(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】還流式紙葉収納装置、及び紙葉処理装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/06 20060101AFI20240415BHJP
B65H 29/50 20060101ALI20240415BHJP
G07D 11/13 20190101ALI20240415BHJP
【FI】
B65H1/06 C
B65H29/50
G07D11/13
(21)【出願番号】P 2022046948
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000230858
【氏名又は名称】日本金銭機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】生山 浩通
(72)【発明者】
【氏名】ダオ グエン ティエン
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-116081(JP,A)
【文献】特開平08-217263(JP,A)
【文献】特開2007-052656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 29/00-29/10
B65H 29/26-29/30
B65H 29/34-29/51
G07D 1/00-3/16
G07D 9/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉を収納する紙葉収納空間と、
前記紙葉収納空間内に紙葉を導入したり、該紙葉収納空間内の紙葉を繰出す紙葉入出手段と、
前記紙葉収納空間内に配置され、前記紙葉入出手段により導入された紙葉を積載する積載台と、
前記積載台上の紙葉の下面を支持して前記紙葉を昇降させるリフターと、
前記積載台の上方を昇降し、前記積載台上の紙葉の上面に載置される押え部材と、
前記押え部材を昇降可能に支持する押え部材昇降機構と、
弾性部材を備え、該弾性部材により前記押え部材を下降方向へ付勢したり、付勢を解除する加圧調整機構と、
を備えた還流式紙葉収納装置であって、
前記リフターを昇降させるリフター昇降機構を更に備え、
前記リフター昇降機構は、前記紙葉入出手段により導入された紙葉を前記積載台上に積載するために前記リフターを該積載台の積載面よりも上方に停止させる上昇位置と、前記紙葉入出手段により前記積載台上の紙幣を外部に繰出すために前記リフターを該積載台の積載面以下の高さ位置に停止させる下降位置と、前記紙葉入出手段による紙葉の繰出し後に前記紙葉入出手段により紙葉を前記積載台へ戻すために前記リフターを前記下降位置と前記上昇位置との中間位置に停止させる中間高さ位置との間で該リフターを昇降させる構成を備え、
前記加圧調整機構は、前記リフターが前記下降位置にある時には前記弾性部材により前記押え部材を加圧して前記積載台上の紙葉束の上面に圧接させ、前記リフターが前記上昇位置、及び前記中間高さ位置にある時には夫々前記弾性部材による加圧を解除することを特徴とする還流式紙葉収納装置。
【請求項2】
前記弾性部材は、一部を前記押え部材昇降機構に固定されると共に、他部を前記リフター昇降機構の一部に対して所定の上下方向範囲内で相対移動自在に支持された引張りばねであることを特徴とする請求項1に記載の還流式紙葉収納装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、一部を前記リフター昇降機構の一部に固定されると共に、他部を前記押え部材昇降機構の一部に対して所定の上下方向範囲内で相対移動自在に支持された引張りばねであることを特徴とする請求項1に記載の還流式紙葉収納装置。
【請求項4】
前記紙葉入出手段は、導入、又は繰り出される紙葉と羽根により接触可能な羽根車を備え、
前記羽根車は、前記積載台上への紙葉導入時に紙葉導入方向へ回転し、前記積載台上からの紙葉繰出し時に紙葉繰出し方向へ回転することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の還流式紙葉収納装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の還流式紙葉収納装置を備えたことを特徴とする紙葉処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は還流式紙葉収納装置、及びこれを備えた紙葉処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受け入れることによって種々の物品やサービスを提供する機能を備えた自動販売機、遊技場の遊技媒体貸出機、券売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備される紙幣処理装置としては、複数金種の紙幣の取込み、収納、及び払出しが可能な還流式のタイプが知られている。
【0003】
還流式の紙幣処理装置には、予め払出し用として準備した紙幣や稼働中に投入された紙幣を金種別に、或いは金種が混在した状態で保管するための紙幣収納部が装備されている。
【0004】
特許文献1には、収納部に収納されている紙幣を繰出部から外部へ繰り出すことを可能とした還流式の紙葉類収納庫が開示されている。この紙葉類収納庫は、収納空間内を紙幣を載せて昇降するフラッパと、収納空間の上部に位置する繰出しローラ(出金部)と、収納庫の下方に位置する入金用のベルト群(入金部)と、フラッパを通過して昇降することにより紙幣を移動させるプッシャーと、を備えている。
特許文献1では、出金部と入金部とが上下位置関係で離間配置されているため、上下方向に大型化し、且つ部品点数が増大するという欠点を有している。
このような不具合に対処するために、特許文献1中の入金部が位置する収納空間下部に、出金部と入金部とを集中して配置した入出金部を備えた紙幣収納庫が提案されている。
このタイプの紙幣収納庫にあっては、実施形態の説明中において後述するように紙幣繰出し時に紙幣積載台上の紙幣束の最下部から一枚ずつ紙幣を繰出すことになる。この繰出し時には、ピックローラを紙幣束の下面に接触させつつピックローラに対して充分な給紙圧力を加える必要があるために加圧手段を用いて紙幣束の上面からピックローラに対して荷重を加えることになる。
【0005】
一方、ピックローラにより紙幣束の最下部から一枚ずつ分離して給送された紙幣を繰出しローラによって収納空間から外部に繰り出す場合、一連の規定枚数の繰出し動作が終了した時に繰り出されなかった紙幣束のうちの最下部から一枚目、二枚目、三枚目の先端が入出金部を構成する繰出しローラ上に突出して残留した状態で停止することが多々ある。これらの残留紙幣は次の入金、出金動作におけるエラーの原因となる。具体的には、この状態を放置しておくと、次の入金動作に備えて紙幣束をプッシャーにより待機位置に上昇させる際に残留紙幣の先端が折れる等の変形を起こしたり、紙幣束の上昇後も残留紙幣の先端が入出金部に残留し続けることがある。そのまま次の入金動作に入ると、残留紙幣が次に導入されてきた紙幣と衝突してジャムを発生させたり、双方の紙幣の端縁が衝突により折れたり、破れる等のトラブルを起こす。
【0006】
また、残留紙幣の先端が入出金部に残留した状態で出金動作を行うと分離不良による重送が発生する原因ともなる。
【0007】
その対策としては、出金直後に入出金部、及びピックローラを入金方向へ回転させる制御を行うことにより、先端を突出させた紙幣を正規の積載位置に戻すことが行われる。しかし、従来は、繰出し時に紙幣束からピックローラへの給紙圧を充分に確保する必要があるため、紙幣の戻し動作中、一貫して加圧手段(押え板)により紙幣束の上面を加圧していた。このため、先端が突出した紙幣を正規の積載位置に戻すために入出金部、及びピックローラを回転させたとしても、紙幣束の下面とピックローラとの間の密着力、及び紙幣間の密着力が強過ぎるために紙幣束とピックローラとの間に当該突出した紙幣を押し戻すことができず、突出した紙幣を入出金の邪魔にならない正規の積載位置に戻すことが困難であった。
対策としてこれまでソフト的に各部の動作を改良する試みが種々行われてきたが、ソフト的な対策には限界があり、上記不具合を解決することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、紙葉束の最下部に新たな紙葉を導入したり、紙葉束の最下部から紙葉を繰出す構成を備えた還流式紙幣収納装置において、機構的な改良により紙葉繰出し時に発生する残留紙葉(突出紙葉)の問題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、紙葉を収納する紙葉収納空間と、前記紙葉収納空間内に紙葉を導入したり、該紙葉収納空間内の紙葉を繰出す紙葉入出手段と、前記紙葉収納空間内に配置され、前記紙葉入出手段により導入された紙葉を積載する積載台と、前記積載台の紙葉の下面を支持して前記紙葉を昇降させるリフターと、前記積載台の上方を昇降し、前記積載台上の紙葉の上面に載置される押え部材と、前記押え部材を昇降可能に支持する押え部材昇降機構と、弾性部材を備え、該弾性部材により前記押え部材を下降方向へ付勢したり、付勢を解除する加圧調整機構と、を備えた還流式紙葉収納装置であって、前記リフターを昇降させるリフター昇降機構を更に備え、前記リフター昇降機構は、前記紙葉入出手段により導入された紙葉を前記積載台上に積載するために前記リフターを該積載台の積載面よりも上方に停止させる上昇位置と、前記紙葉入出手段により前記積載台上の紙幣を外部に繰出すために前記リフターを該積載台の積載面以下の高さ位置に停止させる下降位置と、前記紙葉入出手段による繰出し後に前記紙葉入出手段により紙葉を前記積載台へ戻すために前記リフターを前記下降位置と前記上昇位置との中間位置に停止させる中間高さ位置との間で該リフターを昇降させる構成を備え、前記加圧調整機構は、前記リフターが前記下降位置にある時には前記弾性部材により前記押え部材を加圧して前記積載台上の紙葉束の上面に圧接させ、前記リフターが前記上昇位置、及び前記中間高さ位置にある時には夫々前記弾性部材による加圧を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、紙葉束の最下部に紙葉を導入したり、該最下部から紙葉を繰出す構成を備えた還流式紙幣収納装置において、紙葉繰出し時に発生する残留紙葉の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る還流式紙葉収納装置を備えた紙葉処理装置の縦断面図である。
【
図2】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る還流式紙幣収納装置の要部構成を示す斜視図である。
【
図3】(c)は
図2(b)に続く要部構成を示す斜視図である。
【
図4】(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る還流式紙幣収納装置の要部構成を示す正面図である。
【
図5】(c)は
図4(b)に続く要部構成を示す正面図である。
【
図6】(a)及び(b)は夫々
図4(a)及び(b)のA-A断面図である。
【
図7】(c)は
図6(b)に続く要部構成を示すA-A断面図である。
【
図8】還流式紙幣収納装置の入出金手段を積載台側から視た斜視図である。
【
図9】入出金手段を収納紙幣搬送経路側から視た斜視図である。
【
図10】入出金手段を底面側から視た斜視図である。
【
図11】リフター昇降機構、及び押え部材昇降機構の一例の構成を示す斜視図である。
【
図12】(a)(b)は分離部周辺の拡大説明図である。
【
図13】残留紙幣の戻し動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
[紙幣処理装置]
<紙幣処理装置の構成>
図1は本発明の一実施形態に係る還流式紙葉収納装置を備えた紙葉処理装置の縦断面図である。
なお、本実施形態では紙葉の一例としての紙幣を処理する装置について説明するが、本発明の還流式紙葉収納装置、及び紙葉処理装置は紙幣以外にも金券、チケット、有価証券等々の紙葉一般の処理装置にも適用することができる。
【0014】
図1に示した還流式紙幣処理装置(以下、紙幣処理装置、という)1は、例えば自動販売機、券売機、遊技場の遊技媒体貸出機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備、或いは併設されて紙幣の受け入れ、釣銭等としての紙幣の払出し処理を行う手段である。
紙幣処理装置1は、外装体を構成する筐体3と、筐体内に入金された紙幣を所要のルートで機内搬送したり、機外に排出する入出金処理ユニットMと、入出金処理ユニットMから搬送されてきた紙幣を収納したり入出金処理ユニットMとの間で紙幣の授受を行う紙幣収納ユニットNと、種々のルートを経て紙幣を搬送する搬送機構と、各種制御対象を制御する制御手段(CPU、MPU、ROM、RAM等)1000と、から概略構成されている。
【0015】
入出金処理ユニットMは、一枚の紙幣、或いは異金種の紙幣を含めた紙幣束を一括して受入れたり、入金紙幣を返却する際の返却口となる入出金口5と、紙幣の出金払出し口、及び入金リジェクト返却口となる返却口7と、入出金口5に入金、セットされた紙幣(束)を一枚ずつの紙幣に分離して入金紙幣搬送経路9aを経由して装置本体内に導入する一括入金部11と、入金紙幣搬送経路9aに沿った搬送経路に配置されて光学、磁気センサの併用によって入金紙幣の金種、真贋等を判定する識別部15等を備える。なお、入出金処理ユニットMの更なる詳細説明は本発明との関係が少ないため省略する。
【0016】
紙幣収納ユニットNは、入金紙幣の受入れが確定したことにより各紙幣搬送経路9a、9b上を搬送されてきた紙幣を金種毎に入金、及び出金自在に収容する第1及び第2還流式紙幣収納装置(還流式紙幣収納部)30、40を備える。本例では、第1還流式紙幣収納装置30は最多で500枚の紙幣を収納し、第2還流紙幣収納装置40は200枚を収納することを想定している。図示した紙幣収納ユニットNは二金種に対応するために還流式紙幣収納装置を二段重ねにしているが、これは一例であり、三金種、四金種に対応するために更に多段の構成とすることも可能である。また、終業時等に各還流式紙幣収納装置から全金種を回収したり、釣銭として利用されない高額紙幣や各還流式紙幣収納装置に収容し切れない余剰紙幣を回収する図示しない回収庫(回収紙幣収納部)を組み込むこともできる。
搬送機構は、各紙幣搬送経路9a、9b、その他の紙幣搬送経路に沿って紙幣を搬送する駆動力を生成、伝達するための搬送機構用モータM1、ソレノイド、及びプーリ、ベルト、ゲート等を備える。
制御手段1000は、入出金処理ユニットM、紙幣収納ユニットN、及び搬送機構等の制御対象を制御する。
【0017】
<紙幣処理装置の各種動作>
次に、
図1に示した本発明の紙幣処理装置1における入金動作、及び出金動作の概要について説明する。
まず、入金動作では、入出金口5から一枚、又は複数枚の紙幣が投入されると紙幣を検知したセンサからの信号を受けた制御手段1000が搬送機構を作動させて一括入金部11、及び入金紙幣搬送経路9aを用いて紙幣を取込む。一括入金部11は入出金口5にセットされた紙幣束中の最上部の紙幣から一枚ずつ取り出して識別部15に搬送し、識別部15で識別を受ける。識別部15により受入れ可能と判定された紙幣は入金紙幣搬送経路9aから収納紙幣搬送経路9bを経由して金種別に何れかの還流式紙幣収納装置(還流式紙幣収納部)30、40に収納される。
識別部において受入れ不能と判定されたリジェクト紙幣は返却口7から機外へ排出される。
出金動作では、釣銭として紙幣を払い出す際に還流式紙幣収納装置30、40に収納された紙幣を取り出して搬送経路9b、9aに沿って順次逆送させ、逆送の過程で搬送経路9aに設けた識別部で識別を行い、返却可能な紙幣であれば釣銭として返却口7から払出す。
【0018】
[還流式紙幣(紙葉)収納装置]
<還流式紙幣収納装置の構成>
図2(a)(b)及び
図3(c)は本発明の一実施形態に係る還流式紙幣収納装置の要部構成を示す斜視図であり、
図4(a)(b)及び
図5(c)は本発明の一実施形態に係る還流式紙幣収納装置の要部構成を示す正面図であり、
図6(a)(b)及び
図7(c)は夫々
図4(a)(b)及び
図5(c)のA-A断面図である。また、
図2(a)、
図4(a)、及び
図6(a)は、リフターが上昇位置にある待機状態を示し、
図2(b)、
図4(b)、及び
図6(b)はリフターが中間高さ位置にある突出紙幣(残留紙幣)の戻し状態を示し、
図3(c)、
図4(c)、及び
図7(c)はリフターが下降位置にある繰出し状態を示している。
【0019】
図8は同還流式紙幣収納装置の入出金手段を積載台側から視た斜視図であり、
図9は同入出金手段を収納紙幣搬送経路側から視た斜視図であり、
図10は同入出金手段を底面側から視た斜視図であり、
図11はリフター昇降機構、及び押え部材昇降機構の一例の構成を示す斜視図である。
【0020】
本例の第1及び第2還流式紙幣収納装置30、40の構成は収納枚数を除けばほぼ同等であるため、以下の説明では主として第2還流式紙幣収納装置40について説明する。
なお、以下の説明においては、還流式紙幣収納装置を単に紙幣収納部と称することもある。
【0021】
紙幣収納部40は、紙幣Pを上下方向へ(垂直方向に限らず、斜め上下方向を含む)積層した紙幣束BPを収納する紙幣収納空間(収納空間)70と、収納空間70の下側の一側部(前側部)に設けられて収納空間に対して側方(横方向)から紙幣を入金、及び出金する入出金口(紙葉入出部)80と、入出金口80、或いはその近傍に配置されて、外部(収納紙幣搬送経路9b)から収納空間70内に一枚ずつ紙幣を導入したり、収納空間内の紙幣束BPの最下部から取り出した紙幣を一枚ずつ外部に繰出す入出金手段90と、収納空間70内に固定配置され、入出金手段90により導入されてきた紙幣(本例では紙幣の幅方向中央部)を上面(積載面)152にて積載する積載台150と、積載台の後方(奧側)に配置されて導入されてきた紙幣後端を正規の積載位置に位置決めするストッパ75(
図4(a)等)と、積載台150の幅方向両側部に夫々位置する下部側部空間72(
図6、
図7)を含む収納空間70内を昇降すると共に、積載台の幅方向両側縁から張り出した紙幣束の幅方向両端部の下面を(上面にて)支持して紙幣束を上昇、下降させるリフター200と、リフター200をほぼ水平な姿勢を維持したまま一定の経路で昇降させ、且つ所定位置で停止させるリフター昇降機構250と、積載台150の上方に位置する収納空間内を昇降し、下降時に積載台上の紙幣束の上面に接してこれを押える押え部材300と、押え部材300を一定の経路で昇降自在に支持する押え部材昇降機構350と、弾性部材410を備え、且つ弾性部材により押え部材300を下降方向(紙幣束加圧方向)へ付勢したり、付勢を解除する加圧調整機構400と、概略備えている。
【0022】
入出金手段90は、フィードローラ95、ストップローラ(フリクションローラ)100、ピックローラ120、及び羽根車140等を備えており、入出金手段駆動用のモータM2により駆動される。フィードローラ95とストップローラ100は分離部を構成しており、両ローラのニップ部nの入金方向下流側には収納センサ105が配置されていて、入金紙幣が積載台150上に移行したこと、及び出金時に紙幣の一部がニップ部近傍に残留していること等を検知する。
フィードローラ95は直上に位置するストップローラ100との間でニップ部nを形成しており、導入方向(
図4の時計回り方向)へ回転することにより収納紙幣搬送経路9bから搬送されてきた紙幣を挟んで積載台150上に導入する。
【0023】
また、紙幣の繰出し時に、積載台上の紙幣束BPの下面と接した状態で繰出し方向へ回転するピックローラ120により繰り出された最下部の紙幣は、繰出し方向(
図5(c)の反時計回り方向)へ回転するフィードローラ95とストップローラ100とのニップ部nにより挟まれて収納紙幣搬送経路9bに送出される。この時、フィードローラ95とストップローラ100との協働により紙幣の重送を防止する。即ち、最下部から二枚以上の紙幣が重なって繰り出されて両ローラのニップ部nに進入してきた場合には最下部の紙幣を除いた上側の紙幣はストップローラ100の作用によりニップ部nの通過を阻止される。
【0024】
図8乃至
図10の各斜視図に示すようにフィードローラ95とストップローラ100は紙幣が搬送される経路の幅方向中央部に位置しており、フィードローラは積載台に設けた開口150aから一部を突出させている。2つのピックローラ120は積載台150に設けた2つの開口150b内に配置されて積載台上の紙幣束の下面と接触可能となっている。
フィードローラ95は回転軸97に軸芯を固定されており、入出金用モータM2からの駆動力を伝達ギヤを介して伝達されることにより正逆方向へ回転駆動される。
ストップローラ100は紙幣を導入する方向(
図4中の反時計回り方向)へは従動回転するが、繰出す方向へは回転しない。このような挙動はストップローラとその回転軸102との間に図示しないワンウェイクラッチを配置する等により実現できる。また、ストップローラは通過する紙幣の厚さにより上下動させる必要があるため、その回転軸102は上下動可能に構成されると共に、図示しないバネにより下向きに加圧されている。
【0025】
2つのピックローラ120の軸方向一端部にはベルト巻掛け部(スプロケット)122が一体化されており、ベルト巻掛け部にタイミングベルト125が巻掛けられている。タイミングベルト125はフィードローラの回転軸97に設けたベルト巻掛け部(スプロケット)97aとベルト巻掛け部122との間に張設されることにより、ピックローラ120をフィードローラと同期して正逆転駆動する。
ストップローラの回転軸102は、その軸方向両側に左右対称に配置された羽根車の回転軸142と同軸上に配置されているが、回転軸102と回転軸142とは一体化しておらず、両回転軸間の駆動力伝達は遮断されている。ストップローラは上述のように羽根車とは別個に、単独で上下動するように構成する必要があるからである。
【0026】
羽根車140はその回転軸142に固定したギヤ144をフィードローラの回転軸97に設けたギヤ99と噛合させることにより入出金用モータM2により正逆方向へ回転駆動される。羽根車は回転軸142が位置する中心部から放射状に複数の羽根を突出させた構成を備えている。羽根は樹脂、ゴム等の弾性体から構成されており、羽根車の回転時に紙幣と接して紙幣の搬送姿勢や形状を修正、整形することができる。
羽根車140は入金時にはフィードローラと共に入金方向(
図4(a)の反時計回り方向)へ回転することにより入金される紙幣の後端部を跳ね上げて積載台上への導入を補助する。また、羽根車は出金時にはフィードローラと共に出金方向(
図5(c)の時計回り方向)へ回転することにより出金される紙幣の繰出しをサポートする。
【0027】
紙幣を戻す際に羽根車は、フィードローラ、ピックローラと共に戻し方向(反時計回り方向)へ回転することにより、先端部をフィードローラとストップローラのニップ部近傍に突出させた残留紙幣の戻し方向後端部を下から上向きに捌いて効率よく、新たな入出金の邪魔にならない積載台上の正規の積載位置(積載された紙幣束の下面)へ戻すことができる。
積載台150は図示した構成例では紙幣収納空間70内から入出金手段90の外側まで延在しているが、本明細書において積載台とは主として紙幣収納空間内に位置し、且つ紙幣を積載する積載面152を備えた範囲を指称する。
なお、「新たな入金紙幣を積載台上の正規の積載位置へ戻す」とは厳密な意味で既積載の紙幣束の下面に位置ズレ無く整合する位置まで戻すことを意味しない。新たな入出金の邪魔にならない程度、つまり
図12(b)に示した程度にニップ部nを離脱している場合も含む。
【0028】
本発明では機械的な構造の改良により、戻し動作時に弾性部材から紙幣束に対して紙幣間を圧縮させる方向への圧力がかからないようにしたので、紙幣束を構成する紙幣間の圧接力、及び紙幣束とピックローラとの圧接力が夫々低下して弛み易くなり、羽根車による戻しのサポート効果を高めることができる。
なお、
図8乃至
図10中の符号20は収納紙幣搬送経路9bに沿って配置される搬送ローラであり、符号21は搬送ローラを駆動する駆動伝達部材としてのギヤ類である。
【0029】
リフター昇降機構250は、入出金手段90により導入されてきた一枚の紙幣を積載台150上にスムーズに積載するためにリフター200を積載台上面(積載面152)よりも充分に上方に退避(離間)させて停止させた上昇位置(
図2(a)、
図4(a)、
図6(a))と、入出金手段90により積載台150上の紙幣束BPの最下部の紙幣を外部に繰出すためにリフター200を積載台の積載面152以下の高さ位置に移動させて停止させた下降位置(
図3(c)、
図5(c)、
図7(c))と、入出金手段90による繰出しを終了した後で(繰り出した後で)繰出し方向へ突出した(紙幣束の最下部側の)残留紙幣を入出金手段90により積載台の積載面152方向へ戻すためにリフター200を下降位置と上昇位置との間の中間位置に移動させて停止させた中間高さ位置(
図2(b)、
図4(b)、
図6(b))との間で、リフターを昇降させる構成を備えている。
【0030】
リフター200は
図11の斜視図に示すように積載台150の幅方向両側方の下部側部空間72内に沿って一体的に昇降する2つのリフター片202を備えている。本実施形態に係る各リフター片202は細長い帯状薄板であり、積載台座の幅方向外側を昇降(通過)でき、且つ紙幣束の幅方向両端縁下面を夫々支持できるように寸法設定されている。各リフター片はリフター昇降機構250により並行な姿勢を維持しつつ一体的に昇降される。
リフター昇降機構250は、各リフター片202に対して連結片252を介して夫々一体化された上下方向へ互いに並行に延びる一対のガイド部材255と、各ガイド部材の幅広の下部に設けた横方向へ直線状に延びる長穴(カム穴)255a内に遊嵌して該長穴内を横方向へ進退可能、且つワッシャ257aにより抜け落ち不能に組み付けられたピン(カムフォロア)257と、ピン257を先端部に支持し、他端部に回動軸261を固定した板状の回動カム259と、回動軸261の適所に軸芯を固定されたギヤ262と、ギヤ262を正逆回転させるリフター駆動用モータM3(
図1)と、を概略備えている。各回動カム259は、回動軸261の両端部に固定されている。なお、特許請求の範囲におけるリフター昇降機構の概念にはリフターも含まれる。
【0031】
回動カム259は、回動軸261を中心として約180度の角度範囲で左右方向へ揺動する過程で、端部に固定したピン257を長穴255a内においてその長手方向に沿って進退させてガイド部材255、及びリフター200を上下方向へ直線運動させることができる。ピン257が長穴255a内を往復する過程でガイド部材255が上昇位置(最上昇位置)、中間高さ位置、下降位置(最下降位置)の間を往復するため、ガイド部材と一体のリフターも同様に昇降動作する。
【0032】
図2(a)、
図4(a)、
図6(a)に夫々示したリフター200が上昇位置(上死点)にある時は新たな紙幣の入金を待機している状態であり、ピン257は長穴255aの中間位置(長穴状係止穴410cの上端部に近い位置)にある。リフターが上昇位置にある時には、回動カム259はピン257を最上昇位置に保持している。この時、積載台上の紙幣束BPが入金されてくる紙幣と干渉して入金の障害となることがないようにリフターは積載台上にあった紙幣束を持ち上げて積載台上面から離間させ、且つ充分に上方に退避させて入金用の空間Gを形成している。この時、ガイド部材255、弾性部材の上端の係止穴(係止部)410b、及び下端の長穴状係止穴(長穴状係止部)410cが最も上昇した位置にあるため、弾性部材410は収縮しており、押え部材300を下方へ付勢しない非加圧状態にある。
【0033】
コイルバネとしての弾性部材410は、バネ部本体410aの一端部(本例では上端部)に設けた係止穴410bは丸穴状であり、他端部に設けた線材から成る係止穴(長穴状係止穴、長穴状係止部、長穴状フック部)410cは長穴状となっている。係止穴(固定側係止穴)410bは押え部材昇降機構350を構成するパンタグラフ機構の一つのリンク片357aに対してピン362により固定される一方で、長穴状係止部410c内にはガイド部材255の適所に突設したガイドピン256が遊嵌されている。ピン362は係止穴410b内で自由に移動できない一方で、ガイドピン256は長穴状係止部410c内において上下方向へ進退自在、且つ抜け落ち不能に支持されている。従って、図示のようにガイド部材255が最上昇位置にある時にはガイドピン256は長穴状係止部410cの下端部(係止端部)に達していない(中間高さ位置にある)。このため、弾性部材410の付勢力により押え部材300がリフター上の紙幣束の上面を加圧することはない。
【0034】
弾性部材410は、一部(上部)を押え部材昇降機構350の一部(ピン362)に固定されると共に、他部(下部)をリフター昇降機構250の一部に対して所定の上下方向範囲内で移動自在に支持された(遊嵌された)引張りばねである。言い換えれば、係止部410bはピン362に対して相対移動しない一方で、長穴状係止部410cはガイドピン256に対して相対移動する。このことにより、ガイドピン256が長穴状係止部の終端部410c`に達してこれを下方(弾性部材拡開方向)へ引っ張ることにより弾性部材本体410aを拡開させる。ガイドピンが長穴状係止部の中間部にて停止することにより弾性部材本体を収縮させた状態に維持する。
【0035】
なお、長尺状フック部410cを設ける代わりに、弾性部材本体410aの下端部にピンを固定し、このピンをガイド部材255に設けた上下方向へ延びる長穴内に遊嵌することによっても、ガイド部材の最下降時に弾性部材本体410aを拡開させ、且つ最上昇時、及び中間停止位置にある時に夫々弾性部材を収縮させる(原形に復帰させる)ことができる。即ち、弾性部材に長穴状係止部410cを設けることは必須ではなく、このように構成した場合にも、加圧調整機構400はリフターが上昇位置、及び中間高さ位置にある時に夫々弾性部材による加圧を解除させることができる。
【0036】
次に、
図3(c)、
図5(c)、
図7(c)は紙幣繰出し状態を示しており、リフター200が最下降位置(下死点)にあり、ピン257は長穴255aの中間位置にある。この状態では、回動カム259はピン257を最下降位置に保持している。ガイド部材255、弾性部材の上端の係止穴410bは
図4(a)の場合よりも下降している。また、ガイドピン256により下端部(終端部)410c`を大きく押し下げられることにより長穴状係止穴410cが最も下降した位置にあるため、弾性部材本体410aは大きく拡開しており、押え部材300を下方へ付勢する加圧状態にある。弾性部材本体410aからの引張り力により弾性部材本体の上端の係止穴410bを介してパンタグラフが拡開する方向へ引かれるため、押え部材300が積載台上の紙幣束BPを加圧し、ピックローラによる給紙圧を確保するようにしている。
【0037】
次に、
図2(b)、
図4(b)、
図6(b)は正規の積載位置から先端をニップ部側に突出させた紙幣を積載台上の正規の積載位置に戻すための戻し動作時を示している。この時、リフターが中間高さ位置にあり、ピン257は長穴255aの長手方向一端にある。この状態では、回動カム259はピン257を中間高さ位置に保持している。ガイド部材255、及び弾性部材の上端の係止穴410bは
図5(c)等の場合よりも若干上昇している。この時、ガイドピン256は
図5(c)の位置よりも長穴状係止穴410c内において上昇した中間位置(係止穴410cの下端部から離間した位置)にあるため、弾性部材410を拡開させる力は発生しておらず、弾性部材は収縮している。つまり、押え部材300は弾性部材によって加圧されていない非加圧状態にある。この状態では、
図4(a)等に示したリフターが上昇位置にある時と同様に、ガイド部材255に固定されたガイドピン256は弾性部材の長穴状係止部410c内の中間位置(
図4(a)よりは下方寄り位置)にあり、下端部を押し下げていない。つまり、ガイドピン256は長穴状係止部の終端部410c`を押し下げていないため、弾性部材本体は原形である収縮状態を維持している。
【0038】
この状態では、紙幣束BPの下面がピックローラ120上に接してはいるが、押え部材とパンタグラフの自重以外の荷重が紙幣束にかかっていないため、ピックローラと紙幣束下面との間の圧接力、及び紙幣間の圧接力(密着力)が充分に低下しており、フィードローラとストップローラを戻し方向へ回転させた時に先端をニップ部n寄りに大きく突出させた残留紙幣を容易に、次の入出金動作に悪影響を与えることがない正規の位置に戻すことができる。
【0039】
図2、
図3に示すように、押え部材300は、各リフター片202の上方に対向して配置された2つの幅広の押え片302と、これらを基端部において連結する連結片305等を有する。各押え片302は積載台の積載面152とも対向している。各押え片302と、各リフター202と、積載面152との間の上下方向、及び幅方向の位置関係は
図6(a)(b)、
図7(c)から明らかであろう。
【0040】
押え部材昇降機構350は、紙幣束の上面に自重で載っており、自力では動作せず、紙幣束の上面の上下動に連動して動作する。リフター昇降機構250は、弾性部材410を介して押え部材昇降機構350に作用し、紙幣束への加圧と加圧の解除を行わせる。
押え部材昇降機構350は、本例ではパンタグラフ355から構成されている。
【0041】
パンタグラフ355は、
図4(a)(b)、及び
図11から明らかなように、押え部材300の上側の幅方向両端縁に沿って一組ずつ設けられている同一構成のリンク機構355A、355Bから成る。各リンク機構355A、355Bは、二本の細長い板状のリンク片357a、357bの長手方向中心位置をピン358により回動自在に連結すると共に各リンク片の各上端部をピン359a、359bによりベース部材370に連結している。ベース部材370は収納空間70内の所定位置に固定されている。一方のピン359aは一方の各リンク片357aの上端部を回動自在にベース部材370に連結し、他方の各リンク片357bの上端部に設けられた他方のピン359bは、ベース部材に設けた水平方向(横方向)へ延びる長穴370a内にスライド自在に遊嵌されている。
また、各リンク片357a、357bの下端部は夫々ピン360a、360bにより押え部材300に対して回動自在に連結されている。他方のリンク片357bの下端部はピン360aにより回動自在に押え部材と連結され、一方のリンク片357aの下端部に設けたピン360bが押え部材に設けた長穴300a内に遊嵌されて長穴内を進退自在となっている。
このため、各リンク片357a、357bは、ピン358を中心として互いに回動することにより上下方向へ伸縮できる。
【0042】
一方のリンク片357aの上部適所に固定されたピン362の先端には弾性部材の係止穴410bが固定されている。弾性部材の長穴状係止部410cは、ガイド部材255の高さ方向中間部適所に設けられたガイドピン256を遊嵌している。
このため、
図4(a)の入金待機時においては、リフター200により押え部材300が最も上昇した位置に押し上げられていることによりパンタグラフ355は最も収縮した状態にある。
【0043】
図4(b)のリフターの中間高さ位置(残留紙幣の戻し動作時)では、リフター、及びガイド部材255の中間高さ位置への下降により押え部材300が同等の距離だけ下降しているためパンタグラフは伸長するが、ガイドピン256は長穴状係止部410cの下端部から離間した中間位置にある。このため、弾性部材は収縮した原形を維持している。従って、押え部材は弾性部材による加圧を受けていない。
【0044】
図5(c)のリフターの最下降位置(紙幣の繰出し時)では、リフター、及びガイド部材が最下降位置に達していることにより押え部材300が更に下降している。この時点では、ガイドピン256は既に弾性部材410の長穴状係止部410cの最下部(終端部410c`)と接してこれを更に押し下げている。このため、弾性部材は拡開してパンタグラフを拡開させることにより、押圧部材により紙幣束上面を加圧している。
なお、特許請求の範囲における押え部材昇降機構の概念には、押え部材も含まれる。つまり、係止穴410bはパンタグラフの一部ではなく押え部材に固定するように構成してもよい。
【0045】
以上のように加圧調整機構400は、リフター200が下降位置にある時には弾性部材410により押え部材300を付勢(加圧)して積載台上の紙幣束の上面に圧接させ、リフターが上昇位置、及び中間高さ位置にある時には夫々弾性部材による加圧を解除する。
なお、本実施形態では、弾性部材410は、一部(上部)を押え部材、又は押え部材昇降機構350(取付け対象物)に固定されると共に、他部(下部)を取付け対象物としてのリフター昇降機構250の一部(ガイド部材255)により所定の上下方向範囲内で相対移動自在に支持された引張りコイルばねである。
【0046】
上記実施形態は一例に過ぎず、同様の機能を発揮できる弾性部材であればどのようなものであってもよい。
【0047】
また、例えば、弾性部材の上下を逆にして取り付けても同様の挙動を実現できる。即ち、弾性部材の係止穴410bをガイド部材255に固定する一方で、長穴状係止部410c内にパンタグラフのピン362を移動自在に遊嵌させるようにしてもよい。
いずれの実施形態においても、弾性部材の一方の端部が取付け対象物に対して相対移動可能な範囲(長穴状係止部の長手方向長)内にある限り、弾性部材を拡開させる力は発生しない。弾性部材の一方の端部が相対移動可能な範囲の終端部410c`に達してからこれを押圧しながら同方向へ移動し続けると、弾性部材を拡開させる挙動が開始される。
【0048】
<還流式紙幣収納装置の動作>
-入金動作-
図2(a)、
図4(a)、及び
図6(a)により入金待機と入金動作について説明する。
待機状態ではリフター200は最上昇位置(上死点)にて停止している。この時、新たに入金される紙幣Pの入金経路となる空間Gを積載面152上に形成するため、先行して収納されている紙幣束BPはリフター200により図示の位置まで押し上げられている。リフター200をこの高さ位置まで上昇させるためには、上述したようにリフター駆動用モータM3によりリフター昇降機構250を作動させてピン257を長穴255aの中間位置に移動させる。この時、ガイドピン256は弾性部材410の長穴状係止部410c内の上部に位置しているため、バネ圧は押え部材300に加わっていない。
【0049】
入金動作時には制御手段1000は、入出金手段駆動用のモータM2を作動させて入出金手段90を入金方向へ回転させる。
収納紙幣搬送経路9bに沿って下降してきた一枚の入金紙幣Pが入出金手段90に達すると、矢印で示す入金方向へ回転するフィードローラ95とストップローラ100とのニップ部nに進入して空所G内に向けて給送され、積載面152上に積載される。この際、フィードローラと連動するピックローラ120も入金方向へ回転して入金をサポートする。ニップ部nに紙幣が進入する際、ストップローラの軸方向両サイドに配置された羽根車140は
図4(a)の反時計回り方向(紙幣取込み方向)へ回転することにより紙幣の進入をサポートする。即ち、羽根車の羽根はニップ部nを通過する紙幣の後端(入金方向後端)を上方に跳ね上げるので、入金時に紙幣後端がニップ部近傍に残留しようとする場合にこれを跳ね上げて離脱させて積層台上の積載位置(積載面152)に向けて送り込み易くする。
積載面152上に進入した紙幣はストッパ75に接して停止する。
【0050】
入金される紙幣の後端が収納センサ105を通過することにより積載面152上に紙幣が移行したことが検知された時に、制御手段1000はリフター昇降機構250を作動させてリフター200を積載面152よりも下方へ下降させる。紙幣束BPを積載したリフターが下降する過程ではリフターは積載台上の一枚の新たな紙幣Pの幅方向両端部を下向きに変形させながら当該紙幣を通過して積載面152よりも下方へ移動する。すると、紙幣束BPが新たな紙幣P上に降下して新たな紙幣は紙幣束の一部となる。その後、リフターを
図4(a)等に示した最上昇位置に上昇させることにより待機状態に移行する。
この待機、及び入金動作は紙幣一枚毎に実施される。
【0051】
-出金動作-
図3(c)、
図5(c)、及び
図7(c)により出金動作について説明する。
紙幣収納部40内から紙幣を一枚ずつ収納紙幣搬送経路9bへ繰出す場合には、待機位置にあるリフター200上に保持されている紙幣束を積載台(積載面)上に移載してからピックローラ120によって最下面の紙幣から順次繰出すことになる。繰出し時にはピックローラへの給紙圧を確保するために弾性部材410による紙幣束への加圧が必要となる。
待機状態ではリフター200は最上昇位置(上死点)にて停止しているが、出金動作のためにリフター昇降機構250が作動してガイド部材255を図示の最下降位置(下死点)まで下降させる。リフターが積載面152を下方へ向けて通過する過程でそれまでリフター上に保持されていた紙幣束は積載面上に移載される。リフターは出金の邪魔にならない位置まで退避する。また、ガイドピン256は弾性部材410の長穴状係止部410cの下端部を押し下げているため、押え部材300を介して紙幣束BPには弾性部材からの荷重が加わる。
【0052】
この状態で入出金手段駆動用のモータM2を駆動してピックローラ120を繰出し方向(
図5(c)の反時計回り方向)へ回転させると、紙幣束の最下部の紙幣がフィードローラ95とストップローラ100とのニップ部nに向けて繰り出される。この時、弾性部材からの強い給紙圧が繰出し動作を安定させる。
ニップ部nに進入した最下部の紙幣はニップを通過して収納紙幣搬送経路9bに繰り出される。この際、重送されている上側の紙幣はストップローラにより積載台(積載面)方向へ戻される。
紙幣がニップ部nから外部へ繰り出される際に、羽根車は
図5(c)の時計回り方向へ回転することにより紙幣の繰出しをサポートする。
【0053】
特に、出金方向先端が上向きに曲がっている紙幣はストップローラに当たってニップ部nを通過し難くなるが、時計回り方向へ回転する羽根車の羽根により予め紙幣先端を下に抑え付けられるので出金し易くなる。
規定枚数の紙幣が繰り出されたことが収納センサ105により検知されると、制御手段1000は入出金手段駆動用のモータM2を停止させると共に、次の入金動作に備えてリフター駆動用モータM3を駆動することによりリフターを待機位置に上昇させる。リフターが上昇する過程で積載台上の紙幣束を保持して待機位置にて停止する。
【0054】
-残留紙幣の戻し動作-
図2(b)、
図4(b)、及び
図6(b)と、
図12(a)(b)に示した要部(分離部周辺)の拡大説明図、並びに
図13のフローチャートにより残留紙幣の戻し動作について説明する。
出金動作が終了した時点で紙幣束の下から1~3枚程度の紙幣の先端(繰出し方向先端)がフィードローラ95とストップローラ100とのニップ部n内、或いはニップ部手前に突出した状態で残留することがある。この状態でリフターを待機位置まで上昇させると、突出した紙幣の先端が曲がったり、折れるという不具合があった。また、先端をニップ部内に残留させた状態にある紙幣(残留紙幣)を含んだ紙幣束BPを待機位置に上昇させて入金動作に入ると、入金されてくる紙幣と残留紙幣の変形した先端とが干渉、衝突して入金不良が発生し易くなる。また、出金する場合にも先端が変形した紙幣を繰出すことになるため、ジャム等が発生する原因となっていた。
なお、従来の還流式紙幣収納装置は、本実施形態に係る紙幣収納装置とは弾性部材による加圧方式、加圧タイミングのみならず、他の構成も異なっているが、説明の便宜上、本実施形態の構成要素を備えた紙幣収納装置において、紙幣の戻し動作を行う際に加圧解除を行わない場合の不具合について説明する。
【0055】
残留紙幣を積載台150上の正規の積載位置、即ち積載台上の紙幣束の最下部に整合性よく戻すためには、フィードローラ95、ピックローラ120を入金方向(戻し方向)へ回転させる動作を行う必要がある。しかし、従来の紙幣収納装置ではリフターの停止位置が、待機のための最上昇位置と、繰出しのための最下降位置の二段階しかなかった。しかも、パンタグラフを拡開させる弾性部材からの荷重が常時押え部材を介して紙幣束に加わる構成であった。このため、繰出しのために紙幣束を積載面152上に載置させている期間中、一貫して弾性部材410からの荷重が紙幣束に加わっていた。つまり、紙幣束下面とピックローラ120との圧接力、及び戻しの対象となる残留紙幣とその上方に位置する紙幣束との間の圧接力が強過ぎる。このため、フィードローラ、ピックローラを戻し方向へ回転させたとしても、残留紙幣をスムーズに面方向へスライドさせて紙幣束の下部に戻すために必要な紙幣間の捌き作業を行うことができなかった。
【0056】
この戻し動作を完遂するためには、紙幣束を構成する紙幣間の圧接力を低下させる捌きが行われる必要があるが、弾性部材からの荷重が紙幣束に加わり続ける限り捌きは行われないので戻し動作は難しかった。
【0057】
図12(a)は繰出し動作後に発生した紙幣突出の状態を示しており、分離部のニップ部nを越えて一枚の紙幣Pが残留している。この状態で弾性部材の強い圧力が押え部材300から紙幣束BPに加わっているとフィードローラ、ピックローラ、羽根車を戻し方向へ回転させたとしても突出している紙幣Pを紙幣束の下面とピックローラとの間に戻すことは難しい。
これに対して本発明では、リフターを中間高さ位置で停止させるモードを新たに設けて紙幣束に加わる荷重を大幅に低減させたことにより、
図12(b)に示したようにフィードローラ、ピックローラ、羽根車を戻し方向へ回転させた結果として当該紙幣Pをスムーズにニップ部nから離脱させることが可能になる。
【0058】
本発明では、リフター200の停止位置として、待機時の上昇位置と繰出し時の下降位置との他に、両位置の中間高さ位置に相当する停止位置を追加し、リフターがこの中間高さ位置にある時に弾性部材からの荷重が押え部材300から紙幣束に加わらないように機構的な構造を改良している。このため、戻し動作時には押え部材とパンタグラフの自重から成る軽度な荷重が紙幣束に加わる程度である。
リフターが中間高さ位置にある時に、パンタグラフ355に一部を支持された弾性部材の他部をガイド部材255(リフター)に対してフリーとなるように構成したことにより残留紙幣(突出紙幣)の戻し効果を高めている。
なお、中間高さ位置にある時のリフターの高さ位置は、
図4(b)に示すように積載台150の上面(積載面)と同等か、或いは該上面よりも下側である。その位置を越えて上方にリフターがあると紙幣と干渉して戻し動作の障害となるからである。
【0059】
次に、残留紙幣の戻し動作手順を
図13のフローチャートにより説明する。
残留紙幣が発生するのは繰出し動作においてであるから、一連の紙幣繰出し動作が終了したタイミングで収納センサ105の出力により残留紙幣の有無を判定する。繰出し動作終了後に収納センサ105が紙幣の存在を検知している時には(ステップS1、YES、ステップS3、YES)、制御手段はリフター昇降機構250を駆動して繰出し動作のために最下降位置にあったリフター200を中間高さ位置に上昇させて停止させる(ステップS5)。次いで、入出金手段90(フィードローラ、ピックローラ、羽根車)を所定時間、或いは所定回数、戻し方向へ回転させる(ステップS7)。リフターが中間高さ位置で停止している時には、弾性部材410から押え部材300に対する加圧が解除されているため、残留紙幣とその直上の紙幣束との間の圧接力が著しく低下して紙幣間の捌きが容易になっている。このため、入出金手段を戻し方向へ回転させるだけで残留紙幣を紙幣束の下部に戻すことができる。
【0060】
なお、上述したように弾性部材410の上下を逆にしてもよい。つまり、弾性部材の係止穴410bをガイド部材255に固定する一方で、長穴状係止部410cをパンタグラフ355のピン362と係合させて、ピン362が長穴状係止部410c内でフリーに動けるように構成してもよい。
なお、弾性部材としてコイルばねを示したが、同様の作用を奏するものであれば、トーションバネ、その他、どのような弾性部材であってもよい。
【0061】
戻し動作においては、フィードローラと連動して回転する羽根車140も戻し方向へ回転するため、羽根車の羽根が残留紙幣の先端を跳ね上げてニップ部nから離脱させる補助を行う。このためフィードローラとピックローラによる戻し動作を更に確実化することができる。
なお、弾性部材に長穴状係止部410cを設けずに弾性部材本体410aの両端部をパンタグラフとガイド部材に移動不能に固定した場合であっても、出金のために下降位置にあったリフターを中間高さ位置まで上昇させて押え部材を上昇させることにより紙幣束への荷重を若干減圧することはできる。しかし、戻し動作の実施中、弾性部材からの荷重の大半が紙幣束に加わり続けることになる。つまり、
図4(b)においてガイドピン256を弾性部材本体410aの下端部に固定すると、リフターが中間高さ位置に停止したとしても戻し動作を効果的に実施できる程度には弾性部材本体は完全に原形に復帰できない。
【0062】
[本発明の構成、作用、効果のまとめ]
第1の本発明に係る還流式紙幣収納装置30、40は、紙葉BPを収納する紙葉収納空間70と、紙葉収納空間内に紙葉を導入したり、該紙葉収納空間内の紙葉を繰出す紙葉入出手段90と、紙葉収納空間内に配置され、紙葉入出手段により導入された紙葉を積載する積載台150と、積載台の下面を支持して紙葉束を上昇、下降させるリフター200と、リフターを昇降させるリフター昇降機構250と、積載台の上方を昇降し、前記積載台上の紙葉の上面に載置される押え部材300と、押え部材を昇降可能に支持する押え部材昇降機構350と、弾性部材410を備え、該弾性部材により前記押え部材を下降方向へ付勢したり、付勢を解除する加圧調整機構400と、を備える。リフター昇降機構250は、紙葉入出手段90により導入された紙葉を積載台上に積載する際にリフターを該積載台の積載面よりも上方に移動させる上昇位置と、紙葉入出手段により積載台上の紙葉を外部に繰出す際にリフターを該積載台の積載面以下の高さ位置に移動させる下降位置と、紙葉入出手段による紙葉の繰出し後に紙葉入出手段により積載台へ戻すためにリフターを下降位置と上昇位置との中間位置に移動させる中間高さ位置との間で昇降させる構成を備える。加圧調整機構400は、リフターが下降位置にある時には弾性部材により押え部材を加圧して積載台上の紙葉束の上面に圧接させ、リフターが上昇位置、及び中間高さ位置にある時には夫々弾性部材による加圧を解除することを特徴とする。
【0063】
リフター200が下降位置にある時(繰出し時)にはリフターと押え部材との距離が最長となるため、弾性部材本体410aが伸張することにより押え部材を加圧して紙葉束上面に圧接させる。リフター200が上昇位置にある時(紙葉導入時)、及び中間高さ位置にある時には、リフターと押え部材との距離が最短となるため、下降時に伸長していた弾性部材が収縮して原形に復帰することにより押え部材の紙葉束上面への加圧を解除する。
本明細書において上下方向とは垂直方向のみならず、斜め上下方向を含む概念である。
積載台方向とは、紙葉収納空間方向を意味する。
実施形態では紙葉入出手段が紙葉収納空間内に側方から紙葉を導入する例を示したが、側方からの導入は一例に過ぎない。また、積載台を紙葉収納空間内に固定配置する例を示したがこれも一例に過ぎず、積載台の機能を損なわない範囲で上下動、その他の方向に可動に構成してもよい。
【0064】
第2の本発明に係る還流式紙幣収納装置では、弾性部材410は、一部(上部)を押え部材昇降機構350に固定されると共に、他部(下部)をリフター昇降機構250の一部に対して所定の上下方向範囲内で相対移動自在に支持された引張りばねであることを特徴とする。
例えば、弾性部材がコイルバネである場合にその両端部を押え部材昇降機構(取付け対象物)やリフター昇降機構(取付け対象物)にリジッドに固定するのではなく、一方の端部だけは取付け対象物の一部に対して所定の上下方向範囲内で相対移動自在に構成する。
【0065】
第3の本発明に係る還流式紙幣収納装置では、弾性部材410は、一部(上部)をリフター昇降機構250の一部に固定されると共に、他部(下部)を押え部材昇降機構350の一部に対して所定の上下方向範囲内で相対移動自在に支持された引張りばねであることを特徴とする。
第2の本発明に係る還流式紙幣収納装置とは、弾性部材の上下を逆転させた点が異なる。
【0066】
第4の本発明に係る還流式紙幣収納装置では、紙葉入出手段90は、導入、又は繰り出される紙葉と羽根により接触可能な羽根車140を備え、羽根車は、積載台150上への紙葉導入時に紙葉導入方向へ回転し、積載台上からの紙葉繰出し時に紙葉繰出し方向へ回転することを特徴とする。
羽根車の羽根は、紙葉取込み時にニップ部nを通過する紙葉の後端(導入方向後端)を上方に跳ね上げる。これにより紙葉後端をニップ部から離脱させて積層台側に送り込み易くする。また、紙葉の繰出し時には紙葉入出手段を構成するフィードローラと共に繰出し方向へ回転することにより出金される紙幣の繰出しをサポートする。
本発明に係る紙葉処理装置は、前記何れかの還流式紙葉収納装置を備えたことを特徴とする。
これによれば、上記の還流式紙葉収納装置が発揮する作用、効果を備えた紙葉処理装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…紙幣処理装置、3…筐体、M1…搬送機構用モータ、M2…入出金用モータ、M3…リフター駆動用モータ、5…入出金口、7…返却口、9a…入金紙幣搬送経路、9b…収納紙幣搬送経路、11…一括入金部、15…識別部、30、40…還流式紙幣収納装置(紙幣収納部)、70…収納空間、72…下部側部空間、75…ストッパ、80…入出金口、90…入出金手段(紙葉入出手段)、95…フィードローラ、97…回転軸、99…ギヤ、100…ストップローラ、102…回転軸、105…収納センサ、120…ピックローラ、122…ベルト巻掛け部(スプロケット)、125…タイミングベルト、140…羽根車、142…回転軸、144…ギヤ、150…積載台、150a、150b…開口、152…積載面、200…リフター、202…リフター片、250…リフター昇降機構(取付け対象物)、252…連結片、255…ガイド部材、255a…長穴、256…ガイドピン、257…ピン、257a…ワッシャ、259…回動カム、261…回動軸、262…ギヤ、300…押え部材、300a…長穴、302…押え片、305…連結片、350…押え部材昇降機構(取付け対象物)、355…パンタグラフ、355A、355B…リンク機構、357a、357b…リンク片、358、359a、359b、360a、360b、362…ピン、370…ベース部材、370a…長穴、400…加圧調整機構、410…弾性部材、410a…バネ部本体、410b…係止穴、410c…長穴状係止部(長穴状フック部)、1000…制御手段。