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特許7472210有効性の改善および毒性の減少のための、抗体およびSN-38からなるイムノコンジュゲートの投薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】有効性の改善および毒性の減少のための、抗体およびSN-38からなるイムノコンジュゲートの投薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240415BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240415BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240415BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240415BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K31/7105
A61K31/4745
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022130018
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2020124453の分割
【原出願日】2013-07-23
(65)【公開番号】P2022188013
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】61/736,684
(32)【優先日】2012-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/749,548
(32)【優先日】2013-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504149971
【氏名又は名称】イミューノメディクス、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ゴヴィンダン,セレンガラム,ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴールデンバーグ,デイビッド エム.
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-530536(JP,A)
【文献】特表2009-531325(JP,A)
【文献】特表2009-514813(JP,A)
【文献】特表2006-502698(JP,A)
【文献】Clin Cancer Res., 2011, Vol.17 No.10, p.3157-69
【文献】Mol Cancer Ther., 2011, Vol.10 No.6, p.1072-81
【文献】Gynecol Oncol., 2011, Vol.122 No.1, p.171-177
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 47/68
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IMMU-132を含む、三種陰性乳癌治療用医薬組成物であって、
IMMU-132が、三種陰性乳癌を有するヒト対象に対して、2週間の治療とそれに続く1週間の休止のサイクルでのスケジュールで、週1回投与されるように用いられる、医薬組成物。
【請求項2】
前記三種陰性乳癌が三種陰性転移性乳癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
IMMU-132の投薬量が8~10mg/kgである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
IMMU-132の投薬量が10mg/kgである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ヒト対象が、少なくとも一つの先行する全身治療を受けている、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ヒト対象が、二つ以上の先行する全身治療を受けている、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
先行する前記全身治療の少なくとも一つが転移性疾患に対するものである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
先行する前記全身治療が、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、カルボプラチン、ゲムシタビン、カペシタビン、エリブリン、シスプラチン、アナストロゾール、ビノレルビン、ベバシズマブ、タモキシフェン、タキサン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、およびイキサベピロンからなる群から選択される、請求項5~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記サイクルが、4、6、8、10、12、16、または20回繰り返される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記サイクルが、用量制限毒性または進行まで繰り返される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
IMMU-132を含む、三種陰性転移性乳癌治療用医薬組成物であって、
10mg/kgのIMMU-132が、三種陰性転移性乳癌を有するヒト対象に対して、2週間の治療とそれに続く1週間の休止のサイクルでのスケジュールで、週1回投与されるように用いられ、
前記ヒト対象は、二つ以上の先行する全身治療を受けており、先行する前記全身治療の少なくとも一つは転移性疾患に対するものである、医薬組成物。
【請求項12】
先行する前記全身治療が、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、カルボプラチン、ゲムシタビン、カペシタビン、エリブリン、シスプラチン、アナストロゾール、ビノレルビン、ベバシズマブ、タモキシフェン、タキサン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、およびイキサベピロンからなる群から選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記サイクルが、4、6、8、10、12、16、または20回繰り返される、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記サイクルが、用量制限毒性または進行まで繰り返される、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2012年12月13日出願の米国特許仮出願第61/736,684号および2013年1月7日出願の同第61/749,548号の、米国特許法119条(e)に基づく利益を請求するものである。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出され、かつ参照によりその全体が組み込まれる配列表を含む。上記ASCIIのコピーが2013年7月17に作成され、IMM340WO1_SL.txtと命名され、大きさは60,405バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、ヒト対象における様々な癌細胞をターゲティングする改善された能力を有する、抗体または抗原結合性抗体断片とSN-38などのカンプトテシンとのイムノコンジュゲートの治療目的の使用に関する。好ましい実施形態では、この抗体および治療薬部分は、治療有効性を増大させる細胞内切断可能な連結を介して連結されている。より好ましい実施形態では、このイムノコンジュゲートは、治療効果を最適化する特定の投薬量および/または特定の投与スケジュールで投与される。本明細書において開示するヒトの治療で使用するために最適化されたSN-38コンジュゲートされた抗体の投薬量および投与スケジュールは、動物モデル研究からは予測され得ていなかった予期せぬ優れた有効性を示し、親化合物であるイリノテカン(CPT-11)を含めた標準的な抗癌療法に耐性を有する癌の有効な処置を可能にする。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
多年にわたって、毒性薬剤をヒト癌に特異的に送達するためにモノクローナル抗体(MAb)を使用することは、特異的ターゲティング薬物療法の分野の科学者の目標であり続けている。腫瘍関連MAbと適切な毒性薬剤とのコンジュゲートは開発されているが、ヒトにおける癌の治療では、その成功にむらがあり、また、感染性疾患および自己免疫疾患などの他の疾患では実際には適用されていない。毒性薬剤の多くは通常、化学療法剤薬物であるが、粒子放出性放射性核種または細菌毒素もしくは植物毒素も、特に、癌の治療のために、MAbにコンジュゲートされており(Sharkey and Goldenberg, CA Cancer J Clin. 2006 Jul-Aug;56(4):226-243)、またさらに最近では、ある種の感染症の前臨床治療のための放射性イムノコンジュゲートもある(Dadachova and Casadevall, Q J Nucl Med Mol Imaging 2006;50(3):193-204)。
【0005】
MAb-化学療法薬コンジュゲートを使用する利点は、(a)化学療法薬自体が構造的によく規定されていること;(b)非常によく規定されたコンジュゲーション化学を使用して、多くの場合にMAb抗原結合性領域から離れた特異的な部位で、化学療法薬がMAbタンパク質に連結されること;(c)MAb-化学療法薬コンジュゲートが、MAbと細菌毒素または植物毒素とを含む化学的コンジュゲートよりも再現性よく、かつ通常は、より低い免疫原性で作製することができ、そのままで、商業的開発および規制上の承認に適していること;および(d)MAb-化学療法薬コンジュゲートが、特に、放射線感受性骨髄に対して、放射性核種MAbコンジュゲートよりも全身的に数桁毒性が低いことである。
【0006】
カンプトテシン(CPT)およびその誘導体は、一群の強力な抗腫瘍薬である。イリノテカン(CPT-11とも称される)およびトポテカンは、承認された癌治療薬であるCPT類似体である(Iyer and Ratain, Cancer Chemother. Phamacol. 42: S31-S43 (1998))。CPTは、トポイソメラーゼI-DNA複合体を安定化することによりトポイソメラーゼI酵素を阻害することによって作用する((Liu, et al. in The Camptothecins: Unfolding Their Anticancer Potential, Liehr J.G., Giovanella, B.C. and Verschraegen (eds), NY Acad Sci., NY 922:1-10 (2000))。CPTは、コンジュゲートの調製において特定の問題を示す。問題の1つは、水性緩衝液への多くのCPT誘導体の不溶性である。第二に、CPTは、高分子にコンジュゲートさせるための構造的修飾が特に困難である。例えば、CPT自体は、1個の第3級ヒドロキシル基しか、E環中に含有しない。CPTの場合、このヒドロキシル官能基は、その後のタンパク質コンジュゲーションのために適したリンカーにカップリングされる必要があり;SN-38、化学療法薬CPT-11の活性な代謝産物、ならびにトポテカンおよび10-ヒドロキシ-CPTなどのC-10-ヒドロキシル含有誘導体などの強力なCPT誘導体では、C-10位にフェノール系ヒドロキシルが存在することで、必要なC-20-ヒドロキシル誘導体化が複雑になる。第三に、カンプトテシンのE環のδ-ラクトン部分の生理学的条件下での不安定性が、抗腫瘍効力を著しく低減させる。したがって、コンジュゲーションプロトコルは、ラクトンの開環を回避するために7以下のpHで実施されるように行われる。しかしながら、活性エステルなどのアミン反応性基を有する二官能性CPTのコンジュゲーションは、典型的には、8以上のpHを必要とするであろう。第四に、細胞内切断可能な部分は好ましくは、CPTおよび抗体または他の結合部分を接続するリンカー/スペーサーに導入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
抗体-SN-38コンジュゲートなどの抗体-CPTコンジュゲートを調製および投与するより有効な方法が依然として必要とされている。好ましくは、この方法は、ヒト患者の治療で使用するために抗体-CPTコンジュゲートの有効性を最大化し、かつその毒性を最小化する最適化された投薬および投与スケジュールを含む。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本明細書で使用する場合、略語「CPT」は、別段に明示されていない限り、カンプトテシン、またはSN-38などのその誘導体のいずれかを指し得る。本発明は、CPT-抗体イムノコンジュゲートを調製および投与するための改善方法および組成物を提供することによって、当技術分野で満たされていなかった必要性を解決するものである。好ましくは、カンプトテシンはSN-38である。開示する方法および組成物は、他の形態の治療に対して治療不応性があるか、または応答性が低く、かつ選択的なターゲティングのために適した抗体または抗原結合性抗体断片が開発され得るか、または利用可能であるか、または知られている疾患が含まれ得る様々な疾患および状態を処置するために使用される。本イムノコンジュゲートで処置され得る好ましい疾患または状態には、例えば、癌または感染性生物に起因する疾患が含まれる。
【0009】
好ましくは、ターゲティング部分は、抗体、抗体断片、二重特異性もしくは他の多価抗体、または他の抗体ベースの分子もしくは化合物である。抗体は、様々なアイソタイプ、好ましくは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のものであってよく、より好ましくは、ヒトIgG1ヒンジ領域および定常領域配列を含む。抗体またはその断片は、キメラヒト-マウス、キメラヒト-霊長類、ヒト化(ヒトフレームワークおよびマウス超可変(CDR)領域)、または全ヒト抗体、さらに、van der Neut Kolfschotenら(Science 2007; 317:1554-1557)によって記載されたとおりの半IgG4抗体(「ユニボディ」と称される)などのその変形であってよい。より好ましくは、この抗体またはその断片は、特異的なアロタイプに属するヒト定常領域配列を含むように設計または選択されていてよく、これによって、イムノコンジュゲートをヒト対象に投与したときに、免疫原性の低減がもたらされ得る。投与するための好ましいアロタイプには、G1m3、G1m3,1、G1m3,2、またはG1m3,1,2などの非G1m1アロタイプ(nG1m1)が含まれる。より好ましくは、アロタイプは、nG1m1、G1m3、nG1m1,2、およびKm3アロタイプからなる群から選択される。
【0010】
使用される抗体は、当技術分野で公知の任意の疾患関連抗原に結合することができる。病態が癌である場合には、例えば、腫瘍細胞によって発現されるか、または他の方法で関連する多くの抗原が当技術分野で公知であり、これには、これらだけに限定されないが、炭酸脱水酵素IX、αフェトプロテイン(AFP)、α-アクチニン-4、A3、A33抗体に特異的な抗原、ART-4、B7、Ba733、BAGE、BrE3抗原、CA125、CAMEL、CAP-1、CASP-8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a~e、CD67、CD70、CD70L、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD132、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK-4/m、CDKN2A、CTLA-4、CXCR4、CXCR7、CXCL12、HIF-1α、結腸特異的抗原-p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、c-Met、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP-1(TROP-2)、EGP-2、ELF2-M、Ep-CAM、線維芽細胞成長因子(FGF)、Flt-1、Flt-3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、gp100、GRO-β、HLA-DR、HM1.24、ヒト柔毛膜性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB-1、低酸素誘導性因子(HIF-1)、HSP70-2M、HST-2、Ia、IGF-1R、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IFN-λ、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-23、IL-25、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、KC4抗原、KS-1抗原、KS1-4、Le-Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)、MAGE、MAGE-3、MART-1、MART-2、NY-ESO-1、TRAG-3、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5ac、MUC13、MUC16、MUM-1/2、MUM-3、NCA66、NCA95、NCA90、PAM4抗原、膵臓癌ムチン、PD-1受容体、胎盤成長因子、p53、PLAGL2、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、PlGF、ILGF、ILGF-1R、IL-6、IL-25、RS5、RANTES、T101、SAGE、S100、サバイビン、サバイビン-2B、TAC、TAG-72、テネイシン、TRAIL受容体、TNF-α、Tn抗原、Thomson-Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED-Bフィブロネクチン、WT-1、17-1A抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl-2、bcl-6、Kras、発癌遺伝子マーカーおよび発癌遺伝子産物(例えば、Sensi et al., Clin Cancer Res 2006, 12:5023-32; Parmiani et al., J Immunol 2007, 178:1975-79; Novellino et al., Cancer Immunol Immunother 2005, 54:187-207を参照されたい)が含まれる。好ましくは、抗体は、CEACAM5、CEACAM6、EGP-1(TROP-2)、MUC-16、AFP、MUC5a,c、PAM4抗原、CD74、CD19、CD20、CD22、またはHLA-DRに結合する。
【0011】
利用することができる例示的な抗体には、これらだけに限定されないが、hR1(抗IGF-1R、米国特許出願公開第12/722,645、2010年3月12日出願)、hPAM4(抗ムチン、米国特許第7,282,567号)、hA20(抗CD20、米国特許第7,251,164号)、hA19(抗CD19、米国特許第7,109,304号)、hIMMU31(抗AFP、米国特許第7,300,655号)、hLL1(抗CD74、米国特許第7,312,318号)、hLL2(抗CD22、米国特許第7,074,403号)、hMu-9(抗CSAp、米国特許第7,387,773号)、hL243(抗HLA-DR、米国特許第7,612,180号)、hMN-14(抗CEACAM5、米国特許第6,676,924)、hMN-15(抗CEACAM6、米国特許第7,541,440号)、hRS7(抗EGP-1、米国特許第7,238,785号)、hMN-3(抗CEACAM6、米国特許第7,541,440号)、Ab124およびAb125(抗CXCR4、米国特許第7,138,496号)が含まれ、列挙した特許または出願のそれぞれの実施例セクションは、参照によって本明細書に組み込まれる。より好ましくは、抗体は、IMMU-31(抗AFP)、hRS7(抗TROP-2)、hMN-14(抗CEACAM5)、hMN-3(抗CEACAM6)、hMN-15(抗CEACAM6)、hLL1(抗CD74)、hLL2(抗CD22)、hL243もしくはIMMU-114(抗HLA-DR)、hA19(抗CD19)、またはhA20(抗CD20)である。本明細書で使用する場合、エプラツズマブおよびhLL2という用語は互換的であり、ベルツズマブおよびhA20、hL243g4P、hL243gamma4P、およびIMMU-114という用語も互換的である。
【0012】
使用される別の抗体には、これらだけに限定されないが、アブシキシマブ(抗糖タンパク質IIb/IIIa)、アレムツズマブ(抗CD52)、ベバシズマブ(抗VEGF)、セツキシマブ(抗EGFR)、ゲムツズマブ(抗CD33)、イブリツモマブ(抗CD20)、パニツムマブ(抗EGFR)、リツキシマブ(抗CD20)、トシツモマブ(抗CD20)、トラスツズマブ(抗ErbB2)、ラムブロリズマブ(抗PD-1受容体)、ニボルマブ(抗PD-1受容体)、イピリムマブ(抗CTLA-4)、アバゴモマブ(抗CA-125)、アデカツムマブ(抗EpCAM)、アトリズマブ(抗IL-6受容体)、ベンラリズマブ(抗CD125)、オビヌツズマブ(GA101、抗CD20)、CC49(抗TAG-72)、AB-PG1-XG1-026(抗PSMA、米国特許出願公開第11/983,372号、ATCC PTA-4405およびPTA-4406として寄託)、D2/B(抗PSMA、WO 2009/130575)、トシリズマブ(抗IL-6受容体)、バシリキシマブ(抗CD25)、ダクリズマブ(抗CD25)、エファリズマブ(抗CD11a)、GA101(抗CD20;Glycart Roche)、ムロモナブ-CD3(抗CD3受容体)、ナタリズマブ(抗α4インテグリン)、オマリズマブ(抗IgE);CDP571などの抗TNF-α抗体(Ofei et al., 2011, Diabetes 45:881-85)、MTNFAI、M2TNFAI、M3TNFAI、M3TNFABI、M302B、M303(Thermo Scientific、Rockford、IL)、インフリキシマブ(Centocor、Malvern、PA)、セルトリズマブペゴル(UCB、Brussels、Belgium)、抗CD40L(UCB、Brussels、Belgium)、アダリムマブ(Abbott、Abbott Park、IL)、Benlysta(Human Genome Sciences);Alz50などのアルツハイマー病の治療のための抗体(Ksiezak-Reding et al., 1987, J Biol Chem 263:7943-47)、ガンテネルマブ、ソラネズマブ、およびインフリキシマブ;59D8、T2G1s、MH1などの抗フィブリン抗体;MOR03087などの抗CD38抗体(MorphoSys AG)、MOR202(Celgene)、HuMax-CD38(Genmab)またはダラツムマブ(Johnson & Johnson);(P4/D10などの抗HIV抗体(米国特許第8,333,971号)、Ab75、Ab76、Ab77(Paulik et al., 1999, Biochem Pharmacol 58:1781-90)、さらに、Polymun(Vienna、オーストリア)によって記載および販売され、他にも米国特許第5,831,034号、米国特許第5,911,989号、ならびにVcelar et al., AIDS 2007; 21(16):2161-2170およびJoos et al., Antimicrob. Agents Chemother. 2006; 50(5):1773-9に記載されている(これらはすべて、参照によって本明細書に組み込まれる)抗HIV抗体;およびCR6261(抗インフルエンザ)などの病原体に対する抗体、エクスビビルマブ(exbivirumab)(抗肝炎B)、フェルビズマブ(felvizumab)(抗呼吸系発疹ウイルス)、フォラビルマブ(foravirumab)(抗狂犬病ウイルス)、モタビズマブ(抗呼吸系発疹ウイルス)、パリビズマブ(抗呼吸系発疹ウイルス)、パノバクマブ(panobacumab)(抗シュードモナス)、ラフィビルマブ(rafivirumab)(抗狂犬病ウイルス)、レガビルマブ(抗サイトメガロウイルス)、セビルマブ(sevirumab)(抗サイトメガロウイルス)、チビルマブ(tivirumab)(抗B型肝炎)、およびウルトキサズマブ(抗大腸菌)が含まれる。
【0013】
好ましい実施形態では、化学療法薬部分は、カンプトテシン(CPT)ならびにその類似体および誘導体から選択され、より好ましくは、SN-38である。しかしながら、利用することができる他の化学療法薬部分には、タキサン(例えば、バッカチンIII、タキソール)、エポチロン、アンスラサイクリン(例えば、ドキソルビシン(DOX)、エピルビシン、モルホリノドキソルビシン(モルホリノ-DOX)、シアノモルホリノ-ドキソルビシン(シアノモルホリノ-DOX)、2-ピロリノドキソルビシン(2-PDOX)または2-PDOX(プロ-2-PDOX)のプロドラッグ形態(例えば、Priebe W (ed.), ACS symposium series 574、出版American Chemical Society, Washington D.C., 1995 (332pp)およびNagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:2464-2469, 199を参照されたい)、ゲルダナマイシンによって例示されるベンゾキノイドアンサマイシン(DeBoer et al., Journal of Antibiotics 23:442-447, 1970; Neckers et al., Invest. New Drugs 17:361-373, 199)などが含まれる。好ましくは、抗体またはその断片は、少なくとも1個の化学療法薬部分;好ましくは1~約5個の化学療法薬部分;より好ましくは6個以上の化学療法薬部分、最も好ましくは約6~約12個の化学療法薬部分に連結する。
【0014】
水溶性CPT誘導体の例はCPT-11である。広範な臨床的データを、CPT-11の薬理学および活性なSN-38へのそのインビボ変換に関して利用することができる(Iyer and Ratain、Cancer Chemother Pharmacol. 42:S31-43 (1998); Mathijssen et al., Clin Cancer Res. 7:2182-2194 (2002); Rivory, Ann NY Acad Sci. 922:205-215, 2000))。活性形態のSN-38は、CPT-11よりも約2~3桁強力である。特定の好ましい実施形態では、本イムノコンジュゲートは、hMN-14-SN-38、hMN-3-SN-38、hMN-15-SN-38、IMMU-31-SN-38、hRS7-SN-38、hA20-SN-38、hL243-SN-38、hLL1-SN-38またはhLL2-SN-38コンジュゲートであってよい。
【0015】
様々な実施形態は、これらだけに限定されないが、非ホジキンリンパ腫、B細胞急性および慢性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、急性大細胞型B細胞リンパ腫、ヘアリーセル白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ腫および白血病、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、癌、黒色腫、肉腫、膠腫、骨癌および皮膚癌を含めた癌を処置するための本方法および組成物の使用に関してよい。癌には、口腔、食道、胃腸管、肺道(pulmonary tract)、肺、胃、結腸、乳房、卵巣、前立腺、子宮、子宮内膜、子宮頸、膀胱、膵臓、骨、脳、結合組織、肝臓、胆嚢、膀胱、腎臓、皮膚、中枢神経系、および睾丸の癌が含まれ得る。
【0016】
加えて、本方法および組成物は、感染症、例えば、ウイルス、リケッチア、マイコプラズマ、原生動物、真菌、ウイルス、寄生虫、または他の微生物剤などの病原体による感染症に関係する疾患を処置するために使用することができる。例には、AIDSの原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)、結核のマイコバクテリウム、ストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、レジュネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophilia)、化膿連鎖球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎球菌、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、B型インフルエンザ菌、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘーター、西ナイルウイルス、緑膿菌、マイコバクテリウムハンセン病、ウシ流産菌、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、II型単純ヘルペスウイルス、ヒト血清パルボ様ウイルス(human serum parvo-like virus)、呼吸系発疹ウイルス、水痘-帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、マウス白血病ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、いぼウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、サルウイルス40、マウス乳癌ウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ原虫、ランゲルトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、トリパノソーマ・ブルーセイ、マンソン住血吸虫、日本住血吸虫、ウシバベシア、ニワトリ盲腸コクシジウム(Elmeria tenella)、回旋糸状虫、熱帯リーシュマニア、旋毛虫、タイレリア・パルバ、胞状条虫、ヒツジ条虫、無鉤条虫、蝟粒条虫、メソセストイド・コルチ(Mesocestoides corti)、マイコプラズマ・アルツリティディス(Mycoplasma arthritidis)、マイコプラズマ・ヒオリニス(M.hyorhinis)、マイコプラズマ・オラーレ(M. orale)、マイコプラズマ・アルギニニ(M. arginini)、アコレプラズマ・レイドロウイィ(Acholeplasma laidlawii)、マイコプラズマ・サリバリウム(Mycoplasma salivarium)、およびマイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumonia)が含まれる。感染性生物に対する抗体(抗毒素および抗ウイルス抗体)を列挙する総説、さらには、他のターゲットは、参照によって本明細書に組み込まれるCasadevall, Clin Immunol 1999; 93(1):5-15に含まれる。
【0017】
癌の処置に関係するある種の実施形態では、薬物コンジュゲートは、外科手術、放射線療法、化学療法、裸の(naked)抗体を用いる免疫療法、放射性免疫療法、免疫調節薬、ワクチンなどと組み合わせて使用することができる。これらの併用療法は、そのような組み合わせで投与されるべき各治療薬をより低い用量にすることを可能にし得るので、ある種の重大な副作用を低減させ、かつ必要な療法の経過を短縮する可能性がある。重複する毒性がないか、または軽微であるときには、それぞれの総容量を投与することもできる。
【0018】
感染症では、薬物イムノコンジュゲートを、他の治療薬、免疫調節薬、裸のMAb、またはワクチン(例えば、肝炎、HIV、もしくは乳頭腫ウイルスに対するMAb、またはこれらのウイルスの免疫原に基づくワクチン、またはB型肝炎においてなどのキナーゼ阻害薬)と組み合わせることができる。これらのウイルス性病原体および他のウイルス性病原体に対する抗体および抗原ベースのワクチンは、当技術分野で公知であり、また場合によっては、すでに商業的に使用されている。抗感染モノクローナル抗体の開発は、最近では、参照によって本明細書に組み込まれる、裸の抗体療法が追及している優先病原体をまとめているReichertおよびDewitz (Nat Rev Drug Discovery 2006; 5:191-195)によって総説されており、それによると、その抗体が第III相治験中であるか、または市場に出ているのは、2種の病原体(呼吸系発疹ウイルスおよびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌)のみであり、他の25種は臨床研究中であり、20種は臨床試験中に中止された。併用療法では、感染性生物を処置するための放射性免疫療法の使用は、例えば、米国特許第4,925,648号;同第5,332,567号;同第5,439,665号;同第5,601,825号;同第5,609,846号;同第5,612,016号;同第6,120,768号;同第6,319,500号;同第6,458,933号;同第6,548,275号;ならびに米国特許出願公開第20020136690号および同第20030103982号に開示されており、これらのそれぞれの実施例セクションは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
イムノコンジュゲートの好ましい最適な投薬は、好ましくは週1回、週2回、または隔週で投与される3mg/kgから20mg/kgの間の投薬量を含んでよい。最適な投薬スケジュールには、連続2週間の治療と、それに続く1週間、2週間、3週間、もしくは4週間の休止か、または週交替の治療と休止か、または1週間の治療と、それに続く2週間、3週間、または4週間の休止か、または3週間の治療と、それに続く1週間、2週間、3週間、もしくは4週間の休止か、または4週間の治療と、それに続く1週間、2週間、3週間、もしくは4週間の休止か、または5週間の治療と、それに続く1週間、2週間、3週間、4週間、または5週間の休止か、または2週毎に1回、3週ごとに1回、もしくは1か月に1回の投与の治療サイクルが含まれ得る。処置を、任意のサイクル数、好ましくは、少なくとも2サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも6サイクル、少なくとも8サイクル、少なくとも10サイクル、少なくとも12サイクル、少なくとも14サイクル、または少なくとも16サイクル延長することができる。投薬量は24mg/kgまでであってよい。使用される例示的な投薬量には、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、22mg/kg、および24mg/kgが含まれ得る。好ましい投薬量は、4、6、8、9、10、12、14、16または18mg/kgである。当業者であれば、年齢、全身健康、特定の臓器機能、または体重、さらに、特定の臓器系(例えば、骨髄)に対する先行する治療の作用などの様々な因子を、イムノコンジュゲートの最適な投薬量を選択する際に考慮することができ、また、投薬量および/または投与頻度は、治療経過の間に増大または減少させることができることは理解するであろう。投薬は、わずか4~8回の投与後に観察される腫瘍の収縮を証拠として、必要な場合には繰り返すことができる。本明細書において開示する最適化された投薬量および投与スケジュールは、ヒト対象において予期せぬ優れた有効性および毒性の低減を示し、このことは、動物モデル研究からは予期され得ていなかった。意外にも、この優れた有効性によって、SN-38がインビボでそれに由来する親化合物、CPT-11を含めた1種または複数の標準的な抗癌治療に抵抗性を有することが以前に見い出されている腫瘍の処置が可能になる。
【0020】
本方法は、腫瘍応答を定期的に測定するために、CTおよび/もしくはPET/CT、またはMRIを使用することを含み得る。CEA(癌胎児性抗原)、CA19-9、AFP、CA 15.3、またはPSAなどの腫瘍マーカーの血中濃度も、モニターすることができる。投薬量および/または投与スケジュールを、必要に応じて、画像診断および/またはマーカー血中濃度の結果に従って調節することができる。
【0021】
特許請求の範囲の組成物および方法に伴う意外な結果は、高用量の抗体-薬物コンジュゲートの予測されていなかった忍容性であり、反復注入でも、観察される悪心および嘔吐の比較的低いグレードの毒性、または管理可能な好中球減少のみを伴う。さらなる意外な結果は、アルブミン、PEG、または他の担体にコンジュゲートしているSN-38を有する他の製品とは異なり、抗体-薬物コンジュゲートの蓄積がないことである。蓄積の欠如が、投薬の反復または増大の後でも、改善された忍容性および重大な毒性の欠如に関連している。これらの意外な結果によって、予測されなかった高い有効性および低い毒性で、高い投薬量および送達スケジュールを最適化することが可能である。特許請求の範囲の方法は、以前には抵抗性の癌を有する個人において、サイズにおいて15%以上、好ましくは20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上の充実性腫瘍の縮小をもたらす(最長直径によって測定)。当業者であれば、腫瘍サイズを、総腫瘍体積、任意の次元での最大腫瘍サイズ、または複数の次元でのサイズ測定の組み合わせなどの様々な異なる技法によって測定することができることを了解するであろう。これは、コンピュータ断層撮影法、超音波診断法、および/または陽電子放射型断層撮影法などの標準的な放射線的手順を伴ってよい。サイズを測定する手段は、好ましくは、腫瘍の除去を結果としてもたらすイムノコンジュゲート処置での腫瘍サイズの縮小傾向の観察よりも重要性は低い。
【0022】
本イムノコンジュゲートは定期的な大量注射として投与することができる一方で、別の実施形態では、本イムノコンジュゲートを抗体-薬物コンジュゲートの連続注入によって投与することができる。血中におけるCmaxを増大させ、かつ本イムノコンジュゲートのPKを延長するために、連続的な注入を、例えば、留置カテーテルによって投与することができる。そのようなデバイスは当技術分野で公知であり、HICKMAN(登録商標)、BROVIAC(登録商標)、またはPORT-A-CATH(登録商標)カテーテル(例えば、Skolnik et al., Ther Drug Monit 32:741-48, 2010を参照されたい)などであり、任意のそのような公知の留置カテーテルを使用することができる。様々な連続注入ポンプも当技術分野で公知であり、任意のそのような公知の注入ポンプを使用することができる。連続注入での投薬量範囲は、1日あたり0.1から3.0mg/kgの間であってよい。より好ましくは、これらのイムノコンジュゲートは、静脈内注入によって、2~5時間、より好ましくは2~3時間の比較的短時間にわたって投与することができる。
【0023】
特に好ましい実施形態では、本イムノコンジュゲートおよび投薬スケジュールは、標準的な療法に対して耐性のある患者において有効であり得る。例えば、hMN-14-SN-38イムノコンジュゲートを、SN-38の親薬剤であるイリノテカンでの先行する治療に応答していない患者に投与することができる。意外にも、このイリノテカン耐性患者は、hMN-14-SN-38に対して部分的または完全な応答さえ示し得る。腫瘍組織を特異的にターゲティングする本イムノコンジュゲートの能力は、この治療薬の改善されたターゲティングおよび増強された送達によって、腫瘍耐性を克服し得る。別法では、hMN-14などの抗CEACAM5イムノコンジュゲートを、hMN-3またはhMN-15などの抗CEACAM6イムノコンジュゲートと同時投与することができる。他の抗体-SN-38イムノコンジュゲートも、別の標準的な治療処置と比較して、類似した有効性の改善および/または毒性の減少を示し得、また、異なるSN-38イムノコンジュゲートの組み合わせ、または放射性核種、毒素、もしくは他の薬物とコンジュゲートさせた抗体と組み合わせたSN-38-抗体コンジュゲートも、なおさらなる有効性の改善および/または毒性の減少をもたらし得る。具体的な好ましい対象は、転移性結腸癌患者、三種陰性乳癌患者、HER+、ER+、プロゲステロン+の乳癌患者、転移性非小細胞肺癌(NSCLC)患者、転移性膵臓癌患者、転移性腎細胞癌患者、転移性胃癌患者、転移性前立腺癌患者、または転移性小細胞肺癌患者であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】MAb-CL2A-SN-38コンジュゲートでの、Capan1ヒト膵臓癌を有する無胸腺ヌードマウスのインビボでの治療を示すグラフである。
図2】MAb-CL2A-SN-38コンジュゲートでの、BxPC3ヒト膵臓癌を有する無胸腺ヌードマウスのインビボでの治療を示すグラフである。
図3】MN-14-CL2A-SN-38コンジュゲートでの、LS174Tヒト結腸癌を有する無胸腺ヌードマウスのインビボでの治療を示すグラフである。
図4】hMN14-CL-SN-38で処置された、GW-39肺転移性疾患を有するマウスの生存曲線を示すグラフである。
図5】いくつかの充実性腫瘍-異種移植片疾患モデルにおけるhRS7-SN-38ADCの治療有効性を示すグラフである。hRS7-CL2-SN-38およびhRS7-CL2A-SN-38ADC処置の有効性を、ヒト非小細胞肺腫瘍異種移植片、結腸直腸腫瘍異種移植片、膵臓腫瘍異種移植片、および扁平上皮細胞肺腫瘍異種移植片を有するマウスにおいて研究した。ADCおよび対照はすべて、示された量で投与された(1用量あたりSN-38の量として表示;長い矢印=コンジュゲート注射、短い矢印=イリノテカン注射)。(A)Calu-3腫瘍を有するマウス(N=5~7)に、hRS7-CL2-SN-38を4日毎に合計4回の注射で注射した(4d×4)。(B)COLO205腫瘍を有するマウス(N=5)に、8回(q4d×8)ADCを、または2日毎に合計5回(q2d×5)の注射でイリノテカンのMTDを注射した。(C)Capan-1(N=10)または(D)BxPC-3腫瘍を有するマウス(N=10)を週2回で4週間にわたって、示されている薬剤で処置した。(E)週2回で4週間にわたって施されるADCに加えて、SK-MES-1腫瘍を有するマウス(N=8)に、CPT-11のMTDを投与した(q2d×5)。
図6】皮下Ramosモデルにおける、エプラツズマブ(Emab)-SN-38およびベルツズマブ(Vmab)-SN-38コンジュゲートの比較有効性を示すグラフである。平均して約0.35cm(0.20~0.55cm)の腫瘍を有するヌードマウス(1群あたりN=10)に、各コンジュゲート0.25mgまたは0.5mgを週2回で4週間にわたって投与した。
図7】皮下Ramos腫瘍を有するヌードマウスにおける、無関係のラベツズマブ(Lmab)-SN-38コンジュゲート(点線)に対してEmab抗CD22-SN-38コンジュゲート(実線)の特異性を示すグラフである。動物に、これらのコンジュゲートの用量を週2回で4週間にわたって腹腔内で施した。A、B、およびCは、1回の用量あたり各コンジュゲート75、125、および250μgを施された(22gの平均体重に対して、それぞれ54.5、91、および182μg/kgのSN-38)。0.4cmの平均サイズで出発した腫瘍が3.0cmまで進行する時間(TTP)に基づく生存期間。Emab-SN-38とLmab-SN-38コンジュゲートでの中央生存期間(表示)を比較するP値が、各パネルに示されている。C、イリノテカンの週1回腹腔内注射(6.5μg/用量;Emab-SN-38コンジュゲートの250μg用量とほぼ同じSN-38当量)を施された別の群の動物での生存期間曲線(灰色の実線)。
図8】IMMU-130(ラベツズマブ-NS-38)の投与前の、患者の先行する処置の履歴を示す図である。先行する処置には、ステージIV CRC大腸切除/肝切除)(葉の一部)、肝臓転移の高周波アブレーション療法、肺転移の楔状切除、ならびにイリノテカン/オキサリプラチン、Folfirinox、Folfirinox+ベバシズマブ、ベバシズマブ+5-FU/ロイコボリン、FolFiri、Folfiri+セツキシマブ、およびセツキシマブ単独での化学療法が含まれた。患者は、隔週で合計17回の処置投与で、ゆっくりとしたIV注入によって16mg/kgのIMMU-132の用量を投与された。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
定義
以下の説明では、いくつかの用語を使用し、以下の定義を、特許請求の範囲に記載された対象の理解を容易にするために提供する。本明細書において明確に定義されていない用語は、その通常の普通の意味に従って使用される。
【0026】
別段に規定されていない限り、「a」または「an」は「1つまたは複数」を意味する。
【0027】
という用語は、本明細書では、ある値の±10パーセント(10%)を意味するために使用される。例えば、「約100」は、90から110の間の任意の数を指す。
【0028】
抗体は、本明細書で使用する場合、全長(すなわち、通常の免疫グロブリン遺伝子断片組換えプロセスによって天然に存在するか、または形成される)免疫グロブリン分子(例えば、IgG抗体)、または抗体断片などの免疫グロブリン分子の抗原結合性部分を指す。抗体または抗体断片は、特許請求の範囲に記載された対象の範囲内でコンジュゲートされていてよいか、または別段に誘導体化されていてよい。そのような抗体には、これらだけに限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4(およびIgG4サブフォーム)、さらにはIgAアイソタイプが含まれる。以下で使用する場合、略語「MAb」は、抗体、抗体断片、モノクローナル抗体、または多重特異性抗体を指すために互換的に使用され得る。
【0029】
抗体断片は、上記で挙げたIgG4の半分子を含めたF(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、Fv、scFv(単一鎖Fv)、単一ドメイン抗体(DABまたはVHH)などの抗体の一部である(van der Neut Kolfschotenet al.(Science 2007; 317(14 Sept):1554-1557)。構造にかかわらず、使用される抗体断片は、インタクトな抗体によって認識されるのと同じ抗原と結合する。用語「抗体断片」には他にも、特異的な抗原に結合して複合体を形成することによって、抗体と同様に作用する合成または遺伝子操作されたタンパク質が含まれる。例えば、抗体断片には、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、ならびに軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって接続している組換え単一鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)などの可変領域からなる単離断片が含まれる。これらの断片は、多価および/または多重特異性結合形態を得るために、種々の方法でコンストラクトされ得る。
【0030】
裸の抗体は、一般に、治療薬にコンジュゲートされていない抗体全体である。裸の抗体11は、治療的および/または細胞毒性作用を、例えば、補体結合(CDC)およびADCC(抗体依存的細胞傷害性)などのFc依存的機能によって示し得る。しかしながら、アポトーシス、抗血管新生、抗転移性活性、抗接着活性、ヘテロタイプまたはホモタイプ接着の阻害、およびシグナル伝達経路の干渉などの他の機構も、治療効果をもたらし得る。裸の抗体には、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体、およびそれらの断片などのポリクローナルおよびモノクローナル抗体、天然に存在する抗体、または組換え抗体が含まれる。場合によっては、「裸の抗体」は、「裸の」抗体断片を指すこともある。本明細書において定義する場合、「裸の」は、「コンジュゲートされていない」と同意語であり、治療薬に連結していない、またはコンジュゲートされていないことを意味する。
【0031】
キメラ抗体は、ある種に由来する抗体、好ましくは、げっ歯類抗体、より好ましくは、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含めた抗体重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインを含有するが、その抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のものに由来する、組換えタンパク質である。獣医学用途では、このキメラ抗体の定常ドメインは、霊長類、ネコ、またはイヌなどの他の種のものに由来してよい。
【0032】
ヒト化抗体は、ある種からの抗体;例えば、マウス抗体からのCDRが、マウス抗体の重鎖および軽鎖可変鎖から、ヒト重鎖および軽鎖可変ドメイン(フレームワーク領域)へと移されている組換えタンパク質である。この抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体のものに由来する。場合によっては、ヒト化抗体のフレームワーク領域の特異的な残基、特に、CDR配列に接触しているか、または近接している残基は、元のマウス、げっ歯類、類人霊長類、または他の抗体に由来する対応する残基で修飾、例えば、置き換えられていてよい。
【0033】
ヒト抗体は、例えば、抗原攻撃に応じてヒト抗体を産生するように「操作されている」トランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技法では、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座の要素が、内因性重鎖および軽鎖遺伝子座のターゲティング化撹乱を含有する胚性幹細胞系に由来するマウスの系に導入される。トランスジェニックマウスは、様々な抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、また、このマウスは、ヒト抗体分泌性ハイブリドーマを生産するために使用することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al., Nature Genet. 7:13 (1994)、Lonberg et al., Nature 368:856 (1994)、およびTaylor et al., Int. Immun. 6:579 (1994)に記載されている。完全ヒト抗体は、遺伝的または染色体トランスフェクション方法によって、さらには、ファージディスプレイ技術によってもコンストラクトすることができ、これらはすべて、当技術分野で公知である。例えば、ヒト抗体およびその断片をインビトロにおいて、非免疫化ドナーに由来する免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーから生産するためには、McCafferty et al., Nature 348:552-553 (1990)を参照されたい。この技法では、ヒト抗体可変ドメイン遺伝子を、糸状バクテリオファージのメジャーまたはマイナーなコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングし、ファージ粒子の表面上に機能性抗体断片としてディスプレイさせる。糸状粒子が、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するので、抗体の機能特性に基づく選択は、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択も結果としてもたらす。このように、このファージは、B細胞の特性の一部を模倣する。ファージディスプレイは、様々なフォーマットで行うことができ、それらの総説については、例えば、Johnson and Chiswell, Curret Opinion in Structural Biology 3:5564-571 (1993)を参照されたい。ヒト抗体を、インビトロで活性化されたB細胞によって生成することもできる。そのそれぞれの実施例部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照されたい。
【0034】
治療薬は、疾患の処置において有用な原子、分子、または化合物である。治療薬の例には、これらだけに限定されないが、抗体、抗体断片、イムノコンジュゲート、薬物、細胞傷害性薬物、アポトーシス促進薬、毒素、ヌクレアーゼ(DNAsesおよびRNAsesを含む)、ホルモン、免疫調節薬、キレート薬、ホウ素化合物、光活性薬または色素、放射性核種、オリゴヌクレオチド、干渉RNA、siRNA、RNAi、抗血管新生薬、化学療法薬、シオカイン(cyokines)、ケモカイン、プロドラッグ、酵素、結合性タンパク質もしくはペプチド、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0035】
イムノコンジュゲートは、治療薬にコンジュゲートされている抗体、抗原結合性抗体断片、抗体複合体、または抗体融合タンパク質である。コンジュゲーションは、共有結合性または非共有結合性であってよい。好ましくは、コンジュゲーションは共有結合性である。
【0036】
本明細書で使用する場合、抗体融合タンパク質という用語は、1個または複数の天然抗体、単鎖抗体、または抗体断片が、タンパク質またはペプチド、毒素、サイトカイン、ホルモンなどの別の部分に連結している組換え生産された抗原結合性分子である。ある種の好ましい実施形態では、融合タンパク質は、同じ抗原または異なる抗原上の同じエピトープ、異なるエピトープに結合し得る2個以上の同じか、または異なる抗体、抗体断片、または単鎖抗体を一緒に融合して含んでよい。
【0037】
免疫調節薬は、存在する場合に、身体の免疫系を改変する、抑制する、または刺激する治療薬である。典型的には、使用される免疫調節薬は、マクロファージ、樹状細胞、B細胞、および/またはT細胞などの免疫細胞を免疫応答カスケードにおいて増殖するか、または活性化するように刺激する。しかしながら、場合によっては、免疫調節薬は、免疫細胞の増殖または活性化を抑制することもある。本明細書に記載するとおりの免疫調節薬の例は、特異的な抗原と接触すると1つの細胞集団(例えば、初回刺激されたTリンパ球)によって放出される約5~20kDaの可溶性小分子タンパク質であり、細胞の間で、細胞間メディエーターとして作用するサイトカインである。当業者であれば理解するように、サイトカインの例には、リンホカイン、モノカイン、インターロイキン、ならびに腫瘍壊死因子(TNF)およびインターフェロンなどの数種の関連シグナル伝達分子が含まれる。ケモカインは、サイトカインのサブセットである。ある種のインターロイキンおよびインターフェロンは、T細胞または他の免疫細胞増殖を刺激するサイトカインの例である。例示的なインターフェロンには、インターフェロン-α、インターフェロン-β、インターフェロン-γ、およびインターフェロン-λが含まれる。
【0038】
CPTは、カンプトテシンの略語であり、本出願において使用する場合、CPTは、カンプトテシン自体、またはSN-38などのカンプトテシンの類似体もしくは誘導体を表す。カンプトテシンおよびその類似体の一部の構造は、ナンバリングが示され、環が文字A~Eで標識されている以下のチャート1の式1で示される。
【0039】
チャート1
【化1】
【0040】
カンプトテシンコンジュゲート
抗体または抗原結合性抗体断片に結合したカンプトテシン治療薬を含むイムノコンジュゲートを調製するための非限定的方法および組成物を以下に記載する。好ましい実施形態では、この薬物の溶解度を、既定のポリエチレングリコール(PEG)部分(すなわち、規定の数のモノマー単位を含有するPEG)を薬物と抗体との間に設置することによって増強するが、この際、既定のPEGは、好ましくは、モノマー単位1~30、より好ましくは、モノマー単位1~12を含有する低分子量のPEGである。
【0041】
好ましくは、第1のリンカーは、一方の末端に薬物を接続しており、かつ他方の末端では、アセチレンまたはアジド基で終了していてよい。この第1のリンカーは、アジドまたはアセチレン基を有する既定のPEG部分を一方の末端に、かつカルボン酸またはヒドロキシル基などの異なる反応性基を他方の末端に含んでよい。上記二官能性の規定のPEGは、アミノアルコールのアミン基に結合していてよく、かつ後者のヒドロキシル基は、カルボナートの形態の薬物上のヒドロキシル基に結合していてよい。別法では、上記既定の二官能性PEGの非アジド(またはアセチレン)部分は、任意選択により、L-アミノ酸またはポリペプチドのN末端に結合しており、その際、C末端は、アミノアルコールのアミノ基に結合しており、後者のヒドロキシ基は、カルボナートまたはカルバマートの形態の薬物のヒドロキシル基にそれぞれ結合している。
【0042】
抗体-カップリング基と、第1のリンカーのアジド(またはアセチレン)基、すなわち、アセチレン(またはアジド)に相補的な反応性基とを含む第2のリンカーは、薬物-(第1のリンカー)コンジュゲートと、アセチレン-アジド付加環化反応を介して反応して、疾患ターゲティング抗体とコンジュゲートするために有用な最終二官能性薬物生成物をもたらし得る。抗体カップリング性基は好ましくは、チオールまたはチオール-反応性基のいずれかである。
【0043】
SN-38などのCPT類似体を伴う薬物-リンカー前駆体の調製においてC-20カルボナートの存在下で、10-ヒドロキシル基を選択的に再生するための方法を以下に提供する。SN-38中のフェノール系ヒドロキシル、例えば、t-ブチルジメチルシリルまたはt-ブチルジフェニルシリルなどの、薬物中の反応性ヒドロキシル基のための他の保護基を使用することもでき、またこれらは、テトラブチルアンモニウムフルオリドによって、誘導体化薬物を抗体-カップリング部分に連結させる前に脱保護される。別法では、CPT類似体の10-ヒドロキシル基を、「BOC」以外のエステルまたはカルボナートとして保護して、その二官能性CPTが、この保護基の先行する脱保護を伴うことなく、抗体にコンジュゲートされるようにする。この保護基は、バイオコンジュゲートを投与した後に、生理学的pH条件下で容易に脱保護される。
【0044】
「クリックケミストリー」と称されるアセチレン-アジドカップリングでは、アジド部分はL2上にあってよく、アセチレンはL3上にあってよい。別法では、L2はアセチレンを含有してよく、L3はアジドを含有してよい。「クリックケミストリー」は、アセチレン部分とアジド部分との銅(+1)触媒付加環化反応を指すが(Kolb HC and Sharpless KB,Drug Discov Today 2003;8:1128~37)、クリックケミストリーの別の形態が公知であり、それを使用することもできる。クリックケミストリーは、水溶液中、ほぼ天然のpH条件で生じ、したがって、薬物コンジュゲーションに適している。クリックケミストリーの利点は、これが化学選択的であり、チオール-マレイミド反応などの他の周知のコンジュゲーションケミストリーを補足するものであることである。
【0045】
本出願は、抗体または抗体断片をターゲティング部分として使用することに焦点を当てているが、当業者は、コンジュゲートが抗体または抗体断片を含む場合、アプタマー、アビマー(avimer)、アフィボディ、またはペプチドリガンドなどの別のタイプのターゲティング部分も置換され得ることを理解するであろう。
【0046】
例示的な好ましい実施形態は、一般式2の薬物誘導体および抗体のコンジュゲートを対象とする。
MAb-[L2]-[L1]-[AA]-[A’]-薬物 (2)
[式中、MAbは、疾患ターゲティング抗体であり;L2は、抗体カップリング部分および1個または複数のアセチレン(またはアジド)基を含むクロスリンカーの構成要素であり;L1は、一方の末端にある、L2中のアセチレン(またはアジド)に相補的なアジド(またはアセチレン)と、他方の末端にあるカルボン酸またはヒドロキシル基などの反応性基を有する既定のPEGを含み;AAは、L-アミノ酸であり;mは、0、1、2、3、または4の値の整数であり;かつA’は、エタノールアミン、4-ヒドロキシベンジルアルコール、4-アミノベンジルアルコール、または置換もしくは非置換のエチレンジアミンの群から選択される追加のスペーサーである]。「AA」のLアミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンから選択される。A’基がヒドロキシルを含有するならば、これは、カルボナートまたはカルバマートの形態である薬物のヒドロキシル基またはアミノ基に、それぞれ連結される。
【0047】
式2の好ましい実施形態では、A’は、L-アミノ酸に由来する置換エタノールアミンであり、この際、このアミノ酸のカルボン酸基は、ヒドロキシメチル部分によって置き換えられている。A’は、次のL-アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンのいずれか1種に由来してもよい。
【0048】
式2の好ましい実施形態のコンジュゲートの例では、mは0であり、A’はL-バリノールであり、その薬物はSN-38によって例示される。その結果生じる構造は、式3で示される。
【化2】
【0049】
式2の好ましい実施形態のコンジュゲートの別の例では、mは1であり、誘導体化L-リシンによって表され、A’はL-バリノールであり、その薬物はSN-38によって例示される。その構造は、式4によって表される。
【化3】
【0050】
この実施形態では、アミド結合は、リシンアミノ基のための直交保護基を使用して、リシンなどのアミノ酸のカルボン酸とバリノールのアミノ基との間で初めに形成される。リシンのN末端上の保護基を、リシンの側鎖上の保護基はインタクトなままで除去し、そのN末端を、他方の末端にアジド(またはアセチレン)を含む既定のPEG上のカルボキシル基にカップリングさせる。次いで、バリノールのヒドロキシル基を、10-ヒドロキシ-保護されたSN-38の20-クロロホルマート誘導体に結合させて、この中間体を、抗体結合部分、さらに、クリックケミストリーに関係する相補的アセチレン(またはアジド)基を有するL2構成要素にカップリングさせる。最後に、リシン側鎖およびSN-38の両方にある保護基を除去すると、式3で示されるこの例の生成物が得られる。
【0051】
理論に拘束されることは望まないが、細胞内タンパク質分解の後に生成される低MWのSN-38生成物、すなわち、バリノール-SN-38カルボナートは、バリノールのアミノ基およびカルボナートのカルボニルを必要とする分子内環可を介して、インタクトなSN-38を遊離する追加の経路を有する。
【0052】
別の好ましい実施形態では、一般式2のA’はA-OHであり、この際、A-OHは、4-アミノベンジルアルコールまたは、C~C10アルキル基でベンジル位置で置換された置換の4-アミノベンジルアルコールなどの折り畳み可能な部分であり、後者は、そのアミノ基を介して、L-アミノ酸または4個までのL-アミノ酸部分を含むポリペプチドに結合し;この際、そのN末端は、抗体結合基で終了するクロスリンカーに結合される。
【0053】
好ましい実施形態の例を以下に示すが、この際、一般式(2)のA’のA-OH実施形態は、置換4-アミノベンジルアルコールに由来し、「AA」は、一般式(2)中でm=1を有する単一のL-アミノ酸からなり、薬物はSN-38で例示される。その構造を以下に表す(式5、MAb-CLX-SN-38とも称される)。AAの単一のアミノ酸は、次のL-アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンのいずれか1種から選択される。4-アミノベンジルアルコール部分(A’のA-OH実施形態)上の置換基Rは、水素、またはC1~C10アルキル基から選択されるアルキル基である。
【化4】
【0054】
単一のアミノ酸AAがL-リシンであり、R=Hであり、かつ薬物がSN-38によって例示される式5のMAb-CLX-SN-38の実施形態(式6;MAb-CL2A-SN-38とも称される)。
【化5】
【0055】
他の実施形態が、SN-38などの10-ヒドロキシ含有カンプトテシンの文脈内で可能である。薬物としてのSN-38の例では、この薬物の、より反応性な10-ヒドロキシ基は、20-ヒドロキシル基に影響を及ぼすことなく、誘導体化される。一般式2の範囲内では、A’は、置換エチレンジアミンである。この実施形態の例は、以下の式「7」によって表され、この際、SN-38のフェノール性ヒドロキシル基はカルバマートとして、置換エチレンジアミンで誘導体化され、ジアミンの他方のアミンは、カルバマートとして4-アミノベンジルアルコールで誘導体化され、後者のアミノ基は、Phe-Lysジペプチドに結合する。この構造(式7)では、RおよびR’は、独立に、水素またはメチルである。これは、R=R’=メチルである場合、MAb-CL17-SN-38またはMAb-CL2E-SN-38とも称される。
【化6】
【0056】
好ましい実施形態では、AAは、細胞内ペプチダーゼによって切断可能なポリペプチド部分、好ましくはジペプチド、トリペプチド、またはテトラペプチドを含む。例は:Ala-Leu、Leu-Ala-Leu、およびAla-Leu-Ala-Leu(配列番号162)(Trouet et al.,1982)である。
【0057】
別の好ましい実施形態では、このコンジュゲートのL1構成要素は、繰り返しモノマー単位1~30を有する既定のポリエチレングリコール(PEG)スペーサーを含有する。さらなる好ましい実施形態では、PEGは、繰り返しモノマー単位1~12を有する既定のPEGである。PEGの導入は、市販のヘテロ二官能性PEG誘導体を使用することを伴い得る。このヘテロ二官能性PEGは、アジドまたはアセチレン基を含有し得る。繰り返しモノマー単位8を含有し、「NHS」がスクシンイミジルであるヘテロ二官能性の既定のPEGの例を以下の式8に示す:
【化7】
【0058】
好ましい実施形態では、L2は、2~40個、しかし、好ましくは、2~20個、より好ましくは、2~5個の範囲の複数のアセチレン(またはアジド)基および単一の抗体結合部分を有する。
【0059】
複数の薬物分子および単一の抗体-結合部分を含有する抗体の代表的なSN-38コンジュゲートを以下に示す。この構造の「L2」構成要素は、2個のアセチレン基に結合しており、その結果、2個のアジド結合SN-38分子の結合が生じている。MAbへの結合は、スクシンイミドとして表される。
【化8】
【0060】
好ましい実施形態では、この二官能性薬物がチオール反応性部分を抗体結合基として含有する場合、チオール化試薬を使用して、抗体上のチオールを、抗体のリシン基上に作成する。MAbのリシン基を修飾することによって、抗体上にチオール基を導入するための方法は、当技術分野で周知である(Wong in Chemistry of protein conjugation and cross-linking, CRC Press, Inc., Boca Raton, FL (1991)、pp20-22)。別法では、ジチオスレイトール(DTT)などの還元剤を使用して、抗体上の鎖間ジスルフィド結合を穏やかに還元することで(Willner et al., Bioconjugate Chem. 4:521~527 (1993))、7~10個のチオールを抗体上に作出することができ、これは、抗原結合性領域から離れたMAbの鎖間領域に複数の薬物部分を組み込むという利点を有する。より好ましい実施形態では、SN-38と還元されたジスルフィドスルフヒドリル基との結合は、抗体分子1個あたり共有結合したSN-38部分6個を有する抗体-SN-38イムノコンジュゲートの形成を結果としてもたらす。システインを組み込まれた抗体の使用など、薬物または他の治療薬を結合させるためにシステイン残基を得る他の方法が公知である(その実施例部分が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,521,541号を参照されたい)。
【0061】
別の好ましい実施形態では、化学療法薬部分は、ドキソルビシン(DOX)、エピルビシン、モルホリノドキソルビシン(モルホリノ-DOX)、シアノモルホリノ-ドキソルビシン(シアノモルホリノ-DOX)、2-ピロリノ-ドキソルビシン(2-PDOX)、Pro-2PDOX、CPT、10-ヒドロキシカンプトテシン、SN-38、トポテカン、ラルトテカン、9-アミノカンプトテシン、9-ニトロカンプトテシン、タキサン、ゲルダナマイシン、アンサマイシン、およびエポチロンからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、化学療法薬部分はSN-38である。好ましくは、好ましい実施形態のコンジュゲートでは、抗体は、少なくとも1個の化学療法薬部分;好ましくは1~約12個の化学療法薬部分;最も好ましくは、約6~約12個の化学療法薬部分に連結している。
【0062】
さらに、好ましい実施形態では、リンカー構成要素「L2」は、上記抗体の1個または複数のリシン側鎖アミノ基に導入されたチオール反応性残基と反応するチオール基を含む。そのような場合、その抗体は、当技術分野で十分に記載されている手順によって、マレイミド、ビニルスルホン、ブロモアセトアミド、またはヨードアセトアミドなどのチオール反応性基で予め誘導体化されている。
【0063】
この研究の状況において、CPTが追加的に10-ヒドロキシル基を有するCPT薬物-リンカーを調製することができるプロセスが意外にも発見された。このプロセスは、これだけに限定されないが、10-ヒドロキシル基をt-ブチルオキシカルボニル(BOC)誘導体として保護すること、続いて、薬物-リンカーコンジュゲートの最後から二番目の中間体を調製することを伴う。通常、BOC基の除去は、トリフルオロ酢酸(TFA)などの強酸での処理を必要とする。これらの条件下では、除去すべき保護基を含有するCPT20-O-リンカーカルボナートは開裂も受け、それによって、未修飾のCPTを生じ得る。実際に、リンカー分子のリシン側鎖のために穏やかに除去可能なメトキシトリチル(MMT)保護基を使用する理論的根拠は、当技術分野で宣言されているとおり、この可能性を明らかに回避するものであった(Walker et al., 2002)。フェノール性BOC保護基の選択的な除去は、反応を短時間にわたって、最適には3~5分間にわたって実施することによって可能であることが発見された。これらの条件下では、主な生成物は、10-ヒドロキシ位の「BOC」は除去されているが、「20」位のカルボナートはインタクトである生成物であった。
【0064】
別の手法は、CPT類似体の10-ヒドロキシ位を「BOC」以外の基で保護して、最終生成物が、10-OH保護基を脱保護することを必要とせずに、抗体にコンジュゲーションする用意ができているようにすることを伴う。10-OHをフェノール性カルボナートまたはフェノール性エステルに変換する10-ヒドロキシ保護基は、このコンジュゲートをインビボ投与した後に、生理学的pH条件によって、またはエステラーゼによって容易に脱保護される。生理学的条件下での10-ヒドロキシカンプトテシンの20位の第3級カルボナートに対する10位のフェノール性カルボナートの急速な除去は、Heらによって記載されている(He et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry 12: 4003-4008 (2004))。SN-38上の10-ヒドロキシ保護基は「COR」であってよく、式中、Rは「N(CH-(CH-」などの置換アルキル(ここで、nは1~10であり、末端アミノ基は、任意選択により、水溶解度を増強するための第四級塩である)、もしくは「CH-(CH-」などの単純なアルキル残基(ここで、nは0~10である)であるか、または「CH-(CH)n-O-」(ここで、nは0~10である)、もしくは「N(CH-(CH-O-」(ここで、nは2~10である)、もしくは「RO-(CH-CH-O)-CH-CH-O-」(ここで、Rは、エチルまたはメチルであり、nは0~の値の整数である)などのアルコキシ部分であってよい。これらの10-ヒドロキシ誘導体は、最終誘導体がカルボナートであるべきならば、選択された試薬のクロロホルマートで処理することによって容易に調製される。典型的には、SN-38などの10-ヒドロキシ含有カンプトテシンを、ジメチルホルムアミド中、塩基としてトリエチルアミンを使用して、モル当量のクロロホルマートで処理する。これらの条件下では、20-OH一は、影響を受けない。10-O-エステルを形成するためには、選択された試薬の酸塩化物を使用する。
【0065】
一般式2の薬物誘導体および抗体のコンジュゲート(記述子L2、L1、AA、およびA-Xは、前のセクションで記載したとおりである)を調製する好ましいプロセスでは、二官能性薬物部分、[L2]-[L1]-[AA]-[A-X]-薬物を初めに調製し、続いて、この二官能性物部分を抗体(本明細書では「MAb」と示す)にコンジュゲートさせる。
【0066】
一般式2の薬物誘導体および抗体のコンジュゲート(記述子L2、L1、AA、およびA-OHは、前のセクションで記載したとおりである)を調製する好ましいプロセスでは、初めにA-OHをAAのC末端に、アミド結合を介して連結させ、続いて、AAのアミン末端をL1のカルボン酸基にカップリングさせることによって、二官能性薬物部分を調製する。AAが存在しない場合には(すなわち、m=0)、A-OHは、L1に、アミド結合を介して直接結合される。クロスリンカー、[L1]-[AA]-[A-OH]は、薬物のヒドロキシルまたはアミノ基に結合され、続いて、クリックケミストリーを介してL1およびL2中のアジド(またはアセチレン)とアセチレン(またはアジド)基との間の反応を利用することによって、L1部分に結合される。
【0067】
一実施形態では、この抗体はモノクローナル抗体(MAb)である。他の実施形態では、この抗体は、多価および/または多重特異性MAbであってよい。この抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒトモノクローナル抗体であってよく、上記抗体は、インタクトであるか、断片(Fab、Fab’、F(ab)、F(ab’))、もしくはサブ断片(単鎖コンストラクト)形態であってよいか、またはIgG1、IgG2a、IgG3、IgG4、IgAアイソタイプ、もしくはそれらの副分子のものであってよい。
【0068】
好ましい実施形態では、この抗体は、癌または悪性細胞上で発現される抗原または抗原のエピトープに結合する。癌細胞は好ましくは、造血性腫瘍、癌、肉腫、黒色腫、またはグリア腫瘍からの細胞である。本発明によって処置されるべき好ましい悪性疾患は、悪性充実性腫瘍または造血性新生物である。
【0069】
好ましい実施形態では、MAb-薬物コンジュゲートがその受容体に結合して、細胞へと内部移行した後に、細胞内切断可能な部分は切断され得、特に、エステラーゼおよびペプチダーゼによって切断され得る。
【0070】
一般的な抗体技法
実質的にあらゆるターゲット抗原に対するモノクローナル抗体を調製する技法が、当技術分野で周知である。例えば、Koehler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)、ならびにColigan et al.eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, VOL. 1, pages 2.5.1-2.6.7(John Wiley & Sons 1991)を参照されたい。簡単には、マウスに、抗原を含む組成物を注射し、Bリンパ球を得るために膵臓を除去し、そのBリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを生産し、このハイブリドーマをクローニングし、当該抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、抗体をハイブリドーマ培養物から単離することによって、モノクローナル抗体を得ることができる。
【0071】
様々な十分に確立された技法によって、MAbは、ハイブリドーマ培養物から単離および精製することができる。そのような単離技法には、プロテインAまたはプロテインGセファロースでのアフィニティークロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが含まれる。例えば、Coliganの2.7.1~2.7.12頁および2.9.1~2.9.3頁を参照されたい。他にも、Baines et al., ”Purification of Immunoglobulin G (IgG)”, in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10、pages 79-104頁(The Humana Press, Inc. 1992)を参照されたい。
【0072】
免疫原に対して抗体が最初に生じた後に、その抗体を配列決定し、その後、組換え技法によって調製することができる。マウス抗体および抗体断片のヒト化およびキメラ化は、以下で検討するとおり、当業者に周知である。
【0073】
当業者は、特許請求の範囲に記載の方法および組成物は、当技術分野で公知の広範囲の様々な抗体のいずれも利用することができることを了解するであろう。使用される抗体は、広範囲の様々な公知の供給源から商業的に得ることもできる。例えば、様々な抗体分泌ハイブリドーマ系を、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Tissue Culture Collection;ATCC、Manassas、VA)から入手することができる。これらだけに限定されないが、腫瘍関連抗原を含めた様々な疾患ターゲットに対する多数の抗体が、ATCCに寄託されており、かつ/または可変領域配列が公開されており、かつ、特許請求の範囲に記載の方法および組成物において使用するために利用することができる。例えば、米国特許第7,312,318号;同第7,282,567号;同第7,151,164号;同第7,074,403号;同第7,060,802号;同第7,056,509号;同第7,049,060号;同第7,045,132号;同第7,041,803号;同第7,041,802号;同第7,041,293号;同第7,038,018号;同第7,037,498号;同第7,012,133号;同第7,001,598号;同第6,998,468号;同第6,994,976号;同第6,994,852号;同第6,989,241号;同第6,974,863号;同第6,965,018号;同第6,964,854号;同第6,962,981号;同第6,962,813号;同第6,956,107号;同第6,951,924号;同第6,949,244号;同第6,946,129号;同第6,943,020号;同第6,939,547号;同第6,921,645号;同第6,921,645号;同第6,921,533号;同第6,919,433号;同第6,919,078号;同第6,916,475号;同第6,905,681号;同第6,899,879号;同第6,893,625号;同第6,887,468号;同第6,887,466号;同第6,884,594号;同第6,881,405号;同第6,878,812号;同第6,875,580号;同第6,872,568号;同第6,867,006号;同第6,864,062号;同第6,861,511号;同第6,861,227号;同第6,861,226号;同第6,838,282号;同第6,835,549号;同第6,835,370号;同第6,824,780号;同第6,824,778号;同第6,812,206号;同第6,793,924号;同第6,783,758号;同第6,770,450号;同第6,767,711号;同第6,764,688号;同第6,764,681号;同第6,764,679号;同第6,743,898号;同第6,733,981号;同第6,730,307号;同第6,720,155号;同第6,716,966号;同第6,709,653号;同第6,693,176号;同第6,692,908号;同第6,689,607号;同第6,689,362号;同第6,689,355号;同第6,682,737号;同第6,682,736号;同第6,682,734号;同第6,673,344号;同第6,653,104号;同第6,652,852号;同第6,635,482号;同第6,630,144号;同第6,610,833号;同第6,610,294号;同第6,605,441号;同第6,605,279号;同第6,596,852号;同第6,592,868号;同第6,576,745号;同第6,572号;同第856号;同第6,566,076号;同第6,562,618号;同第6,545,130号;同第6,544,749号;同第6,534,058号;同第6,528,625号;同第6,528,269号;同第6,521,227号;同第6,518,404号;同第6,511,665号;同第6,491,915号;同第6,488,930号;同第6,482,598号;同第6,482,408号;同第6,479,247号;同第6,468,531号;同第6,468,529号;同第6,465,173号;同第6,461,823号;同第6,458,356号;同第6,455,044号;同第6,455,040、6,451,310号;同第6,444,206’号、同第6,441,143号;同第6,432,404号;同第6,432,402号;同第6,419,928号;同第6,413,726号;同第6,406,694号;同第6,403,770号;同第6,403,091号;同第6,395,276号;同第6,395,274号;同第6,387,350号;同第6,383,759号;同第6,383,484号;同第6,376,654号;同第6,372,215号;同第6,359,126号;同第6,355,481号;同第6,355,444号;同第6,355,245号;同第6,355,244号;同第6,346,246号;同第6,344,198号;同第6,340,571号;同第6,340,459号;同第6,331,175号;同第6,306,393号;同第6,254,868号;同第6,187,287号;同第6,183,744号;同第6,129,914号;同第6,120,767号;同第6,096,289号;同第6,077,499号;同第5,922,302号;同第5,874,540号;同第5,814,440号;同第5,798,229号;同第5,789,554号;同第5,776,456号;同第5,736,119号;同第5,716,595号;同第5,677,136号;同第5,587,459号;同第5,443,953号、同第5,525,338号を参照されたい(これらのそれぞれの実施例セクションは、参照により本明細書に組み込まれる)。これらは例示に過ぎず、広範囲の様々な他の抗体およびそれらのハイブリドーマが当技術分野で公知である。当業者は、ほぼあらゆる疾患関連抗原に対する抗体配列または抗体分泌ハイブリドーマを、該当する選択された疾患関連ターゲットに対する抗体についてATCC、NCBI、および/またはUSPTOデータベースを簡単に検索することによって得ることができることを了解するであろう。当技術分野で周知の標準的な技術を使用して、クローニングされた抗体の抗原結合性ドメインを増幅し、切除し、発現ベクターに連結し、適応させた宿主細胞に形質移入し、かつタンパク質産生のために使用することができる。本明細書において開示されている技法を使用して、単離された抗体をカンプトテシンなどの治療薬にコンジュゲートさせることができる。
【0074】
キメラ抗体およびヒト化抗体
キメラ抗体は、例えば、ヒト抗体の可変領域が、マウス抗体の相補性決定領域(CDR)を含めたマウス抗体の可変領域によって置き換えられている組換えタンパク質である。キメラ抗体は、対象に投与した場合に、免疫原性の低下および安定性の上昇を示す。キメラ抗体をコンストラクトするための方法は、当技術分野で周知である(例えば、Leung et al., 1994, Hybridoma 13:469)。
【0075】
キメラモノクローナル抗体は、マウスCDRをマウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変鎖から、ヒト抗体の対応する可変ドメインへと移すことによってヒト化することができる。キメラモノクローナル抗体中のマウスフレームワーク領域(FR)も、ヒトFR配列で置き換えられる。ヒト化モノクローナルの安定性および抗原特異性を保存するために、1個または複数のヒトFR残基を、マウス対応残基によって置き換えることができる。ヒト化モノクローナル抗体は、対象を治療的に処置するために使用することができる。ヒト化モノクローナル抗体を生産するための技法は、当技術分野で周知である(例えば、Jones et al., 1986, Nature, 321:522; Riechmann et al., Nature, 1988, 332:323; Verhoeyen et al., 1988, Science, 239:1534; Carter et al., 1992, Proc. Nat’l Acad. Sci. USA, 89:4285; Sandhu, Crit. Rev. Biotech., 1992, 12:437; Tempest et al., 1991, Biotechnology 9:266; Singer et al., J. Immun., 1993, 150:2844を参照されたい)。
【0076】
他の実施形態は、非ヒト霊長類抗体に関してもよい。ヒヒにおいて治療的に有用な抗体を生じさせるための一般的な技法は、例えば、Goldenberg et al., WO91/11465(1991)およびLosman et al., Int. J. Cancer 46: 310 (1990)において見出すことができる。別の実施形態では、抗体は、ヒトモノクローナル抗体であってよい。このような抗体は、以下で検討するとおりの抗原攻撃に応じて特異的ヒト抗体を産生するように操作されているトランスジェニックマウスから得ることができる。
【0077】
ヒト抗体
組み合わせ手法またはヒト免疫グロブリン遺伝子座で形質転換されたトランスジェニック動物のいずれかを使用して完全ヒト抗体を生産する方法は、当技術分野で公知である(例えば、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれるMancini et al., 2004, New Microbiol. 27:315~28; Conrad and Scheller, 2005, Comb. Chem. High Throughput Screen. 8:117-26; Brekke and Loset, 2003, Curr. Opin. Phamacol. 3:544~50)。そのような完全ヒト抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体よりもさらに低い副作用を示し、また、本質的に内因性ヒト抗体としてインビボで機能すると予測される。ある種の実施形態では、特許請求の範囲に記載の方法および手順は、そのような技法によって生産されたヒト抗体を利用することができる。
【0078】
選択肢の1つでは、ファージディスプレイ技法を使用して、ヒト抗体を作出することができる(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるDantas-Barbosa et al., 2005, Genet. Mol. Res. 4:126~40)。ヒト抗体は、健常なヒトから、または癌などの特定の病態を示すヒトから作出され得る(Dantas-Barbosa et al., 200)。罹患した個体からヒト抗体をコンストラクトする利点は、循環抗体レパートリーが、疾患関連抗原に対する抗体にバイアスされ得ることである。
【0079】
この方法論の非限定的例の1つでは、Dantas-Barbosa et al. (2005)は、骨肉腫患者に由来するヒトFab抗体断片のファージディスプレイライブラリをコンストラクトした。一般に、すべてのRNAが、循環血液リンパ球から得られた(同書)。組換えFabが、μ、γ、およびκ鎖抗体レパートリーからクローニングされ、ファージディスプレイライブラリに挿入された(同書)。RNAがcDNAに転換され、重鎖および軽鎖免疫グロブリン配列に対する特異的プライマーを使用して、Fab cDNAライブラリを作製するために使用された(参照によって本明細書に組み込まれるMarks et al., 1991, J. Mol. Biol. 222:581~97)。ライブラリのコンストラクションは、Andris-Widhopf et al.(参照によって本明細書に組み込まれる2000, In: Phage Display Laboratory Manual, Barbas et al.(eds.), 1st edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY pp.9.1-9.22)に従って行われた。最終Fab断片が、制限エンドヌクレアーゼで分解され、ファージディスプレイを作製するためのバクテリオファージゲノムに挿入された。そのようなライブラリは、標準的なファージディスプレイ法によってスクリーニングされ得る。当業者は、この技法は例示に過ぎず、ファージディスプレイによってヒト抗体または抗体断片を作製およびスクリーニングするための任意の公知の方法を利用することができることを了解するであろう。
【0080】
別の選択肢では、ヒト抗体を生産するために遺伝子操作されているトランスジェニック動物を使用して、上記で検討したとおりの標準的な免疫化プロトコルを使用することで、本質的にあらゆる免疫原性ターゲットに対する抗体を生成することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al., Nature Genet. 7:13 (1994)、Lonberg et al., Nature 368:856 (1994)、およびTaylor et al., Int. Immun. 6:579 (1994)によって記載されている。そのような系の非限定的例は、Abgenix(Fremont、CA)製のXENOMOUSEマウス(登録商標)(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるGreen et al., 1999, J. Immunol. Methods 231:11~23)である。XENOMOUSE(登録商標)および類似した動物では、マウス抗体遺伝子は不活性化されており、機能性ヒト抗体遺伝子に置き換えられている一方で、マウス免疫系の残りは、インタクトなままである。
【0081】
XENOMOUSE(登録商標)は、可変領域配列の大部分を含めたヒトIgHおよびIgカッパ遺伝子座の一部をアクセサリー遺伝子および調節配列と一緒に含む生殖細胞系設計されたYAC(酵母人工染色体)で形質転換された。ヒト可変領域レパートリーは、抗体産生B細胞を作出するために使用され得、これは、公知の技法により、ハイブリドーマにプロセシングされ得る。ターゲット抗原で免疫化されたXENOMOUSE(登録商標)は、正常な免疫応答によって、ヒト抗体を産生するはずであり、これは、上記で検討した標準的な技術によって、収集および/または生産され得る。それぞれ種々の群の抗体を産生することができるXENOMOUSE(登録商標)の様々な株を利用することができる。遺伝子導入で産生されたヒト抗体は、正常なヒト抗体の薬物動態を保持しながら、治療上の可能性を有することが判明している(Green et al., 1999)。当業者は、特許請求の範囲に記載の組成物および方法は、XENOMOUSE(登録商標)システムの使用に限定されず、むしろ、ヒト抗体を産生するように遺伝子操作されている任意のトランスジェニック動物を利用することができることを了解するであろう。
【0082】
抗体断片の作製
特許請求の範囲に記載の方法および/または組成物の一部の実施形態は、抗体断片に関し得る。例えば、慣用の方法で抗体全体をペプシンまたはパパイン分解することによって、そのような抗体断片を得ることができる。例えば、ペプシンで抗体を酵素的開裂して、F(ab’)と表示される5S断片を得ることによって、抗体断片を作製することができる。チオール還元剤および、任意選択により、ジスルフィド結合の分解の結果生じるスルフヒドリル基のためのブロック基を使用することで、この断片をさらに切断して、3.5S Fab’一価断片を作製することができる。別法では、ペプシンを使用する酵素的開裂によって、2個の一価Fab断片および1個のFc断片が作製される。抗体断片を作製するための例示的な方法は、米国特許第4,036,945号;米国特許第4,331,647号;Nisonoff et al., 1960, Arch. Biochem. Biophys., 89:230; Porter, 1959, Biochem. J., 73:119; Edelman et al., 1967, METHODS IN ENZYMOLOGY, page 422(Academic Press)、およびColigan et al.(eds.)、1991, CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, (John Wiley & Sons)に開示されている。
【0083】
その断片が、インタクト抗体によって認識される抗原に結合する限り、一価軽-重鎖断片を形成するための重鎖の分離、断片のさらなる切断、または他の酵素的、化学的、もしくは遺伝的技法などの、抗体を切断する他の方法も使用することができる。例えば、Fv断片は、VおよびV鎖の結合を含む。この結合は、Inbar et al., 1972, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA, 69:2659に記載されているとおり、非共有結合性であってよい。別法では、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって連結していてよいか、またはグルタルアルデヒドなどの薬品によって架橋していてよい。Sandhu, 1992, Crit. Rev. Biotech., 12:437を参照されたい。
【0084】
好ましくは、Fv断片は、ペプチドリンカーによって接続しているVおよびV鎖を含む。オリゴヌクレオチドリンカー配列によって接続しているVおよびVドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子をコンストラクトすることによって、これらの単鎖抗原結合性タンパク質(scFv)は調製される。この構造遺伝子を発現ベクターに挿入し、これを続いて、大腸菌などの宿主細胞に導入する。この組換え宿主細胞は、2個のVドメインを結合するリンカーペプチドを有する単一ポリペプチド鎖を合成する。scFvを作製するための方法は、当技術分野で周知である。Whitlow et al., 1991, Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:97; Bird et al., 1988, Science, 242:423; 米国特許第4,946,778号; Pack et al., 1993, Bio/Technology, 11:1271、およびSandhu, 1992, Crit. Rev. Biotech., 12:437を参照されたい。
【0085】
抗体断片の別の形態は、時に単一鎖抗体と称される単一ドメイン抗体(dAb)である。単一-ドメイン抗体を作製するための技法は、当技術分野で周知である(例えば、Cossins et al., Protein Expression and Purification, 2007, 51:253~59; Shuntao et al., Molec Immunol 2006, 43:1912-19; Tanha et al., J. Biol. Chem. 2001, 276:24774-780を参照されたい)。他のタイプの抗体断片は、1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を含み得る。該当する抗体のCDRをコードする遺伝子をコンストラクトすることによって、CDRペプチド(「最小認識単位」)は得ることができる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって、そのような遺伝子は調製される。Larrick et al., 1991, Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106; Ritter et al.(eds.)、1995, MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, pages 166-179頁(Cambridge University Press); Birch et al.(eds.)、1995, MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS, pages 137-185(Wiley-Liss, Inc.)を参照されたい。
【0086】
抗体変異
ある種の実施形態では、抗体のFc部分などの抗体の配列を、血清中における半減期など、コンジュゲートの生理学的特徴を最適化するために変えることができる。タンパク質中のアミノ酸配列を置換する方法は、特定部位の突然変異誘発による方法など(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd Ed, 1989)、当技術分野で広く公知である。好ましい実施形態では、この変異は、Fc配列中の1つまたは複数の糖鎖形成部位を付加または除去することを伴い得る(例えば、その実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,254,868号)。他の好ましい実施形態では、Fc配列において特異的なアミノ酸置換が行われ得る(例えば、それぞれ参照によって本明細書に組み込まれるHornick et al., 2000, J Nucl Med 41:355-62; Hinton et al., 2006, J Immunol 176:346-56; Petkova et al., 2006, Int Immunol 18:1759-69;米国特許第7,217,797号)。
【0087】
ターゲット抗原および例示的な抗体
好ましい実施形態では、ターゲット細胞上で高レベルで発現され、また、正常な組織と比較して、罹患細胞上で主に、またはもっぱら発現される抗原を認識し、かつそれに結合する抗体を使用する。より好ましくは、この抗体は、結合の後に急速に内部移行する。例示的な急速内部移行性抗体は、1日あたり細胞1個あたり抗体分子約8×10の内部以降速度を有するLL1(抗CD74)抗体である(例えば、Hansen et al., 1996, Biochem J. 320:293-300)。したがって、「急速内部移行性」抗体は、1日あたり細胞1個あたり抗体分子約1×10~約1×10の内部移行速度を有するものであってよい。特許請求の範囲に記載の組成物および方法で使用される抗体には、上記で挙げたとおりの特性を有するMAbが含まれる。例えば、癌の治療のために使用される例示的な抗体には、これらだけに限定されないが、LL1(抗CD74)、LL2またはRFB4(抗CD22)、ベルツズマブ(hA20、抗CD20)、リツキシマブ(rituxumab)(抗CD20)、オビヌツズマブ(GA101、抗CD20)、ラムブロリズマブ(抗PD-1受容体)、ニボルマブ(抗PD-1受容体)、イピリムマブ(抗CTLA-4)、RS7(抗上皮性糖タンパク質-1(EGP-1、TROP-2としても公知))、PAM4またはKC4(両方とも抗ムチン)、MN-14(抗癌胎児性抗原(CEA、CD66eまたはCEACAM5としても公知)、MN-15またはMN-3(抗CEACAM6)、Mu-9(抗結腸-特異的抗原-p)、Immu 31(抗αフェトプロテイン)、R1(抗IGF-1R)、A19(抗CD19)、TAG-72(例えば、CC49)、Tn、J591またはHuJ591(抗PSMA(前立腺特異的膜抗原))、AB-PG1-XG1-026(抗PSMAダイマー)、D2/B(抗PSMA)、G250(抗炭酸脱水酵素IX MAb)、L243(抗HLA-DR)アレムツズマブ(抗CD52)、ベバシズマブ(抗VEGF)、セツキシマブ(抗EGFR)、ゲムツズマブ(抗CD33)、イブリツモマブ・イウキセタン(抗CD20);パニツムマブ(抗EGFR);トシツモマブ(抗CD20);PAM4(akaクリバツズマブ、抗ムチン)、およびトラスツズマブ(抗ErbB2)が含まれる。そのような抗体は、当技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,686,072号;同第5,874,540号;同第6,107,090号;同第6,183,744号;同第6,306,393号;同第6,653,104号;同第6,730.300号;同第6,899,864号;同第6,926,893号;同第6,962,702号;同第7,074,403号;同第7,230,084号;同第7,238,785号;同第7,238,786号;同第7,256,004号;同第7,282,567号;同第7,300,655号;同第7,312,318号;同第7,585,491号;同第7,612,180号;同第7,642,239号;および米国特許出願公開第20050271671号;同第20060193865号;同第20060210475号;同第20070087001号;それぞれの実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれる)。使用される具体的な公知の抗体には、hPAM4(米国特許第7,282,567号)、hA20(米国特許第7,251,164号)、hA19(米国特許第7,109,304号)、hIMMU-31(米国特許第7,300,655号)、hLL1(米国特許第7,312,318、号)、hLL2(米国特許第7,074,403号)、hMu-9(米国特許第7,387,773号)、hL243(米国特許第7,612,180号)、hMN-14(米国特許第6,676,924号)、hMN-15(米国特許第7,541,440号)、hR1(米国特許出願公開第12/772,645号)、hRS7(米国特許第7,238,785号)、hMN-3(米国特許第7,541,440号)、AB-PG1-XG1-026(米国特許出願公開第11/983,372号、ATCC PTA-4405およびPTA-4406として寄託)およびD2/B(WO2009/130575)が含まれ、列挙した特許または出願のそれぞれの内容が、図面および実施例セクションに関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0088】
上記のコンジュゲートを使用してターゲティングされ得る他の有用な抗原には、炭酸脱水酵素IX、B7、CCCL19、CCCL21、CSAp、HER-2/neu、BrE3、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20(例えば、C2B8、hA20、1F5 MAbs)、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD46、CD52、CD54、CD55、CD59、CD64、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CEACAM5、CEACAM6、CTLA-4、αフェトプロテイン(AFP)、VEGF(例えば、AVASTIN(登録商標)、フィブロネクチンスプライシング変異型)、ED-Bフィブロネクチン(例えば、L19)、EGP-1(TROP-2)、EGP-2(例えば、17-1A)、EGF受容体(ErbB1)(例えば、ERBITUX(登録商標))、ErbB2、ErbB3、H因子、FHL-1、Flt-3、葉酸受容体、Ga733,GRO-β、HMGB-1、低酸素誘導性因子(HIF)、HM1.24、HER-2/neu、インスリン様成長因子(ILGF)、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IFN-λ、IL-2R、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-2、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-25、IP-10、IGF-1R、Ia、HM1.24、ガングリオシド、HCG、L243が結合するHLA-DR抗原、CD66抗原、すなわち、CD66a~d、またはそれらの組み合わせ、MAGE、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5ac、胎盤成長因子(PlGF)、PSA(前立腺特異的抗原)、PSMA、PAM4抗原、PD-1受容体、NCA-95、NCA-90、A3、A33、Ep-CAM、KS-1、Le(y)、メソテリン、S100、テネイシン、TAC、Tn抗原、Thomas-Friedenreich抗原、腫瘍壊死抗原、腫瘍血管新生抗原、TNF-α、TRAIL受容体(R1およびR2)、TROP-2、VEGFR、RANTES、T101、さらに、癌幹細胞抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、および発癌遺伝子産物が含まれる。
【0089】
薬物コンジュゲートされた免疫療法に適した抗体を選択するためのガイドであり得る、フローサイトメトリーによって示されるような造血性悪性細胞に対する適切な抗原(クラスター命名;Cluster Designation、またはCD)ターゲットの包括的な分析は、CraigおよびFoon、Blood prepublished online January 15, 2008; DOL 10.1182/blood-2007-11-120535である。
【0090】
CD66抗原は、類似した構造を有する5つの異なる糖タンパク質CD66a~eからなり、それぞれ癌胎児性抗原(CEA)遺伝子ファミリーメンバー、BCG、CGM6、NCA、CGM1、およびCEAによってコードされる。これらのCD66抗原(例えば、CEACAM6)は、主に顆粒球、消化管の正常な上皮細胞、および様々な組織の腫瘍細胞において発現される。他にも、癌に適したターゲットとして、NY-ESO-1などの癌精巣抗原(Theurillat et al., Int. J. Cancer 2007; 120(11):2411-7)、さらに骨髄性白血病および他にも、B細胞疾患におけるCD79a(Kozlov et al., Cancer Genet. Cytogenet. 2005; 163(1):62-7)、および非ホジキンリンパ腫でのCD79b(Poison et al., Blood 110(2):616-623)が含まれる。上述の抗原のいくつかは、2002年11月15日に出願された「Use of Multi-specific, Non-covalent Complexes for Targeted Delivery of Therapeutics」と題された米国特許仮出願第60/426,379号に開示されている。より治療耐性な前駆体悪性細胞集団であると記載されている癌幹細胞(Hill and Perris, J. Natl. Cancer Inst. 2007; 99:1435-40)は、ある種の癌種においてターゲティングされ得る抗原、例えば、前立腺癌(Maitland et al., Ernst Schering Found. Sympos. Proc. 2006; 5:155-79)、非小細胞肺癌(Donnenberg et al., J. Control Release 2007; 122(3):385-91)、および神経膠芽細胞腫(Beier et al., Cancer Res. 2007; 67(9):4010-5)におけるCD133、ならびに結腸直腸癌(Dalerba er al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2007; 104(24)10158-63)、膵臓癌(Li et al., Cancer Res. 2007; 67(3):1030-7)、および頭頚部扁平上皮細胞癌(Prince et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2007; 104(3)973-8)におけるCD44などを有する。
【0091】
多発性骨髄腫の治療では、適切なターゲティング抗体は、例えば、CD38およびCD138(Stevenson, Mol Med 2006; 12(11-12):345-346; Tassone et al., Blood 2004; 104(12):3688-96)、CD74(Stein et al.、同書)、CS1(Tai et al., Blood 2008; 112(4):1329-37)、およびCD40(Tai et al., 2005; Cancer Res. 65(13):5898-5906)に対して記載されている。
【0092】
マクロファージ遊走阻害因子(MIF)は、先天的および適応免疫ならびにアポトーシスの重要な調節因子である。CD74は、MIFのための内因性受容体であることが報告されている(Leng et al., 2003, J Exp Med 197:1467-76)。MIF媒介性細胞内経路に対する拮抗性の抗CD74抗体の治療効果は、膀胱、前立腺、乳房、肺、結腸の癌および慢性リンパ球性白血病(例えば、Meyer-Siegler et al., 2004, BMC Cancer 12:34; Shachar & Haran, 2011, Leuk Lymphoma 52:1446-54);関節リウマチおよび全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患(Morand & Leech, 2005, Front Biosci 10:12-22; Shachar & Haran, 2011, Leuk Lymphoma 52:1446-54);腎臓同種移植拒絶などの腎臓疾患(Lan, 2008, Nephron Exp Nephrol. 109:e79-83);および多数の炎症性疾患(Meyer-Siegler et al., 2009, Mediators Inflamm epub March 22, 2009; Takahashi et al., 2009, Respir Res 10:33)などの広範な病態を処置するために使用することができ;ミラツズマブ(hLL1)は、MIF媒介性疾患を処置するために治療で使用される例示的な抗CD74抗体である。
【0093】
抗TNF-α抗体は、当技術分野で公知であり、自己免疫疾患、免疫機能障害(例えば、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶)または糖尿病などの免疫疾患を処置するために有用であり得る。TNF-αに対する公知の抗体には、ヒト抗体CDP571(Ofei et al., 2011, Diabetes 45:881-85);マウス抗体MTNFAI、M2TNFAI、M3TNFAI、M3TNFABI、M302B、およびM303(Thermo Scientific、Rockford、IL);インフリキシマブ(Centocor、Malvern、PA);セルトリズマブペゴル(UCB、Brussels、Belgium);およびアダリムマブ(Abbott、Abbott Park、IL)が含まれる。これらの、および多くの他の公知の抗TNF-α抗体を、特許請求の範囲に記載の方法および組成物において使用することができる。免疫調節不全または自己免疫疾患の治療のために使用される他の抗体には、これらだけに限定されないが、ベルツズマブ、エプラツズマブ、ミラツズマブ、またはhL243;トシリズマブ(抗IL-6受容体);バシリキシマブ(抗CD25);ダクリズマブ(抗CD25);エファリズマブ(抗CD11a);ムロモナブ-CD3(抗CD3受容体);抗CD40L(UCB、Brussels、Belgium);ナタリズマブ(抗α4インテグリン)、およびオマリズマブ(抗IgE)などの抗B細胞抗体が含まれる。
【0094】
1型および2型糖尿病は、CD22(エプラツズマブおよびhRFB4)、CD74(ミラツズマブ)、CD19(hA19)、CD20(ベルツズマブ)またはHLA-DR(hL243)などの、B細胞抗原に対する公知の抗体を使用して処置することができる(例えば、Winer et al., 2011, Nature Med 17:610-18を参照されたい)。抗CD3抗体も、1型糖尿病の治療のために提案されている(Cernea et al., 2010, Diabetes Metab Rev 26:602-05)。
【0095】
本発明の医薬組成物は、アミロイド症などの代謝性疾患、またはアルツハイマー病などの神経変性疾患を有する対象を処置するために使用することができる。バピヌズマブは、アルツハイマー病治療のために治験されている。アルツハイマー病の治療のために提案されている他の抗体には、Alz 50(Ksiezak-Reding et al., 1987, J Biol Chem 263:7943-47)、ガンテネルマブ、およびソラネズマブが含まれる。インフリキシマブ、抗TNF-α抗体は、アミロイド斑を縮小させ、認知を改善することが報告されている。
【0096】
好ましい実施形態では、特許請求の範囲に記載の組成物および方法を使用して治療することができる疾患には、フィブリン塊、アテローム硬化症、心筋虚血、および梗塞などの心臓血管疾患が含まれる。フィブリンに対する抗体(例えば、scFv(59D8);T2G1s;MH1)は公知であり、上記塊および肺塞栓を顕示するためのイメージング剤として治験されている一方で、MN-3、MN-15、抗NCA95、および抗CD15抗体などの抗顆粒球抗体は、心筋梗塞および心筋虚血をターゲティングし得(例えば、それぞれの実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,487,892号;同第5,632,968号;同第6,294,173号;同第7,541,440号を参照されたい)、抗マクロファージ、抗低密度リポタンパク質(LDL)、抗MIF、および抗CD74(例えば、hLL1)抗体を、アテローム斑をターゲティングするために使用することができる。アブシキシマブ(抗糖タンパク質IIb/IIIa)は、経皮冠動脈インターベンションでの再狭窄の防止および不安定狭心症の処置のためのアジュバント用途で承認されている(Waldmann et al., 2000, Hematol 1:394-408)。抗CD3抗体は、アテローム硬化症の発生および進行を縮小することが報告されている(Steffens et al., 2006, Circulation 114:1977-84)。酸化LDLに対する抗体は、マウスモデルにおいて樹立されたアテローム硬化症の退縮を誘導した(Ginsberg, 2007, J Am Coll Cardiol 52:2319-21)。抗ICAM-1抗体は、ラットにおいて大脳動脈閉塞後の虚血性細胞損傷を低減することが示された(Zhang et al., 1994, Neurology 44:1747-51)。白血球抗原に対する市販のモノクローナル抗体は、正常なTリンパ球に結合するOKT抗T-細胞モノクローナル抗体(Ortho Pharmaceutical Companyから入手可能);ATCC受入番号HB44、HB55、HB12、HB78、およびHB2を有するハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体;G7Ell、W8E7、NKP15、およびGO22(Becton Dickinson);NEN9.4(New England Nuclear);およびFMCll(Sera Labs)によって代表される。フィブリンおよび血小板抗原に対する抗体の記載は、Knight, Semin. Nucl. Med., 20:52-67 (1990)に含まれる。
【0097】
別の好ましい実施形態では、急速に内部移行し、次いで再発現され、プロセシングされ、かつ細胞表面上で提示されるので、継続的な取り込み、および細胞による循環コンジュゲートの付着を可能にする抗体を使用する。最も好ましい抗体/抗原対の例は、LL1、抗CD74 MAb(不変鎖、クラスII特異的シャペロン、Ii)(例えば、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,653,104号;同第7,312,318号を参照されたい)である。CD74抗原は、B細胞リンパ腫(多発性骨髄腫を含む)および白血病、ある種のT細胞リンパ腫、黒色腫、結腸癌、肺癌、および腎臓癌、神経膠芽細胞腫、およびある種の他の癌上で高度に発現される(Ong et al., Immunology 98:296-302 (1999))。癌におけるCD74抗体の使用の総説は、参照によって本明細書に組み込まれるStein et al., Clin Cancer Res. 2007 Sep 15;13(18 Pt 2):5556s-5563sに含まれる。
【0098】
抗CD74抗体で好ましく処置される疾患には、これらだけに限定されないが、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、黒色腫、肺、腎臓、結腸癌、多形性膠芽腫、組織球腫、骨髄性白血病、および多発性骨髄腫が含まれる。ターゲット細胞の表面上での短期間のCD74抗原の継続的発現、続く、抗原の内部移行、および抗原の再発現は、担っている任意の化学療法薬部分と一緒にターゲティングLL1抗体を内部移行させることを可能にする。このことは、高い治療的な濃度のLL1-化学療法薬コンジュゲートをそのような細胞内部に蓄積させることを可能にする。内部移行したLL1-化学療法薬コンジュゲートは、リソソームおよびエンドソームを介して循環され、化学療法薬部分は、ターゲット細胞内で活性な形態で放出される。
【0099】
別の好ましい実施形態では、病原体に対する抗体が公知であるので、治療用コンジュゲートを、病原体に対して使用することができる。例えば、ウイルス、リケッチア、マイコプラズマ、原生動物、真菌、およびウイルスなどの病原体に例えば起因するウイルス感染、細菌感染、真菌感染、および寄生虫感染を含めた感染性病変によって産生されるか、またはそれに関連するマーカーに特異的に結合する抗体および抗体断片、ならびにそのような微生物に関連する抗原および産物が、特に、それぞれの実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれるHansenらの米国特許第3,927,193号およびGoldenbergの米国特許第4,331,647号、同第4,348,376号、同第4,361,544号、同第4,468,457号、同第4,444,744号、同第4,818,709号、および同第4,624,846号、ならびに上記で挙げたReichertおよびDewitzに開示されている。感染性生物(抗毒素および抗ウイルス性抗体)、さらに他のターゲットに対する抗体を列挙している総説は、参照によって本明細書に組み込まれるCasadevall, Clin Immunol 1999; 93(1):5-15に含まれる。
【0100】
好ましい実施形態では、その実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,440,416号に開示されているとおり、病原体は、HIVウイルス、結核菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、レジュネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎球菌、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ヒストプラスマ・カプスラーツム、B型インフルエンザ菌、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘーター、緑膿菌、マイコバクテリウムハンセン病、ウシ流産菌、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、II型単純ヘルペスウイルス、ヒト血清パルボ様ウイルス、呼吸系発疹ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、マウス白血病ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、いぼウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、サルウイルス40、マウス乳癌ウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ原虫、ランゲルトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、トリパノソーマ・ブルーセイ、マンソン住血吸虫、日本住血吸虫、ウシバベシア、ニワトリ盲腸コクシジウム、回旋糸状虫、熱帯リーシュマニア、旋毛虫、タイレリア・パルバ、胞状条虫、ヒツジ条虫、無鉤条虫、蝟粒条虫、メソセストイド・コルチ、マイコプラズマ・アルツリティディス、マイコプラズマ・ヒオリニス、マイコプラズマ・オラーレ、マイコプラズマ・アルギニニ、アコレプラズマ・レイドロウイィ、マイコプラズマ‐サリバリウム、およびマイコプラズマ・ニューモニエからなる群から選択される。
【0101】
より好ましい実施形態では、抗gp120および他のそのような抗HIV抗体を含む本発明の薬物コンジュゲートを、AIDS患者においてHIVの治療薬として使用することができ;かつ結核菌に対する抗体の薬物コンジュゲートは、薬物治療不応性(drug-refractive)結核のための治療薬として適している。抗gp120MAbのタンパク質(抗HIV MAb)およびシュードモナス外毒素などの毒素の融合は、抗ウイルス性特性について調査されている(Van Oigen et al., J Drug Target, 5:75-91, 1998)。AIDS患者においてHIV感染を処置する試みは、恐らく不十分な有効性または許容されない宿主毒性のために失敗した。本発明のCPT薬物コンジュゲートは、そのようなタンパク質毒素の毒性副作用を有利に欠失しており、したがって、AIDS患者におけるHIV感染の処置に有利に使用される。これらの薬物コンジュゲートは、単独か、または単独で与えられる場合にそのような患者において有効な他の抗生物質もしくは治療薬との組み合わせで施すことができる。抗HIV抗体の候補には、Johanssonら(AIDS. 2006 Oct 3;20(15):1911-5)によって記載されたP4/D10抗エンベロープ抗体、さらにはPolymun(Vienna、オーストリア)によって記載および販売され、他にも、米国特許第5,831,034号、米国特許第5,911,989号、およびVcelar et al., AIDS 2007; 21(16):2161-2170 およびJoos et al., Antimicrob. Agents Chemother. 2006; 50(5):1773-9(すべて、参照によって本明細書に組み込まれる)によって記載された抗HIV抗体が含まれる。HIVのための好ましいターゲティング薬剤は、耐性を克服するために、これらの抗体の様々な組み合わせである。
【0102】
自己免疫疾患または免疫系機能障害(例えば、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶)を処置するために使用される抗体は、当技術分野で公知であり、開示している方法および組成物を使用して、SN-38にコンジュゲートさせることができる。自己免疫/免疫機能障害疾患を処置するために使用される抗体は、これらだけに限定されないが、BCL-1、BCL-2、BCL-6、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD41a、CD43、CD45、CD55、TNF-α、インターフェロン、およびHLA-DRを含めた例示的な抗原に結合し得る。上記で検討した、これらのターゲット抗原および他のターゲット抗原に結合する抗体を、自己免疫または免疫機能障害疾患を処置するために使用することができる。イムノコンジュゲートで処置することができる自己免疫疾患には、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、ANCA関連血管炎(vasculitides)、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形紅斑、IgA 腎障害、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓脈管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、ヴェグナー肉芽腫症、膜性腎障害、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急性進行性糸球体腎炎、乾癬、または線維化性肺胞隔炎が含まれ得る。
【0103】
上記で検討した抗体および疾患関連抗原に対する他の公知の抗体を、CPT-コンジュゲートとして、より好ましくは、SN-38-コンジュゲートとして、特許請求の範囲に記載の方法および組成物を実施する際に使用することができる。
【0104】
二重特異性および多重特異性抗体
二重特異性抗体は、いくつかの生物医学的用途において有用である。例えば、腫瘍細胞表面の抗原およびT細胞表面受容体のための結合部位を有する二重特異性抗体は、T細胞による特異的腫瘍細胞の溶解に関し得る。膠腫およびT細胞上のCD3エピトープを認識する二重特異性抗体は、ヒト患者における脳腫瘍の処置において成功裏に使用されている(Nitta, et al. Lancet. 1990;355:368-371)。好ましい二重特異性抗体は、抗CD3×抗CD19抗体である。別の実施形態では、抗CD3抗体またはその断片を、別のB細胞関連抗原に対する抗体または断片に結合させることができ、例えば、抗CD3×抗CD20、抗CD3×抗CD22、抗CD3×抗HLA-DR、または抗CD3×抗CD74などである。ある種の実施形態では、本明細書において開示する治療薬コンジュゲーションについての技法および組成物は、二重特異性または多重特異性抗体をターゲティング部分として用いて使用することができる。
【0105】
例えば、その実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,405,320号において開示されているとおり、二重特異性または多重特異性抗体を作製する多数の方法が公知である。異なる抗原部位を認識するモノクローナル抗体をそれぞれ産生する2つの異なるハイブリドーマの融合を伴うクアドローマ方法によって、二重特異性抗体を作製することができる(MilsteinおよびCuello, Nature, 1983;305:537-540)。
【0106】
二重特異性抗体を作製するための別の方法は、2つの異なるモノクローナル抗体を化学的に係留するために、ヘテロ二官能性クロスリンカーを使用する(Staerz, et al. Nature, 1985;314:628-631;Perez, et al. Nature, 1985;316:354-356)。二重特異性抗体は、他にも、2つの親モノクローナル抗体のそれぞれを、個々の半分子に還元し、次いでこれらを混合し、ハイブリッド構造が得られるように再酸化させることによっても作製することができる(StaerzおよびBevan. Proc Natl Acad Sci U S A. 1986;83:1453-1457)。別の選択肢は、適切なリンカーを使用して、2つまたは3つの別々に精製されたFab’断片を化学的にクロスリンクさせることを伴う(例えば、欧州特許出願第0453082号を参照されたい)。
【0107】
他の方法は、レトロウイルス由来シャトルベクターを介して、個々の親ハイブリドーマに別個の選択可能なマーカーを遺伝子移入し、その後、親ハイブリドーマを融合させることによって、ハイブリッドハイブリドーマを生成する効率を改善すること(DeMonte, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 1990, 87:2941-2945);またはハイブリドーマ細胞系を、異なる抗体の重鎖および軽鎖遺伝子を含有する発現プラスミドでトランスフェクションすることを含む。
【0108】
同族VおよびVドメインを、適切な組成および長さ(通常、12超のアミノ酸残基からなる)のペプチドリンカーを用いて合わせて、結合活性を有する単鎖Fv(scFv)を形成することができる。scFvsを製造する方法は、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,946,778号および米国特許第5,132,405号に開示されている。ペプチドリンカー長を12未満のアミノ酸残基に縮小することで、同じ鎖上にVおよびVドメインがペアリングすることを防ぎ、VおよびVドメインを他の鎖上の相補的ドメインとペアリングさせ、その結果、機能性多量体を生じさせる。3から12の間のアミノ酸残基のリンカーで合わせられているVおよびVドメインのポリペプチド鎖は、主にダイマーを形成する(二重特異性抗体と称される)。0から2の間のアミノ酸残基のリンカーでは、三量体(トリアボディと称される)およびテトラマー(テトラボディと称される)が好ましいが、オリゴマー化の正確なパターンは、組成、さらに、リンカー長に加えて、V-ドメインの配向に左右されると考えられる(V-リンカー-VまたはV-リンカー-V)。
【0109】
多重特異性または二重特異性抗体を作製するためのこれらの技法は、その技法の低い収率、精製の必要性、低い安定性、または労働集約性の点において、様々な困難を示す。より最近では、「ドック・アンド・ロック(dockおよびlock)」(DNL)として公知の技法を利用して、事実上あらゆる所望の抗体、抗体断片、および他のエフェクター分子の組み合わせが作製されている(例えば、それぞれの実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,521,056号;同第7,527,787号;同第7,534,866号;同第7,550,143号;同第7,666,400号;同第7,858,070号;同第7,871,622号;同第7,906,121号;同第7,906,118号;同第8,163,291号;同第7,901,680号;同第7,981,398号;同第8,003,111号および同第8,034,352号を参照されたい)。これらの技法は、アンカードメイン(AD)と称される相補性タンパク質結合ドメイン、ならびに二量化およびドッキングドメイン(DDD)を利用し、これらは、互いに結合して、二量体、三量体、四量体、五量体、および六量体の範囲の複雑な構造の構築を可能にする。これらは、高い収率で、広範な精製を要求することなく、安定な複合体を形成する。DNL技法は、単一特異性、二重特異性、または多重特異性抗体の構築を可能にする。二重特異性または多重特異性抗体を製造するために、当技術分野で公知のこれらの技法のいずれも、特許請求の範囲に記載の本方法を実施する際に利用することができる。
【0110】
様々な実施形態では、本明細書において開示するとおりのコンジュゲートは、複合性多重特異性抗体の一部であってよい。そのような抗体は、異なる特異性を有する2種以上の異なる抗原結合性部位を含有してよい。それらの多重特異性複合体は、同じ抗原の異なるエピトープに結合し得るか、または代わりに、2種の異なる抗原に結合し得る。より好ましいターゲットの組み合わせのうちの一部には、表1に列挙するものが含まれる。これは、好ましい組み合わせの例のリストではあるが、排他的であることを意図したものではない。
【表1】

【0111】
癌の治療に好ましいものなどの、さらに他の組み合わせには、CD20+CD22抗体、CD74+CD20抗体、CD74+CD22抗体、CEACAM5(CEA)+CEACAM6(NCA)抗体、インスリン様成長因子(ILGF)+CEACAM5、EGP-1(例えば、RS-7)+ILGF抗体、CEACAM5+EGFR抗体、IL6+CEACAM6抗体が含まれる。それぞれの実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,083,477号;同第6,183,744号、および同第6,962,702号、ならびに米国特許出願公開第20030124058号;同第20030219433号;同第20040001825号;同第20040202666号;同第20040219156号;同第20040219203号;同第20040235065号;同第20050002945号;同第20050014207号;同第20050025709号;同第20050079184号;同第20050169926号;同第20050175582号;同第20050249738号;同第20060014245号、および同第20060034759号に記載されているとおり、そのような抗体は、組み合わせて使用することが必要なだけでなく、IgG、Fab、scFvなどの様々な形態の融合タンパク質として組み合わせることができる。
【0112】
DOCK-AND-LOCK(商標)(DNL(商標))
好ましい実施形態では、二価または多価抗体は、DOCK-および-LOCK(商標)(DNL(商標))複合体として形成される(例えば、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,521,056号;同第7,527,787号;同第7,534,866号;同第7,550,143号;同第7,666,400号;同第7,858,070号;同第7,871,622号;同第7,906,121号;同第7,906,118号;同第8,163,291号;同第7,901,680号;同第7,981,398号;同第8,003,111号および同第8,034,352号を参照されたい)。一般に、この技法は、cAMP依存性プロテインキナーゼ(PKA)の調節(R)サブユニットの二量化およびドッキングドメイン(DDD)配列と、および任意の様々なAKAPタンパク質に由来するアンカードメイン(AD)配列との間で生じる特異的および高親和性結合相互作用の利点を有する(Baillie et al., FEBS Letters. 2005; 579: 3264. Wong and Scott, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2004; 5: 959)。DDDおよびADペプチドは、任意のタンパク質、ペプチド、または他の分子に結合し得る。DDD配列は自発的に二量化し、AD配列に結合するので、この技法は、DDDまたはAD配列に結合し得る任意の選択された分子間で複合体を形成することを可能にする。
【0113】
標準的なDNL(商標)複合体は、1つのAD連結分子に結合した2つのDDD連結分子を有する三量体を含むが、複合体構造を変化させることで、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、および他の多量体の形成が可能である。一部の実施形態では、DNL(商標)複合体は、同じ抗原決定基または2つ以上の異なる抗原に結合する2つ以上の抗体、抗体断片、または融合タンパク質を含み得る。DNL(商標)複合体は他にも、タンパク質、ペプチド、免疫調節薬、サイトカイン、インターロイキン、インターフェロン、結合タンパク質、ペプチドリガンド、担体タンパク質、毒素、オンコナーゼなどのリボヌクレアーゼ、siRNAなどの阻害性オリゴヌクレオチド、抗原または異種抗原、PEGなどのポリマー、酵素、治療薬、ホルモン、細胞傷害性薬物、抗血管新生薬、アポトーシス促進薬、または任意の他の分子もしくは凝集体などの1つまたは複数の他のエフェクターを含み得る。
【0114】
Rサブユニットへの第2のメッセンジャーcAMPの結合によって誘発される最もよく研究されているシグナル伝達経路の1つにおいて中心的な役割を果たすPKAは、1968年にウサギ骨格筋から初めに単離された(Walsh et al., J. Biol. Chem. 1968;243:3763)。ホロ酵素の構造は、Rサブユニットによって不活性形態で保持されている2つの触媒サブユニットからなる(Taylor, J. Biol. Chem. 1989;264:8443)。PKAのアイソザイムは、Rサブユニットの2つのタイプ(RIおよびRII)で存在しており、各タイプは、αおよびβアイソフォームを有する(Scott, Pharmacol. Ther. 1991;50:123)。したがって、PKA調節サブユニットの4つのアイソフォームは、RIα、RIβ、RIIα、およびRIIβである。Rサブユニットは、安定な二量体としてのみ単離されており、二量化ドメインは、RIIαの初めの44アミノ末端残基からなることが示されている(Newlon et al., Nat. Struct. Biol. 1999;6:222)。以下で検討するとおり、他の調節サブユニットのアミノ酸配列の類似した部分は、二量化およびドッキングに関係しており、調節サブユニットのN末端付近にそれぞれ位置している。RサブユニットへのcAMPの結合は、広範なセリン/トレオニンキナーゼ活性のための活性な触媒サブユニットの放出につながり、これらは、AKAPとのそのドッキングを介してのPKAの区画化により、選択された基質へと向けられる(Scott et al., J. Biol. Chem. 1990;265;21561)
【0115】
第1のAKAP、微小管関連タンパク質-2が1984年に特徴決定されて以来(Lohmann et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA. 1984;81:6723)、形質膜、アクチン細胞骨格、核、ミトコンドリア、および小胞体を含めた様々な細胞内部位に局在している50超のAKAPが、酵母からヒトに及ぶ種において多様な構造で同定されている(WongおよびScott, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2004;5:959)。PKAのためのAKAPのADは、14~18残基からなる両親媒性へリックスである(Carr et al., J. Biol. Chem. 1991;266:14188)。ADのアミノ酸配列は、個々のAKAPにおいてかなり変化し、その際、RII二量体について報告された結合親和性は、2~90nMの範囲である(Alto et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2003;100:4445)。AKAPは、二量体Rサブユニットにしか結合しないことになっている。ヒトRIIαでは、ADは、23アミノ末端残基によって形成される疎水性表面に結合する(Colledge and Scott, Trends Cell Biol. 1999;6:216)。したがって、ヒトRIIαの二量化ドメインおよびAKAP結合ドメインは両方とも、同じN末端の44アミノ酸配列内に位置し(Newlon et al., Nat. Struct. Biol. 1999;6:222;Newlon et al., EMBO J. 2001;20:1651)、これは、本明細書においてDDDと称される。
【0116】
本発明者らは、下記ではAおよびBと称される任意の2種の実体をドッキングして、非共有結合性複合体にし、これを、システイン残基をDDDおよびADの両方に、ジスルフィド結合の形成を容易にする戦略的位置に導入することによってさらにロックして、DNL(商標)複合体にすることができるようにするためのリンカーモジュールの優れたペアとして、ヒトPKA調節サブユニットのDDDおよびAKAPのADを利用するためのプラットフォーム技術を開発した。この手法の一般方法は以下のとおりである。実体Aを、DDD配列をAの前駆体に連結することによってコンストラクトし、その結果、下記ではaと称する第1の構成要素を生じさせる。DDD配列は、二量体の自発的形成をもたらすであろうので、Aは、aから構成されるであろう。実体Bを、AD配列をBの前駆体に連結することによってコンストラクトし、その結果、下記ではbと称する第2の構成要素を生じさせる。aに含まれるDDDの二量体モチーフは、bに含まれるAD配列に結合するためのドッキング部位を作成するはずなので、abからなる二成分三量体複合体を形成するaおよびbの即時の会合を促進する。この結合事象は、ジスルフィド架橋を介して2つの実体を共有結合により固定するその後の反応で不可逆的となるが、これは、有効な局所濃度の原理に基づき非常に効率的に生じる。それというのも、当初の結合相互作用により、DDDおよびADの両方の上に設けられた反応性チオール基が近接して(Chmura et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2001;98:8480)、部位特異的に結合するためである。リンカー、アダプターモジュール、および前駆体の様々な組み合わせを使用して、種々の化学量論の広範囲の様々なDNL(商標)コンストラクトを作製し、使用することができる(例えば、米国特許第7,550,143号;同第7,521,056号;同第7,534,866号;同第7,527,787号および同第7,666,400号を参照されたい)。
【0117】
DDDおよびADを、その2つの前駆体の官能基から離して結合させることによって、そのような部位特異的結合は、その2つの前駆体の本来の活性を保存すると予測される。この手法は、本質的にモジュール式であり、広範な活性を有するペプチド、タンパク質、抗体、抗体断片、および他のエフェクター部分を含めた広範な物質を部位特異的に、かつおよび共有結合で連結するために適用することができる可能性がある。下記の実施例において記載されているADおよびDDDコンジュゲートされたエフェクターをコンストラクトする融合タンパク質法を使用することで、事実上あらゆるタンパク質またはペプチドを、DNL(商標)コンストラクトに組み込むことができる。しかしながら、この技法は、限定的なものではなく、コンジュゲーションの他の方法も利用することができる。
【0118】
該当する融合タンパク質をコードする合成二本鎖核酸を作製するために、核酸合成、ハイブリッド形成および/または増幅を含めた様々な方法が、融合タンパク質を作製するために公知である。そのような二本鎖核酸を、標準的な分子生物学技法によって、融合タンパク質作製のための発現ベクターに挿入することができる(例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning, A laboratory manual, 2nd Ed, 1989を参照されたい)。そのような好ましい実施形態では、ADおよび/またはDDD部分を、エフェクタータンパク質またはペプチドのN末端のまたはC末端のいずれかに結合させることができる。しかしながら、当業者は、ADまたはDDD部分とエフェクター部分との結合部位は、その生理学的活性に関係するエフェクター部分およびエフェクター部分の部分(複数可)の化学的性質に応じて変わり得ることを了解するであろう。様々なエフェクター部分の部位特異的結合は、二価クロスリンク試薬および/または他の化学的コンジュゲーション技法の使用などの当技術分野で公知の技法を使用して行うことができる。
【0119】
様々な実施形態において、以下で詳細に記載するとおり、例えば、DDDまたはAD部分を抗体重鎖のC末端に結合させることによって、抗体または抗体断片をDNL(商標)複合体に組み込むことができる。より好ましい実施形態では、DDDまたはAD部分、より好ましくは、AD部分を、抗体軽鎖のC末端に結合させることができる(例えば、実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる2013年5月24日出願の米国特許出願公開第13/901,737号を参照されたい)。
【0120】
ADおよびDDD部分における構造-機能関係
DNL(商標)コンストラクトの種々のタイプのために、種々のADまたはDDD配列を利用することができる。例示的なDDDおよびAD配列を以下に提供する。
DDD1
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号1)
DDD2
CGHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号2)
AD1
QIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号3)
AD2
CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC(配列番号4)
【0121】
当業者は、DDD1およびDDD2は、プロテインキナーゼAのヒトRIIαアイソフォームのDDD配列に基づくことを了解するであろう。しかしながら、別の実施形態では、以下のDDD3、DDD3C、およびAD3において例示されるとおり、DDDおよびAD部分は、プロテインキナーゼAのヒトRIα型のDDD配列および対応するAKAP配列に基づいてもよい。
DDD3
SLRECELYVQKHNIQALLKDSIVQLCTARPERPMAFLREYFERLEKEEAK(配列番号5)
DDD3C
MSCGGSLRECELYVQKHNIQALLKDSIVQLCTARPERPMAFLREYFERLEKEEAK(配列番号6)
AD3
CGFEELAWKIAKMIWSDVFQQGC(配列番号7)
【0122】
他の代替の実施形態では、ADおよび/またはDDD部分の他の配列変異体を、DNL(商標)複合体をコンストラクトする際に利用することができる。例えば、PKA RIα、RIIα、RIβ、およびRIIβのDDD部分に対応して、ヒトPKA DDD配列の4種の変異体のみが存在する。RIIα DDD配列は、上記で開示したDDD1およびDDD2のベースである。4種のヒトPKA DDD配列を以下に示す。このDDD配列は、RIIαの残基1~44、RIIβの残基1~44、RIαの残基12~61、およびRIβの残基13~66を表している(DDD1の配列は、ヒトPKA RIIα DDD部分からわずかに修飾されていることに注意されたい)。
PKA RIα
SLRECELYVQKHNIQALLKDVSIVQLCTARPERPMAFLREYFEKLEKEEAK(配列番号8)
PKA RIβ
SLKGCELYVQLHGIQQVLKDCIVHLCISKPERPMKFLREHFEKLEKEENRQILA(配列番号9)
PKA RIIα
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVGQQPPDLVDFAVEYFTRLREARRQ(配列番号10)
PKA RIIβ
SIEIPAGLTELLQGFTVEVLRHQPADLLEFALQHFTRLQQENER(配列番号11)
【0123】
ADおよびDDDドメインの構造-機能関係は、調査の対象となっている(例えば、それぞれの内容全体が参照により本明細書に組み込まれるBurns-Hamuro et al., 2005, Protein Sci 14:2982-92; Carr et al., 2001, J Biol Chem 276:17332-38; Alto et al., 2003, Proc Natl Acad Sci USA 100:4445-50; Hundsrucker et al., 2006, Biochem J 396:297-306; Stokka et al., 2006, Biochem J 400:493-99; Gold et al., 2006, Mol Cell 24:383-95; Kinderman et al., 2006, Mol Cell 24:397-408を参照されたい)。
【0124】
例えば、Kinderman et al. (2006, Mol Cell 24:397-408)は、AD-DDD結合相互作用の結晶構造を調査し、ヒトDDD配列は、以下の配列番号1において下線を付された、二量体形成またはAKAP結合のいずれかにおいて重要ないくつかの保存アミノ酸残基を含有すると結論付けた(参照によって本明細書に組み込まれるKinderman et al., 2006の図1を参照されたい)。当業者は、DDD配列の配列変異体を設計する際に、望ましくは、下線を付された残基の変更はいずれも回避する一方で、保存的アミノ酸置換を、二量化およびAKAP結合について重要性が低い残基について行うことができることを了解するであろう。SHPPGTELLQGVLRQQPPDLVYFTRREARA(配列番号1)
【0125】
以下でより詳細に検討するとおり、保存的アミノ酸置換は、20の共通Lアミノ酸のそれぞれについて特徴決定されている。したがって、Kinderman(2006)のデータおよび保存的アミノ酸置換に基づき、配列番号1に基づき可能な代替DDD配列を表2に示す。表2を考える際に、高度に保存的なアミノ酸置換のみを考慮した。例えば、荷電残基は、同じ電荷の残基でのみ置換し、小さい側鎖を有する残基は、類似したサイズの残基で置換し、ヒドロキシル側鎖は、他のヒドロキシルでのみ置換するなどであった。アミノ酸二次構造に対するプロリンの独特の作用によって、他の残基をプロリンの代わりに用いることはなかった。限られた数のそのような可能な代替DDD部分配列を、以下の配列番号12~配列番号31に示す。当業者は、標準的な技術によって、例えば、市販のペプチドシンセサイザーまたは周知の特定部位の突然変異誘発技法を使用して、DDD部分に属するほぼ無限の数の代替種をコンストラクトすることができることを了解するであろう。例えば、Alto et al.(2003, Proc Natl Acad Sci USA 100:4445-50)において開示されているとおり、AD部分結合に対するアミノ酸置換の作用は、標準的な結合アッセイによって、容易に決定することもできる。
【表2】

THIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号12)
SKIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号13)
SRIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号14)
SHINIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号15)
SHIQIPPALTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号16)
SHIQIPPGLSELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号17)
SHIQIPPGLTDLLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号18)
SHIQIPPGLTELLNGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号19)
SHIQIPPGLTELLQAYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号20)
SHIQIPPGLTELLQGYSVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号21)
SHIQIPPGLTELLQGYTVDVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号22)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLKQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号23)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRNQPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号24)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQNPPDLVEFAVEYFTRLREARA(配列番号25)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPELVEFAVEYFTRLREARA(配列番号26)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVDFAVEYFTRLREARA(配列番号27)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFLVEYFTRLREARA(配列番号28)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFIVEYFTRLREARA(配列番号29)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFVVEYFTRLREARA(配列番号30)
SHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVDYFTRLREARA(配列番号31)
【0126】
Alto et al.(2003, Proc Natl Acad Sci USA 100:4445-50)は、0.4のDDDについての結合定数を有する、AKAP-IS(配列番号3)と称されるRII選択的AD配列を設計するために、様々なAKAPタンパク質のAD配列の生物情報的分析を行った。AKAP-IS配列は、PKAに結合するAKAPのペプチドアンタゴニストとして設計された。置換がDDDへの結合を低減させる傾向のあったAKAP-IS配列中の残基は、以下の配列番号3において下線を付されている。当業者は、AD配列の配列変異体を設計する際に、望ましくは、下線を付された残基の変更はいずれも回避する一方で、保存的アミノ酸置換を、DDD結合について重要性が低い残基については行うことができることを了解するであろう。表3は、上記の表2においてDDD1(配列番号1)のために示されたものと同様に、AKAP-IS(AD1、配列番号3)の配列において可能な保存的アミノ酸置換を示している。
【0127】
限られた数のそのような可能な代替AD部分配列を、以下の配列番号32~配列番号49において示す。この場合も、可能なAD部分配列に属する非常に多数の種を、Alto et al.(2003)のデータに基づき、作成、試験、および使用することができるであろう。Alto(2003)の図2は、実際の結合実験に基づき、DDD部分への結合活性を維持しながら作成され得る可能なアミノ酸置換のさらに多数を示していることに注意する。
AKAP-IS
QIEYLKQIVDNAIQQA(配列番号3)
【表3】

NIEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号32)
QLEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号33)
QVEYLAKQIVDNAIQQA(配列番号34)
QIDYLAKQIVDNAIQQA(配列番号35)
QIEFLAKQIVDNAIQQA(配列番号36)
QIETLAKQIVDNAIQQA(配列番号37)
QIESLAKQIVDNAIQQA(配列番号38)
QIEYIAKQIVDNAIQQA(配列番号39)
QIEYVAKQIVDNAIQQA(配列番号40)
QIEYLARQIVDNAIQQA(配列番号41)
QIEYLAKNIVDNAIQQA(配列番号42)
QIEYLAKQIVENAIQQA(配列番号43)
QIEYLAKQIVDQAIQQA(配列番号44)
QIEYLAKQIVDNAINQA(配列番号45)
QIEYLAKQIVDNAIQNA(配列番号46)
QIEYLAKQIVDNAIQQL(配列番号47)
QIEYLAKQIVDNAIQQI(配列番号48)
QIEYLAKQIVDNAIQQV(配列番号49)
【0128】
Gold et al.(2006, Mol Cell 24:383-95)は、RIアイソフォームと比較して、PKAのRIIアイソフォームについて5桁高い選択性を示すSuperAKAP-IS配列(配列番号50)を開発するために、結晶学およびペプチドスクリーニングを利用した。下線を付された残基は、AKAP-IS配列に対するアミノ酸置換の位置を示しており、これが、RIIαのDDD部分への結合を増大させた。この配列において、N末端のQ残基は、残基番号4とナンバリングされ、C末端のA残基は、残基番号20である。RIIαのための親和性に影響を及ぼすために置換され得る残基は、残基8、11、15、16、18、19、および20であった(Gold et al., 2006)。ある種の代替実施形態では、DNL(商標)コンストラクトを調製するために、SuperAKAP-IS配列をAKAP-IS AD部分配列の代わりに使用することができることが企図されている。AKAP-IS AD配列の代わりに用いることができる他の代替配列を配列番号51~53において示す。AKAP-IS配列に対する置換に下線が付されている。配列番号4において示したAD2配列と同様に、AD部分は、追加のN末端の残基システインおよびグリシン、ならびにC末端の残基グリシンおよびシステインを包含してもよいことが予期される。
SuperAKAP-IS
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号50)
代替AKAP配列
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号51)
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号52)
QIEYAKQIVDAIQA(配列番号53)
【0129】
Goldらの図2は、以下に示す様々なAKAPタンパク質に由来する追加のDDD結合配列を開示している。
RII特異的AKAP
AKAP-KL
PLEYQAGLLVQNAIQQAI(配列番号54)
AKAP79
LLIETASSLVKNAIQLSI(配列番号55)
AKAP-Lbc
LIEEAASRIVDAVIEQVK(配列番号56)
RI特異的AKAP
AKAPce
ALYQFADRFSELVISEAL(配列番号57)
RIAD
LEQVANQLADQIIKEAT(配列番号58)
PV38
FEELAWKIAKMIWSDVF(配列番号59)
二重特異性AKAP
AKAP7
ELVRLSKRLVENAVLKAV(配列番号60)
MAP2D
TAEEVSARIVQVVTAEAV(配列番号61)
DAKAP1
QIKQAAFQLISQVILEAT(配列番号62)
DAKAP2
LAWKIAKMIVSDVMQQ(配列番号63)
【0130】
Stokkaら(2006, Biochem J 400:493-99)は他にも、配列番号64~66において示されている、PKAに結合するAKAPのペプチド競合因子(competitor)を開発した。これらのペプチドアンタゴニストは、Ht31(配列番号64)、RIAD(配列番号65)およびPV-38(配列番号66)と名付けられた。Ht-31ペプチドは、PKAのRIIアイソフォームについてより高い親和性を示した一方で、RIADおよびPV-38は、RIについてより高い親和性を示した。
Ht31
DLIEEAASRIVDAVIEQVKAAGAY(配列番号64)
RIAD
LEQYANQLADQIIKEATE(配列番号65)
PV-38
FEELAWKIAKMIWSDVFQQC(配列番号66)
【0131】
Hundsruckerら(2006, Biochem J 396:297-306)は、PKAのRII形態のDDDに対して0.4nMの低い結合定数を有する、PKAに結合するAKAPについてのさらに他のペプチド競合因子を開発した。様々なAKAP拮抗性ペプチドの配列が、Hundsruckerらの表1において提示されており、以下の表4において再掲する。AKAPISは、合成RIIサブユニット結合性ペプチドを表す。他のペプチドはすべて、示されているAKAPのRII-結合ドメインに由来する。
【0132】
【表4】
【0133】
種々のAKAPタンパク質のADドメイン内で高度保存されていた残基を、AKAPIS配列(配列番号3)を参照して下線を付すことによって、以下に示す。これらの残基は、Altoら(2003)によって観察されたものと同じであるが、C末端アラニン残基の付加を伴う(参照により本明細書に組み込まれるHundsrucker et al.(2006)の図4を参照されたい)。RII DDD配列について特に高い親和性を有するペプチドアンタゴニストの配列は、AKAP-IS、AKAP7δ-wt-pep、AKAP7δ-L304T-pep、およびAKAP7δ-L308D-pepのものであった。
AKAP-IS
QIEYLKQIVDNAIQQ(配列番号3)
【0134】
Carrら(2001, J Biol Chem 276:17332-38)は、ヒトおよび非ヒトタンパク質に由来する種々のAKAP結合DDD配列の間での配列相動性の程度を調査し、種々のDDD部分内で最も高度に保存されていると考えられる、DDD配列中の残基を同定した。これらを、配列番号1のヒトPKA RIIα DDD配列を参照して下線を付すことによって、以下に示す。特に保存されていた残基はさらに、イタリック体で示す。これらの残基は、Kindermanら(2006)によって、AKAPタンパク質への結合に重要であると示唆されたものと重なるが、同一ではない。当業者は、DDDの配列を設計する際に、最も保存されている残基(イタリック体)の変更は回避することが最も好ましく、また、保存されている残基(下線付き)の変更も回避することが好ましいであろうが、保存的アミノ酸置換を、下線を付されてなく、イタリック体にされてもいない残基については考えることができることを了解するであろう。
【数1】
【0135】
Carrら(2001)のデータに基づき、DDD1(配列番号1)配列のための保存的アミノ酸置換の修飾セットを、表5に示す。この数少ない置換配列セットでも、過度の実験を伴うことなく、当業者が作製、試験、および使用することができる多数の可能な代替DDD部分配列が存在する。当業者は、2および表3について上記で開示したように、そのような代替DDDアミノ酸配列を容易に得ることができるであろう。
【表5】
【0136】
当業者は、当分野で標準的な技法と、日常的な実験のみを使用して、DDDまたはADアミノ酸配列におけるこれらの、および他のアミノ酸置換を利用して、ADまたはDDD部分に属する代替種を作製することができることを了解するであろう。
【0137】
抗体アロタイプ
治療用抗体の免疫原性は、注入反応のリスクの上昇および治療反応期間の短縮に関係している(Baert et al., 2003, N Engl J Med 348:602-08)。治療用抗体が免疫応答を受容者において誘導する規模は、一部では、抗体のアロタイプによって決定され得る(Stickler et al., 2011, Genes and Immunity 12:213-21)。抗体アロタイプは、抗体の定常領域配列における特異的な位置でのアミノ酸配列の変化に関連づけられている。重鎖γ型定常領域を含有するIgG抗体のアロタイプは、Gmアロタイプと名付けられている(1976, J Immunol 117:1056-59)。
【0138】
通常のIgG1ヒト抗体では、最も優勢なアロタイプはG1m1である(Stickler et al., 2011, Genes and Immunity 12:213-21)。しかしながら、G1m3アロタイプも、白人種では頻繁に生じる(同書)。G1m1抗体は、G1m3患者などの非G1m1(nG1m1)受容者に投与されたとき、免疫応答を誘導する傾向があるアロタイプの配列を含むことが報告されている(同書)。非G1m1アロタイプ抗体は、G1m1患者に投与されたとき、免疫原性ではない(同書)。
【0139】
ヒトG1m1アロタイプは、重鎖IgG1のCH3配列中でKabat位356にアスパラギン酸およびKabat位358にロイシンのアミノ酸を含む。nG1m1アロタイプは、Kabat位356にグルタミン酸およびKabat位358にメチオニンのアミノ酸を含む。G1mlおよびnG1mlアロタイプは両方とも、Kabat位357にグルタミン酸残基を含み、これらのアロタイプは時に、DELおよびEEMアロタイプと称される。G1m1およびnG1m1アロタイプ抗体での重鎖定常領域配列の非限定的例を、例示的な抗体リツキシマブ(配列番号85)およびベルツズマブ(配列番号86)について示す。
リツキシマブ重鎖可変領域配列(配列番号85)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKAEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
ベルツズマブ重鎖可変領域(配列番号86)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0140】
JefferisおよびLefranc(2009, mAbs 1:1-7)は、IgGアロタイプに特徴的な配列変化および免疫原性に対するそれらの効果を調査した。著者らは、G1m3アロタイプが、G1m17アロタイプにおけるKabat214のリシン残基と比較して、Kabat位214のアルギニン残基によって特徴づけられることを報告した。nG1m1,2アロタイプは、Kabat位356のグルタミン酸、Kabat位358のメチオニン、およびKabat位431のアラニンによって特徴づけられる。G1m1,2アロタイプは、Kabat位356のアスパラギン酸、Kabat位358のロイシン、およびKabat位431のグリシンによって特徴づけられる。重鎖定常領域配列変異体に加えて、JefferisおよびLefranc(2009)は、κ軽鎖定常領域におけるアロタイプ変異体を報告しており、Km1アロタイプは、Kabat位153のバリンおよびKabat位191のロイシンによって、Km1,2アロタイプは、Kabat位153のアラニンおよびKabat位191のロイシンによって、かつKm3アロタイプはKabat位153のアラニンおよびKabat位191のバリンによって特徴づけられた。
【0141】
治療用抗体では、ベルツズマブおよびリツキシマブはそれぞれ、広範囲の様々な血液悪性病変を治療するために使用される、CD20に対するヒト化およびキメラIgG1抗体である。表6は、リツキシマブとベルツズマブとのアロタイプ配列を比較している。表6に示されているとおり、リツキシマブ(G1m17,1)は、DELアロタイプIgG1であり、リツキシマブではリシン、対してベルツズマブではアルギニンの、Kabat位214(重鎖CH1)での追加の配列変化を伴う。ベルツズマブは、リツキシマブよりも、対象において免疫原性が低いという(例えば、Morchhauser et al., 2009, J Clin Oncol 27:3346-53; Goldenberg et al., 2009, Blood 113:1062-70; Robak & Robak, 2011, BioDrugs 25:13-25)、ヒト化抗体とキメラ抗体との差異に起因する作用が報告されている。しかしながら、EEMとDELアロタイプとの間のアロタイプにおけるこの差異がおそらく、ベルツズマブの方が免疫原性が低いことの原因である。
【表6】
【0142】
nG1m1遺伝子型の個体における治療用抗体の免疫原性を低減するために、Kabat214のアルギニンによって特徴づけられるG1m3アロタイプ、およびKabat位356のグルタミン酸、Kabat位358のメチオニン、およびKabat位431のアラニンによって特徴づけられるnG1m1,2 null-アロタイプに対応するように、抗体のアロタイプを選択することが望ましい。意外にも、G1m3抗体を長期間にわたって反復皮下投与しても、有意な免疫応答が生じないことが見出された。代替実施形態では、G1m3アロタイプと共通して、ヒトIgG4重鎖は、アルギニンをKabat214に、グルタミン酸をKabat356に、メチオニンをKabat359に、およびアラニンをKabat431に有する。免疫原性は、少なくとも部分的に、これらの位置の残基に関連していると考えられるので、治療用抗体のためにヒトIgG4重鎖定常領域配列を使用することも、好ましい実施形態である。G1m3 IgG1抗体とIgG4抗体の組み合わせも、治療用投与のために使用することができる。
【0143】
アミノ酸置換
代替実施形態では、開示する方法および組成物は、1個または複数の置換アミノ酸残基を有するタンパク質またはペプチドの作製および使用を伴い得る。例えば、DNL(商標)コンストラクトを作成するために使用されるDDDおよび/またはAD配列を、上記で検討したとおりに修飾することができる。
【0144】
当業者は、一般に、アミノ酸置換は典型的に、アミノ酸を、比較的類似した特性の別のアミノ酸で置き換えること(すなわち、保存的アミノ酸置換)を伴うことは分かるであろう。様々なアミノ酸の特性ならびにタンパク質構造および機能に対するアミノ酸置換の効果は、当技術分野において広範な研究および知識の対象であり続けている。
【0145】
例えば、アミノ酸のハイドロパシー指数を検討することができる(Kyte & Doolittle, 1982, J. Mol. Biol., 157:105-132)。アミノ酸の相対ハイドロパシー形質は、その結果生じるタンパク質の二次構造に寄与し、次いでこの二次構造が、そのタンパク質と他の分子との相互作用を規定する。各アミノ酸に、その疎水性および電荷特性に基づき、ハイドロパシー指数が割り当てられており(Kyte & Doolittle, 1982)、これらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタマート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルタート(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)である。保存的置換を行う際には、ハイドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の使用が好ましく、±1以内がより好ましく、±0.5以内がさらにより好ましい。
【0146】
アミノ酸置換では、アミノ酸残基の親水性も考慮され得る(例えば、米国特許第4,554,101)。親水性値が、アミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸塩(+3.0);グルタマート(+3.0);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。アミノ酸を類似した親水性の他のアミノ酸で置き換えることが好ましい。
【0147】
他の検討事項には、アミノ酸側鎖のサイズが含まれる。例えば、一般に、グリシンまたはセリンなどのコンパクトな側鎖を有するアミノ酸を、嵩高な側鎖を有するアミノ酸、例えば、トリプトファンまたはチロシンで置き換えることは望ましくないであろう。タンパク質二次構造に対する様々なアミノ酸残基の作用も考慮される。経験的な研究を通じて、αヘリカル、βシート、または逆向ターン二次構造をとるタンパク質ドメインの傾向に対する種々のアミノ酸残基の作用は決定されており、当技術分野で公知である(例えば、Chou & Fasman, 1974, Biochemistry, 13:222-245;1978, Ann. Rev. Biochem., 47: 251-276;1979, Biophys. J., 26:367-384を参照されたい)。
【0148】
そのような検討事項および広範な経験的研究に基づき、保存的アミノ酸置換の一覧が作成されており、当技術分野で公知である。例えば:アルギニンおよびリシン;グルタマートおよびアスパルタート;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシン。別法では:Ala(A)leu、ile、val;Arg(R)gln、asn、lys;Asn(N)his、asp、lys、arg、gln;Asp(D)asn、glu;Cys(C)ala、ser;Gln(Q)glu、asn;Glu(E)gln、asp;Gly(G)ala;His(H)asn、gln、lys、arg;Ile(I)val、met、ala、phe、leu;Leu(L)val、met、ala、phe、ile;Lys(K)gln、asn、arg;Met(M)phe、ile、leu;Phe(F)leu、val、ile、ala、tyr;Pro(P)ala;Ser(S)、thr;Thr(T)ser;Trp(W)phe、tyr;Tyr(Y)trp、phe、thr、ser;Val(V)ile、leu、met、phe、ala。
【0149】
アミノ酸置換についての他の検討事項には、その残基が、タンパク質の内部に位置するか、または溶媒に露出されるかどうかが含まれる。内部残基では、保存的置換には、AspおよびAsn;SerおよびThr;SerおよびAla;ThrおよびAla;AlaおよびGly;IleおよびVal;ValおよびLeu;LeuおよびIle;LeuおよびMet;PheおよびTyr;TyrおよびTrpが含まれるであろう(例えば、rockefeller.eduにおけるPROWLウェブサイトを参照されたい)。溶媒露出残基では、保存的置換には、AspおよびAsn;AspおよびGlu;GluおよびGln;GluおよびAla;GlyおよびAsn;AlaおよびPro;AlaおよびGly;AlaおよびSer;AlaおよびLys;SerおよびThr;LysおよびArg;ValおよびLeu;LeuおよびIle;IleおよびVal;PheおよびTyrが含まれるであろう(同書)。PAM250スコアリングマトリックス、Dayhoffマトリックス、Granthamマトリックス、McLachlanマトリックス、Doolittleマトリックス、Henikoffマトリックス、Miyataマトリックス、Fitchマトリックス、Jonesマトリックス、Raoマトリックス、LevinマトリックスおよびRislerマトリックスなどの様々なマトリックスが、アミノ酸置換の選択を支援するために作成されている(同書)。
【0150】
アミノ酸置換を決定する際には、正の電荷をもつ残基(例えば、His、Arg、Lys)と負の電荷をもつ残基(例えば、Asp、Glu)との間のイオン結合(塩橋)、または近くのシステイン残基間でのジスルフィド結合の形成などの、分子間または分子内結合の存在を考慮することもある。
【0151】
コードされたタンパク質配列において、任意のアミノ酸を任意の他のアミノ酸の代わりに用いる方法は周知であり、例えば、特定部位の突然変異誘発の技法によるか、またはアミノ酸置換をコードするオリゴヌクレオチドを合成および構築し、かつ発現ベクターコンストラクトにスプライシングすることによる、当業者には日常的な実験事項である。
【0152】
アビマー
ある種の実施形態では、本明細書に記載の結合部分は、1つまたは複数のアビマー配列を含んでよい。アビマーは、様々なターゲット分子について、それらの親和性および特異性において抗体に多少類似している一群の結合性タンパク質である。これらは、インビトロでのエキソンシャッフリングおよびファージディスプレイによってヒト細胞外受容体ドメインから開発された(Silverman et al., 2005, Nat. Biotechnol. 23:1493-94;Silverman et al., 2006, Nat. Biotechnol. 24:220)。その結果生じたマルチドメインタンパク質は、単一エピトープ結合性タンパク質と比較して、改善された親和性(場合によっては、ナノモル以下)および特異性を示し得る多数の独立した結合性ドメインを含み得る(同書)。様々な実施形態では、アビマーは、例えば、特許請求の範囲に記載の方法および組成物において使用するためのDDDおよび/またはAD配列に結合し得る。アビマーをコンストラクトおよび使用する方法に関する追加の詳細は、例えば、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20040175756号、同第20050048512号、同第20050053973号、同第20050089932号、および同第20050221384号に開示されている。
【0153】
ファージディスプレイ
特許請求の範囲に記載の組成物および/または方法のある種の実施形態は、さまざまなターゲット分子、細胞、または組織の結合性ペプチドおよび/またはペプチド模倣物質に関し得る。結合性ペプチドは、これに限定されないが、ファージディスプレイ技法を含めた当技術分野で公知の任意の方法によって同定することができる。ファージディスプレイの様々な方法および多様なペプチド群を作製するための技法が当技術分野で周知である。例えば、米国特許第5,223,409号;同第5,622,699号、および同第6,068,829号は、ファージライブラリを調製するための方法を開示している。ファージディスプレイ技法は、バクテリオファージを遺伝的に操作して、小さなペプチドがそれらの表面上に発現され得るようにすることを伴う(Smith and Scott, 1985, Science 228:1315-1317;Smith and Scott, 1993, Meth. Enzymol. 21:228-257)。ペプチドに加えて、単鎖抗体などのより大きなタンパク質ドメインを、ファージ粒子の表面上にディスプレイさせることもできる(Arap et al., 1998, Science 279:377-380)。
【0154】
所与の臓器、組織、細胞種、またはターゲット分子に選択的なターゲティングアミノ酸配列は、パニングによって単離することができる(PasqualiniおよびRuoslahti, 1996, Nature 380:364-366;Pasqualini, 1999, The Quart. J. Nucl. Med. 43:159-162)。簡単には、推定上のターゲティングペプチドを含有するファージのライブラリを、インタクトな生体、または単離された臓器、組織、細胞種、もしくはターゲット分子に投与し、結合したファージを含有する試料を収集する。ターゲットに結合するファージを、ターゲット臓器、組織、細胞種、またはターゲット分子から溶離し、次いで、宿主細菌中でそれを増殖させることによって増幅することができる。
【0155】
ある種の実施形態では、ファージを、パニングのラウンド間に、宿主細菌中で増殖させることができる。ファージによって溶解されるのではなく、代わりに、その細菌は、特定のインサートをディスプレイするファージの多数のコピーを分泌し得る。所望の場合には、増幅させたファージをターゲット臓器、組織、細胞種、またはターゲット分子に再び暴露し、追加のパニングラウンドのために収集することができる。選択的または特異的バインダー群が得られるまで、多数のパニングラウンドを行うことができる。ファージゲノムにおけるターゲティングペプチドインサートに対応するDNAを配列決定することによって、ペプチドのアミノ酸配列を決定することができる。次いで、標準的なタンパク質ケミストリー技法によって、同定されたターゲティングペプチドを合成ペプチドとして作製することができる(Arap et al., 1998, Smith et al., 1985)。
【0156】
一部の実施形態では、サブトラクションプロトコルを使用して、バックグラウンドファージ結合をさらに減少させることができる。サブトラクションの目的は、該当するターゲット以外のターゲットに結合するファージをライブラリから除去することである。代替実施形態では、ファージライブラリを、対照細胞、組織、または臓器に対してプレスクリーニングすることができる。例えば、対照の正常細胞系に対してライブラリをプレスクリーニングした後に、腫瘍結合性ペプチドを同定することができる。サブトラクションの後に、ライブラリを、該当する分子、細胞、組織、または臓器に対してスクリーニングすることができる。例えば、米国特許第5,840,841号、同第5,705,610号、同第5,670,312号、および同第5,492,807号に開示されているとおり、サブトラクションプロトコルの他の方法が公知であり、特許請求の範囲に記載の方法の実施において使用することができる。
【0157】
アプタマー
ある種の実施形態では、使用されるターゲティング部分は、アプタマーであってよい。アプタマーの結合形質をコンストラクトおよび決定する方法は、当技術分野で周知である。例えば、そのような技法は、それぞれの実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,582,981号、同第5,595,877号、および同第5,637,459号に記載されている。例えば、それぞれの実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,475,096および米国特許第5,270,163など、該当する特定のターゲットに結合するアプタマーを調製およびスクリーニングするための方法は周知である。
【0158】
合成、組換え、および精製方法を含めた任意の公知の方法によって、アプタマーを調製することができ、単独で、または同じターゲットに特異的な他のリガンドと組み合わせて使用することができる。一般に、最低約3個のヌクレオチド、好ましくは、少なくとも5個のヌクレオチドが、特異的結合をもたらすためには必要である。10塩基未満の配列からなるアプタマーが実行可能であるが、10、20、30、または40ヌクレオチドのアプタマーが好ましい。
【0159】
アプタマーは、従来のDNAまたはRNA分子として単離、配列決定、および/もしくは増幅されるか、または合成され得る。別法では、該当するアプタマーは、修飾されたオリゴマーを含んでもよい。アプタマー中に通常存在するヒドロキシル基はいずれも、ホスホナート基、ホスファート基によって置き換えられていてよいか、標準的な保護基によって保護されていてよいか、もしくは他のヌクレオチドへの追加の連結を調製するために活性化されていてよいか、または固体支持体にコンジュゲートされていてよい。1つまたは複数のホスホジエステル連結は、P(O)S、P(O)NR、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCNRによって置き換えられているP(O)Oなど、代替連結基(ここで、Rは、Hまたはアルキル(1~20個のC)であり、およびR’はアルキル(1~20個のC)であり;加えて、この基は、OまたはSを介して隣接するヌクレオチドに結合していてよい)によって置き換えられていてよい。オリゴマー中の連結がすべて、同一である必要はない。
【0160】
アフィボディ(Affibody)およびフィノマー(Fynomer)
ある種の代替実施形態は、抗体の代わりにアフィボディを利用することができる。アフィボディは、Affibody AB(Solna、スウェーデン)から市販されている。アフィボディは、抗体模倣物質として機能する小さなタンパク質であり、ターゲット分子を結合する際に使用される。αへリックスのタンパク質骨格上でのコンビナトリアルエンジニアリングによって、アフィボディは開発された(Nord et al., 1995, Protein Eng 8:601-8; Nord et al., 1997, Nat Biotechnol 15:772-77)。アフィボディ設計は、プロテインAのIgG結合ドメインを含む3へリックスバンドル構造に基づく(Nord et al., 1995;1997)。細菌プロテインAのFc結合活性に関係する13アミノ酸のランダム化によって、広範な結合親和性を有するアフィボディは作製することができる(Nord et al., 1995;1997)。ランダム化の後に、PCR増幅されたライブラリをファージミドベクターにクローニングして、変異タンパク質のファージディスプレイによってスクリーニングする。ターゲット抗原に対して1つまたは複数のアフィボディを同定するために、標準的なファージディスプレイスクリーニング技法を使用して、ファージディスプレイライブラリを任意の公知の抗原に対してスクリーニングすることができる(例えば、Pasqualini and Ruoslahti, 1996, Nature 380:364-366; Pasqualini, 1999, Quart. J. Nucl. Med. 43:159-162)。
【0161】
HER2/neuに特異的な177Lu標識アフィボディは、インビボでHER2発現性異種移植片をターゲティングすることが実証されている(Tolmachev et al., 2007, Cancer Res 67:2773-82)。低分子量の放射標識化合物の蓄積による腎臓毒性が初めは問題であったが、アルブミンに可逆的に結合させて、腎臓蓄積を低減させることで、放射性核種をベースとした療法が可能になった(同書)。
【0162】
インビボ腫瘍画像診断のために放射標識アフィボディを使用することの実行可能性が、最近実証されている(Tolmachev et al., 2011, Bioconjugate Chem 22:894-902)。マレイミド誘導体化NOTAは、抗HER2アフィボディにコンジュゲートされ、111Inで放射標識された(同書)。HER2発現性DU-145異種移植片を有するマウスへの投与、続く、ガンマカメラ画像診断によって、異種移植片の可視化が可能であった(同書)。
【0163】
フィノマーは、抗体に対して類似した親和性および特異性を有するターゲット抗原にも結合し得る。フィノマーは、結合性分子を構築するための骨格としてのヒトFyn SH3ドメインに基づく。Fyn SH3ドメインは、高い収率で細菌中で作製することができる完全ヒト63アミノ酸タンパク質である。フィノマーは一緒に連結されて、2種以上の異なる抗原ターゲットに親和性を有する多重特異性結合性タンパク質をもたらし得る。フィノマーは、COVAGEN AG(Zurich、スイス)から市販されている。
【0164】
当業者は、アフィボディまたはフィノマーを、特許請求の範囲に記載の方法および組成物の実施においてターゲティング分子として使用することができることを了解するであろう。
【0165】
コンジュゲーションプロトコル
好ましいコンジュゲーションプロトコルは、中性または酸性pHで容易なチオール-マレイミド反応、チオール-ビニルスルホン反応、チオール-ブロモアセトアミド反応、またはチオール-ヨードアセトアミド反応に基づく。これによって、例えば、活性なエステルを使用するときに必要となるであろうような、より高いpH条件がコンジュゲーションに不要となる。例示的なコンジュゲーションプロトコルのさらなる詳細は、以下の実施例セクションにおいて記載する。
【0166】
治療的処置
別の態様では、本発明は、対象を処置する方法であって、本明細書に記載のとおりの治療用コンジュゲートの治療有効量を対象に投与することを含む方法に関する。本明細書に記載の治療用コンジュゲートで処置することができる疾患には、これらだけに限定されないが、例えば、hLL2 MAb(エプラツズマブ、米国特許第6,183,744号を参照されたい)、別のCD22エピトープ(hRFB4)に対するものなどの抗CD22抗体を使用すると、またはCD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD37、CD40、CD40L、CD52、CD74、CD80、もしくはHLA-DRなどの他のB細胞抗原に対する抗体を使用すると、B細胞悪性病変(例えば、非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病)が含まれる。他の疾患には、これらだけに限定されないが、内皮由来消化系上皮の腺癌、乳癌および非小細胞肺癌などの癌、ならびに他の癌、肉腫、グリア腫瘍、骨髄性白血病などが含まれる。特に、悪性充実性腫瘍または造血性新生物、例えば、胃腸、胃、結腸、食道、肝臓、肺、乳房、膵臓、肝臓、前立腺、卵巣、精巣、脳、骨、またはリンパの腫瘍、肉腫または黒色腫によって産生されるか、またはそれらに関係する抗原、例えば、胎児腫瘍性抗原に対する抗体が有利には使用される。そのような治療薬は、病態およびコンジュゲートの忍容性に応じて1回または反復して施すことができ、任意選択により、外科手術、体外放射線、放射線免疫療法、免疫療法、化学療法、アンチセンス療法、干渉RNA療法、遺伝子療法などの他の治療種と組み合わせて使用することもできる。組み合わせはそれぞれ、腫瘍種、ステージ、患者状態、および先行する療法、ならびに担当医師が判断する他の因子に合わされるはずである。
【0167】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、これらだけに限定されないが、ヒトを含めた哺乳動物を含めた任意の動物(すなわち、脊椎動物および無脊椎動物)を指す。この用語は、特定の年齢または性別に限定されることは意図されていない。したがって、成人および新生児、さらには、胎児が、男性または女性にかかわらず、この用語に含まれる。本明細書で示される用量は、ヒトについての用量であるが、他の哺乳動物、さらに小児のサイズに、体重または平方サイズに従って合わせることができる。
【0168】
好ましい実施形態では、hRS7 MAbなどの抗EGP-1(抗TROP-2)抗体を含む治療用コンジュゲートを使用して、実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,785号;同第7,517,964号、および同第8,084,583号に開示されているとおり、食道、膵臓、肺、胃、結腸および直腸、膀胱、乳房、卵巣、子宮、腎臓、ならびに前立腺の癌などの癌を処置することができる。hRS7抗体は、軽鎖相補性決定領域(CDR)配列CDR1(KASQDVSIAVA、配列番号90);CDR2(SASYRYT、配列番号91);およびCDR3(QQHYITPLT、配列番号92)および重鎖CDR配列 CDR1(NYGMN、配列番号93);CDR2(WINTYTGEPTYTDDFKG、配列番号94)およびCDR3(GGFGSSYWYFDV、配列番号95)を含むヒト化抗体である。
【0169】
別の好ましい実施形態では、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,541,440号;同第7,951,369号;同第5,874,540号;同第6,676,924号、および同第8,267,865号に開示されているとおり、抗CEACAM5抗体(例えば、hMN-14、ラブレツズマブ)および/または抗CEACAM6抗体(例えば、hMN-3またはhMN-15)を含む治療用コンジュゲートを使用して、CEACAM5および/またはCEACAM6を発現する様々な癌をいずれも処置することができる。抗CEACAM5、抗CEACAM6、またはこれら2種の組み合わせを使用して治療することができる充実性腫瘍には、これらだけに限定されないが、乳房、肺、膵臓、食道、髄様甲状腺、卵巣、結腸、直腸、膀胱、口腔、および胃の癌が含まれる。腸、呼吸、尿生殖器および乳房の癌を含めた癌の大部分はCEACAM5を発現し、本イムノコンジュゲートで治療され得る。hMN-14抗体は、軽鎖可変領域CDR配列 CDR1(KASQDVGTSVA;配列番号96)、CDR2(WTSTRHT;配列番号97)、およびCDR3(QQYSLYRS;配列番号98)、ならびに重鎖可変領域CDR配列 CDR1(TYWMS;配列番号99)、CDR2(EIHPDSSTINYAPSLKD;配列番号100)、およびCDR3(LYFGFPWFAY;配列番号101)を含むヒト化抗体である。hMN-3抗体は、軽鎖可変領域CDR配列 CDR1(RSSQSIVHSNGNTYLE、配列番号102)、CDR2(KVSNRFS、配列番号103)、およびCDR3(FQGSHVPPT、配列番号104)、ならびに重鎖CDR配列 CDR1(NYGMN、配列番号105)、CDR2(WINTYTGEPTYADDFKG、配列番号106)、およびCDR3(KGWMDFNSSLDY、配列番号107)を含むヒト化抗体である。hMN-15抗体は、軽鎖可変領域CDR配列 SASSRVSYIH(配列番号108);GTSTLAS(配列番号109);およびQQWSYNPPT(配列番号110);ならびに重鎖可変領域CDR配列 DYYMS(配列番号111);FIANKANGHTTDYSPSVKG(配列番号112);およびDMGIRWNFDV(配列番号113)を含むヒト化抗体である。
【0170】
別の好ましい実施形態では、抗CD74抗体(例えば、hLL1、ミラツズマブ、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,074,403号;同第7,312,318号;同第7,772,373号;同第7,919,087号、および同第7,931,903号に開示)を含む治療用コンジュゲートを使用して、これらだけに限定されないが、腎臓、肺、腸管、胃、乳房、前立腺または卵巣の癌、さらには、多発性骨髄腫、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、非ホジキンリンパ腫、およびホジキンリンパ腫などの数種の血液学的癌を含めた、CD74を発現する様々な癌のいずれも処置することができる。hLL1抗体は、軽鎖CDR配列 CDR1(RSSQSLVHRNGNTYLH;配列番号114)、CDR2(TVSNRFS;配列番号115)、およびCDR3(SQSSHVPPT;配列番号116)、ならびに重鎖可変領域CDR配列 CDR1(NYGVN;配列番号117)、CDR2(WINPNTGEPTFDDDFKG;配列番号118)、およびCDR3(SRGKNEAWFAY;配列番号119)を含むヒト化抗体である。
【0171】
別の好ましい実施形態では、抗CD22抗体(例えば、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,789,554号;同第6,183,744号;同第6,187,287号;同第6,306,393号;同第7,074,403号、および同第7,641,901号に開示されているhLL2、エプラツズマブ、またはキメラまたはヒト化RFB4抗体)を含む治療用コンジュゲートを使用して、これらだけに限定されないが、B細胞リンパ腫の無痛性形態、B細胞リンパ腫の侵襲性形態、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、またはびまん性B細胞リンパ腫を含めたCD22を発現する様々な癌のいずれも処置することができる、hLL2抗体は、軽鎖CDR配列 CDR1(KSSQSVLYSANHKYLA、配列番号120)、CDR2(WASTRES、配列番号121)、およびCDR3(HQYLSSWTF、配列番号122)、ならびに重鎖CDR配列 CDR1(SYWLH、配列番号123)、CDR2(YINPRNDYTEYNQNFKD、配列番号124)、およびCDR3(RDITTFY、配列番号125)を含むヒト化抗体である。
【0172】
好ましい実施形態では、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,962,702号;同第7,387,772号;同第7,414,121号;同第7,553,953号;同第7,641,891号、および同第7,670,804号に開示されていとおり、hMu-9 MAbなどの抗CSAp抗体を含む治療用コンジュゲートを使用して、結腸直腸の癌、さらに、膵臓および卵巣の癌を処置することができる。加えて、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,238,786号および同第7,282,567号に開示されているとおり、hPAM4 MAbを含む治療用コンジュゲートを使用して、膵臓癌または他の充実性腫瘍を治療することができる。hMu-9抗体は、軽鎖CDR配列 CDR1(RSSQSIVHSNGNTYLE、配列番号126)、CDR2(KVSNRFS、配列番号127)、およびCDR3(FQGSRVPYT、配列番号128)、ならびに重鎖可変CDR配列 CDR1(EYVIT、配列番号129)、CDR2(EIYPGSGSTSYNEKFK、配列番号130)、およびCDR3(EDL)を含むヒト化抗体である。hPAM4抗体は、軽鎖可変領域CDR配列 CDR1(SASSSVSSSYLY、配列番号132);CDR2(STSNLAS、配列番号133);およびCDR3(HQWNRYPYT、配列番号134);ならびに重鎖CDR配列 CDR1(SYVLH、配列番号135);CDR2(YINPYNDGTQYNEKFKG、配列番号136)、およびCDR3(GFGGSYGFAY、配列番号137)を含むヒト化抗体である。
【0173】
別の好ましい実施形態では、実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,300,655号に開示されているとおり、IMMU31などの抗AFP MAbを含む治療用コンジュゲートを使用して、ヒト化、キメラ、およびヒト抗体形態を使用して肝細胞癌、生殖細胞腫瘍、および他のAFP産生腫瘍を処置することができる。IMMU31抗体は、重鎖CDR配列 CDR1(SYVIH、配列番号138)、CDR2(YIHPYNGGTKYNEKFKG、配列番号139)およびCDR3(SGGGDPFAY、配列番号140)、ならびに軽鎖CDR1(KASQDINKYIG、配列番号141)、CDR2(YTSALLP、配列番号142)、およびCDR3(LQYDDLWT、配列番号143)を含むヒト化抗体である。
【0174】
別の好ましい実施形態では、実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,612,180号に開示されているとおり、hL243などの抗HLA-DR MAbを含む治療用コンジュゲートを使用して、リンパ腫、白血病、皮膚、食道、胃、結腸、直腸、膵臓、肺、乳房、卵巣、膀胱、子宮内膜、子宮頸、睾丸、腎臓、肝臓の癌、黒色腫、または他のHLA-DR産生腫瘍を処置することができる。hL243抗体は、重鎖CDR配列 CDR1(NYGMN、配列番号144)、CDR2(WINTYTREPTYADDFKG、配列番号145)、およびCDR3(DITAVVPTGFDY、配列番号146)、ならびに軽鎖CDR配列 CDR1(RASENIYSNLA、配列番号147)、CDR2(AASNLAD、配列番号148)、およびCDR3(QHFWTTPWA、配列番号149)を含むヒト化抗体である。
【0175】
別の好ましい実施形態では、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,435,803号または同第8,287,864号に開示されているとおり、ベルツズマブ(hA20)、1F5、オビヌツズマブ(GA101)、またはリツキシマブなどの抗CD20 MAbを含む治療用コンジュゲートを使用して、リンパ腫、白血病、免疫性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、エバンス症候群、関節炎、動脈炎、尋常性天疱瘡、腎臓移植片拒絶、心臓移植片拒絶、関節リウマチ、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病、I型糖尿病、GVHD、多発性硬化症、または多発性骨髄腫を処置することができる。hA20(ベルツズマブ)抗体は、軽鎖CDR配列 CDRL1(RASSSVSYIH、配列番号150)、CDRL2(ATSNLAS、配列番号151)およびCDRL3(QQWTSNPPT、配列番号152)、ならびに重鎖CDR配列 CDRH1(SYNMH、配列番号153)、CDRH2(AIYPGNGDTSYNQKFKG、配列番号154)、およびCDRH3(STYYGGDWYFDV、配列番号155)を含むヒト化抗体である。
【0176】
別の好ましい実施形態では、hA19などの抗CD19 MAbを含む治療用コンジュゲートを使用して、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、または急性リンパ芽球性白血病などのB細胞関連リンパ腫および白血病を処置することができる。それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,109,304号、同第7,462,352号、同第7,902,338号、同第8,147,831号、および同第8,337,840号に開示されているとおり、処置することができる他の病態には、急性または慢性免疫性血小板減少症、皮膚筋炎、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形紅斑、IgA腎障害、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓脈管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ヴェグナー肉芽腫症、膜性腎障害、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急性進行性糸球体腎炎、乾癬、および線維化性肺胞隔炎などの自己免疫疾患が含まれる。hA19抗体は、軽鎖CDR配列 CDR1 KASQSVDYDGDSYLN(配列番号156);CDR2 DASNLVS(配列番号157);およびCDR3 QQSTEDPWT(配列番号158)、ならびに重鎖CDR配列 CDR1 SYWMN(配列番号159);CDR2 QIWPGDGDTNYNGKFKG(配列番号160)、およびCDR3 RETTTVGRYYYAMDY(配列番号161)を含むヒト化抗体である。
【0177】
別の好ましい実施形態では、抗テネイシン抗体を含む治療用コンジュゲートを使用して、造血性および充実性腫瘍を処置することができ、また、テネイシンに対する抗体を含むコンジュゲートを使用して、充実性腫瘍、好ましくは、神経膠芽細胞腫などの脳癌を処置することができる。
【0178】
好ましい実施形態では、ヒト疾患の処置で使用される抗体は、抗体のヒトまたはヒト化(CDRグラフトされた)バージョンであるが;抗体のマウスおよびキメラバージョンを使用することもできる。薬剤を送達する種と同じ種のIgG分子が、免疫応答を最小化するためには最も好ましい。このことは、反復処置を考慮するときには特に重要である。ヒトでは、ヒトまたはヒト化IgG抗体が、患者から抗IgG免疫応答を生じさせることがおそらく少ない。hLL1およびhLL2などの抗体は、ターゲット細胞上の内部移行性抗原に結合した後に、急速に内部移行するが、このことは、担持されている化学療法薬も、細胞内に急速に内部移行されることを意味している。しかしながら、内部移行速度が比較的遅い抗体も、選択的治療を行うために使用することができる。
【0179】
別の好ましい実施形態では、病原体に対する抗体が公知であるので、治療用コンジュゲートを病原体に対して使用することができる。例えば、ウイルス、リケッチア、マイコプラズマ、原生動物、真菌、およびウイルスなどの病原体に起因するウイルス感染、細菌感染、真菌、および寄生虫感染を含めた感染性病変によって産生されるか、またはそれに関連するマーカーに特異的に結合する抗体および抗体断片、ならびにそのような微生物に関連する抗原および産物が、特に、それぞれの実施例セクションが参照によって本明細書に組み込まれるHansenら、米国特許第3,927,193号およびGoldenberg、米国特許第4,331,647号、同第4,348,376号、同第4,361,544号、同第4,468,457号、同第4,444,744号、同第4,818,709号、および同第4,624,846号、ならびに上記で挙げたReichertおよびDewitzに開示されている。好ましい実施形態では、実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,440,416号に開示されているとおり、病原体は、HIVウイルス、結核菌、ストレプトコッカス・アガラクチア、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、レジュネラ・ニューモフィラ、化膿連鎖球菌、大腸菌、淋菌、髄膜炎菌、肺炎球菌、クリプトコックス・ネオフォルマンス、ヒストプラスマ・カプスラーツム、B型インフルエンザ菌、梅毒トレポネーマ、ライム病スピロヘーター、緑膿菌、マイコバクテリウムハンセン病、ウシ流産菌、狂犬病ウイルス、インフルエンザウイルス、サイトメガロウイルス、I型単純ヘルペスウイルス、II型単純ヘルペスウイルス、ヒト血清パルボ様ウイルス、呼吸系発疹ウイルス、水痘-帯状疱疹ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、マウス白血病ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、いぼウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、サルウイルス40、マウス乳癌ウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、トキソプラズマ原虫、ランゲルトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、トリパノソーマ・ブルーセイ、マンソン住血吸虫、日本住血吸虫、ウシバベシア、ニワトリ盲腸コクシジウム、回旋糸状虫、熱帯リーシュマニア、旋毛虫、タイレリア・パルバ、胞状条虫、ヒツジ条虫、無鉤条虫、蝟粒条虫、メソセストイド・コルチ、マイコプラズマ・アルツリティディス、マイコプラズマ・ヒオリニス、マイコプラズマ・オラーレ、マイコプラズマ・アルギニニ、アコレプラズマ・レイドロウイィ、マイコプラズマ・サリバリウム、およびマイコプラズマ・ニューモニエからなる群から選択される。
【0180】
より好ましい実施形態では、抗gp120および他のそのような抗HIV抗体を含む本発明の薬物コンジュゲートは、AIDS患者においてHIVの治療薬として使用することができ;かつ結核菌に対する抗体の薬物コンジュゲートは、薬物治療不応性結核のための治療薬として適している。抗gp120MAbのタンパク質(抗HIV MAb)およびシュードモナス外毒素などの毒素の融合タンパク質は、抗ウイルス性特性について調査されている(Van Oigen et al., J Drug Target, 5:75-91, 1998)。AIDS患者におけるHIV感染を処置する試みは、おそらく不十分な有効性または許容されない宿主毒性のために失敗した。本発明の薬物コンジュゲートは、そのようなタンパク質毒素の毒性副作用を有利に欠失しており、したがって、AIDS患者におけるHIV感染の処置に有利に使用される。これらの薬物コンジュゲートは、単独か、または単独で与えられる場合にそのような患者において有効な他の抗生物質もしくは治療薬との組み合わせで投与することができる。抗HIV抗体の候補には、Johanssonら(AIDS. 2006 Oct 3;20(15):1911-5)によって記載されたP4/D10抗エンベロープ抗体、さらにはPolymun(Vienna、オーストリア)によって記載および販売され、他にも、米国特許第5,831,034号、米国特許第5,911,989号、およびVcelar et al., AIDS 2007; 21(16):2161-2170 およびJoos et al., Antimicrob. Agents Chemother. 2006; 50(5):1773-9(すべて、参照によって本明細書に組み込まれる)によって記載された抗HIV抗体が含まれる。HIVのための好ましいターゲティング薬剤は、耐性を克服するために、これらの抗体の様々な組み合わせである。
【0181】
好ましい実施形態では、多価、多重特異性または多価、単一特異性抗体を使用することによって、細胞および病原体へのより有効な組み込みを実施することができる。そのような二価および二重特異性抗体の例は、それぞれの実施例セクションが参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,387,772号;同第7,300,655号;同第7,238,785号;および同第7,282,567号において見出される。これらの多価または多重特異性抗体は、複数の抗原ターゲットおよび同じ抗原ターゲットの複数のエピトープさえ発現するが、細胞または病原体上の単一の抗原ターゲットの不十分な発現または利用可能性によって、多くの場合に免疫療法のための抗体ターゲティングおよび十分な結合を免れてしまう癌および感染性生物(病原体)をターゲティングする際に特に好ましい。複数の抗原またはエピトープをターゲティングすることによって、上記抗体は、ターゲット上で、より長い結合および滞留時間を示し、したがって、本発明においてターゲティングされた薬物でのより高い飽和をもたらす。
【0182】
別の好ましい実施形態では、本治療用コンジュゲートを使用して、自己免疫疾患または免疫系機能障害(例えば、移植片対宿主疾患、臓器移植拒絶)を処置することができる。自己免疫/免疫機能障害疾患を処置するために使用される抗体は、これらだけに限定されないが、BCL-1、BCL-2、BCL-6、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD7、CD8、CD10、CD11b、CD11c、CD13、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD34、CD38、CD40、CD40L、CD41a、CD43、CD45、CD55、CD56、CCD57、CD59、CD64、CD71、CD74、CD79a、CD79b、CD117、CD138、FMC-7およびHLA-DRを含めた、例示的な抗原に結合し得る。上記で検討したこれらの、および他のターゲット抗原に結合する抗体を使用して、自己免疫または免疫機能障害疾患を処置することができる。イムノコンジュゲートで処置することができる自己免疫疾患には、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、ANCA関連血管炎(vasculitides)、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形紅斑、IgA 腎障害、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓脈管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、ヴェグナー肉芽腫症、膜性腎障害、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急性進行性糸球体腎炎、乾癬、または線維化性肺胞隔炎が含まれ得る。
【0183】
別の好ましい実施形態では、本発明のカンプトテシンコンジュゲートと組み合わせて使用される治療薬は、1つまたは複数の同位体を含んでよい。罹患組織を処置するために有用な放射性同位体には、これらだけに限定されないが、111In、177Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、227Th、および211Pbが含まれる。治療用放射性核種は、好ましくは、オージェ放出体では20~6,000keVの範囲、好ましくは、60~200keV、β放出体では100~2,500keV、およびα放出体では4,000~6,000keVの範囲の崩壊エネルギーを有する。有用なβ粒子放出核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは20~5,000keV、より好ましくは100~4,000keV、最も好ましくは500~2,500keVである。オージェ放出粒子で実質的に崩壊する放出性核種も好ましい。例えば、Co-58、Ga-67、Br-80m、Tc-99m、Rh-103m、Pt-109、In-111、Sb-119、I-125、Ho-161、Os-189m、およびIr-192である。有用なβ粒子放出核種の崩壊エネルギーは、好ましくは<1,000keV、より好ましくは<100keV、最も好ましくは<70keVである。α粒子の生成で実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。そのような放射性核種には、これらだけに限定されないが:Dy-152、At-211、Bi-212、Ra-223、Rn-219、Po-215、Bi-211、Ac-225、Fr-221、At-217、Bi-213、Th-227、およびFm-255が含まれる。有用なα粒子放出放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは、2,000~10,000keV、より好ましくは、3,000~8,000keV、最も好ましくは、4,000~7,000keVである。使用される追加の有望な放射性同位体には、11C、13N、15O、75Br、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165Tm、167Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rh、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201Tl、225Ac、76Br、169Ybなどが含まれる。
【0184】
例えば、抗体またはコンジュゲートに結合しているキレート基を使用して、放射性核種および他の金属を送達することができる。NOTA、DOTA、およびTETAなどの大環状キレートが、様々な金属および放射性金属と共に、最も詳細には、それぞれガリウム、イットリウム、および銅の放射性核種と共に使用される。環のサイズを該当する金属に合わせることによって、そのような金属-キレート錯体は非常に安定に作製され得る。223Raを錯化するための大環状ポリエーテルなどの他の環状キレートを使用することもできる。
【0185】
本明細書に記載のカンプトテシンコンジュゲートと組み合わせて使用される治療薬には、例えば、ビンカアルカロイド、アンスラサイクリン、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)、タキサン、代謝拮抗薬、チロシンキナーゼ阻害薬、アルキル化薬、抗生物質、Cox-2阻害薬、抗有糸分裂薬、抗脈管形成薬、およびアポトーシス促進薬、詳細には、ドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、他のカンプトテシン、ならびに抗癌薬のこれらの群および他の群に由来する他のものなどの化学療法薬が含まれる。他の癌化学療法薬には、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホナート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、ピリミジン類似体、プリン類似体、白金配位錯体、ホルモンなどが含まれる。適切な化学療法薬は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 19th Ed. (Mack Publishing Co. 1995)およびGOODMAN AND GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, 7th Ed. (MacMillan Publishing Co. 1985)、さらに、これらの刊行物の改訂版に記載されている。試験薬などの他の適切な化学療法薬が、当業者に知られている。
【0186】
使用される例示的な薬物には、これらだけに限定されないが、5-フルオロウラシル、アファチニブ、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アンスラサイクリン、アキシチニブ、AVL-101、AVL-291、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリチアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、Cox-2阻害薬、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン(camptothecan)、クリゾチニブ、シクロフォスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ジナシクリブ(dinaciclib)、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2P-DOX)、シアノ-モルホリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エルロチニブ、エストラムスチン、エピドフィロトキシン(epidophyllotoxin)、エルロチニブ、エンチノスタット、エストロゲン受容体結合薬、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、エトポシドホスファート、エキセメスタン、フィンゴリモド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’-O-ジオレオイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害薬、フラボピリドール、フォスタマチニブ(fostamatinib)、ガネテスピブ(ganetespib)、GDC-0834、GS-1101、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イブルチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、L-アスパラギナーゼ、ラパチニブ、レノリダミド(lenolidamide)、ロイコボリン、LFM-A13、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニトロスウレア(nitrosurea)、オアラパリブ、プリコマイシン(plicomycin)、プロカルバジン、パクリタキセル、PCI-32765、ペントスタチン、PSI-341、ラロキシフェン、セムスチン、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、タモキシフェン、テマゾロミド(temazolomide)(DTICの水性形態)、トランス白金、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、バタラニブ、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンカアルカロイド、およびZD1839が含まれる。このような薬剤は、本明細書に記載のコンジュゲートの一部であってよいか、または代わりに、上記のコンジュゲートと組み合わせて、そのコンジュゲートの前に、同時に、または後に投与することができる。別法では、当技術分野で公知のとおりの1種または複数の治療用の裸の抗体を、上記のコンジュゲートと組み合わせて使用することができる。例示的な治療用の裸の抗体は上記している。
【0187】
カンプトテシンコンジュゲートに関して使用することができる治療薬は、ターゲティング部分にコンジュゲートされた毒素を含んでもよい。この点において使用することができる毒素には、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌腸毒素-A、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が含まれる(例えば、Pastan. et al., Cell (1986), 47:641およびSharkey and Goldenberg, CA Cancer J Clin. 2006 Jul-Aug;56(4):226-43を参照されたい)。本明細書において使用するために適した追加の毒素は、当業者に知られており、米国特許第6,077,499号に開示されている。
【0188】
治療薬のまた別の群は、1種または複数免疫調節薬を含んでよい。使用される免疫調節薬は、サイトカイン、幹細胞成長因子、リンホトキシン、造血性因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン、およびそれらの組み合わせから選択される。腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、インターロイキン(IL)などの造血性因子、顆粒球-コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)などのコロニー刺激因子、インターフェロン-α、-β、-γ、または-λなどのインターフェロン、および「S1因子」と名付けられたものなどの幹細胞成長因子が特に有用である。サイトカインのうちには、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;瀘胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;肝成長因子;プロスタグランジン、線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子-αおよび-β;ミュラー管抑制因子;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポイエチン(TPO);NGF-βなどの神経成長因子;血小板-成長因子;TGF-αおよびTGF-βなどの形質転換成長因子(TGF);インスリン様成長因子-Iおよび-II;エリスロポイエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロン-α、-β、および-γなどのインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)などのコロニー刺激因子(CSF);IL-1、IL-1a、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12;IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21、IL-25、LIF、kit-リガンド、またはFLT-3などのインターロイキン(IL)、アンジオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子、ならびにリンホトキシン(LT)が含まれる。本明細書で使用する場合、サイトカインという用語には、天然供給源由来または組換え細胞培養物由来のタンパク質、および天然配列サイトカインの生物学的に活性な同等物が含まれる。
【0189】
使用されるケモカインには、RANTES、MCAF、MIP1-α、MIP1-β、およびIP-10が含まれる。
【0190】
当業者は、抗体または抗体断片にコンジュゲートしたカンプトテシンを含む本イムノコンジュゲートを、単独で、または第2の抗体、第2の抗体断片、第2のイムノコンジュゲート、放射性核種、毒素、薬物、化学療法薬、放射線療法、ケモカイン、サイトカイン、免疫調節薬、酵素、ホルモン、オリゴヌクレオチド、RNAi、またはsiRNAなどの1種または複数の他の治療薬と組み合わせて使用することができることを了解するであろう。そのような追加の治療薬は、本抗体-薬物イムノコンジュゲートとは別々に、それと組み合わせて、またはそれに結合させて投与することができる。
【0191】
製剤および投与
コンジュゲートの適切な投与経路には、限定ではないが、経口、非経口、皮下、直腸、経粘膜、腸管投与、筋肉内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、硝子体中、腹腔内、鼻腔内、または眼内注射が含まれる。好ましい投与経路は、非経口である。別法では、本化合物を、全身にではなく、局所で、例えば、充実性腫瘍へ直接、化合物を注射することを介して投与することができる。
【0192】
イムノコンジュゲートは、イムノコンジュゲートを薬学的に適切な添加剤と混合物中で組み合わせることによる、薬学的に有用な組成物を調製するために公知の方法に従って製剤化することができる。滅菌リン酸緩衝食塩水が、薬学的に適切な添加剤の一例である。他の適切な添加剤は、当業者に周知である。例えば、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition (Lea & Febiger 1990)、およびGennaro (ed.), REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)、ならびに改訂版を参照されたい。
【0193】
好ましい実施形態では、当該イムノコンジュゲートを、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES);N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA);N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES);4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES);2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES);3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS);3-(N-モルホリニル)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO);およびピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)[Pipes]からなる群から選択される緩衝液を使用して、グッドの生物学的緩衝液(pH6~7)中で製剤化する。より好ましい緩衝液は、好ましくは、20~100mMの濃度範囲、より好ましくは、約25mMのMESまたはMOPSである。25mM MES、pH6.5が最も好ましい。この製剤はさらに、25mMトレハロースおよび0.01%v/vポリソルベート80を添加剤として含んでよく、加えた添加剤の結果として、最終緩衝液濃度は22.25mMに調節される。好ましい貯蔵方法は、-20℃から2℃の温度範囲で貯蔵されるコンジュゲートの凍結乾燥製剤としての貯蔵であり、最も好ましい貯蔵は2℃~8℃での貯蔵である。
【0194】
このイムノコンジュゲートは、例えば、大量注射、低速注入、または連続注入を介しての静脈内投与のために製剤化することができる。好ましくは、本発明の抗体を、約4時間未満の期間にわたって、より好ましくは、約3時間未満の期間にわたって注入する。例えば、最初の25~50mgを30分以内に、好ましくはさらに15分以内に注入し、残りを続く2~3時間にわたって注入することができるであろう。注射用の製剤は、単位剤形で、例えば、アンプルで、または保存剤が加えられている多回投与用容器で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液剤、液剤、または乳剤などの形態をとってよく、また、懸濁化剤、安定剤、および/または分散剤などの処方剤を含有してよい。別法では、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば、発熱物質不含の滅菌水で構成するための散剤形態であってもよい。
【0195】
追加の薬学的方法を使用して、治療用コンジュゲートの作用持続時間を制御することもできる。制御放出製剤は、イムノコンジュゲートを錯化または吸着するポリマーを使用することによって調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーには、ポリ(エチレン-コ-酢酸ビニル)からなるマトリックス、およびステアリン酸ダイマーおよびセバシン酸のポリ無水物コポリマーからなるマトリックスが含まれる。Sherwood et al., Bio/Technology 10: 1446 (1992)。そのようなマトリックスからのイムノコンジュゲートの放出速度は、イムノコンジュゲートの分子量、マトリックス内のイムノコンジュゲートの量、および分散される粒子のサイズに左右される。Saltzman et al., Biophys. J. 55: 163 (1989); Sherwood et al.上記。他の固体剤形は、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition (Lea & Febiger 1990), and Gennaro (ed.), REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)、ならびにそれらの改訂版に記載されている。
【0196】
一般に、ヒトに投与されるイムノコンジュゲートの投薬量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の医学的状態、および先行する医学的履歴などの因子に応じて変化する。受容者に、単回の静脈内注入として約1mg/kg~24mg/kgの範囲であるイムノコンジュゲートの投薬量を提供することが望まれ得るが、状況が必要とする場合には、より少ない、またはより多い投薬量を投与することもできる。70kgの患者での1~20mg/kgの投薬量は、例えば、70~1,400mgであるか、または、1.7mの患者では、41~824mg/mである。この投薬量を、必要な場合には、例えば、週1回で4~10週間にわたって、週1回で8週間にわたって、または週1回で4週間にわたって反復することができる。維持療法において必要な場合には、隔週で数か月にわたって、または月に1回または3か月に1回で複数ヶ月にわたってなどの、より低い頻度で施すこともできる。好ましい投薬量には、これらだけに限定されないが、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、22mg/kg、および24mg/kgが含まれ得る。1~24mg/kgの範囲内の任意の量を使用することができる。この投薬量を好ましくは、複数回、週1回または2回投与する。4週間、より好ましくは8週間、より好ましくは16週間以上の最短投薬量スケジュールを使用することができる。投与スケジュールは、週1回または2回の投与を、(i)毎週;(ii)隔週;(iii)1週間の治療と、それに続く2週間、3週間、または4週間の休止;(iv)2週間の治療と、それに続く2週間、3週間、または4週間の休止;(v)3週間の治療と、それに続く2週間、3週間、4週間、5週間の休止;(vi)4週間の治療と、それに続く2週間、3週間、4週間、5週間の休止;(vii)5週間の治療と、それに続く2週間、3週間、4週間、5週間の休止;および(viii)毎月からなる群から選択されるサイクルで含むことができる。このサイクルを、4、6、8、10、12、16または20回以上反復することができる。
【0197】
別法では、イムノコンジュゲートを、1回の投薬として、2または3週ごとに、合計少なくとも3回の投薬で繰り返して投与することができる。または、週2回で4~6週間にわたる。投薬量を約200~300mg/m(1.7m患者では1回の投薬あたり340mg、または70kgの患者では4.9mg/kg)まで少なくするならば、毎週1回、さらには2回で4~10週間にわたって投与することができる。別法では、投薬量スケジュールを短縮することができる。すなわち、2または3週ごとに2~3か月にわたるように短縮することができる。しかしながら、毎週1回または2~3週ごとに1回12mg/kgなどのさらに高い用量も、低速の静脈内注入によって、反復投薬サイクルで投与することができることが決定されている。投薬スケジュールを任意選択により、他の間隔で反復することができ、また、投薬量を、様々な非経口経路を介して、用量およびスケジュールを適切に調節して施すことができる。
【0198】
好ましい実施形態では、ムノコンジュゲートを癌を治療するために使用する。癌の例には、これらだけに限定されないが、癌、リンパ腫、神経膠芽細胞腫、黒色腫、肉腫、および白血病、骨髄腫、またはリンパ悪性病変が含まれる。そのような癌のより特定の例は、以下に記載されるものであり、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮性扁平上皮細胞癌)、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、神経膠星状細胞腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、および肺の扁平上皮癌を含めた肺癌、腹膜の癌、胃腸癌を含めた胃癌、膵臓癌、多形神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞癌、肝細胞癌、神経内分泌腫瘍、髄様甲状腺癌、分化型甲状腺癌、乳癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、前立腺癌、外陰癌、肛門癌、陰茎癌、さらには、頭頸部癌が含まれる。用語「癌」には、原発性悪性細胞または腫瘍(例えば、元の悪性疾患または腫瘍の部位以外の対象の身体の部位に、その細胞が移動していないもの)および続発性悪性細胞または腫瘍(例えば、元の腫瘍の部位とは異なる二次的な部位への悪性細胞または腫瘍細胞の転移、遊走から生じたもの)が含まれる。
【0199】
癌または悪性病変の他の例には、これらだけに限定されないが:急性小児期リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞癌、成人(原発性)肝臓癌、成人急性リンパ球性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ球性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓癌、成人軟部組織肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性病変、肛門癌、神経膠星状細胞腫、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳幹膠腫、脳腫瘍、乳癌、腎盂および尿管の癌、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳神経膠星状細胞腫、大脳神経膠星状細胞腫、子宮頸癌、小児期(原発性)肝細胞癌、小児期(原発性)肝臓癌、小児期急性リンパ芽球性白血病、小児期急性骨髄性白血病、小児期脳幹膠腫、小児期小脳神経膠星状細胞腫、小児期大脳神経膠星状細胞腫、小児期頭蓋外胚細胞腫瘍、小児期ホジキン病、小児期ホジキンリンパ腫、小児期視床下部および視覚路膠腫、小児期リンパ芽球性白血病、小児期髄芽細胞腫、小児期非ホジキンリンパ腫、小児期松果腺およびテント上原始神経外胚葉腫瘍(Pineal and Supratentorial Primitive Neuroectodermal Tumor)、小児期原発性肝臓癌、小児期横紋筋肉腫、小児期軟部組織肉腫、小児期視覚路および視床下部膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌膵島細胞癌、子宮内膜癌、脳室上衣細胞腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連腫瘍、外分泌膵臓癌(Exocrine Pancreatic Cancer)、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝臓外胆管癌、眼癌、女性乳癌、ゴーシェ病、胆嚢癌、胃癌、胃腸類癌、胃腸腫瘍、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、ヘアリーセル白血病、頭頚部癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸管癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌、膵島細胞膵臓癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇および口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ増殖性障害、マクログロブリン血症、男性乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、黒色腫、中皮腫、転移性潜在原発性扁平頸部癌、転移原発性扁平頸部癌、転移性扁平頸部癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞性新生物、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄性白血病、骨髄増殖性障害、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、潜在原発性転移扁平頸部癌、口咽頭癌、骨-/悪性線維性肉腫、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、骨の骨肉腫/悪性線維性組織球腫、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓癌、パラプロテイン血症、真性多血症、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞種、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓細胞癌、腎盂および尿管癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平頸部癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉および松果腫瘍、T細胞リンパ腫、睾丸癌、胸腺腫、甲状腺癌、腎盂および尿管の移行細胞癌、移行性腎盂および尿管癌、絨毛性腫瘍、尿管および腎盂細胞癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、視覚路および視床下部膠腫、外陰癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、ならびに任意の他の過剰増殖性疾患、さらに、上記で列挙した臓器系に位置する新形成が含まれる。
【0200】
本明細書において記載され、かつ特許請求の範囲において記載される方法および組成物を使用して、悪性または前悪性状態を処置し、これらだけに限定されないが、上記の障害を含めた新生物または悪性段階に進行することを予防することができる。そのような使用は、新形成または癌への上記の進行が公知であるか、または疑われる状態において、特に、過形成、化生、または最も詳細には、異形成からなる非新生物性細胞成長が生じている場合に適応とされる(そのような異常な成長状態の総説については、Robbins and Angell, Basic Pathology, 2d Ed., W. B. Saunders Co., Philadelphia, pp. 68-79(1976)を参照されたい)。
【0201】
異形成は往々にして、癌の前兆であり、主に上皮において見出される。これは、非新生細胞増殖の最も無秩序の形態であり、個々の細胞の均一性および細胞の建築的配位の喪失を伴う。異形成は特徴として、慢性刺激または炎症が存在するところに生じる。治療され得る異形成障害には、これらだけに限定されないが、無汗性外胚葉性異形成、前後異形成、窒息性胸郭異形成、心房指異形成、気管支肺異形成、大脳異形成、子宮頚部異形成、軟骨外胚葉性異形成、鎖骨頭蓋骨異形成、先天性外胚葉性異形成、頭蓋骨幹異形成、頭蓋手根足根骨異形成、頭蓋骨幹端異形成、ぞうげ質異形成、骨幹異形成、外胚葉性異形成、エナメル質異形成、脳-眼異形成、半肢骨端異形成(dysplasia epiphysialis hemimelia)、多発性骨端異形、点状骨端異形成、上皮異形成、顔面指趾生殖器異形成、家族性線維性顎異形成、家族性白色ひだ性異形成、線維筋性異形成、線維性骨異形成、病勢盛んな骨性異形成(florid osseous dysplasia)、遺伝性腎臓-網膜異形成、発汗性外胚葉性異形成、発汗減少症性外胚葉性異形成、リンパ球減少性胸腺異形成、乳房異形成、下顎顔面異形成、骨幹端異形成、モンディーニ異形成、単発性線維性異形成、粘膜上皮異形成、多発性骨端異形成、眼耳脊椎異形成、眼歯指異形成、眼脊椎異形成、歯原性異形成、眼下顎異形成(opthalmomandibulomelic dysplasia)、根尖端セメント質異形成、多骨性線維性骨異形成、偽軟骨発育不全脊椎骨端異形成、網膜異形成、鼻中隔-眼異形成、脊椎骨端異形成、および心室橈骨異形成が含まれる。
【0202】
処置することができる追加の新生物発生前障害には、これらだけに限定されないが、良性異常増殖性障害(例えば、良性腫瘍、線維性嚢胞状態、組織肥大、腸管ポリープまたは腺腫、および食道異形成)、白板症、角化症、ボーウェン病、農夫肌、太陽性口唇炎、および日光性角化症が含まれる。
【0203】
好ましい実施形態では、本発明の方法を使用して、癌、特に、上記で列挙した癌の増殖、進行、および/または転移を阻害する。
【0204】
追加の過剰増殖性疾患、障害、および/または状態には、これらだけに限定されないが、白血病(急性白血病;例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病[骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病を含む]を含む)および慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性[顆粒球性]白血病および慢性リンパ球性白血病)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、H鎖病、ならびに、これらだけに限定されないが、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛上皮腫、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、膠腫、神経膠星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫(emangioblastoma)、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫などの肉腫および癌を含めた充実性腫瘍などの悪性病変および関連障害の進行および/または転移が含まれる。
【0205】
イムノコンジュゲートで処置することができる自己免疫疾患には、急性および慢性免疫性血小板減少症、皮膚筋炎、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、狼瘡腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、ANCA関連血管炎(vasculitides)、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形紅斑、IgA 腎障害、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓脈管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、ヴェグナー肉芽腫症、膜性腎障害、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急性進行性糸球体腎炎、乾癬、または線維化性肺胞隔炎が含まれ得る。
【0206】
キット
様々な実施形態が、患者において罹患組織を処置するために適した構成要素を含むキットに関し得る。例示的なキットは、本明細書に記載のとおりの少なくとも1つのコンジュゲートされた抗体または他のターゲティング部分を含み得る。投与のための組成物含有構成要素が、経口送達などによる消化管を介しての送達のために製剤化されていない場合、そのキット構成要素をいくつかの他の経路を介して送達することを可能にするデバイスが含まれ得る。非経口送達などの適用のためのデバイスの1種は、対象の身体に組成物を注入するために使用されるシリンジである。吸入デバイスも使用することができる。
【0207】
キット構成要素は、一緒に包装されているか、または2つ以上の容器に分離されていてよい。一部の実施形態では、容器は、再構成に適した組成物の凍結乾燥させた滅菌製剤を含有するバイアルであってよい。キットは他にも、他の試薬の再構成および/または希釈に適した1種または複数の緩衝液を含有してもよい。使用することができる他の容器には、これらだけに限定されないが、パウチ、トレイ、ボックス、チューブなどが含まれる。キット構成要素を容器内で滅菌的に包装および維持することができる。含まれてよい別の構成要素は、キットを使用する個人に向けた、使用に関する指示書である。
【実施例
【0208】
様々な本発明の実施形態を以下の実施例によって説明するが、これは、本発明の範囲を限定するものではない。
【0209】
(一般的方法)
以下で使用する略語:DCC、ジシクロヘキシルカルボジイミド;NHS、N-ヒドロキシスクシンイミド、DMAP、4-ジメチルアミノピリジン;EEDQ、2-エトキシ-1-エトキシカルボニル-1,2-ジヒドロキノリン;MMT、モノメトキシトリチル;PABOH、p-アミノベンジルアルコール;PEG、ポリエチレングリコール;SMCC、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート;TBAF、テトラブチルアンモニウムフルオリド;TBDMS、tert-ブチルジメチルシリルクロリド。
【0210】
以下の実施例では、Moon et al. (J. Medicinal Chem. 51:6916-6926, 2008)に記載されている手順に従って、トリホスゲンおよびDMAPを使用して、ヒドロキシ化合物のクロロホルマートを調製した。抽出後処理は、クロロホルム、ジクロロメタン、または酢酸エチルでの抽出、および任意選択により、飽和炭酸水素塩、水、および飽和塩化ナトリウムでの洗浄を指す。フラッシュクロマトグラフィーは、別段に述べない限り、230~400メッシュシリカゲルおよびメタノール-ジクロロメタン勾配を使用し、15%v/vメタノール-ジクロロメタンまでを使用して行った。逆相HPLCは、プレカラムフィルターを備えた7.8×300mm C18 HPLCカラムを使用し、かつ1分あたり3mLの流速で10分での100%溶媒Aから100%溶媒Bの溶媒勾配および1分あたり4.5mLの流速で5または10分間にわたる100%溶媒Bの維持を使用する方法Aによって;またはプレカラムフィルターを備えた4.6×30mm Xbridge C18、2.5μmカラムを使用し、1分あたり1.5mLの流速で4分間にわたる100%溶媒Aから100%溶媒Bへの溶媒勾配および1分あたり2mLの流速で1分間にわたる100%溶媒Bを使用する方法Bによって行った。溶媒Aは、0.3%酢酸アンモニウム水溶液、pH4.46であり、溶媒Bは、9:1のアセトニトリル-酢酸アンモニウム水溶液(0.3%)、pH4.46であった。HPLCを、360nmおよび254nmに設定されたデュアルインライン吸光度検出器によってモニターした。
【0211】
(実施例1)CL6-SN-38の調製
CL6-SN-38は、スキーム-1において表されている。市販のO-(2-アジドエチル)-O’-(N-ジグリコリル-2-アミノエチル)ヘプタエチレングリコール(「PEG-N」;227mg)を、DCC(100mg)、NHS(56mg)、および触媒量のDMAPで、ジクロロメタン10mL中で10分間にわたって活性化させた。この混合物に、L-バリノール(46.3mg)を加え、反応混合物を周囲温度において1時間にわたって撹拌した。濾過し、続いて、溶媒除去し、フラッシュクロマトグラフィー処理して、透明な油性物質214mgを得た。この中間体(160mg)を、10-O-BOC-SN-38-20-O-クロロホルマートと反応させたたが、後者は、10-O-BOC-SN-38(123mg)から、トリホスゲンおよびDMAPを使用して生成した。カップリング反応を、ジクロロメタン4mL中で10分間にわたって行い、この反応混合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、生成物130mg(収率45%)を泡状の物質として得た。HPLC:t11.80分;エレクトロスプレー質量スペクトル:M+Na:m/z1181。
【0212】
クリック付加環化に必要なマレイミド含有アセチレン試薬、すなわち、4-(N-マレイミドメチル)-N-(2-プロピニル)シクロヘキサン-1-カルボキサミドを、SMCC0.107gおよびプロパルギルアミン0.021mL(0.018g;1.01当量)をジクロロメタン中、1.1当量のジイソプロピルエチルアミンを使用して反応させることによって調製した。1時間後に、溶媒を除去し、生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、生成物(無色の粉末)83mgを得た。エレクトロスプレー質量スペクトルは、陽イオンモードでm/e275(M+H)にピークおよびm/e192に塩基ピークを示し、これは、C1518について計算された構造:275.1390(M+H)と一致した。実測値:275.1394(精密質量)。
【0213】
アジド中間体(126mg)をDMSO(1.5mL)および水(0.4mL)に溶かし、4-(N-マレイミドメチル)-N-(2-プロピニル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド60mgおよび臭化銅15mgと反応させ、周囲温度において30分間撹拌した。反応混合物を後処理した後に、フラッシュクロマトグラフィー処理によって、付加環化生成物116mg(収率75%)を得た。HPLC:t 11.20分;エレクトロスプレー質量スペクトル:それぞれm/z1433および1456にM+HおよびM+Na。最後に、TFA(5mL)、ジクロロメタン(1mL)、アニソール(0.1mL)、および水(0.05mL)の混合物での脱保護、続く、エーテルでの沈殿、その後のフラッシュクロマトグラフィーによって、生成物、CL6-SN-38を、ゴム状の物質として得た。HPLC:t 9.98分;エレクトロスプレー質量スペクトル:それぞれm/z1333および1356にM+HおよびM-H(ネガティブイオンモード)。
【化9】
【0214】
(実施例2)CL7-SN-38の調製
この合成をスキーム2に図示する。L-バリノール(40mg)を、無水ジクロロメタン10mL中、周囲温度において、アルゴン下で3時間にわたって市販のFmoc-Lys(MMT)-OH(253mg)およびEEDQ(107mg)と反応させた。抽出後処理、続く、フラッシュクロマトグラフィーによって、生成物Fmoc-Lys(MMT)-バリノールを淡黄色の液体(200mg;収率約70%)として得た。HPLC:t14.38分;エレクトロスプレー質量スペクトル:M+H:m/z727。この中間体(200mg)をジエチルアミン(10mL)で脱保護し、生成物(135mg)をフラッシュクロマトグラフィーの後に、純度約90%で得た。HPLC:t 10.91分;エレクトロスプレー質量スペクトル:m/z527にM+Na。この生成物(135mg)を、EEDQ(72mg、1.1当量)の存在下、ジクロロメタン10mL中で、市販のO-(2-アジドエチル)-O’-(N-ジグリコリル-2-アミノエチル)ヘプタエチレングリコール(「PEG-N」;150mg、1.1当量)とカップリングさせ、周囲温度において一晩撹拌させた。粗製物質をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、精製生成物240mgを薄黄色のオイル(収率約87%)として得た。HPLC:t 11.55分;エレクトロスプレー質量スペクトル:それぞれm/z1041および1063にM+HおよびM+Na。
【0215】
この中間体(240mg)を10-O-TBDMS-SN-38-20-O-クロロホルムマートと反応させたが、後者は、10-O-TBDMS-SN-38(122mg)から、トリホスゲンおよびDMAPを使用して生成した。カップリング反応をジクロロメタン5mL中で10分間にわたって行い、反応混合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、生成物327mgを淡黄色の泡として得た。エレクトロスプレー質量スペクトル:m/z1574にM+H。生成物全体を、ジクロロメタン10mL中で5分間にわたってTBAF0.25mmolと反応させ、反応混合物を100mLに希釈し、ブラインで洗浄した。
【0216】
粗製の生成物(250mg)をDMSO(2mL)および水(0.4mL)に溶かし、4-(N-マレイミドメチル)-N-(2-プロピニル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド114mg(実施例1において記載したとおり調製)および臭化銅30mgと反応させ、周囲温度において1時間にわたって撹拌した。フラッシュクロマトグラフィーによって、最後から二番目の中間体150mgを得た。最後に、MMT基を、TFA(0.5mL)およびアニソール(0.05mL)のジクロロメタン(5mL)中の混合物で3分間にわたって脱保護し、続いて、フラッシュクロマトグラフィーによって精製して、CL7-SN-3869mgをゴム状の物質として得た。HPLC:t 9.60分;エレクトロスプレー質量スペクトル:それぞれm/z1461および1459にM+HおよびM-H(ネガティブイオンモード)
【化10】
【0217】
(実施例3)CL6-SN-38-10-O-COEtの調製
実施例1のCL6-SN-38(55.4mg)をジクロロメタン(5mL)に溶かし、クロロギ酸エチル(13.1mg;11.5μL)およびジイソプロピルエチルアミン(52.5mg;71μL)と反応させ、アルゴン下で20分間にわたって撹拌した。反応混合物をジクロロメタン100mLで希釈し、0.1M HCl、半飽和炭酸水素ナトリウム、およびブライン各100mLで洗浄し、乾燥させた。溶媒を除去した後に、フラッシュクロマトグラフィーによって、表題生成物59mgを得た。HPLC:t 10.74分;精密質量:計算値1404.6457(M+H)および1426.6276(M+Na);実測値:1404.6464(M+H)および1426.6288(M+Na)。
【0218】
(実施例4)CL7-SN-38-10-O-COEtの調製
実施例3において記載したとおりの手順および精製を使用して、実施例2のCL7-SN-38の前駆体(80mg)を10-O-クロロホルマートに変換した。収量:60mg。HPLC:t 12.32分;エレクトロスプレー質量スペクトル:それぞれm/z1806および1804にM+HおよびM-H(ネガティブイオンモード)。ジクロロメタン中のジクロロ酢酸およびアニソールを使用してこの物質を脱保護して、表題生成物を得た。HPLC:t 10.37分;エレクトロスプレー質量スペクトル:m/z1534にM+H。
【0219】
(実施例5)CL6-SN-38-10-O-CORおよびCL7-SN-38-10-O-CORの調製
この実施例は、SN-38の10-OH基を、「BOC」の代わりに、カルボナートまたはエステルとして保護して、最終生成物が、10-OH保護基の脱保護を必要とせずに、抗体にコンジュケーションする用意ができているようにすることを示している。この基は、タンパク質コンジュゲートがインビボ投与された後に、生理学的pH条件下で容易に脱保護される。これらのコンジュゲートでは、「R」は、(CH-N(CH(ここで、nは2~10である)などの置換アルキル、もしくは(CH)n-CH(ここで、nは0~10である)などの単純なアルキルであってよいか、またはこれは「CH-(CH)n-O-」(ここで、nは0~10である)などのアルコキシ部分、またはO-(CH-N(CH(ここで、nは2~10であり、末端アミノ基は任意選択により、溶性を増強するために第四級塩の形態である)もしくは「RO-(CH-CH-O)-CH-CH-O-」(ここで、Rは、エチルまたはメチルであり、nは0~10の値を有する整数である)などの置換アルコキシ部分であってよい。後者のカテゴリーの最も単純なバージョンでは、R=「-O-(CH-OCH」である。これらの10-ヒドロキシ誘導体は、最終誘導体がカルボナートであるべきならば、選択された試薬のクロロホルマートで処理することによって、容易に調製される。典型的には、SN-38などの10-ヒドロキシ含有カンプトテシンを、ジメチルホルムアミド中、塩基としてトリエチルアミンを使用して、モル当量のクロロホルマートで処理する。これらの条件下では、20-OH位は、影響を受けない。10-O-エステルを形成するために、選択された試薬の酸塩化物を使用する。実施例3および4の単純な炭酸エチルについて例示したとおりの高度中間体を使用して、そのような誘導体化を好都合に達成する。
【0220】
(実施例6)CL2A-SN-38の調製
市販のFmoc-Lys(MMT)-OH(0.943g)、p-アミノベンジルアルコール(0.190g)の塩化メチレン(10mL)中の混合物に、EEDQ(0.382g)を室温にて加え、4時間にわたって撹拌した。抽出後処理、続くフラッシュクロマトグラフィーによって、物質1.051gを白色の泡として得た。HPLC分析をすべて、セクション0148の「一般的方法」において述べたとおりの方法Bによって行った。HPLC保持時間:3.53分、エレクトロスプレー質量スペクトルは、m/e745.8(M+H)およびm/e780.3(M+Cl)にピークを示し、構造に一致した。この中間体(0.93g)をジエチルアミン(10mL)に溶かし、2時間にわたって撹拌した。溶媒除去の後に、残基をヘキサン中で洗浄して、中間体(スキーム-3の(2))0.6gを無色の沈澱物(HPLCによる純度91.6%)として得た。HPLC保持時間:2.06分。エレクトロスプレー質量スペクトルは、m/e523.8(M+H)、m/e546.2(M+Na)およびm/e522.5(M-H)にピークを示した。
【0221】
この粗製中間体(0.565g)を、塩化メチレン中のEEDQ塩化メチレン(10mL)を使用して市販のO-(2-アジドエチル)-O’-(N-ジグリコリル-2-アミノエチル)ヘプタエチレングリコール(「PEG-N3」、0.627g)とカップリングさせた。溶媒除去およびフラッシュクロマトグラフィーによって、生成物0.99g(スキーム-3中の(3);薄黄色のオイル;収率87%)を得た。HPLC保持時間:2.45分。エレクトロスプレー質量スペクトルは、m/e1061.3(M+H)、m/e1082.7(M+Na)、およびm/e1058.8(M-H)にピークを示し、構造と一致した。この中間体(0.92g)を、塩化メチレン(10mL)中、10分間にわたってアルゴン下で、10-O-TBDMS-SN-38-20-O-クロロホルマート(スキーム-3(5))と反応させた。混合物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、0.944gを薄黄色のオイル(スキーム-3の(6);収率=68%)として得た。HPLC保持時間:4.18分。塩化メチレン(10mL)中のこの中間体(0.94g)に、TBAF(THF中1M、0.885mL)および酢酸(0.085mL)の塩化メチレン(3mL)中の混合物を加え、次いで、10分間にわたって撹拌した。混合物を塩化メチレン(100mL)で希釈し、0.25Mのクエン酸ナトリウムおよびブラインで洗浄した。溶媒除去によって、黄色の油状生成物0.835gを得た。HPLC保持時間:2.80分(純度99%)。エレクトロスプレー質量スペクトルは、m/e1478(M+H)、m/e1500.6(M+Na)、m/e1476.5(M-H)、m/e1590.5(M+TFA)にピークを示し、構造と一致した。
【化11】
【0222】
このアジド-誘導体化SN-38中間体(0.803g)を、塩化メチレン(10mL)中、CuBr(0.0083g)、DIEA(0.01mL)、およびトリフェニルホスフィン(0.015g)の存在下で18時間にわたって4-(N-マレイミドメチル)-N-(2-プロピニル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド(0.233g)と反応させた。0.1M EDTA(10mL)での洗浄を含めた抽出後処理、およびフラッシュクロマトグラフィーによって、0.891gを黄色の泡(収率=93%)として得た。HPLC保持時間:2.60分。エレクトロスプレー質量スペクトルは、m/e1753.3(M+H)、m/e1751.6(M-H)、1864.5(M+TFA)にピークを示し、これは構造と一致した。最後に、最後から二番目の中間体(0.22g)をジクロロ酢酸(0.3mL)およびアニソール(0.03mL)の塩化メチレン(3mL)中の混合物で脱保護し、続いて、エーテルで沈殿させて、CL2A-SN-38(スキーム-3の(7))0.18g(収率97%率)を薄黄色の粉末として得た。HPLC保持時間:1.88分。エレクトロスプレー質量スペクトルは、m/e1480.7(M+H)、1478.5(M-H)にピークを示し、構造と一致した。
【0223】
(実施例7)CL2E-SN-38の調製
塩化メチレン(50mL)中のN,N’-ジメチルエチレンジアミン(3mL)を塩化モノメトキシトリチル(1.7g)と反応させた。1時間撹拌した後に、溶媒を減圧下で除去し、粗製の生成物を抽出後処理によって回収した(黄色のオイル;2.13g)。HPLC分析はすべて、セクション0148の「一般」において述べたとおりの方法Bによって行った。HPLC保持時間:2.28分。この中間体(スキーム-4(1);0.93g)をその場で活性化SN-38に加え、後者(スキーム-4の(2))は、SN-38(0.3g)をDMF中で1時間にわたってp-ニトロフェニルクロロホルマート(0.185g)およびDIEA(0.293mL)と反応させることによって調製した。溶媒を除去した後に、残渣を非活性化シリカゲルで精製して、白色の固体0.442gを得た。
【0224】
この中間体(0.442g)をトリフルオロ酢酸(1mL)およびアニソール(0.1mL)の塩化メチレン(5mL)中の混合物で脱保護し、続いて、エーテルで沈殿させて、生成物(スキーム-4中の(3))0.197gを白色の固体として得た。この中間体((3);0.197g)を、活性化アジド含有-ジペプチド組み込み-PEG-リンカー(スキーム-4中の(5))とカップリングさせ、その際、この活性化は、PEG-リンカー(スキーム-4中の(4);0.203g)を塩化メチレン(8mL)中でビス(4-ニトロフェニル)カルボナート(0.153g)およびDIEA(0.044mL)と反応させることによって行った。フラッシュクロマトグラフィーによって、アジド誘導体化SN-38中間体生成物(スキーム-4中の(6))0.2gをガラス状の固体として得た。HPLC保持時間:2.8分。エレクトロスプレー質量スペクトルは、m/e1740.5(M+H)、m/e1762.9(M+Na)、m/e1774.9(M+Cl)にピークを示し、構造と一致した。この中間体(スキーム-4中の(6);0.2g)を、塩化メチレン中、CuBr(0.007g)、DIEA(0.008mL)、およびトリフェニルホスフィン(0.012g)の存在下で18時間にわたって、4-(N-マレイミドメチル)-N-(2-プロピニル)シクロヘキサン-1-カルボキサミド(0.067g)との付加環化に掛けた。0.1M EDTAでの処理を含む反応混合物の後処理、続く、フラッシュクロマトグラフィーによって、最後から二番目の中間体0.08gを薄黄色の泡として得た。HPLC:t=2.63分。エレクトロスプレー質量スペクトルは、m/e2035.9(M+Na)、m/e2047.9(M+Cl)にピークを示し、構造と一致した。最後に、トリフルオロ酢酸(0.2mL)、アニソール(0.12mL)、および水(0.06mL)の塩化メチレン(2mL)中の混合物でのこの中間体(0.08g)の脱保護、続く、エーテルでの沈殿によって、生成物、CL17-SN-38(CL2E-SN-38とも称される)0.051gを薄黄色の粉末として得た(収率=69%)。HPLC保持時間:1.95分、純度約99%。エレクトロスプレー質量スペクトルはm/e1741.1(M+H)、1775.5(M+Cl)にピークを示し、構造と一致した。
【化12】
【0225】
(実施例8)二官能性SN-38生成物と弱還元抗体とのコンジュゲーション
抗CEACAM5ヒト化MAb、hMN-14(ラベツズマブとしても公知)、抗CD22ヒト化MAb、hLL2(エプラツズマブとしても公知)、抗CD20ヒト化MAb、hA20(ベルツズマブとしても公知)、抗EGP-1ヒト化MAb、hRS7、および抗ムチンヒト化MAb、hPAM4(クリバツズマブとしての公知)をこれらの研究では使用した。5.4mM EDTAを含有する40mM PBS、pH7.4中で、37℃(浴)において45分間にわたって、ジチオスレイトール(DTT)を50~70倍のモル過剰で使用して、各抗体を還元した。還元した生成物をサイズ排除クロマトグラフィーおよび/または透析濾過によって精製し、適切な緩衝液にpH6.5において緩衝液交換した。チオール含有率をエルマンアッセイによって決定したところ、これは6.5~8.5SH/IgGの範囲内であった。別法では、抗体を、リン酸緩衝液中、5~7の範囲のpHで、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)で還元し、続いて、その場でコンジュゲーションさせた。補助溶媒として7~15%v/vでDMSOを使用し、かつ周囲温度において20分間にわたってインキュベートして、還元したMAbを約10~15倍のモル過剰の実施例1の「CL6-SN-38」、または実施例2の「CL7-SN-38」、または実施例3の「CL6-SN-38-10-O-COEt」、または実施例4の「CL7-SN-38-10-O-COEt」、実施例6のCL2A-SN-38、または実施例7のCL2E-SN-38と反応させた。コンジュゲートを遠心分離SEC、疎水性カラムの通過、および最後に限外濾過-透析濾過によって精製した。生成物をSN-38について、366nmでの吸光度および標準的な値との相関によってアッセイし、タンパク質濃度を280nmでの吸光度から演繹し、この波長でのSN-38吸光度のスピルオーバーについて補正した。こうして、SN-38/MAb置換比を決定した。精製コンジュゲートを凍結乾燥製剤としてガラスバイアル中に貯蔵し、真空下で封止し、-20℃のフリーザー内で貯蔵した。これらのコンジュゲートの一部について得られたSN-38モル置換比(MSR)(典型的には5~7の範囲内である)を表7に示す。
【表7】
【0226】
(実施例9)ヒト膵臓癌または結腸癌の前臨床モデルにおけるインビボでの治療有効性
皮下にヒト膵臓癌または結腸腫瘍異種移植片を有する免疫無防備状態の無胸腺ヌードマウス(雌)を、特異的CL2A-SN-38コンジュゲートもしくは対照コンジュゲートのいずれかで処置するか、または処置せずに放置した。特異的コンジュゲートの治療有効性を観察した。図1は、Capan 1膵臓腫瘍モデルを示しており、hRS7(抗EGP-1)、hPAM4(抗ムチン)、およびhMN-14(抗CEACAM5)抗体の特異的CL2A-SN-38コンジュゲートは、対照のhA20-CL2A-SN-38コンジュゲート(抗CD20)および未処置対照よりも良好な有効性を示した。ヒト膵臓癌のBXPC3モデルにおいても同様に、特異的hRS7-CL2A-SN-38は、対照処置よりも良好な治療有効性を示した(図2)。同様に、ヒト結腸癌の進行性LS174Tモデルにおいて、特異的hMN-14-CL2A-SN-38での処置は、非処置よりも有効であった(図3)。
【0227】
(実施例10)hMN-14-[CL1-SN-38]およびhMN-14-[CL2-SN-38]を使用しての、ヌードマウスにおけるGW-39ヒト結腸腫瘍の肺転移のインビボ治療
結腸癌の肺転移モデルを、GW-39ヒト結腸腫瘍懸濁液を静脈内注射することによってヌードマウスにおいて樹立し、治療を14日後に開始した。特異的抗CEACAM5抗体コンジュゲートであるhMN14-CL1-SN-38およびhMN14-CL2-SN-38、さらには非ターゲティング抗CD22 MAb対照コンジュゲートであるhLL2-CL1-SN-38およびhLL2-CL2-SN-38、ならびにhMN14およびSN-38の等用量混合物を、q4d×8の投与スケジュールで、種々の用量で注射した。図4(MSR=SN-38/抗体モル置換比)は、hMN-14コンジュゲートによる選択的治療効果を示している。250μgの当量投薬量では、hMN14-CL1-SN-38またはhMN14-CL2-SN-38で処置されたマウスは、107日超の中央生存期間を示した。肺癌細胞を特異的にターゲティングしない対照のコンジュゲート化抗体hLL2-CL1-SN-38およびhLL2-CL2-SN-38で処置されたマウスは、56および77日の中央生存期間を示し、コンジュゲートされていないhMN14 IgGおよび遊離のSN-38で処置されたマウスは、43.5日の未処置の生理食塩水対照に匹敵する45日の中央生存期間を示した。コンジュゲートされていない抗体および遊離の化学療法薬単独よりもかなり有効な、コンジュゲートされた癌細胞ターゲティングされた抗体-SN-38コンジュゲートの有効性の有意かつ意外な増大が明らかに見られる。コンジュゲートされた抗体の治療効果の用量応答性も観察された。これらの結果は、同じインビボでのヒト肺癌系におけるコンジュゲートされていない抗体および遊離SN-38の両方を合わせた効果と比較すると、SN-38-抗体コンジュゲートの明らかな優位性を実証している。
【0228】
(実施例11)多様な上皮癌を有効に処置するためのヒト化抗TROP-2 IgG-SN-38コンジュゲートの使用
概要
この研究の目的は、いくつかのヒト充実性腫瘍種に対するSN-38-抗TROP-2抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の有効性を評価すること、およびマウスおよびサルにおけるその忍容性を評定することであり、後者は、ヒトに対してと同様に、hRS7に対する組織交差反応性を用いる。2種のSN-38誘導体、CL2-SN-38およびCL2A-SN-38を、抗TROP-2-ヒト化抗体、hRS7にコンジュゲートさせた。これらのイムノコンジュゲートをインビトロで、安定性、結合、および細胞傷害性について特徴決定した。有効性を、5種の異なる、TROP-2抗原を発現するヒト充実性腫瘍異種移植片モデルにおいて試験した。毒性を、マウスおよびカニクイザルにおいて評定した。
【0229】
2種のSN-38誘導体のhRS7コンジュゲートは、薬物置換(約6)、細胞結合(K約1.2nmol/L)、細胞傷害性(IC50約2.2nmol/L)、およびインビトロでの血清安定性(t/1/2約20時間)において同等であった。ADCへの細胞の暴露によって、PARP切断をもたらすシグナル伝達経路が実証されたが、p53およびp21アップレギュレーションにおける遊離のSN-38に対する差異は認められなかった。非ターゲティング対照ADCと比較した場合に、有意な抗腫瘍作用が、非毒性用量でのhRS7-SN-38によって、Calu-3(P≦0.05)、Capan-1(P<0.018)、BxPC-3(P<0.005)、およびCOLO205腫瘍(P<0.033)を有するマウスにおいて生じた。マウスは、2×12mg/kg(SN-38当量)の用量を許容し、ALTおよびAST肝臓酵素レベルの一時的な上昇を伴った。2×0.96mg/kgを注入されたカニクイザルは、血球数の一過性の減少のみを示したが、重要なことに、その値は、正常値未満に低下することはなかった。
【0230】
本発明者らは、抗TROP-2 hRS7-CL2A-SN-38 ADCは、一連のヒト充実性腫瘍種に対して有意かつ特異的な抗腫瘍作用をもたらすと結論付けた。これは、組織TROP-2発現がヒトと類似しているサルにおいて(Cardillo et al., 2011, Clin Cancer Res 17:3157-69.)、忍容性が良好であった。
【0231】
翻訳関連性
充実性腫瘍を有する患者のイリノテカン処置の成功は、大部分、CPT-11プロドラッグから活性なSN-38代謝産物への低い変換率によって限定されている。他者がSN-38のターゲティングされていない形態を、この変換の必要性をバイパスし、SN-38を受動的に腫瘍に送達するための手段として調査している。本発明者らは、SN-38を、ヒト化抗TROP-2抗体、hRS7に非共有結合によってコンジュゲートさせた。この抗体-薬物コンジュゲートは、非小細胞肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、および扁平上皮細胞肺癌を含めた一連の皮下ヒト癌異種移植片モデルにおいて、すべて非毒性用量(例えば、≦3.2mg/kgの累積SN-38当量用量)で、特異的抗腫瘍作用を有する。
【0232】
TROP-2は、多くの上皮癌において、しかし一部の正常組織においても広く発現されるので、カニクイザルにおける用量漸増研究を、このコンジュゲートの臨床安全性を評定するために行った。サルは24mgのSN-38当量/kgを軽度の可逆的な毒性のみで許容した。その腫瘍ターゲティングおよび安全性プロファイルによれば、hRS7-SN-38は、イリノテカンに対して反応する充実性腫瘍の管理における改善をもたらし得る。
【0233】
序論
GA733-1(胃抗原733-1)、EGP-1(上皮性糖タンパク質-1)、およびTACSTD2(腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサー)としても公知のヒト栄養膜細胞表面抗原(TROP-2)は、様々なヒト癌において発現され、一部では予後に重要性を有し、より進行性の疾患に関連している(例えば、Alberti et al., 1992, Hybridoma 11:539-45; Stein et al., 1993, Int J Cancer 55:938-46; Stein et al., 1994, Int J Cancer Suppl. 8:98-102を参照されたい)。マウスTROP-2をトランスフェクトされたマウス膵臓癌細胞系におけるTROP-2の機能的役割の研究は、インビトロでの低血清条件での増殖、遊走、および足場非依存的成長の増大、ならびに成長速度の増強を明らかにし、インビボでのKi-67発現の増大および高い転移可能性を証拠とした(Cubas et al., 2010, Mol Cancer 9:253)。
【0234】
多くの上皮癌におけるTROP-2抗原の分布によって、これは、魅力的な治療ターゲットとなっている。Steinおよびその同僚ら(1993, Int J Cancer 55:938-46)は、数種の充実性腫瘍に存在するEGP-1に結合するRS7-3G11(RS7)と名付けられた抗体を特徴決定したが、この抗原は、一部の正常な組織においても、通常は比較的低い強度か、または限定的な領域において発現された。ターゲティングおよび治療有効性が、放射標識されたRS7を使用して、数種のヒト腫瘍異種移植片において記録されたが(Shih et al., 1995, Cancer Res 55:5857s-63s; Stein et al., 1997, Cancer 80:2636-41; Govindan et al., 2004, Breast Cancer Res Treat 84:173-82)、この内部移行性抗体は、コンジュゲートされていない形態では、治療活性を示さなかった(Shih et al., 1995, Cancer Res 55:5857s-63s)。しかしながら、インビトロでは、TROP-2陽性癌に対して抗体依存的細胞傷害活性(ADCC)を実証した。
【0235】
本発明者らは、SN-38のいくつかの誘導体、イリノテカンの活性な構成要素であるトポイソメラーゼ-I阻害薬、またはCPT-11にカップリングされた抗CEACAM5(CD66e)IgGを使用する、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)の調製を報告した(Moon et al., 2008, J Med Chem 51:6916-26; Govindan et al., 2009, Clin Cancer Res 15:6052-61)。誘導体は、それらのインビトロでの血清安定性特性において様々であり、インビボ研究によって、1つの形態(CL2と名付けられた)が、ヒト結腸癌および膵臓癌異種移植片の成長の防止または停止において、多かれ少なかれ安定性を有する他の連結よりも有効であることが見出された。
【0236】
重要なことに、これらの作用は、非毒性用量で生じ、当初試験では、用量制限の毒性を決定することができなかった(Govindan et al., 2009, Clin Cancer Res 15:6052-61)。これらの結果は、励みとなるものであったが、CEACAM5抗体が、ADCの成功に重要と考えられる特質である内部移行をしないので、意外でもあった。本発明者らは、抗CEACAM5-SN-38コンジュゲートの治療活性は、抗体に局在化した後の腫瘍内でのSN-38の低速放出に関連し得るであろうと推測した。イリノテカンは、細胞が、その成長期のS期の間に暴露されると最良に働き、持続放出は、応答を改善すると予測される。実際に、ポリエチレングリコール(PEG)またはミセルなどの非ターゲティング血漿延長剤(plasma extending agent)にカップリングされたSN-38は、イリノテカンまたはSN-38単独に対して、有効性の改善を示しており(例えば、Koizumi et al., 2006, Cancer Res 66:10048-56)、この機構に対する追加の裏付けが得られている。
【0237】
上皮癌とのRS7抗体の広い反応性およびその内部移行能力により、本発明者らは、RS7-SN-38コンジュゲートは、薬物の持続放出からだけではなく、直接的な細胞内送達からも恩恵を受け得ると仮定した。したがって、本発明者らは、マウスRS7抗体(hRS7)のヒト化バージョンを使用して、SN-38コンジュゲートを調製し、その有効性を試験した。SN-38誘導体をわずかに変更し(Govindan et al., 2009, Clin Cancer Res 15:6052-61)、これによって、そのインビトロ安定性またはインビボでの有効性を変えることなく、コンジュゲートの品質を改善した。この新たな誘導体(CL2Aと名付けられた)は目下、SN-38を抗体にカップリングさせるための好ましい薬剤である。本明細書において、本発明者らは、ヌードマウスに移植された複数種の上皮癌細胞系におけるhRS7-SN-38コンジュゲートの、非毒性投薬量での有効性を示し、他の研究は、かなりより高い用量も許容されうるであろうことを明らかにしている。より重要なことに、ヒトと類似した組織においてTROP-2も発現するサルにおける毒性研究によって、hRS7-SN-38は、マウスにおいて治療上有効な用量よりもかなり高い用量で許容されることが示され、このコンジュゲートが、広範な上皮癌を有する患者を処置するための有望な薬剤である証拠を提示した。
【0238】
物質および方法
細胞系、抗体、および化学療法薬。この研究で使用するすべてのヒト癌細胞系は、アメリカ培養細胞系統保存機関から購入した。これらには、Calu-3(非小細胞肺癌)、SK-MES-1(扁平上皮細胞肺癌)、COLO 205(結腸腺癌)、Capan-1およびBxPC-3(膵臓腺癌)、およびPC-3(前立腺癌)が含まれた。ヒト化RS7 IgGおよび対照ヒト化抗CD20(hA20 IgG、ベルツズマブ)および抗CD22(hLL2 IgG、エプラツズマブ)抗体は、Immunomedics,Incにおいて調製した。イリノテカン(20mg/mL)は、Hospira,Incから入手した。
【0239】
SN-38イムノコンジュゲートおよびインビトロ態様。CL2-SN-38の合成は、以前に記載されている(Moon et al., 2008, J Med Chem 51:6916-26)。hRS7 IgGへのそのコンジュゲーションおよび血清安定性を、記載されているとおりに行った(Moon et al., 2008, J Med Chem 51:6916-26; Govindan et al., 2009, Clin Cancer Res 15:6052-61)。CL2A-SN-38(分子量1480)およびそのhRS7コンジュゲートの調製、ならびに安定性、結合、および細胞傷害性研究を、以前に記載されたとおりに行った(Moon et al., 2008, J Med Chem 51:6916-26)。細胞溶解産物を調製し、p21Waf1/Cip、p53、およびPARP(ポリ-ADP-リボースポリメラーゼ)についての免疫ブロット法を行った。
【0240】
インビボ治療研究。すべての動物研究について、SN-38イムノコンジュゲートおよびイリノテカンの用量は、SN-38当量で示される。6の平均SN-38/IgG置換比に基づき、20gのマウスへのADC500μgの用量(25mg/kg)は、0.4mg/kgのSN-38を含有する。イリノテカン用量も同様に、SN-38当量として示される(すなわち、40mgのイリノテカン/kgは、24mg/kgのSN-38の当量である)。雌のNCr無胸腺ヌード(nu/nu)マウス(4~8週齢)および雄のSwiss-Websterマウス(10週齢)をTaconic Farmsから購入した。忍容性研究は、SNBL USA,Ltdによるカニクイザル(Macaca fascicularis;2.5~4kg、雄および雌)において行った。動物に、種々のヒト癌細胞系を皮下移植した。腫瘍体積(TV)を、キャリパーを使用して二次元で測定することによって決定し、体積は、L×w/2と定義した(式中、Lは腫瘍の最長寸法であり、wは最短寸法である)。治療を開始したとき、腫瘍は0.10から0.47cmの間のサイズ範囲であった。各実験における処置レジメン、投薬量、および動物数は、結果に記載する。凍結乾燥hRS7-CL2A-SN-38および対照ADCを再構成し、必要な場合には、滅菌生理食塩水中で希釈した。静脈内投与したイリノテカンを除いて、すべての試薬を腹腔内投与した(0.1mL)。投与計画は、ADCを4日毎に、または週2回、様々な時間にわたって施した本発明者らの先行調査によって影響を受けた(Moon et al., 2008, J Med Chem 51:6916-26; Govindan et al., 2009, Clin Cancer Res 15:6052-61)。この投薬頻度は、より連続したADCへの暴露を可能にするように、インビトロでのコンジュゲートの血清半減期の検討を反映したものである。
【0241】
統計。成長曲線を、当初TVにおけるパーセント変化として経時的に決定した。腫瘍成長の統計的解析は、曲線下面積(AUC)に基づいた。個々の腫瘍成長のプロファイルを、直線-曲線モデリングによって得た。F検定を使用して、成長曲線の統計的解析前に、群の間での変動一様性を決定した。片側t検定を使用した生理食塩水対照(P≦0.05で有意)を除いて、両側t検定を使用して、様々な処置群および対照との間の統計的有意性を評定した。群内の最初の動物を進行により安楽死させるときまでに限り、AUCの統計比較を行った。
【0242】
薬物動態および生体内分布111In-放射標識されたhRS7-CL2A-SN-38およびhRS7 IgGを、皮下SK-MES-1腫瘍(約0.3cm)を有するヌードマウスに注射した。1群には、20μCi(タンパク質250μg)の111In-hRS7-CL2A-SN-38を静脈内注射したが、別の群には、20μCi(タンパク質250μg)の111In-hRS7 IgGを投与した。様々な時点で、マウス(1時点あたり5匹)に麻酔をかけ、心臓内穿刺によって出血させて、安楽死させた。腫瘍およびさまざまな組織を除去し、秤量し、γシンチレーションによってカウントして、組織1グラムあたりの注射された用量のパーセンテージ(%ID/g)を決定した。第3群には、250μgの標識されていないhRS7-CL2A-SN-38を、111In-hRS7-CL2A-SN-38を投与する3日前に注射し、同様に検屍した。F検定を使用して変動一様性を決定した後に、両側t検定を使用して、取り込まれたhRS7-CL2A-SN-38およびhRS7 IgGを比較した。血液クリアランスでの薬物動態分析を、WinNonLinソフトウェア(Parsight Corp.)を使用して行った。
【0243】
Swiss-Websterマウスおよびカニクイザルにおける忍容性。簡単には、マウスを4群に分けて、それぞれ、結果に記載するとおり、酢酸ナトリウム緩衝液対照、または3種の異なる用量のhRS7-CL2A-SN-38(SN-38 4、8、または12mg/kg)のいずれかの2mL腹腔内注射を0日目および3日目に投与し、続いて、血液および血清を収集した。カニクイザル(雄3匹および雌3匹;2.5~4.0kg)に、2種の異なる用量のhRS7-CL2A-SN-38を投与した。投薬量、時間、ならびに起こり得る血液毒性および血清ケミストリーを評価するために出血させたサルの数を結果に記載する。
【0244】
結果
hRS7-CL2A-SN-38の安定性および効力。2種の異なる連結を使用して、SN-38をhRS7 IgGにコンジュゲートさせた。第1は、CL2-SN-38と称され、以前に記載されている(Moon et al., 2008, J Med Chem 51:6916-26; Govindan et al., 2009, Clin Cancer Res 15:6052-61)。CL2リンカーの合成をわずかに変化させて、フェニルアラニン部分を除去した。この変化は合成を簡略にしたが、コンジュゲーションの結果に影響を及ぼさなかった(例えば、CL2-SN-38およびCL2A-SN-38は両方とも、IgG分子1個あたりSN-38約6個を組み込まれている)。サイドバイサイド比較では、血清安定性、抗原結合、またはインビトロ細胞傷害性において有意な差は見いだされなかった(図示せず)。
【0245】
CL2からCL2AへのSN-38リンカーの変化がインビボ効力に影響を与えないことを確認するために、hRS7-CL2AおよびhRS7-CL2-SN-38を、COLO 205またはCapan-1腫瘍を有するマウスにおいて(図示せず)、0.4mgまたは0.2mg/kgのSN-38をそれぞれ週2回×4週間使用し、両方の研究において0.25cmの腫瘍から出発して比較した。hRS7-CL2AおよびCL2-SN-38コンジュゲートは両方とも、未処置対照(COLO 205モデルでは生理食塩水に対してAUC14日P<0.002;Capan-1モデルでは生理食塩水に対してAUC21daysP<0.001)および非ターゲティング抗CD20対照ADC、hA20-CL2A-SN-38(COLO-205モデルではAUC14日P<0.003;Capan-1モデルではAUC35days:P<0.002)と比較して、腫瘍成長を有意に阻害した。Capan-1モデルでの研究の終了時に(140日)、hRS7-CL2A-SN-38で処置したマウスの50%およびhRS7-CL2-SN-38マウスの40%が腫瘍を有さなかったのに対して、hA20-ADC-処置動物では20%のみが、疾患の可視的兆候を示さなかった。重要なことに、両方の腫瘍モデルにおいて、2種の特異的コンジュゲートの間で有効性の差異はなかった。
【0246】
作用機序。インビトロでの細胞傷害性研究によって、hRS7-CL2A-SN-38は、複数の異なる充実性腫瘍系に対してnmol/Lの範囲のIC50値を有することが実証された(表8)。遊離のSN-38でのIC50は、すべての細胞系において、コンジュゲートよりも低かった。TROP-2発現と、hRS7-CL2A-SN-38に対する感受性との間に相関はなかったが、遊離SN-38に対するADCのIC50比は、TROP-2発現性が高い細胞ほど、低くなり、おそらく、より多くの抗原が存在すると、薬物を内部移行させる能力が高まることを反映している。
【表8】
【0247】
SN-38は、細胞においていくつかのシグナル伝達経路を活性化させて、アポトーシスをもたらすことが公知である。本発明者らの当初の研究では、初期シグナル伝達事象(p21Waf1/Cip1およびp53)および後期アポトーシス事象の1つ[ポリ-ADP-リボースポリメラーゼ(PARP)の切断]に関係する2種のタンパク質の発現をインビトロで調査した(図示せず)。BxPC-3では、SN-38は、p21Waf1/Cip1発現の20倍の増大をもたらしたのに対して、hRS7-CL2A-SN-38は、10倍のみの増大をもたらし、この細胞系における遊離のSN-38でのより高い活性と一致することが見出された(表8)。しかしながら、hRS7-CL2A-SN-38は、Calu-3では、p21Waf1/Cip1発現を遊離SN-38よりも2倍超増大させた。
【0248】
hRS7-CL2A-SN-38媒介性シグナル伝達事象と遊離のSN-38媒介性シグナル伝達事象との間のより大きな不一致が、p53発現において観察された。BxPC-3およびCalu-3の両方において、遊離のSN-38でのp53のアップレギュレーションは、48時間まで明確でなかったのに対して、hRS7-CL2A-SN-38は、24時間以内にp53をアップレギュレートした(図示せず)。加えて、ADCに暴露された細胞におけるp53発現の方が、SN-38と比較すると、両方の細胞系において高かった(図示せず)。興味深いことに、hRS7 IgGは、p21Waf1/Cip1発現に対して明らかな作用は有さなかったが、48時間暴露の後にようやくではあるが、BxPC-3およびCalu-3の両方において、p53のアップレギュレーションを誘導した。後期アポトーシス事象の点において、PARPの切断は、SN-38またはコンジュゲートのいずれかと共にインキュベートした場合に、両方の細胞系において明らかであった(図示せず)。切断PARPの存在は、BxPC-3では24時間目により高く、これは、高いp21の発現およびその低いIC50と相関する。ADCよりも高い遊離SN-38での切断程度は、細胞傷害性所見と一致した。
【0249】
hRS7-SN-38の有効性。TROP-2は複数のヒト癌において広く発現するので、研究を複数の異なるヒト癌モデルにおいて行い、これを、hRS7-CL2-SN-38連結の評価から開始したが、後では、CL2A-連結を有するコンジュゲートを使用した。0.04mgのSN-38/kgのhRS7-CL2-SN-38を4日毎×4で施されたCalu-3を有するヌードマウスは、当量のhLL2-CL2-SN-38を投与された動物と比較して、有意に改善された応答を有した(それぞれTV=0.14±0.22cm 対 0.80±0.91cm;AUC42daysP<0.026;図5のA)。用量を0.4mg/kgのSN-38まで増加させたときに、用量-応答が観察された。このより高い用量レベルでは、特異的hRS7コンジュゲートを施されたマウスはすべて、28日以内に「治癒」し、147日目の研究終了時まで腫瘍を有さないままであったのに対して、無関係ADCで処置された動物では、腫瘍が再成長した(特異的対無関係AUC98日:P=0.05)。hRS7 IgGおよびSN-38の混合物を与えられたマウスでは、腫瘍は、56日目までに>4.5倍に進行した6(TV=1.10±0.88cm;hRS7-CL2-SN-38に対してAUC56日P<0.006)。
【0250】
有効性を、ヒト結腸(COLO 205)および膵臓(Capan-1)腫瘍異種移植片でも調査した。COLO 205腫瘍を有する動物において(図5のB)、hRS7-CL2-SN-38(0.4mg/kg、q4d×8)は、28日間の処置期間にわたって、腫瘍成長を防止し、対照抗CD20 ADC(hA20-CL2-SN-38)、またはhRS7 IgGと比較して、腫瘍は有意に小さかった(それぞれTV=0.16±0.09cm、1.19±0.59cm、および1.77±0.93cm;AUC28日P<0.016)。マウス血清は、ヒト血清よりも効率的にイリノテカンをSN-38に変換するので、イリノテカン(24mg SN-38/kg、q2d×5)のMTDは、hRS7-CL2-SN-38と同様に有効であったが、イリノテカンのSN-38用量(累積2,400μg)は、コンジュゲート(合計64μg)よりも37.5倍多かった。
【0251】
Capan-1を有する動物は、hRS7-CL2-SN-38コンジュゲートに対して当量のSN-38用量で投与した場合、イリノテカン単独には有意な応答は示さなかった(例えば、35日目に、平均腫瘍サイズは、0.4mg SN-38/kgのhRS7-SN-38を施された動物では0.04±0.05cmであったが、0.4mg/kg SN-38を投与されたイリノテカン処置動物では、1.78±0.62cmであった;AUCday35P<0.001;図5のC)。イリノテカン用量を4mg/kg SN-38まで10倍増加させると、応答は改善されたが、0.4mg/kgのSN-38用量レベルでのコンジュゲートほどには、なお有意ではなかった(TV=0.17±0.18cm 対 1.69±0.47cm、AUCday49P<0.001)。等用量の非ターゲティングhA20-CL2-SN-38も、イリノテカン処置動物と比較すると、有意な抗腫瘍作用を有したが、特異的なhRS7コンジュゲートは、無関係ADCよりも有意に良好であった(TV=0.17±0.18cm 対 0.80±0.68cm、AUC49日P<0.018)。
【0252】
次いで、hRS7-CL2A-SN-38 ADCでの研究を、他の2つのヒト上皮癌モデルに広げた。BxPC-3ヒト膵臓腫瘍を有するマウスにおいて(図5のD)、hRS7-CL2A-SN-38はこの場合にも、生理食塩水もしくは当量の非ターゲティングhA20-CL2A-SN-38(TV=0.24±0.11cmに対して、それぞれ1.17±0.45cmおよび1.05±0.73cm;AUCday21P<0.001)、または10倍多いSN-38当量用量で施されるイリノテカン(それぞれTV=0.27±0.18cmに対して0.90±0.62cm;AUC25日P<0.004)で処置された対照マウスと比較して、腫瘍成長を有意に阻害した。興味深いことに、0.4mg/kgのADCで処置されたSK-MES-1ヒト扁平上皮細胞肺腫瘍を有するマウスでは(図5のE)、腫瘍成長阻害は、生理食塩水またはコンジュゲートされていないhRS7 IgGよりも優れているが(それぞれTV=0.36±0.25cmに対して1.02±0.70cmおよび1.30±1.08cm;AUC28日、P<0.043)、非ターゲティングhA20-CL2A-SN-38またはイリノテカンのMTDは、特異的hRS7-SN-38コンジュゲートと同じ抗腫瘍作用を提示した。すべてのマウス研究において、hRS7-SN-38ADCは、体重減少の点において、忍容性が良好であった(図示せず)。
【0253】
hRS7-CL2A-SN-38の生体内分布。hRS7-CL2A-SN-38またはコンジュゲートされていないhRS7 IgGの生体内分布を、SK-MES-1 ヒト扁平上皮細胞肺癌異種移植片を有するマウスにおいて(図示せず)、個々の111In標識基質を使用して比較した。薬物動態分析を行って、hRS7-CL2A-SN-38のクリアランスを、コンジュゲートされていないhRS7に対して決定した(図示せず)。ADCは、当量のコンジュゲートされていないhRS7よりも早くクリアランスされ、ADCは、約40%短い半減期および平均滞留時間を示した。それにもかかわらず、これは、腫瘍取り込みに対して軽微な影響しか有さなかった(図示せず)。24時間時点および48時間目では有意な差があったが、72時間(取り込みピーク)までに、腫瘍中での両方の薬剤の量は類似した。正常な組織では、肝臓および脾臓での差違が、最も顕著であった(図示せず)。注射から24時間目に、hRS7 IgGよりも、肝臓において>2倍多いhRS7-CL2A-SN-38が存在した。逆に、脾臓には、取り込みピークの時点(48時間時点)で、hRS7-CL2A-SN-38よりも3倍多い親hRS7 IgGが存在した。残りの組織における取り込みおよびクリアランスは一般に、血液濃度における差異を反映した。
【0254】
週2回の投与が治療のために投与されたので、111In標識された抗体を注射する3日前に、0.2mg/kg(タンパク質250μg)のhRS7 ADCの前用量を初めに投与された動物群における腫瘍取り込みを調査した。前投与マウスにおける111In-hRS7-CL2A-SN-38の腫瘍取り込みは、前用量を投与されなかった動物と比較するといずれの時点でもかなり低減された(例えば、72時間目に、前投与された腫瘍取り込みは12.5%±3.8% ID/gであるのに対して、前投与を投与されなかった動物では25.4%±8.1% ID/gであった;P=0.0123)。前投与は、血液クリアランスまたは組織取り込みに明らかな影響は有さなかった(図示せず)。これらの研究は、一部の腫瘍モデルにおいて、特異的な抗体の腫瘍付着は、先行する用量(複数可)によって低減され得、このことがおそらく、治療応答の特異性が、ADC用量の増大に伴ってなぜ低下し得るのか、また、さらなる用量漸増が、なぜ示されないのかを説明することを示唆している。
【0255】
Swiss-WebsterマウスおよびカニクイザルにおけるhRS7-CL2A-SN-38の忍容性。Swiss-Websterマウスは、それぞれ4、8、および12mgのSN-38/kgのhRS7-CL2A-SN-38の2回投与を3日間にわたって許容し、軽微な一過性体重減少を伴った(図示せず)。造血性毒性は生じず、血清ケミストリーが、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)およびアラニントランスアミナーゼの上昇を明らかにしたにすぎない(図示せず)。処置の7日後に、ASTは、3つの処置群すべてにおいて正常値(>298U/L)を超えて上昇し(図示せず)、割合の最も高いマウスは2×8mg/kg群においてであった。しかしながら、処置の後15日目までに、多くの動物は、正常範囲内であった。ALTレベルも、処置の7日以内に、正常範囲(>77U/L)を超え(図示せず)、15日目までに正常化した証拠があった。これらのマウスすべてからの肝臓は、組織損傷の組織学的証拠を示さなかった(図示せず)。腎臓機能の点において、グルコースおよびクロリドレベルのみが、処置群において多少上昇した。2×8mg/kgでは、7匹のマウスのうちの5匹が、やや高いグルコースレベルを示したが(273~320mg/dLの範囲、正常な263mg/dLの上端)、これは、注射から15日目までに正常に戻った。同様に、塩化物レベルも、2つの最高投薬量群において116~127mmol/Lの範囲(正常範囲115mmol/Lの上端)でやや上昇し(2×8mg/kg群のマウスで57%および2×12mg/kg群のマウスで100%)、注射から15日過ぎまで高いままであった。このことはまた、多くの塩化物が消化管による吸収を介して得られるので、胃腸毒性を示し得たが;しかしながら、終了時には、調査したいずれの臓器系においても、組織損傷の組織学的証拠はなかった。
【0256】
マウスは、hRS7が結合するTROP-2を発現しないので、臨床使用のためのhRS7コンジュゲートの可能性を決定するためには、より適切なモデルが必要であった。免疫組織学的研究によって、ヒトおよびカニクイザルの両方において多数の組織(乳房、眼、胃腸管、腎臓、肺、卵巣、卵管、膵臓、副甲状腺、前立腺、唾液腺、皮膚、胸腺、甲状腺、扁桃、尿管、膀胱、および子宮;図示せず)での結合が明らかになった。この交差反応性に基づき、忍容性研究をサルにおいて行った。
【0257】
2×0.96mgのSN-38/kgのhRS7-CL2A-SN-38を投与される群は、注入の後から研究の終了まで、有意な臨床事象を示さなかった。体重減少は7.3%を超えず、15日目までに順応体重に戻った。一過性の低下が血球数データの多くで認められたが(図示せず)、値は、成長範囲以下には低下しなかった。血清ケミストリーにおいて、異常な値は見いだされなかった。11日目(最後の注射から8日後)に検屍した動物の組織病理学は、造血性器官(胸腺、下顎、および腸間膜リンパ節、脾臓、および骨髄)、胃腸臓器(胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、および直腸)、雌の生殖臓器(卵巣、子宮、および膣)、および注射部位において顕微鏡変化を示した。これらの変化は、軽微から中等度の範囲であり、この後の時点で完全に回復する傾向のある胸腺および胃腸管においてを除いて、すべての組織において、回復期間の終了時(32日目)には完全に回復した。
【0258】
2×1.92mgのSN-38/kg用量レベルのコンジュゲートでは、胃腸合併症および骨髄抑制から1匹が死亡し、この群内の他の動物は、類似の、しかし、2×0.96mg/kg群よりも重大な有害事象を示した。これらのデータは、用量限定毒性は、イリノテカンのものと同一である;すなわち、腸管および血液毒性であることを示している。したがって、hRS7-CL2A-SN-38でのMTDは、2×0.96から1.92mgのSN-38/kgの間にあり、これは、2×0.3~0.6mg/kgのSN-38のヒト当量用量を表す。
【0259】
考察
TROP-2は、肺、乳房、結腸直腸、膵臓、前立腺、および卵巣の癌を含めた多くの上皮性腫瘍上で発現されるタンパク質であるので、これは、細胞傷害性薬物を送達するための潜在的な重要なターゲットとなっている。RS7抗体は、TROP-2に結合すると内部移行し(Shih et al., 1995, Cancer Res 55:5857s-63s)、このことによって、細胞傷害性薬の直接的な細胞内送達が可能となっている。
【0260】
抗体への化学療法薬のコンジュゲーションは、30年以上にわたって探究されている。ADCの大部分は腫瘍によってはプロセシングされないが、正常組織によってはプロセシングされるので、これらの薬剤が、腫瘍において治療レベルに達する前に、正常な臓器系に対して毒性が高すぎるリスクがある。いずれの治療薬とも同様に、治療ウィンドウは、ADCの可能性を決定する重要な因子であるので、「超毒性(ultratoxic)」薬物を調査するよりはむしろ、本発明者は、SN-38を、TROP-2-ターゲティングされたADCの薬物構成要素として選択した。
【0261】
SN-38は、複数の細胞系においてナノモル範囲のIC50値を有する有効なトポイソメラーゼ-I阻害薬である。プロドラッグの活性形態であるイリノテカンは、結腸直腸癌の処置のために使用され、これは他にも、肺、乳房、および脳の癌において活性を有する。本発明者らは、ADCの形態で、直接的にターゲティングされたSN-38は、活性なSN-38へのCPT-11の低く、また患者可変的(patient-variable)な生物変換反応を克服することによって、CPT-11を上回る著しく改善された治療薬となるであろうと、理論的に考えた。
【0262】
元のCL2誘導体にPhe-Lysペプチドを挿入することによって、カテプシンBを介して起こり得る切断が可能となった。合成プロセスを簡略化する努力において、CL2Aにおいて、フェニルアラニンが除去されて、カテプシンB切断部位が除去された。興味深いことに、この生成物は、CL2で得られた幅広いプロファイルと比較して、良好に規定されたクロマトグラフィープロファイルを有したが(図示せず)、より重要なことに、この変化は、サイド・バイ・サイド試験において、コンジュゲートの結合、安定性、または効力に影響を有さなかった。これらのデータは、CL2中のSN-38は、コンジュゲートから、主に、カテプシンB切断部位ではなく、SN-38のラクトン環に対するpH感受性ベンジルカルボナート結合での切断によって放出されることを示唆している。
【0263】
一連の充実性腫瘍細胞系に対するhRS7 ADCのインビトロ細胞傷害性は、一貫して、nmol/L範囲のIC50値を有した。しかしながら、遊離のSN-38に暴露された細胞は、ADCと比較して低いIC50値を実証した。遊離SN-38とコンジュゲートされたSN-38との間のこの不均衡は、ENZ-2208(Sapra et al., 2008, Clin Cancer Res 14:1888-96)およびNK012(Koizumi et al., 2006, Cancer Res 66:10048-56)についても報告された。ENZ-2208は、PEG1個あたりSN-38約3.5~4分子を連結するために、分枝PEGを利用し、NK012は、20重量%のSN-38を含有するミセルナノ粒子である。本発明者らのADCを用いると、この不均衡(すなわち、遊離のSN-38とコンジュゲートされたSN-38との効力比)は、TROP-2発現レベルが腫瘍細胞において上昇するにつれて低下し、このことは、薬物のターゲティング送達の利点を示唆している。インビトロでの血清安定性の点において、hRS7-SN-38のCL2-およびCL2A-SN-38形態の両方が、約20時間のt/1/2を示し、これは、ENZ-2208について報告された12.3分の短いt/1/2に対して対照的であるが(Zhao et al., 2008, Bioconjug Chem 19:849-59)、生理学的条件下、24時間後でのNK012からのSN-38の57%放出と類似した(Koizumi et al., 2006, Cancer Res 66:10048-56)。
【0264】
腫瘍を有するマウスをhRS7-SN-38(CL2-SN-38またはCL2A-SN-38のいずれか)で処置することで、5種の異なる腫瘍モデルにおいて腫瘍成長が有意に阻害された。それらのうちの4種では、腫瘍退縮が観察され、Calu-3の場合には、hRS7-SN-38の最高用量を投与されたマウスはすべて、研究の終了時に腫瘍を含有しなかった。ヒトにおいてとは異なり、イリノテカンは、マウスの血漿エステラーゼによって、50%超の変換率で、SN-38に非常に効率的に変換され、ヒトよりもマウスにおいて高い有効性をもたらした。イリノテカンを10倍高いか、当量のSN-38レベルで投与すると、hRS7-SN-38は、腫瘍成長の制御においてかなり良好であった。イリノテカンを24mg/kg q2d×5(37.5倍多いSN-38)のそのMTDで投与したときのみ、hRS7-SN-38の有効性に匹敵した。患者において、本発明者らは、hRS7-CL2A-SN-38になおいっそう有利なこの利点を予測したが、それというのも、イリノテカンの生物変換反応は、実質的にかなり低いであろうためである。
【0265】
本発明者らは、SK-MES-1などの一部の抗原発現性細胞系において、抗原結合性ADCの使用は、非結合性の無関係コンジュゲートよりも良好な治療応答を保証するものではないことも示した。これは、通常とは異なる予測されなかった発見である。実際に、上述の非結合性SN-38コンジュゲートは、イリノテカンと比較すると治療活性を増強するので、無関係IgG-SN-38コンジュゲートは、多少の活性を有すると予測される。このことは、腫瘍が、正常組織よりも良好に高分子の通過を許す未熟で漏れやすい血管を有するという事実に関連している。本発明者らのコンジュゲートを用いると、pHがリソソームレベルを模倣するレベルまで低下すると、SN-38の50%が約13時間で放出されるのに対して(例えば、37℃でpH5.3;データは図示せず)、血清の中性pHでは、放出率はほぼ1/2倍に低下する。無関係コンジュゲートが酸性腫瘍微細環境に入ると、これは、一部のSN-38を局所的に放出すると予測される。腫瘍生理学および薬物に対する生得の感受性などの他の因子も、この「ベースライン」活性を規定する役割を果たすであろう。しかしながら、より長い滞留時間を有する特異的コンジュゲートは、特異的抗体を捕捉する十分な抗原が存在する限り、このベースライン応答を上回る高い効力を有するはずである。SK-MES-1モデルにおける生体内分布研究も、腫瘍抗原が連続する投薬の結果として飽和すると、特異的コンジュゲートの腫瘍取り込みは低減し、これが、無関係コンジュゲートで見出されたのと類似した治療結果をもたらすことを示した。
【0266】
本発明者らのADCと他のSN-38送達薬剤の公開されたレポートとを直接的に比較することは困難であるが、一部の一般的な観察は行うことができる。本発明者らの治療研究では、最高の個々の用量は、0.4mg/kgのSN-38であった。Calu-3モデルでは、4回の注射剤のみが、1.6mg/kgのSN-38または32μgのSN-38の合計累積用量で、20gマウスにおいて投与された。ENZ-2208を用いる複数の研究が10mg/kg×5のそのMTDを使用して行われ、前臨床研究は、30mg/kg×3のそのMTDを伴うNK012で行われた。すると、有意な抗腫瘍作用が、hRS7-SN-38では、それぞれENZ-2208およびNK012で報告された用量よりも1/30倍および1/55倍少ないSN-38当量で得られた。1/10倍少ないhRS7 ADC(0.04mg/kg)でも、有意な抗腫瘍作用が観察されたのに対して、より少ない用量のENZ-2208は提示されてなく、NK012用量が1/4倍の7.5mg/kgに減らされると、有効性は失われた(Koizumi et al., 2006, Cancer Res 66:10048-56)。正常なマウスは、24mg/kgのSN-38(1,500mg/kgのコンジュゲート)の1週間にわたる累積用量で、急性毒素を示すことはなく、これは、MTDがより高かったことを示していた。したがって、腫瘍を有する動物が、1/7.5~1/15倍少ない量のSN-38当量で有効に処置された。
【0267】
トポイソメラーゼ-I阻害薬として、SN-38は、細胞のDNAに有意な損傷を誘導し、カスパーゼ活性化およびPARPの切断をもたらすp53およびp21WAF1/Cip1をアップレギュレーションした。本発明者らがBxPC-3およびCalu-3細胞をADCに暴露すると、p53およびp21WAF1/Cip1の両方が、基礎レベルを超えてアップレギュレーションされた。加えて、PARP切断も、両方の細胞系において明らかであり、これらの細胞におけるアポトーシス事象が確認された。遊離SN-38および本発明者らのhRS7-SN-38の両方による、BxPC-3およびCalu-3における、p53よりも高いp21WAF1/Cip1のアップレギュレーションは興味深い。このことは、これらの2細胞系におけるp53の変異状態およびp21WAF1/Cip1媒介性アポトーシスでのp53非依存性経路の使用を示し得る。
【0268】
興味深い観察は、遊離SN-38に対して、hRS7-ADCによって媒介される24時間目でのBxPC-3およびCalu-3の両方におけるp53の早期アップレギュレーションであった。裸のhRS7 IgGも、これらの細胞系においてp53をアップレギュレーションし得たが、暴露48時間後に初めてであった。TROP-2過剰発現および抗体によるクロスリンクは、MAPK関連シグナル伝達事象、さらには細胞内カルシウム放出に結び付けられている。TARP切断の欠如によって証拠づけられるように、hRS7の結合は、BxPC-3およびCalu-3においてアポトーシスを誘導するには不十分であったが、細胞を初回刺激するには十分であり得、hRS7にコンジュゲートされたSN-38を含むことは、腫瘍成長阻害に対してより大きな効果をもたらし得ることとなる。いずれの経路が、SN-38のhRS7送達に関係していて、それらが、どのようにSN-38と異なり得るのか、また、p53状態がこのシグナル伝達経路においてどのような効果を果たし得るのかを理解するための研究が、現在進行中である。
【0269】
生体内分布研究によって、hRS7-CL2A-SN-38は、親hRS7 IgGと類似した腫瘍取り込みを示したが、2倍高い肝臓取り込みでかなり急速にクリアランスされたがことが明らかとなり、これは、SN-38の疎水性に起因し得る。ADCが肝臓でクリアランスされることで、肝臓および胃腸毒性は、用量限定的であると予測された。マウスは、肝臓トランスアミナーゼの上昇の証拠を示したが、胃腸毒性は、あっても穏やかであり、一過性の体重減少のみを伴い、病理組織検査で認められた異常はなかった。興味深いことに、血液毒性は認められなかった。しかしながら、サルは、イリノテカンについて予測されたのと同一の毒性プロファイルを示し、胃腸および血液毒性は用量限定的であった。
【0270】
hRS7によって認識されるTROP-2はマウスでは発現されないので、ヒトと類似したTROP-2の組織発現を示すサルにおいて毒性研究を行うことが非常に重要であった。サルは、穏やかで可逆性の毒性で0.96mg/kg/用量(約12mg/m)を許容し、これを、約0.3mg/kg/用量[投与](約11mg/m)のヒト用量に外挿する。NK012の第I相治験では、充実性腫瘍を有する患者は、3週毎の28mg/mのSN-38を、用量限定的毒性としてグレード4の好中球減少で許容した(Hamaguchi et al., 2010, Clin Cancer Res 16:5058-66)。同様に、ENZ-2208での第I相治験により、用量限定的熱性好中球減少が明らかとなり、10mg/mを3週毎に、または患者がG-CSFを投与されているならば16mg/mを投与することが推奨される。サルは22mg/mの累積ヒト当量用量を許容したので、hRS7が一部の正常組織に結合するとしても、hRS7 ADCの単回処置でのMTDは、他の非ターゲティングSN-38薬剤のMTDと類似し得ることが可能である。実際に、抗TROP-2抗体の特異性は、DLTを規定する役割を果たすとは考えられなかった。それというのも、毒性プロファイルが、イリノテカンのものと類似したためである。より重要なことに、0.03mgのSN-38当量/kg/用量でのヒト当量用量に応答したマウスにおいてのように、抗腫瘍活性がヒトにおいて達成され得るならば、有意な抗腫瘍応答が臨床でも実現され得るであろう。
【0271】
結論として、サルにおける毒性学研究は、マウスにおけるインビボでのヒト癌異種移植片モデルと合わせて、TROP-2をターゲティングするこのADCは、種々の上皮由来の複数の腫瘍において、有効な治療薬であることを示している。
【0272】
(実施例12)血液悪性病変を治療するための抗CD22(エプラツズマブ)コンジュゲートされたSN-38
概要
本発明者らは、24時間ごとに血清中でIgG結合SN-38の約50%の解離を可能にするリンカーを用いて調製した場合に、SN-38とコンジュゲートされた低速内部移行性抗体を成功裏に使用することができることを以前に見出した。この研究では、それぞれヒト化抗CD22および抗CD20 IgGであるエプラツズマブ(急速内部移行性)およびベルツズマブ(低速内部移行性)を用いて調製されたSN-38コンジュゲートの有効性が、B細胞悪性病変の処置について調査された。両方の抗体-薬物コンジュゲートは、様々なヒトリンパ腫/白血病細胞系に対して類似したナノモル活性を示したが、SN-38の低速放出は、無関係コンジュゲートに対してもインビトロで、有効性の識別を損なった。SN-38が抗CD22コンジュゲートに安定的に連結された場合、その有効性は1/40~1/55倍低減された。したがって、さらなる研究は、安定の低いゆっくり解離されるリンカーのみを用いて行われた。インビボで、RamosがCD22よりもCD20を15倍多く発現しても、Ramos異種移植片を有するマウスにおいて、類似した抗腫瘍活性がCD22およびCD20抗体-薬物コンジュゲートの間で見出され、これは、エプラツズマブ-SN-38コンジュゲート(Emab-SN-38)の内部移行が、その活性を増強したことを示唆していた。Emab-SN-38は、インビボで、非結合無関係IgG-SN-38コンジュゲートよりも有効であり、十分に樹立されたRamos異種移植片の大部分を非毒性用量で除去した。インビトロおよびインビボ研究によって、Emab-SN-38は、より有効な処置のために、コンジュゲートされていないベルツズマブと組み合わせることができることが示された。したがって、Emab-SN-38は、十分に毒性レベル未満の用量で、リンパ腫および白血病において活性であるので、単独で、または抗CD20抗体治療と組み合わせて、治療可能性を有する新たな有望な薬剤である(Sharkey et al., 2011, Mol Cancer Ther 11:224-34.)
【0273】
序論
かなりの努力が、白血病およびリンパ腫の生物療法に集中しており、コンジュゲートされていない抗体(例えば、リツキシマブ、アレムツズマブ、オファツムマブ)、放射性イムノコンジュゲート(90Y-イブリツモマブ・イウキセタン、131I-トシツモマブ)、および薬物コンジュゲート(ゲムツズマブオゾガマイシン)が、米国食品医薬品局の承認を受けた。別の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、ブレンツキシマブヴェドチン(vedotin)(SGN-35;抗CD30-オーリスタチンE)は最近、ホジキンリンパ腫および未分化大細胞リンパ腫について、FDAによる迅速承認を受けた。CD19、CD22、CD37、CD74、およびCD79bをターゲティングするいくつかの他のADCも、前臨床および臨床開発中である。
【0274】
これらのターゲットのすべてに対する抗体は、それらが内部移行性であるので、薬物の担体のための論理的選択肢である。CD22の内部移行性および特異性によって、CD22は、白血病およびリンパ腫のための特に重要なターゲットとなっており、CMC-544(酸不安定性のコンジュゲートされたカリケアマイシン)、抗CD22-メイタンシンコンジュゲート(安定に連結されたMCC-DM1)、およびCAT-3888(以前のBL22;シュードモナス外毒素単鎖融合タンパク質)を含めた少なくとも3種の異なる抗CD22コンジュゲートが臨床調査中である。これらのコンジュゲートすべてにおける活性薬剤は、ナノモル以下の効力(すなわち、いやゆる超毒性)を有する。
【0275】
本発明者らは最近、抗体をプロドラッグ、イリノテカンに由来する、低ナノモル効力を有するSN-38、トポイソメラーゼI阻害薬とコンジュゲートする方法を開発した(Govindan et al., 2009, Clin Cancer Res 15:6052-62; Moon et al., 2008, J Med Chem 51:6916-26)。4つのSN-38連結ケミストリーを、初めに、低速内部移行性抗CEACAM5抗体を用いて調製されたコンジュゲートを使用して調査した(Govindan et al., 2009, Clin Cancer Res 15:6052-62; Moon et al., 2008, J Med Chem 51:6916-26)。このコンジュゲートは、CEACAM5結合を保持したが、約10~67時間の様々な半減期で、ヒト血清におけるSN-38の解離速度において異なった(Govindan et al., 2009, Clin Cancer Res 15:6052-62)。最終的に、中間安定性(24~35時間で約50%解離)を有するCL2と名付けられたリンカーが、さらなる開発のために選択された。CL2は最近、カテプシンB切断可能なジペプチド中のフェニルアラニンを除去して、簡略化および製造収率が改善されるように修飾された。CL2Aと名付けられたこの新たな誘導体は、SN-38に対するpH感受性カルボナート連結は保持しているが、カテプシンBによって、選択的に切断されることはない。それにも関わらず、これは、元のCL2リンカーと同一の血清安定性およびインビボ活性を有する(Cardillo et al., 2011, Clin Cancer Res 17:3157-69)。毒性のない有意な有効性が低速内部移行性抗CEACAM5-SN-38において見出されたので、本発明者らは、その活性は、腫瘍において局在化した後に、抗体からSN-38を低速放出することによって補助されると仮定した。したがって、このレポートにおける主な目的は、CL2Aリンカーを、B細胞癌に高度に特異的であるが、それらの抗原発現および内部移行特性において異なる2種の抗体と共に使用して調製されたコンジュゲートの治療可能性を評価することである。
【0276】
エプラツズマブ(Emab)は、リンパ腫および白血病においてコンジュゲートされていない形態またはコンジュゲートされた形態で広範に評価されている急速内部移行性(例えば、1時間以内に≧50%)のヒト化抗CD22 IgG1である。ベルツズマブ(Vmab)は、臨床的に研究されているが、低速で内部移行(例えば、1時間に約10%)するヒト化抗CD20抗体である。CD20が通常、非ホジキンリンパ腫において、CD22よりもかなり高いレベルで発現されるのに対して、CD22は、多発性骨髄腫においてではなく、急性リンパ芽球性白血病(ALL)において優先的に発現される。両方の抗体が、コンジュゲートされていない薬剤として患者において有効であるが、ベルツズマブのみが、マウス異種移植片モデルにおいて活性である(Stein et al., 2004, Clin Cancer Res 10:2868-76)。コンジュゲートされていないベルツズマブと組み合わせた90Y-Emabが、NHLモデルにおいて有効性を増強したことを示した先行する研究に基づき(Mattes et al., 2008, Clin Cancer Res 14:6154-60)、本発明者らは、同じターゲット抗原について競合することなく、または追加の毒性を有することなく、追加の利点をもたらし得るであろうために、Emab-SN-38+Vmab組み合わせも調査した。
【0277】
物質および方法
細胞系。Ramos、ラージ、Daudi(バーキットリンパ腫)、およびJeKo-1(マントル細胞リンパ腫)を、アメリカ培養細胞系統保存機関から購入した。REH、RS4;11、MN-60、および697(ALL)は、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturenから購入した。WSU-FSCCL(濾胞性NHL)は、Dr. Mitchell R. Smith(Fox Chase Cancer Center, Philadelphia, PA)からの寄贈であった。すべての細胞系を加湿COインキュベーター(5%)内、37℃にて、10~20%ウシ胎児血清を含有する推奨の補充培地中で培養し、マイコプラズマについて定期的にチェックした。
【0278】
抗体およびコンジュゲーション方法。エプラツズマブおよびベルツズマブは、それぞれヒト化抗CD22および抗CD20 IgG1モノクローナル抗体である。ラベツズマブ(Lmab)、ヒト化抗CEACAM5 IgG1、およびRS7、ヒト化抗TROP-2抗体(両方ともImmunomedics,Inc.製)を、非結合無関係対照として使用した。本明細書では、Emab-SN-38、Vmab-SN-38、およびLmab-SN-38は、上記のCL2Aリンカーを使用して調製されたコンジュゲートを指す。ヒト血清におけるインビトロでの研究によって、活性なSN-38部分の約50%が、IgGから毎日放出されることが示された(Cardillo et al., 2011, Clin Cancer Res 17:3157-69)。CL2Eと名付けられた別のリンカーは、ヒト血清中において14日間にわたって安定であるが、リソソームにおいてプロセシングされるときにSN-38の放出を促進するカテプシンB切断部位を含有する。CL2Eを調製する方法ならびにCL2AおよびCL2Eリンカーの構造は、上記の実施例において示されている。これらのコンジュゲートは、IgG1個あたりSN-38単位約6個を含有した(例えば、1.0mgのIgG-SN-38コンジュゲートは、約16μgのSN-38を含有する)。
【0279】
インビトロ細胞結合および細胞傷害性。フローサイトメトリーを、4℃にて1時間にわたってインキュベートされたコンジュゲートされていない特異的抗体および無関係抗体を使用して実施し、結合は、この場合も4℃にて1時間にわたってインキュベートされたフルオレセインイソチオシアナート(FITC)-Fcγ断片特異的ヤギ抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch)を使用して明らかにした。中央蛍光を、FACSCALIBUR(登録商標)フローサイトメーター(Becton Dickinson)で、CellQuestソフトウェアパッケージを使用して決定した。
【0280】
細胞傷害性を、MTS色素還元アッセイ(Promega)を使用して決定した。用量応答曲線[ヤギ抗ヒトFcγ F(ab’)あり、またはなし;Jackson ImmunoResearch]を3連の決定の平均値から作出し、IC50値を、データでのベストフィット曲線でのF検定を使用する統計比較を伴って、PRISM(登録商標)GraphPad ソフトウェア(v5)を使用して計算した。有意性はP<0.05に設定した。
【0281】
免疫ブロット法。試験薬剤への24時間または48時間暴露の後に、早期(p21発現)および後記(PARP切断)アポトーシスのマーカーは、ウェスタンブロット法によって明らかにされた。
【0282】
インビボ研究。培養物から1×10細胞(0.2mL)(>95%生存率)を4~6週齢の雌のヌードマウス(Taconic)に移植することによって、皮下Ramosモデルを開始した。移植から3週間で、0.4~0.8cm(キャリパーによって測定、L×W×D)の範囲の腫瘍を有する動物を、それぞれ同じ範囲の腫瘍サイズを有する動物群に分けた。腫瘍サイズおよび体重を少なくとも週1回測定し、腫瘍が3.0cmに成長したときに、または動物が20%以上の体重減少を経験したら、動物を研究から外した。それぞれ2.5×10および1×10細胞を雌の重症複合免疫不全(SCID)マウス(Taconic)に静脈内注射することによって、静脈内WSU-FSCCLおよび697モデルを開始した。処置は、WSU-FSCCL細胞の投与の5日後、697接種の7日後に開始した。病的状態の後肢麻痺または他の兆候を代理生存エンドポイントとして使用して、動物を毎日観察した。すべての処置を、≦0.2mLで腹腔内で施した。具体的な投薬量および頻度は、結果のセクションにおいて示す。マウスはイリノテカンをSN-38に効率的に変換するので、イリノテカン投薬は、SN-38当量に基づき調節した;SN-38モル当量は、ADC質量の1.6%およびイリノテカン質量の60%に基づく。
【0283】
有効性は、上記で示したとおり、進行までの時間(TTP)を代理生存エンドポイントとして使用して、Kaplan-Meier曲線で表された。対数順位検定によって、PRISM(登録商標)GraphPadソフトウェア(有意性、P<0.05)を使用して、統計的解析を行った。
【0284】
結果
インビトロでの抗原発現および細胞傷害性。Daudiでの0.13nmol/LからRS4;11での2.28nmol/Lまでの範囲のEC50値で(表9)、すべての細胞系がSN-38に対して感受性があった。697およびRS4;11を除いて、Emab-SN-38抗CD22コンジュゲートは、SN-38よりも1/2~1/7倍有効性が低かった。これは、本発明者らのターゲティングされたSN-38コンジュゲート、さらには他のターゲティングされていないSN-38コンジュゲートと共通する所見である。抗原発現における相違にも関わらず、Emab-SN-38およびVmab-SN-38は、非結合性Lmab-SN-38抗CEACAM5コンジュゲートと類似した可能性を有し、これはおそらく、4日間のMTSアッセイの間のSN-38の約90%の解離に起因した。より短い暴露時間を使用する他のインビトロ手順は、コンジュゲートの可能性における相違の識別においても有効ではなかった。例えば、1日暴露後のアネキシンV着色では、未処置と処置細胞との間の相違を見出すことができなかった(図示せず)。p21のアップレギュレーションおよびPARP切断も、それぞれ、アポトーシスの早期および後記マーカーとして調査した。Ramosは、p21を発現しなかった。しかしながら、PARP切断は、48時間暴露の後に初めてではあるが検出され、SN-38処置細胞においてより強く発現された(図示せず)。WSU-FSCCL細胞系はp21を発現したが、p21アップレギュレーションも、PARP切断も、Emab-SN-38曝露から48時間まで明らかではなかった。しかしながら、両方とも、遊離SN-38での24時間暴露の後に観察された(図示せず)。遊離SN-38でのアポトーシス事象の強度の増強および早期活性化は、IgGコンジュゲートされた形態を上回るその低いEC50と一致し、この結果は、少なくとも48時間の暴露期間が必要であろうが、この時点で、SN-38の約75%がコンジュゲートから放出されるであろうことを示した。
【表9】
【0285】
本発明者らは再度、PARP切断およびp21発現を、今回は、Emab-SN-38+Vmabで処理された細胞において調査した。Ramosにおける初期の研究を確認すると、PARP切断は、コンジュゲートに48時間暴露した後に初めて生じ、クロスリンク抗体の存在下で発現は変化しない(図示せず)。48時間超にわたるベルツズマブへの暴露は、PARP切断に対して作用しなかったが、クロスリンク抗体を加えた場合には、切断は24時間以内に強くなった(図示せず)。しかしながら、ベルツズマブ単独(クロスリンカーなし)をEmab-SN-38と組み合わせた場合、PARP切断葉、24時間暴露後に生じ、これは、ベルツズマブが、クロスリンクが存在しない状態でも、アポトーシスのより迅速な開始を誘導し得たことを示している。WSU-FSCCL細胞系における唯一の顕著な相違は、この組み合わせが、48時間目でのp21発現を著しく増強することであり(図示せず)、この場合も、ベルツズマブをEmab-SN-38コンジュゲートと組み合わせた場合のアポトーシス誘導の加速を示唆している。Ramosと比較した場合のWSU-FSCCLのアポトーシス誘導の遅延は、おそらく、CD22およびCD20の低い発現によって説明される。
【0286】
それらの早期の放出は毒性を増大させるであろうために、超毒性薬剤は多くの場合に、血清中で高度に安定なリンカーを使用するが、これらのコンジュゲートは、薬物が最適に送達されるように内部移行される必要がある。エプラツズマブは急速に内部移行するので、本発明者らは、CL2A連結Emab-SN-38コンジュゲートと、血清安定なCL2E-SN-38コンジュゲートのインビトロ細胞傷害性を比較することで、より安定に連結されたSN-38が有利であるかどうかを調査した。コンジュゲートは両方とも類似した結合親和性を示したが(図示せず)、より安定なEmab-CL2E-SN-38は、3種の細胞系において、CL2Aコンジュゲートよりも約1/40~1/55倍低い有効性を有した(図示せず)。CL2Aコンジュゲートでは、特異性が欠如していたが、Emab-CL2E-SN-38は、一貫して、非結合性Lmab-抗CEACAM5-CL2E-SN-38コンジュゲート(図示せず)よりも、約2倍有効であった。本発明者らは、より安定に連結されたコンジュゲートが、低速内部移行性ベルツズマブコンジュゲートに適しているであろうとは考えられず、したがって、本発明者らの調査を、CL2A連結SN-38コンジュゲートでのみ続行すると結論付けた。
【0287】
インビトロアッセイの限界により、有効性を異種移植片モデルにおいて評定した。表9において示されているとおり、リンパ腫細胞系はすべて、CD22よりもCD20のかなり高い発現を示す。Daudiは、CD22およびCD20の最も高い発現を示すが、これは、インビボでは、コンジュゲートされていないベルツズマブに対して非常に感受性があり、インビトロ試験は、SN-38に対する最も高い感受性を明らかにした(表9)。これらの特性はおそらく、特に、コンジュゲートされていないエプラツズマブが動物において有効な治療薬ではない場合に、コンジュゲートされていない抗体に対してSN-38コンジュゲートに起因する活性の相違を評定することを困難にするであろう。Ramosは、90Y-Emabをベルツズマブと組み合わせる利点を示すために以前に使用されているので(Mattes et al., 2008, Clin Cancer Res 14:6154-60)、本発明者らは、Ramosヒトバーキット細胞系においてEmab-SN-38およびVmab-SN-38コンジュゲートの比較を開始することを選択した。フローサイトメトリーがCD22よりも15倍高いCD20の発現を示したにも関わらず、Ramos異種移植片の免疫組織診は、多くのCD22およびCD20を示し、CD22は見かけ上では、CD20よりもより均一に、発現された(図示せず)。
【0288】
未処置動物中のRamos異種移植片は急速に進行し、6日以内に、0.4cmのその出発サイズから3.0cmの最終サイズに達し(図示せず)、以前に報告されたとおり、ベルツズマブもエプラツズマブも、十分に樹立されたRamos異種移植片の進行に明らかな影響は及ぼさなかった(Sharkey et al., 2009, J Nucl Med 50:444-53)。他のSN-38コンジュゲートを使用した以前の所見と一致して、週2回で4週間の0.5mg/用量処置レジメンで処置された動物はいずれも、明らかな体重減少を示さなかった。コンジュゲートは両方とも、腫瘍成長の制御において高度に有効であり、動物の80%以上が、4週間の処置の終了までに、腫瘍の証拠を有さなくなった(図6)。0.25mgのVmab-SN-38用量は、最初の4週間にわたって、成長の制御ではより良好であったが、0.5mgでは、類似の早期成長制御が、両方のコンジュゲートについて観察された。したがって、CD22よりもCD20の15倍高い発現にも関わらず、Emab-SN-38は、Vmab-SN-38と有利に比較された。したがって、残りの研究では、単独か、またはコンジュゲートされていないベルツズマブと組み合わせたEmab-SN-38に焦点を当てた。
【0289】
Emab-SN-38用量-応答および特異性。用量-応答関係を、特異的Emab-SN-38および無関係Lmab-SN-38コンジュゲートについて見たが、Emab-SN-38は、試験した3つのレベルのうちの2つで、有意に良好な成長制御を示し、中間用量での特異的コンジュゲートを支持する強い傾向があった(図7)。この場合も、0.25mgのEmab-SN-38は、腫瘍の大部分を除去し;この場合、10匹の動物のうちの7匹が、体重の変化を伴うことなく、12週間のモニター期間の終了時点で、腫瘍を有さなかった。イリノテカンのみ(6.5μg/用量;0.25mgのコンジュゲートとほぼ同じSN-38当量)を施された動物は、1.9週間の中央生存期間を有し、11匹の動物のうちの3匹が、研究の終了時点で腫瘍を有さず、これは、無関係Lmab-SN-38コンジュゲートでの3.45週間の中央生存期間とは有意には異ならなかった(P=0.452;図7のC)。
【0290】
697散布性白血病モデルにおいて、生理食塩水処置された動物の中央生存期間は、腫瘍接種からちょうど17日間であった。コンジュゲートされていないエプラツズマブ+イリノテカン(0.5mgのコンジュゲートと同じモル当量のSN-38)を施された動物は同じ中央生存期間を示したのに対して、腫瘍接種から7日目に開始して週2回、0.5mgのEmab-SN-38を施された動物は、未処置の動物(P<0.0001)またはイリノテカンと共に施されたコンジュゲートされていないエプラツズマブ(P=0.016)についてよりも有意に長く、24.5日まで生存した。しかしながら、Emab-SN-38は、無関係コンジュゲート(中間生存期間=22日;P=0.304)よりも有意に良好ではなく、この細胞系におけるCD22の低い発現をおそらく反映していた。
【0291】
コンジュゲートされていないVmab抗CD20と組み合わせたEmab-SN-38。本発明者らは、90Y-Emabをコンジュゲートされていないベルツズマブと組み合わせた場合の皮下Ramosモデルにおける応答の改善(Mattes et al., 2008, Clin Cancer Res 14:6154-60)を以前に報告しており、したがって、この可能性を、Emab-SN-38で調査した。パイロット研究において、平均約0.3cmの皮下Ramos腫瘍を有する5匹の動物に、ベルツズマブ(0.1mg)、0.1mgのEmab-SN-38、またはEmab-SN-38+Vmabを施した(すべての薬剤を週2回で4週間にわたって施与)。2.0cmまでの中央TTPは、それぞれ、22、14、および77日超であり(ベルツズマブ 対 Emab-SN-38単独、P=0.59;Emab-SN-38+Vmab 対 Emab-SN-38、P=0.0145)、ベルツズマブとEmab-SN-38との組み合わせは、全般的な治療応答を改善するという当初の示唆が得られた。週2回で4週間の処置レジメンも使用したフォローアップ研究では、0.1mgのEmab-SN-38と0.1mgのベルツズマブとを施された11匹の動物のうちの6匹は、処置の開始から16週間は腫瘍の証拠を示さなかったのに対して、ベルツズマブを単独または0.1mgの対照Lmab-SN-38と共に投与された動物の中央生存期間は、それぞれ1.9および3.3週間であり、11匹の動物のうちの3匹は、これらの群のそれぞれにおいて、16週間目に腫瘍を有さなかった(図示せず)。より長い中央TTPおよびより多い生存動物にも関わらず、これらの群の間で、有意な差は見いだされなかった。したがって、豊富なCD20および中等度のCD22レベルを有するRamosモデルでは、非毒性用量レベルで施されたEmab-SN-38コンジュゲートは、コンジュゲートされていない抗CD20治療よりも有意に良好ではないが、コンジュゲートされていない抗CD20治療にEmab-SN-38を加えることで、毒性を伴うことなく、応答が改善されると考えられた。SN-38コンジュゲートは、その最大許容用量よりもはるかに少ないレベルで施され、したがって、これらの結果は、コンジュゲートされていない抗CD20治療がEmab-SN-38コンジュゲートの治療と等しいと解釈されるべきではないことを強調することが重要である。
【0292】
2つの追加の研究を、CD20およびCD22の低い発現を示すWSU-FSCCL濾胞性NHL細胞系を使用する静脈内移植モデルにおいて行った(図示せず)。生理食塩水処置動物の中央生存期間は、腫瘍移植から40~42日間であった。0.3mgのADCと同じSN-38当量を含有する用量で施されたイリノテカン単独(図示せず)は、中央生存期間を延長したが(それぞれ49日 対 40日;P=0.042)、15匹の動物のうちの14匹は、49日で疾患進行のために死亡し、同日に、生理食塩水群の15匹の動物のうちの最後の4匹は除去された(図示せず)。その相対的に低いCD20発現にも関わらず、ベルツズマブ単独(35μgを週2回×4週間)がこのモデルにおいて有効であった。中央生存期間は、第1の研究では、91日まで延長し、2匹が治癒し(161日)、第2の研究では、77日まで延長したが、89日後に生存動物は存在しなかった(ベルツズマブ単独対生理食塩水処置、両方の研究でP<0.001)。イリノテカンおよびベルツズマブと組み合わせたコンジュゲートされていないエプラツズマブ(0.3mg/用量[投与])は、ペルツズマブ単独と同じ中央生存期間を有したが、これは、エプラツズマブもイリノテカンも正味の応答に寄与しないことを示唆した。
【0293】
WSU-FSCCLによる低いCD22発現によって予測されるとおり、Emab-SN-38単独は、Ramosにおいてほど有効ではなかった。0.15mg用量では、生理食塩水群を超える有意な利点は見られなかったが、0.3mgでは、中央生存期間は63日まで延長し、生理食塩水処置動物(P=0.006)と比較して、有意な改善が得られた。0.3mgのEmab-SN-38を使用する第2の試験によって、生理食塩水群と比較して、増大した生存期間が確認された(75日 対 40日;P<0.0001)。この応答の特異性は、無関係Lmab-SN-38コンジュゲートおよびEmab-SN-38の中央生存期間が0.15mgまたは0.3mg用量レベルで異ならなかった第1の研究では明らかではなかった(それぞれ2つの用量レベルで、Emab-SN-38 対 抗CEACAM5-SN-38コンジュゲートで42日 対 49日および63日 対 63日)。しかしながら、第2の研究では、0.3mg用量のEmab-SN-38は、無関係コンジュゲートを超える生存期間の有意な改善をもたらした(75対49日;P<0.0001)。この場合も、このモデルにおいて特異性を示す困難は、おそらく、低いCD22発現に関係している。
【0294】
特異的Emab-SN-38とベルツズマブとの組み合わせは、生存期間をかなり延長させ、対照Lmab-SN-38よりも強固な応答の証拠を伴った。例えば、第1の研究では、ベルツズマブ+0.15または0.3mgの対照コンジュゲートで処置された動物は、それぞれ98日および91日の中央生存期間を示し、これは、ベルツズマブ単独のものと類似した(91日;図示せず)。しかしながら、ベルツズマブ+0.15mgの特異的Emab-SN-38コンジュゲートは、140日まで中央生存期間を延長した。この改善は、ベルツズマブ単独よりも有意に高くはなかったが(P=0.257)、Emab-SN-38用量がペルツズマブと共に0.3mgまで増加された場合、10匹の動物のうちの6匹は、研究の終了時にも生存し続け、対照コンジュゲート+ベルツズマブ(P=0.0002)を超える有意な生存期間の利点を示した。第2の研究では、ペルツズマブ単独の中央生存期間は第1の研究よりも短かったが(77日 対 91日)、対照コンジュゲートとベルツズマブとの中央生存期間は再び、91日であり、これは、ベルツズマブ単独を超える有意な生存利点をもたらした(P<0.0001)。特異的なEmab-SN-38コンジュゲートとベルツズマブとの組み合わせは、中央生存期間を126日まで延長し、このことは、それぞれ単独のEmab-SN-38およびベルツズマブでの75および77日間の中央生存期間よりも有意に長かった(それぞれP<0.0001)。しかしながら、この研究では、これは、対照抗CEACAM5-SN-38コンジュゲートとの組み合わせを超える、統計的改善についての要件には全く合わなかった(P=0.078)。
【0295】
考察
過去10年にわたって、ADCは、癌療法においてかなりの利益をあげているが、一部の障害も存在する。単独で使用するには毒性が強すぎるが、抗体にカップリングさせると、これらのいわゆる超毒性薬が前臨床試験においてかなり改善された応答をもたらす薬剤を、研究者が調査することを選択した場合に、この利益は広く生じた。ホジキンリンパ腫におけるブレンツキシマブベドチン、オーリスタチンコンジュゲートの最近の承認、コンジュゲートされていないトラスツズマブに対して治療不応性の乳癌における単一薬剤としてのトラスツズマブ-DM1 抗HER2-メイタンシンコンジュゲートでの臨床的成功は、超毒性薬剤を有するこれらのADCが、許容される処置モダリティになりつつあることを示唆している。しかしながら、ゲムツズマブオゾガマイシン、抗CD33-カリケアマイシンコンジュゲートを市場から撤退させることが最近決定されたことが示唆するように、ピコモル範囲でそれ自体が強力な薬剤で調製されたコンジュゲートは、毒性リスクを増大させ得ている(Ravandi, 2011, J Clin Oncol 29:349-51)。したがって、ADCの成功は、薬物および抗体を一緒に結合させるために適切なケミストリーを同定すること、さらに、細胞障害性薬物の適正および選択的な送達を可能にする十分に発現される適切なターゲットを規定することに依存し得る。
【0296】
本発明者らは、SN-38がコンジュゲートから血清にゆっくりと放出される(1日あたり約50%)ことを可能にする、SN-38をIgGにカップリングさせるためのリンカーを開発した。このリンカーを用いるならば、腫瘍に局在化されたコンジュゲートが内部移行されなくても薬物の十分な量を局所的に放出するかもしれないので、低速内部移行される抗体が有効な治療薬となり得るであろう。CL2Aリンカーは、急速に内部移行されると報告されたTROP-2に対する抗体でも、最近使用された(Cardillo et al., 2011, Clin Cancer Res 17:3157-69.)。したがって、低速放出機構は、内部移行性および非内部移行性抗体に有利であると考えられる。
【0297】
このレポートでは、本発明者らは、CL2Aリンカーについての本発明者らの評定を、エプラツズマブ、急速内部移行性抗CD22 IgGおよびベルツズマブ、低速内部移行性抗CD20 IgGで調製されたSN-38コンジュゲートを、B細胞悪性病変の処置について比較することによって拡大した。エプラツズマブのマウス親細胞での先行する研究は、抗体の大部分が1時間以内に内部移行し、CD22の50%が5時間以内に細胞表面上で発現されることを示した(Shih et al., 1994, Int J Cancer 56:538-45)。この内部移行および再発現プロセスは、CD22の低い表面発現を補償し得るであろう細胞内送達を可能にするであろう。B細胞悪性病変の多くは、CD22よりもかなり多いCD22を発現するので、CD20をターゲティングするコンジュゲートは、腫瘍に局在化された後に、その毒性積載物を放出することによって、より多い薬物モルを送達することができるであろう。
【0298】
インビトロ細胞傷害性研究は、コンジュゲートから培地へのSN-38の放出によって、特異的コンジュゲートまたは無関係コンジュゲートの有効性を区別することができなかった。実際に、SN-38は単独で、コンジュゲートよりも多少有効性が高く、これは、細胞に侵入し、トポイソメラーゼIと結合するその加速された能力を反映している可能性がある。他の研究によって、コンジュゲートが、アポトーシスの早期徴候が見られるまでに48時間を必要とすることが明らかになったことで、本発明者らは、インビトロ試験は、これら2種のコンジュゲートの有効性を区別することができず、したがって、インビボ研究に頼ることになるであろうと結論付けた。
【0299】
異種移植片モデルにおいて、両方のコンジュゲートは、Ramos腫瘍に対して類似した抗腫瘍活性を示し、このフローサイトメトリーは、CD22よりもCD20がほぼ15倍多く発現されたことを示した。このことは、特に、いずれかの薬剤が、他の薬剤の結合を干渉することを懸念することなく、コンジュゲートされていないVmab抗CD20治療と組み合わせることができるので、Emab抗CD22-SN-38コンジュゲートを選択する裏付けを与えるものである。実際に、抗CD20-SN-38コンジュゲートを使用した場合、施される合計IgGタンパク質用量は、おそらく、用量制限性毒性がSN-38含有率によって駆動されるであろうために、有効なコンジュゲートされていない抗CD20抗体処置に典型的に必要とされるレベル未満であろう。さらなる未標識の抗CD20を抗CD20-SN-38コンジュゲートに加えることは、コンジュゲートの取り込みを低減させ、その有効性を低下させる可能性のリスクを有するであろう。しかしながら、放射標識されたエプラツズマブをコンジュゲートされていないベルツズマブと共に使用する組み合わせ研究において本発明者らが以前に示したとおり、その最大の有効かつ安全な投薬量で施された両方の薬剤から、利点を得ることができる。インビトロ研究によって、ベルツズマブは、シグナル伝達を増強するために使用されるクロスリンクが存在しない状態でも、Emab-SN-38で開始されたアポトーシス事象を加速することが示された。したがって、Emab-SN-38コンジュゲートが抗CD20コンジュゲートと同様に有効である限り、Emab-SN-38コンジュゲートを選択することは、抗原の一方または両方の発現が低い腫瘍でも、より有効な併用療法が可能となるので、論理的な選択である。
【0300】
超毒性薬物を使用する多くのADCは安定に連結されているので、本発明者らは、血清安定であるが、細胞内で切断可能な抗CD22-SN-38コンジュゲートも試験したが、これは、CL2Aリンカーよりも1/40~1/55倍低い有効性を有すると決定された。他者が、抗CD20または抗CD22抗体にコンジュゲートされた様々な超毒性薬物コンジュゲートを調査しており、内部移行性コンジュゲートは一般に、より活性であることが見出されたが、低速内部移行性抗体も、放出される薬物が細胞膜を通過する場合には有効であり得ることも観察された。CL2AタイプのリンカーはSN-38に適し得るが、血清へのわずかな持続放出でも、毒性を上昇させ、治療ウィンドウを損なうさらに毒性の薬剤には適さない可能性がある。
【0301】
Emab-SN-38は、Ramosを有するマウスにおいて、0.6mgの累積用量で活性であったので(75μgを週2回で4週間)、これを、ちょうど2.5mg/kgのヒト用量に外挿する。したがって、Emab-SN-38は、患者において十分な治療ウィンドウを有するはずである。さらに、抗TROP-2-SN-38コンジュゲートの有効かつ安全な用量は、毒性の明らかな上昇を伴うことなく、しかし有効性の改善は伴って、最大許容用量の90Y標識抗体と、組み合わされた(Sharkey et al., 2011, Mol Cancer Ther 10:1072-81)。したがって、これらのSN-38抗体コンジュゲートの安全性および有効性プロファイルは、他の併用治療について非常に好ましい。
【0302】
イリノテカンは造血性癌の処置には常套的には使用されていないとはいえ、SN-38は、充実性腫瘍においてのように、リンパ腫および白血病細胞系においても効力がある(Cardillo et al., 2011, Clin Cancer Res 17:3157-69.)。WSU-FSCCL細胞系では、特異的および無関係IgGコンジュゲートは、イリノテカンよりも有意に良好であったのに対して、Ramosでは、無関係コンジュゲートでの中央TTPは、イリノテカンよりも長くはあったが、有意に良好ではなかった。これらの結果は、非特異的IgGが薬物のための細胞外担体であり、遊離の薬物、またはアルブミンもしくはポリエチレングリコール(PEG)-Fcで調製されたコンジュゲートよりもインビボで有効性が高いことを示す他の研究と一致する。PEG-SN-38コンジュゲートは有意な腫瘍効果を有した一方で、これは、10~30mg/kgのSN-38当量の範囲の最大許容量で施された(Sapra et al., 2009, Haematologica 94:1456-9)。対照的に、Ramosを有する動物に4週間にわたって施されたSN-38の最大累積用量は1.6mg/kgに過ぎず(すなわち、週2回で4週間にわたって施される0.25mgのEmab-SN-38の投薬量)、これは非毒性であった。
【0303】
Emab-SN-38の特異的治療活性は、より高いCD22発現を示す細胞系では、改善されると考えられた。例えば、Ramosでは、Emab-SN-38のみの特異的治療効果は、調査された3つの異なる用量レベルのうちの2つで記録され、かなり多数の腫瘍が完全に除去された。対照的に、約1/2.5倍の少ないCD22の発現を示すWSU-FSCCLでは、Emab-SN-38は、無関係抗CEACAM5-SN-38コンジュゲートと比較して、2つの研究のうちの1つで、有意に生存期間を改善した。しかしながら、コンジュゲートされていない抗CD20治療と組み合わせて使用した場合に、Emab-SN-38は治療反応を増幅したことを強調することは重要である。したがって、これら2種の処置の組み合わせは、CD22が多く発現されない状況でも、応答を増強し得る。
【0304】
結論として、安定性の低いCL2A-SN-28リンカーを使用すると、Emab抗CD22-SN-38コンジュゲートは、CD20発現がCD22よりも対数倍を超えて高いにも関わらず、類似した抗CD20-SN-38コンジュゲートと等しく、インビボにおいて非毒性用量で活性であった。CD22発現が低くても、治療応答は、Emab-SN-38とコンジュゲートされていないVmab抗CD20との組み合わせ療法により恩恵を受け、このことは、この併用療法が、両方の抗原が存在する場合に、一部のB細胞悪性病変において応答を改善し得るであろうことを示唆している。現行の研究は、この組み合わせが、多様なリンパ腫および白血病前臨床モデルにおいて非常に有効であり、低い受容者毒性を有すると考えられることを示唆している。
【0305】
(実施例13)CD74+ヒト癌を処置するための抗CD74(ミラツズマブ)SN-38コンジュゲート
概要
CD74は、内部移行し、抗体結合の後に再生するので、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)のための魅力的なターゲットである。CD74の多くは、血液学的癌に関連しているが、充実性癌でも発現される。したがって、CD74発現性充実性腫瘍を治療するためのヒト化抗CD74抗体、ミラツズマブで調製されるADCの有用性を調査した。ミラツズマブ-ドキソルビシンおよび2種のミラツズマブ-SN-38コンジュゲートを、血清中でのそれらの安定性およびリソソーム中でどの程度SN-38を放出するかにおいて異なる切断可能なリンカー(CL2AおよびCL2E)で調製した。CD74発現は、フローサイトメトリーおよび免疫組織学によって決定した。インビトロ細胞傷害性およびインビボ治療研究を、ヒト癌細胞系A-375(黒色腫)、HuH-7およびHep-G2(肝細胞癌)、Capan-1(膵臓)、ならびにNCI-N87(胃)、ならびにラージ・バーキットリンパ腫で行った。ミラツズマブ-SN-38ADCを、それらのターゲット抗原を発現する異種移植片において、抗TROP-2および抗CEACAM6抗体で調製されたSN-38ADCと比較した。
【0306】
ミラツズマブ-ドキソルビシンは、リンパ腫モデルにおいて最も有効であったが、A-375およびCapan-1では、ミラツズマブ-CL2A-SN-38のみが治療効果を示した。TROP-2またはCEACAM6よりもかなり低いCD74の発現にも関わらず、ミラツズマブ-CL2A-SN-38は、Capan-1において、抗TROP-2 CL2A-SN-38と類似した有効性を有したが、NCI-N87では、抗CEACAM6および抗TROP-2コンジュゲートの方が優れていた。単回用量レベルでの2種の肝細胞癌細胞系における研究によって、生理食塩水処置動物を超える有意な利点が示されたが、無関係IgGコンジュゲートに対しては示されなかった。CD74は、一部の充実性腫瘍異種移植片においては、ADCのための適切なターゲットであり、その有効性は、CD74発現の均一性により大きな影響を受け、また、CL2A連結SN-38コンジュゲートは最良の治療応答をもたらす。
【0307】
序論
不変鎖またはIiと称されるCD74は、HLA-DRと関係し、抗原性ペプチドがクラスII抗原提示構造に結合するのを阻害するII型膜貫通糖タンパク質である。これは、不変鎖複合体をエンドソームおよびリソソームへと向かわせるシャペロン分子として、NF-kBにより媒介される経路を使用するB細胞の成熟、およびCD44との相互作用を介してのT細胞応答において補助分子としてはたらき(Naujokas et al., 1993, Cell 74:257-68)、またこれは、細胞増殖および生存経路の活性化に関係する炎症誘発性サイトカイン、マクロファージ遊走阻害性因子のための受容体である(Leng et al., 2003, J Exp Med 197:1467-76)。
【0308】
正常なヒト組織では、CD74は主に、B細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、活性化T細胞のサブセット、および胸腺上皮(図示せず)において発現され、B細胞腫瘍の90%超で発現される(Burton et al., 2004, Clin Cancer Res 10:6606-11; Stein et al., 2004, Blood 104:3705-11)。初期の研究は、一部では、不変鎖に対する抗体が、分子の細胞質部分に特異的ではあるが、表面上には比較的わずかなコピーしか存在せず、細胞表面上でのその半減期は非常に短いので、CD74が膜上に存在するかについて矛盾するデータを示した。細胞表面上のCD74の約80%が、MHC II抗原HLA-DRと関連している(Roche et al., 1993, PNAS USA 90:8581-85)。マウス抗CD74抗体、LL1を使用すると、ラージ・バーキットリンパ腫細胞系は、4.8×10コピー/細胞を有すると推定されたが、急速な細胞内通過によって、1日あたり抗体分子約8×10が内部移行し、異化される(Hansen et al., 1996, Biochem J 320:293-300)。したがって、CD74内部移行は高度に動的であり、この抗体は、表面から急速に移動し、細胞内部に下ろされ、続いて、CD74は表面上で再発現する。Fab’内部移行はIgG結合として急速に生じ、これは、二価結合が必要ないことを示している。マウスLL1、ミラツズマブ(hLL1)のCDRグラフトバージョンでの後の研究において、この抗体は、B細胞増殖、遊走、および接着分子発現を変えることが見出されたが(Stein et al., 2004, Blood 104:3705-11; Qu et al., 2002, Proc Am Assoc Cancer Res 43:255; Frolich et al., 2012, Arthritis Res Ther 14:R54)、抗CD74抗体の特別な内部移行特性によって、これは、癌治療薬を細胞内送達するための効率的な担体となっている(例えば、Griffiths et al., 2003, Clin Cancer Res 9:6567-71)。前臨床有効性および毒性学結果に基づき、多発性骨髄腫(Kaufman et al., 2008, ASH Annual Meeting Abstracts, 112:3697)、さらには、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ球性白血病におけるミラツズマブ-ドキソルビシンの第I相治験が開始されている。
【0309】
興味深いことに、CD74は、胃、腎臓、膀胱、非小細胞肺癌、ある種の肉腫、および神経膠芽細胞腫などの非造血性癌においても発現され(例えば、Gold et al., 2010, Int J Clin Exp Pathol 4:1-12)、したがって、この抗原を発現する充実性腫瘍のための治療ターゲットであり得る。ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートは、血液学的癌のモデルにおいて高度に活性であったので、これは、この評定のための論理的選択であった。しかしながら、本発明者らは最近、高度に有効なトポイソメラーゼI阻害薬、SN-38を抗体にカップリングさせるための手順を開発した。SN-38は、イリノテカンの活性な形態であり、その薬理学および代謝は周知である。これらのコンジュゲートは、充実性腫瘍細胞系においてナノモルで効力を有し、活発に内部移行されない抗体で活性なことが見出された。先行する研究によって、血清中で多かれ少なかれ安定な他のリンカーよりも、約1日の半減期で血清中で、SN-38がコンジュゲートから解離することを可能にするリンカー(CL2A)の優位が示された。しかしながら、ミラツズマブの特別な内部移行特性により、血清中で高度に安定であるが、リソソームに取り込まれるとSN-38を放出し得る新たなリンカーが開発された。
【0310】
本研究は、これら3種のミラツズマブ抗CD74コンジュゲート、ドキソルビシンを有する1種、および2種のSN-38コンジュゲートを使用するための展望を、主に充実性腫瘍に対して有効な治療について調査している。
【0311】
物質および方法
ヒト腫瘍細胞系。ラージ・バーキットリンパ腫、A-375(黒色腫)、Capan-1(膵臓腺癌)、NCI-N87(胃癌)、Hep-G2肝細胞癌、およびMC/CAR骨髄腫細胞系は、アメリカ培養細胞系統保存機関(Manassas、VA)から購入した。HuH-7肝細胞癌細胞系は日本ヒューマンサイエンス研究資源バンク(大阪)から購入した。すべての細胞系を加湿COインキュベーター(5%)内、37℃において、0%~20%ウシ胎児血清およびサプリメントを含有する推奨培地中で培養した。細胞を<50回継代させ、マイコプラズマについてチェックした。
【0312】
抗体およびコンジュゲーション方法。ミラツズマブ(抗CD74 MAb)、エプラツズマブ(抗CD22)、ベルツズマブ(抗CD20)、ラベツズマブ(抗CEACAM5)、hMN15(抗CEACAM6)、およびhRS7(抗TROP-2)はヒト化IgGモノクローナル抗体である。上記の実施例において記載したとおり、CL2AおよびCL2EリンカーならびにそれらのSN-38誘導体を調製し、抗体にコンジュゲートさせた。以前に記載されたとおり(Griffiths et al., 2003, Clin Cancer Res 9:6567-71)、ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートを調製した。IgGをジスルフィド還元し、続いてこれらのリンカーの対応するマレイミド誘導体と反応させることによって、すべてのコンジュゲートを調製した。分光光度分析によって、薬物:IgGモル置換比は5~7であると推定された(1.0mgのタンパク質は、約16μgのSN-38または25μgのドキソルビシン当量を含有する)。
【0313】
インビトロ細胞結合および細胞傷害性。コンジュゲートされていないミラツズマブおよびコンジュゲートされたミラツズマブと抗原陽性細胞の細胞結合を比較するアッセイ、および細胞傷害性試験は、MTS色素還元法(Promega、Madison、WI)を使用した。
【0314】
フローサイトメトリーおよび免疫組織学。膜結合のみ、または膜および細胞質抗原の評定が得られる手法で、フローサイトメトリーを行った。皮下腫瘍異種移植片のホルマリン固定、パラフィン包埋切片で、抗原回収法を行わずに染色し、抗ヒトIgGコンジュゲートで明らかになった10μg/mLで抗体を使用して、免疫組織学を行った。
【0315】
インビボ研究。雌のヌードマウス(4~8週齢)または雌のSCIDマウス(7週齢)をTaconic(Germantown、NY)から購入し、1週間の検疫機関の後に使用した。生理食塩水対照を含めたすべての薬剤を週2回で4週間にわたって腹腔内投与した。具体的な用量は結果に示す。毒性を、週1回の体重測定により評定した。ラージ・バーキットリンパ腫モデルでは、SCIDマウスに0.1mL媒体中の2.5´10ラージ細胞を静脈内注射した。5日後に、動物は、コンジュゲートまたは生理食塩水の単回静脈内注射(0.1mL)を投与された(N=10/群)。マウスを、困難および麻痺の徴候について1日1回観察し、後肢麻痺の発生、当初体重に対して>15%の低下、または他の場合には、瀕死(代理生存終点)のいずれかの場合には安楽死させた。
【0316】
皮下腫瘍を二次元でキャリパーによって測定し、腫瘍体積(TV)をL×w/2として算出した(式中、Lは最長直径であり、wは最短直径である)。測定は、少なくとも週1回行い、腫瘍が1.0cmまで成長したら、動物を終わらせた(すなわち、代理生存終点)。A-375黒色腫細胞系(0.2mLに6×10細胞)をヌードマウスに移植し、腫瘍が平均0.23±0.06cm(N=8/群)になったときに、治療を開始した。連続継代腫瘍からの腫瘍懸濁液(0.3mLの15%w/v腫瘍懸濁液)を組織培養からの8´10細胞と合わせた組み合わせを使用して、Capan-1をヌードマウスに皮下移植した。TVが0.27±0.05cmになったときに、処置を開始した(N=10/群)。マトリゲルと最終培養からの1´10細胞との0.2mLの1:1(v/v)混合物を皮下注射することにより、NCI-N87胃腫瘍異種移植片を開始した。TVが平均して0.249±0.045cmになったときに、治療を開始した(N=7/群)。同じ手順に従って、Hep-G2およびHuH-7肝細胞癌異種移植片をヌードマウスにおいて発生させた。Hep-G2が平均して0.364±0.062cmになったときに(N=5/群)、またHuH-7が平均して0.298±0.055cmになったときに(N=5/群)、治療を開始した。
【0317】
有効性は、中央生存期間を決定するために上述の代理終末点を使用して、カプラン・マイヤー生存曲線で表される。分析を、Prism GraphPadソフトウェア(LaJolla、CA)を使用するログランク(マンテル・コックス)検定により、P<0.05の有意性で行った。
【0318】
結果
ヒト腫瘍細胞系および異種移植片におけるCD74発現。充実性腫瘍細胞系の膜のみCD74のMFIは、非常に多くの場合に、バックグラウンドMFIよりも<2倍高いので(A-375黒色腫細胞系を除く)、透過化細胞(表10)の分析に主に基づき、4種の異なる充実性腫瘍タイプに由来する6種の細胞系をCD74陽性と同定した。ラージにおける表面CD74発現は、充実性腫瘍細胞系よりも>5倍高いが、透過化ラージ細胞におけるCD74全体は、充実性腫瘍細胞系の多くに類似した。
【表10】
【0319】
免疫組織学によって、ラージ皮下異種移植片は、顕著な細胞表面標識で、かなり均一かつ強い染色を示すことが示された(図示せず)。Hep-G2肝細胞癌細胞系は、充実性腫瘍の最も均一な取り込みを中程度の強い、ただし主に細胞質での染色で示し(図示せず)、次は、やや少ない均一な染色を、より強く、主に細胞質の発現で示すA-375黒色腫細胞系であった(図示せず)。Capan-1膵臓(図示せず)およびNCI-N87(図示せず)胃癌細胞系は、中程度(Capan-1)から強い(NCI-N87)CD74染色を示したが、これは、均一に分布していなかった。HuH-7肝細胞癌細胞系(図示せず)は、最も均一でなく、弱い染色を示した。
【0320】
コンジュゲートの免疫反応性。コンジュゲートされていないミラツズマブ、ミラツズマブ-CL2A-およびCL2E-SN-38コンジュゲートでのK値は、それぞれ平均して0.77nM、0.59nM、および0.80nMで、有意には異ならなかった。MC/CAR多発性骨髄腫細胞系において測定されたコンジュゲートされていない、およびドキソルビシンコンジュゲートされたミラツズマブでのK値は、それぞれ0.5±0.02nMおよび0.8±0.2nMであった(Sapra et al., 2008, Clin Cancer Res 14:1888-96)。
【0321】
コンジュゲートのインビトロ薬物放出および血清安定性。メルカプトエタノール-キャップドCL2AおよびCL2EリンカーからのSN-38の放出機構は、リソソーム条件を部分的に刺激する環境、すなわち、低いpH(pH5.0)、およびカテプシンBの有無で決定された。CL2E-SN-38基質は、pH5において、酵素は存在しない状態だが、カテプシンBは存在する状態では不活性であったが(図示せず)、Phe-Lys部位での切断は、34分の半減期で急速に進行した(図示せず)。活性なSN-38の形成は、SN-38の10位でのカルバマート結合の分子内環化を必要とし、これは、10.7時間の半減期でより低速で生じた。
【0322】
予測されたとおり、カテプシンBは、CL2Aリンカーでは活性なSN-38の放出に対して効果を有さなかった。しかしながら、CL2Aは、切断可能なベンジルカルボナート結合を有し、pH5.0において、約10.2時間の半減期で、CL2Eリンカーと類似した速度で活性なSN-38を放出する(図示せず)。pH感受性アシルヒドラゾン結合を有するミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートは、pH5.0において7~8時間の半減期を有する(図示せず)。
【0323】
これらのリンカーはすべて、リソソーム関連条件下で相対的に類似した速度で薬物を放出するが、これらは、血清中では非常に異なる安定性を有する。ミラツズマブ-CL2A-SN-38は、遊離のSN-38の50%を21.55±0.17時間で放出し(図示せず)、他のCL2A-SN-38コンジュゲートと一致した。しかしながら、CL2E-SN-38コンジュゲートは、約2100時間に外挿される半減期で、高度に不活性であった。ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートは、98時間でドキソルビシンの50%を放出し、これは、2種の他の抗体-ドキソルビシンコンジュゲートに類似した(図示せず)。
【0324】
細胞傷害性。これらのコンジュゲートの評価に関する重大な問題は、造血性および充実性腫瘍細胞系における遊離のドキソルビシンおよびSN-38の相対効力であった。本発明者らのグループは以前に、SN-38が、0.13~2.28nMの範囲の効力で、いくつかのB細胞リンパ腫および急性白血病細胞系において活性であることを報告した(Sharkey et al., 2011, Mol Cancer Ther 11:224-34)。インビボ治療のために後で使用された充実性腫瘍細胞系の4種におけるSN-38効力は、2.0~6nMの範囲であった(図示せず)。ドキソルビシンは、混合応答を示し、ラージリンパ腫およびA-375黒色腫細胞系では3~4nM効力であるが、Capan-1、NCI-N87、およびHep G2細胞系に対しては、ほぼ1/10倍の低い効力であった。SN-38とドキソルビシンとの効力を比較する他の研究において、LS174T結腸癌で、18対18(それぞれSN-38対ドキソルビシンのnM効力);MDA-MB-231乳癌で、2nM対2nM;SK-OV-4卵巣癌で、18nM対90nM;Calu-3肺腺癌で、32nM対582nM;Capan-2膵臓癌で、37nM対221nM;およびNCI-H466小細胞肺癌で、0.1nM対2nMが見出された。したがって、SN-38は、これら6種の細胞系のうちの4種において、ドキソルビシンよりも5~20倍高い効力を有し、LS174TおよびMDA-MB-231において類似の効力を有した。まとめると、これらのデータは、ドキソルビシンが、SN-38よりも充実性腫瘍に対して有効性が低い一方で、SN-38は、充実性および造血性腫瘍において同等に有効であると考えられることを示している。
【0325】
予測されたとおり、3種のコンジュゲート形態は多くの場合に、インビトロで、遊離の薬物よりも数桁低い効力を有した。それというのも、薬物は両方とも、細胞に容易に輸送されると予測されるのに対して、薬物コンジュゲートは、薬物を細胞内部に輸送するために抗体結合を必要とするためである(図示せず)。SN-38の90%超が、4日間のアッセイ期間にわたって、コンジュゲートから培地へと放出されるので、CL2A-連結SN-38コンジュゲートは例外である(Cardillo et al., 2011, Clin Cancer Res 17:3157-69;Sharkey et al., 2011, Mol Cancer Ther 11:224-34)。したがって、そのコンジュゲートが急速に内部移行したとしても、遊離の薬物とCL2A連結薬物との間の相違を識別することは困難であろう。
【0326】
安定なCL2E-連結SN-38は、遊離のSN-38と比較して、比較的良好にラージ細胞系において機能するが、4種の充実性腫瘍細胞系では、かなり低い(1/7~1/16倍の)効力を有し、これは、CD74の比較的低い表面発現が、これらの充実性腫瘍への薬物の輸送を最小化する役割を果たしている可能性があることを示唆している。ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートは、すべての細胞系における遊離のドキソルビシンと比較すると、その効力にかなりの差異を有し、これは、充実性腫瘍細胞系における遊離のSN-38に対するCL2E-SN-38コンジュゲートと類似した程度であった。
【0327】
上述の6種の追加の細胞系では、ミラツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲートは、ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートよりも9倍から60倍有効であるが(図示せず)、この場合も、この結果は、CL2A-連結コンジュゲートが、4日間のインキュベーション期間にわたってそのSN-38の大部分を培地に放出するのに対して、ドキソルビシンコンジュゲートは、その薬物の多くても50%しか、この同じ期間にわたって放出しないであろうという事実によって大きく影響を受けた。CL2E-連結ミラツズマブは、これらの他の細胞系では調査されなかった。
【0328】
ヒト腫瘍異種移植片のインビボ療法。様々な抗体を用いて調製されたミラツズマブ-ドキソルビシンまたはSN-38コンジュゲートでの先行するインビボ研究は、これらが、その最大許容用量よりもはるかに少ない用量で有効であったことを示し(Griffiths et al., 2003, Clin Cancer Res 9:6567-71; Sapra et al., 2005, Clin Cancer Res 11:5257-64; Govindan et al., 2009, Clin Cancer Res 15:6052-61; Cardillo et al., 2011, Clin Cancer Res 17:3157-69; Sharkey et al., 2011, Mol Cancer Ther 11:224-34)、したがって、インビボ研究は、類似の量、しかし固定量の各コンジュゲートを、十分に許容されるレベルにおいて比較することに焦点を当てた。
【0329】
当初研究は、リンパ腫の散在性ラージモデルにおいて、ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートがどの程度、2SN-38コンジュゲートに匹敵するかを判断するために、ドキソルビシンおよびSN-38コンジュゲートを初めに調査した(図示せず)。すべての特異的コンジュゲートは、20日間のみの中央生存期間を示した非ターゲティングラベツズマブ-SN-38コンジュゲートまたは生理食塩水処置動物よりも有意に良好であった(P<0.0001)。インビトロでの研究が、ラージにおいてSN-38コンジュゲートについて8倍高い優位性を示していたにも関わらず、最良の生存期間は、単回17.5mg/kg(350μg)用量を施されたすべての動物および2.0mg/kg(40μg)を施された7/10動物が研究の終了時(112日)に生きていたミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートで見られた(例えば、17.5mg/kg用量ミラツズマブ-ドキソルビシン対ミラツズマブ-CL2A-SN-38、P=0.0012)。インビトロ研究により、両方のコンジュゲートが、内部移行するときに類似した速度で活性なSN-38を放出するであろうと示唆されていたが、生存率は、より安定なCL2E-SN-38コンジュゲートについて有意に低かった(それぞれCL2A対CL2EでP<0.0001およびP=0.0197、17.5および2.0mg/kg用量)。
【0330】
ドキソルビシンおよびSN-38の両方に対して最良のインビトロ応答を示したので、A-375黒色腫細胞系から開始して、5種の充実性腫瘍細胞系を調査した。A-375異種移植片は急速に成長し、生理食塩水処置対照動物は、10.5日の中央生存期間しか示さなかった(図示せず)。ミラツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲートの12.5mg/kg(動物1匹あたり0.25mg)で週2回の用量は、生存期間を28日まで延長し(P=0.0006)、これは、17.5日間の中央生存期間を示す対照エプラツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲートよりも有意に良好であり(P=0.0089)、後者は、生理食塩水処置動物と有意に異ならなかった(P=0.1967)。ミラツズマブ-CL2Aコンジュゲートは、ミラツズマブ-CL2E-SN-38コンジュゲート(P=0.0014)よりも有意に長い生存期間をもたらし、これは、その対照エプラツズマブ-CL2E-SN-38コンジュゲートと同じ14日間の中央生存期間を示した。SN-38コンジュゲートよりも2倍高い用量のミラツズマブ-ドキソルビシンを施されたにも関わらず、中央生存期間は、生理食塩水治療動物(10.5日間)よりも良好ではなかった。
【0331】
A-375黒色腫モデルと同様に、Capan-1において、CL2A連結SN-38コンジュゲートのみが、低い用量(5mg/kg;動物1匹あたり100μg)(P<0.02)でも、未処置動物とは有意に異なる35日間の中央生存期間で(P<0.036)(図示せず)有効であった。ミラツズマブ-CL2E、非ターゲティングエプラツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲート、または2倍高い用量のミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートもいずれも、何らかの生存期間の優位性をもたらさなかった(P=0.44対生理食塩水)。同じ研究において、同じ用量の内部移行性抗TROP-2 CL2A-SN-38コンジュゲート(hRS7-SN-38;IMMU-132)を施された動物で、中央生存期間は、ミラツズマブ-CL2A-SN-38に等しかったことは注目すべきである(図示せず)。hRS7-CL2A-SN-38コンジュゲートは、様々な充実性腫瘍を処置するための該当するADCと以前に同定されていた(Cardillo et al., 2011, Clin Cancer Res 17:3157-69)。Capan-1での表面結合性hRS7でのMFIは、ミラツズマブでの22(表10を参照されたい)に比較して、237であった(図示せず)。したがって、かなり低い表面抗原発現を示すにも関わらず、ミラツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲートは、このモデルにおいて、hRS7-CL2A-SN-38コンジュゲートと同じく良好に機能した。
【0332】
充実性腫瘍異種移植片の2種において低い治療結果を示すミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートでは、焦点は、ミラツズマブ-SN-38コンジュゲートを、多くの充実性腫瘍の表面でより多く発現されるTROP-2(hRS7)またはCEACAM6(hMN-15)に対する他のヒト化抗体で調製されたSN-38コンジュゲートと比較することにシフトした(Blumenthal et al., 2007, BMC Cancer 7:2;Stein et al., 1993, Int J Cancer 55:938-46)。3種の追加の異種移植片モデルを調査した。
【0333】
胃腫瘍モデル、NCI-N87において、17.5mg/kg/用量(350μg)のミラツズマブ-CL2A-SN-38を施された動物は、生存期間において多少の改善を示したが、これは、生理食塩水処置動物(31日間対14日間;P=0.0760)と比較して、または非結合性ベルツズマブ抗CD20-CL2A-SN39コンジュゲート(21日間;P=0.3128)(図示せず)と比較して、統計的な有意性を満たすことはできなかった。しかしながら、hRS7-およびhMN-15-CL2Aコンジュゲートは、中央生存期間をそれぞれ66日間および63日間に有意に改善した(P=0.0001)。表面発現されるTROP-2およびCEACAM6でのMFIは、それぞれ795および1123であり、たった5であったCD74よりもかなり高かった(表10を参照されたい)。免疫組織学は、この細胞系の異種移植片においてCD74の比較的強い細胞質発現を示したが、重要なことに、これは散在しており、腫瘍内の画定されたポケット内のみに出現した(図示せず)。CEACAM6およびTROP-2は、CD74よりも均一に発現され(図示せず)、CEACAM6は、細胞質および膜上の両方に多く存在し、TROP-2は主に膜上で見出された。したがって、抗CEACAM6および抗TROP-2コンジュゲートで改善された生存期間はおそらく、NCI-N87におけるより高い抗原密度と、より均一な発現の両方を反映している。
【0334】
Hep-G2肝細胞癌細胞系(図示せず)では、免疫組織学は、CD74の中程度の細胞質染色で非常に均一な発現を示し、フローサイトメトリーは、比較的低い表面発現を示した(MFI=9)。hMN-15でのMFIは175であり、免疫組織学は、非常に強い膜染色の単離ポケットで、CEACAM6のかなり均一な膜および細胞質発現を示した(図示せず)。Hep-G2異種移植片を有する動物における研究により、ミラツズマブ-CL2A-SN-38が、生理食塩水処置群での21日間に比較して、生存期間を45日間まで延長した一方で(P=0.0048)、hMN-15-CL2A-SN-38コンジュゲートが、生存期間を35日間まで改善したことが見出された。ThMN-15-CL2A-SN-38よりもミラツズマブコンジュゲートが優位である傾向があったが、これは、統計的な有意性は達成しなかった(46日間対35日間;P=0.0802)。しかしながら、非結合性ベルツズマブ-CL2A-SN-38コンジュゲートは、ミラツズマブコンジュゲートと類似した生存有意性をもたらした。本発明者らは、非結合性コンジュゲートでの治療結果は、特に比較的高いタンパク質用量において特異的CL2A連結コンジュゲートに類似し得ることを以前に観察したが、特異的および対照コンジュゲートの力価測定は通常、選択的に明らかにした。したがって、特異的コンジュゲートはいずれも、この細胞系では、これらの用量において選択的な治療優位性をもたらさなかった。
【0335】
Hep-G2と類似の表面発現、ただしやや低い細胞質レベルを有するHuH-7肝細胞癌細胞系を使用する別の研究(図示せず)(表10を参照されたい)によって、hMN-15-SN-38コンジュゲートがミラツズマブ-CL2Aコンジュゲートよりも長いが(35日間対18日間)、有意には異ならない生存優位性をもたらすことが見出された(P=0.2944)。hMN-15およびミラツズマブコンジュゲートは両方とも、生理食塩水処置動物よりも有意に良好であったが(それぞれP=0.008および0.009)、再び、コンジュゲートはいずれも、この用量レベルでは、非ターゲティングベルツズマブ-SN-38コンジュゲートと有意に異ならなかった(それぞれP=0.4602および0.9033)。CEACAM6表面発現は、この細胞系においては比較的低く(MFI=81)、免疫組織学によって、CD74(図示せず)およびCEACAM6(図示せず)は両方とも、非常にわずかで、また高度に散在していることが示された。
【0336】
考察
腫瘍選択的化学療法のための抗体-薬物コンジュゲート(ADC)手法は、現在の重要な関心事の分野である(例えば、Govindan et al., 2012, Expert Opin Biol Ther 12:873-90;Sapra et al., 2011, Expert Opin Biol Ther 20:1131-49)。最近の臨床的成功(Pro et al., 2012, Expert Opin Biol Ther 12:1415-21;LoRusso et al., 2011, Clin cancer Res 17:437-47)は大部分、以前から使用されている従来の化学療法薬の代わりに、超毒性薬を採用することで生じている。しかしながら、ターゲット選択、抗体、および薬物リンカーはすべて、ADCの最適な性能に影響を及ぼす因子である。例えば、トラスツズマブ-DM1の場合、HER2は、この抗原を発現する腫瘍上で豊富であり、この抗体は内部移行され、抗体自身が抗腫瘍活性を有し、そのすべてが、治療結果の増強に結びつき得るであろう。まったく対照的に、CD74は、細胞の表面でかなり低いレベルで発現されるが、その独特の内部移行および表面再発現特性は、ミラツズマブ抗CD74 ADCを、ドキソルビシンなどの中程度の毒性薬物でも、造血性癌異種移植片モデルにおいて有効なものとし得る(Griffiths et al., 2003, Clin Cancer Res 9:6567-71;Sapra et al., 2005, Clin Cancer Res 11:5257-64)。ドキソルビシンは、造血性癌でより頻繁に使用され、SN-38および他のカンプトテシンは、充実性腫瘍を有する患者に投与されるが、本発明者らは、ミラツズマブのドキソルビシンおよびSN-38コンジュゲートの有用性を充実性腫瘍において評定することを決定した。ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートは、様々な血液学的癌の異種移植片において有効であり、その治験に至っている一方で(NCT01101594およびNCT01585688)、数種のSN-38コンジュゲートは、充実性および血液腫瘍モデルにおいて有効であり、2種の新規のSN-38コンジュゲートが、結腸直腸癌および多様な上皮癌の第I相治験の続行に至っている(NCT01270698およびNCT01631552)。
【0337】
インビトロで、コンジュゲートされていないドキソルビシンおよびSN-38は、ラージリンパ腫細胞系に対してドキソルビシンと類似の効力を有したが、SN-38は、いくつかの異なる充実性腫瘍細胞系においてより有効であった。興味深いことに、インビボでは、ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートは、ミラツズマブ-SN-38コンジュゲートと比較して、ラージにおいて最良の応答をもたらした。しかしながら、Capan-1およびA-375では、インビトロ試験によって、A-375が遊離のSN-38に対してと同様に、遊離のドキソルビシンに対して同等に感受性があることが示されても、ミラツズマブ-ドキソルビシンは、CL2A連結SN-38ミラツズマブコンジュゲートよりも有効性が低かった。2種の他の細胞系、MDA-MB-231乳癌およびLS174T結腸癌も、インビトロでSN-38と類似の効力を遊離のドキソルビシンで示したが、インビトロでの試験は、SN-38が充実性および血液学的癌において同等に有効であり、評価された多くの充実性腫瘍細胞系において、SN-38が、ドキソルビシンよりも5~20倍高い効力を有することを示したので、本発明者らは、充実性腫瘍治療のために2種のミラツズマブ-SN-38コンジュゲートに焦点を当てることを決定した。しかしながら、ミラツズマブ-SN-38コンジュゲートの有用性をより良好に測定するために、本発明者らは、様々な充実性腫瘍に存在する他の抗原に対する抗体で調製されたSN-38ADCと比較して評定することを含めた。
【0338】
本発明者らは、内部移行性hRS7抗TROP-2 CL2A連結SN-38コンジュゲートでの治療応答をCapan-1細胞系において以前に調査していたので(Cardillo et al., 2011, Clin Cancer Res 17:3157-69)、ミラツズマブおよびhRS7 SN-38コンジュゲートの有効性を比較した。この研究で、コンジュゲートは両方とも、対照抗体と比較して生存期間を有意に改善し、それぞれのCL2A連結SN-38コンジュゲートは、CL2E連結コンジュゲートよりも優れていた。フローサイトメトリーは、TROP-2発現がCapan-1ではCD74よりも高いことを示したので、この結果は、例外的として公知のCD74の輸送特性は、TROP-2よりも効率的であることを示唆した。しかしながら、抗原アクセス性(すなわち、膜対細胞質、生理学的、および「結合部位」バリア)および腫瘍内の細胞中での分布は、ターゲティングされる治療のすべての形態に、特に、個々の細胞への生成物の適当な細胞内送達に依存するものに影響を及ぼす重要な因子であることは周知である(Thurber et al., 2008, Adv Drug Del Rev 60:1421-34)。抗原が、腫瘍内のすべての細胞において均一には発現されない状況では、CL2A連結コンジュゲートなどの、腫瘍中において局在化した後にその積載物をゆっくりと放出するターゲティングされた治療薬を得ることで、薬物をターゲティングされていないバイスタンダー細胞に拡散させることが可能になり、それによって、その有効性範囲を増強することができるであろう。実際に、高い抗原発現は、結合部位バリア作用により、腫瘍浸透を妨げ得る可能性があるが、細胞外放出機構は、薬物が腫瘍内に拡散する機構をもたらし得るであろう。この機構は他にも、この場合に使用される抗CEACAM5および抗CEACAM6などの、内部移行性が不十分な抗体を使用して本発明者らが調査した他のコンジュゲートの有効性を補助すると考えられる。ミラツズマブをベースとするコンジュゲートは、腫瘍細胞との抗体の直接的な相互作用に、より著しく依存しており、CD74の急速な内部移行と、細胞の表面上にそれが少ないことを補償し得る再発現とを利用する。しかしながら、この優位性は、CD74が腫瘍内に高度に分散しているときには、低減されるであろうし、また、コンジュゲートを腫瘍内に保持する機構が存在しなければ、コンジュゲートからの薬物の低速放出の利点は失われるであろう。本発明者らのグループによるヒト胃腸腫瘍の先行する調査は、これらが多くの場合に、高レベルの発現を良好な均一性で有することを示唆している(Gold et al., 2010, Int J Clin Exp Pathol 4:1-12)。
【0339】
SN-38の適切なリンカーを最初に評定している間に、CL2Aリンカーと同様にSN-38の20-ヒドロキシル位置にカップリングするように設計された「CL2E」様リンカーを含む、数種の異なる誘導体を調査した。しかしながら、その抗体コンジュゲートは十分な抗腫瘍活性を欠き、続行されなかった。ミラツズマブの特別な内部移行特性により、本発明者らは、CD74コンジュゲートの急速な内部移行は、より安定なコンジュゲートの薬物負荷を増強するであろうと仮定して、SN-38-リンカーケミストリーに立ち戻ることを決定した。本発明者らは、脱離基がフェノール系であれば、これは環化を促進し得るであろうと推測して、CL2Eリンカーを、SN-38のフェノール10位に結合するように設計した。
【0340】
開始時には、CL2E連結SN-38コンジュゲートは、ラージ細胞系において、CL2Aコンジュゲートと有望に類似したIC50を示し、これは、急速に内部移行されるならば、両方のコンジュゲートが、ほぼ同じ速度でSN-38の活性な形態を放出するであろうという見込みと一致した。しかしながら、すでに上述したとおり、CL2Aコンジュゲートのインビトロ活性は、培地へのSN-38の放出に大きく影響を受け、インタクトなコンジュゲートによる取り込みを必ずしも反映しない。CL2E連結コンジュゲートが、CL2Aコンジュゲートよりも、充実性腫瘍細胞系においてかなり効力が低いことが見出された場合、このことは、CD74の少ない表面発現が、ミラツズマブ結合を介してのSN-38の内部移行に影響を及ぼしたことを示唆している。しかしながら、ラージでのインビボ研究が、ミラツズマブ-CL2A-SN-38がCL2Eコンジュゲートよりも優れていることを示した場合、CL2Eの有効性に影響を及ぼすであろう一部の他の因子を考慮すべきであった。可能な説明の1つは、CL2E-SN-38でのリンカー設計が、薬物の20位を非誘導体化のままにしたことで、ラクトン基が開環を受け得るようになったことである。実際に、イリノテカンでの研究は、インタクトなラクトン形態の効力に対して10%の効力しか有さないカルボキシラート形態へとラクトンが開環したことを含むいくつかの因子によって、N-38の効力が低下したことを示している。対照的に、CL2A連結SN-38は、20ヒドロキシル位で誘導体化されており、これは、生理学的条件下で、カンプトテシン中のラクトン基を安定化させるプロセスである。したがって、SN-38のラクトン環は、CL2Aにおける切断からおそらく保護されるが、CL2Eコンジュゲートにおいては保護されない。したがって、ラクトン環の不安定化は、インビボで、CL2Eの有効性の低下に寄与し得ていた。インビトロでの安定性研究および血清安定性の分析を酸性条件下で行ったので、本発明者らは、これらのコンジュゲートのいずれかにおけるSN-38のカルボキシラート形態の直接的な測定を有さない。
【0341】
結論として、インビトロおよびインビボ結果は、ラージリンパ腫細胞系において、ミラツズマブ-ドキソルビシンコンジュゲートが、CL2A-SN-38コンジュゲートよりも優れており、これは、CL2Aのものと比較して、ドキソルビシンコンジュゲートの安定性の改善を反映している可能性があることを示している。しかしながら、CL2A-SN-38コンジュゲートが、高度に安定なCL2E-SN-38コンジュゲートよりも有効であるという所見は、薬物の活性化または細胞系感受性に関係している可能性のある他の問題が役割を果たし得ていることを示唆している。
【0342】
CD74は、細胞生物学において多数の役割を有し、抗原発現性細胞では、これは、抗原ペプチドをプロセシングする際により主要な役割を有し得、充実性腫瘍では、その役割は、生存により強く関連し得るであろう。これらの異なる役割は、細胞内輸送およびプロセシングに影響を及ぼし得るであろう。別法では、CL2E連結SN-38のより低い有効性は、SN-38におけるラクトン開環による薬物不活性化を反映し得、これは、特異的なリンカーの重要性を示している。最後に、充実性腫瘍モデルでは、よりアクセス性が高く(表面発現)、豊富である他の内部移行性の抗体(hRS7)または不十分に内部移行性の抗体(hMN15)で調製されたコンジュゲートに対して測定した場合、抗原アクセス性は、ミラツズマブ-CL2A-SN-38の効力を規定する際に主要な役割を有すると考えられる。本発明者らは、この所見はターゲティングされた治療に普遍的であると思っているが、これらの研究は、CD74ターゲティングされた治療薬の独特の内部移行特性は、ターゲット抗原の表面発現が軽微な場合にも、有意な有効性をもたらし得ることを少なくとも示している。
【0343】
(実施例14)治療不応性転移性結腸癌(mCRC)を処置するためのhRS7-SN-38(IMMU-132)の使用
患者は、2012年12月に転移性疾患を初めに示した、mCRCを有する62歳の女性であった。女性は、診断の2週後に腹腔鏡下での回腸横行結腸切除を最初の治療として受け、次いで、ネオアジュバント設定で、肝臓の右葉の転移性病変を除去するための2012年3月の右肝切除前に、FOLFOX(ロイコボリン、5-フルオロウラシル、オキサリプラチン)化学療法の4サイクルを投与された。これに、2012年6月に開始されたアジュバントFOLFOXレジメンを、FOLFOX合計12サイクルにわたって続けた。8月に、オキサリプラチンを、進行性の神経毒性により、レジメンから除去した。女性の5-FUの最後のサイクルは2012年9月25日であった。
【0344】
2013年1月に行われたCTは、肝臓への転移を示した。こうして、女性は、IMMU-132(hRS7-SN-38)調査研究に参加する良好な候補として評定された。女性の医学的履歴における共存症には、喘息、糖尿病、高血圧、高コレステロール血症、心雑音、裂孔ヘルニア、甲状腺機能低下症、手根管症候群、緑内障、うつ病、レストレスレッグ症候群、および神経障害が含まれた。女性の外科手術履歴には、卵管結紮(1975)、甲状腺除去(1983)、胆のう摘出術(2001)、手根管除去(2008)、および緑内障外科手術が含まれた。
【0345】
この治験へのエントリの時点で、女性のターゲット病変は、肝臓の左葉の3.1cm腫瘍であった。非ターゲット病変には、肝臓の複数の低減弱(hypo-attenuated)腫瘤が含まれた。女性のベースラインCEAは781ng/mであった。
【0346】
患者が、インフォームドコンセントにサインした後に、IMMU-132を、週1回のスケジュールで注入により連続2週間にわたって、それに続く1週間の休止で施し、これが、1つの処置サイクルを構成した。これらのサイクルを許容されるかぎり繰り返した。IMMU-132(8mg/kg)の第1の注入は、2013年2月15日に開始し、顕著な事象なく完了した。女性は、第1のサイクルの間に悪心(グレード2)および倦怠(グレード2)を経験し、大きな有害事象を伴わなかったので、処置を継続していた。女性は、2013年3月に脱毛および便秘を報告した。2013年4月8日に行われた第1の応答評定は(6投与後)は、コンピュータ断層撮影法(CT)により、ターゲット病変の29%の縮小を示した。女性のCEAレベルは、2013年3月には230ng/mlまで低下した。2013年5月23日に行われた第2の応答評定(10投与後)では、ターゲット病変は39%縮小したので、RECIST基準による部分的な応答を成した。女性は、2013年6月14日現在、処置を継続しており、8mg/kgでのhRS7-SN-38(IMMU-132)の12投与からなる6サイクルを受けている。この調査処置を開始して以来、女性の全身的健康および臨床症状は顕著に改善された。
【0347】
(実施例15)治療不応性転移性乳癌を処置するためのhRS7-SN-38(IMMU-132)の使用
患者は、2005年に最初に診断されたステージIV、三種陰性乳癌(ER/PR陰性、HER-neu陰性)の57歳の女性であった。女性は、2005年に左乳房の腫瘍摘出手術を、続いて、2005年9月にDose-Dense ACTをアジュバント設定で施された。次いで、女性は、放射線療法を受け、これは11月に完了した。2012年初めに患者が対側性(右)乳房に腫瘍を触診したとき、疾患の局所再発が認められ、次いで、CMF(シクロフォスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル)化学療法で処置された。女性の疾患は同年に、胸壁の皮膚の転移性病変で再発した。次いで、女性は、カルボプラチン+タキソール(登録商標)化学療法レジメンを投与され、その間に、血小板減少が生じた。女性の疾患は進行し、女性は週1回のドキソルビシンを開始され、これは、6投与にわたって継続した。皮膚疾患も進行していた。2012年9月26日のFDG-PETスキャンは、胸壁の疾患進行および充実性腋窩結節の肥大を示した。患者は、疼痛管理のためにオキシコドンを投与された。
【0348】
胸壁病変が開き、出血したときに、女性は、2012年10月から2013年2月までIXEMPRA(登録商標)を投与された(2週間ごとに4か月にわたる)。次いで、女性はゼローダ(登録商標)を投与されたが、これは、手足での神経障害、さらに便秘によって良好には許容されなかった。皮膚病変は進行性であり、こうして、女性は、インフォームドコンセントを与えた後に、IMMU-132治験に参加した。この患者は、甲状腺機能亢進症および視覚障害の病歴も有し、CNS疾患の高いリスクを有した(しかしながら、脳MRIはCNS疾患について陰性であった)。この治験に参加した時点で、右乳房における女性の皮膚病変(ターゲット)は、最大直径で4.4cmおよび2.0cmと測定された。女性は、右乳房にある別のターゲット病変、およびそれぞれ左右腋窩にある1個のリンパ節肥大を有した。
【0349】
第1のIMMU-132注入(12mg/kg)は2013年3月12に開始し、これは良好に許容された。女性の第2の注入は、スケジュールされていた注入日でのグレード3の好中球絶対数(ANC)の低減(0.9)によって、1週後に遅延された。遅延の1週後、およびNEULASTA(登録商標)の投与の後に、女性の第2のIMMU-132が、9mg/kgで25%の用量低減で投与された。その後、女性は、週1回で2週間と、それに続く1週間の休止のプロトコルによるスケジュールでIMMU-132を投与されている。3治療サイクルの後、2013年5月17日の女性の第1の応答評定は、ターゲット病変の長い直径の合計の43%の縮小を示し、RECIST基準による部分応答を構成した。女性は、9mg/kg用量レベルで処置を継続している。女性がIMMU-132での処置を開始して以来、女性の全身健康および臨床症状はかなり改善された。
【0350】
(実施例16)治療不応性転移性非小細胞肺癌を治療するためのhRS7-SN-38(IMMU-132)の使用
これは、非小細胞肺癌と診断された60歳男性である。患者は、カルボプラチン、ベバシズマブの化学療法レジメンを6ヶ月にわたって施され、応答を示し、次いで、進行の後に、カルボプラチン、エトポシド、タキソテール(登録商標)、ゲムシタビンでの化学療法のさらなるコースを続く2年間にわたって投与され、時々の応答は2か月以下継続した。次いで、患者は、6.5×4cmと測定される左縦隔腫瘤および胸膜浸出液を示す。
【0351】
インフォームドコンセントにサインした後に、患者は、18mg/kgの用量で隔週でIMMU-132を投与される。最初の2回の注射の間に、短期間の好中球減少および下痢が、4時間以内に4回の腸運動で経験されるが、これらは、2日以内に解消するか、対症薬物療法に応答する。IMMU-132の合計6回の注入の後に、インデックス病変のCT評価は、部分応答未満であるが、明確な腫瘍縮小である22%の縮小を示した。インデックス病変の直径の合計の45%腫瘍縮小の部分応答がCTによって認められ、RECIST基準による部分応答を構成するとき、患者は、この治療をさらに2か月継続している。
【0352】
(実施例17)治療不応性転移性小細胞肺癌を治療するためのhRS7-SN-38(IMMU-132)の使用
これは、小細胞肺癌と診断され、左肺、縦隔リンパ節、および左頭頂脳葉への転移のMRI証拠を伴う65歳女性である。先行する化学療法には、カルボプラチン、エトポシド、およびトポテカンが含まれるが、応答は認められない。放射線療法も、女性の疾患の制御に失敗している。次いで、女性は、18mg/kgの用量で3週毎に1回、合計5回の注入でIMMU-132を投与される。第2の投与の後に、女性は、低血圧およびグレード2の好中球減少を経験するが、次の注入までに改善する。第5の注入の後に、CT検査は、女性のターゲット左肺腫瘤の13%の縮小を示す。脳のMRIも、この転移の10%縮小を示す。女性は、3週毎でさらに3か月にわたるIMMU-132投薬を継続し、状態の客観的および主観的改善を示しつづけ、左肺腫瘤の25%縮小および脳転移の21%の縮小を伴った。
【0353】
(実施例18)hRS7-SN-38(IMMU-132)でのステージIV転移性疾患の胃癌患者の治療
この患者は、40年間にわたる喫煙および過剰アルコール摂取期間の履歴を有する60歳男性である。男性は体重減少、制酸剤によって緩和しない摂食不快感および疼痛、頻繁な腹部疼痛、下部背部痛、ならびに最近では両腋窩に触知可能な結節を経験している。男性は医学的アドバイスを求め、精密検査の後に、胃鏡を介しての生検に基づき、一部の扁平な特徴を含む腺癌を胃食道接合部に有することが示されている。X線検査による検査(CTおよびFDG-PET)も、転移性疾患を左右の腋窩、縦隔領域、腰椎、および肝臓(右葉に2つの腫瘍および左肺に1つの腫瘍、いずれも直径で2から4cmの間と測定)で明らかにしている。男性の胃腫瘍は切除され、次いで、エピルビシン、シスプラチン、および5-フルオロウラシルでの化学療法のコースを受ける。4か月と6週間の休止期間の後に、男性はドセタキセル化学療法に移されるが、これは、転移性腫瘍およびいくつかの全身的悪化のCT測定により確認された進行に基づき、男性の疾患を制御することはできていない。
【0354】
次いで、患者は、隔週で合計6投与で注入される10mg/kgの用量でのIMMU-132(hRS7-SN-38)での治療を受け、その後、CT検査が、男性の疾患の状態を評定するために行われる。これらの注入は良好に許容され、多少の軽度の悪心および下痢を伴ったが、対症療法で制御される。CT検査は、男性のインデックス転移性病変の合計が28%縮小していることを明らかにしているので、男性はこの治療をさらに5コース継続する。フォローアップCT検査は、疾患がIMMU-132治療前の男性のベースライン測定値から、RECIST基準により縮小した約35%のままであることを示し、男性の全身状態も改善しているようであり、患者は、自身の疾患が制御下にあることに対して楽天的な態度を取り戻している。
【0355】
(実施例19)IMMU-130(ラベツズマブ-SN-38)のみを使用する、先行する化学免疫療法には治療不応性の進行結腸癌患者の治療
患者は、2008に初めに診断され、結腸切除および部分的肝切除をそれぞれ原発性および転移性結腸癌について受けているステージIV転移性結腸癌の履歴を有する50歳男性である。次いで、男性は、図8に示されているとおりの化学療法を受けたが、これは、イリノテカン、オキサリプラチン、FOLFIRINOX(5-フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチン)、およびベバシズマブ、さらに、5-フルオロウラシル/ロイコボリンと組み合わせたベバシズマブをほぼ2年間にわたって含んだ。その後、男性は、セツキシマブを、単独か、または、FOLFIRI(ロイコボリン、5-flurouracil、イリノテカン)化学療法と組みわせたコースを翌年以降に施された。2009年に、男性は、化学免疫療法下の間に、肝臓転移に対して高周波切除療法を受け、2010年後期に、肺転移の楔切除を受け、これは、数か月後、2011年初期に繰り返された。2011年に化学免疫療法を受けたにも関わらず、新たな肺転移が2011年末に生じ、2012年には、肺および肝臓転移の両方が可視化した。男性のベースライン血漿癌胎児性抗原(CEA)力価は、IMMU-130での抗体-薬物治療を施される直前に12.5ng/mLであった。コンピューター断層撮影により腫瘍サイズの変化を測定するために放射線科医によって選択されたインデックス病変は、両方とも、IMMU-130(抗CEACAM5-SN-38)治療の前のベースラインで、最長直径の合計で91mmになる右肺および肝臓転移の中葉であった。
【0356】
この患者は、隔週で合計17回の処置投与で、低速静脈内注入により16mg/kgのIMMU-130の用量を投与される。患者はこの治療を良好に許容し、第1の処置の後にグレード1の悪心、下痢、および倦怠のみを有し、これは、処置4および5の後に起こったが、男性は、これらの副作用に対して薬物を投与されたので、その後はなかった。処置3の後に、男性は、脱毛(グレード2)を示し、これは、その後の治療の間、存在した。悪心、下痢、および時折の嘔吐が、2~3日間のみ続き、男性の倦怠は、第1の注入後に2週間続いた。そのほかの点では、患者は治療を良好に許容した。SN-38とコンジュゲートされたこのヒト化(CDR-グラフト)抗体を長期間投与されたので、男性の血液が抗ラベツズマブ抗体に対して測定され、16回の投与の後にも、検出されなかった。
【0357】
1回目のコンピュータ断層撮影(CT)測定が4回の処置の後に行われ、インデックス病変でこの治療の前にベースラインで行われた測定の合計から28.6%の変化を示した。8回の処置の後に、この縮小は40.6%になったので、RECIST基準によると部分的緩解を構成した。この応答はさらに2か月維持され、このとき、男性のCT測定は、インデックス病変がベースライン測定よりも31.9%小さいことを示したが、40.6%と測定された先行する低下よりはやや高かった。したがって、肺および肝臓におけるインデックス病変の慎重なCT測定に基づき、イリノテカン(SN-38の親分子)を含めた先行する化学療法および免疫療法に失敗していたこの患者は、抗CEACAM5ヒト化抗体、ラベツズマブ(hMN-14)を介してターゲティングしたとき、イリノテカン(またはカンプトテシン)の活性な代謝産物、SN-38に客観的な応答を示した。イリノテカン(CPT-11)は、SN-38をインビボで放出することにより作用するが、SN-38コンジュゲートされた抗CEACAM5抗体が、患者が自身の最後のイリノテカン含有療法に対して当初は応答し得なかった後に、部分的な応答を誘導することにより、結腸直腸癌患者において有効であることを証明したことは意外であった。患者の血漿CEA力価低減も、CT所見を確証し:これは、3回目の治療投与の後に、12.6ng/mLのベースラインレベルから2.1ng/mLまで低下し、8から12の投与の間、1.7から3.6ng/mLの間であった。CEAの正常な血漿力価は通常、2.5から5.0ng/mLの間であると判断されるので、この治療は、血液中の男性のCEA力価の正常化をもたらした。
【0358】
(実施例20)IMMU-130での進行結腸癌の患者の治療
この患者は、転移性結腸癌(ステージIV)と初めに診断された75歳の女性である。女性は、右部分的結腸半切除および小腸の切除を受け、次いで、FOLFOX、FOLFOX+ベバシズマブ、FOLFIRI+ラムシルマブ、およびFOLFIRI+セツキシマブ治療を1年半にわたって受け、このとき、女性は疾患の進行を示し、疾患は、後盲管、網に広がり、骨盤内の腹水および胸腔の右側に胸膜浸出を伴った。この治療の直前の女性のベースラインCEA基線は、15ng/mLである。女性は、6mg/kgのIMMU-130(抗CEACAM5-SN-38)を週2回で連続2週間と、それに続く1週間の休止(3週サイクル)で、20回超の投与で受け、これは非常に良好に許容され、いずれの主な血液または非血液毒性も伴わなかった。治療の2か月以内に、女性の血漿CEA力価は、1.3ng/mLまで中程度に縮小するが、8週目の評価では、女性は、インデックス腫瘍病変の21%縮小を示し、これは、13週目には27%まで上昇する。意外にも、患者の腹水および胸膜浸出液は両方とも、この時点で減少(後者は消失)したので、患者の全身状態は顕著に改善した。この患者は、調査治療を継続している。
【0359】
(実施例21)IMMU-130で処置されたステージIV転移性疾患の胃癌患者
患者は、約6年間にわたる摂食に関連した胃の不快感および疼痛、および過去12か月の間での体重減少により、医学的注意を求めている52歳の男性である。胃領域の触診は、硬い腫瘍を明らかにし、これを次いで、胃鏡検査すると、男性の胃の下部に潰瘍腫瘤を明らかにする。これは生検されて、胃腺癌と診断される。検査室での検査は、肝臓機能検査を除いて、具体的な異常な変化は明らかにしないが、LDHおよびCEAが上昇しており、後者は10.2ng/mLである。次いで、患者は、全身PETスキャンを受け、これは、胃腫瘍に加えて、左腋窩および肝臓の右葉の転移性疾患を明らかにする(2つの小さな転移)。この患者は胃腫瘍切除を受け、次いで、転移性腫瘍のベースラインCT測定を受けた。外科手術の4週後に、男性は、シスプラチンおよび5-フルオロウラシル(CF)のレジメンからなる併用化学療法の3コースを投与されるが、これを十分に許容しないので、ドセタキセルでの処置に切り替えられる。この疾患は、CTスキャンに基づき約4か月にわたって安定化しているようであるが、さらなる体重減少、腹部疼痛、食欲不振、および過度の倦怠の患者の愁訴により、反復CT検査が行われ、これは、合計20%の転移のサイズ増大および元の胃切除の部位での病変の疑いを示す。
【0360】
次いで、患者は、8mg/kgを週1回のスケジュールでIMMU-130(抗CEACAM5-SN-38)で実験的治療を受ける。男性は、これを十分に許容するが、3週間後に、グレード2の好中球減少およびグレード1の下痢を示す。男性の4回目の注入は、1週間延期され、次いで、週1回の注入が復活され、次の4回の注入では、下痢または好中球減少の証拠はない。次いで、患者は、男性の転移性腫瘍サイズを測定し、胃切除の元のエリアを観察するためにCT検査を受ける。放射線科医が、RECIST基準により、IMMU-130治療前のベースラインに対して23%の転移性病変の合計の減少を測定する。元の胃切除のエリアには、いずれの明らかな病変も認められない。この時点での患者のCEA力価は7.2ng/mLであり、これは、14.5ng/mLの先行IMMU-130ベースラインからかなり低減している。患者は、週1回のIMMU-130治療を、8.0mg/kgの同じ用量で継続し、合計13回の注入の後に、男性のCT検査は、肝臓転移が消失していること、およびすべての転移性病変の合計が41%減少していることを示し、RECISTによる部分的応答を構成している。患者の全身状態は改善し、3週毎でさらに4回の注入で8mg/kgのIMMU-130の維持治療の投与を継続しながら、通常の活動を開始している。血液CEAの最後の測定では、この値は4.8ng/mLであり、これは、この患者が当てはまる喫煙者では、正常範囲内である。
【0361】
(実施例22)hMN-15-SN-38での再発三種陰性転移性乳癌の治療
ベバシズマブ+パクリタキセルで以前に治療されたが応答のなかった三種陰性転移性乳癌を有する58歳の女性は、複数の肋骨、腰椎への転移、女性の左肺に直径3cmと測定される孤立性病変を示し、顕著な骨疼痛および倦怠を伴う。女性は、IgG1個あたりSN-38分子6個とコンジュゲートされた抗CEACAM6ヒト化モノクローナル抗体、hMN-15 IgGでの実験的治療を施される。女性は、3週毎に4回の投与で繰り返す12mg/kgの注入を治療の1コースとして受ける。一過性のグレード2の好中球減少および多少の当初の下痢を除いて、女性はこの治療を良好に許容し、この治療は、2か月の休止の後に、別のコースで繰り返される。X線診断による検査は、インデックス病変の直径の合計が39%縮小したので、女性がRECIST基準により部分的な応答を有することを示す。骨疼痛を含めた女性の全身状態も改善し、女性は、疾病前とほぼ同じ活動レベルに回復している。
【0362】
(実施例23)hMN-15-SN-38での再発した一般治療不応性転移性結腸癌の治療
46歳の女性は、ステージIVの転移性結腸癌を有し、原発性病変を切除した履歴が以前にあり、この病変は、肝臓の両葉への同調肝臓転移、さらに右肺への播種の単一病巣も有した;これらの転移は、CTにより、直径で2から5cmの間と測定される。女性は、5-フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン、オキサリプラチン、セツキシマブ、およびベバシズマブを含めて、3年間にわたって化学療法の様々なコースを施されている。2つの理由で、疾患の安定化または短期応答の証拠は存在するが、女性の測定病変の30%以上の減少はない。hMN-14-SN-38治療前のベースラインでの女性の血漿CEA力価は46ng/mLであり、女性の全インデックス病変は、合計92mmと測定される。
【0363】
hMN-15-SN-38での治療は、12mg/kgで週1回で2週間と、それに続く1週間の休止期間で、21日サイクル内で開始される。このサイクルは、3回繰り返され、一過性の好中球減少および胃腸副作用(悪心、嘔吐、下痢)のみを伴う。意外にも、FOLFIRI治療(イリノテカン、またはCPT-11を含む)に応答することはできなかったが、患者は、治療を完了した後に、RECIST基準により部分応答を示す。次いで、女性は、16mg/kgの用量で1か月毎に1回でさらに6ヶ月にわたるこの治療の維持スケジュールに置かれる。フォローアップスキャンは、女性の疾患が、部分応答(PR)として制御下にあり続けていることを示し、この患者は、90%Kaaarnofsky性能状態で全身的に良好な状態にある。
【0364】
(実施例24)抗CSAp-SN-38コンジュゲートで処置されるステージIV転移性疾患を有する結腸癌患者
この患者は、9cmS状結腸腺癌の切除、続く、FOLIFIRIおよびセツキシマブでの6ヶ月にわたる、次いで、FOLFOX、続く、ベバシズマブでの約9か月の追加の期間にわたる化学免疫療法の後に、肝臓の左葉への、および両肺への結腸癌転移を示す。当初の切除および続く治療の開始の10か月後に、存在すると考えられていた安定な疾患は、病変の成長および左副腎に現れた新たな転移により、進行を示す。この時点での女性の血漿CEAは52ng/mLであり、女性の全身状態は、腹部疼痛、倦怠、および内部出血との関連を示唆する境界域貧血により、悪化していると考えられる。
【0365】
女性は現在、hMu-9(抗CSAp)抗体のSN-38コンジュゲートを12mg/kgの用量で、週1回で2か月間と、それに続く1週間の休止とを1処置サイクルとして施され、次いで、追加の処置サイクルで繰り返され、その際、女性の血球数が毎週測定され、胃腸反応に対してアトロピン薬が投与される。グレード2の脱毛が、第1の処置サイクルの後に認められたが、グレード1の好中球減少のみである。3回の処置サイクルの後に、女性の血漿CEA力価は、19ng/mlまで低減し、この時点で、女性のCT測定は、肝臓および肺において24.1%ほどのインデックス病変の減少を示す。追加の3コースの治療の後に、女性は、31.4%のインデックス病変のCT縮小、および副腎腫瘤の約40%の縮小を示す。この患者は、抗CSAp-SN-38抗体-薬物治療に応答していると判断され、この治療を継続する。女性の全身状態は、倦怠の減少、腹部疼痛または不快感の消失、および全身的に高いエネルギーにより、改善していると考えられる。
【0366】
(実施例25)抗CEACAM6-SN-38イムノコンジュゲートでの乳癌の処置
この患者は、過去3年間にわたる複数の異なる治療後に再発している三種陰性(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体またはHer2/neuを発現しない)転移性乳癌を有する。女性は、両肺に複数の小さな腫瘍、さらに、C4、C5、T2、およびT3頸椎、ならびに両側で複数の肋骨への転移を示す。女性は、溶骨性病変について標準治療を受けており、現在は、16mg/kgの用量で週1回で3週間と、それに続く1週間の休止で、hMN-15-SN-38での処置を開始しており、次いで、この3週間サイクル治療をさらに2回続ける。治療から2週目に、CTスキャンを行って応答を評価すると、小さな肺転移のうちの2個が消失した一方で、大きな病変のうちの1個は、約40%縮小していることが認められる。脊椎への転移はなお存在するが、C4およびC5病変は、約25%ほど小さく見える。肋骨への転移のうち、6個の小さな病変のうちの2個は、サイズにおいてかなり小さく見え、生存しているのか、または小さな瘢痕もしくは壊死の小さなエリアであるか不確かである。患者の腫瘍マーカー、さらにはLDH力価は、安定しているか、または低減したレベルのいずれかを示すと考えられ、これは、疾患の進行が停止していることを示し、疾患の縮小の証拠もいくつかある。主観的に、患者は、倦怠と骨疼痛の低下、および呼吸の改善で、かなり良好に感じている。女性は、それぞれの治療後に多少の軽微な悪心および嘔吐を経験しているが、これらは1週間以内に解消された。唯一他の副作用は、一過性血小板減少であり、これも、7日以内に解消された。女性は観察されており、2か月以内に治療サイクルを再び続ける。
【0367】
(実施例26)抗CEACAM5および抗CEACAM6-SN-38イムノコンジュゲートの組み合わせでの転移性結腸癌の処置
この患者は、肝臓の疾患(右葉に5cm病変および左葉に3cm病変)、さらに右肺への2つの転移(サイズ2cmおよび3cm)のCTエビデンスで、転移性結腸癌を有する。結腸の原発癌は以前に切除され、患者は、肝臓および肺への異時性転移により、術後治療のコースを受けた。治療の間に、肝臓転移は成長し、1つの肺転移が2つになったので、この患者は、実験的化学免疫療法の候補である。次いで、男性は、それぞれ別の日に、8mg/kgの用量で週1回で2週間にわたり施され、次いで、月に1回で4か月にわたり繰り返される二重の抗体-薬物コンジュゲート、ラベツズマブ(hMN-14)-SN-38およびhMN-15-SN-38のコースで開始される。治療の2週後に、患者の状態がCTおよび検査室試験により評価される。CTスキャンにより、右肝臓葉の大きな腫瘍が50%縮小し、左葉の腫瘍が33%縮小し、肺転移は両方合わせて約20%縮小していることが明らかになる。男性の血液CEA力価は、治療の開始時の22ng/mLから、このフォローアップの時点で6ng/mLまで低下している。主観的に、患者は、より丈夫になったと感じ、また、毎日の活動においてより活発なようだと述べている。副作用は、治療の2週間以内に正常範囲に戻った一過性の血小板減少および白血球減少と、制吐薬療法によって管理された複数回の悪心および嘔吐である。疾患の状態の別の精密検査の後に、患者は、約2か月でこれらの治療サイクルを再開することが計画される。
【0368】
(実施例27)抗体-薬物コンジュゲートの連続注入
患者は、直腸癌を以前に切除されており、従来の処置により、術前および述術後放射線化学療法を受けている。女性は、4年間にわたって腫瘍を有していなかったが、現在、通常のCTと、当初治療後の3.0ng/mLから6.3ng/mLに上昇しているフォローアップ血液CEA値により見つけられた右肝臓への3つの小さな転移性病変を示している。女性は、留置カテーテルおよび2mg/kgの用量で17日間にわたるラベツズマブ-SN-28の連続注入を施される。次いで、女性は、5週後に、反復連続注入治療を今度は3週間にわたって1mg/kgで投与される。3週後に、CTスキャンおよび血液CEAモニターにより、肝臓転移のうちの1つが消失し、他の2つは同じか、またはやや小さくなっていることが明らかになる。血液CEA力価は現在、2.4ng/mLと測定されている。女性は症状を示さず、治療下にある間にはグレード2の悪心および嘔吐のみ、グレード2の好中球減少を経験していたが、両方とも時間と共に解消された。
【0369】
(実施例28)抗CEACAM5イムノコンジュゲートでの進行転移性結腸癌の治療
患者は、転移性結腸癌について先行する治療に失敗した50歳男性である。ファーストラインの治療は、第1サイクルではIROX(イリノテカン+オキサリプラチン)で開始するFOLFIRINOX+アバスチン(登録商標)(段階的に増強)である。この処置を開始した後に、患者は、肝臓転移のサイズの縮小を示すCTを有する。これに外科手術を続けて、腫瘍組織を除去する。アジュバント化学療法は、ファーストラインのレジメン(IROX部分は除く)の継続であり、これは、一過性の無再発期間をもたらした。約1年間の後に、CTにより、肝臓転移の再発が明らかになる。これにより、セカンドラインのレジメン(FOLFIRI+セツキシマブ)が開始される。別のCTは、肝臓転移における応答を示す。次いで、肝臓転移のRF切除が行われ、続いて、FOLFIRINOX+セツキシマブでのアジュバント化学療法を継続し、続いて、約1年間、セツキシマブを維持した。別のCTスキャンは、疾患の証拠を示さない。さらなるスキャンは予想肺結節を示し、これが確認される。これにより、この肺結節が楔状切除される。その後、FOLFIRI+セツキシマブが開始され、継続される。後のCTスキャンは、肺および肝臓転移の両方を示す。
【0370】
hMN-14-SN-38イムノコンジュゲートの投与時点で、患者は、イリノテカン(カンプトテシン)に応答しない両肺および肝臓の転移を伴う進行転移性結腸癌を有する。hMN-14-SN-38イムノコンジュゲートが12mg/kgの投薬量で投与され、これが、隔週で繰り替えされる。患者は、RECIST基準による転移性腫瘍の縮小を伴う、部分的な応答を示す。
【0371】
この12mg/kg(隔週に投与)集団では1名の患者しか、グレード2の血液(好中球減少)を示さず、多くの患者は、抗体-薬物コンジュゲートの活性のサインであるグレード1または2の悪心、嘔吐、または脱毛を有したが、忍容性は良好であったことは特記される。カンプトテシンのターゲティングの改善における抗体部分の効果によって、コンジュゲートされていないイリノテカンに対して以前は耐性であった癌におけるSN-38部分の有効性が説明される。
【0372】
(実施例29)抗MUC5ac-SN-38イムノコンジュゲートでの転移性膵臓癌の処置
この44歳の患者は、手術不能の膵臓管状腺癌を膵臓上部に伴う転移性膵臓癌の履歴を有し、肝臓の左と右の葉に転移を示し、前者は3×4cmと測定され、後者は2×3cmと測定される。患者は、ゲムシタビンの1コースを施され、客観的な応答を示さない。4週後に、hPAM4-SN-38を8mg/kgの用量で週2回で2週間と、それに続く1週間の休止、続いて、さらなる2サイクルの反復で静脈内で施される。CT研究が1週後に行われ、腫瘍腫瘤(すべての部位)において全部で32%の縮小(部分応答)を示すと共に、男性の血液CA19-9力価が、ベースラインの220からX線診断評価の時点での75に低下する。患者は、抗体-薬物コンジュゲートでの各処置の後にグレード1の悪心および嘔吐のみを、また、最後の処置サイクルの終了時に、4週後に解消するグレード2の好中球減少を示す。注入反応を防止するための前投薬は施されない。
【0373】
(実施例30)治療不応性転移性結腸癌(mCRC)を処置するためのhL243-SN-38の使用
患者は、転移性結腸癌を示している67歳の男性である。診断直後の横行結腸切除に続いて、次いで、患者は、肝臓の左葉の転移性病変を除去するための部分肝切除の前に、ネオアジュバント設定で、4サイクルのFOLFOX化学療法を投与される。これに、合計10サイクルのFOLFOXのためのアジュバントFOLFOXレジメンを続ける。
【0374】
CTは、肝臓への転移を示す。男性のターゲット病変は、肝臓の左葉の3.0cm腫瘍である。非ターゲット病変には、肝臓における複数の低減弱腫瘤が含まれる。ベースラインCEAは685ng/mLである。
【0375】
患者がインフォームドコンセントにサインした後に、hL243-SN-38(10mg/kg)が、隔週で4か月にわたって施される。患者は、第1の処置の後に悪心(グレード2)および倦怠(グレード2)を経験し、主な有害事象なしに継続する。(8回の投与の後に)行われた第1の応答評定は、コンピュータ断層撮影(CT)によるとターゲット病変の26%の縮小を示し、また、男性のCEAレベルは、245ng/mLに低下する。第2の応答評定(12回の投与後)において、ターゲット病変は35%縮小している。男性の全身健康および臨床症状は、改善されていると判断される。
【0376】
(実施例31)IMMU-114-SN-38(抗HLA-DR-SN-38)での再発濾胞性リンパ腫の処置
様々な所属リンパ節(頸部、腋窩、縦隔、鼠蹊部、腹部)および骨髄併発における広範な疾患を示す濾胞性リンパ腫についてのR-CHOP化学療法を受けた後に、この68歳の男性は、実験薬剤、IMMU-114-SN-38(抗HLA-DR-SN-38)を、10mg/kgの用量で週1回で3週間と、それに続く3週間の休止で、次いで、さらに3週間の第2のコースで施される。次いで、男性は、CTにより、インデックス腫瘍病変の変化について評価され、CHESON基準に従って23%の縮小を示す。治療をさらに2コース反復し、次いで、これは、CTにより、部分応答である腫瘍の55%縮小を示す。
【0377】
(実施例32)IMMU-114-SN-38での再発慢性リンパ球性白血病の処置
International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia and World Health Organization分類により定義されるとおり、CLLの履歴を有する67歳の男性は、フルダラビン、デキサメタゾン、およびリツキシマブ、さらにはCVPのレジメンでの先行する治療の後に、再発した疾患を示す。男性はここで、全身リンパ節肥大に関連した発熱および夜間発汗、ヘモグロビンおよび血小板産生の低減、さらには、白血球数の急速上昇を示している。男性のLDHは上昇し、β-2-マイクログロブリンも正常のほぼ2倍である。患者は、IMMU-114-SN-38コンジュゲートでの治療を、8mg/kgを週1回で4週間と、それに続く2週間の休止の投薬スキームで施され、次いで、このサイクルを再び反復する。評価は、患者の血液パラメーターが改善していること、また、男性の循環CLL細胞の数が減少していると考えられることを示す。次いで、治療をさらに3サイクル再開し、その後、男性の血液および検査値は、男性が部分応答を有することを示している。
【0378】
(実施例33)治療不応性転移非小細胞肺癌を処置するためのhMN-15-SN-38の使用
患者は、非小細胞肺癌と診断された58歳の男性である。男性は、カルボプラチン、ベバシズマブの化学療法レジメンを6ヶ月間にわたって初めに施され、応答を示し、次いで、進行した後に、カルボプラチン、エトポシド、タキソテール(登録商標)、ゲムシタビンでの化学療法のさらなるコースを続く2年間にわたって投与され、随時の応答が2か月以下持続する。次いで、患者は、5.5×3.5cmと測定される左縦隔腫瘤および胸膜浸出を示す。
【0379】
インフォームドコンセントにサインをした後に、患者は、hMN-15-SN-38を12mg/kgの用量で、隔週で施される。最初の2回の注入の間に、短期間の好中球減少および下痢が経験されるが、これらは2日以内に解消されるか、または対症療法に応答する。hMN-15-SN-38の合計6回の注入の後に、ターゲット病変のCT評価は、22%の縮小を示す。患者は、この治療をさらに2か月間にわたって継続し、この時点で、45%の部分応答がCTにより認められる。
【0380】
(実施例34)hA19-SN-38での濾胞性リンパ腫患者の処置
60歳の男性が、腹部疼痛および触診可能な腫瘤を示す。患者は、CTおよびFDG-PET検査を受け、縦隔、腋窩、および頸部結節に病的腺症を有する腫瘤の存在が確認される。LDHおよびβ-2-マイクログロブリンの上昇を除いて、検査室検査は顕著ではない。骨髄生検は、複数の小柱近傍(paratrabecular)および脈管周囲リンパ凝集体を示した。これらは、免疫染色によりCD20、CD19、およびCD10の発現を有するリンパ球性である。最終診断は、グレード-2濾胞性リンパ腫、ステージIVAであり、FLIPIスコアは4である。当該の最長結節の最長直径は7cmである。患者は、SN-38とコンジュゲートされたヒト化抗CD19モノクローナル抗体IgG(hA19)(IgG1個あたり薬物分子6個)を施される。投薬は、6mg/kgで週1回で4週間と、それに続く2週間の休止であり、次いで、6週毎に4週間の処置からなるサイクルを繰り返す。5サイクルの後に、骨髄および画像診断(CT)評価は、部分応答を示し、測定可能な病変は約60%減少し、骨髄の浸潤はかなり少ない。また、LDHおよびβ-2-マイクログロブリン力価も減少する。
【0381】
(実施例35)hA19-SN-38での再発前駆体B細胞ALLの処置
この51歳の女性は、CD19、CD20、CD10、CD38、およびCD45について染色されるALL細胞を示す前駆体Philadelphia染色体陰性B細胞ALLについて治療を受けている。骨髄および血液リンパ芽球の20%超が、CD19およびCD20を発現する。患者は、治療前に、クロファラビンおよびシタラビンを投与され、その結果、顕著な血液毒性は生じたが、応答はなかった。高用量シタラビン(ara-C)の1コースも開始されたが、患者によって許容され得なかった。女性は、hA19-SN-38治療を6mg/kgの注入による週1回投与で5週間と、それに続く2週間の休止で施され、この療法をさらに2回反復する。意外にも、女性は、部分応答と決定されるのに十分な血液および骨髄数における改善を示す。好中球減少(グレード3)による2か月の休止の後に、治療を、8mg/kgで隔週でさらに4コースにわたって再開する。この時点で、女性はかなり改善し、幹細胞移植の候補となり得るであろうステージに女性を持っていくことを試みる維持治療が検討されている。
【0382】
(実施例36)抗CD22-SN-38イムノコンジュゲートでのリンパ腫の処置
患者は、再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する62歳男性である。6コースのR-CHOP化学免疫療法の後に、男性はここで、縦隔、腋窩、および鼠径部リンパ節に拡散した広汎なリンパ節を示す。男性は、エプラツズマブ-SN-38(抗CD22)を12mg/kgの用量で週1回×3、それに続く1週間の休止で施され、次いで、さらなる2サイクルを再び反復される。1週後に、患者は、CT画像診断により評価され、男性の総腫瘍体積が測定され、35%の減少(部分応答)を示し、これは、続く3か月にわたって維持されたように見える。副作用は、治療後の血小板減少およびグレード1の悪心および嘔吐のみであり、これらは、2週間以内に解消する。注入反応を低減するための前治療は施されない。
【0383】
(実施例37)フロントライン設定におけるベルツズマブおよびエプラツズマブ-SN-38での濾胞性リンパ腫の併用療法
35歳の女性が、頸部リンパ節、両腋窩、および縦隔において示される低グレードおよび良好なFLIPIスコアの濾胞性リンパ腫と診断される。女性の脾臓は肥大してなく、骨髄生検は、疾患関与を示していない。女性は、症状としては大きな影響を受けておらず、高熱期、夜間発汗、および通常よりも多少強い倦怠のみを有する。女性の医師は、模様眺めのプロセスは経ないが、週1回×4週間(200mg/m)のヒト化抗CD20モノクローナル抗体、ベルツズマブの皮下経路を抗CD22エプラツズマブ-SN-38の週2回のコースと組み合わせる攻撃性の低い治療(各注入は8mg/kgの用量である)を、この女性に施すと決定する。この併用療法は、2か月後に反復され、この後、患者は、CTおよびFDG-PET画像診断検査、さらに骨髄生検により評価される。意外にも、すべての疾患の約90%の縮小が認められ、次いで、女性は、4週間の休止の後に、この併用療法の別のコースを施される。4週後の評価は、X線診断(および骨髄生検)による完全な応答を示す。女性の医師は、この治療コースを8か月後に反復することを決定し、X線診断/病理検査は、完全な寛解の持続を示している。
【0384】
(実施例38)ベルツズマブ-SN-38を使用しての濾胞性リンパ腫のフロントライン治療
患者は、低グレードの濾胞性リンパ腫を、測定可能な両側頸部および腋窩リンパ節(それぞれ2~3cm)、4cm直径の縦隔腫瘤、および肥大脾臓を示す41歳の女性である。女性は、3コースのベルツズマブ-SN-38(抗CD20-SN-38)治療を施され、各コースは、3週間ごとに1回注入される10mg/kgからなる。治療の完了後に、CTによる女性の腫瘍測定は、80%の縮小を示す。次いで、女性は、追加の2コースの治療を施され、CT測定は、完全な応答が達成されていることを示す。これは、FDG-PET画像診断により確認されている。
【0385】
(実施例39)SN-38とコンジュゲートされた1F5ヒト化抗体での再発DLBCLの治療
53歳の女性は、6サイクルにわたり施されたR-CHOP化学療法に対して部分的応答を示してから8か月後に、縦隔および腹部大動脈周囲部位の再発性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を示す。女性は、さらなる細胞傷害性化学療法を受けることを拒否したので、抗体1分子あたりSN-28約6分子にコンジュゲートされたヒト化1F5 抗CD20モノクローナル抗体10mg/kgからなるより穏やかな治療を隔週で週1回、5回の注入にわたって施される。CTおよびFDG-PET検査は、女性のリンパ腫の40%のさらなる縮小を示すので、4週間の休止期間の後に、治療は、8mg/kgの用量で3週間ごとに合計5回の注入で再開される。女性の疾患の評価により、約80%の縮小が明らかになる。
【0386】
(実施例40)リツキシマブ-SN-38での再発慢性リンパ球性白血病での治療
以前はフルダラビン、シクロフォスファミド、およびリツキシマブ治療に、再発後は、9カ月続く部分応答でイブルチニブに応答していたCLLの8年の履歴を有する62歳の男性が、疾患の進行を示す。患者は、12mg/kgを2週間ごとに3コース、8mg/kgに減らして隔週でさらに4コースのスケジュールで、リツキシマブ-SN-38単独治療を施される。1デシリットルあたり50%超の、または11g超のヘモグロビンレベル、cmmあたり1500細胞超の絶対好中球数、または11k/cmm超の血小板数に反映される血球減少の持続的改善が観察され、これは、約9カ月は永続する。
【0387】
(実施例41)ベンダムスチンと組み合わせたベルツズマブ-SN-38でのDLBCLのフロントライン治療
59歳の男性は、CT、FDG-PET、および免疫組織学的/病理診断により確認されるとおり、胸部、腹部、鼠径部リンパ節、および肥大脾臓を含めたDLBCLの多数の部位を示す。1および2日目に90mg/mの用量でベンダムスチンが施され、7および14日目に6mg/kgの用量でベルツズマブ-SN-38が併用され、4週毎に4サイクルにわたって施される。その後、X線診断による評価は、部分応答を示す。2か月の休止の後に、治療をさらに2サイクル反復し、次いで、放射線による評定は、完全な応答を示す。血球減少、主に好中球減少は管理可能であり、グレード3レベルには達しない。
【0388】
(実施例42)レナリドマイドと組み合わせたベルツズマブ-SN-38でのマントル細胞リンパ腫(MCL)のフロントライン治療
患者は、GI愁訴および嗜眠を示した後に、MCLを有すると診断された68歳男性である。結腸鏡検査により、7cm盲腸腫瘤が示され、精密検査により、男性がステージIV疾患を有することが明らかになる。男性は、レナリドマイド25mgの併用療法を、28日毎に1~21目に毎日経口で施される。2サイクルの後に、男性は、隔週で10mg/kgの用量で3回の処置と、それに続く2週間の休止でベルツズマブ-SN-38を施される。次いで、これを再び反復する。この治療の完了から2週後に、患者は、男性の測定インデックス病変の部分応答および可視化された他のリンパ節の縮小を示す。4か月後、レナリドマイド治療を21日間、続いて、2コースのベルツズマブ-SN-38を反復する。次いで、男性の疾患は、まだ完全な応答ではないが、さらに縮小を示す。
【0389】
(実施例43)再発/治療不応性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)を有する患者のエプラツズマブ-SN-38治療
体重減少の症状を有する65歳男性が上腹部腫瘤の生検を受け、これは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断される。男性は、6サイクルの標準的なR-CHOP(リツキシマブ、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾン)で処置される。男性は、長期および持続性の好中球減少(700ANC)を軽度の血小板減少(50~70k/mL)と共に示すが、真性貧血は示さない。男性のIPIは高い。上腹部腫瘤は、この治療の後になんら変化を示さず、男性は、抗CD22エプラツズマブ-SN-38の軽度処置レジメンに置かれる。これは、隔週で4回の注入、次いで、3週毎に1回でさらに3回の注入で注入される4mg/kgのレジメンである。男性の上腹部リンパ腫が、1週後にCTにより測定され、52%の顕著な縮小を示す。患者は、この処置を3週間ごとにさらに3か月継続し、男性の体重の安定化および男性のエネルギーおよび活動性の改善と共に、リンパ腫腫瘤のこの縮小を示し続ける。
【0390】
(実施例44)再発濾胞性リンパ腫を有する患者のヒト化RFB4治療
42歳女性は、女性の背中にまで広がる下腹部の鋭く、持続的かつ重症の疼痛を示す。検査室検査は顕著ではなかったが、腹部超音波は、腹側下部左に、7.5×6.2×7.0cmと測定される異質な充実性腫瘤を示す。CTスキャンは、隣接するリンパ節に波及する左小腸間膜内に大きな腫瘤を示す。この腫瘤のCTガイド針生検は、これが、濾胞性リンパ腫、グレード3であること示す。免疫組織化学は、CD19、CD20、CD22、Bcl-2およびBcl-6について陽性結果を有するB細胞種を示す。PET検査は、横隔膜より上、骨髄内、または脾臓内の疾患は明らかにしないが、骨髄生検は、リンパ腫の波及を確認するものである。患者は、6サイクルのR-CHOP化学療法を施され、その結果、4か月後には、この治療に対する完全な応答が生じる。しかしながら、10か月後に、PETおよび生検検査により決定されるとおり、女性は、腹部腫瘤および隣接リンパ節の再発、さらに、肥大脾臓およびさらなる骨髄併発で再発する。女性は、8mg/kgの用量で週1回で3週間にわたる、IgG1個あたりSN-38分子6個とコンジュゲートされているヒト化抗CD22モノクローナル抗体、RFB4での1コースの治療を開始し、次いで、8mg/kgで隔週で、さらに4回の処置を継続する。2週間後に、女性は、CTおよびFDG-PET検査を受け、女性の腹部病変および脾臓は、40%の縮小および骨髄併発の全般的な縮小を示す。4週間の休止の後に、4mg/kgで週1回で4週間にわたる治療、続いて、6mg/kgで隔週、さらに5回の処置にわたる治療が実施され、すべての測定病変のサイズの合計が、さらに測定可能に合計60%縮小した。患者は、8mg/kgのhRFB4-SN-38の維持治療を月に1回、続く5か月にわたって続け、治療応答を維持している。
【0391】
(実施例45)再発/治療不応性急性リンパ芽球性白血病を有する患者のエプラツズマブ-SN-38治療
CD22+前駆体B細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)を有する29歳の男性は、PEG-アスパラギナーゼ、シクロフォスファミド、ダウノルビシン、シタラビン(ara-C)、ビンクリスチン、ロイコボリン、プレドニゾン、メトトレキサート、および6-メルカプトプリンでの治療、ならびに変法Larsonプロトコル下で誘導維持治療として施されるG-CSF(Neupogen)での支持治療に応答していない。患者の白血病は、Philadelphia染色体陰性である。血液および骨髄白血病芽細胞数(blast counts)に基づき、患者は、軽微な応答しか示さず、疾患は4か月後に進行する。次いで、男性は、6mg/kgで4週間にわたる当初スケジュールでエプラツズマブ-SN-38の週1回の投薬を施され、次いで、6mg/kgに低減して隔週でさらに6回の注入で施される。次いで、患者は、血液および骨髄白血病芽細胞により、さらに、腎臓サイズおよび骨髄波及のFDG検査により評価され、これは、患者の全身徴候および症状の随伴する改善を伴って、部分応答が達成されていることを示す。次いで、この治療は、続く8か月にわたって、ただし5mg/kgで隔週で、治療3週間および休止2週間で継続し、完全な緩解が達成される。患者は目下、造血性幹細胞移植のための候補として評価されている。
【0392】
(実施例46)再発/治療不応性急性リンパ芽球性白血病を有する患者のヒト化RFB4-SN-38治療
HIDAC(高用量ara-C治療)に対する応答が失敗した後に、前駆体B細胞急性リンパ芽球性白血病を有するこの20歳の男性は、10mg/kgを週1回で2週間と、それに続く1週間の休止、続いて、10mg/kgの注入を隔週でさらに5回の処置からなる投薬スケジュールで、SN-38にコンジュゲートされたhRFB4 IgG(平均してIgG1個あたり薬物分子6個)でのヒト化抗CD22治療を施される。次いで、患者は、血液および骨髄白血病芽細胞の存在について評価され、>90%縮小を示す。4週間の休止の後に、この治療コースを繰り返し、4週間後の評価は、PCRにより測定したところ、軽微な残りの疾患を伴うこともなく、完全な応答を示す。
【0393】
(実施例47)R-CHOP化学療法を投与されているDLBCL患者における、エプラツズマブ-SN-38での強化療法
1.5~2.0cmと測定される両側の頸部アデノパシーおよび頸部リンパ節、さらに3cmの右腋窩リンパ節、さらに2.5~3.0cmと測定される後腹膜および両側骨盤リンパ節を有するこの56歳の女性は、CD20およびCD22について陽性のステージ3のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断される。女性は、フィルグラスチムおよび予防の抗生物質を21日毎に施される標準的なR-CHOP化学療法レジメンを受ける。この治療を6サイクル投与された後に、患者は2か月の休止期間を与えられ、次いで、8mg/kgのエプラツズマブ-SN-38を隔週で3回の処置で注入される強化療法を受ける。R-CHOP化学療法後の応答は軽微であったのに対して(測定病変の30%未満の変化)、エプラツズマブ-SN-38での強化療法は部分的な応答をもたらす(すべてのインデックス病変の合計>50%の縮小)。残り3か月の後に、エプラツズマブ-SN-38でのこのコースの治療を繰り返し、患者は再び、フィルグラスチムおよび予防の抗生物質を施され、女性の良好な寛解を維持する。
【0394】
(実施例48)IMMU-31-SN-38での再発転移性精巣癌の処置
患者は、右精巣の精巣癌の切除の履歴を有し、併用化学療法に十分に応答する両肺への同調転移を有する30歳男性である。診断時に、αフェトプロテイン(AFP)の男性の血液力価は、1,110ng/mLに上昇していることが示されるが、治療の成功の後に、109ng/mLに減少する。男性はここで、3年間にわたってAFP力価が徐々に上昇していることを示したので、男性身体のCTおよびFDG-PETスキャンが行われ、両肺への肺転移の再発が明らかとなる。男性は、IgG1個あたり薬物分子6個でSN-38とコンジュゲートされた抗AFP抗体、IMMU-31 IgGでの治療を受ける。男性は、12mg/kgの用量のこの抗体-薬物コンジュゲートの週1回投与を4週サイクルのうちの3週間にわたって投与され、さらなるサイクルを、ただし治療薬を10mg/kgに低減して繰り返す。次いで、これを、さらに2サイクル繰り返す。2週後に、男性の肺のX線診断検査により、転移が消失していることが明らかになる。男性の血液AFP力価は目下、18ng/mLである。患者は、正常な活動性に戻り、完全な応答が達成されている。
【0395】
(実施例49)IMMU-31-SN-38での再発転移性肝細胞癌の処置
B型肝炎感染、アルコール過剰、および喫煙の履歴を有する58歳男性は、初め肝硬変に、次いで、肝細胞癌の診断に至る。肝臓の一部を切除された後に示された時点で、所属リンパ節にも波及している。患者は、1コースのソラフェニブ治療を受け、多少の全身的改善を示すが、所属リンパ節または2つの肺(右肺)転移の縮小はいずれもなかった。肝臓のCTも、残りの肝臓柔組織に再発が存在する可能性を示唆する。この患者はここで、4週間サイクルの2週間にわたって16mg/kgを週1回のスケジュールをそれぞれ含む3コースのIMMU-31-SN-38での治療を施される。6回の投与を含む3コースの後に、患者は評価され、2,000ng/mLのベースライン値から170ng/mLへの循環AFP力価の低下、さらに測定指数病変の合計の20%の縮小を示す。2か月の休止後に、3サイクルのさらなるコースの治療を、ただし、注入1回あたり1mg/kgに用量を低減して開始する。1か月後に、ベースラインの35%までのすべての測定病変のかなりの縮小、さらに、100ng/mLへのAFP血液力価のわずかな低下がある。患者は、疾患の進行または限定的な毒性のない限り、1か月あたり1回の投与の維持治療を続けている。
【0396】
(実施例50)イムノコンジュゲート貯蔵
実施例8において記載したコンジュゲートを精製し、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、pH6.5と緩衝液交換し、さらに、トレハロース(最終濃度25mM)およびポリソルベート80(最終濃度0.01%v/v)で製剤化したが、この際、最終緩衝液濃度は、添加剤の添加の結果として、22.25mMとなった。製剤化コンジュゲートを凍結乾燥させ、2℃~8℃での貯蔵で密封バイアル中で貯蔵した。凍結乾燥イムノコンジュゲートはこの貯蔵条件下で安定しており、その生理学的活性を維持した。
【0397】
上記から、当技術分野での当業者であれば、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、本発明の意図および範囲から逸脱することなく、過度の実験を伴うことなく、様々な使用および条件に合わせるように本発明を様々に変化および変更することができる。本明細書に列挙された特許、特許出願、および刊行物はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0398】
[好適な実施形態]
1. 癌を有するヒト対象に、抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされているSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含む癌を処置する方法であって、前記抗体またはその断片が、EGP-1(TROP-2)、CEACAM5、CEACAM6、CD74、CD19、CD20、CD22、CSAp、HLA-DR、MUC5ac、およびAFP(αフェトプロテイン)から選択される抗原に結合し;かつ前記イムノコンジュゲートが4mg/kgから18mg/kgの間の投薬量で投与される方法。
2. 前記投薬量が4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
3. 前記抗体が、hLL1(抗CD74)、hLL2(抗CD22)、hRFB4(抗CD22)、hRS7(抗TROP-2)、hPAM4(抗MUC5ac)、hMN-3(抗CEACAM6)、hMN-14(抗CEACAM5)、hMN-15(抗CEACAM6)、hA19(抗CD19)、hA20(抗CD22)、hMu-9(抗CSAp)、hL243(抗HLA-DR)、およびhIMMU31(抗AFP)からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
4. 前記癌が充実性腫瘍であり、前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態1に記載の方法。
5. 前記癌が、B細胞リンパ腫、B細胞白血病、結腸癌、胃癌、食道癌、髄様甲状腺癌、腎臓癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、睾丸癌、前立腺癌、肝臓癌、皮膚癌、骨癌、脳癌、直腸癌、および黒色腫からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
6. 前記B細胞白血病またはB細胞リンパ腫が、B細胞リンパ腫の無痛型、B細胞リンパ腫の攻撃型、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病、ヘアリーセル白血病、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、および多発性骨髄腫からなる群から選択される、実施形態5に記載の方法。
7. 前記癌が転移性である、実施形態5に記載の方法。
8. 前記転移のサイズの縮小または消失をさらに含む、実施形態7に記載の方法。
9. 前記癌が、他の治療に対して治療不応性であるが、前記イムノコンジュゲートに対しては応答する、実施形態1に記載の方法。
10. 前記患者が、前記イムノコンジュゲートでの処置の前に、少なくとも1つの他の治療に対して応答に失敗している、実施形態1に記載の方法。
11. 前記患者が、前記イムノコンジュゲートでの処置の前に、イリノテカンでの治療に対して応答に失敗している、実施形態10に記載の方法。
12. 前記癌が充実性腫瘍であり、前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態10に記載の方法。
13. 前記SN-38と前記抗体との間にリンカーが存在する、実施形態1に記載の方法。
14. 前記リンカーがCL2Aであり、前記イムノコンジュゲートの構造がMAb-CL2A-SN-38
【化13】

である、実施形態13に記載の方法。
15. MAb-CL2A-SN-38中のSN-38の10-ヒドロキシ位が、「COR」部分を使用する10-O-エステルまたは10-O-カルボナート誘導体であり、ここで、「CO」はカルボニルであり、「R」基は、(i)N,N-二置換アミノアルキル基「N(CH-(CH-」(ここで、nは1~10であり、末端アミノ基は、任意選択により第四級塩の形態である);(ii)アルキル残基「CH-(CH-」(ここで、nは0~10である);(iii)アルコキシ部分「CH-(CH-O-」(ここで、nは0~10である);(iv)「N(CH-(CH-O-」(ここで、nは2~10である);または(v)「RO-(CH-CH-O)-CH-CH-O-」(ここで、Rはエチルまたはメチルであり、nは0~10の値の整数である)から選択される、実施形態14に記載の方法。
16. 6個以上のSN-38分子が各抗体分子に結合している、実施形態1に記載の方法。
17. 前記抗体がIgG1またはIgG4抗体である、実施形態1に記載の方法。
18. 前記抗体が、G1m3、G1m3,1、G1m3,2、G1m3,1,2、nG1m1、nG1m1,2、およびKm3アロタイプからなる群から選択されるアロタイプを有する、実施形態1に記載の方法。
19. 前記イムノコンジュゲート投薬量が、前記ヒト対象に、(i)毎週;(ii)隔週;(iii)1週間の治療と、それに続く2、3、または4週間の休止;(iv)2週間の治療と、それに続く1、2、3、または4週間の休止;(v)3週間の治療と、それに続く1、2、3、4、または5週間の休止;(vi)4週間の治療と、それに続く1、2、3、4、または5週間の休止;(vii)5週間の治療と、それに続く1、2、3、4、または5週間の休止;および(viii)毎月からなる群から選択されるサイクルでのスケジュールで週1回または2回投与される、実施形態1に記載の方法。
20. 前記サイクルを4、6、8、10、12、16、または20回繰り返す、実施形態19に記載の方法。
21. 前記イムノコンジュゲートが、コンジュゲートされていない抗体、放射標識された抗体、薬物がコンジュゲートされた抗体、毒素がコンジュゲートされた抗体、遺伝子療法、化学療法、治療用ペプチド、サイトカイン療法、オリゴヌクレオチド、限局性放射線療法、外科手術、および干渉RNA療法からなる群から選択される1種または複数の治療モダリティーと組み合わせて投与される、実施形態1に記載の方法。
22. 前記薬物、毒素、または化学療法薬が、5-フルオロウラシル、アファチニブ、アプリジン、アザリビン、アナストロゾール、アンスラサイクリン、アキシチニブ、AVL-101、AVL-291、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリチアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、Cox-2阻害薬、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、シクロフォスファミド、クリゾチニブ、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ジナシクリブ、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2P-DOX)、シアノ-モルホリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エルロチニブ、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エルロチニブ、エンチノスタット、エストロゲン受容体結合薬、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、エトポシドフォスファート、エキセメスタン、フィンゴリモド、フラボピリドール、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’-O-ジオオレオイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害薬、フォスタマチニブ、ガネテスピブ、GDC-0834、GS-1101、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イブルチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イホスファミド、イマチニブ、L-アスパラギナーゼ、ラパチニブ、レノリダミド、ロイコボリン、LFM-A13、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニトロソウレア、オラパリブ、プリコマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、PCI-32765、ペントスタチン、PSI-341、ラロキシフェン、セムスチン、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、タモキシフェン、テマゾロミド(DTICの水性形態)、トランス白金、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、バタラニブ、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンカアルカロイド、およびZD1839からなる群から選択される、実施形態21に記載の方法。
23. 膵臓、結腸直腸、肺、胃、膀胱、腎臓、乳房、卵巣、子宮、または前立腺の癌を有するヒト対象に、hRS7(抗TROP-2)抗体または抗原結合性のその断片にコンジュゲートされているSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含む膵臓、結腸直腸、肺、胃、膀胱、腎臓、乳房、卵巣、子宮、または前立腺の癌を処置する方法であって、前記イムノコンジュゲートが、4mg/kgから24mg/kgの間の投薬量で投与される方法。
24. 前記投薬量が4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択される、実施形態23に記載の方法。
25. 前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態23に記載の方法。
26. 前記癌が転移性結腸癌であり、前記患者が、前記イムノコンジュゲートの投与前に、FOLFIRIまたはFOLFOX化学療法に失敗している、実施形態23に記載の方法。
27. 前記癌が三種陰性転移性乳癌であり、前記患者が、前記イムノコンジュゲートの投与前に、CMF、カルボプラチン、またはパクリタキセルでの治療に失敗している、実施形態23に記載の方法。
28. 前記癌が転移性肺癌であり、前記患者が、前記イムノコンジュゲートの投与前に、カルボプラチン、ベバシズマブ、エトポシド、トポテカン、ドセタキセル、またはゲムシタビンでの治療に失敗している、実施形態23に記載の方法。
29. 乳房、肺、膵臓、食道、髄様甲状腺、卵巣、子宮、前立腺、精巣、結腸、直腸、または胃の癌を有するヒト対象に、hMN-14(抗CEACAM5)抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされたSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含む乳房、肺、膵臓、食道、髄様甲状腺、卵巣、子宮、前立腺、精巣、結腸、直腸、または胃の癌を処置する方法であって、前記イムノコンジュゲートを4mg/kgから24mg/kgの間の投薬量で投薬する方法。
30. 前記対象に、抗CEACAM6-SN-38イムノコンジュゲートを投与することをさらに含む、実施形態29に記載の方法。
31. 前記投薬量が4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択される、実施形態29に記載の方法。
32. 前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態29に記載の方法。
33. 前記癌が転移性結腸癌であり、前記患者が、前記イムノコンジュゲートの投与前に、イリノテカン、オキサリプラチン、FOLFIRINOX、FOLFIRI、FOLFOX、ベバシズマブ、セツキシマブ、ラムシルマブ、5-フルオロウラシル、またはロイコボリンでの治療に失敗している、実施形態29に記載の方法。
34. 乳房、肺、膵臓、食道、髄様甲状腺、卵巣、子宮、前立腺、精巣、結腸、直腸または胃の癌を有するヒト対象に、hMN-15(抗CEACAM6)抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされているSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含む乳房、肺、膵臓、食道、髄様甲状腺、卵巣、子宮、前立腺、精巣、結腸、直腸、または胃の癌を処置する方法であって、前記イムノコンジュゲートを4mg/kgから24mg/kgの間の投薬量で投与する方法。
35. 前記対象に、抗CEACAM5-SN-38イムノコンジュゲートを投与することをさらに含む、実施形態34に記載の方法。
36. 前記投薬量が4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択される、実施形態34に記載の方法。
37. 前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態34に記載の方法。
38. 膵臓癌を有するヒト対象に、hPAM4(抗MUC5ac)抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされているSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含む膵臓癌を処置する方法であって、前記イムノコンジュゲートが、4mg/kgから24mg/kgの間の投薬量で投与される方法。
39. 前記投薬量を、4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択する、実施形態38に記載の方法。
40. 前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態38に記載の方法。
41. B細胞リンパ腫、B細胞白血病、黒色腫、腎臓、肺、腸管、胃、乳房、前立腺、または卵巣の癌を有するヒト対象に、hLL1(抗CD74)抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされているSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含むB細胞リンパ腫、B細胞白血病、黒色腫、腎臓、肺、腸管、胃、乳房、前立腺、または卵巣の癌を処置する方法であって、前記イムノコンジュゲートを4mg/kgから24mg/kgの間の投薬量で投与する方法。
42. 前記投薬量が4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択される、実施形態41に記載の方法。
43. 前記癌が充実性腫瘍であり、前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態41に記載の方法。
44. B細胞リンパ腫またはB細胞白血病を有するヒト対象に、hLL2(抗CD22)抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされたSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含むB細胞リンパ腫またはB細胞白血病を処置する方法であって、前記イムノコンジュゲートを4mg/kgから24mg/kgの間の投薬量で投与する方法。
45. 前記投薬量が4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択される、実施形態44に記載の方法。
46. 前記癌が充実性腫瘍であり、前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態44に記載の方法。
47. B細胞リンパ腫、B細胞白血病、皮膚、食道、胃、結腸、直腸、膵臓、肺、乳房、卵巣、膀胱、子宮内膜、子宮頸部、精巣、腎臓、または肝臓の癌を有するヒト対象に、hL243(抗HLA-DR)抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされているSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含むB細胞リンパ腫、B細胞白血病、皮膚、食道、胃、結腸、直腸、膵臓、肺、乳房、卵巣、膀胱、子宮内膜、子宮頸部、精巣、黒色腫、腎臓、または肝臓の癌を処置する方法であって、前記イムノコンジュゲートが4mg/kgから24mg/kgの間の投薬量で投与されることを含む方法。
48. 前記投薬量が4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択される、実施形態47に記載の方法。
49. 前記癌が充実性腫瘍であり、前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態47に記載の方法。
50. B細胞リンパ腫またはB細胞白血病を有するヒト対象に、hA20(抗CD20)抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされているSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含むB細胞リンパ腫またはB細胞白血病を処置する方法であって、前記イムノコンジュゲートを4mg/kgから24mg/kgの間の投薬量で投与する方法。
51. 前記投薬量が4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択される、実施形態50に記載の方法。
52. 前記癌が充実性腫瘍であり、前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態50に記載の方法。
53. 肝細胞癌、胚細胞腫瘍、またはAFP産生腫瘍を有するヒト対象に、hIMMU31(抗AFP)抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされているSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含む癌、胚細胞腫瘍、および他のAFP産生腫瘍を処置する方法であって、前記イムノコンジュゲートが4mg/kgから24mg/kgの間の投薬量で投与される方法。
54. 前記投薬量が4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択される、実施形態53に記載の方法。
55. 前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の腫瘍サイズの縮小をもたらす、実施形態53に記載の方法。
56. B細胞リンパ腫、B細胞白血病、自己免疫疾患、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、または関節リウマチを有するヒト対象に、hA19(抗CD19)抗体またはその抗原結合性断片にコンジュゲートされているSN-38を含むイムノコンジュゲートを投与することを含むB細胞リンパ腫、B細胞白血病、自己免疫疾患、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病、多発性骨髄腫、特発性血小板減少性紫斑病、全身性エリテマトーデス、または関節リウマチを処置する方法であって、前記イムノコンジュゲートが4mg/kgから24mg/kgの間の投薬量で投与される方法。
57. 前記投薬量が4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、16mg/kg、および18mg/kgからなる群から選択される、実施形態56に記載の方法。
58. 前記疾患がリンパ腫であり、前記処置が少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、または少なくとも40%の全腫瘍インデックス病変の縮小をもたらす、実施形態56に記載の方法。
59. 前記イムノコンジュゲートが、pH6~7において、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES);N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA);N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES);4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES);2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES);3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS);3-(N-モルホリニル)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO);およびピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)[Pipes]からなる群から選択される緩衝液を含む医薬組成物中で貯蔵される、実施形態1に記載の方法。
60. 前記組成物が、25mMトレハロースおよび0.01%v/vポリソルベート80をさらに含む、実施形態59に記載の方法。
図1
図2
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図7
図8
【配列表】
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