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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】ガラス及びガラス製品
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/093 20060101AFI20240415BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20240415BHJP
   C03C 3/091 20060101ALI20240415BHJP
   C03B 11/00 20060101ALI20240415BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C03C3/093
C03C3/089
C03C3/091
C03B11/00 J
G02B1/00
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2021564131
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 CN2020082900
(87)【国際公開番号】W WO2020220923
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】201910354561.4
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU GUANG MING GUANG DIAN GLASS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.359,Sec.3,Chenglong Avenue,Long quan yi District,Chengdu,Sichuan China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】毛 露路
(72)【発明者】
【氏名】陳 雪梅
(72)【発明者】
【氏名】匡 波
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼ 良振
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-338296(JP,A)
【文献】特開2008-230949(JP,A)
【文献】特開2011-251854(JP,A)
【文献】特開昭48-085613(JP,A)
【文献】特表2001-523208(JP,A)
【文献】米国特許第05843856(US,A)
【文献】国際公開第2011/132753(WO,A1)
【文献】特開2000-063146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/093
C03C 3/089
C03C 3/091
C03B 11/00
G02B 1/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを55~80%、Bを0~10%、Alを0~10%、ZnOを2~20%、MgOを0~15%、LiO+NaO+KOを30%以下、含有し、NaO/KOの値が0.3~1.33、MgO/Bの値が1~20、Al /TiO の値が0.5~6であるガラス。
【請求項2】
請求項1に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、さらに、TiOを0~6%、ZrOを0~5%、CaOを0~10%、SrOを0~10%、BaOを0~10%、Sbを0~1%含有する特徴を有するガラス。
【請求項3】
SiO、ZnO、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物を含有し、酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを55~80%、ZnOを2~20%、LiO+NaO+KOを30%以下、を含み、(NaO+KO)/ZnOの値が0.4~10であり、NaO/KOの値が0.3~1.33、MgO/Bの値が1~20、Al /TiO の値が0.5~6であるガラス。
【請求項4】
請求項3に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、さらにBを0~10%、Alを0~10%、TiOを0~6%、MgOを0~15%、ZrOを0~5%、CaOを0~10%、SrOを0~10%、BaOを0~10%、Sbを0~1%含有する特徴を有するガラス。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを58~75%、Bを0.1~10%、Alを0.5~8%、TiOを0.1~6%、ZnOを5~15%、MgOを1~10%、LiO+NaO+KOを25%以下、ZrOを0~3%、CaOを0~5%、SrOを0~5%、BaOを0~5%、Sbを0~0.8%含有する特徴を有するガラス。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、B/SiOの値が0.002~0.1である特徴を有するガラス。
【請求項7】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、B/SiOの値が0.005~0.06である特徴を有するガラス。
【請求項8】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、B/Alの値が0.1~5である特徴を有するガラス。
【請求項9】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、B/Alの値が0.25~2である特徴を有するガラス。
【請求項10】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、(Al+TiO)/SiOの値が0.01~0.2である特徴を有するガラス。
【請求項11】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、(Al+TiO)/SiOの値が0.02~0.1である特徴を有するガラス。
【請求項12】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、MgO/Bの値が3~8である特徴を有するガラス。
【請求項13】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、NaO/KOの値が0.4~1.33である特徴を有するガラス。
【請求項14】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、NaO/KOの値が0.5~1.33である特徴を有するガラス。
【請求項15】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、(NaO+KO)/SiOの値が0.1~0.4である特徴を有するガラス。
【請求項16】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、(NaO+KO)/SiOの値が0.15~0.32である特徴を有するガラス。
【請求項17】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、(NaO+KO)/ZnOの値が0.4~10である特徴を有するガラス。
【請求項18】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、(NaO+KO)/ZnOの値が1~5である特徴を有するガラス。
【請求項19】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、KO/(MgO+CaO)の値が0.2~8である特徴を有するガラス。
【請求項20】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、KO/(MgO+CaO)の値が0.7~3である特徴を有するガラス。
【請求項21】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを60~73%、Bを0.5~4%、Alを1~5%、TiOを0.3~3%、ZnOを6~12%、MgOを3~8%、CaOを0~3%、SrOを0~3%、BaOを0~3%、LiO+NaO+KOを18%以下、Sbを0~0.5%含有する特徴を有するガラス。
【請求項22】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、LiOを0~10%、NaOを3~15%、KOを2~12%含有する特徴を有するガラス。
【請求項23】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、酸化物基準のモル百分率表示で、LiOを0~3%、NaOを5~11%、KOを4~9%含有する特徴を有するガラス。
【請求項24】
請求項1~4の何れか1項に記載のガラスであって、熱膨張係数α100/300℃が90×10-7/K以上、耐水安定性Dがクラス1、耐酸安定性Dがクラス1、破裂温度が180℃以上、転移温度Tが535℃以上、気泡度がAクラス以上、干渉縞がBクラス以上の特徴を有するガラス。
【請求項25】
請求項1~2の何れか1項に記載のガラスを化学強化して製造されたガラス製品。
【請求項26】
酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを55~80%、Bを0~10%、Alを0~10%、ZnOを2~20%、MgOを0~15%、LiO+NaO+KOを30%以下、TiOを0~6%、ZrOを0~5%、CaOを0~10%、SrOを0~10%、BaOを0~10%、Sbを0~1%含有し、NaO/KOの値が0.3~1.33、MgO/Bの値が1~20、Al /TiO の値が0.5~6であるガラス製品。
【請求項27】
酸化物基準のモル百分率表示で以下の9種の場合のうちの1つ以上を満たす特徴を有する請求項2に記載のガラス製品。
1)(NaO+KO)/SiOの値が0.1~0.4;
2)B/Alの値が0.1~5;
3)Al/TiOの値が0.2~18;
4)(Al+TiO)/SiOの値が0.01~0.2;
5)NaO/KOの値が0.4~1.33;
6)B/SiOの値が0.002~0.1;
7)(NaO+KO)/ZnOの値が0.4~10;
8)KO/(MgO+CaO)の値が0.2~8;
9)LiO+NaO+KOを25%以下、含有する。
【請求項28】
酸化物基準のモル百分率表示で以下の10種の場合のうちの1つ以上を満たす特徴を有する請求項2に記載のガラス製品。
1)(NaO+KO)/SiOの値が0.15~0.32;
2)B/Alの値が0.25~2;
3)Al/TiOの値が0.5~6;
4)(Al+TiO)/SiOの値が0.02~0.1;
5)MgO/Bの値が3~8;
6)NaO/KOの値が0.5~1.33;
7)B/SiOの値が0.005~0.06;
8)(NaO+KO)/ZnOの値が1~5;
9)KO/(MgO+CaO)の値が0.7~3;
10)LiO+NaO+KOを18%以下、含有する。
【請求項29】
酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを60~73%、Bを0.5~4%、Alを1~5%、ZnOを6~12%、MgOを3~8%、TiOを0.3~3%、ZrOを0~3%、CaOを0~3%、SrOを0~3%、BaOを0~3%、LiOを0~3%、NaOを5~11%、KOを4~9%、Sbを0~0.5%含有する特徴を有する、請求項2に記載のガラス製品。
【請求項30】
熱膨張係数α100/300℃が90×10-7/K以上、耐水安定性Dがクラス1、耐酸安定性Dがクラス1、破裂温度が180℃以上、転移温度Tが535℃以上、気泡度がAクラス以上、干渉縞がBクラス以上という特徴を有する、請求項26~29の何れか1項に記載のガラス製品。
【請求項31】
ガラス製品の表面応力Csが620MPa以上、応力層深さDoLが40nm以上の特徴を有する、請求項25~29の何れか1項に記載のガラス製品。
【請求項32】
請求項1~2の何れか1項に記載のガラスを用いて製造されたガラスプリフォーム、又は、請求項25~31の何れか1項に記載のガラス製品を用いて製造されたガラスプリフォーム。
【請求項33】
請求項1~2の何れか1項に記載のガラスを用いて製造された光学素子、又は請求項25~31の何れか1項に記載のガラス製品を用いて製造された光学素子、又は、請求項3に記載のガラスプリフォームを用いて製造された光学素子。
【請求項34】
請求項1~2の何れか1項に記載のガラスを用いて製造された光学機器、又は、請求項25~31の何れか1項に記載のガラス製品を用いて製造された光学機器、又は、請求項3に記載のガラスプリフォームを用いて製造された光学機器、又は、請求項3に記載の光学素子を用いて製造された光学機器。
【請求項35】
請求項1~2の何れか1項に記載のガラスを用いて製造されたレンズ金型、又は、請求項25~31の何れか1項に記載のガラス製品を用いて製造されたレンズ金型。
【請求項36】
請求項1~2の何れか1項に記載のガラス、又は、請求項25~31の何れか1項に記載のガラス製品の電子装置又は表示装置への応用、又は金属間のパッケージング又はシーリングへの応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスに関し、特に、熱膨張係数が大きく、耐熱衝撃性能に優れたガラス及びガラス製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、屈折率が1.70より大きい非球面メガネレンズや、多焦点非球面樹脂メガネレンズが近視矯正分野で幅広く応用されている。
【0003】
現在、主流の樹脂レンズの製造方法は、メガネレンズの曲率に合わせて設計された上下の金型に溶融樹脂を注入し、樹脂が冷却された後に上下の金型を分離することで、仕様に合った樹脂メガネレンズを得ることができる。樹脂レンズの品質と直行率を決める鍵は、射出成形金型の材質と設計にある。
【0004】
ガラスの精密圧縮成形金型は通常炭化ケイ素又は炭化タングステンを使用するが、このような材料の熱膨張係数は樹脂材料に比べてかなり低く、樹脂の射出成形プロセスにおいては高い表面品質を得るのは難しい。さらに重要なのは、上記の金型材質の場合は、加工は高価で、金型設計は精密な工作機械の加工が必要となり、少量多規格のメガネレンズ製品の射出成形にとって、価格は高すぎる。一方、ガラス型ブランクは圧縮成形により得られ、金型の表面設計は研削研磨により得られ、総合的なコストは炭化ケイ素型より大幅に低減される。
【0005】
すべてのガラスが樹脂金型として使えるわけではない。膨張係数の大きいガラスは、樹脂レンズの表面品質を向上させるのに有利ではあるが、従来技術における膨張係数が比較的大きいガラスの耐熱衝撃性能は往々にして低く、射出圧縮成形工程において、特に降温工程において、ガラス型は非常に強い熱衝撃を受けることがあり、熱衝撃性能が不良であれば、ガラス型は破裂することがあるので、樹脂レンズ用ガラスレンズ成形金型には優れた耐熱衝撃性能を必要とする。そのため、熱膨張係数が高く、耐熱衝撃性能に優れたガラスの開発がガラス研究開発の目標となっている。
【0006】
一方、ガラスを化学強化することにより、射出成形時の熱衝撃や圧力衝撃に対して、金型の表面応力をさらに上昇させることができる。そのため、化学強化が可能で、優れた化学強化性能を持つガラスが開発されれば、ガラスの応用の将来性が大幅に高まることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、より高い熱膨張係数を有し、耐熱衝撃性能に優れたガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)ガラスが下記酸化物基準のモル百分率表示でSiOを55~80%、Bを0~10%、Alを0~10%、ZnOを2~20%、MgOを0~15%、LiO+NaO+KOを30%以下含有するものである。
【0009】
(2)ガラスが下記酸化物基準のモル百分率表示で、TiOを0~6%、及び/又はZrOを0~5%、及び/又はCaOを0~10%。及び/又はSrOを0~10%、及び/又はBaOを0~10%、及び/又はSbを0~1%さらに含有するものである。
【0010】
(3)ガラスがSiO、ZnO、アルカリ土類金属酸化物及びアルカリ金属酸化物を含有し、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを55~80%、ZnOを2~20%、ZnOを2~20%、LiO+NaO+KOを30%以下、を含み、(NaO+KO)/ZnOの値が0.4~10であるものである。
【0011】
(4)ガラスが下記酸化物基準のモル百分率表示で、Bを0~10%、Alを0~10%、TiOを0~6%、MgOを0~15%、ZrOを0~5%、CaOを0~10%、SrOを0~10%、BaOを0~10%、Sbを0~1%さらに含有するものである。
【0012】
(5)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスが下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを58~75%、及び/又はBを0.1~10%、及び/又はAlを0.5~8%、及び/又はTiOを0.1~6%、及び/又はZnOを5~15%、及び/又はMgOを1~10%、及び/又はLiO+NaO+KOを25%以下、及び/又はZrOを0~3%、及び/又はCaOを0~5%、及び/又はSrOを0~5%、及び/又はBaOを0~5%、及び/又はSbを0~0.8%含有するものである。
【0013】
(6)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスにおいて、下記酸化物基準のモル百分率表示で、B/SiOの値が0.002~0.1、好ましくはB/SiOの値が0.005~0.08、より好ましくはB/SiOの値が0.005~0.06であるものである。
【0014】
(7)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスにおいて、下記酸化物基準のモル百分率表示で、B/Alの値が0.1~5であり、好ましくはB/Alの値が0.2~3であり、より好ましくはB/Alの値が0.25~2であるものである。
【0015】
(8)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスにおいて、下記酸化物基準のモル百分率表示で、Al/TiOの値が0.2~18、好ましくはAl/TiOの値が0.5~10、より好ましくはAl/TiOの値が0.5~6であるものである。
【0016】
(9)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスにおいて、下記酸化物基準のモル百分率表示で、(Al+TiO)/SiOの値が0.01~0.2であり、好ましくは(Al+TiO)/SiOの値が0.02~0.15であり、より好ましくは(Al+TiO)/SiOの値が0.02~0.1であるものである。
【0017】
(10)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスにおいて、下記酸化物基準のモル百分率表示で、MgO/Bの値が1~20、好ましくはMgO/Bの値が2~10、より好ましくはMgO/Bの値が3~8であるものである。
【0018】
(11)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスにおいて、下記酸化物基準のモル百分率表示で、NaO/KOの値が0.3~6であり、好ましくはNaO/KOの値が0.4~4であり、より好ましくはNaO/KOの値が0.5~3であるものである。
【0019】
(12)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスにおいて、下記酸化物基準のモル百分率表示で、(NaO+KO)/SiOの値が0.1~0.4であり、好ましくは(NaO+KO)/SiOの値が0.12~0.35であり、より好ましくは((NaO+KO)/SiOの値が0.15~0.32であるものである。
【0020】
(13)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスにおいて、下記酸化物基準のモル百分率表示で、(NaO+KO)/ZnOの値が0.4~10であり、好ましくは(NaO+KO)/ZnOの値が0.5~8であり、より好ましくは(NaO+KO)/ZnOの値が1~5であるものである。
【0021】
(14)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスにおいて、下記酸化物基準のモル百分率表示で、KO/(MgO+CaO)の値が0.2~8、好ましくはKO/(MgO+CaO)の値が0.5~5であり、より好ましくはKO/(MgO+CaO)の値が0.7~3であるものである。
【0022】
(15)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスが下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを60~73%、及び/又はBを0.1~6%、及び/又はAlを1~5%、及び/又はTiOを0.2~5%、及び/又はZnOを6~12%、及び/又はMgOを2~9%、及び/又はCaOを0~3%、及び/又はSrOを0~3%、及び/又はBaOを0~3%、及び/又はLiO+NaO+KOを20%以下、及び/又はSbを0~0.5%含有するものである。
【0023】
(16)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスが下記酸化物基準のモル百分率表示で、Bを0.5~4%、及び/又はTiOを0.3~3%、及び/又はMgOを3~8%、及び/又はLiO+NaO+KOを18%以下含有するものである。
【0024】
(17)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスが下記酸化物基準のモル百分率表示で、LiOを0~10%、好ましくはLiOを0~5%、より好ましくはLiOを0~3%、及び/又はNaOを3~15%、好ましくはNaOを4~12%、より好ましくはNaOを5~11%、及び/又はKOを2~12%、好ましくはKOを3~10%、より好ましくはKOを4~9%含有するものである。
【0025】
(18)(1)~(4)の何れか1つに記載のガラスにおいて、熱膨張係数α100/300℃が85×10-7/K以上、好ましくは90×10-7/K以上、より好ましくは92×10-7/K以上、さらに好ましくは94×10-7/K以上、及び/又は耐水安定性Dがクラス2以上、好ましくはクラス1、及び/又は耐酸安定性Dがクラス2以上、好ましくはクラス1、及び/又は破裂温度が170℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、さらに好ましくは200℃以上、及び/又は転移温度Tが530℃以上、好ましくは535℃以上、より好ましくは540℃以上、さらに好ましくは545℃以上、及び/又は気泡度がAクラス以上、好ましくはAクラス以上、及び/又は干渉縞がCクラス以上、好ましくはBクラス以上であるものである。
【0026】
(19)ガラス製品は、(1)~(18)の何れか1項に記載のガラスを化学強化してなるものである。
【0027】
(20)ガラス製品が下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを55~80%、Bを0~10%、Alを0~10%、ZnOを2~20%、MgOを0~15%、LiO+NaO+KOを30%以下、TiOを0~6%、ZrOを0~5%、CaOを0~10%、SrOを0~10%、BaOを0~10%、Sbを0~1%含有するものである。
【0028】
(21)(20)に記載のガラス製品であって、下記酸化物基準のモル百分率表示で、次の10種の場合の何れか1つ以上を満たすことを特徴とするものである。
1)(NaO+KO)/SiOの値が0.1~0.4、好ましくは0.12~0.35、より好ましくは0.15~0.32である。
2)B/Alの値が0.1~5、好ましくは0.2~3、より好ましくは0.25~2である。
3)Al/TiOの値が0.2~18、好ましくは0.5~10、より好ましくは0.5~6である。
4)((Al+TiO)/SiOの値が0.01~0.2、好ましくは0.02~0.15、より好ましくは0.02~0.1である。
5)MgO/Bの値が1~20、好ましくは2~10、より好ましくは3~8である。
6)NaO/KOの値が0.3~6、好ましくは0.4~4、より好ましくは0.5~3である。
7)B/SiOの値が0.002~0.1、好ましくは0.005~0.08、より好ましくは0.005~0.06である。
8)(NaO+KO)/ZnOの値が0.4~10、好ましくは0.5~8、より好ましくは1~5である。
9)KO/(MgO+CaO)の値が0.2~8、好ましくは0.5~5、より好ましくは0.7~3である。
10)LiO+NaO+KOを25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは18%以下、含有する。
【0029】
(22)(20)に記載のガラス製品が下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを58~75%、好ましくは60~73%、及び/又はBを0.1~10%、好ましくは0.1~6%、より好ましくは0.5~4%、及び/又はAlを0.5~8%、好ましくは1~5%、及び/又はZnOを5~15%、好ましくは6~12%、及び/又はMgOを1~10%、好ましくは2~9%、より好ましくは3~8%、及び/又はTiOを0.1~6%、好ましくは0.2~5%、より好ましくは0.3~3%、及び/又はZrOを0~3%、及び/又はCaOを0~5%、好ましくは0~3%、及び/又はSrOを0~5%、好ましくは0~3%、及び/又はBaOを0~5%、好ましくは0~3%、及び/又はLiOを0~10%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~3%、及び/又はNaOを3~15%、好ましくは4~12%、より好ましくは5~11%、及び/又はKOを2~12%、好ましくは3~10%、より好ましくは4~9%、及び/又はSbを0~0.8%、好ましくは0~0.5%含有するものである。
【0030】
(23)(20)~(22)の何れか1つに記載のガラス製品であって、熱膨張係数α100/300℃が85×10-7/K以上、好ましくは90×10-7/K以上、より好ましくは92×10-7/K以上、さらに好ましくは94×10-7/K以上、及び/又は耐水安定性Dがクラス2以上、好ましくはクラス1、及び/又は耐酸安定性Dがクラス2以上、好ましくはクラス1、及び/又は破裂温度が170℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、さらに好ましくは200℃以上、及び/又は転移温度Tが530℃以上、好ましくは535℃以上、より好ましくは540℃以上、さらに好ましくは545℃以上、及び/又は気泡度がAクラス以上、好ましくはAクラス以上、及び/又は干渉縞がCクラス以上、好ましくはBクラス以上であるものである。
【0031】
(24)(19)~(22)の何れか1つに記載のガラス製品であって、表面応力Csが600MPa以上、好ましくは620MPa以上、より好ましくは630MPa以上、より好ましくは640MPa以上、及び/又は応力層深さDoLは35nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは45nm以上、さらに好ましくは50nm以上であるものである。
【0032】
(25)ガラスプリフォームは、(1)~(18)の何れか1つに記載のガラスを用いて製造されたもの、又は、(19)~(24)の何れか1つに記載のガラス製品を用いて製造されたものである。
【0033】
(26)光学素子は、(1)~(18)の何れか1つに記載のガラスを用いて製造されたもの、又は(19)~(24)の何れか1項に記載のガラス製品を用いて製造されたもの、又は、(25)に記載のガラスプリフォームを用いて製造されたものである。
【0034】
(27)光学機器は、(1)~(18)の何れか1つに記載のガラスを用いて製造されたもの、又は(19)~(24)の何れか1つに記載のガラス製品を用いて製造されたもの、又は(25)に記載のガラスプリフォームを用いて製造されたもの、又は、(26)に記載の光学素子を用いて製造されたものである。
【0035】
(28)レンズ金型は、(1)~(18)の何れか1つに記載のガラスを用いて製造されたもの、又は(19)~(24)の何れか1つに記載のガラス製品を用いて製造されたものである。
【0036】
(29)(1)~(18)の何れか1つに記載のガラス、又は(19)~(24)の何れか1つに記載のガラス製品の電子装置又は表示装置への用途、又は金属間のパッケージング又はシーリングへの用途である。
【発明の効果】
【0037】
本発明の優れた効果は、組成の合理的な配合により、本発明により得られたガラスに、より高い熱膨張係数と優れた耐熱衝撃性能を併せ持たせることである。本発明のガラスは、化学強化に適しており、化学強化後に得られるガラス製品は、表面応力が大きく、応力層の深さが深い。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明のガラス及びガラス製品の実施形態について詳細に説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で適宜変更して実施することができる。また、重複した説明部分については、適切に説明を省略する場合もあるが、発明の要旨が限定されることはない。
【0039】
以下、本発明のガラス及びガラス製品の各組成範囲について説明する。本明細書では、特段の説明がなければ、各組成の含有量、総含有量は全て、酸化物の組成に換算したガラス物質の総量に対するモル百分率で表される。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス又はガラス製品の構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩及び水酸化物等が、溶融時に分解して酸化物に変化する場合において、当該酸化物の物質総モル量を100%とすることをいう。本文でいう「ガラス」とは、化学強化前のガラスを指し、本文では化学強化後のガラスを「ガラス製品」と称する。
【0040】
本明細書に記載されている数値範囲には、特に明記されていない限り、上限値及び下限値が含まれ、「以上」及び「以下」には端点値、ならびに範囲に含まれるすべての整数及び分数が含まれ、範囲が限定されている場合に記載されている具体的な値に限定されるものではない。本明細書で「及び/又は」とは包含的であり、例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、又はBのみ、あるいはAとBの両方を意味する。
【0041】
SiOは本発明でガラスを形成する基礎成分であり、その含有量が80%を超えると、ガラスは難融着性となり、製品中に気泡や結石などの介在物が現れやすく、内部の品質要求に達しない。同時にガラスの熱膨張係数は急激に低くなり、設計要件を満たせない。その含有量が55%を下回ると、ガラスの耐水性と耐酸性は設計要求を下回り、ガラスの耐熱衝撃性能は設計要件を満たせない。したがって、その含有量は55~80%、好ましくは58~75%、より好ましくは60~73%とする。
【0042】
をガラスに添加することにより、ガラスの溶融温度を低下させ、ガラスの内部品質を向上させることができる。本発明においてBの含有量が10%を超えると、ガラスの化学強化性能が急速に低下するため、本発明におけるBの含有量は0~10%とする。本発明のいくつかの実施形態では、0.1%以上のBを導入することによって、ガラス網目構造の強化が容易になり、それによってガラスの耐水性及び耐酸性がさらに向上し、特にBの含有量が0.5%以上とする場合には、ガラスの「泡立ち」の問題も効果的に解決され、ガラスの内部品質が改善されるので、Bの含有量が0.1~10%、より好ましくは0.1~6%、より好ましくは0.5~4%とする。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、B/SiOの値は、ガラスの化学強化性能と内部品質の間に強い相関があり、その比が0.002下回ると、ガラスの融解性能が急激に低下し、ガラス内部の気泡品質が要求に達しないことになる、もしその含有量が0.1を上回ると、ガラスの化学強化性能は急激に低下し、特にガラス製品の応力層の深さは設計要件を満たせない。したがって、その比は0.002~0.1、好ましくは0.005~0.08、さらに好ましくは0.005~0.06とする。
【0044】
適切な量のAlをガラスに添加することにより、ガラスの化学的強化性能を向上させると同時に、ガラスの化学的安定性を向上させることができる。これが10%を超えると、ガラスの化学強化性能が逆に低下するとともに、ガラスの溶融が困難となり、ガラス内部の品質低下をもたらすため、Alの含有量は10%以下となる。いくつかの実施形態では、Al含有量が0.5%を下回ると、化学強化性能を向上させる効果は明らかではない。これにより、Alの含有量を0~10%、好ましくは0.5~8%、さらに好ましくは1~5%とする。
ガラスに少量のZrOを添加することにより、ガラスの化学的安定性、特に耐水性を向上させることができ、同時にガラスの耐熱衝撃性能を向上させることができる。しかし、その凝集性は強く、ガラスに添加すると、特に5%を超える添加量の場合、熱膨張係数の急速な低下を招く。したがって、その含有量を0~5%、好ましくは0~3%に制限され、より好ましくは添加しないことである。
【0045】
本発明者らの研究によると、いくつかの実施形態では、ガラス中にBとAlが同時に存在する場合、その相対的な含有量がガラスの耐熱衝撃性能に大きな影響を与えることがわかった。B/Alの値が5より大きいか0.1より小さいと、ガラスの耐熱衝撃性能が低下し、破裂温度が大幅に低下する。したがって、B/Alの値を0.1~5、より好ましくは0.2~3、より好ましくは0.25~2とすることが好ましい。
【0046】
適切な量のTiOをガラスに添加することにより、ガラスの内部ネットワークの緻密性が顕著に向上し、それによってガラスの耐熱衝撃性能及び化学的安定性が向上する。その含有量が6%を上回ると、ガラスの熱膨張係数が低下し、設計要件を満たせないため、TiOの含有量は0~6%とする。いくつかの実施形態では、TiO含有量が0.1%を下回ると、ガラスの耐熱衝撃性能及び化学的安定性を向上させる効果は明らかではない。したがって、TiOの含有量は、好ましくは0.1~6%、より好ましくは0.2~5%、より好ましくは0.3~3%とする。
【0047】
いくつかの実施形態では、Al/TiOの値は、ガラス化学強化効果、特にガラス製品の表面応力(Cs)に大きな影響を与える。ガラス製品の表面応力は、その比が0.2より小さい又は18より大きい場合に大幅に低下する。これにより、Al/TiOの値を0.2~18、好ましくは0.5~10、より好ましくは0.5~6とする。
【0048】
いくつかの実施形態では、(Al+TiO)/SiO比はガラスの熱膨張係数に大きな影響を与え、その比が0.2より大きい場合、ガラスの化学的安定性はわずかに向上するが、熱膨張係数は急速に低下し、設計要件を満たせない。この比が0.01を下回ると、ガラスの耐熱衝撃性能が大幅に低下する。これにより、(Al+TiO)/SiOが0.01~0.2、好ましくは0.02~0.15、より好ましくは0.02~0.1とする。
【0049】
適切な量のZnOをガラスに添加することにより、ガラスの構造がより緻密になり、ガラスの化学的安定性が向上し、洗浄中の水及び酸性溶液に対するガラスの耐食性が向上する。また、一定量のZnOは、成形時のガラスの粘度を高めることができ、ガラス内部の縞を効果的に除去することができる。その含有量が20%を上回ると、ガラスの熱膨張係数が急速に低下し、設計の要求を満たすことができなくなる。その含有量が2%を下回ると、ガラスの耐水性や耐酸性が低下するとともに、ガラスの生産時にスジが発生しやすくなる。そのため、その含有量は2~20%、好ましくは5~15%、より好ましくは6~12%に限定される。
【0050】
MgO、CaO、SrO、BaOはアルカリ土類金属酸化物であり、製造プロセス性能から言えば、ガラスに添加することにより、ガラスの結晶化性能と高温粘度を調整することができ、製造時に気泡と縞が品質要求を満たしたガラスを容易に得ることができる。しかし、本発明者の研究によると、ガラスの耐熱衝撃性能を向上させるという点では、MgOを添加することが最も効果的であり、他の3種類のアルカリ土類金属酸化物はガラスの耐熱衝撃性能を向上させる能力がMgOよりもはるかに劣り、SrO、BaOなどは耐熱衝撃性能を損なう作用さえあることがわかった。従って、本発明のガラスのアルカリ土類金属酸化物はMgOが主体であり、熱衝撃抵抗性に余裕がある場合には、CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物を少量添加することにより、耐結晶化性、高温粘度、気泡度、干渉縞等の他の特性を最適化することができる。
【0051】
本発明では、MgOを15%以下に導入することにより、上記の特性を得ながら、MgOの過剰添加によるガラスの不安定化を防止することができる。いくつかの実施形態では、MgOの添加量が1%を下回ると、ガラスの熱衝撃に対する性能を向上させる効果は明らかではない、これが10%を上回ると、ガラスは非常に不安定になる。このため、MgO含有量は0~15%、好ましくは1~10%、より好ましくは2~9%、より好ましくは3~8%とする。
【0052】
いくつかの実施形態では、MgO/Bの比はガラスの熱衝撃抵抗性に大きな影響を与え、その比が1を下回ると、ガラスの熱衝撃抵抗性は設計要件を満たせない。この比が20を上回ると、ガラスの耐熱衝撃性能は逆に低下し、同時に耐結晶化性能が大幅に低下する。このため、MgO/B比は1~20、好ましくは2~10、より好ましくは3~8とする。
【0053】
ガラスの耐熱衝撃性能に余裕がある場合には、少量のCaOを添加してガラスの溶融性や高温粘度を調整することで、ガラスの気泡(介在物)レベルや干渉縞レベルをさらに高めることが考えられる。しかし、その含有量が10%を超えると、ガラスの耐熱衝撃性能が急速に低下する。これにより、CaOの含有量を0~10%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~3%、さらに好ましくは無添加とする。
【0054】
ガラスの耐熱衝撃性能にまだ大きな余裕がある場合には、少量のBaO又はSrOを添加してガラスの溶融性及び高温粘度を向上させることができ、SrOを使用することが好ましいが、SrOの含有量が10%を超えるとガラスの耐熱衝撃性能が急速に低下するため、SrOの含有量を0~10%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~3%、さらに好ましくは無添加とする。BaOを用いる場合には、含有量を0~10%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~3%、さらに好ましくは無添加とする。
【0055】
アルカリ金属酸化物とするLiO、NaO、KOをガラスに添加することにより、ガラスの高温粘度を低下させることができ、気泡や介在物をほとんど含まない製品を容易に得ることができる。その合計含有量が30%を超えると、ガラスの化学的安定性が急激に低下し、ガラスは非常に不安定になる。これにより、LiO、NaO、KOの合計含有量LiO+NaO+KOが30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは18%以下とする。
【0056】
本発明者の大量の試験により、上記3種類のアルカリ金属酸化物の相対的含有量はガラスの耐熱衝撃性能、熱膨張係数及び化学強化性能に密接に関連することを発見した。
【0057】
少量のLiOをガラスに添加することにより、ガラスの高温粘度及び溶融温度を速やかに低下させることができ、ガラスの気泡、ガラス結石、縞などの内在指標を効果的に改善することができ、他の2種類のアルカリ金属酸化物と比較してガラスの耐熱衝撃性能を向上させることができる。しかし、その含有量が10%を超えると、ガラスの転移温度が急速に低下し、要求に達しない。これにより、LiOの添加量を0~10%、好ましくは0~5%、より好ましくは0~3%、さらに好ましくは無添加とする。
【0058】
適切な量のNaOをガラスに添加することにより、ガラスの化学強化性能を迅速に向上させることができ、ガラスの熱膨張係数を向上させることができるとともに、その供給する自由酸素がガラスの構造をより緊密にすることを促し、ガラスの耐熱衝撃性能を向上させることができる。もしその含有量が3%を下回ると、上述の効果は明らかではなく、同時にガラスの粘度が急激に増大して、高品質の内的品質のガラスを得ることが困難とする、その含有量が15%を超えると、ガラスの耐熱衝撃性能が著しく低下し、ガラスの化学的安定性が著しく低下する。これにより、NaOの含有量を3~15%、好ましくは4~12%、より好ましくは5~11%とする。
【0059】
適切な量のKOをガラスに添加することにより、ガラスの化学強化性能の向上を促進し、ガラスの熱膨張係数を著しく向上させることができる。もしその含有量が2%を下回ると、上述の効果は明らかではない、その含有量が12%を上回ると、ガラスの化学的安定性が急速に低下し、同時にガラスは極めて不安定になる。したがって、KOの含有量は、2~12%、好ましくは3~10%、より好ましくは4~9%とする。
【0060】
本発明者らは、NaOとKOが共存すると、複雑な相乗効果が形成されることを明らかにした。いくつかの実施形態では、NaO/KO値が0.3~6、好ましくは0.4~4、さらに好ましくは0.5~3であれば、ガラスの化学強化性能、耐熱衝撃性能、及び化学的安定性は同時に最適な状態になる。
【0061】
(NaO+KO)/SiOの比はガラスの熱膨張係数、耐熱衝撃性能と内在品質に大きく影響する。いくつかの実施形態では、((NaO+KO)/SiOが0.1より小さい場合、ガラス粘度が大きくなり、気泡、ストライプなどの内部品質が低下し、ガラスの熱膨張係数が小さくなり、設計要件を満たせない。(NaO+KO)/SiOが0.4より大きいと、ガラスの耐結晶化性が低下し、熱衝撃性が急速に低下する。これにより、((NaO+KO)/SiOが0.1~0.4、好ましくは0.12~0.35、より好ましくは0.15~0.32とする。
【0062】
いくつかの実施形態では、(NaO+KO)/ZnOの比は、ガラスの化学強化性能及び耐熱衝撃性能、特にガラス製品の応力層深さに大きな影響を与える。(NaO+KO)/ZnOが0.4より小さい場合、ガラスの応力層の深さは設計要件を満たせない。(NaO+KO)/ZnOが10より大きいと、ガラスの耐熱衝撃性能は急速に低下し、設計要件を満たせない。このため、(NaO+KO)/ZnOは0.4~10、好ましくは0.5~8、より好ましくは1~5とする。
【0063】
いくつかの実施形態では、KO/(MgO+CaO)の比は、ガラスの結晶化抵抗性とガラス製品の応力層深さとの間に大きな相関があり、その比が0.2を下回ると、ガラス製品の応力層深さは設計要件を満たせない、この比が8より大きいと、ガラスの耐析出性が悪くなり、二次圧縮成形の要求を満たすことができない。したがって、KO/(MgO+CaO)の比は0.2~8、好ましくは0.5~5、より好ましくは0.7~3とする。
【0064】
Sbは清澄剤であり、ガラスに添加することで気泡の除去が容易になる。本発明では、その含有量を0~1%、好ましくは0~0.8%、さらに好ましくは0~0.5%とする。
本発明のガラス及びガラス製品の性能について以下に説明する。
[熱膨張係数]
【0065】
ガラス又はガラス製品の100℃~300℃の熱膨張係数(α100/300℃)をGB/T 7962.16-2010に規定された方法で測定する。
本発明のガラス又はガラス製品は、85×10-7/K以上、好ましくは90×10-7/K以上、より好ましくは92×10-7/K以上、さらに好ましくは94×10-7/K以上の熱膨張係数(α100/300℃)を有する。
[耐水作用安定性]
【0066】
ガラス又はガラス製品の耐水安定性(D)は、GB/T 17129に規定された方法で試験する。
【0067】
本発明のガラス又はガラス製品は、2クラス以上、好ましくは1クラスとする耐水安定性(D)を有する。
[耐酸安定性]
【0068】
ガラス又はガラス製品の耐酸安定性(D)は、GB/T 17129に規定された方法で試験する。
【0069】
本発明のガラス又はガラス製品の耐酸安定性(D)は、2クラス以上、好ましくは1クラスとする。
[耐熱衝撃性能]
【0070】
ガラス又はガラス製品の耐熱衝撃性能試験は水冷法を用いて行い、ガラス試料を直径30mm、厚さ2mmの輪状片に加工し、表面を滑らかに研磨する。加工したガラスの輪状片を昇温炉に入れて、あらかじめ設定された温度まで昇温し、100℃から5分間保温し、ガラス輪状片の温度が均一になってから取り出して10℃の冷水に投入し、ガラスが破裂していなければ、昇温炉の温度を10℃上げて、ガラス輪状片が冷水に投入されて破裂するまで、さらに上記の実験を行い、この時の昇温炉の温度を「破裂温度」と記録し、破裂温度が高いほど、ガラスの熱衝撃に強い。
【0071】
本発明のガラス又はガラス製品の破裂温度は、170℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、さらに好ましくは200℃以上とする。
[転移温度]
【0072】
ガラス又はガラス製品の転移温度(T)は、GB/T 7962.16~2010に規定される方法で試験する。
【0073】
本発明のガラス又はガラス製品は、530℃以上、好ましくは535℃以上、より好ましくは540℃以上、さらに好ましくは545℃以上の転移温度(T)とする。
[耐結晶性]
【0074】
ガラス又はガラス製品の耐結晶化性試験方法は、サンプルガラスを20×20×10mm規格に切断し、T+230℃のマッフル炉に入れて30分間保持し、取り出した後、保温綿に入れて徐冷し、冷却した後、表面の結晶化を観察する。冷却後のガラスは明らかな解晶があれば、ガラスの耐解晶性能は悪く、「B」と記録する。冷却後ガラスが明らかな結晶化がなければ、ガラスの耐結晶化性能は二次プレスの要求を満たして、「A」と記録する。
【0075】
本発明のガラス又はガラス製品は、二次プレス製造ブランクの需要を満たすAクラスに達し、結晶化抵抗性を満たす。
[気泡度]
【0076】
ガラス又はガラス製品の気泡度(介在物を含む)をGB/T7962.8~2010に規定された試験方法で測定し、分類する。
【0077】
本発明のガラス又はガラス製品は、Aクラス以上、好ましくはAクラス以上の気泡度を有する。
[ストリーク]
【0078】
ガラス又はガラス製品の縞の程度は、点光源とレンズからなる干渉計を用いて、縞が最も見やすい方向から標準試料と比較して4ランクで検査し、詳細は表1を参照する。
【表1】
【0079】
本発明のガラス又はガラス製品の縞は、Cクラス以上、好ましくはBクラス以上とする。
<ガラスの製造方法>
【0080】
本発明におけるガラスの製造方法は、以下の通りとする。ガラス用の一般的な原料(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩など)を比率で計量して混合し、この混合原料をプラチナるつぼに入れ、1320~1420℃で2.5~4時間融解し、清澄、撹拌、均質化した後、気泡がなく、未溶解物のない均質な溶融ガラスを得、この溶融ガラスを金型で鋳型を作り、焼鈍して製造する。
<ガラス製品の製造方法>
【0081】
本発明により得られるガラスはプリフォームに加工された後、化学強化する。本発明に係る化学強化はイオン交換法であり、本発明のガラスは当技術分野で公知の方法によりイオン交換することができる。イオン交換プロセスでは、ガラス中のより小さな金属イオンが、ガラスに近い、同じ原子価を有するより大きな金属イオンに置換又は「交換」される。小さいイオンを大きいイオンで置換してガラスに圧縮応力を構築し、圧縮応力層を形成する。
【0082】
いくつかの実施形態では、金属イオンは一価のアルカリ金属イオン(例えば、Na、K、Rb、Csなど)であり、イオン交換は、ガラス中のより小さな金属イオンを置換するために使用されるより大きな金属イオンの少なくとも1つの溶融塩を含む塩浴にガラスを浸漬することによって行われる。あるいは、他の1価の金属イオン、例えばAg、Tl、Cu等も交換に用いることができる。ガラス製品のための1つ以上のイオン交換プロセスは、単一の塩浴に浸漬すること、又は、洗浄及び/又は焼鈍の工程を介して、同一又は異なる組成を有する複数の塩浴に浸漬することを含むが、これらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施形態では、ガラスは、約420℃~480℃の温度で溶融したNa塩(例えばNaNO)の塩浴中に約4~20時間浸漬することによってイオン交換されてもよい。この実施形態では、ガラス中のLiイオンの一部がNaイオンで置換され、表面圧縮層が形成される。いくつかの実施形態では、ガラスは、実施形態をイオン交換するために、約420℃~480℃の温度で溶融K塩(例えば、KNO)の塩浴中に4~20時間浸漬することができる。
実施形態によっては、ガラスの表層にイオンを注入するイオン注入法や、ガラスを加熱した後に急冷する熱強化法がある。
【0084】
本発明により得られたガラス製品は、上記の性能に加えて、以下の性能を有する。
[表面応力と応力層の深さ]
【0085】
ガラスを30×30×3mmに加工して両面研磨した後、塩浴(成分99.5%硝酸カリウム、0.5%添加物)に入れて450℃で16時間化学強化した後、FSM6000LEテスターを用いてガラス製品の表面応力(Cs)と応力層深さ(DoL)を測定する。
【0086】
本発明のガラス製品の表面応力(Cs)は600MPa以上、好ましくは620MPa以上、より好ましくは630MPa以上、より好ましくは640MPa以上とする。
【0087】
本発明のガラス製品は、応力層深さ(DoL)が35nm以上、好ましくは40nm以上、より好ましくは45nm以上、さらに好ましくは50nm以上とする。
【0088】
本発明のガラス又はガラス製品は、ガラスプリフォーム、光学素子、光学機器、レンズ(例えば、樹脂製メガネレンズ)を製造するための金型に用いることができる。
ガラスプリフォームは、例えば研削加工の手段を用いて、あるいは再熱圧成形、精密プレス成形等の圧縮成形の手段を用いて、製造されたガラス又はガラス製品から製造することができる。すなわち、ガラスプリフォームは、ガラス又はガラス製品に研削、研磨等の機械加工を施すことにより製造することができ、又は、ガラス又はガラス製品から圧縮成形用のプリフォームを製造し、このプリフォームを再熱圧成形した後に研磨加工を施してガラスプリフォームを製造するか、あるいは、研磨加工を施して製造したプリフォームを精密プレス成形してガラスプリフォームを製造する。
【0089】
なお、ガラスプリフォームを製造する手段は、上記の手段に限定されない。以上のように、本発明のガラス又はガラス製品は、各種の光学素子や光学設計に有用であり、特に本発明のガラス又はガラス製品からプリフォームを形成し、これを用いて、再熱圧成形、精密プレス成形等を行い、レンズやプリズム等の光学素子を製造することが好ましい。
【0090】
本発明のガラスプリフォーム及び光学素子は、上記本発明のガラス又はガラス製品から形成される。本発明のガラスプリフォームは、ガラス又はガラス製品が有する優れた特性を有する。本発明の光学素子は、ガラスやガラス製品が有する優れた特性を有し、光学的価値の高い各種レンズやプリズム等の光学素子を提供することができる。
【0091】
レンズの例として、レンズ面が球面或いは非球面の凹面のメニスカスレンズ、凸面のメニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ等各種レンズがある。
本発明のガラス又はガラス製品により形成された光学素子は、例えば、カメラ、撮影装置、ディスプレイ、監視装置等の光学機器を製造することができる。
【0092】
本発明のガラス又はガラス製品は、携帯電話、腕時計、コンピュータ、タッチディスプレイなどの電子機器又はディスプレイ機器に適用することができる。
本発明のガラス又はガラス製品は、プラチナ、鉄ニッケル合金、鉄ニッケルクロム合金等のメタルシール又はパッケージングに適用することができる。
実施例
【0093】
本発明の技術的解決手段をさらに理解するために、本発明のガラス及びガラス製品の実施形態について説明する。これらの実施例は、本発明の範囲を限定しないことに留意されたい。
<ガラスの実施例>
【0094】
本実施形態では、上記のガラスの製造方法を用いて、表~表に示す組成のガラスを得る。また、本発明の試験方法により各ガラスの性能を測定し、その測定結果を表~表に示し、本発明の実施例1~15の構成において、K1はB/SiOの値とする。K2はB/Alの値とする。K3はAl/TiOの値とする。K4は(Al+TiO)/SiOの値とする。K5はMgO/Bの値とする。K6はLiO+NaO+KOの値とする。K7はNaO/KOの値とする。K8は(NaO+KO)/SiOの値とする。K9は(NaO+KO)/ZnOの値とする。K10はKO/(MgO+CaO)の値とする。
【表2】
【表3】
<ガラス製品の実施例>
【0095】
~表で得られた実施例1~15のガラスを、上記のガラス製品の製造方法に従ってガラス製品とし、その表面応力と応力層深さを試験し、その結果を表~表に記載する。
【表4】
【表5】