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  • 特許-立体構造的に特異的なウイルス免疫原 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】立体構造的に特異的なウイルス免疫原
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/005 20060101AFI20240415BHJP
   C07K 14/02 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/03 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/085 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/145 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/14 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/15 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/155 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/16 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/175 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/18 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/115 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20240415BHJP
   C07K 14/065 20060101ALI20240415BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
C07K14/005
C07K14/02
C07K14/03
C07K14/085
C07K14/145
C07K14/14
C07K14/15
C07K14/155
C07K14/16
C07K14/165
C07K14/175
C07K14/18
C07K14/115
C07K14/11
C07K14/065
C12N15/10 200Z
A61K39/12
A61P37/04
A61P31/12
A61P31/18
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022128985
(22)【出願日】2022-08-12
(62)【分割の表示】P 2020073065の分割
【原出願日】2013-05-09
(65)【公開番号】P2022163180
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】61/644,830
(32)【優先日】2012-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514283320
【氏名又は名称】マーシャル,クリストファー,パトリック
【氏名又は名称原語表記】MARSHALL,Christopher,Patrick
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル,クリストファー,パトリック
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0076298(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0061549(US,A1)
【文献】特表2007-537133(JP,A)
【文献】特表2003-511420(JP,A)
【文献】J. Virol.,2002年,Vol.76,pp.8875-8889
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci.,2002年,Vol.99,pp.11842-11847
【文献】ACS Chem. Biol.,2012年03月29日,Vol.7,pp.1059-1066
【文献】Science,2009年,Vol.326,pp.285-289
【文献】Nature,2008年,Vol.455,pp.109-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00ー19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子操作されたウイルス免疫原を産生するための方法であって、前記方法が:(a)抗体に結合し、B細胞受容体を活性化することのできる立体構造をしたウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体を得るステップ、(b)1つまたは複数のジチロシン架橋の導入が抗体エピトープの立体構造を安定化することができる、三次および/または四次構造の前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体の1つまたは複数の領域を同定するステップ、(c)前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体の中に、チロシンへの1つまたは複数の点変異を、ステップ(b)において選択された1つまたは複数の領域に導入するステップ、)遺伝子操作されたウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体を形成するために、前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体の中に、1つまたは複数のジチロシン架橋を、ステップ(b)において同定された1つまたは複数の領域に導入するステップを備え、少なくとも1つのジチロシン架橋が、チロシンへの点変異から生じ、前記遺伝子操作されたウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体が、
i.前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体と比較して増強した、中和抗体に対する結合能力、
ii.前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体と比較して増強した、広域中和抗体に対する結合能力、
iii.前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体と比較して増強した、B細胞受容体に対する結合能力の増強および活性化能力、
iv.前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体と比較して増強した、動物において抗体応答を誘起する能力、
v.前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体と比較して増強した、動物において、保護的な抗体応答を誘起する能力、
vi.前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体と比較して増強した、動物において中和抗体の産生を誘起する能力、
vii.前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体と比較して増強した、動物において広域中和抗体の産生を誘起する能力、
viii.前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体と比較して増強した、動物において、保護的な免疫応答を誘起する能力、および
ix.前記ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体と比較して増強した、動物において、四次中和エピトープを認識する抗体に結合し、その産生を誘起する能力、からなる群から選択される1つまたは複数の特性を有し、
前記ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、ヘルペスウイルス目(Herpesvirales)、リガメンウイルス目(Ligamenvirales)、モノネガウイルス目(Mononegavirales)、ニドウイルス目(Nidovirales)、ピコルナウイルス目(Picornavirales)、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ポックスウイルス、フラビウイルス、トガウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、ブニアウイルス、フィロウイルス、レオウイルス、モノネガウイルス目(Mononegavirales)、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスからなる群のウイルスに由来する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年5月9日に提出された米国仮特許出願第61/644,830号明細書の利益を主張し、この内容は、参照によってこれによって組み込まれる。
【0002】
この特許文書の開示の部分は、著作権保護の対象となる資料を含有する。著作権の所有者は、それが特許商標庁の特許ファイルまたはレコードにおいて発表されるように、特許文書または特許開示の複写による複製に反対しないまたはそうでなければすべての著作権の権利を一切留保する。
【0003】
本発明は、部分的に、立体構造的に特異的な免疫原を産生するための方法および立体構造的に特異的な免疫原として有用な、遺伝子操作されたウイルスタンパク質およびウイルスタンパク質複合体を産生するための方法ならびにそのような方法を使用して産生された立体構造的に特異的な免疫原ならびに遺伝子操作されたウイルスタンパク質およびウイルスタンパク質複合体に関する。
【背景技術】
【0004】
多くの病原性ウイルスは、宿主免疫系による認識および排除を逃れるための戦略を発達させてきた。そのような戦略は、外被糖タンパク質の高い突然変異率、外被タンパク質のグリコシル化、および立体構造的なマスキング-それによって、受容体結合などのような重要な機能に関与するものなどのような、ウイルスタンパク質の保存された部分が、「マスクされ」、それらが抗体によって不完全に認識されるまたは抗体による認識を逃れる、を含む。そのような立体構造的なマスキングは、ウイルスタンパク質に基づくワクチンの開発において大きな問題を引き起こす。よって、ワクチンとしての免疫原性が増強し、かつ有効性が増強した、遺伝子操作されたウイルスタンパク質およびウイルスタンパク質の複合体を産生するための方法の必要性が、当技術分野においてある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、部分的に、立体構造的に特異的なワクチン免疫原を産生するための方法、ウイルスタンパク質およびウイルスタンパク質複合体を遺伝子操作するための方法、そのように遺伝子操作されたウイルスタンパク質およびウイルスタンパク質複合体、ならびにそのような遺伝子操作されたウイルスタンパク質およびウイルスタンパク質複合体を含む医薬組成物を提供する。そのような遺伝子操作されたタンパク質は、立体構造的に特異的なワクチン免疫原として有用であってもよい。
【0006】
一実施形態において、本発明は、立体構造的に特異的な免疫原を産生するための方法において、(a)保護的な免疫応答の誘発に好都合である、1つまたは複数の立体構造をしたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を得るステップ、(b)1つまたは複数の架橋の導入が抗体エピトープの立体構造を安定化することができる(および/または保護的な免疫応答の誘発に好都合である立体構造を安定化することができる)、三次および/または四次構造のウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の1つまたは複数の領域を同定するステップ、ならびに(c)遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を形成するために、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の中に、1つまたは複数の標的架橋を、ステップ(b)において同定された1つまたは複数の領域に導入するステップを含み、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、以下の1つまたは複数の特性:(i)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した(つまり架橋の導入を伴わないまたは架橋の導入の前のウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した)、中和抗体に対する結合能力の増強、(ii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、広域中和抗体に対する結合能力の増強、(iii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、B細胞受容体に対する結合能力の増強および活性化能力の増強、(iv)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において抗体応答を誘起する能力の増強、(v)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、保護的な抗体応答を誘起する能力の増強、(vi)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において中和抗体の産生を誘起する能力の増強、(vii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において広域中和抗体の産生を誘起する能力の増強、(viii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、保護的な免疫応答を誘起する能力の増強、および(ix)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、四次中和エピトープを認識する抗体に結合し、その産生を誘起する能力の増強、を有する方法を提供する。いくつかのそのような実施形態において、標的架橋が、ジチロシン(DT)架橋である。
【0007】
他の実施形態において、本発明は、立体構造的に特異的な免疫原を産生するための方法において、(a)保護的な免疫応答の誘発に好都合である、1つまたは複数の立体構造をしたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を得るステップおよび(b)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の中に、生理学的条件下で安定性の1つまたは複数の架橋を導入するステップを含み、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、以下の1つまたは複数の特性:(i)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した(つまり架橋の導入を伴わないまたは架橋の導入の前のウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した)、中和抗体に対する結合能力の増強、(ii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、広域中和抗体に対する結合能力の増強、(iii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、B細胞受容体に対する結合能力の増強および活性化能力の増強、(iv)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において抗体応答を誘起する能力の増強、(v)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、保護的な抗体応答を誘起する能力の増強、(vi)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において中和抗体の産生を誘起する能力の増強、(vii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において広域中和抗体の産生を誘起する能力の増強、(viii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、保護的な免疫応答を誘起する能力の増強、および(ix)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、四次中和エピトープを認識する抗体に結合し、その産生を誘起する能力の増強、を有する方法を提供する。いくつかのそのような実施形態において、架橋が、タンパク質またはタンパク質複合体の三次または四次構造内の同定されたおよび/または選択された位置を標的にする。いくつかのそのような実施形態において、標的架橋が、ジチロシン(DT)架橋を含む。
【0008】
DT架橋が使用されるいくつかの実施形態において、ジチロシン架橋の少なくとも1つが、アミノ酸残基のチロシンへの点突然変異から生じる。さらに、DT架橋が使用されるいくつかの実施形態において、上記に記載される方法が、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の中に、チロシンへの1つまたは複数の点突然変異を、ジチロシン架橋を導入する前に、1つまたは複数の特異的なおよび/または同定された領域に導入するステップをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明の方法が、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、中和抗体に結合する、広域中和抗体に結合する、B細胞受容体に結合し、かつ活性化する、動物において抗体応答を誘起する、動物において、保護的な抗体応答を誘起する、動物において中和抗体の産生を誘起する、動物において広域中和抗体の産生を誘起する、動物において、保護的な免疫応答を誘起する、および/または動物において四次中和エピトープを認識する抗体の産生を誘起する能力を評価するためにアッセイを実行するステップをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、本発明の方法を使用して作製された、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、動物対象においてワクチン免疫原として有用である。いくつかの実施形態において、本発明の方法を使用して作製された、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、哺乳動物対象においてワクチン免疫原として有用である。いくつかの実施形態において、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、ヒト対象においてワクチン免疫原として有用である。
【0011】
本発明の方法は、多数の異なるウイルス由来のタンパク質を遺伝子操作するために使用することができる。いくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、ヘルペスウイルス目(Herpesvirales)、リガメンウイルス目(Ligamenvirales)、モノネガウイルス目(Mononegavirales)、ニドウイルス目(Nidovirales)、ピコルナウイルス目(Picornavirales)、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ポックスウイルス、フラビウイルス、トガウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、ブニアウイルス、フィロウイルス、レオウイルス、モノネガウイルス目(Mononegavirales)、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスからなる群のウイルスに由来する。いくつかの実施形態において、任意のウイルスタンパク質が、本発明の方法を使用して遺伝子操作されてもよい。いくつかの実施形態において、遺伝子操作されることになっているウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体である。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、可溶性である。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、たとえば産生プロセスの間にまたは高濃度で保存された場合に、そのように遺伝子操作されていないタンパク質またはタンパク質複合体と比較して、凝集物を形成する程度が低いまたは全く形成しない。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明が、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、そのような組成物が、薬学的有効量の、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を含む。いくつかの実施形態において、そのような組成物がまた、薬学的に許容できるキャリヤをも含む。いくつかの実施形態において、そのような組成物がまた、アジュバントをも含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明が、ワクチン免疫原としてのそれらの有効性を増強させるために、病原性ウイルスの外被タンパク質および外被タンパク質複合体を安定化するための方法を提供する。一実施形態において、本発明が、タンパク質の三次構造および/またはタンパク質複合体の四次構造(つまり、2つ以上のタンパク質の複合体におけるタンパク質間相互作用)を架橋によって安定化することができる方法を提供し、それによって、架橋が、生理学的に適切な条件下で安定性であり、発現の間にまたはそれらが高濃度で保存された場合に、タンパク質またはタンパク質複合体の凝集物形成に至らず、ワクチン免疫原としてのタンパク質またはタンパク質複合体の有効性を増加させることができる特定の立体構造をしたタンパク質またはタンパク質複合体のフォールドを安定化する-たとえば、抗体によって認識することができるおよび/または結合と同時にB細胞受容体を活性化する、そのような立体構造をしたエピトープを安定化することによって。いくつかのそのような実施形態において、架橋を、たとえばジチロシン結合によってなどのように、タンパク質もしくはタンパク質複合体内の特定の残基に対して特異的に誘導することができるまたは架橋を、アミノおよびスルフヒドリルを含有するアミノ酸側鎖に対して誘導することができる。いくつかのそのような実施形態において、架橋が、長さゼロとすることができるまたはタンパク質の構造の中にさらなる原子およびエレメントを挿入してもよい。いくつかの実施形態において、本発明が、タンパク質複合体を安定化し、かつ、また、ワクチン免疫原としてのタンパク質またはタンパク質複合体の有効性を増加させるものなどのような特定の立体構造をした、そのようなタンパク質複合体におけるタンパク質のフォールドを、たとえば、抗体によって認識することができ、かつ結合と同時にB細胞受容体を活性化する立体構造をしたエピトープを安定化することによって、安定化することもできるオリゴマー化モチーフによってタンパク質またはタンパク質複合体をオリゴマー化することができる方法を提供する。
【0015】
本発明のこれらのおよび他の実施形態は、本明細書の本発明の概要、詳細な説明、実施例、および請求項の部を含めて、本出願の全体にわたって記載される。さらに、本明細書において記載される様々な実施形態は、当業者らに明らかであるように、様々な方法において組み合わせ、修飾することができ、そのような組み合わせおよび修飾は、本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、ジチロシン架橋HIV Env gp140三量体の分析を示す図である。図1A-ジチロシン架橋の前およびその後(+DT)の両方の、野生型コントロール(「WTコントロール」)HIV Env gp140タンパク質およびV1/V2領域においてチロシン置換を有する、遺伝子操作されたHIV Env gp140タンパク質(「突然変異体」)におけるDT架橋を同定し、定量化するために使用したジチロシン(DT)特異的分光蛍光分析実験の結果を示す棒グラフ。図1B-左パネル-DT架橋を有していない(「-」)または有する(「+」)突然変異体HIV Env gp140タンパク質のクーマシー染色。図1B-右パネル-DT架橋を有していない(「-」)または有する(「+」)精製HIV Env gp140のウェスタンブロット。矢印は、単量体および三量体形態の場所を示す。
図2図2は、さまざまな濃度の広域中和抗体PG16に対する、野生型HIV Envプロトマーおよび立体構造的にロックされたHIV Env三量体の結合を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって測定したことを示す図である。グラフの下の線は、さまざまな濃度のPG16に対する野生型(WT)HIV Envプロトマーの結合を示すが、上の線は、さまざまな濃度のPG16に対する、立体構造的にロックされたHIV Env三量体の結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、部分的に、ウイルスタンパク質およびタンパク質複合体を遺伝子操作するための方法、そのように遺伝子操作されたウイルスタンパク質およびタンパク質複合体、ならびにそのような遺伝子操作されたウイルスタンパク質およびタンパク質複合体を含む医薬組成物を提供する。そのような遺伝子操作されたタンパク質は、立体構造的に特異的な免疫原として有用であってもよい。
【0018】
一実施形態において、本発明は、立体構造的に特異的なワクチン免疫原を産生するための方法において、(a)保護的な免疫応答の誘発に好都合である、1つまたは複数の立体構造をしたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を得るステップ、(b)1つまたは複数の架橋の導入が抗体エピトープの立体構造を安定化することができる(および/または保護的な免疫応答の誘発に好都合である立体構造を安定化することができる)、三次および/または四次構造のウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の1つまたは複数の領域を同定するステップ、ならびに(c)遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を形成するために、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の中に、1つまたは複数の標的架橋を、ステップ(b)において同定された1つまたは複数の領域に導入するステップを含み、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、以下の1つまたは複数の特性:(i)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した(つまり架橋の導入を伴わないまたは架橋の導入の前のウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した)、中和抗体に対する結合能力の増強、(ii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、広域中和抗体に対する結合能力の増強、(iii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、B細胞受容体に対する結合能力の増強および活性化能力の増強、(iv)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において抗体応答を誘起する能力の増強、(v)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、保護的な抗体応答を誘起する能力の増強、(vi)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において中和抗体の産生を誘起する能力の増強、(vii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において広域中和抗体の産生を誘起する能力の増強、(viii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、保護的な免疫応答を誘起する能力の増強、および(ix)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、四次中和エピトープを認識する抗体に結合し、その産生を誘起する能力の増強、を有する方法を提供する。いくつかのそのような実施形態において、標的架橋が、ジチロシン(DT)架橋である。
【0019】
他の実施形態において、本発明は、立体構造的に特異的なワクチン免疫原を産生するための方法において、(a)保護的な免疫応答の誘発に好都合である、1つまたは複数の立体構造をしたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を得るステップおよび(b)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の中に、生理学的条件下で安定性の1つまたは複数の架橋を導入するステップを含み、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、以下の1つまたは複数の特性:(i)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した(つまり架橋の導入を伴わないまたは架橋の導入の前のウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した)、中和抗体に対する結合能力の増強、(ii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、広域中和抗体に対する結合能力の増強、(iii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、B細胞受容体に対する結合能力の増強および活性化能力の増強、(iv)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において抗体応答を誘起する能力の増強、(v)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、保護的な抗体応答を誘起する能力の増強、(vi)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において中和抗体の産生を誘起する能力の増強、(vii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において広域中和抗体の産生を誘起する能力の増強、(viii)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、保護的な免疫応答を誘起する能力の増強、および(ix)ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と比較した、動物において、四次中和エピトープを認識する抗体に結合し、その産生を誘起する能力の増強、を有する方法を提供する。いくつかのそのような実施形態において、架橋が、タンパク質またはタンパク質複合体の三次または四次構造内の同定されたおよび/または選択された位置を標的にする。いくつかのそのような実施形態において、標的架橋が、ジチロシン(DT)架橋を含む。
【0020】
DT架橋が使用されるいくつかの実施形態において、ジチロシン架橋の少なくとも1つが、アミノ酸残基のチロシンへの点突然変異から生じる。さらに、DT架橋が使用されるいくつかの実施形態において、上記に記載される方法が、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の中に、チロシンへの1つまたは複数の点突然変異を、ジチロシン架橋を導入する前に、1つまたは複数の特異的なおよび/または同定された領域に導入するステップをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、本発明の方法が、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、中和抗体に結合する、広域中和抗体に結合する、B細胞受容体に結合し、かつ活性化する、動物において抗体応答を誘起する、動物において、保護的な抗体応答を誘起する、動物において中和抗体の産生を誘起する、動物において広域中和抗体の産生を誘起する、動物において、保護的な免疫応答を誘起する、および/または動物において四次中和エピトープを認識する抗体の産生を誘起する能力を評価するためにアッセイを実行するステップをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、本発明の方法を使用して生成された、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、動物対象においてワクチン免疫原として有用である。いくつかの実施形態において、本発明の方法を使用して生成された、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、哺乳動物対象においてワクチン免疫原として有用である。いくつかの実施形態において、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、ヒト対象においてワクチン免疫原として有用である。
【0023】
本発明の方法は、多数の異なるウイルス由来のタンパク質またはタンパク質複合体を遺伝子操作するために使用することができる。いくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、ヘルペスウイルス目(Herpesvirales)、リガメンウイルス目(Ligamenvirales)、モノネガウイルス目(Mononegavirales)、ニドウイルス目(Nidovirales)、ピコルナウイルス目(Picornavirales)、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ポックスウイルス、フラビウイルス、トガウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、ブニアウイルス、フィロウイルス、レオウイルス、モノネガウイルス目(Mononegavirales)、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスからなる群のウイルスに由来する。いくつかの実施形態において、任意のウイルスタンパク質が、本発明の方法を使用して遺伝子操作されてもよい。いくつかの実施形態において、遺伝子操作されることになっているウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体である。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明のウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体および/または遺伝子操作されたウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体が、可溶性である。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、たとえば産生プロセスの間にまたは高濃度で保存された場合に、凝集物を形成しない。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明が、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、そのような組成物が、薬学的有効量の、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を含む。いくつかの実施形態において、そのような組成物がまた、薬学的に許容できるキャリヤをも含む。いくつかの実施形態において、そのような組成物がまた、アジュバントをも含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明が、ワクチン免疫原としてのそれらの有効性を増強させるために、病原性ウイルスの外被タンパク質および外被タンパク質複合体を安定化するための方法を提供する。一実施形態において、本発明が、タンパク質の三次構造および/またはタンパク質複合体の四次構造(つまり、2つ以上のタンパク質の複合体におけるタンパク質間相互作用)を架橋によって安定化することができる方法を提供し、それによって、架橋が、生理学的に適切な条件下で安定性であり、発現の間にまたはそれらが高濃度で保存された場合に、タンパク質またはタンパク質複合体の凝集物形成に至らず、免疫原としてのタンパク質またはタンパク質複合体の有効性を増加させることができる特定の立体構造をしたタンパク質またはタンパク質複合体のフォールドを安定化する-たとえば、抗体によって認識することができるおよび/または結合と同時にB細胞受容体を活性化する、そのような立体構造をしたエピトープを安定化することによって。いくつかのそのような実施形態において、架橋を、たとえばジチロシン結合によってなどのように、タンパク質もしくはタンパク質複合体内の特定の残基に特異的に誘導することができるまたは架橋は、アミノおよびスルフヒドリルを含有するアミノ酸側鎖に対して誘導することができる。いくつかのそのような実施形態において、架橋が、長さゼロとすることができるまたはタンパク質の構造の中にさらなる原子およびエレメントを挿入してもよい。いくつかの実施形態において、本発明が、タンパク質複合体を安定化し、かつ、また、ワクチン免疫原としてのタンパク質またはタンパク質複合体の有効性を増加させるものなどのような特定の立体構造をした、そのようなタンパク質複合体におけるタンパク質のフォールドを、たとえば、抗体によって認識することができ、かつ結合と同時にB細胞受容体を活性化する立体構造をしたエピトープを安定化することによって、安定化することもできるオリゴマー化モチーフによってタンパク質またはタンパク質複合体をオリゴマー化することができる方法を提供する。
【0027】
いくつかの実施形態において、本発明が、ワクチン免疫原として有用な、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を産生するための方法において、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の中に、1つまたは複数の架橋を導入し、それによって、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を形成するステップを含む方法を提供する。いくつかのそのような実施形態において、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、哺乳動物、またはより詳細にはヒトにおいてなどのように、脊椎動物においてワクチン免疫原として有用である。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、架橋が、ウイルスによる立体構造的なマスキングに対抗する立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化するために導入される。いくつかの実施形態において、架橋が、B細胞受容体に結合し、かつ活性化することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、動物において抗体応答を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、中和抗体応答を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、広域中和抗体応答を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋は、立体構造的に特異的な抗体を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、四次エピトープを認識する抗体を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、四次中和エピトープを認識する抗体を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、不安定なエピトープを認識する抗体を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、ウイルスに対する広域に保護的な抗体応答を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、ウイルスに対する中和免疫応答を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、ウイルスに対する広域中和免疫応答を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、哺乳動物において液性免疫応答の増強を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、ウイルスによる感染から個人を保護することができる液性免疫を誘起することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、抗体が結合することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、中和抗体が結合することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、広域中和抗体が結合することができる立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、耐熱性である立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、長期間の有効期間を有する立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、対象の体内で長期間の寿命または半減期を有する立体構造をした、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。いくつかの実施形態において、立体構造異性体(つまり目的の/所望の立体構造を有するタンパク質の形態)が対象の体内で長期間の寿命または半減期を有するように、架橋が、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を安定化する。
【0029】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が、B細胞受容体に結合し、かつ活性化することができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が、中和抗体応答または広域中和抗体応答などのように、動物において抗体応答を誘起することができる。いくつかのそのような実施形態において、抗体応答が、立体構造的に特異的な抗体の生成を含む。いくつかのそのような実施形態において、抗体応答が、四次中和エピトープまたはQNEなどのような四次エピトープを認識する抗体の生成を含む。いくつかのそのような実施形態において、抗体応答が、不安定なエピトープを認識する抗体の生成を含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が、ウイルスに対する広域に保護的な抗体応答を誘起することができる。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が、ウイルスに対する広域中和免疫応答などのように、ウイルスに対する中和免疫応答を誘起することができる。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が、哺乳動物において液性免疫応答の増強を誘起することができる。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が、ウイルスによる感染から動物対象(哺乳動物対象またはヒト対象など)を保護することができる液性免疫応答を誘起することができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が、中和抗体または広域中和抗体などのような抗体に結合することができる。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が、中和抗体または広域中和抗体に優位に結合する。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が、少なくとも1つの中和抗体および少なくとも1つの非中和抗体に結合することができ、それらが非中和抗体に結合するよりも高い親和性で中和抗体に結合することができる。
【0034】
本明細書において記載される本発明のいくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体に結合する抗体が、モノクローナル抗体である。
【0035】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の中に導入された架橋が、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の構造においてフォールドを安定化する。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が完全にフォールドされた後に、架橋が、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の中に導入される。特に、本発明のいくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が:(i)保護的な免疫応答の誘発または(ii)中和抗体の結合または(iii)広域中和抗体の結合または(iv)B細胞受容体の結合および活性化または(v)動物における抗体応答の誘発または(vi)動物における保護的な抗体応答の誘発または(vii)動物における中和抗体の誘発または(vii)動物における広域中和抗体の誘発または(viii)動物における保護的な免疫応答の誘発または(ix)動物における四次中和エピトープを認識する抗体の誘発に好都合である立体構造に完全にフォールドされた後に、架橋が、ウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の中に、タンパク質またはタンパク質複合体をそのような立体構造に「ロックする」ために、導入される。
【0037】
いくつかの実施形態において、架橋が、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体の三次構造を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、遺伝子操作されたウイルスタンパク質複合体の四次構造を安定化する。いくつかの実施形態において、架橋が、遺伝子操作されたウイルスタンパク質複合体の三次および四次構造の両方を安定化する。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、溶液中で凝集物を形成しない。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、高濃度で溶液中で保存された場合に、凝集物を形成しない。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、耐熱性の架橋を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、架橋を有し、毒性ではない。
【0041】
いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、標的架橋もしくは非標的架橋または可逆的架橋もしくは不可逆的架橋またはホモ二機能性架橋剤の使用によって形成された架橋またはヘテロ二機能性架橋剤の使用によって形成された架橋またはアミン基と反応する試薬の使用によって形成された架橋またはチオール基と反応する試薬の使用によって形成された架橋または光反応性である試薬の使用によって形成された架橋またはアミノ酸残基の間で形成された架橋またはタンパク質もしくはタンパク質複合体の構造の中に組み込まれた突然変異アミノ酸残基の間で形成された架橋または酸化的架橋またはジチロシン結合またはglutaraldehdye架橋またはその任意の組み合わせである架橋を有する。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、グルタルアルデヒド架橋を有しない。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、いかなるジスルフィド結合をも有しない。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、いかなる人工的に導入されたジスルフィド結合をも有しない。
【0042】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、ヘルペスウイルス目(Herpesvirales)、リガメンウイルス目(Ligamenvirales)、モノネガウイルス目(Mononegavirales)、ニドウイルス目(Nidovirales)、ピコルナウイルス目(Picornavirales)、レンチウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、レトロウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ポックスウイルス、フラビウイルス、トガウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、ブニアウイルス、フィロウイルス、レオウイルス、モノネガウイルス目(Mononegavirales)、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスからなる群のウイルスに由来する。いくつかの実施形態において、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体に由来する。いくつかのそのような実施形態において、ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体が、I型、II型、またはIII型融合タンパク質である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体および/または遺伝子操作されたウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体が、単離される。本発明のいくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体および/または遺伝子操作されたウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体が、精製される。本発明のいくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体および/または遺伝子操作されたウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体が、単離される。本発明のいくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体および/または遺伝子操作されたウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体が、可溶性である。本発明のいくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体および/または遺伝子操作されたウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体が、タンパク分解性に切断される。
【0044】
いくつかの実施形態において、本発明が、立体構造的に特異的な免疫原を産生するための方法または遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を産生するための方法において、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を、医薬組成物などのような組成物の中に組み込むステップを含む方法を提供する。いくつかのそのような方法において、医薬組成物が、薬学的有効量の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を含む。いくつかのそのような方法において、医薬組成物が、薬学的に許容できるキャリヤを含む。いくつかのそのような方法において、医薬組成物が、アジュバントを含む。いくつかのそのような方法において、医薬組成物が、薬学的有効量の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体および薬学的に許容できるキャリヤを含む。いくつかのそのような方法において、医薬組成物が、薬学的有効量の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体および薬学的に許容できるキャリヤおよびアジュバントを含む。
【0045】
いくつかの実施形態において、本発明が、本明細書において記載される、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明が、本明細書において記載される、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明が、本明細書において記載される、薬学的有効量の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明が、本明細書において記載される、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体および薬学的に許容できるキャリヤを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明が、本明細書において記載される、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体およびアジュバントを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明が、本明細書において記載される、薬学的有効量の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体および薬学的に許容できるキャリヤを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書において記載される、薬学的有効量の遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体、薬学的に許容できるキャリヤ、およびアジュバントを含む医薬組成物を提供する。
【0046】
いくつかの実施形態において、本発明が、遺伝子操作されたウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体または遺伝子操作されたウイルスタンパク質もしくはウイルスタンパク質複合体を含む組成物において、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、(i)中和抗体に結合する能力の増強、(ii)広域中和抗体に結合する能力の増強、(iii)B細胞受容体に結合し、かつ活性化する能力の増強、(iv)動物において抗体応答を誘起する能力の増強、(v)動物において保護的な抗体応答を誘起する能力の増強、(vi)動物において中和抗体の産生を誘起する能力の増強、(vii)動物において広域中和抗体の産生を誘起する能力の増強、(viii)動物において保護的な免疫応答を誘起する能力の増強、および(ix)動物において四次中和エピトープを認識する抗体の産生を誘起する能力の増強からなる群から選択される、1つまたは複数の特性を有する組成物を提供する。
【0047】
いくつかの実施形態において、本発明が、立体構造的に特異的なワクチン免疫原を産生するための方法または遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体を産生するための方法において、遺伝子操作されたウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体が、中和抗体に結合する、広域中和抗体に結合する、B細胞受容体に結合し、かつ活性化する、動物において抗体応答を誘起する、動物において、保護的な抗体応答を誘起する、動物において中和抗体の産生を誘起する、動物において広域中和抗体の産生を誘起する、動物において、保護的な免疫応答を誘起する、および/または動物において四次中和エピトープを認識する抗体の産生を誘起する能力を評価するためにアッセイを実行するステップを含む方法を提供する。
【0048】
本明細書において使用されるように、用語「タンパク質」および「ポリペプチド」は、特に指定のない限り、区別なく使用される。本明細書において使用されるように、用語「タンパク質複合体」は、2つ以上のタンパク質の集合体を指す。特に指定のない限り、タンパク質に関する本明細書における記載はすべて、タンパク質複合体に等しく適用され、逆もまた同じである。本明細書において使用されるように、タンパク質および/またはタンパク質複合体に関しての用語「遺伝子操作された」は、一般に、典型的に、望ましい立体構造をしたタンパク質またはタンパク質複合体を安定化するための架橋の導入の結果として架橋を含むものを指す。特に指定のない限り、タンパク質またはタンパク質複合体に関する本明細書における記載はすべて(そのようなタンパク質を作製するおよび使用するための方法に関するものを含むが、これらに限定されない)、遺伝子操作されたタンパク質/タンパク質複合体および遺伝子操作されていないタンパク質/タンパク質複合体(たとえば、架橋が追加されないものまたは架橋の追加前のもの)ならびにそのすべての相同体、オルソログ、アナログ、誘導体、突然変異形態、フラグメント、キメラ、融合タンパク質などに等しく関する。用語「タンパク質」および「タンパク質複合体」は、天然に存在するウイルスタンパク質およびウイルスタンパク質複合体ならびに組換え手段、化学的手段、または任意の他の手段によってなどのように、いくつかの方法で改変されたウイルスタンパク質およびウイルスタンパク質複合体を含む。そのようなタンパク質およびタンパク質複合体は、ヒトまたは他の動物に対して病原性であるものなどのような、病原性であるウイルス由来のものを含むが、これらに限定されず、たとえば、タンパク質もしくはタンパク質複合体の免疫原性を増強させるおよび/またはヒトもしくは他の哺乳動物などのような動物において液性免疫応答を誘起する、タンパク質もしくはタンパク質複合体の能力を増強させるために、そのようなタンパク質およびタンパク質複合体を遺伝子操作することが望ましい。
【0049】
いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物が、任意の適したウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体と共に使用することができる。いくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質およびウイルスタンパク質複合体が、ウイルス外被タンパク質またはウイルス外被タンパク質複合体である。多くのウイルスが、それらのタンパク質カプシドを覆うウイルス外被を有する。そのようなウイルスの外被は、典型的に、宿主細胞リン脂質およびタンパク質を含み、糖タンパク質を典型的に含むウイルスタンパク質および/またはウイルスタンパク質複合体をさらに含む。ウイルス外被は、宿主細胞へのウイルスの侵入および感染に関与する多くのプロセスを媒介する。たとえば、ウイルス粒子の表面ウイルス外被糖タンパク質は、宿主細胞の細胞膜上の宿主細胞受容体分子に結合することができ、宿主細胞の細胞膜とのウイルス外被の融合に作用し、続く、カプシドおよびウイルスゲノムの侵入ならびに宿主細胞の感染を可能にする。ウイルス外被タンパク質がウイルス粒子の表面上にあり、そのため、接触可能であるので、それらは、ワクチン免疫原のデザインおよび開発の最良の標的であると考えられる。
【0050】
本発明に従って使用されるウイルスタンパク質および/またはウイルスタンパク質複合体は、当技術分野において知られている任意の適したウイルスタンパク質またはウイルスタンパク質複合体のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列を有することができまたはそれに由来することができ、任意のそのような知られている配列または任意の知られているウイルスの任意のグループ、サブグループ、ファミリー、サブファミリー、タイプ、サブタイプ、属、種、株、およびクレードなどに対して、少なくとも約85%または約90%または約95%または約98%の配列同一性を有するヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列を有することができるまたはそれに由来することができる。本明細書において使用されるように、用語「約」および「およそ」は、数的な値に関して使用される場合、指定される値の+または-20%以内を意味する。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明が、少なくとも約10アミノ酸、20アミノ酸、50アミノ酸、100アミノ酸、200アミノ酸、500アミノ酸、1000アミノ酸、2000アミノ酸、または5000アミノ酸を含む、それから本質的になる、またはそれからなるものなどのような、本発明のタンパク質またはタンパク質複合体のフラグメントを提供する。
【0052】
本発明のタンパク質の誘導体またはアナログは、タンパク質もしくはそのフラグメントに対して実質的に相同な領域を含む(たとえば、様々な実施形態において、たとえば、当技術分野において知られているコンピューターホモロジープログラムを使用してなどのように、当業者に知られている任意の適した方法を使用してアライメントされた場合に、本発明のアミノ酸配列もしくは核酸配列と、少なくとも約40%もしくは50%もしくは60%もしくは70%もしくは80%もしくは90%もしくは95%の同一性を有するもの)またはコード化核酸が、高いストリンジェンシー、中程度のストリンジェンシー、もしくは低いストリンジェンシー条件下で、本発明のタンパク質のコード核酸配列にハイブリダイズすることができる分子を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、タンパク質またはタンパク質複合体内の1つまたは複数のアミノ酸残基が、他のアミノ酸と置換することができる。たとえば、1つまたは複数のアミノ酸残基が、類似する極性を有し、かつ機能的な等価物として働いて、サイレントな改変をもたらしてもよい、他のアミノ酸によって置換することができる。いくつかの実施形態において、配列内のアミノ酸に対する置換が、たとえば保存的置換を生成するために、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択されてもよい。たとえば、無極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンを含む。極性で中性のアミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンを含む。正に荷電している(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシン、およびヒスチジンを含む。負に荷電している(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。そのような置換は、保存的置換であることが一般に理解される。
【0054】
タンパク質およびタンパク質複合体は、当業者に知られている任意の方法によって産生することができ、また、そのようなタンパク質またはタンパク質複合体の操作は、核酸またはタンパク質/アミノ酸レベルで行うことができるまたはなすことができる。たとえば、タンパク質またはタンパク質複合体をコード化する、クローニングされたヌクレオチド配列は、当業者に知られている多数の戦略のいずれかによって修飾することができる。
【0055】
キメラタンパク質は、当業者に知られている任意の方法によって作製することができ、また、たとえば、異なるタンパク質のアミノ酸配列にペプチド結合を介してそのアミノ末端またはカルボキシ末端につながれた、それらの免疫原性を増強させるために遺伝子操作されたものなどのような本発明の1つのまたはいくつかのタンパク質および/またはその任意のフラグメント、誘導体、もしくはアナログ(遺伝子操作されることになっているポリペプチド、タンパク質、もしくはタンパク質複合体の少なくとも1つのドメインまたは少なくとも6、好ましくは少なくとも10アミノ酸のタンパク質から好ましくはなる)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、そのようなキメラタンパク質が、キメラタンパク質をコード化する核酸の組換え発現(たとえば、第2のコード配列にインフレームでつながれた第1のコード配列を含む);所望のアミノ酸配列をコード化する適切な核酸配列の、適切なコードフレームでの互いのライゲーションおよびキメラ産物の発現を含むが、これらに限定されない、当業者に知られている任意の方法によって産生することができる。他の実施形態において、タンパク質合成技術が、たとえばペプチドシンセサイザーの使用によって、任意のタンパク質(キメラタンパク質を含む)を生成するために使用することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、ウイルスタンパク質および/またはウイルスタンパク質複合体が、特定のウイルスによる感染から個人を保護してもよいまたは保護を支援してもよい液性免疫応答を誘起することができるように、ウイルスタンパク質および/またはウイルスタンパク質複合体を遺伝子操作することができる。本明細書において使用される語句「液性免疫応答を誘起することができる」は、いくつかの実施形態において、免疫系の細胞に、タンパク質または複合体に結合する抗体を産生させることができるタンパク質またはタンパク質複合体を指すことができる。いくつかの実施形態において、抗体が、5×10-2M、10-2M、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、10-4M、5×10-5M、10-5M、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8Mもしくは10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、または10-15M未満の解離定数(KD)で、5×10-2-1、10-2-1、5×10-3-1、10-3-1、5×10-4-1、10-4-1、5×10-5-1もしくは10-5-1、5×10-6-1、10-6-1、5×10-7-1もしくは10-7-1以下のoff速度(koff)でおよび/または10-1-1、5×10-1-1、10-1-1、5×10-1-1、10-1-1、5×10-1-1、10-1-1もしくは5×10-1-1、または10-1-1以上のon速度(kon)で、結合する。
【0057】
タンパク質およびタンパク質複合体はまた、アミノ酸残基を追加するもしくは欠失させることによって、翻訳後修飾を追加するもしくは除去することによって、化学修飾もしくは付属体を追加するもしくは除去することによって、および/または当業者らに知られている任意の他の突然変異もしくは修飾を導入することによって、改変されてもよい。
【0058】
翻訳または合成の間にまたはその後に、たとえば架橋、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、知られている保護基もしくは遮断基による誘導体化、タンパク質切断によって、または当技術分野において知られている任意の他の手段によって修飾されるタンパク質およびタンパク質複合体が、本発明の範囲内に含まれる。たとえば、いくつかの実施形態において、タンパク質およびタンパク質複合体が、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4による化学的切断、アセチル化、ホルミル化、酸化、還元、ツニカマイシンの存在下における代謝合成などにかけられてもよい。
【0059】
本発明のタンパク質およびタンパク質複合体は、組換え手段および化学合成手段を含む、当技術分野において知られている任意の適した手段によって作製することができる。そのうえ、本発明のタンパク質およびタンパク質複合体は、当技術分野において知られている任意の適した手段を使用して、免疫原性の増強のために遺伝子操作することができる。たとえば、タンパク質またはタンパク質複合体の一部に対応するペプチドは、ペプチドシンセサイザーの使用によって合成することができる。さらに、所望される場合、人工、合成、もしくは非古典的アミノ酸または化学的アミノ酸アナログは、本発明のタンパク質およびタンパク質複合体を作製するために使用することができるまたは本発明のタンパク質およびタンパク質複合体の中に導入することができる。非古典的アミノ酸は、一般的なアミノ酸のD-異性体、フルオロ-アミノ酸、ならびにβ-メチルアミノ酸、Cγ-メチルアミノ酸、Nγ-メチルアミノ酸、およびアミノ酸アナログ全般などのような「デザイナー」アミノ酸を含むが、これらに限定されない。非古典的アミノ酸のさらなる非限定的な例は、α-アミノカプリル酸、Acpa;(S)-2-アミノエチル-L-システイン/HCl、Aecys;アミノフェニルアセタート、Afa;6-アミノヘキサン酸、Ahx;γ-アミノイソ酪酸およびα-アミノイソ酪酸、Aiba;アロイソロイシン、Aile;L-アリルグリシン、Alg;2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、およびα-アミノ酪酸、Aba;p-アミノフェニルアラニン、Aphe;b-アラニン、Bal;p-ブロモフェニルアラニン、Brphe;シクロヘキシルアラニン、Cha;シトルリン、Cit;β-クロロアラニン、Clala;シクロロイシン、Cle;p-クロロフェニルアラニン、Clphe;システイン酸、Cya;2,4-ジアミノ酪酸、Dab;3-アミノプロピオン酸および2,3-ジアミノプロピオン酸、Dap;3,4-デヒドロプロリン、Dhp;3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、Dhphe;p-フルオロフェニルアラニン、Fphe;D-グルコサミン酸、Gaa;ホモアルギニン、Hag;δ-ヒドロキシリシン/HCl、Hlys;DL-β-ヒドロキシノルバリン、Hnvl;ホモグルタミン、Hog;ホモフェニルアラニン、Hoph;ホモセリン、Hos;ヒドロキシプロリン、Hpr;p-ヨードフェニルアラニン、Iphe;イソセリン、Ise;α-メチルロイシン、Mle;DL-メチオニン-S-メチルスルホンイウムクロリド、Msmet;3-(1-ナフチル)アラニン、1Nala;3-(2-ナフチル)アラニン、2Nala;ノルロイシン、Nle;N-メチルアラニン、Nmala;ノルバリン、Nva;O-ベンジルセリン、Obser;O-ベンジルチロシン、Obtyr;O-エチルチロシン、Oetyr;O-メチルセリン、Omser;O-メチルトレオニン、Omthr;O-メチルチロシン、Omtyr;オルニチン、Orn;フェニルグリシン;ペニシラミン、Pen;ピログルタミン酸、Pga;ピペコリン酸、Pip;サルコシン、Sar;t-ブチルグリシン;t-ブチルアラニン;3,3,3-トリフルオロアラニン、Tfa;6-ヒドロキシドーパ、Thphe;L-ビニルグリシン、Vig;(-)-(2R)-2-アミノ-3-(2-アミノエチルスルホニル)プロパン酸ジヒドロキシクロリド、Aaspa;(2S)-2-アミノ-9-ヒドロキシ-4,7-ジオキサノナン酸、Ahdna;(2S)-2-アミノ-6-ヒドロキシ-4-オキサヘキサン酸、Ahoha;(-)-(2R)-2-アミノ-3-(2-ヒドロキシエチルスルホニル)プロパン酸、Ahsopa;(-)-(2R)-2-アミノ-3-(2-ヒドロキシエチルスルファニル)プロパン酸、Ahspa;(2S)-2-アミノ-12-ヒドロキシ-4,7,10-トリオキサドデカン酸、Ahtda;(2S)-2,9-ジアミノ-4,7-ジオキサノナン酸、Dadna;(2S)-2,12-ジアミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸、Datda;(S)-5,5-ジフルオロノルロイシン、Dfnl;(S)-4,4-ジフルオロノルバリン、Dfnv;(3R)-1-1-ジオキソ-[1,4]チアジン-3-カルボン酸、Dtca;(S)-4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロノルロイシン、Hfnl;(S)-5,5,6,6,6-ペンタフルオロノルロイシン、Pfnl;(S)-4,4,5,5,5-ペンタフルオロノルバリン、Pfnv;ならびに(3R)-1,4-チアジナン-3-カルボン酸、Tcaを含むが、これらに限定されない。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)またはL(左旋性)とすることができる。古典的および非古典的アミノ酸の概説については、Sandberg et al.,1998(Sandberg et al.,1998.New chemical descriptors relevant for the design of biologically active peptides.A multivariate characterization of 87 amino acids.J Med Chem 41(14):pp.2481-91)を参照されたい。
【0060】
当技術分野において知られている任意の適した方法は、本発明に従って、タンパク質およびタンパク質複合体を生成するまたは得るために使用されてもよい。同様に、本発明のタンパク質およびタンパク質複合体は、当技術分野において知られている任意の適した方法を使用して、単離されてもよいまたは精製されてもよい。そのような方法は、クロマトグラフィー(たとえばイオン交換、アフィニティー、および/もしくはサイジングカラムクロマトグラフィー)、硫安塩析、遠心分離、溶解度差、または当業者に知られているタンパク質の精製のための任意の他の技術によるものを含むが、これらに限定されない。タンパク質およびタンパク質複合体は、そのようなタンパク質/複合体を産生する任意の供給源から精製されてもよい。たとえば、タンパク質およびタンパク質複合体は、原核生物、真核生物、単細胞、多細胞、動物、植物、菌類、脊椎動物、哺乳動物、ヒト、ブタ、ウシ、ネコ科の動物、ウマ、イヌ科の動物、トリ、組織培養細胞、および任意の他の供給源を含む供給源から精製されてもよい。純度の程度は、変動してもよいが、様々な実施形態において、精製タンパク質は、それが、約10%、20%、50%、75%、85%、95%、99%、または99.9%以上の総タンパク質量を含む形態で提供される。
【0061】
いくつかの実施形態において、点突然変異が、特定の立体構造を安定化するためにタンパク質および/またはタンパク質複合体の中に導入することができる。いくつかの実施形態において、タンパク質が、それらをより免疫原性にし、ウイルスのエピトープに対して中和免疫応答および広域中和免疫応答を生成することができるようにするために、脱グリコシル化されてもよい、脱リン酸化されてもよい、または他の場合には化学的にもしくは酵素的に処置されてもよいもしくは改変されてもよい。
【0062】
突然変異がタンパク質またはタンパク質複合体の中に導入される実施形態において、タンパク質が、部分的なアミノ酸配列を決定するためにマイクロシークエンシングすることができる。いくつかの実施形態において、部分的なアミノ酸配列が、次いで、たとえば所望の突然変異を有するクローンを単離するためのまたはその導入のための、たとえば当技術分野において知られているライブラリースクリーニングおよび組換え核酸方法と一緒に使用することができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明のタンパク質およびタンパク質複合体が、クロマトグラフィー(たとえばサイジングカラムクロマトグラフィー、グリセロール勾配、アフィニティー)、遠心分離を含むが、これらに限定されない標準的な方法によってまたはタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術によって、他のタンパク質または任意の他の望ましくない産物から単離され、精製されてもよい。特定の実施形態において、本発明の1つまたは複数の安定化されたタンパク質またはタンパク質複合体の一部分ではない(たとえば架橋されなかった一部分)が、たとえば、他のタンパク質とホモまたはヘテロ二量体化し得るタンパク質を分離することが必要であってもよい。そのような分離は、洗浄剤および/または還元剤を使用する分離法を含むが、これらに限定されない、当技術分野において知られている、任意の手段によって達成されてもよい。
【0064】
遺伝子操作されたタンパク質および本発明のタンパク質複合体の収率は、当技術分野において知られている任意の手段によって、たとえば、出発物質(つまり、遺伝子操作されていないタンパク質またはタンパク質複合体)の量と比較するように、産生された、遺伝子操作されたタンパク質および/またはタンパク質複合体の量を比較することによって、決定することができる。タンパク濃度は、たとえばBradfordまたはLowrieのタンパク質アッセイなどのような標準的な手順によって決定される。Bradfordアッセイは、還元剤および変性剤と適合性である(Bradford,M,1976.Anal.Biochem.72:248)。Lowryアッセイは、洗浄剤とよりよい適合性を有し、反応は、タンパク濃度および読み取り値に関してより直線的である(Lowry,O J,1951.Biol.Chem.193:265)。
【0065】
いくつかの実施形態において、タンパク質および/またはタンパク質複合体が、保護的な免疫応答の誘発に好都合である立体構造で単離されおよび/または得られ、続いて、そのような立体構造を安定化するために架橋される。タンパク質および/またはタンパク質複合体は、たとえば、イオン交換およびサイズ排除クロマトグラフィーならびにアフィニティークロマトグラフィーなどのような、標準的なタンパク質精製方法を含むが、これらに限定されない、当技術分野において知られている任意の適した方法によって、保護的な免疫応答の誘発に好都合である立体構造で単離されてもよいおよび/または得られてもよい。さらに非限定的な例として、単離されることになっているタンパク質およびタンパク質複合体は、結合した場合に、単離されることになっているタンパク質およびタンパク質複合体の立体構造を安定化する結合性化合物、ペプチド、またはタンパク質の存在下において発現されてもよいまたは同時発現されてもよい。さらに非限定的な例として、単離されることになっているタンパク質およびタンパク質複合体は、本明細書において記載される方法によって、高もしくは低イオン培地中で発現されてもよいまたは高もしくは低イオンバッファーもしくは溶液中で単離されてもよい。単離されることになっているタンパク質およびタンパク質複合体はまた、所望の立体構造の維持に好都合である、1つまたは複数の温度で単離されてもよい。タンパク質およびタンパク質複合体はまた、ある調製物であれば所望の立体構造を失ったであろう程度を小さくする期間にわたって単離されてもよい。タンパク質またはタンパク質複合体の調製物が、保護的な免疫応答の誘発に好都合である、1つまたは複数の立体構造を保持する程度は、たとえば生化学的、生物物理的、免疫学的、およびウイルス学的分析を含むが、これらに限定されない、当技術分野において知られている任意の適した方法によってアッセイされてもよい。そのようなアッセイは、たとえば保護的なまたは中和または広域中和抗体または結合タンパク質に対する結合;非保護的なまたは非中和または保護が弱いまたは中和が弱い抗体または結合タンパク質に対する結合を分析するための免疫沈殿、ELISA、または酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOT)アッセイ;抗体との共結晶化を含む結晶学的な分析、沈降、超遠心分析法、動的光散乱法(DLS)、電子顕微鏡観察(EM)、低温EM断層撮影法、熱量測定法、表面プラズモン共鳴法(SPR)、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、円偏光二色性分析、およびX線小角散乱;タンパク質またはタンパク質複合体による免疫化後の免疫血清の中和アッセイ;タンパク質またはタンパク質複合体による免疫化後の免疫血清の抗体依存性細胞傷害アッセイ;ならびに動物におけるウイルス学的抗原投与研究および受動転移アッセイをたとえば含むが、これらに限定されない。
【0066】
本発明のタンパク質および/またはタンパク質複合体は、分子内および/または分子間架橋によって安定化されてもよい。分子内架橋は、特定のタンパク質立体構造のフォールドを安定化してもよく、分子間架橋は、本発明のタンパク質およびタンパク質複合体が所望の免疫原性特性を有するものなどのように、タンパク質間相互作用および特定のタンパク質立体構造のフォールドの両方を安定化してもよい。
【0067】
架橋は、アミンおよび/またはチオール基と反応するホモおよびヘテロ二機能性架橋剤、光反応性架橋試薬の使用から生じた可逆的架橋、タンパク質またはタンパク質複合体の構造の中に組み込まれた非古典的アミノ酸の間で形成され得る任意の架橋、ならびにこれらに限定されないが、ジチロシン架橋/結合などのような任意の酸化的架橋を含んでいてもよいが、これらに限定されない。本出願との関連において使用される不可逆的架橋は、生理学的に適切な条件下で溶解せず、発現の間にまたは高濃度で保存された場合に、凝集物の形成に至らないものを含む。ジスルフィド結合は、不可逆的架橋ではない。むしろ、それらは、可逆的架橋であり、生理学的に適切な条件下で溶解し得るならびに/またはタンパク質発現および/もしくは産生の間にまたは高濃度で保存された場合に凝集物の形成に至る。
【0068】
架橋は、所望の免疫原性特性を達成するために、タンパク質および/またはタンパク質複合体の構造における特定の部位を標的としてもよい。その代わりに、所望の架橋を有するタンパク質およびタンパク質複合体は、たとえば、化学的、物理的、および/または機能的な特徴に基づいて、所望の修飾を有するおよび有していない架橋および非架橋タンパク質の混合物から単離されてもよい。そのような特徴は、たとえば分子量、分子容、任意のおよびすべてのクロマトグラフ特性、任意のすべての形態の電気泳動における移動度、ならびに任意のおよびすべての抗原性のおよび生化学的な特徴、蛍光、ならびに任意のおよびすべての他の生物物理的な特徴、異なる濃度の溶液(たとえばイオン)中の他の分子の存在下または非存在下における、水溶液、(有機)溶媒、および/またはハイブリッド溶液における溶解性、モノおよび/またはポリクローナル抗体に対する親和性、受容体、他のタンパク質、DNA、RNA、脂質、他の生物有機化学および非生物有機化学分子および錯体、無機分子および錯体、イオンに対する親和性、任意のおよびすべての構造的な特徴、酵素、免疫学的、組織培養、診断、医薬品、および任意の他の活性、ならびに当業者に知られている任意の他の特徴を含んでいてもよい。
【0069】
タンパク質を分子内でおよび分子間で架橋するための種々様々の方法は、当技術分野において知られており、さまざまな長さのスペーサーアームを有する架橋を有するものならびに精製のための蛍光および官能基を有するおよび有していないものを含む。そのような方法は、ヘテロ二機能性架橋剤(たとえばスクシンイミジルアセチルチオアセテート(SATA)、トランス-4-(マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸(SMCC)、およびスクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP))、ホモ二機能性架橋剤(たとえばスクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート)、光反応性架橋剤(たとえば4-アジド-2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸、STPエステル、ナトリウム塩(ATFB、STPエステル)、4-アジド-2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸、スクシンイミジルエステル(ATFB、SE)、4-アジド-2,3,5,6-テトラフルオロベンジルアミン、ヒドロクロリド、ベンゾフェノン-4-イソチオシアナート、ベンゾフェノン-4-マレイミド、4-ベンゾイル安息香酸、スクシンイミジルエステル、N-((2-ピリジルジチオ)エチル)-4-アジドサリチルアミド(PEAS;AET)、チオール反応性架橋剤(たとえばマレイミドおよびヨードアセトアミド)、アミン反応性架橋剤(たとえばグルタルアルデヒド、ビス(イミドエステル)、ビス(スクシンイミジルエステル)、ジイソシアネート、および二酸クロリド)の使用を含むが、これらに限定されない。チオール基が、アミン基と比較して、ほとんどのタンパク質において非常に反応性であり、比較的まれであるので、チオール反応性の架橋は、いくつかの実施形態において使用されてもよい。チオール基が、欠乏しているまたはタンパク質およびタンパク質複合体の構造において適切な部位に存在しない場合、それらは、いくつかのチオール化方法のうちの1つを使用して導入することができる。たとえば、スクシンイミジルトランス-4-(マレイミジルメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸は、アミン部位にチオール反応基を導入するために使用することができる。
【0070】
いくつかの酸化的架橋は、ジスルフィド結合(自発的に形成され、pHおよびレドックス感受性である)ならびに、ジチロシン結合(生理学的条件下で非常に安定性であり、不可逆的である)などのように、知られている。
【0071】
治療用タンパク質は、一般に、複雑で、異質性であり、発現、精製、および長期保管の間に様々な酵素修飾または化学修飾を受けやすい。それらが、多くの場合、凍結乾燥されまたは保存され、比較的高濃度で患者に投与されるので、凝集物の形成は、それが、製造収率を低下させ、複合体の構造を変性させ、立体構造的にマスクされたエピトープに対する液性免疫応答が広域中和抗体をもたらしそうにないので、多くの場合、問題となる。
【0072】
ジスルフィド結合が形成される位置に対する点突然変異によるシスチン側鎖の遺伝子操作は、HIV gp120およびgp41タンパク質ならびにそのフラグメントを安定化し、広域中和液性免疫応答および/または広域中和液性免疫応答を誘起することができる免疫原を開発する目的で安定化された(Beddows et al.,2006.Construction and Characterization of Soluble,Cleaved,and Stabilized Trimeric Env Proteins Based on HIV Type I Env Subtype A.AIDS Res Hum Retroviruses 22(6):569-579;Farzan et al.,1998.Stabilization of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Envelope Glycoprotein Trimers by Disulfide Bonds Introduced into the gp41 Glycoprotein Ectodomain.J Virol 72(9):7620-25)。しかしながら、ジスルフィド結合は、pH感受性であり、レドックス条件下で溶解されることが知られており、たとえば免疫原としてインビボにおいて使用されることになっている、ジスルフィド架橋により遺伝子操作されたタンパク質および/またはタンパク質複合体の予防的なおよび/または治療上の実用性は、そのため、損なわれ得る。さらに、望まれないジスルフィド結合は、多くの場合、凝集物の形成を媒介する遊離スルフヒドリル基を有するタンパク質の間で形成され(たとえばHarris RJ et al.2004,Commercial manufacturing scale formulation and analytical characterization of therapeutic recombinant antibodies.Drug Dev Res 61(3):137 - 154;Costantino & Pikal(Eds.),2004.Lyophilization of Biopharmaceuticals,editors Costantino & Pekal.Lyophilization of Biopharmaceuticals.Series:Biotechnology:Pharmaceutical Aspects II,see pages 453-454;Tracy et al.,2002、米国特許第6,465,425号明細書を参照されたい)、これは、HIV gp120およびgp41に関する問題として報告された(Jeffs et al.2004.Expression and characterisation of recombinant oligomeric envelope glycoproteins derived from primary isolates of HIV-1.Vaccine 22:1032-1046;Schulke et al.,2002.Oligomeric and conformational properties of a proteolytically mature,disulfide-stabilized human immunodeficiency virus type 1 gp140 envelope glycoprotein.J Virol 76:7760-7776)。
【0073】
架橋タンパク質の代替の手段は、ジチロシン(DT)結合の形成を含む。ジチロシン架橋は、タンパク質またはタンパク質複合体の中に1つまたは複数の共有結合の炭素-炭素結合を導入する。これは、それらの構造的および機能的な完全性を維持しながら、ポリペプチド内および/またはポリペプチド間ジチロシン結合の導入によって、タンパク質、タンパク質複合体、および立体構造を安定化する方法を提供する(Marshall et al.、米国特許第7,037,894号明細書&米国特許第7,445,912号明細書)。タンパク質内の特定の標的にされる場所での共有結合の生成は、タンパク質構造の特定の3D-配置を強化することができ、高度の安定化をもたらすことができる。
【0074】
最小限に改変する長さゼロのDT架橋は、生理学的条件下で加水分解されず、液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)によってタンパク質の構造的な完全性を維持することが実証された。ジチロシン架橋は、それらの特定の特徴を利用するように進化したタンパク質の構成において(たとえばElvin CM et al.2005,Nature 437:999-1002;Tenovuo J & Paunio K 1979,Arch Oral Biol.;24(8):591-4)および非特異的タンパク質酸化の結果として(Giulivi et al.2003,Amino Acids 25(3-4):227-32)の両方で、それらがインビボにおいて自然に形成されるのでならびにそれらが私たちの最も共通の食物のうちのいくつかにおいて多量に存在し、DT結合が、たとえば混合および焼きの間にパン生地において、小麦グルテン-グルテニンサブユニットを含む四次タンパク質構造-の構造を形成するので(Tilley et al.2001,Agric.Food Chem 49,2627)、安全であることが知られている。
【0075】
ジチロシン結合は、インビトロにおいて自発的に形成されない。むしろ、酵素架橋反応は、タンパク質の構造および機能を保存するために最適化された条件下で実行される。そのため、非特異的結合/凝集は、生じず(遊離スルフヒドリル基と比較して)、そのため、DT安定化免疫原の大規模製造は、経済的により実現可能となり得る。
【0076】
チロシル側鎖は、多くのレドックス酵素中に存在し、酵素特異的反応の触媒作用は、多くの場合、長命で、比較的低い反応性を有するチロシルラジカルを伴う。最適化条件下で、ラジカル形成は、チロシル側鎖に対して特異的である。それぞれのチロシルのすぐ近くで、側鎖はラジカルカップリングを受け、共有結合の炭素-炭素結合を形成する。反応しないチロシルラジカルは、非ラジカル化チロシル側鎖に戻る(Malencik & Anderson,2003.Dityrosine as a product of oxidative stress and fluorescent probe.Amino Acids 25:233-247)。そのため、チロシル側鎖は、DT結合を形成するためにすぐ近くに、単一のフォールドポリペプチド鎖内に、または複合体内の密接に相互作用するタンパク質ドメイン上に、位置していなければならない。およそ5~8ÅのCα-Cα距離が、結合形成に対して必須であるので(Brown et al.,1998.Determining protein-protein interactions by oxidative cross-linking of a glycine-glycine-histidine fusion protein.Biochemistry 37,4397-4406;Marshall et al.2006、米国特許第7,037,894号明細書)、また、これらの結合の形成において追加される原子がないので、生じた「ステープル」は、標的にすることができ、タンパク質構造に対して非破壊的となる。これらのチロシンは、タンパク質の一次構造中に存在してもよいまたはコントロールされた点突然変異によって追加されてもよい。
【0077】
タンパク質工学におけるジチロシン架橋の主な利点は、(i)架橋のために特定の残基を標的に対する能力(タンパク質および複合体の一次、二次、三次、および/または四次構造に基づいて)、(ii)最小限の構造的な修飾、(iii)反応の特異性(チロシンは、特異的な架橋条件下で架橋を形成することが知られている唯一のアミノ酸である;タンパク質はそうでなければ未変化のままである);(iv)連結の安定性、(v)長さゼロの架橋(原子は追加されない)、ならびに(vi)計測できる化学的性質、を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、ジチロシン(「DT」)結合/架橋が、たとえばそれらがすぐ近くにあるために、DT結合が形成されるであろうまたは形成されることが予測される、タンパク質またはタンパク質複合体の構造内の特定の残基ペアを標的にしてもよい。これは、標的残基ペアにチロシル側鎖が既に存在し、他のチロシル側鎖が、たとえばそれらが互いに十分にすぐ近くにないので、DT結合を形成しないであろうまたは形成することが予測されないタンパク質で行われてもよい。タンパク質/タンパク質複合体はまた、標的残基ペアに、チロシル側鎖が存在し、DT架橋が形成されるのが望ましくないかもしれない残基で、少なくとも1つのチロシル側鎖が、フェニルアラニン側鎖などのような他の側鎖と交換されるように、遺伝子操作することもできる(たとえば、内容が参照によってこれによって組み込まれるMarshall CP et al.、米国特許出願公開第09/837,235号明細書を参照されたい)。これは、たとえば、当技術分野において知られている任意の適した方法を使用して核酸配列においてチロシンへのまたはチロシンからの点突然変異を導入し、タンパク質またはタンパク質複合体の発現を指示することによって達成されてもよい。その代わりに、タンパク質/タンパク質複合体は、望ましいチロシン残基を含め、かつ望ましくないチロシン残基を除去するために、当技術分野において知られている任意の適した方法によって合成されてもよい、精製されてもよい、および/または産生されてもよい。
【0079】
DT結合を形成するために、標的残基ペアにチロシル側鎖を有するタンパク質は、DT結合の形成に至る反応条件にかけることができる。そのような条件は、DT結合形成反応が酸化的架橋であるので、酸化反応条件であるまたは酸化反応条件になる。いくつかの実施形態において、DT架橋反応条件が、そうでなければ修飾されないまたは検出可能に修飾されないタンパク質をもたらす。そのような条件は、ペルオキシダーゼなどのような、Hの形成を触媒する酵素の使用によって得られてもよい。DT結合形成は、320nmの励起波長および400nmの波長で測定される蛍光で、分光測光法によってモニターされてもよいが、チロシル蛍光の損失は、モニターされる、また、標準的な手順によってもモニターされる。チロシル蛍光の損失が、DT結合形成と、もはや化学量的でない場合、反応は、たとえば還元剤の追加、続くサンプルの冷却(氷上で)または凍結によってなどのように、当業者に知られている任意の方法によって停止させてもよい。
【0080】
タンパク質はまた、量体化(timerization)モチーフなどのような異種オリゴマー化モチーフを使用して安定化することができる。自然界で進化的に発達したモチーフによるオリゴマータンパク質複合体の安定化は、異種オリゴマー化モチーフを遺伝子操作して、複合体のポリペプチドの構造の中に入れることによって達成することができる。
【0081】
三量体形成が特定の立体構造において安定化されれば、ウイルスタンパク質が、より免疫原性となるであろう三量体を形成する場合、野生型ウイルスタンパク質の三量体形成を媒介し、ウイルスタンパク質複合体の全体的な構造的制限/束縛に適合する異種三量体形成モチーフは、タンパク質-タンパク質相互作用ドメインを置換するために使用することができる。たとえば、これらに限定されないが、Habazettl et al.,2009(Habazettl et al.,2009.NMR Structure of a Monomeric Intermediate on the Evolutionarily Optimized Assembly Pathway of a Small Trimerization Domain.J.Mol.Biol.pp.null)、Kammerer et al.,2005.(Kammerer et al.,2005.A conserved trimerization motif controls the topology of short coiled coils.Proc Natl Acad Sci USA 102(39):13891-13896)、Innamorati et al.,2006.(Innamorati et al.,2006.An intracellular role for the C1q-globular domain.Cell signal 18(6):761-770)、およびSchelling et al.,2007(Schelling et al.,2007.The reovirus σ-1 aspartic acid sandwich :A trimerization motif poised for conformational change.Biol Chem 282(15):11582-11589)において記載されるものなどのような、これらの目的のために使用することができる天然のタンパク質における種々様々の三量体形成ドメインがある。
【0082】
三量体タンパク質複合体の安定化はまた、GCN4およびT4フィブリンチン(fibrinitin)モチーフを使用して達成することもできる(Pancera et al.,2005.Soluble Mimetics of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Viral Spikes Produced by Replacement of the Native Trimerization Domain with a Heterologous Trimerization Motif:Characterization and Ligand Binding Analysis.J Virol 79(15):9954-9969;Guthe et al.,2004.Very fast folding and association of a trimerization domain from bacteriophage T4 fibritin.J.Mol.Biol.v337 pp.905-15;Papanikolopoulou et al.,2008.Creation of hybrid nanorods from sequences of natural trimeric fibrous proteins using the fibritin trimerization motif.Methods Mol Biol 474:15-33)。
【0083】
異種オリゴマー化モチーフは、本発明のタンパク質およびタンパク質複合体のタンパク質-タンパク質相互作用を安定化するために、当業者に知られている任意の組換え方法によって導入されてもよい。そのような異種オリゴマー化モチーフは、タンパク質/タンパク質複合体の構造的な制限/束縛に適合するはずであり、タンパク質/タンパク質複合体の余剰構造が他の状態に歪められないように導入された場合、最善の結果をもたらすであろう。そのため、異種オリゴマー化ドメインは、好ましくは、それらの非常に還元された形態/構造で導入され、全体的なタンパク質複合体構造の歪みを最小限にし得る、当業者に知られている、さらなるリンカー/スペーサーの存在下または非存在下において導入されてもよい。
【0084】
ポリペプチド複合体の構造および/または免疫原性が架橋反応によって損なわれるまたは改変される場合、その全体的な構造および機能の維持は、架橋反応に対するアミノ酸側鎖の有効性をコントロールすることによって達成することができる。たとえば、反応に利用可能であるが、複合体の構造の歪みに至り、複合体の免疫原性/抗原性を損なうチロシル側鎖は、たとえばフェニルアラニンなどのような他のアミノ酸にそのような残基を突然変異させることによって除去することができる。さらに、点突然変異は、結合の形成が最も有益な結果を引き起こすように、アミノ酸側鎖が架橋剤とまたは互いに反応するであろう位置に導入されてもよい。これらの位置もまた、本明細書において記載されるように同定されてもよい。
【0085】
免疫原性が増強された、安定化されたタンパク質またはタンパク質複合体を実現するために、反応性の側鎖がタンパク質/複合体上の他のところの反応性の側鎖と結合を形成することができるであろう、それぞれのタンパク質内の位置を、同定することができる。そのような位置は、タンパク質/複合体の免疫原性/抗原性を維持するまたは改善することに関しておよび結合に関与する他方の位置の適合性に関しての両方から選択することができる。そのため、架橋されることになっている位置は、ペアで選択されてもよい。
【0086】
選択される残基に、反応性の側鎖がまだ存在しない場合、点突然変異が、たとえば、その発現を誘導する核酸のcDNAの中にそのような点突然変異を導入するための分子生物学的方法を使用して、導入されてもよく、その結果、反応性の側鎖が存在し、反応に利用可能となる。
【0087】
いくつかの戦略は、タンパク質またはタンパク質複合体における特定の場所を架橋が標的にするように使用されてもよい。当業者に知られている任意の方法は、架橋した場合に、ウイルスエピトープに対する中和応答を生成することができ、脊椎動物、哺乳動物または好ましくはヒトにおいて中和抗体の産生に至り得るタンパク質またはタンパク質複合体を提供することができる、ポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の残基のペアを同定するために使用されてもよい。そのような方法は、Marshall et al.(内容が参照によってこれによって組み込まれる米国特許第7,037,894号明細書および米国特許第7,445、912号明細書)において記載される選択プロセスに基づいてもよく、それによって、タンパク質またはタンパク質複合体の安定化が、その免疫原性特性を改善してもよい。当業者に知られている任意のコンピューターによる方法もまた、架橋によりタンパク質またはタンパク質複合体の二次、三次、または四次構造の領域の間の相互作用を安定化することができる位置を同定するために使用されてもよい。さらに、当業者に知られている任意の方法による残基ペアのスクリーニング/スキャニングは、本発明のポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体における架橋が、それらに、本発明の中和免疫応答または広域中和免疫応答を生成する能力の利点をもたらす位置を同定するために使用されてもよい。たとえば、データ突然変異誘発性分析の使用(たとえば、これに限定されないが、アラニンスクリーニング)含む、当業者に知られている任意の他の方法が、使用されてもよい。
【0088】
本発明のタンパク質またはタンパク質複合体が、タンパク質の1つまたは複数の特定の立体構造を安定化する目的でまたはタンパク質複合体におけるタンパク質-タンパク質相互作用を安定化する目的で架橋される場合、化学修飾は、たとえば、タンパク質が調製され、発現され、および/または精製された後に、当業者に知られている標準的な方法によって適用されてもよい。本明細書において記載されるまたは当技術分野において知られている標的戦略および架橋戦略のいずれか1つまたは組み合わせが、使用されてもよい。その代わりに、修飾が標的にされなくてもよく、所望の修飾、活性、および/または特異性を有するタンパク質は、非標的架橋系を使用して作製された修飾および未修飾タンパク質の混合物から単離されてもよい。
【0089】
本発明の方法および組成物は、任意の適したウイルス由来のタンパク質およびタンパク質複合体と共に使用することができる。いくつかの実施形態において、ウイルスが、病原性ウイルスである。いくつかの実施形態において、ウイルスが、病原性外被ウイルスなどのような外被ウイルスである。いくつかの実施形態において、ウイルスが、たとえば、アルファヘルペスウイルス亜科(Alphaherpesvirinae)、ベータヘルペスウイルス亜科(Betaherpesvirinae)、ガンマヘルペスウイルス亜科(Gammaherpesvirinae)、シンプレックスウイルス、ヒトヘルペスウイルス1、バリセロウイルス、ヒトヘルペスウイルス3(または水痘帯状疱疹ウイルス)、マルディウイルス、トリヘルペスウイルス2、イルトウイルス、トリヘルペスウイルス1、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス5、ムロメガロウイルス、ネズミヘルペスウイルス1、ロゼオロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、ロゼオロウイルス、ヒトヘルペスウイルス7、プロボスシウイルス(Proboscivirus)、ゾウヘルペスウイルス1、リンホクリプトウイルス、ヒトヘルペスウイルス4またはエプスタインバーウイルス、ラジノウイルス、ヒトヘルペスウイルス8、サイミリヘルペスウイルス2、マカウイルス、ハーテビーストヘルペスウイルス1、ペルカウイルス属(Genus Percavirus)、ウマヘルペスウイルス2、オナガザル、およびオナガザルヘルペスウイルス1を含むヘルペスウイルス;オルソポックス、パラポックス、ヤタポックス、モルシポックス、痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、牛痘ウイルス、サル痘ウイルス、天然痘、オルフウイルス、偽牛痘、ウシ丘疹性口炎ウイルス、タナポックスウイルス、ヤバサル腫瘍ウイルス、および伝染性軟属腫ウイルスを含むポックスウイルス;ダニおよび蚊媒介性、知られている節足動物の媒介動物を有していないウイルス、ガジェッツガリーウイルス(GGYV)、カダムウイルス(KADV)、キャサヌール森林病ウイルス(KFDV)、ランガットウイルス(LGTV)、オムスク出血熱ウイルス(OHFV)、ポワッサンウイルス(POWV)、ロイヤルファームウイルス(Royal Farm virus)(RFV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)、跳躍病ウイルス(LIV)、ミーバンウイルス(Meaban virus)(MEAV)、サウマレズリーフウイルス(Saumarez Reef virus)(SREV)、チュレーニーウイルス(Tyuleniy virus)(TYUV)、アロアウイルス(Aroa virus)(AROAV)、デング熱ウイルス群、デング熱ウイルス(DENV)、ケドウゴウウイルス(Kedougou virus)(KEDV)、日本脳炎ウイルス群、カシパコアウイルス(Cacipacore virus)(CPCV)、コウタンゴウイルス(Koutango virus)(KOUV)、日本脳炎ウイルス(JEV)、マーレーバレー脳炎ウイルス(MVEV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、ウスツウイルス(USUV)、西ナイルウイルス(WNV)、ヤウンデウイルス(Yaounde virus)(YAOV)、ココベラウイルス(KOKV)、ウンタヤウイルス群、バガザウイルス(BAGV)、イルヘウスウイルス(ILHV)、イスラエルトルコ脳膜脳脊髄炎ウイルス(Israel turkey meningoencephalomyelitis virus)(ITV)、ウンタヤウイルス(NTAV)、テムブスウイルス(Tembusu virus)(TMUV)、スポンドウェニウイルス群、ジカウイルス(ZIKV)、黄熱ウイルス群、バンジウイルス(BANV)、ブブイウイルス(BOUV)、エッジヒルウイルス(EHV)、ジュグラウイルス(Jugra virus)(JUGV)、サボヤウイルス(Saboya virus)(SABV)、セピックウイルス(Sepik virus)(SEPV)、ウガンダSウイルス(UGSV)、ヴェセルスブロンウイルス(WESSV)、黄熱ウイルス(YFV)、エンテベウイルス群(Entebbe virus group)、エンテベコウモリウイルス(Entebbe bat virus)(ENTV)、ヨコセウイルス(YOKV)、モドックウイルス群、アポイウイルス(APOIV)、カウボーンリッジウイルス(CRV)、ジュチアパウイルス(Jutiapa virus)(JUTV)、モドックウイルス(MODV)、サルビージャウイルス(Sal Vieja virus)(SVV)、サンペーリタウイルス(San Perlita virus)(SPV)、リオブラボーウイルス群、ブカラサコウモリウイルス(BBV)、カレー島ウイルス(CIV)、ダカールコウモリウイルス(DBV)、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルス(MMLV)、フノンペンコウモリウイルス(Phnom Penh bat virus)(PPBV)、ならびにリオブラボーウイルス(RBV)を含むフラビウイルス;アルファウイルス、ルビウイルス、シンドビスウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、オニョンニョンウイルス、および風疹ウイルスを含むトガウイルス;群1、群2、群3、イヌコロナウイルス(CCoV)、ネココロナウイルス(FeCoV)、ヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、ヒトコロナウイルスNL63(NLまたはニューヘブン)、ウシコロナウイルス(BCoV)、イヌ呼吸器コロナウイルス(CRCoV)、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、マウス肝炎ウイルス(MHV)、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(HEV)、ラットコロナウイルス(RCV)、トルココロナウイルス(TCoV)、HCoV-HKU1、伝染性気管支炎ウイルス(IBV)、トルココロナウイルス(紫藍病ウイルス(Bluecomb disease virus))、および重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)を含むコロナウイルス;D型肝炎ウイルス;インフルエンザA、B、およびCウイルス、伝染性サケ貧血ウイルス、ならびにソゴトウイルスを含むオルソミクソウイルス;モノネガウイルス目(Mononegavirales);パラミクソウイルス亜科(Paramyxovirinae)、肺炎ウイルス亜科(Pneumovirinae)、ニューカッスル病ウイルス、ヘンドラウイルス、ニパーウイルス、麻疹ウイルス、牛疫ウイルス、イヌジステンパーウイルス、アザラシジステンパーウイルス、小反芻獣疫ウイルス(PPR)、センダイウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス1および3、感冒のウイルスのうちのいくつか、ムンプスウイルス、サルパラインフルエンザウイルス5、メナングルウイルス(Menangle virus)、チオマンウイルス(Tioman virus)、ツパイパラミクソウイルス、ヒト呼吸器合胞体ウイルス、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、トリニューモウイルス、ヒトメタニューモウイルス、フェルドランスウイルス、ナリバウイルス(Nariva virus)、ツパイパラミクソウイルス、セーレムウイルス、Jウイルス、モスマンウイルス、およびベイロンウイルス(Beilong virus)を含むパラミクソウイルス;水疱性口内炎インディアナウイルス、狂犬病ウイルス、ウシ流行熱ウイルス、および感染性造血性壊死ウイルスを含むラブドウイルス;ハンタウイルスを含むブニアウイルス;基準種、ジュグベウイルス、ブニヤムウェラウイルス、リフトバレー熱ウイルス、およびテヌイウイルス;エボラウイルスおよびマールブルグ病ウイルス(マルブルクウイルス)の5つのサブタイプを含むフィロウイルス;タレット状のおよび非タレット状のレオウイルス、アクアレオウイルスA、サイポウイルス1(CPV 1)、フィジー病ウイルス、イドノレオウイルス(Idnoreovirus)1、マイコレオウイルス(Mycoreovirus)1、哺乳動物オルトレオウイルス、コロラドダニ熱ウイルス(CTFV)、ブルータングウイルス、ロタウイルスA、ならびにシードルナウイルスを含むレオウイルス;B型肝炎ウイルスおよびアヒルB型肝炎ウイルスを含むヘパドナウイルス;ならびにトリ白血病ウイルス、マウス乳房腫瘍ウイルス、マウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ヒトリンパ球向性ウイルス、ウォールアイ皮膚肉腫ウイルス、チンパンジー泡沫状ウイルス、レンチウイルス、サルおよびネコ免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型、グループMならびにサブタイプA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、およびK、グループN、ならびにグループO、ならびにヒト免疫不全ウイルス2型を含むレトロウイルス;ならびに前述のもののいずれかの任意のグループ、サブグループ、ファミリー、サブファミリー、タイプ、サブタイプ、属、種、株、および/またはクレードなどのような外被DNAウイルスおよび外被RNAウイルスである。
【0090】
そのような病原性外被ウイルスによる感染によって引き起こされ得るまたはそれと関連し得る疾患は、AIDS、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、ウシ下痢症、ウシ流行熱、ウシ丘疹性口内炎、細気管支炎、気管支炎、バーキットリンパ腫、イヌジステンパー、口唇ヘルペス、水痘、チクングニアウイルス疾患、胆管がん、慢性疲労症候群、感冒、牛痘、クローン病、下痢、自律神経障害、デング熱、脳炎(ヒトおよび動物、たとえばウマにおける)、突発性発疹、線維筋痛、胃腸炎、性器ヘルペス、ハンタウイルス肺症候群、ヘンドラウイルス疾患(肺および髄膜炎の出血および浮腫)、肝炎、肝臓がん、ホジキン病、感染性造血性壊死、感染性サケ貧血ウイルス、インフルエンザ、韓国型出血熱、麻疹、単核球症、多発性硬化症、ムンプス、ニューカッスル病、上咽頭がん、膵癌、膵炎、バラ色ひこう疹、肺炎、ブタ伝染性胃腸炎、狂犬病、気道感染症(上気道および下気道)、牛疫、小児ばら疹、帯状疱疹、痘瘡、水疱性口内炎インディアナ、ウイルス性出血性熱、ならびに西ナイル熱を含むが、これらに限定されない。
【0091】
本発明のタンパク質/複合体をコード化する核酸が、提供される。タンパク質/複合体は、当業者に知られている任意の知られている方法によってインビトロにおいてまたはインビボにおいて、それらをコード化する核酸配列を発現させることによって作製することができる。タンパク質/複合体をコード化する核酸は、たとえば置換、追加(たとえば挿入)、または欠失によって、タンパク質/複合体をコード化する核酸配列を改変することによって作製することができる。配列は、制限エンドヌクレアーゼにより適切な部位で切断し、その後、さらに酵素により修飾し、所望される場合、インビボにおいてまたはインビトロにおいて、単離し、ライゲーションすることができる。そのうえ、核酸配列は、翻訳、開始、および/もしくは終結配列を生成するおよび/もしくは破壊するためにまたはコード領域において変異を生成するためにおよび/またはインビトロにおける修飾をさらに促進するために、新しい制限エンドヌクレアーゼ部位を形成するもしくは先在する制限エンドヌクレアーゼ部位を破壊するために、インビトロにおいてまたはインビボにおいて、突然変異させることができる。
【0092】
ヌクレオチドコード配列の縮重のために、多くの異なる核酸配列が、本発明のタンパク質/複合体において同じ残基を実質的にコード化することができる。これらは、配列内で同じアミノ酸もしくは機能的に等価なアミノ酸残基をコード化し、したがって「サイレントな」(または機能的にもしくは表現型的に無関係の)変化をもたらすまたは配列と異なるアミノ酸残基、したがって機能的にもしくは免疫学的に、より有益な変化をもたらす、異なるコドンの置換によって改変されるドメインのすべてまたは一部分を含むヌクレオチド配列を含むことができる。
【0093】
当業者に知られている突然変異誘発のための任意の技術を、使用することができ、酵素および化学的突然変異誘発、たとえば、QuikChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene)を使用するインビトロにおける部位特異的突然変異誘発などを含むが、これらに限定されない。
【0094】
任意の原核生物または真核細胞は、分子クローニングのための核酸供給源として果たすことができる。免疫原性の増強のために遺伝子操作されることになっているタンパク質またはドメインをコード化する核酸配列は、原核生物、真核生物、単細胞、多細胞、動物、植物、菌類、脊椎動物、哺乳動物、ヒト、ブタ、ウシ、ネコ科の動物、ウマ、イヌ科の動物、トリなどを含む供給源から単離されてもよい。
【0095】
核酸は、当業者に知られている任意の手順によって、たとえば、これらに限定されないが、クローニングされたDNA(たとえばDNA「ライブラリー」)から、化学合成によって、cDNAクローニングによって、たとえば所望の細胞から精製されたゲノムDNAまたはそのフラグメントのクローニングによって、得られてもよい(たとえばSambrook et al.,1985.Glover(ed.).MRL Press,Ltd.,Oxford,U.K.;vol.I,IIを参照されたい)。核酸はまた、逆転写細胞RNAによって得、ランダムまたはポリA刺激逆転写などのような、当業者に知られている方法のいずれかによって調製されてもよい。そのような核酸は、PCRおよび5’RACE技術を含む、当業者に知られている方法のいずれかを使用して増幅されてもよい(Weis J.H.et al.,,1992.Trends Genet.8(8):263-4;Frohman MA,,1994.PCR Methods Appl.4(1):S40-58)。
【0096】
供給源が何でも、核酸は、核酸の伝播に適したベクターの中に分子クローニングすることができる。そのうえ、核酸は、様々な制限酵素を使用して、特定の部位で切断されてもよく、DNアーゼは、マンガンの存在下において使用されてもよいまたはDNAは、物理的に、たとえば超音波処理によって剪断することができる。次いで、直線的なDNAフラグメントは、アガロースゲル電気泳動およびポリアクリルアミドゲル電気泳動ならびにカラムクロマトグラフィーなどのような標準的な技術によってサイズに従って分離することができる。
【0097】
一旦核酸フラグメントが生成されたら、所望の配列を含有する特定の核酸フラグメントの同定は、当業者に知られている任意の方法によって達成されてもよい。非限定的な例として、クローンは、所望の配列に対して特異的な2つのオリゴヌクレオチドまたは所望の配列に対して特異的な単一のオリゴヌクレオチドを使用してもよいPCR技術を使用することによって、たとえば5’RACE系を使用することによって単離することができる(Cale JM et al.,1998.Methods Mol.Biol.105:351-71;Frohman MA,1994.PCR Methods Appl.4(1):S40-58)。オリゴヌクレオチドは、縮重ヌクレオチド残基を含有してもよいまたはしなくてもよい。その代わりに、核酸ハイブリダイゼーションのためのプローブを生成するために、核酸の一部分が入手可能であり、精製し、標識することができる場合(たとえばBenton and Davis,1977.Science 196(4286):180-2)。プローブに対して実質的なホモロジーを有する核酸配列は、それにハイブリダイズするであろう、また、検出し、単離することができる。制限酵素消化および知られている制限地図に従って、そのようなものが入手可能である場合に、期待されるサイズとのフラグメントサイズの比較によって、適切なフラグメントを同定することもまた可能であってもよい。さらなる選択は、遺伝子の特性に基づいて実行することができる。
【0098】
所望の核酸の存在はまた、その発現された産物の物理的、化学的、または免疫学的特性に基づくアッセイによって検出されてもよい。たとえば、cDNAクローンまたは適切なmRNAをハイブリッド選択するDNAクローンは、選択し、たとえば、類似するまたは同一の電気泳動の移動、等電点電気泳動反応、タンパク分解性消化地図、ホルモンもしくは他の生物学的活性、結合活性、またはタンパク質について知られている抗原性の特性、を有するタンパク質を産生するように発現させることができる。
【0099】
知られているタンパク質に対する抗体を使用して、他のタンパク質は、たとえばELISA(酵素結合免疫吸着測定法)タイプの手順において、発現された推定上のタンパク質への標識抗体の結合によって同定されてもよい。さらに、知られているタンパク質に対して特異的な結合タンパク質を使用して、他のタンパク質は、インビトロまたは酵母ツーハイブリッド系などのような適した細胞系において、そのようなタンパク質への結合によって同定されてもよい(たとえばClemmons DR,1993.Mol.Reprod.Dev.35:368-74;Loddick SA,1998 et al.Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.95:1894-98を参照されたい)。
【0100】
遺伝子はまた、核酸ハイブリダイゼーションを使用するmRNAの選択、その後に続くインビトロにおける翻訳によって同定することもできる。この手順において、フラグメントは、ハイブリダイゼーションによって相補的なmRNAを単離するために使用される。そのようなDNAフラグメントは、他の種(たとえばショウジョウバエ、マウス、ヒト)の入手可能な精製DNAに相当し得る。単離mRNAの単離産物のインビトロにおける翻訳産物の免疫沈殿分析または機能的なアッセイ(たとえば、インビトロにおける凝集能力、受容体への結合など)は、mRNA、そのため、所望の配列を含有する相補的DNAフラグメントを同定する。
【0101】
そのうえ、特異的なmRNAは、タンパク質に対して特異的に向けられる固定抗体への、細胞から単離されたポリソームの吸着によって選択されてもよい。放射標識cDNAは、鋳型として、選択されたmRNA(吸着したポリソームからの)を使用して合成することができる。次いで、放射標識mRNAまたはcDNAは、他のゲノムDNAフラグメントの中からDNAフラグメントを同定するためのプローブとして使用されてもよい。
【0102】
タンパク質をコード化するゲノムの核酸配列の単離に対する他の選択肢として、化学的に核酸配列を合成するまたはタンパク質をコード化するmRNAからcDNAを作製することを含む。たとえば、関心のあるタンパク質をコード化する核酸のcDNAクローニングにおいて使用するためのRNAは、そのタンパク質を発現する細胞から単離することができる。
【0103】
同定され、単離された核酸は、当業者に知られている任意の適切したクローニングベクターまたは発現ベクターの中に挿入することができる。当技術分野において知られている多くのベクター宿主系が、使用されてもよい。可能なベクターは、プラスミドまたは修飾ウイルスを含むが、ベクター系は、使用される宿主細胞と適合性でなければならない。そのようなベクターは、ラムダ誘導体などのようなバクテリオファージまたはPBR322などのようなプラスミドまたはpUCプラスミド誘導体またはブルースクリプトベクター(Stratagene)を含む。
【0104】
クローニングベクターへの挿入は、たとえば、相補的な付着末端を有するクローニングベクターの中にDNAフラグメントをライゲーションすることによって達成することができる。しかしながら、DNAを断片化するために使用される相補的な制限部位がクローニングベクター中に存在しない場合、DNA分子の末端部は酵素で修飾されてもよい。その代わりに、所望される任意の部位は、DNA末端上にヌクレオチド配列(リンカー)をライゲーションすることによって産生されてもよく、これらのライゲーションされたリンカーは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列をコード化する、特異的な化学的に合成されたオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。さらに、遺伝子および/またはベクターは、PCR技術ならびに遺伝子の末端に対して特異的なオリゴヌクレオチドおよび/または所望の相補的な付着末端を提供するさらなるヌクレオチドを含有するベクターを使用して増幅されてもよい。代替方法において、切断されたベクターおよび遺伝子は、ホモポリマーテーリングによって修飾されてもよい(Cale JM et al.,1998.Methods Mol.Biol.105:351-71)。組換え分子は、形質転換、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーションなどを介して宿主細胞の中に導入することができ、その結果、遺伝子配列の多くのコピーが、生成される。
【0105】
特定の実施形態において、単離された遺伝子、cDNA、または合成されたDNA配列を組み込む、組換えDNA分子による宿主細胞の形質転換が、遺伝子の複数のコピーの生成を可能にする。したがって、遺伝子は、形質転換体を成長させ、形質転換体から組換えDNA分子を単離し、必要な場合、単離された組換えDNAから挿入された遺伝子を回収することによって、多量に得られてもよい。
【0106】
本発明によって提供される配列は、未変性タンパク質において見つけられるものと同じアミノ酸配列を実質的にコード化するヌクレオチド配列および機能的に等価なアミノ酸を有するコード化アミノ酸配列ならびに誘導体およびアナログについて下記に記載される他の誘導体またはアナログをコード化するものを含む。
【0107】
タンパク質のアミノ酸配列は、当業者に知られている任意の方法によって誘導されてもよい。たとえば、配列は、DNA配列からの推測によってまたはその代わりに、たとえば自動式のアミノ酸シークエンサーによるタンパク質の直接的なシークエンシングによって、誘導することができる。
【0108】
タンパク質配列は、当業者に知られている任意の方法によってさらに特徴付けられてもよい。たとえば、タンパク質は、親水性分析によって特徴付けることができる(Hopp TP & Woods KR,1981.Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.78:3824)。親水性プロファイルは、タンパク質の疎水性および親水性領域ならびにそのような領域をコード化する遺伝子配列の対応する領域を同定するために使用することができる。
【0109】
二次構造分析は、当業者に知られている任意の方法によって実行されてもよい(たとえばChou PY & Fasman GD,1974.Biochemistry 13(2):222-45)。たとえば、二次構造分析はまた、特定の二次構造を呈するタンパク質の領域を同定するために行うこともできる。操作、翻訳、および二次構造の予測、オープンリーディングフレームの予測およびプロット、ならびに配列相同性の決定はまた、当技術分野において利用可能なコンピューターソフトウェアプログラムを使用して達成することもできる。構造分析の他の方法は、X線結晶解析、核磁気共鳴分光法、およびコンピューターモデリングを含む。
【0110】
タンパク質/複合体をコードするヌクレオチド配列は、適切な増殖ベクターまたは発現ベクター、つまり、挿入されるタンパク質コード配列の転写のみまたは転写および翻訳に必要なエレメントを含有するベクターの中に挿入することができる。天然の遺伝子および/またはそれらのフランキング配列もまた、必要な転写および/または翻訳シグナルを供給することができる。
【0111】
タンパク質またはタンパク質複合体をコード化する核酸配列の発現は、ポリペプチドが組換えDNA分子により形質転換された宿主において発現されるように、第2の核酸配列によって調節されてもよい。たとえば、ポリペプチドの発現は、当技術分野において知られている任意のプロモーターエレメント/エンハンサーエレメントによってコントロールされてもよい。
【0112】
遺伝子発現をコントロールするために使用されてもよいプロモーターは、例として、SV40初期プロモーター領域、ラウス肉腫の3’末端反復配列において含有されるプロモーター、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター、メタロチオネイン遺伝子の調節配列;β-ラクタマーゼプロモーターまたはlacプロモーターなどのような原核生物発現ベクター;ノパリンシンテターゼプロモーターまたはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモーターおよび光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼのプロモーターを含む植物発現ベクター;Gal 4プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼプロモーター、アルカリ性ホスファターゼプロモーター、および組織特異性を示し、かつトランスジェニック動物において利用されたことがある以下の動物転写コントロール領域などのような、酵母または他の菌類由来のプロモーターエレメント:膵腺房細胞において活性なエラスターゼI遺伝子コントロール領域(Swift et al.Cell;vol.38:pp.639-646,1984);膵臓ベータ細胞において活性な遺伝子コントロール領域(Hanahan D.,Nature;vol.315:pp.115-122,1985)、リンパ系細胞において活性な免疫グロブリン遺伝子コントロール領域(Grosschedl R.et al.Cell;vol.38:pp.647-658,1984)、精巣、乳房、リンパ系、および肥満細胞において活性なマウス乳癌ウイルスコントロール領域(Leder A.et al.Cell;vol.45:pp.45-495,1986)、肝臓において活性なアルブミン遺伝子コントロール領域(Pinkert C.A.et al.Genes Dev.;vol.1:pp.268-276,1987)、肝臓において活性なアルファ-フェトプロテイン遺伝子コントロール領域(Krumlauf R.et al.Mol.Cell.Biol.;vol.5:pp.1639-1648,1985);肝臓において活性なアルファ1-抗トリプシン遺伝子コントロール領域(Kelsey G.D.et al.Genes Dev.;vol.1:pp.161-171,1987)、骨髄系細胞において活性なベータ-グロビン遺伝子コントロール領域(Magram J.et al.Nature;vol.315:pp.338-340,1985);脳におけるオリゴデンドロサイト細胞において活性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子コントロール領域(Readhead C.et al.Cell;vol.48:pp.703-712,1987);骨格筋において活性なミオシン軽鎖-2遺伝子コントロール領域(Shani M.Nature;vol.314:pp.283-286,1985)、ならびに視床下部において活性な性腺刺激放出ホルモン遺伝子コントロール領域(Mason A.J.et al.Science;vol.234:pp.1372-1378,1986)を含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、核酸に作動可能に連結されたプロモーター、1つまたは複数の複製開始点、および任意選択で、1つまたは複数の選択マーカー(たとえば抗生物質抵抗性遺伝子)を含むベクターが、使用される。細菌において、発現系は、ベクターを含有する細菌の選択のためのlac-応答系を含んでいてもよい。発現構築物は、たとえば、それぞれまたはいずれかのpGEXベクターの制限部位のうちの1つにコード配列をサブクローニングすることによって、作製することができる(Pharmacia,Smith D.B.and Johnson K.S.Gene;vol.67:pp.31-40,1988)。これは、タンパク質産物の発現を可能にする。
【0114】
核酸挿入物を含有するベクターは、(a)たとえば、制限エンドヌクレアーゼ処置、直接的なシークエンシング、PCR、または核酸ハイブリダイゼーションによってもたらされたフラグメント長などのような、核酸自体の特定の1つまたはいくつかの特質の同定;(b)「マーカー」機能の存在または非存在;およびベクターが発現ベクターである場合、(c)挿入された配列の発現、を含むいくつかの異なるアプローチによって同定することができる。第1のアプローチにおいて、ベクター中に挿入された遺伝子の存在は、たとえば、シークエンシング、PCR、または挿入された遺伝子に相同な配列を含むプローブを使用する核酸ハイブリダイゼーションによって、検出することができる。第2のアプローチにおいて、組換えベクター/宿主系は、ベクターにおける遺伝子の挿入によって引き起こされる、ある「マーカー」遺伝子機能の存在または非存在に基づいて、同定し、選択することができる(たとえばチミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する抵抗性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける包埋体形成など)。たとえば、核酸が、ベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入される場合、挿入物を含有する組換え体は、マーカー遺伝子機能の非存在によって同定することができる。第3のアプローチにおいて、組換え発現ベクターは、挿入された配列を含有する組換え発現ベクターによって発現された産物をアッセイすることによって同定することができる。そのようなアッセイは、たとえば、インビトロアッセイ系におけるタンパク質の物理的または機能的特性、たとえば、抗タンパク質抗体との結合に基づくものとすることができる。
【0115】
一旦特定の組換え核酸分子が同定され、単離されたら、当技術分野において知られているいくつかの方法は、それを増やすために使用されてもよい。一旦適した宿主系および成長条件が確立されたら、組換え発現ベクターは、多量に増やし、調製することができる。使用することができる発現ベクターのうちのいくつかは、ワクシニアウイルスまたはアデノウイルスなどのようなヒトまたは動物ウイルス;バキュロウイルスなどのような昆虫ウイルス;酵母ベクター;バクテリオファージベクター(たとえばラムダファージ)、ならびにプラスミドおよびコスミドDNAベクターを含む。
【0116】
一旦所望の配列の発現を指示する組換えベクターが同定されたら、遺伝子産物は、分析することができる。これは、産物の放射性標識を含む、産物の物理的または機能的特性に基づくアッセイ、その後に続くゲル電気泳動、イムノアッセイなどによる分析によって実現される。
【0117】
様々な宿主-ベクター系は、タンパク質コード配列を発現するために利用されてもよい。これらは、例として、ウイルス(たとえばワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(たとえばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;酵母ベクターを含有する酵母などのような微生物、またはバクテリオファージ、DNA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNAにより形質転換された細菌を含む。ベクターの発現エレメントは、それらの強度および特異性が変動する。利用される宿主-ベクター系に依存して、多くの適した転写および翻訳エレメントのうちのいずれか1つが、使用されてもよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、プロテアーゼ欠損であり、かつたとえば培地へのIPTGの追加によって誘発性となる発現ベクターが使用される場合に、恒常的なレベルが低く、誘発性のレベルが高い発現を有する細菌において、遺伝子が、発現されてもよい。
【0119】
他の実施形態において、タンパク質/複合体が、たとえば、細菌のペリプラズムにタンパク質を向けるpelB細菌シグナルペプチドなどのようなシグナルペプチドと共に発現されてもよい(Lei et al.J.Bacteril.,vol.169:pp.4379,1987)。その代わりに、タンパク質は、封入体を形成させ、再び可溶化させ、リフォールドさせてもよい(Kim S.H.et al.Mo Immunol,vol.34:pp.891,1997)。
【0120】
他の実施形態において、1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのタンパク質、タンパク質の1つまたは複数のドメインを含む複合体のフラグメントが、発現される。ベクターへのDNAフラグメントの挿入について以前に記載されたいずれかの方法が、適切な転写/翻訳コントロールシグナルおよびタンパク質コード配列からなるキメラ遺伝子を含有する発現ベクターを構築するために使用されてもよい。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技術および合成技術ならびにインビボ組換え体(遺伝的組換え)を含んでいてもよい。
【0121】
そのうえ、挿入された配列の発現を調整するまたは所望される特定の様式において遺伝子産物を修飾し、プロセシングする宿主細胞株が、選ばれてもよい。あるプロモーターからの発現は、ある誘導物質の存在下において上昇させることができ、したがって、遺伝子操作されたポリペプチドの発現は、コントロールされてもよい。さらに、様々な宿主細胞は、翻訳および翻訳後プロセシングおよび修飾のための特有な特定のメカニズムを有する(たとえばタンパク質のグリコシル化、リン酸化。適切な細胞系または宿主系は、発現される外来性ポリペプチドの所望の修飾およびプロセシングを確実にするように選ぶことができる。たとえば、細菌系における発現は、非グリコシル化コアタンパク質産物を産生するために使用することができる。酵母における発現は、グリコシル化産物を産生するであろう。哺乳動物細胞における発現は、異種タンパク質の「天然の」グリコシル化を確実にするために使用することができる。さらに、様々なベクター/宿主発現系は、様々な程度までプロセシング反応をもたらしてもよい。
【0122】
本発明の他の実施形態において、本発明のタンパク質および複合体ならびにその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、またはフラグメントならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、またはフラグメントが、融合タンパク質産物またはキメラタンパク質産物として発現されてもよい(異なるタンパク質の異種タンパク質配列にペプチド結合を介してつながれたタンパク質、フラグメント、アナログ、または誘導体を含む)。そのようなキメラ産物は、適切なコードフレーム中で、当技術分野において知られている方法によって、所望のアミノ酸配列をコード化する適切な核酸配列を互いにライゲーションし、当技術分野において一般に知られている方法によってキメラ産物を発現することによって、作製することができる。その代わりに、そのようなキメラ産物は、タンパク質合成技術によって、たとえば、ペプチドシンセサイザーの使用によって作製されてもよい。
【0123】
タンパク質およびタンパク質複合体はまた、同じもしくは独立した転写および/もしくは翻訳シグナルによって駆動される同じベクター上でまたは別々の発現ベクター上で、たとえば、同時トランスフェクションもしくは同時形質転換によって、同じ細胞において一緒に発現させてもよく、選択は、たとえば、両方のベクターの個々の選択マーカーに基づくものであってもよい。その代わりに、タンパク質/複合体は、別々に発現させてもよく、それらは、同じ発現系または異なる発現系において発現させてもよく、もとのポリペプチドのフラグメント、誘導体、またはアナログとして個々にまたは集団的に発現させてもよい。
【0124】
当業者に知られている任意の方法は、免疫原性であり、かつ中和抗体および/または広域中和抗体の産生に至る、ポリペプチドおよび1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのポリペプチド、複合体、ならびにその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、または融合タンパク質のエピトープを同定するために使用されてもよい。そのような方法は、非限定的な例として、コンピューターによるものであってもよいまたは中和および/もしくは広域中和であることが知られている抗体を使用するまたはポリペプチドならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、もしくはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、もしくは融合タンパク質による免疫化から生じる中和抗体ならびに/もしくは広域中和抗体を使用する抗原性の研究に基づくものであってもよい。
【0125】
抗原性の分析、つまり、遺伝子操作されたポリペプチドならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、または融合タンパク質が、本発明のポリペプチドもしくはタンパク質またはその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、もしくは融合タンパク質、ならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、または融合タンパク質の特定の立体構造のいずれかまたはその特異的な抗原構造に結合することが知られている特異的な抗体に結合するかどうかの決定は、当技術分野において知られている任意の方法によって実行されてもよい。そのような方法は、非限定的な例として、Dey et al.2007(Dey et al.,2007.Characterization of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Monomeric and Trimeric gp120 Glycoproteins Stabilized in the CD4-Bound State:Antigenicity,Biophysics,and Immunogenicity.J Virol 81(11):5579-5593)、Binley et al.,2000(Binley et al.,2000.A Recombinant Human Immunodeficiency Virus Type 1 Envelope Glycoprotein Complex Stabilized by an Intermolecular Disulfide Bond between the gp120 and gp41 Subunits Is an Antigenic Mimic of the Trimeric Virion-Associated Structure.J Virol 74(2):627-643)、Pancera et al.,2005(Pancera et al.,2005.Soluble Mimetics of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Viral Spikes Produced by Replacement of the Native Trimerization Domain with a Heterologous Trimerization Motif:Characterization and Ligand Binding Analysis.J Virol 79(15):9954-9969)、およびBeddows et al.,2006(Beddows et al.,2006.Construction and Characterization of Suluble,Cleaved,and Stabilized Trimeric Env proteins Based on HIV Type 1 env Subtype A.AIDS Res Hum Retroviruses 22(6):569-579)によって詳細に記載されるものを含む。
【0126】
免疫原性の分析、つまり、免疫原として使用される遺伝子操作されたポリペプチドならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、もしくはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、または融合タンパク質が、本発明のポリペプチドもしくはタンパク質またはその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、もしくは融合タンパク質、ならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、もしくはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、または融合タンパク質のいずれかまたはその任意の特定の立体構造の特異的な抗原構造に結合することが知られている抗体を生成するかどうかの決定は、当技術分野において知られている任意の方法によって実行されてもよい。そのような方法は、非限定的な例として、Dey et al.2007(Dey et al.,2007.Characterization of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Monomeric and Trimeric gp120 Glycoproteins Stabilized in the CD4-Bound State:Antigenicity,Biophysics,and Immunogenicity.J Virol 81(11):5579-5593)およびBeddows et al.,2006(Beddows et al.,2007.A comparative immunogenicity study in rabbits of disulfide-stabilized proteolytically cleaved,soluble trimeric human immunodeficiency virus type 1 gp140,trimeric cleavage-defective gp140 and momomeric gp120.Virol 360:329-340)によって詳細に記載されるものを含む。
【0127】
中和アッセイ、つまり、脊椎動物、好ましくは、たとえば、これらに限定されないが、マウス、ウサギ、または霊長動物などのような哺乳動物の、遺伝子操作されたポリペプチドならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、または融合タンパク質による免疫化によって生成される抗体または抗血清が、ウイルス中和活性を有するかどうかの決定は、当技術分野において知られている任意の方法によって実行されてもよい。そのような方法は、非限定的な例として、Dey et al.2007(Dey et al.,2007.Characterization of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Monomeric and Trimeric gp120 Glycoproteins Stabilized in the CD4-Bound State:Antigenicity,Biophysics,and Immunogenicity.J Virol 81(11):5579-5593)およびBeddows et al.,2006(Beddows et al.,2007.A comparative immunogenicity study in rabbits of disulfide-stabilized proteolytically cleaved,soluble trimeric human immunodeficiency virus type 1 gp140,trimeric cleavage-defective gp140 and momomeric gp120.Virol 360:329-340)によって詳細に記載されるものを含む。
【0128】
生物物理的な分析、つまり、たとえば、これらに限定されないが、遺伝子操作されたポリペプチドのならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのポリペプチド、複合体、および任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、またはその融合タンパク質のならびに複合体自体の安定性などのような、当技術分野において知られている任意の生物物理的な特徴の決定は、当技術分野において知られている任意の方法によって実行されてもよい。
【0129】
遺伝子操作された物質の安定性は、例として、これらに限定されないが、当業者に知られている任意の方法による変性電気泳動および非変性電気泳動において、Dey et al.,2007((Dey et al.,2007.Characterization of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Monomeric and Trimeric gp120 Glycoproteins Stabilized in the CD4-Bound State:Antigenicity,Biophysics,and Immunogenicity.J Virol 81(11):5579-5593)において詳細に記載される等温滴定熱量測定ならびにポリペプチドならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、または融合タンパク質を、様々なタンパク濃度および温度でインキュベートする時間的経過実験によって、インビトロにおいて試験されてもよく、遺伝子操作された物質の安定性はまた、様々なpHレベルで、また、様々なレドックス条件で試験されてもよい。上記の条件について、非限定的な例として、ポリペプチドならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、または融合タンパク質の抗原性、免疫原性、ならびに中和能力は、上記に記載されるようにアッセイすることによって決定される。タンパク質は、血清または他の生物学的に誘導された培地において様々な温度でインキュベートされてもよく、当業者に知られている任意の方法によってタンパク分解性の分解に対する感受性について分析されてもよい。
【0130】
遺伝子操作されたポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の実用性をより直接決定するために、体内分布および/または他の薬物動態学的特質が決定されてもよい。特定の実施形態において、遺伝子操作された物質が、モデル生物に注射され、たとえば、これらに限定されないが125Iもしくは18F放射能標識などのようなマーカーを追跡することによって(Choi CW et al,1995.Cancer Research 55:5323-29)および/または上記記載されるような活性を追跡することによって(Colcher D et al.,1998.Q.J.Nucl.Med.44(4):225-41)、アッセイされてもよい。関連する情報は、たとえば、標的組織のその浸透のために免疫原性的に活性であることが期待することができる物質の量を決定することによって得られてもよい。血行路中および標的組織での半減期、クリアランス、免疫原性、および浸透の速度もまた、これに関連して決定されてもよい。
【0131】
コンジュゲートのワクチン免疫原としての実用性に関する最も決定的な測定は、その免疫原性活性を臨床的に直接決定することである。特定の実施形態において、そのような研究が、これらに限定されないが、たとえば、遺伝子操作されたポリペプチドならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、または融合タンパク質によってもたらされる保護のレベルを評価してもよい。たとえば、プラセボおよび免疫原ワクチン接種グループの間で、それらの感染率(または抗体陽転)に関して、比較がなされてもよい。他の非限定的な例として、遺伝子操作されたポリペプチドならびに1つの、いずれかの、両方の、いくつかの、またはすべてのポリペプチド、複合体、およびその任意の誘導体、アナログ、オルソログ、相同体、フラグメント、キメラ、または融合タンパク質の治療上の能力が、評価されてもよい。たとえば、プラセボおよび免疫原ワクチン接種グループの間で、ウイルスの装填量に関して、HIVワクチンの場合には、非限定的な例として、CD4細胞数に関して比較がなされてもよい。
【0132】
本発明は、ポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体が架橋のために修飾されてもよい、適した残基の自動式の選択を可能にするソフトウェアを提供する。そのようなソフトウェアは、上記に記載されるプロセスに従って、また、米国特許「Stabilized Proteins」(Marshall CP et al.、米国特許第7,445,912号明細書;とりわけSection 5におけるIdentification of Suitable Residue Pairs for the Reaction,Software for the Residue Selection ProcessおよびSection 6におけるthe Residue Pair Selection Flowchartを参照されたい)において記載されるなどのように、幾何学的、物理的、および化学的基準に従って使用することができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、本発明が、医薬組成物およびそのような医薬組成物の対象への投与に関する。いくつかの実施形態において、対象が、動物種である。いくつかにおいて、対象が、哺乳動物種である。いくつかの実施形態において、対象が、ヒトである。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物が、本明細書において記載される遺伝子操作されたタンパク質およびタンパク質複合体を含んでいてもよいまたはそれから本質的になってもよい。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が、1つまたは複数のさらなるワクチン免疫原などのような、1つまたは複数のさらなる活性な構成成分を含む医薬組成物において提供されてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の遺伝子操作されたタンパク質および/またはタンパク質複合体が、薬学的に許容できるキャリヤ、アジュバント、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、保存剤、および/または医薬組成物の意図される使用に適した任意の他の構成成分を含むが、これらに限定されない、1つもしくは複数の他の構成成分を含む医薬組成物において提供されてもよい。本発明のこれらの医薬組成物は、水剤、懸濁剤、乳剤、およびその他同種のものの形態をとることができる。用語「薬学的に許容できるキャリヤ」は、様々な希釈剤、賦形剤、および/またはビヒクルを含み、その中にまたはそれと共に、本発明の遺伝子操作されたタンパク質およびタンパク質複合体を提供することができる。用語「薬学的に許容できるキャリヤ」は、ヒトおよび/もしくは他の動物対象への送達に安全であることが知られているならびに/または連邦政府もしくは州政府の監督機関によって承認されたならびに/または米国薬局方および/もしくは他の一般に認識される薬局方において列挙されるならびに/またはヒトおよび/もしくは他の動物における使用について1つもしくは複数の一般に認識される監督機関の特定のもしくは個々の承認を受けているキャリヤを含むが、これらに限定されない。そのような薬学的に許容できるキャリヤは、水、水溶液(生理食塩水、バッファー、およびその他同種のものなど)、有機溶媒(ラッカセイ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などのような、石油、動物、植物、または合成起源のものを含む、あるアルコールおよび油など)、ならびにその他同種のものを含むが、これらに限定されない。使用されてもよいアジュバントは、無機または有機アジュバント、油ベースのアジュバント、ビロソーム、リポソーム、リポ多糖(LPS)、抗原のための分子のケージ(免疫刺激複合体(「ISCOMS」)など)、流入領域リンパ節に輸送される安定性のケージ様構造を形成するAg修飾サポニン/コレステロールミセル、細菌細胞壁の構成成分、エンドサイトーシスされた核酸(二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、および非メチル化CpGジヌクレオチド含有DNAなど)、AUM、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、ならびにスクワレンを含むが、これらに限定されない。一実施形態において、ビロソームが、アジュバントとして使用される。ビロソームは、優れた安全性プロファイルを有することが知られており、膜融合活性を媒介し、それによって抗原提示細胞による、免疫原(本発明の遺伝子操作されたタンパク質およびタンパク質複合体など)の取込みを促進し、抗原プロセシング経路を誘発することができる、インフルエンザウイルスに由来する赤血球凝集素およびノイラミニダーゼなどのような膜結合タンパク質を含有してもよい。本発明に従って使用することができるさらなる市販で入手可能なアジュバントは、Ribiアジュバント系(RAS、2%スクワレン中に、解毒された内毒素(MPL)およびマイコバクテリウム細胞壁構成成分を含有する水中油型乳剤(Sigma M6536))、TiterMax(安定性で代謝可能な油中水型アジュバント(CytRx Corporation 150 Technology Parkway Technology Park/Atlanta Norcross、Georgia 30092))、Syntexアジュバント製剤(SAF、Tween 80およびプルロニックポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマーL121によって安定化された水中油型乳剤(Chiron Corporation、Emeryville、CA))、フロインド完全アジュバント、フロインド不完全アジュバント、ALUM-水酸化アルミニウム、Al(OH)3(Alhydrogel、Accurate Chemical & Scientific Co、Westbury、NYとして入手可能)、SuperCarrier(Syntex Research 3401 Hillview Ave.P.O.Box 10850 Palo Alto、CA 94303)、Elvax 40W1,2(エチレン酢酸ビニルコポリマー(DuPont Chemical Co.Wilmington、DE))、抗原と共に共沈したL-チロシン(多数の化学メーカーから入手可能);Montanide(マニド-オレイン酸、ISA Seppic Fairfield、NJ))、AdjuPrime(炭水化物ポリマー)、ニトロセルロース吸収タンパク質、Gerbuアジュバント(C-C Biotech、Poway、CA)、ならびにその他同種のものを含むが、これらに限定されない。
【0134】
いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物が、「有効量」の本発明のタンパク質またはタンパク質複合体を含む。「有効量」は、所望の最終結果を達成するために必要とされる量である。所望の最終結果の例は、液性免疫応答の生成、中和抗体応答の生成、広域中和抗体応答の生成、および防御免疫の生成を含むが、これらに限定されない。所望の最終結果を達成するのに有効な、本発明の遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体の量は、保護または他のいくつかの治療効果が試みられるウイルスの性質、タンパク質またはタンパク質複合体の性質、意図される対象の種(たとえば、ヒトまたは他のいくつかの動物種かどうか)、意図される対象の年齢および/または性別、計画される投与ルート、計画される投薬レジメン、疾患または障害の重篤度、ならびにその他同種のものを含むが、これらに限定されない、様々な因子に依存するであろう。有効量-有効量の範囲であってもよい-は、任意の過度の実験を伴うことなく標準的な技術によって、たとえば、インビトロアッセイおよび/またはインビボアッセイを使用して、意図される対象種または任意の適した動物モデル種において、決定することができる。適したアッセイは、インビトロおよび/またはインビボモデル系に由来する用量-応答曲線および/または他のデータからの外挿を含むものを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、有効量が、特定の状況に基づいて、医学または獣医学の従事者の判断に従って決定されてもよい。
【0135】
様々な送達系は、当技術分野において知られており、任意の適した送達系は、本発明の医薬組成物を投与するために使用することができる。そのような系は、皮内で、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、および経口送達系を含むが、これらに限定されない。医薬組成物は、任意の好都合なルートによって、たとえば注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜の内壁(たとえば口腔粘膜、直腸および腸粘膜など)を通しての吸収によって、投与されてもよく、他の生物学的に活性な作用物質と一緒に投与されてもよい。投与は、全身性または局所的であってもよい。そのうえ、脳室内注射および髄腔内注射を含む任意の適したルートによって中枢神経系に本発明の医薬組成物を導入することが望ましくてもよい。脳室内注射は、たとえば、オマヤレザバーなどのようなレザバーに付けられた脳室内カテーテルによって促進されてもよい。経肺投与もまた、たとえば、吸入器またはネブライザーおよびエアロゾル化剤を有する製剤の使用によって、用いることができる。
【0136】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作されたタンパク質またはタンパク質複合体が望ましい結果を生成するのに非常に有効となり得る組織に本発明の医薬組成物を局部的に投与することが、望ましくてもよい。これは、たとえば、カテーテルを使用する局所的な注入、注射、送達によってまたは多孔性、非多孔性、もしくはゼラチン状の移植片またはそれからもしくはそれを通してタンパク質もしくはタンパク質複合体が局部的に放出され得る1つもしくは複数の膜(silastic膜など)もしくは繊維を含む移植片などのような移植片によって、達成されてもよい。いくつかの実施形態において、放出制御系が、使用されてもよい。いくつかの実施形態において、ポンプが、使用されてもよい(Langer,supra;Sefton,1987.CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwald et al.,1980.Surgery 88:507;Saudek et al.,1989.N.Engl.J.Med.321:574を参照されたい)。いくつかの実施形態において、高分子物質が、本発明のタンパク質またはタンパク質複合体の放出を促進するおよび/またはコントロールするために使用されてもよい(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974.CRC Pres.,Boca Raton,Florida;Controlled Drug Bioavailability,1984.Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York;Ranger & Peppas,1983 Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照されたい;Levy et al.,1985.Science 228:190;During et al,1989.Ann.Neurol.25:351;Howard et al.,1989.J.Neurosurg 71:105もまた、参照されたい)。いくつかの実施形態において、放出制御系を、タンパク質またはタンパク質複合体が送達されることになっている組織/器官の近くに配置させることができる(たとえばGoodson,,1984.in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2:115-138を参照されたい)。本発明と共に使用されてもよい、いくつかの適した放出制御系が、記載される、Langer,1990,Science;vol.249:pp.527-1533。
【実施例
【0137】
HIVワクチン開発において、免疫原として使用するための機能的Env三量体の特性を再現する安定化されたHIV外被(Env)糖タンパク質の可溶性バージョンを遺伝子操作することにかなり焦点が当てられてきた。このアプローチが採用されるのは、gp120それ自体が、広域中和抗体を生成する免疫応答を効率的に誘起しないからである。しかしながら、gp120に対する広域中和抗体が、患者から単離された。
【0138】
HIVは、未修飾HIV外被糖タンパク質において固有の免疫回避についていくつかのメカニズムを進化させた。これらの戦略は、機能的に保存されたエピトープ由来の抗体応答をそらし、かつ非交差反応性可変ループによるウイルスの回避を可能にする、HIVの高い突然変異率、スパイクの易変性、および免疫優性可変ループの存在に部分的に基づく。しかしながら、より重要なことには、gp120-受容体の相互作用は、著しい立体構造的な再編成を伴い、保存されたCD4受容体結合部位(CD4BS)に結合する抗体による認識は、立体構造的な変化を誘発し、現在の理論は、生じる「立体構造的なマスク」により、CD4BSなどのような保存されたタンパク質表面が機能的なスパイク上に示されない様々な立体構造を呈するのを可能にし、HIV-1が、中和に抵抗しながら、機能性(受容体結合)を維持するのを可能にするというものである(Kwong et al.2002.HIV-1 evades antibody-mediated neutralization through conformational masking of receptor-binding sites.Nature 420:678-82;Phogat et al,2007.Rational modifications of HIV-1 envelope glycoproteins for immunogen design.Curr Pharm Design 13:213-227)。いくつかの従来の研究は、外被タンパク質、特に立体構造の安定化が、宿主免疫系を逃れるためのウイルスの立体構造的なマスキング戦略に対抗することができ、そうでなければ中和抗体および広域中和抗体が十分にまたは全く認識もせず、結合もせず、そのため、感染に応じて血漿B細胞によって分泌もされない、エピトープを安定化できることを示唆した。たとえばDey et al.,2007.Characterization of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Monomeric and Trimeric gp120 Glycoproteins Stabilized in the CD4-Bound State:Antigenicity,Biophysics,and Immunogenicity.J Virol 81(11):5579-5593を参照されたい)。ジスルフィド結合を導入することによる可溶性ecto-gp41-gp120複合体(gp140)の安定化は、中和抗体に結合するが、それでもなお、幅が限られているが、動物において保護的な液性免疫応答を誘起する構築物を提供する(Beddows et al.,2007.A Comparative Immunogenicity Study in Rabbits of Disulfide-stabilized,Proteolytically Cleaved,Soluble Trimeric Human Immunodeficiency Virus Type I gp140,Trimeric Cleavage-Defective gp140 and Monomeric gp120.Virology 360:329-340)。機能的に活性な立体構造をしたgp120を安定化することが報告された突然変異は、広域中和MAb b12(保存されたCD4BSに結合する)の結合を可能にし、これらの突然変異によって安定化されたgp120に対する抗血清は、クレードBウイルスのパネルを中和するそれらの能力において改善を示す(Dey et al.,2007.Characterization of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Monomeric and Trimeric gp120 Glycoproteins Stabilized in the CD4-Bound State:Antigenicity,Biophysics,and Immunogenicity.J Virol 81(11):5579-5593)。より最近では、三量体HIVスパイクの低温電子断層撮影構造が、20Åの解像度で明らかにされ、リガンド非結合のならびにCD4およびAbと複合体を形成した立体構造をしたスパイクの構造的な情報を提供した(Liu et al.,2008.Molecular architecture of native HIV-1 gp120 trimers.Nature 455:109)。これらの研究は、三量体形成が、gp41によって媒介され、gp120の3つのV1/V2ループが、リガンド非結合のならびにb12およびCD4と複合体を形成した立体構造において、集合してスパイクの先端を形成することを実証する。総合して、これらの研究は、特定の立体構造をしたHIVスパイク(中和抗体に結合する)の安定化が、立体構造的なマスキングに対抗し、広域に保護的なAb応答を誘起する免疫原を得るための方法となり得ることを示唆する。
【0139】
以前の研究は、ジスルフィド結合を導入することによってHIVウイルスの可溶性ecto-gp41-gp120複合体(gp140)を安定化することを試み、中和抗体に結合する構築物を生成した。Beddows et al.,2007,「A Comparative Immunogenicity Study in Rabbits of Disulfide-stabilized,Proteolytically Cleaved,Soluble Trimeric Human Immunodeficiency Virus Type I gp140,Trimeric Cleavage-Defective gp140 and Monomeric gp120」,Virology,Vol.360:pp 329-340を参照されたい。しかしながら、ジスルフィド結合は、pH感受性であり、あるレドックス条件下で溶解されることが知られており、インビボにおける免疫原として使用される、ジスルフィド架橋により遺伝子操作されたポリペプチド、タンパク質、またはタンパク質複合体の予防的および/または治療上の実用性が、損なわれ得る。さらに、望まれないジスルフィド結合は、多くの場合、凝集物の形成を媒介する遊離スルフヒドリル基を有するタンパク質の間で形成される。そのため、HIV gp120およびecto-gp41タンパク質を架橋するための代替方法の必要性がある。
【0140】
実施例1
V1/V2ループを介してのHIV三量体スパイクのタンパク質-タンパク質相互作用の安定化は、タンパク質立体構造のフォールドを安定化し、複合体は、中和液性免疫応答または広域中和液性免疫応答を誘起する能力を有する。Liu et al.は、広域中和抗体と複合体のHIV-1スパイクの三次元構造を記載した(Liu et al.,2008,Molecular architecture of native HIV-1 gp120 trimers.Nature 455:109)。この構造の分析に基づいて、位置143および150の間のならびに位置160および180の間の、ステムから遠位にあるV1/V2ループの残基をジチロシン結合の形成のために選択した。
【0141】
選択した残基を、対の組み合わせで、チロシン(チロシンはまだ存在しない)に突然変異させ、架橋条件にかけ、それによって、HIVスパイクは、可溶性のCD4およびb12中和抗体に結合したり、結合しなかったりし、三量体形成に至るジチロシン結合形成について分析する。共有結合による三量体形成は、形成されるのに最低2つのジチロシン結合を必要とする。
【0142】
増幅、突然変異誘発、ならびにHIVタンパク質およびタンパク質複合体の安定性でかつ一時的な発現の両方に適したpcDNA3.1(Stratagene)ベクター。HIV Env遺伝子における標的点突然変異は、突然変異または遺伝子操作タンパク質を生成するために、メーカーの指示に従って、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene)を使用して、対の形で(たとえばgp120に1つおよびgp41に1つ)導入する。突然変異または遺伝子操作タンパク質は、HEK293T細胞の一時的なトランスフェクションによって無血清培地において発現させる。10%ウシ胎児血清、2mMグルタミン、および1×ペニシリン-ストレプトマイシン(50単位/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン))を有するダルベッコ修飾イーグル培地において成長しているHEK293T細胞を、150cm組織培養皿当たり1.2×10細胞の密度で播種し、一晩、成長させる。一晩のインキュベーションの後に、細胞を、メーカーの指示に従って、発現ベクターおよびトランスフェクション試薬Fugene(Roche)の混合物によりトランスフェクトする。およそ24時間後、トランスフェクション培地は、4mMグルタミンを補足した293SFMII(無血清培地)と交換する。さらに4日後、上清を収集し、3,500xgで遠心分離機にかける。上清を、滅菌0.2-□mフィルターで濾過し、プロテアーゼ阻害剤を追加する。タンパク質精製前に、上清は、4℃で、1週間以内であれば、保存することができる。
【0143】
タンパク質精製は、アフィニティー精製カラムを使用して実行し、三量体画分は、サイズ排除クロマトグラフィーによって単離する。抗gp120抗体カップルアフィニティーカラムは、アフィニティー精製のために使用する。培養上清を、室温で一晩、アフィニティーカラムにかけ、カラムを、0.5M NaClを含有する、10容量のリン酸緩衝食塩水(PBS)(pH7.4)により洗浄し、0.15M NaClを含有する、5容量のPBSにより洗浄し、100mMグリシン(pH2.8)により溶出させた。三量体タンパク質は、20mM Tris-HCl(pH7.4)中で調製した3M MgCl2により溶出させ、タンパク濃度は、280nmでの光学濃度(OD)によってモニターする。タンパク質を含有する溶出画分をプールし、Amicon Ultra遠心フィルターデバイス(Millipore、Bedford、MA)により濃縮し、プロテアーゼ阻害剤を含有するPBS(pH7.4)に対して広範囲に透析した。アフィニティー精製三量体タンパク質は、0.35M NaClおよびプロテアーゼ阻害剤を含有するPBSにおいてSuperdex 200 16/26カラム(Amersham Pharmacia)を使用し、サイズ排除クロマトグラフィーにさらにかける。流速は、最初100分間、1ml/分に設定し、ランの終了まで0.5ml/分に低下させ、これにより、オリゴマー種の分離を可能にした。三量体タンパク質含有画分をプールし、上記に記載されるように濃縮し、プロテアーゼ阻害剤を含有するPBS(pH7.4)に対して透析し、急速冷凍し、-80℃で保存した。
【0144】
ジチロシン架橋のために、タンパク質の一定分量を、コントロールタンパク質においてジチロシン(DT)結合の形成に至る反応条件にかける。反応は、Malencik & Anderson,1996,Biochemistry 35:4375 - 86において詳細に記載されるように、アルスロマイセス ペルオキシダーゼを使用して酵素で触媒する。DT結合形成は、Malencik & Anderson,2003,Amino Acids 25:233-247において詳細に記載されるように、320nmの励起波長で分光測光法によってモニターし、定量化し、蛍光は、ジチロシン標準物質(および標準曲線)を使用して、400nmの波長で測定し、チロシル蛍光の損失は、モニターする、また、標準的な手順によってもモニターする。チロシル蛍光の損失が、DT結合形成ともはや化学量的でない場合、反応は、還元剤の追加、続くサンプルの冷却(氷上で)または凍結によって停止させる。
【0145】
ジチロシン架橋を形成することが明らかにされた構築物は、たとえば、上記に記載されるサイズクロマトグラフィーを含む標準的なクロマトグラフ法によって、変性を引き起こさず、むしろ非架橋単量体の解離のみを引き起こす穏やかな変性条件下でさらに精製する。精製した架橋構築物は、下記に記載されるようにさらに分析する。
【0146】
生物物理的な分析
ゲル電気泳動
変性および非変性タンパク質についての標準的な方法は、たとえば架橋の程度を確認し、また、架橋が標的チロシル側鎖に特異的に向けられていること(また、構築物が多量体、コンカテマーなどを形成しないこと)を確認するために、適用する。
【0147】
等温滴定熱量測定(Itc)
ジチロシン架橋二量体複合体の熱力学的な安定化の程度は、標準的なITC法によって、リガンドとしてsCD4およびMicroCal,Inc.からのVP-ITC滴定熱量計システムを使用し、定量化する。タンパク質サンプルは、PBSに対して透析し、使用の前に脱気する。サンプル細胞中の外被タンパク質濃度は、およそ4μMであり、シリンジ中のsCD4濃度は、40μMであり、参照細胞は、脱気したMilli-Q水を含有する。サンプル細胞中の外被タンパク質は、37℃で、400秒間隔で、シリンジからのsCD4の10μlの段階的な追加によって飽和まで滴定する。sCD4のそれぞれのインジェクションと同時に発生した熱は、熱量測定シグナルの積分から計算する。Env-sCD4結合反応により放出された熱を得るために、sCD4の希釈熱を、gp120との反応熱から引く。タンパク質のモル濃度は、標準的な方法によって計算し、エンタルピー(ΔH)、エントロピー(ΔS)、および結合定数(Ka)についての値は、Originソフトウェアを使用して、非線形最小二乗法にデータをフィットさせることによって計算する。
【0148】
抗原性分析
非架橋/非安定化およびジチロシン架橋/安定化外被タンパク質の抗原性は、標準的な酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって、F105、b12、2F5、4E10、D5、17b(+/-可溶性CD4)、15e、D5、b6、PA1、CA13、G3-519、2G12、および7B2抗体を含む、非中和抗体、中和抗体、および広域中和抗体のパネルを使用して決定する。
【0149】
Corning高タンパク質結合ELISAプレートを、4℃で一晩、100μlのPBS(pH7.4)中ウェル当たり400ngのスノードロップ(Galanthus nivalis)レクチン(カタログ番号L8275-5MG;Sigma)によりコーティングする。翌日、レクチンを除去し、ウェルを3時間、室温で、2%無脂肪乳および4%ウシ胎仔血清を含有するPBSにより遮断し、ウェルを、洗浄バッファー(0.2%Tween 20を有するPBS)により5回洗浄する。続いて、ウェルは、室温で2時間、100μlのPBS中200ngの架橋および非架橋Envタンパク質と共にインキュベートし、その後、5回洗浄し、希釈バッファー(1:10希釈遮断バッファー)において20μg/mlの最初の濃度から始めて5倍に連続希釈し、室温で1時間、インキュベートする100μlの異なるモノクローナル抗体溶液と共にインキュベーションする。次いで、ウェルは、洗浄し、抗体希釈バッファー中1:10,000希釈の100μlのホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗ヒトIgG(カタログ番号109-036-097;Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)溶液と共に室温で1時間、インキュベートする。5回の続く洗浄の後に、100μlの比色定量ペルオキシド酵素イムノアッセイ基質(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン;Bio-Rad)を、それぞれのウェルに追加し、反応は、100μlの1M硫酸を混合物に追加することによって停止させる。ウェルのODは、ELISAプレート読み取り装置を使用して、450nmで読み取る。サンプルはすべて、二通り実行する。ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するネガティブコントロールウェルの平均ODを、最終OD値を得るために、実験ウェルの平均ODから引く。
【0150】
免疫化および免疫血清の特徴付け
免疫化
ニュージーランド白ウサギ(およそ12週齢の雌)に、1mlの全容積のRibiアジュバント(Corixa、Hamilton、MT)の1:1希釈液において乳化した125μgのタンパク質を皮内注射によって接種する。それぞれ500μlの1回の接種を、調製の2時間以内にそれぞれの後肢に投与する。追加免疫の接種は、4週間の間隔で注射する。試験の出血について、それぞれの追加免疫接種の10日後に収集する。血液は、凝固させるために2時間、室温でインキュベートし、2,000Xgで10分間、遠心分離機にかけ、凝固した構成成分を廃棄する。血清は、1時間、56℃で熱不活性化し、続く分析のために-20℃で保存する。
【0151】
免疫化された血清の特徴付け
免疫化された血清中の抗gp140抗体力価を決定するために、ELISAアッセイを、本質的に上記に記載されるように、前もって形成する。プレートは、ウェル当たり100μlのPBS中200ngの野生型gp120およびgp41の単量体、二量体、および三量体スパイク複合体Envタンパク質によりコーティングする。遮断および洗浄の後に、免疫化されたウサギ由来の血清の5倍連続希釈液(1/200から出発)を、ウェルに二通り追加し、室温で2時間、インキュベートする。洗浄後、ウェルは、HRPコンジュゲート抗ウサギIgG(カタログ番号111-035-046;Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)の1:10,000希釈液と共にインキュベートし、HRP基質により現像し、ODを450nmで読み取る。
【0152】
中和およびウイルス侵入アッセイ
シュードタイプウイルス調製物
HIV-1は、env発現ベクターおよびEnvの欠失を有するウイルスゲノムDNAの293T細胞への同時トランスフェクションによって、選択した外被糖タンパク質によりシュードタイプにする。シュードタイプウイルスの産生の後に、ルシフェラーゼベースの中和アッセイを、Li et al.2006(Li et al.,2006.Characterization of antibody responses elicited by human immunodeficiency virus type 1 primary isolate trimeric and monomeric envelope glycoproteins in selected adjuvants.J Virol 80:1414-1426)およびLi et al.,2005(Li et al.,2005 Human immunodeficiency virus type 1 env clones from acute and early subtype B infections for standardized assessments of vaccine-elicited neutralizing antibodies.J Virol 79:10108-10125)において詳細に以前に記載されるように実行する。
【0153】
HIV感染アッセイ
CD4、CXCR4、およびCCR5を発現し、HIV-1末端反復配列の調節コントロール下にホタルルシフェラーゼについてのTat応答性レポーター遺伝子および大腸菌(Escherichia coli)β-ガラクトシダーゼ遺伝子を含有するTZM-bl細胞を、HIV-1感染のために使用する。HIV-1感染のレベルは、ウイルス感染の量に正比例する発光の相対発光量(RLU)を測定することによって定量化する。アッセイは、ウェル当たり10,000個のTZM-bl細胞を有する96ウェルマイクロタイタープレートフォーマットを使用して実行する。このHIV感染アッセイは、Li et al.,2005(Li et al.,2005 Human immunodeficiency virus type 1 env clones from acute and early subtype B infections for standardized assessments of vaccine-elicited neutralizing antibodies.J Virol 79:10108-10125)において詳細に記載される。
【0154】
中和アッセイ
中和アッセイのために、それぞれのシュードタイプウイルスストックを、およそ100,000~500,000RLUを産生したレベルまで希釈する。それぞれの免疫血清サンプルによるウイルス中和のパーセンテージは、対応する動物由来の免疫前の血清を含有するウェルにおけるRLUと比較した、試験ウェルにおけるRLUの低下を計算することによって導き出す。タンパク質により免疫化されたウサギにおける非特異的な中和をコントロールするために、BSAにより免疫化された2つの動物由来の血清を分析する。すべての血清サンプルはまた、非HIV-1特異的な血漿の効果について試験するために、広宿主性マウス白血病ウイルス外被を発現するシュードウイルスに対する中和活性についてもアッセイする。HIV-2株7312A/V434Mの中和は、Decker et al.,2005(Decker et al.,2005.Antigenic Conservation and immunogenicity of the HIV corecptor binding site.J Exp Med 201:1407-1419)において記載されるように実行する。シュードウイルスストックを、血清を追加する前に1時間、ニセの培地または0.5μg/mlのsCD4(このウイルスの侵入についての50%阻害性濃度[IC50])により処置する。アッセイの残りは、上記に記載されるように行う。アッセイにおいて存在するsCD4による中和パーセントを計算するために、ベースラインRLUは、ウイルスプラスsCD4および無血清で測定する値とする。IC50データを得るために、免疫血清の5倍連続希釈液を、標的細胞の感染の前にウイルスと共にインキュベートする。抗血清用量-応答曲線は、非線形関数とフィットし、対応するウイルスについてのIC50は、最小二乗回帰分析によって計算する。IC50力価の統計分析は、対応のないt検定により実行する(GraphPad Prismソフトウェアパッケージ3.0;GraphPad Software Inc.、San Diego、CA)。
【0155】
ウイルス侵入アッセイ
WTおよび突然変異シュードタイプYU2ウイルスは、上記に記載されるように、外被糖タンパク質エクスプレッサープラスミドおよびenv遺伝子の欠失を有するウイルスゲノムDNAの293T細胞への同時トランスフェクションによって産生する。シュードウイルス力価は、メーカーのプロトコールに従ってp24 ELISA(Beckman Coulter)によって調節する。次いで、40μl容量に懸濁した等用量のウイルスを、96ウェルプレート上で、20μlのTZM-bl細胞(10,000細胞)および10μlの培地と混合し、37℃で一晩、インキュベートする。翌日、130μlの細胞培養培地を、それぞれのウェルに追加し、さらに24時間、インキュベートする。次いで、細胞培養培地をすべてのウェルから除去し、50μlの細胞溶解バッファー(Promega、Madison、WI)を追加する。30マイクロリットルの細胞溶解上清を、ルミノメーターを使用する発光の測定のための基質を含有する新しいプレートに移す。ウェルによって産生されるRLUを測定し、ウイルスの侵入を計算するために使用する。HIV-1侵入の抗体媒介性の中和を決定するために、それぞれのウイルス接種材料を、37℃で1時間、50μlの培地中で4倍連続希釈液の抗体と共にプレインキュベートする。ウイルス-抗体インキュベーションの後に、TZM-bl標的細胞をウェルに追加する。
【0156】
実施例2
HIVに対する最も効力のある広域中和抗体は、Env三量体特異的四次中和エピトープ(QNE)に結合するが、Env三量体は不安定すぎるので、その四次構造および本発明の主題のQNEを維持することができない。組換え可溶性HIV Env三量体を使用する予備的な研究において、発明者らは、発明者らが、その天然の三量体立体構造においてEnv免疫原を立体構造的にロックするためにジチロシン(DT)架橋を使用することができ、それが、最も効力のあるHIV四次広域中和抗体に対する結合を改善することを実証した。これらのエピトープに対する抗体応答は、血行路において、幅が非常に広いHIV株およびクレードに対して保護的となる可能性を有する。天然のスパイクの先端で三量体を形成する相互作用を共有結合で架橋するために、標的DT「ステープル」を適用することによって、発明者らは、完全に保存されたQNEを有する、立体構造的にロックされた可溶性Env三量体の遺伝子操作に成功した。
【0157】
HIV外被スパイクは、そのベースでの、十分に特徴付けられた相互作用およびスパイクの先端での相互作用を通して三量体を形成する。スパイクの先端で三量体を形成する相互作用を安定化するために、発明者らは、遺伝子操作されたHIVスパイクタンパク質を生成するために、チロシン置換を導入し、次いで、遺伝子操作されたタンパク質を発現させ、精製し、DT架橋した。図1は、DT架橋Env gp140三量体の分析の結果を示す。DT特異的分光蛍光分析により、DT架橋の前および後の、V1/V2においてチロシン置換を有するHIV Env gp140変異体におけるDT架橋を同定し、定量化した。精製gp140三量体のクーマシー染色およびa-HIV Envウェスタンブロットもまた、図1に示す。これらにより、分子間架橋の存在を確認した。
【0158】
蛍光によって、発明者らは、DT特異的励起(320nm)および放射(405nm)波長を使用して定量化されるように、あらゆる最適化の前に、平均80%+の効率で、分子間の三量体を形成する架橋を形成した7つの変異体を同定した。発明者らは、これら構築物が、立体構造的で三量体特異的な広域中和抗体に結合する能力についてアッセイした。DT架橋は、広域中和抗体b12(プロトマーおよび三量体の両方に結合する)ならびに抗V2広域中和抗体PG9(三量体に優位に結合するが、単量体にも結合する)上の抗CD4結合部位の結合性を完全に保存した。そのうえ、立体構造的なロックはまた、ELISAアッセイにおいて、非中和モノクローナル抗体(b6およびb13など)に対する結合性を著しく低下させた(データ示さず)。DT結合の位置は、DT-Env三量体のトリプシンフラグメントのタンデム質量分析(MS/MS)によって確認した。重要なことには、発明者らは、立体構造的にロックされたHIV Env三量体が、最も非常に広域な中和抗体であり、効力のある抗HIV Env広域中和抗体のうちの1つであるPG16に対して、野生型プロトマーと比較して、著しくよく結合することを発見した。図2は、ELISAアッセイの結果を提供する。下の線は、PG16に対する野生型(WT)HIV Envプロトマーの結合を示し、一方、上の線は、PG16に対する立体構造的にロックされた三量体の結合を示す。PG16エピトープは。天然の/機能的なHIV外被三量体上でのみ提示される。PG16結合性の改善は、PG16がβ-シートとして結合するオーバーラップするエピトープのα-ヘリックス配座異性体に結合する低中和抗V2モノクローナル抗体、CH58に対する結合の著しい低下と相関した(データ示さず)。「DTロック」可溶性HIV Env三量体は、動物におけるその免疫原性および他の特徴を評価するために様々なアッセイにおいて試験することができる。適したアッセイは、前の実施例において記載されるもの、本明細書において別記されるもの、当技術分野において知られているものを含む。
【0159】
本明細書において記載される本発明は、提供される特定の実施形態および実施例の範囲に限定されないものとし、これらは、本発明のいくつかの態様の例説を提供することが意図される。本明細書で記載される特定の実施形態および実施例の様々な修飾は、前述の記載から当業者らに明らかになるであろう。そのような修飾もまた、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0160】
多くの参考文献が、本明細書において引用される。参照のみによる組み込みを可能にする権限上、本明細書において引用されるそれぞれの参考文献の全開示は、それらの全体が参照によって組み込まれる。
【0161】
本発明はまた、以下の請求項によってさらに記載され、定義されてもよい。
図1
図2