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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 7/02 20060101AFI20240415BHJP
   E05F 15/622 20150101ALN20240415BHJP
【FI】
F16D7/02 F
E05F15/622
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021545936
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020052648
(87)【国際公開番号】W WO2020161087
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】102019102857.4
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508072408
【氏名又は名称】ブローゼ ファールツォイクタイレ エスエー ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト バンベルク
【氏名又は名称原語表記】BROSE FAHRZEUGTEILE SE & CO.KG,BAMBERG
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 1, 96052 Bamberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヘンツラー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス フェアスト
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-014274(JP,A)
【文献】特開2015-200353(JP,A)
【文献】特開2015-217720(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02159438(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00- 9/10,
41/00-47/06
F16H 19/00-31/00,
35/10,
37/00-37/16
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の閉鎖エレメント(3)をモータにより調節するための駆動装置(2)の動力伝達装置であって、
摩擦トルクを提供するために、少なくとも1つの摩擦結合機構(6)が設けられており、
該摩擦結合機構(6)が、前記動力伝達装置(1)の2つの駆動装置構成要素を相対回動不能に連結するための、前記動力伝達装置(1)のクラッチ機構(7)の構成部分であり、
前記クラッチ機構(7)が、モータ側のクラッチ部材(7a)を介して、前記駆動装置構成要素のうちのモータ側の駆動装置構成要素(11)に相対回動不能に連結されていて、モータとは反対側のクラッチ部材(7b)を介して、前記駆動装置構成要素のうちのモータとは反対側の駆動装置構成要素(12)に相対回動不能に連結されており、
前記クラッチ機構(7)が、駆動装置軸線(X)を中心として回転可能な、互いに対して同軸的に配置された複数の摩擦結合エレメント(8,9,10)を有しており、該摩擦結合エレメント(8,9,10)が、前記摩擦結合機構(6)を構成し、前記摩擦結合エレメントのうちの中間の摩擦結合エレメント(8)が、前記摩擦結合エレメントのうちの別の2つの摩擦結合エレメント(9,10)にそれぞれ摩擦係合する、動力伝達装置において、
前記摩擦結合エレメント(8,9,10)が、少なくとも部分的に互いに対して同心的に配置されており、
前記中間の摩擦結合エレメント(8)が、トレランスリング(13)であり、摩擦結合式の結合部を提供するために、前記摩擦結合エレメントのうちの別の2つの摩擦結合エレメント(9,10)間に半径方向で緊締されており、
前記クラッチ機構(7)の前記モータ側のクラッチ部材(7a)が、前記モータ側の駆動装置構成要素(11)に、かつ/または前記クラッチ機構(7)の前記モータとは反対側のクラッチ部材(7b)が、前記モータとは反対側の駆動装置構成要素(12)に差込結合部(17a,17b)を介して連結されている、
ることを特徴とする、動力伝達装置。
【請求項2】
前記中間の摩擦結合エレメント(8)が、周方向(U)に沿って、半径方向の複数の隆起部(14)を有している、請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記中間の摩擦結合エレメント(8)の前記半径方向の隆起部(14)が、半径方向内方および/または半径方向外方に向いている、請求項1または2記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記クラッチ機構(7)が、前記動力伝達装置(1)の前記2つの駆動装置構成要素(11,12)間に介装された過負荷防止クラッチとして構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記中間の摩擦結合エレメント(8)と、前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向内側に配置された前記摩擦結合エレメント(9)との間の限界トルクが、前記中間の摩擦結合エレメント(8)と、前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向外側に配置された前記摩擦結合エレメント(10)との間の限界トルクよりも大きいか、または前記中間の摩擦結合エレメント(8)と、前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向外側に配置された前記摩擦結合エレメント(10)との間の限界トルクが、前記中間の摩擦結合エレメント(8)と、前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向内側に配置された前記摩擦結合エレメント(9)との間の限界トルクよりも大きい、請求項1から4までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記中間の摩擦結合エレメント(8)の前記半径方向内側の摩擦面(8a)および/または前記中間の摩擦結合エレメント(8)の前記半径方向外側の摩擦面(8b)および/または前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向内側に配置された前記摩擦結合エレメント(9)により形成された摩擦面(9a)および/または前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向外側に配置された前記摩擦結合エレメント(10)により形成された前記摩擦面(10a)が、金属面である、請求項1から5までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記中間の摩擦結合エレメント(8)が、部分的にまたは完全に金属から成っている、請求項1から6までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記中間の摩擦結合エレメント(8)の最大の外側半径に対する前記中間の摩擦結合エレメント(8)の軸方向の長さの比が、少なくとも1であり、かつ/または前記中間の摩擦結合エレメント(8)の最小の内側半径に対する前記中間の摩擦結合エレメント(8)の前記軸方向の長さの比が、少なくとも1.8である、請求項1から7までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向内側に配置された前記摩擦結合エレメント(9)および/または前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向外側に配置された前記摩擦結合エレメント(10)が、複数の部分から成っている、請求項1から8までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項10】
前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向内側に配置された前記摩擦結合エレメント(9)および/または前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向外側に配置された前記摩擦結合エレメント(10)の第1の部分(9b,10b)が、金属から成っており、かつ前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向内側に配置された前記摩擦結合エレメント(9)および/または前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向外側に配置された前記摩擦結合エレメント(10)の第2の部分(9c,10c)が、プラスチック材料から成っている、請求項1から9でのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向内側に配置された前記摩擦結合エレメント(9)と、前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向外側に配置された前記摩擦結合エレメント(10)とは、互いに軸方向で形状結合式に連結されている、かつ/または互いに係止されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項12】
前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向内側に配置された前記摩擦結合エレメント(9)が、前記クラッチ機構(7)の前記モータ側のクラッチ部材(7a)を提供し、前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向外側に配置された前記摩擦結合エレメント(10)が、前記クラッチ機構(7)の、前記モータとは反対側のクラッチ部材(7b)を提供する、または前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向内側に配置された前記摩擦結合エレメント(9)が、前記クラッチ機構(7)の前記モータとは反対側のクラッチ部材(7b)を提供し、前記中間の摩擦結合エレメント(8)の半径方向外側に配置されている前記摩擦結合エレメント(10)が、前記クラッチ機構(7)の前記モータ側のクラッチ部材(7a)を提供する、請求項1から11までのいずれか1項記載の動力伝達装置。
【請求項13】
自動車の閉鎖エレメント(3)をモータにより調節するための駆動装置であって、請求項1から12までのいずれか1項記載の動力伝達装置(1)が設けられている、駆動装置。
【請求項14】
自動車の閉鎖エレメントアセンブリであって、前記自動車のボディ(22)に調節可能に連結された閉鎖エレメント(3)と、請求項13記載の、前記閉鎖エレメント(3)をモータにより調節するための少なくとも1つの駆動装置(2)とを備えた、閉鎖エレメントアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の、自動車の閉鎖エレメントをモータにより調節するための駆動装置の動力伝達装置又は動力伝達手段と、請求項14に記載の、このような動力伝達装置を備えた、自動車の閉鎖エレメントをモータにより調節するために駆動装置と、請求項15に記載の、このような駆動装置を備えた自動車の閉鎖エレメントアセンブリとに関する。
【0002】
駆動装置の、話題となる動力伝達装置は、自動車の閉鎖エレメントをモータにより調節することの枠内において使用される。このような閉鎖エレメントは、たとえば自動車のドア、特にスライドドア、またはフラップ、特にテールゲート、トランクリッド、ボンネット、トランク床等であってよい。その限りでは、閉鎖エレメントという用語は、本明細書では広義に理解することができる。
【0003】
話題となる動力伝達装置は、駆動装置の駆動モータにより形成された駆動力の力の流れを案内するために働く。対応して、動力伝達装置は、軸、伝動装置、クラッチ、ブレーキ等のような駆動装置構成要素を有していてよい。
【0004】
本発明の起点となる公知の動力伝達装置(独国特許出願公開第102017101325号明細書)は、自動車のテールゲートをモータにより調節するためのスピンドル駆動装置の構成部分である。動力伝達装置には、クラッチ機構が対応配置されており、このクラッチ機構は、過負荷防止クラッチ(Ueberlastkupplung)として構成されている。クラッチ機構は、2つの駆動装置構成要素の間に挿入されており、これらの駆動装置構成要素のうち一方の駆動装置構成要素は、動力伝達装置の中間伝動装置のモータ側の伝動装置軸であり、他方の駆動装置構成要素は、モータとは反対側のスピンドル-スピンドルナット伝動装置のスピンドルである。クラッチ機構は、摩擦結合機構を有している。この摩擦結合機構は、一方では、中間位置におけるテールゲートの確実な保持を可能にし、他方では、摩擦結合機構の限界トルクの克服後にテールゲートの手動の調節を可能にする。「限界トルク」は、互いに相対的に回転可能な2つの構成部分間に発生する、静止摩擦により生じる接着結合部を分離するために必要となる、加えるべき最大トルクである。この場合、静止摩擦は、限界トルクの達成時に滑り摩擦に移行する。
【0005】
公知の動力伝達装置の構造的な構成は、基本的に、比較的高い運転安全性を保障し、手動の調節性に関しては、高いユーザ快適性を保証する。しかし、クラッチ機構は、動力伝達装置の駆動装置軸線の方向で比較的大きな構造空間を占める。したがって、軸方向に作用する、つまり駆動装置軸線に沿って作用する圧縮コイルばねを備えた別個の圧着機構が設けられている。この圧縮コイルばねは、摩擦結合エレメントに軸方向で互いに対して予荷重を加える。これは、動力伝達装置、ひいては駆動装置の技術的な長さを増大させる。
【0006】
本発明の根底にある課題は、公知の動力伝達装置を、駆動装置の技術的な長さが減じられるように構成し、かつ改良することである。
【0007】
上述の課題は、請求項1の前提部に記載の動力伝達装置において、請求項1の特徴部に記載の特徴により解決される。
【0008】
重要であるのは、まず、動力伝達装置のクラッチ機構の構成部分である摩擦結合機構の摩擦結合エレメント間で、軸方向の摩擦係合部の代わりに、半径方向の摩擦係合部を設けるという基本的な考察である。これにより、摩擦トルクを形成する法線力が、半径方向に、つまり駆動装置軸線に対して直交して作用し、駆動装置軸線に沿って作用しない。したがって、軸方向に作用する圧着機構は、もはや不要であり、このことは、技術的な長さ、ひいては軸方向で必要となる構造空間を対応して減じる。
【0009】
さらに重要であるのは、半径方向で、3つの摩擦結合エレメントが互いに協働し、これらの摩擦結合エレメントのうち、中間の摩擦結合エレメントが、トレランスリングであることである。「トレランスリング」は、環状またはスリーブ状の半径方向の中間エレメントであり、この中間エレメントは、互いに対して同心的に位置調整された2つの構成部材、本明細書では2つの摩擦結合エレメントの間の隙間に配置され、これにより互いに対して同心的に位置調整された両構成部材間で、トルク伝達を可能にする摩擦結合部を形成することができる。この目的のためには、トレランスリングは、周方向で、つまりその中心軸線の周囲で、不均一な、つまり完全に円筒形ではない外側輪郭および/または内側輪郭を有している。これにより、トレランスリングは、定義されたばね力を半径方向で提供する。トレランスリングは、半径方向で比較的小さな厚さを有しているので、トレランスリングは、半径方向で、圧縮コイルばねに比べても比較的小さな構造空間を占める。好適には、トレランスリングは、最大で5mm、好適には最大で3mm、さらに好適には最大で2mm、さらに好適には最大で1.5mmの厚さを有している。「厚さ」とは、トレランスリングの最大の外側半径と最小の内側半径との間の差を意図している。
【0010】
詳細には、摩擦結合エレメントが、少なくとも部分的に互いに対して同心的に配置されており、中間の摩擦結合エレメントが、トレランスリングであり、摩擦結合式の結合部を提供するために、摩擦結合エレメントのうちの別の2つの摩擦結合エレメント間に半径方向で緊締されていることが提案される。つまり、クラッチ機構の構成部分である摩擦結合機構の摩擦結合エレメントの配置は、特に、中間の摩擦結合エレメントに摩擦係合している一方の摩擦結合エレメントが中間の摩擦結合エレメントの半径方向内側に配置されていて、半径方向外側で中間の摩擦結合エレメントに摩擦係合していると云える。付加的または代替的には、対応して、中間の摩擦結合エレメントに摩擦係合している他方の摩擦結合エレメントが、中間の摩擦結合エレメントの半径方向外側に配置されていて、半径方向内側で中間の摩擦結合エレメントに摩擦係合していることが規定されている。つまり、互いに摩擦結合式に協働する摩擦結合エレメントの間にはそれぞれ、半径方向の摩擦係合部、好適には半径方向の摩擦係合部のみが形成される。本提案によりトレランスリングにより形成される、緊締された中間の摩擦結合エレメントは、摩擦結合部を生じさせる半径方向の緊締力、特に半径方向のばね力を形成する。したがって、摩擦結合エレメントの互いに対する圧着力を形成するための別個の圧着機構は、不要である。圧着力は、半径方向の緊締部もしくはばね力により引き起こされる。
【0011】
請求項2および請求項3は、複数の半径方向の隆起部を備えた中間の摩擦結合エレメント、特にトレランスリングの特別な構成を定義している。これらの隆起部は、半径方向で、中間の摩擦結合エレメントの側縁および特に側縁を形成する環状に延びる平坦な縁部に対して、かつ/または、中間の摩擦結合エレメントに対して残りの部分で、半径方向に突出する。周方向で半径方向の隆起部同士の間にある区分は、好適には駆動装置軸線を中心として円筒形に延びており、つまり駆動装置軸線に対して同軸的な円筒軸線を備えた円柱体の円筒周面上に延在している。半径方向の隆起部は、好適にはエンボス加工部であり、つまり押し込みにより形成されており、これにより、別の半径方向の面上に対応する凹設部もしくは型押し加工部が形成されている。したがって、中間の摩擦結合エレメントの隆起部、ひいては半径方向で最も突出している箇所は、好適には中間の摩擦結合エレメントの1つの摩擦面を形成する一方で、別の半径方向の面は、中間の摩擦結合エレメントの別の摩擦面を形成する。後者の摩擦面は、特に完全な円筒形であり、つまり平坦に形成されている。
【0012】
請求項4および請求項5は、クラッチ機構の特に好適な用途に関する。クラッチ機構は、請求項4によれば、好適には過負荷防止クラッチとして設計されている。請求項5によれば、摩擦係合している2つの摩擦結合エレメント間の限界トルクは、摩擦係合している別の2つの摩擦結合エレメント間の限界トルクよりも大きいので、過負荷時には、1対の摩擦結合エレメントもしくは対応する1対の摩擦面間で引き続き静止摩擦が生じており、つまり引き続き相対回動不能な結合部が残っているのに対して、半径方向の別の側では滑り摩擦が発生し、相対回動不能な結合部は解除される。この過負荷事例において一方の側で引き続き存在する相対回動不能な結合部は、好適には、組付け時に、特に隆起部を備えた中間の摩擦結合エレメントもしくはトレランスリングを両方の摩擦結合エレメントのうちの一方の摩擦結合エレメント内に押し込み、特に半径方向内方に押し込むことにより保証される。これにより、隆起部は、この押し込みによって摩擦係合している摩擦結合エレメントの材料内に食い込む。特に、中間の摩擦結合エレメントは、プレス嵌めによって、摩擦結合エレメントのうちの1つの摩擦結合エレメント、特に隆起部が面している摩擦結合エレメントに組付けられる。
【0013】
このような過負荷事例は、たとえば、テールゲートの手動の調節時に発生する。摩擦結合機構が滑ることができることによって、駆動装置の損傷が阻止される。
【0014】
請求項6~請求項12は、個別の摩擦結合エレメントの特に好適な構成に関する。請求項6は、特に、摩擦結合エレメントの複数の摩擦面のうちの少なくとも1つの摩擦面、好適には全ての摩擦面の好適な材料を定義している。特に好適には、この材料は金属である。さらに、請求項7および請求項8は、中間の摩擦結合エレメントもしくはトレランスリングの特別な構成に関し、請求項9~請求項12は、別の2つの摩擦結合エレメントの特に好適な構成に関する。
【0015】
請求項13に記載の特に好適な構成では、クラッチ機構は、モータ側の駆動装置構成要素および/またはモータとは反対側の駆動装置構成要素に差込結合部により連結されている。差込結合部は、特にかみ合いクラッチによって形成される。これにより、クラッチ機構は予め組み立てられたユニットとして製造可能であり、特に簡単にそれぞれの駆動装置構成要素に結合可能である。
【0016】
独立した価値を有する請求項14による別の教示によれば、自動車の閉鎖エレメントをモータにより調節するための駆動装置が特許請求されており、この駆動装置は、本提案による動力伝達装置を有している。駆動装置の説明に適している限りに、本提案による動力伝達装置の説明を参照することができる。駆動装置は、特に好ましくはスピンドル駆動装置として構成されており、本提案による動力伝達装置のクラッチ機構および/または摩擦結合機構は、好適には駆動装置の駆動装置モータとスピンドル-スピンドルナット伝動装置との間に挿入されている。
【0017】
同様に独立した価値を有する請求項15による別の教示によれば、自動車のボディに調節可能に連結された閉鎖エレメントと、閉鎖エレメントをモータにより調節するための本提案による少なくとも1つの駆動装置とを備えた、自動車の閉鎖エレメントアセンブリが特許請求される。同様に、本提案による動力伝達装置ならびに本提案による駆動装置に関する上述の説明を参照することができる。
【0018】
以下に本発明を単に実施例を図示した図面につき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本提案によるそれぞれ1つの動力伝達装置を備えた本提案による駆動装置を有する、本提案による閉鎖エレメントアセンブリを備えた自動車の後部領域を極めて概略的に示す図である。
図2】クラッチ機構と一緒に走入させられた状態で、図1に示した駆動装置のうちの1つの駆動装置を示す縦断面図である。
図3】a)は、クラッチ機構の第1の実施形態の個別の摩擦結合エレメントを示す分解斜視図であり、b)は、クラッチ機構の分解斜視図であり、c)は、組み立てられた状態でクラッチ機構を斜め上から見た斜視図であり、d)は、組み立てられた状態でクラッチ機構を斜め下から見た斜視図である。
図4図3に示したクラッチ機構を示す種々異なる断面図である。
図5】a)は、クラッチ機構の第2の実施形態の個別の摩擦結合エレメントを示す分解斜視図であり、b)は、クラッチ機構の分解斜視図であり、c)は、組み立てられた状態でクラッチ機構を斜め上から見た斜視図であり、d)は、組み立てられた状態でクラッチ機構を斜め下から見た斜視図である。
図6図5に示したクラッチ機構を示す種々異なる断面図である。
【0020】
図面に図示された動力伝達装置1は、閉鎖エレメント3、本実施形態では自動車のテールゲートをモータにより駆動調節するための駆動装置2に対応している。動力伝達装置1は、駆動装置2の駆動モータ4により形成された駆動力を案内若しくは伝達するために働く。
【0021】
本明細書では、テールゲートとして構成された閉鎖エレメント3の使用事例に主眼が置かれている。しかし、本提案による解決手段は、あらゆる別の種類の閉鎖エレメントにおいて同様に使用可能である。明細書の導入部分に挙げた例示的なリストを参照されたい。
【0022】
図1に図示されたテールゲート3には、合計で2つの駆動装置2が対応配置されている。これらの駆動装置2は、テールゲート開口5の両方の側縁部に、かつテールゲート3自体に作用する。本実施形態においてそれぞれスピンドル駆動装置として構成された駆動装置2には、端部側でボールソケット2a,2bが対応配置されている。これらのボールソケット2a,2bは、テールゲート開口5のそれぞれの側縁部およびテールゲート3に設けられた対応するボールヘッドに係合している。以下では、専ら図1において確認可能である駆動装置2を対象とする。全ての構成は、図1において視認可能ではない、背後に位置する駆動装置にも、単独の駆動装置2しか備えていないアセンブリにも対応して該当する。
【0023】
駆動装置2の動力伝達装置1は、摩擦トルクを提供するための摩擦結合機構6を備えている。摩擦結合機構6は、トルク伝達のために働く動力伝達装置1のクラッチ機構7の構成部分である。図3および図4は、クラッチ機構7の第1の実施形態を示しており、図5および図6は、第2の実施形態を示している。本提案により規定されたクラッチ機構7は、駆動装置2がセルフロック式に、つまり後戻り不能に構成されているアセンブリのために最も適している。それにもかかわらず、テールゲート3の手動の調節性を可能にするために、クラッチ機構7は滑りクラッチとして構成されているので、摩擦力の克服後に、テールゲート3の対応する手動の調節が可能になっている。
【0024】
図示されていない別の1つの実施形態では、動力伝達装置1はブレーキ機構をさらに有していてよく、ブレーキ機構は、クラッチ機構7内に統合されていてもよく、またはいずれにせよ、クラッチ機構7と一緒に1つの共通のケーシング内に配置されていてよい。このようなブレーキ機構は、動力伝達装置1の好適には持続的な制動のために働き、これによりテールゲート3を中間位置に特に確実に保持することができる。好適には、このようなブレーキ機構は、ディスクブレーキの形式またはドラムブレーキの形式で構成されている。
【0025】
クラッチ機構7は、駆動装置軸線Xを中心として回転可能な、互いに対して同軸的に配置された複数の摩擦結合エレメント8,9,10を有している。これらの摩擦結合エレメント8,9,10が、摩擦結合機構6を形成する。本実施形態において、かつ好適には、まさに3つの摩擦結合エレメント8,9,10が設けられている。中間の摩擦結合エレメント8、つまり両方の別の摩擦結合エレメント9,10の間に配置されている摩擦結合エレメント8は、これらの摩擦結合エレメント9,10にそれぞれ摩擦係合している。
【0026】
クラッチ機構7は、モータ側のクラッチ部材7aと、モータとは反対側のクラッチ部材7bとをさらに有している。クラッチ機構7は、モータ側のクラッチ部材7aを介してモータ側の駆動装置構成要素11に、モータとは反対側のクラッチ部材7bを介してモータとは反対側の駆動装置構成要素12に相対回動不能に連結されている。相対回動不能な連結とは、本明細書では、周方向U、つまり駆動装置軸線Xを中心とした周方向で形状結合部が生じ、この形状結合部が、好適には、特にクラッチ機構7とそれぞれの駆動装置構成要素11,12との間の軸方向の相対運動によって、解除可能でもあることを意味する。モータ側のクラッチ部材7aは、本実施形態において、かつ好適には、モータ側の駆動装置構成要素11の、モータ側のクラッチ部材7aに対応配置された、モータ側のクラッチ部材7aとは別個のクラッチ対向部材11aに、周方向Uで形状結合式に連結されており、モータとは反対側のクラッチ部材7bは、モータとは反対側の駆動装置構成要素12の、モータとは反対側のクラッチ部材7bに対応配置された、モータとは反対側のクラッチ部材7bとは別個のクラッチ対向部材12aに、周方向Uで形状結合式に連結されている。クラッチ機構7は、本実施形態において、かつ好適には、固有のケーシング7c内に配置されている。
【0027】
ここで重要であるのは、ます、摩擦結合エレメント8,9,10が、少なくとも部分的に互いに対して同心的に配置されている、つまり内側の摩擦結合エレメント9が、別の1つの摩擦結合エレメント8によって半径方向で取り囲まれており、この別の摩擦結合エレメント8自体も、第3の摩擦結合エレメント10により半径方向で取り囲まれていることである。
【0028】
「少なくとも部分的に同心的」とは、少なくとも、それぞれの摩擦結合エレメント8,9,10の摩擦面を形成する区分、つまり摩擦結合エレメント8,9,10の、互いにそれぞれ摩擦係合している面が、互いに対して同心的に配置されていることを意味している。
【0029】
他方では、中間の摩擦結合エレメント8が、トレランスリング13であり、摩擦結合式の結合部を提供するために、別の2つの摩擦結合エレメント9,10間に半径方向で緊締されていることも重要である。「半径方向で緊締」とは、それぞれ摩擦結合式に互いに当て付けられている両摩擦結合エレメント8,9および8,10間で半径方向に方向付けられた法線力が設定されていることを意味している。トレランスリング13は、このトレランスリング13が本実施形態において、かつ好適には、半径方向のばね力も発生させるように、構成されている。
【0030】
本実施形態において、かつ好適には、中間の摩擦結合エレメント8に摩擦係合している一方の摩擦結合エレメント9が、中間の摩擦結合エレメント8の半径方向内側に配置されている。この半径方向内側の摩擦結合エレメント9は、半径方向外側で中間の摩擦結合エレメント8に摩擦係合している。本実施形態において、かつ好適には、中間の摩擦結合エレメント8に摩擦係合している別の摩擦結合エレメント10が、中間の摩擦結合エレメント8の半径方向外側に配置されている。この半径方向外側の摩擦結合エレメント10は、半径方向内側で中間の摩擦結合エレメント8に摩擦係合している。つまり、トレランスリング13を両方の摩擦結合エレメント9,10の間に配置することにより、半径方向の緊締力、本実施形態では半径方向のばね力も形成され、このばね力は、それぞれの摩擦結合を確定する法線力を形成する。
【0031】
以下に、図3および図4に基づき、動力伝達装置1もしくはクラッチ機構7の第1の実施形態を、図5および図6に基づき、動力伝達装置1もしくはクラッチ機構7の第2の実施形態を詳細に説明する。
【0032】
これらの実施形態は、まず、中間の摩擦結合エレメント8、つまりトレランスリング13が、周方向Uに沿って、半径方向の複数の隆起部14を有している点において共通している。これらの半径方向の隆起部14は、これらの実施形態では、トレランスリング13の側縁13a,13bに対して、かつ/またはトレランスリング13の、これらの実施形態において、かつ好適には平坦な区分15に対して半径方向で突出している。「平坦な」とは、本明細書の意図において、半径方向の隆起部14間に周方向Uに沿って設けられている区分15が、駆動装置軸線Xを中心として円筒状に延びており、つまり、駆動装置軸線Xに対して同軸的な円筒軸線を備えた円筒体の円筒周面上に位置していることを意味している。隆起部14は、これらの実施形態において、かつ好適には、エンボス加工部であり、これにより、トレランスリング13の、半径方向の隆起部14とは反対側の半径方向面において、隆起部14にそれぞれ対応する凹設部16が形成されている。凹設部16は、これらの実施形態では、隆起部14と同様に、駆動装置軸線Xに対して平行に細長く延びる延在長さを有している。対応する凹設部16は、型押し加工部と呼ぶこともできる。しかし基本的には、隆起部および/または凹設部を有しておらず、特に平坦な、つまり周方向で完全に円筒形であるトレランスリングを設けることも可能である。
【0033】
図示された、その限りでは好適な両実施形態は、中間の摩擦結合エレメント8の半径方向の隆起部14が、ある場合には半径方向内方に向いており(図3および図4)、別の場合には半径方向外方に向いている(図5および図6)点において異なっている。基本的には、組み合わせも可能であり、つまり幾つかの半径方向の隆起部が半径方向内方に向いていて、別の隆起部が半径方向外方に向いている。
【0034】
図3および図4による構成では、半径方向内方に向いた隆起部14が、中間の摩擦結合エレメント8の半径方向内側の摩擦面8aを形成し、この摩擦面8aが、半径方向内側の摩擦結合エレメント9により形成された摩擦面9aに摩擦係合する。この場合、周方向Uに沿って隆起部14間に位置する区分15が、中間の摩擦結合エレメント8の半径方向外側の摩擦面8bを形成し、この摩擦面8bが、半径方向外側の摩擦結合エレメント10により形成された摩擦面10aに摩擦係合する。
【0035】
図5および図6に図示した実施形態では、隆起部14が、半径方向外側の摩擦面8bを形成し、この摩擦面8bが、外側の摩擦結合エレメント10により形成された摩擦面10aに摩擦係合する。したがってこの実施形態では、周方向Uに沿って隆起部14間に位置する区分15が、中間の摩擦結合エレメント8の半径方向内側の摩擦面8aを形成し、この摩擦面8aが、半径方向内側の摩擦結合エレメント9により形成された摩擦面9aに摩擦係合する。
【0036】
動力伝達装置1の2つの駆動装置構成要素11,12の相対回動不能な連結のために働くクラッチ機構7は、両方の実施形態ではそれぞれ、駆動装置構成要素11,12間に挿入された過負荷防止クラッチである。
【0037】
しかし両実施形態は、それぞれの摩擦面の間で規定される限界トルクにおいて互いに異なっている。したがって、図3および図4に示した実施形態では、中間の摩擦結合エレメント8と内側の摩擦結合エレメント9との間の限界トルクは、本実施形態において、かつ好適には隆起部14に基づいて、中間の摩擦結合エレメント8と外側の摩擦結合エレメント10との間の限界トルクよりも大きい。図5および図6に図示した実施形態では、これとは反対に、中間の摩擦結合エレメント8と外側の摩擦結合エレメント10との間の限界トルクは、本実施形態において、かつ好適には隆起部14に基づいて、中間の摩擦結合エレメント8と内側の摩擦結合エレメント9との間の限界トルクよりも大きい。より高い限界トルクは、特に、それぞれ対応配置された摩擦結合エレメント9,10の摩擦面内への隆起部14の食い込みにより達成される。
【0038】
個別の、または全ての摩擦面8a,8b,9a,10aは、好適には金属面として形成されている。これらの実施形態において、かつ好適には、各摩擦面が、金属面である。しかし基本的には、個別の、または全ての摩擦面が、プラスチック材料により形成されることも可能である。
【0039】
トレランスリング13により形成される中間の摩擦結合エレメント8は、少なくとも部分的に、これらの実施形態において、かつ好適には完全に、金属から成っている。トレランスリング13は、周方向Uにおいて中断した、つまりスリットを切られた金属リングである。しかし基本的には、一貫した、つまり周方向Uで中断していない金属リングを設けることも可能である。これらの実施形態において、かつ好適には、トレランスリング13は、2つの帯材端部を備えた湾曲した金属帯材により形成され、これらの帯材端部は、組み付けられた状態において周方向Uで対峙し、互いに対して周方向Uにおいて離間しているか、または互いに接触している。
【0040】
中間の摩擦結合エレメント8もしくはトレランスリング13は、これらの実施形態において、かつ好適には、中間の摩擦結合エレメント8の、最大の外側半径に対する軸方向の長さの比が、少なくとも1、好適には少なくとも1.2、さらに好適には少なくとも1.4、かつこれらの実施形態において、かつ好適には少なくとも1.6であるように、構成されている。付加的かつ代替的には、中間の摩擦結合エレメント8の、最小の内側半径に対する軸方向の長さの比が、少なくとも1.8、好適には少なくとも2.2、さらに好適には少なくとも2.6、かつこれらの実施形態において、かつ好適には少なくとも3であることが規定されていてよい。最大の外側半径は、中間の摩擦結合エレメント8の中心軸線から摩擦結合エレメント8の半径方向で最も外側に位置する箇所までの間隔であり、半径方向で最も外側に位置する箇所は、特に2つの半径方向の隆起部14間にある区分15によって規定されているか(図3および図4)、または半径方向外側に向いた隆起部14によって規定されている(図5および図6)。したがって、最小の内側半径は、中間の摩擦結合エレメント8の中心軸線から摩擦結合エレメント8の半径方向で最も内側に位置する箇所までの間隔であり、半径方向で最も内側に位置する箇所は、特に半径方向内側に向いた隆起部14によって(図3および図4)、または2つの半径方向の隆起部14間の区分15によって(図5および図6)規定されている。
【0041】
図3および図5には、クラッチ機構7、特に半径方向内側の摩擦結合エレメント9および半径方向外側の摩擦結合エレメント10の構造が図示されている。
【0042】
したがって、半径方向内側の摩擦結合エレメント9および/または半径方向外側の摩擦結合エレメント10は、複数の部分から成っていてよく、すなわち複数の、特に2つ以上の別個の構造部分から組み立てられていてよい。図3a)および図5a)が示すように、これらの実施形態では、両方の摩擦結合エレメント9,10は複数の部分から成っており、特にこれらの実施形態では2つの部品9b,9cもしくは10b,10cから成っている。
【0043】
本実施形態において、かつ好適には、それぞれの摩擦結合エレメント9,10の第1の部分9b,10bと、それぞれの摩擦結合エレメント9,10の第2の部分9c,10cとは、周方向Uおよび/または軸方向で、形状結合式、摩擦力結合式かつ/または材料結合式に互いに結合されている。2つの部分9b,9cもしくは10b,10cの間の形状結合部は、特にピン止め、係止部、またはプレス嵌めによって製造することができる。プレス嵌めによって、両方の部分9b,9cもしくは10b,10c間の摩擦力結合部を形成することができる。両方の部分9b,9cもしくは10b,10c間の材料結合部は、特に接着、摩擦溶接またはレーザー溶接、化学エッチング、または射出成形により製造することができる。特に好適には、半径方向内側の摩擦結合エレメント9および/または半径方向外側の摩擦結合エレメント10は、多成分(多色)射出成形部分、特に2成分(2色)射出成形部分である。
【0044】
図3および図4に示した実施例では、摩擦結合エレメント9も、摩擦結合エレメント10も、2成分の射出成形部分である。本実施形態において、かつ好適には、半径方向内側の摩擦結合エレメント9の第1の部分9bは、金属、好適には鋼から成っており、第2の部分9cは、プラスチック材料、特に熱硬化性樹脂から成っている。第2の部分9cは、この第2の部分9cが、好適には緩衝特性を有しているという利点がある。好適にはスリーブ形に構成されている第1の部分9bは、本実施形態では摩擦結合エレメント9の摩擦面9aを形成している。第1の部分9bの金属は、特に、摩擦結合エレメント9内への摩擦結合エレメント8の隆起部14の食い込みを促進するために、特に中間の摩擦結合エレメント8の金属よりも軟らかい金属である。さらに、本実施形態において、かつ好適には、半径方向外側の摩擦結合エレメント10の第1の部分10bが、同様に金属、好適には鋼から成っており、第2の部分10cが、プラスチック材料、特に熱硬化性樹脂から成っている。好適には同様にスリーブ形に構成されている第1の部分10bは、本実施形態では摩擦結合エレメント10の摩擦面10aを形成する。
【0045】
図5および図6に示した実施例では、摩擦結合エレメント9が同様に2成分射出成形部分である。これに対して、摩擦結合エレメント10では、両方の部分10bおよび10cが、軸方向で形状結合式に互いに内外に嵌め込まれ、かつ互いに接着または溶接等されている。その他の点は、摩擦結合エレメント9,10の構造および材料は、図3および図4に示した構造および材料に一致しているが、図5および図6に示した実施例では、摩擦結合エレメント10内への摩擦結合エレメント8の隆起部14の食い込みを促進するために、外側の摩擦結合エレメント10の第1の部分10bの金属は、特に、中間の摩擦結合エレメント8の金属よりも軟らかい金属を有しているという例外を有している。
【0046】
代替的に、かつここでは図示していないが、半径方向内側の摩擦結合エレメント9全体が金属、特に中間の摩擦結合エレメント8よりも軟らかい金属から成っているか、またはプラスチック材料から成っていることが規定されていてよい。付加的または代替的には、半径方向外側の摩擦結合エレメント10全体が、金属、特に中間の摩擦結合エレメント8よりも軟らかい金属から成っているか、またはプラスチック材料から成っていることが規定されていてもよい。
【0047】
ここでは図示していていない、付加的にブレーキ機構が設けられている場合、ブレーキ機構の摩擦エレメント、特にブレーキディスクが、摩擦結合エレメント10において相対回動不能に、かつ特に軸方向で固定されて配置されていてよく、ケーシング7cに相対回動不能に配置された対向摩擦エレメントと制動式に、特に持続的に制動式に協働することができる。
【0048】
特に図4および図6の断面図が示すように、クラッチ機構7の組付け状態では、半径方向内側の摩擦結合エレメント9は、半径方向外側の摩擦結合エレメント10に軸方向に係止されていてよい。これは、本実施例において、かつ好適には両方の実施例では、半径方向内側の摩擦結合エレメント9に設けられた中心の穴内へ半径方向外側の摩擦結合エレメント10の中心のキノコ形係止部(Rastpilze)を係止することにより行われる。図4に破線で示したように、付加的または代替的には、半径方向内側の摩擦結合エレメント9における半径方向外側の摩擦結合エレメント10の同心的な係止突起を介した係止も行うことができる。両方のバリエーションにおいて、半径方向外側の摩擦結合エレメント10に対する半径方向内側の摩擦結合エレメント9の回転運動を保証するために、好適には軸方向の遊びを伴う係止が行われる。また、摩擦結合エレメント9,10を互いに軸方向に形状結合式に、特に軸方向の遊びを伴って連結することができる別の種類の結合部も考えられる。
【0049】
さらに、図4および図6に図示したように、これらの実施形態において、かつ好適には、半径方向内側の摩擦結合エレメント9が、クラッチ機構7のモータ側のクラッチ部材7aを提供し、半径方向外側の摩擦結合エレメント10が、クラッチ機構7のモータとは反対側のクラッチ部材7bを提供する。しかし、図示していない代替的な実施形態では、半径方向内側の摩擦結合エレメント9が、クラッチ機構7のモータとは反対側のクラッチ部材7bを提供し、半径方向外側の摩擦結合エレメント10が、クラッチ機構7のモータ側のクラッチ部材7aを提供することも可能であるだろう。
【0050】
特に、一方では図3c)および図3d)において、他方では図5c)および図5d)において明らかであるように、クラッチ機構7のモータ側のクラッチ部材7aがモータ側の駆動装置構成要素11に、かつ/または、クラッチ機構7のモータと反対側のクラッチ部材7bがモータとは反対の側の駆動装置構成要素12に、それぞれ差込結合部17a,17bを介して結合されている。図3および図4に示した実施形態では、モータ側の差込結合部17aと、モータとは反対側の差込結合部17bは、それぞれかみ合いクラッチである。図5および図6の実施形態では、モータ側の差込結合部17aが同様にかみ合いクラッチであるが、モータとは反対側の差込結合部17bは歯列結合部である。基本的に、たとえば、スプラインプロフィール、多角形プロフィール、特に六角形プロフィール、六角星形プロフィール(Torxプロフィール)等を用いた別の種類の結合部も可能である。
【0051】
一方では図3b)~図3d)および他方では図5b)~図5d)の概観がそれぞれの実施形態に関して示しているように、クラッチ機構7を、まず予め組み立てられたユニットとして提供し、次いで、上述の差込結合部17a,17bを介してそれぞれの駆動装置構成要素11,12に形状結合式に連結することが可能である。
【0052】
独立した価値を有する別の教示によれば、上述の駆動装置2自体が特許請求される。したがって、本提案による駆動装置2は、対応して自動車の閉鎖エレメント3のモータによる調節のために働き、この場合に、第1の教示により構成された動力伝達装置1が設けられている。本提案による動力伝達装置1に関する全ての説明を参照することができる。
【0053】
図2に図示された特に好適な構成では、駆動装置2はスピンドル駆動装置である。駆動装置2は、駆動モータ4と、直線的な駆動運動を発生させるためのスピンドル19およびこのスピンドル19に対応配置されたスピンドルナット20を備えた、駆動モータ4に後置されたスピンドル-スピンドルナット伝動装置18とを有している。図2には、図示された、その限りで好適である実施例において、駆動装置2のクラッチ機構7が、駆動モータ4とスピンドル-スピンドルナット伝動装置18との間に介装されているという事実が示唆されている。この実施形態において、かつ好適には、対応して、モータ側の駆動装置構成要素11は、駆動装置軸であり、たとえば、駆動モータ4のモータ軸であり、または駆動モータ4とクラッチ機構7との間に任意に挿入される中間伝動装置21の伝動装置軸である。モータとは反対側の駆動装置構成要素12は、本実施形態において、かつ好適には、対応してスピンドル-スピンドルナット伝動装置18の伝動装置構成要素であり、本実施形態において、かつ好適には、スピンドル19である。
【0054】
同様に独立した価値を有する別の教示によれば、図1に図示された自動車の閉鎖エレメントアセンブリ自体が特許請求される。本提案による閉鎖エレメントアセンブリは、自動車のボディ22に調節可能に連結された閉鎖エレメント3と、閉鎖エレメント3のモータによる調節のための、本提案による少なくとも1つの駆動装置2とを有している。本提案による駆動装置2に関する全ての説明を参照することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6