを形成する手段とを備え、
前記係合する手段が前記外側樹脂層に沿って移動するにつれて、前記形成する手段が前記外側樹脂層に一又は複数の通気チャネルを形成し、
前記形成する手段によって形成された前記通気チャネルは、前記パネルの装飾層からガス又は蒸気の少なくとも一方を排出し、ガス又は蒸気の少なくとも一方が前記装飾層に圧力をかけることを抑止して、前記装飾層の一部が前記外側樹脂層から剥離することを抑止し、
前記通気チャネルは、接着層の厚さよりも大きい深さを有し、前記通気チャネルが前記接着層で充填されることを阻害する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は概して装飾層に関し、更に具体的には、装飾層用の通気チャネルをパネルに形成するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
輸送手段(例えば航空機、バス、列車、トラクタートレーラー、船舶など)、ビルディング、及び/または他の構造物(例えば広告用掲示板)は、公衆が視覚可能な表面を含む。これらの表面はしばしば、美観、識別、及び/または広告の目的のための、装飾的画像を含む。例えば、航空機の表面のうちのあるものは、その航空機に関連する航空会社を識別させる装飾的画像を含んでいる。ある例では、装飾的画像は、輸送手段、ビルディング、及び/または他の構造物の表面に結合された化粧板上に形成されている。化粧板と表面の間にガス及び/または蒸気(例えば水蒸気)のポケットが形成され得、これにより、化粧板の隣接する部分に気泡が発生しうる。
【発明の概要】
【0003】
一実施例では、方法は、ツールの外面をパネルの外側樹脂層に接触させることを含む。ツールの外面は、突出部を有する。例示の方法は、ツールの突出部によりパネルの外側樹脂層に第1の通気チャネルが形成されるように、パネルの外側樹脂層上でツールの外面を第1の方向に移動させることと、接着層を介してパネルの外側樹脂層に装飾層を結合させることとを含む。第1の通気チャネルは、第1の通気チャネルが接着層で充填されるのを阻害するために、層の厚さよりも大きくなっている。第1の通気チャネルは、ガスまたは蒸気のうちの少なくとも一方を装飾層から排出し、ガスまたは蒸気のうちの少なくとも一方が装飾層に対して圧力をかけることを抑止して、装飾層の一部が外側樹脂層から剥離することを抑止する。
【0004】
別の実施例では、装置はツールを含む。ツールは、パネルの外側樹脂層と係合し、パネルの外側樹脂層に沿って移動する外面を含む。ツールは、ツールが外側樹脂層に沿って移動したときに、パネルの外側樹脂層に一又は複数の通気チャネルが形成されるように、外面に画定された突出部を含む。通気チャネルは突出部によって形成され、ガスまたは蒸気のうちの少なくとも一方を接着層を介してパネルに結合される装飾層から排出し、ガスまたは蒸気のうちの少なくとも一方が装飾層に対して圧力をかけることを抑止して、装飾層の一部が外側樹脂層から剥離することを抑止する。突出部は、通気チャネルの第2の深さを画定する第1の深さを有する。第2の深さは、通気チャネルが接着層で充填されるのを阻害するために、接着層の厚さよりも大きくなっている。
【0005】
別の実施例では、装置はパネルの外側樹脂層を係合させる手段と、外側樹脂層に通気チャネルを形成する手段とを含む。形成する手段は、外側樹脂層に沿って係合移動させる方法として、外側樹脂層に一又は複数の通気チャネルを形成するためのものである。形成する手段によって形成された通気チャネルは、ガスまたは蒸気のうちの少なくとも一方をパネルの装飾層から排出し、ガスまたは蒸気のうちの少なくとも一方が装飾層に対して圧力をかけることを抑止して、装飾層の一部が外側樹脂層から剥離することを抑止する。通気チャネルは、通気チャネルが接着層で充填されるのを阻害するために、接着層の厚さよりも大きくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本書の教示による例示の航空機を示す図である。
図2A】既知の装飾層及び既知のパネルの一部の断面を示す図である。
図2B図2Aの既知の装飾層及び既知のパネルの一部の分解図である。
図3】本書に開示された教示によるパネルの例示の外側樹脂層に形成された一又は複数の例示の通気チャネルを示す図である。
図4A】本書に開示された教示による図3の通気チャネルを形成する例示のツールを示す図である。
図4B】本書の教示による図3の通気チャネルを形成する別の例示のツールを示す図である。
図5】本書に開示された教示による図3の外側樹脂層に形成された一又は複数の通気チャネルの他の例を示す図である。
図6】本書に開示された教示による図5の通気チャネルを形成する別の例示のツールを示す図である。
図7】本書に開示された教示による図3の外側樹脂層に形成された別の例示の一又は複数の通気チャネルを示す図である。
図8図3のツール及び/又は図5のツールによって形成された通気チャネルの例示の断面を示す図である。
図9】本書に開示された教示による図3の外側樹脂層に一又は複数の通気チャネルを形成する別の例示のツールを示す図である。
図10図9のツールによって形成された通気チャネルの例示の断面を示す図である。
図11】本書の教示による図4、6及び/又は9の例示のツールを介して、図3、5及び/又は7の例示の通気チャネルを形成する例示の方法を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図面は原寸に比例しない。代わりに、複数の層及び部位を明確にするために、図中の各層の厚さが拡大されている場合がある。図面及び添付の記載の全体を通して、可能な箇所にはすべて、同一のまたは類似の部分を指すために同じ参照番号が使用される。
【0008】
公共の空間にある表面(例えば広告用掲示板、ビルディングの壁、輸送手段のパネルなど)は、しばしば、美観、情報、及び/または広告の目的のための装飾的画像を含む。例えば、既知の航空機及び/または他の輸送手段(例えばバス、列車、トラクタートレーラー、船舶など)は、しばしばその表面に識別及び/または広告の目的のための装飾的画像を含む。ある例では、航空機の内装の可視表面は、その航空機に関連する各航空会社を識別させる装飾的画像を含んでいる。
【0009】
ある既知の装飾的画像は、対応する表面に結合された装飾層(例えば化粧板)上に形成されている。例えば、装飾層は、接着層を介して航空機のパネルに結合されている。ある例では、装飾層または化粧板の一部は、結合されている表面から剥離し得る。例えば、化粧板と表面の間にガス及び/または蒸気(例えば水蒸気)のポケットが形成され得、これにより、化粧板の隣接する部分に気泡が発生しうる。化粧板と表面とがこうして剥離することは、美観目的にとって望ましくない(例えば、化粧板に気泡が発生することは、美観上、魅力的でない)ことであり得、及び/または、時間の経過に伴って化粧板の損傷や表面からのさらなる剥離(例えば層間剥離)を生じさせ得る。
【0010】
ある例では、化粧板が最初に表面に結合されるときに、ガス及び/または蒸気のポケットが、化粧板とパネル表面(例えば、荷物入れやライニング、調度品などの表面といった、航空機のコンパートメントの内装面)の間に捕捉される。即ち剥離は、当初、化粧板が表面に結合されたときに、化粧板が表面と同一平面上に置かれていないことに起因する。
【0011】
他の例では、化粧板と表面の間の剥離を生じさせるガス及び蒸気のポケットは、ガス及び/または蒸気がパネルの材料から漏出し、化粧板とパネルの間に捕捉される(例えば、気泡が形成される)結果として形成される。化粧板が航空機のパネルに結合されるとき、パネルのコア層(例えばハニカムコア、発泡コアなど)からガス及び蒸気(例えば水蒸気)が放出され得、続いて化粧板とパネル表面の間に捕捉され得る。例えば、ガス及び/または蒸気は、パネルのコア層とパネルの外部環境との間に圧力差及び/または温度差があるときに、パネルのコア層から漏出し及び/または放出され得る。例えば、ガス及び/または蒸気は、コア層のより近くの圧力が化粧板のより近くの圧力よりも大きいときに、コア層から化粧板に向かって移動し得る。化粧板がほぼ不浸透性及び/または無孔性の材料からできていて、コア層内のガス及び/または蒸気が化粧板を通り抜けることが抑止及び/または阻害される結果として、ガス及び/または蒸気は、化粧板間に捕捉される。捕捉されたガス及び/または蒸気によって、化粧板とパネルとの間に内圧が作り出されて化粧板及び/または表面に力が集中して加えられ、これにより化粧板のパネル表面から(例えば航空機コンパートメント内の内装面などから)の剥離が生じる。さらに、または代わりに、化粧板とパネルとの間に捕捉されるガス及び/または蒸気は、パネル及び/または化粧板の構成要素間の(例えばパネルのコア層と補強層の間、補強層と化粧板に結合された接着剤の間などの)相互作用(例えば、化学反応、物理反応など)にも起因し得る。
【0012】
ガス及び/または蒸気が、パネルに結合された装飾層の一部のパネルからの剥離を生じさせるのを抑止及び/または阻害するため、本書で開示される例示の方法及び装置は、ガス及び/または蒸気(例えば水蒸気)を装飾層から排出させるパネルの一又は複数の通気チャネルの形成を含む。例えば、通気チャネルがパネルの装飾層とコア層との間に配置されるように、パネルの外側樹脂層に通気チャネルが形成される。この結果、通気チャネルは、パネルのコア層から放出されたガス及び/又は蒸気が装飾層に到達して、装飾層と、パネルの外側樹脂層との間に内圧を生じさせるのを抑止及び/又は阻害する。こうして、通気チャネルは、ガス及び/または蒸気が、装飾層の一部に対して圧力及び/または力をかけることを抑止及び/または阻害し、装飾層がパネルから剥離することを抑止及び/または阻害する(例えば、装飾層に気泡が発生することを抑止及び/または阻害する)。
【0013】
本書に開示された実施例では、パネルの外側樹脂層と係合する外面を含み、パネルの外側樹脂層に沿って移動するツールによって、通気チャネルが形成される。ツールの外面により、ツールが外側樹脂層に沿って移動したときに、外側樹脂層に通気チャネルを形成する突出部が画定される。突出部は、通気チャネルの第2の深さを画定する第1の深さを有する。通気チャネルの第2の深さは、パネルに装飾層を結合させる接着層の厚さよりも大きく、これにより通気チャネルが接着層で充填されることが抑止され及び/又は阻害され、従って、通気チャネルがガス及び/又は蒸気を装飾層から排出することが差し止められる。突出部は例えば、通気チャネルの対応する弓形、円形、楕円形、及び/又は多角形の断面を形成する例えば弓形、円形、楕円形、及び/又は多角形の断面を有する。幾つかの実施例では、パネルの外側樹脂層に吸湿材のコーティングが施される。吸湿材(例えばシリカゲル等の除湿材)は、パネルから放出されたガス及び/又は蒸気を捕捉及び/又は吸収し、これによりガス及び/又は蒸気が装飾層に到達することを抑止及び/又は阻害することによって、装飾層の一部が外側樹脂層から剥離することが更に抑止される及び/又は阻害される。
【0014】
幾つかの実施例では、ツールは、ローラの縦軸周囲で回転し、パネルの外側樹脂層に沿って移動(例えば回転)してパネル上に通気チャネルを形成するローラである。幾つかの上記実施例では、ローラの突出部は、ローラの縦軸周囲でローラの外面に沿って半径方向に延在する。ローラがパネルの外側樹脂層に沿って第1の方向に移動したときに、突出部が通気チャネルを形成し、これにより通気チャネルが第1の方向に延在するようになる。他の上記実施例では、突出部は、ローラの長さに沿ってローラの縦軸に対しておおよそ平行する方向に延在する。ローラが外側樹脂層に沿って第1の方向に移動したときに、縦方向に延在する突出部により、第1の方向に対しておおよそ垂直の第2の方向に延在する通気チャネルが形成される。縦方向に延在する突出部を有する幾つかの例示のローラの長さは、パネルの外側樹脂層の幅よりも長く、これにより、ローラが、外側樹脂層の全体幅に延在する一又は複数の通気チャネルを形成することができる。
【0015】
他の実施例では、ツールはベルトを含む。ベルトがパネルの外側樹脂層に沿って滑動したときに通気チャネルが形成されるように、ベルトの長さに沿って突出部が延在する。例えば、ベルトは、第1の方向に延在する一又は複数の通気チャネルを形成するように、外側樹脂層に沿ってベルトの長さにおおよそ平行する第1の方向に滑動する。
【0016】
本書に開示された幾つかの実施例では、ツールによって形成された通気チャネルは、第1の通気チャネルと第2の通気チャネルとを含みうる。例えば、第1の通気チャネルを形成すると、ツールは、パネルの外側樹脂層上に再配置され、続いて第2の通気チャネルを形成するためにパネルの外側樹脂層に沿って移動する。幾つかの実施例では、第2の通気チャネルは(例えば第2の通気チャネルが第1の通気チャネルに隣接し、おおよそ平行するように)、第1の通気チャネルと同じ方向(例えば第1の方向)に延在する。他の実施例では、第1の通気チャネルを形成すると、ツールによって形成された第2の通気チャネルが第1の方向とは異なる(例えば第1の方向に対してほぼ垂直である)第2の方向に延在するように、ツールの外側樹脂層に対する配向が変更される。
【0017】
幾つかの実施例では、ツールは、野外環境において通気チャネルを形成する(例えば改良する、修理する等)ことを可能にするハンドヘルド装置である。例えば、野外環境において、接着層はパネルの外側樹脂層から除去されることによって、パネルから切り離される。続いてハンドヘルド装置を介して、外側樹脂層に通気チャネルが形成され、パネルの外側樹脂層に接着層を再適用することによって、パネルに装飾層が結合される。
【0018】
本書で使用する場合、「結合する」「結合された」及び「結合している」という用語は、直接または間接に、1つの物体を別の物体に(例えば、1つの層を別の層に)取り付けることを意味する。例えば、第1の物体の表面が、第2の物体の表面に対して、両者の間にいかなる他の物体も介在しない状態で接している場合、第1の物体は第2の物体に直接取り付けられており、したがって結合されている。第1の物体が第2の物体に直接接触していないが、代わりに第1の物体と第2の物体の間に位置する中間物体(例えば層)を介して第2の物体に固着されている場合、第1の物体は第2の物体に間接に取り付けられており、したがって結合されている。
【0019】
ここで図面を見ると、図1は、胴体104から横方向外向きに延びる翼102(例えば右翼と左翼)を含む、例示の航空機100を示す。示される実施例の翼102のそれぞれは、パイロン108を介して航空機のエンジン106を支持する。示される実施例の胴体104内には、コンパートメント110(例えば貨物室、客室、操縦室など)が配置されている。翼102と胴体104は、航空機100の外表面112を画定する。
【0020】
本書で開示される例示の装飾層及び例示のパネルを検討する前に、図2A及び図2Bに関連して、既知のパネル202及び既知の装飾層204の簡潔な記載が提供される。より具体的には、図2Aは既知の装飾層204及び既知のパネル202の一部の断面図であり、図2Bは、既知の装飾層204及び既知のパネル202の一部の分解図である。
【0021】
図2A及び図2Bに示すように、既知のパネル202は、コア層206及び、コア層206に結合された補強層208を含む。補強層208の第1の表面210は、コア層206に係合し、反対側の第2の表面212は、パネル202の表面214を画定する。既知のパネル202の補強層208は、部分的に多孔性及び/または浸透性である材料(例えば樹脂、強化用繊維など)からなっていてよく、これにより、ガス及び/または蒸気(例えば水蒸気)の一部は、補強層208を通り抜け得る。さらに、(図2A及び図2Bに示す既知のパネル202の一部には示されていないが)別の補強層が、補強層208とは反対側のコア層206の別の表面と係合しており、補強層208、コア層206、及びもう1つの反対側の補強層とで、サンドイッチ構造の複合材が形成される。
【0022】
さらに、既知の装飾層204は、既知のパネル202上に表示される装飾的特徴(例えば色、パターン、ロゴ、テキストなど)を含む。図2Aに示すように、装飾層204は、パネル202の表面214に結合されており、これにより装飾層204の装飾的特徴をパネル202上に表示することが可能になる。例えば、装飾層204は、補強層208の第2の表面212に接着的に結合されている。
【0023】
ある例では、パネル202のコア層206内に、ガス及び/または蒸気(例えば水蒸気)が捕捉されている(例えば、パネル202のサンドイッチ構造の複合材の、補強層208と反対側の補強層との間に捕捉されている)。コア層206とパネル202の外部環境との間で圧力差及び/温度差が生じているとき(例えばコア層206のより近くの圧力が装飾層204のより近くの圧力よりも大きいとき)、ガス及び/または蒸気が、パネル202のコア層206から漏出し、及び/または放出される。別の実施例では、パネル202のガス及び/または蒸気は、コア層206(例えばハニカムコア、発泡コア、樹脂、強化用繊維など)及び/または装飾層204(例えば化粧板、接着層など)の材料間の相互作用(例えば、化学反応、物理反応など)からも発生し得る。
【0024】
パネル202に結合された装飾層204がほぼ不浸透性及び/または無孔性の材料からなるため、コア層206から放出された蒸気及び/またはガスは補強層208を通り抜け、装飾層204とパネル202の表面214との間で捕捉される。捕捉された蒸気及び/またはガスは内圧を作り出し、この内圧によって、装飾層204及び/またはパネル202の表面214の隣接する部分に集中して力が加えられる。例えば、加えられた力によって装飾層204の一部がパネル202の表面214から離れるように押され、これにより装飾層204のこの部分が、パネル202から剥離する。言い換えれば、既知のパネル202の蒸気及び/またはガスは、既知の装飾層204内に気泡を形成し得、この気泡は美観的に魅力的でない可能性があり、及び/または装飾層204を損傷し得る。
【0025】
図3に、本書に開示された教示による例示のパネル304の外側樹脂層302に形成された、一又は複数の例示の通気チャネル300を示す。装飾層306がパネル304の外側樹脂層302に結合されると、通気チャネル300は、パネル304から(例えばパネル304のコア層308から)発生したガス及び/又は蒸気(例えば水蒸気)を装飾層306から排出し、ガス及び/又は蒸気に起因して装飾層306の一部がパネル304から剥離することを抑止する及び/又は阻害する(例えば、通気チャネル300は、装飾層306に気泡が発生することを抑止する及び/又は阻害する)。
【0026】
示された実施例では、通気チャネル300が形成されるパネル304は、コア層308と補強層310とを含む。コア層308は、例えばハニカムコア、発泡コア、及び/またはその組み合わせからなる。こうした例のうちのあるものでは、コア層308は、ハニカムコア及びハニカムコアの開口部に充填される発泡材を含む。コア層308の材料は軽量材からなり、コア層308の構造(例えばハニカムパターン)は、パネル304に曲げ強度(例えば曲げ剛性)を与える。従って、コア層308は、パネル304、従ってパネル304が(図1の航空機100の外表面112、及び/又は図1の航空機100のコンパートメント110内に位置する、荷物入れ(例えば収容棚)、ライニング(例えば側壁、天井など)、調度品(例えばモニュメント、クローゼット、クルー休憩室、化粧室等)などの)表面を形成する構造に大幅な重量を付加することなく、パネル304に曲げ強度を与える。
【0027】
例示のパネル304の補強層310は、例えば、ファイバーグラス、グラファイトクロス、合成繊維(例えばアラミド繊維)、天然繊維(例えば木材、亜麻、セルロース、ジュート、大麻、藁、スイッチグラス、ケナフ、綿、コイア、竹など)、これらの組合せ、及び/または、(パネル304に圧縮強度を与えることによって)コア層308を補強する任意の他の材料からなる繊維補強層を含む。更に、補強層310は、例えばフェノール樹脂からなる外側樹脂層302を含む。ある例では、補強層310は、繊維補強層があらかじめ樹脂(例えば外側樹脂層302の樹脂)に含浸されている、含浸済みの層(即ちプリプレグ)である。含浸済みの樹脂は予め乾燥させるが、補強層310が形成してもまだ硬化していない。更に、図3にパネル304のコア層308の一面に結合された補強層(例えば補強層310)を示したが、一方では、図3に示していない別の補強層(例えば、補強層310とほぼ同様または同一の補強層)が、補強層310の反対側のコア層308の別の面に結合されており、これにより、パネル304は、補強層310、コア層308、及びもう1つの反対側の補強層によって形成されるサンドイッチ構造の複合材になっている。
【0028】
ガス及び/又は蒸気(例:水蒸気)は最初にパネル304のコア層308(例えば補強層310と、サンドイッチ構造パネル304の他の反対側の補強層との間)に捕捉され、コア層308と、パネル304の外の環境との間の圧力及び/又は温度に差があるとき(例えばコア層308近辺の圧力が装飾層306近辺の圧力よりも大きいとき)に、続いてコア層308から漏出しうる及び/又は放出されうる。他の例では、パネル304の材料の硬化、パネル304の材料の特性、及び/又はパネル304の異なる材料間の相互作用(例えば化学反応、物理反応等)の結果、ガス及び/又は蒸気がパネル304から放出されうる。更に、補強層310は透過性及び/又は多孔性である。その結果、ガス及び/又は蒸気がコア層308から放出され、補強層310の透過性材料を通り抜けて、パネル304に結合された装飾層306に到達しうる。
【0029】
示された実施例の通気チャネル300は、通気チャネル300がコア層308と、パネル304に結合された装飾層306との間に配置されるように、外側樹脂層302に形成される。通気チャネル300は、パネル304から放出されたガス及び/又は蒸気を配分して、装飾層306と補強層310との間に捕捉されたガス及び/または蒸気に起因しうる集中した力を低減する。従って、通気チャネル300は、装飾層306の一部がパネル304から剥離するのを抑止及び/又は阻害する、及び/又は装飾層306とパネル304との間の剥離距離を実質的に縮小する。示された実施例では、通気チャネル300は、パネル304から発生したガス及び/又は蒸気を装飾層306から排出し、ガス及び/又は蒸気がパネル304と装飾層306との間に捕捉されて、装飾層306に圧力をかけるのを更に抑止する及び/又は阻害する。この結果、装飾層306からガス及び/又は蒸気を排出することによって、示された実施例の通気チャネル300は、パネル304の外側樹脂層302から装飾層306の一部が剥離するのを抑止及び/又は阻害する(例えば、通気チャネル300は、装飾層306に気泡が発生することを抑止する及び/又は阻害する)。加えて、示された実施例では、吸湿材(例えばシリカゲル等の除湿材)のコーティング312がパネル304の外側樹脂層302に塗布され、これにより、ガス及び/又は蒸気に起因して、装飾層306がパネル304から剥離することが更に抑止される及び/又は阻害される。コーティング312の吸湿材は、パネル304から発生したガス及び/又は蒸気を捕捉及び/又は吸収し、これによりガス及び/又は蒸気が装飾層306に到達することを抑止及び/又は阻害することによって、装飾層306がパネル304から剥離することを抑止する及び/又は阻害する。
【0030】
図3に示すように、各通気チャネル300は方向314(例:第1の方向)に延在し、従って他の通気チャネル300各々とおおよそ平行する。例えば、通気チャネル300は、約0.125インチ(3.175ミリメートル)と2インチ(50.8ミリメートル)の間の距離316だけ等間隔を置いて配置される。他の実施例では、通気チャネル300は互いに非等間隔を置いて配置されうる。更に、例示の通気チャネル300は、通気チャネル300が装飾層306からガス及び/又は蒸気を排出することができるようにするために、外側樹脂層302の外側エッジ318に延在する。
【0031】
示された実施例では、装飾層306は、接着層320を介して外側樹脂層302に結合される。通気チャネル300は、接着層320の厚さよりも厚い深さ(図8の深さ814)を有し、これにより通気チャネル300が接着層320で充填されるのを抑止及び/又は阻害し、従って通気チャネル300が装飾層306からガス及び/又は蒸気を排出することが差し止められる。更に、外側樹脂層302に形成された通気チャネル300の深さは、通気チャネル300が補強層310の繊維補強層に損傷を与えるのを抑止及び/又は阻害する、及び/又は装飾層306がパネル304に結合されたときに通気チャネル300が目に見えるようになることを抑止及び/又は阻害するほど十分に浅くなっている。例えば、通気チャネル300の深さは、約0.01インチ(0.15ミリメートル)と0.039インチ(1ミリメートル)の間であり、これにより、通気チャネル300に接着層320が充填されるのを抑止及び/又は阻害する。更に、通気チャネル300は、例えば約0.01インチ(0.15ミリメートル)と0.039インチ(1ミリメートル)の間の幅(例えば図8の幅812)を有し、通気チャネル300が装飾層306からガス及び/又は蒸気を十分に排出することが可能になる。
【0032】
図4Aは、本書に開示された教示による通気チャネル300を外側樹脂層302に形成する例示のツール400である。図4Aに示すように、ツール400は、外面404を画定する本体402を含む。この実施例において、ツール400は、本体402が縦軸406に沿って延在する円筒であるローラである。
【0033】
ツール400の外面404に、突出部408が画定される。示された実施例では、突出部408はツール400の縦軸406周囲で外面404に沿って半径方向に延在する。通気チャネル300はツール400の突出部408によって形成されるため、通気チャネル300は突出部408とほぼ同様の寸法及び/又は断面を有する。例えば、突出部408は約0.01インチ(0.15ミリメートル)と0.039インチ(1ミリメートル)の間の深さ及び/又は幅を有し、これにより同一の、又はほぼ同様の寸法を有する通気チャネル300が形成される。加えて、突出部408は、距離316とほぼ等しい距離410だけ間隔を置いて配置され、これにより、ツール400が距離316だけ間隔を置いて配置されている通気チャネル300を形成することが可能になる。例えば、突出部408は約0.125インチ(3.175ミリメートル)と2インチ(50.8ミリメートル)の間の等距離だけ間隔を置いて配置される。更に、ツール400は、ツール400が、外側樹脂層302と係合して通気チャネル300を形成するときに、突出部408、そして更に全体的にはツール400が変形することを抑止する及び/又は阻害するような硬度を有する材料(例えば鋼鉄等の実質的に非可鍛性材料)からできている。例えば、ツール400は、フェノール樹脂からなる外側樹脂層302に通気チャネル300を形成するために、鋼鉄からできていてよい。
【0034】
いくつかの実施例では、ツール400及び突出部408は一体的に形成された単一構造である。上記実施例では、ツール500及び突出部は、ツール400と突出部408が一体的に形成された付加製造(例:3D印刷)、火造、鋳造、機械加工及び/又は他の何らかの製造プロセスを介して形成されうる。他の実施例では、突出部408は取り外し可能にツール400に連結される。例えば、突出部408は、ツール400に突出部408が連結されるようにツール400の外面404に沿って画定されたスロットの中へ固定可能に挿入されるストリップ及び/又はディスク(例:フライホイール)である。上記実施例では、突出部408をツール400から切離す(例えば外面404のスロットから取り外す)ことができ、これにより突出部408を修理する及び/又は交換する(例えば前の突出部とは異なる断面を有する突出部と交換する)ことが可能となる。
【0035】
図4Aに示すように、外側樹脂層302にツール400の外面404が接触して、パネル304の通気チャネル300が形成される。例えば、ツール400は、ツール400を介して外側樹脂層302に力及び/又は圧力がかかるように外側樹脂層302に沿って移動(例:転がる、回転する等)して、パネル304の外側樹脂層302に通気チャネル300を刻み込む、及び/又は他の方法で形成する。示された実施例では、突出部408がツール400の縦軸406周囲で半径方向に延在するため、ツール400は、ツール400が方向314に転がる、回転する、及び/又は他の方法で移動したときに、同じ方向314に延在する通気チャネル300を形成する。
【0036】
上述の実施例では、工場環境においてツール400を用いて、パネル304に通気チャネル300が形成される。例えば、ツール400は、製造プロセスにおいてパネル304に装飾層306(図3)が結合される前に通気チャネル300を形成する。ツール400が工場環境において用いられる時、ツール400は例えば、最大約5フィート(0.305メートル)の幅を有するパネル(例:パネル304)に通気チャネル(例:通気チャネル300)を形成するために、最大約6フィート(0.305メートル)の長さを有しうる。
【0037】
図示した実施例では、ツール400は、ツール400の各端部414にハンドル412を含むハンドヘルド装置である。ハンドル412により、現場環境の技術者が損傷を受けた通気チャネルを修理するためにツール400を使用することが可能になる。例えば、通気チャネル300が損傷を受けた場合、技術者は外側樹脂層302から接着層320を除去することによってパネル304から装飾層306を切離し、ハンドヘルドツール400を介して外側樹脂層302に通気チャネル300を形成する及び/又は再形成し、続いて、パネル304が結合される構造(例:図1の航空機100)を工場環境に戻さずに、パネル304に装飾層306を再結合させることができる。通気チャネル300(例:第1の通気チャネル)が形成されたら、ハンドヘルドツール400をパネル304上に再配置して、追加の一又は複数の通気チャネル(例:通気チャネル300とほぼ同様の又は同一の第2の通気チャネル)を形成することができる。例えば、追加の通気チャネルは、追加の通気チャネルが通気チャネル300にほぼ平行するように、通気チャネル300から間隔を置いて配置され、同じ方向314に延在する。追加として、あるいは代替的に、ハンドヘルドツール400を使用して、製造プロセスにおいて装飾層306がパネル304に結合される前に通気チャネル300を形成することができる。
【0038】
図4Bは、本書に開示される教示による外側樹脂層302(図3)に通気チャネル300(図3)を形成する別の例示のツール450である。図4Bの例示のツール450は、図4Aの例示のツール400と同様である。従って、ツール400を図4Aに関連して詳細に記載しているため、図4Bのツール450の幾つかの特性(例:材料、寸法、製造特性等)の更なる詳細は以下に記載しない。
【0039】
図4Bに示すように、ツール450は、本体452と、鉤型ホルダー454(例:J字型ホルダー)とを含む。幾つかの実施例では、ツール450の本体452は、図4Aの本体402と同一又はほぼ同様であり、本体402を鉤型ホルダー454に連結して、図5Bのツールを形成することができる。示された実施例では、鉤型ホルダー454の第1の端部456は、技術者がツール450を保持して、外側樹脂層302に通気チャネル300を形成することを可能にする人間工学的ハンドル458を画定する。鉤型ホルダー454の反対側の第2の端部460は、ツール450の本体452を受け入れる。図4Bに示すように、ツール450は、本体452が円筒であるローラである。本体452は外面462を画定し、鉤型ホルダー454の第2の端部460の縦軸464に沿って延在する。示された実施例では、ツール450の本体452は、鉤型ホルダー454の第2の端部460に沿って隣合せに位置づけされる本体部分466、468でできており、これにより円筒形本体452が形成される。例えば、各本体部分466、468により、縦軸464に沿って延在し、鉤型ホルダー454の第2の端部460を受け入れて鉤型ホルダー454に結合される開口部が画定される。他の実施例では、本体452は一体的に形成された単一構造である。
【0040】
図4Bに示すように、本体部分466(例:第1の本体部分)は、ツール450の縦軸464周囲で外面462に沿って半径方向に延在する突出部470を含む。示された実施例では、各本体部分466が、突出部470のうちの1つを画定する。他の例では、一又は複数の本体部分466は複数の突出部470を含みうる。突出部470により、外側樹脂層302に通気チャネル300が形成されるため、通気チャネル300は突出部470とほぼ同様の寸法及び/又は断面を有する。更に、各本体部分468(例:第2の本体部分)の外面462は、いかなる突出部もないほぼ平面である。
【0041】
示された実施例では、突出部470を有する本体部分466及び突出部がない本体部分468は、本体部分468のうちの1つが本体部分466のうちの2つの間に位置づけされるように交互に位置づけされる。その結果、本体部分408の幅472は一部において、ツール450の突出部470間の距離を画定する。示された実施例では、各本体部分468の幅472はほぼ均一であり、各本体部分466の幅476はほぼ均一であるため、突出部470は距離474だけ等間隔を置いて配置される。別の実施例では、本体部分468の幅472及び/又は本体部分466の幅476が変化するため、突出部は等間隔を置いては配置されない。加えて又は代替的に、より多い(例:2、3、4、5等)又はより少ない(例:0)本体突出部468を、一又は複数の本体部分466の隣接する対の間に位置づけすることができ、突出部470間の距離474に影響を与え、従って突出部470によって形成された通気チャネルを介して排出されうるガス及び/又は蒸気の量に影響を与える。更に、ツール450の本体452を形成するのに、より多い、又はより少ない本体部分466及び/又は本体部分468を含むことができ、ツール450の本体452の幅478、及び/又はツール450の本体452の外面462に含まれる突出部470の数に影響を与えうる。例えば、本体452の幅478を広げると、ツール450が通気チャネルを形成する表面積が増加し、突出部470の数を増加させると、ツール450が形成する通気チャネルの数が増加する。
【0042】
更に、ツール450の本体452は分離可能な複数の本体部分(例えば複数の本体部分466及び/又は複数の本体部分468)によって形成されるため、例示のツール450により、一又は複数の本体部分466、468の局所的な修理が可能になる。例えば、本体部分466のうちの1つの突出部470が損傷を受けた場合、本体452の他の本体部分466、468を交換する及び/又は修理することなく、その本体部分466を交換及び/又は修理することができる。
【0043】
パネル304の通気チャネル300を形成するために、例示のツール450の外面462を外側樹脂層302に接触させる。例えば、ツール450は、ツール450を介して外側樹脂層302に力及び/又は圧力がかかったときに外側樹脂層302に沿って移動し(例:転がり、回転し等)、これによりツール450が、パネル304の外側樹脂層302に通気チャネル300を刻み込む及び/又は他の方法で形成することが可能になる。示された実施例では、ツール450は、ツール450が方向314(図3)に転がる、回転する、及び/又は他の方法で移動したときに、同じ方向314に延在する通気チャネル300を形成する。工場環境において、ツール450を用いてパネル304に通気チャネル300を形成することができる。例えば、ツール400は、製造プロセスにおいてパネル304に装飾層306(図3)が結合される前に、通気チャネル300を形成する。加えて、又は代替的に、現場環境において技術者がツール450を使用して、通気チャネル300を形成する及び/又は修理することができる。例えば、通気チャネル300が損傷を受けた場合、技術者はパネル304から装飾層306を切離し、ハンドヘルドツール450を介して外側樹脂層302に通気チャネル300を形成及び/又は再形成し、続いて、パネル304が結合される構造(例:図1の航空機100)を工場環境に戻さずに、パネル304に装飾層306を再結合させることができる。
【0044】
図5に、本書に開示される教示による外側樹脂層302に形成された別の例示の一又は複数の通気チャネル500を示す。装飾層306がパネル304の外側樹脂層302に結合されたときに、通気チャネル500はパネル304から発生したガス及び/又は蒸気(例:水蒸気)を装飾層306から排出し、ガス及び/または蒸気に起因して、パネル304から装飾層306の一部が剥離することを抑止及び/または阻害する(例えば、装飾層306に気泡が発生することを抑止及び/または阻害する)。
【0045】
図5のパネル304(例:外側樹脂層302、コア層308、補強層310、補強層310の反対側のサンドイッチ構造の複合材の他の補強層、コーティング312)及び装飾層306(例:接着層320)は、図3において同じ参照番号を有する構成要素とほぼ同様の又は同一のものである。更に、図5の通気チャネル500は、図3及び4Aの通気チャネル300とほぼ同様又は同一のものである。通気チャネル300を図3に関連して詳細に記載しているため、図5の通気チャネル500の幾つかの特性については以下に更なる詳細には記載しない。
【0046】
示された実施例では、一又は複数の通気チャネル500は各々、方向502(例:第2の方向)に延在する、従って、他の通気チャネル500各々に対しておおよそ平行する。更に、例示の通気チャネル500は外側樹脂層302の外側エッジ504に延在し、これにより通気チャネル500がガス及び/又は蒸気を装飾層306から排出することが可能になる。例えば、通気チャネル500は外側樹脂層302に形成され、これにより、通気チャネル500はコア層308と、パネル304に結合された装飾層306との間に配置される。通気チャネル500は、パネル304から発生したガス及び/又は蒸気を装飾層306から排出し、ガス及び/または蒸気が、パネル304と装飾層306との間に内圧が形成されるのを抑止及び/または阻害して、装飾層306の一部がパネル304から剥離することを抑止及び/または阻害する(例えば、装飾層306に気泡が発生することを抑止及び/または阻害する)。
【0047】
図6に、本書に開示される教示による外側樹脂層302に通気チャネル500を形成する別の例示のツール600を示す。図6の例示のツール600は、図4Aの例示のツール400と同様のものである。従って、図4Aに関連してツール400を詳細に記載するため、図6のツール600の幾つかの特性(例:材料、寸法、製造特性等)は以下に更に詳細には記載しない。
【0048】
図6に示すように、ツール400の外面404に突出部602が画定される。例えば、突出部602は、ツール600の本体402の長さ604に沿って、ツール600の縦軸406に対しておおよそ垂直に延在する。通気チャネル500はツール600の突出部602によって形成されるため、通気チャネル500はツール600の突出部602とほぼ同様の寸法及び/又は断面を有する。例えば、突出部602は、外面404に沿って対応する通気チャネル500間の距離608とほぼ等しい距離606だけ間隔を置いて配置されている。更に、突出部602が例示のツール600の長さ606に沿って延在するため、ツール600が外側樹脂層302に沿って方向314に転がる、回転する及び/又は他の方法で移動すると、方向502に延在する通気チャネル500が形成される。従って、通気チャネル500は、ツール600が移動して通気チャネル500を形成する方向314に対しておおよそ垂直の方向502に延在する。
【0049】
工場環境において、示された実施例のツール600を用いて、パネル304に通気チャネル500を形成することができる。例えば、ツール600は、製造プロセスにおいてパネル304に装飾層306(図5)が結合される前に、通気チャネル500を形成する。ツール600によって形成された通気チャネル500が外側樹脂層302の幅610に沿って延在することを可能にするために、ツール600の本体402の長さ604は外側樹脂層302の幅610よりも長くなっている。例えば、ツール600の各端部414は外側樹脂層302の対応する外側エッジ504を越えて延在し、ツール600の突出部602によって形成された通気チャネル500が、外側樹脂層302の外側エッジ504へ延在するようになる。
【0050】
図7に、パネル304の外側樹脂層302に形成された他の例示の一又は複数の通気チャネル702(例:第1の通気チャネル)及び一又は複数の通気チャネル704(例:第2の通気チャネル)を示す。装飾層306がパネル304の外側樹脂層302に結合されたときに、通気チャネル702、704は、パネル304から発生したガス及び/又は蒸気を装飾層306から排出し、ガス及び/又は蒸気に起因して、装飾層306の一部がパネル304から剥離するのを抑止及び/又は阻害する(例えば通気チャネル702、704は、装飾層306に気泡が発生することを抑止及び/又は阻害する)。
【0051】
パネル304(例:外側樹脂層302、コア層308、補強層310、補強層310の反対側のサンドイッチ構造の複合材の別の補強層、コーティング312)及び図7の装飾層306(例:接着層320)は、図3及び5において同じ参照番号を有する構成要素とほぼ同様又は同一のものである。更に、図7の通気チャネル702、704は、図3及び4の通気チャネル300、及び図5及び6の通気チャネル500とほぼ同様又は同一のものである。図3~6に関連して通気チャネル300、500を詳細に記載しているため、図7の通気チャネル702、704の幾つかの特性の更なる詳細は以下に記載されていない。
【0052】
図7に示すように、一又は複数の通気チャネル702が一又は複数の通気チャネル704と交差して、格子706を形成している。示された実施例では、通気チャネル702が通気チャネル704に対しておおよそ垂直となるように、通気チャネル702は方向314に延在し、通気チャネル704は方向502に延在する。別の実施例では、通気チャネル702、704は互いに対してほぼ非垂直である(例えば、約30度、45度、60度の角度で交差する)、及び/又は交差しない。例えば、通気チャネル702、704はほぼ非垂直の角度で交差し、ガス及び/又は蒸気を樹脂層302の一部に向かって及び/又は一部から離れるように導く。交差している通気チャネル702、704の格子706は、例えば通気チャネル702、704の表面積を増加させることによって、及び/又は複数の方向に排出路を設けることによって、通気チャネル702、704が装飾層306から排気することができるガス及び/又は蒸気の量を増加させて、装飾層306の一部がパネル304から剥離するのを更に抑止する及び/又は阻害する。更に、格子706は、通気チャネル702、704のうちの一方が部分的に又は完全に塞がった場合に、ガス及び/又は蒸気が通気チャネル702、704のうちの他方を通り抜けることを可能にする代替的な交差路を設けることによって、通気チャネル702、704が排気することができるガス及び/又は蒸気の量を増加させる。
【0053】
通気チャネル702、704は例えば、最初に通気チャネル702又は通気チャネル704を形成することによって、また通気チャネル702又は通気チャネル704の他方を続いて形成することによって形成される。ツール400(図4A)、ツール450(図4B)及び/又はツール600(図6)を用いて、通気チャネル702、704を形成することができる。幾つかの実施例では、ツール400は外側樹脂層302に沿って方向314に移動して、通気チャネル702を形成する。ツール400は次に、パネル304の外側樹脂層302上に再配置され(例えば約30度、45度、60度、90度に回転し)、外側樹脂層302に沿って方向502に移動して、通気チャネル702と交差する通気チャネル704を形成する。あるいは、ツール600は外側樹脂層302に沿って方向314に移動して通気チャネル704を形成し、パネル304の外側樹脂層302上に再配置され(例えば約30度、45度、60度、90度に回転し)、外側樹脂層302に沿って方向502に移動して通気チャネル702を形成しうる。他の実施例では、ツール400、600のうちの一方を使用して、通気チャネル702又は通気チャネル704を形成し、ツール400、600の他方を使用して通気チャネル702又は通気チャネル704の他方を形成する。例えば、ツール400は外側樹脂層302に沿って方向314に移動して、通気チャネル702を形成することができ、ツール600は外側樹脂層302に沿って方向314に移動して、通気チャネル704を形成することができる。
【0054】
図8に、ツール400(図4A)、ツール450(図4B)及び/又はツール600(図6)によって形成された一又は複数の通気チャネル300(図3及び4A)、一又は複数の通気チャネル500(図5及び6)、一又は複数の通気チャネル702(図7)、及び/又は一又は複数の通気チャネル704(図7)の例示の断面802、804、806、808を示す。更に、通気チャネル300、500、702、704は、ツール400の突出部408(図4A)、ツール450の突出部470(図4B)、及び/又はツール600の突出部602(図6)によって形成されるため、突出部408、602は断面802、804、806、808とほぼ同様の断面を有する。図8に示すように、断面802は三角形であり、断面804は弓形(例:半円)であり、断面806は台形であり、断面808は丸い角810を有するほぼ長方形である。各断面802、804、806、808は、幅812と深さ814とを有する。更に、各断面802、804、806、808は、それぞれの断面802、804、806、808の幅812を画定する開口部816と、それぞれの断面802、804、806、808の幅が最小の部分である底部818とを有する。例えば、各断面802、804、806、808の開口部816と底部818との間には、それぞれの開口部816よりも広い部分は存在しない。断面802、804、806、808の開口部816から底部818までが徐々に狭くなることによって、それぞれのツール400、600の突出部408、602が通気チャネル300、500、702、704に包み込まれるのを抑止及び/又は阻害し、従って突出部408、602がパネル304から離れるように回転したときに開口部816に損傷を与えずに通気チャネル300、500、702、704を形成することが可能になる。
【0055】
図9は、本書に開示される教示によるパネル304(図3)の外側樹脂層302に一又は複数の通気チャネルを形成する別の例示のツール900である。ツール900は、ベルト902と、ベルト902がその周囲で回転するローラ904、906とを含む。図9に示すように、ベルト902の外面908は、外面908に沿って縦に延在し、パネル304に通気チャネルを形成する突出部910を画定する。ツール900のベルト902は、ほぼ硬い材料(例:鋼鉄)でできており、ツール900が外側樹脂層302に通気チャネルを形成するときに突出部910が変形するのを抑止する及び/又は阻害する。突出部910は、突出部910とほぼ同様の及び/又は同一の寸法及び/又は断面を有する通気チャネルを形成する。例えば、突出部910、従って突出部910によって形成された通気チャネルは、約0.01インチ(0.15ミリメートル)と0.039インチ(1ミリメートル)の間の深さ及び幅を有する。更に、突出部910は距離912だけ間隔を置いて配置され、ツール900が距離912だけ間隔を置いて配置された通気チャネルを形成することが可能になる。例えば、突出部910は、約0.125インチ(3.175ミリメートル)と2インチ(50.8ミリメートル)の間の距離だけ等間隔を置いて配置され、通気チャネルが接着層(例:図3、5及び7の接着層320)で充填されることを抑止する及び/又は阻害する、及び/又は通気チャネルによって印がつけられることを抑止する及び/又は阻害する。
【0056】
示された実施例では、ベルト902の外面908の一部914が外側樹脂層302と接触及び/又は係合して、通気チャネルを形成する。ベルト902はローラ904、906周囲で回転方向916に回転し、これによりツール900を介して外側樹脂層302に力及び/又は圧力がかかったときに、ベルト902の一部914に外側樹脂層302に沿って方向918に滑動させる。ベルト902の一部914がパネル304の外側樹脂層302に沿って滑動すると、ツール900の突出部910により外側樹脂層302に通気チャネルが刻み込まれる及び/又は他の方法で形成される。突出部910はベルト902に沿って縦にベルト902が滑動するのと同じ方向918に延在し、これにより方向918に延在する通気チャネルを形成する。
【0057】
工場環境において、示された実施例のツール900を用いて、パネル304に通気チャネルを形成することができる。例えば、ツール900は、製造プロセスにおいてパネル304に装飾層306(図3)が結合される前に通気チャネルを形成する。ツール600によって形成された通気チャネル500が、パネル304の外側樹脂層302の長さに沿って延在することが可能になるように、ツール900は、通気チャネルが形成されるべき外側樹脂層302の長さよりも長い長さ920を有する。
【0058】
図10に、ツール900(図9)によって形成された一又は複数の通気チャネルの例示の断面802、804、806、808及び例示の断面1002、1004、1006、1008を示す。通気チャネルはツール900の突出部910(図9)によって形成されるため、突出部910は断面802、804、806、808、1002、1004、1006、1008とほぼ同様の断面を有する。
【0059】
図10の例示の断面802、804、806、808は、図8において同じ参照番号を有する断面とほぼ同様又は同一のものである。図10に示すように、断面1002は台形(例:四角台形)であり、断面1004は弓形であり、断面1006、1008は台形(例:六角台形)である。各断面1002、1004、1006、1008は、幅1010(例:第1の幅)及び深さ1012を有する。深さ1012は接着層320(図3、5、及び7)の厚さよりも大きく、突出部によって形成された通気チャネルが接触層320で充填されるのを抑止及び/又は阻害し、従って通気チャネルが装飾層306(図3、5及び7)からガス及び/又は蒸気を排出することが差し止められる。更に、深さ1012は、通気チャネルが補強層310(図3、5及び7)の繊維補強層に損傷を与える、及び/又は装飾層306がパネル304(図3,5及び7)に結合されたときに目に見えるようになることを抑止及び/又は阻害するほど十分に浅い。例えば、深さ1012は約0.01インチ(0.15ミリメートル)と0.039インチ(1ミリメートル)の間であり、通気チャネルが接着層320で充填されるのを抑止する及び/又は阻害する。更に、幅1010は例えば、約0.01インチ(0.15ミリメートル)と0.039インチ(1ミリメートル)の間であり、通気チャネルが装飾層306からガス及び/又は蒸気を十分に排出させることができる。
【0060】
更に、各断面1002、1004、1006、1008は、幅1016(例:第2の幅)を画定する開口部1014を有する。図10に示すように、各断面1002、1004、1006、1008の幅1010は全体として、それぞれの断面1002、1004、1006、1008の開口部1014の幅1016よりも広い。例えば、通気チャネルの幅1010により、通気チャネルが排気できるガス及び/又は蒸気の量が増加し、通気チャネルの開口部1014の幅1016により、通気チャネルに起因する装飾層(例:図3、5及び/又は7の装飾層306)の美的特性への影響が低減する(例えば、開口部1014の幅1016により通気チャネルによって印がつけられることが減る)。ツール900の突出部906は、外側樹脂層302のエッジを滑り落ちることによって通気チャネルから分離される(例えば突出部906は外側樹脂層302から横方向に離れるように移動することによっては通気チャネルから分離されない)ため、対応する開口部1014に損傷を与えることなく、上記断面(例:開口部1014が通気チャネルの最も広い部分ではない断面)を有する通気チャネルを形成することができる。
【0061】
図11は、本書の教示によるパネルに一又は複数の通気チャネルを形成する例示の方法1100を表すフロー図である。例示の方法1100を図11に示すフロー図を参照しながら説明するが、パネルに通気チャネルを形成するための、他の多くの方法を代わりに用いることができる。例えば、ブロックの実行順は変更されてよく、及び/または記載されているブロックの幾つかは、変更、除外、及び/または組み合わされてよい。
【0062】
パネルに一又は複数の通気チャネルを形成する方法1100を、図3~7のパネル304、図4Aのツール400、図4Bのツール450、図6のツール600及び/又は図9のツール900に関連させながら説明する。更に、方法1100において、図3~7のパネル304、図4Aのツール400、図4Bのツール450、図6のツール600及び/又は図9のツール900を参照しうるため、以下に説明する構成要素の機能とほぼ同様の又は同一の機能を有する図3~7及び9で識別される構成要素の詳細を重ねて説明することはない。代わりに、類似の構造に対しては同一の参照番号が使用される。
【0063】
本書に開示される例示の方法1100は、ブロック1102において装飾層(例:図3、5及び7の装飾層306)がパネル(例:図3~7のパネル304)に結合されているか否かを決定することによって開始される。装飾層がパネルに結合されている場合、パネルから接着層(例:図3、5、及び7の接着層320)を除去することによって、パネルから装飾層が引き離される(ブロック1104)。
【0064】
パネルから接着層が引き離されたときに、又は接着層がパネルに結合されていないことが決定されたときに、吸湿材のコーティング(例えば図3、5、及び7のコーティング312)が、パネルの外側樹脂層(例:図3~7の外側樹脂層302)に塗布される(ブロック1106)。ブロック1108において、パネルの外側樹脂層に隣接して、ツール(例:図4Aのツール400、図4Bのツール450、図6のツール600、図9のツール900)が位置づけされる。更に、ブロック1110において、ツールの外面(例:図4及び6の外面404、図9の外面908)を外側樹脂層に接触させる(ブロック1108)。
【0065】
ブロック1112において、例示の方法1100は、外側樹脂層に一又は複数の通気チャネル(例えば第1の通気チャネル、図3及び4の通気チャネル300、図5及び6の通気チャネル500、図7の通気チャネル702、704)を形成するために、パネルの外側樹脂層に沿ってツールを移動させることを含む。例えば、通気チャネルを形成するために外側樹脂層に沿ってツールを移動したときに、ツールを介して(例えば技術者によって)パネルの外側樹脂層に圧力がかけられる。ある実施例では、ツール400が第1の方向(例えば図3及び7の第1の方向314)に回転し及び/又は転がり、第1の方向に延在する一又は複数の通気チャネル(例えば図3及び4の通気チャネル300、図7の通気チャネル702)を形成する。あるいは、ツール600は第1の方向に回転し及び/又は転がり、第1の方向に対しておおよそ垂直である第2の方向(例えば図5~7の方向502)に延在する一又は複数の通気チャネル(例えば図5及び6の通気チャネル500、図7の通気チャネル704)を形成しうる。他の実施例では、ツール900は外側樹脂層に沿って第1の方向に滑動し、第1の方向に延在する一又は複数の通気チャネルを形成する。
【0066】
ブロック1114において、例示の方法1112は、外側樹脂層に追加の通気チャネルを形成するか否かを決定することを含む。他に形成すべき通気チャネルがなくなるまで、ブロック1108、1110、1112、1114が繰り返される。例えば、ブロック1108、1110、1112、1114を繰り返すことによって、第2の通気チャネルが形成される。ある実施例では、ブロック1112において形成された第2の通気チャネルが、第1の通気チャネルから間隔を置いて配置され、第1の通気チャネルと同じ方向に延在するように、ブロック1108においてツールが再配置される。別の実施例では、ブロック1112において形成された第2の通気チャネルが第2の方向に延在し、第1の通気チャネルと交差する(例えば第1の通気チャネルに対しておおよそ垂直である)ように、外側樹脂層に対するツールの方位を変更するために、ツールを(例えば約90度だけ)回転させることによって、ブロック1108においてツールが再配置される。
【0067】
ブロック1114において外側樹脂層に他に形成すべき通気チャネルがないことが決定されると、例示の方法は、接着層を介してパネルの外側樹脂層に装飾層を結合させることを含む(ブロック1116)。例えば、ブロック1104において外側樹脂層から装飾層が引き離された場合、装飾層はブロック1116において外側樹脂層に再結合される。
【0068】
さらに、本開示は下記の条項に係る実施例を含む。
【0069】
条項1.突出部を有するツールの外面をパネルの外側樹脂層に接触させることと、ツールの突出部に、第1の通気チャネルをパネルの外側樹脂層に形成させるように、ツールの外面をパネルの外側樹脂層上で第1の方向に移動させることと、接着層を介して装飾層をパネルの外側樹脂層に結合させることとを含み、
第1の通気チャネルが、装飾層の厚さよりも厚い深さを有し、第1の通気チャネルが接着層で充填されることを阻害し、第1の通気チャネルが装飾層からガス又は蒸気の少なくとも一方を排出して、ガス又は蒸気の少なくとも一方が装飾層に圧力をかけることを抑止し、外側樹脂層から装飾層の一部が剥離することを抑止する、方法。
【0070】
条項2.ツールの外面をパネルの外側樹脂層上で移動させることは、ツールを外側樹脂層に沿って第1の方向に回転させることを含む、条項1に記載の方法。
【0071】
条項3.ツールを第1の方向に回転させることにより、突出部が、外側樹脂層に沿って第1の方向に延在する第1の通気チャネルを形成する、条項2に記載の方法。
【0072】
条項4.ツールを第1の方向に回転させることにより、突出部が、第1の方向に対しておおよそ垂直である外側樹脂層に沿って第2の方向に延在する第1の通気チャネルを形成する、条項2に記載の方法。
【0073】
条項5.パネルの外側樹脂層上でツールの外面を移動させることは、第1の方向に延在する第1の通気チャネルを形成するために、ツールの外面をパネルの外側樹脂層に沿って第1の方向に滑動させることを含む、条項1に記載の方法。
【0074】
条項6.ガス又は蒸気の少なくとも一方が装飾層に到達することを更に抑止して、外側樹脂層から装飾層の一部が剥離することを抑止するために、パネルの外側樹脂層に吸湿材のコーティングを塗布することを更に含む、条項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0075】
条項7.接着層を外側樹脂層から除去することによって、装飾層をパネルから引き離すことと、ツールを介して外側樹脂層に第1の通気チャネルを形成することと、接着層を外側樹脂層に再適用することによって、装飾層をパネルに再結合させることとを更に含む、条項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【0076】
条項8.第1の通気チャネルが形成されたときに、ツールをパネルの外側樹脂層上に再配置することと、ツールの突出部がパネルの外側樹脂層に第2の通気チャネルを形成するように、ツールの外面をパネルの外側樹脂層上で移動させることとを更に含む、条項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【0077】
条項9.第2の通気チャネルを形成するためにツールの外面を移動させることは、第1の方向に延在する第2の通気チャネルを形成することを含み、第2の通気チャネルは、第1の通気チャネルから間隔を置いて配置される、条項8に記載の方法。
【0078】
条項10.ツールを再配置することは、外側樹脂層に対するツールの方位を変更することを含み、第2の通気チャネルを形成するためにツールの外面を移動させることは、第1の方向とは異なる第2の方向に延在する第2の通気チャネルを形成することを含み、第2の通気チャネルは第1の通気チャネルと交差する、条項8に記載の方法。
【0079】
条項11.装置であって、
ツールであって、
パネルの外側樹脂層と係合し、パネルの外側樹脂層に沿って移動する外面と、
外面に画定され、ツールが外側樹脂層に沿って移動したときにパネルの外側樹脂層に一又は複数の通気チャネルを形成する突出部と
を含むツールを備え、
突出部によって形成された通気チャネルは、接着層を介してパネルに結合される装飾層からガス又は蒸気のうちの少なくとも一方を排出し、ガス及び/又は蒸気の少なくとも一方が装飾層に圧力をかけることを抑止して、外側樹脂層から装飾層の一部が剥離することを抑止し、
突出部は通気チャネルの第2の深さを画定する第1の深さを有し、
第2の深さは、接着層の厚さよりも大きく、通気チャネルが接着層で充填されることを阻害する、装置。
【0080】
条項12.ツールが、外側樹脂層上を移動して通気チャネルを形成するために、ローラの縦軸周囲で回転するローラである、条項11に記載の装置。
【0081】
条項13.突出部が、ローラの縦軸周囲でローラの外面に沿って半径方向に延在し、ローラが、外側樹脂層上で第1の方向に転がることにより、第1の方向に延在する通気チャネルを形成する、条項11に記載の装置。
【0082】
条項14.突出部が、ローラの長さに沿ってローラの縦軸に対しておおよそ平行する方向に延在し、ローラが、外側樹脂層上で第1の方向に転がることにより、第1の方向に対しておおよそ垂直である第2の方向に延在する通気チャネルを形成する、条項11に記載の装置。
【0083】
条項15.ローラの長さが外側樹脂層の幅よりも長く、これによりローラが、外側樹脂層の幅に延在する通気チャネルを形成することが可能になる、条項14に記載の装置。
【0084】
条項16.ツールが、突出部を画定するベルトを含み、ベルトは、パネルの外側樹脂層に沿って滑動して通気チャネルを形成する、条項11に記載の装置。
【0085】
条項17.ツールが、通気チャネルと交差するチャネルを形成するために、パネルの外側樹脂層上に再配置可能である、条項11に記載の装置。
【0086】
条項18.ツールがハンドヘルド装置であり、工場環境において通気チャネルを形成することが可能になる、条項11に記載の装置。
【0087】
条項19.突出部が、弓形又は多角形断面のうちの少なくとも1つを有し、これにより通気チャネルによって形成された通気チャネルが弓形又は多角形断面のうちの少なくとも1つを有する、条項11に記載の装置。
【0088】
条項20.パネルの外側樹脂層と係合する手段と、外側樹脂層に通気チャネルを形成する手段とを備え、係合する手段が外側樹脂層に沿って移動するにつれて、形成する手段が外側樹脂層に一又は複数の通気チャネルを形成し、形成する手段によって形成された通気チャネルは、パネルの装飾層からガス又は蒸気の少なくとも一方を排出し、ガス又は蒸気の少なくとも一方が装飾層に圧力をかけることを抑止して、装飾層の一部が外側樹脂層から剥離することを抑止し、通気チャネルは、接着層の厚さよりも大きい深さを有し、通気チャネルが接着層で充填されることを阻害する装置。
【0089】
本書では特定の例示的な方法及び装置が記載されてきたが、本特許出願の範囲はこれらに限定されるものではない。反対に、本特許出願は、本特許出願の、文言的に修正された特許請求の範囲内、または均等論による特許請求の範囲内に公正に当てはまる、すべての方法、装置、及び製品を包含する。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11