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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】船首フェンダを備えた船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 59/02 20060101AFI20240415BHJP
【FI】
B63B59/02 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021521240
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019079057
(87)【国際公開番号】W WO2020089034
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】18203179.9
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518399243
【氏名又は名称】オルステッド・ウィンド・パワー・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Orsted Wind Power A/S
【住所又は居所原語表記】Kraftvaerksvej 53,7000 Fredericia,Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ウィンドルフ、ミッケル・ハウガード
(72)【発明者】
【氏名】ベスターガード、ポール・ヘーゲルスケア
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-25272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0199500(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第2485861(GB,A)
【文献】特開昭61-130513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0000424(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03190042(EP,A1)
【文献】特開2013-083070(JP,A)
【文献】特表2016-519234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 59/02
B63B 59/02
F03D 13/20- 13/25
F03D 13/40
F03D 13/00
E02D 27/32
E02D 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶であって、少なくとも1つの船体と、前記船舶の前方方向を画定する船首部分と、を備え、前記船首部分が、横方向に所与の湾曲で前記船首部分を少なくとも部分的に横切って延在し、前記横方向に少なくとも1つの湾曲した係合面を有する、少なくとも1つの弾性変形可能なフェンダを備え、前記係合面が、前記前方方向に面し、前記船舶が構造物にドッキングしている間、構造物と係合するように適合されており、
前記フェンダが、垂直投影で見たときに、少なくとも1つの凹状係合面を備え、前記凹状係合面は前記構造物の上陸用構造を収容するように適合されたいくつかの窪みを備えることを特徴とする、船舶。
【請求項2】
前記凹状係合面の湾曲が、前記湾曲に沿って少なくとも1つの円形セクタを備える、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記円形セクタが、1メートル超の半径を有する、請求項2に記載の船舶。
【請求項4】
前記円形セクタが、3~10メートルの半径を有する、請求項3に記載の船舶。
【請求項5】
前記円形セクタの中心が、前記船舶の前方に位置し、前記船舶の前記前方方向に符合する、請求項2に記載の船舶。
【請求項6】
前記弾性変形可能なフェンダと前記少なくとも1つの船体との間に配置された少なくとも1つの塑性変形可能な部材をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項7】
前記少なくとも1つの塑性変形可能な部材が、前記垂直投影で見たときに前記弾性変形可能なフェンダの背面にある窪み内に位置する、請求項6に記載の船舶。
【請求項8】
船舶をドッキングさせるための方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の船舶が、前記船舶のエンジン出力を使用して構造物に押し付けられる、方法。
【請求項9】
前記構造物が、洋上構造物である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記洋上構造物が、風力タービンのモノパイルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
モノパイルと、請求項1~7のいずれか一項に記載の船舶と、を備える、システム。
【請求項12】
前記モノパイルが、保護支柱を含まない、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィンドファーム設備のモノパイルを含む洋上構造物などの、ただし、排他的ではない、構造物に対する、船舶、特に輸送船のドッキングに関する。
【0002】
洋上ウィンドファームを運用する際、サービス、保守などのために、サービス人員および設備などをウィンドファームに輸送する必要がある。これは通常、輸送船を使用して海を介して行われる。これらの輸送船は、プラットフォーム、風力タービン基礎、または他の船など、様々な異なるタイプの設備にドッキングすることができることが必要である。
【0003】
ドッキング目的のために、船は通常、それ自体のエンジン出力下で、設備の好適な上陸用構造物に対して押し付けられる。モノパイル上に位置する風力タービンの場合、上陸用構造物は通常、モノパイルに対して好適な間隔を空けて配置された一対の垂直保護支柱であり、それによって、とりわけ、モノパイルを擦れまたはへこみから保護し、へこみは、モノパイルの構造的完全性を潜在的に損なうものである。
【0004】
モノパイルの風力タービン基礎を保護する、かかる保護支柱の例は、とりわけ、公開特許出願第GB2473490号、同第GB2520094号、および同第GB2489679号に見出すことができる。
【0005】
しかしながら、海でモノパイル上に上陸用構造物を提供および保守することは追加費用を伴うため、上陸用構造物の使用を回避するための少なくとも経済的誘因がある。これは、GB2473490、GB2520094、およびGB2489679にも開示されているような既存の輸送船が、既存の上陸用構造物にドッキングするように特別に適合されているというインフラ上の問題をもたらす。これにより、これらの輸送船は、例えば、モノパイルの擦れ、へこみのリスク、またはさらにはモノパイルの構造的完全性を損なうリスクが増加し得るため、モノパイルに直接ドッキングするには適していない。
【0006】
より具体的には、GB2520094は、従来の上陸用構造物の保護支柱と係合するように特別に適合されたくさび形の割れ目の両側に2つの直線フェンダを有する。
【0007】
GB2489679は、保護支柱の一方または両方を受容し、保護支柱と係合するように適合された間隙によって分離されている、2つ以上、特に3つの凸状の前方に面するフェンダの使用を開示している。
【0008】
ある程度同様に、GB2473490は、保護支柱の一方または両方を受容し、保護支柱と係合するように適合された間隙によって分離されている、多数の凸状の前方に面するフェンダを開示している。
【0009】
この先行技術に基づいて、本発明の第1の目的は、洋上構造物、特に、ただし排他的ではない、洋上風力タービンの基礎に使用されるモノパイルを単純化することである。
【0010】
この先行技術に基づいて、第2の目的は、保護用の上陸用構造物を欠く構造、特に、ただし、排他的ではない、ウィンドファーム設備のモノパイルにドッキングすることができる船舶を提供することである。
【0011】
この先行技術に基づいて、第3の目的は、保護用の上陸用構造物を欠く構造にドッキングすることができることに加えて、上陸用構造物が存在する場合に、依然として上陸用構造物にドッキングすることを可能にする、船舶を提供することである。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、これらの目的のうちの少なくともいくつかは、船舶であって、少なくとも1つの船体と、上記船舶の前方方向を画定する船首部分と、を備え、上記船首部分が、横方向に所与の湾曲で上記船首部分を少なくとも部分的に横切って延在し、上記横方向に少なくとも1つの湾曲した係合面を有する、少なくとも1つの弾性変形可能なフェンダを備え、上記係合面が、上記前方方向に面し、船舶が構造物にドッキングしている間、構造物と係合するように適合されており、上記フェンダが、上記前方方向から横方向に見たときに、少なくとも1つの凹状係合面を備えることを特徴とする、船舶によって達成される。
【0013】
少なくとも1つの凹状係合面を提供することによって、構造物の円形部分、特に、モノパイルの円形外部湾曲に対する衝撃および圧力の面積は、先行技術の凸状フェンダの衝撃点と比較して低減され得る。さらに、これは、人員および設備の輸送中に、波および潮流に対して、モノパイルに対する船首の横および垂直の位置を固定する、広い面積の摩擦係合を可能にし得る。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、これらの目的のうちの少なくとも1つは、船舶をドッキングさせるための方法であって、第1の態様に記載の船舶が、船舶のエンジン出力を使用して構造物に押し付けられる、方法によって達成される。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、第1の目的は、洋上風力タービンの基礎のための保護支柱を含まないモノパイルの使用によって達成される。本発明の第1および第2の態様の実装例により、洋上風力タービン発電機を点検するための船舶および方法を変更することによって、洋上風力タービン発電機に使用されるモノパイル上の上陸用構造物の保護支柱の費用のかかる施設および保守は回避される。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、これらの目的のうちの少なくとも1つは、本発明の第1の態様に記載のモノパイルおよび船舶を備えるシステムによって達成される。
【0017】
本発明の第1の態様の第1の好ましい実施形態によれば、凹状係合面の湾曲は、湾曲に沿って少なくとも1つの円形セクタを備える。これにより、湾曲を、船舶が頻繁にドッキングする構造物に一致させ、摩擦を最大化し、衝撃力を最小化することができる。
【0018】
本発明の第1の態様のさらなる好ましい実施形態によれば、円形セクタは、1メートル超、好ましくは3~10メートル、より好ましい4~8メートル、最も好ましくは5~7メートルの半径を有する。これにより、船舶は、特に、風力タービンのモノパイルだけでなく、例えば、浮遊式の風力タービン基礎などの、大きな寸法の他の基礎構造物にも適している。
【0019】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態によれば、円形セクタの中心は、船舶の前方、好ましくは真っ直ぐ前方に位置し、船舶の前方方向に符合する。これにより、船舶の主エンジンを使用しているときの船舶頭部のドッキングが容易になる。
【0020】
本発明の第1の態様のさらに好ましい実施形態によれば、船舶は、弾性変形可能なフェンダと少なくとも1つの船体との間に配置された少なくとも1つの塑性変形可能な部材をさらに備える。かかる塑性変形可能な部材は、船舶に破砕ゾーンを提供し、船舶による有害な衝撃からモノパイルを保護する。モノパイルとは異なり、塑性変形可能な部材は、例えば、洋上モノパイルを修理するための費用と比較して、わずかな費用で、海岸で修理または交換することができる。
【0021】
本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの塑性変形可能な部材は、前方方向に見たときに弾性変形可能なフェンダの背面にある窪み内に位置する。これにより、フェンダの潜在的な衝撃ゾーンに近い塑性変形可能な部材の交換可能な供給が可能になり、それによって、船舶をドッキングさせる、モノパイルなどの構造物の良好な保護が確保される。
【0022】
本発明の第2の態様の好ましい実施形態によれば、構造物は、洋上構造物である。それによって、洋上構造物上の上陸用構造物の費用のかかる供給および保守を回避することができる。これは、特に、本方法の別の好ましい実施形態に従って、洋上構造物が風力タービンのモノパイルである場合に有利である。
【0023】
ここで、本発明を非限定的な例示の実施形態に基づいて、かつ図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】モノパイルの構造物に直接ドッキングされる、本発明による単一のフェンダを有する船舶の船首の概略上面図である。
図2】本発明による複数のフェンダを有する船舶の船首の図1のものに対応する図である。
図3】本発明によるフェンダの代替的な実施形態を有する、船舶の船首の請求項1のものに対応する図である。
図4】ドッキングの過程において、従来の上陸用構造物を有するモノパイルに対して角度が付けられた図3の船舶の船首の図である。
図5】従来の上陸用構造物を有するモノパイルに正面からドッキングした図3の船舶の船首の図である。
図6図1図5のフェンダの代替的な形状の概略上面図である。
図7】単一のフェンダと、塑性変形可能な部材によって形成された破砕ゾーンと、を有する、船舶としての船首の概略上面図である。
【0025】
まず図1を参照すると、風力タービン発電機の洋上モノパイル基礎などの構造物が部分的に示されている。本発明によれば、モノパイル1は、従来の上陸用構造物を含まず、はしごの正面にあるスペーサ3上に配置された2つの垂直保護支柱2を備え、図4および図5に例示されるように、段4およびスティンガ5がすべてモノパイル1上に配置されている、という意味で新規である。スペーサ3および/または支柱のレイアウトは、ドッキング中に船舶からの衝撃または過剰な推進力を受けた場合に、モノパイル1の代わりに変形し、ひいては、支柱を保護するようなものである。また、塗料の保護コートを損傷し、鋼材を腐食性の塩水にさらし得る摩擦摩耗は、モノパイル1上ではなく、保護構造物上で起こるであろう。保護支柱または上陸用構造物の他の部分が損傷した場合、その修理または交換は、モノパイル1全体を交換するよりも実質的に低い費用のものになるであろう。
【0026】
多くの場合、モノパイル1は、海底に打ち込まれたパイルまたはチューブと、風力タービンのタワーまたはモノパイル基礎が役に立つすべてのものとの間の遷移部分を備える。以下では、かかる遷移部分は、従来技術では通常、上に保護構造物が位置する従来のモノパイルの部分であり得るため、新規のモノパイル1の一部とみなされる。
【0027】
さらに、図1では、船舶7の船首6が例示されている。船舶7は、単一の船体の船舶であっても、カタマランなどの複数の船体の船舶であってもよい。船舶の船首6は、好ましくは、矢印8によって例示されるように、船舶7の前方方向に向けられていないが、その方向を横切って概ね平坦である。概して、船舶は、少なくとも船体(複数可)に関して大部分が対称であり、したがって、矢印8は、船舶7の長軸方向中心線も画定する。単一のフェンダ9が船舶7の船首6上に配置されている。いかなる重要な外力によっても影響を受けない場合、すなわち、船舶7によって何にも押し付けられていないときに、フェンダは、前方方向8から見たときに、略凹状の形状10を有する。見ることができるように、フェンダ9の凹状の形状10は、概して、少なくとも垂直投影で見たときに、円形セクタの形状である湾曲を有する。この円形セクタは、大きな接触面を確保することにより、フェンダがモノパイル1の大きな面積と係合することを可能にし、潜在的にモノパイル1に損傷を与え、かつその構造的完全性を損ない得る、任意の高い力の点を回避するか、または鋼材をコーティングしている塗料を擦ることによって鋼材をさらすように、最も頻繁にドッキングされるモノパイル1の半径に対応する半径rを有し得る。同時に、ゴムなどの高摩擦面を通常備えるフェンダ9と、塗装された鋼材モノパイル1との間で良好な摩擦が得られる。この摩擦により、船舶7のエンジンによる圧力下で、船舶7の船首6をモノパイル1に対してしっかりと保持することができる。ただし、風、波、および潮流が過剰すぎないことを条件とする。この文脈において、ドッキングとは、広く理解されるものであり、かつ設備および/または人員の輸送中に、モノパイル1または他の構造物に対して船舶を可能な限りしっかりと保持する過程であることを理解されたい。
【0028】
ここで図2を参照すると、3つのフェンダ9、9aを有する船舶7の船首6の代替的な実施形態が示されている。図1に示されるように、モノパイル1は、上陸用構造物の保護支柱2を含まない新規のタイプのものである。前方方向8から見たときに、各々が略凹状の形状10を備える、2つの横のフェンダ9が存在する。3つすべてが、モノパイル1の半径と一致する半径rを有する好ましい円セクタの湾曲を有する。中央フェンダ9aは、船舶7を先行技術のモノパイル1にドッキングさせる必要がある場合、従来の上陸用構造物の保護支柱2および/またははしごの収容を可能にするように伸縮自在であってもよい。1つの代替例では、中央フェンダ9aは、保護支柱2に押し付けられるときに、ばねおよび/またはダンパのシステムに対して押下可能であってもよい。別の代替例では、中央フェンダ9aは、横のフェンダ9が船舶7によってモノパイル1に押し付けられたときに保護支柱2によって弾性変形するように、横のフェンダ9よりも実質的に軟質であってもよい。中央フェンダ9aのこれら3つの実施形態のいずれかは、モノパイル1が、フェンダ9、9aの半径rが想定される、モノパイル1およびフェンダ9、9aのシステムの1つの形成部分よりも小さな半径を有するモノパイル1である場合、良好な係合も可能にし得る。通常、モノパイル1の半径は数年にわたって増加しているだけなので、フェンダ9の半径rが前世代のモノパイル1と一致している場合、後方互換性はほぼ固有のものである。したがって、現在および将来のモノパイルの半径と一致し、後方互換性を確保するために、円形セクタは、3~10メートル、好ましくは4~8メートル、最も好ましくは5~7メートルの間隔の半径を有することが好ましい。しかしながら、例えば、本発明による船舶7が、例示的な実施形態で使用されるモノパイル1以外の他の構造物に対してドッキングするように考案されている場合、1メートル以上などのより小さな半径を用いることもできる。
【0029】
上述の中央フェンダ部分9aの代替例として、単一のフェンダ9は、図3図5に例示されるような所定の湾曲を有するいくつかのセクタ9、9aを備えることができ、半径rを有する横のフェンダ部分と中央フェンダ部分9bとが好適な窪み9cで離間配置されている。図3から見ることができるように、複数の湾曲したフェンダ部分は、上陸用構造物を含まない新規のモノパイル1に対して直接ドッキングするときに良好な係合を提供するが、同時に、図4および図5から見ることができるような従来の上陸用構造物の保護支柱2を含む従来のモノパイル1aとのドッキングを可能にする。図6との比較によってわかるように、窪みは、図3図5に例示される実施形態のものほど幅広である必要はないが、より狭くして、モノパイル1と係合するためのより多くの係合面を可能にすることができる。湾曲10は、同じ、すなわち、フェンダの3つの係合部分すべてが半径rであってもよく、当然のことながら、半径はまた、異なるフェンダセクション間で異なり得るか、またはフェンダ9、9bのそれぞれの凹状部分に沿って変化し得る。同じことが、開示される他の実施形態にも適用される。つまり、全部のフェンダがいくつかの個々のフェンダ9、9aから作製されている場合、半径rは、凹状フェンダ9、9aごとに変化し得る。
【0030】
ここで図7を参照すると、本発明による船舶7のさらなる好ましい実施形態が示されている。以下に記載されるこの実施形態の追加の特徴は、前述の実施形態すべてに適用可能であり、前述の実施形態に実装することができ、その逆も同様である。船舶7は、新規のモノパイル1に対してドッキングするために接近中など、新規のモノパイル1から短い距離で示されている。示されるモノパイル1は、保護支柱2を有する上陸用構造物を含まない新規のモノパイル1であるが、フェンダ9の窪み9dが従来の上陸用構造物の収容、ひいては、従来のモノパイル1aに対するドッキングを可能にすることが当業者には明らかであろう。
【0031】
繊細なモノパイル1を、モノパイル1、ひいては、風力タービン発電機全体の構造的完全性を損なう可能性のある衝撃からさらに保護するために、船舶に破砕ゾーンを取り付けることができる。破砕ゾーンは、船舶7の船首6とフェンダ9との間に配置された塑性変形可能な部材11、11aを含む。かかる塑性変形可能な部材の構造はそれ自体が既知であり、その構成の詳細は本発明にとってあまり重要なものではない。これらは、金属ハニカム構造もしくは同様のセル、またはフレームのような構造を含み得る。示される実施形態では、破砕ゾーンは、船首6とフェンダ9との間に配置された塑性変形可能な部材を含む。モノパイル1に対する船舶7からの衝撃または圧力が、弾性変形可能なフェンダ9によって吸収されるには高すぎる場合、塑性変形可能な部材11が、モノパイル1の代わりに変形する。しかしながら、塑性変形可能な部材の交換または修理は、少なくとも洋上モノパイル1の修理または交換と比較して、最小限の費用で次の寄港時に行うことができる。さらに、または塑性変形可能な部材11の代替として、1つ以上の塑性変形可能な部材11aが、前方方向8から見たときにフェンダ9の背面にある好適な窪みに収容されることによって、船舶7の船首6とフェンダ9との間に配置され得る。上で中央部分9aに関して記載されるような、ばねおよびダンパのシステムは、船舶7の前方方向8に見たときに、その正面にある弾性変形可能なフェンダ9、9a、9bのみを用いることもできる。

以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、付記する。
[1] 船舶であって、少なくとも1つの船体と、前記船舶の前方方向を画定する船首部分と、を備え、前記船首部分が、横方向に所与の湾曲で前記船首部分を少なくとも部分的に横切って延在し、前記横方向に少なくとも1つの湾曲した係合面を有する、少なくとも1つの弾性変形可能なフェンダを備え、前記係合面が、前記前方方向に面し、前記船舶が構造物にドッキングしている間、構造物と係合するように適合されており、
前記フェンダが、前記前方方向から前記横方向に見たときに、少なくとも1つの凹状係合面を備えることを特徴とする、船舶。
[2] 前記凹状係合面の湾曲が、前記湾曲に沿って少なくとも1つの円形セクタを備える、[1]に記載の船舶。
[3] 前記円形セクタが、1メートル超、好ましくは3~10メートル、より好ましい4~8メートル、最も好ましくは5~7メートルの半径を有する、[2]に記載の船舶。
[4] 前記円形セクタの中心が、前記船舶の前方、好ましくは真っ直ぐ前方に位置し、前記船舶の前記前方方向に符合する、[2]に記載の船舶。
[5] 前記弾性変形可能なフェンダと前記少なくとも1つの船体との間に配置された少なくとも1つの塑性変形可能な部材をさらに備える、[1]~[4]のいずれか一項に記載の船舶。
[6] 前記少なくとも1つの塑性変形可能な部材が、前記前方方向に見たときに前記弾性変形可能なフェンダの背面にある窪み内に位置する、[5]に記載の船舶。
[7] 船舶をドッキングさせるための方法であって、[1]~[6]のいずれか一項に記載の船舶が、前記船舶のエンジン出力を使用して構造物に押し付けられる、方法。
[8] 前記構造物が、洋上構造物である、[7]に記載の方法。
[9] 前記洋上構造物が、風力タービンのモノパイルである、[8]に記載の方法。
[10] 洋上風力タービンの基礎のための保護支柱を含まないモノパイルの使用。
[11] モノパイルと、[1]~[6]のいずれか一項に記載の船舶と、を備える、システム。
[12] 前記モノパイルが、保護支柱を含まない、[11]に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7