(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】記録装置および潤滑剤の塗布方法
(51)【国際特許分類】
B41J 19/20 20060101AFI20240415BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
B41J19/20 L
B41J2/01 303
(21)【出願番号】P 2022144041
(22)【出願日】2022-09-09
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楢谷 友輔
(72)【発明者】
【氏名】甲野藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】武永 健
(72)【発明者】
【氏名】阿部 尭
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕輔
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-082379(JP,A)
【文献】特開2008-238422(JP,A)
【文献】特開2003-011455(JP,A)
【文献】特開2016-135616(JP,A)
【文献】特開2002-079720(JP,A)
【文献】特開2014-104648(JP,A)
【文献】特開2013-046972(JP,A)
【文献】特開2006-095758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 19/20
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出ヘッドを搭載し、走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記走査方向に沿って延在し、前記キャリッジが前記走査方向へ移動するのをガイドするガイド部材と、
前記キャリッジに設けられ、前記走査方向への移動の際に前記ガイド部材のガイド面と潤滑剤を介して摺動する摺動面を有する摺動部材と、
を備え、
前記キャリッジは、前記摺動部材よりも前記走査方向の一方の側に突出
し、前記ガイド面との間に形成される隙間が、前記走査方向において前記摺動部材に近づくにつれて小さくなる
傾斜部を有し、
前記走査方向と直交する方向における前記傾斜部の幅は、前記摺動面の前記直交する方向における幅よりも大きい
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
液体を吐出する液体吐出ヘッドを搭載し、走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記走査方向に沿って延在し、前記キャリッジが前記走査方向へ移動するのをガイドするガイド部材と、
前記キャリッジに設けられ、前記走査方向への移動の際に前記ガイド部材のガイド面と潤滑剤を介して摺動する摺動面を有する摺動部材と、
を備え、
前記キャリッジは、前記摺動部材よりも前記走査方向の一方の側に突出し、前記ガイド面との間に形成される隙間が、前記走査方向において前記摺動部材に近づくにつれて小さくなる傾斜部を有し、
前記走査方向と直交する方向における前記傾斜部の幅は、前記ガイド面の前記直交する方向における幅よりも大きい
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
前記
傾斜部は、前記摺動面が前記ガイド面と向かい合う方向において前記摺動面の手前まで延在していることを特徴とする請求項1
または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記
傾斜部は、前記摺動部材の側面に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記摺動部材は、前記キャリッジと一体的に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項6】
前記傾斜
部の傾斜角度は、20°以上、かつ、90°未満であることを特徴とする請求項
1または2に記載の記録装置。
【請求項7】
前記摺動部材は、前記走査方向において前記キャリッジの一方の端部に設けられていることを特徴とする請求項1
または2に記載の記録装置。
【請求項8】
前記走査方向において前記キャリッジの他方の端部に設けられ、前記走査方向への移動の際に前記ガイド部材のガイド面と潤滑剤を介して摺動する第2の摺動面を有する第2の摺動部材を備え、
前記キャリッジは、前記第2の摺動部材よりも前記走査方向において前記一方の側に突出
し、前
記隙間が前記走査方向において前記第2の摺動部材に近づくにつれて小さくなる
第2の傾斜部を有することを特徴とする請求項
7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記第2の
傾斜部は、前記第2の摺動面の手前まで延在していることを特徴とする請求項
8に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクを吐出させて記録媒体に画像を形成するインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録媒体にインクを吐出する記録ヘッド、記録ヘッドを搭載するキャリッジ、キャリッジを記録媒体の搬送方向(以下、副走査方向とも言う。)と交差する方向(以下、主走査方向とも言う。)への移動を案内するガイド部材によって構成されている。キャリッジには、ガイド部材のガイド面と潤滑剤を介して接触した摺動面を有する摺動部材が、ガイド面の延在方向(主走査方向)に並んで設けられている。
【0003】
製品組み立て時において、ガイド部材のガイド面と複数の摺動部材の摺動面との間に潤滑剤を塗り広げようとしたときには、ガイド面のキャリッジよりも主走査方向のいずれか一方に潤滑剤を塗布する。そして、キャリッジをガイド面の潤滑剤が塗布された主走査方向の前記一方に移動させた後、走査方向の前記一方と反対の他方に移動させるという、往復移動を繰り返すことで、ガイド面と複数の摺動面との間に潤滑剤を塗り広げている。
【0004】
このとき、キャリッジがガイド面の走査方向の一方側に最初に移動したときに、最初に潤滑剤と接触する摺動部材の摺動面とガイド面との間に入り込めずに余剰な潤滑剤が生じることがある。この余剰な潤滑剤については、この摺動部材の走査方向の前記一方側の側面に接触して、ガイド面の端に押し出されて戻すことができないため無駄になってしまう。
【0005】
このような課題へ対応した記録装置として、特許文献1に記載された記録装置が挙げられる。特許文献1に記載の記録装置では、キャリッジの走査方向両側に設けられた摺動部材の摺動面に、ガイド面に塗布された潤滑剤を保持するための溝が搬送方向に沿って複数本形成され、摺動部材の摺動面とガイド面との間に効率的に潤滑剤を塗り広げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の記録装置では、摺動部材の摺動面に溝を切ってしまうため、ガイド部材のガイド面と摺動部材の摺動面の間に働く面圧が高くなり、摺動部材の削れに繋がってしまう。摺動部材が削れると、記録ヘッドを搭載するキャリッジの姿勢に影響を与え、記録媒体への印字精度を悪化させてしまう。また、摺動面に溝を作ることで面が複数に分かれてしまうため、面同士に高さの差が生じる(図面上、摺動面Aと摺動面Bに高さ公差を入れる必要が出てくる)ことで、部品によってガイド部材のガイド面と摺動部材の摺動面との当たり方が安定しなくなってしまう。この場合も摺動部材の削れと同様に印字精度の悪化を引き起こす。
【0008】
よって本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、摺動部材の摺動面とガイド面との間に効率的に潤滑剤を塗り広げることが可能な記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の記録装置は、
液体を吐出する液体吐出ヘッドを搭載し、走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記走査方向に沿って延在し、前記キャリッジが前記走査方向へ移動するのをガイドするガイド部材と、
前記キャリッジに設けられ、前記走査方向への移動の際に前記ガイド部材のガイド面と潤滑剤を介して摺動する摺動面を有する摺動部材と、
を備え、
前記キャリッジは、前記摺動部材よりも前記走査方向の一方の側に突出し、前記ガイド面との間に形成される隙間が、前記走査方向において前記摺動部材に近づくにつれて小さくなる傾斜部を有し、
前記走査方向と直交する方向における前記傾斜部の幅は、前記摺動面の前記直交する方向における幅よりも大きい
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、摺動部材の摺動面とガイド面との間に効率的に潤滑剤を塗り広げることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の実施例1におけるキャリッジユニットの斜視図
【
図3】本発明の実施例1におけるキャリッジユニットの断面図
【
図4】実施例1における摺動部材周辺の断面図(キャリッジユニット下部)
【
図5】実施例1における摺動部材周辺の断面図(キャリッジユニット上部)
【
図7】本発明の実施例1におけるキャリッジの側面図
【
図8】本発明の実施例1におけるキャリッジの断面図
【
図9】本発明の実施例1における摺動部材周辺の断面図
【
図10】本発明の実施例1における摺動部材周辺の拡大図
【
図11】本発明の実施例1における潤滑剤の塗り広げ方を表した模式図
【
図12】本発明の実施例2における摺動部材周辺の模式図
【
図13】本発明の実施例3におけるキャリッジの背面図
【
図14】本発明の実施例3における摺動部材周辺の断面図
【
図15】本発明の実施例3におけるキャリッジユニットの斜視図
【
図16】本発明の実施例4における摺動部材周辺の模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべ
きものである。また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
(実施例1)
<インクジェット記録装置>
図1は本発明を適用可能な記録装置の斜視図である。記録装置1は、給送機構2、搬送部3、排送部4、及びキャリッジユニット5を備えている。
図2はキャリッジユニットの斜視図である。キャリッジユニット5は、記録ヘッド6が搭載されるキャリッジ7、キャリッジ7が記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向へ移動するのを案内(ガイド)するガイド部材8を備えている。また、キャリッジ7が主走査方向を往復移動するとともに、液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド6から記録媒体に向けて液体のインクを吐出することで記録媒体に記録を行う。
【0014】
給送機構2には記録媒体が積載される。記録媒体は搬送部3を経由して、記録ヘッド6と対向する位置へ搬送される。記録が行われた記録媒体は、排送部4を経由して、記録装置1の外部へ排送される。また、記録装置1には、記録ヘッド6の液体が吐出される面(以下、吐出面と呼ぶ。)に対向するプラテン9が設けられている。プラテン9は、記録動作中の記録媒体を支えるために設けられている。記録ヘッド6の吐出面は、プラテン9に支えられた記録媒体と適切な間隔を保った状態で正対する。
【0015】
<キャリッジユニット>
図3はキャリッジユニット5のA-A断面における断面図、
図4は
図3の摺動部材10周辺(
図3のDT i)の拡大図、
図5は
図3の摺動部材23周辺(図のDT iii)の拡大図である。キャリッジ7は下部に樹脂で構成された摺動部材10を、上部には樹脂で構成された摺動部材23を備えており、摺動部材10は摺動面11を有し、摺動部材23は摺動面24を有する。また、ガイド部材8はキャリッジ7の走査方向に沿って延在する長尺な金属の板部材であり、摺動部材10と摺動するガイド面12と摺動部材23と摺動するガイド面25を持つ。
図6に示す様に、ガイド面12には表面粗さの低い摺動範囲が存在し、その範囲を幅12hとする。
【0016】
キャリッジ7の重量を支えるため、キャリッジ7の下部では摺動面11とガイド面12が互いに向かい合い接しており、キャリッジ7の上部では摺動面24とガイド面25が互いに向かい合い接している。キャリッジ7が主走査方向へ移動し、走査することで摺動面11とガイド面12、摺動面24とガイド面25が摺動しあう。このとき、摺動面11,24とガイド面12,25がそれぞれ摺動してしまうと、金属の板部材であるガイド部材8に対して、樹脂材である摺動面11や摺動面24が削れてしまう。そのため、例えばグリスなどの潤滑剤を摺動面11,24とガイド面12,25との間に介在させることで、摺動面11,24の削れを抑制し、スムーズな摺動を可能としている。
【0017】
図7はキャリッジ7の側面図、
図8は
図7に示されたキャリッジ7のB-B断面における断面図である。キャリッジ7は走査時に吐出面に垂直な軸の回転方向に慣性力を受け、それに起因したキャリッジ7の揺れを抑えるため、走査方向に並んだ2つの摺動部材10,13を有している。摺動部材13は摺動部材10と同様に摺動面14を持ち、潤滑剤を介して互いに向かい合うガイド面12と接触し、キャリッジ7が走査することで摺動面14とガイド面12が摺動しあう。
【0018】
<キャリッジのガイド部材への組付け>
キャリッジ7の主走査方向における可動領域において、
図2に示すようにガイド部材8の上面の一部にキャリッジ7を上方に退避可能な穴20を設けている。これによって、ガ
イド部材8へキャリッジ7の組みこみが可能になる。穴20付近でキャリッジ7の組みこみを行うため、組立後初めてキャリッジ7を走査する方向は、ガイド部材8の片側の端部から反対側の端部へと向かう方向18となる。
【0019】
<ガイド面上の潤滑剤塗り広げ>
図9は
図8に示されたキャリッジ7のC-C断面における断面図である。キャリッジ7には、キャリッジ7に存在する摺動部材13よりも方向18において一方の側に突出し、かつ、摺動部材13の取り付け面15から摺動面14の手前まで延在し、摺動部材13の側面を覆うカバー部材としての突出部16が備えてあり、突出部16は傾斜面17を有する。傾斜面17は、キャリッジ7をガイド部材8に組んだ後に初めてキャリッジ7を走査する主走査方向である方向18において、摺動面14よりも一方の側に位置している。また、傾斜面17は、方向18において摺動部材13の位置から離れるほど、方向18に垂直な方向19成分における摺動面14と傾斜面17の間の距離が大きくなるよう傾斜している。すなわち、突出部16は、主走査方向である方向18において、摺動部材13に近づくにつれて摺動面14と傾斜面17の間の距離が小さくなるように、摺動面14の手前まで延在している。
図10は摺動部材13周辺(
図8のDT ii)の拡大図である。傾斜面17と摺動面14の、吐出面に垂直な方向であり、かつ、方法18と直交する方向19における長さをそれぞれ幅17hと幅14hとした時、幅17hは幅14hよりも大きい。また、幅17hはガイド面12の摺動範囲である幅12h、すなわち方法18と直交する方向におけるガイド面12の幅12hよりも大きい。
【0020】
図11は本実施例における潤滑剤(Lubricant)の塗り広げ方を表した模式図である。突出部16の傾斜面17とガイド面12の間の隙間について、方向18において摺動部材13に近い方の隙間を隙間d1、摺動部材13から遠い方の隙間を隙間d2とした時、隙間d1<隙間d2という関係になっている。すなわち、記録装置1の組み立てが行われ、
図11(a)に示すように摺動部材13の摺動面14とガイド部材8のガイド面12が向かい合う状態になった場合、突出部16および傾斜面17は、方向18において摺動部材13に近づくにつれて、ガイド面12との間に形成される隙間が小さくなる。そして、突出部16は、摺動面14とガイド面12の向かい合う方向において、前述の隙間がd1となるくらい摺動面14の手前まで延在するように構成される。製品組み立て時において、ガイド面12と摺動面11,14との間に潤滑剤を塗り広げようとしたときには、潤滑剤がガイド面12に塗布されたガイド部材8にキャリッジ7を取り付け、キャリッジ7を主走査方向の方向18に移動し、走査することで、潤滑剤を傾斜面17に押し当てて潤滑剤を塗り広げる。すなわち、本実施例における潤滑剤の塗布方法としては、以下の工程を含む。まず、キャリッジ7を、主走査方向である方向18においてガイド部材8の一方の側に移動させる(第1の移動工程)。次に、第1の移動工程の後に、ガイド面12上の潤滑剤をカバー部材である突出部16の傾斜面17に接触させる(接触工程)。そして、傾斜面17と接触した潤滑剤を摺動面14に塗布する(塗布工程)。塗布工程の後に、キャリッジ7を方向18とその逆方向に往復移動させる(第2の移動工程)。このような工程を含む潤滑剤の塗布方法とすることにより、方向18において摺動面14よりも一方の側にある傾斜面17が、摺動面14よりも先に潤滑剤と接触する。そのため、潤滑剤が傾斜面17に押しつぶされてガイド面12上に塗り広げられた状態で、摺動面14とガイド面12の間に潤滑剤が相対移動し、潤滑剤を介して摺動面14がガイド面12と摺動するようになる。これによって、潤滑剤が摺動部材13の側面に付着してしまうなどの無駄を生じさせてしまうことなく効率的にガイド面12上に塗り広げることが可能になる。なお、傾斜面17の傾斜具合(傾斜角度)は
図11(a)において角度27が20°以上で、かつ、90°未満のとき、効果が高いことが発明者らの検討により分かっている。
【0021】
ガイド面12と傾斜面17の間の方向19における距離は、できるだけ小さい方が潤滑剤を薄く塗り広げられるようになるため効果が高い。しかし、傾斜面17とガイド面12
が接触すると摺動負荷が上がることで消費電力の増加を引き起こしてしまう。そのため、部品公差や摺動面14の削れ量、キャリッジ7が吐出面に垂直な軸に回転した際の傾斜を加味し、傾斜面17とガイド面12が接触しない量とすることが望ましい。
【0022】
上述の通り、傾斜面17の幅17hは、摺動面14の幅14hよりも大きい幅を有している。これにより、ガイド面12に摺動面14が接している範囲に潤滑剤を塗り広げることが可能である。同等としてしまうと、部品公差を加味した際に幅17hよりも幅14hが大きくなってしまうため、潤滑剤が摺動面14全域に上手く行きわたらない可能性がでてくる。その場合、摺動面11,14の削れや摺動面11,14とガイド面12の間の摺動負荷アップを引き起こしてしまう。また、幅17hはガイド面の幅12hよりも大きい幅を有する。幅17hの方が幅12hよりも広いことで、ガイド面12上の潤滑剤を隈なく捉えることができ、ガイド面上の摺動範囲へのグリスの塗り残しを無くすことができる。
【0023】
本実施形態において、キャリッジ7の上部にある摺動部材23付近には傾斜面17を持つ突出部16は設けていない。潤滑剤の塗り広げという観点では付けた方がいいが、ガイド部材8への組付けの際に穴20と接触するのを防止するため、本構成には突出部は存在していない。
【0024】
(実施例2)
以下、図面を参照して本発明の実施例2について説明する。なお、本実施例の基本的な構成は実施例1と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0025】
図12は実施例2における摺動部材13周辺の模式図である。本実施例では摺動部材13の側面に傾斜面17を有する突出部16(カバー部材)が設けられている。すなわち、カバー部材としての突出部16が、摺動部材13の側面に密着することで、摺動部材13の側面を覆う構成となっている。本実施例においても実施例1と同様に、傾斜面17は方向18において、摺動面14を有する摺動部材13よりも一方の側に位置している。そのため、この形態であっても摺動面14よりも先に傾斜面17がガイド面12上の潤滑剤と接触し、潤滑剤が押しつぶされた状態で、摺動面14とガイド面12の間に塗布されることになり、潤滑剤を効率的にガイド面12上に塗り広げることが可能になる。
【0026】
(実施例3)
以下、図面を参照して本発明の実施例3について説明する。なお、本実施例の基本的な構成も実施例1と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0027】
図13は実施例3におけるキャリッジ7の背面図であり、
図14は摺動部材10周辺(
図13のD-D断面)の断面図である。本実施例では、キャリッジ7の方向18における一方の端部に設けられた摺動部材13の他に、他方の端部に設けられた摺動部材10付近にも、摺動部材13に設けられた突出部16と同様に、傾斜面22を備えた突出部21が設けられている。位置関係に関しては、傾斜面22を備えた突出部21は、方向18において摺動部材10(摺動面11)より一方の側、かつ、摺動部材10と摺動部材13(摺動面14)の間に存在している。すなわち、キャリッジ7の方向18における一方の端部に設けられた摺動部材13を第1の摺動部材、摺動面14を第1の摺動面、摺動部材13側の突出部16を第1のカバー部材とする。その場合に、キャリッジ7の方向18における他方の端部に設けられた第2の摺動部材に相当する摺動部材10にも、側面を覆う第2のカバー部材に相当する突出部21が傾斜面22を有して設けられている。そして、突出部21および傾斜面22は、突出部16および傾斜面17と同様に、方向18において摺動部材10に近づくにつれて、ガイド面12との間に形成される隙間が小さくなっている。そして、突出部21は、摺動面11とガイド面12の向かい合う方向において、摺動面
11の手前まで延在している。
【0028】
製品組み立て時においてキャリッジ7を走査することで潤滑剤を塗り広げようとした際、摺動部材10に傾斜面22がなく、摺動部材13側の傾斜面17のみしかない場合、摺動面14付近の潤滑剤は薄く塗り広げることが出来る。しかし、ガイド面12上に塗布され摺動面11と摺動面14の間に存在する潤滑剤は、薄く塗り広げられないまま摺動面11に直接接触することになり、摺動部材10の側面に付着してしまう可能性がある。本実施例のように摺動部材10にも突出部21および傾斜面22を設けることで摺動面11と摺動面14の間に存在する潤滑剤も薄く塗り広げた状態で、摺動面11、14がガイド面12と摺動するようになる。よって、実施例3では実施例1よりも効率的に潤滑剤を塗り広げることができる。
【0029】
図15は実施例3におけるキャリッジユニット5の斜視図であり、キャリッジ7の走査範囲としてCR走査範囲26を示してある。
図15におけるキャリッジ7の位置は、ガイド部材8への組立ポジションである。CR走査範囲26は傾斜面22よりも方向18に関して一方の側にあり、キャリッジ7のガイド部材8への組立後に確実にCR走査範囲26内のガイド面12上に潤滑剤が塗布されるようになっている。
【0030】
(実施例4)
以下、図面を参照して本発明の実施例4について説明する。なお、本実施例の基本的な構成も実施例1と同様であるため、以下では特徴的な構成についてのみ説明する。
【0031】
図16は実施例4におけるカバー部材としての突出部16周辺の模式図である。本実施例ではキャリッジ7と摺動部材13が別部品ではなく、キャリッジ7と摺動部材13を一体成形している。このように、キャリッジ7と摺動部材13が一体的に形成されることにより、部品点数が削減されコストの節約につながる。なお、摺動面14と傾斜面17の位置関係は実施例1と同様であり、傾斜面17により、効率的に潤滑剤を塗り広げられるという効果も同様である。
【0032】
本実施形態の開示は、以下の構成及び方法を含む。
(構成1)
液体を吐出する液体吐出ヘッドを搭載し、走査方向に往復移動するキャリッジと、
前記走査方向に沿って延在し、前記キャリッジが前記走査方向へ移動するのをガイドするガイド部材と、
前記キャリッジに設けられ、前記走査方向への移動の際に前記ガイド部材のガイド面と潤滑剤を介して摺動する摺動面を有する摺動部材と、
を備え、
前記キャリッジは、前記摺動部材よりも前記走査方向の一方の側に突出する突出部を有し、
前記突出部は、前記ガイド面との間に形成される隙間が、前記走査方向において前記摺動部材に近づくにつれて小さくなることを特徴とする記録装置。
(構成2)
前記突出部は、前記摺動面が前記ガイド面と向かい合う方向において前記摺動面の手前まで延在していることを特徴とする構成1に記載の記録装置。
(構成3)
前記突出部は、前記走査方向において前記摺動部材に近づくにつれて、前記ガイド面との間に形成される前記隙間が小さくなるように傾斜した傾斜面を有することを特徴とする構成1または2に記載の記録装置。
(構成4)
前記傾斜面の前記走査方向と直交する方向における幅は、前記摺動面の前記直交する方
向における幅および前記ガイド面の前記直交する方向における幅よりも大きいことを特徴とする構成3に記載の記録装置。
(構成5)
前記突出部は、前記摺動部材の側面に設けられていることを特徴とする構成1~4のいずれか一の構成に記載の記録装置。
(構成6)
前記摺動部材は、前記キャリッジと一体的に形成されていることを特徴とする構成1~5のいずれか一の構成に記載の記録装置。
(構成7)
前記傾斜面の傾斜角度は、20°以上、かつ、90°未満であることを特徴とする構成3または4に記載の記録装置。
(構成8)
前記摺動部材は、前記走査方向において前記キャリッジの一方の端部に設けられていることを特徴とする構成1に記載の記録装置。
(構成9)
前記走査方向において前記キャリッジの他方の端部に設けられ、前記走査方向への移動の際に前記ガイド部材のガイド面と潤滑剤を介して摺動する第2の摺動面を有する第2の摺動部材を備え、
前記キャリッジは、前記第2の摺動部材よりも前記走査方向において前記一方の側に突出する第2の突出部を有し、
前記第2の突出部は、前記ガイド面との間に形成される隙間が、前記走査方向において前記第2の摺動部材に近づくにつれて小さくなることを特徴とする構成8に記載の記録装置。
(構成10)
前記第2の突出部は、前記第2の摺動面の手前まで延在していることを特徴とする構成9に記載の記録装置。
(方法11)
上記の記録装置における前記摺動部材の前記摺動面への潤滑剤の塗布方法であって、
前記キャリッジを、前記走査方向における前記ガイド部材の一方の側に移動させる第1の移動工程と、
前記第1の移動工程の後に、前記ガイド面上の潤滑剤を前記突出部に接触させる接触工程と、
前記接触工程の後に、前記突出部と接触した潤滑剤を前記摺動面に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に、前記キャリッジを前記走査方向に往復移動させる第2の移動工程と、
を含むことを特徴とする潤滑剤の塗布方法。
【符号の説明】
【0033】
7…キャリッジ、8…ガイド部材、10…摺動部材、11…摺動面、12…ガイド面、16…突出部、17…傾斜面