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特許7472152医療器具を識別するためのシステム、装置、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】医療器具を識別するためのシステム、装置、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/98 20160101AFI20240415BHJP
【FI】
A61B90/98
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021545420
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2020052693
(87)【国際公開番号】W WO2020161111
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】102019102685.7
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク レンツェンヒューバー
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-213277(JP,A)
【文献】特表2008-539964(JP,A)
【文献】特開2011-182849(JP,A)
【文献】特開2013-212375(JP,A)
【文献】特表2008-512770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療工学器具を自動的に識別するための識別システムであって、
少なくとも1つの器具ホルダおよび/またはパッケージングであって、読取可能なデータキャリアを備え、前記医療工学器具を保持するように構成される、前記少なくとも1つの器具ホルダおよび/またはパッケージングと、
識別装置と、を備え、
前記識別装置は、前記医療工学器具を識別するために、前記データキャリアから前記医療工学器具の器具データを読み取るように構成され、
前記器具ホルダまたはパッケージングは、前記医療工学器具の取り外しによって、前記データキャリアの可読機能が自動的に起動されるように構成され、
前記識別装置は、前記可読機能の起動を検出し、結果的に前記器具ホルダまたはパッケージングの前記データキャリアに格納された前記器具データを自動的に読み取るようにさらに構成されることを特徴とする、識別システム。
【請求項2】
集積回路を有する前記識別装置が、
読取ユニットルータデータサーバサーバリピータデータ送信ユニットのうちの少なくとも一つとして機能するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の識別システム。
【請求項3】
前記データキャリアが、読取可能なデータメモリとして構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の識別システム。
【請求項4】
前記識別装置が、有線または無線通信接続を介して、制御および/または監視装置と通信可能であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の識別システム。
【請求項5】
前記識別装置、または前記制御および/または監視装置は、
前記識別装置によって決定又は受信されたそれぞれの前記器具ホルダから取り外された1つまたは複数の器具の前記器具データを、格納および設定された用途と比較することを特徴とする、請求項4に記載の識別システム。
【請求項6】
前記制御および/または監視装置が、前記識別装置から受信した前記器具データに基づいて、在庫および/または治療データのセットを自動的に更新し、および/または前記器具ホルダの前記データキャリアに格納された前記器具データを更新することを特徴とする、請求項4または5に記載の識別システム。
【請求項7】
前記識別装置が、無線範囲の中心を規定するように構成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の識別システム。
【請求項8】
前記識別装置は、集積化された電流供給源を備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の識別システム。
【請求項9】
医療工学器具を保持するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の識別システムの器具ホルダであって、
コネクタを備え、
前記コネクタは、電気回路が前記コネクタによって閉じられ、アンテナが起動されるように、前記器具ホルダに保持された器具が外れることによって元の位置に戻るように構成される、器具ホルダ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の識別システムの識別装置であって、
器具ホルダのアンテナの起動を自動的かつ自律的に検出し、前記器具ホルダのデータキャリアを読み出すように構成される、識別装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の識別システムを介して、医療工学器具を自動的に識別するための識別方法であって、
前記医療工学器具を器具ホルダから取り外すことによって、前記器具ホルダまたはパッケージングに取り付けられたアンテナの起動を検出することと、
前記器具ホルダまたはパッケージングのデータキャリアの器具データを読み出すことと、
前記器具データを格納および/または送信することと、を備える、識別方法。
【請求項12】
前記医療工学器具を、格納および設定された用途と比較し、前記医療工学器具が前記用途に適しているかどうかを識別することを備えることをさらに特徴とする、請求項11に記載の識別方法。
【請求項13】
格納された追加データを更新することと、および/または前記器具ホルダの前記データキャリアに格納された器具データを更新することと、をさらに特徴とする、請求項11または12に記載の識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療工学器具を自動的に識別するための識別システムに関する。さらに、本発明は、器具ホルダ、識別装置、および、対応する識別システムの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では、器具、スプレー缶、HFチップ、超音波ブレードなどの自動認識は、現在まで提供されていない。したがって、医療工学器具および/または少なくとも医療工学器具のパッケージには、通常、上述した1つの適用部品/ハンドピース(以下、医療器具と称する)を識別/認識することができるラベルまたはマーキングが設けられる。同時に、使用される医療工学器具に関する様々な情報は、使用前および/または使用中および/または使用後に、オペレータ/ユーザにとって重要である。様々な情報とは、例えば、既に使用されているか、および既に使用されていた場合にはその使用頻度、その耐用年数、およびその在庫レベルが何であるかである。既存の手段を用いて、この種の情報を伝達および維持することは、困難または不可能である。
【0003】
医療工学器具の重要な態様は、器具固有情報の使用、送信、および更新である。これは、例えば、医療工学器具の汚染を防ぎ、および/またはオペレータおよび/または患者の負傷を防止するために、例えば、特定の器具が特定の用途および/または特定の器具の状態に適しているかどうかに関する情報であってもよい。さらに、医療工学器具、特にモータ駆動手術器具の使用時に、特定の用途において、当該器具がどのように使用されるべきか、および/またはどのように使用されてもよいかは、オペレータにとって重要である。これは、例えば、モータ駆動手術器具の毎分の回転数に関係し得る。
【0004】
従来技術では、パッケージングされた医療工学器具、または器具ホルダ内の器具に、パッケージ/器具ホルダに取り付けられたラベル、または器具ホルダ内のラベルを介して、ユーザがそれらを認識できるように、マーキングが施される。最大使用期限、寸法、材料等のような追加の情報は、サプライヤによる絶対的なケアを必要とするラベル上には表示することが困難であり得、例えば、汚れまたは摩耗した結果これらの情報は、ユーザによって識別することが困難となることがある。
【0005】
さらに、特に、ドリル、フライスなどの手術器械および器具などの滅菌した製品を取り扱う場合、パッケージまたは器具ホルダからの取り外しは、手術中の時間的制約などの制約を受ける可能性がある。これにより、ユーザが製品固有のデータを記録および/または手動で文書化することが困難になる可能性がある。それぞれの器具およびその特性または利用特性の不適切な記録の結果としての医療工学器具の不正確な利用は、特に患者にとって深刻な負の結果につながる可能性があるので、これは、本発明によって排除されるか、または少なくとも改善されるべき従来技術からの問題である。
【0006】
したがって、顧客/オペレータ、好ましくは医療スタッフが、ラベルまたは外のパッケージを調べることなく、どの医療工学器具が適用部品/ハンドピースに挿入されるかを識別することは不可能である。したがって、在庫確認することなく、どの製品の在庫がまだ倉庫(または委託倉庫)にあるかを確定することは不可能である。その結果、どの製品が組み合わされ、および/または使用されたかをサプライヤが確定することも不可能である。医療工学器具の過負荷およびそれらに関連し得る製品損傷は、困難を伴ってしか追跡できず、または全く追跡され得ない。さらに、サプライヤは、顧客に合わせてカスタマイズされたロジスティクスを、提供することができない。個々の医療工学器具の可能な用途を表示することも困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、従来技術の欠点を回避または少なくとも低減する、医療工学器具を自動的に識別するための識別システムを提供することを目的とする。
【0008】
本発明の核心は、自動的に、自律的に、かつ強制的に、医療工学器具を識別することを可能にする識別装置、すなわち、ユーザが意識的に識別を実行または開始する必要なく、例えば、ユーザがラベルを見る必要なく、識別することを可能にする識別装置を提供することである。別言すれば、識別装置は、特にパッケージ又はホルダからの取り外し処理中に、どの医療工学器具が使用されているかを自動的に認識する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、医療工学器具を自動的に識別するための識別システムによって解決される。この識別システムは、少なくとも1つの器具ホルダおよび/または場合によっては追加のパッケージング/(外側)パッケージングと、識別装置と、を備える。少なくとも1つの器具ホルダおよび/または場合によっては追加のパッケージングは、読取可能なデータキャリアを備え、医療工学器具を保持するように構成される。識別装置は、特に、読み取り装置の形態を有し、医療工学器具を識別するために、データキャリアから器具データを読み取るように構成される。器具ホルダまたはパッケージングは、医療工学器具の取り外しによって、データキャリアの可読機能が自動的に起動されるように構成される。特には、器具ホルダまたはパッケージングに設けられた電気回路が閉じられ、それによってアンテナが起動する。識別装置は、特に、アンテナの可読機能の起動を検出し、器具ホルダまたはパッケージングのデータキャリアを自動的に読み出すようにさらに構成される。
【0010】
例えば、識別装置は、医療工学器具とは別個に形成された適用部品とともに、医療工学器具を、自動的に識別するための電動手術器具のために提供されることができる。適用部品は、医療工学器具を受け入れるように設計され、好ましくは、電動モータであるモータが一体化される。さらに、識別装置は、少なくとも1つの別個に形成された器具ホルダを備えるように構成することができる。器具ホルダは、読取可能なデータキャリア/データメモリを備え、器具ホルダには医療工学器具が保持され、器具ホルダは、医療工学器具が解放されたときに信号を出力し、好ましくは電気回路を閉じ、それによって受信機アンテナを起動する。加えて、識別装置は、別個に形成された器械作動ユニットを有してもよく、当該ユニットは、好ましくは、足で操作される制御装置として形成される。さらに、識別装置は、別個に形成された制御および/または監視装置を備えてもよい。当該装置は、適用部品とは別個の装置として形成され、好ましくは、第1のケーブルを介して適用部品に、および/または第2のケーブルを介して器械作動ユニットに接続されるように構成される。
【0011】
器具ホルダは、医療工学器具を保持する役割を果たす。器具ホルダは、特に、オペレータが、好ましくは滅菌の医療工学器具を適用部品/ハンドピースで持ち上げることをより容易にするという利点を提供する。
【0012】
アンテナ/受信機アンテナおよび/または電気回路は、器具ホルダおよび/または器具ホルダの外側パッケージの一部であってもよい。電気回路は、医療工学器具が意図された方法で器具ホルダまたはパッケージに配置されたときに、開かれる、すなわち、オフされるように構成され、医療工学器具が意図された位置から取り外されたときに、閉じられる、すなわちオンされるように構成される。これにより、医療工学器具がパッケージングから取り外される前にはデータキャリアが読み出されないという利点を有するため、不必要なデータ通信およびエネルギー消費を防止または低減することができる。
【0013】
ここで、識別装置は、好ましくは、制御および/または監視装置および/または器械作動ユニットおよび/または器具ホルダと通信するための、ならびにデータおよび/または操作パラメータを送信および/または受信および/または記憶するためのインターフェースとして構成されてもよい。別言すれば、識別システムは、器具ホルダおよび識別装置に加えて、制御および/または監視装置をさらに備えることができる。
【0014】
別言すれば、これは、識別装置が、器具ホルダ、および、適用可能であれば、少なくとも1つの制御および/または監視装置、および/または少なくとも1つの器械作動ユニット、および/または少なくとも1つの適用部品/ハンドピース、ならびに少なくとも1つの医療工学器具またはその器具ホルダ、と相互に通信することを意味する。これにより、使用前、使用中、および/または使用後にユーザにとって重要な情報/データを必要に応じて送信、記憶、更新、および/または利用可能とすることができる。
【0015】
本発明の意味における医療工学器具は、特に、手術機能を実行するための概して遠位の鋭端の手術部分と、近位連結部分であって、ハンドルユニット、特に、以下でハンドルまたは適用部品と呼ばれる駆動ハンドルユニットに器具を連結するための近位連結部分と、を有する外科器具または手術器具を意味すると理解される。このような医療工学器械の例は、特に、回転器具、ならびに、切削器具、特に、ドリル、フライス、のこぎり、ねじ込みアダプタ、切刃、または研削アダプタであり、これらは、一般的に公知の方法でハンドルユニットおよび/または駆動ユニットに連結される。さらに、本発明の意味における器具という用語は、スプレー缶、HFチップ、超音波ブレードなどを意味すると理解される。また、本発明の意味における医療工学器具という用語は、骨および関節インプラント、または部分インプラント、ステントなど、任意のタイプおよび形状のインプラントを意味すると理解される。
【0016】
IC(集積回路又は集積回路構成)を有する識別装置が、読取ユニットおよび/またはルータおよび/またはデータサーバおよび/またはサーバおよび/またはリピータおよび/またはデータ送信ユニットとして機能するように構成されているとすれば、好ましい状態である。
【0017】
ICは、集積回路構成または集積回路であると理解され、これは、通常数ミリメートルのサイズであり、半導体材料の薄いウェハ上に実装された電子回路である。好ましくは、このような電子回路は、マイクロプロセッサ及びメモリチップのような複雑な回路を提供するために、能動及び受動部品を含む。
【0018】
別言すれば、好ましくはチップによる、その中のICと組み合わせた識別装置は、前述の機能のいくつかまたは少なくとも1つの機能のために提供される通信インターフェースである。したがって、ICと組み合わせた識別装置は、例えば、器具ホルダに取り付けられた/収容されたデータキャリア/データメモリを読み出すために、読取ユニットとして機能するように構成される。
【0019】
さらに、ICと組み合わせた識別装置は、ルータまたはネットワークルータの機能を有し、それにより、識別装置は、ネットワークパケットを移動することができ、または個々の、好ましくはローカル装置を直接的につなぐためのインターネット接続として機能することができる。この目的には、Ethernet(登録商標)、DSL、またはBluetooth(登録商標)などのさまざまなネットワークテクノロジーを使用できる。識別装置がルータとして機能する場合のもう1つの利点は、システムのセキュリティのためのファイアウォール機能を持つことができることである。
【0020】
さらに、データサーバおよび/またはサーバとして機能するICと組み合わせた識別装置は、クライアントサーバモデルで、別のプログラム、クライアントと通信するプログラムであるソフトウェアとして、(コンピュータ)プログラムを識別装置に含めることができるという利点がある。これにより、識別装置は、データプログラムやファイルシステムまたはデータベースへのアクセスなどのサーバソフトウェアによって提供される機能を使用することができる。
【0021】
さらに、ICとの統合装置は、リピータとしても動作することができる。これは、信号の範囲を増大させるための信号増幅器および/または信号調整器として理解されるべきである。これは、リピータを送信ユニットおよび/または受信ユニットから距離をおいた位置に配置することができ、それでも、信号を受信し、かつ調整された形態で転送することができるという利点を有する。
【0022】
識別装置は、器具ホルダの作動を検出し、好ましくはこの情報を収集し、転送するために、リピータおよび読取ユニットとして機能する。これにより、システムの送受信範囲を小さくすることができる。
【0023】
データキャリア、および適用可能であれば、器具ホルダ上または器具ホルダ内に装着/収容されるアンテナは、読取可能なデータメモリ、特にRFIDタグまたはNFCタグまたはBLEタグであることが好ましい。別言すれば、これは、データキャリア又はデータメモリと通信可能であり、特に読み出すことが可能であれば、あらゆるチップ技術が適用可能であることを意味する。したがって、識別装置は、ユーザがパッケージから、好ましくは器具ホルダから医療工学器具を取り外すときに、当該医療工学器具を自動的に認識するために、データメモリを読み出すことができることは、有益である。このために、好ましくは、データキャリアは、識別装置と無線通信するように構成され、識別装置は、データキャリアに含まれるデータを検出および/または読み出しおよび/または処理することができる。なぜなら、適用部品は、医療工学器具と接続されたときに、自動的に識別されることができるからである。
【0024】
データキャリアに書き込まれるデータは、本発明の意味において、物品番号、ロット番号、バッチ番号、使用期限、有効期限、または最大利用日、材料、寸法および形状、意図される用途、以前の利用および利用期間、ならびに在庫レベルなどであってもよい。
【0025】
したがって、本発明の基礎をなす一般的な考えは、器具認識/識別が別個の識別装置を介して行われ、制御および/または監視ユニットなどの周辺装置へのデータ送信によって転送され、選択されたデータ/情報および/または操作パラメータが、好ましくは自動的にエンドカスタマ/ユーザに利用可能になることを含む。
【0026】
データキャリアがRFIDタグまたはNFCタグとして構成される場合、これは、特に、オペレータ/ユーザの側で特別な相互作用を必要とせず、その上に含まれるデータを、非接触で、かつ自動的に、特にいつでも、読み出すこと、書き込むこと、および処理することができるという利点を有する。さらに、データキャリアが識別装置によって永続的に読み出されることができれば、有益である。
【0027】
データキャリアが器具ホルダに取り付けられることが好ましいが、データキャリアが特に接着され、成形され、またはプレスされることができる、外側パッケージ(例えば、器具が器具ホルダと一緒にパッケージされ得るブリスタパック)への取り付けも考えられる。その結果、データキャリアの取付け場所から、データキャリアが事故的に外れること、または意図せず分離することが排除され、その結果、データキャリア上のデータが、対応する医療工学器具に本当に属するものであることを高い確実性で保証することができる。これは、患者の安全性を有利に高める。
【0028】
識別装置が、有線または無線通信接続を介して制御および/または監視装置と通信可能であることが好ましい。あるいは、制御および/または監視装置は、別の、好ましくは中央システムユニットであってもよい。
【0029】
さらに、無線通信接続は、好ましくは、Wi-Fi(登録商標)接続、Bluetooth接続、NFC接続、またはダイレクトインターネット接続であることが好ましい。
【0030】
好ましくは、識別装置または制御および/または監視装置は、識別装置によって決定/受信されたそれぞれの器具ホルダから取り外された1つまたは複数の器具の器具データを、格納および設定された用途と比較し、好ましくは、器具または、器具のうち少なくとも1つが用途に適していない場合に警告を出力する。
【0031】
さらに、制御および/または監視装置が、識別装置から受信された器具データに基づいて、在庫および/または治療データのセットを自動的に更新し、および/または器具ホルダのデータキャリアに格納された器具データを更新する場合、有利である。
【0032】
識別装置が、無線範囲の中心を、好ましくは器械台上に規定するように構成されることが好ましい。別言すれば、識別装置は、器具識別が行われる器械台に近接して、理想的には、その上に配置されることが好ましい。別言すれば、識別装置は、無線範囲の中心を可変/柔軟に保つことができ、好ましくは、器械台/器械を備えた台上に設置される。
【0033】
したがって、追加の端末装置としての識別装置が、制御装置および/または監視装置および/または足で操作される制御装置として形成されることが好ましい器械作動ユニット内の取り付けられた受信装置の無線範囲を縮小/減少させることができる場合には、さらに好ましい。これは、送信範囲および受信範囲の両方に適用することができる。
【0034】
識別装置は、器械台上または識別装置の周囲に配置された医療工学器具の汚染、ならびに識別装置の汚染を排除するために、滅菌バッグ内に提供されていれば好ましい。これは、患者の安全性をさらに高め、識別装置を滅菌領域に配置することを可能にする。
【0035】
さらに、識別装置が集積化された電流供給/電源を含んでいれば好ましい。さらに、制御および/または監視装置は、識別装置から受信した情報を表示するように構成されてもよい。さらに、制御および/または監視装置を接続して給電するために、例えば主電源ソケットのような別個の電源が設けられていれば好ましい。
【0036】
さらに、本発明の基礎をなす目的は、器具ホルダまたはパッケージによって、ならびに上述した識別装置によって解決される。特に、器具ホルダは、好ましくは、レバー状または板ばね状のコネクタを有することが提供される。この場合、コネクタは、コネクタによって電気回路が閉じられアンテナが起動するように、器具ホルダに保持されている器具の取り外しによって元の位置に戻る(reposition)ように、構成される。
【0037】
さらに、本発明は、前述の態様の1つによる識別システムを介して、医療工学器具(電動手術器械に適用可能な場合)を自動的に識別するための方法に関する。
【0038】
この方法によれば、識別システムの識別装置は、医療工学器具が器具ホルダから取り外されたときに、第1のステップで検出/識別することができる。これは、好ましくは、医療工学器具が取り外されたときに、(受信および/または送信)アンテナを起動し、そのアンテナが好ましくは、対応する信号を識別装置に送信することで実現される。
【0039】
第2のステップにおいて、識別装置は、器具ホルダから取り外されたのはどの医療工学器具なのかという識別を可能にする。これは、器具ホルダまたはパッケージに配置されたデータキャリアから器具データを読み出すことによって実現される。第3のステップでは、器具データが格納される。
【0040】
代替的に又は追加的に、第4のステップにおいて、器具データ/情報は、好ましくは識別システムの一部でもある制御および/または監視装置に送信される。別言すれば、好ましい第4のステップでは、識別装置は情報を収集し、それを制御および/または監視装置に転送する。第5のステップでは、制御および/または監視装置は、識別装置から受信した情報を、ユーザ/オペレータに使用可能/読取可能な方法で選択的に提示する。好ましくは、情報は、制御および/または監視装置に組み込まれたディスプレイを介して提供される。あるいは、タブレットやスマートフォンなど、他の端末装置のディスプレイを用いることもできる。
【0041】
さらなる好ましいステップでは、データおよび/または情報および/または操作パラメータが識別装置を介して更新され、結果的にデータキャリアが書き込まれる。代替的に又は追加的に、在庫または治療統計、または患者固有の治療データ(集合的に追加データと呼ばれる)のような、制御および/または監視装置からのデータが更新される。
【0042】
器具ホルダから取り外された医療工学器具は、好ましくは器具ホルダに取り付けられるデータキャリアを読み出すことによって、識別されることが好ましい。
【0043】
データキャリアに記憶された情報および/またはデータおよび/または操作パラメータについては、器具ホルダから取り外された医療工学器具が意図された(すなわち、格納し設定された)用途に適しているか否かを識別するために、それらを読み出すことができ、かつ/または使用することができることが好ましい。
【0044】
特定の医療工学器具を使用する状況において、ユーザが、ラベルまたはパッケージを見る必要なしに、安全に、容易に、迅速に、特に自動的に、どの器具を現在使用しているか、またはどの器具を使用するつもりか、および/またはどの器具を使用しようとするか、および/またはどの器具が適用部品に差し込まれている/差し込まれる予定かについての情報を得ることができることが、本発明の特定の利点である。特に、オペレータは、使用されている製品が特定の用途に適しているか、または適していないかを自動的かつ容易に識別することができる。本発明の別の利点は、オペレータが、在庫を確認する必要なしに、対象の器具の在庫がまだ自分の倉庫(または委託倉庫)にあるか否かを容易に特定できることである。さらに、追加の端末装置としての識別装置は、いくつかの機能を備えることができ、必要に応じてこれらを拡張することができるという利点を提供する。さらに、識別装置は、データおよび情報の保護を提供することができる。
【0045】
要約すると、本発明は、使用されるそれぞれの製品、特にハンドル/適用部品上に配置されるそれぞれの器具の、上述した識別装置を介して、認識、特に自動認識/識別を可能にする、と言うことができる。さらに、本発明は、データキャリア上に書き込まれた製品関連データの特に単純かつ大部分が誤りのないメンテナンスおよび/または送信を可能にする。特に、本発明は、以下の利点を可能にする。
ユーザ/オペレータおよびプロバイダ(サプライチェーンマネジメント(SCM)、サービス、故障解析)のための直接的な自動化された器具認識、
ユーザ/オペレータおよびサプライヤへの任意の量のデータ送信(SCM、サービス、故障解析)、
ユーザ/オペレータにとって、本発明は、製品関連データを自動的かつリアルタイムで患者ファイルに記録できるという可能性を生み出すこと、
長い無線距離は必要ではなく、器械台の領域に限定されること。
【0046】
したがって、本発明は、ユーザ/オペレータだけでなく、医療工学製品および器具のサプライヤにも重要な利点を提供する。本発明によれば、ユーザは、どの製品/器具が組み合わされ、かつ/または使用されたかを特に容易に決定することができる。さらに、サプライヤは、器具の過負荷および関連する製品損傷を追跡することができる。最終的に、本発明は、サプライヤが顧客に、いわゆる、カスタマイズされたロジスティクスを提供することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】第1の実施形態の識別装置が、少なくとも1つの器具ホルダのための読取りユニットとして示される構成である。
図2】器具ホルダとその機能を示す。
図3】第2の実施形態の識別装置が、少なくとも1つの器具ホルダのためのリピータ、サーバ、および送信ユニットとして示される構成である。
図4】本方法によるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本開示の好ましい実施形態は、添付の図面に基づいて以下により詳細に説明される。図面は、本質的に単に概略的なものであり、本発明の理解を助けるのに役立つ。同じ要素は同じ参照符号で示される。
【0049】
図1は、第1の実施形態の識別装置1が、少なくとも1つの器具ホルダ4のための読取りユニットとして示される構成である。
【0050】
図1は、電動手術器械、本実施形態では、医療工学器具2(図3参照)のための識別装置1を有する識別システムを示す。さらに、図1には、識別装置1とは別個に形成された器具ホルダ4が示されている。器具ホルダ4は、医療工学器具2を受け入れる。医療工学器具2は、適用部品3(図3参照)を介して器具ホルダ4から取り外すことができる。器具ホルダ4は、図2に詳細に示されている。
【0051】
図1は、識別装置1及び器具ホルダ4とは別に、制御および/または監視装置8を示す。制御および/または監視装置8は、適用部品3とは別に形成され、好ましくは第1のケーブル9及び第2のケーブル10を介して、それぞれの端末装置、好ましくは適用部品3及び器械作動ユニット7(図3参照)に接続される。
【0052】
図1に示されるように、器具ホルダ4は、読取可能なデータメモリ(本発明ではデータキャリア5(図2参照))を備える。さらに、図1に示されるように、第1の実施形態では、無線通信接続は、Wi―Fiおよび/またはBluetoothを介して提供される。
【0053】
図1で示される制御および/または監視装置8は、識別装置1に含まれるデータを介して、器具ホルダ4に取り付けられたデータキャリア5からの情報/データ/操作パラメータを表示するディスプレイ13を含む。第1の実施形態によれば、識別装置1は、データキャリア5を読み出すことができ、そのため、通信インターフェースとして機能する読取りユニットとして設計される。
【0054】
図2は、器具ホルダ4とその機能の説明図である。図2は、器具ホルダ4の底面図2bおよび上面図2aを示す。底面図は、その横に拡大して示される。以下、拡大図のみを説明する。器具ホルダ4は、成形プラスチック部品として構成され、完全に吸収性材料で構成され、ベースプレート14を有する。
【0055】
データキャリア5は、ベースプレート14上に取り付けられている。データキャリア5は、2つの接点を介して電気回路/無線回路11に接続される。医療工学器具2が器具ホルダ4内に収容される場合、電気回路11は開いており、受信機アンテナ12は信号を送信しない、すなわち、起動していない状態で保持される。医療工学器具2が器具ホルダ4から取り外されてすぐ、コネクタ15を介して電気回路11が即座に閉じられ、受信機アンテナ12を起動する。
【0056】
同様に、他の構成的な設計、例えば、板ばねなどによって、電気回路を閉じることができる。また、データキャリア5を備えた電気回路11は、図2に示すように下側に配置することも、上側(図示せず)に配置することもできる。
【0057】
図3は、第2の実施形態の識別装置1が、少なくとも1つの器具ホルダ4のためのリピータ、サーバ、および送信ユニットとして示される構成である。
【0058】
図3には、図1の識別装置1が示されているが、第2の実施形態の識別装置1は、リピータ、サーバ、およびデータ送信ユニットの両方として使用される点において、異なる。さらに、図3には、識別装置1とは別個に形成された器具ホルダ4が示されている。器具ホルダ4は、医療工学器具2を受け入れる。医療工学器具2は、適用部品3を介して器具ホルダ4から取り外すことができる。
【0059】
識別装置1および器具ホルダ4とは別に、図3は、図1の制御および/または監視装置8を示す。制御および/または監視装置8もまた、適用部品3とは別個に形成され、好ましくは、第1のケーブル9を介して適用部品3に接続され、第2のケーブル10を介して器械作動ユニット7に接続される。
【0060】
また、図3に示されるように、器具ホルダ4と器械作動ユニット7、および、制御および/または監視装置8の両方が、RFIDを介して識別装置1と通信することができる。さらに、図3に示されるように、識別装置1は、Wi-Fi接続を介して制御および/または監視装置8に接続される。
【0061】
したがって、図1および図3に示す構成では、器具ホルダ4が医療工学器具2から取り外されたことを検出し、情報を収集し、それを制御および/または監視装置8などのシステム制御構成要素に提供することができる。
【0062】
図4は、本方法によるフローチャートである。これに従い、ステップS10において、識別装置1は、適用部品3内に/上に受け入れられるために、医療工学器具2が器具ホルダ4から取り外されたかどうかを識別する。ステップS10は、器具ホルダ4から取り外された医療工学器具2が、電気回路を閉じることによって受信機アンテナ12を起動するという事実に基づく。最終的に、起動した受信機アンテナ12を介して識別装置1に信号が送信され、それによって、識別装置1は、医療工学器具2が器具ホルダ4から取り外されたことを検出する。
【0063】
さらなるステップS11において、識別装置1は、どの医療工学器具2が器具ホルダ4から取り外されたかを識別する。ステップS11は、医療工学器具2が器具ホルダ4から取り外されたときに受信機アンテナ12を起動することによって、識別装置1が器具ホルダ4上に配置されたデータキャリア5を読み出し、それによって対応する医療工学器具を識別するように実行される。ステップS12では、当該データが格納または送信される。
【0064】
識別装置1は、送信のために情報を収集し、それを、例えば、制御および/または監視装置8に転送する。これは、無線通信接続、好ましくはWi-FiまたはBluetoothを介して、または好ましくは第1のケーブル9を介した直接的な接続を介して行われる。ダイレクトインターネット接続でも可能である。
【0065】
さらなるステップS13において、識別装置1は、取り外された医療工学器具2が意図された用途に適しているかどうかを検出する。ステップS13は、識別装置1が、取り外された器具2が、データキャリア5に記憶されるとともに既に読み出された、情報、データ、および/または操作パラメータに基づいて、意図された用途の要件を満たすかどうかを検出することができるように実行される。
【0066】
さらなるステップS14において、制御および/または監視装置8は、識別装置1によって送信/転送されたデータ/操作パラメータ/情報をディスプレイ13に表示する。
【0067】
さらなるステップS15において、データ/操作パラメータ/情報は、識別装置1を介して、かつ識別装置1によって更新され、それに応じてデータキャリア5が書き込まれる。オペレータが医療工学器具2を器具ホルダ5に戻すとすぐに、電気回路が開き、受信機アンテナ12からの信号及びデータキャリア5の読み取りと、情報/データ/操作パラメータの送信が完了する。次いで、オペレータは、このプロセスを繰り返すか、または別の医療工学器具2に移動することができる。
【符号の説明】
【0068】
1:識別装置
2:器具
3:適用部品
4:器具ホルダ
5:データキャリア
6:受信アンテナ
7:器械作動ユニット
8:制御および/または監視装置
9:第1のケーブル
10:第2のケーブル
11:電気回路/無線回路
12:受信アンテナ
13:ディスプレイ
14:ベースプレート
15:コネクタ

図1
図2
図3
図4