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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ビタミンAの合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 403/12 20060101AFI20240415BHJP
   C07C 67/00 20060101ALI20240415BHJP
   C07C 69/007 20060101ALI20240415BHJP
   C07C 315/00 20060101ALI20240415BHJP
   C07C 317/08 20060101ALI20240415BHJP
   C07C 403/08 20060101ALI20240415BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
C07C403/12 CSP
C07C67/00
C07C69/007 B
C07C315/00
C07C317/08
C07C403/08
C07B61/00 300
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021508002
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 EP2019072084
(87)【国際公開番号】W WO2020038858
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】1857549
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507200961
【氏名又は名称】アディッソ・フランス・エス.エー.エス.
【氏名又は名称原語表記】ADISSEO FRANCE S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ユエ ロベール
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゲル ジャン ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】アンリオン ヴィヴィアン
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-015340(JP,A)
【文献】特開2000-247928(JP,A)
【文献】特表2014-521598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 403/12
C07C 67/00
C07C 69/007
C07C 315/00
C07C 317/08
C07C 403/08
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物を調製する方法であって、
はHとアルキルから選択され、
はH、アルキル、OR’から選択され、R’はアルキル、シリル、およびCO-アルキルから選択され、
は、アシル基であるCO(R’’)、およびCO(OR’’)、CO(NR’’R’’’)、PO(OR’’)(OR’’’)、およびPO(OR’’)(R’’’)基から選択され、R’’とR’’’は、互いに独立して、Hとアルキルから選択され、
Rは、C(R)=C(R)(R)基を表し、R、RおよびRは、互いに独立して、H、直鎖状および/または環状のアルキルおよびアルケニル、アリール、およびアルキルアリールから選択され、
R、R、R、およびRが、上記の定義を有する式(II)の化合物を強塩基の存在下で反応させることで、
式(I)の化合物を調製する方法。
【請求項2】
式(I)の化合物を調製するワンポット法であって、
は、Hおよびアルキルから選択され、
はH、アルキル、OR’から選択され、R’はアルキル、シリル、およびCO-アルキルから選択され、
は、アシル基であるCO(R’’)、およびCO(OR’’)、CO(NR’’R’’’)、PO(OR’’)(OR’’’)、およびPO(OR’’)(R’’’)基から選択され、R’’とR’’’は、互いに独立して、Hとアルキルから選択され、
Rは、C(R)=C(R)(R)基を表し、R、RおよびRは、互いに独立して、H、直鎖状および/または環状のアルキルおよびアルケニル、アリール、およびアルキルアリールから選択され、
R、R、およびRが上記定義を有する式(III)の化合物から式(I)の化合物を調製し、
前記方法は、R、R、R、およびRが上記定義を有する式(II)の化合物の形成と、
請求項1記載の方法に従って、前記化合物(II)から化合物(I)へ変換することを含む、
式(I)の化合物を調製する方法。
【請求項3】
式(IV)の化合物を調製するための、請求項1または2に記載の方法であって、
Rは、C(R)=C(R)(R)基を表し、R、R及びRは、互いに独立して、H、直鎖状および/または環状のアルキルおよびアルケニル、アリール、およびアルキルアリールから選択され、
Rが上記定義を有する式(V)の化合物を反応させるか、
またはRが上記定義を有する式(VI)の化合物を反応させ、式(V)の化合物を経ることによる方法。
【請求項4】
式(I)または式(IV)の化合物を得るための、請求項1または請求項3に記載の方法であって、
式(I)の化合物中のRがCH、RがH、RがCOCHであり、式(I)および式(IV)の化合物のRは、

、及び
から選択され、式(II)の化合物中のR、R、およびRはそれぞれ上記定義を有し、式(II)及び式(V)の化合物中のRは、上記定義を有することを特徴とする方法。
【請求項5】
式(I)または(IV)の化合物を得るための、請求項2または請求項3に記載の方法であって、
式(I)の化合物中のRがCH、RがH、RがCOCHであり、式(I)及び式(IV)の化合物のRは、

、及び
から選択され、式(III)の化合物中のR、R、およびRはそれぞれ上記定義を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
ホスファゼン類、アミノイド類、およびアルコラート類から選択される強塩基の存在下で行われることを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
P2Et、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、およびカリウムテルブトキシドから選択される強塩基の存在下で行われることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(VII)の化合物を調製する方法であって、
は、H及びアルキルから選択され、
R’は、Hおよびアルキルから選択され、
Rは、C(R)=C(R)(R)基を表し、ここで、R、R及びRは、互いに独立して、H、直鎖状および/または環状のアルキルおよびアルケニル、アリール、およびアルキルアリールから選択され、
請求項1に記載の、前記化合物(II)を化合物(I)にアシル化する方法を含む、式(II)の化合物から、または、
請求項2に記載の、前記化合物(III)を式(I)の化合物にするワンポット異性化/アシル化方法を含む、式(III)の化合物から
式(VII)の化合物を調製する方法。
【請求項9】
ファルネサルエノールアセテートからデヒドロファルネシルスルホンを調製するための請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ファルネサールからビタミンAを合成する方法であって、
がCH 、R がHおよびRが次式で表される式(III)のファルネサールを
請求項2に記載のワンポット法に従って、次式で表されるR がCH 、R がHおよびR がCOCH である式(II)の化合物へ変換する工程と、
前記式(II)の化合物を下記デヒドロファルネシルスルホンに変換する工程と、
前記デヒドロファルネシルスルホンにアリルブロミドの添加する工程と
を含む方法。
【請求項11】
中間体化合物としての11,12-ジヒドロレチナールのエノールアセテート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンA(C2030O)、その前駆体およびその誘導体へのアクセスの経路を開くことを可能にするセスキテルペン化合物を変換するための新しい反応に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンAの工業的規模の合成は、様々な従来の方法で行われている。中でもビタミンAは、いわゆるC15+C5縮合経路、例えばスルホンの化学反応を伴ういわゆるJulia反応によって得ることができる。この反応では、ビニル-β-イオノールをフェニルスルフィネートアニオンで処理してC15スルホンを得、これに臭化アリルを加えてC20スルホンを得る。このスルホンは消去法でビタミンAアセテートに変換されるが、このビタミンAは非常に不安定なので、そのまま使用するか、ケン化してビタミンAにするのが一般的である。
【0003】
また、他の方法も用いられる。このように、ビタミンAは、Wittig反応によるC15+C5カップリング法で作ることができる。この方法では、C5アセテートのような発がん性、変異原性、生殖毒性(CMR)のある中間体が生成されたり、毒性の強いホスゲンでホスフィンを再生する装置が必要になるなどの問題がある。
【0004】
このように、文献FR2359822A1によれば、水溶液中のβ-イオニリデン-エチル-トリフェニルホスホニウム塩と-アセトキシ-グリチルアルデヒドを反応させることにより、ビニル-β-イオノールからビタミンAアセテートを合成する方法が知られている。
【0005】
もう一つのアクセス経路は、アルキン化学によるC6+C14カップリング法であるが、アセチレンやnButyl-Liなど、明らかにHSE(Health-Safety-Environment)リスクのある特定の原料を使用することや、安定性が低く毒性のあるエポキシ中間体を使用することが難点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの合成法は、その発見以来、真の進化を遂げておらず、現在では、より安全で経済的な新しい工業的合成法を用いることが重要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セスキテルペン、特にファルネセン、またはセスキテルペン誘導体からC15スルホンを合成する独自の経路を提供し、ビタミンAの合成に新たなパラダイムを開くものである。試薬資源は無尽蔵であるため、本発明は従来の方法のコスト問題に対する持続可能な解決策を提供し、ビタミンAの製造だけでなく、他の合成のための中間体の製造においても真の進歩に貢献するものである。
【0008】
本発明の対象となる反応のうち、ビタミンAの合成の鍵となる反応は、酸の存在下で環化反応を行い、デヒドロファルネサールからデヒドロシクロファルネサールを調製する方法である。
【0009】
本発明の目的の1つは、式(I)の化合物を調製する方法である。
R1は、Hおよびアルキルから選択され、
R2はH、アルキル、OR’から選択され、ここでR’はアルキル、シリル、CO-アルキルから選択され、
R3は、CO(R’’)型のアシル基、およびCO(OR’’)、CO(NR’’R’’’)、PO(OR’’)(OR’’’)、PO(OR’’)(R’’’)基から選択され、R’’とR’’’は、互いに独立して、Hとアルキルから選択され、一例として、R3は、CO(CH)又はCO(CHCH)であり、
Rは、C(R4)=C(R5)(R6)基を表し、ここで、R4、R5及びR6は、互いに独立して、H、直鎖状または環状のアルキルおよびアルケニル、アリール、アルキルアリールから選択されるか、または、R4及びR5が一緒になって、飽和または不飽和の、置換または非置換の環を形成する。
【0010】
例を挙げると、Rは、
以下に例示するレチノイドの1の炭素原子から10の炭素原子までの構造部分、
または、以下に例示する7,8-ジヒドロレチノイドの1の炭素原子から10の炭素原子までの構造部分、
または、以下に例示するレチノイドの1の炭素原子から6の炭素原子までの構造部分である。
前記式(I)の化合物は、式(II)の化合物を反応させることによって得られる。
ここで、強塩基の存在下または金属触媒の存在下で、R、R1、R2、及びR3は上記の定義を有する。
【0011】
本発明の要点を構成する本発明の別の目的は、式(III)の化合物から上記の化合物(I)を得るためのワンポット法である。
R、R1及びR2は上記の定義を有する。
【0012】
前記方法は、式(II)の化合物の形成を含む。
ここで、R、R1、R2及びR3は、上記の定義を有しており、上記の化合物(III)から、上記の異性化方法に従って、化合物(II)を形成する。有利には、化合物(II)は単離されない。このワンポット異性化/アシル化法は、ビタミンA、その前駆体およびその誘導体の合成における真の進歩を意味する。
【0013】
本発明をより詳細に説明する前に、本文で使用する用語の定義を以下に示す。
【0014】
不飽和化合物という言葉は、その化合物の異性体、特にそのレジオ異性体および立体異性体にも及ぶ。
【0015】
例えば、ファルネセンという用語は、以下に例示するように、ファルネセンのαおよびβのレジオ異性体、ならびにそれらの各々の立体異性体を含む。
-以下の式を有するα-ファルネセン(3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)
これは、次の4つの異性体(3E、6E)、(3E、6Z)、(3Z、6Z)、および(3Z、6E)として存在し得る。および、
-以下式を有するβ-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)
これは、次の2つの異性体(6E)および(6Z)の形で存在し得る。
【0016】
この定義は、特にファルネサール、デヒドロファルネサール、ファルネソール、レチナール、ジヒドロレチナール、それらのアセテートおよびそれらのエノールアセテートに適用され、その名称はそれらのすべての異性体を網羅している。
【0017】
本発明によれば、アルキル基とは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を含む飽和した一価の直鎖状、環状および/または分岐状の炭化水素鎖を意味し、その代表的な要素としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。環状炭化水素鎖を有するアルキル基とは、3~20個の炭素原子、好ましくは3~7個の炭素原子と、1つまたは複数の環(複数可)を含む飽和一価炭化水素鎖を意味する。代表的なものとしては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基などが挙げられる。
【0018】
アルケニル基とは、2~20個の炭素原子からなる一価の直鎖状、環状および/または分岐状のモノまたはポリ不飽和炭化水素鎖を意味する。
【0019】
シリル基とは、Hおよびアルキルから選択される同一または異なる3つの置換基で置換されたSi原子からなる基を意味し、例えばトリメチルシリルなどが挙げられる。
【0020】
本発明によるアリール基とは、6~20個の炭素原子からなる、芳香族、単官能、単環式または多環式の炭化水素鎖を意味する。例として、ベンジル基、ナフチル基、ビフェニル基を挙げることができる。
【0021】
上で定義した「アルキル」および「アリール」という用語は、例えば-CO-アルキル基やアルキルアリール基のように、基の名前を含む場合でも同じ定義を維持している。
【0022】
上記2つの方法のいずれか1つの変形例によれば、本発明は、式(IV)の化合物の調製に関するものである。
Rは、式(I)について先に定義したとおりである。
【0023】
式(V)の化合物を反応させることによって、
または、式(VI)の化合物を反応させることによって、
式(V)の中間化合物を経由する。有利には、化合物(V)は単離されない。
【0024】
したがって、以下の式(I)または(IV)の化合物:ビタミンAアセテート、デヒドロ-β-ファルネシルアセテートおよびデヒドロ-シトラールアセテートのいずれか1つを得ることができる。
-11,12-ジヒドロレチナールエノールアセテート、デヒドロ-β-ファルネシルエノールアセテートおよびデヒドロ-シトラールエノールアセテートからそれぞれ選択される式(II)または(V)の化合物から、本発明のアシル化ステップに従って、または
-好ましくは、対応するアセテート中間体を単離することなく、それぞれ11,12-ジヒドロレチナール、ファルネサルおよびシトラールから選択される式(III)または(VI)の化合物から、本発明によるワンポットアシル化/異性化法に従って得ることができる。
【0025】
また、7,8-ジヒドロレチナールからビタミンAアセテートを得るための本発明のワンポットアシル化/異性化法の実現性も確認された。本発明によれば、デヒドロ-シクロファルネシルエノールアセテートから得ることができるが、好ましくはデヒドロ-シクロファルネシルエノールアセテートを単離することなくシクロファルネサルからワンポットで得ることができる。
【0026】
本発明の有利な実施形態では、化合物(II)または(V)の化合物(I)または(IV)への異性化は、強塩基の存在下で行われ、例えば、P2Etなどのホスファゼン類、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)などのアミニド類、およびカリウム・テルブトキシドなどのアルコラート類から選択される強塩基を用いることができる。
【0027】
化合物(III)または(VI)をそれぞれ化合物(II)または(V)にアセチル化する方法は、従来から当業者に知られている条件、例えば無水酢酸とピリジンの存在下で行われている。
【0028】
ファルネサールは容易に入手できる試薬である。実際に、当業者に知られた方法に従って、ファルネセン、ファルネソール、ファルネソエートエチル、ネロリドールまたはデヒドロネロリドールから合成的に製造することができる(Tetrahedron Letters 2016, 57, 40, 4496-4499; New Journal ofChemistry 2001, 25, 7, 917-929; Catal. Comm. 2014, 44, 40-45)が、レモングラスの精油などからも単離することができる。ファルネサルは、少なくとも1つの貴金属、主にパラジウムの存在下、ワッカー式プロセスの触媒条件で、ファルネセンの酸化によって製造することができる。有利には、反応媒体は、PdCl2などのパラジウム(II)塩、銅塩および酸化剤からなる。例としては、PdCl2(CH2CH2)、CuCl2-LiMoO4の存在下で反応が行われる。
【0029】
本発明の主要な関心事の一つは、式(VII)の化合物の調製に関するものである。

R及びR1は、式(I)について以前に与えられた定義を有し、R’2は、Hおよびアルキルから選択される。
【0030】
この方法は、本発明の目的でもあり、以下のように構成されている。
【0031】
上述の式(II)の化合物から、式(VII)のスルホンを調製することであって、前記化合物(II)を化合物(I)にアシル化する方法を含む、または
前記式(III)の化合物から式(VII)のスルホンを調製するには、前記化合物を式(I)の化合物にワンポットで異性化/アシル化する方法を含んでいる。
【0032】
前記化合物(I)、(II)および(III)は、先に定義したとおりである。
本発明の変形例では、デヒドロファルネシルスルホンをファルネサルエノールアセテートから調製する。
【0033】
興味の一つは、ファルネセンまたはその誘導体からビタミンAを製造することであり、これは本発明のもう一つの目的であり、この合成は、上述の方法の少なくともいずれか一つからなる。本発明の異なる目的およびその応用は、以下の実施例で説明される。
実施例では、使用される略語を以下に定義する。
TTは、変換率を定義する。
RRは、試薬に対する収率を定義する。
RRisolatedは、分離後の試薬の収率を定義する。
RRassayedは、反応媒体中で測定された試薬の収率を意味する。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0034】
〈実施例1:11,12-ジヒドロレチナールからの酢酸ビタミンAの調製〉
この調製は、2つのステップ、11,12-ジヒドロレチナールから本発明の主の化合物である11,12-ジヒドロレチナールの酢酸エノールを得る第1のステップ、次いで11,12-ジヒドロレチナールの酢酸エノールのビタミンA酢酸塩へ変換する本発明の異性化方法を含む第2のステップを含む。
【0035】
1.1)11,12-ジヒドロレチナールの酢酸エノールおよび異性体へのアセチル化
操作条件は以下のとおりである。
【0036】
試薬は次の順序で窒素下に導入される。
-11,12-ジヒドロレチナール(DHR)、2g(4.47mmol)
-DMAP、1g(8.10mmol)
-ピリジン、10g(126mmol)
-無水酢酸、10g(96mmol)
反応媒体を光のない状態で115℃で1時間撹拌する。25℃に冷却した後、反応媒体を、100mLの水、100mLのNaHCOの飽和水溶液、および100mLのシクロヘキサンからなる混合物に注ぐ。分離後、水相を100mLのシクロヘキサンで再抽出し、合わせた有機相をNaClの飽和水溶液(300mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、蒸発させる。
【0037】
黄橙色の油2.01gが得られた。
【0038】
TTDHR=100%(TLC)
RRisolated=57%のエキソ/エンド異性体の混合物(80/20)
力価(HPLC)=41%(エキソ33%+エンド8%)。
【0039】
1.2)酢酸ジヒドロレチナールエノールのビタミンA酢酸塩への異性化
【0040】
一般的な操作条件は次のとおりである。
試薬を、磁気撹拌を備えたピルボックスに窒素下で導入した:酢酸エノール(上記1.2の反応から生じる混合物、50mg、0.076mmol)、溶媒(1.15mL、DMSOを除く:2.3mL)、塩基(tBu0K:3.6mg)(DMSO、NMP、イソプロパノール、THFの場合は溶液に添加);ハイドロタルサイト:25mg;KOH:30mg片、力価85%;ソーダ水溶液:300g/Lで500μL)。光のない状態で反応媒体を撹拌した。
【0041】
反応モニタリングでは、有機相の各サンプル(50μL)を、0.5mLの水、0.5mLのNaHCO3飽和水溶液、および0.5mLのシクロヘキサンの混合物で加水分解する。シクロヘキサン相のアリコートをシリカプレートに置き、シクロヘキサン/酢酸エチル混合物(90/10)で溶出する。
【0042】
さまざまな条件がテストされた。最も代表的なものを表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
〈実施例2:11,12-ジヒドロレチナールからの酢酸ビタミンAの調製〉
この実施例は、本発明によるアシル化/異性化法を含む、実施例1の「ワンポット」代替案である。
【0045】
操作条件は以下のとおりである。
試薬は次の順序で窒素下に導入された。
-ジヒドロレチナール、3.62g(12mmol)
-アセトニトリル、141.5g(180mL)
-Ac2O、1.86g(18mmol)
-DBU、9.23g(60mmol)
【0046】
(均一な暗黄色の)反応媒体を、光のない状態で75℃で10時間撹拌する。25℃に冷却した後、(均一な暗褐色の)反応媒体を[シクロヘキサン(600mL)+飽和重炭酸ナトリウム水溶液(600mL)+水(600mL)]の撹拌混合物に注ぐ。水相(pH=9)を100mLのシクロヘキサンで再抽出し、次にシクロヘキサン相を合わせ、水(100mL)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、濃縮して、3.97gの赤褐色の油を得た。
【0047】
得られた粗反応は、以下の特徴を有する。
TT(DHR)=100%(TLC)
RRisolated=77%の(trans+13-cis+9-cis)異性体の混合物
力価(HPLC)=77%(trans+13-cis+9-cis)
異性体の分布:trans/13-cis/9-cis=75/16/9
上記の反応粗生成物を以下のように結晶化させた。
【0048】
3.8mLのn-ヘプタン中の3.91gの前の油の溶液を-20℃に冷却し、トランスビタミンAアセテートの結晶(n-ヘプタンでの前の結晶化中に得られた)を播種する。-20°Cで4時間後、大規模な結晶化が起こる。次に、懸濁液を40℃に16時間冷却し、次に濾過する。オレンジ色の結晶2.41g(乾燥後)および赤褐色の母液4.3ml(3.37g)が得られる。
【0049】
結晶の特性評価:
トランス異性体の結晶化収率=88%
トランスタイター(HPLC)=81%
力価(トランス+13-シス+9-シス、HPLC)=90%
異性体分布:トランス/13-シス/9-シス=90/8/2
母液の特性評価:
タイター(トランス+13-シス+9-シス、HPLC)=23%
異性体分布:トランス/13-シス/9-シス=37/37/26
〈実施例3:本発明の「ワンポット」代替法による7,8-ジヒドロレチナールからのビタミンAアセテートの調製〉
この例は、本発明によるアシル化/異性化法を含む、酢酸ビタミンAを製造するための別の「ワンポット」代替物である。
【0050】
操作条件は以下のとおりである。
試薬は、25℃の窒素下で次の順序で導入された。
-7,8-ジヒドロレチナール、0.2g(0.628mmol)
-アセトニトリル、0.42mL
-Ac2O、0.097g(0.943mmol)
-DBU、0.483g(3.142mmol)
(均質な暗黄色の)反応媒体を、光がない状態で、80℃で撹拌する。サンプルは24時間の反応中に採取される。
【0051】
TT(7,8-DHR)=100%(HPLC)
RRassayedVitaminAアセテート=4時間後の(trans+13-cis+9-cis)異性体の混合物の4%
異性体分布:トランス/13-シス/9-シス=86/10/4
〈実施例4:本発明の「ワンポット」代替法によるシトラールからのトリエンオールアセテートの調製〉
【0052】
操作条件は以下のとおりである。
試薬は次の順序で窒素下に導入された。
-シトラール、7.7g(48mmol)
-アセトニトリル、72mL
-Ac2O、7.47g(72mmol)
-DBU、36.5g(240mmol)
(均一な)反応媒体を光のない状態で82℃で24時間撹拌する。 25℃に冷却した後、(均一な)反応媒体を[シクロヘキサン(300mL)+塩化アンモニウムの飽和水溶液(300mL)+水(300mL)]の撹拌混合物に注ぐ。水相(pH=5)を100mLのシクロヘキサンで再抽出し、次にシクロヘキサン相を合わせ、乾燥し(Na2SO4)、濃縮して、9.34gの褐色の油を得た。
【0053】
TT(DHR)=100%(TLC)
RRisolated=80%
力価(1H NMR)=80%
〈実施例5:本発明の「ワンポット」代替法によるファルネサルからの酢酸デヒドロファルネシルの調製〉
【0054】
操作条件は以下のとおりである。
Ac2Oは、窒素雰囲気下で、マグネチックスターラーバーと温度計を備えた500mLの3つ口フラスコ内のCH3CN中のファルネサルの溶液に添加される。培地を25℃で5分間撹拌し、次にDBUを反応媒体中で撹拌する。反応媒体の組成の変化に続いてTLCが行われる。午後6時を過ぎると、ファルネサルの変換が完了する。反応媒体をNH4Cl(2x50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、減圧下(40℃、10mbar)で濃縮する。クロマトグラフィー(SiOH、120g、シクロヘキサン→シクロヘキサン/AcOEt=98:2)による精製により、4.5gのオレンジ油を酢酸デヒドロファルネサルから単離することができる。
【0055】
TTファルネサル=100%(GC)
RRassayedデヒドロファルネサールアセテート=89%(GC)
RRisolatedデヒドロファルネサールアセテート=75%(クロマトグラフィー)
酢酸デヒドロファルネサールの力価=90%(1H NMR推定値)
〈実施例6:実施例5で得られたデヒドロファルネシルアセテートからのデヒドロファルネシルスルホンの調製〉
【0056】
操作条件は以下のとおりである。
磁気撹拌棒を備えたショット管に、窒素雰囲気下で、Pd(p-allylCl)2(0.028g、0.075mmoles)と1,1'-フェロセンジイル-ビス(ジフェニルホスフィン(dppf))(0.126g、0.21mmol)をCH2Cl2(4.4mL)に入れて脱気したもの(N2)を、PhSO2Na(1.1g、7.57mmol)とMe4NBr(0.15g、0.038mmol)をH2O(12.4mL)に入れた溶液と、デヒドロファレシルアセテート(1.1g、3.79mmol)をCH2Cl2(8.8mL)に入れた溶液に加えます。反応媒体の組成の変化を、有機相のTLCで追跡する。25℃で5時間後、デヒドロファルネシルアセテートの変換が完了する。反応媒体をCH2Cl2(2x20mL)で抽出し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、減圧下(40℃、10mbar)で濃縮する。クロマトグラフィー(SiOH、40g、シクロヘキサン/AcoEt=95:5)による精製により、デヒドロファルネシルスルホンの淡黄色オイル1gを単離した。
【0057】
TTデヒドロファレシルアセテート=100%(GC)
RRassayedデヒドロファルネシルスルホン=76%(GC)
RRisolatedデヒドロ-ファルネシルスルホン=68%(クロマトグラフィー)
デヒドロファルネシルスルホンの力価=90%(1H NMR推定値)