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特許7472131高レベルのp-ジオキサノンモノマーを含有する吸収性ポリ(p-ジオキサノン)の高度加工
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】高レベルのp-ジオキサノンモノマーを含有する吸収性ポリ(p-ジオキサノン)の高度加工
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20240415BHJP
   C08G 63/66 20060101ALI20240415BHJP
   C08G 63/85 20060101ALI20240415BHJP
   C08G 63/90 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CFD
C08G63/66
C08G63/85
C08G63/90
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021530164
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 IB2019059974
(87)【国際公開番号】W WO2020109930
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】16/202,454
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アンジェリック・ササ
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・ブライアン・エム
(72)【発明者】
【氏名】ウィスヌデル・マーク
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-301608(JP,A)
【文献】特表2000-516979(JP,A)
【文献】国際公開第2018/085018(WO,A1)
【文献】米国特許第05717059(US,A)
【文献】特開2001-151878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28、99/00
C08G 63/00-64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調節器を備える単一反応器内で行われるp-ジオキサノンの溶融重合によって吸収性ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを作製する方法であって、
i.p-ジオキサノン(PDO)モノマー、開始剤、触媒、及び任意選択で染料の混合物を溶融反応器に仕込む工程と、
ii.前記PDOモノマーを完全に混合するため前記混合物を十分に撹拌しながら、時間以上、前記溶融反応器内で、95℃~145℃の反応温度にて前記混合物を溶融重合させる工程と、
iii.モノマー含有量によって測定したときに、未反応PDOモノマーの少なくとも一部分を除去するために、PDOポリマー生成物を約60~180分間真空下に置く工程と、
iv.前記PDOポリマー生成物を前記溶融反応器からインライン水中ペレタイザに直接放出して、未乾燥PDOペレットを製造する工程と、
v.前記未乾燥PDOペレットを回収する工程と、
vi.回収した前記未乾燥PDOペレットを冷凍庫又は真空チャンバ内に保存した後、乾燥させる工程と、を含
工程(iii)後の前記未反応PDOモノマーの含有量が、約15モルパーセント~約35モルパーセントであり、ペレット化が、ポンプ及びカッターを有する前記インライン水中ペレタイザによって、以下の:
a.前記溶融反応器を95℃~130℃の動作温度に設定する、
b.初めに、前記溶融反応器の撹拌器を、2RPM~6RPMの回転速度又は工程(ii)の回転速度の約20~40%に設定する、
c.初めに、前記インライン水中ペレタイザにおけるポンプ速度を約5RPM~約7RPMに設定し、前記ポンプ速度を10RPM~15RPMの範囲まで徐々に上げる、
d.前記インライン水中ペレタイザを約100℃~140℃のダイ温度に設定する、
e.前記カッターを約2,000~3,600RPMの回転速度に設定する、
条件下で行われる、方法。
【請求項2】
前記PDOモノマーの前記溶融重合が、単官能性開始剤の存在下、500:1~2,000:1(モノマーのモル:開始剤のモル)の開始剤濃度、及び30,000:1~300,000:1(モノマーのモル:触媒のモル)の総量の前記触媒の存在下で、4時間~16時間の総反応時間にわたって、前記単一反応器内で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単官能性開始剤がドデカノールである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒がオクタン酸第一スズである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記混合物が前記染料を含み、前記染料が0.01~0.2重量パーセントの染料濃度のD&Cバイオレットナンバー2である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記未乾燥PDOペレットを乾燥させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記未乾燥PDOペレットを、流動床乾燥装置を使用して乾燥させる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥が、真空及び/又は加熱能力を備える回転式乾燥機を使用して行われ、
a.約15モルパーセント~約35モルパーセントの未反応p-ジオキサノンモノマー含有量を有する未乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを前記回転式乾燥機に移す工程と、
b.室温で前記回転式乾燥機に真空を適用し、水分分析器によって測定したときに、ポリ(p-ジオキサノン)ペレット中の水分レベルを100百万分率未満まで低下させる工程と、
c.乾燥機温度を約55℃の出発乾燥温度に設定し、約2~6時間加熱及び真空を維持する工程と、
d.乾燥機温度を約75℃の中間乾燥温度に設定し、約2~6時間加熱及び真空を維持する工程と、
e.乾燥機温度を約85℃~95℃の最終乾燥温度に設定し、約16~32時間加熱及び真空を維持する工程と、
f.乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを回収する工程と、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットは、乾燥プロセスの終了時に4%未満の未反応PDOモノマーを含有する、請求項に記載の方法
【請求項10】
前記乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットは、25℃及び0.10g/dLの濃度でヘキサフルオロイソプロパノール中で測定したときに1.2dl/gを超える固有粘度(IV)を有する、請求項に記載の方法
【請求項11】
前記乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定したときに8.3×10-23kg(50,000ダルトン)を超える重量平均分子量(Mw)を有する、請求項に記載の方法
【請求項12】
前記乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットは、広角X線回折(WAXD)によって測定したときに45%を超える結晶化度レベルを有する、請求項に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、15~35モル%などの高モノマーレベルを含有する溶融重合ポリ(p-ジオキサノン)樹脂の加工における新規方法について記載する。これらの方法は、p-ジオキサノンの溶融重合中の水中ペレット化の使用に続いて、このような形成されたペレットを脅かす(threat)ための選択された乾燥工程を含んでいてよい。
【背景技術】
【0002】
解決しようとする課題:ペレット化プロセスを介した高レベルの残留モノマーが入っている反応器からの低ガラス転移温度ポリマーの放出は、非常に大きな技術的課題を提示する。高濃度の液体モノマー残留物を有するこのような完全に非晶質の樹脂は、ペレット化前に過度に柔らかくなる可能性があるため、この課題が存在する。第2の大きなハードルは、このようなポリマーの大部分、例えば、高モノマー含有量で負荷されたポリ(p-ジオキサノン)樹脂は水分感受性であり、これは、乾燥手順(真空下における加熱工程によるモノマーの除去)の前及びその最中に生じ得る著しい分解を引き起こす。
【0003】
p-ジオキサノンのホモポリマー及びコポリマーは、その低い毒性、軟度、及び可撓性から、医療器具及び製薬分野において高い関心を集めている。ポリ(p-ジオキサノン)(PDS)は、最初に、Doddiらにより吸収性ポリマーとして提案された[米国特許第4,052,988(A)号「Synthetic absorbable surgical devices of poly-dioxanone」by Namassivaya Doddi;Charles C.Versfelt,and David Wasserman(Ethicon,Inc.)]。1980年代前半まで、ホモポリマーは、モノフィラメント外科用縫合糸を形成するために用いられていた。それ以降、多くのp-ジオキサノンコポリマーが報告されている[Bezwada,R.S.;Jamiolkowski,D.D.;Cooper,K.In Handbook of Biodegradable Polymers;Domb,A.J.;Kost,J.;Wiseman,D.M.,Eds.;Harwood Academic:Singapore,1997;Chapter 2.]。トリメチレンカーボネートと、グリコリドと、p-ジオキサノンモノマーとのコポリマーを原料とするモノフィラメントは、米国食品医薬品局によって承認されており、現在販売用に提供されている[米国特許第5,403,347号Roby,M.;Bennett,S.L.;Liu,C.K.(United States Surgical Corp.)]。
【0004】
ガラス転移温度の低い(Tg=-10℃)PDSは、本質的に軟性かつ可撓性である。また、低い値のTgによって、この結晶化可能な材料が室温でこれらの特性を呈することが可能になる。したがって、外科用モノフィラメントによく適していることに加えて、射出成形して、クリップ(ABSOLOK(商標)及びLAPRA-TY(商標))及びファスナ(Mitek Meniscal Repair System)などの多数の非フィラメント外科用器具にすることができる。これら外科用物品は、このファミリーが呈する全般的な強靱性を十分に活用する。
【0005】
p-ジオキサノンを重合させる標準的な手順は、反応器内における初期の短い液(溶融)相、続いて、典型的には65℃~85℃の温度に設定された硬化オーブン内における延長された固相を伴う[米国特許第4,052,988号、同第5,717,059号、及び同第6,448,367(B1)号を参照されたい]。例えば、米国特許第4,052,988号「Synthetic absorbable surgical devices of poly-dioxanone」Namassivaya Doddi;Charles C.Versfelt,and David Wasserman(Ethicon,Inc.)には、溶融状態で開始する吸収性ポリ-ジオキサノンホモポリマーの合成、及び80℃での固体硬化工程を利用する仕上げについて記載されている。樹脂は、外科用縫合糸として使用するための後続の繊維製造において使用される。固体段階を使用するのは、形成されるポリ(p-ジオキサノン)がそのp-ジオキサノンモノマーと熱力学的平衡状態にあるので、より高い反応温度におけるモノマー再生のシフトを引き起こすためである。反応温度を65℃~85℃の範囲に下げると、樹脂が固化又は結晶化し、重合(モノマーの変換)を進めるのに役立つ。しかしながら、固体では拡散が困難であることから、反応速度は非常に遅く、高い変換率を達成するために数日間が必要となる。オーブンで硬化させたポリ(p-ジオキサノン)は、典型的には、乾燥工程前に約5~15モル%の未反応p-ジオキサノンモノマーを有する。
【0006】
米国特許第5,717,059号(Shell Oil Company,Houston TX)には、まず溶融ポリ(p-ジオキサノン)と未反応p-ジオキサノンとの反応生成物混合物を生成し、次いで、その混合物を固化させて複数の固体粒子にすることによってポリ(p-ジオキサノン)を調製する方法が記載されている。次いで、粒子をセパレータ容器に移し、そこで、減圧及び低温下において不活性ガスによって掃引する。この手順によって、モノマーからポリマーを分離し、当該モノマーは連続プロセスで再利用される。本発明者らはまた、2.5時間真空を適用して未反応モノマーを除去することによりポリ(p-ジオキサノン)から直接モノマーを除去することの問題を指摘した。モノマー除去後のポリマーの重量平均分子量は、真空段階の前にポリマーの分子量の41%と劇的に減少した。これは、ポリマー/モノマー混合物からモノマーが除去される際の化学平衡のシフトによって説明された。
【0007】
米国特許第5,652,331号(「Method for preparing poly(p-dioxanone) polymer」、Shell Oil Company,Houston TX)は、生成物混合物に環状無水物を添加して末端保護ポリ(p-ジオキサノン)を形成することにより、ポリ(p-ジオキサノン)溶融物中のモノマー除去の問題に対処することを試みた。混合物を約50~約150℃の温度範囲に曝露しながら真空を適用することによって、反応を継続する。最終工程は、末端保護ポリ(p-ジオキサノン)を回収することを伴う。本発明者らは、ポリマーが著しく分解する傾向又はモノマーを除去する際の分子量の減少からの、未反応モノマーを溶融物から除去することの困難さを示すデータを提供した。しかしながら、ポリ(p-ジオキサノン)と環状無水物との化学反応を誘導すると、形成された生成物は、モノマー除去後の化学的分解に持ちこたえる。
【0008】
最後に、水中ペレット化を含むポリマーの溶融加工は、複数の研究で報告されている[米国特許第5844067(A)号(「A process for producing absorbable segmented copolymers of aliphatic polyesters with a uniform sequence distribution」)、米国特許第9873790(B1)号(「An absorbable semi-crystalline polymer blend composition」)、米国特許第9862826(B2)号(ポリエーテルブロックアミドの溶融ペレット化について記載している「Halogen-free polymer blend」)]。しかしながら、これらの参考文献はいずれも、20℃未満のガラス転移を有する遅く結晶化する吸収性ポリマーに対する水中ペレット化の使用、特に、更に水分感受性でありかつ急速に分解しやすいポリ(p-ジオキサノン)の水中ペレット化の使用については記載していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリ(p-ジオキサノン)の製造について上述した問題及び欠点の多くに対処するものである。
【0010】
課題に対する解決策:いくつかの革新的な工程をポリ(p-ジオキサノン)の溶融重合中に導入することにより、35モル%もの残留モノマーを有する樹脂のペレット化を成功させる。これらは、反応器のみのPDO重合に最適な時間及び温度プロファイル、水中ペレット化前の真空段階、並びにペレット化中の改善された加工条件の使用を含む。更に、水分感受性未乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットの分解を制限するための新規乾燥手順が提案された。
【0011】
本発明は、p-ジオキサノン(PDO)モノマー、開始剤、触媒、及び任意選択で染料の混合物を溶融反応器に仕込み;当該モノマーを完全に混合するため当該混合物を十分に撹拌しながら、少なくとも65モルパーセントの未反応PDOモノマー含有量を有するPDOポリマー生成物を形成するのに十分な時間、当該溶融反応器内で当該混合物を溶融重合させ;当該PDOポリマー生成物を真空下に置いて、未反応PDOの少なくとも一部分を除去し;当該PDOポリマー生成物を当該溶融反応器からインライン水中ペレタイザに直接放出して、未乾燥PDOペレットを製造し、当該未乾燥PDOペレットを回収し、回収したPDOペレットを冷凍庫又は真空チャンバ内で保存した後、乾燥させることにより、温度調節器を備える単一反応器内で実施されるp-ジオキサノンの溶融重合によって吸収性ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを作製する方法を目的とする。
【0012】
PDOモノマーの溶融重合は、単官能性開始剤の存在下、500:1~2,000:1(モノマーのモル:開始剤のモル)の開始剤濃度、及び30,000:1~300,000:1(モノマーのモル:触媒のモル)の総量の触媒の存在下で、4時間~16時間の総反応時間にわたって、単一反応器内で実施することができる。単官能性開始剤は、ドデカノールであってよい。触媒は、オクタン酸第一スズであってよい。染料は、存在する場合、0.01~0.2重量パーセントの染料濃度のD&Cバイオレットナンバー2であってよい。
【0013】
中間生成物の未反応PDOモノマー含有量は、約15モルパーセント~約35モルパーセントであってよい。ペレット化工程は、水中ペレタイザによって実施することができ、この場合、溶融反応器は95℃~130℃の温度で動作し、溶融反応器の撹拌器は、2RPM~6RPM又は前の工程の回転速度の約20~40%の回転速度で動作する。ペレタイザにおけるポンプ速度は、約5RPM~約7RPMで動作し、次いで、10RPM~15RPMの範囲まで徐々に上げてよい。ペレタイザは、約100℃~140℃のダイ温度で動作してよい。カッターは、約2,000~3,600RPMの回転速度で動作してよい。
【0014】
上記の方法は、ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを乾燥させる工程を更に含んでいてもよい。ポリ(p-ジオキサノン)ペレットは、流動床乾燥装置を使用して乾燥させてよい。あるいは、真空及び/又は加熱能力を備えた回転式乾燥機を使用して乾燥を実施してもよく、これは、約15モルパーセント~約35モルパーセントの未反応のp-ジオキサノンモノマー含有量を有する未乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを回転式乾燥機に移送する工程と、室温で回転式乾燥機に真空を適用し、水分分析器によって測定したときに、ポリ(p-ジオキサノン)ペレット中の水分レベルを100百万分率未満まで低下させる工程と、乾燥機温度を約55℃の出発乾燥温度に設定し、約2~6時間加熱及び真空を維持する工程と、乾燥機温度を約75℃の中間乾燥温度に設定し、約2~6時間加熱及び真空を維持する工程と、乾燥機温度を約85℃~95℃の最終乾燥温度に設定し、約16~32時間加熱及び真空を維持する工程と、乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを回収する工程と、を含む。
【0015】
乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットは、乾燥プロセスの終了時に4%未満の未反応PDOモノマーを含有し得る、並びに/又は25℃及び0.10g/dLの濃度でヘキサフルオロイソプロパノール中にて測定したときに1.2dl/gを超える固有粘度(IV)、及び/若しくはゲル浸透クロマトグラフィーによって測定したときに50,000ダルトンを超える重量平均分子量(Mw)、及び/若しくは少なくとも6時間約60℃~90℃の熱処理に供した後に広角X線回折(Wide Angle X-ray Diffraction、WAXD)によって測定したときに45%を超える結晶化度レベルを有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】先行技術のポリ(p-ジオキサノン)合成経路の概略図である。
図2】改良されたポリ(p-ジオキサノン)合成経路の概略図である。
図3】実施例1からの反応速度を示す。
図4】実施例4からの反応速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この章で、本発明者らは、溶融合成によるp-ジオキサノン(PDO)重合特有の困難さについて説明する。PDOの溶融重合中、ポリマー及びモノマーの熱力学的平衡に起因してポリマー収率が非常に低く、このことは、より高い加工温度でのモノマー生成に好都合である。このことから、ポリ(p-ジオキサノン)樹脂を作製する標準的な手順は、非常に短い反応器溶融合成工程に続いて、硬化オーブン内における低温(典型的には約80℃)での延長された固体重合を含む。約4~5日の固体重合後、固化/結晶化したポリ(p-ジオキサノン)パックを、最終乾燥工程(真空及び熱によるモノマー除去)の前に粉砕及び篩分けする。
【0018】
固体重合のための既存の方法の潜在的な欠点は、サイクル時間が非常に長いこと、拡散が困難であることに起因して硬化した固体パックのサンプルの均一性が疑わしいこと、及び粉砕作業の副生成物として微細粒子が存在することである。微細粒子は、残りのより大きな粒子よりもはるかに早く溶融するため、押出プロセスに悪影響を及ぼす場合がある。
【0019】
本発明は、ポリ(p-ジオキサノン)樹脂、又は、好ましくは約15モル%~約35モル%の範囲の高モノマー含有量を含有する、20℃未満のガラス転移温度を有する他の吸収性ポリマーを生成する新規方法について記載する。溶融重合は、全体的に単一の反応器内で実施され、続いて、水中ペレット化が実施される。出願人らは、予想外に、本発明に記載する特定のセットの加工条件を使用すると、液体含有量の高いこのような軟質ポリマー樹脂のペレット化に成功することができることを見出した。加えて、出願人らは、約15モル%~約35モル%の未反応PDOモノマーを含有する、得られた未乾燥のペレットは、空気中の水分に対して極めて感受性が高いので、加速されたペースでペレット/樹脂を分解させる(分子量を減少させる(loose))ことを見出した。したがって、乾燥段階前及び乾燥段階中のいくつかの新たな工程が、ペレット化されたポリマーの分子量減少を制限するために必須である。
【0020】
p-ジオキサノンを溶融重合し、続いて、水中ペレット化を介して一段階放出を行う、本明細書に記載の本発明の方法は、以下の重要な利益を提供する:
1. オーブン硬化及び粉砕/篩い分け操作を排除することにより、最低96時間サイクル時間が短縮される、
2. 化学的及び形態学的に均一な樹脂粒子、すなわちペレットの製造により、ロット間の一貫性がより高くなる、
3. 微細粒子が排除され、その結果、同じ形態及びサイズの粒子/ペレットが製造され、これにより、より一貫した直径を有する押出プロセスの堅牢性が改善される、
4. 触媒要件が少なくなり、低触媒により、溶融加工中の樹脂の安定性を支援することができる、
5. 製造コストが低減される。
【0021】
溶融ブレンドは、撹拌のためのオイルジャケット及びブレードを通例的に備えるステンレス鋼反応器内で調製することができる。PDOモノマーは、開始剤及び触媒、並びに任意選択で染料などの着色剤と共に添加される。反応物質及び更なる成分を最初に仕込んだ後、上向きブレード回転方向によって撹拌しながら真空/窒素パージサイクルを開始する。真空/窒素パージサイクルは、200mTorr未満の圧力まで排気し、続いて窒素ガスを導入することからなる。v/nサイクルをもう一度繰り返して、確実に乾燥雰囲気とする。最終窒素パージの終了時に、1気圧をわずかに上回るよう、圧力を調整し、油温制御器を所望の反応温度、好ましくは約140℃に設定し、一方、撹拌器の回転速度は、運転の残り(reminder)について同じ回転速度で上向き方向に維持する。反応は、設定温度で約6時間以上、続いて150℃で2時間進行させ、100℃で1時間で終了させた後、放出することができる。好ましいサイクルでは、上に概説したとおり、合計9時間の重合を実施する。
【0022】
別の実施形態では、ボウルの円錐状の外囲容器全体に噛み合う、交差二重螺旋状円錐刃を有していたジャケット付き双錐型反応器(CV)を使用することができる。CV反応器は、優れた混合分散特性を有する低速中剪断式反応器である。高粘度重合及び縮合反応は、ヘリコーンミキサにおいてルーチン的に達成される。
【0023】
得られたポリマー溶融ブレンドは、供給が一貫するまで押出成形機を通してパージされ、この時点で2つの(wo)真空ポートに真空を適用する。ポリマーブレンドの押出ストランドは、水浴を通ってストランドペレタイザに供給される。ペレタイザはストランドを適切にサイズ調整されたペレットに切断した。ポリマー溶融ブレンド全体から実質的に均一なペレットが形成されるまで、このプロセスを継続する。
【0024】
好ましいプロセスでは、Reduction Engineering Model 604ユニットをストランドペレタイザとして利用する。溶融ポリマー又は二峰性ポリマーブレンドを、多孔ダイを通して圧力をかけることによってZSK-30押出成形機から押し出し、冷水又は温水のいずれか(20~70℃)で満たした、一列に並んだ2つの水浴(槽)に通す。次いで、ストランドをストランドペレタイザに供給し、これで、ストランドを所望のサイズに基づく所与の速度で引っ張る。ストランドペレタイザは、プラーモータと同じ速度で動くいくつかの回転ブレードを有する。「良い」場合には、ストランドは、プロセス全体にわたって均一なサイズを保ち、ダイから水槽を通ってペレタイザに入り、最後に均一なペレットが生成される。
【0025】
ポリ(p-ジオキサノン)ストランドのペレット化の場合、好ましいプロセスの押出成形機ゾーンの温度は、175~225RPMで変動する回転子速度を有する、5つのゾーン全てにわたって140~160℃に設定され(最終ゾーンに向かって温度を徐々に上昇させる)、一方、バッチ温度は165~175℃で維持され、トルク値は45~55Nmで維持される。水槽の温度は78°Fで維持される。
【0026】
好ましい乾燥機器は、従来の真空回転式乾燥機又は従来の流動床乾燥機であってよく、それぞれ指定のパラメータ内で動作する。上記のプロセスに従って作製された未乾燥ペレットは、高レベルの未反応モノマーを含有し、非常に吸湿性である(潜在的に空気から高レベルの水分を吸収する)。乾燥機において未乾燥ペレットを熱処理する前にペレット中の水分が除去されない場合、材料の分解が起こり得る。この理由から、乾燥サイクル開始時に約8~12時間、未乾燥サンプルに対して室温で真空に引くことが推奨される。
【0027】
本発明のプロセスに従って作製された未乾燥ペレットについての水分分析データを以下の表にまとめる。ポリマー放出時(450~500rpm)から調製されたペレットが乾燥機のサイクル(1,524ppm、室内の相対湿度(RH)約30%で)に入る準備が整うまで、得られたペレットの水分レベルは増加することが判明した。
【0028】
【表1】
【0029】
データは、周囲温度で24時間超の真空によって、ペレット中の水分レベルが100ppm未満に低下することを示し、これは、次の乾燥サイクル工程に進むのに十分低いと考えられる。したがって、ポリ(p-ジオキサノン)粉砕樹脂を含む吸収性ポリマーのために従来使用されている標準的な8~12時間の真空時間の代わりに、ポリ(p-ジオキサノン)未乾燥ペレットについては、少なくとも28時間の真空サイクル、好ましくは28~48時間の真空サイクルを使用する必要がある。この変更された真空サイクルからは、固着性のより低いペレットが製造されると共に、ポリマーの分解が低減される。
【0030】
以下に記載する様々な特性評価方法を使用して、本出願を裏付けるためにポリ(p-ジオキサノン)樹脂及びその繊維の重要な特性を測定した。乾燥Nをパージガスとして用いて、TA Instrumentsの示差走査熱量計、DSCモデル2910 MDSC上で熱量測定データを生成した。典型的には、約5~10mgのポリマー樹脂又は繊維をアルミニウムパンに入れ、蓋(カバー)によって固定し、器具のオートサンプラーホルダ領域内に位置合わせした。2種類の非等温条件を使用する:a)第1の熱走査:ポリマー又は繊維を-80℃に急冷し、続いて140℃まで10℃/分の一定加熱速度に供する、及びb)第2の熱走査:140℃で3分間サンプルを溶融させた後、ポリマー又は繊維をそのガラス転移温度(-80℃)未満に急冷し、続いて10℃/分の一定速度で制御された加熱工程に供する。第1の熱走査データは、サンプルの「そのままの」特性を示し、そのため、その熱履歴に大きく依存する。一方、第2の熱データは、サンプルの熱履歴とは無関係であり、サンプルの固有特性(化学的性質、分子量、モノマーレベルなど)に応じる。第1の熱走査データから、ガラス転移温度及び融点に加えて、融解ピーク下面積として、典型的にはJ/gで表される融解熱ΔHmを得ることができる。融解熱は、サンプル中の結晶化度のレベルに正比例する。
【0031】
形態学的データは、従来の広角X線回折(WAXD)分析によって得た。1.542Åの波長のCuKα放射線を使用して、Siemens Hi-Star(商標)ユニット上で、乾燥した樹脂又は繊維のWAXD測定を実施した。0.5mmのコリメータ直径を有する機器を40kV及び40mAで操作した。Siemensによって開発されたDIFFRAC PLUS(商標)ソフトウェアを使用して、X線画像の畳み込み及び結晶化度含有量の計算を実施した。
【0032】
25℃及び0.10g/dLの濃度で、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中の固有粘度(IV)の測定を行った。WyattのOptilab rEx屈折計及びWyattのHELEOS II多角度レーザー光散乱検出器を備えるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して、分子量測定を実施した。測定中、0.7mL/分の流速で動作する0.01MのLiBr(0.2%HO)を含むHFIPからなる移動相を用いて、PL HFIPゲルカラムを40℃に維持した。Empower及びAstraソフトウェアをデータ分析に使用した。40℃で操作し、0.01MのLiBr(0.2%H2O)を含むHFIPが移動相である、2本のPL HFIPゲルカラムを使用した。流量は、0.7mL/分であり、注入量は70μLとした。溶液濃度は約2mg/mLであった。
【0033】
核磁気共鳴(NMR)法は、プロトン核磁気共鳴(HNMR)スペクトル法を使用して、ポリマー樹脂及び繊維の化学組成を特定し、決定する。使用した機器は、400MHz(9.4 Tesla)Varian Unity INOVA NMRスペクトル計であり、少なくとも99.5%純度のDのセスキ重水素化ヘキサフルオロアセトン(HFAD)(ETHICON ID#2881、CAS 10057-27-9)などの適切な重水素化溶媒を使用した。サンプル調製:3回繰り返し、各サンプル6~10mgを秤量し、別々の5mm NMRチューブに入れた。グローブボックス内の窒素ガス下で、1000μLのシリンジを用いて各NMR管に300±10μLのHFADを添加し、蓋をした。一方、溶媒ブランクを調製した。次いで、サンプルを窒素グローブバッグ/ボックスから取り出し、NMR管を音波洗浄器に入れ、サンプルが溶解するまで超音波処理すると、固体ポリマーの形跡は存在しなかった。サンプルを再び窒素流下に供し、300±10μLのベンゼン-d6を1000μLのシリンジを用いて各NMR管に加え、蓋をした。チューブをよく振盪し、HFADとベンゼン-d6溶媒を確実に均一に混合した。
【0034】
加水分解処理を含む後処理の前後の繊維(モノフィラメント)の、直線引張強度及び結節引張強度(中央部の1つの単純な結節)などの機械的特性をInstron試験機によって測定した。Instronモデルは、約60psiのクランピング圧の空圧式グリップを備える100ポンドロードセルLC-147を装備したID#TJ-41であった。未加水分解(時間ゼロ)サンプルの通常の引張測定については、インストロン機械において鋼面を使用した。ゲージ長は、5インチであり、サンプリング速度20pts/秒、クロスヘッド速度12インチ/分を使用した。フルスケール負荷範囲は100lbfであった。加水分解試験(破断強度保持、BSR測定)については、滑りを回避するためにゴム面を使用した。繊維直径は、米連邦ゲージ(Products Corp.(Providence,RI))モデル#57B-1、識別番号W-10761を使用して測定した。
【0035】
実際の重合時間におけるp-ジオキサノンの変換を追跡するために、直径1/4インチの透過プローブ及び2メートルの光ケーブルを備えるFT-NIR分光計[Antaris II Fourier Transform Near Infrared Spectrometer、ThermoFischer Scientificによって供給]を用いた。TQ Analystソフトウェアを使用して、リアルタイムNIRスペクトルを分析した。全走査(収集)時間を、8cm-1のスペクトル分解能で64スキャンに設定した。正確に、2分毎にスペクトルを反応時間に応じて収集した。約4,620cm-1に位置するカルボニルピーク(結合バンドの第1倍音)下面積を使用してp-ジオキサノン変換をモニタリングした。バッチ温度を測定する熱電対があるのと同じレベル/高さで、NIR透過プローブ(Axiomから供給)を容器の下部に配置した。
【0036】
Computrac Vapor Pro Moisture Analyzer(Arizona Instruments LLC,AZ)を使用してポリ(p-ジオキサノン)ペレット中の含水量を得た。この機器は、円筒形状のボトルヒータ、乾燥空気-キャリアガス流システム、及び水分センサを利用する。機器は、25mLのセプタムバイアル内に収容されたサンプルを加熱する(ガラス転移温度よりも10℃低いことが推奨される)。サンプルから追い出された揮発物は、相対湿度(RH)センサを収容するセンサブロックを通して空気システムによって運ばれる。このセンサからの読み取り値を、マイクロプロセッサ内のセンサブロック温度及びキャリアガス流量と組み合わせて、サンプル中の含水量の測定値を作成する。ペレット中の水レベルを測定するための典型的な手順は、以下のとおりである。乾燥度試験を行い、RHセンサを較正した後、約1gのペレット(化学天秤により正確に測定される)をガラス製セプタムバイアルに入れる。次いで、バイアル内のサンプルを機器に挿入し、これを90℃で予熱し、放出された水の測定を開始する。運転終了時に、以下のパラメータがスクリーン上に表示される:水レベル(百万分率(ppm))、放出された水の総量(マイクログラム)、及び曝露時間(分)。典型的には、試験は、サンプル重量に応じて約5~10分間持続する:より大きなサンプルは、サンプルから全ての水が放出されるのにより長い時間を要する。
【0037】
以下の実施例は本発明の原理及び実施を例示するものであるが、それらに限定されるものではない。本発明の範囲及び趣旨に含まれる多くの更なる実施形態が、本開示の助けを借りることで当業者には明らかとなるであろう。
【0038】
参考例
以下に示すように、米国特許出願第4,052,988号、米国特許第5,717,059号、及び同第6,448,367(B1)号に記載されているような標準的な合成手順によって調製されたポリ(p-ジオキサノン)ポリマーは、ストランドペレット化手順によってペレット化することができない。加えて、米国特許第8,236,904(B2)号及び同第8,450,431(B1)号に記載されているポリ(p-ジオキサノン)の二峰性ポリマーブレンドは、結晶化特性が強化されかつ残留モノマーが低レベルであるにもかかわらず、標準的なストランドペレット化技術を使用してペレット化することに失敗する。
【0039】
ポリ(p-ジオキサノン)の「柔らかい」性質及びポリマーが水槽において十分に速く結晶化する能力がないことから、ダイに固着した樹脂により、均一なストランド直径を維持することが非常に困難になり、ダイにおいて多くの破断が発生する。ストランドの一部がペレタイザに入った場合であっても、ポリ(p-ジオキサノン)が「柔らかい」のでストランドを切断することが困難であり、得られたペレット(存在する場合)は所望の長さでも形状でもなかった。これらの困難さにより、ポリ(p-ジオキサノン)及びポリ(p-ジオキサノン)の二峰性ポリマーブレンドのペレット化プロセスを中止した。
【0040】
実施例1溶融重合p-ジオキサノン、PDOの本発明の大規模合成条件
この実施例は、より大規模の15ガロンのBencoしき反応器内で生成される、溶融重合ポリ(p-ジオキサノン)の合成と、その後の、高モノマー含有量樹脂(34モル%)の水中ペレット化について記載する。重合全体を通して、1/4インチNIR透過プローブ(Axiomから供給)を使用する遠隔FT-NIR分光法(Antaris II、Thermo)によって、モノマー変換をリアルタイムでモニターした。
【0041】
オイルジャケット及び撹拌機を備える大規模15ガロンステンレス鋼製Benco反応器を使用して、65,000グラムのp-ジオキサノンモノマーを、98.87グラムのドデカノール(DD)開始剤、43.13mLの0.33Mオクタン酸第一スズ触媒トルエン溶液、及び65グラムのD&C Violetナンバー2染料(0.1重量%)と共に添加した。最初の仕込み後、25分間上向き方向に10RPMの回転速度で撹拌しながら真空/窒素のパージサイクルを開始した。反応器を、200mTorr未満の圧力まで真空排気し、続いて、窒素ガスを導入した。サイクルを再度繰り返し、確実に乾燥雰囲気とした。最終窒素パージの終了時に、1気圧をわずかに上回るよう、圧力を調整し、油温制御器を140℃に設定し、一方、運転の残りについては撹拌器の回転速度を上向き方向に10RPMで維持した。反応を、140℃で6時間、続いて150℃で2時間進行させ、100℃で1時間で終了させた後、放出した。合計9時間の重合を実施した。
【0042】
選択された時間間隔で重合中に少量のサンプルを反応器から取り出し、DCS、NMR、GPC、及びIV測定を含む分析試験に送った。重合のリアルタイムでp-ジオキサノン、PDOモノマーの変換を追跡することにより、FT-NIR分光計を使用して更なる情報を得た。PDOとそのポリマーとの間の熱力学的平衡性質により、これらの種類の溶融重合において達成可能なモノマー変換率は、むしろ低く、したがって、放出される樹脂は、多くの未反応モノマーを含有していた。
【0043】
図3中の線の勾配によって証明されるように、重合速度は反応開始時には比較的速かったが、反応の後期段階ではかなり遅くなった。約300分間の反応から、モノマー変換は、約25モル%のモノマー含有量で横ばいになったと考えられる。これらの重合条件下で反応時間をより長くしても、ポリマー特性に利益をもたらすとは考えられない。
【0044】
参考例2.ポリ(p-ジオキサノン)の水中ペレット化
実施例1の溶融反応器のみのプロセスによって生成されたポリ(p-ジオキサノン)ポリマーは、既に他の吸収性ポリエステルで機能することが知られている、選択されたペレット化条件のセットを使用することによってペレットを製造することに失敗した。
【0045】
実施例1の最終反応期間の終了時に、撹拌器の速度を下向き方向に4.0RPMまで下げ、Galaの水中ペレット化装置を用いてポリマーを放出することを試みた。ダイ孔径は、0.093インチであり、4つの孔が開けられていた。ダイ温度を95℃に設定し、ポンプ及びカッター速度はそれぞれ12RPM、及び3,600RPMであった。溶融温度は109℃であり、水温流は40℃で維持した。ダイ及び溶融物の温度プロファイルを除いて、これらは、ポリグリコリドホモポリマー並びに少なくともいくつかのラクチド及びグリコリドコポリマーを含む他の吸収性ポリマーの水中ペレット化に使用される標準的な条件である。
【0046】
これらの条件を使用すると、ポリマーを切断できず、ダイ固定具を包み込んだため、ペレット化は失敗した。樹脂は柔らかすぎるように見えた。
【0047】
実施例2.ポリ(p-ジオキサノン)の水中ペレット化
実施例1の最終反応期間の終了時に、撹拌器の速度を下向き方向に4RPMまで下げ、Galaの水中ペレット化装置を用いてポリマーを放出した。ペレタイザ材料の産出は約64.8kg/時であり、60.3kgの正味重量が得られた。冷却してから、均一な楕円形状のペレットを、乾燥まで保管のために冷凍庫に入れた。次いで、ペレットを3立方フィートのPatterson-Kelley回転式乾燥機に入れて残留モノマーの除去を促した。参考例2の失敗した水中ペレット化プロセスと比較して、いくつかの重要な変更を行った。これらを表1に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
回転速度(RPM)を直接12にしてポンプを起動させる代わりに、所望のペレットサイズに応じて、プロセスを回転速度6RPMで開始し、次いで、11又は13RPMに徐々に上げた。また、ダイ温度をより高温(115℃)に設定し、一方、水温は約22℃で維持した(15℃に設定したが、それを低く維持するのは不可能であった)。孔の数を2に減少させたが、この変更は、ペレット化される樹脂の能力に影響を及ぼすとは考えられない。
【0050】
時系列サンプルの主な特性、並びに放出の開始時、中間、及び終了時における実施例2の放出されたペレットの主な特性を表2にまとめた。
【0051】
【表3】
【0052】
表2は、放出された未乾燥ペレットが、NMR分析に基づいて約34モル%の未反応モノマーを含有することを示す。データは、放出の開始、中間、及び終了時のペレット間の物性に有意差がないことを強調しており、これは、ペレットの均一性が高いことを示唆している。
【0053】
参考例3.未乾燥ペレットに適用される標準的な乾燥手順
この実施例は、ポリ(p-ジオキサノン)顆粒樹脂の標準的な乾燥条件を使用して、本発明のペレットを製造することはできないことを示す。実施例1の手順を用いて製造された未乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレット(真空段階を使用しない)から、以下の物性:80,100ダルトンの重量平均分子量、1.33dL/gの固有粘度が得られ、28.0モル%の未反応PDOモノマーが残った。未乾燥ペレットを乾燥手順前約1週間冷凍庫内で保持した。
【0054】
次いで、未乾燥ポリマーペレットを3立方フィートのPatterson-Kelley、PK回転式乾燥機に入れて、通常のポリ(p-ジオキサノン)粉砕樹脂に適用される標準的な乾燥手順を使用して残留モノマーを除去した。未乾燥ペレットを仕込んでから、4つのステンレス鋼製ボールを備えるPatterson-Kelley回転式乾燥機を閉じ、乾燥機の回転速度3RPMで開始し、圧力を200mTorr未満に低下させた。これらの条件を、12時間加熱しない状態で維持した。12時間後、オイルジャケット温度を80℃に設定し、安定した回転及び真空を維持しながら次の48時間維持した。しかしながら、80℃で約12時間灼熱した後、ペレットが互いに及び乾燥機の壁に強く固着したことから、バッチを中止する必要があった。
【0055】
以下のとおりの代替乾燥条件を試した:12時間室温で滞留、続いて、45℃で8時間、70℃で8時間、80℃で48時間、及び90℃で3時間での仕上げ、全て真空段階。冷却後、容器を窒素で加圧し、放出弁を開き、ポリマー顆粒を長期保管用の待機容器中に下ろすことによって、ポリマーを乾燥機から放出する。
【0056】
これらの条件により、ペレットの壁への及び互いの固着が防止されることが見出された。しかしながら、乾燥ペレットは、1.27モル%の残留モノマーしか含有していなかったが、重量平均分子量は80,100ダルトンから63,500ダルトンまで著しく減少し、減少率は20%を超える。得られる乾燥ペレットの固有粘度は、1.64dL/gに上昇したが、これは主に26%モノマーが除去されたことに起因する。
【0057】
実施例3.実施例1で製造されたペレットの乾燥条件
詳細な乾燥手順は以下のとおりである。ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを仕込んでから、Patterson-Kelley回転式乾燥機を閉じ、乾燥機の回転速度4RPMで開始し、圧力を200mTorr未満に低下させた。実施例2の未乾燥ペレットについては、これらの条件を48時間加熱しない状態で維持した。48時間後、オイルジャケット温度を55℃に設定し、2時間維持し、続いて75℃/2時間で維持し、最終工程を95℃で24時間行った。乾燥中の段階的加熱サイクルは、参考例3に記載したとおり、ペレットの固着を防止するために重要であることが判明した。最後の加熱期間の終了時に、安定的な回転及び真空を維持しながらバッチを2時間放冷した。冷却後、容器を窒素で加圧し、放出弁を開き、ポリマーペレットを長期保管用の待機容器中に下ろすことによって、ポリマーを乾燥機から放出した。
【0058】
実施例1の乾燥ペレットは、1.54dL/gのIV及び58,600ダルトンのMwを呈した。NMR分析により、乾燥ペレットは、残留モノマーを0.44モル%しか含有していなかったことが確認された。乾燥サンプルの広角X線回折(WAXD)データから、50.2%の結晶化度が明らかになった。
【0059】
同様に、実施例1の重合手順に従って未乾燥ペレットの別のセットを製造したところ、29モル%ものモノマー含有量が生じた。重量平均分子量は74,100ダルトンであり、固有粘度は1.44dL/gであった。次いで、未乾燥ペレットを乾燥手順に供した:室温で32時間の真空段階、続いて55℃で4時間、75℃で4時間、最終工程は95℃で24時間であった。この場合も、ペレットは、任意の乾燥段階中、いかなる固着問題もなかった。乾燥ペレットの最終的な特性は、分子量のいかなる著しい減少も示さなかった:IV計算値は1.82dL/gであり、Mwは74,800ダルトンであった。NMR分析により、乾燥ペレットは、残留モノマーを0.73モル%しか含有していなかったことが確認された。乾燥サンプルの広角X線回折(WAXD)データから、50.7%の結晶化度が明らかになった。
【0060】
実施例4.溶融重合p-ジオキサノンの大規模合成条件
共回転撹拌機を備える10ガロンのステンレス鋼製オイルジャケット付きCV反応器を使用して、30,000グラムのPODモノマーを、44.51mLの単官能性開始剤(ドデカノール、DD)及び19.91mLの0.33Mオクタン酸第一スズトルエン溶液と共に添加した。染料である、D&C Violetナンバー2(24グラム、0.08重量%)も添加した。最初の仕込み後、上向き方向に回転速度7.5RPMで撹拌しながら真空/窒素のパージサイクルを開始した。反応器を、350mTorr未満の圧力まで排気し、続いて、窒素ガスを導入した。サイクルを再度繰り返し、確実に乾燥雰囲気とした。
【0061】
最後の窒素パージの終了時に、1気圧をわずかに上回るよう、圧力を調節した。撹拌機の回転速度は、上向き方向に7.5RPMで維持した。油温制御器を120℃に設定することにより容器を加熱した。バッチ温度が100℃に達したとき、撹拌機の回転を下向き方向に切り替えた。バッチ温度が100℃に達した時点から4.0時間、反応を継続した。120℃で4時間後、反応器温度を100℃に下げ、真空段階の前に更に4.0時間その温度で維持した。真空段階を2時間続けた後、水中ペレット化を介して放出する。重合全体を通して、1/4インチNIR透過プローブ(Axiomから供給)を使用する遠隔FT-NIR分光法(Antaris II、Thermo)によって、モノマー変換をリアルタイムでモニターした。
【0062】
前述の本発明の実施例2と同様に、最終反応期間の終了時に、撹拌器の速度を下向き方向に4RPMまで下げ、Galaの水中ペレット化装置を用いてポリマーを放出した。ダイ孔径は0.093インチであり、2つの孔が開けられていた。ダイ温度を110~130℃で維持し、ポンプ及びカッター速度はそれぞれ14RPM、及び3500RPMであった。ペレタイザ材料の産出は約51.0kg/時間であり、19.7kgの正味重量が得られた。2時間の真空段階中、約5.7kgのPDOモノマーが除去された。冷却してから、均一な楕円形状のペレットを、乾燥まで保管のために冷凍庫に入れた。次いで、ペレットを3立方フィートのPatterson-Kelley回転式乾燥機に入れて残留モノマーの除去を促した。
【0063】
真空段階まで、この運転の反応速度は前述の実施例2と同等であり、約25モル%で横ばいになる。しかしながら、2時間の真空工程の導入後、モノマーレベルは著しく低下し、驚くべきことに含有量約10%まで低下した。乾燥段階の前のモノマー含有量が少なくなったポリ(p-ジオキサノン)ペレットを有することの潜在的利点は、潜在的に水分の取り込みが少なくなり、したがって、ポリマー分解が少なくなり、未乾燥ペレットの貯蔵安定性が高くなり、設置面積が少なくなり(必要とされるコールドトラップが小さくなり)、かつ乾燥手順がより速くなることである。時系列サンプルの主な特性、並びに放出の開始時、中間、及び終了時における放出されたペレットの主な特性を表3にまとめた。
【0064】
【表4】
【0065】
表3は、放出前の樹脂が、NMR分析に基づいて15.1%の残留モノマー(リアルタイムNIRデータに基づいて16.1%)を含有しており、未乾燥ペレットが平均して16.5%の未反応モノマーを含有していたことを示す。放出の開始、中間、及び終了時のペレット間に物性に差はなく、これはペレットの均一性が高いことを示す。実施例3の条件を用いてペレットを乾燥させたところ、2モル%の残留モノマーを含有しており、80,500g/molの重量平均分子量(GPC)を有し、固有粘度は1.95dL/gであった。
【0066】
反応の進行及び後続のモノマー除去により、第2の加熱運転によって測定したとき、表3に示すように、熱量測定特性が強く影響を受ける。ポリマー鎖の集団が系内で増加するにつれて、ガラス転移温度は徐々に上昇した。結晶化温度及び結晶化度レベルが上昇することに加えて、モノマーがポリマーに変換される際の融点及び融解熱が上昇する。
【0067】
実施例5.低い触媒濃度を用いた溶融重合p-ジオキサノン、PODの大規模合成条件
標準的な固体(オーブン硬化)処理中、固体結晶化マトリクス中では拡散が困難であることに起因して、反応の進行(開始及び連鎖生長)にはより高い触媒濃度が必要である。触媒濃度を低くすると、押出、射出成形、滅菌、縫合の返し(suture barbing)などの様々な加工中の樹脂化学安定性を改善することができる。
【0068】
ペレット化能力を有していない小さな2ガロンの反応器内で重合を実施した。共回転撹拌機を備える2ガロンのステンレス鋼製オイルジャケット付きCV反応器を使用して、7,000グラムのPODモノマーを、12.98mLの単官能性開始剤(ドデカノール、DD)及び2.6mLの0.33Mオクタン酸第一スズトルエン溶液と共に添加した。染料である、D&C Violetナンバー2(7グラム、0.1重量%)も添加した。最初の仕込み後、上向き方向に回転速度7.5RPMで撹拌しながら真空/窒素のパージサイクルを開始した。反応器を、80mTorr未満の圧力まで排気し、続いて、窒素ガスを導入した。サイクルを再度繰り返し、確実に乾燥雰囲気とした。最後の窒素パージの終了時に、1気圧をわずかに上回るよう、圧力を調節した。撹拌機の回転速度は、上向き方向に7.5RPMで維持した。油温制御器を140℃に設定することにより容器を加熱した。バッチ温度が100℃に達したとき、撹拌機の回転を下向き方向に切り替えた。バッチ温度が100℃に達した時点から6.0時間、反応を継続した。140℃で6時間後、反応器温度を100℃に下げ、真空下における最後の2時間を含む更に3.0時間、その温度で維持した。樹脂をアルミニウムパックに放出し、粉砕及び篩分け操作の前に冷凍庫内で保持した。乾燥手順は、実施例3に記載の方法に従って実施した。
【0069】
使用した触媒がほぼ半分しかないにもかかわらず(モノマー:触媒は、実施例1及び4で使用した44,700:1に対して80,000:1であった)反応速度は、上に提示した実施例1及び4と比較してわずかに遅いだけであることが判明した。放出前の樹脂は、NMR分析に基づいて約21モル%、又はFT-NIR法により計算された19モル%の残留モノマーを含有していた。
【0070】
この実施例の乾燥ペレットは、1.96dL/gのIV及び84,100ダルトンのMwを示した。NMR分析により、樹脂は、0.58モルパーセントの未反応モノマーを含有していることが明らかになった。乾燥サンプルの広角X線回折(WAXD)データから、49.3%の結晶化度が明らかになった。
【0071】
実施例6.溶融重合p-ジオキサノンの大規模合成条件
この実施例の樹脂は、わずかに改変した温度プロファイルを使用したことを除いて、実施例4における記載と同様に生成した。モノマー、触媒、開始剤、及び染料を仕込んだ後、反応器の温度を120℃に設定し、その温度でまる8.0時間維持し、続いて100℃で2時間の真空段階を行った。実施例4と同様に水中ペレット化を実施し、約18.1kgの良質なペレットが得られた。乾燥は、実施例3の条件を用いて実施した。
【0072】
この実施例の乾燥ペレットは、2.10dL/gのIV及び90,100ダルトンのMwを示した。NMR分析により、樹脂は、0.67モルパーセントの未反応モノマーを含有していることが明らかになった。乾燥サンプルの広角X線回折(WAXD)データから、53%の結晶化度が明らかになった。
【0073】
実施例7.溶融重合p-ジオキサノンの本発明の大規模合成条件の後処理
実施例6の乾燥ペレットを使用して、2つのUSP縫合糸サイズ:2-0及びサイズ0のモノフィラメントを製造した。モノフィラメント手順の詳細は以下のとおりである。実施例6のペレットを、単一溝付き供給口を備えた24:1バレル長(1-22-1スクリュー設計)を有する単軸Jenkins 1インチ押出成形機を使用して押出した。ダイは70ミルの直径を有しており、ダイ温度は、いずれのサイズも115℃に設定した。0.375インチの空隙に通した後、押出品を22℃の水浴で急冷した。
【0074】
水浴を出た後、繊維は、配向前に未延伸繊維の結晶化レベルを増加させるために利用した空気急冷キャビネットに入った。明確かつ安定した延伸点がみられることは、配向/延伸前に繊維が十分な結晶化度を生じさせたという保証(insurance)である。空気急冷キャビネットを85°Fで加熱し、モノフィラメントは1回通過(ラップ)又は複数回のラップのいずれかを経た。差は、キャビネット内で費やされる非配向繊維の総滞留時間である。例えば、空気キャビネットの1回通過を完了させるには、135秒が必要であるが、4回のラップは590秒を必要とする。しかしながら、実施例6で生成されたポリマーは比較的速く結晶化し、これら2つの滞留時間条件に供されたときに最終的な繊維物性に事実上差がないことが観察された。次いで、繊維ラインを、10fpmの線速度の非加熱ゴデットロールの第1のセットの方へ向けた。第1及び第2のセットのゴデットの間に、より容易かつより均一に延伸させるために128℃で予熱した赤外線オーブンを置いた。次いで、モノフィラメントを、54fpmで動作する非加熱ゴデットロールの第2のセットの方へ向けた。次いで、繊維ラインを、97℃の6フィート熱風オーブンに通して、非加熱ゴデットロールの第3のセットの方へ向け、このロールのセットは、58fpmで動作していた。次いで、ラインを、107℃の第2の6フィート熱風オーブンに通して、非加熱ゴデットロールの第4のセットの方へ向けた。この最後のロールのセットは44.1fpmで動作し、これは、より良好なハンドリング特性のために繊維を弛緩させるため(24%)、ゴデットローラの前のセットよりも低速であった。全体の延伸比は、サイズ2-0のモノフィラメントについては4.41、サイズ0については4.56であった。
【0075】
これらのモノフィラメント押出品は、破断することなく滑らかに進み、非常に安定した延伸点を有し、このことが均一な繊維直径及び信頼性の高い引張特性に大きく寄与した。滅菌前に、直線ラック(0%のラック弛緩)上で6時間、85℃で繊維をアニール処理した。次いで、選択された、アニール処理された繊維サンプルを、Monadnock乾燥紙及び8-upsのホイルタイプのリレートレイを使用して、縫合糸梱包工程に供した。次いで、これらのサンプルを、公称「X」サイクルを使用してエチレンオキシド(EO)滅菌用に送った。EO滅菌後に残留EO粒子を除去するために、サンプルを50℃で3日間予熱した加熱室内に置いた。
【0076】
本発明の方法によって製造された、アニール処理されていない、アニール処理された、及びアニール処理されかつ滅菌されたポリ(p-ジオキサノン)モノフィラメントの引張特性を次に評価した。先に記載した手順を使用し、インストロン試験機を使用して、当該引張特性を求めた。選択された引張特性(平均値)を表4に列挙する。結節強さは、糸の中央部に単一の結節を作って測定した。
【0077】
【表5】
【0078】
表4からのデータが示すとおり、本発明の加工工程から作製されたポリ(p-ジオキサノン)モノフィラメントについて、顕著な引張特性が得られた。アニール処理及び滅菌工程後、ヤング率が上昇したことを除いて、特性の大部分は未変化のままである。結晶化度レベルが高いため、アニール処理及びEO滅菌がこれらのサンプルにおいて達成された。より高い結晶化度レベル(WAXD及び熱量測定によって確認)は、結節強度に対してわずかな正の効果を有するが、直線引張強度には効果を有していないと考えられる。
【0079】
〔実施の態様〕
(1) 温度調節器を備える単一反応器内で行われるp-ジオキサノンの溶融重合によって吸収性ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを作製する方法であって、
i.p-ジオキサノン(PDO)モノマー、開始剤、触媒、及び任意選択で染料の混合物を溶融反応器に仕込む工程と、
ii.前記モノマーを完全に混合するため前記混合物を十分に撹拌しながら、少なくとも65モルパーセントの未反応PDOモノマー含有量を有するPDOポリマー生成物を形成するのに十分な時間、前記溶融反応器内で、95℃~145℃の反応温度にて前記混合物を溶融重合させる工程と、
iii.モノマー含有量によって測定したときに、未反応PDOの少なくとも一部分を除去するために、前記PDOポリマー生成物を約60~180分間真空下に置く工程と、
iv.前記PDOポリマー生成物を前記溶融反応器からインライン水中ペレタイザに直接放出して、未乾燥PDOペレットを製造する工程と、
v.前記未乾燥PDOペレットを回収する工程と、
vi.回収した前記PDOペレットを冷凍庫又は真空チャンバ内に保存した後、乾燥させる工程と、を含む、方法。
(2) PDOモノマーの前記溶融重合が、単官能性開始剤の存在下、500:1~2,000:1(モノマーのモル:開始剤のモル)の開始剤濃度、及び30,000:1~300,000:1(モノマーのモル:触媒のモル)の総量の触媒の存在下で、4時間~16時間の総反応時間にわたって、単一反応器内で行われる、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記単官能性開始剤がドデカノールである、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記触媒がオクタン酸第一スズである、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記染料が、0.01~0.2重量パーセントの染料濃度のD&Cバイオレットナンバー2である、実施態様2に記載の方法。
【0080】
(6) 工程(iii)後の前記未反応PDOモノマー含有量が、約15モルパーセント~約35モルパーセントであり、ペレット化が、ポンプ及びカッターを有する前記水中ペレタイザによって、以下の:
a.前記溶融反応器を95℃~130℃の動作温度に設定する、
b.初めに、前記溶融反応器の撹拌器を、2RPM~6RPMの回転速度又は工程(ii)の回転速度の約20~40%に設定する、
c.初めに、前記ペレタイザにおけるポンプ速度を約5RPM~約7RPMに設定し、ポンプ速度を10RPM~15RPMの範囲まで徐々に上げる、
d.前記ペレタイザを約100℃~140℃のダイ温度に設定する、
e.前記カッターを約2,000~3,600RPMの回転速度に設定する、
条件下で行われる、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを乾燥させる工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを、流動床乾燥装置を使用して乾燥させる、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記乾燥が、真空及び/又は加熱能力を備える回転式乾燥機を使用して行われ、
a.約15モルパーセント~約35モルパーセントの未反応p-ジオキサノンモノマー含有量を有する未乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを回転式乾燥機に移す工程と、
b.室温で前記回転式乾燥機に真空を適用し、水分分析器によって測定したときに、ポリ(p-ジオキサノン)ペレット中の水分レベルを100百万分率未満まで低下させる工程と、
c.乾燥機温度を約55℃の出発乾燥温度に設定し、約2~6時間加熱及び真空を維持する工程と、
d.乾燥機温度を約75℃の中間乾燥温度に設定し、約2~6時間加熱及び真空を維持する工程と、
e.乾燥機温度を約85℃~95℃の最終乾燥温度に設定し、約16~32時間加熱及び真空を維持する工程と、
f.乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレットを回収する工程と、を含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 乾燥プロセスの終了時に4%未満の未反応PDOモノマーを含有する、実施態様9に記載の乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレット。
【0081】
(11) 25℃及び0.10g/dLの濃度でヘキサフルオロイソプロパノール中で測定したときに1.2dl/gを超える固有粘度(IV)を有する、実施態様9に記載の乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレット。
(12) ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定したときに8.3×10-23kg(50,000ダルトン)を超える重量平均分子量(Mw)を有する、実施態様9に記載の乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレット。
(13) 約60℃~90℃の熱処理に少なくとも6時間供した後、広角X線回折(WAXD)によって測定したときに45%を超える結晶化度レベルを有する、実施態様9に記載の乾燥ポリ(p-ジオキサノン)ペレット。
図1
図2
図3
図4