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  • 特許-ヒーター装置及び車両用撮像装置 図1
  • 特許-ヒーター装置及び車両用撮像装置 図2
  • 特許-ヒーター装置及び車両用撮像装置 図3
  • 特許-ヒーター装置及び車両用撮像装置 図4
  • 特許-ヒーター装置及び車両用撮像装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ヒーター装置及び車両用撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20240415BHJP
   H05B 3/86 20060101ALI20240415BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20240415BHJP
   B60S 1/02 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H05B3/10 A
H05B3/86
H05B3/00 310D
B60S1/02 400
B60S1/02 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021537287
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2020029429
(87)【国際公開番号】W WO2021024939
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2019142991
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220033
【氏名又は名称】東京コスモス電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 真志
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 拓也
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特表平1-503824(JP,A)
【文献】特開2017-185896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0147360(US,A1)
【文献】特開2017-147031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
H05B 3/86
H05B 3/00
B60S 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明部材の一面に貼着されるシート状のヒーター装置であって、
透明基板と、
前記透明基板上に形成された第1及び第2の電源供給端子と、
前記透明基板上に形成され、一端が前記第1の電源供給端子に接続され、他端が前記第2の電源供給端子に電気的に接続されており、所定の加熱配線パターンを有する、電熱線と、
前記電熱線の温度を検知し、前記電熱線が所定温度以上となったときに前記電熱線の電流を遮断又は低下させるサーミスタと、
を備え、
前記電熱線は、前記透明基板上の加熱対象領域に配索された第1線路と、前記第1及び第2の電源供給端子に接続され、前記第1線路よりも幅広の第2線路と、を有し、さらに、前記第2線路には、断線領域が形成され、
前記サーミスタは、前記断線領域を架け渡すように接続されており、
前記第1線路の一部が前記断線領域に入り込んでいる、
ヒーター装置。
【請求項2】
前記サーミスタと、前記断線領域に入り込んでいる前記第1線路は、少なくとも一部が重なっている、
請求項1に記載のヒーター装置。
【請求項3】
前記断線領域に入り込んでいる前記第1線路の一部は、複数回折り返した形状となっている、
請求項1に記載のヒーター装置。
【請求項4】
請求項1に記載のヒーター装置と、
前記ヒーター装置を透過した撮像光を受光して撮像画像を得る撮像装置と、
を具備する車両用撮像装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の電源供給端子、前記サーミスタ、並びに、前記第2線路は、前記撮像装置による撮像画像に映り込まない位置に形成されている、
請求項4に記載の車両用撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒーター装置及び車両用撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の窓ガラス等に取り付けられ、当該窓ガラス等の取り付け対象物を加熱するヒーター装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この種のヒーター装置は、例えば、窓ガラス越しに車外を監視する車両用撮像装置や車載レーダーにおける、監視領域の窓ガラスの霜取りや曇り止めを行う装置として使用される。
【0004】
特許文献1には、車両のフロントガラスに直接貼り付けられて、フロントガラスを加熱するシート状のヒーター装置が記載されている。撮像装置は、フロントガラス及びヒーター装置越しに車外からの光を受光して、車両の前方画像を撮像する。この種のヒーター装置は、例えばステッカーヒーターと呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-147031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際上、ステッカーヒーターにおいては、他のヒーター装置と同様に、何等かの原因で加熱手段(電熱線)が異常過熱した場合に、加熱手段の加熱動作を停止させる安全装置が組み込まれる。この安全装置としては、温度ヒューズやサーミスタなどが用いられる。
【0007】
しかしながら、ステッカーヒーターにおいては、撮像装置の視界内に加熱手段としての電熱線があるので、電熱線に対応する位置に温度ヒューズやサーミスタを配置した場合、撮像画像に温度ヒューズやサーミスタが映り込んでしまうといった不都合が生じる。因みに、電熱線は十分に細くすることにより撮像画像にほとんど映り込まないが、実際上、温度ヒューズやサーミスタは電熱線ほど細くすることは不可能なので、撮像画像に映り込む。撮像装置によって撮像された画像は、車両の走行制御等に用いられることから、温度ヒューズやサーミスタなどの映り込みの無い、可能な限り高品質な画像である必要がある。
【0008】
従来、ステッカーヒーターにおいて、サーミスタやその接続部分の線路が撮像画像に映り込まずに、かつ、高い信頼度で異常過熱を防止できる構成については、十分な検討がなされていなかった。
【0009】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、サーミスタやその接続部分の線路が撮像画像に映り込まずに、かつ、高い信頼度で異常過熱を防止できるヒーター装置及び車両用撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のヒーター装置の一つの態様は、
透明部材の一面に貼着されるシート状のヒーター装置であって、
透明基板と、
前記透明基板上に形成された第1及び第2の電源供給端子と、
前記透明基板上に形成され、一端が前記第1の電源供給端子に接続され、他端が前記第2の電源供給端子に電気的に接続されており、所定の加熱配線パターンを有する、電熱線と、
前記電熱線の温度を検知し、前記電熱線が所定温度以上となったときに前記電熱線の電流を遮断又は低下させるサーミスタと、
を備え、
前記電熱線は、前記透明基板上の加熱対象領域に配索された第1線路と、前記第1及び第2の電源供給端子に接続され、前記第1線路よりも幅広の第2線路と、を有し、さらに、前記第2線路には、断線領域が形成され、
前記サーミスタは、前記断線領域を架け渡すように接続されており、
前記第1線路の一部が前記断線領域に入り込んでいる。
【0011】
本開示の車両用撮像装置の一つの態様は、
前記ヒーター装置と、
前記ヒーター装置を透過した撮像光を受光して撮像画像を得る撮像装置と、
を具備する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、サーミスタやその接続部分が撮像画像に映り込まずに、かつ、高い信頼度で異常過熱を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態のヒーター装置を示す平面図
図2】サーミスタを接続する前のヒーター装置の平面図
図3図1のA-A’断面図
図4】ヒーター装置の取り付け状態の一例を示す略線的断面図
図5】断線領域に入り込む第1線路の一部の形状の他の例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態のヒーター装置の構成を示す平面図である。ヒーター装置100は、透明基板101と、電源供給端子111、112と、電熱線120と、サーミスタ130と、を有する。電源供給端子111、112、電熱線120及びサーミスタ130は、透明基板101上に形成されている。
【0016】
透明基板101は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。透明基板101としては、できるだけ透明度が高く、かつ、車両のガラス面の形状に追従できるような可撓性を有する基板が用いられる。
【0017】
電源供給端子111、112及び電熱線120は、例えば銅箔である。電源供給端子111、112には図示しない電源供給ラインが接続され、電源供給端子111、112はこの電源供給ラインからの電源を電熱線120に供給する。電源供給端子111、112及び電熱線120は、接着剤(図示せず)によって透明基板101の第1の面に接着されている。電熱線120は、例えばエッチング処理を行うことで形成される。
【0018】
サーミスタ130は、電熱線120の温度を検知し、電熱線120が所定温度以上となったときに電熱線120の電流を遮断又は低下させる。本実施の形態の場合、サーミスタ130としてPTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタが用いられている。ただし、サーミスタ130はPTCサーミスタに限定されるものではない。
【0019】
次に、図2を用いて、電熱線120の配線パターンについて説明する。図2は、サーミスタ130を接続する前のヒーター装置の平面図である。
【0020】
電熱線120は、一端が第1の電源供給端子111に、他端が第2の電源供給端子112に電気的に接続されているとともに、所定の加熱配線パターンを有する。
【0021】
また、電熱線120は、透明基板101上の加熱対象領域に配索された第1線路121と、第1及び第2の電源供給端子111、112に接続され、第1線路121よりも幅広の第2線路122と、を有する。
【0022】
ここで、第2線路122は、幅広に形成されているので、電源供給端子111、112及びサーミスタ130(図1)を信頼性良く接続できる。第1線路121は、第2線路122よりも細いので、第2線路122よりも抵抗値が大きく発熱量も多い。よって、第1線路121は、加熱したい領域に形成されている。
【0023】
実際上、第1線路121は、撮像画像上で目立たない程度に十分に細く形成されている。一方、第2線路122は、撮像画像の撮像領域から外れるように、透明基板101の縁部に形成されている。特に、本実施の形態では、透明基板101に退避領域101aを形成し、当該退避領域101aに電源供給端子111、112及びこれに繋がる第2線路122の一部を配置したことにより、これらが撮像画像への映り込むことを確実に抑制できるようになっている。
【0024】
さらに、第2線路122には、断線領域122aが形成されている。断線領域122aには、第1線路121の一部121aが入り込んでいる。実際上、第1線路121の一部121aは、第1線路121を断線領域122aの方向に突出するように折り曲げた凸部である。
【0025】
そして、本実施の形態のヒーター装置100は、図1から分かるように、断線領域122aを架け渡すように第2線路122にサーミスタ130が電気的に接続される。この状態において、サーミスタ130と、断線領域122aに入り込んでいる第1線路121の一部121aは透明基板101の厚さ方向で重なる。換言すれば、断線領域122aとは、サーミスタ130が取り付けられる第2線路122の2接続部分を結ぶ領域である。
【0026】
これにより、サーミスタ130は、第1線路121の極近傍で第1線路121の温度を検知できるので、高い信頼度で第1線路121の異常過熱を防止できるようになる。
【0027】
ここで、サーミスタ130を取り付けるためにはどうしてもサーミスタ130の取り付け部分付近の線路幅をある程度広くしなければならない。また、第1線路121は、撮像装置の視野に形成されているので、その温度を検知するためにはサーミスタを撮像装置の視野内に配置しなければならず、そのようにするとサーミスタやその取り付け部分の幅広の線路が撮像画像に映り込んでしまうと言った問題があった。
【0028】
本実施の形態の構成によれば、サーミスタ130及びその取り付け部分の幅広の第2線路122を撮像画像に映り込まない透明基板101の縁部に配置したままで、第1線路121の温度を第1線路121の極近傍で検知できるようになる。
【0029】
図3は、図1のA-A’断面図である。ヒーター装置100は、透明基板101の第1の面側に電熱線120が形成され、さらに電熱線120を覆うように透明な粘着層141が形成される。
【0030】
図4は、ヒーター装置100の取り付け状態の一例を示す略線的断面図である。図4は、車両のフロントガラス1の上部領域を表している。なお、フロントガラス1は、水平方向に対して約20度~約45度傾斜するように延在している。
【0031】
ヒーター装置100は、粘着層141(図3)によってフロントガラス1の車内側に貼着され、電熱線120が加熱することによりフロントガラス1や周辺の雰囲気を暖めることによってフロントガラス1の霜取りや曇り止めを行う。
【0032】
ヒーター装置100に対応する車内位置には撮像ユニット200が取り付けられる。撮像ユニット200は、撮像部201と、撮像部201で撮像した画像の画像処理を行う画像処理部202と、を有する。撮像ユニット200により得られた車外の画像は、例えば車両を制御する車両制御ECU(図示せず)に提供される。
【0033】
撮像部201の撮像方向には、ヒーター装置100が配設されており、撮像部201は、フロントガラス1及びヒーター装置100越しに車外からの光を受光して、車両の前方画像を撮像する。なお、図中の一点鎖線は撮像領域を示す。
【0034】
ヒーター装置100と撮像ユニット200とにより、本実施の形態の車両用撮像装置が構成される。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態によれば、透明基板101と、電源供給端子111、112と、電熱線120と、サーミスタ130とを有するヒーター装置100において、電熱線120が透明基板101上の加熱対象領域に配索された第1線路121と、第1及び第2の電源供給端子111、112に接続され、第1線路121よりも幅広の第2線路122と、を有し、さらに、第2線路122には断線領域122aが形成され、サーミスタ130は断線領域122aを架け渡すように接続されており、第1線路121の一部121aが断線領域122aに入り込んでいる。
【0036】
これにより、サーミスタ130やその接続部分の第2線路122が撮像画像に映り込まずに、かつ、高い信頼度で異常過熱を防止できるヒーター装置100を実現できる。
【0037】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0038】
上述の実施の形態では、図2に示したように、断線領域122aに入り込む第1線路121の一部121aを凸形状とした場合について述べたが、断線領域122aに入り込む第1線路121の一部121aの形状はこれに限らず、例えば図5に示したように、複数回折り返した形状としてもよい。このようにすれば、サーミスタ130による第1線路121の温度検知の感度をより向上させることができる。
【0039】
上述の実施の形態では、本発明のヒーター装置100を車両のフロントガラス1の霜や曇りを抑制する装置として用いた場合について述べたが、本発明のヒーター装置はこれに限らない。本開示のヒーター装置100は、ガラス面に代えて例えば透明なプラスチックの面に貼着されてもよい。要は、本発明は、透明部材の一面に貼着されたヒーター装置を透過した撮像光を受光して撮像画像を得る撮像装置における前記ヒーター装置として広く適用可能である。
【0040】
2019年8月2日出願の特願2019-142991の日本出願に含まれる明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0041】
1 フロントガラス
100 ヒーター装置
101 透明基板
101a 退避領域
111、112 電源供給端子
120 電熱線
121 第1線路
121a 第1線路の一部
122 第2線路
122a 断線領域
130 サーミスタ
141 粘着層
200 撮像ユニット
201 撮像部
202 画像処理部
図1
図2
図3
図4
図5