(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】索体引留金具、くさび着脱治具、及び、引抜治具
(51)【国際特許分類】
F16G 11/04 20060101AFI20240415BHJP
F16B 2/14 20060101ALI20240415BHJP
H02G 7/05 20060101ALN20240415BHJP
【FI】
F16G11/04 B
F16B2/14 A
H02G7/05 060
(21)【出願番号】P 2021554812
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023207
(87)【国際公開番号】W WO2021090529
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2019202219
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】浦田 容輔
(72)【発明者】
【氏名】平井 仁
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-505535(JP,A)
【文献】実公昭50-016236(JP,Y1)
【文献】実開昭48-085080(JP,U)
【文献】特開2008-245373(JP,A)
【文献】特表2004-520508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 11/04
F16B 2/14
H02G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
索体が挿通される筒状体部を備える嵌合部材と、
前記筒状体部に挿通され、前記索体と当接する第1の部材と、
前記筒状体部に挿通され、くさび形状部分を有する第2の部材と、
を備え、
前記筒状体部と前記第1の部材の嵌合時に、前記第1の部材と前記嵌合部材との間で前記索体を拘束する力を発生させるように構成され、且つ、前記筒状体部と前記第2の部材の嵌合時に、前記第1の部材及び前記第2の部材と、前記嵌合部材と、の間で前記索体を拘束する力を発生させるように構成されていることを特徴とする索体引留金具。
【請求項2】
前記第1の部材が前記筒状体部に打ち込まれた状態で、前記第1の部材と前記筒状体部の間に前記第2の部材を挿入させる空間部が形成されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の索体引留金具。
【請求項3】
前記第1の部材がくさび形状部分を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の索体引留金具。
【請求項4】
前記第1の部材のくさび形状が、先端部側において傾斜角度がより大きく形成された第1の傾斜部を備えることを特徴とする請求項3に記載の索体引留金具。
【請求項5】
前記筒状体部の内面の前記第1の部材が挿入される側において、前記第1の傾斜部と係合する第1の傾斜面を備えることを特徴とする請求項4に記載の索体引留金具。
【請求項6】
前記第2の部材のくさび形状部分の傾斜角度が、前記第1の部材のくさび形状部分の傾斜角度以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の索体引留金具。
【請求項7】
前記第1の部材の幅が、前記第2の部材の幅より大きく形成されており、
前記筒状体部が、前記第1の部材の幅より大きな幅を有する第1の嵌合穴と、前記第2の部材の幅より大きく前記第1の部材の幅より小さな幅を有して前記第1の嵌合穴と連通する第2の嵌合穴と、を備えることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の索体引留金具。
【請求項8】
前記筒状体部の内面に、前記索体と2面で接する接触面が形成されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の索体引留金具。
【請求項9】
前記第1の部材に、前記索体と2面で接する接触面が形成されていることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の索体引留金具。
【請求項10】
前記筒状体部の内面における、前記2面の接触面に基づくV字形状を有する前記第1の部材のV字形状の先端部と対向する箇所において、凹部が形成されていることを特徴とする請求項9に記載の索体引留金具。
【請求項11】
前記第2の部材の後端部に、ねじ穴が形成されており、
前記嵌合部材に、前記第2の部材を脱着するためのくさび着脱治具を取り付けるための着脱治具係合部が形成されていることを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の索体引留金具。
【請求項12】
請求項11に記載の索体引留金具の前記第2の部材を脱着するためのくさび着脱治具であって、
前記ねじ穴に係合するボルト部材と、
前記着脱治具係合部に対して取り付けられる固定取り付け部と前記ボルト部材を挿通させるボルト挿通穴とを備えるフレーム部と、
を備え、
前記着脱治具係合部に前記固定取り付け部を取り付けた状態で、前記ボルト挿通穴に挿通させて前記ねじ穴に係合させた前記ボルト部材に螺合させたナットを、前記フレーム部に対して締め付けた際に、前記第2の部材に対する引き抜き力を生じさせることを特徴とするくさび着脱治具。
【請求項13】
前記フレーム部に、前記第2の部材を押し込むための第2のボルト部材が螺合する第2のボルト穴が形成されていることを特徴とする請求項12に記載のくさび着脱治具。
【請求項14】
前記フレーム部に、前記第1の部材を押し込むための第1のボルト部材が螺合する第1のボルト穴が形成されていることを特徴とする請求項12又は13に記載のくさび着脱治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤロープ等の索体を引留めるための索体引留金具、及び、くさび等を引き抜くためのくさび着脱治具又は引抜治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤロープ等の索体を引留めるため金具として、くさびを用いた金具が用いられている。特許文献1では、このようなくさびを用いた金具(くさびクランプ)に関する技術が開示されている。
特許文献1によって開示されるくさびクランプは、作業性に優れ、且つ、高い定着効率が得られ、非常に優れたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
くさびを用いた締結金具は、くさびを打ち込むことによって生じる締め付け力を利用するものである。即ち、くさび形状に基づいて、より厚い部分が打ち込まれて行くことにより、締め付け力を得るものである。例えば、比較的柔軟なロープに対して、高い締め付け力を得るためには、より厚い部分を打ち込む必要がある。この作業性を向上するためには、くさび形状の傾斜角度を大きくすることが考えられる。少ない打ち込み距離に対して、より厚い部分の打ち込みが可能となるものである。しかしながら、この場合、打ち込み距離は短くなるが、打ち込みに必要な打撃力が増大し、却って作業性が低下してしまう場合がある。
一方、くさび形状の傾斜角度を小さくした場合、打ち込みに必要な打撃力は小さくて済むが、より厚い部分を打ち込もうとした際に必要な打ち込み距離が長くなってしまう。打ち込み距離が長いということは、くさびの寸法を大きくする必要があるということであり、金具が長大化してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、打ち込みに必要な打撃力を低減しつつ、且つ、金具の大型化を低減することが可能な、くさびを用いた索体引留金具を提供することを目的とする。また、くさび等を引き抜くための引抜治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
索体が挿通される筒状体部を備える嵌合部材と、前記筒状体部に挿通され、前記索体と当接する第1の部材と、前記筒状体部に挿通され、くさび形状部分を有する第2の部材と、を備え、前記筒状体部と前記第1の部材の嵌合時に、前記第1の部材と前記嵌合部材との間で前記索体を拘束する力を発生させるように構成され、且つ、前記筒状体部と前記第2の部材の嵌合時に、前記第1の部材及び前記第2の部材と、前記嵌合部材と、の間で前記索体を拘束する力を発生させるように構成されていることを特徴とする索体引留金具。
【0007】
(構成2)
前記第1の部材が前記筒状体部に打ち込まれた状態で、前記第1の部材と前記筒状体部の間に前記第2の部材を挿入させる空間部が形成されるように構成されていることを特徴とする構成1に記載の索体引留金具。
【0008】
(構成3)
前記第1の部材がくさび形状部分を有することを特徴とする構成1又は2に記載の索体引留金具。
【0009】
(構成4)
前記第1の部材のくさび形状が、先端部側において傾斜角度がより大きく形成された第1の傾斜部を備えることを特徴とする構成3に記載の索体引留金具。
【0010】
(構成5)
前記筒状体部の内面の前記第1の部材が挿入される側において、前記第1の傾斜部と係合する第1の傾斜面を備えることを特徴とする構成4に記載の索体引留金具。
【0011】
(構成6)
前記第2の部材のくさび形状部分の傾斜角度が、前記第1の部材のくさび形状部分の傾斜角度以下であることを特徴とする構成3又は4に記載の索体引留金具。
【0012】
(構成7)
前記第1の部材の幅が、前記第2の部材の幅より大きく形成されており、
前記筒状体部が、前記第1の部材の幅より大きな幅を有する第1の嵌合穴と、前記第2の部材の幅より大きく前記第1の部材の幅より小さな幅を有して前記第1の嵌合穴と連通する第2の嵌合穴と、を備えることを特徴とする構成1から6の何れかに記載の索体引留金具。
【0013】
(構成8)
前記筒状体部の内面に、前記索体と2面で接する接触面が形成されていることを特徴とする構成1から7の何れかに記載の索体引留金具。
【0014】
(構成9)
前記第1の部材に、前記索体と2面で接する接触面が形成されていることを特徴とする構成1から7の何れかに記載の索体引留金具。
【0015】
(構成10)
前記筒状体部の内面における、前記2面の接触面に基づくV字形状を有する前記第1の部材のV字形状の先端部と対向する箇所において、凹部が形成されていることを特徴とする構成9に記載の索体引留金具。
【0016】
(構成11)
前記第2の部材の後端部に、ねじ穴が形成されており、前記嵌合部材に、前記第2の部材を脱着するためのくさび着脱治具を取り付けるための着脱治具係合部が形成されていることを特徴とする構成1から10の何れかに記載の索体引留金具。
【0017】
(構成12)
構成11に記載の索体引留金具の前記第2の部材を脱着するためのくさび着脱治具であって、前記ねじ穴に係合するボルト部材と、前記着脱治具係合部に対して取り付けられる固定取り付け部と前記ボルト部材を挿通させるボルト挿通穴とを備えるフレーム部と、を備え、前記着脱治具係合部に前記固定取り付け部を取り付けた状態で、前記ボルト挿通穴に挿通させて前記ねじ穴に係合させた前記ボルト部材に螺合させたナットを、前記フレーム部に対して締め付けた際に、前記第2の部材に対する引き抜き力を生じさせることを特徴とするくさび着脱治具。
【0018】
(構成13)
前記フレーム部に、前記第2の部材を押し込むための第2のボルト部材が螺合する第2のボルト穴が形成されていることを特徴とする構成12に記載のくさび着脱治具。
【0019】
(構成14)
前記フレーム部に、前記第1の部材を押し込むための第1のボルト部材が螺合する第1のボルト穴が形成されていることを特徴とする構成12又は13に記載のくさび着脱治具。
【0020】
(構成15)
引き抜き対象物を引き抜くための引抜治具であって、前記引き抜き対象物に係合する係合部と、前記引き抜き対象物が埋め込まれている部分と、前記係合部との間の距離を、ネジ機構に基づいて広げさせる引き抜き機構と、を備えることを特徴とする引抜治具。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、打ち込みに必要な打撃力を低減しつつ、且つ、金具の大型化を低減することが可能な、くさびを用いた索体引留金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明に係る実施形態1の索体引留金具を示す斜視図
【
図9A】本発明に係る実施形態2の引抜治具の使用状態を示す側面図
【
図10C】実施形態3の索体引留金具における、引抜治具の使用状態を示す図
【
図12A】本発明に係る実施形態4の索体引留金具を示す図
【
図13A】実施形態4の索体引留金具における、引抜治具の使用状態を示す図
【
図13B】実施形態4の索体引留金具における、引抜治具の使用状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0024】
<実施形態1>
図1A~Cは、本発明に係る実施形態1の索体引留金具を示す図であり、
図1Aは斜視図、
図1Bは側面図、
図1Cは分解斜視図である。
また、
図2は、本実施形態の索体引留金具の使用状態の一例を示す図である。
本実施形態の索体引留金具1は、ワイヤロープ等の索体2の端末を引留めるために、索体2の端末部に締結されるものである。
図2の例では、支柱3に索体2を締結させるために、支柱3に形成された穴を挿通された索体2の端部に索体引留金具1が締結されている。索体2に締結された索体引留金具1が支柱3に突き当たることで、索体2に張力(
図2での左方向への引張力)がかかった際にも、索体2が外れることなく支柱3に締結されるものである。
本実施形態の索体引留金具1は、
図1A~Cに示されるように、くさび形状部分を有する第1の部材12と、くさび形状部分を有する第2の部材13と、第1の部材12及び第2の部材13と索体2を内部に挿入可能な筒状体部を備える嵌合部材11と、を備える。
第1の部材12及び第2の部材13が索体2と共に嵌合部材11の内部へ打ち込まれることによって発生する圧力により、嵌合部材11、第1の部材12、第2の部材13及び索体2のそれぞれの相互間において摩擦力が生じ、これによって索体引留金具1が索体2に締結されるものである。
【0025】
図4A、Bは、第1の部材12を示す図であり、
図4Aは斜視図、
図4Bは断面図である。
第1の部材12は、第2の傾斜部122によって形成されるくさび形状を有する部材である。また、その先端部側において傾斜角度が第2の傾斜部122より大きく形成された第1の傾斜部121を備えている。なお、第1の傾斜部121や第2の傾斜部122の傾斜角度とは、第1の部材12の底面に対する第1の傾斜部121や第2の傾斜部122の相対角度、即ち、くさび形状の角度である。
第1の部材12は、後に説明する嵌合部材11の索体締結部111及び第2の嵌合穴113の幅よりも、幅広に形成されている。
第1の部材12の後端側には幅方向に突出したフランジ部123が形成されている。フランジ部123は、嵌合部材11の第1の嵌合穴112に第1の部材12が完全に入り込んでしまわないようにするための突き当たり部として機能する。
第1の部材12の上面には、上面側であることを示す“上”のマーク(刻印)と、1番目に嵌合部材11に打ち込むくさびであることを示す“1”のマーク(刻印)が印されている。なお、“上”は上を意味する漢字である。いずれも、作業ミス等の抑止や、作業の効率化のためのものである。なお、ここではマークが刻印によって形成されるものを例としているが、マークが第1の部材12に標記されるものであれば、任意の方法でマークを形成するものであって構わない(以下で説明する各マークについても同様である)。
【0026】
図5A、Bは、第2の部材13を示す図であり、
図5Aは斜視図、
図5Bは断面図である。
第2の部材13は、傾斜部132によって形成されるくさび形状を有する部材である。なお、傾斜部132の傾斜角度は、第2の部材13の底面に対する傾斜部132の相対角度であり、即ち、くさび形状の角度である。
第2の部材13の幅は、第1の部材12の幅より小さく形成されている。
第2の部材13の後端部には、ねじ穴135が形成されている。
また、第2の部材13の後端側には幅方向に突出したフランジ部133が形成されている。フランジ部133は、嵌合部材11の第2の嵌合穴113に第2の部材13が完全に入り込んでしまわないようにするための突き当たり部として機能する。
第2の部材13の上面には、上面側であることを示す“上”のマーク(刻印)と、2番目に嵌合部材11に打ち込むくさびであることを示す“2”のマーク(刻印)が印されている。いずれも、作業ミス等の抑止や、作業の効率化のためのものである。
【0027】
図3A~Dは、嵌合部材11を示す図であり、
図3Aは斜視図、
図3Bは側面図、
図3Cは
図3BのA-A線における断面図、
図3Dは
図3BのB-B線における断面図である。
本実施形態の嵌合部材11は、全体が、第1の部材12、第2の部材13及び索体2を受け入れる筒状体部として形成されている。
嵌合部材11の内部には、索体締結部111、第1の嵌合穴112、第2の嵌合穴113の、互いに連通する3つの貫通穴が形成されている。
索体締結部111は、第1の嵌合穴112と連通して設けられ、索体2と2面で接する接触面111a、bが形成されており、これによりV字溝状に形成されている。当該V字溝の2面によって索体2を拘束する機能については、特許文献1に記載されているものと同様であり、ここでの詳しい説明を省略する。
第1の嵌合穴112は、索体締結部111及び第2の嵌合穴113と連通して設けられ、第1の部材12の幅より大きな幅を有し、内部に第1の部材12を挿入可能に形成されている。
図3Bに示されるように、第1の嵌合穴112の上面は、θ1の傾斜角度(第1の嵌合穴112の底面との相対角度)を有する第2の傾斜面112T2を有している。また、第1の部材12が挿入される側において、θ2の傾斜角度(第1の嵌合穴112の底面との相対角度)を有する第1の傾斜面112T1を有する。第1の傾斜面112T1は、第1の部材12の挿入時に、第1の部材12の第1の傾斜部121と係合する面であり、θ2は第1の傾斜部121の傾斜角度と略同一である。また、第2の傾斜面112T2は、第1の部材12の嵌合時に、第1の部材12の第2の傾斜部122と係合する面であり、θ1は第2の傾斜部122の傾斜角度と略同一である。
第2の嵌合穴113は、第1の嵌合穴112と連通して設けられ、第2の部材13の幅より大きく第1の部材12の幅より小さな幅を有し、内部に第2の部材13を挿入可能に形成されている。
第2の嵌合穴113の上面は、傾斜面113Tを有している。傾斜面113Tは、第2の部材13の嵌合時に、第2の部材13の傾斜部132と係合する面であり、第2の傾斜面112T2と傾斜面113Tの相対角度は、傾斜部132の傾斜角度と略同一である。
嵌合部材11の上面と底面には、後に説明するくさび着脱治具を取り付けるための着脱治具係合部(本実施形態では係合溝)115が形成されている。
また、
図1Bに示されるように、嵌合部材11の側面には、第1の嵌合穴112と第2の嵌合穴113にそれぞれ対応する位置に、第1の部材12と第2の部材13をそれぞれ表すマーク(刻印)が印されている。いずれも、作業ミス等の抑止や、作業の効率化のためのものである。
【0028】
次に、上記構成を有する索体引留金具1の索体2への締結について説明する。
【0029】
先ず、嵌合部材11の内部に索体2を通す。索体2は、締結時に索体締結部111に位置するものであるので、基本的には索体締結部111付近に索体2を通す。
次に、第1の部材12を第1の嵌合穴112へと挿入し、打ち込んで行く。
図6A、Bは、第1の部材12の挿入時を示す図であり、
図6Aは索体引留金具1の中央部を長手方向と垂直方向に平行な面で切った断面図(以下「縦断面図」という)、
図6Bは
図6AのC-C線における断面図である。
図6A、Bに示されるように、第1の部材12の挿入時には、嵌合部材11の第1の傾斜面112T1と、第1の部材12の第1の傾斜部121とが係合しつつ、第1の部材12が打ち込まれていく。
本実施形態の第1の部材12は、第1の傾斜部121により、第1の部材12の先端部が薄く形成されるため、第1の部材12の先端の挿入の作業性に優れている。また、第1の傾斜部121は傾斜角度が大きく形成されているため、打ち込み距離に対して、くさびの厚み(即ち締結力)の増加が大きくなる。くさび(第1の部材12)の打ち込み当初は、締結力は小さく、したがって受ける反力も小さい。従って、打ち込み当初は、打ち込みに大きな打撃力は必要ないため、傾斜角度を大きくした第1の傾斜部121により、作業効率を向上する(より短い打ち込み距離とする)ものである。同時に、第1の部材12の打ち込み方向の寸法の低減も図られる。
第1の部材12の打ち込みが進むと、嵌合部材11の第2の傾斜面112T2と、第1の部材12の第2の傾斜部122とが係合する。第2の傾斜部122は第1の傾斜部121より傾斜角度が小さく設定されているため、くさび(第1の部材12)の打ち込みが進むことによる反力の増大時にも、必要な打撃力を許容範囲に抑えることができ、作業性に優れている。
上記説明から理解されるように、索体引留金具1は、嵌合部材11(筒状体部)と第1の部材12の嵌合時に、第1の部材12のくさび形状に基づいて発生する圧力によって第1の部材12と嵌合部材11との間で索体2を拘束する力を発生させるように構成されている。
【0030】
第1の部材12の打ち込みが終わったら、第2の部材13を第2の嵌合穴113へと挿入し、打ち込んで行く。
図6Bからも理解されるように、第1の嵌合穴112と第2の嵌合穴113が上記説明した構成を有していることにより、第1の部材12が筒状体部に打ち込まれた状態で、第1の部材12と筒状体部の間に第2の部材13を挿入させる空間部が形成されおり、当該空間部に第2の部材13を挿入する。
図7A、Bは、第2の部材13の打ち込み時を示す図であり、
図7Aは索体引留金具1の縦断面図、
図7Bは
図7AのD-D線における断面図である。
第2の部材13は、その底面が第1の部材12と接し、その上面が第2の嵌合穴113の上面である傾斜面113Tと接しながら、打ち込まれていく。
即ち、嵌合部材11(筒状体部)と第2の部材13の嵌合時に、第2の部材13のくさび形状に基づいて発生する圧力によって、第1の部材12及び第2の部材13と、嵌合部材11と、の間で索体2を拘束する力を発生させるように構成されているものである。
【0031】
図8A、Bは、索体引留金具1の索体2への締結がなされた状態を示す図であり、
図8Aは縦断面図、
図8Bは
図8AのE-E線における断面図である。
図8Bからも理解されるように、第2の部材13が打ち込まれた状態においては、第1の部材12は下に押し下げられ、嵌合部材11の第2の傾斜面112T2と第1の部材12の第2の傾斜部122は離れた状態となる。
索体引留金具1は、第1の部材12と第2の部材13の2つのくさびを有することにより、それぞれのくさびの傾斜角度を小さくしつつ、金具の長さを小さくすることができるようにしている。即ち、打ち込みに必要な打撃力を小さくしつつも索体引留金具1の長さ寸法を小さくすることができるものである。
一方で、締結力を生み出すくさびの厚みの増加量は、第1の部材12によるものと、第2の部材13によるものが合わさったものとなるため、高い締結力を得ることができる。
即ち、小型でありながら高い締結力を得ることができ、且つ、作業性に優れているものである。
【0032】
以上のごとく、本実施形態の索体引留金具1によれば、打ち込みに必要な打撃力を低減しつつも金具を小型化することができ、小型でありながら高い締結力を得ることができるという非常に優れた作用効果を奏する。
なお、本実施形態では、くさびが2本であるものを例として説明したが、本発明をこれに限るものではなく、くさびを3本以上とするものであっても構わない。
【0033】
本実施形態では、V字溝(接触面111a、b)が、嵌合部材11(筒状体部)側に形成されるものを例としているが、本発明をこれに限るものではなく、実施形態4で示すように、第1の部材12側に索体2と2面で接する接触面を形成するようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、第2の部材13を打ち込むための第2の嵌合穴113が、主に嵌合部材11(筒状体部)の貫通穴の形状に基づいて形成され、これによって“第1の部材が筒状体部に打ち込まれた状態で、第1の部材と筒状体部の間に形成される第2の部材を挿入させる空間部”を形成するものを例としているが、本発明をこれに限るものではない。
例えば、
図15に示したように、上面に凹部を有する第1の部材12´´´を用いることで、第2の部材13を打ち込むための空間部を形成するものであってもよい。
【0035】
なお、本実施形態では、第1の部材12の第2の傾斜部122と、第2の部材13の傾斜部132の傾斜角度が同一であるが、本発明をこれに限るものではなく、第2の部材のくさび形状部分の傾斜角度を、第1の部材のくさび形状部分の傾斜角度より小さくしてもよい。
2番目に打ち込む第2の部材の打ち込み時の方が反力が大きくなるため、必要に応じて、第2の部材の傾斜角度を小さくすることで、必要な打撃力を許容範囲に抑えるようにするものである。
【0036】
<実施形態2>
実施形態2では、実施形態1の索体引留金具1に対して、第1の部材12や第2の部材13の脱着を行うための治具であるくさび着脱治具について説明する。
図9A~Cは、本実施形態のくさび着脱治具(引抜治具)の使用状態を示す図であり、
図9Aは第1の部材12を打ち込んでいる状態を示す説明図、
図9Bは第2の部材13を打ち込んでいる状態を示す説明図、
図9Cは第2の部材13を引き抜いている状態を示す説明図である。
【0037】
本実施形態のくさび着脱治具4は、側面視において略コ字型の形状のフレーム(フレーム部)40を有している。コ字型の開口側である先端側には、嵌合部材11の着脱治具係合部115に対して取り付けられる固定取り付け部44が形成されている。本実施形態の固定取り付け部44は、係合溝である着脱治具係合部115に係合する凸部として形成される。
フレーム40のコ字型は、嵌合部材11に取り付けた状態で、その内部空間で第1の部材12や第2の部材13を嵌合部材11に対して着脱することができるように構成される。
コ字型の閉口側である背面には、ボルト挿通穴41と、第1のボルト穴42と、第2のボルト穴43が形成されている。
第1のボルト穴42は、第1の部材12を押し込むための第1のボルト部材B1が螺合するネジ穴である。
図9Aに示されるように、当該ボルト穴42に螺合する第1のボルト部材B1の先端が、第1の部材12の後端に当接するように、且つ、第1のボルト部材B1が、第1の部材12の打ち込み進行方向と略平行となるように構成される。
第2のボルト穴43は、第2の部材13を押し込むための第2のボルト部材(本実施形態では、第1のボルト部材B1と同一)が螺合するネジ穴である。
図9Bに示されるように、当該ボルト穴43に螺合する第2のボルト部材の先端が、第2の部材13の後端に当接するように、且つ、第2のボルト部材が、第2の部材13の打ち込み進行方向と略平行となるように構成される。
ボルト挿通穴41は、第2の部材13の後端部のねじ穴135に係合するボルト部材B2を挿通させるボルト挿通穴である。ボルト挿通穴41は、ボルト部材B2と螺合するネジ穴ではなく、ボルト部材B2を摺動可能に挿通させる穴である。ボルト挿通穴41は、
図9Cに示されるように、ボルト部材B2が、第2の部材13の引き抜き進行方向と略平行となるように構成される。
【0038】
次に、上記構成を有するくさび着脱治具4を使用した、索体引留金具1の第1の部材12や第2の部材13の脱着について説明する。
【0039】
図9Aに示されるように、嵌合部材11の着脱治具係合部115に対して固定取り付け部44を取り付けることにより、索体引留金具1に対してくさび着脱治具4を取り付ける。そして、第1の部材12の打ち込みを、第1のボルト穴42に螺合する第1のボルト部材B1をねじ込むことによって行う。
【0040】
次に、
図9Bに示されるように、第2の部材13の打ち込みを、第2のボルト穴43に螺合する第2のボルト部材(本実施形態では、第1のボルト部材B1と同一)をねじ込むことによって行う。なお、打ち込みに使用する第2のボルト部材は、第2の部材13の後端部のねじ穴135に対して螺合するものではなく、第2の部材13の後端部に単に当接して、第2の部材13を押し込むものである。
【0041】
上記により、第1の部材12と第2の部材13の打ち込みが行われ、索体引留金具1が索体2に締結される。
【0042】
索体引留金具1の取り外しの際には、くさび着脱治具4を上下反転させて索体引留金具1に対して取付けることで、ボルト挿通穴41が第2の部材13の後端のねじ穴135に対向するように配置する。
図9Cに示されるように、ボルト部材B2をボルト挿通穴41に挿通させ、ボルト部材B2の先端の小径ネジ部を第2の部材13の後端のねじ穴135に螺合させる。この状態で、ナットN1をねじ込むことで、ナットN1はフレーム40に当接し、さらにナットN1を締め付けると、相対的に、ボルト部材B2が引き抜かれることになる。これによってボルト部材B2と係合している第2の部材13が引き抜かれるものである。
なお、ナットN1の締め付け時に受ける力でボルト部材B2が回転しようとする方向が、ボルト部材B2の小径ネジ部をねじ穴135にねじ込む回転方向となる。従って、ナットN1の締め付け時にボルト部材B2と第2の部材13の係合が外れることはない。
【0043】
以上のごとく、本実施形態のくさび着脱治具4によれば、くさび(第1の部材12、第2の部材13)の打ち込みや引き抜きを、ボルトやナットの締め付けによって行うことができる。ボルトやナットの締め付けは、インパクトレンチ等を使用して行うことで、容易且つ効率よく作業を行うことができる。
【0044】
なお、本実施形態では、第2の部材13を、くさび着脱治具4を使用して引き抜くものとして説明したが、第1の部材12をくさび着脱治具によって引き抜くものとしてもよい。
また、本実施形態では、第2の部材13を打ち込む際に使用する第2のボルト穴43と、引き抜く際に使用するボルト挿通穴41を別途形成し、くさび着脱治具4を上下反転させて使用するものを例としたが、両者を共通化するものであってもよい。例えば、ボルト部材B2を、第1のボルト部材B1よりも細いサイズのものを使用することで、第2のボルト穴43に対してボルト部材B2を螺合させずに挿通させることができる。なお、ボルト部材B2として、第2のボルト穴43に対して細いボルトを使用しても、両者のネジ溝とネジ山が噛み合うと好ましくないため、両者のネジ溝とネジ山のピッチが違うものを使用する等により、両者が噛み合うことを抑止するとよい。
【0045】
本実施形態は、実施形態1の索体引留金具1に対して用いるくさび着脱治具として説明したが、本発明をこれに限るものではなく、上記で説明した治具の概念は、任意の引き抜き対象物に使用することができる。
即ち、引き抜き対象物と係合する係合部(本実施形態ではボルト部材が該当)と、引き抜き対象物が埋め込まれている部分(本実施形態では嵌合部材が該当)との間の距離を、ネジ機構に基づいて広げさせる引き抜き機構(本実施形態では、フレーム、ボルト部材、ナットが該当)により、上記説明した概念と同様に、引き抜き対象物をナットの締め付け等のネジ機構箇所の回転によって引き抜くことが可能な引抜治具とすることができる。
引き抜き対象物と係合部の係合は、本実施形態のごとくネジによる係合のほか、任意の係合方法を用いることができる。引き抜き対象物や係合部を使い捨てにしてもいいような場合には、取り外し不能な係合方法を採用するものであっても構わない。
引き抜き機構は、係合部と、引き抜き対象物が埋め込まれている部分との間の距離を、ネジ機構に基づいて広げさせることができる任意の構造を採用することができる。本実施形態では、引き抜き機構(フレーム)が、引き抜き対象物が埋め込まれている部分(嵌合部材)に取り付けられるものを例としているが、必ずしも引き抜き機構が、引き抜き対象物が埋め込まれている部分に取り付けられるものに限られるものではなく、“係合部と、引き抜き対象物が埋め込まれている部分との間の距離を、ネジ機構に基づいて広げさせる”ことができるものであればよい。例えば、本実施形態において、フレーム40が、支柱3に突き当たる構造を有しており、これによって、係合部(ボルト部材)が、埋め込まれている部分(嵌合部材)との距離を広げることができるように支持する構造、即ち、ナットの締め付け時に生じる引き抜き力に抗して支持する構造を有するようなものであってもよい。
【0046】
<実施形態3>
図10A~Cと、
図11には、実施形態3の索体引留金具と、これに対応したくさび着脱治具を示した。
図10Aは本実施形態の索体引留金具1´の一部を断面的に示した図であり、
図10Bは上面図である。
図10Cは索体引留金具1´に本実施形態のくさび着脱治具4´を使用している状態を示す図であり、
図11は、くさび着脱治具4´を示す正面図である。
索体引留金具1´は、嵌合部材11´の後部側において引留ネジ5と締結される引留部116を有していることにより、引留ネジ5と索体2を相互に締結できるようにしたものである。
【0047】
嵌合部材11´の前方側に形成される筒状体部及びこの中に打ち込まれる第1の部材12、第2の部材13の構成は、実施形態1と同様であるため、ここでの説明を省略する。
引留部116は、筒状体部の両側面を後方へ延長し、その後端が後端面で結合されることで、上面視(
図10B)で略コ字型に形成されている。後端面は、引留ネジ5を挿通させてナットで固定させる構成を有する。
引留部116の、筒状体部の両側面を後方へ延長した部分の内面には、くさび着脱治具4´を取り付けるための着脱治具係合部(ここでは係合溝)115´が形成されている。
【0048】
くさび着脱治具4´は、プレート状の部材のフレームによって構成され、第1の部材12を打ち込む際に使用する第1のボルト穴42´と、第2の部材13を打ち込む際に使用する第2のボルト穴43´が形成されている。なお、本実施形態の第2のボルト穴43´は、上記説明したように、第2の部材13を引き抜く際に使用するボルト部材を挿通させるボルト挿通穴と共通化されている。
図11に示されるように、くさび着脱治具4´の下端側には、嵌合部材11´の着脱治具係合部115´に対して取り付けられる固定取り付け部44´が、二股状に形成されている。
【0049】
くさび着脱治具4´を上からスライドさせるようにして、固定取り付け部44´を、嵌合部材11´の着脱治具係合部115´に嵌めることで、くさび着脱治具4´を嵌合部材11´に取り付ける。
これにより、第1のボルト穴42´と第2のボルト穴43´がそれぞれ第1の部材12と第2の部材13に対向する位置に配され、実施形態2で説明したように第1の部材12と第2の部材13の脱着を行うことができる。
【0050】
【0051】
本実施形態の索体引留金具100は、
図12Aに示されるように、くさび形状部分を有する第1の部材102と、くさび形状部分を有する第2の部材103と、第1の部材102及び第2の部材103と索体2を内部に挿入可能な筒状体部を備える嵌合部材101と、を備える。
第1の部材102及び第2の部材103が索体2と共に嵌合部材101の筒状体部の内部へ打ち込まれることによって発生する圧力により、嵌合部材101、第1の部材102、第2の部材103及び索体2のそれぞれの相互間において摩擦力が生じ、これによって索体引留金具100が索体2に締結されるものである。
【0052】
第1の部材102は、傾斜部1022によって形成されるくさび形状を有する部材である。第1の部材102の底面側には、索体2と2面で接する接触面が形成されており、これによりV字溝状に形成されている。くさび体に形成されたV字溝の2面によって索体2を拘束する機能については、特許文献1に記載されているものと同様であり、ここでの詳しい説明を省略する。
【0053】
第2の部材103は、傾斜部1032によって形成されるくさび形状を有する部材である。当該くさび形状は、第1の部材102の傾斜部1022と、嵌合部材101の筒状体部の傾斜面101Tとの間で形成されるくさび状の空間部に対応した形状である。
第2の部材103のくさび形状部分の傾斜角度は、嵌合部材101の筒状体部の傾斜面101Tの傾斜角度より小さい。
第2の部材13の後端部には、ねじ穴1035が形成されている。
【0054】
嵌合部材101は、第1の部材102及び第2の部材103と索体2を内部に挿入可能な筒状体部を有している。
筒状体部内面の上面は、傾斜面101Tを有している。
図12Aに示されるように、傾斜面101Tは、第1の部材102の傾斜部1022より大きな傾斜角度を有しており、従って、第1の部材102の傾斜部1022と筒状体部の傾斜面101Tとの間でくさび状の空間部が形成される。当該空間部は、“第1の部材102が筒状体部に打ち込まれた状態で、第1の部材102と筒状体部の間に形成される第2の部材103を挿入させる空間部”である。
図12B、Cに示されるように、筒状体部の内面における、第1の部材102のV字形状の先端部と対向する箇所には、凹部1011が形成されている。当該凹部1011は、
図12Cに示されるように、第1の部材102及び第2の部材103の打ち込みにより、第1の部材102が下方へ下がった場合において、第1の部材102のV字形状の先端部が干渉しないようにする逃げ部である。
また、嵌合部材101の上面と底面には、くさび着脱治具を取り付けるための着脱治具係合部1015が形成されている。
【0055】
図13A、Bは索体引留金具100に本実施形態のくさび着脱治具4´´を使用している状態を示す図であり、
図13Aは第2の部材103の打ち込みを行う状態を示す図、
図13Bは第2の部材103の引き抜き行う状態を示す図である。
くさび着脱治具4´´は、実施形態2と同様に、側面視において略コ字型の形状のフレーム40´´を有している。コ字型の開口側である先端側には、嵌合部材101の着脱治具係合部1015に対して取り付けられる固定取り付け部44´´が形成されている。
フレーム40´´のコ字型は、嵌合部材101に取り付けた状態で、その内部空間で第1の部材102や第2の部材103を嵌合部材101に対して着脱することができるように構成される。
コ字型の閉口側である背面には、第2の部材103を打ち込む際に使用するボルト部材B3を螺合するボルト穴43´´が形成されている。当該ボルト穴43´´は、第2の部材103を引き抜く際に使用するボルト部材B4を螺合させずに挿通させることができる。
第2の部材103の打ち込みや引き抜き作業については、実施形態2と同様の概念であるため、ここでの詳しい説明を省略する。
【0056】
本実施形態の索体引留金具100によれば、実施形態1と同様に、打ち込みに必要な打撃力を低減しつつも金具の小型化することができ、小型でありながら高い締結力を得ることができるという非常に優れた作用効果を奏する。
また、くさび体(第1の部材)にV字溝を備えさせる構成では、特許文献1で説明されているように、索体に張力がかかった際に、くさび体と索体が一体的に筒状体により深く入り込む作用が得られ、高い締結力を得ることができる。一方で、特許文献1の金具の場合、くさび体の打ち込み作業時においても、くさび体と索体が一体的に筒状体に入り込むため、
図12Aにおいて索体2がわずかに左方向へ移動する傾向となる。このことは、索体2に張力を与えた状態で索体引留金具を締結したいような場合に、張力が少し緩む傾向となり、用途によっては好ましくない面がある。これに対し、本実施形態の索体引留金具100によれば、第2の部材103の打ち込み時には、上記した索体2が移動することを抑止できるため、上記の問題を低減することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、第1の部材102もくさび形状を有するものを例として説明したが、必ずしも第1の部材がくさび形状を有することを要しない。
例えば、
図14に示したように、第1の部材102´がくさび形状を有していなくても、本実施形態で説明した索体引留金具100と概ね同等の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
1...索体引留金具
11...嵌合部材
111...索体締結部
111a、b...接触面(索体と2面で接する接触面)
112...第1の嵌合穴
112T1...第1の傾斜面
113...第2の嵌合穴
115...着脱治具係合部
12...第1の部材
121...第1の傾斜部
13...第2の部材
135...ねじ穴
2...索体
4...くさび着脱治具
40...フレーム(フレーム部)
41...ボルト挿通穴
42...第1のボルト穴
43...第2のボルト穴
44...固定取り付け部
B1...第1のボルト部材(第2のボルト部材)
B2...ボルト部材
N...ナット