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特許7472192添加剤を使用する血小板ろ過のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】添加剤を使用する血小板ろ過のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20240415BHJP
   A61M 1/38 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A61M1/02 100
A61M1/38
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022074674
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2019547102の分割
【原出願日】2017-04-20
(65)【公開番号】P2022115928
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】308020283
【氏名又は名称】フェンウォール、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】ラドワンスキ,キャサリン,エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ミン,キュンヨーン
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-538789(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0175313(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0111807(US,A1)
【文献】特表平8-507586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61M 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離装置を含む再利用可能なハードウェア装置と組み合わせて使用するように構成される使い捨て処理回路であって、
血漿および血小板を含む流体を受け取るように構成され、血漿および血小板を含む流体の別の成分の少なくとも一部から血小板を分離するための再利用可能なハードウェア装置の分離装置と関連付けられる処理室と;
前記処理室と下流流体連通し、前記処理室から搬送された分離された血小板から血小板凝集塊を除去するように構成されたサイズ排除フィルタと;
前記サイズ排除フィルタと下流流体連通し、前記サイズ排除フィルタからろ過された血小板を受け取るように構成された血小板貯蔵容器と;そして
前記サイズ排除フィルタと上流流体連通する添加剤容器とを備え、
前記使い捨て処理回路は、前記処理室から前記血小板貯蔵容器まで延びる流体流路を画定し、前記流体流路は前記サイズ排除フィルタを含み白血球除去フィルタを含まない、
使い捨て処理回路。
【請求項2】
カセットをさらに備え、前記処理室および前記添加剤容器は、前記カセットを介して前記サイズ排除フィルタと流体連通している、請求項1に記載の使い捨て処理回路。
【請求項3】
前記サイズ排除フィルタは、管セグメントによって前記血小板貯蔵容器に接続されている、請求項1または請求項2に記載の使い捨て処理回路。
【請求項4】
前記添加剤容器は合成血小板貯蔵媒体を含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の使い捨て処理回路。
【請求項5】
前記添加剤容器は、前記処理室から血漿を受け取るように構成される、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の使い捨て処理回路。
【請求項6】
前記流体流路に、前記サイズ排除フィルタ以外のフィルタを含まない、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の使い捨て処理回路。
【請求項7】
前記サイズ排除フィルタ以外のフィルタを含まない、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の使い捨て処理回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の前記使い捨て処理回路と、分離装置と制御部とを含む再利用可能なハードウェア装置とを備え、
前記制御部は、血漿と血小板を含む流体を前記処理室に運び、前記分離装置を使用して前記処理室内の流体の別の成分の少なくとも一部から血小板を分離し、分離された血小板から血小板凝集塊を除去するために前記分離された血小板を前記サイズ排除フィルタに通して搬送し、前記血小板貯蔵容器内にろ過された血小板を収集し、そして、添加剤を前記添加剤容器から前記サイズ排除フィルタを通して前記血小板貯蔵容器内に搬送するようにハードウェア装置を操作するようにプログラム可能である、
血小板の収集のためのシステム。
【請求項9】
前記分離装置は遠心分離器を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御部は、血液源から全血を前記処理回路に引き込むように前記ハードウェア装置を操作するようにさらにプログラムされ、前記流体は、抗凝固処理された全血を含む、請求項8または請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記流体の別の成分の少なくとも一部が赤血球を含む、請求項8から請求項10までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
処理室から血小板貯蔵容器まで延びる流体流路を画定する処理回路を使用して血小板を収集する方法であって、
血漿および血小板を含む血液バッグから流体を提供し、
前記処理室において前記流体の別の成分の少なくとも一部から血小板を分離し、
分離された血小板から血小板凝集塊を除去するために分離された血小板をサイズ排除フィルタに通し、
ろ過された血小板を前記血小板貯蔵容器に収集し、そして、
前記サイズ排除フィルタを通して添加剤を前記血小板貯蔵容器内に搬送することを含み、
前記流体流路は、前記サイズ排除フィルタを含み、白血球除去フィルタを含まない、
血小板を収集する方法。
【請求項13】
前記流体の別の成分の少なくとも一部から血小板を分離することは、流体の別の成分の少なくとも一部から多血小板血漿を分離することを含み、
分離された血小板は多血小板血漿を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記流体の別の成分の少なくとも一部から血小板を分離することは、
流体の別の成分の前記少なくとも一部から多血小板血漿を分離し、
多血小板血漿を濃縮血小板と乏血小板血漿に分離し、
濃縮血小板を再懸濁することを含み、そして、
分離された血小板は再懸濁血小板を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記分離された血小板は、遠心分離によって前記流体の別の成分の少なくとも一部から分離される、請求項12から請求項14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記流体は抗凝固処理された全血を含み、前記流体の別の成分の前記少なくとも一部は赤血球を含む、請求項12から請求項15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記分離された血小板は、前記サイズ排除フィルタ以外のフィルタを通して搬送されることなく前記血小板貯蔵容器内に収集される、請求項12から請求項16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記流体または前記分離された血小板が前記サイズ排除フィルタ以外のフィルタを通して搬送されることなく、前記分離された血小板が前記血小板貯蔵容器内に収集される、請求項12から請求項17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項8から請求項11までのいずれか1項に記載の前記システムを使用する、請求項12から請求項18までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血小板を収集するためのシステムおよび方法に関する。より詳細には、本開示は、フィルタおよび添加剤を使用して収集された血小板の収量および品質を改善するためのシステムおよび方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
全血は、その液体成分である血漿に懸濁している赤血球、白血球、血小板などのさまざまな細胞成分で構成されている。全血は、その構成成分(細胞または液体)に分離することができ、所望の分離した成分は、その特定の成分を必要とする患者に投与することができる。例えば、血液源の全血から血小板を採取し、収集し、後に、化学療法または放射線治療によって血小板を「作る」能力が損なわれた癌患者に投与することができる。
【0003】
自動化された血液分離システムは、多数の血小板を収集するために使用される。自動化システムは、連続プロセスで全血から血小板を分離するために必要な分離ステップを実行する。自動化システムは、全て連続の流れループの中で、血液源から全血を引き出し、引き出された血液から目的の血小板を分離し、必要に応じて残りの赤血球と血漿を血液源に戻す。自動化された「オンライン」システムを使用して、大量の全血を処理できる。処理量が多いため、濃縮された血小板を大量に収集できる。
【0004】
一般に、血小板は、全血を遠心分離室に導入することによって収集される。遠心分離室では、さまざまな成分の大きさと密度に基づいて、全血が血小板などの構成成分に分離される。これには、全血が血液源から引き出された後(および、任意で、1つ以上の分離された血液成分が血液源に戻される前に)遠心分離器を通過する必要がある。したがって、一般的な血液処理システムには、血液を圧送および分離するハードウェア(駆動システム、ポンプ、弁アクチュエータ、プログラム可能な制御部など)を含む永続的な再利用可能な遠心分離アセンブリと、ハードウェアに協働的に搭載される使い捨てで密閉された無菌の流体処理アセンブリが含まれる。遠心分離アセンブリは、収集手順中に流体処理アセンブリの使い捨て遠心分離室を回転させ、それによって血液をその構成要素に分離する。分離された血小板は、典型的には、患者への輸血に必要になるまで貯蔵するために、血漿および/または合成貯蔵溶液などの液体貯蔵媒体または添加剤で再構成される。
【0005】
貯蔵された血小板が後の投与に適しているためには、それらはその生存能力と血小板機能を実質的に保持しなければならない。相互に関連する多くの要因が、貯蔵中の血小板の生存能力と機能に影響する場合がある。これらの要因には、血液収集に使用される抗凝固剤、血小板の調製に使用される方法、使用される貯蔵容器の種類、および血小板が貯蔵される媒体が含まれる。
【0006】
現在、血小板は22℃で5日間または7日間さえ貯蔵され得る。しかしながら、7日後、血小板機能が損なわれる可能性がある。貯蔵時間に加えて、pH、貯蔵温度、総血小板数、血漿量、貯蔵中の撹拌、血小板濃度、および最終血小板製剤中の血小板凝集塊の存在など、他の貯蔵条件が血小板代謝および機能に影響を及ぼすことが示されている。
【発明の概要】
【0007】
以下に記載および/または請求される装置、システム、および方法において別々にまたは一緒に具体化され得る本主題のいくつかの態様が存在する。これらの態様は、単独で、または本明細書で説明する主題の他の態様と組み合わせて使用することができ、これらの態様の説明は、本明細書に添付された請求項またはその後に修正される請求項に記載されているように、これらの態様を別々に使用したり、そのような態様を別々にまたは異なる組み合わせで使用したりすることを妨げるものではない。
【0008】
一態様では、使い捨て処理回路は、血漿および血小板を含む流体を受け取るように構成され、血漿と血小板を含む流体の別の成分の少なくとも一部から血小板を分離するための再利用可能なハードウェア装置の分離装置と関連する処理室を含む。使い捨て処理回路は、処理室と下流流体連通するサイズ排除フィルタも含み、そこを通る処理室から搬送された分離された血小板から血小板凝集塊を除去するように構成される。血小板貯蔵容器は、サイズ排除フィルタと下流流体連通にされ、サイズ排除フィルタからろ過された血小板を受け取るように構成され、一方、添加剤容器は、サイズ排除フィルタと上流流体連通にされる。
【0009】
別の態様では、血小板を収集する方法が提供される。この方法は、血漿および血小板を含む流体源から流体を提供すること、および、流体の別の成分の少なくとも一部から血小板を分離することを含む。分離された血小板は、サイズ排除フィルタを介して運ばれ、分離された血小板から血小板凝集塊が除去され、ろ過された血小板は血小板貯蔵容器に集められる。次に、添加剤がサイズ排除フィルタを通って血小板貯蔵容器に運ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1は、本開示の態様による血小板の収集および他の処理ステップで使用され得る例示的な自動分離システムの斜視図である。
【0011】
図2は、図1の分離システムの一部の詳細図である。
【0012】
図3は、図1および図2の分離システムの使い捨て処理回路の平面図である。
【0013】
図4および図5は、本開示の一態様による例示的な血小板分離および収集手順の異なる段階中の図1および図2の分離システムの一部の詳細図である。
【0014】
図6および図7は、本開示の一態様による例示的な血小板分離および収集手順の別の実施形態の異なる段階中の図1および図2の分離システムの一部の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で開示される実施形態は、本主題の例示的な説明を提供する目的のためである。しかしながら、それらは例示に過ぎず排他的ではなく、本主題は様々な形態で具現化され得る。したがって、本明細書で開示される特定の詳細は、添付の特許請求の範囲で定義される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0016】
本開示は、血小板貯蔵媒体または添加剤中の血小板を収集するための方法およびシステムに関する。血小板貯蔵媒体または添加剤は、本開示の範囲から逸脱することなく様々に構成することができ、血漿および/または一般に血小板添加剤溶液または「PAS」と呼ばれる合成貯蔵流体を含むことができる。本明細書に記載される血小板製剤には、血小板貯蔵媒体(通常、PASおよび血漿)およびそこに貯蔵される血小板が含まれる。PASを使用する場合、通常、血小板成分中の血漿の60~70%以上が置換されるため、それによって、血小板の懸濁と貯蔵に必要な血漿量が減少する。血小板貯蔵媒体として血漿に加えてPASを使用することは、いくつかの理由(例えば、PASに貯蔵された血小板に起因するアレルギー性輸血反応の発生率の低下)に有利かもしれないが、「添加剤」という用語は、本明細書で使用する場合、血漿流体と非血漿流体の両方、および特に明記しない限り、それらの組み合わせを包含する。
【0017】
例示的な分離システム
貯蔵用の血小板は、血漿および血小板を含む(限定されないが、全血を含む)生体液から多血小板血漿を分離することにより得られる。図1および図2は、本明細書に記載されるように、血小板の分離および収集ならびに添加剤の送達に有用な代表的な分離システム10を示す。図示された分離システム10は、ドイツのバートホンブルクのフレセニウス カビ アーゲーの系列会社であるイリノイ州レイクズーリックのフェンウォール、インコーポレイテッドから入手可能なAMICUS(登録商標)分離システムと同様であり、すべての内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,427,509号、第6,312,607号、第6,582,349号および第8,192,386号により詳細に記載されている。しかしながら、図示された分離システム10は単なる例示であり、分離システムの構成は本開示の範囲から逸脱することなく変更できると理解されるべきである。
【0018】
図1および図2の分離システム10は、ハードウェア構成要素または装置12と、それに取り付けられた使い捨て処理キットまたは回路14とを含む。使い捨て回路14は、流体源の血液または他の生体液にアクセスするためのアクセス装置(例えば、針)を含む。使い捨て回路14はまた、流体(例えば、抗凝固剤および生理食塩水)を保持するための複数の容器と、流体回路14を通る流体、その分離された成分、および他の流体の移動のための流路を規定する管セグメントを含む。図示された使い捨て処理回路14は、ハードウェア装置12の前面パネル18と連絡する1つ以上のカセット(図2では3つのカセット16a,16b,および16cとして示される)を含む。各カセット16a,16b,16cは、流路および弁ステーションを含む。ハードウェア装置12の前面パネル18は、ハードウェア装置12の予めプログラムされた制御部の制御下にある一連の弁を含み、これらは、カセット16a,16b,16cの流路を通過し、最終的に使い捨て回路14の管セグメントを通過する流れを選択的に許可および制限する。
【0019】
図示された実施形態では、使い捨て回路14の処理室20(図3)を収容するために、ハードウェア装置12内に回転遠心分離器が収容されている。図示された処理室20は、遠心力の影響下で流体または流体成分が分離される第1および第2のステージ22および24を有する。図示されたシステム10では遠心分離器が使用されているが、異なる分離原理に基づく分離機も使用されることは本開示の範囲内である。
【0020】
使い捨て回路14は、1つまたは複数の血小板貯蔵容器28と上流流体連通するサイズ排除フィルタ26をさらに含み、血小板貯蔵容器28に流入する流体は最初にサイズ排除フィルタ26を通って流れなければならない。図示された実施形態では、サイズ排除フィルタ26は、カセット16cの1つと下流流体連通しており、したがって、そのカセット16cと1つまたは複数の血小板貯蔵容器28との間に挿入されている。サイズ排除フィルタ26は、サイズ排除フィルタ26を通って流れる流体から血小板凝集塊を除去するように構成される。代替の実施形態では、サイズ排除フィルタ26は、サイズ排除フィルタ26を通って流れる流体から血小板のサイズよりも大きい粒子(例えば、血小板の塊とともに赤血球および白血球)を除去するように構成されてもよい。血小板含有物質をサイズ排除フィルタ26に流すことにより、血小板の塊が血小板貯蔵容器28に流れ込むのが防止される。血小板凝集塊は貯蔵された血小板製剤の品質を低下させることが知られており(凝集した製剤はより多くのグルコースを消費し、より多くの乳酸を生成する)、病原体の不活性化などの後処理工程と干渉するため、いくつかの理由で有利である。さらに、フローサイトメトリーに基づいた白血球の計数を実行すると、血小板の凝集体(自然に自家蛍光である)が白血球ゲートに現れ、誤って白血球として数えられる可能性があり、それにより血小板製剤の報告された白血球含有量が人為的に増加する。
【0021】
ハードウェア装置12は、1つ以上の選択可能なプロトコルで予めプログラムされたプログラム可能な制御部を含むことができる。使用者/操作者は、特定の処理プロトコルを選択して、たとえば、所定の体積を有する血小板製剤を取得するなど、望ましい結果または目的を達成することができる。予めプログラムされた選択可能なプロトコルは、処理中の流体の量、処理中に血小板に使用または追加される添加剤の量、所望の血小板濃度および/または所望の血小板収率、所定の手順の処理時間/期間、および/または、最終血小板製剤の所望の体積を含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の固定および/または調整可能なパラメータに基づいてもよい。
【0022】
特定の処理手順の間、予めプログラムされた制御部は、遠心分離器およびそれに関連する処理室20を作動させて、流体(抗凝固全血など)をさまざまな要素に分離し、ハードウェア装置12の1つまたは複数のポンプを作動させて、生体液、生体液の成分、および非生体液を使い捨て回路14を通して移動させる。これには、例えば、処理室20の第1ステージ22で全血(または血漿および血小板を含む別の生体液)から多血小板血漿の遠心分離を開始および引き起こすこと、および多血小板血漿の少なくとも一部を管セグメント30を介して処理室20からポンプ送液することが含まれ得る。多血小板血漿は、管セグメント30からカセット16cの1つに流れ込み、制御部16によりハードウェア装置12の弁が作動し、多血小板血漿の流れをカセット16cに向ける。多血小板血漿は、使い捨て回路14のサイズ排除フィルタ26に接続された別の管セグメント32を介してカセット16cを出て、サイズ排除フィルタ26を通って血小板貯蔵容器28に流入する。その後、制御部は、ハードウェア装置12の1つ以上のポンプを制御して、サイズ排除フィルタ26を通して添加剤を(多血小板血漿が受ける流れと同じ方向に)送り、血小板製剤として、血小板貯蔵容器28中の多血小板血漿と結合させることができる。制御部のコマンドの下でハードウェア装置12の装置によって実行される様々な処理工程は、別々に、順に、同時に、またはこれらの任意の組み合わせで発生し得る。
【0023】
例示的な単一ステージの分離および収集手順
操作者が所望のプロトコルを選択し、必要なパラメータを入力し、処理回路14をハードウェア装置12に取り付けると、生体液が処理回路14に運ばれ、処理回路14を介して血小板の収集が開始され得る。これは、血液バッグなどの流体源から流体を処理回路14に引き込むためにハードウェア装置12の1つまたは複数のポンプを制御するハードウェア装置12の制御部を含む、いくつかの方法のいずれかで達成することができる。
【0024】
生体液は、処理回路14を介して運ばれ、(ハードウェア装置12の弁を制御して1つまたは複数のカセットを通る流れを方向付ける制御部によって)カセット16a,16b,16cの少なくとも1つを介して処理室20の第1ステージ22に導かれる。制御部は、ハードウェア装置12の遠心分離器を制御して、流体の血小板を流体の別の成分から分離させるのに十分な速度で回転軸の周りで回転させる。図示された例では、処理室20の第1ステージ22で、多血小板血漿は、生体液の他の成分(生体液が全血であれば赤血球)から分離される。そのような実施形態では、処理室20の第2ステージ24は血小板の分離および収集に使用されないので、使用中に処理室20と遠心分離器のバランスを取るために一定量の流体(例えば、生理食塩水)を装填してもよい。しかしながら、第2ステージ24が使用される他の実施形態では(より詳細に説明されるように)、第2ステージ24は、流体の流れおよび分離(例えば、多血小板血漿の流入および流出と、乏血小板血漿などの分離成分の流出)に利用可能なままであり得る。
【0025】
多血小板血漿は、処理室20の第1ステージ22を出て、管セグメント30を通ってカセット16cの1つに運ばれる(図4)。流体の他の成分は、異なる管セグメントを介して第1ステージ22を出て、さらなる処理のために、または廃棄物として収集されるか、または流体源に戻される。一実施形態において、分離された成分の1つの少なくとも一部は、分離後に処理室20内に残っていてもよい。
【0026】
制御部は、ハードウェア装置12の選択された弁を操作して、多血小板血漿の流れをカセット16cを通って第2の管セグメント32を出るように向け、多血小板血漿をカセット16c内に搬送し、カセット16cを通して搬送し、カセット16cから出るように搬送するようにポンプ34を操作する。
【0027】
第2の管セグメント32は、前述のように、血小板凝集塊および/または血小板より大きい粒子の流れを防ぐように構成されたインラインのサイズ排除フィルタ26を含む。したがって、多血小板血漿をサイズ排除フィルタ26に流すことにより、血小板凝集塊および/または血小板よりも大きい粒子(サイズ排除フィルタ26の構成に依存)がサイズ排除フィルタ26から出ることを防ぎ、それによって、上記のさまざまな方法で収集された血小板製剤の品質が改善される。血小板の塊が血小板製剤に存在する場合、製剤を「休止」させるのが慣習的であり、これにより酸素レベルが低下し、それにより解糖およびpHの低下が促進される傾向がある。
【0028】
サイズ排除フィルタ26は、白血球除去フィルタに置き換えることができ、これは分離された多血小板血漿から血小板凝集塊を除去する機能も果たすであろう。しかし、さまざまな理由でサイズ排除フィルタ26を使用することが好ましい場合がある。たとえば、白血球除去フィルタはサイズ排除フィルタよりもかなり高価になる傾向がある。加えて、白血球除去フィルタは、サイズ排除フィルタほど、(より詳細に説明するように)流されるフィルタ上で血小板を放出するためにあまり適さない場合がある。
【0029】
第3の管セグメント34は、サイズ排除フィルタ26の下流端に接続されており、濾過された多血小板血漿を血小板貯蔵容器28に向ける。図示された実施形態では、第3の管セグメント36は、第3の管セグメント34を2つの分岐40,42に分割する接合部38を含み、それぞれが関連付けられた血小板貯蔵容器28を有する。他の実施形態では、血小板貯蔵容器28は1つのみであってもよく、または3つ以上の血小板貯蔵容器28があってもよい。
【0030】
濾過されるべき多血小板血漿のすべてがサイズ排除フィルタ26を通過すると、制御部はハードウェア装置12の弁を再構成して、カセット16cを通る異なる流路を規定する(図5)。新しい弁構成は、添加剤容器46(図3)に接続された管セグメント44と第2の管セグメント32との間のカセット16cを通る流路を規定する。添加剤容器46は、閉システムの一部として処理回路14の残りの部分と一体に形成されてもよいし、使用前に別個に提供され、(例えば、滅菌ドッキングポートまたはスパイクコネクタを使用して)回路14に接続されてもよい。
【0031】
一実施形態では、添加剤容器46には、ある量の合成PASが提供されるが、手順の開始時に添加剤容器46が空であることも本開示の範囲内である。そのような実施形態では、処理室20(例えば、第2ステージ24)内の流体から分離された血漿は、添加剤として機能する血漿と共に添加剤容器46に向けられる。さらに別の実施形態によれば、合成PASを含む少なくとも1つと、分離された血漿を受け取るように構成された少なくとももう1つとを備えた複数の添加剤容器を備えることができる。
【0032】
添加剤の性質に関係なく、制御部は、ハードウェア装置のポンプの1つまたは複数(図5では単一のポンプ34として示されている)を作動させて、添加剤を管セグメント44を通して、カセット16cの中に、および、カセット16cを通して、第2の管セグメント32を介してカセット16cから出るように搬送する。添加剤は、サイズ排除フィルタ26を通って血小板貯蔵容器28に流れ込み、そこで最終血小板製剤として濾過された多血小板血漿と混合される。複数の添加剤容器が備えられる場合、異なる容器からの添加剤は、サイズ排除フィルタ26を通して連続的にまたは同時に運ばれ得る。添加剤でサイズ排除フィルタ26を流すと、添加剤で血小板に富む血漿が置換されることにより最終血小板製剤の血小板回収率が向上し、サイズ排除フィルタ26に存在する可能性のある血小板凝集塊も破壊され、それにより血小板収量が増加する。
【0033】
血小板貯蔵容器28に適切な量の添加剤を加えると、手順は終了または追加の処理(例えば、最終血小板製剤の病原体不活化)で継続する場合がある。
【0034】
例示的なダブルステージ分離および収集手順
前述の手順は、図1および図2のシステム10に特有であるが、しかし、本開示は、この特定の方法またはそのようなシステムを使用する手順に限定されないことが理解されるべきである。他の実施形態では、分離された血小板がサイズ排除フィルタ26を通して運ばれ、その後、凝集した血小板を緩め、それらを、添加剤と流された血小板がろ過された血小板と混合される場所に流すために、添加剤がサイズ排除フィルタ26を通して運ばれるという条件で、先行する手順の多くの段階のいずれかが本開示の範囲から逸脱することなく変わり得る。
【0035】
例えば、前述の例示的な手順の1つの変形によれば、血小板は、サイズ排除フィルタ26を通して運ばれる前に、処理室20の両方のステージ22,24を通過し得る。
【0036】
単一ステージ手順に関して上述したように、操作者が所望の(ダブルステージ)プロトコルを選択し、必要なパラメータを入力し、処理回路14をハードウェア装置12に装着すると、血小板の収集が、処理回路14内に搬送され処理回路14を通して搬送される生体液で開始され得る。
【0037】
生体液は、処理回路14を介して運ばれ、(ハードウェア装置12の弁を制御して1つまたは複数のカセットを通る流れを方向付ける制御部によって)カセット16a,16b,16cの少なくとも1つを通って処理室20の第1ステージ22内に導かれる。制御部は、ハードウェア装置12の遠心分離器を制御して、処理室20の第1ステージ22内で流体の血小板を流体の別の成分から分離させる(例えば、流体が全血である場合、赤血球から多血小板血漿が赤血球から分離される)のに十分な速度で回転軸の周りで回転させる。
【0038】
分離された血小板は、管セグメント30を介して第1ステージ22を出て、単一ステージ手順のようにカセット16cの1つに流れる。しかしながら、カセット16cを通り、次にサイズ排除フィルタ26を通る(図4のように)のではなく、制御部は代わりにポンプ34aとハードウェア装置12の選択された弁を操作して血小板の流れを処理室20の第2ステージ24に通じる管セグメント48を介してカセット16cの外に方向付ける(図6)。血小板が第2ステージ24に運ばれると、流体の他の成分は異なる管セグメントを通って第1ステージ22を出て、さらなる処理のために、または廃棄物として収集されるか、または流体源に戻され得る。
【0039】
遠心分離器内の処理室20の回転により、処理室20の第2ステー24に入る血小板は、血小板を別の流体成分から分離することによりさらに濃縮される。例えば、第2ステージ24に流入する流体が多血小板血漿である場合、濃縮またはペレット化された血小板は(血小板の少ない)血漿から分離される。血小板から分離された流体成分は、血小板が第2ステージ24に蓄積し続けている間に、第2ステージ24から流出し得る。一実施形態では、(第2ステージ24で血小板から分離された流体成分として)乏血小板血漿は、第2ステージ24から、添加剤容器46に対応する、または、異なる容器であり得る血漿または添加剤容器に運ばれ得る。
【0040】
最終的に(例えば、所望の量の血小板が第2ステージ24に蓄積されるか、所定量の流体が処理されると)、制御部は、第2ステージ24の血小板が再懸濁される段階に移行し得る。血小板は、前の段階で血小板から分離された乏血小板血漿、合成PAS、または、異なる流体または流体の組み合わせを使用して再懸濁することができる。
【0041】
次いで、再懸濁された血小板は、処理室20の第2ステージ24から搬送され、処理回路14の管セグメント50を介してカセット16c内に運ばれる。制御部は、ハードウェア装置12の選択された弁を操作して、再懸濁された血小板の流れをカセット16cを通し、第2の管セグメント32(図7)の外に導き、制御部はポンプ34を操作して再懸濁された血小板をカセット16cの中へ搬送し、カセット16cを通して搬送し、カセット16cの外に搬送する。
【0042】
再懸濁された血小板は、単一ステージの手順で多血小板血漿に関して、上述のように、第2の管セグメント32のサイズ排除フィルタ26、第3の管セグメント36、および接合部38および(提供される場合)分岐40,42の1つのを通過して血小板貯蔵容器28に至る。分離された血小板がサイズ排除フィルタ26を通過することは、分離された血小板が再懸濁された血小板を含む場合、濃縮された血小板の不完全な再懸濁から生じる血小板凝集塊を除去するので特に有利である。
【0043】
濾過されるべき再懸濁血小板のすべてがサイズ排除フィルタ26を通過すると、制御部はハードウェア装置12の弁を再構成して、カセット16cを通る異なる流路を規定する。新しい弁構成は、添加剤容器46に接続された管セグメント44と第2の管セグメント32(図5のように)の間、または他の何らかの添加剤源(例えば、別個の血漿容器)と第2の管セグメント32の間のカセット16cを通る流路を規定する。
【0044】
制御部は、ハードウェア装置12の1つ以上のポンプを作動させて、添加剤源から添加剤をカセット16cへ、およびカセット16cを通して、第2の管セグメント32を介してカセット16cから運び出す。添加剤は、サイズ排除フィルタ26を通って血小板貯蔵容器28に流れ込み、そこで最終血小板製剤として濾過された再懸濁血小板と混合される。複数の添加剤容器が備えられる場合、異なる容器からの添加剤は、サイズ排除フィルタ26を通して連続的にまたは同時に運ばれ得る。前述のように、サイズ排除フィルタ26を添加剤で洗い流すと、再懸濁血小板を添加剤で置換することにより最終血小板製剤の血小板回収率が向上し、また、サイズ排除フィルタ26に存在する血小板凝集塊が破壊され、血小板収量が増加する。
【0045】
血小板貯蔵容器28に適切な量の添加剤があれば、手順は終了するか、追加の処理を続け得る。
【0046】
態様
態様1. 分離装置を含む再利用可能なハードウェア装置と組み合わせて使用するように構成された使い捨て処理回路であって、処理回路は、血漿と血小板を含む流体の別の成分の少なくとも一部からの血小板の分離のために、血漿と血漿板を含む流体を受け取るように構成され、再利用可能なハードウェアの分離装置と関連付けられる処理室と;処理室と下流流体連通し、処理室からそこを通って運ばれた分離された血小板から血小板凝集塊を除去するように構成されるサイズ排除フィルタと;サイズ排除フィルタと下流流体連通し、ろ過された血小板をサイズ排除フィルタから受け取るように構成される血小板貯蔵容器と;サイズ排除フィルタと上流流体連通する添加剤容器とを備える。
【0047】
態様2. カセットをさらに備え、処理室および添加剤容器は、カセットを介してサイズ排除フィルタと流体連通している、態様1の使い捨て処理回路。
【0048】
態様3. サイズ排除フィルタが管セグメントによって血小板貯蔵容器に接続されている、上述の態様のいずれか1つの使い捨て処理回路。
【0049】
態様4. 添加剤容器が合成血小板貯蔵媒体を含む、先行する態様のいずれか1つの使い捨て処理回路。
【0050】
態様5. 添加剤容器が処理室から血漿を受け取るように構成されている、態様1~3のいずれか1つの使い捨て処理回路。
【0051】
態様6. 血小板を収集するためのシステムであって、先行する態様のいずれか1つの使い捨て処理回路と、分離装置および制御部を含む再利用可能なハードウェア装置とを備え、ここで、制御部は、血漿および血小板を含む流体を処理室に搬送し、分離装置を用いて血小板を処理室の流体の別の成分の少なくとも一部から分離し、血小板凝集塊を分離された血小板から除去するために分離された血小板をサイズ排除フィルタを通して搬送し、ろ過された血小板を血小板貯蔵容器内に収集し、そして、添加剤を添加剤容器からサイズ排除フィルタを通して血小板貯蔵容器内に搬送するためにハードウェア装置を操作するようにプログラムされている。
【0052】
態様7. 分離装置が遠心分離器を含む、態様6に記載のシステム。
【0053】
態様8. 制御部は、血液源から全血を処理回路に引き込むためにハードウェア装置を動作させるようにさらにプログラムされ、前記流体は抗凝固処理全血を含む、態様6~7のいずれか1つのシステム。
【0054】
態様9. 流体の別の成分の少なくとも一部が赤血球を含む、態様6~8のいずれか1つのシステム。
【0055】
態様10. 血小板を収集する方法であって、血漿および血小板を含む流体源から流体を提供することと;流体の別の成分の少なくとも一部から血小板を分離することと;血小板凝集塊を分離された血小板から除去するために分離された血小板をサイズ排除フィルタを通して搬送することと;ろ過された血小板を血小板貯蔵容器内に収集することと;そして、添加剤をサイズ排除フィルタを通して血小板貯蔵容器内に搬送することとを含む方法。
【0056】
態様11. 流体の別の成分の少なくとも一部から血小板を分離することは、流体の別の成分の前記少なくとも一部から多血小板血漿を分離することを含み、分離された血小板は多血小板血漿を含む、態様10の方法。
【0057】
態様12. 流体の別の成分の少なくとも一部から血小板を分離することは、流体の別の成分の前記少なくとも一部から多血小板血漿を分離することと、多血小板血漿を濃縮血小板と乏血小板血漿とに分離することと、濃縮された血小板を再懸濁することとを含み、分離された血小板は再懸濁された血小板を含む、態様10の方法。
【0058】
態様13. 分離された血小板は、遠心分離によって流体の別の成分の少なくとも一部から分離される、態様10~12のいずれか1つの方法。
【0059】
態様14. 流体は抗凝固処理された全血を含み、流体の別の成分の少なくとも一部は赤血球を含む、態様10~13のいずれか1つの方法。
【0060】
態様15. 態様6~9のいずれか1つのシステムを使用する、態様10~14のいずれか1つの方法。
【0061】
上述の実施形態は、本主題の原理の応用のいくつかを例示するものであることが理解される。本明細書で個々に開示または請求される特徴の組み合わせを含む、請求される主題の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって多数の修正が行われ得る。これらの理由により、本明細書の範囲は上記の説明に限定されず、添付の特許請求の範囲に記載されており、特許請求の範囲は、個別に開示または請求される特徴の組み合わせを含む、特許請求の範囲の特徴に向けられ得ることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7