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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】改良された加工特性を有する沈降シリカ
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/193 20060101AFI20240415BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240415BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C01B33/193
C08K3/36
C08L101/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021500960
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019068836
(87)【国際公開番号】W WO2020011984
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】18305945.0
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18209037.3
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コルボー-ジュスタン, フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ボワヴァン, セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ショメット, シリル
(72)【発明者】
【氏名】ショセ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ギュイ, ローラン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-500238(JP,A)
【文献】特表2015-529625(JP,A)
【文献】特表2005-512935(JP,A)
【文献】特表2013-515661(JP,A)
【文献】特表2007-519593(JP,A)
【文献】特表2010-513200(JP,A)
【文献】特表2017-513786(JP,A)
【文献】特表2017-507888(JP,A)
【文献】特表2017-514773(JP,A)
【文献】特表2008-542163(JP,A)
【文献】特開2014-80364(JP,A)
【文献】特開2007-314415(JP,A)
【文献】特開2007-77011(JP,A)
【文献】特開2007-77012(JP,A)
【文献】特開昭63-285113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/193
C08K 3/36
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 140m/gより大きいCTAB表面積SCTABと、
- 遠心沈降によって測定される、少なくとも1.2の凝集体サイズ分布幅Ldと、
- 5.5未満のpHと、
- 1500ppm未満の炭素含有量と
を特徴とする沈降シリカ。
【請求項2】
前記炭素含有量が1000ppmを超えない、請求項1に記載の沈降シリカ。
【請求項3】
前記CTAB表面積SCTABが160m/gより大きい、好ましくは170~400m/gの範囲である、請求項1又は2に記載の沈降シリカ。
【請求項4】
0.5×10-2μm-1min-1以上の解凝集速度αを有する請求項1~3のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項5】
前記pHが3.0以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項6】
BET表面積SBETが165m/gより大きい、請求項1~5のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項7】
- 180~350m/gのCTAB表面積SCTABと、
- 遠心沈降によって測定される、1.2~3.0の範囲の凝集体サイズ分布幅Ldと、
- 3.5~5.5の範囲のpHと、
- 1000ppmを超えない炭素含有量と、
- 0.5×10-2μm-1min-1以上の解凝集速度αと
を特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項8】
アルミニウム含有量が700ppm未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項9】
比V(d5-d50)/V(d5-d100)が0.60以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項10】
(i)pH2.0~5.0を有する出発溶液を提供する工程と、
(ii)反応媒体のpHが2.0~5.0の範囲に維持されるようにケイ酸塩と酸とを前記出発溶液に同時に添加する工程と、
(iii)酸及びケイ酸塩の添加を停止し、塩基を反応媒体に添加して前記反応媒体の前記pHを7.0~10.0の値に上げる工程と、
(iv)反応媒体のpHが7.0~10.0の範囲に維持されるように、ケイ酸塩と酸とを反応媒体に同時に添加する工程と、
(v)反応媒体への酸の添加を継続しながら、ケイ酸塩の添加を停止して反応媒体のpHを5.5未満に到達させて、沈降シリカの第1の懸濁液を得る工程と、
(vi)沈降シリカの前記第1の懸濁液を濾過に供して濾過ケークを提供する工程と、
(vii)得られた沈降シリカのpHが5.5未満であるように前記濾過ケークを鉱酸の存在下で液化工程に供して、沈降シリカの第2の懸濁液を得る工程と、
(vi)任意選択的に、液化工程後に得られた前記沈降シリカを乾燥させる工程と
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の沈降シリカの調製方法。
【請求項11】
工程(iii)において反応媒体へのケイ酸塩の添加が継続されながら酸の添加が停止されて、前記反応媒体の前記pHを7.0~10.0の値に上げる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の沈降シリカと、少なくとも1種のポリマーとを含む組成物。
【請求項13】
前記ポリマーがエラストマーであり、好ましくはジエンエラストマーからなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載の沈降シリカ又は請求項12又は13に記載の組成物を含む物品。
【請求項15】
タイヤ又はタイヤ構成部品の形態の請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー組成物中に分散する改良された能力を有する沈降シリカに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー組成物中の、特にエラストマー組成物中の補強充填剤としての沈降シリカの使用が知られている。このような使用は非常に要求がきびしい:充填剤は、容易に且つ効率的にエラストマー母材中に混合し、分散しなければならず、並びに、典型的にカップリング試薬と共にエラストマーと化学結合に入り、エラストマー組成物の高い且つ均質な強化をもたらす。シリカ充填エラストマー組成物は、タイヤ配合剤において特に有利な用途がある。いわゆる高分散性シリカが充填されたタイヤトレッドは、タイヤ用の従来のカーボンブラックでは得ることができない、ころがり抵抗、耐摩耗性及びグリップに関して、特性の妥協点を実現することを可能にした。
【0003】
高表面積を有する沈降シリカが知られている。例えば国際公開第03/016215A1号パンフレットには、高表面積及び幅の広い粒子サイズ分布を有する沈降シリカが開示されている。
【0004】
同じ表面積を有する沈降シリカと比較したとき、幅の広い粒子サイズ分布を有するシリカは、低下したエネルギー散逸特性(したがって低下した発熱性)及び十分なレベルの強化があるエラストマー組成物を得ることを可能にする。
【0005】
高表面積シリカを使用する利点は、主に、エラストマーとのシリカの結合数を増加させる可能性、したがってその強化レベルを増加させる可能性に存する。したがって、特に、タイヤの耐摩耗性を改良するために慣例的に使用されるシリカよりも大きくなり得る高表面積を有するシリカをタイヤトレッドゴム組成物において使用することが有利であると考えられる。
【0006】
しかしながら、電荷がエラストマー母材中に分散する能力とその表面積の増加は矛盾する特性であることが観察されている。確かに、大きな表面積があると荷電物体間の相互作用の増加があると推定され、したがってエラストマー母材中の不十分な分散及び不十分な混合が推定される。
【0007】
したがって、上述の要件の全ての間の最適なバランスを提供するポリマー組成物中の補強充填剤として使用するための新規な沈降シリカが常に必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
驚くべきことに、高表面積及び大きな凝集体サイズ分布を有する沈降シリカがエラストマー母材中に分散する能力は、シリカのpHが酸性である場合に改良され得ることが見出された。特に、高表面積、大きな凝集体サイズ分布及び5.5未満のpHを有する沈降シリカはエラストマー母材中に容易に分散することが見出された。
【0009】
したがって本発明の第1の目的は、
- 140m/gより大きいCTAB表面積SCTABと、
- 遠心沈降によって測定される、少なくとも1.2の凝集体サイズ分布幅Ldと、
- 5.5未満のpHと、
- 1500ppm未満の炭素含有量と
を特徴とする沈降シリカである。
【0010】
本明細書の他の部分において、用語「シリカ」及び「沈降シリカ」は互いに交換可能に使用されて沈降シリカを意味することができる。
【0011】
CTAB表面積SCTABは、与えられたpHでシリカ表面上で吸着されたNヘキサデシル-N,N,N-トリメチルアンモニウムブロミドの量を測定することによって求められた外部比表面積の尺度である。
【0012】
CTAB表面積SCTABは150m/gより大きく、好ましくは160m/gより大きい。CTAB表面積SCTABは典型的に170m/gより大きく、好ましくは180m/gより大きい。CTAB表面積SCTABは更に、190m/g以上、更に200m2/gより大きく、更にいっそう230m/gより大きいことがあり得る。
【0013】
CTAB表面積SCTABは、400m/gを超えず、典型的に380m/gを超えない。CTAB表面積SCTABは350m/gより低くなり得る。
【0014】
エラストマー強化用途のために有利な範囲のCTAB表面積SCTABは:160~400m/g、170~400m/g、180~350m/g、好ましくは190~350m/g、200~350m/g、更に220~350m/g、好ましくは180~300m/g、及び更に190~300m/gである。
【0015】
本発明の沈降シリカは、幅の広い凝集体サイズ分布を更に特徴としている。用語「凝集体」は本明細書において使用されて、一次シリカ粒子の凝集体を意味する。凝集体は、機械的作用によってばらばらになり得る一次シリカ粒子の最も小さな集合体である。
【0016】
以下に詳述される分離板形遠心沈降機での遠心沈降によって決定される、Ld=(d84-d16)/d50として定義されるパラメーターLdを用いて、凝集体サイズ分布幅を特性決定する。Ldは以下のように定義される:
Ld=(d84-d16)/d50
ここで、dnは、全測定質量のn%がそれ未満である直径である。Ldは無次元数である。凝集体サイズ分布幅Ldは累積凝集体サイズ曲線に基づいて計算される。例として、d50は、凝集体の全質量の50%がそれ未満である(及びそれを超える)直径を表す。このように、d50は、与えられた分布のメジアン凝集体サイズを表し、これに関連して、用語「サイズ」は「直径」を意味しなければならない。
【0017】
粒子サイズ分布幅Ldは少なくとも1.2、典型的に少なくとも1.3である。粒子サイズ分布幅Ldは4.0以下、典型的に3.5以下である。
【0018】
有利には、本発明のシリカの粒子サイズ分布Ldの幅は1.2~3.5の範囲、更に1.3~3.2の範囲である。本発明のシリカの粒子サイズ分布幅Ldは1.2~3.0、好ましくは1.3~2.5の範囲であり得る。
【0019】
本発明のシリカは、その表面に共有結合により付着した一切の有機部分を含有しない。好ましくは本発明のシリカは、その表面に吸着されるか又は共有結合により付着した一切の有機部分を含有しない。
【0020】
本発明のシリカは、1500ppm未満、更に1400ppm未満である炭素含有量を有する。好ましくは、本発明のシリカは、1000ppmを超えない炭素含有量を有する。より好ましくは本発明のシリカの炭素含有量は500ppm未満、より好ましくは100ppm未満である。本発明のシリカの炭素含有量は更に10ppm未満であり得る。
【0021】
本発明のシリカのpHは5.5未満、好ましくは5.2未満、より好ましくは5.0未満、更に4.5未満である。pHは典型的に2.5以上、好ましくは3.0以上、一般的に3.5以上である。
【0022】
より高いpHを有する同様な沈降シリカと比較したとき、5.5未満のpHを有する沈降シリカはエラストマー母材中に分散するのが容易であることが見出された。
【0023】
特に、本発明の沈降シリカがエラストマー組成物中に分散する高い固有能力を特徴としていることが見出された。この能力は、解凝集速度α(以下に説明される解凝集試験によって測定される)によって例示され得る。本発明のシリカの解凝集速度αは典型的に、同じ表面積及び凝集体サイズ分布幅であるがより高いpHを有する沈降シリカの解凝集速度αよりも少なくとも15%高いことが見出された。
【0024】
本発明のシリカは一般的に、0.5×10-2μm-1min-1以上の解凝集速度αを有する。解凝集速度αは、0.6×10-2μm-1min-1以上であり得る。
【0025】
第1の有利な実施形態において、本発明のシリカは:
- 140m/gより大きい、好ましくは160m/gより大きいCTAB表面積SCTABと、
- 遠心沈降によって測定される、少なくとも1.2の凝集体サイズ分布幅Ldと、
- 5.5未満のpHと、
- 1500ppm未満の炭素含有量と、
- 0.5×10-2μm-1min-1以上の解凝集速度αと
を特徴とする。
【0026】
更なる有利な実施形態において本発明のシリカは:
- 160m/gより大きいCTAB表面積SCTABと、
- 遠心沈降によって測定される、少なくとも1.2の凝集体サイズ分布幅Ldと、
- 5.5未満のpHと、
- 1000ppmを超えない炭素含有量と、
- 0.5×10-2μm-1min-1以上の解凝集速度αと
を特徴とする。
【0027】
本発明の沈降シリカは典型的に、比V(d5-d50)/V(d5-d100)を用いて定義される大きな細孔容積分布を特徴とし、ここで、V(d5-d50)はd5~d50の間の直径の細孔によって形成される細孔容積を表し、V(d5-d100)はd5~d100の間の直径の細孔によって形成される細孔容積を表し、dnはここで、全ての細孔の全表面積のn%がその直径より大きい直径の細孔によって形成される細孔直径である。
【0028】
本発明のシリカは典型的に、0.60以上、好ましくは0.65以上の比V(d5-d50)/V(d5-d100)を有する。比V(d5-d50)/V(d5-d100)は典型的に、1.20を超えない。
【0029】
本発明による沈降シリカは、少なくとも150m/、少なくとも165m/g、特に少なくとも170m/g及び好ましくは少なくとも190m/gのBET表面SBETを有する。BET表面は、更に少なくとも200m/gであり得る。BET表面は、一般に最大でも450m/g、特に最大でも420m/g、更には最大でも400m/gである。
【0030】
本発明のシリカは、3.5より大きい、シラノールSiOH数/nm、NSiOH/nm2を特徴としている。シラノールSiOH数/nmは典型的に3.5~6.0の間、好ましくは3.5~5.5の間である。
【0031】
本発明のシリカは付加的なカチオンを含有し得る。適したカチオンの注目すべき、非限定的な例は例えばAl、Mg、Ca又はZnである。
【0032】
本発明の一実施形態において沈降シリカは、1500ppm超のアルミニウム、典型的に2000ppm超を含有する。アルミニウムの量は、シリカの重量に対するアルミニウム金属の重量による量として定義される。アルミニウムの量は典型的に10000ppmを超えない。
【0033】
第2の実施形態において、本発明のシリカは、他のカチオン、例えばケイ酸塩出発原料、沈降シリカに典型的に含有されるアルミニウムを全く含有しないか又は微量含有する。前記追加の元素のうちで、アルミニウムが挙げられてもよい。この第2の実施形態において、本発明のシリカ中のアルミニウムの含有量は一般的に、1400ppmを超えず、好ましくはそれは1000ppmを超えず、より好ましくはそれは500ppmを超えない。
【0034】
本発明の第2の目的は、第1の目的の沈降シリカを調製するための方法であり、前記方法は、
(i)pH2.0~5.0を有する出発溶液を提供する工程と、
(ii)反応媒体のpHが2.0~5.0の範囲に維持されるようにケイ酸塩と酸とを前記出発溶液に同時に添加する工程と、
(iii)酸の添加及びケイ酸塩の添加を停止し、塩基を反応媒体に添加して前記反応媒体のpHを7.0~10.0の値に上げる工程と、
(iv)反応媒体のpHが7.0~10.0の範囲に維持されるように、ケイ酸塩と酸とを反応媒体に同時に添加する工程と、
(v)反応媒体への酸の添加を継続しながら、ケイ酸塩の添加を停止して反応媒体のpHを5.5未満に到達させて、沈降シリカの懸濁液を得る工程と、
(vi)沈降シリカの前記懸濁液を濾過に供して濾過ケークを提供する工程と、
(vii)得られた沈降シリカのpHが5.5未満であるように前記濾過ケークを鉱酸の存在下で液化工程に供して、沈降シリカの懸濁液を得る工程と、
(viii)任意選択的に、液化工程後に得られた沈降シリカを乾燥させる工程とを含む。
【0035】
用語「塩基」は、本明細書において使用されて本発明のプロセスの過程で添加され得る1つ又は2つ以上の塩基を意味し、それは、以下に定義されケイ酸塩からなる群を包含する。任意の塩基がプロセス中で使用されることができる。適した塩基の注目すべき非限定的な例は例えば、ケイ酸塩、アルカリ金属水酸化物及びアンモニアである。塩基は好ましくは、アルカリ金属水酸化物、典型的にナトリウム又は水酸化カリウム、又はアンモニアから選択される。
【0036】
用語「ケイ酸塩」は、本発明のプロセスの過程で添加され得る1つ又は2つ以上のケイ酸塩を指すために本明細書で使用される。ケイ酸塩は典型的に、アルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される。ケイ酸塩は、有利にはケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムからなる群から選択される。ケイ酸塩は、メタケイ酸塩又は二ケイ酸塩などの任意の公知の形態であり得る。
【0037】
ケイ酸ナトリウムが使用される場合、後者は、一般的に、2.0~4.0、特に2.4~3.9、例えば3.1~3.8のSiO/NaO重量比を有する。
【0038】
ケイ酸塩は、3.9重量%~25.0重量%、例えば5.6重量%~23.0重量%、具体的には5.6重量%~20.7重量%の濃度(SiOに関して表される)を有し得る。
【0039】
用語「酸」は、本発明のプロセスの過程で添加され得る1つ又は2つ以上の酸を指すために本明細書で使用される。任意の酸がプロセス中で使用されることができる。一般的に、硫酸、硝酸、リン酸又は塩酸などの鉱酸、或いはカルボン酸、例えば酢酸、ギ酸、又は炭酸などの有機酸が使用される。
【0040】
酸は希釈又は濃縮形態で反応媒体に計量投入され得る。プロセスの異なる段階で、異なる濃度の同じ酸を用いることができる。好ましくは、この酸は硫酸である。
【0041】
プロセスの好ましい実施形態では、プロセスの全ての段階で硫酸及びケイ酸ナトリウムが用いられる。好ましくは、SiOとして表される同じ濃度を有するケイ酸ナトリウムである、同じケイ酸ナトリウムがプロセスの段階の全てにおいて使用される。
【0042】
プロセスの工程(i)では、2.0~5.0のpHを有する出発溶液が反応槽内に提供される。出発溶液は水溶液であり、用語「水性」は、溶媒が水であることを示す。
【0043】
好ましくは、出発溶液は2.5~5.0、特に2.8~4.4、例えば、3.0~4.0のpHを有する。
【0044】
出発溶液は、上記のpH値を得るように、酸を水に添加することによって得ることができる。
【0045】
或いは、出発溶液はケイ酸塩を含有している場合がある。このような場合、それは、酸を水とケイ酸塩との混合物に添加して2.0~5.0のpHを得ることにより得ることができる。
【0046】
工程(i)の出発溶液は、電解質を含んでも含まなくてもよい。好ましくは、工程(i)の出発溶液は電解質を含有する。
【0047】
用語「電解質」は、その一般的に認められている意味にて本明細書で使用され、即ち溶液中にある場合、分解又は解離してイオン又は荷電粒子を形成する任意のイオン性又は分子性物質を特定する。用語「電解質」は、本明細書において使用されて、1つ又は2つ以上の電解質が存在し得ることを示す。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩などの電解質を挙げることができる。有利には、出発溶液で使用する電解質は、プロセスで使用される出発ケイ酸塩の金属と酸の塩である。注目すべき例は、例えば、ケイ酸ナトリウムと塩酸との反応の場合の塩化ナトリウム又は好ましくは、ケイ酸ナトリウムと硫酸との反応の場合の硫酸ナトリウムである。電解質はアルミニウムを含有しない。
【0048】
好ましくは、電解質として硫酸ナトリウムが工程(i)で使用される場合、出発溶液中のその濃度は、8~40g/L、特に10~35g/L、例えば、10~30g/Lである。
【0049】
プロセスの工程(ii)は、出発溶液への酸及びケイ酸塩の同時添加を含む。工程(ii)中に酸及びケイ酸塩を添加する速度は、反応媒体のpHが2.0~5.0の範囲に維持されるように制御される。反応媒体のpHは好ましくは、2.5~5.0、特に2.8~5.0、例えば2.8~4.5の範囲に維持される。
【0050】
工程(ii)における同時添加は有利には、反応媒体のpH値が工程(i)の終了時に、達したpHに常に等しい(±0.2pH単位の範囲内まで)ように行われる。
【0051】
好ましくは、工程(ii)は、上に詳述したように酸及びケイ酸塩の同時添加からなる。
【0052】
本発明のプロセスの一実施形態において、中間工程(ii’)は工程(i)と工程(ii)との間に実施され得、ここで、反応媒体のpHが2.0~9.5の範囲に維持されるようにケイ酸塩と酸とを出発溶液に添加する。ケイ酸塩と酸の添加は、工程(ii’)の全てについて又は一部だけ同時であり得る。工程(ii’)は典型的に、工程(ii)が開始される前に1~10分間、好ましくは2~8分間延長される。
【0053】
次に、工程(iii)において、酸及びケイ酸塩の添加が停止され、塩基が反応媒体に添加される。反応媒体のpHが7.0~10.0、好ましくは7.5~9.5の値に達したときに塩基の添加が停止される。
【0054】
プロセスの第1の実施形態において塩基はケイ酸塩である。このように、工程(iii)において、7.0~10.0、好ましくは7.5~9.5のpHが達せられるまで、反応媒体へのケイ酸塩の添加が継続されながら酸の添加が停止される。
【0055】
プロセスの第2の実施形態において塩基はケイ酸塩とは異なっており、それは、アルカリ金属水酸化物、好ましくはナトリウム又はカリウム水酸化物からなる群から選択される。ケイ酸ナトリウムがプロセスにおいて使用されるとき、好ましい塩基は水酸化ナトリウムであり得る。
【0056】
このように、プロセスのこの第2の実施形態において、工程(iii)において、7.0~10.0、好ましくは7.5~9.5のpHが達せられるまで、酸及びケイ酸塩の添加が停止され、ケイ酸塩とは異なっている塩基が反応媒体に添加される。
【0057】
塩基の添加を停止した後にある、工程(iii)の終了時に、反応媒体の熟成工程を実施することが有利であり得る。この工程は、工程(iii)の終了時に得られたpHで実施することが好ましい。熟成工程は、反応媒体を攪拌しながら実施してもよい。熟成工程は、反応媒体を攪拌しながら、2~45分、具体的には5~25分の時間にわたって実施することが好ましい。熟成工程は、いかなる酸又はケイ酸塩の添加も含まないことが好ましい。
【0058】
工程(iii)及び任意選択の熟成工程後に、反応媒体のpHが7.0~10.0、好ましくは7.5~9.5の範囲に維持されるように、酸及びケイ酸塩の同時添加が実施される。
酸及びケイ酸塩の同時添加(工程(iv))は典型的に、反応媒体のpH値が前工程の終了時に到達したpHと等しく維持されるように(±0.2pH単位以内まで)実施される。
【0059】
本発明のプロセスは、更なる工程を含み得ることに留意されたい。例えば、工程(iii)と工程(iv)との間に、特に、工程(iii)の後の任意選択の熟成工程と工程(iv)との間に、酸を反応媒体に添加することができる。酸のこの添加後の反応媒体のpHは、7.0~9.5、好ましくは7.5~9.5の範囲のままであるのがよい。
【0060】
工程(v)において、反応媒体において5.5未満、好ましくは3.0~5.5、特に3.0~5.0のpH値を得るために反応媒体への酸の添加を継続しながらケイ酸塩の添加が停止される。反応槽中に沈降シリカの懸濁液が得られる。
【0061】
工程(v)の終了時、したがって反応媒体への酸の添加を停止した後に、有利に熟成工程を実施することができる。この熟成工程は、工程(v)の終了時に得られた同じpHで及びプロセスの工程(iii)及び(iv)の間に任意選択的に実施され得る熟成工程について上に記載された条件と同じ時間条件下で実施され得る。
【0062】
ケイ酸塩と酸の反応全体が実施される反応槽は、通常、適切な攪拌装置及び加熱装置を備えている。
【0063】
ケイ酸塩と酸との全反応(工程(i)~(v))は一般的に、40~97℃、特に60~96℃、好ましくは80~956℃、より好ましくは85~95℃の温度で実施される。
【0064】
本発明の一変形形態によれば、ケイ酸塩と酸との全体反応は、通常は40~97℃、具体的には80~956℃、更に85~95℃の定温で実施される。
【0065】
本発明の別の変形形態によれば、反応終了時の温度は反応開始時の温度よりも高く、したがって、反応の開始時(例えば工程(i)~(iii)の間)の温度は好ましくは、40~92℃の範囲に維持され、温度は次に、好ましくは80~96℃、更に85~95℃の範囲の値まで上げられ、それは、反応の終わりまで(例えば工程(iv)及び(v)の間)その値に維持される。
【0066】
直前で説明した工程の終了時に沈降シリカの懸濁液が得られ、これは続いて分離される(液体/固体分離)。プロセスは典型的に、懸濁液を濾過し、沈降シリカを乾燥させる更なる工程(vi)を含む。
【0067】
本発明による調製方法で行われる分離は通常、濾過、必要ならば、これに続く洗浄を含む。この濾過は、任意の好適な方法に従い、例えばベルトフィルター、回転フィルター(例えば真空フィルター)、又は好ましくはフィルタープレスによって実施される。
【0068】
次に、濾過ケークは液化操作に供され、その間に鉱酸が濾過ケークに添加される。酸は、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸からなる群から選択される。酸は好ましくは硫酸又はリン酸である。液化工程の間に濾過ケークに添加される鉱酸の量は、得られた沈降シリカのpHが5.5未満、好ましくは4.5未満であるような量である。pHは更に3.5未満であり得るが、それは一般的に3.0以上である。
【0069】
用語「液化」は、本明細書では、固体、即ち、濾過ケークが流体様の塊に転化するプロセスを示すことが意図される。液化工程後、濾過ケークは流動性を有する流体様形態であり、沈降シリカは懸濁状態である。
【0070】
液化工程は、懸濁状態のシリカの粒子サイズ分布の低下をもたらす機械的処理を含み得る。前述の機械的処理は、濾過ケークを、高剪断ミキサー、コロイドタイプミル、又はボールミルに通すことによって実施され得る。
【0071】
液化工程の間にアルミニウム化合物が濾過ケークに添加され得るが、ただし、得られた沈降シリカのpHが5.5未満、好ましくは5.0未満であることを条件とする。
【0072】
液化工程後に得られる沈降シリカの懸濁液は、その後、乾燥されるのが好ましい。
【0073】
乾燥は当該技術分野で既知の手法に従って実施され得る。好ましくは、乾燥は、噴霧によって行われる。この目的のために、任意の種類の適切な噴霧器、特にタービン、ノズル、液体圧力又は二流体噴霧器を使用できる。一般的に、濾過がフィルタープレスを使用して行われる場合、ノズル式噴霧器が使用され、濾過が真空フィルターを使用して行われる場合、タービン式噴霧器が使用される。
【0074】
乾燥操作がノズル式噴霧器を使用して行われる場合、得ることができる沈降シリカは、通常、実質的に球形のビーズの形態である。この乾燥操作後、任意選択で、回収された生成物に対して粉砕又は微粉化の工程を行なうことが可能であり、得ることができる沈降シリカは、一般的に粉末の形態である。
【0075】
乾燥操作がタービン式噴霧器を用いて行われる場合、得ることができる沈降シリカは、粉末の形態であり得る。
【0076】
最後に、前述で示されたように乾燥、粉砕又は微粉化された生成物は、集塊化工程に任意選択でかけられ、これは、例えば、直接圧縮、湿式造粒(即ち水、シリカ懸濁液などの結合剤の使用による)、押出し又は好ましくは乾式圧密からなる。
【0077】
この集塊化工程によって得ることができる沈降シリカは、一般的に顆粒の形態である。
【0078】
本発明によるか、又は本発明により上に記載された方法によって得る沈降シリカは、多くの用途に使用することができる。
【0079】
本発明の沈降シリカを例えば、触媒支持体として使用することができる。それは、ビタミン(ビタミンE)又は塩化コリンなど、特に食品において使用される、液体など、活性材料のための吸収剤として使用され得る。それは、粘性化剤、食感改良剤又は固化防止剤として、電池セパレーター構成部品として、又は練り歯磨き、コンクリート、又は紙のための添加剤として使用され得る。
【0080】
しかしながら、本発明の沈降シリカは、天然又は合成ポリマーの強化に特に有利な用途を見出す。
【0081】
本発明のシリカを含有するエラストマー組成物は、5.5より高いpHを有する沈降シリカを含む組成物に対して改良された機械的特性及び強化特性を有することがわかった。本発明のシリカの高表面積においても分散する改良された能力は、より良いエネルギー散逸特性及び更に改良された耐摩耗性を有するポリマー組成物を提供する。
【0082】
特に、高比表面積シリカが使用されるとき、例えば190m/gより大きい、典型的に更に210m/gより大きいCTAB表面積を有する沈降シリカが使用されるとき、本発明のシリカの使用はまた、エラストマー組成物の改良された加工特性を提供する。
【0083】
したがって、本発明の更なる目的は、上に定義された本発明のシリカと少なくとも1種のポリマーとを含む組成物である。組成物中のポリマーに言及するとき、「少なくとも1種」という句は、各タイプの1種又は2種以上のポリマーが組成物中に存在することができることを示すために本明細書において用いられる。
【0084】
表現「コポリマー」は、異なる性質の少なくとも2種のモノマー単位に由来する繰り返し単位を含むポリマーを指すために本明細書で使用される。
【0085】
少なくとも1種のポリマーは、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーから選択することができる。熱硬化性ポリマーの注目すべき非限定的な例としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂及びシアネート樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0086】
適切な熱可塑性ポリマーの注目すべき非限定的な例としては、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル/スチレンコポリマー、アクリロニトリル/スチレンコポリマー、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ABSなどのスチレン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリルポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマーなどのポリオレフィン、α-オレフィンと各種モノマーとのコポリマー、例えばエチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマー、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及び脂肪族グリコール/脂肪族ジカルボン酸コポリマーなどの脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0087】
本発明のシリカは、エラストマー組成物の補強充填剤として有利に用いられ得る。したがって、本発明の好ましい目的は、本発明のシリカと、好ましくは-150℃~+300℃、例えば-150℃~+20℃の少なくとも1つのガラス転移温度を示す1つ以上のエラストマーとを含む組成物である。
【0088】
好適なエラストマーの注目すべき非限定的な例はジエンエラストマーである。例えば、特に、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、イソブチレン又は酢酸ビニル、ポリブチルアクリレート或いはこれらの混合物などの少なくとも1つの不飽和を含む脂肪族又は芳香族モノマー由来のエラストマーを使用することができる。また、高分子鎖に沿って及び/又はその1つ以上の末端に位置する化学基によって官能化されたエラストマー(例えば、シリカの表面と反応することができる官能基によって)である官能化エラストマー及びハロゲン化ポリマーを挙げることができる。ポリアミド、エチレンホモ及びコポリマー、プロピレンホモ及びコポリマーを挙げることができる。
【0089】
ジエンエラストマーの中では、例えば、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、又はこれらの混合物、特にスチレン/ブタジエンコポリマー(SBR、特にESBR(エマルジョン)又はSSBR(溶液))、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)、及び更に関連する官能化ポリマー(例えば、シリカと相互作用することができる、ペンダント極性基又は鎖末端における極性基を示す)を挙げることができる。
【0090】
また、天然ゴム(NR)及びエポキシ化天然ゴム(ENR)を挙げることもできる。
【0091】
ポリマー組成物は、硫黄で加硫されることができる、或いは特に過酸化物又は他の架橋系(例えば、ジアミン又はフェノール樹脂)で架橋されることができる。
【0092】
一般的に、ポリマー組成物は、少なくとも1つのカップリング剤及び/又は少なくとも1つの被覆剤を更に含み、これらは更に、とりわけ、酸化防止剤を含み得る。
【0093】
カップリング剤として、非限定的な例として、「対称」若しくは「非対称」シランポリスルフィドが特に使用されてもよく;より具体的には、ビス((C~C)アルコキシル(C~C)アルキルシリル(C~C)アルキル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド若しくはテトラスルフィド)、例えば、ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ポリスルフィド若しくはビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ポリスルフィドなど、例えばトリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドなどが言及されてもよい。また、モノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィドを挙げることができる。また、マスクされた又は遊離のチオール官能基を含むシランを挙げることができる。
【0094】
カップリング剤は、ポリマーに予めグラフトすることができる。それはまた、遊離状態で使用されるか又はシリカの表面にグラフトされ得る。カップリング剤は、適切な「カップリング活性化剤」、即ち、このカップリング剤と混合されて後者の有効性を増加させる化合物と任意選択的に組み合わせることができる。
【0095】
ポリマー組成物中の本発明のシリカの重量比率は、かなり広い範囲で変わることができる。それは通常、10重量%~200重量%、特に20重量%~150重量%、特に20重量%~80重量%、例えば30重量%~70重量%に相当する。或いはポリマー組成物中の本発明のシリカの重量比率は、ポリマーの量の80重量%~120重量%、例えば90重量%~110重量%であり得る。
【0096】
本発明のシリカは、有利には、強化無機充填剤の全て及び更にはポリマー組成物の補強充填剤の全てをも構成し得る。
【0097】
本発明によるシリカは、少なくとも1つの他の補強充填剤、例えば、特に、商用高分散性シリカ、例えば、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)1115MP又はZeosil(登録商標)1085MP(Solvayから市販されている)などや、別の無機補強充填剤、例えば、アルミナ、実際は更に有機補強充填剤、特にカーボンブラック(例えばシリカの無機層で任意選択的に被覆される)などと任意選択的に組み合わせられ得る。本発明によるシリカはその時、好ましくは、補強充填剤の全量の、少なくとも50重量%、実に更には少なくとも80重量%を構成する。
【0098】
本発明の沈降シリカを含む組成物は、多くの物品の製造のために使用されることができる。本発明のシリカ又は上記のポリマー組成物とを含む物品の非限定的な例は、例えば、靴底、床材、ガスバリア、難燃性材料、並びにまたエンジニアリング部品、例えば、ケーブルウェイ用ローラー、家庭用電化製品用シール、液体又はガスパイプ用シール、ブレーキシステムシール、パイプ、被覆、特にケーブル被覆、ケーブル、エンジンサポート、バッテリーセパレーター、コンベヤーベルト、トランスミッションベルト、或いは、ダンパーなどである。有利には、本発明のシリカは、特に、軽車両又は重荷重車両のための、タイヤ、特にタイヤトレッドの製造において使用され得る。
【0099】
参照により本明細書中に組み込まれている任意の特許、特許出願、及び公開資料の開示が、これがある用語を不明確とし得る程度まで本出願の記載と対立する場合、本記載が優先するものとする。
【0100】
本発明をこれから以下の実施例を参照してより詳細に説明するが、その目的は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0101】
分析方法
本発明の沈降シリカの物理化学的特性を、以下に記載する方法を用いて決定した。
【0102】
CTAB表面積の測定
CTAB表面積(SCTAB)値を標準NF ISO 5794-1附属書Gから得られる内部仕様に従って求めた。
【0103】
BET表面積の測定
BET表面積SBETを、以下の調節とともに、標準NF ISO 5794-1附属書E(2010年6月)に詳述されたBrunauer-Emmett-Teller方法に従って求めた:試料を200℃±10℃で予備乾燥させた;測定のために使用される分圧P/Pは0.05~0.3の間であった。
【0104】
分離板形遠心沈降機(CPS)での遠心沈降による粒子サイズ分布及び粒子サイズの測定
CPS Instruments companyによって市販されている、遠心光沈降速度計型「CPSDC24000UHR」を使用する分離板形遠心沈降機での遠心沈降によってd50、d16、d84及びLdの値を測定した。この計測器は、デバイスによって供給されるオペレーティング・ソフトウェア(オペレーティング・ソフトウェアバージョン11g)を備えている。
【0105】
使用される計測器:測定要件のために、以下の材料及び製品を使用した:超音波装置:19mmプローブを備えた1500W発電機型Sonics Vibracell VC1500/VCX1500(コンバーター:CV154+ブースター(部品番号:BHNVC21)+19mmプローブ(部品番号:630-0208))。
【0106】
0.1mgの精度の化学天秤(例えばMettlerAE260);シリンジ:20gaニードルを有する、1.0ml及び2.0ml;50mLの高形状ガラスビーカー(SCHOTT DURAN:直径38mm、高さ78mm);2cmの攪拌棒を有する電磁攪拌機;超音波処理中の氷浴用の容器。
【0107】
化学物質:脱イオン水;エタノール96%;スクロース99%;ドデカン、全てMerck製;CPS Instrument Inc.製のPVC参照標準;使用される参照標準のピーク最大値は200~600nmの間(例えば237nm)であるべきである。
【0108】
分離板形遠心沈降機の準備
測定のために、以下のパラメーターを設定した。較正標準パラメーターのために、供給元によって知らされるPVC標準の情報を用いた。
【0109】
【0110】
装置構成
測定波長を405nmに設定した。以下のランタイムオプションパラメーターを設定した:
【0111】
【0112】
ソフトウェアの全ての他のオプションを計測器の製造元によって設定されたままにした。
【0113】
分離板形遠心沈降機の準備
遠心ディスクを30分間24000rpmで回転させる。スクロース(CASn°57-50-1)の密度勾配を以下のように調製する:
50mLビーカー内に、スクロースの24重量%水溶液を調製する。50mLビーカー内に、スクロースの8重量%水溶液を調製する。これらの2つの溶液が別々に均質化されると、2mLシリンジを使用して試料をそれぞれの溶液から取り、それを以下の順に回転ディスク内に注入する:
試料1:1.8mLの24重量%溶液
試料2:1.6mLの24重量%溶液+0.2mLの8重量%溶液
試料3:1.4mLの24重量%溶液+0.4mLの8重量%溶液
試料4:1.2mLの24重量%溶液+0.6mLの8重量%溶液
試料5:1.0mLの24重量%溶液+0.8mLの8重量%溶液
試料6:0.8mLの24重量%溶液+1.0mLの8重量%溶液
試料7:0.6mLの24重量%溶液+1.2mLの8重量%溶液
試料8:0.4mLの24重量%溶液+1.4mLの8重量%溶液
試料9:0.2mLの24重量%溶液+1.6mLの8重量%溶液
試料10:1.8mLの8重量%溶液
【0114】
ディスクにそれぞれ注入する前に、約0.2mLの空気を補給し、その後に、一切の液体を失わないようにして、数秒間の短い手作業の撹拌を行なうことによって2つの溶液をシリンジ内で均質化する。
【0115】
これらの注入は、その全容積が18mLであり、測定される試料の注入中に現れる場合がある特定の不安定性を除くために有用である密度勾配を作ることを目指す。密度勾配を蒸発から守るために、2mLシリンジを使用して回転ディスク内に1mLのドデカンを添加する。次に、ディスクを任意の最初の測定前に60分間24000rpmで回転させておく。
【0116】
試料の調製
50mL高形状ガラスビーカー(SCHOTT DURAN:直径38mm、高さ78mm)内に3.2gのシリカを秤量し、40mLの脱イオン水を添加して、シリカの8重量%懸濁液を得た。ビーカーを氷及び冷水で満たされた結晶皿内に置く前に、懸濁液を電磁攪拌機で撹拌した(最低20秒)。電磁攪拌機を除去し、結晶皿を、ビーカーの底部から1cmに置いた超音波プローブ下に置いた。超音波プローブをその最大振幅の56%に設定し、8分間活性化した。超音波処理の終了時に、試料抽出後まで最低500rpmで撹拌する2cm磁気攪拌棒を有する電磁攪拌機上にビーカーを再び置いた。
【0117】
超音波プローブは適切な使用条件にあるのがよい。以下の検査を実施しなければならず、好ましくない結果の場合、新しいプローブを使用するのがよい:プローブの端部の物理的一体性の目視検査(ファインキャリパで測定される2mm未満の粗さ深さ);商用シリカZeosil(登録商標)1165MPの測定されたd50は93nm±3nmであるのがよい。
【0118】
分析
それぞれの試料を分析する前に、較正標準を記録した。それぞれの場合、CPS計測器によって提供され、その特性が前もってソフトウェアに入れられるPVC標準0.1mLを注入した。PVC標準のこの最初の注入と同時にソフトウェアで測定を開始することが重要である。注入時に測定を同時に開始することを確実にすることによって、予め超音波処理された試料100μLを注入する前に装置の確認を受けなければならない。
【0119】
これらの注入は1mLの2つの清浄なシリンジで実施された。
【0120】
(ソフトウェア中で0.02μmに構成される)比較的小さい直径の全ての粒子を沈降させるために必要な時間の終わりに達せられる、測定の終了時に、それぞれの直径クラスの比が得られた。得られた曲線は凝集体サイズ分布と呼ばれる。
【0121】
結果:値d50、d16、d84及びLdは、直尺で描かれる分布を基準としている。直径の粒子サイズ分布関数の積分は、「累積」分布、すなわち最小直径と目的の直径との間の粒子の全質量を得ることを可能にする。
d50:母集団の質量で50%がそれ未満及びそれを超える直径である。d50は、シリカ凝集体のメジアンサイズ、すなわち直径と呼ばれる。
d84:それ未満で凝集体の全質量の84%が測定される直径である。
d16:それ未満で凝集体の全質量の16%が測定される直径である。
Ld:等式:Ld=(d84-d16)/d50に従って計算される。
【0122】
水銀ポロシメトリーによる細孔の細孔容積及びサイズの測定
細孔容積及び細孔径分布は、Micromeritics AutoPore(登録商標)IV9520ポロシメーターを用いて決定された;それらは、140°に等しい接触角シータ及び485ダイン/cmに等しい表面張力ガンマとのWashburn関係によって計算された。大気圧で2時間の間200℃の炉内で測定する前にそれぞれの試料を乾燥させた。「使用されるステム容積」、すなわちペネトロメーターの充填のために消費される水銀(Hg)容積のパーセンテージが40%~80%であるように、0.001gの精度のタイプ10ペネトロメーター内に置かれるシリカの出発重量を測定の良い再現性のために選択した。次に、ペネトロメーターは50μmのHgまでゆっくりと脱気され、5分間この圧力に維持された。
【0123】
AutoPore(登録商標)装置は、ソフトウェア・バージョンIV1.09を使用して運転された。生データに修正は加えなかった。測定範囲は3.59kPa(0.52psi)~413685kPa(60000psi)であり、少なくとも100の測定ポイントを使用した(3.59kPa(0.52psi)~193kPa(28psi)の19の測定ポイント並びに10秒の平衡時間、次いで、1.93kPa(0.28psi)~413685kPa(60000psi)の81ポイント並びに20秒の平衡時間)。適切ならば、漸増圧入容積が>0.5mL/gである場合ソフトウェアは更なる測定ポイントを導入した。圧入曲線は、装置のソフトウェアの「滑らかな微分」関数によって滑らかにされた。
【0124】
細孔径データに対して対数微分圧入(Log Differential Intrusion)(mL/g)は、3.5nm~5μmの細孔直径範囲で分析された。
【0125】
与えられた細孔容積及び孔径/半径は、Micromeritics Autopore IV 9520ポロシメーターを用いる水銀(Hg)多孔度測定によって測定され、140°に等しい接触角シータ及び485ダイン/cmに等しい表面張力ガンマとのWashburn関係によって計算される;それぞれの試料を2時間の間200℃の炉内で前もって乾燥させる。
【0126】
pHの測定
pHは、標準ISO 787/9に由来する以下の方法に従って測定される(水中5%懸濁液のpH):
装置:較正pHメーター(1/100の読取り精度)、組み合わせたガラス電極、200mLビーカー、100mLメスシリンダー、約0.01g以内までの精度の秤。
手順:5.00グラムのシリカが、約0.01グラム以内まで200mLビーカーへ秤量される。その後、メスシリンダーで測った95mLの水をシリカ粉末に添加する。このようにして得られた懸濁液を10分間激しく撹拌する(磁気撹拌)。次いで、pH測定を実施する。
【0127】
解凝集試験(解凝集速度α)
αと表記される解凝集速度は、連続モードで運転する、(90+/-5Wのシステムに供給される電力に等しい)750ワットプローブの55%振幅で、超音波砕解試験によって測定された(プローブの調整は、標準シリカ試料を用いて行われた)。測定中に超音波プローブが過度に加熱するのを防ぐために超音波プローブのコンバーターを圧縮空気フラックスで冷却し、超音波処理された懸濁液を氷槽内に置いた。この試験は、粒子凝集塊の容積-平均サイズの変化を超音波処理中に連続的に測定することを可能にする。
【0128】
使用される設備は、レーザー粒子サイズ分析計(Malvern Instrumentsによって販売されるMASTERSIZER3000型:632.8nmの波長の赤色及び470nmの波長の青色で発光するHe-Neレーザー源)及びその調製設備(Malvern Hydro MVユニット)からなり、それらの間に超音波プローブ(SynapTecによって販売されている750ワットLAB750型13mmソニケーター)を取り付けた連続フラックスストリーム処理セル(Sonics Materials製の10~50mL反応器)を挿入した。分析される少量(100mg)のシリカを160mLの水と共に調製設備内に導入し、循環速度をその最大(すなわち3500rpm)に設定した。Mie計算方法(1.44の屈折率及び0.01の吸収率;MalvernV3.50ソフトウェア)を使用して、d[0]と表記される、凝集塊の初期容積-平均直径を求めるために少なくとも3回の連続測定を実施した。次に、超音波処理(連続モード)が55%電力(すなわち先端振幅の最大位置の55%又は90+/-5Wのシステムに供給される電力)で適用され、時間tの関数として容積-平均直径d[t]の変動が約8分間モニタされ、およそ12秒毎に測定が取られた。誘導時間(約3~4分)後に、容積-平均直径1/d[t]の逆数が時間tと共に直線的に又は実質的に直線的に変化することが観察される(砕解の定常状態)。砕解αの速度は、砕解定常状態領域内(一般的に、ほぼ4~8分)で時間tの関数として1/d[t]の変動曲線からの線形回帰によって計算される;それはμm-1.min-1単位で表される。
【0129】
国際公開第99/28376号パンフレットには、この超音波砕解試験を実施するために使用できる測定装置が詳細に記載されている。
【0130】
炭素含有量の測定
炭素含有量は、Horiba EMIA 320 V2などの炭素/硫黄分析計を使用して測定した。炭素/硫黄分析計の原理は、誘導炉(おおよそ170mAに調整された)中で、そして燃焼促進剤(おおよそ2グラムのタングステン(特にLecocel 763-266)及びおおよそ1グラムの鉄)の存在下で酸素の流れ中での固体試料の燃焼をベースとしている。分析される試料(おおよそ0.2グラムの重量)中に存在する炭素は、酸素と化合してCO、COを形成する。その後、これらのガスは、赤外線検出器によって分析される。試料からの水分及びこれらの酸化反応中に生じた水は、赤外線測定に干渉しないように、脱水剤(過塩素酸マグネシウム)を含むカートリッジ上を通すことによって除去される。結果は、ppm単位の元素炭素の重量として表される。
【0131】
アルミニウムの含有量の測定
アルミニウムの量は、XRF波長分散型蛍光X線分光法を用いて(WDXRF Panalytical分析装置を用いて)測定された。試料分析は、0.1~3.0%Al/SiOの範囲の、薄いProleneフィルム(4μm Chemplex(登録商標))によって覆われたセル内に含有されるシリカ粉末を使用して直径4cmのセル内でヘリウム下で実施された。
【0132】
Al及びSi蛍光は以下のパラメーターを用いて測定された:Al Kα角度2θ=144,9468°(20s)、バックグラウンド信号角度2θ=-1,2030°(4s)、Si Kα角度2θ=109,1152°(10s)、チューブ電力4kW(32kV、125mA)、PE002結晶及び550μmコリメーター、ガスフラックス検出器。
【0133】
試料をフッ化水素酸に温浸した後で(例えば、0.2~0.3gのSiOに1mLの40%フッ化水素酸)3.0%超Al/SiO2を含有する試料中のアルミニウムの含量をICP OES(誘導結合プラズマ発光分析)によって求めた。澄んだ溶液を予想Al濃度に従って5%硝酸水溶液中で希釈した。Al特定波長(396.152nm)で測定された強度が、同様な分析条件においてアルミニウム標準(0.10、0.20、1.00及び2.00mg/Lの4つの標準)を用いて得られる0.05~2.00mg/Lの範囲の検量線と比較された。希釈係数及び測定されたシリカの乾燥抽出物を用いた計算によって固体中の量を得た。
【0134】
シラノールの数/nmの測定
シラノールの数/nm表面積は、メタノールをシリカの表面上にグラフトすることによって測定される。第一に、1グラムのシリカを、撹拌されるオートクレーブ内で、10mLのメタノール中に懸濁させた。ハーメチック封止され且つ熱絶縁されたオートクレーブを4時間の間200℃に加熱した(40バール)。次に、オートクレーブを冷水槽内で冷却した。グラフト化シリカを沈降によって回収し、残留メタノールを窒素ストリーム中で蒸発させた。グラフト化シリカを12時間の間130℃で真空乾燥させた。炭素含有量は元素分析によって定量された。シラノールの数/nmは以下の式を用いて計算される:
SiOH/nm2=[(%Cg-%Cr)×6.023×1023]/[SBET×1018×12×100]
ここで、%Cg:グラフト化シリカ上に存在している炭素の質量パーセント;
%Cr:原料シリカ上に存在している炭素の質量パーセント。
【実施例
【0135】
実施例1
960リットルの水を2500リットル反応器内に入れ、90℃に加熱した。15kgの固体硫酸ナトリウムを撹拌下で反応器内に入れた。次に、pHが3.8に達するまで硫酸(濃度:96重量%)を添加した。
【0136】
ケイ酸ナトリウム溶液(3.41に等しいSiO/NaO重量比及び1.231kg/Lに等しい密度)を25分にわたって、370L/hの流量で、硫酸(濃度:7.7重量%)と同時に反応器内に導入した。反応媒体のpHを3.9の値に維持するように流量を調整した。
【0137】
90℃での25分の同時添加の後、酸の導入を停止し、反応媒体のpHを8.0に到達させた。その間に温度を94℃に上昇させた。次に、600L/hのケイ酸ナトリウム流量(最初の同時添加の場合と同じケイ酸ナトリウム)及び反応媒体のpHを8.0の値に維持するように調整した硫酸の流量(濃度:7.7重量%)を用いて18分間に更なる同時添加を行なった。
【0138】
この同時添加の後、硫酸(濃度:7.7重量%)の導入によって反応媒体を4.5のpHにした。この操作の後に2070リットルの沈降シリカ懸濁液が得られた。
【0139】
懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄して、19.2重量%の固形分の沈降シリカケークを得る。
【0140】
実施例2
次に、実施例1において得られたシリカケークの部分を取り、ケークに1709グラムの硫酸溶液(濃度:7.7重量%)を添加して、連続的に激しく撹拌される反応器内で液化工程に供した。
【0141】
液化されたケークをその後、ノズルアトマイザーを用いて噴霧乾燥させて、シリカS1を提供した。シリカS1の特性を以下に報告する。
【0142】
【0143】
比較例1
実施例1の得られたシリカケークの第2の部分を取り、ケークに硫酸(濃度:7.7重量%)及びアルミン酸ナトリウム溶液(Al/SiO比:0.30重量%)を同時添加して、連続的に激しく撹拌される反応器内で液化工程に供した。
【0144】
液化されたケークをその後、ノズルアトマイザーを用いて噴霧乾燥させて、シリカCS1を提供した。シリカCS1の特性を以下に報告する。
【0145】
【0146】
本発明によるシリカS1の解凝集速度αは、CS1の解凝集速度よりも40%高く、これは、シリカS1が解凝集する能力がより良いことを示す。
【0147】
実施例3
1117リットルの水を2500リットル反応器内に入れ、92℃に加熱した。17.9kgの固体硫酸ナトリウムを撹拌下で反応器内に入れた。次に、混合物のpHが4.1に達するまで硫酸(濃度:96重量%)を添加した。
【0148】
ケイ酸ナトリウム溶液(3.44に等しいSiO/NaO重量比及び1.231kg/Lに等しい密度を有する)を25分にわたって、432L/hの流量で、硫酸(濃度:7.7重量%)と同時に反応器内に導入した。反応媒体のpHを4.2の値に維持するように流量を調整した。
【0149】
92℃での25分の同時添加の後、酸の導入を停止し、ケイ酸ナトリウムの添加を継続することによってpHを8.0の値に到達させた。その間に温度を96℃に上昇させた。次に、709L/hのケイ酸ナトリウム流量及び反応媒体のpHを8.0の値に維持するように調整した硫酸の流量(濃度:96重量%)を用いて18分間に更なる同時添加を行なった。
【0150】
この同時添加の後、硫酸(濃度:96重量%)の導入によって反応媒体を4.5のpHにした。この操作の後に2060リットルの沈降シリカ懸濁液が得られた。
【0151】
沈降シリカ懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄して、固形分22.5重量%の沈降シリカケークを生じた。
【0152】
得られたシリカケークは、ケークに1452グラムの硫酸溶液(濃度:7.7重量%)を添加して、連続的に激しく撹拌される反応器内で液化工程に供された。
【0153】
この液化されたケークをその後、ノズルアトマイザーを用いて噴霧乾燥させて、シリカS2を提供した。シリカS2の特性を以下に報告する。
【0154】
【0155】
比較例2
1112リットルの水を2500リットル反応器内に入れ、92℃に加熱した。17.9kgの固体硫酸ナトリウムを撹拌下で反応器内に入れた。次に、pHが4.1に達するまで96重量%の濃度の硫酸を添加した。
【0156】
ケイ酸ナトリウム溶液(3.44に等しいSiO/NaO重量比及び1.231kg/Lに等しい密度を有する)を25分にわたって、432L/hの流量で、硫酸(濃度:7.7重量%)と同時に反応器内に導入した。反応媒体のpHを4.2の値に維持するように流量を調整した。
【0157】
92℃での25分の同時添加の後、酸の導入を停止し、ケイ酸ナトリウムの添加によってpHを8.0の値に到達させた。その間に温度を96℃に上昇させた。次に、709L/hのケイ酸ナトリウム流量及び反応媒体のpHを8.0の値に維持するように調整した硫酸の流量(濃度:96重量%)を用いて18分間に更なる同時添加を行なった。
【0158】
この同時添加の後、硫酸(濃度:96重量%)の導入によって反応媒体を4.4のpHにした。この操作の後に2060リットルの沈降シリカ懸濁液が得られた。
【0159】
沈降シリカ懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄して、固形分22.0重量%の沈降シリカケークを生じた。
【0160】
次に、得られたシリカケークは、ケークに3748グラムの硫酸溶液(濃度:7.7重量%)及び2021グラムのアルミン酸ナトリウム溶液(Al含有量22.5重量%)を添加して、連続的に激しく撹拌される反応器内で液化工程に供された。
【0161】
この液化されたケークをその後、ノズルアトマイザーを用いて噴霧乾燥させて、シリカCS2を提供した。シリカCS2の特性を以下に報告する。
【0162】
【0163】
本発明によるシリカS2の解凝集速度αは、CS2の解凝集速度よりも26%高く、それはシリカS2が解凝集する傾向がより良いことを示す。
【0164】
実施例4
1104リットルの水を2500リットル反応器内に入れ、90℃に加熱した。17.6kgの固体硫酸ナトリウムを撹拌下で反応器内に入れた。次に、混合物のpHが4.1に達するまで硫酸(濃度:96重量%)を添加した。
【0165】
ケイ酸ナトリウム溶液(3.44に等しいSiO/NaO重量比及び1.231kg/Lに等しい密度を有する)を25分にわたって、430l L/hの流量で、硫酸(濃度:7.7重量%)と同時に反応器内に導入した。反応媒体のpHを4.1の値に維持するように流量を調整した。
【0166】
90℃での25分の同時添加の後、酸の導入を停止し、pHを8.0の値に到達させた。その間に温度を94℃に上昇させた。次に、701L/hのケイ酸ナトリウム流量及び反応媒体のpHを8.0の値に維持するように調整した硫酸の流量(濃度:96重量%)を用いて13分間に更なる同時添加を行なった。
【0167】
この同時添加の後、硫酸(濃度:96重量%)の導入によって反応媒体を4.5のpHにした。この操作の後に2060リットルの沈降シリカ懸濁液が得られた。
【0168】
沈降シリカ懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄して、固形分20.4重量%の沈降シリカケークを生じた。
【0169】
得られたシリカケークは、ケークに1モル/Lの濃度のリン酸溶液1642グラムを添加して4.6のpHに到達させ、連続的に激しく撹拌される反応器内で液化工程に供された。
【0170】
この液化されたケークをその後、ノズルアトマイザーを用いて乾燥させて、シリカS3を提供した。シリカS3の特性を以下に報告する。
【0171】
【0172】
実施例5
25Lのステンレス鋼反応器に、15.7Lの精製水及び244gのNaSO(固形)を導入した。溶液を攪拌し加熱して92℃に達した。この温度で全ての反応を実施した。媒体のpHが4.5の値に達するまで硫酸溶液(濃度:7.7重量%)を反応器内に計量しながら供給した。
【0173】
次いで、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO比=3.43;SiO濃度=19.6重量%)を12.5分の時間にわたって103g/分の流量で硫酸(濃度:7.7重量%)と同時に導入した。反応媒体のpHが4.5の値に維持されるように、硫酸溶液の流量を調整した。
【0174】
108g/分の流量で反応媒体のpHが8.0の値に達するまでケイ酸塩の添加を維持しながら酸の導入を停止した。
【0175】
同時に、15.3分の時間にわたって、ケイ酸ナトリウムを163g/分の流量で及び硫酸(濃度:95重量%)を計量しながら供給した。硫酸の流量を、反応媒体のpHが8.0の値に維持されるように調整した。
【0176】
同時添加の最後に、反応媒体のpHを硫酸(濃度:95重量%)で4.8にした。反応混合物を5分間放置した。こうして得られたシリカ懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄した。
【0177】
水を添加して固形分19.7重量%に到達させながら、こうして得られたシリカケークを機械的液化工程に供した。硫酸(濃度:7.7重量%)を添加して、得られたシリカ懸濁液のpHを3.0にした。得られた懸濁液をノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS4を得た。シリカS4の特性を以下に報告する。
【0178】
【0179】
実施例6
25Lのステンレス鋼反応器に、14.44Lの精製水及び160.8gのNaSO(固形)を導入した。溶液は撹拌及び加熱され、92℃に達した。媒体のpHが3.9の値に達するまで硫酸(濃度:7.7重量%)を反応器内に計量しながら供給した。
【0180】
ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO比=3.44;SiO濃度=19.62重量%)を19分の時間にわたって103g/分の流量で硫酸(濃度:7.7重量%)と同時に導入した。硫酸の流量を、反応媒体のpHが3.9の値に維持されるように調整した。その後温度を94℃まで上昇させた。
【0181】
反応媒体のpHが8.0の値に達するまでケイ酸塩の添加を72g/分の流量に維持しながら酸の導入を停止した。
【0182】
16分の時間にわたって同時にケイ酸ナトリウムを154g/分の流量で及び硫酸(濃度:7.7重量%)を計量しながら供給した。硫酸の流量を、反応媒体のpHが8.0の値に維持されるように調整した。同時添加の最後に、反応媒体のpHを硫酸(濃度:7.7重量%)で4.8にした。反応混合物を5分間放置した。こうして得られたシリカ懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄した。
【0183】
水を添加して固形分17.7%に到達させながら、こうして得られたシリカケークを機械的液化工程に供した。硫酸(濃度:7.7重量%)を添加して、得られたシリカ懸濁液のpHを3.0にした。得られた懸濁液をノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS5を得た。シリカS5の特性を以下に報告する。
【0184】
【0185】
実施例7
乗用車トレッドの作製のために適したゴム組成物を表Iに示された処方に従って作製した(構成成分はエラストマー100部当たりの重量部(phr)で表される)。
【0186】
【0187】
ゴム組成物の調製:ゴム組成物を調製するためのプロセスを3つの連続的段階において実施した。第1及び第2の混合段階は、高温での熱機械仕事と、その後の、110℃より低い温度での第3の機械仕事段階とに存する。後者は、加硫系の導入を可能にする。
【0188】
第1及び第2の段階は、それぞれ0.62及び0.59の充填比を有するブラベンダー密閉式ミキサー(正味チャンバ容積:380mL)によって実施された。ローターの初期温度及び速度は、約140~170℃の混合落下温度に達するように毎回固定された。
【0189】
第1の工程の間、エラストマー、充填剤、可塑剤及びステアリン酸を一緒に混合した;混合時間は2~10分であった。
【0190】
混合物を冷却した後(100℃未満の温度)、酸化亜鉛及び酸化防止剤を第2の混合段階の間に化合物に組み込んだ。この段階の継続時間は2~6分であった。
【0191】
混合物を冷却した後(100℃未満の温度)、第3の混合段階が加硫系(硫黄及び促進剤)の導入を可能にした。これを50℃に予熱されたオープン二本ロールミルで実施した。この段階の継続時間は、2~6分であった。
【0192】
次に、最終ゴム組成物を2~3mmの厚さを有するシートに形成した。
【0193】
未硬化化合物のレオロジー特性の評価を実施して加工性の指標をモニタした。加硫特性が決定されると、未硬化化合物を最適加硫(T98)において加硫し、機械的及び動的特性を測定した。
【0194】
未硬化組成物の粘度:NF ISO289標準に従ってMV2000レオメーターを使用してムーニー粘度を100℃で測定した。1分間予熱した後、トルクの値を4分で読み取った(ML(1+4)-100℃)。DIN 53529標準に従ってD-MDR3000レオメーターを使用して、100℃の温度及び1Hzの周波数で0.3~50%のひずみ掃引測定を実施した。これらの結果を表IIに示す。
【0195】
【0196】
本発明のシリカS1を含む未硬化組成物I-1は、対照組成物C-1に対してムーニー粘度ML(1+4)、貯蔵弾性率G’0.3%及びペイン効果ΔG’(0.3-50%)のかなりの低下を示す。本発明のシリカを含有する未硬化ゴム混合物の加工性は、シリカCS1を含有するものと比較して実質的に改良される。
【0197】
未硬化組成物の加硫:NF ISO3417標準に従ってODR MONSANTOレオメーターを使用して30分にわたって160℃で3°の振幅振動で測定を実施した。レオメトリートルクを時間の関数として測定した。これは、組成物の加硫反応を推測すること及び以下のパラメーターをモニタすることを可能にした:試験温度での未硬化化合物のトルクを示す、最小トルク(minT);硬化化合物のトルクを示す最大トルク(maxT);ゴムの架橋度を示すデルタトルク(ΔT=maxT-minT);硬化時間T98は、完全な加硫の98%に相当する加硫速度を得るための時間を与える(T98は最適な加硫としてとられる);スコーチ時間TS2は、考察される温度(160℃)で最小トルクよりも2ポイントだけトルクを増加させるために必要とされる時間に相当し、それは、加硫反応の開始前に未硬化組成物をその間加工することが可能である時間を示す。得られた結果を表IIIに示す。
【0198】
硬化組成物の機械的特性:硬化組成物のショアーA硬度の測定をASTMD2240標準に従って実施した。値は3秒後に取られた。
【0199】
一軸引張試験は、INSTRON5564で500mm/分の速度でH2試験体を使用してNF ISO37標準に従って実施された。弾性率M100及びM300(それぞれ100%及び300%の歪で得られた)並びに引張強さはMpa単位で表され、破断点伸びは%単位で表される。300%歪で得られた弾性率と100%歪で得られた弾性率との間の比として定義される強化指数もまた提供される。測定された特性を表IIIにまとめる。
【0200】
硬化組成物の動的特性:それらは、ASTM D5992に従って粘度分析計(Metravib DMA+1000)で測定された。
【0201】
誘電損率(tan δ)及び複素弾性率(E*)の値は、加硫試料(断面95mm及び高さ14mmの円筒形試験体)上で動的圧縮で記録された。試料は初めに10%の予歪にかけられ、次に±2%の正弦波動的歪振幅にかけられた。測定は、60℃及び10Hzの周波数で行った。
【0202】
表IIIに示す結果は、複素弾性率(E、60℃、10Hz)及び損失率(tanδ、60℃、10Hz)である。
【0203】
【0204】
本発明のシリカS1を含む組成物I-1は、同等の加硫時間T98を有する組成物C-1に対してスコーチ時間の増加を示す。スコーチ時間の増加は、加硫プロセス工程の長さを実質的に増加させずに押出プロセス中に増加した熱安定性を提供するので、有利である。組成物I-1は更に、強化指数及び引張強さの増加を示し、したがってエラストマー組成物の摩耗特性の改良をもたらす。
【0205】
高い可塑剤添加量を有する全組成物I-1は、シリカCS1を含有する組成物C-1と比較して加工性及び摩耗性能の間の妥協点の改善を示す。
【0206】
実施例8
乗用車トレッドのために適したゴム組成物を表IVに示された処方に従って作製した(構成成分はエラストマー100部当たりの重量部(phr)で表される)。
【0207】
【0208】
ゴム組成物の調製:ゴム組成物を調製するためのプロセスを2つの連続的段階で実施した。第1の混合段階は、高温での熱機械仕事と、その後の、110℃より低い温度での第2の機械仕事段階とに存する。後者は、加硫系の導入を可能にする。
【0209】
第1の段階は、0.62の充填比を有するブラベンダー密閉式ミキサー(正味チャンバ容積:380mL)によって実施された。ローターの初期温度及び速度は、約140~170℃の混合落下温度に達するように固定された。
【0210】
混合物を冷却した後(100℃未満の温度)、第2の混合段階が加硫系(硫黄及び促進剤)の導入を可能にした。これを50℃に予熱されたオープン二本ロールミルで実施した。この段階の継続時間は、2~6分であった。
【0211】
次に、最終ゴム組成物を2~3mmの厚さを有するシートに形成した。
【0212】
未硬化化合物に関するレオロジー特性の評価を実施して加工性の指標をモニタした。加硫特性が決定されると、未硬化化合物を最適加硫(T98)において加硫し、機械的及び動的特性を測定した。
【0213】
未硬化組成物の粘度
ムーニー粘度を実施例6と同じ条件下で測定した。DIN 53529標準に従ってD-MDR3000レオメーターを使用して、100℃の温度及び1Hzの周波数で0.9~50%の歪掃引測定を実施した。これらの結果を表Vに示す。
【0214】
【0215】
本発明のシリカS1を含む未硬化組成物I-2は、対照組成物C-2に対してムーニー粘度ML(1+4)、貯蔵弾性率G’0.9%及びペイン効果ΔG’(0.9-50%)のかなりの低下を示す。本発明のシリカを含有する未硬化ゴム混合物の加工性は、より高いpHを有するシリカCS1と比較して実質的に改良される。
【0216】
未硬化組成物の加硫及び硬化組成物の機械的特性を実施例6の同じ条件下で評価した。結果を表VIにまとめる。
【0217】
【0218】
本発明のシリカS1を含む組成物I-2は、加硫速度を遅くせずに、対照組成物C-2に対してスコーチ時間の増加を示す。それはまた、同等の引張強さで増加した強化指数を有し、したがってエラストマー組成物の摩耗特性の改良をもたらす。
【0219】
硬化組成物の動的特性:ASTM D5992に従って粘度分析計(Metravib DMA+1000)で測定された。
【0220】
ひずみ掃引条件下での硬化組成物の動応答
試験体(断面8mm、高さ7mm)は、前進サイクルについて0.1%~50%及び戻りサイクルについて50%~0.1%の範囲の、サイクル往復に従って40℃の温度及び10Hzの周波数で交互二面剪断で正弦波変形に供された。
【0221】
最大誘電損率(tan δmax)、剪断貯蔵弾性率(G’0.1%、G’50%)及びペイン効果(G’0.1%-G’50%)の値は、戻りサイクルの間に記録された。結果を表VIIに示す。
【0222】
【0223】
組成物I-2は、低下したペイン効果及び低下した最大誘電損tanδmaxの両方を示す。両方の効果は、組成物の改良されたエネルギー散逸能力をもたらし、したがって最終タイヤのころがり抵抗の低下をもたらす。
【0224】
温度掃引条件下の硬化組成物の動応答
試験体(断面8mm、高さ7mm)は、-45℃~+45℃の温度掃引(+5℃/分の温度上昇速度)で、1%の交互二面剪断正弦波変形下及び10Hzの周波数で試験された。最大誘電損率(tan δmax)を測定した。結果を表VIIIにまとめる。
【0225】
【0226】
シリカS1を含有する組成物I-2は、最大誘電損率(tan δmax)の増加を示し、それはタイヤの湿潤グリップ特性の改良と相関関係にあり得る。
【0227】
全般に、短い混合時間(全体で2つの混合段階)を用いてゴム組成物の調製において本発明のシリカを使用することによって、より高いpHを有するシリカを含有する組成物と比較して加工性、エネルギー散逸、湿潤グリップ及び摩耗性能のなかで妥協点の改善をもたらす。