(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】フェノキシカルボン酸化合物およびその医薬用途
(51)【国際特許分類】
C07C 59/135 20060101AFI20240415BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240415BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240415BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240415BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240415BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240415BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240415BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240415BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240415BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240415BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240415BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240415BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240415BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240415BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240415BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20240415BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240415BHJP
C07C 205/36 20060101ALI20240415BHJP
C07C 255/16 20060101ALI20240415BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALN20240415BHJP
【FI】
C07C59/135 CSP
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P9/10 ZNA
A61P9/12
A61P9/10 101
A61P9/00
A61P17/02
A61P25/00
A61P27/02
A61P13/12
A61P3/06
A61P3/10
A61P1/16
A61P29/00
A61P3/04
A61P3/00
A61K31/192
A61K45/00
C07C205/36
C07C255/16
C12Q1/6851 Z
(21)【出願番号】P 2021534420
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2019102273
(87)【国際公開番号】W WO2020038464
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】201810965558.1
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524059205
【氏名又は名称】チンタオ、ライジング、バイオテクノロジー、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO RISING BIOTECHNOLOGY CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】チアオ、ニン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ、シワン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ソン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ヤモン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、シミン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】RESISTRY(STN)[online],2017.11.14[検索日 2023.04.4] RN 2142154-52-5
【文献】RESISTRY(STN)[online],2016.08.11[検索日 2023.04.4] RN 1971711-36-0
【文献】RESISTRY(STN)[online],2013.12.13[検索日 2023.04.4] RN 1493932-49-2
【文献】RESISTRY(STN)[online],2013.11.01[検索日 2023.04.4] RN 1467186-48-6
【文献】RESISTRY(STN)[online],2013.12.10[検索日 2023.04.4] RN 1491629-83-4
【文献】RESISTRY(STN)[online],2013.11.03[検索日 2023.04.4] RN 1468023-20-2
【文献】RESISTRY(STN)[online],2013.12.15[検索日 2023.04.10] RN 1495556-61-0
【文献】Solakyildirim, K., Bulloch, D.N. and Larive,C.K. ,1H and 13C NMR spectral assignments of halogenated transformationproducts of pharmaceuticals and related environmental contaminants,Magn.Reson. Chem.,2014年,52,pp.310-317,https://doi.org/10.1002/mrc.4056 figures, tables
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオおよびC
1-C
4アルキルアミノからなる群から選択され、ここで、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオまたはC
1-C
4アルキルアミノは、ハロゲン、アミノおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンであり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルからなる群から選択され、
R
7は、-C(O)Xからなる群から選択され、ここで、Xは、ヒドロキシルまたはC
1-C
4アルコキシであり、
nは、1、2、3または4である。]
で表される化合物(但し、
5-(2,4-ジクロロ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸:
【化2】
5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸:
【化3】
5-(2-クロロ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸:
【化4】
および
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチル-フェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸:
【化5】
を除く。)、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物。
【請求項2】
R
1およびR
2が、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物。
【請求項3】
R
3およびR
4が、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシおよびC
1-C
4アルキルからなる群から選択され、ここで、ヒドロキシまたはC
1-C
4アルキルは、ハロゲンおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数の置換基で置換されていてもよい、請求項1または2に記載の化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物。
【請求項4】
R
5およびR
6が互いに同一である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物。
【請求項5】
R
7が、カルボキシ、-CO
2Meおよび-CO
2Etからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物。
【請求項6】
nが、1、2または3である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物。
【請求項7】
R
1およびR
2が、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4が、それぞれ独立して、水素、-F、-Cl、-Br、-I、ニトロ、ヒドロキシ、メチルおよびエチルからなる群から選択され、ここで、ヒドロキシ、メチルまたはエチルは、ハロゲンおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数の置換基で置換されていてもよく、
R
5およびR
6が、メチルであり、
R
7が、カルボキシ、-CO
2Meおよび-CO
2Etからなる群から選択され、
nが、1、2または3である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物。
【請求項8】
前記化合物が、式(Ia):
【化6】
で表される構造を有し、
R
3が、ハロゲンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物。
【請求項9】
前記化合物が、
5-(4-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-3)、
5-(2,4-ジブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-109)、
5-(3-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-213)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジエチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-310)、
5-(4-ブロモ-2,3,5-トリメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-315)、
5-(2-ブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-404)、
5-(4-ブロモ-2,3,6-トリメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-409)、
5-(4-ブロモ-2-ヨード-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-413)、
5-(4-ブロモ-2-メトキシ-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-412)、
5-(4-ブロモ-2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-415)、
5-(4-ブロモ-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-416)、
5-(4-ブロモ-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-502)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルバレロニトリル(BJMU-309)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2-エチル-2-メチルペンタン酸(BJMU-401)、
5-(4-ブロモ-2-エチル-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-410)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-201)、
4-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルブタン酸(BJMU-111)、
6-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルヘキサン酸(BJMU-403)
から選択される、請求項1~
8のいずれか一項に記載の化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物。
【請求項10】
式(I):
【化7】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオおよびC
1-C
4アルキルアミノからなる群から選択され、ここで、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオまたはC
1-C
4アルキルアミノは、ハロゲン、アミノおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンであり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルからなる群から選択され、
R
7は、-C(O)Xおよびシアノからなる群から選択され、ここで、Xは、ヒドロキシルまたはC
1-C
4アルコキシであり、
nは、1、2、3または4である。]
で表される化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物と、1種または2種以上の薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項11】
R
1およびR
2が、請求項2に記載のとおりである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
R
3およびR
4が、請求項3に記載のとおりである、請求項10または11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
R
5およびR
6が、請求項4に記載のとおりである、請求項10~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
R
7が、カルボキシ、-CO
2Me、-CO
2Etおよびシアノからなる群から選択される、請求項10~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
nが、請求項6に記載のとおりである、請求項10~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6およびnが、請求項7に記載のとおりであり、R
7が、カルボキシ、-CO
2Me、-CO
2Etおよびシアノからなる群から選択される、請求項10~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記化合物が、式(Ia):
【化8】
で表される構造を有し、
R
3が、ハロゲンである、請求項10~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記化合物が、
5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-1)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-2)、
5-(4-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-3)、
5-(2,4-ジブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-109)、
5-(2-クロロ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-209)、
5-(3-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-213)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジエチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-310)、
5-(4-ブロモ-2,3,5-トリメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-315)、
5-(2-ブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-404)、
5-(4-ブロモ-2,3,6-トリメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-409)、
5-(4-ブロモ-2-ヨード-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-413)、
5-(4-ブロモ-2-メトキシ-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-412)、
5-(4-ブロモ-2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-415)、
5-(4-ブロモ-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-416)、
5-(4-ブロモ-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-502)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルバレロニトリル(BJMU-309)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2-エチル-2-メチルペンタン酸(BJMU-401)、
5-(4-ブロモ-2-エチル-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-410)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-201)、
4-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルブタン酸(BJMU-111)、
6-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルヘキサン酸(BJMU-403)
から選択される、請求項10~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬組成物が、追加の医薬有効成分を含んでなる、請求項10~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記追加の医薬有効成分が、抗糖尿病薬、抗肥満薬、抗高血圧薬、抗動脈硬化薬、脂質低下薬、抗炎症薬および抗酸化薬からなる群から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
対象における代謝性疾患の予防または治療のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物を含んでなり、
前記化合物は、請求項10~18のいずれか一項に記載の化合物である、前記医薬組成物。
【請求項22】
前記代謝性疾患が、肥満、非アルコール性脂肪肝、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、1型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能異常、高血糖症、高脂血症およびこれらの疾患の二次的合併症から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記非アルコール性脂肪肝が、単純性脂肪肝または非アルコール性脂肪肝炎であり、前記高脂血症が、高コレステロール血症であり、前記二次的合併症が、糖尿病性合併症ならびに心血管性および脳血管性疾患から選択される、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記糖尿病性合併症が、網膜症、神経障害、腎症および創傷治癒遅延から選択され、前記心血管性および脳血管性疾患が、動脈硬化、冠状動脈性心臓病、高血圧および脳卒中から選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
PPARα/γデュアルアゴニストとしての使用のための、あるいは、対象におけるPPARαおよび/またはPPARγに関連する疾患の予防または治療のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物を含んでなり、
前記化合物は、請求項10~18のいずれか一項に記載の化合物である、前記医薬組成物。
【請求項26】
PPARαおよび/またはPPARγに関連する前記疾患が、2型糖尿病、耐糖能異常、インスリン抵抗性症候群、高血圧、高脂血
症、メタボリックシンドローム、内臓肥満および肥満からなる群から選択される、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記高脂血症が、高コレステロール血症である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
対象における体重の減少、体脂肪の減少、肝脂肪率の減少、肥満の予防もしくは治療、および/または、非アルコール性脂肪性肝疾患の予防もしくは治療のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物を含んでなり、
前記化合物は、請求項10~18のいずれか一項に記載の化合物である、前記医薬組成物。
【請求項29】
前記非アルコール性脂肪性肝疾患が、単純性脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎を含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記対象が代謝性疾患に罹患しており、かつ/あるいは、前記対象が代謝性疾患に関連する状態である、請求項28または29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記対象が、過体重、過剰な体脂肪および/または高い肝脂肪率の状態である、請求項28~30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
対象における血糖値の低下、インスリン感受性の増加、インスリン抵抗性の予防または治療、および/または、糖尿病の予防または治療のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物を含んでなり、
前記化合物は、請求項10~18のいずれか一項に記載の化合物である、前記医薬組成物。
【請求項33】
前記糖尿病が、2型糖尿病である、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記対象が代謝性疾患に罹患しており、かつ/あるいは、前記対象が代謝性疾患に関連する状態である、請求項32または33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記対象が、高血糖値、インスリン抵抗性、高インスリン血症および/または耐糖能障害の状態である、請求項32または33に記載の医薬組成物。
【請求項36】
対象における血中総コレステロール値の低下、血中トリグリセリド値の低下、血中低密度リポタンパク質値の低下、および/または、血中高密度リポタンパク質値の上昇のための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、化合物、その薬学的に許容可能な
塩、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶
体、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物を含んでなり、
前記化合物は、請求項10~18のいずれか一項に記載の化合物である、前記医薬組成物。
【請求項37】
前記対象が代謝性疾患に罹患しており、かつ/あるいは、前記対象が代謝性疾患に関連する状
態である、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記対象が、高い血中総コレステロール値、高い血中トリグリセリド値、高い血中低密度リポタンパク質値および/または低い血中高密度リポタンパク質値の状態である、請求項36または37に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療技術の分野に関する。特に、本発明は、フェノキシカルボン酸化合物、該化合物を含んでなる医薬組成物、および該化合物の医薬用途に関する。例えば、本発明の化合物は、代謝性疾患および該疾患の合併症の予防および/または治療に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
社会および経済の発展に伴い、代謝性疾患、例えば、糖尿病、肥満、脂肪肝およびメタボリックシンドロームの発生率が増加している。これらの疾患は、互いに関連しているだけでなく、様々な重篤な合併症を引き起こし、その他の主要な疾患、例えば、癌、心血管疾患および脳血管疾患のリスクを著しく増大させ、人類の健康にとって最大の脅威の一つとなっている。
【0003】
人々は、代謝性疾患の病態および治療に関する長期的な研究に多くの人的資源および物的資源を投入してきたが、現在の治療選択肢は未だ非常に限定されている。例えば、世界の糖尿病罹患率は急速に上昇しており、数億人の人々が糖尿病に罹患しており、特にII型糖尿病の患者が大多数を占めている。糖尿病に対して多くの治療薬、例えば、インスリン製剤、インスリン分泌促進剤(スルフォニル尿素剤を含む)、インスリン増感剤(チアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤)、α-グリコシダーゼ阻害剤(アカルボース、ボグリボース、ミグリトール)、ヒトグルカゴン様ペプチド(GLP-1)受容体アゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤、ナトリウム-グルコースコトランスポーター2(SGLT2)阻害剤およびその他の薬剤が存在するが、これらの薬剤は通常、体重増加、耐容性の低下、高インスリン血症、低血糖、消化器症状およびその他の副作用を伴い、加えて、薬効も徐々に低下する。糖尿病はまた、様々な合併症、例えば、腎症/心-脳血管疾患/眼疾患/神経障害/潰瘍を引き起こす可能性もあり、これらの合併症は一度発症すると元に戻すことは極めて困難である。それらの予防薬および治療薬は、常に研究の焦点となってきたが、今のところ標的薬剤はなく、その他の対症薬剤および併用療法を使用する効果も満足できるものではない。別の例として、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、最も一般的な慢性肝疾患の一つであり、肝線維症、肝硬変、さらには肝癌へと進行する可能性があり、また、肝移植の最も一般的な原因の一つでもある。その主な治療戦略には、(1)代謝調節、(2)炎症および酸化的損傷の抑制、(3)肝循環および腸管循環および/または腸内フローラの調節が挙げられる。多くの薬剤、例えば、血糖降下剤(例えば、メトホルミン、チアゾリジン系薬剤)、抗酸化剤(ビタミンE、還元型グルタチオン)、脂質低下剤(スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤)、ウルソデオキシコール酸およびその他の薬剤が、NASHの治療に試みられているが、NASHの治療のためにFDAで承認された薬剤はない。主な治療方針は、やはり生活習慣への介入である。
【0004】
要するに、現在利用可能な代謝性疾患の薬剤は、いくつかの重要な欠陥によって限定されており、いくつかの重要な代謝性疾患(例えば、脂肪性肝炎)には承認された治療薬すら全くない。これらの代謝性疾患の合併症は、健康および生命の安全にとって重大な脅威であり、代謝性疾患の治療のための新しい薬剤および代謝性疾患の合併症のための予防薬を見つけることが急務である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の内容
本出願の発明者らは、綿密な研究および独創的な発見により、糖脂質代謝の調節、抗炎症活性および/または抗酸化活性に有意な活性を有する一群のフェノキシカルボン酸化合物を得、それにより以下のような本発明を提供するに至った。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、L02ヒト正常肝細胞に対する化合物の細胞毒性を示す図である。結果は、対照群(DMSO群)の細胞の相対的な生存率に対する投与群(10μM)の細胞の相対的な生存率を表している。対照群と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図2】
図2は、RAW264.7マウスマクロファージにおいてLPSにより誘導されたNO産生に対する化合物の効果を示す図である。結果は、対照群(DMSO群)の細胞培養上清中のNO含量に対する投与群(10μM)の細胞培養上清中のNO含量の倍数で表されている。対照群と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図3】
図3は、NF-κBレポーター遺伝子の発現に対する化合物の効果を示す図である。結果は、対照群(DMSO群)の細胞における活性に対する投与群(50μM)の細胞におけるルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性の倍数で表されている。対照群と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図4】
図4は、AREレポーター遺伝子の活性に対する化合物の効果を示す図である。結果は、対照群(DMSO群)の細胞における活性に対する投与群(50μM)の細胞におけるルシフェラーゼレポーター遺伝子の活性の倍数で表されている。対照群と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図5】
図5は、PPARα(A)、PPARγ(B)、PGC1α(C)、ACOX1(D)、FABP1(E)それぞれのmRNAレベルに対する化合物の効果を示す図である。結果は、対照群(DMSO群)の細胞における発現量に対する投与群(1μM)の細胞における対応する遺伝子のmRNAの相対的な発現量の倍数で表されている。ゲムフィブロジル投与群と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図6】
図6は、CPT1α(A)、リン酸化GSK3β(C)およびリン酸化IRS-1(D)のタンパク質レベルに対する化合物の効果を示す図である。結果は、対照群(DMSO群)の細胞における結果に対する投与群(1μM)の細胞におけるウエスタンブロット法で定量した対応するタンパク質レベルの倍数で表されている。
【
図7】
図7は、DB/DBマウスの血糖値に対する化合物の効果を示す図である。
【
図8】
図8A~Bは、DB/DBマウスの肝組織中の脂肪量に対する化合物の効果を示す図である。
図8A:オイルレッドOで染色。
図8B:H.E.で染色。
【
図9】
図9は、糖尿病+NASHモデルマウスの血糖値に対する化合物の効果を示す図である。モデル対照群と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。BJMU群と比較して、
#P<0.05、
##P<0.01、
###P<0.001。
【
図10】
図10は、糖尿病+NASHモデルマウスのMRIで測定した体脂肪量に対する化合物の効果を示す図である。モデル対照群と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。BJMU群と比較して、
#P<0.05、
##P<0.01、
###P<0.001。
【
図11】
図11は、糖尿病+NASHモデルマウスの精巣上体白色脂肪の重量比に対する化合物の効果を示す図である。モデル対照群と比較して、
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図12】
図12A~12Bは、糖尿病+NASHモデルマウスの肝組織中の脂肪量に対する化合物の効果を示す図である。
図12A:オイルレッドOで染色。
図12B:H.E.で染色。
【発明を実施するための形態】
【0007】
化合物
第1の態様において、本発明は、式(I):
【化1】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルおよびC
1-C
4アルコキシからなる群から選択され、ここで、C
1-C
4アルキルまたはC
1-C
4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシルおよびチオールからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオおよびC
1-C
4アルキルアミノからなる群から選択され、ここで、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオまたはC
1-C
4アルキルアミノは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、アミノおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンであり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルからなる群から選択され、
R
7は、-C(O)Xおよびシアノからなる群から選択され、ここで、Xは、ヒドロキシルまたはC
1-C
4アルコキシであり、
nは1、2、3または4である。]
で表される化合物(但し、5-(2,4-ジクロロ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸、5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸、5-(2-クロロ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸および5-(4-ブロモ-2,5-ジメチル-フェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸を除く)、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物を提供する。
【0008】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、C1-C4アルキルおよびC1-C4アルコキシからなる群から選択され、ここで、C1-C4アルキルまたはC1-C4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0009】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0010】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択される。
【0011】
特定の実施形態において、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、ヒドロキシおよびC1-C4アルキルからなる群から選択され、ここで、ヒドロキシまたはC1-C4アルキルは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0012】
特定の実施形態において、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、-F、-Cl、-Br、-I、ニトロ、ヒドロキシル、メチルおよびエチルからなる群から選択され、ここで、ヒドロキシル、メチルまたはエチルは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0013】
特定の実施形態において、R3およびR4は、水素、-F、-Cl、-Br、-I、ニトロ、ヒドロキシルおよびメチルからなる群から独立して選択される。
【0014】
特定の実施形態において、R5およびR6は互いに同一である。特定の実施形態において、R5およびR6はメチルである。
【0015】
特定の実施形態において、R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される。
【0016】
特定の実施形態において、nは、1、2または3である。
【0017】
特定の実施形態において、化合物は、以下の特徴:
R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、好ましくは、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシル置換されたメチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択される特徴;
R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、-F、-Cl、-Br、-I、ニトロ、ヒドロキシ、メチルおよびエチルからなる群から選択され、ここで、ヒドロキシ、メチルまたはエチルは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、好ましくは、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、-F、-Cl、-Br、-I、ニトロ、ヒドロキシルおよびメチルからなる群から選択される特徴;
R5およびR6は、メチルである特徴;
R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される特徴;
nは、1、2または3である特徴
を有する。
【0018】
特定の実施形態において、化合物は、式(Ia):
【化2】
で表される構造を有し、
R
3は、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)であり、
R
1、R
2、R
4、R
5、R
6、R
7およびnは、上記で定義されているとおり(式(I)で定義されているとおり)である。
【0019】
特定の実施形態において、化合物は、
5-(4-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-3)、
5-(2,4-ジブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-109)、
5-(3-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-213)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジエチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-310)、
5-(4-ブロモ-2,3,5-トリメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-315)、
5-(2-ブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-404)、
5-(4-ブロモ-2,3,6-トリメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-409)、
5-(4-ブロモ-2-ヨード-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-413)、
5-(4-ブロモ-2-メトキシ-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-412)、
5-(4-ブロモ-3,6-ジメチル-2-ニトロフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-414)、
5-(4-ブロモ-2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-415)、
5-(4-ブロモ-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-416)、
5-(4-ブロモ-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-502)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルバレロニトリル(BJMU-309)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2-エチル-2-メチルペンタン酸(BJMU-401)、
5-(2,5-ジメチル-4-ニトロフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-110)、
5-(4-ブロモ-2-エチル-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-410)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-201)、
4-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルブタン酸(BJMU-111)、
6-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルヘキサン酸(BJMU-403)
から選択される。
【0020】
医薬組成物
第2の態様において、本発明は、式(I):
【化3】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルおよびC
1-C
4アルコキシからなる群から選択され、ここで、C
1-C
4アルキルまたはC
1-C
4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシルおよびチオールからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオおよびC
1-C
4アルキルアミノからなる群から選択され、ここで、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオまたはC
1-C
4アルキルアミノは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、アミノおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンであり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルからなる群から選択され、
R
7は、-C(O)Xおよびシアノからなる群から選択され、ここで、Xは、ヒドロキシルまたはC
1-C
4アルコキシであり、
nは、1、2、3または4である。]
で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物と、1種または2種以上の薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物を提供する。
【0021】
特定の実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびnは、第1の態様で定義されているとおりである。
【0022】
特定の実施形態において、化合物は、式(Ia):
【化4】
で表される構造を有し、ここで、R
3は、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)であり、かつ、R
1、R
2、R
4、R
5、R
6、R
7およびnは、式(I)で定義されているとおりである。
【0023】
特定の実施形態において、化合物は、式(Ia)で表される構造を有し、
R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、好ましくは、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択され、
R4は、水素、-F、-Cl、-Br、-I、ニトロ、ヒドロキシル、メチルおよびエチルからなる群から選択され、ここで、ヒドロキシル、メチルまたはエチルは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、好ましくは、R4は、水素、-F、-Cl、-Br、-I、ニトロ、ヒドロキシルおよびメチルからなる群から選択され、
R5およびR6はメチルであり、
R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択され、
nは、1、2または3である。
【0024】
特定の実施形態において、化合物は以下から選択される。
【表1】
【0025】
第3の態様において、本発明は、式(Ia):
【化5】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチル、エチル、およびメトキシからなる群から選択され、
R
3は、-F、-Cl、-Brおよび-Iからなる群から選択され、
R
4は、水素またはヒドロキシルから選択され、
R
5およびR
6は、メチルであり、
R
7は、カルボキシ、-CO
2Me、-CO
2Etおよびシアノからなる群から選択され、
nは、1、2または3である。]
で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物と、1種または2種以上の薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤とを含んでなる、医薬組成物を提供する。
【0026】
特定の実施形態において、化合物は、BJMU-1、BJMU-2、BJMU-3、BJMU-415、BJMU-502、BJMU-309、BJMU-11およびBJMU-403からなる群から選択される。
【0027】
特定の実施形態において、第2または第3の態様の医薬組成物は、場合により追加の医薬有効成分を含んでなる。
【0028】
特定の実施形態において、追加の医薬有効成分は、抗糖尿病薬、抗肥満薬、抗高血圧薬、抗動脈硬化薬、脂質低下薬、抗炎症薬および抗酸化損傷薬からなる群から選択される。
【0029】
本発明において、医薬組成物は、医療分野で知られている任意の形態であってもよい。例えば、医薬組成物は、錠剤、丸薬、懸濁液、乳剤、溶液、ゲル、カプセル、粉末、顆粒、エリキシル、ロゼンジ、座薬、注射(注射液、凍結乾燥粉末を含む)、吸入剤、スプレーなどの形態であってもよい。好ましい剤形は、意図する投与方法および治療上の使用方法によって異なる。
【0030】
特定の実施形態において、本発明の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物は、投与を容易にするために単位投与形態で医薬組成物中に存在してもよい。
【0031】
本発明の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物、あるいは、本発明の医薬組成物は、経口投与、直腸投与、非経口投与または局所投与を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている任意の適切な方法によって投与可能である。
【0032】
例示的な投与経路は、経口投与である。経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシルなどが挙げられる。液体剤形には、有効化合物に加えて、当技術分野で一般的に使用されている不活性な希釈剤(例えば、水またはその他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジメチルホルムアミド、油(例えば、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物が含まれていてもよい。経口投与用の液体剤形にはまた、不活性な希釈剤に加えて、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味料、香料が含まれていてもよい。経口投与用の固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸薬、ロゼンジ、粉末、顆粒などが挙げられる。固体剤形には、有効化合物に加えて、薬学的に許容可能な不活性な賦形剤または担体(例えば、充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、デンプン、微結晶性セルロース、ガラクトース、クロスポビドン、硫酸カルシウムなど)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシア)、湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセリル)、崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、デンプン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルデンプンナトリウム)、潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコールおよびラウレル硫酸ナトリウム)およびそれらの混合物)が含まれていてもよい。
【0033】
本発明の化合物または医薬組成物は、非経口的な経路で投与することもできる。
【0034】
したがって、別の例示的な投与経路は、非経口投与、例えば、皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射および輸液である。非経口投与のための剤形は、注射剤、例えば、注射液、注射用無菌粉末および注射用濃縮液であってもよい。注射剤には、有効化合物に加えて、薬学的に許容可能な担体、例えば、滅菌水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム液が含まれていてもよい。また、薬剤の性質に応じて、適切な添加剤、例えば、酸化防止剤、緩衝剤および静菌剤を追加してもよい。
【0035】
別の例示的な投与経路は、局所投与、例えば、経皮投与(例えば、経皮パッチまたはイオントフォレーシス手段を介した投与)、眼内投与または鼻腔内もしくは吸入投与である。経皮投与用の剤形は、局所用のゲル、スプレー、軟膏およびクリームであり得る。局所投与剤形は、有効化合物に加えて、皮膚またはその他の作用部位からの有効化合物の吸収または浸透を促進する成分を含んでいてもよい。本発明の化合物を経皮的な手段を介して投与する場合には、貯蔵および多孔質膜型(storage and porous membrane type)、または固形マトリックス型のパッチを使用して投与を行う。眼への局所投与のための剤形は、本発明の化合物を適当な担体に溶解または懸濁させた目薬であってもよい。鼻腔内投与または吸入投与のために、溶液または懸濁液の形態の本発明の化合物は、便利に圧力スプレー容器から送出され、送出は患者の圧迫またはポンピングによって行われるか、あるいは、適切な推進剤を使用する圧力容器または噴霧器からエアロゾルスプレー調合物として送出される。
【0036】
別の例示的な投与経路は直腸投与である。直腸投与用の剤形は、座薬であってもよい。
【0037】
さらに、医薬分野で知られているその他の担体材料および投与方法も使用することができる。本発明の医薬組成物は、任意の周知の医薬プロセス、例えば、効果的な調合および投与方法によって調製することができる。効果的な調合および投与方法に関する前述の考察は、当技術分野でよく知られており、標準的な教科書に記載されている。医薬品の調合については、例えば、Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences. Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania, 1975; Liberman et al., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, NY, 1980;およびKibbe et al., Handbook of Pharmaceutical Excipients (3rd edition), American Pharmaceutical Association, Washington, 1999に記載されている。
【0038】
特定の実施形態において、医薬組成物は、本発明の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物を、0.01~2000mg、好ましくは0.1~1000mg、より好ましくは1~800mg、より一層好ましくは10~600mg、特に好ましくは50~500mgの量で含む。
【0039】
本発明の医薬組成物は、本明細書に記載の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物の「治療上有効な量」または「予防上有効な量」を含んでいてもよい。「予防的に有効な量」とは、疾患の発生を予防する、阻止する、あるいは遅延させるのに十分な量を意味する。「治療上有効な量」とは、既に疾患に罹患している患者の疾患およびその合併症を治癒する、あるいは少なくとも部分的に予防するのに十分な量を意味する。当業者ならば、本明細書に記載の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物の治療上有効な量は、以下の要因:治療される疾患の重症度;患者自身の免疫系の全体的な状態;患者の一般的な状態、例えば、年齢、体重および性別;薬剤の投与様式;および同時に投与されるその他の治療に応じて変化し得ることを理解している。
【0040】
本発明では、最良の目的の応答(例えば、治療的応答または予防的応答)を得るために、投与レジメンを調整することができる。例えば、単回用量で投与することもできるし、一定期間に複数回投与することもできるし、あるいは、治療状況の緊急性に比例して用量を減らしたり増やしたりすることもできる。
【0041】
本発明の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物の治療上または予防上の有効量は、典型的かつ非限定的な範囲である0.01~1000mg/kg、例えば0.1~500mg/kgである。用量は、治療すべき症状の種類や重症度に応じて変化することに留意すべきである。さらに、当業者は、任意の特定の患者について、患者のニーズおよび医師の専門的な評価に基づいて、特定の用量レジメンを経時的に調整すべきであることを理解している。ここで示された用量範囲は例示の目的のみであり、本発明の医薬組成物の使用または範囲を制限するものではない。
【0042】
特定の実施形態において、医薬組成物は、追加の医薬有効成分を含むこともできる。特定の実施形態において、追加の医薬有効成分は、代謝性疾患または関連疾患の治療に使用される薬剤、例えば、抗糖尿病薬、抗肥満薬、抗高血圧薬、抗動脈硬化薬または脂質低下薬である。特定の実施形態において、追加の医薬有効成分は、抗炎症活性を有する薬剤である。特定の実施形態において、追加の医薬有効成分は、抗酸化損傷活性を有する薬剤である。特定の実施形態において、追加の医薬有効成分は、抗糖尿病薬、抗肥満薬、抗高血圧薬、抗動脈硬化薬、脂質低下薬、抗炎症薬および抗酸化損傷薬からなる群から選択される。
【0043】
特定の実施形態において、医薬組成物中の、本発明の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物と、追加の医薬有効成分とが、別個の成分または混合された成分として提供される。したがって、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物と、追加の医薬有効成分とは、同時に、別個にまたは順次に投与可能である。
【0044】
一般的な合成法
本発明の第1の態様に記載された化合物、および本発明の第2の態様または第3の態様に定義された化合物を、この種の化合物を調製するために知られている様々な方法によって調製することができ、例えば、以下の反応スキームに示すように調製することができる。特に指定のない限り、反応スキームおよび以下の説明におけるR1~R7およびnは、上記で定義したとおりである。
【0045】
以下の反応スキームは、式(I)の化合物の調製を示している。
【0046】
スキーム1:
このスキームは、R
7が-COOHを表す、式(I-1)の化合物の調製を示す。
【化6】
【0047】
上記式中、Lはハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)であり、好ましくは、Lは-Clである。その他の記号は、第1の態様または第2の態様で定義したとおりである。
【0048】
ステップ1A
このステップでは、化合物1-1を、化合物1-2とのエーテル化反応に供して、化合物1-3を得る。
【0049】
特定の実施形態において、ウィリアムソン合成が使用される。いくつかの実施形態において、エーテル化反応は、ルイス塩基(例えば、Na2CO3、K2CO3など)の存在下で、非プロトン性極性溶媒(例えば、DMF、DMSOなど)中で行われる。必要に応じて、相間移動触媒、例えば、TBAI(テトラブチルアンモニウムヨウ化物)の存在下で反応を行うことができる。
【0050】
ステップ1B
このステップでは、化合物1-3を溶媒中で加水分解して、式(I-1)の酸化合物を調製する。
【0051】
加水分解は、従来の技術によって行うことができる。典型的なプロセスにおいて、加水分解は、アルカリ条件下、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムの存在下で行われる。適切な溶媒としては、例えば、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メトキシエタノールおよびエチレングリコール;エーテル、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,2-ジメトキシエタン(DME)および1,4-ジオキサン;アミド、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)およびヘキサメチルホスホリックトリアミド(ホスホリアミド);ならびに、スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。
【0052】
また、加水分解は、酸性条件下、例えば、以下の試薬:ハロゲン化水素、例えば、塩化水素および臭化水素;スルホン酸、例えば、p-トルエンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸;p-トルエンスルホン酸ピリジニウム;ならびに、カルボン酸、例えば、酢酸およびトリフルオロ酢酸の存在下で行うことができる。適切な溶媒としては、例えば、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2-メトキシエタノールおよびエチレングリコール;エーテル、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,2-ジメトキシエタン(DME)および1,4-ジオキサン;アミド、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)およびヘキサメチルホスホリックトリアミド(ホスホリアミド);ならびに、スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。
【0053】
スキーム2
このスキームは、R
7が-CNを表す、式(I-2)の化合物の調製を示す。
【化7】
【0054】
ステップ2A(アミド化反応)
このステップでは、カップリング剤の存在下または非存在下、不活性溶媒中で、スキーム1のステップ1Bに記載のように調製された式I-1の化合物と、アミンとのカップリング反応を行うことにより、アミド化合物2-1を調製することができる。必要に応じて、この反応は、添加剤、例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールまたは1-ヒドロキシアザベンゾトリアゾールの存在下または非存在下で行うことができる。
【0055】
反応は通常かつ好ましくは溶媒中で行われる。使用される溶媒の性質は、反応または関与する試薬に悪影響を及ぼさず、かつ、試薬を少なくともある程度まで溶解可能であれば、特に制限はない。適切な溶媒の例としては、アセトン、ニトロメタン、DMF、スルホラン、DMSO、NMP、2-ブタノン、アセトニトリル、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,ジクロロエタンおよびクロロホルム)およびエーテル(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサン)が挙げられる。
【0056】
本反応は広い温度範囲で行うことができ、正確な反応温度は本発明の重要なポイントではない。好ましい反応温度は、溶媒の特性、および使用される原料または試薬などの要因に依存する。
【0057】
適切なカップリング剤は、ペプチド合成に通常使用されるものであり、例えば、ジイミン(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、水溶性カルボジイミド(WSC))、2-エトキシ-N-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン、2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロボレート(BEP)、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ジエチルアゾジカルボキシレート-トリフェニルホスフィン、ジエチルシアノホスフェート、ジエチルホスホリルアジド、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨウ化物、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ベンゾトリアゾール-1-イルジエチルホスフェート、クロロギ酸エチルまたはクロロギ酸イソブチルが挙げられる。必要に応じて、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、トリエチルアミンなどの塩基の存在下で反応させることもできる。
【0058】
さらに、ハロゲン化剤、例えば、塩化オキサリル、塩化ホスホリルおよび塩化チオニルとの反応で得られるアシルハロゲン化物を経由して、アミド化合物2-1を製造することもできる。本ステップと同様の条件で、得られたアシルハロゲン化物をアミンで処理することにより、対応するアミド化合物に変換することができる。
【0059】
ステップ2B
このステップでは、不活性溶媒中でアミド化合物2-1のアミド基をシアノ基に変換して、式I-2の化合物を調製する。
【0060】
このステップは、遷移金属によって触媒されるシアノ化反応であってもよい。遷移金属触媒は、金属パラジウム触媒、例えば、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)であってもよい。例えば、不活性ガス(例えば、アルゴン)の保護下で、Pd(OAc)2/Selectfluor触媒系およびアセトニトリル中でシアノ化反応を行い、式I-2の化合物を得ることができる。アセトニトリルは溶媒としてもシアノ試薬としても機能する。
【0061】
さらに、このステップは、脱水反応であってもよい。例えば、脱水剤の存在下、不活性溶媒中で脱水反応を行い、式I-2の化合物を得ることができる。脱水剤としては、塩化チオニル、五酸化リン、塩化シアヌル、トリフルオロ酢酸無水物、オキシ塩化リン、五塩化リンなどが挙げられる。
【0062】
スキーム3
このスキームは、R
7が-C(O)Xを表し、ここで、XはC
1-C
4アルコキシである、式(I-3)の化合物の調製を示す。
【化8】
【0063】
このステップでは、式I-1の酸化合物およびC1-C4アルコールのエステル化反応を、不活性溶媒中、触媒の存在下で行い、式I-3のエステル化合物を調製する。
【0064】
さらに、式I-3のエステル化合物は、ハロゲン化アシルを経由して生成することができ、該ハロゲン化アシルはハロゲン化剤との反応で得ることができる。得られたハロゲン化アシルを、本ステップと同様の条件でアルコール処理すると、対応するエステル化合物に変換することができる。
【0065】
用途および方法
第4の態様において、本発明は、対象における体重の減少、体脂肪の減少、肝脂肪率の減少、肥満の予防もしくは治療および/または非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の予防もしくは治療のための使用、あるいは、対象における体重の減少、体脂肪の減少、肝脂肪率の減少、肥満の予防もしくは治療および/または非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)(例えば、単純性脂肪肝または非アルコール性脂肪肝炎(NASH))の予防もしくは治療のための医薬の製造における使用であって、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物、あるいは、第2の態様または第3の態様の医薬組成物の使用に関し、ここで、化合物は、第2または第3の態様で定義されたとおりである。
【0066】
特定の実施形態において、化合物は、式(I):
【化9】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルおよびC
1-C
4アルコキシからなる群から選択され、ここで、C
1-C
4アルキルまたはC
1-C
4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシルおよびチオールからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオおよびC
1-C
4アルキルアミノからなる群から選択され、ここで、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオまたはC
1-C
4アルキルアミノは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、アミノおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンであり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルからなる群から選択され、
R
7は、-C(O)Xおよびシアノからなる群から選択され、ここで、Xは、ヒドロキシルまたはC
1-C
4アルコキシであり、
nは、1、2、3または4である。]
で表される構造を有する。
【0067】
特定の実施形態において、化合物は、式(Ia):
【化10】
で表される構造を有し、ここで、R
3は、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)であり、かつ、R
1、R
2、R
4、R
5、R
6、R
7およびnは、式(I)で定義されているとおりである。
【0068】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、C1-C4アルキルおよびC1-C4アルコキシからなる群から選択され、ここで、C1-C4アルキルまたはC1-C4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0069】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0070】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択される。
【0071】
特定の実施形態において、R4は、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)およびヒドロキシルからなる群から選択される。特定の実施形態において、R4は、水素またはヒドロキシルから選択される。
【0072】
特定の実施形態において、R5およびR6は互いに同一である。特定の実施形態において、R5およびR6はメチルである。
【0073】
特定の実施形態において、R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される。
【0074】
特定の実施形態において、nは、1、2または3である。
【0075】
特定の実施形態において、化合物は、式(Ia)で表される構造を有し、
R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、好ましくは、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択され、
R3は、-F、-Cl、-Brまたは-Iであり、
R4は、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)およびヒドロキシルからなる群から選択され、好ましくは、R4は、水素およびヒドロキシルからなる群から選択され、
R5およびR6はメチルであり、
R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択され、
nは、1、2または3である。
【0076】
特定の実施形態において、化合物は、
5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-1)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-2)、
5-(4-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-3)、
5-(4-ブロモ-2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-415)、
5-(4-ブロモ-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-502)
から選択される。
【0077】
別の態様において、本発明は、対象における体重を減少させる、体脂肪を減少させる、肝脂肪率を減少させる、肥満を予防もしくは治療する、かつ/あるいは、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を予防もしくは治療する方法であって、本方法は、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物の有効量、あるいは、第3の態様に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、化合物は、第4の態様で定義されたとおりである、方法を提供する。
【0078】
特定の実施形態において、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、単純性脂肪肝または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を含む。
【0079】
特定の実施形態において、対象は代謝性疾患を有し、かつ/あるいは、対象は代謝性疾患に関連する状態(例えば、過体重、過剰な体脂肪および/または高い肝脂肪率)を有する。
【0080】
第5の態様において、本発明は、対象における血糖値の低下、インスリン感受性の増加、インスリン抵抗性の予防もしくは治療および/または糖尿病(例えば、2型糖尿病)の予防もしくは治療のための使用、あるいは、対象における血糖値の低下、インスリン感受性の増加、インスリン抵抗性の予防もしくは治療および/または糖尿病(例えば、2型糖尿病)の予防もしくは治療のための医薬の製造における使用であって、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物、あるいは、第2の態様または第3の態様の医薬組成物の使用に関し、ここで、化合物は、第2の態様または第3の態様で定義されているとおりである。
【0081】
特定の実施形態において、化合物は、式(I):
【化11】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルおよびC
1-C
4アルコキシからなる群から選択され、ここで、C
1-C
4アルキルまたはC
1-C
4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシルおよびチオールからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオおよびC
1-C
4アルキルアミノからなる群から選択され、ここで、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオまたはC
1-C
4アルキルアミノは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、アミノおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンであり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルからなる群から選択され、
R
7は、-C(O)Xおよびシアノからなる群から選択され、ここで、Xは、ヒドロキシルまたはC
1-C
4アルコキシであり、
nは、1、2、3または4である。]
で表される構造を有する。
【0082】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、C1-C4アルキルおよびC1-C4アルコキシからなる群から選択され、ここで、C1-C4アルキルまたはC1-C4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0083】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0084】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択される。
【0085】
特定の実施形態において、R3およびR4は、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される。
【0086】
特定の実施形態において、R5およびR6は互いに同一である。特定の実施形態において、R5およびR6はメチルである。
【0087】
特定の実施形態において、R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される。
【0088】
特定の実施形態において、nは、1、2または3である。
【0089】
特定の実施形態において、化合物は、以下の特徴:
R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、好ましくは、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択される特徴;
R3およびR4は、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択され、かつ、R3およびR4のうちの少なくとも1つは水素である特徴;
R5およびR6はメチルである特徴;
R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される特徴;
nは、2、3または4である特徴
を有する。
【0090】
特定の実施形態において、化合物は、
5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-1)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-2)、
5-(4-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-3)、
5-(2,4-ジブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-109)、
5-(3-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-213)、
5-(2-ブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-404)、
5-(4-ブロモ-2-メトキシ-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-412)、
5-(4-ブロモ-2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-415)、
5-(4-ブロモ-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-502)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルバレロニトリル(BJMU-309)
から選択される。
【0091】
別の態様において、本発明は、対象における血糖値を低下させる、インスリン感受性を増加させる、インスリン抵抗性を予防または治療する、かつ/あるいは、糖尿病(例えば、2型糖尿病)を予防または治療する方法であって、本方法は、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、かつ、化合物は第5の態様で定義されたとおりである方法、あるいは、本方法は、第3の態様の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法、を提供する。
【0092】
特定の実施形態において、対象は代謝性疾患を有し、かつ/あるいは、対象は代謝性疾患に関連する状態(例えば、高血糖値、インスリン抵抗性、高インスリン血症および/または耐糖能異常)を有する。
【0093】
第6の態様において、本発明は、対象における血中総コレステロール値の低下、血中トリグリセリド値の低下、血中低密度リポタンパク質値の低下および/もしくは血中高密度リポタンパク質値の上昇のための使用または対象における血中総コレステロール値の低下、血中トリグリセリド値の低下、血中低密度リポタンパク質値の低下および/もしくは血中高密度リポタンパク質値の上昇のための医薬の製造における使用であって、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物、あるいは、第2の態様または第3の態様の医薬組成物の使用に関し、ここで、化合物は、第2の態様または第3の態様で定義されているとおりである。
【0094】
特定の実施形態において、化合物は、式(I):
【化12】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルおよびC
1-C
4アルコキシからなる群から選択され、ここで、C
1-C
4アルキルまたはC
1-C
4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシルおよびチオールからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオおよびC
1-C
4アルキルアミノからなる群から選択され、ここで、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオまたはC
1-C
4アルキルアミノは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、アミノおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンであり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルからなる群から選択され、
R
7は、-C(O)Xおよびシアノからなる群から選択され、ここで、Xは、ヒドロキシルまたはC
1-C
4アルコキシであり、
nは、1、2、3または4である。]
で表される構造を有する。
【0095】
特定の実施形態において、化合物は、式(Ia):
【化13】
で表される構造を有し、ここで、R
3は、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)であり、かつ、R
1、R
2、R
4、R
5、R
6、R
7およびnは、上記で定義されているとおりである。
【0096】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0097】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択される。
【0098】
特定の実施形態において、R5およびR6は互いに同一である。特定の実施形態において、R5およびR6はメチルである。
【0099】
特定の実施形態において、R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される。
【0100】
特定の実施形態において、nは、1、2または3である。
【0101】
特定の実施形態において、化合物は、以下の特徴:
R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、好ましくは、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル;ヒドロキシ置換されたメチル;エチル;およびメトキシからなる群から選択される特徴;
R3は、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)である特徴;
R4は、水素またはヒドロキシルである特徴;
R5およびR6はメチルである特徴;
R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される特徴;
nは、1、2または3である特徴
を有する。
【0102】
特定の実施形態において、化合物は、
5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-1)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-2)、
5-(4-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-3)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルバレロニトリル(BJMU-309)、
5-(4-ブロモ-2-メトキシ-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-412)、
5-(4-ブロモ-2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-415)、
5-(4-ブロモ-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-502)
から選択される。
【0103】
別の態様において、本発明は、対象における血中総コレステロール値を低下させる、血中トリグリセリド値を低下させる、血中低密度リポタンパク質値を低下させる、かつ/あるいは、血中高密度リポタンパク質値を上昇させる方法であって、本方法は、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、かつ、化合物は第6の態様で定義されたとおりである方法、あるいは、本方法は、第3の態様の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法、を提供する。
【0104】
特定の実施形態において、対象は代謝性疾患を有し、かつ/あるいは、対象は代謝性疾患に関連する状態(例えば、高い血中総コレステロール値、高い血中トリグリセリド値、高い血中低密度リポタンパク質値および/または低い血中高密度リポタンパク質値)を有する。
【0105】
第7の態様において、本発明は、対象における代謝性疾患の予防もしくは治療のための使用または対象における代謝性疾患の予防もしくは治療のための医薬の製造における使用であって、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物、あるいは、第2の態様または第3の態様の医薬組成物の使用を提供し、ここで、化合物は、第2の態様または第3の態様で定義されるとおりである。
【0106】
特定の実施形態において、代謝性疾患は、肥満、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)(例えば、単純性脂肪肝または非アルコール性脂肪肝炎(NASH))、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、1型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能異常、空腹時血糖異常または高血糖症、脂質異常症または高脂血症(例えば、高コレステロール血症)、およびこれらの疾患の二次的合併症(例えば、糖尿病性合併症(例えば、網膜症、神経障害、腎症、創傷治癒遅延)または心血管性および脳血管性疾患(例えば、動脈硬化、冠動脈疾患、高血圧、脳卒中))から選択される。
【0107】
特定の実施形態において、化合物は、式(I):
【化14】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルおよびC
1-C
4アルコキシからなる群から選択され、ここで、C
1-C
4アルキルまたはC
1-C
4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシルおよびチオールからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオおよびC
1-C
4アルキルアミノからなる群から選択され、ここで、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオまたはC
1-C
4アルキルアミノは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、アミノおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンであり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルからなる群から選択され、
R
7は、-C(O)Xおよびシアノからなる群から選択され、ここで、Xは、ヒドロキシルまたはC
1-C
4アルコキシであり、
nは、1、2、3または4である。]
で表される構造を有する。
【0108】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、C1-C4アルキルおよびC1-C4アルコキシからなる群から選択され、かつ、C1-C4アルキルまたはC1-C4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0109】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0110】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチル、エチルおよびメトキシからなる群から選択される。
【0111】
特定の実施形態において、R3およびR4は、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される。
【0112】
特定の実施形態において、R5およびR6は互いに同一である。特定の実施形態において、R5およびR6はメチルである。
【0113】
特定の実施形態において、R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される。
【0114】
特定の実施形態において、nは、1、2または3である。
【0115】
特定の実施形態において、化合物は、式(Ia):
【化15】
で表される構造を有し、ここで、R
3は、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)であり、かつ、R
1、R
2、R
4、R
5、R
6、R
7およびnは、上記で定義されているとおりである。
【0116】
特定の実施形態において、化合物は、以下の特徴:
R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、メトキシおよびエトキシからなる群から選択され、ここで、メチル、エチル、メトキシまたはエトキシは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、好ましくは、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル;ヒドロキシ置換されたメチル;エチル;およびメトキシからなる群から選択される特徴;
R3およびR4は、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される特徴;
R5およびR6はメチルである特徴;
R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される特徴;
nは、1、2または3である特徴
を有する。
【0117】
特定の実施形態において、化合物は、式(Ia)で表される構造を有し、ここで、R3は、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)である。
【0118】
特定の実施形態において、化合物は、
5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-1)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-2)、
5-(4-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-3)、
5-(2,4-ジブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-109)、
5-(2-クロロ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-209)、
5-(3-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-213)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジエチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-310)、
5-(4-ブロモ-2,3,5-トリメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-315)、
5-(2-ブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-404)、
5-(4-ブロモ-2,3,6-トリメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-409)、
5-(4-ブロモ-2-ヨード-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-413)、
5-(4-ブロモ-2-メトキシ-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-412)、
5-(4-ブロモ-3,6-ジメチル-2-ニトロフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-414)、
5-(4-ブロモ-2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-415)、
5-(4-ブロモ-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-416)、
5-(4-ブロモ-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-502)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルバレロニトリル(BJMU-309)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2-エチル-2-メチルペンタン酸(BJMU-401)、
5-(2,5-ジメチル-4-ニトロフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-110)、
5-(4-ブロモ-2-エチル-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-410)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-201)、
4-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルブタン酸(BJMU-111)、
6-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルヘキサン酸(BJMU-403)
から選択される。
【0119】
別の態様において、本発明は、対象における代謝性疾患を予防または治療する方法であって、本方法は、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、かつ、化合物は第7の態様で定義されたとおりである方法、あるいは、本方法は、第3の態様の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法、を提供する。
【0120】
第8の態様において、本発明は、PPARα/γデュアルアゴニストとしての使用、または対象におけるPPARαおよび/もしくはPPARγに関連する疾患の予防および/もしくは治療のための使用、またはPPARα/γデュアルアゴニストの製造のための使用、または対象におけるPPARαおよび/もしくはPPARγに関連する疾患の予防および/または治療のための医薬の製造のための使用であって、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物、あるいは、第2の態様または第3の態様の医薬組成物の使用を提供し、ここで、化合物は、第2の態様または第3の態様で定義されるとおりである。
【0121】
特定の実施形態において、化合物は、式(I):
【化16】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルおよびC
1-C
4アルコキシからなる群から選択され、ここで、C
1-C
4アルキルまたはC
1-C
4アルコキシは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシルおよびチオールからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオおよびC
1-C
4アルキルアミノからなる群から選択され、ここで、アミノ、ヒドロキシル、チオール、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アルコキシ、C
1-C
4アルキルチオまたはC
1-C
4アルキルアミノは、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)、アミノおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、
R
3およびR
4のうちの少なくとも1つは、ハロゲンであり、
R
5およびR
6は、それぞれ独立して、C
1-C
4アルキルからなる群から選択され、
R
7は、-C(O)Xおよびシアノからなる群から選択され、ここで、Xは、ヒドロキシルまたはC
1-C
4アルコキシであり、
nは、1、2、3または4である。]
で表される構造を有する。
【0122】
特定の実施形態において、化合物は、式(Ia):
【化17】
で表される構造を有し、ここで、R
3は、ハロゲン(例えば、-F、-Cl、-Brまたは-I)であり、かつ、R
1、R
2、R
4、R
5、R
6、R
7およびnは、上記で定義されているとおりである。
【0123】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチルおよびエチルからなる群から選択され、ここで、メチルまたはエチルは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよい。
【0124】
特定の実施形態において、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル、ヒドロキシ置換されたメチルおよびエチルからなる群から選択される。
【0125】
特定の実施形態において、R3は、-Clまたは-Brである。
【0126】
特定の実施形態において、R5およびR6は互いに同一である。特定の実施形態において、R5およびR6はメチルである。
【0127】
特定の実施形態において、R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される。
【0128】
特定の実施形態において、nは、1、2または3である。
【0129】
特定の実施形態において、化合物は、以下の特徴:
R1およびR2は、それぞれ独立して、メチルおよびエチルからなる群から選択され、ここで、メチルまたはエチルは、-F、-Cl、-Br、-Iおよびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1または複数(例えば、1、2、3または4)の置換基で置換されていてもよく、好ましくは、R1およびR2は、それぞれ独立して、メチル;ヒドロキシ置換されたメチル;およびエチル;からなる群から選択される特徴;
R3はハロゲンであり、好ましくは、R3は-Clまたは-Brである特徴;
R4は水素またはヒドロキシルである特徴;
R5およびR6はメチルである特徴;
R7は、カルボキシ、-CO2Me、-CO2Etおよびシアノからなる群から選択される特徴;
nは、1、2または3である特徴
を有する。
【0130】
特定の実施形態において、化合物は、
5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-1)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-2)、
5-(4-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-3)、
5-(4-ブロモ-2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-415)、
5-(4-ブロモ-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-502)、
5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルバレロニトリル(BJMU-309)
から選択される。
【0131】
特定の実施形態において、PPARαおよび/またはPPARγに関連する疾患は、2型糖尿病、耐糖能異常、インスリン抵抗性症候群、高血圧、高脂血症(例えば、高コレステロール血症)、メタボリックシンドローム疾患、内臓肥満および肥満からなる群から選択される。
【0132】
別の態様において、本発明は、対象におけるPPARαおよび/またはPPARγに関連する疾患を予防または治療する方法であって、本方法は、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含み、かつ、化合物は第8の態様で定義された通りである方法、あるいは、第3の態様の医薬組成物の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0133】
本発明において、上記のいずれか1つの態様に記載の方法は、本明細書に記載の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物、結晶体、それらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物、あるいは、本明細書に記載の医薬組成物を、追加の医薬有効成分と組み合わせて使用することをさらに含んでもよい。この追加の医薬有効成分は、化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物、あるいは本明細書に記載の医薬組成物の投与の前に、同時にまたは後に投与可能である。
【0134】
特定の実施形態において、追加の医薬有効成分は、抗糖尿病薬、抗肥満薬、抗高血圧薬、抗動脈硬化薬、脂質低下薬、抗炎症薬および抗酸化損傷薬からなる群から選択される。
【0135】
本発明において、上記のいずれか1つの態様に記載の方法はまた、本明細書に記載の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物、結晶体、それらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物、あるいは、本明細書に記載の医薬組成物を、追加の療法と組み合わせて投与することも含んでもよい。追加の療法は、代謝性疾患に対して知られている任意の療法、例えば、手術、標的療法、免疫療法、ホルモン療法または遺伝子療法であってもよい。この追加の療法は、本明細書に記載の化合物、その薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、プロドラッグ、立体異性体、水和物、溶媒和物もしくは結晶体、またはそれらの代謝物形態、またはそれらの任意の組み合わせもしくは混合物、あるいは本明細書に記載の医薬組成物の投与の前に、同時にまたは後に投与可能である。
【0136】
本発明において、好適な抗糖尿病薬の非限定的な例としては、チアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾンまたはピオグリタゾン)、ビグアニド(例えば、メトホルミンまたはフェンホルミン)、スルホニル尿素(例えば、グリメピリド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミドまたはグリピジド)、グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボースまたはミグリトール)、PPAR-αアゴニスト、PPAR-γアゴニスト、PPAR-α/γデュアルアゴニスト(例えば、ムラグリタザール)、aP2阻害剤、DPP4阻害剤(例えば、シタグリプチンまたはビルダグリプチン)、インスリン増感剤、インスリンまたはメグリジニド(例えば、レパグリニド)などが挙げられる。
【0137】
好適な抗肥満薬の非限定的な例としては、β3アドレナリンアゴニスト(例えば、AJ9677(武田/大日本製薬)、L750355(メルク)またはCP331648(ファイザー))、リパーゼ阻害剤(例えば、オルリスタット)、5-ヒドロキシトリプタミン(およびドーパミン)再取り込み阻害剤(例えば、シブトラミンまたはトピラマート)、甲状腺受容体β化合物(例えば、WO99/00353およびWO00/039077に開示されている化合物)、CB-1アンタゴニスト(例えば、リモナバント)または食欲抑制剤(例えば、デキストロアンフェタミン)が挙げられる。
【0138】
好適な脂質低下薬(抗動脈硬化剤を含む)の非限定的な例としては、MTP阻害剤、コレステリルエステル転移タンパク質阻害剤(例えば、CP-529414(ファイザー))、HMG CoA還元酵素阻害剤(例えば、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチンまたはアトルバスタチン)、スクアレン合成酵素阻害剤(例えば、米国特許第5,712,396号に開示されているα-ホホニルスルホネート)、フェニル酢酸誘導体(例えば、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クリノフィブラートなど)、LDL受容体活性上昇剤(例えば、MD-700(大正製薬株式会社)およびLY295427(Eli Lilly))、リポキシゲナーゼ阻害剤(例えば、WO97/12615に開示されているベンズイミダゾール誘導体、WO97/12613に開示されている15-LO阻害剤、WO96/38144に開示されているイソチアゾロン)、ACAT阻害剤(例えば、アバシミブ)、コレステロール吸収阻害剤、回腸Na+/胆汁酸コトランスポーター阻害剤が挙げられる。
【0139】
好適な抗高血圧薬の非限定的な例としては、β-アドレナリン遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ジルチアゼム、ベラパミル、ニフェジピン、アムロジピン)、利尿薬(例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、フルメチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンドロフルメチアジド、メチルクロロチアジド、トリクロロメチアジド、ポリチアジド、ベンズチアジド、チクリナフェン、クロルタリドン、フルセミド、ブメタニド、アミロライドまたはスピロノラクトン)、レニン阻害剤、ACE阻害剤(例えば、カプトプリル、ゾフェノプリル、フォシノプリル、エナラプリル、シラザプリル、デラプリル、ペントプリル、キナプリル、ラミプリルまたはリシノプリル)、AT-1受容体アンタゴニスト(例えば、ロサルタン、イルベサルタンまたはバルサルタン)、ET受容体アンタゴニスト(例えば、シタキセンタンまたはアトラセンタン)、デュアルET/AIIアンタゴニスト(例えば、WO00/01389に開示されている化合物)、デュアルNEP-ACE阻害剤(例えば、オマパトリラート)および硝酸塩が挙げられる。
【0140】
好適な抗炎症薬の非限定的な例としては、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、インドメタシン、ピロキシカム、メロキシカム、ナブメトンまたはニメスリド)、ステロイド性抗炎症薬(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾンまたはヒドロコルチゾン)、炎症性サイトカインの抗体またはアンタゴニスト(TNFα、IL-1、IL-6、IL-8、GM-CSFまたはPAFの抗体または受容体アンタゴニスト)、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL-10、IL-4、IL-11、IL-13またはTGFβ)などが挙げられる。
【0141】
用語の定義
本発明において、特に明記しない限り、本明細書で使用される科学技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有する。また、本明細書に記載されている実験手順は、対応する分野で広く使用されている日常的な手順である。同時に、本発明をよりよく理解するために、関連する用語の定義および説明を以下に示す。
【0142】
本明細書で使用される場合、「C1-C4アルキル」という用語は、1~4個の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖のアルカンから1個の水素原子を除去して得られる基を指し、その具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、イソプロピル、tert-ブチルまたはイソブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0144】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン化」という用語は、基または化合物の水素が1または複数のハロゲン原子で置換されていることを指し、過ハロゲン化および部分的なハロゲン化を含む。
【0145】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、アルキル-O-の様態で形成される基を指す。
【0146】
本明細書で使用される場合、「アルキルアミノ」という用語は、アルキル-NH-の様態で形成される基を指す。
【0147】
本明細書で使用される場合、「アルキルチオ」という用語は、アルキル-S-の様態で形成される基を指す。
【0148】
本明細書で使用される場合、「置換されている」という用語は、基上の1または複数の水素原子が1または複数の置換基で置換されていることを指し、「複数の置換基」は互いに同じであっても異なっていてもよい。例えば、「C2アルキルが置換されている」とは、C2アルキル上の1または複数の水素原子が、1または複数の置換基で置換されていることを指す。例えば、「ヒドロキシルが置換されている」、「チオールが置換されている」または「アミノが置換されている」はそれぞれ、ヒドロキシル上の水素原子、チオール上の水素原子またはアミノ上の1または複数の水素原子が1または複数の置換基で置換されていることを意味する。
【0149】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、(i)本発明で提供される化合物中に存在する酸性官能基(例えば、-COOH)および適切な無機または有機カチオン(塩基)によって形成される塩であって、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩など;アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など;その他の金属塩、例えば、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩など;無機アルカリ塩、例えば、アンモニウム塩など;有機アルカリ塩、例えば、tert-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩が含まれるが、これらに限定されない塩、および、(ii)本発明で提供される化合物の塩基性官能基(例えば、-NH2)および適切な無機または有機アニオン(酸)によって形成される塩であって、ハロゲン化水素酸塩、例えば、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩など;無機酸塩、例えば、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など;低級アルカンスルホン酸塩、例えば、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩など;アリールスルホン酸塩、例えば、ベンゼンスルホン酸塩、p-ベンゼンスルホン酸塩など;有機酸塩、例えば、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩など;アミノ酸塩、例えば、グリシン酸塩、トリメチルグリシン酸塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩などが含まれるが、これらに限定されない塩を指す。
【0150】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能なエステル」という用語は、本発明で提供される化合物中に存在する-COOHおよび適切なアルコールにより形成されるエステル、または本発明で提供される化合物中に存在する-OHおよび適切な酸(例えば、カルボン酸または酸素含有無機酸)により形成されるエステルを指す。適切なエステル基としては、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、アクリル酸塩、エチルスクシネート、ステアリル脂肪酸エステルまたはパルミチン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。酸または塩基の存在下で、エステルは加水分解反応を起こし、対応する酸またはアルコールを生成することができる。
【0151】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物が溶媒分子と会合することによって形成される物質を指す。溶媒は、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトニトリルなど)であってもよく、例えば、本発明の化合物は、エタノールとエタノール酸塩を形成してもよい。本発明の化合物はまた、水と水和物を形成してもよい。
【0152】
本明細書で使用される場合、「結晶体」という用語は、物質の結晶構造を指す。物質が結晶化する際には、様々な要因により、分子内または分子間の結合様式が変化し、その結果、格子空間における分子または原子の配置が異なり、異なる結晶構造を形成する。本発明の化合物は、1つの結晶構造で存在していてもよいし、複数の結晶構造で存在していてもよく、すなわち、「多形相」を有していてもよい。本発明の化合物は、異なる結晶体で存在してもよい。
【0153】
本明細書で使用される場合、「立体異性体」という用語は、立体配座異性体および立体配置異性体を含み、立体配置異性体は、主にシス-トランス異性体および光学異性体を含む。本発明の化合物は、立体異性体の形態で存在してもよく、したがって、可能なすべての立体異性体の形態、およびそれらの任意の組み合わせまたは任意の混合物、例えば、単一のエナンチオマー、単一のジアステレオマーまたはそれらの混合物を包含する。本発明の化合物がアルケン二重結合を有する場合、特に指定のない限り、シス異性体、トランス異性体およびそれらの任意の組み合わせを含む。
【0154】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、対象内で酸化、還元、加水分解などの反応を経て本発明の化合物に変換可能な物質を指す。プロドラッグ自体は、式(I)の化合物の生物学的活性(例えば、糖脂質代謝調節活性、抗炎症活性、抗酸化活性)を有していても有していなくてもよい。例えば、ヒドロキシルまたはカルボキシルを含む式(I)の化合物は、in vivoで加水分解されてヒドロキシル化合物またはカルボキシル化合物に変換されるエステルの形態で投与されてもよい。同様に、アミノを含む式(I)の化合物をアシル化、アルキル化またはリン酸化して、エイコサノイルアミノ、アラニルアミノまたはピバロイルオキシメチルアミノを有する化合物などの化合物を形成し、次いで、これを投与してもよい。プロドラッグの使用に関するさらなる情報は、Pro-drugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14, ACS Symposium Series (T Higuchi and W Stella)、およびBioreversible Carriers in Drug Design, Pergamon Press, 1987 (ed. EB Roche, American Pharmaceutical Association)を参照されたい。本発明によるプロドラッグのいくつかの例は、以下を含む。(i)式(I)の化合物がカルボン酸官能基(-COOH)を含む場合、そのエステルが含まれ、例えば、水素が(C1-C8)アルキルで置換されている。(ii)式(I)の化合物がアルコール官能基(-OH)を含む場合、そのエーテルが含まれ、例えば、水素が(C1-C6)アルカノイルオキシメチルで置換されている。(iii)式(I)の化合物が第1級または第2級アミノ官能基(-NH2または-NHR、ここでRはHではない)を含む場合、そのアミドが含まれ、例えば、1または2の水素原子が(C1-C10)アルカノイルで置換される。加えて、式(I)の特定の化合物は、それ自体が式(I)のその他の化合物のプロドラッグとして機能することができる。
【0155】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な担体または賦形剤」という用語は、対象および有効成分と薬学的および/または生理学的に適合する担体および/または賦形剤を指し、これは当技術分野でよく知られており(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences. Edited by Gennaro AR, 19th ed. Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1995を参照)、崩壊剤、結合剤、界面活性剤、滑剤、潤滑剤、pH調整剤、イオン強度増強剤、浸透圧維持剤、吸収遅延剤、希釈剤、酸化防止剤、着色剤、香料、保存料、味覚マスキング剤などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、崩壊剤の非限定的な例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、プレゼラチン化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムが挙げられる。結合剤の非限定的な例としては、微結晶性セルロース、ゼラチン、砂糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ガム、ポリビニルピロリドン、プレゼラチン化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロースならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。希釈剤の非限定的な例としては、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物など)、マンニトール、キシリトール、グルコース、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプンおよびリン酸水素カルシウム二水和物が挙げられる。界面活性剤の非限定的な例としては、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80が挙げられる。滑剤の非限定的な例としては、シリカおよびタルクが挙げられる。潤滑剤の非限定的な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物が挙げられる。pH調整剤の非限定的な例としては、リン酸緩衝液が挙げられるが、これに限定されない。イオン強度増強剤には、塩化ナトリウムが含まれるが、これに限定されない。浸透圧維持剤としては、砂糖、NaClなどが挙げられるが、これらに限定されない。吸収遅延剤としては、モノステアリン酸塩およびゼラチンが挙げられるが、これらに限定されない。保存料としては、各種抗菌剤および抗真菌剤、例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、対象における疾患、障害または症状の発生を予防または遅延させるために実施される方法を指す。本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、有益な臨床結果または所望の臨床結果を得るために実施される方法を指す。本発明の目的において、有益な臨床結果または所望の臨床結果には、検出可能または検出不可能である、症状を緩和すること、疾患の範囲を狭めること、疾患の状態を安定させること(すなわち、悪化しないこと)、疾患の進行を遅延または遅滞させること、疾患の状態を改善または緩和すること、および(部分的または完全に)症状を解消することが含まれるが、これらに限定されない。加えて、「治療」とは、予想される生存期間(治療を受けていない場合)と比較して、生存期間が延長されることを指す場合もある。
【0157】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、例えば、霊長類のほ乳動物、例えば、ヒトを指す。特定の実施形態において、対象(例えば、ヒト)は、代謝性疾患を有し、かつ/あるいは、対象は、代謝性疾患に関連する状態(例えば、(i)過体重、過剰な体脂肪および/または高い肝脂肪率、(ii)高い血中総コレステロール値、高い血中トリグリセリド値、高い血中低密度リポタンパク質値および/低いまたは血中高密度リポタンパク質値、(iii)高血糖値、インスリン抵抗性および/または耐糖能障害)を有する。
【0158】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の効果を得るため、または少なくとも部分的に得るために十分な量を指す。例えば、疾患(例えば、代謝性疾患または代謝性疾患に関連する状態)を予防するための有効量とは、疾患(例えば、代謝性疾患または代謝性疾患に関連する状態)の発生を予防する、停止させるまたは遅延させるのに十分な量を指し、疾患を治療するための有効量とは、既に疾患に罹患している患者において、疾患およびその合併症を治癒するまたは少なくとも部分的に予防するのに十分な量を指す。このような有効量を決定することは、完全に当業者の能力の範囲内である。例えば、治療用の有効量は、治療すべき疾患の重症度、患者自身の免疫系の全体的な状態、患者の一般的な状態(例えば、年齢、体重および性別)、薬剤の投与様態、同時に投与されるその他の治療などに依存する。
【0159】
本発明の有益な効果
多くの研究および反復のスクリーニングを経て、本出願のフェノキシカルボン酸化合物が得られた。この化合物は以下の技術的効果:(1)炎症シグナルおよび炎症反応を有意に抑制することができる;(2)抗酸化反応を有意に活性化し、抗酸化力を有意に高めることができる;(3)インスリン抵抗性を有意に改善し、血糖値を有意に低下させることができる;(4)体脂肪および血中脂質レベル(例えば、血中総コレステロール値)を有意に減少させることができる;(5)PPARα/γデュアルアゴニスト活性を有する;かつ、(6)安全性が良好である、のうちの少なくとも1つを達成することができる。したがって、本出願の化合物は、代謝性疾患(例えば、MS、NAFLDおよび/または糖尿病)の治療に使用可能であり、かつ、臨床的価値が高い。
【実施例】
【0160】
本発明を実施するための具体的なモデル
以下、本発明の実施形態を実施例と併せて詳細に説明するが、当業者であれば、以下の実施例は本発明を説明するためにのみ使用されるものであり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解する。
【0161】
特に明記されない限り、実施例に記載されている試験および方法は、基本的に、当技術分野でよく知られ、様々な文献に記載されている従来の方法に従って行われる。具体的な条件が実施例に示されていない場合は、従来の条件またはメーカーが推奨する条件に従って実施するものとする。メーカーの表示なしに使用されている試薬または器具は、すべて市販されている従来品である。当業者は、実施例が例示として本発明を説明するものであり、本発明が請求する保護の範囲を限定することを意図するものではないことを知っている。文脈で言及されているすべての刊行物およびその他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0162】
化合物の合成と構造的特性評価
機器および試薬
MSの測定は、Agilent(ESI)質量分析計(メーカー:Agilent、モデル:アジレント6120B)で行った。
【0163】
高分解能のマススペクトログラムは、PE SCLEX QSTARスペクトロメーターで記録した。
【0164】
水素核磁気スペクトルおよび炭素核磁気スペクトルは、Bruker AVIII-400スペクトロメーターで記録した。
【0165】
薄層クロマトグラフィー精製は、Yantai Jiangyou silica gel development Co.Ltd.製のGF254(0.4~0.5nm)シリカゲルプレートで行った。
【0166】
反応のモニタリングは、薄層クロマトグラフィー(TLC)で行った。使用した展開溶媒系は、ジクロロメタン-メタノール系、n-ヘキサン-酢酸エチル系および石油エーテル-酢酸エチル系を含むが、これらに限定されない。溶媒の体積比は化合物に応じて調整し、調整のために少量のトリエチルアミンを加えることができる。
【0167】
反応温度は、実施例中に特に指示がない限り、室温(20℃~30℃)とした。
【0168】
実施例で使用した試薬は、Acros Organics、Aldrich Chemical CompanyまたはTophiochem Ltd.から購入した。
【0169】
本明細書で使用されている略語は、以下の意味を有する。
AcCl:塩化アセチル、Ac2O:無水酢酸、DCM:ジクロロメタン、aq:水溶液、TBAI:ヨウ化テトラブチルアンモニウム、DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、EtOH:エタノール。
【0170】
合成例
合成例1:5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-1)の調製
【化18】
【0171】
ステップ1:5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸イソブチル(中間体1)の調製
化合物1-1(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノール)(780mg、5.0mmol)、5-クロロ-2,2-ジメチルペンタノエートイソブチル(1144mg、5.2mmol)、TBAI(36.9mg、0.1mmol)および炭酸カリウム(1380mg、10.0mmol)をDMF(30mL)に溶解し、90℃で一晩攪拌した。TLCモニタリングで連続的な変換の傾向が示されないとき、反応溶液を水に注ぎ、層状にした。水相を酢酸エチルで抽出した後、有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、ろ液を濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、化合物1-2(1.5g)を収率88%で得た。
【0172】
ステップ2:5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-1)の調製
化合物1-2(5-(4-クロロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸イソブチル)(1360mg、4.0mmol)、KOH(1120mg、20.0mmol)およびTBAI(36.9mg、0.1mmol)をEtOH(7mL)およびH2O(2mL)の混合溶媒に溶解し、加熱して120℃で還流させ、24時間反応させた。TLCモニタリングで反応が完了したことが示されたとき、水を加えて洗浄し、系を希塩酸で酸性化し、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、ろ液を濃縮した。抽出液をロータリーエバポレーションで乾燥させ、カラムクロマトグラフィーで精製し、目的物であるBJMU-1(1.1g)を得た。収率は96%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.07 (s, 1H), 6.62 (s, 1H), 3.90 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 2.31 (s, 3H), 2.15 (s, 3H), 1.88 - 1.65 (m, 4H), 1.25 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 185.83, 155.68, 133.80, 130.71, 126.06, 124.99, 113.64, 68.46, 42.06, 36.96, 25.21, 25.14, 20.19, 15.68.
【0173】
合成例2:5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-2)の調製
【化19】
【0174】
合成例2のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物2-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-2を合成し、2ステップの収率は66%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.25 (s, 1H), 6.64 (s, 1H), 3.90 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 2.33 (s, 3H), 2.15 (s, 3H), 1.91 - 1.58 (m, 4H), 1.25 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 184.38, 156.20, 135.57, 133.65, 126.29, 114.58, 113.47, 68.23, 41.94, 36.78, 25.04, 24.98, 22.87, 15.44
【0175】
合成例3:5-(4-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-3)の調製
【化20】
【0176】
合成例3のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物3-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-3を合成し、2ステップの収率は78%であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.78 (d, J = 9.8 Hz, 1H), δ 6.56 (d, J = 7.0 Hz, 1H), δ 3.89 (t, J = 6.0 Hz, 2H), δ 2.22 (s, 3H), δ 2.17 (s, 3H), δ 1.85 - 1.69 (m, 4H), δ 1.25 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 184.76, 155.12(d, J = 236.3 Hz), 152.72(d, J=2.15), 125.60(d, J = 7.57), 121.61(J = 18.4), 116.82(d, J= 23.74), 113.78(d, J = 5.43), 68.69, 41.94, 36.81, 25.12, 24.94, 22.83, 15.41. 19F NMR (376MHz, CDCl3), δ -129.00 (s, 1F)
【0177】
合成例4:5-(2,4-ジブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-109)の調製
【化21】
【0178】
合成例4のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物4-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-109を合成し、2ステップの収率は72%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.33 (s, 1H), 3.83 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.53 (s, 3H), 2.26 (s, 3H), 1.89 - 1.75 (m, 4H), 1.27 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 184.31, 153.96, 136.07, 133.23, 131.42, 121.11, 119.16, 72.66, 41.93, 36.69, 25.76, 24.96, 23.90, 16.29
【0179】
合成例5:5-(2-クロロ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-209)の調製
【化22】
【0180】
合成例5のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物5-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-209を合成し、2ステップの収率は58%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.98 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 6.90 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 3.90 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 2.36 (s, 3H), 2.29 (s, 3H), 1.90 - 1.82 (m, 4H), 1.30 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ 184.6, 153.5, 135.1, 130.1, 128.4, 128.2, 125.6, 72.6, 41.9, 36.7, 25.9, 24.9, 20.1, 16.3.
【0181】
合成例6:5-(3-フルオロ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-213)の調製
【化23】
【0182】
合成例6のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物6-1に置き換えたこと以外は、実施例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-213を合成し、2ステップの収率は76%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.90 - 6.85 (m, 1H), 6.59 (s, 1H), 4.01 (t, J = 5.6, 2H), 2.48 (s, 3H), 2.41 (s, 3H), 1.80 - 1.67 (m, 4H), 1.21 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ 182.28, 162.75, 157.90, 138.40, 115.43, 113.02, 111.63, 69.37, 42.41, 37.22, 25.19, 25.13, 24.43, 16.80.
【0183】
合成例7:5-(4-ブロモ-2,5-ジエチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-310)の調製
【化24】
【0184】
合成例7のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物7-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-310を合成し、2ステップの収率は56%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.28 (s, 1H), 6.68 (s, 1H), 3.95 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 2.65 (dq, J = 47.2, 7.5 Hz, 4H), 1.89 - 1.70 (m, 4H), 1.28 (s, 6H), 1.21 (dt, J = 14.9, 7.5 Hz, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 184.78, 156.11, 141.24, 132.49, 132.34, 114.15, 112.23, 68.12, 41.99, 36.86, 29.73, 25.08, 22.71, 14.50.
【0185】
合成例8:5-(4-ブロモ-2,3,5-トリメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-315)の調製
【化25】
【0186】
合成例8のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物8-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-315を合成し、2ステップの収率は68%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.59 (s, 1H), 3.89 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 2.38 (s, 3H), 2.37 (s, 3H), 2.18 (s, 3H), 1.87 - 1.69 (m, 4H), 1.25 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ 184.6, 155.5, 137.2, 135.5, 124.2, 119.0, 111.5, 68.5, 41.9, 36.8, 25.1, 25.0, 24.4, 20.4, 12.8.
【0187】
合成例9:5-(2-ブロモ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-404)の調製
【化26】
【0188】
合成例9のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物9-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-404を合成し、2ステップの収率は48%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.98 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 3.86 (t, J = 5.7 Hz, 2H), 2.36 (s, 3H), 2.27 (s, 3H), 1.91 - 1.57 (m, 4H), 1.27 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 184.84, 154.44, 137.09, 129.96, 129.37, 125.79, 120.24, 72.59, 42.01, 36.78, 25.85, 24.99, 23.08, 16.49.
【0189】
合成例10:5-(4-ブロモ-2,3,6-トリメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-409)の調製
【化27】
【0190】
合成例10のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物10-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-409を合成し、2ステップの収率を65%とした。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.23 (s, 1H), 3.67 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 2.33 (s, 3H), 2.22 (m, 6H), 1.79 - 1.78 (m, 4H), 1.27 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 183.86, 154.97, 134.85, 131.58, 131.44, 129.91, 119.61, 72.63, 41.91, 36.84, 25.87, 24.98, 19.75, 15.97, 13.82.
【0191】
合成例11:5-(4-ブロモ-2-ヨード-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-413)の調製
【化28】
【0192】
合成例11のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物11-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-413を合成し、2ステップの収率は58%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.31 (s, 1H), 4.08 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 2.39 (s, 3H), 2.31 (s, 3H), 1.82 - 1.71 (m, 4H), 1.21 (s, 6H). 13C NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 180.57, 153.80, 134.22, 133.83, 128.46, 119.83, 91.62, 70.78, 43.22, 37.23, 25.18, 24.30, 22.50, 16.04.
【0193】
合成例12:5-(4-ブロモ-2-メトキシ-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-412)の調製
【化29】
【0194】
合成例12のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物12-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-412を合成し、2ステップの収率は56%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 12.30 (s, 1H), 7.22 (s, 1H), 6.38 (s, 1H), 3.88 - 3.94 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.83 (s, 3H), 2.11 (s, 3H), 1.82-1.73 (m, 4H), 1.25 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 185.01, 157.10, 154.53, 133.92, 120.38, 101.08, 97.35, 68.42, 56.41, 41.97, 36.74, 25.03, 24.99, 15.14.
【0195】
合成例13:5-(4-ブロモ-3,6-ジメチル-2-ニトロフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-414)の調製
【化30】
【0196】
合成例13のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物13-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-414を合成し、2ステップの収率は68%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 7.44 (s, 1H), 3.87 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 2.25 (s, 6H), 1.76 - 1.63 (m, 4H), 1.22 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 184.8, 147.8, 147.4, 135.8, 132.2, 127.9, 119.3, 75.3, 41.9, 36.3, 25.6, 24.9, 17.7, 15.7.
【0197】
合成例14:5-(4-ブロモ-2-ヒドロキシ-3,6-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-415)の調製
【化31】
【0198】
合成例14のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物14-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-415を合成し、2ステップの収率を66%とした。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 11.04 (brs, 1H), 6.91 (s, 1H), 5.95 (brs, 1H), 3.83 (t, J = 5.9Hz, 2H), 2.28 (s, 3H), 2.22 (s, 3H), 1.83 - 1.73 (m, 4H), 1.27 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 183.4, 147.7, 143.4, 128.9, 124.9, 122.4, 119.9, 73.6, 41.9, 36.6, 26.1, 25.1, 15.7, 15.5.
【0199】
合成例15:5-(4-ブロモ-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-416)の調製
【化32】
【0200】
合成例15のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物15-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-416を合成し、2ステップの収率は57%であった。
1H NMR (400 Hz, CDCl3), δ: 6.34 (s, 1H), 3.90 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.34 (s, 3H), 2.14 (s, 3H), 1.72-1.81 (m, 4 H), 1.25 (s, 6H). 13C NMR (101 Hz, CDCl3), δ: 184.7, 156.7, 150.6, 134.8, 111.2, 106.1, 104.7, 68.5, 41.9, 36.8, 25.0, 24.9, 23.2, 9.1.
【0201】
合成例16:5-(4-ブロモ-2-(ヒドロキシメチル)-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-502)の調製
【化33】
【0202】
合成例16のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物16-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-502を合成し、2ステップの収率は72%であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.41 (s, 1H), 6.71 (s, 1H), 4.62 (s, 2H), 3.94 - 3.97 (m, 2H), 2.36 (s, 3H), 1.71 - 1.81 (m, 4H), 1.25 (s, 6H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 155.8, 138.0, 132.1, 128.6, 115.1, 113.6, 68.1, 61.0, 41.9, 36.7, 29.7, 25.1, 23.1.
【0203】
合成例17:5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルバレロニトリル(BJMU-309)の調製
【化34】
【0204】
合成例17のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物17-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物17-3を合成し、収率は80%であった。
【0205】
ステップ3:5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタンアミド(17-4)の調製
化合物17-3(1.64g、5.0mmol)をTHF(10mL)に溶解し、氷浴の状態で20分間攪拌した。塩化チオニル(1.08mL、14.8mmol)を反応溶液にゆっくりと滴下した。滴下が完了した後、DMF溶液(5d)を添加し、50℃に加熱し、2時間反応させた。反応終了後、反応溶液を0℃まで冷却し、激しく攪拌し、濃アンモニア(4mL)をゆっくりと添加して多量の白色固体を析出させ、これを吸引ろ過し、THFで洗浄し、乾燥させて、化合物17-4(1.38g)を収率84%で得た。
【0206】
ステップ4:5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルバレロニトリル(BJMU-309)の調製
化合物17-4(1.30g、4.0mmol)、Pd(OAc)2(89.6mg、0.4mmol)およびselectfluor(283.2mg、0.8mmol)を100mLのシュレンク反応フラスコに添加し、アルゴン置換を3回行い、アセトニトリル(20mL)を添加し、60℃で3時間攪拌した。TLCモニタリングでは連続的な変換の傾向は見られなかった。反応液をろ過し、減圧下で蒸発させて溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーで分離して目的物であるBJMU-309(0.93g)を収率83%で得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.27 (s, 1H), 6.68 (s, 1H), 4.39 - 3.74 (m, 2H), 2.36 (s, 3H), 2.17 (s, 3H), 2.08 - 1.94 (m, 2H), 1.87 - 1.68 (m, 2H), 1.41 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ = 173.21, 135.65, 133.67, 126.20, 124.86, 114.75, 113.47, 67.51, 37.76, 32.22, 26.67, 25.50, 22.89, 15.51.
【0207】
合成例18:5-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2-エチル-2-メチルペンタン酸(BJMU-401)の調製
【化35】
【0208】
合成例18のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物18-1に置き換え、かつ、合成例1のステップ1の5-クロロ-2,2-ジメチルペンタン酸イソブチルを5-クロロ-2-メチル-2-エチルペンタン酸イソブチルに置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-401を合成し、2ステップの収率は62%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d): δ 7.25 (s, 1H), 6.64 (s, 1H), 3.90 (td, J = 5.8, 2.2 Hz, 2H), 2.33 (s, 3H), 2.14 (s, 3H), 1.87 - 1.77 (m, 2H), 1.76 - 1.68 (m, 2H), 1.66 - 1.48 (m, 2H), 1.18 (s, 3H), 0.98 - 0.80 (t, J = 7.5 Hz, 3H). 13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d): δ 156.18, 135.55, 133.61, 126.23, 114.52, 113.40, 68.23, 45.82, 34.74, 31.61, 24.67, 22.86, 20.74, 15.43, 8.81.
【0209】
合成例19:5-(2,5-ジメチル-4-ニトロフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-110)の調製
【化36】
【0210】
合成例19のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物19-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-110を合成し、2ステップの収率は47%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 11.99 (s, 1H), 7.92 (s, 1H), 6.62 (s, 1H), 4.02 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 2.61 (s, 3H), 2.22 (s, 3H), 1.89 - 1.73 (m, 4H), 1.26 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, クロロホルム-d) δ 184.4, 160.6, 141.1, 134.6, 127.5, 125.5, 113.6, 68.5, 41.9, 36.5, 25.0, 24.8, 21.7, 15.6.
【0211】
合成例20:5-(4-ブロモ-2-エチル-5-メチルフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-410)の調製
【化37】
【0212】
合成例20のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物20-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載された方法と同様の方法で化合物BJMU-410を合成し、2ステップの収率は55%であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 12.14 (bs, 1H), 7.29 (s, 1H), 6.70 (s, 1H), 3.94 (t, J = 5.9 Hz, 2H), 2.61 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 2.38 (s, 3H), 1.75-1.89 (m, 4H), 1.29 (s, 6H), 1.21 (t, J = 7.5 Hz, 3H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 184.9, 155.9, 135.6, 132.3, 132.2, 114.9, 113.6, 68.2, 42.0, 36.8, 25.1, 25.0, 22.9, 22.7, 14.1.
【0213】
合成例21:5-(4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェノキシ)-2,2-ジメチルペンタン酸(BJMU-201)の調製
【化38】
【0214】
合成例21のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物21-1に置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-201を合成し、2ステップの収率を85%とした。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.06 (s, 1H), 6.57 (s, 1H), 4.02 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.86 (s, 3H), 3.83 (s, 3H), 1.94 - 1.81 (m, 2H), 1.74 (dd, J = 11.2, 5.0 Hz, 2H), 1.26 (s, 6H). 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ 184.19, 150.32, 148.51, 144.33, 117.20, 101.49, 100.75, 69.81, 57.14, 56.86, 41.94, 36.48, 24.98, 24.95.
【0215】
合成例22:4-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルブタン酸(BJMU-111)の調製
【化39】
【0216】
合成例22のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物22-1に置き換え、かつ、合成例1のステップ1の5-クロロ-2,2-ジメチルペンタン酸イソブチルを5-クロロ-2,2-ジメチルブチル酸イソブチルに置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-111を合成し、2ステップの収率は75%であった。
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 11.99 (s, 0.5 H), 7.21 (s, 1H), 6.65 (s, 1H), 3.99 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 2.33 (s, 3H), 2.13-2.10 (m, 5H), 1.30 (s, 6H). 13C NMR (101MHz, クロロホルム-d) δ 184.5, 156.0, 135.5, 133.6, 126.1, 114.6, 113.0, 64.6, 40.7, 39.0, 25.3, 22.9, 15.4.
【0217】
合成例23:4-(4-ブロモ-2,5-ジメチルフェノキシ)-2,2-ジメチルヘキサン酸(BJMU-403)の調製
【化40】
【0218】
合成例23のステップ1において、合成例1のステップ1の化合物1-1を化合物23-1に置き換え、かつ、合成例1のステップ1の5-クロロ-2,2-ジメチルペンタン酸イソブチルを5-クロロ-2,2-ジメチルヘキサン酸イソブチルに置き換えたこと以外は、合成例1のステップ1~ステップ2に記載した方法と同様の方法で化合物BJMU-403を合成し、2ステップの収率は45%であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm): 7.27 (s, 1H), 6.68 (s, 1H), 3.94 (t, J = 6.4 HZ, 2H), 2.36 (s, 3H), 2.16 (s, 3H), 1.76-1.84 (m, 2H), 1.46-1.67(m, 4H), 1.24 (s, 6H). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ (ppm): 184.6, 156.3, 135.6, 133.6, 126.3, 114.5, 113.5, 67.8, 42.1, 40.0, 29.7, 24.9, 22.8, 21.5, 15.4.
【0219】
生物活性試験
以下の試験例のin vitro試験に関わった細胞、試薬および器具は、以下の通りである。
【0220】
薬剤
合成例の調製により得られた化合物。対照薬:ゲムフィブロジル(Beijing Ouhe Technology Co.,Ltd.から購入)。
【0221】
細胞
RAW264.7マウスマクロファージ、ヒト大腸癌細胞SW480、ヒト肝癌細胞HepG2およびヒト肝細胞L02。いずれもATCCセルバンクより入手した。
【0222】
培地
10%ウシ胎児血清(FBS)を含むRPMI1640培地および10%ウシ胎児血清(FBS)を含むDMEM高グルコース培地。
【0223】
細胞培養
37℃、5%CO2、飽和湿度に維持された環境で、80%コンフルエントまで培養を行った後、0.25%トリプシン-EDTAで消化処理を行った。
【0224】
使用した主な試薬および機器
RIPA細胞溶解液、BCAタンパク質濃度測定キット(Beyotime Institute of Biotechnology,Jiangsu);フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、β-メルカプトエタノール、アクリルアミド(シグマ、米国);ECL(商標) Prime Western Blotting検出試薬(Bio-Rad、米国);グリシン、ラウリルスルホン酸ナトリウム(Amresco、米国);RPMI1640培地、DMEM高グルコース培地、トリプシン(Gibco、米国メリーランド州);ウシ胎児血清(GBO、ドイツ);一酸化窒素(NO)アッセイキット(Nanjing Jiancheng、中国);ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイキット(Beyotime Institute of Biotechnology、江蘇省);Tranzol試薬(TranzolトータルRNA抽出試薬、TransGen Biotech);5×All-In-One RT MasterMix逆転写キット(アブカム、米国);CPT1αウサギポリクローナル抗体(12252S、CST、米国)、p-GSK3β(Ser9)ウサギポリクローナル抗体(9323、CST、米国)、pIRS-1(Ser636/639)ウサギポリクローナル抗体(2388、CST、米国)、β-チューブリンマウスモノクローナル抗体(BE0025、EASYBIO、中国)。
【0225】
INC0246セルインキュベーター(Memmert、ドイツ);Gen5 synergy H1 Take3多機能マイクロプレートリーダー(BioTek、米国);蛍光リアルタイム定量PCR装置、タンパク質電気泳動システム(Bio-Rad、米国);低温冷却高速遠心機(エッペンドルフ、ドイツ);電気泳動装置および水平電気泳動槽(Beijing Junyi Dongfang Electrophoresis Equipment Co.,Ltd.、中国)。
【0226】
試験例1:化合物の細胞毒性の評価
本試験では、化合物の細胞毒性をSRB法で測定した。具体的な手順は以下の通りである。
(1)対数期の細胞を回収し、細胞懸濁液を約3×103/100μL培地の濃度に調整し、96ウェルプレートの中央部に細胞を添加し、端の穴に滅菌PBSを加え、5%CO2、37℃の条件で一晩、ルーチンの培養を行った。
(2)化合物を無血清培地で最終濃度10μMに調製し、96ウェルプレートの培地を除去し、PBSで洗浄し、調製した試験化合物を添加して24時間、ルーチンの通常の培養を行った。
(3)細胞の固定:化合物の作用終了後、プレートの各ウェルに50μLの4℃に予め冷やしたトリクロロ酢酸(TCA)溶液(30%(w/v))を添加し、細胞を固定した。TCA溶液の最終濃度は10%であった。5分間静置した後、プレートを4℃の冷蔵庫に移して1時間固定を行い、次いで、取り出して脱イオン水で5回洗浄し、室温で風乾させた。
(4)染色:96ウェルプレートを室温で風乾させた後、0.4%(w/v)SRB色素溶液(1%酢酸で調製)を各ウェルに70μLずつ添加し、30分間染色した後に色素溶液を捨て、1%(v/v)酢酸で4回リンスして未結合の色素を除去し、室温で風乾させた。
(5)測定:細胞タンパク質に結合した色素を溶解するために、非緩衝性のトリス塩基ライ(10mM、pH=10.5)を100μL使用し、水平振とう器で20分間振とうした。540nmの吸光度値をマイクロプレートリーダーで測定した。
(6)相対的な細胞生存度とは、陰性対照ウェルの細胞の生存度に対する、薬剤を作用させたサンプルウェルの細胞の生存度のパーセンテージを指す。この計算式は、相対的な細胞生存度=(Tx-C)/(T0-C)×100%であり、式中、T0は、薬剤を作用させずに培地に等量のDMSOを添加した陰性対照の平均吸光度(陰性対照)を表し、Txは、細胞を薬剤で処理し、固定し、染色した後に測定した細胞の平均吸光度を表し、Cは、固定され染色されたブランクウェルの平均吸光度を表す。
【0227】
L02ヒト正常肝細胞の試験結果を
図1に示した。その結果、正常肝細胞をBJMU-1、2、3、110、111、113、114、115、201、203、204、205、209、212、213、214、404、409、415、416または502で処理した後、30%未満の細胞生存度が阻害され(相対的な細胞生存度は70%超)、上記化合物は有意な細胞毒性を有さないことが示された。
【0228】
試験例2:細胞の炎症反応に対する化合物の調節効果の評価
本試験例では、一酸化窒素(NO)の生成量とNF-κB炎症シグナル経路の転写活性とを測定し、細胞の炎症反応に対する化合物の調節効果を評価した。
【0229】
2.1 NO生成量の測定
NOは、活性窒素種(RNS)であり、重要なガスシグナル分子である。マクロファージはアルギニンをNOに変換し、身体の炎症反応に関与している。そのため、薬剤のNO生成抑制活性の測定は、薬剤の抗炎症作用を評価する古典的な方法の一つである。対数増殖期のRAW264.7細胞を96ウェルプレートにウェルごとに1×104細胞/200μLの培地で播種した。接着後、培地を捨て、細胞に薬剤処理を施した。通常群(無血清培地)、LPSモデル群(1μg/mLのLPSを含む無血清培地)、LPS+薬剤群(1μg/mLのLPS、10μMのゲムフィブロジルまたは本出願の化合物を含む無血清培地)を設定し、各群に対して反復用に3ウェルを設定した。インキュベーター内で24時間培養した後、各ウェルの細胞上清を回収し、NO測定キット(Nanjing Jiancheng)の説明書に従ってアッセイを行った。波長540nmで各ウェルの吸光度値を読み取り、NO含有量を算出した。
【0230】
結果を
図2に示した。試験化合物1、2、3、109、111、401、403、413、415および502は、NOの生成を抑制することができた。一方、ゲムフィブロジル(BJMU)は、NO生成を抑制する活性を有さなかった。以上の結果から、本出願の化合物は有意な抗炎症活性を有することが示された。
【0231】
2.2 NF-κBルシフェラーゼレポーター遺伝子の転写活性の測定
NF-κBは、最も重要な炎症性シグナル経路である。NF-κBで駆動されるルシフェラーゼレポーター遺伝子が安定的に導入されたSW480ヒト大腸癌細胞を使用して、NF-κB転写活性に対する本出願の化合物および対照薬であるゲムフィブロジルの効果を測定した。測定は、以下の手順を含む。
(1)NF-κB Lucが安定的に導入された細胞を指数関数的に増殖させ、24ウェルプレートに1×105/2000μLの培地濃度で播種し、24時間培養し、培地を捨て、無血清培地に50μMで配合した試験化合物またはゲムフィブロジルを24ウェルプレートに添加し、培養を6時間続けた。200μLのPBSで1回洗浄した後、100μLのレポーター遺伝子細胞溶解バッファーを添加し、細胞を氷上で10分間溶解し、細胞溶解液をピペットで回収した。
(2)8000rpm、4℃で10分間の遠心分離を行った後、上清をピペットで回収して蛍光測定を行った。
(3)化学発光分析装置の測定ギャップ時間を2秒、測定時間を10秒に設定した。自動サンプルインジェクションを使用し、各ウェルにルシフェラーゼアッセイ試薬を50μLずつ添加した。ブランク対照として、レポーター遺伝子細胞溶解バッファーを使用した。
(4)遠心分離後、上清を採取し、BCA法によりタンパク質濃度を測定してレポーター遺伝子の結果を正規化した。
【0232】
結果を
図3に示した。試験化合物1、2、209、309、315、404および415は、NF-κBレポーター遺伝子の活性を有意に阻害することができた。一方、ゲムフィブロジルは、NF-κBレポーター遺伝子の活性を阻害することができなかった。以上の結果から、本出願の化合物は、ゲムフィブロジルが有さない明らかな抗炎症活性を有することがさらに示された。
【0233】
長期にわたる慢性炎症がMS、NAFLDおよび糖尿病の進行における重要なイベントであり、NF-κBシグナルの継続的な活性化がその典型的な特徴であることは当技術分野で知られている。したがって、NF-κBシグナルを阻害することは、前述の疾患の進行および合併症の制御のための重要な手段である(参照:参考文献[1]~[4])。したがって、上記の試験結果によって、本出願の化合物が、MS、NAFLDおよび糖尿病ならびにそれらの合併症の予防および/または治療のために使用可能であることが示された。
【0234】
試験例3:細胞の酸化ストレス応答シグナルに対する化合物の調節効果の評価
本試験例では、抗酸化応答配列(ARE)で駆動されるルシフェラーゼレポーター遺伝子が安定的に導入されたヒト肝癌細胞HepG2におけるルシフェラーゼ活性を測定して、転写因子Nrf2の転写活性および細胞酸化ストレス応答シグナルに対する本出願の化合物およびゲムフィブロジルの調節効果を評価した。レポーター遺伝子アッセイの操作プロセスは、試験例2.2のものと同一であった。
【0235】
結果を
図4に示した。試験化合物1、2、3、401、403、404、409、412、415、416および502は,AREレポーター遺伝子活性を有意に活性化することができた。一方、ゲムフィブロジルはAREをはっきりとは活性化しなかった。以上の結果から、本出願の化合物は、抗酸化応答配列を活性化して、細胞の抗酸化遺伝子および解毒代謝の遺伝子の発現を誘導することにより、抗酸化効果を発揮することができ、有意な抗酸化活性を有することが示された。
【0236】
酸化ストレスが、MS、NAFLDおよび糖尿病の発症および進行における最も重要な病原因子の一つであり、抗酸化剤およびNrf2を介した細胞性抗酸化応答の活性化が、常にその予防および治療のための重要な戦略であることが当技術分野で知られていた(参照:参考文献[5]~[9])。したがって、上記の試験結果によって、本出願の化合物が、MS、NAFLDおよび糖尿病ならびにそれらの合併症の予防および/または治療のために使用可能であることが示された。
【0237】
試験例4:細胞内糖脂質代謝シグナル伝達経路および遺伝子発現に対する化合物の制御効果の評価
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、糖脂質代謝を制御する重要な核内受容体で、α、β/δおよびγの3つのサブタイプがある。ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1α(PGC-1α)は、その補助的な転写活性化因子である。アシル-CoAオキシダーゼ1(ACOX1)は、脂肪酸β酸化の最初の律速酵素である。脂肪酸結合タンパク質1(FABP1)は、肝臓で高発現しており、脂肪酸、ヘムおよびその他の分子と結合して、それらの毒性および損傷を軽減することができる。これらの遺伝子の発現レベルを上方制御することは、身体の代謝を改善するのに役立ち、それらのアゴニストは、抗メタボリック薬剤の重要なクラスである。本出願の化合物(1μM)および対照薬のゲムフィブロジル(1μM)をヒト肝癌細胞HepG2と6時間インキュベートした後、リアルタイム蛍光定量PCR法を使用して、細胞内の関連遺伝子のmRNAの相対的な発現量を測定した。
【0238】
プライマー配列
PPARα
上流:CATTACGGAGTCCACGCGT(配列番号1)
下流:ACCAGCTTGAGTCGAATCGTT(配列番号2)
PPARγ
上流:GTACTGTCGGTTTCAGAAATGCC(配列番号3)
下流:ATCTCCGCCAACAGCTTCTCCT(配列番号4)
PGC1α
上流:GCTACGAGGAATATCAGCACGA(配列番号5)
下流:TCACACGGCGCTCTTCAA(配列番号6)
ACOX1
上流:CTGTAGGACCATTGTCTCG(配列番号7)
下流:TTACACTCTGCACTCCAAAG(配列番号8)
FABP1
上流:CACCCCCTTGATATCCTTCC(配列番号9)
下流:TTCTCCGGCAAGTACCAACT(配列番号10)
【0239】
プライマーを合成した会社は、Suzhou Hongxun Biotechnology Co.,Ltd.である。組織からのトータルRNAの抽出にはTranzol試薬(TranzolトータルRNA抽出試薬、TransGen Biotech)を使用した。5×All-In-One RT MasterMix逆転写キット(アブカム、米国)およびリアルタイム定量PCR Master Mix(Aidlab Biotechnologies Co.,Ltd)を使用した。qPCRにはBio-Rad CFX Connect(商標)リアルタイムPCR検出システムを使用し、データ解析には2-△△CT法を使用した。正常対照群のmRNAの発現量を1とし、投与群のmRNAの相対的な発現量を算出することで、有効化合物がPPAR経路に影響を与え、それによって脂質代謝をさらに調節しているかどうかを確認した。
【0240】
試験結果を
図5に示す。PPARα mRNA発現の測定結果を
図5Aに示した。試験化合物1、2、3、404、409および416は、有意差をもって1.5倍以上のPPARα mRNA発現を有意に誘導し、ゲムフィブロジルよりも優れていた。特に、ゲムフィブロジルはPPARαを有意に活性化するために高用量(50~100μM)を必要とすることが当技術分野では知られていたが、上記の試験化合物はわずか1μMの用量であった。
【0241】
PPARγmRNA発現の試験結果を
図5Bに示した。試験化合物2、3、309、415および502は、PPARγ mRNAの発現を有意に誘導した。
【0242】
PGC1α mRNA発現の試験結果を
図5Cに示した。試験化合物1、2、3、409、412、415および502は、PGC1α mRNAの発現を有意に誘導した。一方、ゲムフィブロジルはPGC1αの発現を活性化することができなかった。
【0243】
ACOX1 mRNA発現の試験結果を
図5Dに示した。試験化合物1、2、3、109、404、409および502は、
ACOX1 mRNA発現を有意に誘導した。一方、ゲムフィブロジルは、ACOX1の発現を活性化することができなかった。
【0244】
FABP1 mRNA発現の試験結果を
図5Eに示した。試験化合物1、2、3、112、404および409は、FABP1の発現を有意に誘導した。一方、ゲムフィブロジルはFABP1の発現を活性化することができなかった。
【0245】
以上の結果から、本発明の化合物は、PPARα/γ、PGC1α、ACOX1およびFABP1の発現を上方制御することができ、かつ、ゲムフィブロジルが有していないPPARα/γデュアルアゴニスト活性および糖脂質代謝調節活性を有し、その結果、特に糖脂質代謝調節に適しており、ゲムフィブロジルよりも優れた脂質低下作用を有し得ることが示された。
【0246】
加えて、本発明者らはまた、複数の糖脂質代謝関連遺伝子、例えば、MTTP、UCP1/2、Elovl3およびCD36の発現量に対する化合物の効果についても試験した。その結果、上述の化合物はこれらの遺伝子の発現を有意に調節することができ、本発明の化合物が優れた脂質代謝調節活性を有することがさらに確認された。
【0247】
試験例5:糖脂質代謝関連タンパク質レベルおよび脂肪酸酸化律速酵素CPT1αタンパク質レベルに対する化合物の影響
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT1α)は、脂肪酸酸化の律速酵素である。身体または組織がエネルギー不足に陥った際に、CPT1αは、脂肪酸がミトコンドリアに入ってβ酸化されるのを触媒すると同時に、脂肪酸によるインスリン抵抗性および炎症の制御にも関与している。プロテインキナーゼB/グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β(AKT/GSK3β)シグナル経路およびインスリン受容体基質1(IRS-1)は、インスリンシグナルに応答して糖代謝を制御する重要なシグナル経路である。したがって、CPT1αタンパク質レベルと、AKT、GSK3βおよびIRS-1タンパク質のリン酸化レベルとに対する化合物の効果を測定することにより、糖脂質代謝に対する化合物の調節効果を評価することができる。
【0248】
ヒト肝癌細胞HepG2を1μMの本出願の化合物または対照薬と24時間インキュベートした後、細胞内のCPT1αタンパク質レベルおよびAKT、GSK3β、IRS-1のリン酸化タンパク質レベルを、ウエスタンブロットにより測定した。Image J15.0.1を使用してグレースケールスキャンを行った後、内部コントロールとしてβ-チューブリンタンパク質レベルを使用して正規化を行い、定量分析結果を
図6に示した。試験化合物1、2、213、404、409、415および502は、いずれもCPT1αタンパク質レベルを有意に増加させ(
図6A)、試験化合物2、109、213、404、409および411は、いずれもGSK3βのリン酸化レベルを有意に増加させ(
図6B)、試験化合物2、3、109、209、213、309、404、409、411、412、415、416および502は、いずれもIRS-1のリン酸化レベルを有意に増加させた(
図6C)。以上の結果から、上記化合物がインスリンシグナルおよび脂肪酸酸化を調節することにより、肝臓の糖脂質代謝を改善する可能性が示された。
【0249】
加えて、本発明者らはまた、多くの糖脂質代謝関連タンパク質、例えば、Akt、HSL、ACCおよびPKA基質のリン酸化レベルに対する化合物の効果も試験した。その結果、上記の化合物はこれらのタンパク質のリン酸化レベルを有意に調節することができ、本発明の化合物が脂質代謝を調節する優れた活性を有することがさらに確認された。
【0250】
試験例6:糖尿病マウスに対する化合物の治療効果の評価
6.1 糖尿病モデル
動物モデル
C57BL/KsJ-leprdb/leprdb糖尿病(db/db)マウスは、2型糖尿病の動物モデルとして広く使用されており、レプチン受容体(Leptin receptor:Lepr)の自然変異により極度の肥満、多食症、糖尿病および多尿症を引き起こす。本試験では、db/dbマウス(the Department of Animals,Health Science Center of Peking Universityより購入)を選択した。
【0251】
試験では、28匹のdb/dbマウスを使用し、血糖値が約7~13mmol/Lの動物を選択した。それらの血糖値に応じて、対照群、BJMU群(ゲムフィブロジル)、BJMU-2群および陽性対照群(ピオグリタゾン)に無作為に分け、各群7匹ずつとした。投与量10mL/kgの胃内投与を採用した。対照群には1% Tween80-生理食塩水を投与し、BJMU群には50mg/kgの用量、BJMU-2群には50mg/kgの用量、陽性対照群にはピオグリタゾンを6mg/kgの用量で投与した。投与を1日1回、28日連続で行った。経口投与の日から、毎日、動物の生理的変化を観察した。3日ごとに血糖値を測定し(ロシュ社製血糖値測定器)、血糖値の差(Δ)を以下の式:血糖値の差(Δ)=当日の血糖値-初期の血糖値(初期の血糖値差はゼロ)により算出した。
【0252】
各試験群のマウスについて、血液を採取し、血清を分離し、肝臓を採取して剖検後に湿潤重量を測定した。肝臓組織を採取して病理検査のために固定し、H.E.染色およびオイルレッドO染色(Wuhan Zishan Biotechnology Co.,Ltd.)を行い、マウスの肝臓病変を光学顕微鏡で観察した。通常の血液試験を、Animal Laboratory Department,Health Science Center of Peking Universityで行い、以下の指標:白血球数(WBC)、赤血球数(RBC)、リンパ球数(LY)、血小板(PLT)などを測定した。血液の生化学試験を、Laboratory Medicine,Third Hospital,Peking Universityで行い、以下の指標:トリグリセリド(TG)、総コレステロール(T-CHO)、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)などを測定した。
【0253】
血糖値の測定結果を
図7に示す。試験化合物BJMU-2は、db/dbマウスの血糖値を有意に低下させることができ、既知の血糖降下剤であるピオグリタゾンよりもさらに優れていた。一方、ゲムフィブロジルは、はっきりとは血糖降下作用を示さなかった。この結果から、本発明の化合物が有意な血糖降下作用を有することが示された。
【0254】
血中脂質の指標の測定結果を以下の表に示す。試験化合物BJMU-2は、ゲムフィブロジルよりも優れたトリグリセリド低下活性を有していた。特に、BJMU-2は、db/dbマウスの血中の総コレステロール量を低下させることができた。一方、ゲムフィブロジルは、血中の総コレステロールを低下させる活性を示さなかった。以上の結果から、BJMU-2は血中脂質の低減効果がより顕著であることが示された。
【0255】
【0256】
肝組織の病理試験結果を
図8A~8Bに示した。その結果、試験化合物BJMU-2はモデルマウスの肝臓の脂肪量を有意に減少させることが示された。一方、ゲムフィブロジルもピオグリタゾンも上記活性を示さなかった。以上の結果から、BJMU-2は、血中脂質の低減に有意な活性を有するだけでなく、肝脂肪の低減にも有意な活性を有することが示された。
【0257】
加えて、マウスの肝機能および腎機能の指標の測定データ(表2)から、試験化合物は、50mg/kgの用量で1ヶ月間、胃内に連続投与しても、肝毒性および腎毒性を引き起こさないことが示された。この結果から、本発明の化合物はin vivoでの安全性が良好であることが示された。
【0258】
【0259】
6.2 糖尿病+非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデル
動物モデル
各db/dbマウスに40%CCl4溶液(Beijing Tongguang Fine Chemical Co.,Ltd.)を0.72mg/100gの用量で4週間連続して皮下注射し、糖尿病+NASHモデルを得た。
【0260】
試験では、上記モデルマウスの35匹を使用し、血糖値が約7~13mmol/Lの動物を選択した。それらの血糖値に応じて、ブランク対照群、モデル群、BJMU群(ゲムフィブロジル)、BJMU-1群、BJMU-2群およびBJMU-3群に無作為に分け、各群7匹ずつとした(モデル群および各投与群は、動物モデル法に基づいてモデル化した)。投与量10mL/kgの胃内投与を採用した。ブランク対照群およびモデル群には1% Tween80-生理食塩水を投与し、BJMU群には50mg/kgの用量、BJMU-1群には50mg/kgの用量、BJMU-2群には50mg/kgの用量、BJMU-3群には50mg/kgの用量で投与した。投与は1日1回、28日連続で行った。経口投与の日から、毎日、動物の生理的変化を観察した。血糖値は1週間ごとに測定し、血糖値の差(Δ)を以下の式:血糖値の差(Δ)=当日の血糖値-初期の血糖値(初期の血糖値差はゼロ)により算出した。投与後、動物を屠殺し、内臓および精巣上体脂肪を試験のために採取した。各群のマウスから白色精巣上体脂肪を採取し、重量を測定した。対応する体重に応じて、白色脂肪の重量比を算出した。マウスを屠殺する前に、各群の3匹のマウスを無作為に選択し、体脂肪率を測定するために磁気共鳴画像(MRI)(EchoMRI-700体脂肪計)に供した。
【0261】
各試験群のマウスについて、血液を採取し、血清を分離し、肝臓を採取して剖検後に湿潤重量を測定した。肝臓組織を採取して病理検査のために固定し、H.E.染色およびオイルレッドO染色(Wuhan Zishan Biotechnology Co.,Ltd.)を行い、マウスの肝臓病変を光学顕微鏡で観察した。通常の血液試験を、Animal Laboratory Department,Health Science Center of Peking Universityで行い、以下の指標:白血球数(WBC)、赤血球数(RBC)、リンパ球数(LY)、血小板(PLT)などを測定した。血液の生化学試験を、Laboratory Medicine,Third Hospital,Peking Universityで行い、以下の指標:トリグリセリド(TG)、総コレステロール(T-CHO)、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-C)、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)などを測定した。
【0262】
血糖値の測定結果を
図9に示した。試験化合物BJMU-1、BJMU-2およびBJMU-3は、糖尿病+NASHモデルマウスの血糖値を有意に低下させることができ、投与14日後には血糖値がほぼ正常値に戻った。一方、ゲムフィブロジルは有意な血糖降下作用を示さなかった。この結果から、本発明の化合物は、有意な血糖降下作用を有することが示された。
【0263】
体脂肪の測定結果を
図10に示した。試験化合物BJMU-1、BJMU-2およびBJMU-3は、マウスの体脂肪量を有意に減少させることができた。一方、ゲムフィブロジルは、体脂肪を減少させる活性を示さなかった。以上の結果から、本発明の化合物は、体脂肪を減少させる有意な活性を有することが示された。
【0264】
白色脂肪の重量比の測定結果を
図11に示した。試験化合物BJMU-2およびBJMU-3は、マウス精巣上体脂肪の重量比を有意に減少させることができ、ゲムフィブロジルよりも優れていた。以上の結果から、本発明の化合物は、体脂肪を減少させる有意な活性を有することがさらに示された。
【0265】
血中脂質の指標の測定結果を以下の表に示した。試験化合物BJMU-1、BJMU-2およびBJMU-3は、ゲムフィブロジルよりも優れたトリグリセリド低下活性を有していた。特に、BJMU-2は、DB/DBマウスの血中の総コレステロール量を低下させることができた。一方、ゲムフィブロジルは、血中の総コレステロールを低下させる活性を示さなかった。以上の結果から、本発明の化合物は、より顕著な血中脂質の低減効果を有することが示された。
【0266】
【0267】
肝組織の病理試験結果を
図12A~12Bに示した。その結果、試験化合物BJMU-1、BJMU-2およびBJMU-3は、モデルマウスの肝臓の脂肪量を有意に減少させることができたことが示された。一方、ゲムフィブロジルは、上記活性を示さなかった。以上の結果から、本発明の化合物は、血中脂肪の低減に有意な活性を有するだけでなく、体脂肪の低減にも有意な活性を有することが示された。
【0268】
加えて、マウスの肝機能および腎機能の指標の測定データ(表4)から、試験化合物は50mg/kgの用量で1ヶ月間胃内に連続投与しても、肝毒性および腎毒性を引き起こさないことが示された。この結果から、本発明の化合物の生体内安全性が良好であることが示された。
【0269】
【0270】
以上の結果から、試験化合物BJMU-1、BJMU-2およびBJMU-3は、血糖値および血中脂質濃度を低下させ、体脂肪および肝脂肪量を減少させることが示された。特に、BJMU-2は、肝臓で代謝されて代謝物BJMU-415および502を生成することができた。これら2つの化合物は、細胞レベルの実験でBJMU-2に劣らない、あるいはそれ以上の活性を有していたため、BJMU-415および502は、少なくともBJMU-2の上述の優れたin vivo活性を有すると合理的に予想することができた。
【0271】
本発明の具体的な実施形態を詳細に説明してきたが、当業者であれば、これまでに開示されたすべての教示に従って、それらの詳細に様々な改変および置換を加えることができ、これらの変更はすべて本発明の保護範囲内であることを理解するであろう。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって与えられる。
【0272】
参考文献:
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