(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-12
(45)【発行日】2024-04-22
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20230101AFI20240415BHJP
【FI】
G06Q30/02
(21)【出願番号】P 2022161173
(22)【出願日】2022-10-05
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】506369036
【氏名又は名称】アイエムエス ソフトウェア サービシズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 暁
(72)【発明者】
【氏名】平岡 美哉子
(72)【発明者】
【氏名】張 祐▲セン▼
【審査官】鹿野 博嗣
(56)【参考文献】
【文献】特許第5724020(JP,B1)
【文献】特許第5458210(JP,B1)
【文献】特開2007-172277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を決定するための情報処理装置であって、
個別の薬局の特徴を表す薬局特徴量と、個別の診療施設の特徴を表す施設特徴量と、前記個別の薬局と前記個別の診療施設との関連度を表す関連度特徴量とを入力データとして使用し、前記個別の薬局と前記個別の診療施設との間の医薬品売上を教師データとして使用する機械学習を行うことによって生成されたモデルを使用して、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の医薬品売上を推定する売上推定手段と、
前記対象薬局と前記1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の推定された医薬品売上に基づいて、前記対象薬局と前記1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の前記係数を決定する係数決定手段と、を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記モデルは、第1モデルであり、
前記情報処理装置は、前記薬局特徴量と、前記施設特徴量と、前記関連度特徴量とを入力データとして使用し、前記個別の薬局の医薬品売上を前記個別の診療施設に紐付けるかどうかを表す紐付け情報を教師データとして使用する機械学習を行うことによって生成された第2モデルを使用して、前記対象薬局の医薬品売上を紐付ける1つ以上の診療施設を決定する施設決定手段をさらに備え、
前記係数決定手段は、前記第2モデルを使用して決定された
、前記対象薬局の医薬品売上を紐付ける前記1つ以上の診療施設と、前記第1モデルを使用して推定された、前記対象薬局と前記1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の医薬品売上とに基づいて、前記対象薬局と前記1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の前記係数を決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記紐付け情報は、二値情報である、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記売上推定手段は、複数の診療領域のそれぞれについて別々に生成された前記モデルを使用し、
前記係数決定手段は、前記複数の診療領域のそれぞれについて前記係数を決定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記薬局特徴量は、薬局の医薬品売上を含み、
前記施設特徴量は、診療施設の処方規模を含み、
前記関連度は、診療施設と薬局との間の距離を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記薬局特徴量は、医薬品の複数の分類のそれぞれの医薬品売上を含み、
前記施設特徴量は、医薬品の前記複数の分類のそれぞれの処方規模を含む、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記薬局特徴量は、周辺の薬局の数と、薬局が所在する地域に関する情報と、をさらに含み、
前記施設特徴量は、診療施設が所在する地域に関する情報をさらに含む、請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1乃至7の何れか1項に記載の情報処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
日本では医薬分業制度が採用されており、最終消費者(患者)に提供される医薬品は病院等の診療施設によって処方され、処方された医薬品を薬局が販売する。診療施設で処方箋を発行された患者の多くは、この診療施設の近くにある薬局で医薬品を購入する。薬局における医薬品売上は、この薬局で購入された医薬品を処方した診療施設への営業活動の成果であると考えられる。そこで、特許文献1に記載された技術では、営業活動の成果を正確に反映すべく、薬局における医薬品売上を、当該薬局の近くにある診療施設における医薬品売上に紐付けた統計データを生成する。特許文献2に記載された技術では、薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5458210号公報
【文献】特許第5724020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載された薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を決定する方法には、係数の精度を向上する余地がある。本発明の一部の側面は、薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を精度よく決定するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一部の実施形態によれば、薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を決定するための情報処理装置であって、個別の薬局の特徴を表す薬局特徴量と、個別の診療施設の特徴を表す施設特徴量と、前記個別の薬局と前記個別の診療施設との関連度を表す関連度特徴量とを入力データとして使用し、前記個別の薬局と前記個別の診療施設との間の医薬品売上を教師データとして使用する機械学習を行うことによって生成されたモデルを使用して、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の医薬品売上を推定する売上推定手段と、前記対象薬局と前記1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の推定された医薬品売上に基づいて、前記対象薬局と前記1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の前記係数を決定する係数決定手段と、を備える情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一部の実施形態によれば、薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を精度よく決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一部の実施形態の情報処理装置の構成例を説明するブロック図。
【
図2】
図1の情報処理装置が使用する情報の例を説明する図。
【
図3】
図1の情報処理装置の動作例を説明するフローチャート。
【
図4】
図1の情報処理装置が生成する教師データの例を説明する図。
【
図5】
図1の情報処理装置による機械学習の動作例を説明する図。
【
図6】
図1の情報処理装置によるモデルの使用動作例を説明する図。
【
図7】
図1の情報処理装置が生成する係数情報の例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
図1を参照して、情報処理装置100の構成例について説明する。情報処理装置100は、薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を決定する。診療施設とは医師が処方箋を発行する医療施設のことであり、例えば病院、医院、診療所、クリニックなどを含む。薬局とは処方箋に従って医薬品を最終消費者に販売する施設であり、例えば調剤薬局、ドラッグストアなどを含む。診療施設における医薬品売上とは、例えば診療施設が治療のため及び院内処方のために購入した医薬品の金額又は数量のことである。薬局における医薬品売上とは、例えば薬局が販売のために購入した医薬品の金額又は数量のことである。医薬品売上は、単一種類の医薬品についての売上であってもよいし、複数種類の医薬品についての合計の売上であってもよい。
【0010】
情報処理装置100は、例えばサーバやパーソナルコンピュータなどで実現される。情報処理装置100は、単体の装置で実現されてもよいし、ネットワークを介して相互に接続された複数の装置で実現されてもよい。情報処理装置100は
図1に示す構成要素を備える。中央処理ユニット(CPU)101は情報処理装置100全体の動作を制御する。メモリ102は情報処理装置100の動作に用いられるプログラムや一時データなどを記憶する。メモリ102は例えばリードオンリメモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などにより実現される。入出力部103は、情報処理装置100のユーザが情報処理装置100を操作するための機能を提供する。入出力部103は、例えばマウスやキーボードなどの入力装置と、ディスプレイなどの出力装置で実現される。通信部104は、情報処理装置100が外部の装置と通信する機能を提供する。通信部104は、例えばネットワークカードなどで実現される。外部の装置との通信は有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0011】
情報取得部105、モデル生成部106、モデル使用部107及び係数決定部108は、薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を決定するための機能を提供する。これらの構成要素の一部又は全部は、電子回路のようなハードウェアで実現されてもよいし、プログラムのようなソフトウェアで実現されてもよい。ソフトウェアで構成される場合に、これらの構成要素の機能を規定するプログラムがメモリ102に読み出され、このプログラムに従ってCPU101が動作することによって処理が行われる。記憶部109は、各種の情報を記憶する機能を提供する。記憶部109は、例えば磁気ディスク装置などで実現される。
【0012】
情報取得部105は、薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を決定するために使用される情報を取得する。情報取得部105は、通信部104を使用して外部のサーバから取得してもよいし、入出力部103を使用して情報処理装置100のユーザから取得してもよい。また、情報取得部105は、このようにして取得した情報を加工することによって、新たな情報を取得してもよい。情報取得部105は、取得した情報を後続の処理のために記憶部109に記憶する。
【0013】
情報取得部105は、例えば薬局情報111、診療施設情報112、関連度情報113及び売上紐付け情報114を取得し、これらの情報を記憶部109に記憶する。
図2を参照して、これらの情報の具体例について説明する。
【0014】
薬局情報111は、薬局の特徴を表す情報である。薬局情報111は、
図2に示されるようにテーブル形式で管理されてもよい。これに代えて、薬局情報111は他の形式で管理されてもよい。薬局情報111は、1つの薬局ごとに1つのレコードを含んでもよい。カラム201は、薬局を一意に識別する薬局識別子(薬局ID)を表す。カラム202は、個別の薬局における医薬品売上(単位は任意)を表す。医薬品売上は、医薬品の金額であってもよいし、医薬品の数量であってもよいし、他の基準で測定された値であってもよい。医薬品売上は、個別の薬局が購入した医薬品に基づいてもよいし、個別の薬局が販売した医薬品に基づいてもよい。個別の薬局の医薬品売上は、個別の薬局の特定の期間の全体の医薬品売上(例えば、ある1年間の医薬品売上の合計値)であってもよい。これに代えて、個別の薬局の医薬品売上は、解剖治療化学分類法分類(ATC分類)の何れかのレベルごとに医薬品売上を管理してもよい。例えば、薬局情報111は、ATC分類の第2レベル(例えば、A01:口腔科用製剤)ごとに医薬品売上を管理してもよい。
【0015】
カラム203は、個別の薬局が所在する地域の情報(地域情報)を表す。地域情報は、個別の薬局が所在する市区町村を表す識別子を含んでもよいし、この市区町村の総人口、年齢別人口又は世帯数を含んでもよいし、他の情報を含んでもよい。カラム204は、個別の薬局の競合レベル(単位は任意)を表す。競合レベルは、個別の薬局の周囲(例えば、個別の薬局から100m以内、200m以内、及び/又は300m以内)に所在する薬局の数を含んでもよい。カラム205は、個別の薬局が取り扱う医薬品の情報を表す。この情報は、個別の薬局が取り扱う個別の医薬品を表す情報であってもよいし、個別の薬局が取り扱う医薬品の種類数であってもよいし、他の情報であってもよい。
【0016】
診療施設情報112は、診療施設の特徴を表す情報である。診療施設情報112は、
図2に示されるようにテーブル形式で管理されてもよい。これに代えて、診療施設情報112は他の形式で管理されてもよい。診療施設情報112は、1つの診療施設ごとに1つのレコードを含んでもよい。診療施設情報112は、複数の診療施設のグループに対して割り当てられたレコードを含んでもよい。例えば、小規模な診療施設の匿名性を向上するために、20病床以下の診療施設は、地理的に近接する他の診療施設と合わせて1つのグループを構成してもよく、このグループに対してレコードが割り当てられてもよい。1つのグループに含まれる診療施設は、例えば5以上であってもよい。20病床超の診療施設については、単独で1つのレコードが割り当てられてもよい。1つのレコードが複数の診療施設のグループに割り当てられる場合に、以下に説明するカラム212~215は、複数の診療施設の情報を統合したもの(例えば、カラム212、214であれば和や平均、カラム213であれば中心地点の地域情報、カラム215であれば和集合など)であってもよい。カラム211は、診療施設を一意に識別する診療施設識別子(診療施設ID)を表す。カラム212は、個別の診療施設の処方規模(単位は任意)を表す。処方規模とは、診療施設が院外の薬局の医薬品売上に与える影響の規模を表す数値のことである。処方規模は、個別の診療施設の医師数、個別の診療施設の医薬品売上、個別の診療施設の院外処方率、又は他の情報を含んでもよい。医薬品売上は、医薬品の金額であってもよいし、医薬品の数量であってもよいし、他の基準で測定された値であってもよい。医薬品売上は、個別の診療施設が購入した医薬品に基づいてもよいし、個別の診療施設が使用した医薬品に基づいてもよい。個別の診療施設の医薬品売上は、個別の診療施設の特定の期間の全体の医薬品売上(例えば、ある1年間の医薬品売上の合計値)であってもよい。これに代えて、個別の診療施設の医薬品売上は、ATC分類の何れかのレベルごとに医薬品売上を管理してもよい。例えば、診療施設情報112は、ATC分類の第2レベル(例えば、A01:口腔科用製剤)ごとに医薬品売上を管理してもよい。
【0017】
カラム213は、個別の診療施設が所在する地域の情報(地域情報)を表す。地域情報は、個別の診療施設が所在する市区町村を表す識別子を含んでもよいし、この市区町村の総人口、年齢別人口又は世帯数を含んでもよいし、他の情報を含んでもよい。カラム214は、個別の診療施設の競合レベル(単位は任意)を表す。競合レベルは、個別の診療施設の周囲(例えば、個別の診療施設から100m以内、200m以内、及び/又は300m以内)に所在する診療施設の数を含んでもよい。カラム215は、個別の診療施設が扱う診療科の情報を表す。この情報は、個別の診療施設が扱う個別の診療科を表す情報であってもよいし、個別の診療施設が取り扱う診療科の種類数であってもよいし、他の情報であってもよい。
【0018】
関連度情報113は、薬局と診療施設との関連度を表す情報である。関連度情報113は、
図2に示されるようにテーブル形式で管理されてもよい。これに代えて、関連度情報113は他の形式で管理されてもよい。関連度情報113のロウ221は、薬局IDを表す。ロウ221は、薬局情報111のカラム201と同じコード体系を有してもよい。関連度情報113のカラム222は、診療施設IDを表す。カラム222は、診療施設情報112のカラム211と同じコード体系を有してもよい。
【0019】
関連度情報113の各フィールドは、個別の薬局と個別の診療施設との関連度(単位は任意)を表す。関連度は、個別の薬局と個別の診療施設との間の距離を含んでもよいし、個別の薬局と個別の診療施設との間の個別の事情(例えば、診療施設において特定の薬局が紹介されているなど)を含んでもよいし、他の情報を含んでもよい。個別の薬局と個別の診療施設との間の距離は、個別の薬局と個別の診療施設との間の直線距離であってもよいし、道路に沿って測定した移動距離であってもよいし、他の距離であってもよい。
【0020】
売上紐付け情報114は、薬局から診療施設に紐付けられた医薬品売上を表す情報である。売上紐付け情報114は、
図2に示されるようにテーブル形式で管理されてもよい。これに代えて、売上紐付け情報114は他の形式で管理されてもよい。薬局情報111によって管理される複数の薬局の一部(例えば、「H1」、「H4」など)について、聞き取り調査などによって、どの診療施設にどれだけの医薬品売上が紐付けられていたかが取得されている。薬局情報111によって管理される他の薬局(例えば、「H2」、「H3」など)について、どの診療施設にどれだけの医薬品売上が紐付けられていたかが取得されていない。そこで、情報処理装置100は、以下に説明するように、診療施設に紐付けられた医薬品売上が取得されていない薬局について、モデルを使用してこの医薬品売上を推定する。
【0021】
売上紐付け情報114のロウ231は、薬局IDを表す。ロウ231は、薬局情報111のカラム201と同じコード体系を有してもよい。売上紐付け情報114のカラム232は、診療施設IDを表す。カラム232は、診療施設情報112のカラム211と同じコード体系を有してもよい。
【0022】
売上紐付け情報114の各フィールドは、個別の薬局から個別の診療施設に紐付けられた医薬品売上(単位は任意)を表す。紐付けられた医薬品売上は、医薬品の金額であってもよいし、医薬品の数量であってもよいし、他の基準で測定された値であってもよい。紐付けられた医薬品売上は、個別の薬局から個別の診療施設に特定の期間に紐付けられた全体の医薬品売上(例えば、ある1年間の医薬品売上の合計値)であってもよい。これに代えて、情報取得部105は、複数の診療領域のそれぞれについて売上紐付け情報114を取得し、別個に記憶部109に記憶してもよい。複数の診療施設は、例えば糖尿病、慢性腰痛、喘息などを含む14領域であってもよい。
【0023】
モデル生成部106は、情報取得部105によって取得された情報を使用して機械学習を行うことによってモデルを生成する。モデル生成部106は、生成したモデルを後続の処理のために記憶部109に記憶する。一部の実施形態において、モデル生成部106は、施設決定モデル115及び売上推定モデル116を生成してもよい。施設決定モデル115は、対象薬局の医薬品売上を紐付ける1つ以上の診療施設を決定するためのモデルである。売上推定モデル116は、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の医薬品売上を推定するためのモデルである。
【0024】
モデル使用部107は、施設決定モデル115を使用して、対象薬局の医薬品売上を紐付ける1つ以上の診療施設を決定するためのモデルである。モデル使用部107は、売上推定モデル116を使用して、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の医薬品売上を推定する。
【0025】
係数決定部108は、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の医薬品売上に基づいて、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の係数を決定する。係数決定部108によって使用される医薬品売上は、情報取得部105によって取得された医薬品売上であってもよいし、モデル使用部107によって推定された医薬品売上であってもよい。係数決定部108は、薬局と診療施設との特定のペアについて両方の医薬品売上を使用可能な場合に、情報取得部105によって取得された医薬品売上を優先して使用してもよい。
【0026】
続いて、
図3のフローチャートを参照して、情報処理装置100の動作例について説明する。S301で、情報取得部105は、薬局情報111、診療施設情報112、関連度情報113及び売上紐付け情報114を取得し、これらの情報を記憶部109に記憶する。
【0027】
S302で、情報取得部105は、売上紐付け情報114に基づいて施設紐付け情報117を生成し、この情報を記憶部109に記憶する。後述するように、施設紐付け情報117は、施設決定モデル115を生成するための教師データ(正解データ)として使用される。
図4を参照して、施設紐付け情報117の生成方法について説明する。情報取得部105は、売上紐付け情報114のフィールドのうち値が非ゼロのフィールドの値を1に置き換えることによって施設紐付け情報117を生成してもよい。売上紐付け情報114のフィールドのうち値が非ゼロのフィールドは、施設紐付け情報117においてもゼロとなる。施設紐付け情報117の各フィールドは二値情報として表される。このように、施設紐付け情報117は、医薬品売上の多寡によらず、個別の薬局から医薬品売上が紐付けられた診療施設であるか否かを表す。
【0028】
上述の方法では、売上紐付け情報114のフィールドのうち値が非ゼロのフィールドの値を1に置き換える。これに代えて、売上紐付け情報114のフィールドのうち値が非ゼロのフィールドの一部をゼロに置き換えてもよい。例えば、個別の薬局からある診療施設に紐付けられた医薬品売上が、この薬局から別の診療施設に紐付けられた医薬品売上よりも大幅に小さい(例えば、1%以下)の場合に、この医薬品売上を外れ値として無視するために、情報取得部105は、施設紐付け情報117においてこの医薬品売上に対応するフィールドの値をゼロとしてもよい。
【0029】
S303で、モデル生成部106は、個別の薬局の特徴を表す薬局特徴量と、個別の診療施設の特徴を表す施設特徴量と、個別の薬局と個別の診療施設との関連度を表す関連度特徴量とを入力データとして使用し、個別の薬局の医薬品売上を個別の診療施設に紐付けるかどうかを表す紐付け情報を教師データとして使用する機械学習を行うことによって、施設決定モデル115を生成する。施設決定モデル115は、例えばニューラルネットワークで規定されてもよい。モデル生成部106は、生成した施設決定モデル115を記憶部109に記憶する。
【0030】
図5を参照して、S303における機械学習について説明する。モデル生成部106は、施設紐付け情報117に含まれるフィールド(すなわち、個別の薬局と個別の診療施設とのペア)ごとに、当該フィールドの値と施設決定モデル115からの出力とを比較することによって、施設決定モデル115のパラメータを調整する。例えば、モデル生成部106が薬局「P1」(薬局ID「P1」を有する薬局)と診療施設「H1」(診療施設ID「H1」を有する診療施設)とのペアに関する情報を使用して施設決定モデル115を学習するとする。この場合に、モデル生成部106は、薬局情報111に含まれる薬局「P1」に関する情報を薬局特徴量として、診療施設情報112に含まれる診療施設「H1」の特徴を表す情報を診療施設特徴量として、関連度情報113に含まれる薬局「P1」と診療施設「H1」との間の関連度を表す情報を関連度特徴量として、それぞれ施設決定モデル115に入力する。薬局特徴量は、薬局情報111に含まれる薬局「P1」に関するすべての情報であってもよいし、その一部の情報であってもよい。診療施設特徴量及び関連度特徴量についても同様である。モデル生成部106は、このような入力データに対する施設決定モデル115からの出力を、薬局「P1」が診療施設「H1」に紐付けられるかどうかを表す二値情報と比較し、これらの誤差が低減するように施設決定モデル115のパラメータを調整する。モデル生成部106は、個別の薬局と個別の診療施設との他のペアに関する情報も同様に使用して施設決定モデル115のパラメータを調整する。
【0031】
S304で、モデル生成部106は、個別の薬局の特徴を表す薬局特徴量と、個別の診療施設の特徴を表す施設特徴量と、個別の薬局と個別の診療施設との関連度を表す関連度特徴量とを入力データとして使用し、個別の薬局と個別の診療施設との間の医薬品売上を教師データとして使用する機械学習を行うことによって、売上推定モデル116を生成する。売上推定モデル116は、例えばニューラルネットワークで規定されてもよい。モデル生成部106は、生成した売上推定モデル116を記憶部109に記憶する。
【0032】
図5を参照して、S304における機械学習について説明する。モデル生成部106は、売上紐付け情報114に含まれるフィールド(すなわち、個別の薬局と個別の診療施設とのペア)ごとに、当該フィールドの値と売上推定モデル116からの出力とを比較することによって、売上推定モデル116のパラメータを調整する。例えば、モデル生成部106が薬局「P1」(薬局ID「P1」を有する薬局)と診療施設「H1」(診療施設ID「H1」を有する診療施設)とのペアに関する情報を使用して売上推定モデル116を学習するとする。この場合に、モデル生成部106は、薬局情報111に含まれる薬局「P1」に関する情報を薬局特徴量として、診療施設情報112に含まれる診療施設「H1」の特徴を表す情報を診療施設特徴量として、関連度情報113に含まれる薬局「P1」と診療施設「H1」との間の関連度を表す情報を関連度特徴量として、それぞれ売上推定モデル116に入力する。薬局特徴量は、薬局情報111に含まれる薬局「P1」に関するすべての情報であってもよいし、その一部の情報であってもよい。診療施設特徴量及び関連度特徴量についても同様である。モデル生成部106は、このような入力データに対する売上推定モデル116からの出力を、薬局「P1」から診療施設「H1」に紐付けられた医薬品売上と比較し、これらの誤差が低減するように売上推定モデル116のパラメータを調整する。モデル生成部106は、個別の薬局と個別の診療施設との他のペアに関する情報も同様に使用して売上推定モデル116のパラメータを調整する。
【0033】
施設決定モデル115を生成するための機械学習における入力データと売上推定モデル116を生成するための機械学習における入力データとは、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
S305で、モデル使用部107は、施設決定モデル115を使用して、対象薬局の医薬品売上を紐付ける1つ以上の診療施設を決定する。対象薬局とは、診療施設に紐付ける医薬品売上を推定すべき薬局のことである。対象薬局は、薬局情報111に含まれる薬局のうち売上紐付け情報114に含まれない薬局のことであってもよい。対象薬局は、このような薬局のすべてであってもよいし、ユーザによって指定された一部の薬局であってもよい。
【0035】
具体的に、モデル使用部107は、対象薬局の特徴を表す薬局特徴量と、個別の診療施設の特徴を表す施設特徴量と、対象薬局と個別の診療施設との関連度を表す関連度特徴量とを施設決定モデル115に入力し、その出力が1であれば当該診療施設に医薬品売上を紐付けることを決定し、その出力がゼロであれば当該診療施設に医薬品売上を紐付けないことを決定する。モデル使用部107は、診療施設情報112に含まれるそれぞれの診療施設について上記の決定を行ってもよい。これに代えて、モデル使用部107は、診療施設情報112に含まれる診療施設のうち、医薬品売上を紐付けると決定される可能性が低い診療施設(例えば、対象薬局との関連度が閾値範囲外の診療施設)について、施設決定モデル115を使用することなく、当該診療施設に医薬品売上を紐付けないことを決定してもよい。S305で使用される特徴量は、S303の機械学習で使用される特徴量と同じであってもよい。
【0036】
S306で、モデル使用部107は、売上推定モデル116を使用して、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の医薬品売上を推定する。S306における対象薬局は、S305における対象薬局と同一であってもよい。
【0037】
具体的に、モデル使用部107は、対象薬局の特徴を表す薬局特徴量と、個別の診療施設の特徴を表す施設特徴量と、対象薬局と個別の診療施設との関連度を表す関連度特徴量とを売上推定モデル116に入力し、その出力を、対象薬局から個別の診療施設に紐付けられた医薬品売上として推定する。モデル使用部107は、診療施設情報112に含まれるそれぞれの診療施設について上記の決定を行ってもよい。これに代えて、モデル使用部107は、診療施設情報112に含まれる診療施設のうち、医薬品売上を紐付けると決定される可能性が低い診療施設(例えば、対象薬局との関連度が閾値範囲外の診療施設)について、売上推定モデル116を使用することなく、医薬品売上をゼロと推定してもよい。S306で使用される特徴量は、S304の機械学習で使用される特徴量と同じであってもよい。
【0038】
S307で、係数決定部108は、施設決定モデル115を使用して決定された1つ以上の診療施設のそれぞれと対象薬局との間の推定された医薬品売上に基づいて、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の係数を決定する。S307における対象薬局は、S305における対象薬局と同一であってもよい。
【0039】
具体的に、
図6に示されるように、係数決定部108は、対象薬局と個別の診療施設とのペアについて、施設決定モデル115を使用して決定された値(二値)と、売上推定モデル116を使用して決定された医薬品売上とを乗算する。施設決定モデル115を使用して個別の診療施設に医薬品売上を紐付けないことが決定された場合(すなわち、値がゼロの場合)に、売上推定モデル116を使用して推定された医薬品売上によらず、乗算結果はゼロとなる。一方、施設決定モデル115を使用して個別の診療施設に医薬品売上を紐付けることが決定された場合(すなわち、値が1の場合)に、売上推定モデル116を使用して推定された医薬品売上がそのまま使用される。係数決定部108は、このようにして決定された医薬品売上を使用して、薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を決定する。例えば、係数決定部108は、対象薬局から複数の診療施設の何れかに紐付けられた医薬品売上の合計を算出する。係数決定部108は、対象薬局から個別の診療施設に紐付けられた医薬品売上をこの合計で除算した結果を、当該診療施設の係数として決定する。係数決定部108は、決定した係数を係数情報118として記憶部109に記憶する。
【0040】
図7は、係数情報118の一例を示す。係数情報118は、
図2に示されるようにテーブル形式で管理されてもよい。これに代えて、係数情報118は他の形式で管理されてもよい。係数情報118のロウ701は、薬局IDを表す。ロウ701は、薬局情報111のカラム201と同じコード体系を有してもよい。係数情報118のカラム702は、診療施設IDを表す。カラム702は、診療施設情報112のカラム211と同じコード体系を有してもよい。係数情報118の各フィールドは、係数決定部108によって決定された係数を表す。情報処理装置100は、係数情報118を外部の装置に提供してもよい。
【0041】
以上のように、上述の実施形態では、様々な特徴量を使用して生成されたモデルを使用するため、係数を精度よく決定できる。また、上述の実施形態のように、売上推定モデル116だけでなく、施設決定モデル115をさらに使用することによって、係数決定の精度が一層向上する。
【0042】
情報処理装置100は、記憶部109に複数の診療領域のそれぞれについて売上紐付け情報114が記憶されている場合に、複数の診療領域のそれぞれについて、薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を決定してもよい。具体的に、情報処理装置100は、複数の診療領域のそれぞれについて、上述のS302~S307を実行してもよい。その結果、施設紐付け情報117が診療領域ごとに別々に生成され、施設決定モデル115及び売上推定モデル116が診療領域ごとに別々に生成され、医薬品売上が診療領域ごとに別々に推定される。この場合であっても、学習に使用する医薬品売上は、診療領域ごとではなく、複数の診療領域の合計であってもよいし、複数の分類(例えば、ATC分類の第2レベル)ごとの医薬品売上であってもよい。
【0043】
上述の実施形態では、施設決定モデル115と売上推定モデル116との両方が使用される。これに代えて、施設決定モデル115が使用されなくてもよい。この場合に、係数決定部108は、売上推定モデル116を用いて推定された医薬品売上をそのまま使用して係数を決定してもよい。このような実施形態であっても、様々な特徴量を使用するため、係数を精度よく決定できる。
【0044】
上述の実施形態では、1つの情報処理装置100においてS301~S307の工程が実行される。これに代えて、S301~S307の工程が複数の情報処理装置で分散して実行されてもよい。例えば、1つの情報処理装置によってS301~S304が実行され、これによって生成された施設決定モデル115及び売上推定モデル116を使用して、他の情報処理装置によってS305~S307が実行されてもよい。
【0045】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
100 情報処理装置、105 情報取得部、106 モデル生成部、107 モデル使用部、108 係数決定部
【要約】
【課題】薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を精度よく決定する。
【解決手段】薬局の医薬品売上を診療施設に紐付ける際に用いられる係数を決定するための情報処理装置は、個別の薬局の特徴を表す薬局特徴量と、個別の診療施設の特徴を表す施設特徴量と、個別の薬局と個別の診療施設との関連度を表す関連度特徴量とを入力データとして使用し、個別の薬局と個別の診療施設との間の医薬品売上を教師データとして使用する機械学習を行うことによって生成されたモデルを使用して、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の医薬品売上を推定する売上推定部と、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の推定された医薬品売上に基づいて、対象薬局と1つ以上の診療施設のそれぞれとの間の係数を決定する係数決定部と、を備える。
【選択図】
図6